あらすじ
永遠の命。その鍵となる救い主、カロル。
欲望に目覚めた西の国。狂気は果てしなく蠢く
遂に勃発してしまった戦争
強大な西の国に立ち向かうべく王国、東国、南国は6ヶ国同盟から成る平和協定を破り、3国連合軍を結成する
南国は多大な犠牲を払い、国王ローレンの命と引き換えに西帝国軍の主力を削った
東国は張り巡らされた罠を果敢に打破するも圧倒的な力の前に粉砕される
敵地にて孤軍となった王国軍
総指揮官フィクサーの戦略采配が功を奏し、帝都本拠地の制圧を完了した
一方で吉報を待ち、国内に留まる王国の国王ヒメ
迫り来る侵略の魔の手を退ける為、東国のホビット族と手を結ぶ
彼らによって明かされた最後の真実
アピシナの大樹の成り立ち
かつて癒しの力は破滅を導いた
人もホビットも共通する願い
永遠の命が野心をくすぐる
穢れなき無垢な愛情は火種となって注がれ、混沌とした世界を象徴するように大樹を巡る争いは止まなかった
忘れ去られた無残な過去
300年もの月日を経てなお繰り返される歴史
誰も止めることは叶わない
友情を取るか、安寧を取るか
時を追う毎に取捨選択を強いられる
捨てていいものなど一つもないのに
202: ◆WEmWDvOgzo:2020/3/19(木) 23:08:11 ID:9xIGFRrFjE
〜〜〜2日後〜〜〜
━━━西の領土・聖堂(廊下)━━━
ヒソヒソ ヒソヒソ
「ねぇ聞いた?」
「もちろん!」
「驚いたわよねぇ、まさか司祭様が……」
『あんな淫売だったなんて!』
「あたし知ってるのよ。司祭様ったらクライリー様だけでなくて以前の大臣とも関係があったの」
「やだぁ!そうなのぉ!?」
「誰とでもするのね。いやらしい」
「誰とでもなんて滅相もない。地位を得る方とだけよ〜?」ニヤッ
「不潔だわ!ひょっとしたら国王陛下から懇意にされてるのも……?」
「十分考えられるわね。特に陛下はまだ幼く純情な男児……慰めて籠絡するのなんて簡単でしょう」
「ふふ!範囲まで広いのね。ゾッとしちゃう」クスクス
203: ◆WEmWDvOgzo:2020/3/19(木) 23:14:07 ID:9xIGFRrFjE
「だけど……まずいんじゃない?このところ悪い噂ばかりで信者からの苦情も絶えないし、お布施もガクッと減ってるらしいよ?」
「それならまだしも改宗するって言い出す人達もいるとか?」
「え?」
「知らないの?最近、新しい宗派が立ち上がってるの」
「あ!あたし知ってるわよ?外で紙を寄越されたの!たしかぁ……」
「聖教新聞でしょ?」
「そう!それ!」
「へぇ……なんていう宗派なの?」
「えーと……名前は?」
「サイレンス大聖団、でしょ?」
「そうそう!よく覚えてんね!ところで、それって何を教えてるの?」
「さぁ?ただあの大聖団で支給してる修道着のデザインがすごくいいって評判なのよ」
「なにそれ気になる!」
「聖教新聞読まなかったの?」
「うん。あんまり興味もなかったから」
「なんでも担当する役目や位、それぞれに異なる衣装が用意されていて。
しかも一流のデザイナーら全面協力の上で作られた高級ブランドモデルの修道着がタダで支給されるんですって?」
「すご〜い!」
「ああ〜……この白地に青の刺繍が入った服も嫌いじゃないけど一種類だけっていうのは気になってた〜」
「ふふ。いいじゃない。改宗しちゃえば」
「え?」
「服、欲しくないの?新しい物を着なくちゃ異性に言い寄られないわよ?」
