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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編その2】
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:00:58 ID:/WYEXwH6vk
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-10

1スレ(少年「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1385288769/1-10

2スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1416136192/1-10

3スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】)

あらすじはそれぞれの1参照(考えるのがめんどくかったんです。ごめんなさい)

>>2から本編になります!


349: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:55:13 ID:YvuzyYVhZU
―――国境警備城塞(城主の間)―――

ヒメ「悪いが少しの間、おまえの席を借りるぞ?」

外交官「め、滅相も!?国王様に座っていただけるなど光栄の至りにございまする!座り心地が気に入らなければ、すぐに替えをご用意しますゆえ!?」アセアセ

ヒメ「そんなにかしこまらなくていいよ。城主はおまえなんだから楽にしていろ?」

外交官「そ、そうもいきませぬ…!国王陛下自ら御助勢くださるなど…まこと…まっこと感涙してございまする!」ウルウル

ヒメ「…大袈裟な奴?ま、いいや!団長!おおよそは見当が付いてるのか?」

団長「は、はい…!現在、敵軍はこちらに進行中、その数およそ14万と見られる!」

ザワッ

外交官「14万…!?」

レーグ「こちらの倍以上ではございませぬか…!?」ブルッ

ヒメ「…おたつくな!」

シーン

ヒメ「南国軍との戦いで奴らは二人の指揮官を失ってる。これは大きい」

団長「うむ…ですが単純な力比べでは確実に分が悪いのも確かでござる」

ラキア「父上ともあろうお方が怖じ気づいたか!敵が多いのなら一人で大勢、倒せばいい!」

団長「バカ者!?こちらは経験もなく、訓練もしておらん民間人が主戦力なのだぞ!?
敵は血に慣れた生粋の軍人!対して我々は統率の難しい寄せ集めだ!そんな子供染みた理屈が通用するか!?」

ラキア「だったら俺が一人で10万人、倒してやるさ!!」

団長「おう!出来るものならやってみせろ!後で泣き言を言ってもワシは助けんぞ!?」

ラキア「あんたの助けなんかいるか!腰抜けめ!?」

団長「貴様、父に向かってなんたる言い様……」

宣教師「」パンッパンッ

団長&ラキア「」ビクッ

宣教師「口喧嘩ではなく話し合いをしましょう?」ニコッ

団長&ラキア「……!」ムグッ
350: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:58:13 ID:YvuzyYVhZU
宣教師「具体的にはどのように戦うのですか?まさか真正面から…という訳ではありませんよね?」

団長「籠城し、攻め登る敵を迎え撃つしかあるまい」

宣教師「城の構造は?」

レーグ「階層は6つに分かれており、地上4階、地下2階となっております!」

宣教師「見たところ外壁は鉄を使ったものみたいですね」

外交官「い、一応は国境に位置しますゆえ…強度には自信がございます」

宣教師「ふむふむ…それなら…もしかすると…」ウンウン

団長「な、何か閃いたのか…!?」ゴクリ

宣教師「え?いえ、特には…」

団長「(思わせ振りな…)」ガクッ
351: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:59:37 ID:UavECGF.sw
ヒメ「兵糧はあるだけ積んできたし武器も行き渡るように手配してある。問題なのは数だ」

