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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





239: ◆WjgYlacz.c:2016/7/19(火) 20:57:33 ID:KD3d6echOg
山神「ごめんなさいね。脅かすようなことを言って」

村娘「や、山神様?」

山神「あなたの覚悟を聞きたかったのよ」

山神「私の事を押し退けてでも行くほど、伝えたい事があったのかどうか探りたかった」

男「そうだったのですか…」

山神「あそこにひときわ大きな木が見えるかしら?」

男「はい」

山神「あれはこの山で一番大きな杉の木」

山神「神娘はあそこにいるはずよ」

男「あそこに…」

山神「いい?さっきあなた自身が言った事は守ってね」

男「はい」

山神「長居しては駄目。言うべき事だけ言いなさい」

男「分かっております」

山神「私はあなたのこと信用する。だから…見張ったりはしない」

山神「しっかりと話してきなさい」

男「ありがとうございます。では…」タタッ

山神「行ってらっしゃい」

村娘「男さん、お気を付けて!」
240: ◆WjgYlacz.c:2016/7/19(火) 20:58:33 ID:KD3d6echOg
タタタ…

山神「……」

村娘「…山神様」

山神「驚いた?」

村娘「当たり前ですよっ!」

山神「ふふっ、ごめんなさいね」

村娘「本当に山神様が向かってきたら勝てるわけないんですから」

山神「まあいざという時は…ね?」ニコッ

村娘「怖いです…」ゾクッ

山神「…でも、これで良かったかしら?」

村娘「?」

山神「結局、男さんと神娘は一緒には生きられない」

山神「そこはどうしても、私も譲るわけには行かなかった…」

村娘「…男さんも神娘様もそれで納得しているんでしたら、私に口出しできません」

村娘「本当は、一緒にいてほしかったんですけど…」

山神「あなたは本当に優しいわね」

山神「他人の幸せを心から願ってあんなに必死になれるのだから」

村娘「空回ってただけです…」

山神「うふふ、でもあなたのおかげで男さんに神娘の決意が伝わったのだから」

山神「決して無駄な空回りではなかったんじゃない?」

村娘「…そうでしょうか」
241: ◆WjgYlacz.c:2016/7/19(火) 20:59:17 ID:KD3d6echOg
村娘「…でも私、反省しなきゃ」

山神「?」

村娘「自分の感情だけで一人相撲して…神娘様の気持ち、少しも考えてなかった…」

山神「……」

村娘「いろいろ滅茶苦茶にしちゃうところでしたね…」

村娘「こんなので巫女なんてできるのかなぁ…」シュン

山神「…巫女。そうやって反省して改めていくのが人間よ」

村娘「山神様…」

山神「まだまだ未熟なのは当然。少しづつ成長していきなさい」

山神「大丈夫よ。あなたはちゃんと分かってる」

村娘「…ありがとうございます」

山神「ほら、あなたに湿っぽいのは似合わないわ!元気出しなさい!」バシッ

村娘「わっ!羽根で叩かないでくださいよ!」

山神「さて、転移の準備を進めるわ。巫女も手伝って」

村娘「は、はいっ!」
242: ◆WjgYlacz.c:2016/7/24(日) 11:22:57 ID:Ist3L1G472





・・・・・・・・・





243: ◆WjgYlacz.c:2016/7/24(日) 11:24:02 ID:Ist3L1G472
ヒュウウウ…

神娘「……」ボケーッ

神娘(やはりこの木の上は気持ちが休まるな)

神娘(昔も気疲れした時はよくここへ来たものだ)

神娘(それに、ここにいればあやつも見つける事はできまい)

神娘(…まあ、探しに来る事もないだろうがな)シュン

神娘(いや、寂しがってはいかん!寂しがっては…)ブンブン

「神様ーっ!!」

神娘「っ!?」ビクッ

男「神様ー!出てきてくださーい!」

神娘(なっ、なっ……)コソッ

神娘(なんであやつ、ここに…!?)

