乗客Yx1
戸野 千織(トノ チオリ)
目が覚めたらそこは、走る列車の中だった
136: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 23:34:08 ID:spmolqlGjY
――――――
ブリアン「――だめだね。まだホコリが残ってる」
千織「えぇ」
ブリアン「ちゃんと隅から隅まで掃くんだよ。やりなおし」
千織「は、はい…」
いそいそと貨物車両の掃除をする
ブリアンは意外と掃除には厳しいようだ
ブリアン「魚人の家があるササノコ駅まであと3時間。それまでに雑巾がけまで終わらせてね」
千織「はい」
137: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 23:40:35 ID:spmolqlGjY
車掌「正確には3時間15分だ」
千織「車掌さん」
貨物車両に車掌が入ってきた
車掌「ササノコ駅を終点とした後は、直接魚人の家まで列車を走らせる」
千織「え…」
ブリアン「えぇえ?線路のないところ走るつもり?」
車掌「あぁ」
ブリアン「やめなよ〜。揺れが酷いし精力も消費しちゃう」
138: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 23:43:01 ID:spmolqlGjY
車掌「何かあったとき、近くに列車があったほうがいいだろう」
千織「そ、そんなことが可能なんですか」
車掌「可能だ」
千織「そもそも、どうやって魚人の家を見つけるんですか?」
車掌「昨日魚人から回収した携帯機器から、住所はわかった」
千織「な、なるほど…」
139: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 23:51:48 ID:spmolqlGjY
千織「あ、あの。私が頼んでおいてあれなんですけど、…私にできることありますか?」
車掌「…」
ブリアン「…」
車掌「…そうだな。おととい会った感じ、君の連れは頭を使わない猿だった。ここでまた暴れられても困るから、きちんとなだめるように」
ブリアン「ブッ」
千織「そっ、それは…!確かに沖くんは、考えるより先に行動しちゃうタイプですけど」 アセアセ
千織「でもそれは、私のことを心配してくれての行動だったので」
140: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 23:55:01 ID:spmolqlGjY
車掌「君を守りたいならなおさら、迂闊な行動は逆効果だろう」
千織「う…」
ブリアン「車掌から見たら、人間なんてみんな迂闊な行動しかしないよ」 ケラケラ
ブリアン「千織、そんな男やめて車掌に乗り換えたら?」
千織「はっ…!?」
ブリアン「冷静沈着、頭脳明晰。しかもほら、顔も見てよ、悪くないでしょ」
141: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/24(水) 23:57:13 ID:spmolqlGjY
ヒョイ、と車掌の頭の上にのって帽子をとろうとする
車掌「ブリアン」
千織「も、もしかして誤解してます!? 私、沖くんとそういう関係じゃないです」
車掌「違うのか」
ブリアン「お互いすごい心配しあってるから、そうだと思ったよねぇ」
千織「た、ただの友達です…」 カアァ
142: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:24:53 ID:spmolqlGjY
――約3時間後
列車は、終点ササノコ駅に到着した
客は皆降り、列車内は車掌とブリアンと千織のみになった
車掌「――さて、行くか」
そう言うと、列車は線路を外れ、ガタゴトと土手を走り始めた
千織「せ、線路がないのにどうやって走ってるんですか」
車掌「線路がないわけではない。一時的に線路を錬成して敷いている」
千織「す、すごいですね…」
143: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:27:00 ID:spmolqlGjY
およそ10分後
列車は数軒の家が立地する場所に着いた
千織「この中にあの魚人の家が…?」
車掌「おそらく一番奥の家だ」
車掌「密集した住宅地じゃなくてよかったな。騒ぎが大きくならなくて済む」
千織「はい」
車掌「私が降りて様子をみてくる」
千織「わ、わかりました」
144: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:29:01 ID:spmolqlGjY
車掌「ブリアン。お前は千織のそばにいろ」
ブリアン「はーい」
千織「…」
千織(沖くん、無事でいてね…)
車掌のオレオレ詐欺電話のおかげで、恭太は食べられるのを阻止されたはずだ
魚人の母親が約束を守っていれば、生きているはず
不安になりながら、手を握り締めた
145: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:32:47 ID:spmolqlGjY
車掌「――…!」
窓から家の中を覗くと、想定外の光景が広がっていた
家の中はテーブルがひっくりかえり、皿が割れ、酷い荒れようだった
車掌「…」 ガチャ
車掌は扉をあけ、家に侵入した
人の気配はない
静まりかえった家のなかをすすむと、
車掌「…!」
魚人母の死体が転がっていた
146: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:36:59 ID:spmolqlGjY
車掌「…ちっ」
車掌は家の中を歩き回り、恭太の姿を探した
しかし、どこにも見当たらない
車掌(…人間の臭いは残っているが、もうここには気配がない)
最悪の事態が頭によぎる
魚人以外の何者かに、連れ去られた可能性が高い
車掌「いったい誰が…」
この地区の一帯に住んでいるのは魚人だ
他の魚人が希少な獲物である人間を横取りした可能性はあるが――
147: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/25(木) 21:38:44 ID:spmolqlGjY
車掌「…」
再び、死んでいる魚人母をみやった
車掌「…銃?」
魚人母の胸に撃たれた銃傷に気づく
車掌(…魚人が銃をもっているはずがない)
では、いったい誰が
車掌「…」
しばし考えると、車掌は列車へと足を戻した
148: 名無しさん@読者の声:2017/5/25(木) 22:19:25 ID:gF9oOjiWTU
支援
149: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:46:07 ID:spmolqlGjY
>>148
支援ありがとうございます〜〜!
