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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編その3】
[8] -25 -50 

1:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/29(土) 21:15:11 ID:.RxhzfPc96
あらすじ

永遠の命。その鍵となる救い主、カロル。
欲望に目覚めた西の国。狂気は果てしなく蠢く

遂に勃発してしまった戦争
強大な西の国に立ち向かうべく王国、東国、南国は6ヶ国同盟から成る平和協定を破り、3国連合軍を結成する

南国は多大な犠牲を払い、国王ローレンの命と引き換えに西帝国軍の主力を削った
東国は張り巡らされた罠を果敢に打破するも圧倒的な力の前に粉砕される

敵地にて孤軍となった王国軍
総指揮官フィクサーの戦略采配が功を奏し、帝都本拠地の制圧を完了した

一方で吉報を待ち、国内に留まる王国の国王ヒメ
迫り来る侵略の魔の手を退ける為、東国のホビット族と手を結ぶ
彼らによって明かされた最後の真実
アピシナの大樹の成り立ち

かつて癒しの力は破滅を導いた
人もホビットも共通する願い
永遠の命が野心をくすぐる

穢れなき無垢な愛情は火種となって注がれ、混沌とした世界を象徴するように大樹を巡る争いは止まなかった

忘れ去られた無残な過去
300年もの月日を経てなお繰り返される歴史
誰も止めることは叶わない

友情を取るか、安寧を取るか
時を追う毎に取捨選択を強いられる
捨てていいものなど一つもないのに


101:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:18:51 ID:gQj8L.R5T.
宣教師「ではそろそろ私は戻りますね」

カロル「うん!来てくれてありがとう!」ニコニコ

宣教師「……」

カロル「……?どうしたの?」キョトン

宣教師「いえ…ではまた?」ニコッ

カロル「えへへ!またね!」フリフリ

宣教師「」ガチャッ

バタンッ

カロル「……っ」キュッ
102:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:19:52 ID:gQj8L.R5T.
―――城内(通路)―――

宣教師「」スタスタ

役人1「今夜もまたやりなさるそうだ」

役人2「またか。毎晩、毎晩、豪遊三昧…やや度しがたいものがあるな」

宣教師「」ピクッ

役人1「お誘いが来ているが…どうする?」

役人2「断ろうにもあまり無下には出来んしな…」

宣教師「」ソソーッ

役人1「だよな。はぁ…それどころではないがお家柄、私は公爵様に頭が上がらん」

役人2「俺もだ…。このところパーティーに付き合わされ、仕事が追い付かんよ」

役人1「ネバルの一派は平民出身だからいいよな。お誘いも来ないし、陛下に睨まれる事もない」

役人2「国王様は大の貴族嫌いだからな…。一時は積極的にパーティーに出席していたが関係は改善されていないらしい」

役人1「実際、役人の殆どは貴族出身だ。公爵様には逆らえんし、陛下からは嫌われる。陛下も立派な貴族だというのに」

役人2「まぁそう言うな。最初こそ快く思わなかったが陛下の志には胸を打たれる部分もある。真面目に働いてる者にはとても良くしてださるしな」

役人1「それにしたってやりにくい。陛下は貴族を押さえつけ過ぎたんだ。早い内から懐柔しておくべきだったんだよ」

役人2「…それが最も望ましかったがな」

役人1「大后様まで夜会に入り浸って引き抜かれる役人も少なくないんだ。政務官一人のお力ではいい加減……」

役人2「私とて…今の貴族に染まりたくはない」

役人1「…リルラ様はこの城で誰よりも現実的な政策を練られている。それなのに陛下は…いつになったら分かってくださるんだ!」

役人2「行き先は同じといえ理想を追う陛下と現実に抗うリルラ様の手段は別天地だ。我々は…どう動いたらよいのか」

役人1「くそっ!このままじゃ王族派は…」

宣教師「……」
103:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:21:38 ID:gQj8L.R5T.
―――城下町裏通り(バックヤード)―――

