2chまとめサイトモバイル

2chまとめサイトモバイル 掲示板
カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編その2】
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:00:58 ID:/WYEXwH6vk
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-10

1スレ(少年「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1385288769/1-10

2スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1416136192/1-10

3スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】)

あらすじはそれぞれの1参照(考えるのがめんどくかったんです。ごめんなさい)

>>2から本編になります!


2: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:02:01 ID:Uy/w6CDiOE
〜〜〜回想(マリー)〜〜〜

タッタッ タッタッ

フィズス「早くおいでよ、マリー!」クルッ

マリー「はぁっ…ちょっと!置いてかないでよ!」タタタッ

フィズス「ごめん、ごめん。女の子の足にこの丘は急すぎた?」アセアセ

マリー「それもあるけど…あなたに走られたら追い付けないのよ。ホビットと人間じゃ歩幅が違うんだもの!」プンプン

フィズス「おぶってあげた方がよかったかな?」ニコッ

マリー「そ、そんな恥ずかしい…じゃなくて村の人間に見られたらどうするのよ!」アセアセ

フィズス「もうとっくに知られてるよ。君とぼくの仲がただ事じゃないのなんて?」

マリー「え!うそ…!?」サァァァ

フィズス「あぁ、大丈夫だよ。今はまだみんな知らん顔してるし父さんも何も言ってこないから?」

マリー「で、でも…もし知られたら…」ズーン

フィズス「うん。もう村にいられなくなるだろうね」サラッ

マリー「」ガーン

フィズス「そんな事よりさ」

マリー「そんな事よりって……」カッ

フィズス「見てよ、ほら?」ビッ

マリー「? その木がどうかしたの?」キョトン

フィズス「よく見て?太い枝が二本あるだろ?その間にさ……」

マリー「鳥の巣…?」ジーッ

フィズス「ね?」ニコッ

マリー「……も、もしかしてこれだけの為にわざわざ村から外れた高地まで歩かせたの?」ジロッ

フィズス「うん。そうだよ」ニコニコ

バチンッ!!
3: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:03:59 ID:/WYEXwH6vk
フィズス「喜んでもらえると思ったんだけどなぁ…?」ヒリヒリ

マリー「あのねぇ!人間がホビットを連れ立って村の外に出歩くだけでも不信感を持たれるのに何してるの!?
ましてやあなたは次の村長になる人なのよ!?人望を失うような事したらダメじゃない!?」

フィズス「そうだけどさ…」

マリー「もっと考えて行動してちょうだいよ!?
ただでさえあたしみたいなホビットなんかに構うから村人達にも嫌な顔されて…お父様からもお叱りを受けてるんでしょう!?」

フィズス「……」

マリー「ひょっとしたら…なにか大事な話があるんじゃないかって意識してた自分がバカみたい…」プイッ

カラッ パキパキッ

フィズス「あっ!見てみて?」パァァ

マリー「ちょっと!マジメに聞いてるの!?」プンプン

ピヨピヨ ピヨピヨ

フィズス「わぁー…!」キラキラ

マリー「…まぁ?」ハッ

バサバサッ ピヨピヨ

フィズス「親鳥が飛んできた?きっと雛たちが産まれるのを知ってたんだね?」

マリー「素敵…!まさかこんな奇跡に立ち会えるなんて?」マジマジ

フィズス「そうだね」

マリー「…ねぇ、フィズス」

フィズス「ん?なんだい?」

マリー「もしかしてこうなるのを知ってて…あたしを連れてきてくれたの?」ジッ

フィズス「ううん、隣村に行った時、高地の一本杉に鳥の巣があるなぁって気付いたから見せたかったんだ」

マリー「そう…よね。奇跡を演出なんて出来っこないものね。ちょっぴり期待しちゃったわ?」シュン

フィズス「……」
4: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:05:47 ID:Uy/w6CDiOE
フィズス「奇跡を作り出すことはできないけどさ、奇跡に気付くのは簡単だよ?」

マリー「…なによ、それ?」

フィズス「今、こうやって雛の誕生日に立ち会えたのもそうだけど…」

マリー「……?」

フィズス「そこにいたのがぼくと君だった。これもすごい奇跡じゃないかな?」ニコッ

マリー「えっ…」ドキッ

フィズス「あの親鳥がなぜだかこの丘を選んで巣を作って、それをたまたまぼくが見つけて、ぼくが一緒に見に行きたかった相手が君だった。
たったそれだけの事なのに…とてもいい瞬間に巡り会えたんだよ?」

マリー「……!」カァァ

フィズス「どう?さっきまで君が抱えてた不安も掻き消すくらい素晴らしい奇跡に思えない?」ニコニコ

マリー「き、急にやめてよっ!」ドキドキ

フィズス「へ?なにが?」キョトン

マリー「な、なんか…ずるい!そういうの!」ドキドキ

フィズス「…ごめん。気を悪くしたなら謝るよ」シュン

マリー「そ、そうじゃなくて!」アセアセ

フィズス「だったらなんなのさ?」

マリー「て、照れくさいっていうか…恥ずかしいのよ!すごく!」ドキドキ

フィズス「どうして?」

マリー「どうしてって…だって…う、うまく言えないわよ、そんなの!」アセアセ

フィズス「そっか?」ニコッ

マリー「!」キュンッ

フィズス「今日の君はいろんな表情を見せてくれるね?」ニコニコ

マリー「だから…そういうのが恥ずかしいって言ってるの!?」プンプン
5: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:08:43 ID:/WYEXwH6vk
フィズス「でもさ、考えてもごらんよ?」

マリー「こ、今度はなによ…!」ムスッ

フィズス「ぼくと君は違う種族で…本当ならお互い、ここにはいなかった筈だよ?」

マリー「……」キュッ

フィズス「ホビットが大昔に罪を犯したなんて馬鹿馬鹿しい話が出回ったせいで君たちも住み処を追われて…こうやってここにいる訳だけどさ」

マリー「そう…ね」

フィズス「君たちにとっては心底辛くて浮かばれないのかもしれないよ?でもね……」

マリー「…出会っちゃいけなかったのよ。あたしたちなんて……」

フィズス「マリー?」

マリー「そうよね…。あなたは人間、あたしはホビット。こんな関係、どうかしてたのよ」

フィズス「……」

マリー「…ほんのちょっとだけ、本当に…少しだけど……もしかしたらなんて…」ブルッ

フィズス「?」

マリー「もしかしたら…あたしも…あなたと普通の恋人同士みたいに…そういう運命を期待していいのかも、とか…」ブルブル

フィズス「え…!?」ギョギョッ

マリー「(『え…!?』………)」ビクッ
6: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:09:58 ID:Uy/w6CDiOE
マリー「やっ…ぱり……」ウルッ

フィズス「そ、そんな…」ワナワナ

マリー「ご、めんなさい…!」ブワァッ

フィズス「!?」

マリー「わあああああん……」ガクッ ポロポロ

フィズス「マリー!?どうしたのさ!?」アタフタ

マリー「ダメに…決まってるわよね…っ!ごめ…なさい!あたしみたいな…ホビットなんかがっ…!」ポロポロ

フィズス「……!」

マリー「ひん…ぇっ…!ごめ…なさい…ごめんなさぁぁい……!!」ポロポロ

ガシッ

マリー「」ビクッ

チュッ

マリー「」ビクビクゥゥッ!

フィズス「……はっ…泣かないで、マリー?」スッ

マリー「!!!」ボンッ
7: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:12:53 ID:/WYEXwH6vk
マリー「」ポカーン

フィズス「マリー?マリー!」フリフリ

マリー「」ハッ

フィズス「大丈夫かい?目が虚ろだったから…」ホッ

マリー「ね、ねぇ…今のって……」オソルオソル

フィズス「?」

マリー「そ、そうよね?あたしの勘違いよね?そんないきなり口付けなんて……」アタフタ

フィズス「え?したけど?」

マリー「!?」カァァ

フィズス「弱々しく泣く君を見てたら愛しくなっちゃって?」クスッ

マリー「ば、ばばバカバカバカバカ!!は、はじ…初めてだったのに!?」ポコポコ

フィズス「あはは!ごめんよ。イヤだった?」ジッ

マリー「そ、そんな訳…ないじゃない」プイッ

フィズス「そう。よかった?」ニコッ

マリー「〜〜〜!」ドギマギ

フィズス「ありふれてるけど…一つ一つの出会いって奇跡に等しいよね。出会えたのが君で本当によかった」ニコニコ

マリー「な、なによ…!さっきは…言葉に詰まってたじゃない!」グスンッ

フィズス「だって…先に言われちゃうと思わなかったからさ?」テレッ

マリー「え?」ジッ

フィズス「今日、しようと思ってたんだ。告白?」テレテレ

マリー「えぇっ!?」ドッキン
8: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:14:22 ID:/WYEXwH6vk
フィズス「指輪とか…ちゃんとした式は用意できなかったんだけどね…。
ぼくが伝えて、君が受け入れてくれたら、それでいいかなって…?」カァァ

マリー「!」キュンッキュンッ

フィズス「や、やっぱり変だよね!いきなりこんな…困らせちゃってごめんね!」アセアセ

マリー「バカぁっ!!」ガバッ

フィズス「わっ!?」ドサッ

マリー「ホントに…あなたってバカ!」ギュッ

フィズス「え…?」オロオロ

マリー「鳥の巣を見せてから告白って…どうしたらそんな訳の分からない事が思い付くのよ!?」キッ

フィズス「あ、あはは…ぼくも迷ったんだけど…二人きりになれる口実が欲しくて?」アセアセ

マリー「バカっ…」チュッ

フィズス「っ…!?」

マリー「ぷあっ…もう!今度はちゃんと考えてよ!?」ジッ

フィズス「…うん。君に喜んでもらう為だったら、頑張るよ?」ニコッ

マリー「そ、そういうのがずるいの!?」ドキドキ

フィズス「?」
9: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:16:07 ID:/WYEXwH6vk
〜〜〜〜〜〜

マリー「はぁ…結局、村から追い出されちゃったわね…」トボトボ

フィズス「分かってもらえるなんて思ってなかったしいいよ」スタスタ

マリー「あのねぇ…!そんな気楽に構えてられないでしょ!?」キッ

祖父(マリーの父)「これ、マリーや。興奮してはいかん。腹に宿る命を労らんか?」スタスタ

マリー「…うん」

フィズス「お腹蹴ってる?」

マリー「まだそんな時期じゃないわよ…。全然膨らんでないでしょう?」ハァッ

フィズス「ふふふ!」ルンルン

マリー「なにはしゃいでるのよ?」クスッ

フィズス「また一つ、君と大きな奇跡を分かち合えたなぁって?」

マリー「…もう!お父様からも言ってあげてよ?フィズスったら、いっつもこんな恥ずかしい事ばっかり言ってくるのよ!?」テレテレ

祖父「言葉の割には嬉しそうに見えるぞ」

マリー「そ、そんなことないわよ!」テレテレ

フィズス「産まれたら、お義父さんに名前をもらいたいですね?」ルンルン

祖父「いやいや…お前たちの子なのだから、そういう訳にはいかん?」

マリー「うーん…それはあたしも賛成?」

祖父「なっ…!?」

マリー「思えばお母様が病で亡くなった時、あたしはまだちっちゃくて…それからここまで育ててもらうまで、とても苦労をかけてきたから」

フィズス「それにぼくたちが結ばれた時も快く許してくれて…本当に感謝してます。マリーの親があなたでなかったら、きっとこうはなれなかった」

祖父「い、いやしかし…!」

マリー「おねがい?あたしたちはお父様に名前をもらいたいの…?」ジッ

フィズス「お腹の子の名付け親になってください。お願いします!」ペコッ

祖父「む、むぅぅ…!」
10: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:19:10 ID:/WYEXwH6vk
祖父「で、では…"カロル"というのはどうだ?」