嬉しさのあまり深夜の追加更新します(*- -)(*_ _)ペコリ
150: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:47:42 ID:spmolqlGjY
―――目が覚めると、白い天井が見えた
「――恭太!」
恭太「…」
恭太母「あぁ良かった目が覚めて…!お父さん、お医者さん呼んできて!」
バタバタと騒がしい音がする
恭太(…ここ、どこだ…?)
まわりを見渡すと、どうやら病院のようだった
恭太(なんで、病院に…)
151: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:50:39 ID:spmolqlGjY
医者「――うん。特に異常はないですよ。念のため今日明日くらいは安静にね」
恭太母「本当ですか…!ありがとうございます」
医者「その点滴が終わったら、帰っていいですよ」
恭太母「はい」
母と一緒に頭を下げる
正直まったく状況把握ができていないのだが、どうやら俺は、まる1日行方不明+1日意識不明というトンデモ状況に陥っていたらしい
152: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:53:03 ID:spmolqlGjY
恭太母「あんた全然帰ってこないと思ってたら、家の前でパンツ1枚で倒れてるのよ。お母さんびっくりしちゃったわ」
恭太母「それで全然目を覚まさないでしょ。死んじゃったのかと思って、もう…」 シクシク
恭太「そうだったの…」
恭太母「あんた、全然覚えてないわけ?」
恭太「う、うん…」
思い出せない
ここ数日何があったのか、まったく
153: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 01:56:29 ID:spmolqlGjY
恭太母「あんた半裸だったけど、財布とかは無事だったしねえ」
恭太母「誰かに誘拐されたとか、集団暴行にあったとか、そんなことはないのね?」
恭太「うん、たぶん…」
身体に小さな外傷はあるものの、骨折などはしていない
恭太母「それならいいけど…気をつけてよね」
恭太「うん、ごめん心配かけて」
恭太母「千織ちゃんのことは?何か知らない?」
恭太「ちおちゃん?なんで?」
154: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 02:00:49 ID:spmolqlGjY
恭太母「千織ちゃんも、あんたと同じ日に行方不明になって…しかもまだ、帰ってきてないのよ」
恭太「…え…?」
恭太「ちょっと待って、それ、どういう、」
恭太母「警察も捜索しているけど、見つからないの…無事だといいんだけど」
恭太「っ、なんだよそれ!ちおちゃんに何があったんだよ!」
恭太母「そんなこと、母さんに言われても」
恭太母「多分、これから警察の人があんたに事情聴取にくるよ。同じ日から行方不明だったから」
155: ◆e.A1wZTEY.:2017/5/26(金) 02:03:27 ID:spmolqlGjY
恭太「…! そんな…」
恭太「俺、何も覚えてないし知らない」
恭太「どうしよう母さん、俺、何か悪いことしちゃったのかな、」
恭太「ちおちゃんに何かあったら俺…!」
恭太母「恭太、落ち着いて。大丈夫、大丈夫よ」
息子を抱きしめ、頭をなでる
恭太母「お母さんはあんたが無事で本当にうれしいのよ。今は自分のことだけ考えていなさい」
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