宣教師「ただいま確認してきたところ、この掲示板に書かれている内容は全く信憑性のないデマだと判明しました」

裏通りのホビット1「や、やっぱり…」ホッ

裏通りのホビット2「そうだと思ってたよ!」

裏通りのホビット3「まったくひどいイタズラだよな」

裏通りのホビット4「疑ってすみませんでした!司祭様!」

宣教師「お気になさらず?疑いが晴れたなら、それでいいんです」ニコッ

バラバラ バラバラ

司教「解決して何よりですな。城下の騒ぎも憲兵が駆けつけ、説明を行ったそうで」

宣教師「そうですか…」

司教「しかし誰がこのような…イタズラにしてはタチの悪い」

宣教師「単なる悪ふざけではないかもしれませんよ」

司教「は?」
104:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:22:21 ID:gQj8L.R5T.
宣教師「どうやら城内にも不穏な気配が漂っているようです」

司教「ふ、不穏な気配とは…?」

宣教師「カロ…救い主が軟禁状態にありました」

司教「軟禁ですと!?し、しかし国王様は親友関係にあるのでは!?」

宣教師「どうなっているかは分かりません。もしかしたら城内で貴族勢が何か働きかけている可能性もあります」

司教「…な、なぜ今になって」

宣教師「広場に出回っていた噂は北国と戦争をする、というものでしたね」

司教「は、はい…。呆れたことに民衆は浮かれ上がっておりましたな」

宣教師「もし噂の出所が貴族だとするなら…北国との間にただならぬやりとりがあったと見るのが筋でしょう」

司教「も、もしや…また…!?」

宣教師「調べる必要がありそうですね」スタスタ

司教「どちらへ!?」スタスタ

宣教師「一度、教会に戻って予定を立て直します」

司教「し、しかし活動は…」

宣教師「…いくつかは後回しにしてしまいますがやむを得ません」

司教「なぜこうも立て続けに…王国は平和を勝ち取ったのではなかったのか…!?」

宣教師「平和とは常に脅威に立ち向かう苦行なのかもしれませんね」

司教「くぅ…!」

宣教師「しかし逆を言えば…私達は平和を形にしているという事です」

司教「……!」

宣教師「まだまだ希望はありますよ。未来を明るくするのは私達の今ですからね」ニコッ

司教「…お供致します!」コクッ
105:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:23:40 ID:gQj8L.R5T.
―――南の国(議場)―――

顧問官「……」ペラッ

高官1「」ドキドキ

顧問官「…ふむ」バサッ

高官1「い、いかかでございましょうか…?」

顧問官「いかが?」ジッ

高官1「っ…!」ゴクリ

顧問官「ふん…」

高官1「ど、どうか!もう一度、共に!我々は潔白であると証明していただきたい!」

顧問官「……」

高官1「確かに我々は禁を犯したかもしれませぬ!しかしそれは正当な理由あってのこと!此度の戦争は正義を通した結果であると理解頂きましょうぞ!」

顧問官「正義…」

高官1「北国の要求は明らかに倫理を逸脱しております!各々に正義を見出した連合軍の誇るべき勝利をこのような形で汚されてもよいのですか!?」

顧問官「声ばかり大きくしているが言いたい事はまるで聞き取れん」

高官1「!?」
106:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:27:16 ID:gQj8L.R5T.
顧問官「正義も悪もない。この論争に答えを問えるのは主導権を握った者のみだ」

高官1「は…!?」

顧問官「そちらの国王が我らを掻き乱してくれたおかげで南の国はどうなったと思う?」

高官1「こ、国王を…失われました」

顧問官「そうだ。それだけではない。本来、王位に就くべきであったラフテン様も討ち取られ、今も玉座は空席となっておる」

高官1「し、しかし…ローレン様もご納得の上で陛下に望みを託されたのでは」

顧問官「だからなんだ?」ジロッ

高官1「」ビクッ

顧問官「お主らは我らの大敗をよそに大勝利を挙げ、浮かれておっただろうが…こちらは空席となった玉座を巡って混沌の極みとなっておるのだぞ?」

高官1「も、申し訳ない…」

顧問官「せめて王の血筋を立てるべく候補を探しているが…しきたりに則って覇を争った王族には正統なる王位を持つ眷属がおらん」

高官1「……」オロオロ

顧問官「長らく先代をお支えして参った私が代理を務め、どうにか秩序を保ってみせているが…もはや崩壊の時は近い」

高官1「崩壊…ですと?」

顧問官「このまま行けば国を維持する事が出来なくなる」

高官1「……!?」ギョギョッ

顧問官「だからこそ私は北国に下る道を選んだ」

高官1「そ、それは…困りまするぞ!」アセアセ

顧問官「……」

高官1「ど、どうか!どうか今一度お考え直しを!?」

顧問官「ラフテン様によって斬られた私はお二方の覇権争いを見届ける事が叶わなかった」

高官1「……!」
107:🎏 投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/19(金) 22:28:24 ID:mpOxahS5ac
顧問官「あの時の事が今でも心残りだ。私は何をしてでもローレン様を排除し、ラフテン様を王位に就かせるべきだった」

