ーむか〜しむかし、とある場所で
71: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:26:39 ID:jYsrRUwwzs
ー数分後
神娘「わはははっ!あはっ、ははははは!」
男「…」
神娘「わはは!お、おい…はははっ!」
男「まさかの笑い茸とは」
神娘「な、何とかし…あははっ!」
男「えっ?なんですって?」
神娘(何とかしろと言っているのだ!)
男「どこからか神様の声が…」キョロキョロ
神娘「ひぃ〜っ、わははは!」
男「…はて」
神娘(喋れんから直接頭に語りかけておるのだ)
男「な、なんと。どうやってそのような事を」
神娘(神だからな)
男「納得しました」
神娘(何度目だ?このやり取り)
72: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:27:14 ID:jYsrRUwwzs
神娘「わはははははっ!」
男「しかし、何とかしろと言われましても…」
神娘「わは、わははは!ひぃーっ!」ジタバタ
神娘(死ぬ!腹がよじれて死ぬ!)
男「う〜ん…治まるのを待つしかないかと」
神娘(なんだと!)
男「治し方など知りませんし、笑い茸の症状は1時間ほどで治まると聞いたことがございます」
神娘(だ、駄目だ!このままだと笑うのに力を使い果たし消滅するやもしれん!)
男「!」
男「それはいけません」
神娘(だから今すぐどうにかせよ!)
男「だいいち、神様こそ治し方をご存知でないのですか?」
神娘(知るか!笑い茸なぞ食ったこともない)
男「神様、意外と知識が乏しいのですね」
神娘(…今はそれに反論する材料が見当たらん)
男「やむを得ません」スクッ
神娘(おっ、どうするつもり…)
男「神様、無礼をお許しください」
神娘(えっ)
ガバッ
73: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:27:46 ID:jYsrRUwwzs
ダキッ
神娘「あはは…はっ!?」ビクッ
男「…」ギュッ
神娘「あはっ、なっ、なっ、なななな…」
男「…」ギューッ
神娘「お、お、おい!待っ、待てっ」
男「…」ムギューッ
神娘「や、やめ…っ」プルプル
神娘「やめんかぁっ!」カッ
ビュオオッ
男「うわわっ」ドンガラガッシャ
神娘「はーっ、はーっ」ドッドッ
男「あたた…神風で吹き飛ばすなんてひどいじゃないですか」
神娘「お、お、お前っ!いきなり抱きしめるとはどういう了見…」
男「あ、治まりましたね」
神娘「えっ?」
男「笑い死なずに済みました」
神娘「あっ、ああ…」
74: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:28:23 ID:jYsrRUwwzs
神娘「……」プイッ
男「ですから神様、あれは治すための策ですってば」
神娘「…」ツーン
男「ほら、しゃっくりの時も驚かすと止まるではないですか」
男「あれと同じで神様を驚かせれば止まるかと思いまして」
男「実際に止まったのでこちらが驚きましたけど」
神娘「同時に私の心の臓まで止まるかと思ったわ」ギロッ
男「申し訳ありません」
神娘「…とはいえ、私を助けるためにやった事なのだな?」
男「はい。神様が消えてしまわれると聞き、無我夢中で…」
神娘「…ふん、元々はお前が蒔いた種だがまあ許してやろう」
男「ははーっ、ありがとうございます」
神娘「まったく、まだ胸の鼓動が収まらぬぞ」
男「あれ、神様。それはもしかして恋…」
神娘「やはり許さん」
男「戯れですって」
75: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:29:13 ID:jYsrRUwwzs
神娘「しかし合点がいかぬ」
男「何がですか?」
神娘「同じものを食べたのに、何故お前には症状が出ないのだ」
男「言ったでしょう。食べられると信じているからだと」
神娘「どこから突っ込めばいいのだ」
男「信じる力というのは大きいのですよ」
神娘「信じる力…ねぇ」
神娘「それで茸の毒性まで消し去るとは思えんが」
男「でも、現に消えていますし」
神娘「うぅ…納得いかんぞ」
男「とはいえ、一度笑い茸と分かった以上村の者に食べさせるわけにはいきません」
神娘「皆がお前のような超人ではないだろうしな」
男「お褒めに預かり光栄です」
神娘「別に褒めてはいないのだが」
76: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:29:58 ID:jYsrRUwwzs
男「では、新たな採取場を探しに行かなくては」
神娘「……」
男「神様、ありがとうございました。失礼し…」
神娘「待て」
男「?」
神娘「私の後ろにある岩場の影を見てみろ」
男「岩場の影ですか?」スッ
男「あっ」
神娘「沢山生えてるだろう、それは食えるぞ」
男「すごい。なんと立派な…」
神娘「この洞窟は水脈が通っているらしい。茸にとっても良い環境なのだろう」
男「採っていってもよろしいのですか?」
神娘「山の恵みだ。私のものではないし許可はいらんぞ」
男「お教えいただきありがとうございます」ペコッ
神娘「べ、別に…」ポリポリ
神娘「お、お前が何か見つける度に付き合わされるのが面倒なだけで…その…」
男「……」セッセッ
神娘「……」
