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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





513: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:07:51 ID:pOT2UyvBR6
村長娘「ふぅ、村に着いた」

巫女「すっかり真夜中になっちゃいましたね」

村長娘「早く帰らないと」

巫女「そういえば、村長さんにはちゃんと許可をもらってきたんですか?」

村長娘「ん?黙って出てきたけど?」

巫女「えっ」

村長娘「こんな時間に出かける許可が出るわけないじゃないか」

巫女「それはそうですけど…心配かけちゃいますよ?」

村長娘「ま、皆寝てるだろうし気付かれないさ」

巫女「だといいですけど…」

「確かに村長には気付かれちゃいねえみたいだな」

巫女・村長娘「!?」ビクッ

下っ端「ったく、眠れねえのは俺だけじゃなかったとは」ザッ

巫女「下っ端さん」

下っ端「女二人で出歩く時間じゃねえだろ。何してたんだよ」

村長娘「い、いいだろ別に。関係ないじゃないか…」

下っ端「ま、確かに別にいいけどな」

村長娘「っ…」
514: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:08:27 ID:pOT2UyvBR6
村長娘「あ、あんたこそ何してるのさ」

下っ端「今言っただろ。俺も眠れねえから散歩だよ」

村長娘「そうかい…」

下っ端「ほら、さっさと戻んねえと騒ぎになっても知らねえぞ?」

村長娘「そ、そうだね。じゃあ巫女様、行こうか」

巫女「…」

巫女「…あっ、下っ端さん!娘さんを家まで送ってあげてください!」

下っ端「は?」

村長娘「えっ」

巫女「私、ちょっと用があるので急いで寝床に戻らなきゃ…お願いしますね!」

村長娘「ちょ…!」

巫女「ではおやすみなさい〜!」ピュー

村長娘「み、巫女様〜!」

村長娘「…」ポカーン

下っ端「…おい」

村長娘「わっ、な、なんだい!?」

下っ端「早く行くぞ。それとも一人で帰るか?」

村長娘「…い、いや、その…一緒に来ておくれ」

下っ端「おう」

コソッ

巫女(娘さん…頑張って!)
515: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:09:02 ID:pOT2UyvBR6
ザッザッ…

村長娘「…」

下っ端「…」

村長娘(…あんな話をした後だから、気まずいったらありゃしないよ)

村長娘(まったく巫女様…気を遣うにしても時と場合ってものを…)

下っ端「なあ」

村長娘「へぁっ?」ビクッ

下っ端「…なんだよその声」

村長娘「あ、うん…なんだい?」

下っ端「お前にしちゃ、やけに静かじゃねえか」

村長娘「いや、その…ね、眠いんだよ」

下っ端「子どもか」

村長娘「わ、悪かったね!」

下っ端「ほれ、着いたぞ。さっさと寝床に行け」

村長娘「はいはい!じゃあねっ!」ズカズカ

村長娘(あ〜っ、やっぱ駄目だあたし…)

下っ端「…おい」

村長娘「な、なんだい?」

下っ端「…ありがとよ」

村長娘「?」
516: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:09:40 ID:pOT2UyvBR6
下っ端「さっき、お前のおかげでこの村にいれるようになっただろ」

村長娘「ああ…だってあたしがあんたを無理やりここに引っ張ってきたようなもんだし…」

下っ端「それに、神様に裁かれそうになった時もそうだし…お前に助けられてばっかりだった」

村長娘「…」

下っ端「借りを作ってばっかだ。いつか返さねえとな」

村長娘「そんな、あたしだって…あんたに助けられただろ」

下っ端「ん?そうだったっけ?」

村長娘「あんたがあたしら抱えて走ったから、生き埋めにならずに済んだんじゃないか」

下っ端「ああ、そんな事もあったな。ははは」

村長娘「…でも、何か返してくれるっていうならさ」

下っ端「ん?」

村長娘「明日、釣りに付き合ってくれないかい?」

下っ端「は?釣り?」

村長娘「あたしはどうしても釣り上げたい奴が海にいるんだよ」

村長娘「だから…その、あんたにも何かと手伝ってほしくってさ」

下っ端「…」
517: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:10:16 ID:pOT2UyvBR6
村長娘「嫌ならいいんだけどさ!退屈かもしれないし…」

