ーむか〜しむかし、とある場所で
279: ◆WjgYlacz.c:2016/8/11(木) 20:35:22 ID:ErEHuXWIKY
………ンッ
280: ◆WjgYlacz.c:2016/8/11(木) 20:35:52 ID:ErEHuXWIKY
神娘「……」
281: ◆WjgYlacz.c:2016/8/11(木) 20:36:26 ID:ErEHuXWIKY
………ドクンッ
282: ◆WjgYlacz.c:2016/8/11(木) 20:38:47 ID:ErEHuXWIKY
神娘「!」ガバッ
…ドクンッ……ドクンッ……
神娘(こ、これは…)
百姓一「お、おい。何だか知らねえがもうどいてくれよ」
神娘「…聞こえる」
百姓一「ん?」
神娘「あやつの…命の鼓動が聞こえる…」
百姓二「な、何言ってんだあ?んなもん聞こえねえよ」
神娘「!」ハッ!
神娘「この鈴か…?」チリッ
ドクン…ドクン…
神娘(やはり…!)
神娘(あやつが持っている片割れを通し…心臓の音を伝えているのか!)
神娘「あやつは…男はまだ生きておるぞ!」
百姓一「へっ?そんな馬鹿な…」
神娘「いいから掘るのだ!まだ間に合う!」ユサユサ
百姓一「お、おおお…ゆ、揺するんじゃねえって」ガクガク
神娘「あっ…す、すまん」パッ
百姓三「それに掘ると言ってもねえ…」
百姓二「もうおら達じゃ手が付けらんねえよ…」
神娘「そんな事を言うな!諦めては…」ハッ
283: ◆WjgYlacz.c:2016/8/11(木) 20:39:46 ID:ErEHuXWIKY
百姓たち「…」ボロッ
神娘(…皆、よく見れば手も足も泥と傷だらけ)
神娘(この土砂を取り除こうと…)
神娘(……)
神娘「…分かった」
百姓たち「?」
神娘「お前たちは…男を救い出そうと必死に頑張ったのだろう」
神娘「だが、お前たちの腕はこの村の支えに必要な腕」
神娘「これ以上、無闇に傷を付ける必要はあるまい」
百姓一「…」
神娘「人に為せぬ事を為すのが神たる所以」
神娘「あとは私に任せよ」ザッ
百姓二「お、おい!何をする気だあ!?」
百姓一「…なあ、今…神って言ったか?」
百姓二「えっ?」
神娘「……」
神娘「すぅ〜っ…」
パンッ
神娘「…皆、離れておれ」
百姓たち「!」
「み、みんな!言われた通りにしろ!」
「何が起こるか分からんぞぉ!」
ワー!ワー!
神娘「…」ググッ…
ヒュオオオ…
284: ◆WjgYlacz.c:2016/8/11(木) 20:40:12 ID:ErEHuXWIKY
『いい?何が起こっていても…決して無茶をしては駄目よ』
神娘「……」オオオ…
神娘(すまん、山神殿。言い付けを破る)
神娘(ここでこうせねば…私は悔やんでも悔やみきれない)
ビュオオオ…!
百姓一「ま、まるで風が集まってるみてえだ…」
農婦一「ちょっとお前さん!あの子はいったい何なの?」タタッ
百姓一「わ、分かんねえ…」
百姓一「…でも、多分あいつは……いや、あの方は…」
ゴオオオオッ…!
神娘「…くぅ…っ!」ビキビキッ
神娘(これは…っ、体が耐えられるか分からん…!)
神娘(だが…!今の私の全力をぶつけねば…!)
神娘(…そういえばいつか言ったな、男)
神娘(私が本気を出せば大岩でも吹き飛ばせると…!)
神娘(わはは、嘘であった。本気を出せば…それどころではない!)
神娘「おおおおおっ!!」ググッ
神娘「死の気配ごと!吹き飛ばしてくれるわああっ!!!」
バッ
285: ◆WjgYlacz.c:2016/8/11(木) 20:40:39 ID:ErEHuXWIKY
ドッゴオオオオオオオオン!!!!
286: ◆WjgYlacz.c:2016/8/11(木) 20:41:08 ID:ErEHuXWIKY
山神「!」ピクッ
村娘「どうかしました?山神様…」
山神「……」
山神(何かしら…この大きな気の流れ…)
村娘「山神様…?」
山神「……いいえ、なんでもないわ」
287: 名無しさん@読者の声:2016/8/14(日) 15:09:10 ID:DO3x0BwZKI
こんな別れはあんまりだ!
男が無事でありますように…!
支援!
288: ◆WjgYlacz.c:2016/8/16(火) 20:29:02 ID:h6UUG422z.
>>287 支援ありがとうございます。
今回より起承転結の「結」に入ります。
最後までお付き合いください。
289: ◆WjgYlacz.c:2016/8/16(火) 20:29:31 ID:h6UUG422z.
・・・・・・・・・・
290: ◆WjgYlacz.c:2016/8/16(火) 20:30:01 ID:h6UUG422z.
「………」
「……う」
「…ううっ」
「おお、気が付いたか」
「…あっ…」
「こ、ここは…?」
「何にも覚えちゃいねえのか。まあ無理もねえけどよ」
「……」
「おい、俺のことは分かるだろうな?」
「大丈夫ですよ…百姓一さん」
百姓一「そうだ。男、しっかりしろ」
男「…」
291: ◆WjgYlacz.c:2016/8/16(火) 20:30:24 ID:h6UUG422z.
