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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





91: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:37:57 ID:Jn8a761Fdk
男「今日は真にお疲れのおいでのご様子。また日を改めて伺います」クルッ

神娘「…」

神娘「ま、待っ…」

男「えっ?」

神娘「あ〜、えと、そのだな…」

神娘「さ、最近お前の村の調子はどうだ?」

男「…」

男「順調ですよ。作物もしっかり育っていますし」

神娘「お、おう。そうか」

男「もち米も秋には採れます。さすれば餅を搗いてお持ちしますよ」

神娘「それは楽しみにしておいてやろう」

男「そういえば2日前に子が生まれましてございます」

神娘「な、なにっ。お前妻がいるのか」

男「いえ、私の子ではありません。独り身ですし」

神娘「そうか。そうだな。そうに決まっている」

男「そんなに断定されると悲しくなるのですが」
92: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:38:27 ID:Jn8a761Fdk
神娘「お前は女子に好かれそうな雰囲気がせぬ」

男「ぐはっ」

神娘「まあ色欲に溺れるような不埒な奴よりましだろう」

男「確かにその点については同感ですが」

神娘「そういった奴は信用ならぬからな」

男「では、私は信用に足るというわけですか」

神娘「人間自体信用できん」フン

男「望みがありませぬ」ガクン

神娘「そもそも色欲以前にお前はもっと働け。働かぬ奴はもてぬ」

男「おかしいですね、こんなに真面目なのに」

神娘「…もう何度その点に突っ込めばいいのだ」

男「うん、そうだ。世の女性の見る目がないのです。そうに違いない」

神娘「そうやって周りのせいにしていれば楽であろうな」

男「今日はやたらと攻撃的ですね」
93: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:39:19 ID:Jn8a761Fdk
男「しかし、やはり今日の神様は少し変です」

神娘「喧嘩を売っているのか?」

男「いえ、そういったつもりでは…」

男「元気がないだけでなく、村のことを気に掛けてくださるとは。勿論ありがたいのですが」

神娘「気に掛けるなど…そんなつもりはない」

男「何かおありなのでは?お話しいただけませんか」

神娘「…」

神娘「…近頃昔の夢をよく見るのだ」

男「夢、ですか…」

神娘「そうだ。少々思い出したくない事でな。辟易しておる」

男「何かお辛い事があったのでしょうか」

神娘「…うむ」

男「私でよろしければお話をお聞きしますが」

神娘「…ん」

神娘「いや、いい。お前に話しても仕方ない事だ」

男「そうですか」

神娘(いかんな。不意に縋りたくなってしまう)
94: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:52:27 ID:2D9GO7t/YM
神娘「…」ボーッ

男「神様〜」ザッ

神娘「…」ボーッ

男「神様?」

神娘「ん、お、おう。来ていたのか」

男「やはりお疲れのご様子で…」

神娘「い、いや、そうではない。考え事をしていただけだ」

男「はあ…あ、それより神様。また川へ魚を捕りに行って参りました」

神娘「そうか」

男「そうしたらこんなものが網に引っかかりまして」

神娘「ん?」

ビチビチッ

神娘「これは鰻ではないか」

男「はい」

神娘「珍しいものが捕れたな」

男「鰻は疲れに効くと聞きます。神様に召し上がっていただきたくお持ちしました」

神娘「お前…」ジーン

神娘「ふ、ふん。なんだ、気が効くな。たまには褒めてや…」

男「さあ神様、お召し上がりください」グイッ

神娘「踊り食い…だと!?」
95: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:53:30 ID:2D9GO7t/YM
男「神様…ぬるぬるして掴みづらいのですから早く…っ」ビチビチッ

神娘「馬鹿かお前!いったんしまえ!」

男「そ、そんなこと言いましてもこいつが暴れて…」

神娘「褒めようとした矢先に…ええい、近付けるなっ!」

スルッ

男「あっ」

神娘「わわっ!」キャッチ

神娘「きゅ、急にこっちに寄越すな!」

男「神様!今です!」

神娘「今ですじゃない!とにかくしまうから早くその籠を…」

ビチビチッ

神娘「うわわっ!?」スルルッ

男「あっ、神様の服の中に…」

神娘「ちょっ…中で暴れて…っ」

神娘「わははっ!く、くすぐったい!」ジタバタ

男「わあ、絵的にまずい事に」

神娘「お、おいっ!早くこいつを取り出せ!」バタバタ

男「え〜っと…よろしいので?」

神娘「い、いや待て!やはり自分で何とかする!」アセッ

男「無念」チッ
96: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:54:15 ID:2D9GO7t/YM
神娘「…散々な目に遭った」ゲッソリ

