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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





533: ◆WjgYlacz.c:2019/10/14(月) 22:13:16 ID:gto83BY32.
海神「…お、遅かったかの」ヨロッ

村長娘「あれ!?昨日の爺さん!?」

巫女「海神様!」

海神「お前たちか…」

巫女「ひどい怪我…どうしたんですか!?」

海神「この程度…大事ないわい。それより…」

村長娘「?」

海神「お前たち…ここで何か見なかったか?」

巫女「な、何か…とは?」

海神「…ふむ。その様子なら大丈夫そうじゃな」

巫女「あ、あの、海神様!」

海神「なんじゃ?儂は急いでおるのじゃ」

巫女「山神様が昨夜からいなくなったんです。何か知りませんか?」

海神「……」

海神「…娘っ子」

巫女「はい」

海神「これは神の領域の話となる故、詳しくは話せぬが…」

海神「山神はもう戻らぬ」

巫女「えっ…」
534: ◆WjgYlacz.c:2019/10/14(月) 22:13:43 ID:gto83BY32.
村長娘「も、戻らないって…?」

海神「今言った通りじゃ」

海神「おぬしは全てを忘れ、元いた場所に帰るがよい」

巫女「そんな…どういうことです!?」

海神「詳しくは話せぬと言ったであろう」

巫女「そ、そんなの納得できるわけないじゃないですか!」

海神「酷なのは分かっておる。しかし、おぬしにはどうにもならぬ事じゃ」

巫女「どうにもならなくても…何があったのかぐらい…!」

海神「やかましい娘じゃ。教えられぬものは教えられぬ」

巫女「じゃ、じゃあ私だって帰る気はありません!」

巫女「何があったのか、自分で調べますから!」

海神「そうはさせぬ」スッ

巫女「!?」

海神「安心せい。儂の術でおぬしの村へ戻してやるわい」

海神「ここから一人で帰れる距離ではあるまい。特別じゃぞ」

村長娘「ちょっと!待っておくれよ!」

海神「迂闊に手を出すと命の保証はないぞ。転移は繊細な術なのでな」

村長娘「っ!」

海神「それではさらばじゃ。娘っ子よ」バッ

バシュンッ!

巫女「きゃああっ!?」

村長娘「巫女様ぁぁぁっ!!」
535: ◆WjgYlacz.c:2019/10/14(月) 22:14:13 ID:gto83BY32.





・・・・・・





536: ◆WjgYlacz.c:2019/10/14(月) 22:14:43 ID:gto83BY32.
オオオオ…

巫女「……」

村長娘「……」

海神「……?」

巫女「…え?」

巫女(な、何も起きてない…よね?)

海神「なんじゃと…儂の神力が効かぬはずが…はっ!」バシュッ

巫女「…」シーン

村長娘「な、なんだ!ただの見せかけかい!」

海神「馬鹿な!そんなはずは…!」

巫女「…海神様」

海神「む!?」

巫女「私はまだ帰るわけにはいきません」

巫女「私は山神様の巫女です。主に何かあったと分かったなら…」

巫女「それを見過ごす事なんてできないからです」

海神「…」

巫女「山神様の事、どうしても話せないというのであれば、話さなくてもいいです」

巫女「でも、私は私にできる事を精一杯やります」

巫女「邪魔だてはしないでもらっていいですか?」

海神「…」

海神「…ふん。人間の小娘が生意気な」

海神「どうしてあやつの周りには…そういう人間ばかり集まるのじゃろうな」

巫女「?」
537: ◆WjgYlacz.c:2019/10/14(月) 22:15:15 ID:gto83BY32.
海神「どうやら言っても無駄のようじゃ。何故か実力行使もできぬようじゃし」

海神「勝手にするがよいわい。儂は行くぞ」バッ

ヒュッ!

村長娘「うわっ…!」

村長娘「き、消えた…」

巫女「…」

村長娘「み、巫女様、本当に大丈夫かい…?」

巫女「はぁぁ〜…」ヘタッ

村長娘「巫女様!?」アセッ

巫女「こ、怖かった〜…」

村長娘「へ?」

巫女「わ、私、とんでもない事言ってませんでした!?言ってましたよね!?」

巫女「どうしよう…罰が当たっちゃうぅ…」

村長娘「…ぷっ、あはははっ!」

巫女「な、なんで笑うんですか!」

村長娘「いやあ、あれだけ堂々と啖呵切ってたのに、巫女様は巫女様だなあって思ってさ」

巫女「それ、馬鹿にしてますよね!」

村長娘「あはは、違うよ!」

巫女「…でも言いたい事、言えました」

村長娘「?」

巫女「少しは娘さんみたいになれましたかね?」

村長娘「あはは、そうかもねえ」
538: ◆WjgYlacz.c:2019/10/14(月) 22:15:39 ID:gto83BY32.
巫女「…とはいえ、手がかりがなくなっちゃいましたね」

