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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





209: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:40:21 ID:10DpqrJMlU
山神「男さんはこれからどうするのかしら?」

男「明日の朝にはここを発ちます」

山神「そう…寂しくなるわね」

男「できればもう少し残りたかったのですが…畑を放ってもおけませんし」

山神「そうね。男さんには男さんの暮らしがあるのだから」

男「それに寂しくなりませんよ。神娘様はここに残るそうですし」

神娘「……うむ」

ズキッ

神娘(ん…?)

山神「ふふ、また騒がしくなるわぁ」

神娘「騒がしくて悪かったな」

山神「…ちゃんと神としての務めは果たさなくちゃね」

神娘「無論だ」

山神「みっちりと鍛えてあげないと」ニヤリ

神娘「…不安だ」

男「鍛えてさしあげてください」ペコリ

神娘「お前は何様なのだ」
210: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:40:51 ID:10DpqrJMlU
山神「朝に発つのなら、もう休んだ方がいいんじゃないかしら?」

男「そうですね。そうさせていただきます」

山神「奥の部屋、使っていいわよ」

男「ありがとうございます」

神娘「…」

男「神様、山神様、それではお先に失礼します」

神娘「…ああ、おやすみ」

山神「おやすみなさい」

ザッザッ



神娘「…」

山神「さて、と。私もそろそろ…」

神娘「なあ山神殿」

山神「なに?」

神娘「胸が痛んだ」

山神「えっ?」

神娘「先ほど、また胸が痛んだ。こう…疼くように」

山神「……」
211: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:41:44 ID:10DpqrJMlU
神娘「だが分からん。私の心がいったい何を訴えているのか…」

山神「その時に何を話していたのか分かる?」

神娘「え〜っとだな」

神娘「あれだ、男が村に戻り、私がここに残るという話だ」

山神「……」

神娘「分からんな。別におかしな事など何一つない話だが…」

山神(もう答え一歩手前じゃない!)

神娘「ま、偶然かもしれん。気にしなくていいぞ」

山神「…はあ」

神娘「な、なんだ。ため息などついて」

山神「べっつにぃ〜」

神娘「なんだというのだその言い方は…」

山神「じゃ、私そこら辺の止まり木で寝てるわ」バサッ

山神「あなたも早く寝なさい。おやすみ〜」

神娘「おい、待っ…」

バサバサッ

山神(…わざとかと思えるほどの鈍感さね)

山神(というより、無意識に気付かないようにしているのかしら…)
212: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:42:13 ID:10DpqrJMlU
神娘「…行ってしまった」


神娘(早く寝ろと言われても…)


神娘(また色々考えて眠れんぞ、こりゃ)


神娘(……)


神娘(私自身の心、か…)


神娘(そんなもの、今まで考えた事もなかった)


神娘(いったい何を訴えておるのだ)


神娘(お〜い…)


神娘(……)


神娘(…阿呆らし)


神娘(……)


神娘(…)
213: 名無しさん@読者の声:2016/6/23(木) 12:45:27 ID:nqDj.UzvhI
なんかキュンとくる…!

支援!
214: ◆WjgYlacz.c:2016/7/4(月) 15:31:05 ID:VlcCTJNCdM
チュンチュン…

神娘「…」コックリコックリ

ザッザッ

神娘「…ん、誰だ?」パチッ

「あっ、神娘様」

神娘「おお、村娘」

村娘「おはようございます!」

神娘「どうした、馬鹿に早いな」

村娘「ここで巫女をやる許しを両親から得たので、色々準備をと思って…」

神娘「そりゃ良かったな。山神殿も喜ぶだろう」フワワ

村娘「どうしてこんな所で休んでいたんですか?」

神娘「ああ、思案していたらそのままうとうとしてしまった」

村娘「また何か考え事ですか?」

神娘「丁度良い。お前にも関係ある事だ」

神娘「お前のいる村で修行を再開したいと思っておるのだ」

村娘「ほ、本当ですか!?」パアッ

神娘「よいだろうか?」

村娘「もちろん!とっても嬉しいです!」

神娘「うむ、そうか」
215: ◆WjgYlacz.c:2016/7/4(月) 15:32:06 ID:VlcCTJNCdM
神娘「そこで、お前に村の者たちとの仲立ちを頼みたいのだ」