団長「うむ…。しかしもはや王国で集められる限界に達しております。ここにいる人間だけでどうにかせねば……」

ヒメ「それなんだけどな。実は宣教師が預かってるホビット族も協力してくれるみたいなんだ?」

団長「なに!?そうなのか!?」

宣教師「はい。私たち人間の問題に皆さんまで巻き込みたくはなかったのですが…」

外交官「ほ、ホビット…?あんな連中に頼って大丈夫なのですか…?」

宣教師「それはどういう意味ですか?」キッ

外交官「い、いや…」

ヒメ「ホビットも王国民としての自覚を持って立ち上がってくれたんだ。
こんなにありがたい話を受けない訳にはいかないな?」

外交官「……」

レーグ「そ、そのホビットたちはいかほどの数で?」

宣教師「1万ほど…6日後には到着する見込みです」

団長「1万か…。それでもやっと敵の半数だな」

ラキア「十分だ!これで戦える!」

ヒメ「いや、圧倒的に足りない」

ラキア「え…!?」

団長「……」

宣教師「……」

レーグ「……!」

外交官「や、やはり…無理なのか」ガクッ

ヒメ「項垂れるな!」

ザワッ
352: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:01:59 ID:YvuzyYVhZU
ヒメ「まだあてはある…。国内に限らなければな?」

団長「ま、まさか…!?」

外交官「そうか!参戦していない同盟国に……」

ヒメ「いや、そうじゃない」

外交官「は?で、ではどこに助けを求めようと…?」

ヒメ「東の国だ」

外交官&レーグ「ひ、ひひ……東の国ぃぃ!?」ギョギョッ

団長「東国軍は既に全滅しておるのでは…?」

ヒメ「あぁ、でもあの国には他にない特殊な領土が存在するんだ」

ラキア「と、特殊な領土…?ま、まさか正義の科学者によって秘密裏に開発された超大型兵器の製造工場が!?」

団長「そんな訳があるか!?誰だ、正義の科学者とは!?」

ヒメ「兵器とかそういうのじゃないけど…要は東の国土の一部がホビット族の領土として区画されているんだ」

宣教師「東の国の方々はホビットと共存してるのですか?」パァァ

ヒメ「残念だけど、それも違う。領土を分け与える事によってホビットと完全に決別してるらしい?」

宣教師「け、決別……ですか」シュン

ラキア「関わらずにいられる分、差別されるよりはマシなんじゃないですか?」

ヒメ「…まぁそんなのはいい。僕が言いたいのは東のホビット族を説得して共闘を持ち掛けようという話だ」

外交官「た、他国のホビットに…!?」

レーグ「か、可能なのですか…?」

ヒメ「…難しいだろうけど残った同盟国は信用ならないし、今から助けを求めるにも時間が無さすぎる。
東の国なら隣合わせで比較的、近いし無下にされる心配もない」
353: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:04:32 ID:UavECGF.sw
レーグ「っ…ですが正直、自国のホビットでさえ不安なのに」

宣教師「何が言いたいんです?」ジッ

レーグ「…い、以前に西領各地でホビット族が人里を襲撃し、大量虐殺を繰り返す問題が度々、話題に登ったじゃございませんか…。
そ、そんな連中を大事な戦いに加えて…もし裏切りにでも遭ったら…」

宣教師「なら私たちはどうなんです?」キッ

レーグ「え…?」

宣教師「ここにいる全員を含め、私たち王国民は今までホビット族を不当に差別してきました。
労働力や見世物として奴隷のように扱い、虐待し、執拗になじり、意味もなく殺戮の限りを尽くしてきたんですよ?」

レーグ「わ、私はそのような…?」

宣教師「いいえ、疑わず無関心に振る舞ってきた者は皆、彼らの眼を通せば差別した人間と同罪です」

レーグ「…あ、揚げ足取りじゃございませんか」

宣教師「何が揚げ足取りなのですか?」

レーグ「……」

宣教師「そうやって責任を逃れようとしても事実は変わりませんよ?
あなたも私も皆、往々にして、この罪と向き合わなければならないのです!」

レーグ「くっ…だ、だから私が言うのはホビット族と人間の関係性を考えるにあたり、不安要素が無い訳ではないと…!」

外交官「い、一理ある!現に巡礼の際も争いを仕掛けたのはホビットからであった!」ウンウン

宣教師「罪無き者に疑惑を向け、団結を乱そうとするあなた達の方がよほど信用なりませんね!」

外交官「な、なにを小娘が偉そうに!?」ガタッ

ヒメ「座れ!」

外交官「へ、陛下はこの無礼な娘の肩を持つのですか!?」

ヒメ「僕は公平な立場でいるつもりだ。だが会議の場で興奮した者を諌めない訳にもいかない?」

外交官「っ……」

ヒメ「多少、声を荒げるのは構わない。意見交換の範疇ならな?」

外交官「……!」ドッカ
354: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:08:35 ID:YvuzyYVhZU
宣教師「私はこの試練を協力して乗り切る事で人間とホビット族の隔たりを取り除く真の絆が生まれると信じています」

