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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





112: ◆WjgYlacz.c:2016/3/29(火) 01:13:11 ID:2D9GO7t/YM
リーンリーン

神娘「……」

神娘(月を見るのも久しぶりだ)

神娘(もうすぐ満月か?…いや、これから欠けるのか満ちるのかわからぬ)



男「ZZZ」グーグー

神娘「……」

神娘「何が命に代えてもお連れします、だ」

神娘「人間ごときが粋がりおって」



神娘「……」

ゴソゴソ



神娘(まあ、この程度なら念力を使っても…)スッ

フワフワ…



パサッ



神娘(夏とはいえ暖かくして寝ろ、馬鹿者)

神娘(…お前に風邪などひかれては困るからな)

神娘(さて、私も休むとしよう)

ZZZ…
113: ◆WjgYlacz.c:2016/3/30(水) 18:13:23 ID:1ohBGYj0YI
サラサラ…

男「あっ、崖の下に小川がありますね」

神娘「うむ」

男「少し水の補給をしてきてもよろしいでしょうか」

神娘「それはよいが、あそこまで降りれるのか?」

男「ここの岩場をつたっていきますので…」

神娘「では私はここで待っていよう」

男「はい。…神様」

神娘「なんだ」

男「寂しくても泣かないでくださいね」

神娘「よし、早く行けるように突き落としてやるか」ビュオッ

男「風で押すのはお止めください」
114: ◆WjgYlacz.c:2016/3/30(水) 18:15:06 ID:1ohBGYj0YI
神娘「ふぅ…しかしまだかかりそうだな」

神娘「お前にも苦労をかけるな」

牛「モォーッ」

神娘「うむうむ。恨むならお前を連れてきたあやつを恨んでくれ」

牛「モー…モッ!?」ピクッ

神娘「ん?どうし…」



ガササッ



野犬「ガルル…」

神娘「っ!」

神娘「野犬の群れ…食糧の匂いに釣られたか」

神娘「待てお前たち!食糧なら分けてやろう。だからここから…」

野犬「ワウワウッ!」

牛「ンモー…」タジッ

神娘「!」

神娘(まずいな、こやつらの狙いはこの牛か!)

野犬「バウッ!」ガバッ

神娘「くっ」スッ
115: ◆WjgYlacz.c:2016/3/30(水) 18:15:56 ID:1ohBGYj0YI
神娘「吹き飛べっ!」

ビュオッ!

野犬「キャインッ!」ドサッ

神娘「はぁ…生憎だがこやつはお前たちにやれん」

神娘「ここは大人しく…」

野犬「ガウガウッ!」ババッ

神娘「!」

神娘(私を狙ってきたか…あまり力を使いたくないが、止むを得ん)スッ

ダダッ

男「はっ!」

バキッ!

野犬「ワウンッ…!」ズザッ

男「間に合ってよかったです。油断なりませんね」

神娘「お前…」

男「神様、そこの鍬を取っていただいても?」

神娘「ん、これか」ガタッ

男「ありがとうございます。では少々お待ちください」ガチャッ

野犬「バウバウッ!」
116: ◆WjgYlacz.c:2016/3/30(水) 18:17:23 ID:1ohBGYj0YI
バキッ!ズカッ!



野犬「キャインキャインッ」ダダダッ

ガサガサッ

男「ふぅ、しつこい連中でした」

神娘「…やるな」

男「だてに猪を狩ったりしませんよ」

神娘「確かに」

男「それよりもお怪我はありませんか」

神娘「ああ、無事だ。こやつも」

牛「モーッ」

男「それは良かったです」ボタボタ

神娘「というよりお前が怪我しているではないか」

男「ああ、腕を少し引っ掻かれましたが掠り傷ですよ。放っておけば治ります」

神娘「……」

ビリッ

男「神様?何故お召し物を…」

神娘「ほら、腕を出せ」

男「はあ…」スッ

ギュギュッ

神娘「その…お前に何かあれば、誰が私を連れて行くのだ」

神娘「だから気を付けるがいいぞ、うん」

男「…はい」
117: ◆WjgYlacz.c:2016/3/30(水) 18:17:55 ID:1ohBGYj0YI
男「しかし、もう少し来るのが遅ければどうなっていたか」