フィズス「いい名前ですね。どういう意味が込められてるんですか?」

祖父「昔のホビット族が使っていたクレオール語という古語が由来だが人間の言葉に訳すと…」

マリー「"親愛"……」

祖父「ん…?知ってたのか?」

マリー「お母様が昔、ちょこっとクレオール訛りが強かったから、それを聞きかじってただけ?」

祖父「…まぁ妻と私が生まれ育った集落は人間の文化に適応していなかったからな」

フィズス「"親愛"で"カロル"……いい!すごくいいですよ!」パァァ

祖父「そ、そうかね?」

フィズス「はい!ぼくは気に入ってます!マリーはどう?」

マリー「…あたしもいいと思うわ?」ニコッ

祖父「ふぅ…それはよかった。しかし孫の名付け親にしてもらえるとは…なんとも言えないが喜ばしい気持ちでいっぱいだ?」ニコッ

フィズス「カロル。聴こえるかい?お祖父様が君に名前をくれたよ?
君が受け取った最初の贈り物は何より素敵な意味が込められたかわいらしい名前だよ?
お母様のお腹から出たら最初にお礼を言おうね…」ピトッ

マリー「…だから、まだそんなにお腹も膨らんでないったら?」

フィズス「まだ性別も分からないけど、どっちに似るかなぁ?君に似たらすごく美人な女の子になるだろうなぁ…」

マリー「美人だなんて…別に普通よ。でもあなたに似たら…誠実で優しい子になるでしょうね」スリスリ
11: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:20:50 ID:Uy/w6CDiOE
祖父「どちらにせよ、お前たちの間に産まれれば良い子であるのは間違いなさそうだな?」

フィズス「そ、そんなぁ…」テレッ

マリー「あ、でもあなたに似たら少し頼りないかも…?」

フィズス「え?そ、そうかな?」オロオロ

マリー「えぇ、いつもヘラヘラしてるし身長は高いのに体は細いし…言葉遣いもナヨナヨしてるもの?」

フィズス「うっ…」グサッ

祖父「はっはっ…君も父親となる以上、お腹の子とマリーを守れるようにならなくてはな?」

フィズス「ど、努力します…!」

祖父「まずはその口調から直してみたらどうだ?"ぼく"というのを"俺"にしてみるとか…」

フィズス「は、はい!お、おれ…俺が二人を守ってみせます!」キリッ

マリー「ぷっ…あはははは!全然合ってないじゃない!」ケラケラ

フィズス「えぇ〜…」ガーン

祖父「ま、まぁ…続ければ馴染むだろうさ…ぷぷ!」プルプル

フィズス「お、お義父さんも笑ってませんか!?」

マリー「きゃはははは!」ケラケラ

祖父「はっはっ…」クスクス

フィズス「な、なんで二人とも笑うのさ!俺って言っただけなのに!?」アタフタ

アハハハハハハ!

……………………
12:名無しさん@読者の声:2015/8/6(木) 19:11:33 ID:27huhh/BmI
マリーさんマジ天使
CCCCCCCC
13: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/7(金) 22:20:00 ID:MjrjC5RLn.
>>12
なんてもったいないお言葉!ありがとうございます!
自分のキャラに愛着を持っていただけるのはとても嬉しいです!
支援ありがとうございました!
14:名無しさん@読者の声:2015/8/8(土) 01:12:12 ID:pmvdmKrZIQ
私ファルージャが好きだわ…あの傲慢さに見え隠れする哀しさが何とも言えない
15: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/8(土) 18:48:09 ID:YUaqlqK50k
>>14
おぉ!まさかのファルージャですか!
美人でエロい女帝といういかにもありがちなキャラなので自信が無かったですが気に入っていただけてありがたいです!
前スレでは出番が少なかったですが今回こそは活躍させたいですねw
本当に嬉しいです!ありがとうございました!
16:遅くなってすみません! ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:12:44 ID:jOOK1VnbDQ
〜〜〜昼〜〜〜

―――ミラルドの町(市場)―――

母(マリー)「(……また、思い出しちゃった。けれど、もう辛くない)」

母「(あれから色々な出来事に見舞われてはきたけど…今はこうして最愛の息子と新しい場所で静かに暮らしてるんだもの)」スタスタ

孤児1「ママー!あれも買おうよ?」グイグイ

孤児2「ぼくもほしいー!」

母「ダメよ?お夕飯の食材を買いに来たんだから?」メッ

母「(それに血は繋がってないけど大勢の賑やかな家族も出来て穏やかな生活を続けられてるわ……)」シミジミ
17: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:15:01 ID:ghswXoejkk
―――ミラルドの町(孤児院)―――

母「帰りましたよー…あら?」

スッスッ パサッ

ナラ「あ、おかえりなさい」セッセッ

母「まぁナラちゃん!お洗濯してくれたの?」ビックリ

ナラ「きょうはミシングさんもいないし、マリーおばさんだけだと…たいへんだから」

母「ありがとう!とっても助かるわ?」ニコッ

ナラ「えへへ…どういたしまして?」テレッ

母「ナラお姉ちゃんはしっかり者ねー?二人も見習いましょうねー?」ニコニコ

孤児1「うん。ねーちゃん、えらーい!」

孤児2「ぼくもてつだう!」

ナラ「あ、じゃあ…たたむの、おねがいしていい?」

孤児1「いいよー!」

孤児2「やるー!」

母「(普段はおとなしくて控えめな子だけど気立てが良くて頼りになる子…。
ナラちゃんはきっと将来、いいお嫁さんになるわ?)」ニコニコ

母「さてと…お風呂の準備して、ご飯作っちゃいましょ」スタスタ
18: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:16:50 ID:ghswXoejkk
〜〜〜夕方〜〜〜

ガチャッ

ルーボイ「帰ったぜー!」ポイッ

ドサッドサッ

カロル「ただいまー!」スタスタ

マルク「わんっわんっ!」ハッハッ

ナラ「おかえり…あ、ルーボイ!ちらかしたらダメ!」

ルーボイ「うるせーな!後で片付けるっつの!」

ナラ「あとじゃなくて、いま!」

ルーボイ「うっ…な、なんだよ!疲れてんのに!?」

ナラ「あそんでただけでしょ!」

ルーボイ「そ、そうだけどよ…」マゴマゴ

カロル「いいよ。ボクが部屋に戻しておくね?」ヒョイッ

ルーボイ「お!サンキュー!」

ナラ「じ、じぶんでやらせないとダメだよ…?」オロオロ

ルーボイ「いいじゃん!こいつがやりてーっつーんだから!な?」

カロル「うん、そうだよ?」ニコッ

ナラ「うー…あ、あんまり…あまやかさないで?」モジモジ

ラム「そうそう。ただでさえ、だらしないんだから少しは自分でやってもらわないとね?」ヒョコッ

ルーボイ「うわあ!?いつからいたんだよ、おまえ!?」ピョンッ

ラム「今、帰ってきたとこ」スタスタ
19: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:19:17 ID:ghswXoejkk
ラム「あー疲れた。もうご飯出来てるの?」

ナラ「まだ、だよ。きょうはおしごとだったの?」

ラム「まぁね。仕事っていうか手伝いだけど」

カロル「お疲れさま!荷物重たいでしょ?部屋に戻してくるよ?」スッ

ラム「ありがとう?僕は自分でやるから平気だよ?自分でね?」チラッ

ルーボイ「うっ…」

カロル「そう?じゃあルーボイくんのだけ2階に片付けちゃうね!」タッタッ

ラム「」ジーッ

ナラ「」ジーッ

ルーボイ「な、なんだよっ!?」

孤児1「いーけないんだ、いけないんだー!」

孤児2「おしおきオバケに言っちゃーお!」

ルーボイ「や、やめろっ!またケツひっぱたかれんだろ!?」アセアセ
20: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:21:23 ID:ghswXoejkk
母「あら、3人とも帰ってきてたの?」

カロル「うん!ルーボイくんと町外れの川で釣りしてきたの!」

ルーボイ「ぜんぜん釣れなかったけどなー。やっぱパンの耳じゃ食わねーのかな?」

母「そ、そう…楽しそうでよかったわねぇ?(パンの耳……)」ヒクヒク

カロル「ボクはお魚さん見ながらのんびりしてるだけで楽しかったよ?ねー、マルク?」ナデナデ

マルク「クゥーン!」スリスリ

ルーボイ「釣れなくて何が楽しいんだっつの。変なやつ…」

母「うふふ…」ニコニコ

母「(ルーボイくんは坊やが初めて一緒に遊んだお友達だったっけ…。
ちょっぴり乱暴でわがままだけど…わんぱくで友達思いのいい子だわ?)」

ルーボイ「明日はチビ達も連れてって森で虫取りしよーぜ!」

カロル「うんっ!」パァァ

母「(面倒見もよくて毎日、坊やと遊んでくれて…親としてはこういう子が一番ありがたいのよね。
まぁ自分が遊びたいのもあるんでしょうけど?)」クスッ
21: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:23:12 ID:ghswXoejkk
母「ラムくんは図書館でお手伝いしてきたんでしょう?どうだったの?」クスッ

ラム「え?あ、えっと…普通です…。
まだ何もさせてもらってないし…掃除とか本の整理とか…雑用ばっかりですから」モジモジ

母「そんなことないわよ?雑用も立派なお仕事ですもの?」

ラム「…そうですね」

母「あなたはとても利口だから、ちゃんと続ければみんなに分かってもらえるわ?」ニコッ

ラム「……う、うん。ありがとう…ございます」ドギマギ

母「(この子はまだあたしに慣れてくれてないみたい…。それもそうよね。
友達の母親なんて関係上は割と縁遠い立場だし他人行儀になっちゃうのかも)」シュン

『ラム……いい子で待っててね。すぐ…迎えに行くから』

ラム「かあ…さん…」ズキンッ

母「え?」

ラム「あ、違います!なんでもないです?」アタフタ

母「そう…?」キョトン

ラム「(カロルくんのお母さんだって分かってるけど…なんか……)」ハァッ
22: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:24:43 ID:ghswXoejkk
母「さ、みんな先お風呂に入っちゃって?もうすぐご飯も出来上がりますからね?」グツグツ

カロル「はーい!」

ルーボイ「俺は後でいいや」

ナラ「わたし、はいってこようかな。いい?」スクッ

カロル「いいよ!」ニコニコ

ナラ「じゃあ…さきにはいっちゃうね」スタスタ

ガチャッ バタンッ

ラム「ナラが上がったら入ろうかな…。二人も洗ってあげるから入ろうね?」

孤児1「えー?いつもミシング姉ちゃんが洗ってくれるんだよー?」キョトン

ラム「ミシング姉さんは遅くまで帰ってこないから今日は僕と入ろう?」

孤児2「じゃあママはー?」

ラム「…か、カロルくんのお母さんはご飯の支度してるから」

孤児1「カロル兄ちゃんのじゃないもーん!みんなのママだもーん!」プンプン

孤児2「そうだ、そうだ!」プンプン

ラム「」チラッ

ルーボイ「げっ!お前の母ちゃんが作ってんのかよ?本当に大丈夫か…?」ビクビク

カロル「どうして?お母さまのご飯、おいしいじゃない?ね、マルク?」

マルク「わ、ゎんっ…」モゴモゴ

ラム「(カロルくんは気にしてないみたいだけど…いいのかな)」

孤児1「ママとはいるー!」ジタバタ

孤児2「ぼくもママがいいー!」

ラム「……」
23: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:26:20 ID:ghswXoejkk
ワイワイキャッキャッ

パクパク モグモグ

母「どう?ちょっとお塩入れすぎちゃったかしら?」

カロル「ちょうどいいよ!」パクッ

ルーボイ「(何がどう丁度いいんだよ…?)」ズーン

ラム「(塩の量とか関係ない…)」ブルブル

ナラ「(カロル…おいしそうにたべてる)」ヒクヒク

孤児1「うえー!まずーい!」ペッペッ

孤児2「コゲコゲだよー!」

ルーボイ&ナラ&ラム「」ビクビクゥゥッ

カロル&母「え…?」ピタッ

孤児1「ぼくたべなーい!ヘタクソだもん?」プイッ

孤児2「ぼくも!ミシング姉ちゃんに作ってもらうからいらなーい!」コトッ

ラム「ふ、二人ともなに言ってるんだよ!」オロオロ

孤児1「だ、だってまずいもん」ムスッ

カロル「そ、そんなことないよ。おいしいじゃない?」アセアセ

ナラ「そ、そう!おいしい!」パクッ

ナラ「うっ…」クラッ

孤児2「やっぱりまずいんじゃん!」

ナラ「お、おいしい…よ。うぷっ…」プルプル

ルーボイ「む、無理すんなよ……あっ」ハッ

母「無理…させちゃってたの?」

ルーボイ「ち、ちちちちげーし!してねーし!」アタフタ

ナラ「うっ…んぅ……」プルプル

母「……」
24: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:28:41 ID:jOOK1VnbDQ
ラム「作ってくれた物に文句言ったらダメだよ!」