外交官「どうだかな…!」ムスッ

レーグ「獅子身中の虫とならなければいいですが…?」フンッ

宣教師「でしたら…あなた達はどうすれば満足するんですか?」

外交官&レーグ「は?」

宣教師「何がどうこう…あれがそうだからと大した理屈や信憑性もない御託を並べ立てて否定するばかり…。
そんなにホビットを信用したくないのですか?それとも小娘の意見に乗りたくないだけですか?」

外交官&レーグ「……」

宣教師「私にはあなた方が自分を優位に立たせたいと駄々をこねてるようにしか見えません」

外交官「なっ…い、言わせておけば!?」

レーグ「ルフィアス団長…!貴方からも言ってやってくださいよ!」

団長「ワシは宣教師の意見に賛成だ。今は内部で揉めている場合ではない」

ラキア「俺も同意見です。偏見で良し悪しを決め付けるのは正義の名に恥じる行いだ!」

レーグ「な、なんですとぉ…!?」

団長「だが貴殿らの意見も頷ける。ホビット族と我々の現状は未だ不安定なもので…確執を拭えない上では裏切らない保証もないとは言えん」

宣教師「だ、団長さんまで…!?」

外交官「や、やはりそう思われるか!さすがはルフィアス殿!」パチパチ

団長「…だがそこを踏まえたとしてもワシはホビット族に助力願うべきであると考える」

レーグ「え…!?」

団長「宣教師が言うように…ここが大きな分け目であるとワシも感じている。
信じられるか否かではなく信じ合う気持ちが大切だと思わんか?」

レーグ「よ、世迷い事を申されるな!奴らと我々では協力など…」

団長「なればこのまま人間のみで心中するか?」

外交官「」ゾクッ

団長「我々で14万もの軍に抗う術があると言うのなら是非ともお聞かせ願いたいものだが?」

レーグ「う……」

外交官「……」ブルブル
355: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:13:01 ID:YvuzyYVhZU
外交官「こ、ここ……こ…」ガチガチ

ヒメ「?」

外交官「降伏…という手も…あ、あぁるのでは…?」ガチガチ

ヒメ「……」

団長「…それこそ本気で言っておるのか?」イラァッ

ラキア「臆病者め!戦わないと敵のいいように略奪されるばかりだぞ!?」ダンッ

宣教師「論外ですね」キッパリ

外交官「て、敵は…一国の軍力で実質的に2国を壊滅させたのですぞ!?」ガタッ

レーグ「た、確かに…それでいて尚も我が国を上回る戦力を誇っている…!」ブルッ

ラキア「だったらどうした!?倒された盟友達を弔ってやる為にも俺達が仇を取らなきゃだろ!?」

外交官「…ど、どのみち戦力差がありすぎて勝負にもなりますまい!ならばいっそ降伏して命を拾うのも…!」

ダァンッ!!

外交官&レーグ「ひぃあっ!?」ビクビクゥッ

団長「そこを動くな…!素っ首跳ね落としてくれる…!」スラッ

外交官&レーグ「わ、わわわ…へ、へへ陛下ぁぁ!?」アワアワ

ヒメ「団長、やめろ!おまえ何考えてるんだ!?」

団長「たとえ降伏を認められ、我らの命が保証されようと…連合軍の盟主である陛下は戦争を起こした大罪人として全責任を負わされるんだぞ!?」

ヒメ「……」

ラキア「そ、そうだよ…!どうしたって諦めたら陛下は…!」

外交官「も、申し訳ありません!お、おぉお許しをぉ……」ペコペコ
356: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:15:42 ID:UavECGF.sw
宣教師「命惜しさに13歳の子供の尊い命を差し出すなんて…絶対に許されません!」