神娘「…ふん、私の力で追い払う事など容易いわ」

男「でもそうすれば神様は弱ってしまわれるのでは?」

神娘「い、いや、そんな事は…ない」

男「…」ジトー

神娘「そ、それより早く行くぞ!ほれっ!」

男「了解しました」

牛「ンモー」

ガラガラ…



神娘「………がとうな」ボソッ

男「何か言いましたか?」

神娘「何でもないっ!」
118: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:41:16 ID:ZdjbHGVS7E





そんな調子で五日程−





119: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:41:44 ID:ZdjbHGVS7E
神娘「ここだ、この社だ」

男「ここが神様の御友人のお社でございますか」

神娘「うむ。間違いない」

神娘「この鳥居…見覚えがある。少し色褪せたか」

男「行きますか」

神娘「ああ」

男「それでは…よっと」オンブ

神娘「ん」オブラレ

男「お疲れではありませんか?」

神娘「五日も揺られて元気なわけあるか」

牛「モー…」

神娘「ああ、お前のせいではない。よく頑張ってくれたな」ナデナデ

牛「ンモーッ♪」

男「私も頑張りました。ああ、疲れたな〜」

神娘「さて、あやつはいるかな。早く中へ行くぞ」

男「いっそ清々しい扱いの差ですね」
120: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:42:10 ID:ZdjbHGVS7E
ミーンミンミンミン…



ザッザッ

男「さて、中まで来たものの…」

神娘「誰もおらぬな」

男「誰もいませんね」

神娘(あやつの気配もせぬ。不在なのか…?)

カサッ…カサッ…

神娘「ん?」

男「何か音がします」

カサッ…ササッ…

男「箒で地面を掃くような音ですが…」

神娘「社の裏手から聞こえるな。誰かいるのかもしれん」

男「そうですね。行ってみましょうか」

神娘「うむ」

ザッザッ…
121: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:42:38 ID:ZdjbHGVS7E
コソッ

??「〜♪」ササッ…カサッ…

神娘「…誰かおるな」

男「あれが神様の御友人ですか?」

神娘「いや、あそこにいるのは人間だ」

男「あの服装…この神社の巫女様でしょうか」

神娘「ふむ、以前はそのような者はいなかったと思うが…」

男「とにかく尋ねてみましょうか」

神娘「いやだ、人間には関わりたくない。…特にこの地の者とは」

男「そんな事仰らずに。さあ行きましょう」ザッ

神娘「ま、待てっ!もう少し様子を…」

巫女「どなたですか…?」

男・神娘「!」

巫女「…出てきてくださいませ」

男「ほら、神様が大声を出すから…」

神娘「出させたのはお前だろうが」

男「もう観念して行きますよ。…どうもこんにちは」ザッ

巫女「…っ!」

巫女「背中に女子を背負って…山賊か人攫いですか?」キッ

男「ああ、あらぬ勘違いをされています」

神娘「無理もないな」
122: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:43:03 ID:ZdjbHGVS7E
男「待ってください。私たちは怪しい者ではありません」

巫女「こんなに怪しい方も珍しいです」

男「神様も何とか言ってくださいよ」

神娘「…ふぅ、仕方ない」

神娘「そこの者、案ずるな。私は攫われているわけではない」

巫女「えっ、そうなのですか…?」

神娘「私はここの主に会いに来ただけだ」

巫女「主…?」キョトン

神娘「山神殿だ。神職の者ならば通せるであろう?」

巫女「あっ、えっと、私は…」オドッ

神娘「神娘という名を伝えよ。そうすれば分かる」

巫女「神娘……」

巫女「……」

神娘「…?」





巫女「か、神娘様っ!?」

男・神娘「えっ」
123: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:45:44 ID:ZdjbHGVS7E
タタタッ