孤児1「な、なんでよ!本当にまず……」

ラム「まずいって言うなら何も食べなくていい!ミシング姉さんにもそう言うから!」カッ

孤児1「じゃあラム兄ちゃんは食べれるの!?」

ラム「え?た、食べれるよ!当然だろ!」

孤児1「じゃあ食べてよ!ぼくのもあげる!」ササッ

孤児2「ぼくもあげるー」ススッ

ラム「え…ちょっと待っ」

ズラァァァァ

孤児1「食べれるんでしょ!」

孤児2「全部食べてよ!」

ラム「た、食べるよ…。食べるけど…食べれるかって聞かれたら…食べれるんだけど…食べるの?これ全部…?」ブツブツ

ルーボイ「ら、ラム!気持ちは分かるけど落ち着け!」アセアセ

ナラ「わ、わたしたちも…っ…て、てつだうから」ヨロッ

母「いいのよ。みんな?何か出来合いの物を買ってくるわね?」ニコッ

ラム「えっ」

ルーボイ「おばさん…?」

ナラ「だ、だいじょうぶ…だよ?」

母「ううん、いいの!自分でも味付け間違えちゃったかなーって気付いてたのよね!
食材、無駄にしちゃってミシングさんには申し訳ないわ!後で謝らないと…」スクッ

ラム&ナラ&ルーボイ「………」

母「お皿、一回全部洗い場によけちゃうわね…」サッサッ

孤児1「お腹すいたー!」

孤児2「ぼくも!」

母「あ、ごめんなさい、もう遅いものね?先にご飯買ってきましょ!」ダッ

ガチャッ バタンッ
25: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:31:14 ID:ghswXoejkk
ラム「はぁ…なんであんなこと言ったの?」ジロッ

孤児1「本当だもん!」

孤児2「そうだよ!」

ルーボイ「お前らぁ!?」ガタッ

孤児1「」ビクッ

孤児2「」ウルッ

ルーボイ「まずいとか言ったら、おばさん落ち込むに決まってんだろ!なんでそんな事も分かんねーんだよ!?」プンスカ

孤児1「びえーん!」ブワァッ

孤児2「ルーボイ兄ちゃんが怒ったー!」ブワァッ

ルーボイ「泣いてりゃなんでも許されると思ってんじゃねーぞ!?」ブチィッ

カロル「…いいよ。怒らないで?」

ルーボイ「え?」

カロル「二人は悪くないよ。好き嫌いってあるもんね?」ニコッ

ルーボイ「はぁ?こいつら、お前の母ちゃんにひでーこと言ったじゃんかよ!?」

カロル「しょうがないよ。苦手なのに我慢して食べるのってツラいじゃない?」

ルーボイ「だ、だからってまずいとか言うことねぇじゃねーか!」

ラム「そうだよ。ルーボイにしては珍しく正しい事を言ってると思うけど」

ルーボイ「"しては"ってなんだ!"しては"って!?」
26: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:32:31 ID:jOOK1VnbDQ
カロル「そういうの、まだ難しいよ。それにボクもちっちゃい頃は好き嫌いあったもの」

ナラ「カロルが…?」ビックリ

カロル「うん…。お母さまとお祖父さまと三人で旅してた時ね、あんまり食べる物がなかったんだ」

カロル「だから葉っぱと水だけとか…芋虫に蛙に栗鼠…木の幹をかじったりもしたよ」

ルーボイ「げぇっ…!そ、そんなのどうやって食うんだよ…!?」オエッ

ナラ「い、いもむし…カエル…リス…!?」ヒィー

ラム「あ、分かるなぁ。僕も人間に無理やりキリギリスとかカラスの死骸なんかを食べさせられたりしたよ」

ルーボイ&ナラ「!?」ギョギョッ

カロル「…ボクも喜んで食べてた訳じゃないから、お母さまにひどい言葉を言っちゃったりもしたんだ」

ルーボイ「そ、そりゃそんなモン食える訳ねーじゃん」

カロル「この子たちにとってはお母さまの作ったご飯がそうだったんだよ。たまたま?」

ルーボイ「(いや、正直、俺達だって食いたくねぇけど…)」

孤児1「ひっ…うえ…」グズグズ

孤児2「うわーん…」グシグシ

カロル「泣かなくていいよ。大丈夫。みんな怒ってないからね?」ヨシヨシ

孤児1「ぁぁあああん!!」バシッ

カロル「えっ?」ビクッ

孤児2「やぁぁだぁぁぁ!!!」ゴロゴロ

カロル「」アセアセ

ルーボイ「もうほっとけよ。どうせ何言ってもずっと泣いてっから?」

ラム「そうそう。こういう時はミシング姉さんか宣教師様が宥めるんだ。
どうしたって僕たちじゃ悪化させるだけだからね」

ナラ「…なきつかれたら、おとなしくなるよ?」

カロル「そうなんだ…」
27: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:35:34 ID:ghswXoejkk
〜〜〜夜〜〜〜

ミシング「はー…クッタクター……」ガチャッ

母「おかえりなさい。お疲れ様でした?」パタンッ

ミシング「あれれ?お母さん、まだ起きてたんですか?」

母「えぇ、ミシングさんが外で頑張ってらっしゃるのにあたしが先に寝てしまうのは申し訳なくて…」ウトウト

ミシング「そんなー!気にしないでいいんですって!
ここは三食昼寝付き、就労時間はご自由にがモットーなんですから!」

母「ふふふ…そういえば今日は遅かったんですね?」

ミシング「ホビットの二人の移住先が決まったんで役場で住民登録の解除手続きと移住許可証の発行をしてもらったんですよー。
その後、大聖堂まで送ってー…向こうに待機してもらってー…って感じで?
いやーこんなに遅くなるなんて思わないから…もうみんな寝ちゃってるかなーなんて!」ヌギッ

母「あぁ、前に話してましたわね…。二人は大聖堂に待機したまま帰ってこないんですか?」

ミシング「先に出発の準備だけ済ませてあったんで他の移住者と交流しながら迎えの馬車を待つみたい?
馬車は1週間くらいでこっちに着く見込みだけど…送別会とかしたかったにゃー」

母「いいじゃありませんか!是非しましょうよ?」

ミシング「…断られちゃったんですよねー」

母「まぁ?どうして?」

ミシング「『思い出はたくさんもらったから、これ以上、増やしちゃったら前に進めなくなる』って……」

母「…でしたら、ここに残る選択肢も……」

ミシング「あたしはそうしてくれて構わないんだけどー…。
二人は二人でいっぱい悩んだだろうし、それでも一人立ちしたいって決めたんならね…?
短い間だけど保護者だった身としては見送ってあげるべきなのかも?」

母「あたし達がお邪魔して…気まずくさせちゃったのかしら」シュン

ミシング「あはは!違いますよ、全然?マリーさん達が来る前から、ちょくちょく相談されてたから?」
28: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:39:08 ID:jOOK1VnbDQ
ミシング「まぁー…あの二人、ああ見えてあたしより年上だったんですよねー。びっくり!
だからか知らないけど、いろいろ考えてて…なんだかんだ自分たちで生活していくのを望んだのかにゃ?」

母「そうですか…。寂しくなりますわね?」

ミシング「うん、そうなんだけど…寂しいのはお互い様ですもんね。
あんまり名残惜しくしちゃうとホビットの二人も辛くなりますよ、やっぱり?」

母「そうですね…。子供たちもいつそういう選択をするとも限りませんし…。
そうなった時、何も言わず背中を押してあげるのが保護者の役目なのかもしれないわ…」

ミシング「そうそう。お別れを悲しむより祝福して見届けなくちゃ?」ニコッ

母「(……坊やにもいつかそんな日が来るのかしら)」

ミシング「…マリーさん?」

母「あ、すみません!ちょっとボーッとしちゃって?」ハッ

ミシング「もうこんな時間ですもんね。あたしは湯浴みして日誌書いてから寝るんで遠慮せず寝ちゃってください」

母「は、はい…。じゃあお言葉に甘えて…」

ドタバタ ガタンッ

母「あら…?二階から…?」

ミシング「んもー!あの子たちったらー…お仕置きオバケの出番かにゃ!」

タタタッ

ナラ「ま、マリーおばさん!ミシングさん!」アセアセ

ミシング「あ、ちょっと待って!まだ変身してない!」ヌギヌギ

母「こんな真夜中に慌ててどうしたの?」

ナラ「カロルが…!」

ミシング「んー?ケンカしてるの?」

ナラ「ケンカ…っていうより」マゴマゴ

ダンッダンッ ガタンッ

ミシング「…とりあえず近所迷惑だから止めなきゃだねー」

母「ぼ、坊やったら…何したのかしら?」アセアセ

ナラ「は、はやく!」
29: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:44:20 ID:ghswXoejkk
―――孤児院(共用部屋)―――

ルーボイ「だぁぁもう!やめろっつってんだろ!?」ガシッ

孤児1「やーだー!やだやだ、やーだー!!」ジタバタ

孤児2「うわーん!!」ブンッ

ガンッ

ラム「積み木なんか投げたらダメじゃないか!当たったらケガするんだよ!?」ガシッ

カロル「……」シュン

ナラ「ミシングさんたち、よんできたよ!」タタタッ

ミシング「なにやってんのー!消灯過ぎてるでしょー?」スタスタ

母「いったいどうしたって言うの?」スタスタ

孤児1「ママー!うわぁぁあああん!!」ダキッ

孤児2「兄ちゃんたちがいじめるのー!?」ダキッ

母「え…?」

ミシング「あー散らかしちゃって、もう?お掃除大魔王ミシングちゃんの腕の見せどころじゃないのよ?」キョロキョロ
30: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:46:45 ID:ghswXoejkk
ルーボイ「いじめてなんかねーよ!こいつらが勝手に……」

孤児1「うわぁぁぁんあんあん!!」バタバタ

ルーボイ「あーうるせぇ!泣くな!」

母「坊や…何があったの?」

カロル「……」

母「ちゃんと説明してちょうだい。お母さん、怒ってないから?」

ラム「あの…」

母「?」

ラム「二人が急に…カロルくんに怒り出したんです」

母「…そうなの?」

ラム「カロルくんがマリーさんの話をしてて…それを聞いたら、いきなり」

母「それだけで…?」

ラム「…『ママはぼくたちのママだ』って」

母「え…?」ジッ

孤児1「えぅ…ひっく」ウルウル

孤児2「だって…そうだもん」ウルウル

母「み、みんなで仲良くしましょ?ね?」アセアセ

孤児1「やだっ!ぼくのママがいい!!」ジーッ

孤児2「ぼくも!?」ジーッ

母「そ、そんなこと言われても…」

ミシング「マリーさんを困らせないの!めっ!」

孤児1「こまらせてない!」ガァーッ

ミシング「は、反抗期…!?」ガーン

孤児2「ぼくたちの…ママになってくれたもん…!」グスッ

母「(思ってくれていいとは言ったけど…)」オロオロ
31: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:49:22 ID:ghswXoejkk
カロル「ホントなの…?」ジッ

