ーむか〜しむかし、とある場所で
487: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:18:50 ID:.Fu.qeb/.Y
山賊「へ、へい…」
山神「いくら土神に誑かされたとはいえ…あなた達のしてきた事の罪は重いわ」
山賊たち「…」
山神「近隣の村々を襲い、傷付いた人たちもたくさんいるでしょう」
下っ端「うっ…」
山神「土神が不在の今、私が沙汰を下します」
山賊たち「…ううっ…」
巫女「…」
巫女「あの、山g…」
村長娘「待っておくれよ!山神様!」
山神様「?」
山賊たち「?」
村長娘「こいつら、確かに悪い事してきたけどさ!」
村長娘「それでもこれからは真っ当に生きようってさっき話してんだよ!」
村長娘「お願いだよ山神様!許してやっておくれ!」
下っ端「お前…」
山神「…」
488: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:19:17 ID:.Fu.qeb/.Y
巫女「山神様、私からもお願いします!」
山神「巫女…」
巫女「もう一度、この人たちに機会をあげてください」
巫女「反省して、真面目に生きていく機会を」
山神「…」
山神「…山賊たち」
山賊「へい…」
山神「今、娘さんが言っていた事は本当かしら?」
山賊「…ほ、本当です!」
山賊「俺たち、これからは真面目にやるつもりで話してたんだ!」
山神「…ふふっ。そういう事なら見せてもらいましょう」
山神「これからどうあなた達が生きるのかを」
下っ端「…」
山神「田畑を耕し、命を愛で、他者と助け合う事ができると誓いますか?」
下っ端「…や、やる!やります!」
山賊「おう!もちろんだ!」
山賊「ああ!」
山神「…ふふっ。そういう事でしたら」
山神「今日のところは、見逃しましょう」
山賊「あ、ありがてえ!」
山賊「ありがとうございます神様!」
489: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:19:44 ID:.Fu.qeb/.Y
村長娘「ふぅ、よかった〜」
巫女「ですねっ!」
下っ端「…おい」
村長娘「なんだい?」
下っ端「…す、すまなかったな」
村長娘「おっ?」
下っ端「まさか、攫った奴らに庇われるとは思わなかったぜ」
下っ端「怖い目に遭わせて…すまなかった」
村長娘「へへっ」
山賊「そうだ。それに何度も命を助けられた」
山賊「感謝してもしきれねえ」
山賊「ありがとうな。あんたらの事は忘れねえ」
巫女「なんか、恐縮しちゃいますね」
村長娘「あははっ、いいって事よ!」
490: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:20:14 ID:.Fu.qeb/.Y
巫女(こうして山賊さんたちの騒動は終わりを告げて…)
巫女(一人、また一人と山賊さんたちはこの場を立ち去っていきました)
491: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:46:27 ID:.Fu.qeb/.Y
村長娘「…皆行っちまったねぇ」
巫女「ええ」
村長娘「さて、じゃああたしらも…」
下っ端「…」ポケーッ
村長娘「うわっ!いたのかい」
下っ端「うわっとはなんだよ」
巫女「下っ端さん…」
村長娘「あんたはどうするのさ?」
下っ端「ん?ああ…どうすっかな」
下っ端「特に行く所もねえし、故郷にゃ知り合いもいねえしな」
村長娘「そうなのかい?」
下っ端「ま、いいさ。適当にぶらついて探してみるからよ」
下っ端「俺がこれからやりたい事とかさ」
村長娘「…」
村長娘「…あ、あのさ」
下っ端「あ?」
村長娘「あんた、うちの村に来ないかい?」
下っ端「へっ?」
492: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:47:04 ID:.Fu.qeb/.Y
下っ端「お前の村にだと?」
村長娘「うん。行くあてがないんだろ?」
下っ端「そうだけど…俺は山賊だぜ?」