ヒメ「…いや、今14歳だから。もう大人だから」

宣教師「14歳なんて思春期じゃないですか!子供以外の何者でもありませんよ!」

ヒメ「僕の立場も考えろよ。一応、王様なんだからさぁ…?子供扱いされたら威厳とか無くなっちゃうだろ?」

宣教師「そんな事を気にしてる場合ですか!?」

ヒメ「一つの提案だろ?決定は別にして…意見としてはまともじゃないか?」

団長「な、なな…なにをおっしゃる!?」ギョギョッ

ラキア「へ、陛下…まさか自分を犠牲に全員を救おうと…せ、正義の鑑だ!?」ワナワナ

ヒメ「は?やだよ?死にたくないし?」キョトン

ラキア「えぇ!?で、ですが今まともな意見だと…!?」

ヒメ「意見は認めるよ。でもなるべくなら死にたくない」

外交官「もももも申し訳……申し訳ございませんぅぅ!!そ、そこまで頭が回らず…!」ビクビク

ヒメ「別にいいよ。皆も命懸けて戦おうとしてくれてるんだ。僕だけが優先されていい訳がない?」

外交官「そ、それは違います!陛下のお命こそ何より重要視されなければ…!?」

ヒメ「いいや、違わない。僕だって戦う為にここへ来たんだぞ?」

外交官「た、戦う!?陛下がですか!?いけません!いけませんぞ!?」

団長「そ、そうですぞ!戦闘は我らにお任せを!?」

ヒメ「ふん、やだね」プイッ

団長「や、やだねって…わがままは困りまするぞ!」アタフタ

ヒメ「オレは王様だからワガママ言っていいんだよ?」ツーン

団長「(ま、また始まった…!いざとなれば気を失わせてでも、お止めしなくては…)」ハァッ
357: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:21:15 ID:UavECGF.sw
アーダコーダ アージャナイコージャナイ

ヒメ「……だいたい意見は出揃ったか」

団長「うむ!やはりここは……」

宣教師「ホビット族に助けを求めるのが最善と言えるでしょうね」

ラキア「ホビットは心優しい種族です!きっと俺達の正義に応えてくれる!」

外交官「陛下の身柄を差し出す訳にはいきませんからな…はぁ……」

レーグ「た、頼んだからって助けてくれるとは限らないですが……しょうがないか」

ヒメ「じゃあ決定だな!宣教師、団長、外交官、頼んだぞ?」

宣教師&団長&外交官「えっ」

レーグ「最大戦力であるルフィアス団長を出払わせるのでございますか!?」

外交官「た、大変恐縮なのですが、どういった選定基準で…?」

ヒメ「ホビット族を説得するなら宣教師以上の適任者はいないし、外交官だって交渉術には長けてる筈だ?
二人だけで行かすのは危険だから団長を護衛に付けて守らせる。完璧な人選だろ?」

ラキア「陛下はどうされるんですか?」

ヒメ「ん?ここに残って戦うって言っただろ?」

ラキア「さすが勇敢だなぁ!それでこそ俺の命を預けるに相応しい!」

ヒメ「そんな重いの預かれるか?自分で管理しろよ?」

団長「…承知しました」

ヒメ「お?珍しく素直だな!」

団長「ワシが残りますゆえ、陛下が行ってくだされ?」

ヒメ「はぁ?おまえ、ちゃんと話聞いてたか?」

団長「対等な条件で交渉するのならば陛下が王国の代表として権威を示すべきです。
ワシらが説得を試みてもホビット族にしてみれば下っ端を使いに寄越されたようで気を悪くされるやもしれませぬ」

