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歪世界トレイン
[8] -25 -50 

1:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/4/30(日) 20:25:16 ID:4iSJ1d7xp2

乗客Yx1

戸野 千織(トノ チオリ)

目が覚めたらそこは、走る列車の中だった



163:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/30(火) 03:39:05 ID:spmolqlGjY


千織「…あの」

独りにしておいた千織が、二人のもとへ戻ってきた

車掌「泣き止んだか」

千織「はい。いろいろすみません」

泣きはらした目とは異なり、表情は落ち着いている

車掌「…?」

千織「…私」

千織「私、この世界で沖くんを探します」

164:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/30(火) 03:40:40 ID:spmolqlGjY

車掌「…」

ブリアン「えぇえ?」

千織「誰かに連れ去られただけで、食べられたとは限らないですから。私みたいに、生かされている可能性もありますし」

千織「どこにいるのか私には想像もできないですけど、探していれば、いつか…」

ブリアン「途方もないね」

呆れた顔をしつつも、ブリアンはにやりと笑った

ブリアン「…でも確かに、この列車なら、この世界の至る所を走る。捜索には適していると思うよ」

165:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/30(火) 03:42:24 ID:spmolqlGjY

車掌「至る所を走るが、降車するわけではない。探すことは無理だ」

千織「お客さんから情報収集するだけでもいいんです」

車掌「情報収集?乗客に対して、『人間の男を知りませんか』なんて尋ねるのか?笑わせるな」

千織「…」

千織「…やってみないと、わかりません」

千織「とにかく私は、沖くんを巻き込んでしまった責任があるので、できる限りのことをしたいんです」

166:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/30(火) 03:47:29 ID:spmolqlGjY

千織「車掌さんからしたら、メリットもなくて、ふざけるなと思われるかもしれないですけど」

車掌「その通りだな」

千織「お仕事の邪魔になるようには決してしませんから… お願いします」 ペコリ

ブリアン「まぁまぁ」

ブリアン「とりあえず、千織がこの世界にいる目的ができて僕は嬉しいよ。どっちにしろ、ここで働いてもらう予定だったわけだし、いいでしょ」

車掌「…はぁ」

大きなため息をつく

車掌「お前らに、振り回されてばっかりの気がする…」

ブリアン「やだーそんなわけないじゃーん??」 ニコニコ

167:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/31(水) 02:27:28 ID:spmolqlGjY

異空間の治安・警備にあたる組織がある

選ばれた者のみで構成される、『異界警察』

恭太を歪世界から人間界へ連れ戻したのも、彼らだった


168:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/31(水) 02:32:11 ID:spmolqlGjY

――コンコン

隊長「入れ」

部下「はっ、失礼します」 ガチャ

部下「先日、歪世界へ人間が紛れ込んだ案件について、追加報告です」

隊長「なんだ」

部下「隊長が命ぜられた通り、人間が発見された現場に監視昆虫を潜らせておいた結果なのですが」

部下「人間を送り返した翌日、歪世界の者が現場を訪れる様子が撮れました」

隊長「ほう」

169:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/31(水) 02:35:55 ID:spmolqlGjY

部下「様子をみるに、人間を探していたと思われます」

隊長「俺が踏んだ通りだ。そいつは、もしかしたら別の人間をもっているかもな」

部下「別の人間、ですか?」

隊長「人間の少年が言っていただろう。『ちおちゃん』と。歪世界には、まだ人間が迷い込んでいる。その人間の情報を通して、あの現場へたどり着いた可能性がある」

部下「しかし、探知機には何も反応がありませんでした」

隊長「何らかの方法でごまかしたんだろう。知能は高めのようだな」

隊長「で?そいつの身元特定は?」

170:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/5/31(水) 02:42:32 ID:spmolqlGjY

部下「そ、それが」

隊長「ん?」

部下「監視昆虫が追跡する前に、踏みつぶされてしまったようです」

隊長「…ぶっ」

隊長「ぶはははは!!」

隊長「面白い。誰だか知らないが、俺に喧嘩を売りやがったな」

部下「ど、どうされますか?」

隊長「決まっているだろう。異界警察のメンツにかけて探し出して、死刑にしてやる」

部下(い、言えない… 監視昆虫が追跡できなかったのは、ただの誤作動だったなんて)

171:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/6/5(月) 20:42:56 ID:qmYFUaaIGI
多忙のため少しお休みします
172:🎏 名無しさん@読者の声:2017/6/7(水) 17:19:10 ID:TLNgewpArk
いつも更新お疲れ様です
(´・ω・)っ旦~

読み返して待ってるので落ち着くまで頑張ってください
つCCC
173:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/6/12(月) 11:58:26 ID:qmYFUaaIGI
>>172
ありがとうございます;;めっちゃ嬉しいです( ;∀;)
14日or15日に更新再開予定です!
174:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/6/16(金) 23:42:31 ID:qmYFUaaIGI

歪世界に来てから4日目の朝

今日は寝坊することなく、早朝5時に起きた

車掌「――君にはとりあえず、各駅で荷物の積み下ろしをやってもらう」

千織「はい」

車掌「基本的にどの駅でも、兎男がその業務に携わっている。君はその補助程度でいい」

千織「兎男… 兎男さんは、どういう人たちですか?」

車掌「気性は穏やかだ。人間とわからなければ手出しをしてくることもないし、仕事はマメに教えてくれるだろう」

千織「本当ですか!」 パアア

175:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/6/16(金) 23:46:03 ID:qmYFUaaIGI

