ーむか~しむかし、とある場所で
23: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:02:10 ID:L58MV1qlVg
神娘「…陽気だ。とても穏やかな」
神娘「うむ…どうも眠くなる……ぞ…」コクンコクン
神娘「……」zzz
…………
………
……
『神様~!今年も良き米が採れましてございます!』
「おお、そうか」
『これも全て神様のおかげでございますな!』
「何を言う。お前たちの努力が全てだ」
『これからもこの村を守ってくだされ!』
『神様!』
『神様!』
「わはは、任せておくがよいぞ!」
「…生きるために頑張る人間の姿は好きだ」
「これからも、この村で共に…」
……
………
…………
神娘「……っ!」ハッ
神娘「…いかん、うとうとしていた。しかし…」
神娘(懐かしい夢を見たな。ふん、何を今さら…)
男「…神様」
神娘「わあっ!?」ビクッ
24: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:02:36 ID:L58MV1qlVg
神娘「い、いたのかお前…」
男「眠っておいででしたか」
神娘「少しだけな」
神娘「…というより何で勝手に入ってきているのだ。今さらだが」
男「そろそろ慣れてくださいよ」
神娘「馬鹿者。そもそも立ち入りを許可しておらぬ」
男「まあまあ。それより、何か良い夢でも?」
神娘「へっ?」
男「神様、眠りながら少し笑っておりました」
神娘「…」
男「そういえば神様が笑っておられるところは初めて見ました」
神娘「…お前には関わりない事だ」
男「そう言うと思いました。でも、そのお顔が見れただけで少し嬉しいです」
神娘「な、何を言っておる」
男「いえいえ。こちらの話です」
神娘「仕返しのつもりか?」
男「滅相もない」
神娘(また何か企んでるのか?こやつ…)
25: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:04:56 ID:L58MV1qlVg
男「神様!」ザッ
神娘「おう、よく来たな!」ニコーッ
男「…えっ」
神娘「待ち侘びておったぞ。さあ、そこに座れ」ニコニコ
男「あの、神様…」
神娘「ん?」ニコニコ
男「どうしたのですか。またお加減でも…」
神娘「…大事ない。たまには趣向を違えて歓迎してみたのだ」フウ
男「何故そのような事を…」
神娘「逆に気味悪がって寄り付かなくなるかと思って」
男「それなら何故あっさり白状してしまったのですか…」
神娘「自分で自分に耐え切れなくなった」
男「左様ですか」
神娘「押して駄目なら引いてみる手筈だったのだが」
男「たしかに何だか気持ち悪うございました」
神娘「…狙い通りなのだがもう少し歯に衣着せよ」
男「ですが、そのくらいでは来なくなりません」
神娘「」
26: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:06:45 ID:L58MV1qlVg
男「はあ、はあ…」ザッ
神娘「…なんだそれは」
男「…ふう」ドサッ
男「ああ、重たかった…先ほど狩った猪でございます」
神娘「ほう、なかなかに大きいな」
男「苦労致しました」
神娘「…まさか、お前一人で狩ったのか?」
男「そうでなければ村に持って帰らなければならないでしょう」
神娘「それはそうだろうが…」
神娘(何者なのだ?こやつ…)
男「どうぞ、お召し上がりください」
神娘「あのな、それをそのまま持ってきて私にどうせよと言うのだ」
男「え?食べていただきたく思います」
神娘「そのまま食えというのか!?」
男「神様ならきっとできるかと思いまして」
神娘「…むむ」
男「できないのですか…そうですか」シュン
神娘「なに?私が悪いのか?」
27: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:07:25 ID:L58MV1qlVg
パチパチ…
神娘「まさかここで火を焚くとは思わなかったぞ」
男「風通しは良い洞窟ですから。煙も籠りませんし」
神娘「まあ実は生肉で食えない事もないのだがな」
男「そうなのですか?」
神娘「神だからな」
男「納得しました」
神娘「しかし焼いた方が美味いのは間違いない」
男「まったくです」
神娘「山の恵みには感謝せねばな」
男「はい、焼けました」スッ
神娘「うむ」スッ
はむっ
神娘「……」モグモグ
男「…」ジーッ
神娘「…何を見ておる」
男「いえ」
神娘「おかしな奴だ」モグモグ
28: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:07:58 ID:L58MV1qlVg
神娘「……」モグモグ
男「……」モグモグ
神娘「…おい」
男「はい」
