ーむか〜しむかし、とある場所で
27: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:07:25 ID:L58MV1qlVg
パチパチ…
神娘「まさかここで火を焚くとは思わなかったぞ」
男「風通しは良い洞窟ですから。煙も籠りませんし」
神娘「まあ実は生肉で食えない事もないのだがな」
男「そうなのですか?」
神娘「神だからな」
男「納得しました」
神娘「しかし焼いた方が美味いのは間違いない」
男「まったくです」
神娘「山の恵みには感謝せねばな」
男「はい、焼けました」スッ
神娘「うむ」スッ
はむっ
神娘「……」モグモグ
男「…」ジーッ
神娘「…何を見ておる」
男「いえ」
神娘「おかしな奴だ」モグモグ
28: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:07:58 ID:L58MV1qlVg
神娘「……」モグモグ
男「……」モグモグ
神娘「…おい」
男「はい」
神娘「何故お前も普通に食べているのだ」
男「お腹が空いてございます故」
神娘「本能に忠実か!」
男「猪など滅多に狩れませんから」
神娘「これ、私への供え物だろう」
男「そうです」
神娘「お前が今やっているのは罰当たりな事ではないか」
男「しかし神様一人でこれ全て召し上がれるとは思えません」
神娘「う、うむ…」
男「この時期、肉などすぐに腐ってしまいますからね」
男「ここで食べてしまう方が得策でしょう」
神娘「正論なのだが釈然とせぬな」
男「ご安心を。普段は節度を守り、道端の地蔵に供えられた饅頭などにも手を付けません」
神娘「今のお前はそれとほぼ同義だと言っているのだが」
29: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:08:36 ID:L58MV1qlVg
男「…」モグモグ
神娘「…なあ」
男「はい」
神娘「正直に言え。何か企んでおるのか?」
男「?」
神娘「よく考えればおかしいぞ。何の目的もなくここに来るなど…」
男「目的ならありますよ。神様にこうして美味しいものを食べていただき、早く元気になっていただきたいのです」
神娘「何故お前が私の世話を焼くのだ」
男「…責任を感じております」
神娘「責任?」
男「あの時倒れたのは、神様がそのお力を使ったからでしょう?」
男「私が素直に神様の言う事を信じていれば、ああはならなかった筈です」
神娘「……」
男「だから、こうしているのは一種の罪滅ぼしなのです」
男「もし神様に何かあれば目覚めが悪いですから」
神娘「…本当にそんな理由か?」
男「それだけです」
神娘「馬鹿馬鹿しい。私の調子が悪いのはあれが原因ではない」
神娘「よってお前に責任などない。分かったか」
男「そうですか…しかし、調子が悪いのは確かなのですね」
神娘「あっ…」
男「ならば、私は神様を放っておくことはできません」ニコッ
神娘「もうやだこの人間」
30: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:09:12 ID:L58MV1qlVg
男「…あの、神様」
神娘「む?」
男「今度は神様の事を少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」
神娘「……」モグモグ
神娘「ふぅ、食った食った」ポンポン
男「……」
神娘「…何故聞きたがる。お前に利は無いぞ?」
男「利など要りませんが」
神娘「では何なのだ?」
男「ただの興味本意です」
神娘「…」
神娘「お前は馬鹿なのか何なのか分からん」
男「馬鹿でも何でもいいです」
神娘「分かったよ。美味い肉の礼だ」
男「おお、ありがたや」
神娘「とは言っても、何から話せばいいものか…」
31: 名無しさん@読者の声:2015/12/31(木) 00:12:47 ID:iGoluuLBq.