高官1「ば、バカな!ラフテン王子は私欲にまみれた野心家と聞き及んでおります!何より長年、王家に仕えてきた貴方をなんの躊躇いもなく切り捨てたのですぞ!?」

顧問官「南国は代々王位争いに勝ち残った王を奉り、しきたりを守る事で優秀な国王を輩出してきた」

高官1「……!?」

顧問官「王国が首を突っ込み、馬鹿正直だけが取り柄の国王に代わった途端、この有り様だ」

高官1「ろ、ローレン様は最期まで立派に戦い抜いたではありませぬか!?」

顧問官「お主らにとっては英雄でも…南国にしてみれば愚か者でしかないのだよ」ギリッ

高官1「お、愚か者…!?」

顧問官「幸いにも先代が産ませた姫君は健在であらせられる。姫には北国の王子と婚約を交わし、北国の姫となっていただく」

高官1「お、おま…お待ちください!」アセアセ

顧問官「我らはもう…ローレン様のような愚を犯す気はない。帰って国王にそう伝えるのだな」

高官1「そ、そう結論付けるのは早計!こちらの話を…!?」ガクガク

顧問官「…忘れておるようだが」

高官1「わ、わすれ…!?」

顧問官「西国から勝ち取った領地を南国に壌土する。その条件でローレン陛下は連合を承諾された」

高官1「」ハッ

顧問官「おめおめと反乱軍などに帝都を引き渡されたのでは取り入りようもない。先に約束を反故にしてくれたのは貴様らの方だ」

高官1「そ、それは…やむにやまれず」モゴモゴ

顧問官「失せよ。二度と南国の地を踏んでくれるな」

高官1「」ブルッ
108:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:19:23 ID:H.1URhAHDs
〜〜〜朝〜〜〜

―――東の国(議場)―――

東の大臣「調べによると北国は我々を真似て三国連合を結成したようだ」

東の騎士「西の国ならいざ知らず国力も弱まり、規模も小さい我が国を相手にか。買い被られたものだな」

酋長「ふん!人間ごときが束になろうと関係ないわ。儂らは儂らでやるだけだ」

ルイ「もう!お爺ちゃんったら、またそんな事言って!」

東の大臣「実に頼もしいお言葉だが、そちらはいかほどの手勢で臨まれるおつもりか?」

酋長「13万は集められるだろうな」

東の大臣「13万!?」

東の騎士「さ、先の戦より多いのではござらぬか!?」

酋長「あれから各地に潜んでいた同族が移住を申し出てきてな。多部族を従え、我々の勢力も一層堅固になったわい」

ルイ「ウチらが国を作るのも噂になってたみたい!でもおかげで今の里じゃパンパンなんだよね…」

東の大臣「(ほ、本当にいいのだろうか…。今は共闘関係にあるが、このまま勢力を拡大され続ければ…)」

東の騎士「…余計な考えはなさいますな。疑惑は決裂に結び付く」コショコショ

東の大臣「う、うむ…そうですな」コホンッ

酋長「どうした?こそこそと気色の悪い?」

東の大臣「い、いえ、失敬…」
109:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:20:56 ID:H.1URhAHDs
東の騎士「向こう方の戦力はいかほどと数えられる?」

東の大臣「…低く見積もっても20万単位は」

東の騎士「ふむ。難しいな」

酋長「たった7万の違いだろうが?恐れるに足らずだ!」

東の騎士「(…ほ、本気で言っておるのだろうか)」アセアセ

酋長「そうと決まれば戦支度だ!里に戻るぞ、ルイ!」

ルイ「お、お爺ちゃん!気が早いよ!」アセアセ

酋長「バカモン!善は急げと言うだろうが!」

ルイ「い、急がば回れとも言うし…」

酋長「なぁにぃ〜!?そんな腑抜けた御託を並べるのはどこのどいつだ!?」

ルイ「し、知らないよぉ!」

東の大臣「ほ、本当に彼らを信じていいのか?」ヒクヒク

東の騎士「い、いい…筈だ。おそらくは…」ヒクヒク
110:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:24:02 ID:LXHCKgwcFk
東の大臣「おっと…大事なことを忘れるところだった。先日に王国の使者が参られ、王妃様に宛てた書状が届いた」

