ーむか〜しむかし、とある場所で
380: ◆WjgYlacz.c:2016/12/19(月) 23:40:50 ID:/cvA3b7ixo
巫女…
「!?」ビクッ
巫女…!
(だっ、誰!?誰の声!?)
巫女、起きなさい…!
(うぅ…)
着いたわよ…!
(誰なの!?)
「巫女!」
「ふぇっ!?」パチッ
381: ◆WjgYlacz.c:2016/12/19(月) 23:42:10 ID:/cvA3b7ixo
巫女「…」ボーッ
山神「ほら、着いたわよ。しゃんとしなさい」
巫女「や、山神様…」
山神「どうしたの?」
巫女「あれ、私、ええっと…」
山神「何を寝ぼけているのよ。よく馬の背中に乗ったまま寝られるわね」
山神「落とさないようにするのも大変なのよ?」
巫女「ああ…なんだかいつの間に…」
巫女「そう、私、山神様のお社に初めて行った時の夢を見たんですよ!」
山神「へえ〜、あの巫女服を着てはしゃいでた時のこと?」
巫女「うぅ…やっぱり見られてた」
山神「微笑ましかったわねぇ、とっても」
巫女「もうそれ以上言わないでください…」
山神「うふふ。さて巫女、崖の下を見てご覧なさい」
巫女「崖の下…?」ヒョコッ
巫女「わぁぁっ…!」
382: ◆WjgYlacz.c:2016/12/19(月) 23:42:48 ID:/cvA3b7ixo
山神「どう?すごいでしょう」
巫女「何ですかこれ!?おっきな川ですか!?」
山神「違うわよ。これは海」
巫女「うみ…?」
山神「大きな、それはもう大きな水たまりみたいなものね」
巫女「へええ〜…」ポカーン
山神「口が開きっぱなしよ」
巫女「えへへ、あんまり驚き過ぎちゃって…」
山神「さて。じゃあ巫女、この崖下を降りるわよ」
巫女「はい!じゃあ降りる道を…」
山神「そんなの探すの面倒よ。さあ行くわよ〜!」パカラッパカラッ
巫女「ちょっ、こんな斜面を…!?山神様〜!?」
ドザザザザアッ…!!
383: ◆WjgYlacz.c:2016/12/19(月) 23:43:39 ID:/cvA3b7ixo
番外編 巫女「巫女として」山神「神として」
ーはじまりはじまりー
※作中の巫女は本編の村娘です。
384: 名無しさん@読者の声:2016/12/20(火) 01:17:31 ID:2X7Sn7osMQ
番外編キタ━━(゚∀゚)━━!
ありがとうございます!(土下座)
385: ◆WjgYlacz.c:2016/12/23(金) 19:47:08 ID:XyGysoL/oU
>>384
結局書き始めちゃいましたw
もう少しお付き合いください。
386: ◆WjgYlacz.c:2016/12/23(金) 19:47:39 ID:XyGysoL/oU
山神「ふぅ、到着よ。やっぱりこの方が早かったわね」
巫女「わ…わ…私生きてる…生きて…」ガクガク
山神「…巫女〜?」
巫女「あ、あんな事するなら先に言ってくださいよ!」
山神「ごめんなさいね。少しは耐性付いたかと思って」
巫女「確かに騎乗には慣れましたけど、あんなのは無理です!」
山神「分かったわよ〜」
巫女「まったく…」
山神「それよりほら、目の前の光景をちゃんと見なさいな」
巫女「それよりって…えっ?」
ザザーン…!
巫女「うわあぁぁぁ〜っ!」パアア
タタッ
山神「ふぅ、誤魔化せたわ」
387: ◆WjgYlacz.c:2016/12/23(金) 19:48:07 ID:XyGysoL/oU
巫女「きゃー!すごいすごい!」
巫女「辺り一面砂!そして水!」
巫女「それになんだか不思議な匂いがします!」
山神「それは潮風の匂いね。海の香りよ」
巫女「へぇ〜!でも近くで見ると本当に広いですね〜!」
山神「巫女、あんまりはしゃぐと砂で服が汚れるわよ」
巫女「あっ、そ、そうでした…」
山神「ふふっ。それっ!」フウッ
巫女「えっ?」
フワアアッ…
ポンッ!