ヒメ「うーん…それもそうかもな」

宣教師「さりげなく私まで下っ端呼ばわりされて気分が悪いのですが…」

外交官「……」
358: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:30:13 ID:YvuzyYVhZU
ヒメ「僕から漂う気品に圧倒されてホビットたちが緊張してしまわないか心配だけどな!」エッヘン

宣教師「背丈が近いから親しみやすいんじゃないですか?」

ヒメ「は…!?」イラッ

宣教師「目線が同じ方が話しやすいでしょうし?」

ヒメ「僕の身長が低いって言いたいのか…!?」ヒクヒク

宣教師「私より小さいじゃないですか?」

ヒメ「おまえがでかすぎるんだよ!?僕は普通だ!?」

宣教師「そんなに大きくありませんけど?170cmくらいしかないですし?」

ヒメ「十分でかいよ!女のクセになんなんだよ!?」

宣教師「見たところ……150cm…?」ジーッ

ヒメ「そんな小さい訳あるか!?163cmだ!!」

宣教師「厚底は身長に含まれませんよ?」

ヒメ「」ギクッ

ラキア「自慢じゃないけど俺は185cmあります!」フフンッ

ヒメ「…身長を自慢した奴は禁固刑にする法律でも作ってやろうか?」ヒクッヒクッ

宣教師「自慢してませんよ?ただキミの背を指摘しただけです?」

ラキア「俺も自慢じゃないと断りました!」

ヒメ「だぁぁもう!じゃあ問答無用で死刑だぁ!?」ムキーッ

団長「お、おい!今はそんな話はよかろうが!?あまりヒメ様をからかうな!?」アセアセ
359: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:34:34 ID:YvuzyYVhZU
団長「では陛下と宣教師と外交官殿で東の国に向かっていただくという決定で問題ござらんな?」

宣教師「私は喜んで行きますよ。他国のホビット族とも交流をはかりたいですから?」

外交官「わたくしも異存ありませぬ……(戦場に留まるよりは安全だろうしな…)」

ヒメ「…しかたないな。やっぱり僕がいないとダメか」

団長「(ほっ…)」

ラキア「陛下たちが戻ってくるまで俺達が、ここを守り抜いてみせます!」

ヒメ「ふふ!おまえに似て頼もしい奴だな?」ニコッ

団長「! い、いやぁ…まだまだ未熟でござるが…?」デレデレ

ラキア「むむ…!」ジロッ

ヒメ「ま、おまえらに任せておけば僕も気兼ねなく東の国に行けるよ?」

団長「ふっ…!ふっふっふ…!」ニヤニヤ

ラキア「なにだらしない顔してんですか…。気持ち悪い?」シラー

団長「や、やかましい!」

レーグ「(私も戦場から離れて東の国に行きたい…)」ズーン
360: 爆発的に投下します! ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:22:51 ID:UdCBQzYwOk
―――西の国(帝都)―――

ガガッガガッ ガガッガガッ

ザスッザスッ ザスッザスッ

ドレッド「見えたな…」

副官「ほうほう!あれが本拠地ですか。やや、壮観だ!」

フィクサー「女帝の首は目前だ…。全兵に告げよ?ここを取れば我々の勝利だとな?」

副官「承知しました?」ニヤリ

ドレッド「なんだかんだとあんたの采配で俺達は連戦連勝ときたもんだ?
最初はビビりまくってた連中も自信がみなぎってイイ顔してやがるぜ?」ニヤリ

フィクサー「喜べ、ドレッド?」

ドレッド「……?」

フィクサー「間もなく我々の時代がやってくるぞ…?」ニヤリ

ドレッド「はぁ…?」
361: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:23:56 ID:UdCBQzYwOk
ゾロゾロ ゾロゾロ

