ーむか〜しむかし、とある場所で
467: ◆WjgYlacz.c:2017/5/5(金) 14:39:50 ID:Zlu.wp1NEw
村長娘「せいやっ!」
ザッ!
巫女「えい!」
ザッ!
山賊たち「……」
下っ端「…」
下っ端(…けっ、女二人でどうしようってんだ)
スクッ
下っ端「…?」
山賊「……」
山賊「…俺、故郷に母ちゃんを置いて出てきたんだ」
山賊「病気がちで…でも必死で働いててよ…」
山賊「…もう一度会いてえな」ガラン
下っ端「お、おい…」
山賊「おりゃっ!」ブンッ
ザクッ!
村長娘「おっ」
巫女「すごい力…!」
468: ◆WjgYlacz.c:2017/5/5(金) 14:40:18 ID:Zlu.wp1NEw
巫女「手伝ってくださるんですか?」
山賊「ああ。あんたら見てたらじっとしてらんなくなっちまった」
村長娘「へへっ」
「ま、待てよ!」ザッ
巫女「!」
山賊「俺だって可愛い嫁さんもらうまでは死ねねえ!」
山賊「俺もずっと富士の山を登りてえって思ってたんだ!」
山賊「俺は京の都で芸者さんと遊んでみてえ!」
「俺も俺も!」
「俺だってな…」
ワイワイ
巫女「皆さん…」
山賊「俺たちも掘るぜ。悪かったな、任せちまっててよ」
山賊たち「おっしゃ、やるぞ〜!」
ザクッ!ザクッ!ザクッ!
下っ端「……」ポカーン
469: ◆WjgYlacz.c:2017/5/5(金) 14:40:49 ID:Zlu.wp1NEw
下っ端(なんだってんだ…)
山賊たち「うおおーっ!」ザクッ!
下っ端(急に皆して…無駄な事しやがって…)
巫女「ていっ!」ザッ!
下っ端「……」
『あんた達にはないのかい?死ぬ気で生きたいと思う何かが…』
下っ端「……」
村長娘「はっ!」ザッ!
下っ端「……畜生…」ギリッ
ザッ
村長娘「はぁ…硬い岩だねぇこりゃ」
巫女「娘さん、少し休んでくださいよ」
村長娘「何言ってんだい。あたしは全然大丈夫だよ」
村長娘「それっ…おっとっと」フラッ
巫女「娘さん!」
ガシッ
村長娘「…へ?」
下っ端「…」
村長娘「あんた…」
470: ◆WjgYlacz.c:2017/5/5(金) 14:41:19 ID:Zlu.wp1NEw
下っ端「ふらついてんじゃねえか。女のくせに無理しやがって」
村長娘「な、なんだい。あたしはまだ…」
下っ端「いいから、黙ってそこで休んでろ」
村長娘「ちょっ…」
下っ端「はっ!」ブンッ
ガッ!ザッ!
村長娘「…」
下っ端「…羨ましいよ」ザッザッ
村長娘「え?」
下っ端「俺にはねえ。この先やりたい事も、欲しい物も、行きたい所も…何もねえ」
下っ端「今までずっと、そんなこと考えずに生きてきた」
村長娘「…」
下っ端「でもよ、悔しいけど…お前の話を聞いて思った」
下っ端「こんな死にそうな状況でも…何にも思い浮かばねえ自分が嫌だ」
下っ端「俺は欲しい。お前が言う、死んでも生きたいと思う何かが…!」
村長娘「…」
下っ端「俺はここを出て…それを探す!変わるために、俺はここを出るんだ!」ガッ!
下っ端「…いってて」ジンジン
村長娘「ぷっ」
下っ端「な、なんだ!笑うな!」
471: ◆WjgYlacz.c:2017/5/5(金) 14:41:52 ID:Zlu.wp1NEw
村長娘「格好付けた割に締まらないね」
下っ端「うるせえってんだ」
村長娘「でもなんだか…それも楽しそう」
下っ端「…あ?」
村長娘「いいさ。あたしも手伝う。あんたがそれを探すのを」
下っ端「…」
村長娘「まあ、まずはここから出れないと始まらないけどさ」
下っ端「おう」
村長娘「それじゃ、休んでる暇ないね」
下っ端「いや、だからてめえは休んでろって…」
村長娘「漁師の娘を舐めるんじゃないよ!」バシッ
下っ端「いでっ!」
村長娘「さあ、ぼけっとしてないで掘った掘った!」ザッ!