男「おいたわしや。不届き者の鰻のせいで…」

神娘「お前のせいだ、愚か者」

男「面目ありません」

神娘「…山神め、何が活き活きだ。こやつが来るたび疲れるだけだ…」ブツブツ

男「えっ、何か言いましたか?」

神娘「独り言だ」

神娘「だいいち、鰻は生では毒があるのだぞ。踊り食いなぞできぬ」

男「そうなのですか」

神娘「本当にわざとやってるんじゃないだろうな、お前」

男「滅相もございません」

男「しかし、そんな毒ごとき神様は大丈夫なのでは?」

神娘「この下界におる間、私の体質はお前たちとさほど変わらぬ」

神娘「毒にあたれば腹も壊すし、怪我もする。まあ流石に死にはせんがな」

男「衝撃の事実」

神娘「不便なものだ、まったく」

神娘「人間に化けねば下界に適応できぬとは…」

男「えっ」

神娘「あっ」
97: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:55:37 ID:2D9GO7t/YM
男「神様のそのお姿は、本来のものではないのですか?」

神娘「しまった…また口を滑らせた」

男「神様」

神娘「ええい、いいか。この程度なら…」

神娘「そうだ。人間の姿を模しているだけだぞ」

男「神様にもそのような能力が」

神娘「神本来の姿では下界におれぬ。天界と環境があまりにも違うからな」

男「興味深い話です」

神娘「またいらぬことを聞かせてしまった。これ以上は話せん」

男「そうですか」

男「ちなみに、人間以外の姿に化ける事も?」

神娘「…言うと思ったわ」

神娘「だが、私にはその能力はない。この人間の姿を保つので精一杯だ」

男「なんだ。残念です」

神娘「狸や狐の類ではないのだぞ」

男「しかし神様の本来のお姿とは如何なるものなのか…」

神娘「人間ごときが目にできるものではない。諦めろ」
98: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:56:31 ID:2D9GO7t/YM
ミーンミンミンミン…

神娘「ん?」

ミーンミンミン…

ジジジ…

神娘「おお、蝉か」

神娘(この声を聞くと夏という感じがする)

神娘(ろくに外に出れぬから、この暑さ以外に夏らしさを感じれなかったからな)

ミーンミンミン

神娘「……」

ミーンミンミン…



……………

『ねぇねぇ神様!これ見て〜!』

「ん?おお、蝉か。よく捕れたな」

『えへへ、すごいでしょ!』

「うむ、すごいぞ。だがもう放してやれ」

『えっ。もったいないよ』

「蝉はお前たちよりずっと短い間しか生きれぬ」

「その間くらいは、自由に飛び回らせてやってほしいのだ」

『むぅ〜…』

「な?」

『…分かった』パッ
99: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:57:07 ID:2D9GO7t/YM
ミーンミン…

『ばいばい、蝉さん!』フリフリ

「よしよし。良い子だ」ナデナデ

『えへへ〜』

『ね、ね、神様って優しい人だよね!』

「ん?優しい…?」

『うん!私、神様みたいな人になる!』

「わはは、そうかそうか。ならばこれからも良い手本にならねばな」

『神様、これからも私たちと遊んでね!』

「ああ。お前たちが望む限り、私はお前たちと共に在る」



「…これからも、共に」





神娘「っ!」ズキッ

ミーンミンミン…

神娘「っ、ふぅ…」

神娘(まただ。また不意に思い出してしまった)

神娘(最近はそのたび、頭や胸が痛む)

神娘「ふふっ、とうとう私もおかしくなり始めたかな?」

ミーンミンミン…
100: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:57:46 ID:2D9GO7t/YM
神娘「…懐かしい気分になるな」

