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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





63: 酉忘れてました ◆WjgYlacz.c:2016/3/5(土) 01:05:12 ID:C0bns94KII
神娘「馬鹿にしおって…返せっ!」

男「馬鹿になどしておりませんよ。素晴らしい出来だと言いました」

神娘「…む?」

男「確かに形こそ歪でございますが」

神娘「うるさいぞ」

男「しかしながら、この編み込み一つ一つがとても丁寧で美しい」

神娘「…」

男「まるで、神様の御心を映しているかのようです」

神娘「私の…心?」

男「心にございます」

神娘「……」

男「ものづくりには真心が必要です。それが無ければいくら見栄えが良いものでも、塵芥と同じ」

神娘「…ん」

男「この草鞋にも神様の心が宿っております」

男「この上なく良きものでございますよ」

神娘「…ふ、ふんっ。人間が知ったような事を」

男「まあ実用性には欠けるのですがね」

神娘「一言多いわ!」
64: ◆WjgYlacz.c:2016/3/5(土) 01:05:58 ID:C0bns94KII
神娘「偉そうなことばかり言いおって」

男「そうですね。失礼致しました」

男「しかし、これは確かに私が受け取るには勿体ありません。お返し致しま…」スッ

神娘「…やる」

男「えっ?」

神娘「それはお前にやる」

男「いえ、しかし…」

神娘「手本にするのだろう?持って帰れ」

男「よろしいのですか?」

神娘「生憎だが私には不要だ。それに…」

男「…それに?」

神娘「…お前たちの役に少しでも立つなら、その草鞋も本望であろう」

男「神様…」

神娘「んっ…もう一眠りする。お前も帰れ」

男「ははーっ、ありがとうございます」
65: ◆WjgYlacz.c:2016/3/5(土) 01:06:31 ID:C0bns94KII




神娘(……)

神娘(またらしくないことを言ってしまった)

神娘(あれではまるで、私があやつらの役に立ちたいと願っているようではないか)

神娘(…人間に利用されるのはごめんだ)

神娘(私はもう以前のお人好しとは違う)

神娘(今回は魔が差しただけ。そうだ、それだけだ)

神娘(……)



神娘(なんだか疲れたな。休むとしよう)
66: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:22:35 ID:jYsrRUwwzs
男「神様、少しお尋ねしたいことが」

神娘「断る」

男「これの事なのですが」スッ

神娘「おい、聞け」

男「いいではないですか。暇でしょう?」

神娘「好きで暇しているのではないのだがな」

男「少し見ていただけませんか」

神娘「…言っても無駄か。なんだこれ、茸か」

男「これが食べられるものかお教えいただきたいのです」

神娘「食べてみればいいだろう」

男「毒があったら大変でしょう」

神娘「お前が人柱になって試すことも大事だろう」

男「そんな殺生な」

神娘「生物とはそうやって進歩するものだ」

男「とりつく島もない」
67: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:23:31 ID:jYsrRUwwzs
神娘「というかお前、これはどこに生えていたのだ」

男「この近くです。もし食べられるなら貴重な食料に」

神娘「何とも地味な色だな」

男「美味しそうではないですか」

神娘「そうか?食べられないと思うぞ、これ」

男「思う…とは、自信がおありでない?」

神娘「まあ、私もこの地の事まで何でも知っているわけではない」

男「神様なのに?」

神娘「やかましい。だが、茸は食べられないものの方が多いのだぞ」

男「そうなのですか…」

神娘「お前、よくそんな事も知らないで山菜を採っていたな」

男「食べられると信じて食べれば、意外と何でもいけるものですよ」

神娘「なんだそのよく分からない精神論は」
68: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:24:46 ID:jYsrRUwwzs
男「しかし困りました」