下っ端「へっ、言われんでもやってやらあ!」ザクッ!
472: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:03:02 ID:.Fu.qeb/.Y
下っ端「おりゃああ!」ザッ!
村長娘「はぁーっ!」ザクッ!
山賊たち「せいやっ!」ザッ!
巫女「えーい!」ガッ!
ザクッザクッザクッ!!
巫女(すごい…皆で一丸となって…)
巫女(これなら…これならいけるかも!)
ピシッ…
巫女「…?」
ビシビシッ…!
巫女「っ!」
巫女「天井が!」
村長娘「えっ!?」
山賊「おいおい、まずいぞ!?」
下っ端「ここも崩れるってのか!?」
村長娘「い、急がないと!」
473: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:03:42 ID:.Fu.qeb/.Y
山賊「うおおおーっ!!」ザッザッザッ!
巫女(せっかく…もう少しなのに…!)
ガラッ…
下っ端「うわっ!」
山賊「だ、駄目だ!間に合わねえっ!」
村長娘「くそっ、なんてこったい!」
巫女「…っ!」
タタッ
村長娘「み、巫女様!?」
巫女「…」ゴソッ
バッ
村長娘「あれは…さっきの羽根…」
巫女「……っ」ググッ
巫女(お願い…お願いします…!)
巫女(皆を助けて…!)
巫女(山神様…!皆をどうか…!)
村長娘「巫女様っ!」
巫女「っ…!」ギュッ
カッ!!
474: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:04:22 ID:.Fu.qeb/.Y
巫女「えっ!?」
カアアアッ!
村長娘「うわっ!?」
山賊「なんだ!?眩しい!!」
巫女(は、羽根が…また光ってる…!)
巫女(でもさっきと何か違う。これはいったい…)
「……………て」
巫女「?」
巫女(誰かの声が聞こえる…山神様?)
「もっと……く…げて…」
巫女(山神様じゃ…ない。それなら誰?)
「もっと高く…羽根を掲げて」
巫女(もっと高く…?こう?)
「…そう。それでいいよ」
巫女(誰なの?)
「……山神様を…よろしくね」
巫女「えっ?」
475: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:04:57 ID:.Fu.qeb/.Y
巫女「だ、誰なの!?」
「………」
巫女(聞こえなくなっちゃった…)
ブルブルッ…!
巫女「わっ!」
巫女(羽根が…震えだしてる…!)
巫女(離しちゃ駄目…!絶対に!)
村長娘「だ、大丈夫かい巫女様!?」
巫女「わ、私は大丈夫です!それより、皆さん近付かないでください!」
村長娘「巫女様…」
巫女(感じる…手の先に熱が篭って…)
巫女(力が…集まってる!)
ググッ…
巫女「い、いっけぇぇぇっ!!」バッ!
カッ!!
ドゴオオオンッッ!!
村長娘「わあっ!」
山賊たち「うおああっ!?」
476: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:05:27 ID:.Fu.qeb/.Y
・・・・・・・・・・
477: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:06:05 ID:.Fu.qeb/.Y
オオオ…
パラッ…
村長娘「…あてて…」
村長娘「なんだい、何かが乗って…」
下っ端「ふう。どうやら無事みてぇだな…」
村長娘「!?」
パンッ!
下っ端「おあっ!?いでぇぇっ!」
村長娘「なっ、ど、どこ触ってんだい!」
下っ端「な、なんだよ…とっさに庇ってやったってのによ…」ヒリヒリ
村長娘「え?あ、うん…そりゃ…どうも」
下っ端「ったく…それよか、何だったんだ?さっきの」
村長娘「はっ!み、巫女様は!?」ガバッ!