東の騎士「王国…!」

ルイ「ヒメからってこと!?やっぱり助けてくれんの!?」パァァ

東の大臣「…いや、協議を持ち掛けてきた。これ以上の争いを続ける意思はないのだろう」

ルイ「え!?そんなぁ!ウチらだって協力してあげたじゃんか!」

酋長「チッ!腰抜けが…!やる気のない輩の言葉に耳を傾ける意味などないわ!」

東の大臣「あちらも事情があるのですから仕方ないでしょう」

東の騎士「…王妃は読まれておるのか?」

東の大臣「無論だ…。返事をする気はないようだがな」

東の騎士「左様でござるか…」

東の大臣「…とにかく我々は速やかに拠点への配置を済ませなければな。
一ヶ所に充てられる兵が極端に少なく、それだけに守りが重要となる」

酋長「何が守りだ。狩りに守りもクソもあるまい。これだから人間は!」

東の大臣「(噛み合わん…彼らとは形だけの共闘になりそうだな。あまりあてにはしない方がよいか)」

ルイ「ま!守りはともかく待ちは大事だよね」

東の騎士「待ち?」

ルイ「そ!ただ闇雲に追っかけるだけじゃ獲物にありつけないし、その為にウチらは罠を張るの!」

酋長「ただ数を集め、悠長に待っているだけでは格好の標的よ。
城を持たぬ儂らホビットにとって山に聳える木々や川は防壁も同じ。それらを最大限に活かす工夫が罠だ」

東の騎士「なるほど…して、どのように?」

ルイ「山と森なら任せてよ!人っ子一人寄せ付けないから!」

東の大臣「うーむ。その確証が得られるなら…我が国の地形を察するに国土の7割を防衛出来ることになりますが」

酋長「土地によって生え揃う樹木も水源の出入りも幾重に異なる。うぬらの持つ情報を全て差し出し、早急に調査せい」

東の大臣「(もしも可能だとしたら何よりありがたい話だが…地形情報を渡すということはホビット族に手の内をさらけ出してしまう事を意味する)」

東の騎士「(迷っておられるな。やはり大臣殿はまだホビット族を信用しきれぬか)」

東の大臣「(罠を張るには我が領の山々に手を掛け、拠点を構えさせなければならない。頼らざるを得ない状況と言えども、それはさすがにリスクが高すぎる…)」

東の騎士「(この苦境を乗り切るには団結が不可欠…まず互いの猜疑心を取り払わねば戦いにすらならん…。しかし大臣殿も酋長も譲れる立場ではなかろうしな…)」
111:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:27:03 ID:H.1URhAHDs
酋長「とっととカタを着けるぞ。ルイ!里の者を呼びつけろ!」

ルイ「あいあいさ〜!」

東の大臣「お待ちください」

東の騎士「!?」

東の大臣「その前に一つ約束していただきたい」

酋長「…なんだ、人間」ギロッ

東の大臣「そちらとの共闘を結ぶに当たり、我々は情報を差し出すばかり。それでは後々の不安が拭えません」

酋長「だったら白紙に戻すまでだ。誰もうぬらなどあてにしとらん」

東の大臣「っ…せめて保証してほしいのです。あなた方が裏切らないという絶対的な確信が」

酋長「裏切るもクソも…ハナから味方ではなかろうが?」

東の大臣「それでしたら我が領は明け渡せません!」

酋長「はぁ…!?」

東の大臣「ひとまずのところはそちらの里から200名ほど人質を頂戴したい。あくまでも信用を確かめる為の一時的措置です」

酋長「」ビキッ

東の騎士「だ、大臣殿!」アセアセ

東の大臣「戦いに打ち勝ったとしても、これでは戦後また国土を略奪されかねん!だいたいにして不平等だ!」

東の騎士「不平等ではござらぬ!某らは国を護る為に今出来る最善を提供し、彼らは力を以て防衛に尽くすのでござるぞ!」

東の大臣「黙れ!ブルードル陛下も宰相殿も倒れてしまった今、この国を護れるのは私達しかいないのだ…!」

東の騎士「しからば発言を慎重になされよ!決別しては元も子もあるまいに!?」

酋長「いぃぃや…よい」

東の騎士「!」

酋長「回りくどいのは好まん…。王妃の部屋に案内せい…!」ビキッビキッ

東の騎士「!!?」ギョギョッ

ルイ「や、ヤバっ!お爺ちゃんぶちギレてる!!」アワアワ
112:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:29:01 ID:H.1URhAHDs
東の大臣「み、ミリア様に何をされるおつもりか!」