神娘「どうした」

男「いつも採っている場所に茸が生えなくなりまして」

神娘「ほう」

男「新しい採取場を探していたら、これを見つけたのです」

神娘「それは気の毒だが、他を探した方がいいぞ」

男「この辺りはかなり探し回ったのですが」

神娘「ではまた生えてくるまで待つ他あるまい」

男「う〜ん…」

神娘「それともさっきお前が言った通り、食えると信じて食べてみるか?」ケラケラ

男「そうですね、そうしてみましょう」

神娘「えっ」

男「火を起こさせていただきますね」ゴソゴソ

神娘「…また面倒な事になったな」
69: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:25:18 ID:jYsrRUwwzs
パチパチ

男「さあ、焼いてみましょう」

神娘「やめておけと言うに」

男「食べられない確証はないのでしょう?」

神様「ん?まあ、そうだが」

男「ならば試すのみ」

神娘「何をそれほどまで意地になっているのだ」

男「…私の村は食料の確保には日々苦労しております」

神娘「人間の村など、どこもそんなものだろう」

男「ですから『いつか食料が見つかるだろう』では生き延びれません」

男「その『いつか』はいつ来るか分かりませんからね」

神娘「……」

男「ですので、食べ物となり得る物を見つけたその機会を容易く諦めるわけには参りません」

男「たとえ、人柱にならざるを得なくともです」

神娘「お前…たまには真面目な事を言うのだな」

男「いつも真面目ですが」

神娘「真面目な奴は畑仕事を怠けてここに来たりはしない」
70: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:26:04 ID:jYsrRUwwzs
男「さあ、焼けましたかね」

神娘「悪いことは言わんからやめ…」

男「南無三!」パクッ

神娘「あっ」

男「……」モグモグゴックン

神娘「…」

男「…」

男「あれ、大丈夫ですね」ケロッ

神娘「むっ」

男「なかなか美味です」

神娘「なんと」

男「いや〜、これは得をしました」

神娘「そんな馬鹿な」

男「ご覧の通りです」

神娘「どれ」ヒョイッ

パクッ

神娘「んん…」モグモグ

男「大丈夫でしょう」

神娘「確かに普通の味だな」ゴックン

神娘「思い過ごしだったよ…う……!?」クラッ

男「神様?」

神娘「ぐっ……」

神娘(なんだ?目眩が…)
71: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:26:39 ID:jYsrRUwwzs
ー数分後

神娘「わはははっ!あはっ、ははははは!」

男「…」

神娘「わはは!お、おい…はははっ!」

男「まさかの笑い茸とは」

神娘「な、何とかし…あははっ!」

男「えっ?なんですって?」

神娘(何とかしろと言っているのだ!)

男「どこからか神様の声が…」キョロキョロ

神娘「ひぃ〜っ、わははは!」

男「…はて」

神娘(喋れんから直接頭に語りかけておるのだ)

男「な、なんと。どうやってそのような事を」

神娘(神だからな)

男「納得しました」

神娘(何度目だ?このやり取り)
72: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:27:14 ID:jYsrRUwwzs
神娘「わはははははっ!」

男「しかし、何とかしろと言われましても…」

神娘「わは、わははは!ひぃーっ!」ジタバタ

神娘(死ぬ!腹がよじれて死ぬ!)

男「う〜ん…治まるのを待つしかないかと」

神娘(なんだと!)

男「治し方など知りませんし、笑い茸の症状は1時間ほどで治まると聞いたことがございます」

神娘(だ、駄目だ!このままだと笑うのに力を使い果たし消滅するやもしれん!)

男「!」

男「それはいけません」

神娘(だから今すぐどうにかせよ!)

男「だいいち、神様こそ治し方をご存知でないのですか?」

神娘(知るか!笑い茸なぞ食ったこともない)

男「神様、意外と知識が乏しいのですね」

神娘(…今はそれに反論する材料が見当たらん)

男「やむを得ません」スクッ

神娘(おっ、どうするつもり…)

男「神様、無礼をお許しください」

神娘(えっ)

ガバッ
73: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:27:46 ID:jYsrRUwwzs
ダキッ