村長娘「う〜ん、ひとまず状況を整理すると…」

村長娘「山神様に何かあったけど、海神様は教えてくれなかった」

巫女「この焼け野原もあの海神様の様子からして…山神様が関わってますかね」

村長娘「巫女様が効いた唸り声も…山神様のものかもしれないね」

巫女「でも結局、食料泥棒の件はまだ何も…あっ、この貝殻の事、聞けばよかったな」

村長娘「嵐みたいに消えちゃったからね、海神様」

巫女「とにかく現状は…」

村長娘「特に進展なし!」

巫女・村長娘「はぁ〜〜…」タメイキ

村長娘「…ま、とにかくここにいても仕方ないね」

巫女「いったん村の方へ戻りましょうか。下っ端さんの様子も気になりますし」

村長娘「声かけてやりたいけど…多分あいつは見張られてるんじゃないかなあ」

巫女「私や娘さんは近付かせてもらえなさそうですもんね…」

村長娘「う〜ん…弱ったね」

巫女「…あっ、そうだ」

村長娘「うん?」

巫女「上手くいくか分かりませんけど…手はあるかも」

村長娘「へえ?どんな感じだい?」

巫女「ええと、まず私が………」

村長娘「ふんふん………」
539: ◆WjgYlacz.c:2019/10/14(月) 22:16:01 ID:gto83BY32.



・・・・・・



540: 名無しさん@読者の声:2019/10/28(月) 15:23:01 ID:fgE2swnXpo
支援!!
541: 名無しさん@読者の声:2019/11/26(火) 23:51:11 ID:Ulgjh/Ikt2
いったいどんな手を打っているのか……支援です!
542: あけおめです! ◆WjgYlacz.c:2020/1/15(水) 23:04:33 ID:nKTBMTJn/s



ー村長娘の村、納屋ー



543: ◆WjgYlacz.c:2020/1/15(水) 23:05:24 ID:nKTBMTJn/s
見張り壱「おい、いい加減隠し場所を言ったらどうだ?」

見張り弐「そうだ。そうすりゃそこから出してもいいって言われてるんだ」

下っ端「はっ、盗ってもいねえ物の隠し場所なんざ知るかよ」

見張り壱「ったく…強情な奴だ」

下っ端「あんたらこそ、そこでずっと見張ってんのも退屈だろ?」

下っ端「逃げれやしねえからどっか行けよ」

見張り壱「そうはいくか。村長の命令だ」

見張り弐「それで万一お前に逃げられたら俺たちの肩身が狭くなる」

下っ端「…そうかよ」

下っ端(くそっ、きつく縛り付けやがって)ギシッ

下っ端(だが、いつまでもここにいるのも退屈だしな)

下っ端(縄抜けくらいはできそうだが…)
544: ◆WjgYlacz.c:2020/1/15(水) 23:06:00 ID:nKTBMTJn/s
下っ端(幸いここは納屋。そこらにある農具を使えば外の二人くらい…)

下っ端(そんでこんなとこ、もうおさらばだ)

下っ端(…でも)

下っ端(その後はどうするか)

下っ端(また行く当てもない無法者人生の始まりか)

下っ端(やっぱ俺には向いてなかったんだ)

下っ端(人の集まりの中で暮らすなんてことは…)

『明日、釣りに付き合ってくれないかい?』

下っ端(……)

下っ端(…あいつには、悪いことしちまったな)

「たっ、たっ、大変です〜!」

下っ端「ん?」

下っ端(外が騒がしいな。あの声は…)

見張り壱「あれは…」

見張り弐「巫女様だな。あんな急いでどうしたんだ?」
545: ◆WjgYlacz.c:2020/1/15(水) 23:06:27 ID:nKTBMTJn/s
巫女「はあ、はあ…」