神娘「何故お前も普通に食べているのだ」
男「お腹が空いてございます故」
神娘「本能に忠実か!」
男「猪など滅多に狩れませんから」
神娘「これ、私への供え物だろう」
男「そうです」
神娘「お前が今やっているのは罰当たりな事ではないか」
男「しかし神様一人でこれ全て召し上がれるとは思えません」
神娘「う、うむ…」
男「この時期、肉などすぐに腐ってしまいますからね」
男「ここで食べてしまう方が得策でしょう」
神娘「正論なのだが釈然とせぬな」
男「ご安心を。普段は節度を守り、道端の地蔵に供えられた饅頭などにも手を付けません」
神娘「今のお前はそれとほぼ同義だと言っているのだが」
29: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:08:36 ID:L58MV1qlVg
男「…」モグモグ
神娘「…なあ」
男「はい」
神娘「正直に言え。何か企んでおるのか?」
男「?」
神娘「よく考えればおかしいぞ。何の目的もなくここに来るなど…」
男「目的ならありますよ。神様にこうして美味しいものを食べていただき、早く元気になっていただきたいのです」
神娘「何故お前が私の世話を焼くのだ」
男「…責任を感じております」
神娘「責任?」
男「あの時倒れたのは、神様がそのお力を使ったからでしょう?」
男「私が素直に神様の言う事を信じていれば、ああはならなかった筈です」
神娘「……」
男「だから、こうしているのは一種の罪滅ぼしなのです」
男「もし神様に何かあれば目覚めが悪いですから」
神娘「…本当にそんな理由か?」
男「それだけです」
神娘「馬鹿馬鹿しい。私の調子が悪いのはあれが原因ではない」
神娘「よってお前に責任などない。分かったか」
男「そうですか…しかし、調子が悪いのは確かなのですね」
神娘「あっ…」
男「ならば、私は神様を放っておくことはできません」ニコッ
神娘「もうやだこの人間」
30: ◆WjgYlacz.c:2015/12/24(木) 11:09:12 ID:L58MV1qlVg
男「…あの、神様」
神娘「む?」
男「今度は神様の事を少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」
神娘「……」モグモグ
神娘「ふぅ、食った食った」ポンポン
男「……」
神娘「…何故聞きたがる。お前に利は無いぞ?」
男「利など要りませんが」
神娘「では何なのだ?」
男「ただの興味本意です」
神娘「…」
神娘「お前は馬鹿なのか何なのか分からん」
男「馬鹿でも何でもいいです」
神娘「分かったよ。美味い肉の礼だ」
男「おお、ありがたや」
神娘「とは言っても、何から話せばいいものか…」
31: 名無しさん@読者の声:2015/12/31(木) 00:12:47 ID:iGoluuLBq.
神様と男のやりとり見てるとほんわかする(´∀`*)
作者さんには
つ④④④④
神様には
つ つきたての餅(きなこ、あんこ、抹茶、砂糖と醤油の4種類)
32: 支援ありがとうございます ◆WjgYlacz.c:2016/1/1(金) 00:16:13 ID:6EINa3wIrQ
男「神様、>>31から搗き立てのお餅が送られてきましたよ」
神娘「>>31とは誰だ。それに、人間からの施しなどいらん」ジュルリ
男「神様、言動が一致しておりません」
神娘「き、気のせいだろう。いらんものはいらんのだ」ソワソワ
男「そうですか。では持って帰って村の皆で食べますね」
神娘「!」ピクッ
男「なんと良い匂い…これは良いもち米を使っておりますね」
神娘「ぐっ…」
男「しかも味も4種類用意するとは気が利いておりますね。私はきな粉派ですが…」
神娘「うっ…うぅ~…」ジワア
男「…神様、やせ我慢は体に毒です」
神娘「あぅ…」
男「正月に餅を食べるくらい、何もおかしくありませんよ」
神娘「…」
神娘「……あ、味見くらいはしてやろう」
男「はい」
この後、1人と1柱で美味しくいただきました。
33: ◆WjgYlacz.c:2016/1/1(金) 00:18:51 ID:6EINa3wIrQ
男「あっ、SS板の皆様、明けましておめでとうございます」
神娘「おい」
男「今年ものんびり更新していきますので、温かい目で見守りください」ペコッ
神娘「お前、誰に何を言っておるのだ?」
男「神様も一緒に頭を下げていただけませんか」
神娘「嫌に決まっているだろう。というより誰にだ?」
男「こんな神様ですが、皆様よろしくお願いします」
神娘「こんなとはなんだ。そして誰と喋っているのだと聞いておる」
34: お久しぶりです ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:13:05 ID:Q4px5cWK5o
以下、>>30続き