神娘「あはは…はっ!?」ビクッ

男「…」ギュッ

神娘「あはっ、なっ、なっ、なななな…」

男「…」ギューッ

神娘「お、お、おい!待っ、待てっ」

男「…」ムギューッ

神娘「や、やめ…っ」プルプル

神娘「やめんかぁっ!」カッ

ビュオオッ

男「うわわっ」ドンガラガッシャ

神娘「はーっ、はーっ」ドッドッ

男「あたた…神風で吹き飛ばすなんてひどいじゃないですか」

神娘「お、お、お前っ!いきなり抱きしめるとはどういう了見…」

男「あ、治まりましたね」

神娘「えっ?」

男「笑い死なずに済みました」

神娘「あっ、ああ…」
74: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:28:23 ID:jYsrRUwwzs
神娘「……」プイッ

男「ですから神様、あれは治すための策ですってば」

神娘「…」ツーン

男「ほら、しゃっくりの時も驚かすと止まるではないですか」

男「あれと同じで神様を驚かせれば止まるかと思いまして」

男「実際に止まったのでこちらが驚きましたけど」

神娘「同時に私の心の臓まで止まるかと思ったわ」ギロッ

男「申し訳ありません」

神娘「…とはいえ、私を助けるためにやった事なのだな?」

男「はい。神様が消えてしまわれると聞き、無我夢中で…」

神娘「…ふん、元々はお前が蒔いた種だがまあ許してやろう」

男「ははーっ、ありがとうございます」

神娘「まったく、まだ胸の鼓動が収まらぬぞ」

男「あれ、神様。それはもしかして恋…」

神娘「やはり許さん」

男「戯れですって」
75: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:29:13 ID:jYsrRUwwzs
神娘「しかし合点がいかぬ」

男「何がですか?」

神娘「同じものを食べたのに、何故お前には症状が出ないのだ」

男「言ったでしょう。食べられると信じているからだと」

神娘「どこから突っ込めばいいのだ」

男「信じる力というのは大きいのですよ」

神娘「信じる力…ねぇ」

神娘「それで茸の毒性まで消し去るとは思えんが」

男「でも、現に消えていますし」

神娘「うぅ…納得いかんぞ」

男「とはいえ、一度笑い茸と分かった以上村の者に食べさせるわけにはいきません」

神娘「皆がお前のような超人ではないだろうしな」

男「お褒めに預かり光栄です」

神娘「別に褒めてはいないのだが」
76: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:29:58 ID:jYsrRUwwzs
男「では、新たな採取場を探しに行かなくては」

神娘「……」

男「神様、ありがとうございました。失礼し…」

神娘「待て」

男「?」

神娘「私の後ろにある岩場の影を見てみろ」

男「岩場の影ですか?」スッ

男「あっ」

神娘「沢山生えてるだろう、それは食えるぞ」

男「すごい。なんと立派な…」

神娘「この洞窟は水脈が通っているらしい。茸にとっても良い環境なのだろう」

男「採っていってもよろしいのですか?」

神娘「山の恵みだ。私のものではないし許可はいらんぞ」

男「お教えいただきありがとうございます」ペコッ

神娘「べ、別に…」ポリポリ

神娘「お、お前が何か見つける度に付き合わされるのが面倒なだけで…その…」

男「……」セッセッ

神娘「……」

男「…あ、すみません。採るのに夢中で…何か言いました?」

神娘「何でもないっ!」
77: ◆WjgYlacz.c:2016/3/14(月) 22:31:00 ID:jYsrRUwwzs
男「いや〜、これでまたしばらく持ちます」

神娘「そりゃ良かったな」

男「何を怒っていらっしゃるので?」

神娘「うるさい。さっさと帰れ」

男「また採りに来てもよろしいですか?」

神娘「……」

神娘「ここのもそう多くはない。新しい採取場を早く見つけろ」

男「はい」

神娘「それまでの間なら…よし」

男「おお、ありがたや」

神娘「というより先程も言ったが、私の許可を取る必要などないぞ」

男「しかし、ここは神様の洞窟ですから」

神娘「別に私の洞窟ではない。ただ力が戻るまでここで休んでいるだけだ」

男「そういう事でしたら…」

神娘「うむ」

男「あの、神様」

神娘「?」

男「神様のお力はいつ頃戻られるのですか?」

神娘「神技がまともに使え始めている。そう遠くないだろう」

男「そうですか…」

神娘「何を落ち込んでおる」

男「いえ、失礼します」ザッ

神娘「……? 相変わらずよく分からん奴だな」
78: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:41:39 ID:Jn8a761Fdk
ヒュウウウ…