男「神様ー!」

神娘(…ま、まあいい。会わぬと決めたからには会わぬ)

神娘(このまま黙っておればあやつも諦めるだろう)

男「しかし高い木だ。この上にでもいらっしゃるのだろうか」

男「そうだとしたら…馬鹿と煙は高いところが好きだとはよく言ったものだ」

神娘「誰が馬鹿だ!」ガサッ

男「あっ」

神娘「あっ」
244: ◆WjgYlacz.c:2016/7/24(日) 11:24:45 ID:Ist3L1G472
神娘(し、しまった…つい乗せられてしまった)

男「やはりいらっしゃいましたか!」

神娘「ぐぬぬ…」

男「神様、お話ししたい事があります!降りてきてください!」

神娘「は、話す事などない!さっさと立ち去れ!」

男「そんな事仰らずに!お願いです!」

神娘「やかましい!早く自分の村へ帰れ!」

男「このままでは帰れません!」

神娘「ふ、ふん!ならばそこでいつまでもそうしていろ!」ガササッ

神娘(…ほだされるな。このまま相手にしなければよい)

男「…隠れてしまった」

男「ふむ、降りてきてくださらないなら仕方ない」

神娘(…?何をする気…)コソッ

男「よっと」ガシッ

神娘「!?」

男「せいっ!」パシッ

神娘(あ、あやつ…この木を登っているだと!?)

神娘「ば、馬鹿!そんな事して、落ちたら死ぬぞっ!」アワワ

男「大丈夫ですよ…っと!」ギシッ

男「木登りなら昔から大の得意でしたから」ググッ

神娘「子どもの遊びと一緒にするな!」
245: ◆WjgYlacz.c:2016/7/24(日) 11:26:41 ID:Ist3L1G472
男「要領は同じですって」

神娘「同じではない!すぐに降りるのだ!」

男「でしたら神様がこちらへ来てくださいよ」

神娘「ぐっ…そ、それは断るっ!」

男「では私の方から参るまでです」

神娘「あっ、あっ!そこの枝は脆くなっているぞ!」ハラハラ

男「おっと、ありがとうございます」スタッ

男「さて、そんな事を言ってる間に…あと少しですが」

神娘「……」ポカーン

神娘(あっという間にこんな高くまで…)

神娘「この化け物め」

男「はっはっは。何とでも仰って…」

ズルッ

男「うわっ!」ガシイッ

神娘「おい!」アセッ

男「お、落ちる…!神様、手をお貸しください…!」

神娘「……」

男「落ちたら死んでしまいます〜」バタバタ

神娘「…お前、わざとだろ」

男「ばれましたか」

神娘「本当にうっとおしい奴だ…」
246: ◆WjgYlacz.c:2016/7/24(日) 11:27:20 ID:Ist3L1G472
男「…ふう〜、なかなかに良い運動でした」ヨイショット

神娘「はぁ…帰れと言ったのに」

男「無理やり帰らせようとすればできたと思うのですが」

神娘「うるさい黙れ」

男「いや〜良い眺めですね。このような大きな木に初めて登りました」

神娘「…何故ここにいると分かった」

男「山神様からお教えいただきました」

神娘「やはりか。まったく余計な事を…」

男「山神様に罪はありません。私が無理やり聞き出したのです」

神娘「…村娘からいろいろ聞いただろう」

男「はい」

神娘「私の気持ちはあの時言った通りだ」

神娘「お前には…来てほしくなかった」

男「申し訳ありません」

男「しかし、どうしても神様とお話しさせていただきたくて」

神娘「……」

神娘(どうせ、共に来てほしいとか言うに決まっ…)