副官「やあやあ諸君!今まで、よく尽くしてくれた?
おかげで被害は最小限に留まり、なおかつ数々の栄えある勝利を収められましたよ?」

王国兵's「……」キリッ

副官「ふんふん…どれも精悍な顔付きだ!もはや諸君らは疑うまでもなく兵士の眼差しを宿しているよ!」

副官「それはそうと、あれが見えるかな?そう、敵の本拠地…つまり最終決戦の舞台だ!」

王国兵's「……!」ググッ

副官「ここを勝ち抜けば、いよいよ長かった戦いは終わり、君たちの頑張りが大いに評価されるだろう?
勇猛果敢なる王国軍の兵士として惜しみ無い功績を残した全員に漏れ無く報酬が行き渡るという訳だ!」

王国兵's「おぉ…!」パァァ

副官「楽しみにしてるといい!見たこともない金銀財宝の雨霰が諸君らの頭上に降り注ぐ!
それだけじゃない!君たちは救国の勇士として母国の地を踏む事になるんだ!」

副官「すなわち英雄の凱旋!守られた家族、友人、恋人、見知らぬ人々まで君たちの無事に歓喜し、誇り、奮い起つ!!」

副官「生涯、噛み締めたらいいさ!皆を守ったのは誰か?国を救ったのは誰か?讃えられるべきは誰なのか!?」

副官「それは君だ!君だ!君だ!君だ!君だ!君だ!……君たちだ!?」ビシィッ

副官「国王も役人も関係ない!揺るぎない意思を持って命の限り、剣を振るった君たちこそが真の勝利者なのだ!?」

ウオォォオオオオオ!!!

副官「さぁさぁさぁ!!いよいよ以て我々の番が巡ってきた!ここに新たなる歴史を造り出す礎となろう!」

ドレッド「……は?」ポカーン
362: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:24:44 ID:m4Uz9RrgRI
副官「ここまでに一城を陥落せしめ、援軍を屠り、計10万にも昇る敵に打ち勝った諸君ならば…高まった士気に乗じて女帝を討つ事、容易いものと思われる!!」

副官「だがそれで満足してはいかん!いかんよ!?」

ザワワッ

副官「何故ならば今も再び争いの火種が各国に散り、禍々しく燃え移ろうとしているのだよ!」

副官「人は争う!懲りずに驕り、恐怖を忘れ、怒りのままに!何度も!何度でもだ!?」

副官「あぁ〜なんと愚かだろう!でも仕方ないさ!人間だもの!」

副官「そうなる以上、我々は戦い続け、勝利を掴まなければならない!
たとえ一部の国が滅び、数多の人々が病んでも…区別ある限り、人の世に平和は訪れないんだよ!」

副官「分かる!分かるよね?分かるだろう!?つまり真の最終目標は何かというと……」

副官「我が王国軍による大陸全土の総支配!!これによって争いは完結し、終わりなき平穏が約束される!!」

ドレッド「な、なに言ってんだ、あいつ?止めさせ……」

フィクサー「構うな」スッ

ドレッド「はぁ…!?あんな支離滅裂な演説、聞いてられるか!?」

フィクサー「わたしの決定に逆らうなと言った筈だ?」

ドレッド「け、決定だぁあ…?あんたの指示で、んなハチャメチャな演説をしてんのか…!?」
363: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:25:30 ID:m4Uz9RrgRI
ザワザワ ザワザワ