巫女「」グッタリ
村長娘「み、巫女様っ!!」タタッ
478: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:06:36 ID:.Fu.qeb/.Y
村長娘「巫女様!しっかりしておくれよ!」ガシッ
巫女「」
村長娘「巫女様〜っ!!」ユサユサユサッ
巫女「ちょ…む、娘さん…やめ…」ユサブラレ
巫女「き、気持ち悪くなっちゃう…」ウプッ
村長娘「あっ、ご、ごめんよ」
巫女「皆さん、無事でしたか…」
村長娘「ああ。大丈夫だよ」
下っ端「しっかし、あんたすげえな」
下っ端「なんなんだ?また不思議な術を使ったのか?」
巫女「…まあ、そういう事です」
山賊「しかし驚いたな」
山賊「ああ。天井を吹っ飛ばしちまうとは。空が見えるぜ」
山賊「…あんた、すまなかったな。あてになんねえとか言っちまって」
山賊「そうだ。あんたは命の恩人だ」
巫女「…いえ。気にしないでくださ…」
ズゴゴゴゴ…
一同「!?」
479: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:07:06 ID:.Fu.qeb/.Y
下っ端「こ、今度はなんだ!?」
村長娘「また地震かい!?」
巫女「は、早くここから離れましょう!」
ボコッ!
巫女「えっ?」
ドゴオオン!!
もぐら「巫女っ!」
山賊「な、なんだ!?」
下っ端「で、でっかいもぐらだとぉ!?」
巫女「えっ、もしかして…!」
もぐら「ああ、良かった…」
ポンッ!
従者「巫女…無事だったのね…!」
村長娘「じゅ、従者さん!?」
山賊「おい!今もぐらが人にならなかったか!?」
巫女「や、山神様ぁっ!!」タタッ
山神「来るのが遅くなったわね。でも、よくやってくれたわ」
村長娘「か…」
山賊たち「か…」
一同「神様ぁ!?」
480: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:07:40 ID:.Fu.qeb/.Y
巫女「あっ、いけない…」
従者「どちらにしても遅いわよ。別にいいわ」
山神「皆さん、私は山神といいます。ここから少し離れた地の土地神をしているわ」
山賊「か、神様…本物なのか…」
下っ端「初めて見た…」
村長娘「え?じゃ、じゃあ最初から従者さんが神様だったのかい?」
巫女「実はそうなんです」
村長娘「な、なんだい…それならそうと教えてくれても良かったじゃないか」
山神「ふふ、ごめんなさいね」
巫女「山神様、何があったんですか?」
山神「話すと長くなるわ。とにかくいったんここを出ましょう」
巫女「はい」
下っ端「で、でも神様、ここを登るのはかなり…」
山神「…」スッ
ヒュンッ!
下っ端「大変……あれっ?」
山賊「うおっ、いつの間に地上に出てる!」
山神「何か言ったかしら?」
下っ端「な、なんでもねえです…へぇ」
481: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:08:10 ID:.Fu.qeb/.Y
ザッ
巫女「?」
村長娘「ん?あいつは…」
親分「…」
下っ端「お、親分!?」
山賊「無事だったんですかい!?」
親分「お前らも無事だったのか」
下っ端「親分!良かった!」タッ
山神「待ちなさい」グイッ
下っ端「うわ!」ドテッ
下っ端「な、何を…」
親分「全員ほぼ無傷で出てくるとはなあ」
親分「めでたしめでたしってか。まったく…」
親分「…つまんねえな」ギロッ
下っ端「っ!」ゾクッ
山賊たち「お、親分…?」
482: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:08:40 ID:.Fu.qeb/.Y
山神「あれも神よ。この地の土地神」
巫女「えっ!?そうなんですか!?」
下っ端「お、親分が…神様?」
山神「土神。あなたの余興に付き合うのもおしまいよ」
土神「はっ、勝手に終わらすんじゃねえ」
土神「こうなりゃてめえもそいつらもぶっ殺さねえと、腹の虫が収まらねえな」
山神「…どこまでも低俗な神ね」
土神「なんとでも言え」
土神「ここは俺の地だ。俺のやりたいようにやらせてもらう」
山神「あなたのような無益な殺生をする神に、この地は任せられないわ」
山神「人間の懸命に生きようとする姿を踏みにじる、あなたなんかに」
土神「はっ!ならどうする?俺を神から引きずり降ろすってか?」
山神「…」
土神「がはは!やれるならやってみろ!てめえのような土地神にそんなことが…」
山神「そうさせてもらおうかしらね」
土神「…は?」
山神「…」スッ
バシュッ!