男「…あ、すみません。採るのに夢中で…何か言いました?」
神娘「何でもないっ!」
77: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:31:00 ID:jYsrRUwwzs
男「いや〜、これでまたしばらく持ちます」
神娘「そりゃ良かったな」
男「何を怒っていらっしゃるので?」
神娘「うるさい。さっさと帰れ」
男「また採りに来てもよろしいですか?」
神娘「……」
神娘「ここのもそう多くはない。新しい採取場を早く見つけろ」
男「はい」
神娘「それまでの間なら…よし」
男「おお、ありがたや」
神娘「というより先程も言ったが、私の許可を取る必要などないぞ」
男「しかし、ここは神様の洞窟ですから」
神娘「別に私の洞窟ではない。ただ力が戻るまでここで休んでいるだけだ」
男「そういう事でしたら…」
神娘「うむ」
男「あの、神様」
神娘「?」
男「神様のお力はいつ頃戻られるのですか?」
神娘「神技がまともに使え始めている。そう遠くないだろう」
男「そうですか…」
神娘「何を落ち込んでおる」
男「いえ、失礼します」ザッ
神娘「……? 相変わらずよく分からん奴だな」
78: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:41:39 ID:Jn8a761Fdk
ヒュウウウ…
神娘「……」
バサッ
神娘「……」
バサバサッ
カラス「カァーッ」
神娘「…言っておくが戻る気はないぞ」
カラス「……」
神娘「何か言え。もう見抜いている」
カラス?「…あれぇ、おっかしいわね。神力は抑えているのだけど」
神娘「そんなに化け物のような大きな烏がいるものか」
カラス?「ふふ、残念。変化も久しぶりだから調整が効かなくって」
神娘「それで、今更何用だ?」
神娘「…山神殿」
79: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:42:33 ID:Jn8a761Fdk
カラス改め山神「…んもう、相変わらず愛想のない神ね」
神娘「ふん」
山神「一応あたしの方が格上なんだし、もっと弁えてほしいわぁ」
神娘「…何用だと聞いているのだが」
山神「はいはい。でも、言わなくとも分かっているでしょう?」
神娘「私を連れ戻しに来たか」
山神「ご名答」
神娘「断る。もうあの地に戻る気はない」
山神「そうは言っても全能神様の御意思だし」
神娘「それでも嫌だ」
山神「ふ〜ん。でも私も神としての役割があるから。それなら力づくで連れていくだけ」スッ
神娘「ふぅ、今はなるべく力は使いたくないが…仕方あるまい」スッ
神娘「…」
山神「…」
山神「なんてね。嘘よ、嘘!」
神娘「…は?」ポカーン
80: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:43:24 ID:Jn8a761Fdk
山神「連れ戻す気なんてないわよ。あんな事があったんだし…」
神娘「…」
山神「あなたの無事を確認しに来ただけ。まったく、しらみ潰しに探すの大変だったんだから」
神娘「心配をかけてすまない」
山神「でも無事は無事でも…神力はかなり弱くなってるようだけど?」
神娘「これでもかなり回復した方だ。ついこの前までは消滅寸前だったからな」
山神「こんな所まで逃げてきちゃうからよ。…にしても殺風景な洞窟ね」
神娘「仕方ないだろう。力が尽きる前に逃げ込める場所がここしかなかったのだ」
山神「逃げ込むって、人間から?」
神娘「…」コク
山神「…そう。まあ無理もないわね」
神娘「もう人間には関わりたくないのだ」
山神「この下界でそれは難しいんじゃない?それに、それだと本神になるのは…」
神娘「それでも!」
山神「……」
神娘「…もうあんな思いは…ごめんだ」
81: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:44:42 ID:Jn8a761Fdk
神娘「…」
山神「…ふふっ、懐かしいわね。あなたと初めて会ったのはもうどのくらい前だっけ」
神娘「私が山神殿の山の村を訪れた時だな。いつかなどはもう忘れたが」
山神「あはは、生意気な神が来たものだと思ったわよ。もっとも、今も変わらないけど〜」ニヤッ
神娘「むっ」
山神「…あんなに仲良くしてたのに。村の人間たちとも」
神娘「……」
神娘「…昔の話、だ」
山神「でも、これからどうする気?」
神娘「ひとまず回復したら、ここを離れる」
山神「そのあとは?」
神娘「…分からない」
山神「ねぇ、やっぱりまたあたしの所に…」
神娘「すまない。どうしても思い出してしまうからな」
山神「そう…」
82: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:45:17 ID:Jn8a761Fdk
神娘「なあ、山神殿」
山神「ん?」
神娘「村は…」
神娘「私がいたあの村は…どうなったのだ?」
山神「…」
山神「あの村はね………
「神様、おいでですか〜?」ザッ
神娘「っ!」
山神「あら、人間の声…」
神娘「山神殿、早く隠れろ!」
山神「なんで?ちょっと挨拶くらい…」
神娘「あいつは面倒な奴なのだ!関わらない方がいい!」
山神「そ、そう?分かったわよ」ポンッ
83: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:45:49 ID:Jn8a761Fdk
