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歪世界トレイン
[8] -25 -50 

1: ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:25:16 ID:4iSJ1d7xp2

乗客Yx1

戸野 千織(トノ チオリ)

目が覚めたらそこは、走る列車の中だった



179: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:21:45 ID:wxYS1bSIHQ

午後も変わらず、荷物の積み下ろし業務に携わった

千織「兎男さん、手伝います!」

兎男「おや、初めて見る顔だね?」

千織「今日から列車で働いてます、千織といいます。よろしくお願いします!」

兎男「そうなのか〜こちらこそよろしく」

兎男と一緒に、よいしょと声をかけて荷物をもつ

千織「う〜重い」

兎男「大丈夫かい?なんなら俺ひとりでも…」

千織「大丈夫です!へっちゃらです!」 ニコニコ

兎男「…」

兎男(よく見ると、か、かわいい顔してるなぁ〜…) ドキドキ

180: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:27:09 ID:wxYS1bSIHQ

おとなしい雰囲気の兎男とは、千織も安心して会話することができた

千織「兎男さんは、ずっとこのお仕事をされているんですか?」

兎男「いや、俺が働き始めたのはつい最近だよ」

兎男「恥ずかしい話、家で引きこもってる時期が長くてね。最近になってやっと働こうっていう気になったんだよ」

千織「そうなんですね」

兎男「やりたいことがなくて毎日だらだらしてたんだけど、さすがに働かないとね、生活できないし」

181: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:30:24 ID:wxYS1bSIHQ

千織「そう考えて実行できるのが偉いと思います。やりたいことは、働いてお金をためながら、見つけるでもいいんじゃないですかね?」

兎男「そうだよね、俺もそう思ったんだ。実は俺、ミュージシャンになりたいなって、ちょっと考え始めてるんだ。音楽が好きだから」

千織「へぇ!とっても素敵です」

兎男「でも、仲間には無理だって言われてる。見た目も冴えないし、気が弱いから」

兎男「兎男一族は、みんな駅や列車に派遣されて働いているしね」

千織「大切なのは兎男さんの気持ちだと思いますよ。夢があるから毎日を頑張れると思いますし」

182: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:37:20 ID:wxYS1bSIHQ

兎男「そうかな?」

千織「そうですよ。チャレンジしてみて、自分ができることをやりきって…それでもダメだったら、列車のお仕事をすればいいんじゃないんですかね。自分の人生ですから」

兎男「そんなことを言ってくれたのは、千織ちゃんが初めてだよ」

千織「そうなんですか?」

兎男「うん。俺…みんなから変わってるって言われるんだ。だから自信なくしちゃって」

千織「変じゃないですよ!私は応援してます」

兎男「あ、ありがとう… 千織ちゃんのおかげで、何か元気が出てきたよ」

183: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:14:10 ID:wxYS1bSIHQ

日が暮れ、そろそろ仕事が終わるだろうかという頃――


兎男「千織ちゃん、千織ちゃん」

千織「はい」

兎男「初めての仕事、1日よくがんばったね」

千織「いえいえ。兎男さんたちが優しく教えて下さったおかげです」

兎男「千織ちゃんはニコニコ可愛いから、俺たちの癒しだって、みんな言ってるよ」

兎男「ところで、みんなと話して、お嬢ちゃんの歓迎会をやろうって話になったんだ。どう?」

184: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:16:46 ID:wxYS1bSIHQ
>>183
×お嬢ちゃん
〇千織ちゃん
185: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:17:26 ID:wxYS1bSIHQ

千織「え、歓迎会?」

兎男「うん。列車はこのタツノコ駅で今日は終点だろ?近くにおいしいお店があるんだ」

千織「そ、そうなんですか」

千織(どうしよう…嬉しいけど、さすがに無理だよね…)

しかし、笑顔いっぱいの兎男を見ていると、とても断りづらい

千織「しゃ、車掌さんに相談してきてもいいですか?」

兎男「え?なんで?君は仕事が終われば自由だろ?」

千織(い、言えない… 車掌さんに買われてるだなんて)