下っ端「おう、いいぞ」

村長娘「へ?」

下っ端「いや、俺ここで何でも挑戦してみるって決めたんだ」

下っ端「釣りだってやってみてえし…もしかしたらすげえ得意かもしれねえだろ」

村長娘「あんた…」

下っ端「お前が洞窟で言ってた、やりたい事ってこれか?」

村長娘「…」コクン

下っ端「へっ、いいじゃねえか」

村長娘「へへっ」

下っ端「俺が先に釣り上げちまっても恨むなよ?」

村長娘「調子になるな!あたしが先だよ!」

下っ端「はっはっは」

村長娘「あははっ」

下っ端「…じゃあ明日、さっそく行ってみるか」

村長娘「うん…うん!」

下っ端「決まり。また明日な」

村長娘「うん、また明日」
518: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:11:10 ID:pOT2UyvBR6
巫女「…」

巫女(う〜ん、さすがに声は聞こえないけど…)

巫女(なんだか良い雰囲気な気がする!)

巫女(まったく、娘さんももっと素直になったらいいのに…)

巫女(…)

巫女(…山神様、明日には戻ってくるよね)

巫女(そしたらこの村を出発して…お社に戻って…)

巫女(もっと巫女の仕事頑張らなきゃ。胸を張って山神様に仕えられるように)

巫女(ふふっ。また明日からも楽しみ…)

オオオ…

巫女「?」

………

巫女「…?」

巫女(鳴き声が聞こえた気がしたけど…気のせいかな)

巫女(狼さんの遠吠えか何かだよね…?)

巫女「んっ…ふぁ〜ぁ…」

巫女(もう寝よ…)

スタスタ…



グルルル…
519: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:11:44 ID:pOT2UyvBR6


・・・・・・・・翌朝



520: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:12:18 ID:pOT2UyvBR6
チュンチュン…

巫女「…」

巫女(…山神様、戻ってない)ズーン…

巫女(どうしよう…やっぱり何かあったのかな…)

巫女(とにかく、辺りを探しに行ってみないと…)

ザワザワザワ…

巫女「?」

巫女(外が騒がしい。どうしたんだろう?)

ダカラオレジャネエッテ!

ダマレ!スベテワカッテオルノジャ!

巫女「!」

巫女(下っ端さんと村長さんの声!)

巫女(何かあったんだ!)スクッ

タタタッ
521: ◆WjgYlacz.c:2017/7/24(月) 15:24:30 ID:Kfys1FS8Ww
村民たち「…」ズラッ

下っ端「俺は何も知らねえよ!」

村長「此の期に及んで見苦しいぞ!」

村長娘「だからお父!この人は…」

村長「お前は黙っておれ!」

タタッ

巫女「はぁ、はぁ…」

村長娘「み、巫女様!」

巫女「ど、どうしたんですか…?下っ端さんを取り囲んで…」

村長「おお、巫女様。聞いてくだされ」

村長「朝起きたら食料庫に残っていた僅かな食料がごっそりと無くなっていたのですじゃ」

巫女「えっ…」

村長「昨日、山賊どもに盗られまいと隠していた分ですじゃ。奴らがいなくなって安心していたところに…」ギロッ

下っ端「…」

巫女「で、でも、下っ端さんが盗んだ証なんて…」

村長「昨日の夜、こやつが食料庫の辺りを彷徨いていたのを村民が目撃しております」

巫女「!」

下っ端「だからそりゃ、散歩がてらこの村のどこに何があるか見て回ってただけだって…」

村長「そのような言い訳が通るか!」
522: ◆WjgYlacz.c:2017/7/24(月) 15:24:59 ID:Kfys1FS8Ww
村長娘「ねぇ、待ってってばお父!この人はゆうべは私と一緒にいたんだよ!」

村長「なに?」

巫女「あっ…」

村長娘「昨日、ちょっと眠れなくてさ…外を散歩してたら下っ端と会って…」

村長娘「それからあたしが寝床に戻るまで、ずっと一緒にいたんだよ!」

村長娘「その時も怪しい様子なかったし…この人は咎人じゃないよ!」

村長「ふむ……」

村長「今の話、本当じゃな?」

村長娘「本当だよ!だから…」

パシンッ!

