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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





448: ◆WjgYlacz.c:2017/4/29(土) 22:43:14 ID:/FBqKYUaXc
土神「だが山神さんよ、一つ聞かせてくれ」

山神「何かしら」

土神「なんでてめえはそこまで人間の肩をもつ?」

山神「…」

土神「所詮人間なんざ取るに足りねえ存在…ちょっと生物の中じゃ知恵が働くくらいのもんだろ」

山神「…」

土神「初めて見たぜ。人間をそんなに必死に庇う神なんてよ」

山神「それに答えるには…いささか長くなるわね」

山神「心を改めてから尋ねてきなさいな」

土神「はっ!長々と昔話なんざ聞きたかねえよ」

山神「…ただ単純に一言で言うなら…」

山神「人間が好きだからよ」

土神「あ?」

山神「人間が好きだから、肩をもつ。それだけの話よ」

土神「…」

山神「自分が変わり者だなんて自覚してるわ」

土神「へっ、本当だな」
449: ◆WjgYlacz.c:2017/4/29(土) 22:43:53 ID:/FBqKYUaXc
山神「私はもう二度と……」

土神「…何だ?」

山神「…いえ、何でもない」

土神「ふん」

山神「とにかく、あなたも土地神としてもう一度人間とちゃんと向き合いなさい」

山神「それが私たちのあるべき姿なのだから…」

土神「はん。ご高説どうもありがとよ」

山神「つい喋りすぎたわね」

土神「へっ、本当だな」

土神「…だが、礼を言うぜ」ニヤリ

山神「…?」

土神「時間を稼がせてくれた事になぁ!」バッ

ズズウウン!!

ビシッ!ピシピシッ!

山神「なっ!?」

土神「くっくっく…」
450: ◆WjgYlacz.c:2017/4/29(土) 22:44:58 ID:/FBqKYUaXc
山神「まさかあなた…!」

土神「ああそうさ。てめえがべらべら喋ってる間にこっそり解除させてもらったぜ?」

土神「この洞窟の形を保つ念力をな!がっはっは!」

山神「なんてこと…!」

土神「間もなくこの洞窟は全て崩れ去る!そうすればてめえの大好きな人間どもはどうなるかな…?」

山神「…!」ギリッ

山神「山賊たちもまとめて生き埋めにするつもりなの!?」

土神「へっ、さっきも言っただろ?人間なんざ取るに足りない存在だと!」

土神「てめえの思い通りにさせないためなら、どうって事はねえ!」

土神「代わりの人間なんざ腐るほどいるんだからなあ!」

山神「この…外道…!」

山神「はあっ!」パアアッ

ガラガラ…ドザザッ…!!

山神(くっ…やっぱり崩壊が止まらない…!)

土神「がっはっは!無駄無駄!ここは俺様の領域だ。てめえの神力を通さねえくらい朝飯前よ!」

山神(こうなったら直接…!)

タタッ

土神「ふん、何人助けられるか見物させてもらうとしようか」

山神(お願い…!無事でいて…!)

ドザザザ…
451: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:17:51 ID:497ia7CQNY


※以降、巫女に助けられた山賊を下っ端と表記します。



・・・・・・・・・・


452: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:18:47 ID:497ia7CQNY
ドザザザ…ドゴォッ!!

下っ端「うおっ!?おわあっ!!」

巫女「やっぱり…洞窟が崩れかかってます!」

下っ端「な、なんだってそんな急に…!」

村長娘「急ごう巫女様!通路が塞がっちまうよ!」

巫女「…」チラッ

巫女(この羽根…さっきも私の願いに反応して岩を止めてくれた)

巫女(…この崩れも止めてくれるかな…?)

巫女「…」バッ

村長娘「巫女様!?もしかして…」

巫女(この崩落を止めて…!お願い…!)

巫女(お願いします…!)

ギュッ…






453: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:19:54 ID:497ia7CQNY
ドドドドドッ!!