神様と男のやりとり見てるとほんわかする(´∀`*)
作者さんには
つCCCC
神様には
つ つきたての餅(きなこ、あんこ、抹茶、砂糖と醤油の4種類)
32: 支援ありがとうございます ◆WjgYlacz.c:2016/1/1(金) 00:16:13 ID:6EINa3wIrQ
男「神様、>>31から搗き立てのお餅が送られてきましたよ」
神娘「>>31とは誰だ。それに、人間からの施しなどいらん」ジュルリ
男「神様、言動が一致しておりません」
神娘「き、気のせいだろう。いらんものはいらんのだ」ソワソワ
男「そうですか。では持って帰って村の皆で食べますね」
神娘「!」ピクッ
男「なんと良い匂い…これは良いもち米を使っておりますね」
神娘「ぐっ…」
男「しかも味も4種類用意するとは気が利いておりますね。私はきな粉派ですが…」
神娘「うっ…うぅ〜…」ジワア
男「…神様、やせ我慢は体に毒です」
神娘「あぅ…」
男「正月に餅を食べるくらい、何もおかしくありませんよ」
神娘「…」
神娘「……あ、味見くらいはしてやろう」
男「はい」
この後、1人と1柱で美味しくいただきました。
33: ◆WjgYlacz.c:2016/1/1(金) 00:18:51 ID:6EINa3wIrQ
男「あっ、SS板の皆様、明けましておめでとうございます」
神娘「おい」
男「今年ものんびり更新していきますので、温かい目で見守りください」ペコッ
神娘「お前、誰に何を言っておるのだ?」
男「神様も一緒に頭を下げていただけませんか」
神娘「嫌に決まっているだろう。というより誰にだ?」
男「こんな神様ですが、皆様よろしくお願いします」
神娘「こんなとはなんだ。そして誰と喋っているのだと聞いておる」
34: お久しぶりです ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:13:05 ID:Q4px5cWK5o
以下、>>30続き
35: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:14:40 ID:Q4px5cWK5o
神娘「そうだ。お前、前に聞いてきた事があったな」
男「いつの事でしょう?」
神娘「ほれ、>>6でだ」
男「ああ、そんな事もありましたっけ」
神娘「…忘れているという事はどうでもいいのだな」
男「いえいえ。気になります。興味があります。夜も眠れません」
神娘「どれだけ必死なのだ」
36: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:15:56 ID:Q4px5cWK5o
神娘「とにかく、あの時お前は私が何の神であるかと聞いてきたな」
男「そうでしたね」
神娘「あれに答えてやろう」
男「ありがたやありがたや」
神娘「…とは言っても、そこまで詳しくは答えてやれないんだがな」
男「えっ?」
神娘「神には神の、人間には人間の領域というものがある。迂闊にお前たちにこちらの事情を話す事はできん」
男「はあ」
神娘「それに…私は何の神でもない」
男「どういうことですか?」
神娘「私にはまだ神としての役割がないということだ」
男「なんと」
37: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:16:32 ID:Q4px5cWK5o
神娘「お前たちの言葉で言えば…八百万の神とでも言うのかな」
神娘「私は神としては修業中の下級神だ」
男「神様にも身分があるのですか」
神娘「うむ。そこは人間の感覚と一緒だろう」
男「では、神様はまだ神様ではない?」
神娘「いや、神に属する存在だ。神技も使えるし」
男「しかし今は神技を使えない身ですよね?」
神娘「それは力が尽きているからであって…」
男「ですがそれでは…」
神娘「分かった。怒らないから今考えている事を言ってみよ」
男「神様が神様でなければ、もうあれこれ供え物を用意せずとも済むかと」
神娘「そんな所だろうと思った」
男「さすが神様」
神娘「ついでに更に気兼ねなく無礼を働けるとでも思っているのだろう」
男「そそそんなわけないではないですか」
38: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:17:18 ID:Q4px5cWK5o
神娘「こほん、とにかく下位であろうとも私は神たる存在。お前たち人間より上に立つ者だぞ」
男「ははーっ」
神娘「本来ならお前の無礼の数々、万死に値する」
神娘「しかし私は心が広い故、見逃してやっているのだ」
男「……」
神娘「今はお前に馬鹿にされてもろくに仕返しもできぬ体たらくだが、今に見ておれ」
神娘「きっといつか本神となり、お前に天罰を…っておい」
男「……」コックリコックリ
神娘「…」
男「…あっ、すいません。なんの話でしたっけ?」ハッ
神娘「都合の悪い話の流し方が雑だぞ」
39: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:17:54 ID:Q4px5cWK5o
男「ところで神様、その修行というのは何をされているので?」
神娘「……」
男「神様?」
神娘「言ったはずだぞ。神には神の領域があると」
男「…」
神娘「それは話せない」
男「…そうですか」
神娘「お前には関係のない事だしな」
男「何かお力になれる事があればと思ったのですが」
神娘「……」
神娘「神の事情だ。お前のような人間に出来る事などない」
男「差し出がましい事を申しました」
神娘「…ふん」プイッ
40: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:18:29 ID:Q4px5cWK5o
神娘「ふう、今日はもう帰れ」
男「お疲れの様で」
神娘「主にお前のせいでな」
男「ご冗談を」
神娘「…本当にお前の頭に雷でも落としてやりたいもんだ」
男「くわばらくわばら」
神娘「鬱陶しい。ほれ、日が傾いてきたぞ」
男「あっ、はい。では失礼します、神様」
タッタッタッ
神娘「……」
41: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:20:44 ID:Q4px5cWK5o
神娘「…いかんな。どうにも喋り過ぎてしまう」
神娘「私も懲りないものだ」
神娘「口は災いの元とはよく言ったものだな」
神娘「あの男も所詮は人間。欲深い存在に変わりない」
神娘「…人間になど、もう気を許さんぞ」フンス
神娘「……」
神娘「…そういえば言い忘れたな」
神娘「もう来るな、と」
42: 名無しさん@読者の声:2016/2/14(日) 22:15:43 ID:w.7DrG1zg2
神娘様の過去にいったい何があったのか気になる…
支援!