男「神様?」ヒョコッ
神娘「お、おう。やはりお前か」アセッ
神娘(山神殿、隠れているか)テレパシー
山神(大丈夫よ〜、不可視状態だから)
男「神様、さっきまで誰かとお話ししていませんでしたか?」
神娘「な、なんのことだ?」
男「焦っていらっしゃる」
神娘「うるさい。お前の気のせいだ」
男「う〜ん…」
神娘「それより今日は何をしに来たのだ」
男「ああ、そうでした。今日はこれを…」
84: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:46:20 ID:Jn8a761Fdk
男「…でして」
神娘「まったく、なんなのだお前は…」
男「しかしそれでは……」
神娘「ふん、生意気な事を言うでない」
山神「……」
85: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:47:08 ID:Jn8a761Fdk
男「おっと、長居してしまいました。今日はこれにて失礼します」
神娘「おう。もう来るな」
ザッザッ
神娘「ふぅ…どうせまた明日も来そうだな、あやつは」
山神「なんだ、人間が来てるんじゃない」ボワン
神娘「…ふん」
山神「ねぇ、今の人間は誰なの?」
神娘「麓の村に住んでいるらしい。この前見つかってしまって以来、ここをよく訪ねてくる」
山神「へぇ〜」
神娘「鬱陶しい奴だ。私が弱っている事を知っているから、色々こうして食べ物などを持ってくる」
神娘「私が神だと知りながら、碌に敬いもせず無礼ばかり働きおる」
神娘「きちんと力が使えればあんな奴すぐに追い出すというのに、まったく…」ブツブツ
山神「ふ〜ん…」ニヤニヤ
山神「でも神娘、楽しそうだったじゃない」
神娘「…は?」
山神「さっきあの人間と話してる時、なんだか活き活きしてたけどなぁ」
神娘「なっ、なっ、なっ…」
86: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:47:53 ID:Jn8a761Fdk
神娘「待て待て、いくら山神殿でも冗談が過ぎるぞ!」アセッ
山神「冗談なんかじゃないけどなぁ」
山神「まるで、昔のあなたを見てるみたいだった」
神娘「…」
山神「あたしはあなたの事はよく分かる」
山神「人間が好きだった頃の神「やめろっ!」
山神「…」
神娘「…」
神娘「私は…もう昔とは違う!」
神娘「人間など…人間など嫌いだ!」
山神「……」
山神「素直じゃないところも変わってないけどねぇ」
神娘「…山神殿、もう帰ってくれないか」
山神「そうさせてもらおうかしらね。あんまり山を空けてもいけないし」
山神「私としてはあなたの無事が確認できて満足だわ」
神娘「ありがとう。私は大丈夫だ」
山神「それじゃ、行こうかしらね」バサッ
神娘「……」
山神「…あっ、そうそう。忘れてたわ」
87: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:48:48 ID:Jn8a761Fdk
山神「あなたのいたあの村だけどね」
神娘「…おう」
山神「……」
山神「…天罰が下ったわ」
神娘「!」
山神「竜巻に巻き込まれて、跡形も無くなったの」
神娘「…そう、か」
山神「でもね、神娘…」
神娘「ふん、当然の事だろう」
山神「……」
山神「…機会があればまた私の山にいらっしゃいな。見せたいものもあるし」
神娘「残念だが、もう会う事はないだろうな」
山神「それも天命。でも、また会えると信じているわ」
バサバサッ
神娘「…」
神娘「……」
グスッ
88: 名無しさん@読者の声:2016/3/21(月) 12:00:34 ID:chf.eBHwDE
いったい村で何があったのか気になります…
支援!
89: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:35:54 ID:Jn8a761Fdk
タタタッ
「はぁ、はぁ…」
ワーワーッ!
『こっちに逃げた!』
『くそ、やはりすばしっこい!』
(何故だ…)
………………
(くっ…足が…)ズキズキ
ドタドタッ!
「っ!」
『いたぞ!捕まえろ!』
「おい!お前たち、目を覚ませ!」
『追い詰めたぜ!』
『これで…これで俺たちに恩賞が…!』
ウオオーッ!!
(駄目だ。話が通じぬ…)
(うぅ…)
(信じていたのに…何故なのだ…っ)
ワーッワーッ!!
90: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:36:31 ID:Jn8a761Fdk
神娘「うぁっ!」ガバッ
神娘「はぁ…はぁ…」
神娘(ゆ、夢…か…)
神娘(最近思い出す事もなくなったというに…山神のせいだ)ブルブル
神娘(震えているか。まったく情けな…)
「神様?」
神娘「っ!」ビクッ
男「どうかされましたか?大声を出して…」ザッ
神娘「な、何でもない…」
男「顔色が優れませんが」
神娘「何でもないと言っている」
男「それにすごい汗をかいておいでです。少し横にでもなった方が…」ザッ
神娘「やめろ!近付くな!」
男「!」ビクッ
神娘「あっ」
神娘「…ほ、本当に何でもないのだ。私に構うな」プイッ
男「神様…」
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