巫女「わっ!い、いつもの服になりました!」アセッ
山神「その格好の方がここでは動きやすいわよ」
巫女「さすが神様ですね!」
山神「流木とか貝殻とかを踏まないようにね」
巫女「はい、気を付けます」
388: ◆WjgYlacz.c:2016/12/23(金) 19:48:27 ID:XyGysoL/oU
巫女「ん〜っ、このおにぎり美味しいです」モグモグ
山神「良かったわね、昨日寄った村で貰えて」
巫女「はい。でも私、巫女らしい事なんか何もしてないのに…」
巫女「行く先々でありがたがられて、何だか罪悪感が」
山神「良いじゃない。あなたを介して人間たちと触れ合う事で、私が皆に福を授けられるのよ」
巫女「まあ、そうですけど…私がやったみたいになるのが複雑で」
山神「あなたはあなたの役割を果たしているのだから、問題ないわよ」
山神「それよりどうかしら?これまでの『寄り道』は」
巫女「色んな人とお話しできて楽しいです」
巫女「それに鍾乳洞に湖、富士の山にこの海」
巫女「本当に見た事も聞いた事もないものがたくさんあるんですね〜」
山神「うふふ、楽しめてるなら良かったわ」
巫女「でも山神様はお疲れじゃないですか?」
山神「私を誰だと思ってるのよ。気を回さなくていいわ」
389: ◆WjgYlacz.c:2016/12/23(金) 19:48:51 ID:XyGysoL/oU
ザザー…ン…
巫女「…でも不思議です。水ばっかりで何も見えないなんて…」
山神「向こうには何があると思う?」
巫女「まったく見当もつかないです」
山神「想像してごらんなさい」
巫女「ん〜っと…」ムムム…
巫女「きっと、ずっと遠く向こうにも村があって、人や神様がいて…」
巫女「遊んだり、畑仕事をしたり、ご飯を食べたりしてるんじゃないでしょうか?」
山神「うふふ」
巫女「あっ、ちょっと小馬鹿にしましたね!」
山神「一生懸命考えてて微笑ましいなぁって思っただけよ」
巫女「やっぱり小馬鹿にしてる…。本当はどうなんですか!」
山神「さあて?どうかしらね?」
巫女「ええ〜…教えてくれてもいいじゃないですか」
山神「私が答えを教えてしまったらつまらないでしょう?」
山神「知りたければ、自分の目で確かめてみなさいな」
巫女「む〜っ、なら舟でも造って行きます」
山神「本当に造り始めそうだから一応止めておくわね」
390: ◆WjgYlacz.c:2016/12/23(金) 19:49:17 ID:XyGysoL/oU
巫女「あれっ」
山神「どうしたの?」
巫女「あそこで何か動いてません?」
山神「ん〜…馬の姿だとどうも視力がね」
巫女「そんなところも動物化するんですか…」
山神「…」
巫女「山神様?」
山神「…あれはもしかして…」ボソッ
巫女「どうかしたんですか?」
山神「う〜ん…ちょっとまずいかも…」
山神「巫女、海辺散策はおしまい。山道に戻るわよ」
巫女「えっ?」
山神「いいから。早く背中に…」
ヒュッ
「…これこれ。挨拶くらいせんかい」
巫女「わっ!いつの間に後ろに!?」ビクッ
山神「あらら、気付かれちゃったわね」
391: ◆WjgYlacz.c:2016/12/23(金) 19:49:49 ID:XyGysoL/oU
巫女「おっきな亀さん…」
亀「ただの亀ではないぞ。海亀じゃ」
巫女「しかも喋るなんて。もしかして神様ですか?」
海亀「うむ。儂は海神という。見知りおけ、人の子よ」
巫女「海神様…」
巫女「海亀さんも海神様もあんまり変わりませんね」
海神「やかましい奴じゃい」
山神「お久しぶりですわ、海神様」
海神「うむ。それにしても山神よ、何故立ち去ろうとしたのじゃ?」
山神「…私は余所者です。海神様の領域に長居するのも悪いかと思いまして」
海神「何を言う。侵略しに来たわけでもあるまいに」
山神「…」
海神「それとも、昔の事を気にしておるのか?」
山神「いえ…しかし」
海神「もう済んだ事じゃ。おぬしとまた会えたこと、喜ばしい」
山神「海神様…」
巫女(何の話かな…?)
392: ◆WjgYlacz.c:2016/12/23(金) 19:51:03 ID:XyGysoL/oU
海神「ときに、そちらの人の子は何者じゃ?」
巫女「あっ、私は…山神様のお社で巫女をしています」
海神「ほう、ほう。神職の家系かの?」
巫女「いえ、違いますけど…」
海神「む?どういう事じゃ?」
山神「この子は普通の村人ですわ。私が偶然知り合ったこの子を巫女に任命したのです」
海神「…ふぅむ。村人とな」
巫女「あの、何か?」
海神「いや、正直適性があるとは思えぬでな」
巫女「むっ」
山神「海神様。今は適正はさほど関係ありませんわ」
海神「まあ、おぬしが決めた事に口出しをする気はないが…」
海神「しかしあまり深入りをさせない方が賢明じゃぞ」
巫女(好き放題言ってくれちゃって…!)ギュッ
山神「…分かっております」
巫女(山神様…?)