男「わ、私は…?いったい何が…」
百姓一「崖崩れに巻き込まれて生き埋めになってたんだ」
百姓一「岩の隙間にでも上手い事入ってたんだろ。潰されなかったのが幸いだった」
男「そ、そうだったのですか…」ムクッ
男「痛っ…!」ズキッ
百姓一「あまり動くなって。腕が折れてんだよ」
百姓一「おめえ二日も寝込んでたんだが…もう少し寝てろ」
男「ふ、二日…ですか」
百姓一「ともかく命あって良かったぜ」
百姓一「まあ、おめえん家は跡形もなくなっちまったがな」
男「そう…ですか」
百姓一「安心しろ。しばらくは家に置いてやっからよ」
男「ありがとうございます」
292: ◆WjgYlacz.c:2016/8/16(火) 20:30:53 ID:h6UUG422z.
ドタドタッ
百姓二「お〜い、百姓一さん。男さんの様子は…」ヒョコッ
百姓二「おおっ!目ぇ覚ましたかぁ!」
男「ああ、百姓二…心配かけて申し訳ない」
男「なるべく早く畑仕事に戻れるようにするよ…」
百姓二「んな事気にすんなぁ。しばらく休まねえと」
男「…すまない」
男「しかし、よく私を助けられたものだ。大変だったはず…」
百姓一「ああ、それなんだけどな…」
百姓一「おめえ、神様に知り合いがいたのか?」
男「えっ?」
百姓二「男さんが埋もれちまった後、女の子が村に来たんだ」
百姓二「背の小さい、見慣れない子だったなぁ」
男「…!」
百姓一「やっぱり心当たりあるか」
男「ええ。その方は紛れもなく神様です」
百姓一「そうか。そんでよく分からないが…神様がすげえ風を起こしたんだ」
百姓一「おめえを埋めてた土砂を全部吹き飛ばしちまうくらいのな」
男「!」
293: ◆WjgYlacz.c:2016/8/16(火) 20:31:30 ID:h6UUG422z.
百姓二「しかも男さんだけは吹き飛ばさなかったしなぁ」
男「神様にそのようなお力が…」
百姓一「ま、そういうわけでおめえは助かったわけだ」
百姓一「神様に感謝しねえとな」
男「…本当ですね」
男「それで…神様はどちらに?」
百姓一「う〜ん、それが分かんねえんだ」
男「えっ…」
百姓二「土砂を吹き飛ばしたら神様、倒れちゃってなぁ…」
百姓二「そのまま消えちったんだよ」
男「!?」
百姓二「あれも何かの術だったのかなぁ?」
百姓一「砂みてえになって一瞬で消えちまったからな」
男「……」
百姓一「…そういや、これを落としてったようだぞ」
チリーン
男「こ、これは…!」
百姓一「神様が消えたその場に落ちてたんだ。これ、神様のだろ?」
294: ◆WjgYlacz.c:2016/8/16(火) 20:31:56 ID:h6UUG422z.
男「ええ…これは神様の鈴です」チリッ
百姓二「綺麗な鈴だぁ。こんなもん見た事ねえ」
百姓一「本当だな」
男「……」
百姓二「どうした男さん?顔色が悪くねえか?」
男「ああ、いや、大丈夫…」
男「…すまない。一人にしてもらえないだろうか…」
百姓二「な〜に言ってんだぁ。今、何か美味いもんでも…」
百姓一「…いや、ここは男の言う通りにしておこう」
百姓二「へ?へぇ…」
百姓一「何かあったら呼べよ、男」
男「…はい」
スタスタスタ…
男「…」
男「……」ゴソゴソ
チャリッ
『必ずこの鈴が、またお前と私を引き合わせる』
男「…また二つの鈴が揃いましたよ、神様」
チリチリーン…
295: ◆WjgYlacz.c:2016/8/16(火) 20:34:26 ID:h6UUG422z.
男「…来てくださったのですね」
男「思えば…そのお声が聞こえていたような気が致します」
男「こんなに早く、訪ねてくださるとは思わなかった」
男「それなのに…」
『砂みてえになって一瞬で消えちまったからな』
男「きっとこれは神様の言う…消滅…なのでしょう?」
男「何故、私などのために…力を使い果たしてしまわれたのですか…」
男「神様…」
男「何故…そのようなことを……」
男「……」
男「………ううっ…」
チリーン…
296: ◆WjgYlacz.c:2016/8/31(水) 21:30:39 ID:x.m4zI.Brs
・・・・・・・・・・
297: ◆WjgYlacz.c:2016/8/31(水) 21:31:19 ID:x.m4zI.Brs
・・・・・・・数日後
298: ◆WjgYlacz.c:2016/8/31(水) 21:31:56 ID:x.m4zI.Brs
ザッザッ…
男「…ふぅ」
男「ここに来るのも…随分久しぶりな気がする」
男「よっこいしょっと」ストッ
男「さて…」スッ
ゴソゴソ
チリンッ
男「……」
男「…こうして鈴に話しかけていると、心が安らぎます」
男「神様に声が届きそうな気がして…」
男「神様、最初にお会いした洞窟ですよ」
男「あれは…まだまだ暑さの厳しい日でしたか」
男「ここに神様がおられた時は驚きました」
男「人間だと思って失礼を申し上げてしまったことが懐かしい」
男「あの時とは違って、もうすっかり風も冷たくなりました」
男「冬が訪れそうですよ」
男「私も神様も苦手な、寒い寒い冬が」
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