男「神様、お別れの挨拶にあがりました」ザッ

神娘「えっ」
247: ◆WjgYlacz.c:2016/7/24(日) 11:28:01 ID:Ist3L1G472
男「えって何ですか」

神娘「な、何でもないぞ。続けよ」

男「おほん、では…」

男「私は神様のおかげでこの数日、貴重な体験をする事ができました」

男「村の外へ出て旅をしたこと」

男「月を見上げながら野宿をしたこと」

男「幻影の村の中を歩き回ったこと」

男「何もかもが私にとって感慨深いことばかり」

神娘「……」

男「私はこの数日間の事、生涯忘れません」

神娘「…うむ」

男「いえ、この数日間の事ばかりではありません」

男「神様とお会いしてからの日々全て、忘れる事はないでしょう」

神娘「なかなかに濃い日々だったからな」

神娘「お前が頼みもしないのに漬物や猪肉を持ってきたこと」

神娘「採ってきた茸でひどい目にあったこと」

神娘「鰻を踊り食いさせられそうになったこと」

神娘「私も忘れられそうにないぞ」

男「割とひどい思い出ですね」

神娘「ほとんどお前のせいだな、うん」
248: ◆WjgYlacz.c:2016/7/24(日) 11:28:30 ID:Ist3L1G472
男「神様、今日この日まで…」

男「本当に、本当にありがとうございました」ペコッ

神娘「…」

神娘「…お前に頭を下げられるような事、私は何もしておらぬ」

男「……」

神娘「以前も言ったが…お前から貰ったものが多すぎる」

神娘「このままお前に何の恩も返せず別れるのが心苦しいほどだ」

男「いえ、そのような…」

神娘「ここは素直に受け取れ。本当に感謝しておる」

男「ははっ」

神娘「お前とお前の村の多幸、心から祈っておるぞ」

男「ありがとうございます」

男「…では神様、名残惜しくなります故」

神娘「ああ。もう行くがいい」

男「失礼致します」スクッ

ギシッ

ギシッ…



神娘「…」



神娘「……」



神娘「…っ」
249: ◆WjgYlacz.c:2016/7/24(日) 11:29:04 ID:Ist3L1G472
男「よっと」スタッ

男「さて、では社へ戻…」

「待て、男!」

男「!」

スタッ

神娘「ふぅ」

男「神様?どうかされましたか?」

神娘「気が変わった」

男「え?」

神娘「私はこの地で生き、修行する。それは動かせん」

神娘「だが、私はお前の事が……」

男「…!」

神娘「…え〜…その、気に入っておる」

男「……」

神娘「だから、ここで今生の別れとするのは止めだ」

神娘「またお前に会いに行くことにしよう」

男「本当ですか!」

神娘「修行が一段落し、落ち着いたら…会いに行く」
250: ◆WjgYlacz.c:2016/7/24(日) 11:29:38 ID:Ist3L1G472
神娘「お前が待っていてくれるのなら…約束しよう」

男「当然、お待ちしております」

神娘「…良かった」

男「しかし、ここから私の村まではかなり距離がありますが」

神娘「私は神だぞ?この程度の距離、短いものだ」

男「流石です」

神娘「地は続いておる。どうという事はない」

神娘「距離は遠くとも所詮、同じ地上に生きる者同士だ」

男「はは、そうですね」

神娘「その時はまたくだらない話を聞かせてくれるか?」

男「いくらでも」

男「漬物もたくさん用意しておきますし」

男「肉や魚もたくさん獲っておきますよ」

神娘「餅米も作っていると言っていたな」

男「はい。その折には餅を搗きましょう」

神娘「わはは」

男「その日までに、神様が驚かれるような立派な村にしますよ」

神娘「うむ、楽しみにしておくぞ」
251: ◆WjgYlacz.c:2016/7/24(日) 11:30:59 ID:Ist3L1G472
神娘「…ん、そうだ。これを」チリッ

男「それはあの鈴ですか」

神娘「えいやっ」プチッ

男「か、神様?」

神娘「さて、二つに結えてあった鈴を再びちぎったわけだが…」

神娘「この片割れをお前に託す」スッ

男「何故ですか」

神娘「再会の約束の証だ」

男「しかし、これは大切なものなのでは?」

神娘「そうだな。よく分からぬが大切なものだろう」

神娘「だからこそお前に託すのだ。また取りに行かねばならんからな」

男「それで再会の約束と…」

神娘「そういう事だ。必ずお前の元へ参る」

男「このような品…私が持っていても大丈夫でしょうか」

神娘「神力が宿っているのは間違いないが…お前が持っていて危険な物ではない」

男「もしや、これを使えば私も神力が使えるように…」

神娘「ならん」

男「あ、はい」
252: ◆WjgYlacz.c:2016/7/24(日) 11:31:30 ID:Ist3L1G472
神娘「その鈴の音が最初に私たちを引き合わせた」