43: ◆WjgYlacz.c:2016/2/14(日) 23:22:11 ID:ebUsa8u8JU
>>42支援感謝です!
男「神様、お邪魔します」ベチャベチャ
神娘「なんだ、またお前か…ってなんだその格好は!?」ビクッ
男「ああ、すいません。途中でぬかるみに嵌ってしまって」ベチャア
神娘「昨日かなり降っていたからな」
男「うっかりしました」
神娘「そんな姿でここへ来るな」
男「しかし、せっかくまた野菜をお持ちしたので」
神娘「どうせその野菜も泥だらけになのだろう!?」
男「大丈夫です、これだけは死守しましたから」ドサッ
神娘「ん、確かに無事そうだが…しかし器用な奴だな」
男「あの時の華麗な身のこなし、神様にも見せたかったです」
神娘「別に見たくない」
男「またまた、遠慮なさらず。今再現をば…」スッ
神娘「やめい、泥が跳ねる」
44: ◆WjgYlacz.c:2016/2/14(日) 23:22:38 ID:ebUsa8u8JU
男「まあとにかくお納めください」
神娘「うむ…ってまた大根ばかりではないか」
男「まともに採れた野菜がそればかりでして」
神娘「そういえば前にこれを持ってきた時、村で初めて採れた野菜だと言っていたな」
男「そうでしたか?まあ、確かにその通りなのですが…」
神娘「出来たばかりなのか?お前の村は」
男「去年の秋から開拓を始めましたばかりでして」
神娘「ほう、そうか」
男「しかし畑もまだまだ拓けきっていません故、お納めできる品も貧相になってしまいます」
神娘「それではまだ大忙しであろう」
男「はい。日夜あくせく働いております」
神娘「…お前がここへ来る頻度を考えるとそうは思えん」
男「やる時はやる性分なのです」
神娘「自分で言うのかそれは」
45: ◆WjgYlacz.c:2016/2/14(日) 23:23:01 ID:ebUsa8u8JU
神娘「ここへ来る暇があったら働け。というか来るな」
男「最後のが本音でしょうか」
神娘「私は最初からそう言っていたのだが」
男「まあそれはさて置き…」
神娘「さて置くな」
男「珍しいですね」
神娘「何がだ?」
男「神様が我々の事を聞いてくるなど」
神娘「むっ」
男「人間に興味など無いのでは?」
神娘「単なる気まぐれだ」
男「そうですか」
神娘「お前たちが何をしようと私には関係ないぞ」
男「…」
神娘「…ん、これは貰っておく。帰るがいい」
男「はい。それでは」スクッ
ザッザッ
神娘「……」
46: ◆WjgYlacz.c:2016/2/14(日) 23:24:13 ID:ebUsa8u8JU
男「神様、失礼しますよ」ザッ
ヒュウウウ
男「ん?奥から風が…」
神娘「…」ヒュオオ
神娘「ふう、まだこんなものか。しかし良い調子だぞ…」ブツブツ
男「神様」
神娘「む、またお前か」
男「今のはいったい…?」
神娘「おう。神風という」
男「風…ですか?」
神娘「神技の一つだ。まだ規模は小さいが、これが使えるようになったという事は力が戻ってきているという事なのだ」
男「はあ」
神娘「…いかん。お前に聞かせるべきではなかった」
神娘「回復の兆しが見えた高揚感でつい…」
男「別に口外など致しませんよ」
神娘「そうしろ」
男「ですが、せっかくですからもう少しきちんと見たいのですが」
神娘「そうか?それならば…」ハッ
神娘「…こほん。見せ物ではないぞ」
男「今、神様…」
神娘「黙らっしゃい」
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