母「え?」

カロル「お母さまは…もうボクのお母さまじゃないの?」

母「…そんなはずないでしょ?」ナデリ

孤児1「えっ」ピシィッ

孤児2「うそ…だったんだ」ピシィッ

母「へ!?い、いや…嘘というか……」アセアセ

孤児1「ウソつき!!」パッ

孤児2「ママになるって言ったのに!?」パッ

母「え、えと…その、ね?あのー…分かるでしょ?親代わりなら…」

孤児1「おかわりなんてしない!!」

母「お、おかわりじゃないのよー?おやがわりって言ったの?」オロオロ

孤児1「おまえのごはん、まずい!おかわりしないし、食べたくない!!」

母「!?」ガガーン

孤児1「ホビットだからウソつきなんだ!」

孤児2「そうだよ!町の人たちに言われたもん!ホビットはウソつきだって!」

母「……!」

カロル「……」

ラム「……」

ルーボイ「お前ら変なこと言ってっと泣かすぞ!」ムカァァァ

ナラ「ルーボイ、やめて!」ガシッ

ルーボイ「はぁ!?なんでだよ!?」

ナラ「こういうときは、せんきょうしさまか、ミシングさんにまかせないと!」

ミシング「そゆこと!お子ちゃまはお布団でぐっすり好きな女の子の夢を見てなさい!」ポンッ

ルーボイ「っ…み、見ねぇし!」

32: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:51:30 ID:ghswXoejkk
孤児1「ウソつきホビット!」

孤児2「ホビットなんかきらい!」

母「お、落ち着きましょ!あたしを嫌いになるのはいいわ?でもラムくんや坊やは関係ないじゃない?」

孤児1「うるさーい!ウソつき!」

孤児2「きらいきらいきらい!ホビットだいっきらい!」ジダンダ

母「(あ、あぁどうしましょう…。せっかく頂いた居場所なのに…あたしが余計なことを言ったせいで良くない空気に…)」オロオロ

ミシング「はい、おしまーい!おねんねしないとお仕置きオバケが食べ散らかしちゃうぞー?」パンッパンッ

母「み、ミシングさん…?」

ミシング「今夜のところはあたしの部屋で寝かせますからマリーさんはみんなを寝かし付けちゃってくださいな?」

母「わ、分かりました…?」

ミシング「はーい、おチビちゃんたちー!今日はミシングお姉ちゃんと寝ましょうね?」ガシッ

孤児1「やーだー!!」ジタバタ

孤児2「バカホビット!いなくなっちゃえ!」

ルーボイ「こ、こ、コノヤロー……!」ワナワナ

ナラ「ルーボイはホビットじゃないでしょう?」ポンポン

ルーボイ「うるせぇ!!俺のダチをバカにしたんだぞ!?」

ナラ「……」モジモジ
33: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:53:21 ID:jOOK1VnbDQ
ミシング「はいはい!明日用に買っておいたドーナツがあるからおとなしく来なさい!」

孤児1「ドーナツ!?」ピクッ

孤児2「ほんと!?」パァァ

ミシング「ホントよー?今ならかわゆいミシングちゃんと甘いドーナツを食べながらあまーい密室デートが楽しめるよ!
特別に膝の上で歯磨きもしてあげちゃうんだから!世の男性ファン達に憎まれちゃうかも、なんてね?」

孤児1「えー!歯みがきやだー!」

孤児2「ドーナツ!ドーナツ!」

ミシング「うんうん、じゃあ、お部屋に行きましょう!」

ルーボイ「俺のドーナツは!?」

ミシング「あ、ごめんね。ルーボイくん!あたしの部屋、3人用なんだ!」

ルーボイ「いや、部屋なんかどーでもいいし!ドーナツだよ、ドーナツ!」

ミシング「2個しか買ってないよ?」

ルーボイ「はぁ!?6人いるだろ!?」

ミシング「数間違えちゃったー?てへっ!」

ルーボイ「どうやったらそんなに間違うんだよ!?」

ミシング「じゃ、おやすみーん!」ガチャッ

ミシング「(本当は明日、みんなにナイショでこっそり食べる予定だったんだもーん)」シランプリ
34: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:56:54 ID:ghswXoejkk
母「…み、みんなも寝ましょっか?」

ルーボイ「いいのかよ、おばちゃん!あんなん言われて!?」

母「え?」

ルーボイ「カロルとラムだってムカつくだろ!?」

ラム「…いいんじゃないの?」

ルーボイ「はぁ!?」

ラム「小さい子の言う事だしムキにならなくてもさ?」

ルーボイ「そ、そりゃあいつらはガキだけど…それだけで許せるかよ!」

カロル「…ボクのせいでイヤな気持ちにさせちゃったよね。みんなも…二人も…」

ナラ「へいきだよ。あしたになったらわすれてるよ?」ニコッ

母「そうよ…。あたしが軽はずみに親代わりになるなんて言っちゃったから…」

カロル「ううん…ボクも二人がお母さまを好きになってくれて嬉しかったの。
『ママができた』って喜んでくれたから…お母さまのこと、もっと知ってほしくて……」

母「坊や…」

カロル「でも…そうじゃなかったんだね。ボクの思い出は…ボクしか知らないことだから、二人には自慢に聞こえちゃったのかも」ウルッ

ラム「考えすぎじゃない?」

ナラ「カロルがやさしすぎるだけ?」

ルーボイ「ふつー逆だろ!お前があいつらに母ちゃん取んじゃねぇって怒んだよ!?」

カロル「うん…。さっき話してた時、お母さまが二人に取られるって思ったら…すごくイヤだった」

『お母さまは…もうボクのお母さまじゃないの?』

母「(……)」

カロル「きっと同じ…。こんなにツラい気持ちを二人に我慢させてたんだもの。怒るのも…しょうがないよ」シュン

ルーボイ「(こ、こいつ…)」ヒクヒク

ラム「(な、なんか…ここまでくると優しさっていうより?)」ヒクヒク

ナラ「(よくわかんない…?)」ヒクヒク
35: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:59:03 ID:ghswXoejkk
〜〜〜3日後〜〜〜

ルーボイ「カロル!今日、市場で祭りがあんだってよ?」

カロル「そうなの?」パァァ

ラム「町が出来た日を祝うんだってさ?」

カロル「へー!そうなんだ!」キラキラ

ルーボイ「夜にミシング姉ちゃんが連れてってくれるけどお前も行くよな?」

カロル「うん!行きたい!」キラキラ

孤児1「ナラ姉ちゃん!一緒にまわろーね!」ダキッ

ナラ「へ?」

孤児2「ぼくもナラ姉ちゃんとがいいー?」

ナラ「…で、でもみんなで?」アセアセ

孤児1「やだー?」

孤児2「ナラ姉ちゃんとまわるのー!」

ナラ「えー…?」アセアセ

ルーボイ「(まだ根に持ってんのかよ…)」

カロル「…」ズーン

ラム「じゃあ僕らはカロルくん達と回るからナラは二人をよろしく?」

ナラ「わかった…」シュン

孤児1「イヤ?」ウルウル

孤児2「ナラ姉ちゃん…ぼくらがきらいなの?」ウルウル

ナラ「そ、そんなことないよ?いっしょにまわろ?」ニコッ

孤児1「へへへー」ニコニコ

孤児2「やった!」

ナラ「(カロルとまわりたかったなぁ…)」ションボリ

ルーボイ「(ちくしょう…。ナラいねーのかよ)」ションボリ
36: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:00:57 ID:ghswXoejkk
〜〜〜夜〜〜〜

―――ミラルドの町(市場)―――

ワイワイガヤガヤ

ミシング「さぁーやってきましたよー!ミラルド名物、一夜限りの町興し記念祭ー!
こちら現場からミシングちゃんがお送りしてまーす!」

ポンポポポンポン ポポンポポン

ミシング「まずはこちらをご覧ください!町の人たちで結成された楽団による民謡奏楽に合わせて老若男女、さまざまな人が輪になって伝統舞踊を楽しんでまーす!」

ランランラン ランランラン

ミシング「月の欠けた夜とは思えないくらい明るいですよー!
多くの出店を伝って紐に吊るされた可愛い装飾の雪洞(※ぼんぼり)が町の隅々まで照らしてくれてまーす!」

ワァーワァーキャーキャー

ミシング「ではここで一旦、子供連れのご夫婦に感想を伺ってみましょう!そこの楽しげな新婚さん!」ポンポン

町人1「かれこれ結婚12年目ですかね」

ミシング「楽しんでますかー!」

町人1「えぇ!楽しんでますよ!」

町人1の妻「毎年、この日が楽しみです!」

町人1の子供「見てー!水風船!」ボヨンボヨン

ミシング「うーん!なんて幸せいっぱいなんでしょう!あー結婚したい!!」キュンッ

ゾロゾロ ゾロゾロ

ミシング「あ、そこの若い団体さん!お祭り楽しんでますかー?」

若者1「えー?つかー?まぁまぁー?みたいなー?」チャラチャラ

若者2「てかおねーさん、なに?誘ってんの?一緒に回りたい感じ?」チャラチャラ

若者3「あーそっかー!ゴメンねー?俺ら彼女いっからー?」チャラチャラ

若者4「つか早く合流すんべ!待たせんとカチキレっぞ!」チャラチャラ

チャラチャラ チャラチャラ………

ミシング「若い男女でイチャイチャお祭り……あはっ!ミシングちゃんったら奥歯がギシギシ言ってるよ!」イライラ

ミシング「あーあ、急な大雨とかで中止になんないかにゃー」ケッ
37: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:03:16 ID:jOOK1VnbDQ
ミシング「という訳でお祭りです!」

ラム「(この人、さっきから一人で喋ったり知らない人に話しかけたり何してるんだろう?)」

ミシング「ここで大事な御約束をします!まず絶対に一人で行動しないこと!」

ミシング「それからお小遣いは銅貨500枚まで!それ以上のお買い物はしちゃいけません!ミシングちゃんのお財布が餓死しちゃいます!」

ミシング「そして町人全員が行き来してるお祭りに参加するからには人に迷惑をかけちゃいけませんっ!当たり前だのクラッカーなのです!」

ミシング「あたしがみんなをここに連れてきたのは人とのふれあい、お金の管理、正しい道徳心を育んでもらう為です!」

ルーボイ「ちっ…普通に遊ばしてくれりゃいいじゃんか?」ブツクサ

ミシング「なんか言ったー?バッキバキにしちゃうよー?」コキッコキッ

ルーボイ「な、なんでもないし…」ビクビク

ミシング「今言った御約束を守れたらオールオッケー!大いに楽しんじゃってください!」

ハーイ!

ミシング「うんうん、元気が一番!じゃあみんなお小遣い渡すから並んで!」

ワーイワーイ!!

ミシング「(初めて自由に使わせるお金……これもたくさんの寄付から成り立つ物だけど)」

ミシング「(お金の使い道っていうのは自分で使っていかないと分からないんだよねー。
もちろん自分で頑張って働いて得るのが一番いいんだけど…こういうことを教えてあげられる機会ってあんまりないもんね)」

ミシング「(立派になんてならなくてもいい…。この子たちが大人になれる手助けを少しでも多くしてあげたいな。一緒にいてあげられる内に?)」

ミシング「(…任せて、宣教師。あなたの願いはあたしが叶えてあげる。
あなたが目指してる理想は到底、不可能に思えちゃうような話だけど…あたしはあんたを信じてるからね)」
38: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:06:18 ID:ghswXoejkk
―――露店通り―――

ワァーワァー!

カランカラン

輪投げ屋「はい、残念でした!全部はずれ!5等のオモチャ、どれでも一つ持ってっていいよ?」

ルーボイ「ちぇー!遠すぎんだよな?…これにしよ!」スッ ゴソゴソ

カロル「惜しかったね!あとちょっとだったよ?」

ルーボイ「そうか!?もっかいやろーかな?」

ラム「無駄遣いしたら貰ったお金無くなるよ?」

ルーボイ「うるせぇな!お前は俺の母ちゃんか!?」

ラム「違うけど」シレッ

ルーボイ「冷静に言うなし!?つーかカロルは欲しい景品ねーのかよ!」

カロル「あるけどボクじゃ取れないかも…?」シュン

ラム「どれ?」

カロル「あれ!」ビッ

ラム「昌石を原料にした貴重なインク一式……画材じゃないか?あんなの貰ってどうするんだい?」

カロル「ボク、お絵描きが好きなの?」ニコニコ

ラム「ふーん…そっか。ちょっと待ってて?」

カロル「え?」
39: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:08:39 ID:ghswXoejkk
カランカラン!