村長娘「痛っ…」ヨロッ

村長「この馬鹿娘が!お前は昨日、命の危険に晒されたのじゃぞ!?」

村長「それなのに、また自分から危険な目に遭おうとするなど…何を考えておる!」

村長娘「…うっ」

村長「儂や村民たちの気も知らずそのような真似をするなど!恥を知れ!」

村長娘「…うぅ…っ!」タタッ

巫女「む、娘さん!」
523: ◆WjgYlacz.c:2017/7/24(月) 15:25:28 ID:Kfys1FS8Ww
村長「…それに、娘と別れた後もこやつは村内をうろついていた事になる。充分に怪しいわい」

下っ端「…」

村長「盗んだものの在り処を吐くまで、納屋にでも閉じ込めておけ」

村民「おう!」ガシッ

下っ端「くそっ、離せよ!いてえな!」ズルズル…

「…なんか怪しいと思ってたのよね、あの人…」ヒソヒソ

「…やっぱ余所者なんか入れるべきじゃなかったんだ…」ヒソヒソ

巫女「…っ」

巫女「そ、村長さん!」

村長「はい、何ですかな巫女様」

巫女「私も昨夜、娘さんと一緒に下っ端さんといました」

村長「なんと」

巫女「すみません。止めていれば良かったのですが…」

巫女「でも私から見ても、下っ端さんは怪しい素ぶりなんて…」

村長「巫女様」

巫女「…?」

村長「あなたはこの村を…娘を救ってくださった。感謝のしようもない」

村長「…しかし、この件はこの村の中の事ですじゃ」

巫女「!」
524: ◆WjgYlacz.c:2017/7/24(月) 15:25:54 ID:Kfys1FS8Ww
村長「娘を止めてくださらなかった事は不問とします」

村長「故に…それ以上の庇い立ては無用ですじゃ」

巫女「う…」

村長「巫女様は今日発ちなさると言ってましたな」

巫女「はぁ…でも…」

村長「大したもてなしもできず、申し訳ない。では後ほど」ペコッ

スタスタ…

巫女「……」ポカーン

巫女(…あれって…首を突っ込むなってこと…だよね?)

巫女(まあ…私も所詮、余所者だしね…)

巫女(余所者…かぁ)ショボン

巫女(山神様も探さなきゃいけないし、まだ出ていける状況じゃないのに…)

巫女(あ、でもその前に…ちょっとだけ食料庫を見ていこうかな)

巫女(何か下っ端さんの疑いを晴らす物があるかもしれないし…)
525: ◆WjgYlacz.c:2017/7/24(月) 15:26:19 ID:Kfys1FS8Ww
巫女「…」ザッ

巫女(…う〜ん、何もない)

巫女(確かに中は空っぽだし…あんまり荒らされた感じもしないし…)

巫女(でも、下っ端さんに限ってそんな…)

ガッ

巫女「えっ」

ステンッ!

巫女「わっ!」ドサッ

巫女「いたた…も〜、石に蹴躓くなんて……え?」

キラッ

巫女「…?」ヒョイッ

巫女(…これ、石じゃない…よね?)

巫女(綺麗…貝殻の片割れ?でも何か違うような…)

巫女(手がかりかな?これ)

巫女(これが何か分かればいいけど…村の人に聞いたら怪しまれそうだし…)

巫女(あ〜、山神様がいれば聞けるのに!)

巫女(……そっか。一か八か!)

タタッ
526: ◆WjgYlacz.c:2017/7/24(月) 15:26:44 ID:Kfys1FS8Ww
ザザーン…

巫女「…はぁ、はぁ」

巫女「海神様ーっ!」

巫女「海神様、いませんかー!?」

ザザー…ン…

巫女「…」

巫女「そんな都合よく、出てきてくれないか…」シュン

巫女「…あれっ?」

ザパーン…

村長娘「…」

巫女(あっちの岩場にいるの、娘さんだ…)