「で、でも……そんな簡単に……」
「そんなのあたし達の自由よ。それに……司祭様だって素敵なドレスを着て社交場にいたんだもの。なにが悪いの?」
「そう言われると、そうかも……」
『改宗、しちゃう?』
204: 名無しさん@読者の声:2020/3/19(木) 23:20:33 ID:9xIGFRrFjE
ーーー王都(噴水広場)ーーー
ワァーワァー ワァーワァー
聖団員1「はいはい押さない押さない!まだまだ新聞はありますからね!」バサッ
客1「1枚!」
客2「私も!」
客3「俺もだ!」
町娘1「サイレンス大聖団の聖教新聞読んだ?」
町娘2「うん、喜劇役者のリオーナが入信したってね。ファンだから嬉しい!」
青年1「はは!どうだ!この団服!イカしてるだろ!これでオレも聖団員の仲間入りだ!」ファサッ
青年2「いいな!俺も早く入りたいなぁ。入信希望者が多すぎてなかなか受け付けてもらえないよ」
聖団員1「さぁ、そこのあなたも!どうぞお手に取ってください!真実が書かれていますよ!」バサッ
老人1「うぅむ……そんなに教団が腐敗しきっとったとはな」ペラッ
老婆1「嫌な世の中になったもんじゃ。くわばらくわばら……」
聖団員1「悲しきかな!我々の信心を裏切った教団や王政から発行される記事は嘘にまみれています!
しかし我々サイレンス大聖団の聖教新聞は権力に屈せず真実を伝えますよぉ!」バサッバサッ
ワァーワァー! ワァーワァー!
205: ◆WEmWDvOgzo:2020/3/19(木) 23:33:54 ID:9xIGFRrFjE
お待たせしてすみませんでした!
また少しずつ書かせていただきます!
自分の執筆環境が以前と変わっていてペースが大幅に落ちるのですがお付き合いいただけましたら幸いですm(_ _)m
206: 名無しさん@読者の声:2020/4/23(木) 17:57:29 ID:LxsVJVnPGM
完結するまで見続けます
コロナで大変な時期ですので、ご自身の健康第一で執筆なさってください!
207: ◆WEmWDvOgzo:2020/5/5(火) 20:30:26 ID:LsHLnxDW2A
>>206
ありがとうございます!
自分の周囲でも影響が出てますが必死に頑張ってます
一緒にこの厳しい現状を乗り切っていきましょう!
208: 名無しさん@読者の声:2020/8/9(日) 00:27:22 ID:MreiM5x5Co
更新来てた!やったーありがとうございます!
クライリーめ…
サイレンス大聖団がとてもきになるなぁ
このようなご時世なので、お身体にはじゅうぶんお気をつけください
焦らず無理せず、作者さんのペースで頑張ってくださいね
209: 名無しさん@読者の声:2020/9/25(金) 20:17:55 ID:AEhVLUs8qo
更新されるまでの間にと思って最初から読み返してるけど、一番最初のスレの>>812のチキチキパンパン噴いたwwwシリアス展開だったのにwww
作者さんのこういうセンス大好きだ!
初登場時はただの駄々っ子だったヒメも、疑うことを知らなかったカロルもぐんぐん成長していってるし、物語の奥行きが深くて凄く考えさせられます
何度でも読み返しては新しい発見あるし、作者さんのこと尊敬してます
210: 東京名無しンピック2021?:2021/8/6(金) 01:44:24 ID:UI6QUue4Pc
やっと追い付いた!