輪投げ屋「んな…アホな…!?」

ラム「思ったより簡単だったね?」クルクル

ルーボイ「すげぇ!?全部入れたし!?」

カロル「わぁぁ…!ラムくん、すごーい!」パチパチ

輪投げ屋「はぁ…まさかホビットに取られるとはな」

ラム「3等のインク、ちょうだい?」

輪投げ屋「は?こんなのでいいのか?」スッ

ラム「カロルくん」パシッ

カロル「?」

ラム「あげるよ」スッ

カロル「いいの!?」パシッ

ラム「うん。僕は絵心なんてないから?」

カロル「そ、それならラムくんが欲しい景品に…?」アセアセ

ラム「じゃあ喜んでみせてよ?」ニコッ

カロル「へ?」

ラム「一等の景品より君の笑顔が見たいな?」

カロル「え…えへへ!」テレッ

ラム「ふふ?」ニコニコ

カロル「ホントにこんなのでいいの…?ちょっぴり恥ずかしい?」テレテレ

ラム「うん、十分だよ。君にはかなり助けられたしね」

カロル「…そんなことないよ?」

ラム「君が笑顔を向けてくれたから僕はやり直せたんだ。本当にありがとう?カロルくん?」ニコニコ

カロル「ラムくん…」

ラム「受け取ってくれるかい?」

カロル「うん…!大事にするね?」ギュッ
40: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:10:43 ID:ghswXoejkk
カロル「水色の兎飴一つください!」チャリッ

飴細工屋「はいはい。銅貨70枚、ちょうど。ところでお前さんはホビットだね?」スッ

カロル「引っ越してきました!」パシッ

飴細工屋「ほー…そうかい、そうかい。この町の住み心地はどうだい?」

カロル「とっても幸せです!」ニコッ

飴細工屋「し、幸せ…?」ポカーン

カロル「はい!」ニコニコ

飴細工屋「…そか、そか。幸せか…。うん、いいこった?」ニコッ

カロル「ともだちと一緒にお祭りに来られるなんて夢みたい…えへへ!」ニコニコ

飴細工屋「…お連れさんは何人いるんだい?」

カロル「えと…二人!」

飴細工屋「じゃあこれ、おまけしてあげよう」スッ

カロル「? でも…お金が…?」キョトン

飴細工屋「町を褒めてくれたお礼さ?幸せなんて言葉…そうそう出てくるもんじゃない?」ニコニコ

カロル「だ、ダメだよ?お母さまに怒られちゃうもの?」アセアセ

飴細工屋「ならお友達に私の飴細工を広めておくれ?宣伝になるから?」

カロル「せ…でん?」チンプンカンプン

飴細工屋「商売人にとってはお金を受け取るより嬉しいことさ?宣伝してくれたらお代はいらないよ?はい?」スッ

カロル「そ、そうなの?ホントにいいのかな…」ウーン

飴細工屋「私の作った飴をたくさんの人に見せたいんだ?君はその手助けをしてるんだよ?」

カロル「そうだったんだ!がんばらなくちゃ!」

飴細工屋「ふふ…がんばっておくれ?」ニコニコ
41: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:12:55 ID:ghswXoejkk
ルーボイ「あーうめぇ!」パクパク

ラム「買い食いしすぎ?まだ2時間もあるのにお小遣い足りるの?」

ルーボイ「ん?フランクフルトだろ?綿飴だろ?かき氷だろ?焼きそばだろ?焼き鳥だろ?ジャガバターも食ったな?まだまだ食えるぜ!」

ラム「食欲があったってお金が無かったら意味ないだろ?」

カロル「ふんふふーん!あ、ラムくん!ルーボイくーん!」ルンルン

ルーボイ「ん?あ、お前、同じの3つも買ったのかよ?」

ラム「き、君まで…」

カロル「買ったんじゃないよ?おまけしてもらったの!」

ルーボイ「はぁ!?なんでお前だけ!ずりーぞ!?」

カロル「はい?せんでん!」スッ

ルーボイ「お!くれんのか?てかせんでんってなんだし?」パシッ

ラム「あ、ありがとう?」パシッ

カロル「飴屋さんのおばあさまに教えてもらったんだ?せんでんすると嬉しいんだって?」ペロペロ

ルーボイ「だからせんでんってなんだよ!」

ラム「へー…鳥の形してる?」

カロル「すごいよね?食べるのがもったいなくなっちゃう?」ペロペロ

ラム「ふふ…たしかにね?」

ルーボイ「」ガリッ

ルーボイ「」ボリッボリッ

ルーボイ「」ゴックン

ルーボイ「まぁ普通の飴だな」

ラム「……」

カロル「……」

ルーボイ「なんだよ?」キョトン

カロル「な、なんでもないよ?あはは!」アセアセ

ラム「(花よりダンゴ…って感じ?)」シラー
42: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:15:08 ID:jOOK1VnbDQ
お面屋「どれにする?」

カロル「あれがいい!」キャッキャッ

ルーボイ「お面なんか食えねーじゃん!」

ラム「君はなんか一つくらい思い出を形にしようとしないの?」

ルーボイ「へっへーん!腹ん中に入ってるぜ?」ドヤァッ

ラム「あっそ…君の思い出は明日の朝にでも厠に流れてくだろうね?」シラー

ルーボイ「きたねーからやめろし!?」

カロル「わんっ!」バッ

ルーボイ「うおっ!?」ビクッ

カロル「えへへー!驚いた?」スルッ

ルーボイ「お、お前かよ!?お面被って飛び出すなっつの!?」ビクビク

ラム「犬のにしたのかい?」

カロル「うん!マルクとお揃い!」カポッ

ラム「僕も一つ買おうかな?どれがいいと思う?」キョロキョロ

ルーボイ「狐!ズルそうだしお前にそっくりだぜ!」

ラム「え?なに?ケンカ売ってるの?」イラッ

カロル「ボクも狐がいいと思うよ?頭がよさそうだからラムくんにピッタリ!」

ラム「そ、そう…?じゃあそうしよっかな」テレッ

ルーボイ「俺も…げっ!もう金ねぇ?」ジャラッ

ラム「だから言っただろ?おじさーん、狐のお面ください!」チャリッ

お面屋「はいはい。狐ね!どうぞ!」スッ
43: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:17:58 ID:jOOK1VnbDQ
ルーボイ「ちぇっ!」

カロル「いいよ。ルーボイくん?ボク、まだ残ってるから出してあげる!」

ルーボイ「え?い、いいのかよ?」

カロル「うん。大丈夫だよ!」

ルーボイ「へへ!じゃあ…」

ラム「甘やかしたらダメだよ?」カポッ

ルーボイ「なんだよ、狐!」

ラム「狐じゃ…いや、狐でいいのかな?狐のお面してるし…じゃなくてカロルくん!」

カロル「?」

ラム「ルーボイは自分の欲しい物を買って渡されたお金を無くしたんだから自業自得?君が出してあげることないよ?」

カロル「え…」

ルーボイ「カロルがいいっつーんだからいいじゃんか!」

ラム「友達同士でもお金の貸し借りはいけないって習っただろ?」

ルーボイ「借りてねーよ!奢りだよ!」

ラム「なおさら悪い!」

カロル「……」モジモジ

ルーボイ「カロル!どうなんだよ!」

カロル「…み、みんなで楽しく遊べたらボクはなにも買えなくていいよ?」チラッ

ラム「そんなのダメだよ!ミシング姉さんはお金の使い方を学びなさいって言ってたんだからさ!」

ルーボイ「うるせぇな!狐は黙ってろよ!」

ラム「今は狐だけど狐じゃない!……あれ、僕なに言ってるんだ?」メダパニ

カロル「う、うーん…」モジモジ
44: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:20:05 ID:jOOK1VnbDQ
ラム「だいたい今、二人はいくら持ってるの?
それ次第でこれから先の行動も変わってくるよ?」

ルーボイ「お前はどうなんだよ!」

ラム「銅貨283枚だけど」

ルーボイ「覚えてんのかよっ!?」

カロル「ん…と、ボクは172枚!」ジャラッ

ルーボイ「お、俺は…26枚」ジャラッ

ラム「……」

カロル「あはは…?」ヒクヒク

ルーボイ「どうすんだよ!?なんもできねーぞ!?」

ラム「知らないよ!?」

カロル「あ、そっちの金魚すくいは?銅貨25枚で2回だって?」ビッ

ルーボイ「お!やろうぜ!」

ラム「はぁ…結局、なんにも学習してない」ヤレヤレ
45: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:21:46 ID:ghswXoejkk
パシャパシャ ピシャッ

金魚屋「お、お見事!10匹取ったから3匹まで持って帰っていいよ!」ガサゴソ

カロル「ラムくん、すごーい?ボクなんてすぐ破れちゃったのに?」

ラム「3人で1匹ずつ分けようか」

ルーボイ「デメキンくれよ!」

町の女の子「あっ…」パサッ

金魚屋「あー残念、お嬢ちゃん!2回、破れちゃったからおしまいだ?」

町の女の子「うっ…ふえっ…うえぇぇぇぇん!!!」ビエー

金魚屋「」ビクッ

ルーボイ「うわ!びっくりした!?」

ラム「あーあ?」

カロル「……おじさま!ボクたちの金魚、その子に1匹あげて?」

金魚屋「え?い、いいのか?君たちのだよ?」

カロル「うん!いいよね?」

ラム「いいんじゃない?」ニコッ

ルーボイ「ずっと泣かれてもうるせーしな」

金魚屋「お嬢ちゃん!よかったね!優しいホビットのお兄ちゃん達が1匹くれるとさ?」スッ

町の女の子「いらなぁい!!」バシンッ

バチャッ

金魚屋「お、お嬢ちゃん!?」オロオロ
46: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:23:35 ID:ghswXoejkk
町人2「かき氷買ってきたぞ……ん?」

町の女の子「」ビエーン!

町人2「だ、誰だ!うちの娘を泣かしたのは!?」

金魚屋「あ、あっしは何も!?」ブンブンッ

町の女の子「あのホビット…ふえっ…邪魔したから、金魚取れなかったぁ…」グズグズ

町人2「なにぃ…!?」ギロッ

カロル「ぼ、ボクたち?」キョトン

ラム「みたいだね?」

ルーボイ「はぁ!?勝手に泣いたんだろ!?」

町人2「この腐れホビット共がぁ!?町の伝統的な祭りに紛れやがって図々しい!
まだ小さな娘に嫌がらせすんのがそんなに楽しいか!あぁ!?」ガッ

カロル「きゃっ…」グイッ

町人2「おら、来い!この人混みじゃ迷惑が掛かるからな?向こうでとっちめてやる!」グッ

カロル「いっ…!」ズザァッ

ラム「カロルくん!」

ルーボイ「てめぇ!なにすんだよ!?」

ザワザワ ザワザワ

町人2「うるせぇ!てめぇらもだ!ホビットなんかとじゃれやがってクソガキが!」

町の女の子「あっかんべー!」ベロベロバー

ラム「…分かった。行ってやるよ」ギロッ

ルーボイ「このおっさん、俺たちでぶっ飛ばしてやろうぜ!」スクッ

町人2「な、なんだ、大人に向かって…」タジッ

「やめなっ!!!」

ザワッ
47: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:25:47 ID:ghswXoejkk
町人2「……!?」オロオロ

飴細工屋「そこまでにしときな」ザッ

町人2「なんだ、この婆さん…?」

飴細工屋「あたし達は祭りを主宰させてもらってる町会の役員さ」

お面屋「」ザッ

輪投げ屋「」ザッ

町人2「そ、それがなんだってんだ!」

飴細工屋「その子たちを離しな!祭り囃子が聴こえる内は揉め事なんかさせないよ!」キッ

町人2「こいつらが俺の娘を泣かしたんだ!叱って当然だろ!?」

飴細工屋「叱る?笑わせんじゃないよ!大の男が子供相手に髪の毛、引っ付かんで地面に擦り付けるのが躾ってかい!?」

町人2「くっ…!」

お面屋「この子らはうちの店にも来たが悪さなんかしねぇで行儀よく遊んでたぜ!」

輪投げ屋「おう、どうなんだ?金魚屋!」

金魚屋「あ、あぁ。気持ちよく遊んでくれたよ。それに泣いたお嬢ちゃんを見かねて自分たちが取った金魚を分けてやろうとしてた?」

町人2「!?」

町の女の子「」ギクッ

飴細工屋「それ見たことか!躾がなってないのはあんたの娘の方じゃないかさ!?」

町の女の子「ちがうもん!ホントだもぉん…!」グズグズ

町人2「……!」
48: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:27:32 ID:ghswXoejkk
飴細工屋「祭りはそこにいる全員のもんだ!ロクに遊び方も知らないなら失せな!?」

ソーダソーダ! カエレカエレ!