巫女「ああ…本当に神娘様だ…」

巫女「なんとお懐かしい…帰ってきていただけるなんて…」ウルッ

神娘「……」アゼン

男「神様、お知り合いの方ですか?」

神娘「いや、知らぬ。気安く話しかけるな」ギロッ

巫女「あっ…」ビクッ

巫女「そ、そうですよね…私、小さかったし。覚えていらっしゃらないのも…」

神娘「小さかった…?」



ミーンミンミン……





『ねぇねぇ神様!これ見て〜!』





……ンミンミー

神娘「……蝉」

巫女「…!」

神娘「お前は…昔、私に捕まえた蝉を見せてきたな?」

巫女「は、はいっ!」パアッ

神娘「たしか名は……村娘、といったか」

巫女改め村娘「はい!村娘にございますっ!」パアアッ
124: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:46:11 ID:ZdjbHGVS7E
村娘「神様…またお会いしとうございました…!」ウルッ

神娘「…っ」ピクッ

村娘「神様がいなくなられてからも私…」

神娘「…」ギリッ

神娘「ま、また会いたかっただと…!?」ワナワナ

村娘「!」

男「神様…?」

神娘「あの村の人間が!!どの面を下げてその様な事を言うのだ!!?」ゴオッ!

村娘「…う、うぅ」

神娘「私がどのような思いをしたと思っている!!お前たちのせいで私は、私は…っ!!」

男「神様、落ち着いてくださ…」

神娘「お前は黙っていろ!!」

男「しかし…」

村娘「…いいのです」

男「えっ?」
125: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:46:36 ID:ZdjbHGVS7E
村娘「私たちは…っ、それだけの事をしてしまったのです…」ポロポロ

男「…」

村娘「許していただけるはずなどありません…」

神娘「……」フーッ、フーッ

村娘「ごめんなさい、失礼します…っ!」

タタタッ

男「あっ、待っ…」

男「行ってしまった。神様、今のはどういう事ですか?」

神娘「…お前には関わりのない事だ」

男「……」

神娘「それよりも…いつの間に戻っていたのだ?山神殿」

男「?」

『随分早い再会になったわね、神娘』

神娘「ふん」

サアアアッ

男「うわっ、風が…」

バサバサッ
126: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:47:06 ID:ZdjbHGVS7E
カラス「カアーッ」バサバサ

男「えっ、烏?」

神娘「なんだ。近頃はその姿が気に入りなのか?」

カラス「飛べる姿の方が何かと便利なのよね」

男「か、烏が喋った…」

山神「うふふ、初めまして…になるのかしらね、男さん。私はこの山の守り神、山神と言います」

男「何故私の名を」

山神「当然よ、これでも神だもの」

男「ははーっ」ズザッ

神娘「…私が以前教えたんだろうが」

山神「ちょっと。そこは黙っててほしかったわね」

男「以前…?」

山神「実はつい最近、あの洞窟に私も行っててね」

山神「その時にあなたを見ているのよ。私は姿を消していたけど」

男「そうだったのですか」

山神「よくこんな手のかかる神を相手してくれてるわね」ケラケラ

神娘「やかましい」

男「いえいえ、たしかに手はかかりますが放ってもおけませんし」

神娘「何だこれ、いじめ?」
127: ◆WjgYlacz.c:2016/4/3(日) 22:47:35 ID:ZdjbHGVS7E
山神「さ、おぶったままじゃ疲れるでしょ。ここへ座って」トントン