村娘「わ、私に?」

神娘「そうだ。なに、そう身構える事ではない」

神娘「私を知る者がいた方が村人も安心するだろう」

村娘「確かにそうですね…。分かりました、やります」

神娘「すまんな。まあ神力がしっかり戻ってからの話だ」

村娘「それにしても神娘様がまた戻ってくるなんて」

神娘「私もこうなるとは思いもよらなかったよ」

村娘「あれ?でもそうなると…」

神娘「?」

村娘「男さんはどうなさるんですか?」

神娘「あやつは今日にも自分の村へと帰るぞ」

村娘「えっ」

神娘「当然だろう」

村娘「で、でも神娘様はそれでいいんですか?」

神娘「何がだ」

村娘「男さんとここでお別れするという事になりますよ?」
216: ◆WjgYlacz.c:2016/7/4(月) 15:32:41 ID:VlcCTJNCdM
神娘「それは仕方ない。私の修行にはあやつは何の関係もないのだから」

村娘「でも…」

神娘「あやつはあやつの、私は私の居場所で生きるだけのこと」

神娘「いったい何の不満があるというのだ?」

村娘「い、いえ…え〜っと…」

神娘「あっ、まさかお前…」

村娘「えっ?」

神娘「あやつに惚れたから行ってほしくない…とか?」

村娘「ち、違いますっ!」アセッ

神娘「生憎、縁結びの神の知り合いはいないのだが…」

村娘「違いますって。昨日会ったばかりなのにそんな筈ないですよ!」

神娘「そうか」

村娘「むしろ…」

神娘「ん?」

村娘「むしろ、神娘様の方が男さんのこと…」

バサバサッ

山神「カアーッ」バササッ

神娘「おはよう、山神殿」

山神「おはよう、神娘。巫女」

村娘「お、おはようございます!」
217: ◆WjgYlacz.c:2016/7/4(月) 15:33:26 ID:VlcCTJNCdM
山神「ごめんなさい。話の最中だったかしら?」

神娘「ん、大丈夫だ。もう本題は済んでいる」

村娘「……」

山神「巫女、どうやら許しは得たようね」

村娘「はい。両親に山神様の名を出したら驚かれましたけど…」

山神「良かったわ。それじゃ、中へ一緒に来てちょうだい」

村娘「分かりました」

山神「あ、神娘」

神娘「ん?」

山神「男さん、昼頃に出るそうよ」

神娘「そうか」

山神「少しは動けるようになったんだし、準備くらい手伝ってあげなさい」

神娘「…まあ、そのくらいならな」

山神「鳥居の外にいたわ」

神娘「分かった」ピョンッ

スタスタ…

山神「…」

村娘「…あの、山神様」

山神「何かしら?」
218: ◆WjgYlacz.c:2016/7/4(月) 15:34:01 ID:VlcCTJNCdM
村娘「どうにかならないんでしょうか?その…神娘様と男さんの事」

山神「……」

村娘「神娘様が私の村に来てくださるのは本当に嬉しいです。でも…」

村娘「あのお二人が信頼し合っている姿を昨日から目の当たりにして…」

村娘「離れ離れになってしまうのが何だか悲しくて…」

山神「そうね…気持ちは分かるわ」

山神「でも残念だけど、どうにもならないの」

村娘「…」

山神「修行するには決まりがあってね」

山神「神娘はこの生まれた地で修行しなくてはならないわ」

村娘「そうなのですか?」

山神「ええ。これは本神になる上では絶対のもの」

山神「あの子がそれを目指している以上…この地を離れられない」

村娘「仕方のない事なんですね…」

山神「そうよ」

村娘「神様にも決まりなんてあるんですか」

山神「あなた達とそう変わらないわ。神なんて面倒なものよ」

村娘「……」
219: ◆WjgYlacz.c:2016/7/4(月) 15:34:46 ID:VlcCTJNCdM
村娘「神娘様は、ご自分の気持ちには気付いていないのでしょうか?」