土神「何いっ!?」
ドンッ!
483: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:09:15 ID:.Fu.qeb/.Y
土神「うおああっ!!」シュウウ…
山神「…今までご苦労様、土神」
土神「て、てめえ…やっぱりただの土地神じゃあ…」ウウウ…
巫女「お、親分さんが…」
下っ端「小さくなってく…だと?」
土神「ああぁぁぁ…っ!」ウウウ…
巫女「や、山神様…何をしたんですか?」
山神「神降ろしよ。神としての能力を剥奪するの」
巫女「えっ、じゃあ…」
山神「もう土神は神ではなくなったわ」
ポンッ!
クネクネ…
山賊「…お、親分が」
下っ端「蚯蚓(みみず)になっちまった…」
山神「土地神は元々は何かしらの生き物なの。その元の姿に戻っただけのことよ」
蚯蚓「」ウゾウゾ
村長娘「なんだか儚いねぇ…」
山神「神も人間も、元を辿れば同じ生き物…っていうことよ」
巫女「これで終わりですかね。山神様…」
山神「ええ……うっ」ピキッ
巫女「山神様…?」
484: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:15:57 ID:.Fu.qeb/.Y
山神「…うぅ…」ズズズ…
巫女「山神様!?どうしたんですか!?」
山神「…ぐ…ぅ…」ズズズ…
山賊「おいおい何だよ!?次から次へと!」
村長娘「巫女様!神様はどうしちまったんだい!?」
巫女「わ、分からないです!」
巫女(山神様…なんだか怖い…)
山神「う…ぁ……ぁぁ……」ググッ
巫女「山神様っ!!」
ヒュッ
「離れるのじゃ!」ザバッ!
巫女「えっ?」
バシャッ!
巫女「きゃあっ!」
山神「」ビシャビシャ
山神「…うっ……はぁ、はぁ…」
485: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:16:46 ID:.Fu.qeb/.Y
老人「…ふう、間に合ったかの」
山賊「だ、誰だこの爺さん?」
巫女「あ、あなたは…?」
老人「おう、この姿では初めてか。海亀のままだと陸では不便での」
巫女「海亀…まさか海神様!?」
村長娘「こ、この人も神様かい?」
下っ端「今日は何だってんだ…」
海神「ふむ、山神。しっかりせい」
山神「…海神様」
海神「馬鹿者が。神降ろしなど高等神力を使いおって」
海神「儂が気配を察して駆け付けねばどうなっていたと思っておる」
山神「申し訳…ありません」
海神「人間を守る為とはいえ…また繰り返す気か。あの者も浮かばれんぞ」
山神「……」
巫女「あの、海神様…繰り返すって…?」
海神「お前には関係のない事じゃ」
巫女「…」
巫女(相変わらず、蚊帳の外かぁ…)
486: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:18:24 ID:.Fu.qeb/.Y
山神「…海神様」
海神「む?」
山神「土神がいなくなって…この地は不安定になります。どうか…」
海神「安心せい。次の土地神が降るまで、儂がこの地を見よう」
山神「ありがとうございます」
海神「くれぐれも気を付ける事じゃ。お前の内なるものはまだ健在じゃぞ」
山神「…はい」
ヒュッ
山賊「うおっ、消えた…」
下っ端「何だったんだ…?」
巫女「山神様、大丈夫ですか?」
山神「ふふっ、大丈夫よ。心配かけたわね」
巫女(良かった…いつもの山神様だ)
山賊「それにしても…疲れたぜ」
山賊「いっぺんに色々と起こりすぎだな」
下っ端「まさか親分が神様だったなんて…」
山神「…山賊たち」
山賊たち「!」ビクッ
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