神娘「うむ、そうさせてもらおう」

男「では失礼…よっと」

神娘「ん」ストッ

山神「長旅ご苦労だったわね、男さん」

男「いえ、そのような」

山神「男さんを使ってまでここへ来たからには何か理由があるんでしょうね?」

神娘「…話合わねばならぬ件があってな」

山神「そう、良いわよ」

男「あ〜っと…私は少しはずしていた方がよろしいでしょうか?」

山神「そうね。人間に聞かれてはいけない話もあるかもしれないし…」

男「分かりました。牛も気になりますし、私は外へ」

神娘「ああ」

男「それでは失礼致します」

タタタッ
128: ◆WjgYlacz.c:2016/4/11(月) 23:11:43 ID:o2opobT8.M
山神「……」

神娘「どうした?山神殿」

山神「そっけない態度取っちゃって。少しは感謝してあげなさいよ」

神娘「いいのだ。あやつはそうするとすぐ付け上がるからな」

山神「あら、よく心得ていること」

神娘「…何が言いたい?」

山神「どうやら思った以上にあの人間の事、信用している様ねぇ?」

神娘「な、なにっ?」

山神「じゃあ何故ここまであの人間と一緒に来たの?」

神娘「それは…今、私は一人では歩くこともできないし、他に頼る者もいない。それに…」

山神「…あの人間なら、必ずここまで連れて来てくれるって思ったから?」

神娘「!」

山神「普通頼まないわよ、こんな無茶な長旅のお供なんて」

山神「よっぽど信頼できる者にしか…ねぇ」クス

神娘「…なあ、私はそんな話をしに来たわけではないのだ」

山神「うふふ、分かってるわよ〜。ちょっとからかってみただけ」

神娘「この性悪め」
129: ◆WjgYlacz.c:2016/4/11(月) 23:12:34 ID:o2opobT8.M
山神「あなたがまた来ることは分かってたわ。予想よりずっと早かったけど」

神娘「何故だ?」

山神「迷っているんでしょ?人間の村に戻るべきか否かを」

神娘「!」

山神「図星って顔してるわね」クスッ

神娘「山神殿はいつも、そうやって私を見透かす」

山神「ふふっ、あなたの思いつめた顔を見れば一目瞭然よ」

神娘「……」

神娘「…あの日の事は何度も夢に出てきた。そのたびに人間への恨みも重なっていった」

神娘「しかし、最近は別の夢も見るようになった」

山神「?」

神娘「あの村で…人間たちと田畑を耕し、井戸を掘り、子どもたちと遊び、飯を食い、笑い合っている夢だ」

山神「……」

神娘「忘れていたのだ。あの村にいた頃は、そういった日々を積み重ねていたことを」

神娘「確かに毎日、楽しいと感じて生きていたことを…な」

山神「そう…」
130: ◆WjgYlacz.c:2016/4/11(月) 23:13:03 ID:o2opobT8.M
神娘「しかし人間への恨みも消えるはずがない。今までその思いが私を生かしていたようなものだしな」

神娘「さっきもそうだ。あの村の者と会って…それだけで怒りがこみ上げてきてしまう有様だ」

神娘「近頃はその二つの思いが私の中でぶつかり合い、頭が割れそうになる」

山神「……」

神娘「私がこれからどうすべきか…山神殿に尋ねたい」

山神「……」

山神「…私から言えることは一つよ」

山神「あなたは人間の村に入って信仰を集める必要があるの」

山神「いずれ本神としての役割を持つために…それがあなたに課せられた修行でしょう?」

神娘「…やはり、それしかないだろうか」

山神「修行を放棄することは許されないわ。何をためらう必要があるの」

山神「このままではあなたは消滅を待つだけの身よ」

神娘「…分かっている。本当はそうしなければならない事は」

神娘「しかし、どうにも気が進まぬのだ」

山神「どうして?」

神娘「…恐らく、私はどうしようもない弱虫なのだろう」

山神「恐れているのね。繰り返される事を」

神娘「…」コクン
131: ◆WjgYlacz.c:2016/4/11(月) 23:13:37 ID:o2opobT8.M
神娘「信じていたのだ。あの村の者たちを心から…」

神娘「なのに…何故ああなってしまったのか分からぬ」

山神「欲というものは、人間を変えるわ。あの人間たちも…そうだったのよ」

神娘「忘れられぬ。私を追いかける松明の灯、振り下ろされる鍬や鎌…」

神娘「そして何より、あの狂気に満ちた村人たちの目…」

山神「…辛かったわね。力になれなくて本当にごめんなさい」

神娘「山神殿は不在だったのだ。仕方あるまい」

山神「とにかく、私としては以前のような生活に戻れる事を願ってる」

山神「そのためにもその恐怖心を乗り越えないと…」

神娘「これも修行の内だろうか」

山神「そうかもしれないわね」

神娘「…考えてみる」

山神「ふふっ、そうしなさい」
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