町人2「くっ…くぅぅ!」プルプル

町の女の子「うえぇぇぇぇん!!!」

ラム「自業自得だね」

ルーボイ「知ーらね」プイッ

カーエーレ! カーエーレ!

町人2「…くそぉ!」パッ

カロル「……」ジッ

町人2「なんだよ、その目はぁ!?俺たち親子が罵倒されんのがそんなに嬉しいか!?」

カロル「」スクッ パッパッ

町人2「」ビクッ

カロル「ごめんなさい!!」ペコッ

シーン

飴細工屋「え…?」

ラム「な、なんで君が謝るの…?」

ルーボイ「そうだよ!お前は悪くねーだろ!」

カロル「ううん、ホントはボクが悪いの。さっき間違って女の子に肘をぶつけちゃったんだ?」

ザワザワ ザワザワ
49: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:29:39 ID:ghswXoejkk
カロル「そうだよね?」

町の女の子「そう!肘でぶってきた!」コクコク

町人2「ほ、本当か?」

カロル「怒られるのが怖くて隠してました。ホントにごめんなさい」ペコッ

金魚屋「い、いや…正面から見てたけど、そんな場面は一度も?」

カロル「ぶつけました!」

金魚屋「え、えぇ…?」オロオロ

町の女の子「ね!パパ!本当でしょ!」ユサユサ

町人2「お、おう…」

カロル「隠したりしてごめんなさい。次から気をつけて遊びます」

町人2「わ、分かればいいんだよ!行くぞ?」ケッ

町の女の子「べーっだ?」ベロベロバー

スタスタ スタスタ……

お面屋「ま、まさか…」

飴細工屋「バカだね、そんな訳ないだろ?」コショコショ

お面屋「え?」

飴細工屋「怒られるのが怖かったんなら隠し通せばよかった話じゃないか?あの子は庇ってあげてんだよ?」コショコショ

お面屋「あ、そうか…!」

輪投げ屋「そ、それにしたって…どうして?」

飴細工屋「そこは私にも分かんないね…」
50: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:32:48 ID:jOOK1VnbDQ
カロル「ごめんね!二人とも?」

ラム「な、なんであんなこと言ったの…?」

ルーボイ「そうだよ!お前が謝るのおかしいだろ!」

カロル「だってボクがいけないんだもの?」ニコッ

ラム「……!?」

ルーボイ「ど、どうかしてんじゃねーの?」

ジロジロ ヒソヒソ

カロル「…見られちゃってるからボク、先に帰るよ?お小遣いは二人で使って?」ジャラッ

ラム「か、カロルくん…」

ルーボイ「……」

飴細工屋「いいんだよ。気にしなくて?」スタスタ

カロル「飴屋さん…」

飴細工屋「ほらほら、立ち止まってないで散った散った!」バッ

バラバラ バラバラ

飴細工屋「たく!困ったね、ここの連中ときたら?未だにホビットがああだこうだ言って…そんなだから田舎者呼ばわりされんだよ!」

カロル「ありがとうございました」ペコッ

飴細工屋「…なんであのロクデナシ親子を庇ったりしたんだい?」

ラム「そうだよ…。君が悪者になることないだろ?」

ルーボイ「しかもお前、俺とラムの真ん中にいたクセに端っこにいたあいつにどうやって肘ぶつけんだよ?」

カロル「…」
51: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:34:50 ID:ghswXoejkk
飴細工屋「言ってごらんよ?お友達も心配してるよ?」

カロル「お祭りはみんなで楽しむもの…だよね」

飴細工屋「? あぁ、もちろんさ?」

カロル「あそこでボクが謝らなかったら、あの女の子とお父さんがお祭り楽しめなくなっちゃうかなって…」

飴細工屋「それ…本気で言ってんのかい?」

カロル「……?」

飴細工屋「(あ、呆れたお人好しだねぇ…)」ヒクヒク

ルーボイ「バカなヤツ!」ニカッ

ラム「…君って学習しないよね、ホント?」クスッ

カロル「ごめん…」ショボン

飴細工屋「…ま、いいさ。最後まで楽しんでおいきよ?」ニコッ

カロル「でも…」

飴細工屋「町の連中には後でうまく言っとくよ?祭り囃子が聴こえる内は帰るなんてもってのほかだ?」

カロル「……!」パァァ

ラム「次はどれ行こうか?」ニコッ

ルーボイ「どうせ俺、金ねーし暇潰しに付き合ってやるよ!」

カロル「うん!いっぱい遊ぼ?」ニコニコ
52: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:46:45 ID:rjm0FZnxdY
ポポンポポン! ポポンポポン!

ワァーワァーキャーキャー!

チャンチャカチャンチャン

ミシング「こうやって全員で踊ってると余所者なのに町の一員になれた気がしますよねー!」ランラン

母「そうですわね?皆さんも普段と打って変わってご機嫌?ホビットが交じっても気にしてないようですし?」ランラン

ミシング「ここも布教の訂正はしてあるんですけど、あんまりうまくいかないんですよねー」ランラン

母「そうなんですか…。あまりホビットは歓迎されてませんものね?」ランラン

ミシング「でもあの子たちを遊ばせておくと流れが変わるんじゃないかにゃー?」ランラン

母「? どういうことです?」

ミシング「意外とね。こういう催し事って貴重なんですよー?
普段は顔も合わせない区画の人達とか町の有力者が一同に期すから、ここで交流を深めておくと先々の暮らしにも大きく影響しちゃうんです?」

母「まぁ…?そんな大事な意味があってみんなを?」

ミシング「…みんななら町の人達の誤解を解くにはうってつけかと思って?」ニヤッ

母「お、おほほ…?い、いろいろと考えてらっしゃるんですのね?」

ミシング「そりゃそうですよ。孤児院なんて少ない人数でも維持費がバカにならないですし町の財政に大きく関わりますから領主や町人から疎まれるんですもん?」

母「……」

ミシング「自分たちの居場所を住み良くするには積極的に交流してってくのが一番!塞ぎ込んでると変な噂しか立たないですしね?」

母「あなたも宣教師様もお若いのにとても立派ですわねぇ…」

ミシング「そうですか?」

母「あたしはなるべく人目を避けよう、避けようとして他との関わりを絶ってきてましたから…それが良くなかったのかも」

ミシング「なーに言ってんですか!」ポンッ

母「は、はい?」

ミシング「誰にも頼らず頑張ってきたお母さんの方が立派ですよ!
あたしは人に頼って楽したいだけのちゃらんぽらん女ですもん?」

母「…あなたも十分、一人で頑張ってらっしゃるじゃない?」

ミシング「そうかにゃ?まぁ独り身彼氏募集中ではあるんだけども!」

母「」クスッ
53: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:48:50 ID:Sx9bep0/Fk
カロル「みんなで踊るのって楽しいね?」ランラン

ルーボイ「そうかぁ?なんか恥ずいけどな?」ランラン

ラム「恥ずかしがる方が浮くよ?」ランラン

ナラ「たのしまなきゃ?」ランラン

孤児1「あはははは!」ランラン

孤児2「わーい!」ランラン

カロル「ねぇ、それなぁに?」ランラン

孤児1「えへへー!勇者クライスの缶バッチ!かっこいいでしょ!」

カロル「うん!かっこいい!」

孤児2「カロル兄ちゃん!きな粉餅食べる?」

カロル「いいの?」

孤児2「いいよー!」

カロル「じゃあお返しにチョコバナナ買ってくるよ!」

孤児2「ホントに?ありがとー!」パァァ

カロル「待っててね!」タタタッ

母「すっかり仲直りしてますわね?」ランラン

ミシング「子供ってすぐ忘れちゃいますからねー。叱り付けるより時間を置いた方がいい時もあるんですよ?」

母「ふふふ…よかった?」

ランラン ランラン
54: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:49:50 ID:rjm0FZnxdY
―――西の国(宮殿)―――

ペロペロ ビチャビチャ

ファルージャ「クスス…皿に注がれた湯がそんなに美味かえ?」ニヤニヤ

下僕1「はっ…はっ…じょ、女王陛下の味が…します…」ズズッ

ガチャッ

将軍「こちらにおいででありましたか!」

ファルージャ「はんっ…そなたか?」ジッ

将軍「(目が合ったぁァァアアア!!!)」ドキドキドキンッ

ファルージャ「なんぞあったか?」

将軍「む?あ、足元にうつ伏せているボロキレは?」

ファルージャ「妾の愛犬じゃ」サラッ

下僕1「ふ…ぐへへ…陛下のお味……極上のスープ…!」ペロペロ

将軍「愛犬…!?」ギヌロォォォ

ファルージャ「……?あぁ、両腕が無いのが気になるかえ?」

側近2「私から説明しましょう。実はこの男、奴隷の身でありながら女王陛下の入浴時を狙って衣類を盗み…それだけに留まらず、入浴後の残り湯を密かに啜っていたのです」

ファルージャ「そうさせてしまった妾にも非はある。美を持ちすぎるのも考え物さな?」

下僕1「ふ、ふへへ…」ビチャビチャ

ファルージャ「別れた腕が恋しいか?」

下僕1「ちっとも…女王様に飼ってもらえるなんて…夢心地です…ふへへ」ニタニタ

側近2「という訳です」

将軍「……」スタスタ

ファルージャ「……?」
55: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:52:51 ID:Sx9bep0/Fk
将軍「ヅアアァ!!!」ヒュッ

下僕1「ぼぎゅっ!!!」ゴキィッ

将軍「フンッ!!奴隷の分際でっ!!女王の浸かった残り湯をいただくだとぉ!?」ズシッズシッ

グシャッグシャッ

将軍「ハァッ…ハァッ…陛下の残り湯は我輩が飲み干す!!」ドドンッ!

ファルージャ「…何をしておる?妾がいつ踏み潰せと命じた?」ジッ

将軍「」ハッ

ファルージャ「返り血がかかったでないか?」

将軍「あ、あ、いや…」アタフタ

ファルージャ「汚れた脚を綺麗にせよ」スラリ

将軍「た、只今拭き物を……」アセアセ

ファルージャ「馬鹿を申せ?早うせねば血が落ちなくなるであろうが?」

将軍「(うっ…ふぁ、ふぁふぁファルージャ様のおみ足が間近に……ヌホオオオオオオ)」ハァハァ

ファルージャ「舌を出せ。一滴も残さぬよう、そなたが血を舐め取るのじゃ?」

将軍「なっ……」

側近2「(ま、まずい!いくら陛下と言えど数々の武勇を誇り、列国に"西の殺戮魔"とまで言わしめたカカドゥーラ将軍に脚を舐めろなど…!?)」

将軍「な、な、な…なんという…!」ワナワナ

側近2「いけません!将軍!抑えて……」アセアセ

将軍「なんというご褒美だ!!」ヌオオオオオ!