村長娘「大丈夫だよ。あたしが上手く話す。あんたあの時村に来てなかったしさ」
下っ端「…」
村長娘「あ、嫌ならいいんだよ。でもあんた、放っといたら野垂れ死にそうでさ…」
下っ端「へっ、なめるんじゃねえよ。俺は…」
村長娘「そ、それにさ!」
下っ端「?」
村長娘「あたし言っただろ?手伝うって」
村長娘「あんたのやりたい事を探すの…手伝うって言っちまったからさ」
村長娘「その、近くにいてくんないとそれもできないっていうか…」
下っ端「…ああ、そうだな。そんなこと言ってたかな」
村長娘「だから…うちに来てよ。何にもない村だけど、大事なものが見つかるかもしれないじゃないか」
下っ端「分かったよ。そんなに言うなら、少し世話になるさ」
村長娘「ほ、本当かい!?」パアッ
下っ端「なんでそんな嬉しそうなんだお前」
巫女「…鈍感」ジトー
下っ端「え?お、えっ?」
493: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:48:27 ID:.Fu.qeb/.Y
村長娘「そんじゃ、帰ろうかね」
巫女「はい」
村長娘「山神様の事も村の皆に…あれ?」
コツゼン
下っ端「そういやさっきからいねえな」
村長娘「なんだ、紹介しようって思ったのにさ」
巫女「本当はあんまり人前に姿を見せたがらないんですよ」
村長娘「そうなのかい。じゃあ仕方ないね」
下っ端「…あ〜、なんか緊張するな」
村長娘「なんで?」
下っ端「長いこと村とかで暮らしてないからな。馴染めっかな…」
村長娘「うちの村は穏やかだから大丈夫だよ。あたしみたいに」
下っ端「えっ」
巫女「えっ」
村長娘「なんだい、巫女様まで…冗談だよ」
巫女「良かった。お転婆な自覚はしてたんですね」
村長娘「意外と毒舌だねぇ」
494: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:48:55 ID:.Fu.qeb/.Y
・・・・・・・・・・
495: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:49:35 ID:.Fu.qeb/.Y
村長「ぬぉぉ〜っ!娘よ〜!」ドバーッ
村長娘「な、なんだい、帰ってくるなり暑苦しいね」
村長「怪我はないか!?ひどい目に遭わされなかったか!?」
村長娘「ぶ、無事だよ!みんな巫女様のおかげさ」
巫女「えっ!いや、私は…」
村長「巫女様!ありがとうございました!」ガバッ
巫女「村長さん…」
村長「本当に山賊どもをやっつけてくださるとは…」
村人「まったく、感謝もしきれません」
村人たち「ありがとうございました!」ズザッ
巫女「あ、え〜っと…」チラッ
村長娘「……」ニコッ
巫女「…はぁ」
巫女「…い、いいって事です!」
村人一同「はは〜っ!」
巫女(これ、いっつも罪悪感があるんだけどなぁ…)ヒクヒク
496: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:50:17 ID:.Fu.qeb/.Y
村長「ところで…」チラッ
下っ端「…?」
村長「そっちの男は誰かの?」
村長娘「うん、山賊に一緒に捕まってた旅の人だよ」
村長「ほう、山賊に?なんでまた?」
下っ端「え、な、なんでって…」
下っ端(理由なんざ考えてねえ…)
村長娘「…お父、その人記憶がないんだ」
下っ端「え」
村長「なんじゃと?」
村長娘「洞窟から逃げる時に頭に岩がぶつかって、それで全部忘れちゃったらしいんだよ」
村長娘「捕まってた理由も、元いた所も全部」
村長「なんと…本当かね?」
下っ端「あ、え〜……そ、そうなんだ!うん」
村長「だから行くあてもないんだよ。記憶が戻るまでここにいてもらってもいいだろ?」
村長「なるほど…それは無下にするわけにはいかんのぅ」
下っ端「…」
村長「あい分かった。好きなだけこの村にいるとよいわい」
下っ端「ど、ども…」
村長娘「良かった!ありがとう、お父!」
下っ端(…また…助けられちまった)