神娘「そして、必ずこの鈴がまたお前と私を引き合わせる」

神娘「…ような気がする」

男「そうですね。私もそのような気が致します」

神娘「無くすなよ?」

男「分かっております。肌身離さず、大事に預かっておきます」

男「そうでないと神様の気が変わりかねませんからね」

神娘「信用ないのか?私は」

男「滅相もございません」

男「しかし少々面倒くさがりなところがありますから」

神娘「やかましい……ん?」ピクッ

男「どうかされましたか?」

神娘「社の方から強大な神力を感じる。恐らく準備が出来たのだろう」

男「そうですか。何だか緊張致します」

神娘「転移など一瞬だ。大したことはない」

神娘「ちょっと胃が引っくり返るような感覚になるだけだ」

男「よく分かりませんが怖い」

神娘「わはは、楽しみにしておけ」

男「はあ」

神娘「言っておくが見送りには行かぬぞ」

男「大丈夫ですよ。また会えるのですから」
253: ◆WjgYlacz.c:2016/7/24(日) 11:33:46 ID:Ist3L1G472
神娘「じゃあその日まで、達者でな」

男「はい、神様。またお会いしましょう」

ザッ…





男「…」フリフリ



神娘「…」フリフリ



神娘「……」フリ…





神娘「…ふっ、気に入っているか。上手く誤魔化したものだ」





神娘「頑張って生きろ…男」
254: ◆WjgYlacz.c:2016/7/30(土) 18:27:08 ID:TXb2tRm0vc





・・・・・・・・・・





255: ◆WjgYlacz.c:2016/7/30(土) 18:27:39 ID:TXb2tRm0vc





・・・・・・・・・・






256: ◆WjgYlacz.c:2016/7/30(土) 18:28:09 ID:TXb2tRm0vc





・・・・・・・・・・





257: ◆WjgYlacz.c:2016/7/30(土) 18:28:38 ID:TXb2tRm0vc
神娘「……」

ザアアアアッ…

神娘「……」

ヒュッ

神娘「!」ピクッ

神娘「はっ!」ピョンッ

トスッ!

神娘「…ふぅ、今度は矢か」スタッ

ヒュヒュヒュンッ!

神娘「やっ!とっ!」ヒョイヒョイッ

トストストスッ!

神娘「…よし」ニヤッ

神娘「もう気配の察知はかなりこなれてきたぞ」ポンポン

バサバサッ

山神「…ふふ、そうね。良い調子じゃないかしら」カアーッ

神娘「しかし神力でできた弓矢とは…まるで殺しにかかってないか?」

山神「このくらいの方が緊張感出るじゃない」

山神「当たらなければどうという事はないわよ」

神娘「間違っていないがなんだかな…」
258: ◆WjgYlacz.c:2016/7/30(土) 18:29:04 ID:TXb2tRm0vc
村娘「山神様!神娘様〜!」タタッ

山神「巫女」

村娘「あっ、いたいた!少し休憩しませんか?」

山神「まあそうね。朝から動き通しだし」

神娘「では社に戻ろう」


・・・・・・・


村娘「はい、どうぞ」コトッ

神娘「すまんな。喉が渇いていた」

山神「ふぅ〜、近頃めっきり涼しくなったわね」

村娘「もう秋になりましたから」

神娘「木々が紅葉を迎える。良い季節だな」

村娘「神娘様がここに来て、もう三月くらい経つでしょうか」

神娘「おお、それほどになるか」

山神「時が経つのは早いわね」

神娘「お前はもうここの仕事に慣れたか」

村娘「はい。とは言っても、巫女様らしい事なんて何もしてないですけど…」

山神「祭事の時期になったら死ぬほど忙しくなるわよ。安心なさい」

村娘「死ぬほど…ですか」アセッ
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sage:


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うpろだ
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