酋長「知れたこと!ごちゃごちゃと能書き垂れる人間など邪魔にしかならんわ!頭からカチ割ってやる!!」

東の騎士「お待ちあれ!今一度!今一度話し合おうではござらぬか!」アセアセ

酋長「くだらん!時間の無駄だ!」

ルイ「お、落ち着こ?ね?落ち着こ?やっぱりウチらだけってのも寂しいじゃん!?」アセアセ

酋長「あぁん!?」ギロッ

ルイ「あ、はい」スンッ

東の大臣「とうとう本性を表したな!ホビット族が我々と共闘する筈がなかったのだ!」

酋長「たわけぇ!!うぬらが勝手にほざいたんだろうがぁ!!儂は誰の指図も受けんわい!」

東の騎士「(くっ…どうしたものか!両者共に主張を覆す気がないでは…!)」

ルイ「(あっちゃ〜。こうなったら、もうダメだわ!お爺ちゃん、一回言い出したら絶対に曲げないし!)」

東の騎士「(まさに水と油…ヒメ殿もよくこの二つの陣営を結び付けたものよ)」

ルイ「(ヒメとか宣教師はすっごい上手にやってくれたんだけど…ウチらじゃどうにも)」

東の騎士&ルイ「(誰か…なんとかしてくれる誰かは!?)」アセアセ

「何事でしょう?」スタスタ

ザワッ

東の大臣「み、ミリア王妃…!?」

酋長「…出てきよったなぁ!」ギロッ
113:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:30:30 ID:H.1URhAHDs
ミリア「あら、ルイちゃん!いらしてたの?」パァァ

ルイ「え、えっと…まぁ」オロオロ

ミリア「この前、頂いたリーフのブレスレット使ってますのよ?どう?似合うかしら?」スッ

ルイ「う、うん!似合います!似合いますんですけど…あの…今はちょっと取り込み中?」ヒクヒク

ミリア「? なにかございまして?」キョトン

東の大臣「お離れください!王妃様!?」

ミリア「?」

東の大臣「危害を加えられる前に!」

ミリア「まぁ!酋長さんもいらしてたのね。ご挨拶が遅れて申し訳ございません!」ペコッ

酋長「……!」ギリッ

東の大臣「お、王妃様!」

ミリア「この度は私共に力をお貸しくださり、まことにありがとうございます。
本来はこちらから出向くのが筋ですのに、わざわざ遠路はるばるお越しくださいまして…」ペラペラ

酋長「ん?お、おう…」

東の大臣「……!?」

ミリア「以前の戦でも勇猛果敢に敵方の兵を蹴散らし、王国の方々を救われた活躍ぶりは聞き及んでおります。
地形や道具の持ち味を存分に発揮された緻密な戦略も!とても私共には思い付かない鮮やかなものだったそうで?」

酋長「ま、まぁそうだな?10割方、儂が勝利に導いてやったようなもんだ?」ドヤッ

ルイ「(あ…お爺ちゃんの機嫌がだんだん良くなってる)」

ミリア「今回に置きましても私は何も心配しておりません。酋長さんが手腕を振るってくださるなんて、それ以上の安心はございませんもの!」

酋長「ふん!なかなか分かっとるな?」

ミリア「東の国はホビット族の皆様を信頼しています。私共にお手伝いさせていただける事がありましたら、なんなりと仰せ付けくださいましね!」ニコッ

酋長「わっはっは!よかろう!よかろう!」ゲラゲラ

東の騎士「(酋長殿が笑われた…!)」ハッ

東の大臣「な、なんと軽々しい…!」ワナワナ
114:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/5/27(土) 21:32:26 ID:LXHCKgwcFk
ミリア「あら、このポンチョ!私がルイちゃんに贈ったもの?」マジマジ