見張り壱「巫女様、どうしました?」

巫女「大変です…!く、熊さんが…大きな熊さんがすぐそこに…!」

巫女「む、村の方に向かっているように見えたので…知らせないとと思って…!」

見張り壱「なんだって!?」

見張り弐「おいおい、今は皆漁に出てて人手が…」

見張り壱「と、とりあえず様子を見に行こうぜ。村まで来ちまったら一大事だ」

見張り弐「お、おう。そうだな…」

巫女「こっちです!お二人とも来てください!」

見張り壱「わ、分かりました。よし、お前行ってこい」

見張り弐「は?お前が行ってきてくれよ!」

見張り壱「俺はここから離れられないし」

見張り弐「俺もだよ!」

巫女「あ〜もう、村の一大事ですよ!お二人とも一緒に!」グイグイ

見張り壱「あ、ちょっ、巫女様!」

見張り弐「分かりましたって!行くからそんな押さないでくださいよ!」

タッタッタ…
546: ◆WjgYlacz.c:2020/1/15(水) 23:06:58 ID:nKTBMTJn/s
シーン…

下っ端「…」

下っ端(おお…本当に二人とも行ったみたいだな)

下っ端(こりゃあいい。逃げ出す絶好の機会だぜ!)

下っ端(さて、さっさとこいつをほどいて…)ゴソゴソ

ガララッ

下っ端「っ!」ビクッ

下っ端(ちっ、もう戻って来やがったのか…?)

村長娘「お〜い、下っ端。生きてるかい?」ヒョコッ

下っ端「…なんだ、お前かよ」

村長娘「なんだい、元気そうだね」

下っ端「元気なわけあるかよ。こんな埃くせえ所に閉じ込めやがって…」

下っ端「それよかさっきの巫女が言ってた熊がどうのこうのって…やっぱお前の差し金か」

村長娘「まあ案を出したのは巫女様だけどね」

村長娘「この時間は村の見張りも手薄だし、巫女様の言う事なら皆信じるだろうしさ」

下っ端「へっ、悪知恵が働くこった」

下っ端「さて、ちょうどいい。こいつをさっさと解いてくれ。意外と頑丈でよ…」

村長娘「えっ、嫌だけど」

下っ端「はあ!?」
547: ◆WjgYlacz.c:2020/1/15(水) 23:07:34 ID:nKTBMTJn/s
村長娘「別にあんたを逃がすためにここに来たわけじゃないよ」

下っ端「じゃあ何しに来やがった?まさか、俺を嘲笑いに来たとでも…」

村長娘「そうだけど」

下っ端「てめえ…!」イラッ

村長娘「あはは、嘘だよ!あんたに言っときたい事があるんだ」

下っ端「な、なんだよ」

村長娘「食料泥棒は絶対あたしらが見つけて、お父の前に引きずり出す」

村長娘「だからあんたはそれまで大人しくここで待ってろ…ってさ」

下っ端「なに…?」

村長娘「あんた、ここから逃げ出そうとしてるだろ?」

下っ端「そりゃそうだろ」

村長娘「そんな事したら、自分は泥棒ですって言うようなもんだよ」

村長娘「もう村にいられなくなるじゃないか」

下っ端「…」

村長娘「盗っ人を探し出して、お父に頭下げさせてやるよ」

村長娘「大した証も無いのに疑ってすみませんでした、ってさ!」

村長娘「そうすりゃ、全て元通りに…」

下っ端「…めでてえ奴だ」

村長娘「ん?」
548: ◆WjgYlacz.c:2020/1/15(水) 23:08:03 ID:nKTBMTJn/s
下っ端「お前、なんも分かっちゃいねえな」

村長娘「!?」

下っ端「まず、俺の気持ちを無視するな」

村長娘「うっ」

下っ端「村長が俺に謝ったところで、俺が許す気になるか分からねえ」

下っ端「…まあ、これに関しちゃその時の対応次第だがな」

村長娘「それは…まあ、そうだろうけどさ」

下っ端「あとな、こんな大事になっちまったんだ」

下っ端「仮に俺の無実が証明されたとしても…この村にはいれねえ」

下っ端「気まずいったらありゃしねえしな」

村長娘「…」

下っ端「それとな」

村長娘「な、なんだい…」

下っ端「お前たちに咎人が見つけられるはずねえだろ」

下っ端「食いもん盗んだ奴がまだこの辺うろうろしてるっていうのか?」

村長娘「それは…分からないじゃないか」

下っ端「分かるよ。俺は悪名高き元・山賊だぜ?」

下っ端「残念だが…盗っ人の気持ちはお前より分かってる」

村長娘「…」
549: ◆WjgYlacz.c:2020/1/15(水) 23:08:44 ID:nKTBMTJn/s
下っ端「咎人が見つかろうが見つからなかろうが…どう転んでももうおしまいだよ」