山神「恐らくね」

村娘「誰でも見ればすぐ分かりそうなものですが…」

山神「あの子、今まで全くそういう経験なかったし」

山神「それに本神になるためにひた向き過ぎて、自分の望みは後回しにしてきたから」

村娘「…真面目だったんですね」

山神「自分の心と上手く付き合えていないのよ」

村娘「心と…ですか?」

山神「神は人間の違って膨大な力を持っているわ」

山神「でも、中途半端に持ってしまった心の扱いは…人間より下手なのよね」

村娘「難しいです」

山神「分からなくてもいいわ。こちらの話だし」

山神「それに、その気持ちに気付いてしまったところで…」

村娘「…余計に辛い思いをしてしまいそうですね」

山神「ええ」

村娘「でも、やっぱりこのままじゃ…!」

山神「気付くのが悪い事とは言っていないわ」

山神「それでも私たちが教えるのは駄目。これも修行の内なんだから」

山神「なるがままに任せましょう」

村娘「…はい」
220: ◆WjgYlacz.c:2016/7/7(木) 13:08:27 ID:jnZwHXEDjk
男「…よいしょっと」

ドサッ

牛「モーッ」

男「待たせてすまない。もうすぐだからさ」

男「さてと、あとは…」

「これか?」スッ

男「あ、どうも…って神様でしたか。おはようございます」

神娘「おう。ほれ、早く受け取れ」

男「はい。よっと!」ドサッ

男「ふう…ありがとうございます」

神娘「もう積み込みはほとんど終わってしまったか」

男「ええ、元々少ない荷物でしたし」

男「帰りは山神様が…ええと、何でしたっけ?」

神娘「転移だろう。要は一瞬でお前の村に帰れる」

男「それです。お陰で帰り道を気にせずに済みました」

神娘「よかったな」

男「行きもそうだと楽だったのですが」

神娘「私にはできん。高等な神力だし、未熟な者が発動すれば体が四散する」

男「なにそれ怖い」
221: ◆WjgYlacz.c:2016/7/7(木) 13:08:55 ID:jnZwHXEDjk
牛「モォ―」

神娘「よしよし、お前にも世話になったな」ナデナデ

牛「モー…」

神娘「そんな寂しそうな顔をするな」

神娘「長旅で疲れたろう。帰ったらゆっくり休めよ」

牛「モー、モーッ」

神娘「ん?うむ、そうか」

牛「ンモーッ」

神娘「わはは、そうであろうな」

牛「…モ〜///」テレッ

神娘「むむっ、それはつまり…」

男「…先ほどから何を話していらっしゃるのですか?」

神娘「ん?ああ、『こんな長旅はもう嫌だ』と言っておる」

神娘「『早く村に戻り、ゆっくり寝たい』ともな」

男「はは、大丈夫です。すぐ望み通りになりますよ」

神娘「それから、こうも言ってたぞ」

男「?」

神娘「『ま、まあ男さんの頼みだったから仕方ないけど…///』とな」

牛「モ、モーッ…///」テレテレッ

男「……」

神娘「まあ、なんだ、頑張れ」ポンッ

男「何をですか」
222: ◆WjgYlacz.c:2016/7/7(木) 13:09:22 ID:jnZwHXEDjk
男「そういえば、神様はどのくらい修行をなされば本神になれるのですか?」

神娘「集めた信仰が天界に認められるまでだ」

男「何年ほどかかるのでしょうか」

神娘「修行の出来によって違うからな」

神娘「前の村には二十年ほどいたが…全く天界からの音沙汰はなかった」

男「気の長い話になりそうですね」

神娘「まあそう簡単にはなれぬという事だ」

男「しかし羨ましく思います」

神娘「何がだ?」

男「私たちはどうあがいても今の生活からは抜け出せません」

神娘「……」

男「百姓として生き、死ぬと決められていますから」

男「今の暮らしを続けても、今後何が変わるわけではないのです」

神娘「お前…」

男「その点、神様は目指すべきものがある。そのために努力もなさっている」

男「羨ましく思うと同時に…尊敬致します」

神娘「…今の生活が不満なのか?」

男「不満というわけでは…しかし、別の生き方をする自分も見てみたいと思いまして」

神娘「……」

男「申し訳ありません。ただの愚痴です。お気になさらないでください」

神娘「…そうか」
223: ◆WjgYlacz.c:2016/7/7(木) 13:10:13 ID:jnZwHXEDjk
神娘「だが、そう悲観する必要もあるまい」