497: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:50:58 ID:.Fu.qeb/.Y
・・・・その夜・・・・
498: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:51:54 ID:.Fu.qeb/.Y
ホー…ホー…
巫女「…」
巫女(静かな夜…)
巫女(今日あったことが噓みたい)
バサバサッ
巫女「?」
カラス「カァーッ」
巫女「あっ、山神様」
カラス「眠らないのかしら?」
巫女「なんだか目が冴えちゃって…」
山神「ふふ、ご苦労だったわね、巫女」
巫女「山神様こそ」
山神「…ごめんなさいね。守るなんて言っておきながら全然助けられなくて」
山神「土神が私の探知能力を妨害するもんだから、ずっと洞窟の中を探し回る羽目になったのよ」
巫女「そ、そうだったんですか…」
山神「でも、私の助けが無くてもあなたたちは生きていた。生きようと頑張っていた」
巫女「…自分の力で生き残ろうって、あの場の全員がそう思ったんです」
巫女「山賊さんたちもそれで改心したようなものだったし…」
山神「そうだったの…」
499: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:52:31 ID:.Fu.qeb/.Y
巫女「それに本当に危ない時は、山神様のくれたこの羽に助けてもらいましたから…」
山神「渡しておいてよかったわ」
巫女「でもすごいですね。この羽根」
山神「その力を引き出したのはあなたの強い想いよ」
山神「まあ、洞窟の天井を吹き飛ばすなんて大それた事をしたと思うけれど」
巫女「その前も落ちてくる岩を止めたりしましたし…」
山神「…えっ?」
巫女「?」
山神「あの衝撃波の前にも使ったの…?」
巫女「はい。二回、この羽根に助けられました」
山神「……」
巫女「どうしたんですか?」
山神「その羽根に込めた神力は一回分よ」
巫女「えっ」
山神「岩を止めたというなら…そこでその羽根の効力は切れているはず」
巫女(…だからその後は願っても何も反応しなかったんだ…)
山神「残っていた土神の神力に反応したのかしら…それとも…」
巫女「…あの、山神様」
山神「何かしら?」
500: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:53:02 ID:.Fu.qeb/.Y
山神「……声が聞こえた?」
巫女「はい。羽根をもっと高く掲げて…って」
山神「…」
巫女「落ち着いた女の人の声でした。あっ、それに…」
巫女「その声が言ってました。『山神様をよろしくね』って」
山神「!」
巫女「山神様、心当たりは…」
山神「…まさか…」
巫女「…山神様?」
山神「まさかそんなこと…」ブツブツ
巫女(山神様が…動揺してる…?)
山神「…巫女」
巫女「はい」
山神「…あなたに話すべきかどうか…悩んでいることがあるの」
巫女「な、何ですか?」
山神「…でも……ん〜……」
巫女(こんな山神様、初めて見た…どうしたんだろう?)
山神「…ごめんなさい。やっぱり今はまだ…」
巫女「……」
巫女「いいですよ。山神様がお話ししたい時に話してください」
山神「…ありがとう」
巫女(ものすごく気になるけど…)
501: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:53:40 ID:.Fu.qeb/.Y
巫女「そういえば、もう調子は大丈夫なんですか?」
山神「調子?」
巫女「あの、だってさっき…」
『…ぐ…ぅ…』ズズズ
山神「…ああ、あれね」
山神「神降ろしはすごく神力を消費するの。神力をあれほど使うことが久しく無かったから、少しおかしくなってしまったわね」
巫女「…」
山神「もう心配しなくていいわ。他の神と争うなんて、今後もそうそうないから」
巫女「…はい」
巫女(やっぱりこれも嘘…なのかな)
巫女(あの海神様の言いぶりからすると、それだけじゃないはず)
巫女(繰り返すって事は…前にも同じことがあったってことだよね?)
巫女(それに、山神様の内なるものって…何なんだろう?)