ルイ「は、はい!せっかく貰ったんで着てみちゃいました!」ファサッ

ミリア「嬉しい!絶対に似合うと思って選びましたのよ!酋長さんも見てあげて?」

酋長「うぅん?わ、儂はこういうのは分からん!服なんぞ寒さを凌げりゃなんでもよかろうが!」

ミリア「まぁ?そんなことありません!女の子は着飾るものですよ?
ほら、可憐な赤の布地に工夫を凝らした黄色い刺繍が合わさって可愛らしい!」

ルイ「え、えっへへ〜!可愛いなんて?そんな?またまた〜?」デレデレ

東の騎士「(か、完全に手懐けておられるとはさすが王妃様でござる!)」

東の大臣「い、いけませんぞ!そのような者らと馴れ合っては!?」

ミリア「」キッ

東の大臣「」ビクッ

ミリア「あなた達がそんなやりとりをする度に私が執り成しておりますのよ?」ジトー

東の大臣「し、しかし私は…」

ミリア「助けてもらう立場にありながら図々しい要求は控えなさい!敬意を以て信頼を築くのです!」ピシャリ

東の大臣「う……」タジッ

ミリア「私は東の国の代表としてホビット族を愛し、敬い、認めています。あなたはそれでも否定を唱え、協力を拒みますか?」

東の大臣「い、いえ…滅相もございません」シュン

ミリア「ではご相談の邪魔になりますので私はこれで…。お互いにより良い案が出る事を祈ります」ペコッ

東の大臣「しょ、承知致しました…」ズーン

酋長「うむ!全部儂に任せておけ!」ゲラゲラ

東の騎士&ルイ「(丸く収まった…)」ホッ
115:🎏 名無しさん@読者の声:2017/6/15(木) 18:47:01 ID:ssz5K42WmA
東の騎とルイは苦労人だなぁ…二人とも頑張れーp(^-^)q

つ支援
116:🎏 名無しさん@読者の声:2017/6/15(木) 18:48:21 ID:ssz5K42WmA
士落っことしてた
騎士、です東の騎士名前ミスってごめんね…
117:🎏 すみません!遅れた分ガッツリ更新します! ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:43:33 ID:e4mtUywSu.
〜〜〜数週間後〜〜〜

―――王国(議場)―――

高官1「申し訳ありません!!」ドゲザ

政務官「…謝らなくていい。南国の理解を得られなかったのは私の準備不足によるものだ」

高官1「いえ!政務官の責任では…!」プルプル

政務官「そうしていてもラチがあかない。顔を上げ、席に着け」

高官1「〜〜…は、はい!」ガタッ

政務官「東国はどうだ?」

高官2「書状は受け取っていただけましたが…門前払いを受けまして」

政務官「なにも得られなかったのか?」

高官2「同行させた役人達と都を中心に聞き取り調査をしてみましたが芳しい情報は得られませんでした」

政務官「つまりは…開戦間近か」

高官2「はっ…城にホビット族が出入りし、各地の防衛配置も行われているそうで」

政務官「ふぅー…難局だな。正直どちらにも賛同しかねる」

バァンッ!

政務官「」ビクッ

ネバル「た、大変!大変です!」ゼェゼェ

政務官「ネバル…貴様、南の山脈再開拓計画の最中ではないのか!?」

ネバル「そ、それが…すんごい事になって…急いで報告しなきゃと…」ゼェゼェ

政務官「先日のデマ騒動の件であれば貴様から寄越された手紙で確認しているが?」

ネバル「そ、そんなこっちゃねぇです!もっとえんれー事ですだ!」アセアセ

高官3「い、いったい何事だと言うのだ!?」

ネバル「東領の辺境地に…ホビット族の大群が押し寄せてきたって…!」

政務官「なっ…」

高官's「なぁにぃぃいいいいいい!!!!?」ギョギョッ
118:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:45:49 ID:e4mtUywSu.
〜〜〜数日前〜〜〜