村長娘「巫女様!危ないよっ!」

巫女「きゃあっ!」

ガラララッ…!

村長娘「大丈夫かい!?巫女様!」

巫女「うぅ…」

巫女「…と…止まらない…」

村長娘「え?」

巫女「今度は願っても…止められない…!」

村長娘「巫女様…」

巫女「やっぱり…私なんて…私なんて…」

村長娘「しっかりしなよ巫女様っ!」

巫女「!」ビクッ

村長娘「神様にばかり頼ってられないよ!」

村長娘「助けがなけりゃ、自分たちで生き残らなきゃ駄目だ!」

巫女「あ…」

村長娘「ほら立って!とにかく走るんだよ!」グイッ

巫女「…う、うぅ…」

タタタッ
454: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:20:39 ID:497ia7CQNY
ドザーッ!

下っ端「わぶっ!ぺっぺっ!」

村長娘「はぁ、はぁ…」

下っ端「で、出口はすぐそこだ!」

村長娘「もう少しだよ、巫女様!」タタタ

巫女「は、はい!」タタタッ

下っ端「そこを曲がりゃあ……えっ!?」

村長娘「なんだい!?……まさか」

ガララッ…

巫女「ふ、塞がれてるんですか…?出口…」

下っ端「あ、ああ…」

村長娘「…ここまで、かい」ヘタッ

巫女「…」

ダダダダッ

「おい!急げ!」

「くそっ、砂埃が目に…」

「死にたくなきゃ走れ!」

巫女「誰…?」

下っ端「あの声…仲間たちだ!」
455: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:21:22 ID:497ia7CQNY
ザザッ

山賊たち「おう、下っ端!無事だったか!」

下っ端「た、大変だ!こっちの出口がもう塞がってて…!」

山賊たち「な、なにぃ!?」

下っ端「お頭は!?他の連中はどうしたんだ!?」

山賊「残ってんのは多分俺たちだけだ。お頭はどうだか分からねえが…」

下っ端「そうか…」

村長娘「他に出口は無いのかい!?」

山賊「あるにゃあるが…今から向かって間に合うかどうか…」

村長娘「うだうだ言ってないで早く案内するんだよっ!」

山賊「てめえ!俺たちに指図するたぁ…」

下っ端「あ〜、待ってくれ!とにかく今は急ごうぜ!」

山賊「…ちっ。おら、てめえら行くぞ!」

山賊「おう!」

ダダダッ!

村長娘「…へぇ?かばうなんて良いとこあるじゃないか」ツンッ

下っ端「るせっ!まったく何なんだお前は…」タタッ
456: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:21:52 ID:497ia7CQNY



・・・・・



457: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:22:23 ID:497ia7CQNY
山賊たち「駄目だ、こっちも塞がってる!」

山賊たち「こっちもだ!」

下っ端「本当かよ…出られねえじゃん…」

ビシビシッ!!

山賊「おい!天井に亀裂が…」

山賊「く、崩れるぞっ!!」

下っ端「くそっ!ここまでかよ!」

山賊「おい!お前ら、こっちの食料庫に来い!」

山賊「なんだ!?飯なんざ…」

山賊「違う!飯に土が被らないようここだけ木材で天井を囲っただろ!」

山賊「上手いこと補強されて、ほとんど崩れてねえぞ!」

山賊「なるほど!そりゃいい!」

下っ端「いったん逃げ込むしかねえか…」

山賊「急げっ!」

ビシビシビシッ…!!
458: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:23:01 ID:497ia7CQNY
ダダッ!

山賊「はぁ…はぁ…」

山賊「間に合った…確かにここはしばらく崩れなそうだな…」

下っ端「……」

山賊「どうした?下っ端!」

下っ端「…あいつらは?」

山賊「あいつら?ああ、あの女どもか」

山賊「放っとけ。今は他人を気にする余裕なんざ…」

下っ端「…」ギリッ

ダダッ!