393: ◆WjgYlacz.c:2016/12/23(金) 19:51:29 ID:XyGysoL/oU
山神「では、私たちはこれにて…」
海神「そうか。山神よ、東の方角に村がある」
山神「村ですか?」
海神「このまま歩いては日が暮れよう。今日はそこに行くとよい」
山神「分かりました。ありがとうございます」
海神「うむ、達者でな」
山神「海神様もお元気で。行くわよ、巫女」パカッパカッ
巫女「えっ?あ、はい!」ザッザッ
海神「…」
海神「…やはり幾百年経とうとも…変わらぬか」
海神「あの娘っ子が、枷にならぬとよいが…」
ザザーン…
394: ◆WjgYlacz.c:2016/12/23(金) 19:52:13 ID:XyGysoL/oU
山神「…」パカパカッ
巫女「…」
巫女(山神様…海神様に会ってからあんまり喋らなくなっちゃった…)
山神「…巫女」
巫女「えっ、あ、はい?」
山神「ごめんなさいね。海神様も悪い方ではないのだけれど…」
巫女「はい…」
山神「あの方は私よりずっと古くからこの辺りの海を司っている神様なの」
山神「だけど昔の信仰や神職の在り方に拘りすぎなのよね」
巫女「…海神様は、高名な神様でいらっしゃるんですか?」
山神「ん、そうね。少なくとも私よりはずっと」
巫女「そんな方に巫女は向いてないって言われちゃったんだ…」
山神「巫女…」
巫女「山神様、私…」
山神「気にする必要ないわよ」
巫女「…」
395: ◆WjgYlacz.c:2016/12/23(金) 19:54:20 ID:XyGysoL/oU
山神「家系とか…血筋とか…そんなのは生まれ持った肩書に過ぎないわ」
山神「もっと大事なのは、それに成りたいと思うこと。成るために行動すること」
巫女「…」
山神「あなたは巫女になりたいと思っていたのでしょう?」
巫女「そうですけど…」
山神「じゃあそれ以外に素質なんかいらないわ」
山神「あなたを選んだ私を信じて。前を向きなさい、巫女」
巫女「は、はいっ…!」
山神「うふふ」
巫女「私、頑張りますっ!」
山神「その調子よ、巫女」
山神「…ん?この先に人間の気配がするわね」
巫女「海神様が言ってた村でしょうか」
山神「そうでしょうね。行ってみましょう」
巫女「はい!」
396: ◆WjgYlacz.c:2016/12/23(金) 19:55:01 ID:XyGysoL/oU
巫女(でも…深入りするなってどういう事なんだろう…?)
巫女(山神様、昔何かあったのかな)
巫女(…う〜ん、あんまり聞いちゃいけないような気がする)
397: ◆WjgYlacz.c:2017/1/1(日) 21:10:04 ID:tJRyJOqWbw
・・・・・・・・・・
398: ◆WjgYlacz.c:2017/1/1(日) 21:10:42 ID:tJRyJOqWbw
山神「それにしても珍しいわね。海辺の村なんて」パカッパカッ
巫女「そうですね。おさかなさんとかいっぱい獲れるんでしょうか?」
山神「言っておくけど、それ目当てで来たわけじゃないからね」
巫女「わ、分かってますよぅ…」
シーン…
巫女「でも誰も見かけませんね…」
山神「そうね。ちょっと静か過ぎるかしら」
トボトボ…
村人「…はぁ…」
巫女「あっ、誰か歩いてますよ」
村人「…んぁ?」チラッ
村人「お、おおお…!その格好、もしや巫女様では!?」
巫女「えっ?あ、はい。一応…」
村人「こりゃちょうど良かった!一緒に来てください!さあさあ!」ガシッ
巫女「あ、ちょっ…あ〜れ〜」グイッ
タタタタタッ!
山神「…あらら、連れてかれちゃったわね」
ポンッ!
399: ◆WjgYlacz.c:2017/1/1(日) 21:11:07 ID:tJRyJOqWbw
村長「…」
一同「はぁ…」ドンヨリ
村長「…致し方ない、か…」
ドタドタドタッ!
村人「村長!村長〜!」
村長「何じゃ、まさか彼奴らが…!」
村人「み、巫女様が来てくださった!」ズイッ
村長「なにっ!?」
巫女「あ、えっと…皆さん、こんにちは」
「おお、巫女様だと…!?」ザワッ
「神様の救いがあるのか!?」ザワザワ
村長「これ、落ち着け皆の衆!」
村長「巫女様、よくいらっしゃった。どうぞこちらへ」
巫女「ええっと、じゃあ失礼します…」
巫女(すごい、こんなに村人さんたちが集まって)
巫女(でもなんか皆落ち込んでる…?)
巫女「何かあったんですか?」
村長「よくぞ聞いてくださった。お話をさせていただいても?」
巫女「はい、もちろんです」
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