巫女(聞きたいけど…聞いちゃいけないような気がする)
巫女(山神様、いつかそれも教えてくれるかな…)
山神「……」
スタスタ…
巫女「あれ、誰かの足音が…」
502: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:54:09 ID:.Fu.qeb/.Y
村長娘「…巫女様」
巫女「えっ?」
村長娘「やあ、まだ起きてたんだね」
巫女「娘さん。どうしたんですか?」
村長娘「今日のお礼にさ、良いところ教えてあげようと思って」
巫女「良いところ?」
村長娘「そう。…あれ、夜中にからすなんて珍しいね」
山神「まあ、確かに不自然よね」
村長娘「えっ、喋っ…」ギョッ
村長娘「…あれ、もしかして山神様かい?」
山神「ふふ、察しが良くて助かるわ」
村長娘「なんだ、どっか行っちゃったのかと思ってたよ!」
山神「村の他の方には内緒にしててね」
村長娘「なんだ、そんなに遠慮しなくても…」
村長娘「そうだ。ちょうどいいや、山神様も一緒に行こう!」
山神「その良いところに…ですか?」
村長娘「うん!」
503: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:35:37 ID:JtRs1/PrKY
・・・・・・・・・・
504: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:36:47 ID:JtRs1/PrKY
村長娘「ほら!ここだよ!」
モワワーン…
巫女「えっ、ここって…温泉?」
山神「まあ、風流ね」
村長娘「他の人も知らない、あたしの秘密の場所さ」
巫女「すごいですね…こんな山の中に」
村長娘「散策してたら偶然見つけてさ。ここに入れば疲れも吹き飛ぶだろ?」
村長娘「さ、早く入ろう!」シュルシュルッ
巫女「ちょ、ちょっと娘さん!?」アセッ
村長娘「ん?なんだい、服脱がなきゃ入れないだろ?」
巫女「え、え〜っとそうですけど…」
村長娘「…はは〜ん」ニヤリ
巫女「えっ」
村長娘「恥ずかしがる事ないさ!女同士裸の付き合いしようよ!」
巫女「恥ずかしいに決まってるじゃないですか!山神様も何か言って…」
サル(山神)「ウキ?」
巫女「あっ、ずるい!お猿さんなら裸でも大丈夫でしょうよ!」
村長娘「さあ、観念しなよ巫女様!」ガシィッ
巫女「いやーっ!」
シュルルッ!
505: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:37:15 ID:JtRs1/PrKY
カポーン…
村長娘「は〜っ、今日は疲れたねぇ。散々走り回ったしさ」
巫女「…うぅ、乱暴されたぁ…」
山神「巫女、人聞きの悪いこと言わないの」
村長娘「そうだよ、ただ脱がしただけじゃないか」
巫女「娘さん、奔放過ぎますよ…」
村長娘「漁師の村の娘なんてこんなもんさ」
巫女「……」
巫女「…でも格好いいです」
村長娘「え?」
巫女「私は娘さんがいなかったら今頃、全部諦めて土に埋まってました」
巫女「娘さんが叱咤してくれたから…私は足掻こうって思ったんです」
巫女「それに、山賊さんたちもそう。娘さんの言葉で心が動いた」
巫女「本当に感謝されるべきは私なんかじゃなくて、娘さんなんです」
村長娘「ちょっとやめておくれよ。茹だっちゃうじゃないか」
巫女「私もああいう人の心に響くような言葉を…言えるようになりたい…」
山神「…」
506: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:37:43 ID:JtRs1/PrKY
村長娘「…あたしはほら、馬鹿正直にものを言っちゃうんだよ」
村長娘「それで昔っから言わなくていい事まで言って人を怒らせたりしてさ」
村長娘「お父にもよく言われたよ。少しその口を縫った方がいいって」
巫女「……」
村長娘「あの時だってそうさ。思った事が口に出ただけ」
村長娘「腑抜けてる山賊どもに苛ついたままに言ったんだ」
巫女「でも、それが…」
村長娘「そうだよ。本当に心から思ったことだから、あいつらにも巫女様にも届いたんだ」
村長娘「本心を隠した上辺だけじゃない言葉だから」
巫女「…」
村長娘「…あれ、あたし何語ってんだろう」ハッ
村長娘「あ〜恥ずかし恥ずかし!ちょっと開放的な気分になるとすぐこれだよ」
巫女「あははっ」
村長娘「忘れて忘れて!」
巫女「…いえ、忘れません。ちゃんと心に刻みましたから!」
村長娘「まったく、さっきの仕返しのつもりかい…」ブクブク
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