車掌「何か質問は?」

千織「え、えーと… 私、自分の筋力にはあまり自信ないんですけど。荷物って結構重いですか?」

車掌「物によるな。重そうなものは無理しなくていい。兎男は協力的だから手伝ってくれるだろうし」

千織「優しい人たちなんですね…」 ジーン


――というわけで、千織は兎男たちに混ざって荷物の積み下ろし業務にあたった

まず、駅に停車すると、貨物車両から該当の荷物を下ろす

そして、新たに載せる荷物を乗客から受け取り、貨物車両へ運び入れる

この繰り返しだった

176:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/6/16(金) 23:48:47 ID:qmYFUaaIGI

千織「…」ゼェゼェ

やはり、女の千織にとってこの肉体労働は楽ではない

一駅働いただけで汗だくになってしまう

老兎男「――お嬢ちゃん、がんばるねぇ」

千織「えっ、あっ、はい!」

老兎男「新人なのにえらいねぇ。あの車掌さんにしごかれてるのかい?」

千織「い、いや、そういうわけでは!私が体力がないだけなんです」

老兎男「ほっほっほ。初日から頑張ると、明日から筋肉痛で動けなくなっちまうから、無理しないようにね」

千織「は、はい…!」

千織(ほんとに優しい…) ジーン

177:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:14:57 ID:wxYS1bSIHQ

車掌「千織」

昼になると、車掌が貨物車両で休む千織のもとへやってきた

千織「はい」

車掌「昼飯だ」

ぽん、とお弁当を手渡される

千織「え…!?」

千織「お、お弁当!?お弁当があるんですか!?」

車掌「駅売り弁当というやつだ。今停車しているヒナコ駅で買ってきた」

千織「駅売り弁当…」

178:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:17:54 ID:wxYS1bSIHQ

パカ、と開くと、色とりどりの具材が目に入った

千織「お、おぉー」

感動する

しかし、それぞれの具材はなじみのある見た目ではなく、何なのかわからない

千織「…わ、私が食べられるものなんですよね?」

車掌「さきほど私も少し食べてみたが、問題ないと思う」

千織「車掌さんって、ふだん精力が食事なんですよね…?参考になるんでしょうか」

車掌「いらなければ食べなくていい」 ツーン

千織「た、食べます!食べます!ありがとうございます」

179:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:21:45 ID:wxYS1bSIHQ

午後も変わらず、荷物の積み下ろし業務に携わった

千織「兎男さん、手伝います!」

兎男「おや、初めて見る顔だね?」

千織「今日から列車で働いてます、千織といいます。よろしくお願いします!」

兎男「そうなのか〜こちらこそよろしく」

兎男と一緒に、よいしょと声をかけて荷物をもつ

千織「う〜重い」

兎男「大丈夫かい?なんなら俺ひとりでも…」

千織「大丈夫です!へっちゃらです!」 ニコニコ

兎男「…」

兎男(よく見ると、か、かわいい顔してるなぁ〜…) ドキドキ

180:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:27:09 ID:wxYS1bSIHQ

おとなしい雰囲気の兎男とは、千織も安心して会話することができた

千織「兎男さんは、ずっとこのお仕事をされているんですか?」

兎男「いや、俺が働き始めたのはつい最近だよ」

兎男「恥ずかしい話、家で引きこもってる時期が長くてね。最近になってやっと働こうっていう気になったんだよ」

千織「そうなんですね」

兎男「やりたいことがなくて毎日だらだらしてたんだけど、さすがに働かないとね、生活できないし」

181:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:30:24 ID:wxYS1bSIHQ

千織「そう考えて実行できるのが偉いと思います。やりたいことは、働いてお金をためながら、見つけるでもいいんじゃないですかね?」

兎男「そうだよね、俺もそう思ったんだ。実は俺、ミュージシャンになりたいなって、ちょっと考え始めてるんだ。音楽が好きだから」

千織「へぇ!とっても素敵です」

兎男「でも、仲間には無理だって言われてる。見た目も冴えないし、気が弱いから」

兎男「兎男一族は、みんな駅や列車に派遣されて働いているしね」

千織「大切なのは兎男さんの気持ちだと思いますよ。夢があるから毎日を頑張れると思いますし」

182:🎏 ◆e.A1wZTEY.:2017/7/10(月) 11:37:20 ID:wxYS1bSIHQ

兎男「そうかな?」

千織「そうですよ。チャレンジしてみて、自分ができることをやりきって…それでもダメだったら、列車のお仕事をすればいいんじゃないんですかね。自分の人生ですから」

兎男「そんなことを言ってくれたのは、千織ちゃんが初めてだよ」

千織「そうなんですか?」

兎男「うん。俺…みんなから変わってるって言われるんだ。だから自信なくしちゃって」

千織「変じゃないですよ!私は応援してます」

兎男「あ、ありがとう… 千織ちゃんのおかげで、何か元気が出てきたよ」

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