側近2「えっ」ピタッ

ファルージャ「早うせい。いつまで妾を待たせる気じゃ?」シラー

将軍「ンッホオオオオアアアアありがたき幸せェェエエエエ!!!!」ムチュッ

ペロペロ ジュルジュル ヌチャヌチャ

ファルージャ「あんっ!これ、そうがっつくでない?」クスッ

将軍「あぁも!あぁ!ももももも!!!」ペチャペチャ

側近2「お、おぉぉ……」マジマジ
56: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:54:25 ID:rjm0FZnxdY
ファルージャ「…もうよい。口を離せ」

将軍「ムホ…」プハッ

ファルージャ「…」ヌラァァァ

将軍「い、いかがか?」ドキドキ

ファルージャ「痴れ者」ゲシッ

将軍「ぐはっ!…おぉぉぉイイィィィィ!!!」クンカクンカ

ファルージャ「お前の唾液がへばりついて肌が乾燥しておるわ?側近、拭く物を?」ゲシッゲシッ

側近2「こちらに」スッ

ファルージャ「…」パシッ フキフキ

将軍「よ、よろしければ、その手拭い、我輩に…!」ハァハァ

ファルージャ「己の唾液が染み付いた手拭いが欲しいとな?」パチクリ

将軍「じ、じじ女王のおみ足に触れた手拭いを使わせていただきたいと存じておりまする!!」ハァハァ

ファルージャ「…好きにせい」ポイッ

将軍「うひょおおおお!!!」パサッ

側近2「………」

ファルージャ「側近、死骸を処分なさいな」

側近2「……は、はい。おい!女王陛下のお足元を清めろ!」

西の衛兵's「ははっ!!」
57: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:56:09 ID:Sx9bep0/Fk
将軍「女王ん……女王のナマ足付き手拭いぃぃ…」クンカクンカ

ファルージャ「して、そなた何用で参った?」

将軍「はっ…いかぬな!忘れてはならぬ!実は……」ブルンブルン

ファルージャ「実は?」

将軍「お喜びください!!癒しの力の在処が遂に判明しましたぞ!?」

ファルージャ「ほう?それで?」シラー

将軍「そ、それで…とは?」キョトン

ファルージャ「ここに持ってきたのかえ?」

将軍「……!い、いえ!」ハッ

ファルージャ「…あれからもう1年が経ったというに」ボソッ

将軍「で、ですが…その…しかし、それは……」アワアワ

ファルージャ「そなたら三銃士はさも事無げに勇んでみせたが…一向に良い報告を持って参らぬな?」

将軍「」ガーン

ファルージャ「この忌まわしき老いを…一刻も早く捨ててしまいたい。それには永遠の命が必要じゃ?」

将軍「か、返す言葉もございませぬ…!」ブルッ

ファルージャ「…妾を愛しく想うそなたらのこと。何も心配はしておらぬが…妾とて限度という物がある?」

将軍「す、すぐに…すぐに女王陛下の御前に癒しの力を御覧に入れてみせまする!!」ブルブル

ファルージャ「そうさな。期待に応えておくれ?」

将軍「ハハァっ!!」ザッ
58: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:57:38 ID:rjm0FZnxdY
―――西の国(将軍の砦)―――

ドッゴォォォン!!!

パラパラ パラパラ

将校1「(いつにも増して荒れておられる…)」

将校2「(せ、石柱を薙刀の一振りで粉々に…!?)」ガクガクブルブル

将軍「貴様らぁァァ…!ノロノロとだらしのない働きをしおってぇ…!?」ビキビキィィィ

参謀「……」

将軍「たるんどるぞ!!あぁん!?」ダァァンッ!

参謀「閣下個人とされましてはどういった戦局をお望みでございましょうか?」

将軍「貴様は我輩の参謀でありながら、そんな事も分からぬのか?」ギロッ

参謀「まさか?僕は貴方様の忠実なしもべにございます。
全身に流れる血の一滴に至るまで捧げる覚悟……閣下のお心は口になさらずとも把握させていただいておりますよ?」ニコッ

将軍「ほう!?では我輩の心を読み当ててみせるがいい!?」

参謀「ご安心あれ、我らが偉大なる英傑、カカドゥーラ将軍閣下?」

将軍「んぬぅ…!?」

参謀「既に幾重にも及ぶ計を案じておりまする?」

将軍「しからば何故もたついておるか!?」ダンッ

参謀「そう焦らずとも?」

将軍「これが焦らずにいられるかぁ!?女王陛下たっての願いを聞き入れて1年以上の時が経っているのだぞ!?」ガァーッ

参謀「(またあの"妾"か…)」
59: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:59:43 ID:Sx9bep0/Fk
将軍「よもや我慢ならぬ!!我輩が全軍を率い、王国を叩き潰してくれるわぁ!?」

参謀「つまり敵の狙いに沿って動くと?」

将軍「!?」

参謀「これまで打ってきた布石が台無しになってしまいますが…それでもよろしいと?」

将軍「……!?」

参謀「もちろん知謀に優れた将軍閣下のことです。ただただ焦ってがむしゃらに軍を動かそうという訳ではないのでしょうが…」

将軍「と、とと、当然である!!」アセアセ

参謀「…引き続き僕にお任せいただけるのであれば必ずや手柄をお約束しましょう」

将軍「なに!?」

参謀「まず今、攻め入るのは得策とは言えません。敵もそれは感じておりましょう」

将軍「壁となる同盟は切り崩したのであろうが!?」

参謀「不信を煽り、少々の信頼を寄せただけです。段階的にはまだ初めの……」

将軍「初めだとぉ!?まだ進んでおらんのかぁ!?」

参謀「シャルウィン様がなかなか採掘場を明け渡してくださらないもので些か交渉に手間取っておりまする」

将軍「あんのオカマァァ…!?何を考えておるかぁ…!?」ギリッ

参謀「明け渡す前に採り尽くして鉱山を空にしたいのだとか?そんな時間はないとお伝えしたのですがね?」

将軍「…挙兵せよ!ぶっ殺す!!」ダンッ

参謀「まぁ捨て置きましょう。あの方には別の所で役立ってもらいますから?」

将軍「あんなオカマ商人ごときに三銃士の称号を授けること自体が間違いだったのだぁああ!!」

参謀「(あ、もう聞いてないな…)」
60: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:03:41 ID:Sx9bep0/Fk
将軍「パカラゥロにしてもそうだ!?なぜ奴のような醜い化け物が我輩に並んで三銃士と称されるか!?そうであろうが!?」

参謀「えぇ、まったくおっしゃる通り」

将軍「そもそも奴らが王国潜入時に功を奏しておれば速やかに事が運んだのだ…!恥さらし共めが…!?」ギリッ

参謀「それについてはまた追々ゆっくりと?とりあえず説明させていただいてよろしいですか?」

将軍「あぁ!?なんの説明だ!?」

参謀「ですから今は攻め時ではないと…」イラッ

将軍「貴様ァァアアア!!今、眉をしかめたなぁ!?我輩にイラついておるのか!?おぉう!?」

参謀「いえいえ、滅相も…」

将軍「言いたい事があるなら言え!?」

参謀「いい加減になさいませ」

将軍「今…なんつったぁあぁああ…!?」ビキッビキッ

参謀「女王陛下に喜んでいただきたくはないのですか!?」

将軍「」ハッ

参謀「一刻も早く閣下の手で功を成し、女王のお望みを叶えて差し上げなければ!違いますか!?」

将軍「く、口答えしおったなぁ…!?」

参謀「なぜ分かってくださらないのですか!僕は…僕は閣下に……」

将軍「?」

参謀「女王陛下と添い遂げていただきたい一心で申しているのです!」ドンッ

将軍「そ、添い遂げ…る?陛下が…我輩のよ、よよ、よ、嫁にか!?」ブルブル

参謀「はい!陛下は永遠の命を捧げた配下に一つだけ望みを叶えると明言されました!
ということは今回の作戦で閣下が手柄を挙げ、女王に求婚されますれば必ずや陛下は閣下を夫とし、毎晩毎晩飽きるまで夜を共にさせてくださるはず!!」

将軍「言葉を慎まんか、貴様ァァアアア!!」

参謀「……!も、申し訳ございません!出過ぎたマネを……」

将軍「我輩が陛下に飽きるなどありえるかぁああ!!その気になれば100年でも1000年でも抱き続けられるわぁ!!?」ゴゴゴゴゴ

参謀「(そっちですか…?)」
61: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:07:34 ID:Sx9bep0/Fk
将軍「しかし貴様の言う事も一理ある?
我輩ごときが陛下と添い遂げるなど願ったり叶ったり…。
ではなくおこがましく思うが実際、我輩以外に女王の伴侶に見合う男はおらぬゆえな?」ウヘヘヘ

参謀「…では僕の説明を聞いてくださいますか?」

将軍「ムフフ…聞いてやろう?」

参謀「(まったくこの方は与し易いと評するべきか、めんどくさい……)」

参謀「まず攻め入るにも大義がございません」

将軍「大義…?なんだそれは?」

参謀「簡潔に申しますれば理由付けにございます」

将軍「必要なかろう?」

参謀「は?」

将軍「終わりなき争いにおいては大義などなんの意味も成さんかったわ?」

参謀「…しかし戦争となるからには何かしらのきっかけがあったはずでは?」

将軍「女王の望みである…それで十分ではないか?」

参謀「……」

将軍「癒しの力があると思わしき地点は特定した!ならば迷わず侵略あるのみよ!!ヌハハハハハ!!!」

参謀「その情報はおそらく誘いですよ」

将軍「なに?」ピタッ
62: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:15:21 ID:rjm0FZnxdY
参謀「地図を開け?」

将校1「はっ!」バサッ

参謀「指し示すは王国と我が国を繋ぐ境、海に面した南西の領地、貿易はここで執り行われ、例の情報もこちらから流れてきました」

将軍「で?それがどうした?」

参謀「かくしてこちらは癒しの力を匿っているとされる王国・東の辺境地、この東の領地は山々や森林に囲まれ、更に東国との隣接地点になっておりまする」

将軍「だから…それがどうした?」ピキッ

参謀「以前に東国は我が国との貿易を断り、王国と接触を果たしておりまする」

将軍「いい加減にせぬか…!」ピキッピキッ

参謀「ここを攻め入るには東国領を通らねばなりません。
その上、馬の足には向かない山岳地帯、実戦経験を重ねた屈強な我が軍と言えども、まともに機能しません」

参謀「となりますれば東国は"領地侵犯"を大義に…王国は"不当な侵略行為"を大義にこれを迎え撃つでしょう。
そして東国が加わるということは盟が生きている証拠、助勢とまではならずとも同盟下にある他の4国は静観に徹し、戦況によっては卑しい動きを見せる国も出てくるかと」

参謀「例えば手薄な本国側を突き、鉱石財源を狙う国…はたまた両国に加勢し、権利を主張しようとする国……」

参謀「そうした危険を踏まえ、あらゆる策を講じ、練り上げ、僕の割り出した勝率は……0です!」

将軍「がぁぁ!!!」シュバッ

ピタッ

参謀「……」

将校's「」ゴクリ
63: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:17:05 ID:rjm0FZnxdY
将軍「我が軍は最強だ!その程度で勝敗が揺らぐか!?」ギロッ

参謀「勝てませんよ」

将軍「言い残す事はあるか?」

参謀「僕の構想は閣下とも…女王とも別にあります」タラァァ

将軍「……?」

参謀「永遠の命のみならず王国そのものを奪い尽くすつもりです…。
そして王国を足掛かりに東・北・南・各国を攻め落とし、この大陸の頂点に君臨する!!」ギンッ

将軍「なん…だ…とォォオオ!!?」ブォンッ

ドガァァァン!!

将校's「……!?」ビリビリ

参謀「(机と地図が……)」アーア

将軍「貴様ァァアアア……!!」グオッ

将校1「(ぴ、ピクスィ参謀が閣下の怒りを買ってしまった…!)」

将校2「(ひ、避難せねば我らまで巻き添えをくらう…!)」
64: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:18:36 ID:Sx9bep0/Fk
将軍「お前という奴は……お前という奴はァァアアア!!!」バッ

将校1「ひぃっ!!」ダッ

将校2「に、逃げ……」

将軍「なんと果報者なのだぁぁァァアアア!!」ダキッ ギュウウウウウ

参謀「ぐっ!うぎっ!?」ゴキゴキ

将校1「は?」

将校2「ん!?」

将軍「我輩を女王と結びつけ、更には全世界を差し出そうとは…やはりお前は果報者ヨォオオオ!!ヌハハハハハ!!」パッ

参謀「おぐっ!うぶっ……ぜぇ…ぜぇ…ありがたき…しあわせ」ゲッソリ

将軍「…で?どの程度掛かりそうだ?」

参謀「3年は……」

将軍「そうか。半年か」

将校's「」ギョギョッ

参謀「1年……」

将軍「さすが我輩の認めた切れ者よ?1ヶ月ときたか?」ニヤリ

参謀「…かしこまりました。半年でなんとか手を打ちましょう」

将校1「(さ、3年越しになる作戦を……半年でだと!?)」

将校2「(む、無茶苦茶にも程がある…!)」

将軍「ヌハハハハハ!!なんとめでたいことか!今宵は酒がうまそうだ!!のう?」

参謀「…各隊の補給、運搬班に酒肴の用意を?」

将校1「わ、分かった…!」

将軍「ピクスィよ?後で我輩の寝屋に来い?久々に可愛がってやろう?」ニタァァァ

参謀「ありがたい申し出ではございますが半年後に向けて作戦を組み直さねばなりませんので宴席も空けたいと……」

将軍「二度言わすな?」ビキッビキッ

参謀「……かしこまりました」ペコッ

将校's「……え?」ピクッ
65: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:21:43 ID:Sx9bep0/Fk
〜〜〜夜〜〜〜

将軍「遠慮はいらんぞ!今日は大いに飲むがいい!?」

ギャハハハハハ!!