下っ端「だからお前もおかしな事考えるな。大人しく俺をここから…」

村長娘「嫌だね!」

下っ端「!」

村長娘「なんでそんな事ばっかり言うのさ!」

村長娘「あんた、何も悪い事してないんだろ!?だったらうじうじしてるんじゃないよ!」

下っ端「うじうじって…俺は今後のことも考えてだな…!」

村長娘「うるさいうるさい!」

下っ端「ああ!?」

村長娘「あんたが何て言おうと、あたしはあんたの無実を証明する!」

村長娘「その後のことは、その後考えればいいんだよ!」

下っ端「てめえ…他人事だと思って簡単に言うんじゃねえ!」

下っ端「ここを追い出されたら、もう俺の居場所なんて…」

村長娘「あるよ!他の所にだってある!」
550: ◆WjgYlacz.c:2020/1/15(水) 23:10:56 ID:nKTBMTJn/s
村長娘「村はここだけじゃない!それに、あたしだってあんたの味方だ!」

下っ端「は!?てめえはここの奴だろうが!」

村長娘「いいよ!あんたがここを追い出されたら、あたしも一緒にここを出てく!」

下っ端「なっ!?」

下っ端「滅茶苦茶言ってんじゃねえ!そんな事してどうなるってんだ!?」

村長娘「あんたについてって、新しい所で暮らしていけるよう協力してやるさ!」

村長娘「夫婦のふりでもすりゃ、受け入れてもらいやすそうだろ!」

下っ端「はあ…?」

村長娘「…ん?」

村長娘(…なんかあたし、勢いですごい事言わなかった?)

村長娘「あ、あの、だからさ、そんな心配するなって事だよ!」アセアセッ

村長娘「これであんたの人生おしまいみたいな言い方…しないでおくれよ。頼むから…」

下っ端「…」

村長娘「あたしが何とかするよ…だから、諦めないでよ」

下っ端「……」
551: ◆WjgYlacz.c:2020/1/15(水) 23:11:32 ID:nKTBMTJn/s
村長娘「じゃ、じゃあ行くからね!あんたが何と言おうと…」

下っ端「……してねえ」ボソッ

村長娘「えっ?」

下っ端「返してねえって言ったんだ。お前からの借り」

下っ端「釣りに行くって約束しただろ」

村長娘「!」

下っ端「…こちとら今日は早起きして準備してたんだ。眠くてしょうがねえ」

下っ端「さっさとここから出て、一緒に行こうぜ」

村長娘「下っ端…!」

下っ端「お前はやるって言ったら止まらねえ。この短い付き合いでも分かる」

下っ端「…すまねえな。苦労かけちまってよ」

村長娘「水臭いね」

下っ端「あてはあんのか?」

村長娘「ないさ。でも、何とかする」

下っ端「へっ、頼もしいこったな」

村長娘「信じてくれる気になったかい?」

下っ端「…ふん、少しくらい待っててやらあ」
552: ◆WjgYlacz.c:2020/1/15(水) 23:12:24 ID:nKTBMTJn/s
村長娘「じゃあ、あたしが戻るまでくたばるんじゃないよ」

下っ端「せいぜい頑張るさ」

村長娘(さて、まずは巫女様と合流して…)ザッザッ

下っ端「…おい」

村長娘「?」ピタッ

下っ端「…さ、さっきの提案だけどな…」

村長娘「提案?」

下っ端「俺がここにいられなくなったらの話だよ」

村長娘「っ!あ、いやっ、あれは、その…!」アセッ

下っ端「…わ、悪くねえ」

村長娘「へっ?」

下っ端「と思ってな。うん、それだけだ」

村長娘「…」ポカーン

下っ端「…何呆けてんだよ。早く行けっての」

村長娘「あ、ああ、うん…それじゃ…」ピシャッ

村長娘「……」

村長娘(…え〜っと、どういう事だい?)

村長娘(あたしと夫婦のふりするのが悪くないって事かい?)

村長娘(そ、それじゃ…まるで…)カアア

村長娘(…う、浮かれてる場合じゃない!今はやれる事をやらなきゃだ!)パンッ

村長娘(…で、でも悪くないって…)

村長娘(うわぁぁ…)グルグル

ザッザッ

下っ端「…」

下っ端(…はっ、馬鹿みてえだな、俺)
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名前:
sage:


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