山賊「お、おい!下っ端!?」

山賊「もう崩れちまうぞ!大人しくしてろ!」
459: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:23:34 ID:497ia7CQNY
巫女「はぁ、はぁ…!」タタッ

村長娘「ちっ、あいつら…!あたしらを置いてさっさと行っちまって…」タタッ

巫女「もう天井が崩れます!諦めましょうよ…」

村長娘「馬鹿言うんじゃないよ!」

巫女「そ、そんなこと言ったって…」

「おーい!」

村長娘「ん?あれは…」

下っ端「いた!」

村長娘「なんだい、出口は見つかったのかい!?」

下っ端「出口はねえ…が、こっちに安全な場所があった!お前らも来い!」

村長娘「本当かい!巫女様、急ごう!」

巫女「え、ええ…!」

ビシッ…!

下っ端「あっ」

ガラッ…

村長娘「うわわ…」

ドザザザザアッ!!

下っ端「ほ、本格的に崩れてきやがった!」
460: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:24:08 ID:497ia7CQNY
下っ端「走るぞ!」

巫女「だ、駄目です…もう足が…!」

下っ端「ちっ…じゃあ捕まってろ!」

ガシッ

巫女「…えっ?」

ガシッ

村長娘「おっ?」

下っ端「ぬおおおお〜っ!!」ダダダッ!!

巫女(ふ、二人抱えて走ってる…!?)

村長娘「あ、あんた…」

下っ端「今、話しかけんじゃねえええっ!!」

ガラガラガラッ!!ドザザザッ!!

山賊「あっ!戻ってきやがった!」

下っ端「うおおお!」ドドド!!

山賊「が、頑張れ下っ端!」

山賊「駄目だ!間に合わねえよ!!」

下っ端「ぬあああっ!!」

ズズウウウ…ン!!
461: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:24:55 ID:497ia7CQNY





ガラッ…

モクモク…

山賊たち「……」

下っ端「はっ…はあっ…」

村長娘「た…助かった…?」

巫女「い、生きてる…私たち…」

山賊「すげえ…」

山賊「おい、大丈夫か?下っ端…」

下っ端「ぜ…全然へっちゃら…」

下っ端「と言いたいとこだが…しばらく…立てそうにねえ」

山賊「だろうな」

巫女「ありがとうございます、下っ端さん」

下っ端「…あんたにゃ借りがあるから…な。これで無しだ」

巫女「下っ端さん…」

村長娘「しっかりしなよ、あんた」

下っ端「てめえは礼の前にそれかよ…」

村長娘「…ありがとうよ」

下っ端「へっ」
462: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:25:42 ID:497ia7CQNY
山賊「おい」

巫女「?」

山賊「水を差すようで悪いが、何も解決しちゃいねえぜ」

山賊「出口は完全に塞がってるし」

山賊「この木材の支えもいつまでもつか…」

山賊「ただ死ぬのを待ってるみたいなもんだ」

巫女「…」

巫女(たしかに、どう考えても八方塞がり…)

巫女(山神様…どうしちゃったんだろう…)

下っ端「なあ、あんた」

巫女「え?」

下っ端「さっきみてえに不思議な術でどうにかできねえのか?」

巫女「っ!」ビクッ

山賊「不思議な術?」

下っ端「おうよ。この人、さっきな…」

巫女「ふ、不思議な術なんて!」ガタッ

山賊たち「…?」

巫女「術なんて…ありません」

下っ端「嘘つけ!さっき岩を止めたのは…」

巫女「私の力じゃないんです!」

巫女「わ、私なんかには…何も……何もできない…っ」ポロッ

下っ端「お、おいおい…泣くこたねえだろ…」
463: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:26:08 ID:497ia7CQNY
山賊「なんだなんだ?」

山賊「結局あてになんねえのかよ…」

山賊「ちっ、やっぱりこのまま死ぬだけか…」

巫女「……」

巫女(うぅ…っ)