男「小さい頃はよく追いかけたものです」

神娘「そうか」

男「逃げられ際に小水をかけられた事もありました」

神娘「わはは。よくあるな、それは…」




神娘「…ってお前、いつの間に入ってきたのだ」

男「あれ、とっくに気付いておられるかと思いました」

神娘「せっかく何とも言えぬ気分に浸っていたところだったのに」フゥ

男「あっ、どうぞ私にお構いなく」

神娘「またすぐに余計な事を話し出すくせに」

男「そのような野暮な事は致しません」

神娘「ふぅん、それならば少し黙っておれ。というか出ていけ」

男「出ては行きませんが、静かにはしております」

神娘「こやつ……まあいい」
101: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:58:51 ID:2D9GO7t/YM
ミーンミンミンミー…



「……」



ミーンミンミン…



「……」



ミーンミンミン…



ミーンミンミン…





「…なあ」





「はい?」





神娘「お前が本当に静かにしておると気持ちが悪いな」

男「ひどい」
102: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:59:29 ID:2D9GO7t/YM
神娘「いつものように、どうでも良い事をべらべらと喋れ」

男「神様が静かにしろと仰ったのに」

神娘「うるさい。何でもいいから早く…っ」

男「…神様?」

神娘「私の…っ、気を……紛らわせろ…っ」ポロポロ

男「ど、どうかされましたか!?」アセッ

神娘「うぅ…ぐぅぅ…」ポロポロ

男「神様…」



神娘「思い出したくなかったのに…っ」

神娘「忘れたままでいたかったのに…!」ギリッ

神娘「最近になって思い出してしまうのだ…今までお前たちへの嫌悪で包まれていた思い出を…っ」

男「……」

神娘「今になって…!」ポロッ

神娘「何故こうも輝いて見えてしまうのだ…!」ポロポロッ

男「…神様」

男「誰しも抱えた想いに押し潰され、涙が溢れる事はよくあります」

男「私はここにおります故、存分に吐き出してください」

神娘「うぅ…っ、うあぁぁ……」ポロポロ

男「……」
103: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 12:00:50 ID:2D9GO7t/YM
神娘「……」グスッ

男「落ち着かれましたか」

神娘「…見苦しいところを見せた」

男「いえ、そのような」

神娘「最近はよく眠れぬ。少し気が弱っていたようだ」

男「そのような神様も悪くはありませんでした」

神娘「やかましい。すぐに忘れろ」

男「尽力致します」

神娘(だが、もう放ってはおけぬ)

神娘(このままでは回復どころではないからな)

神娘(しかしこの胸にある濃霧のような蟠り、どう晴らせばよいのだ…)



『…機会があればまた私の山にいらっしゃいな』



神娘(…あまり気は進まぬが)

神娘(この事態を引き起こした張本人に、策を講じてもらおうか)

神娘(だが、どうやってあそこまで……)

男「神様?何を思い詰めたお顔を…」

神娘「……」ジーッ

男「えっ、どうされました?私の顔などを見て…」

神娘「…おい、お前」

男「はい?」

神娘「頼みがあるのだが」
104: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:08:00 ID:2D9GO7t/YM
数日後ー

バタバタ…

神娘「……」

男「ふう、神様。準備が整いました」

神娘「そうか。ご苦労」

男「それでは参りましょうか」

神娘「うむ」



男「よっと」オンブ

神娘「…自分で歩けぬ故、文句も言えんがあまり良い心持ちではないな」オブラレ

男「まあまあ、少しの辛抱ですよ」

神娘「しかしお前、細い身体だな。これで力仕事などできるのか?」

男「ははっ、ご心配なく。しっかりやれております」

男「神様こそ軽うございますね」

神娘「ふん。私がこんな華奢な体に化けていて良かったな」

男「そうですね。背中に膨らみも感じられないのが残念ですが」

神娘「…」ギュ−ッ

男「いだだっ!無言で抓らないでください!」
105: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:08:34 ID:2D9GO7t/YM
牛「モー」

神娘「おお、なかなか立派な牛だな」

男「私の村で一番の力持ちです」

神娘「大丈夫だったのか?連れ出して」

男「他にも牛はいますし、私は村の者からも信用されていますから」

神娘「やはりそれが解せぬ」

男「それに、神様の頼みとあれば聞かぬわけには参りません」

神娘「それはありがた……いや、当然だなっ」フンッ

男「では少し狭いですが、後ろの牛車に乗っていただきます。よっと…」モチアゲ

神娘「うむ」トスッ



男「さてと…準備はよろしいですか?」

神娘「おう、出してくれ」

男「はい。行くぞっ」

牛「ンモーッ」

ガラガラ…
106: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:09:10 ID:2D9GO7t/YM
ガラガラッ