―――王国辺境地(国境の山脈)―――

ザザザザザッ

ホビットの若者「へっ!ここが王国さんかい!」

里のホビット1「すっげー!川!草原!林!なんでも揃ってる!」

里のホビット2「ほんとにここもらっちゃっていいのかな!ポルカさん!」

ホビットの若者(ポルカ)「おうともよ!じっちゃんが国王とかいう偉いのに約束させたんだ!」

ホビットの娘「で、でもー…酋長様やルイさんに言わなくていいの?」モジモジ

ポルカ「けっ!んなオドオドすんなよ、コロン!じっちゃんに限って、しち面倒くせぇ事ごちゃごちゃ言ったりしねぇって!」

ホビットの娘(コロン)「でもー…私達、まだお世話になって日が浅いし」モジモジ

ポルカ「だからだろ?新参の俺たちにゃ狩り場も水場も住み処も余っちゃいねぇ。他部族といっしょくたんなって狭苦しい生活させられてよ」

里のホビット1「そうそう!やってらんねぇよな!」

里のホビット2「それもこれも王国やら東の国やらが約束した土地をくれないからだ!」

コロン「でもー…ルイさんは絶対に約束を守ってくれる人たちだから大丈夫って言ってたよ?」モジモジ

里のホビット1「そんなの嘘っぱちだ!」

里のホビット2「人間が約束なんか守るかよ!」

里のホビット3「あのルイにしたって酋長の孫で余裕があるから俺たちなんかどうでもいいと思ってんだ!」

コロン「そうかなー…ルイさん、すごく明るくていいホビットだけどなー…」モジモジ

ポルカ「だー!もういいじゃねーか、こまけぇこたぁ?こんな肥沃な土地を貰えりゃじっちゃんだって大助かりだろうよ!」

コロン「……」モジモジ

ポルカ「心配すんなって?ここまで拡げりゃ俺達どころか他部族まで悠々と生活出来る。そうすりゃみーんな笑顔だ!な?」ポンポン

コロン「う、うん…」モジモジ

ポルカ「へへ!こうやってガッツリ土地拡げて、じっちゃんにも認めてもらってよ!将来はおめぇを酋長の嫁さんにしてやっからな!」ニカッ

コロン「……!」カァァ

ポルカ「まーずは…とっ散らかったとこから片付けてもらわねーとな」ジロッ
119:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:48:02 ID:e4mtUywSu.
〜〜〜現在〜〜〜

―――王宮(議場)―――

高官4「な、何をしに来たんだ!そのホビット共は!?」

ネバル「約束した、土地をもらうって…そればっかりで!」ゼェゼェ

高官2「バカな!南の山脈の一部を明け渡すということで話は着けてあるんじゃないのか!?」

ネバル「そう言ってあるです!だからオイラも視察してたです!」

高官3「なぜだ!伝わっていないのか!?」

ネバル「だーから!オイラにもわかんねーですよ!」

政務官「予定では2ヶ月後には東のホビット族から一部が定住するのだったな」

ネバル「は、はいです!でもなんだか全然分かんなくて!」

高官5「東のホビット族から使者は出てないのか!?」

ネバル「例の北国と一触即発になってからは誰も顔を出さないです!」

高官1「なんでだ!クソォッ!?」ダンッ

政務官「落ち着け!それぞれの下から出払える役人はいないのか!?」

高官1「わ、私共は再度、南国との関係維持を呼び掛ける為、手が空きません!」

高官2「東国の問題に向き合っていく上では私の方で対処するべきなのでしょうが…残念ながらホビット族との交渉手段は持ち合わせていない」

高官3「こっちだって公爵家の圧力で役人たちは悲鳴をあげてますよ…」

高官4「今月に入って6名が引き抜かれ、公爵を後ろ楯に貴族制度の復権を掲げておりますし…毎夜のパーティーに付き合わされて過労で倒れた者も何人か」

高官5「私もだ!国内の協調を強めようと舞踊や絵画、武術の催しに行事の手配と人手が足りん!」

ネバル「お、オイラだってホビット族と特別な繋がりはないですし、陛下の決めた段取りに沿ってやってるだけですだよ!」

政務官「…生憎と私も北国含む三国との問題で余力がない」

ネバル「ど、どうするですか?」
120:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:48:44 ID:e4mtUywSu.
政務官「確か東のホビット族の協力を執り成したのは陛下と司祭だったな」

ネバル「そ、そういえば陛下は…!?」

政務官「…暫く一人にしてほしいと仰せだ。自室で公務を行っておられる」

ネバル「え?こ、ここで議論しないですか?」

高官1「最近の陛下はどうもおかしい…」

高官2「うむ…西国から帰ってきて変わられた」

高官3「このところは妙に苛つかれていて声も掛けられないしな」

高官4「難問が同時多発している、この時にこそ凛々しくあってほしいものだが…」

高官5「あぁ、陛下があれでは我々も気力を削がれるというものだ」

ネバル「(あんなに頼もしかったのに…どうしちゃったですか、陛下?)」シュン

政務官「…教団と憲兵団に連携してもらい、解決を促そう。
苦肉の策だが我々は我々で集中しなければならない問題が山積みだからな」

高官's「ははっ!」ピシッ
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