村長娘「…」

村長娘「…あ〜あ〜!嫌になっちゃうね」

下っ端「?」

村長娘「あんたら、人に頼ってばっかで。それでも男なのかい?」

山賊たち「なにぃ?」

村長娘「山賊なんてもっと骨のある連中かと思ってたけど、そうでもないね!」

山賊「てめえ…!」

村長娘「あたしは嫌だね!こんな所で死ぬのなんか!」

村長娘「諦めるなんてまっぴらご免だ!」

下っ端「そうは言ってもな…」

村長娘「出口がない?なら作ればいいじゃないか!」

巫女「えっ…?」
464: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:27:35 ID:497ia7CQNY
村長娘「ちょっとあんた」ズイッ

山賊「な、なんだよ?」

村長娘「一番近い出口の方角はどっちだい?」

山賊「あ?何を…」

村長娘「いいから!」

山賊「ぐ……多分、そっちだ…」ユビサシ

村長娘「そうかい。じゃあ…」

村長娘「掘ろうかね。この木材が使えるだろ」ヒョイッ

下っ端「お、おい!」アセッ

村長娘「よっと!」ガッ

ザッザッザッ…

巫女「……」

下っ端「おいおい、待てよお前!もぐらじゃあるめえし外まで掘るなんてできるかよ!」

村長娘「……」ザッザッ

下っ端「ましてやお前みたいなただの娘っ子じゃ到底…」

ガランッ!

村長娘「やかましい!!」

下っ端「なっ…」
465: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:28:08 ID:497ia7CQNY
村長娘「無駄だって分かってても…どんなに惨めでもいい…」

村長娘「あたしには生きてやりたい事があるんだ!諦めてたまるかい!」

山賊たち「……」

巫女「娘さん…」

村長娘「…あんた達には」

下っ端「…?」

村長娘「あんた達には、やりたい事がないのかい?死ぬ気で生きたいと思う何かが…」

下っ端「な、なんだと…?」

村長娘「…いいさ。あたしだけでも足掻くから」

ザッザッザッ…

村長娘「くっ…いたた…」ズキズキ

スッ

村長娘「…ん?」

巫女「…代わります、娘さん」

村長娘「巫女様…」

巫女「えいっ!」

ガッ!
466: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:29:34 ID:497ia7CQNY
巫女「はっ!」ブンッ!

ガッ!

巫女「あたたた…」ジーン

村長娘「…」

巫女「…ぷっ、あははは!」

村長娘「あははっ!そんなやり方、痛いに決まってるじゃないか!」ケラケラ

巫女「あは、ほ、本当に…痛いですねこれ…」ケラケラ

山賊「…」ポカーン

村長娘「あはは…はあ、あんまり笑わせないでくれよ」

巫女「そ、そんなつもりじゃないんですけどね…」

巫女「…娘さん。ごめんなさい」ペコッ

村長娘「え?」

巫女「一人で勝手に落ち込んで、大事なことを忘れてました」

巫女「私は巫女である前に一人の人間です」

巫女「人間として、できることをしないと」

村長娘「巫女様…」

巫女「私はここから出ます。そして、巫女として胸を張れるよう精進しなきゃ」

巫女「だから…私も一緒に足掻きます!」

村長娘「そう来なくっちゃ!」
467: ◆WjgYlacz.c:2017/5/5(金) 14:39:50 ID:Zlu.wp1NEw
村長娘「せいやっ!」

ザッ!

巫女「えい!」

ザッ!

山賊たち「……」

下っ端「…」

下っ端(…けっ、女二人でどうしようってんだ)

スクッ

下っ端「…?」

山賊「……」

山賊「…俺、故郷に母ちゃんを置いて出てきたんだ」

山賊「病気がちで…でも必死で働いててよ…」

山賊「…もう一度会いてえな」ガラン

下っ端「お、おい…」

山賊「おりゃっ!」ブンッ

ザクッ!

村長娘「おっ」

巫女「すごい力…!」
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sage:


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