巫女(良かった!何か知ってるかも!)タタッ

巫女「娘さーん!」

村長娘「…巫女様……」グスッ

巫女「!」

村長娘「…」

巫女「…隣、いいですか?」

村長娘「…いいよ」
527: ◆WjgYlacz.c:2017/7/24(月) 15:27:14 ID:Kfys1FS8Ww
ザパーン

巫女「…」

村長娘「…」

巫女「あの、娘さん…」

村長娘「…昨日さ」

巫女「?」

村長娘「あの後、下っ端と約束したんだよ」

巫女「何をですか?」

村長娘「今日、一緒に釣りに行こうって」

巫女「!」

村長娘「あたしの趣味にあいつも付き合うって、そう言ってくれたんだ」

村長娘「だから楽しみでさ、夜更かししたくせにすごい早起きして準備して…」

巫女「…」

村長娘「…それなのに」

村長娘「こんな事に…なっちまうなんて…」

巫女「…」

村長娘「なんでだよ…悔しいよ…巫女様…」グズッ

巫女「娘さん…」
528: ◆WjgYlacz.c:2017/7/24(月) 15:27:38 ID:Kfys1FS8Ww
巫女「…大丈夫ですよ、娘さん」

村長娘「…?」

巫女「下っ端さんが泥棒だなんて、私は信じてないです」

巫女「娘さんだって下っ端さんがやったなんて思ってないでしょ?」

村長娘「そりゃ…そうだけどさ…」

巫女「下っ端さんの疑いを晴らすために、盗んだ張本人を探し出しましょう!」

巫女「そうすれば村の皆さんも分かってくれますよ!」

村長娘「……」

村長娘「…そうだね巫女様。泣いてる場合じゃなかった」グシッ

村長娘「あたしらがやるしかないね」

巫女「はい!」

村長娘「よ〜し、こうなりゃまた一つあいつに貸しを作ってやろう!」

巫女「その意気です!」

村長娘「でも、どうやってさ?手がかりとかあるのかい?」

巫女「え〜っと、それなんですけど…」ゴソッ

巫女「これって何か分かります?」

村長娘「ん?」
529: ◆WjgYlacz.c:2017/7/24(月) 15:28:10 ID:Kfys1FS8Ww
巫女「食料庫の近くに落ちてたんです」

巫女「やっぱり貝殻ですか?これ…」

村長娘「…」ジーッ

村長娘「こんな色合いの貝殻、この辺じゃ見ないね」

村長娘「というか多分貝殻じゃないよこれ」

巫女「えっ」

村長娘「まあ何なのかと言われりゃ分からないけどさ…」

巫女「う〜ん…」

村長娘「山神様なら分かるんじゃないのかい?」

巫女「それが…山神様も戻ってなくて…」

村長娘「えっ、そうなのかい?」

巫女「はい。朝になったら戻ってくると思ってたんですけど…」

村長娘「そっちも心配だねぇ」

巫女「本当に、どこ行っちゃったのかなぁ…」

村長娘「どこか心当たりはないのかい?」

巫女「ないですけど……あっ、そういえば」

村長娘「?」
530: ◆WjgYlacz.c:2017/7/24(月) 15:28:48 ID:Kfys1FS8Ww
巫女「昨日の夜、山の方から何かの唸り声が聞こえたんです。娘さんも聞こえませんでした?」

村長娘「唸り声だって?あたしは聞こえなかったけど…」

巫女「あれ?けっこう響く声だったんだけどなぁ…」

巫女「ちょっと不気味な声だったから…気にはなります」

村長娘「山神様と関係ありそう?」

巫女「初めて聞く声でしたから…分からないです」

村長娘「う〜ん。ま、とにかく山の方へ行ってみるかい?」

巫女「あ、でも村長さんに心配されるかもしれないし、娘さんは村に戻った方が…」

村長娘「ああ、いいんだよ。お父の鼻先に咎人を突き付けてやるまでは帰らないさ」フンス

巫女(…意外とさっき叩かれたこと、根に持ってるんだなぁ)

村長娘「さあ、行くよ巫女様!」

巫女「えっ、あ、はい!」

タタッ
531: ◆WjgYlacz.c:2019/10/14(月) 22:12:00 ID:gto83BY32.



・・・・・・



532: ◆WjgYlacz.c:2019/10/14(月) 22:12:47 ID:gto83BY32.
村長娘「…で、山の中腹まで来たわけだけど」

巫女「なんですか、これ…!?」

ブス…ブス…

ガララッ…

巫女「一面焼け野原じゃないですか…」

村長娘「でも昨日は雷もないし、誰がこんな事したんだい!?」

巫女「…」

村長娘「まったく、村まで火が来てたらどうなっていたか…」ブツブツ

巫女「…昨日の唸り声が何か関係しているんでしょうか」

村長娘「へ?」

巫女「だって、声はこの方角から聞こえましたし…」

村長娘「う〜ん…じゃあ何の声だったっていうのさ?」

村長娘「火を放つ化け物でもいるのかい?」

巫女「いえ…それは分からないですけど…」

村長娘「まさか、山神様が…なんてことはないよね?」

巫女「や、山神様がこんな事するはずありません!」

村長娘「!」

巫女「あっ…すみません。大声出しちゃって…」

村長娘「い、いや…」

パキッ…

巫女・村長娘「!」ビクッ
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