35: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:14:40 ID:Q4px5cWK5o
神娘「そうだ。お前、前に聞いてきた事があったな」
男「いつの事でしょう?」
神娘「ほれ、>>6でだ」
男「ああ、そんな事もありましたっけ」
神娘「…忘れているという事はどうでもいいのだな」
男「いえいえ。気になります。興味があります。夜も眠れません」
神娘「どれだけ必死なのだ」
36: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:15:56 ID:Q4px5cWK5o
神娘「とにかく、あの時お前は私が何の神であるかと聞いてきたな」
男「そうでしたね」
神娘「あれに答えてやろう」
男「ありがたやありがたや」
神娘「…とは言っても、そこまで詳しくは答えてやれないんだがな」
男「えっ?」
神娘「神には神の、人間には人間の領域というものがある。迂闊にお前たちにこちらの事情を話す事はできん」
男「はあ」
神娘「それに…私は何の神でもない」
男「どういうことですか?」
神娘「私にはまだ神としての役割がないということだ」
男「なんと」
37: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:16:32 ID:Q4px5cWK5o
神娘「お前たちの言葉で言えば…八百万の神とでも言うのかな」
神娘「私は神としては修業中の下級神だ」
男「神様にも身分があるのですか」
神娘「うむ。そこは人間の感覚と一緒だろう」
男「では、神様はまだ神様ではない?」
神娘「いや、神に属する存在だ。神技も使えるし」
男「しかし今は神技を使えない身ですよね?」
神娘「それは力が尽きているからであって…」
男「ですがそれでは…」
神娘「分かった。怒らないから今考えている事を言ってみよ」
男「神様が神様でなければ、もうあれこれ供え物を用意せずとも済むかと」
神娘「そんな所だろうと思った」
男「さすが神様」
神娘「ついでに更に気兼ねなく無礼を働けるとでも思っているのだろう」
男「そそそんなわけないではないですか」
38: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:17:18 ID:Q4px5cWK5o
神娘「こほん、とにかく下位であろうとも私は神たる存在。お前たち人間より上に立つ者だぞ」
男「ははーっ」
神娘「本来ならお前の無礼の数々、万死に値する」
神娘「しかし私は心が広い故、見逃してやっているのだ」
男「……」
神娘「今はお前に馬鹿にされてもろくに仕返しもできぬ体たらくだが、今に見ておれ」
神娘「きっといつか本神となり、お前に天罰を…っておい」
男「……」コックリコックリ
神娘「…」
男「…あっ、すいません。なんの話でしたっけ?」ハッ
神娘「都合の悪い話の流し方が雑だぞ」
39: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:17:54 ID:Q4px5cWK5o
男「ところで神様、その修行というのは何をされているので?」
神娘「……」
男「神様?」
神娘「言ったはずだぞ。神には神の領域があると」
男「…」
神娘「それは話せない」
男「…そうですか」
神娘「お前には関係のない事だしな」
男「何かお力になれる事があればと思ったのですが」
神娘「……」
神娘「神の事情だ。お前のような人間に出来る事などない」
男「差し出がましい事を申しました」
神娘「…ふん」プイッ
40: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:18:29 ID:Q4px5cWK5o
神娘「ふう、今日はもう帰れ」
男「お疲れの様で」
神娘「主にお前のせいでな」
男「ご冗談を」
神娘「…本当にお前の頭に雷でも落としてやりたいもんだ」
男「くわばらくわばら」
神娘「鬱陶しい。ほれ、日が傾いてきたぞ」
男「あっ、はい。では失礼します、神様」
タッタッタッ
神娘「……」
41: ◆WjgYlacz.c:2016/2/9(火) 04:20:44 ID:Q4px5cWK5o
神娘「…いかんな。どうにも喋り過ぎてしまう」
神娘「私も懲りないものだ」
神娘「口は災いの元とはよく言ったものだな」
神娘「あの男も所詮は人間。欲深い存在に変わりない」
神娘「…人間になど、もう気を許さんぞ」フンス
神娘「……」
神娘「…そういえば言い忘れたな」
神娘「もう来るな、と」
42: 名無しさん@読者の声:2016/2/14(日) 22:15:43 ID:w.7DrG1zg2
神娘様の過去にいったい何があったのか気になる…
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