千織「ざ、残業があるかもしれないので…」

兎男「そうなの?じゃあ、少しここで待ってるよ」

186: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:19:08 ID:wxYS1bSIHQ

車掌「――歓迎会?」

千織「は、はい… 皆さんすごく優しいので、断りづらくて。どうすればいいでしょう」

車掌「町に出るのは危険だな。私のそばを離れれば、わずかに残る人間の臭いでバレる可能性もある」

千織「で、ですよね」

車掌「君は行きたいのか?」

千織「い、いえ!夜ですし、何かあったら怖いので… 」

車掌「仕方ないな。私から言ってやる」

千織「すみません」

187: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:22:06 ID:wxYS1bSIHQ

兎男「……納得いきませんね」

車掌「何がでしょう」

兎男「新人を業務終了後も拘束するなんて。ここはブラックじゃないと思っていましたが」

車掌「彼女には住み込みで働いてもらっているので。これから列車の清掃業務をさせます」

兎男「な…さすがにかわいそうですよ、こんな女の子を」

車掌「ご心配なく。彼女も了承済みです」


188: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:24:15 ID:wxYS1bSIHQ

兎男「千織ちゃん、本当なの?」

千織「は、はい…」

兎男「…」

兎男「…そう。じゃあ、今日はひとまずやめとくよ」

兎男「またね、千織ちゃん」

千織「はい。すみません、ありがとうございました」 ペコリ


189: ◆e.A1wZTEY.:2017/7/12(水) 21:27:32 ID:wxYS1bSIHQ

帰路につきながら、兎男は考える

兎男「なんかおかしい…納得できないぞ」

兎男「普段から業務は滞りなくあの車掌ひとりでやってるんだから、住み込みの働き人なんていらないはずだ」

兎男「女の子を深夜までこきつかうなんて…信じられない…」

兎男「…はっ!もしかして」

兎男「千織ちゃんは可愛いから、無理やり拘束されてるんじゃないか?」

兎男「抵抗しても力じゃかなわないだろうし、あの車掌の言いなりにされて、酷いことを…」

兎男「そうだ、きっとそうに違いない!」

兎男「んああああっ!!ゆるせんんんん!!!!!」

190: 名無しさん@読者の声:2017/7/26(水) 23:19:21 ID:.JIA1ip43s
支援
お帰りなさい!
191: 名無しさん@読者の声:2017/8/30(水) 09:41:42 ID:UtKpo4NOEg
>>190
ありがとうございます!
お待たせしました!
192: ◆e.A1wZTEY.:2017/8/30(水) 09:44:34 ID:UtKpo4NOEg

車掌「――明日からは、あの兎男とは業務時間をずらしてもらう」

千織「え、何でですか!?」

車掌「前々から見ているに、考え方が若くて甘い。他の兎男よりも危ないところがある」

千織「でも、せっかく歓迎会に誘ってくれたいい人なのに…」

車掌「…」 ハァ

車掌「千織、あの男に何か言ったな?」

193: ◆e.A1wZTEY.:2017/8/30(水) 09:46:34 ID:UtKpo4NOEg

千織「え?」

車掌「あいつに好意を寄せられるようなことをだ」

千織「そ、そんな。言ってません、普通にお話しただけです」

車掌「何を言ったか知らないが、君の目線で物事を語らないことだ。この世界に住む者は、人間ではない上、もともとは死者だ。それを忘れるな」

千織「…!」

194: ◆e.A1wZTEY.:2017/8/30(水) 09:49:12 ID:UtKpo4NOEg

――翌日

兎男「…あれ?千織ちゃんは?」

兎男2「ん?なんか別チームの荷物班になったらしいぞ」

兎男「ええぇっ!なんで??」

兎男2「そんなこと俺が知るかよ〜。さぁ、仕事仕事」 バタバタ

兎男「…」


195: ◆e.A1wZTEY.:2017/8/30(水) 09:52:30 ID:UtKpo4NOEg

兎男(別チームって…そんなの、あの車掌が決めたにきまってるじゃないか)

沸々と胸の内に怒りがわいてくる

兎男(俺が昨日文句を言ったから、チームを変えられたんだ。許せない)

兎男(あんな性格の悪い車掌が、千織ちゃんに優しく接してるはずがない)

兎男(きっと虐められてる… 俺が、俺が助けてあげなきゃ!!)


196: ◆e.A1wZTEY.:2017/8/30(水) 10:01:46 ID:UtKpo4NOEg

千織「――ふう!」

キサラギ駅と書かれた駅での荷物の積み下ろしを終え、汗をぬぐう

力仕事にもだいぶ慣れてきた

千織「働くのって悪くないかも」

そう呟き、次の駅に向けて列車に乗り込もうとしたとき――

兎男「ち、千織ちゃん!!」

千織「兎男さん…?」

兎男が走ってきて、千織の手をつかんだ

197: ◆e.A1wZTEY.:2017/8/30(水) 10:04:12 ID:UtKpo4NOEg

千織「ど、どうしたんですか」

兎男「俺が、君を助けてあげる!一緒に逃げよう!!」

千織「え、えぇ!?」

『――まもなく、列車が出発します。まもなく列車が出発します』

アナウンスが入り、列車が音を立て始める

千織「だ、だめです、列車に戻らないと」

兎男「いいから、俺についてきて!!」 バッ

千織「きゃ!?」

兎男は千織を抱き上げると、ホームの外へ走り出した

198: ◆e.A1wZTEY.:2017/11/30(木) 11:22:59 ID:UugzyVWfTQ

車掌「…」 ピク

運転席で、わずかに顔をしかめる

車掌「…ちっ」

千織の気配が列車外へ出たのに気づいた

列車の出発をいったん止め、目を閉じて精力を集中する

車掌「…」

すると、列車の車両から、にょきにょきと巨大な黒い手が出現した

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