神娘「うわわ、揺れるな…」グラグラ

男「申し訳ありません。あのままおぶって行ってもよかったのですが…」

神娘「それは私が勘弁してほしいぞ」

男「となりますと、これしか用意できませんでしたので御容赦ください」

神娘「仕方ない」

男「しかし驚きました。急にあの洞窟から連れ出せ、などと…」

神娘「どうしても行かねばならぬ場所なのだ」

男「それが例の山ですか」

神娘「うむ」

男「場所も知りませんし、どれほどかかるかも分かりませんが…」

神娘「構わぬ。急ぎの旅ではないし、道案内は任せろ」

男「はい。それでは酔わないようお願いします」

神娘「うむ…それは善処する」

神娘(すでに多少危ういが…)ウプ
107: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:09:57 ID:2D9GO7t/YM
ガラガラッ

男「神様」

神娘「ん?」

男「その山には何があるのですか?」

神娘「…仔細は聞くな、と言った筈だ」

男「神様を疑うわけではございませんが…」

神娘「…」

男「得体の知れぬ場所にはあまり行きたくないのが本音でございます」

神娘「途中で気が変わるかもしれんと?」

男「そうは言いませんが…」

神娘「分かったよ、お前の気持ちは分からんでもない」

神娘「案ずるな、古い友人に会いに行くだけだ」

男「なんと。意外にも神様に御友人が…」

神娘「一言多いわ」

男「その方に会えば、神様のお悩みも晴れるのでしょうか?」

神娘「ん…正直分からぬ。頼りにはなるが」

神娘「少なくともお前に害のある奴ではない。故に安心して連れて行け」

男「そうですか。それだけ聞ければ…十分です」
108: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:10:37 ID:2D9GO7t/YM
神娘「しかしやはり外の空気は良い」

男「夏は何とも言えぬ香りが致します」

神娘「この日差しも久しぶりに浴びた」

神娘「虫の鳴き声も動物の気配も…洞窟の中ではなかなか感じれぬからな」

男「どのくらいあそこにおられたのですか?」

神娘「十年ほどか」

男「じゅ、十年ですか!」

神娘「何をそれほど驚く?…ああ、お前たち人間からしてみれば長い時間か」

男「筋金入りの引きこもりではないですか」

神娘「褒めてはおらんよな、それ」

男「私もそうやってのんびりと過ごしていきたいものです」

神娘「お前がそれをやったらただの怠け者だろうが」
109: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:11:17 ID:2D9GO7t/YM
夜ー

パチパチ…

神娘「お前、村の者には何と言って出てきたのだ」

男「その牛車に積んである荷を西の村の友人に届けると言ってきました」

神娘「…空だぞこれ」パカッ

男「嘘ですよ。西の村に友人などおりません」

神娘「なんだ、そうなのか」

男「それどころか、あの村以外の場所に住む人のことなど全く知りませんから」

神娘「日々の生業に追われ、外に出る機会もないであろうからな」

男「時々気になります。いったい私の住むこの地はどこまで続いているのか」

男「果たして終わりはあるのか、それはここからどれほど歩けばよいのか…と」

神娘「ふん、お前はまるで子どものような事を考えるな」

男「神様は御存知なのですか」

神娘「さあな。私にも手が負えぬ広さだが」

男「いつか行けるようになるのでしょうか。神様のように様々な場所へ、自由に」

神娘「…なるかもな。お前たちが願っていれば」
110: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:11:52 ID:2D9GO7t/YM
男「正直、今回のこの旅は楽しみでした」

神娘「ん」

男「村の外を見る良い機会となったのですから」

神娘「そうか」

男「行き先はどこかよく分からぬ地である点が不安でしたが、それも昼間に解決しましたし」

神娘「呑気なものだな」

男「御安心を。私の命に代えても、神様は必ずや目的の地へお連れ致します」

男「それに神様の御友人にお会いするのも楽しみですし」

神娘「あやつ、お前には姿を現さんかもしれぬぞ」

男「そうなのですか?」

神娘「人間の前に滅多に顔を出さん奴だからな」

男「むうう…それは残念です」

神娘(以前にこやつを面倒な奴だと紹介した事は黙っておくか)
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