支援
211: 名無しなのよ:2023/8/19(土) 22:29:45 ID:sLEViBNQkQ
支援
212: 名無しなのよ:2023/11/22(水) 15:52:26 ID:u7hIzhSTBs
更新待ってます!しえん
213: 名無しなのよ:2023/12/17(日) 08:09:57 ID:FfqO1ditts
何年だって待ってます
214: ◆WEmWDvOgzo:2023/12/18(月) 22:10:18 ID:hiov.r88ZA
ーーー王都(ハリアンス家の屋敷)ーーー
公爵「どうやら都は賑わっておるようですな」
総局長「はい!それはもう!うちの記事もとんでもない売れ行きで!」ヘコヘコ
公爵「ふふ、庶民というのは噂話が好きなものだ」
総局長「嘘か真かを問う前に感情が先走る生き物ですから!」
公爵「恐ろしいものですよ。私は君にほんの些細な出来事を耳打ちしただけなのだが、いつの間にやら都を揺るがす一大事なんだものなぁ」
総局長「当局のモットーは徹底的な真実の究明です!たとえ不確定だとしても疑惑あれば根掘り葉掘り世間に公表する!これぞ記者魂の賜物ですよ!」
公爵「んぅむ。物は言いようですね」
総局長「ははは!不透明な政治を嫌い、我々記者に報道の自由を与えてくださった国王陛下に感謝を込めて権利を行使しているまでです!」
公爵「まあ持ちつ持たれつといこうじゃありませんかね。記事に困ったらこうして茶を飲みながら私と世間話をしたらいい」
総局長「毎日と伺いたいところです!閣下のお屋敷では良い"茶葉"を使っておられますからね!」ヘラッ
公爵「いつでも来なさい。極上の"茶"でもてなしますよ」ニヤッ
215: ◆WEmWDvOgzo:2023/12/18(月) 22:11:52 ID:hiov.r88ZA
公爵「あぁ、ところで小耳に挟んだのだがね」
総局長「!」バッ
公爵「ふふ、さっそくメモを取り出して熱心なことだ」
総局長「良い茶葉を仕入れられましたか?」ヘラヘラ
公爵「口に合うかは君次第ですが」
総局長「」ゴクリ
公爵「サイレンス大聖団に名だたる有力者らが入信するらしい」
総局長「ほほう?近頃話題の尽きないあの謎の団体ですか」メモメモ
公爵「そこにダィール卿やソメリア卿を中心に貴族が名を連ねるとか」
総局長「ふむふむ!それはスクープですが……」
公爵「香りが足りませんか?」クスッ
総局長「いやぁなにしろ国民は鈍感ですからねぇ。鼻がバカになるくらい強い香りと刺激を求めてるんですよ。人気の役者や豪商たちの中に混じってはその名も霞むでしょうし」ポリポリ
公爵「フッ……ではそこに私の名も並ぶ予定だと言ったら?」
総局長「え!?」
公爵「しかも教皇の座に就くのですよ」ニンマリ
総局長「きょ、教皇ってもしや……サイレンス大聖団は……!?」
公爵「いかにも。私の作った組織ですよ」ニヤニヤ
216: 名無しなのよ:2023/12/18(月) 22:13:11 ID:hiov.r88ZA
総局長「こ、これはまさしく大スクープだ!!」カキカキ
公爵「おっと。待ちなさい」
総局長「」ハッ
公爵「まさか全てを記事にするつもりですか?」
総局長「も、もちろん公爵閣下の作られた組織である事は伏せておきます!」アセアセ
公爵「そうですね。それが良いでしょう」
総局長「題名は教皇に選ばれし神の代理人ハリアンス公爵、私達信徒に説いた福音とは?といった感じでいかがでしょう?」
公爵「構いませんとも。筋書きもお任せしますよ」
総局長「は、はい!考えておきます!」
公爵「さ、今日は茶を切らしてしまいました。また近いうちに仕入れておきましょう」
総局長「分かりました!今日のところはおいとまさせていただきます!いつも美味しい茶をありがとうございます!」ヘコヘコ
公爵「ええ、ではまた」
総局長「失礼します!」
217: 名無しなのよ:2023/12/18(月) 22:14:31 ID:hiov.r88ZA
ーーー王都(噴水広場)ーーー
総局長「……」タバコスパー
ワァーワァーキャーキャー!