副官「だがしかぁし!!そこに理解を示せない者達がいる!それは果たして何者か!?」

王国兵's「???」

副官「そう!ご存知の通り…国王以下、従属する穢らわしき俗物達!
主は民としながら国政を維持し続ける意地汚い権力者共だよぉぉお!!!」

王国兵's「」オロオロ

副官「例えば…現国王、ヒメ!彼は幼くして即位し、人格、品性共に足る素晴らしき賢者であると謡われている?」

副官「だが実際、どうかなぁ?諸君らが満足するだけの安息を与えられているだろうか?」

副官「否!奴は本質を見失い、偉大なる王国の歴史を踏みにじるような政策を執り行う為政者である!!」

副官「あの雄大な国土がいかにして王国と名付けられたか?
我々が当たり前に感じてきた日々の中にどれだけの血と汗と涙が滲んできたか!」

副官「今は亡き、崇高な先駆者達が多岐に渡って造り上げた文明の叡知!!
尊い先人達が犠牲を投じてなお諦めず守り育てた豊かな土地の恵み!!」

副官「これらを築き上げたのは他ならぬ我々、人間である!!」

副官「だが国王……いや、奴はそれを何一つ理解せず蔑ろにしてしまっている!?」

ドレッド「(な、なに言ってやがる…?これから最後の戦いが控えてるってのに全く関係ない事を…?)」
364: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:28:18 ID:m4Uz9RrgRI
副官「全国民の共有財産である土地をあっけなく手放し、他種族に差し出してしまう軽薄な思考回路は、とうに知れ渡っているだろうさ?
大事な大事な血税をあろうことかホビットへの保証に充ててしまっている事もよくご存知の筈だ!?」

ザワザワ ヒソヒソ

副官「人材派遣と称し、各地の新事業に難民や職にあぶれた人々を斡旋しているが…。
それはつまりホビットにかまけた分の消費を人民による負担で補填しようとする馬鹿げた政策だ!」

副官「ホビットは働かずして王都のバックヤードを始めとした、あらゆる生活拠点に根付いている!!」

副官「そのバックヤードの開発費、住居や施設の改築費、建造費、維持費は甚大!
そして人の働きで生産された貴重な食料、生活用品、家具、衣類、水、火種、娯楽、諸々の資財が全て我々の税で賄われている現実!!」

副官「なぜ我々の納めた税が我々の為に使われないのか?私は不思議でしょうがない!」

副官「何が平等か!?何が差別廃止だ!?これではまるで人間差別じゃないか!?
笑わせる!笑わせるよ!さぁ笑え!ギャハハハハハ!!!」ゲラゲラ

シーン

副官「………ぅほん!えー…まぁ私が言いたいのはだね?
かのお坊ちゃま国王は決して人格者などではなく、ひたすらホビットに奉仕する事に喜びを覚える異常者であると」

副官「兵士となる前は善良な民として労働に身を捧げていた諸君なら、きっと分かってくれるものと思う!」

王国兵's「……」

副官「え?」アルェー
365: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:29:07 ID:m4Uz9RrgRI
王国兵1「…僭越ながら国王はお優しい方であるとお見受けします」

王国兵2「少なくとも我々は…以前の王政に比べ、心の暖かみや豊かさを一層感じられるようになりました」

王国兵3「半年に一度、無料で提供される国王専属農園の完熟苺を私も家族も楽しみにしております」

王国兵4「国王の意向により設立された民間の報道機関から発行される紙面を読む限りでは、とても好感の持てる発言、提案を数多く拝見しましたが…」

王国兵5「正直に申しますと我々は…国王に信頼を寄せています」

王国兵6「ホビットに対する手厚い待遇も優しさ故なのでは…?」

王国兵7「それに国民投票で選抜された役人の意見も身分に左右されず積極的に取り上げて下さっているそうですし…」

副官「………おやおやおやおや、呆れる。呆れるよ!呆れますねぇ!?」

王国兵's「」ビクッ
366: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:30:40 ID:m4Uz9RrgRI
副官「じゃあこの戦争はなんだね!?発端である国王はのんびり城で寛ぎ、ホビットは1割も参戦せず、戦場に駆り出されるのは僅かな軍人と寄せ集めの民間人ばかりときた!?」

副官「教団は後方支援と偽って安全な医療、補給班に回り、団員や難民を半強制的に徴兵に駆り出しておいて…参戦してすらいない司祭は大金をもらって自国でぬくぬくホビットのお世話だ!!」

王国兵's「……!」

副官「民間の広報?そんな物は圧力でいくらでも捏造出来るんだよ!!
無料で配られる苺なんて肥溜めから掬われた糞尿を撒き散らして毒物紛いの薬品をべちゃべちゃ染み込ませた腐敗栽培地の汚染物その物だ!?」