男「?」

神娘「お前は私が羨ましいと言うが、私にしてみればお前たちの方が羨ましいぞ」

男「えっ」

神娘「神など不自由な生物だ。縛るものが多すぎる」

神娘「現に神力が使えなければ無力な存在となるし、本当に尽きれば消滅する」

男「……」

神娘「本来はお前たちの方がよっぽど自由だ」

神娘「ただ、その自由を自分たちの決め事で縛っているだけでな」

男「そうかもしれません」

神娘「まあ、そうしなければならぬのも分かるが」

男「人間は一人では生きていけませんから」

神娘「私とて同じだ。お前たち人間から信仰を貰わねばならぬ」

神娘「一柱では…生きていけぬ」

男「……」

神娘「それほど変わらないな。人間も、神も。おかしなものだ」

男「人間になりたいと思った事はあるのですか?」

神娘「わはは、それは流石にないな」

神娘「だが面白い。もしなったとしたら、何をするかな…」
224: ◆WjgYlacz.c:2016/7/7(木) 13:10:50 ID:jnZwHXEDjk










『・・・・・・・・・・・・』










225: ◆WjgYlacz.c:2016/7/7(木) 13:11:20 ID:jnZwHXEDjk
神娘「っ!!?」

男「どうかされましたか?」

神娘「何を馬鹿な…」

神娘「そんな、そんなはず…」

男「か、神様?」

神娘「ま、待てっ!ち、違う!」アセアセッ

神娘「私は断じてそのような事…!」

男「いったい何を…?」

神娘「う、うぅ…っ」

ダダッ

男「あっ、神様!」

男「…走り去ってしまった」

男「いったいどうされたのだろう…?」

「男さーん!」

男「えっ?」
226: ◆WjgYlacz.c:2016/7/7(木) 13:11:48 ID:jnZwHXEDjk
村娘「いたいた。おはようございます!」タタッ

男「村娘さん。おはようございます」

村娘「お荷物の準備はできましたか?」

男「はい。無事に終わりましたよ」

村娘「それなら神社に来てください。山神様が呼んでます」

男「あ、いや、それが神様が…」

村娘「神娘様がどうかされたんですか?」

男「先ほどまで話していたのですが、突然走り去ってしまって…」

村娘「は、走り去った?」

男「何故かひどく動転した様子でしたが」

村娘「え〜っと…とにかく男さんは山神様の元へ。急ぎの用事の様みたいなので」

男「しかし神様が…」

村娘「神娘様はあっちへ行ったんですか?」

男「はい」

村娘「じゃあ私が様子を見に行きます」

男「分かりました。ではお願いします」

タタッ
227: ◆WjgYlacz.c:2016/7/7(木) 13:12:21 ID:jnZwHXEDjk
ザッ

男「…失礼致します」

山神「男さん。あら、巫女はどこへ?」

男「ええと、かくかくしかじかでして…」

山神「そう…神娘が…」

男「急ぎの要件と聞きましたので、村娘さんにお任せしてしまいました」

山神「まあ、それでよかったかもしれないわね…」

男「あの、山神様?」

山神「何でもないわ。それよりこれを見てちょうだい」

男「これは何ですか?」

山神「私の神社に伝わる神器、転移の鏡よ」

男「転移…例の私が村へ一瞬で帰れるという術ですか」

山神「そう。ちょっと準備に時間がかかるからまだ行けないのだけどね」

山神「この鏡を覗いて、あなたの村を思い浮かべてほしいの」

男「村を…分かりました」スッ

男「……」

山神「……」

ポウ…

男「ん?鏡に何か…」

男「…これは私の村の景色ですね」

山神「上手くいったわ」
228: ◆WjgYlacz.c:2016/7/7(木) 13:13:07 ID:jnZwHXEDjk
山神「転移先をこの鏡に刷り込む必要があってね」

男「なるほど、それで呼んだわけですか」

山神「そういうこと。後は私に任せておいて」

男「はい。ありがとうございます」

山神「あなたには今回、助けてもらってばかりだったもの。この位させて」

男「そのような…」

山神「…でも、ごめんなさい」

男「?」

山神「あなたの本当の願いは、私には叶えられそうには…」

男「…何の事でしょう。私の願いは神様がこの地で立派に本懐を果たされる事です」

山神「…ありがとう」

山神「必ず、あの子が立派な本神になれるよう導くわ」

男「お願いします」

山神「じゃあ、準備が出来たら呼ぶわね」

男「はい。それでは私も神様を探しに…」

タッタッタ…

男「ん?」
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sage:


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