女の子1「うちのママがね!サイレンス大せーだんに入れてくれたの!」
女の子2「いいなぁ!うちも入りたーい!」
男の子1「サイレンス大せーだんに入ると月1で馬車で楽しいとこに連れてってくれるんだってよ!」
男の子2「そうなんだー!俺も母ちゃんにお願いしよっかな!」
青年1「やっぱ今どき教団なんか古いよな。サイレンス大聖団に入信しなきゃ流行りに乗り遅れるよ」
青年2「お前流行りで宗派選ぶなよなー」
青年3「まあ実際、教団だって最近はそんな厳しい決め事はないし宗教なんて遊びのサークル感覚で選べばいいんじゃね?」
青年4「王国は一応宗教国家だからな。でもどの宗派にするか選ぶ権利は俺たちにあるんだ。面白い方にいこうぜ」
青年5「入信はホビット以外なら誰でも可だからな!気楽でいいや!」
老婆1「サイレンス大聖団はわしらのような年寄りにも居場所を与えてくれなさる。若い聖団員の方々も優しくしてくれるし会合が楽しみでしょうがないわい」
老婆2「うちの爺さんもすっかり夢中じゃて」
老人1「おぉ〜サイレンス神さま!なまんだぶなまんだぶ!」
総局長「子供から年寄りまですっかり骨抜きにされてやがる。どこまでも恐ろしいお方だよ……」タバコプカプカ
総局長「(まさか知らない間に俺たち新聞屋まで抱き込んで一大宗教を作ってたとはな。サイレンス大聖団の聖教新聞を扱ってるのはウチだぞ?)」
総局長「(一時期は国王陛下の英雄譚一色だった空気も呑まれ、キナ臭い香りが漂ってきやがった)」
総局長「(こりゃ政府が傾くのも時間の問題かもなぁ)」
総局長「ま、俺は売れる記事が書けりゃなんでもいいけどよ」ジュッ グリグリ
218: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 07:34:09 ID:FfqO1ditts
更新来てた嬉しい
作者さまのペースで無理なく進めていってください
サイレンス大聖団の、というか公爵の手腕が素晴らしすぎて着々と世に広まっていってて怖いですね
219: ◆WEmWDvOgzo:2023/12/19(火) 22:48:03 ID:hiov.r88ZA
ーーー城内(副官室)ーーー
ガチャッ
侍女「コーヒー入りました」
政務官「置いてくれ」
侍女「はい。温かいうちにどうぞ」コトッ
政務官「ありがとう」ズズッ
侍女「……お連れ様はホットミルクでよろしかったですか?」コトッ
宣教師「ええ、ありがとうございます……」
侍女「いえ、では失礼します」ペコリ
バタンッ
220: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:48:49 ID:hiov.r88ZA
政務官「知っているか?コーヒーというのは南の国が原産らしい」
宣教師「そうですか……」
政務官「我が王国領でも南には豆農家があり、栽培が盛んだそうだ」
宣教師「なるほど……」
政務官「私はコーヒーが好きでな。自分で配合した豆を挽いて味わうのがもっぱらの日課なんだ」
宣教師「そうなんですね……」
政務官「職業病とも言われるがね。この仕事はなにより睡魔との戦いでもある」
宣教師「はあ……」
政務官「人間、集中力を切らせば終わりだ。我々のような人種は特に」ジロッ
宣教師「……」
政務官「我々役人が眠気を押して働く最中にあなたは貴族との交流を嗜んでいたらしい」
宣教師「……はい」
政務官「美味かったか?」
宣教師「……」
政務官「公爵と飲む酒は美味かったのかと聞いているんだ!?」ダンッ
宣教師「」ビクッ
221: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:49:37 ID:hiov.r88ZA
政務官「なぜあんな真似をした……!?」
宣教師「……」
政務官「私が公爵派に忍ばせた間者から夜会に司祭が出席していると聞いた時は耳を疑ったぞ」
宣教師「……」
政務官「しかも公爵や太后陛下に接触し、潰れるまで酒に溺れていたと」
宣教師「……」
政務官「私がいち早く手配し、身柄を保護したからよかったものの万が一王都の民の前に変わらず姿を現していたら今頃は暴動になっていただろう」
宣教師「恐れ入ります……」
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