王国兵8「な、なぜオドアイル副官はそのように言い切れるのですか!?」

王国兵9「いくらなんでも非難の内容が不当に聞こえます!」

副官「なぜか?愚問だよ?我々、軍上層部は国政の真実を身近に体感しているのさ?」

王国兵's「……!?」

副官「何を隠そう今回の作戦において総指揮に任命されたフィクサー軍事指揮官は全役人を束ね、国政を揺り動かす最高官、リルラ政務官と密接に通じ合っておられた?」

副官「それがどういう事か分かるかね?なんなら余さず打ち明けてやってもいいんだよ?
我が国の闇を?君たちの知らない実情を?役人らの作り替えた事実を?そして国王の裏の顔も…?」

王国兵's「」ブルッ
367: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:32:10 ID:m4Uz9RrgRI
副官「君らは何も分かってなかったのか?そうやって都合良く騙された挙げ句の報われない仕打ちを先代の執政時に散々味わって…まだ気付かないと!?」

王国兵10「そう…かもな」ボソッ

王国兵11「お、おい!お前…!」

王国兵12「きゅ、急に言われても…何がなんだか…」オロオロ

副官「ならば決定的な事実を教えよう?」

王国兵's「」ピクッ

副官「此度の戦争が起こるに至った経緯は実に単純…救い主を巡ってヒメ陛下と女帝ファルージャがいがみ合ったからだ?」

王国兵's「……はい?」ポカーン

副官「救い主は知っているだろうね?そう!国王の親友であり、人とホビットの和睦を助けた救世主だ!」

副官「なんとその救い主が一部では癒しの力を有していると囁かれ、実際に目撃者も多数いると噂されているんだよ」

副官「もちろんそんな力は存在しないだろうが…最悪な事に国外へ漏れ伝わった噂はファルージャの耳に届き、驚くほどにあっさりと信じてしまった?」

副官「もう大体把握出来たかなぁ?そう、これは有りもしないおとぎ話に魅せられた暴君女帝と私的な感情で動く未熟な国王の巻き起こした…極めて個人的な喧嘩に過ぎないんだよ?」

王国兵's「……!」フツフツ
368: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:33:25 ID:m4Uz9RrgRI
副官「そろそろ怒りも沸いてきたかな?」ニヤニヤ

副官「だろうねぇ…国王は万にも昇る諸君の命よりも、たった1匹のホビットと結んだ友情を優先したのだから?」ニヤニヤ

王国兵12「っ……」ググッ

王国兵13「本当なのか…!?」ワナワナ

王国兵14「そんな筈……いや、でも…」

王国兵15「信じていたのに…っ!」ポロッ

王国兵14「……そんなこったろうと思ってたさ」ペッ

王国兵15「お、俺だって薄々感付いてたよ?今さらだっての!」

王国兵16「そうそう!よく考えろよな!あんなガキがまともに王様なんか出来やしないんだからさ!?」

王国兵17「くそぉ!?そんな理由で俺たちは戦わされてたのか!?」

王国兵18「…ここに来るまで何人の仲間が死んだと思ってんだ?
ホビットと仲良くする為なら…人間は死んでもいいって言うのかよ?」

王国兵19「そ、そういやホビットが集団で町や村を襲撃した時…真っ先に退治してくれたのはフィクサー軍長だったと聞いたぞ?」

王国兵20「あぁ、そんで国王の護身刀とか言われてる憲兵団長のダパーシとホビット贔屓の司祭は襲撃に関わったホビット連中を敢えて見逃したとか…」

王国兵21「なんだよ、それ…ますます馬鹿馬鹿しくなってきた。こんな戦いに命張って、どうすんだ?」

王国兵22「…西の国がイカれてるのは知ってたがウチも大概だな」

副官「(しめしめ…ようやく統制が乱れてきたな?)」ニヤニヤ
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