神娘「……」

バサッ

神娘「……」

バサバサッ

カラス「カァーッ」

神娘「…言っておくが戻る気はないぞ」

カラス「……」

神娘「何か言え。もう見抜いている」

カラス?「…あれぇ、おっかしいわね。神力は抑えているのだけど」

神娘「そんなに化け物のような大きな烏がいるものか」

カラス?「ふふ、残念。変化も久しぶりだから調整が効かなくって」

神娘「それで、今更何用だ?」

神娘「…山神殿」
79: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:42:33 ID:Jn8a761Fdk
カラス改め山神「…んもう、相変わらず愛想のない神ね」

神娘「ふん」

山神「一応あたしの方が格上なんだし、もっと弁えてほしいわぁ」

神娘「…何用だと聞いているのだが」

山神「はいはい。でも、言わなくとも分かっているでしょう?」

神娘「私を連れ戻しに来たか」

山神「ご名答」

神娘「断る。もうあの地に戻る気はない」

山神「そうは言っても全能神様の御意思だし」

神娘「それでも嫌だ」

山神「ふ〜ん。でも私も神としての役割があるから。それなら力づくで連れていくだけ」スッ

神娘「ふぅ、今はなるべく力は使いたくないが…仕方あるまい」スッ



神娘「…」

山神「…」





山神「なんてね。嘘よ、嘘!」

神娘「…は?」ポカーン
80: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:43:24 ID:Jn8a761Fdk
山神「連れ戻す気なんてないわよ。あんな事があったんだし…」

神娘「…」

山神「あなたの無事を確認しに来ただけ。まったく、しらみ潰しに探すの大変だったんだから」

神娘「心配をかけてすまない」

山神「でも無事は無事でも…神力はかなり弱くなってるようだけど?」

神娘「これでもかなり回復した方だ。ついこの前までは消滅寸前だったからな」

山神「こんな所まで逃げてきちゃうからよ。…にしても殺風景な洞窟ね」

神娘「仕方ないだろう。力が尽きる前に逃げ込める場所がここしかなかったのだ」

山神「逃げ込むって、人間から?」

神娘「…」コク

山神「…そう。まあ無理もないわね」

神娘「もう人間には関わりたくないのだ」

山神「この下界でそれは難しいんじゃない?それに、それだと本神になるのは…」

神娘「それでも!」

山神「……」

神娘「…もうあんな思いは…ごめんだ」
81: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:44:42 ID:Jn8a761Fdk
神娘「…」

山神「…ふふっ、懐かしいわね。あなたと初めて会ったのはもうどのくらい前だっけ」

神娘「私が山神殿の山の村を訪れた時だな。いつかなどはもう忘れたが」

山神「あはは、生意気な神が来たものだと思ったわよ。もっとも、今も変わらないけど〜」ニヤッ

神娘「むっ」

山神「…あんなに仲良くしてたのに。村の人間たちとも」

神娘「……」

神娘「…昔の話、だ」

山神「でも、これからどうする気?」

神娘「ひとまず回復したら、ここを離れる」

山神「そのあとは?」

神娘「…分からない」

山神「ねぇ、やっぱりまたあたしの所に…」

神娘「すまない。どうしても思い出してしまうからな」

山神「そう…」
82: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:45:17 ID:Jn8a761Fdk
神娘「なあ、山神殿」

山神「ん?」

神娘「村は…」

神娘「私がいたあの村は…どうなったのだ?」

山神「…」

山神「あの村はね………





「神様、おいでですか〜?」ザッ

神娘「っ!」

山神「あら、人間の声…」

神娘「山神殿、早く隠れろ!」

山神「なんで?ちょっと挨拶くらい…」

神娘「あいつは面倒な奴なのだ!関わらない方がいい!」

山神「そ、そう?分かったわよ」ポンッ
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sage:


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