ドンチャン ドンチャン

将校1「…参謀と将軍はどういう関係なんだ?」グビッ

将校2「分からん…。色仲であるのは間違いなさそうだが…」グビッ

将校1「ファルージャ様一筋ではなかったのか?」

将校2「それとこれとは別なのだろうよ?そばに愛人を囲う将など腐るほどいる?」

将校1「し、しかし相手は男だぞ…!?」

将校2「そう珍しい話でもない。まさか閣下が衆道を嗜まれるとは思わなかったがな」

将校1「……!」

将校2「まぁ確かにあの参謀は指揮官の割に年若い。顔の造りも…まぁまぁまぁ」

将校1「何を言ってるんだ!あんな優男の分際で屈強な兵の上に立ち、挙げ句、閣下に擦り寄るなど気色の悪い!!」

将校2「閣下に聞かれたら殺されるぞ?」

将校1「うっ……いったいなぜ閣下は…血迷っておられるのか?」

将校2「…俺もよく知らんがピクスィが参謀として軍に所属したのは14の事だそうだ」

将校1「14!?俺が小隊を任されるようになった歳でさえ奴の倍だぞ!?」

将校2「前皇帝時代から将軍に仕えていたらしいが誰も奴の詳細は知らない…。謎の多い男だよ」グビッ
66: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:23:17 ID:rjm0FZnxdY
軍曹「ギャハハハハ!!分かってねぇなぁ、君たちぃ!?酒の肴は女と決まってんじゃないのよぉ!?」モミモミ

西の女1「イヤァーン!!タビラ様のエッチぃ?」

西の女2「あーん感じちゃーう?」

将校1「…ちっ!女タラシが?」

将校2「あれに聞いてみるか?軍の中じゃ古株だしよ?」

将校1「宮女喰いで悪名高いタビラにか!冗談じゃねぇ!?」

将校2「参謀殿の疑惑を晴らしたくないのか?色事で上官職に就いてるとしたら蹴落とすにゃいい口実になるぞ?」

将校1「しかたねぇな…。ピクスィのような陰間の優男に仕切られて動いてるかと思やぁヘドが出る!徹底して暴いてやろうぜ!?」

将校2「よしきた…軍曹殿!こちらで一緒に飲まぬか!?」

軍曹「あん?男となんか飲んでられるかい?隅で牛の小便でも飲んでろ?」

将校1「」ブチィッ

将校2「こらえろ、こらえろ」サスサス

軍曹「お前らモーホーかぁ?綺麗所が並ばねぇたぁ寂しいなぁ?」

将校2「」ブチィッ

将校1「お前がこらえろと宥めたんだぞ…?」サスサス
67: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:27:13 ID:rjm0FZnxdY
軍曹「将軍と参謀の仲ぁ?」

将校1「あぁ、先ほどただならぬやり取りを聞いてな?」

軍曹「そうかぁ?成り上がりのお前らは知らねぇかぁ?叩き上げの俺らは昔から周知のなんとやらだがなぁ?」ヘラヘラ

将校1「」イラァッ

将校2「やはりそういう関係なのか…?」

軍曹「つってもねぇ…そんなんじゃねぇぜ?あいつは俺らん中でも生粋の叩き上げさぁ?
並み居る軍師をはね除けて最年少であの地位に登り詰めた天才ってやつだな!」ヘラヘラ

将校1「…色事で将軍に取り入ったんじゃないのか?」

軍曹「君たちぃ?カカドゥーラ様を分かってねぇなぁ?」ヘラヘラ

将校2「どういうことだ?」

軍曹「あの方はよぉ?何かにつけて弱い者いじめをしたがる?
抵抗の少ない赤子や女、老人を痛め付けるのがだぁぁ〜い好きだぁ?」ヘラヘラ

将校2「」ゾクッ

軍曹「西の国が野蛮だとされるのは…もっぱら閣下の行いの悪さにある?
殺しを楽しむのに飽きた猛将の下品な遊び心が西の武勇を貶めてる訳さぁ?」ヘラヘラ

軍曹「だがしかし…その他の追随を許さない蛮行があらゆる意味で名を広めた?
大魔導師パカラゥロ、宝石商シャルウィンと並び称されるものの…格で言えば圧倒的に殺戮将カカドゥーラが上回る?」

軍曹「西の国に対する各国の畏怖は…ある意味カカドゥーラ様への畏怖なんだよぉ?分かる?」ヘラヘラ

将校1「」ゴクリ

将校2「…カカドゥーラ様が参謀への見方を甘くしている可能性は?」

軍曹「万に一つもありえねぇ?だが一つあるとすりゃ…奴の出生の秘密だ!」

将校1「出生の…」

将校2「秘密…?」
68: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:29:32 ID:rjm0FZnxdY
軍曹「奴に関する経緯は閣下以外、誰も知らねぇ?
だが奴は4歳から高名な軍師に引き取られ、9歳で初陣を飾り、兵500を率いて2000の無国籍軍を打ち破った化け物だ?」

将校1「(4倍の数を…9歳のガキが!?)」

軍曹「当然っちゃ当然の出世だが…異例っちゃ異例の出世だ?当時は皆、頭を悩まされたぜぇ?」

将校2「…そ、それは凄いがなぜ9歳のガキが指揮官の任で初陣を?」

軍曹「おうよ、そこが奴の謎を深めてる?」

将校1「…奴の謎とはなんなんだ!?」

軍曹「…閣下は弱者を理由に守られる存在ってのが許せねぇんだとよぉ…?
弱い奴は弱い奴らしく苦痛の末にへし折れて無様にのたれ死にやがれってのがあの方の持論だぁ?」ヘラヘラ

将校1「ん?」

軍曹「何か裏があんだよぉ?奴は?」

将校2「つ、つまり参謀殿はただの愛人ではなく…!」

軍曹「あぁ、なんらかの秘密を抱えた"慰み者"である可能性が高い!」ニタリ

将校1「…!?」

軍曹「ボインでやらけぇ女の肉は最高さぁ?男色趣向なんざ俺には一生、わからねぇ趣味だな?」

西の女1「ねー?話終わったぁ?」ヒシッ

西の女2「あたし達も相手してよぉ?」ヒシッ

軍曹「いいねぇ〜?とことんイクとこまでイこうぜぇ〜?」モミッ

将校1「(いったい参謀殿は……)」

将校2「(何者だ…?)」
69: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:33:54 ID:rjm0FZnxdY
―――将軍の砦(回廊)―――

カツンカツン カツンカツン

将軍「…よい酒であったわ」フラッ

参謀「大丈夫ですか?過度の飲酒はお身体に障りまする。どうか部屋でお休みに……」

ガシッ グワッ

参謀「っ!?」ムグッ

将軍「…誤魔化せるとでも思うたか?」グッ

参謀「っ……!っ…!?」

将軍「眠り薬など仕込みおって…小癪な!我輩には通用せんぞ?」ググッ

参謀「お…はな…しくだ、さい!」プルプル

将軍「解毒薬を出せ?」パッ

参謀「げほっ!ごほっ!」

将軍「さっさと出せ…?」ギロッ

参謀「は、はい…」ゴソゴソ スッ

将軍「ふん…」グビッ

参謀「(くそっ…!)」ギリッ

将軍「さぁて…ヤるか。今夜は寝れぬものと思えよ?」

参謀「…先日、領内から拐った女達ではいけないのですか?」

将軍「貴様がいいのだ?我輩が手塩に掛けて育ててやった…みじめで虚しい皇女殿?」クイッ

参謀「…その呼び方はおやめくださいませ」プイッ

将軍「くっ…ぐふふ!」ニヤニヤ

参謀「(あの"妾"にしろ…こいつにしろ…性の匂いがする者にロクなのはいない…!)」ギリッ
70: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:42:52 ID:Sx9bep0/Fk
〜〜〜回想(参謀)〜〜〜

ダダダッ バババッ

西の宮女「はぁ…!はぁ…!」

赤ん坊「ウアアアン!!」

ザッ

西の宮女「」ハッ

将軍「見つけたぞ?」ニヤリ

西の宮女「ど、どうか…お見逃しくださいまし…!?」

将軍「ならんな?皇帝陛下の下に連れ帰らせてもらう?」ザッザッ

西の宮女「…この子は女に生まれた身!王位争いとは無縁なのです!どうか!」

将軍「ならなぜ堕胎しなかった?」

西の宮女「慈悲を…!もう…こんな場所で生きていくのは疲れたのです!この子と二人、安らかに……」

将軍「安らかに眠りたいと?」

西の宮女「……!?」ギュッ

ズバシャッ! ポトッ

赤ん坊「ぎゃあああああ!!」ベーベー

将軍「ムフフ…陛下の隠し子、というより隠された子か?
お前の母が犯した罪は大きい。皇族に生まれながら…日陰の奴隷として一生を過ごす事になるだろう?」

将軍「が、しかし…宮女共の堪え性の無さもまた異常だ。
今月も5人の皇子が他界したしな。そう思えばお前はまだ運がいい?」

将軍「…何はなくとも血族であるのは確かだ。皇帝陛下の先々を考慮し、我輩が内密に飼っておいてやろう?」ニタァァァ

将軍「…しかしこの宮女、なかなかの美人であったな。我ながら惜しいことをしたか」チッ

…………………
71: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:45:29 ID:Sx9bep0/Fk
〜〜〜明け方〜〜〜

―――西の国(砂漠地帯)―――

ザスッザスッ ザスッザスッ

参謀「……」

軍師「顔色が悪うございますが到着まで眠られては?」

参謀「そうもいきませんよ。いつイアマンの反逆者共が刺客を放つか分からないですからね」

軍師「ここ2年ほどは閣下も落ち着いておられましたが…いやはやまた卑しい目を向けられるとは」

参謀「…"そこ"だけはあの"妾"に感謝してたのですがね。
まぁ閣下も我欲の強い男…王位から退かれたとはいえ、一応の皇族である僕をなぶって自己満足に浸っているのでしょうよ」

軍師「…辛いですな」

参謀「そう言ってくださるのは貴方だけですよ。師匠殿」

軍師「師匠だなどと恐れ多い?私はただの配下にございまする?」

参謀「…ご心配には及びませんよ。僕はまだ諦めておりませんから」

軍師「それは良うございました。私も微力ながら貴方様の背を押させていただきたいと存じておりまする。"皇帝陛下"」

参謀「気が早いですよ」

軍師「いずれはそうなるのですから同じことかと」

参謀「あの妾の台頭で一度は失敗に終わりましたが…まぁ問題ありませんね。
むしろ正統な王位を継ぐ次期皇子共を皆殺しにしてくれたので助かりましたよ…」

軍師「……」

参謀「この国の長所は軍の強大さにあらず…独裁制を許される政治的圧力の強さに起因します」

軍師「(軍事のみならず政治の才も一線を画する…。やはり私の目に狂いはない!)」

参謀「僕もそろそろ軍の一指揮官から…ちょうど良い位置まで駆け上がりましょうかねぇ?」ニヤリ

軍師「(この方こそ王の器なり…!)」
72: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:49:11 ID:Sx9bep0/Fk
〜〜〜1ヶ月後〜〜〜

―――王国軍の砦―――

フィクサー「…読まれた、か」コトンッ

副官「えぇ、えぇ、そのようで?」

ドレッド「どういうことだ!西の国の貿易拠点に流布したんじゃないのか?」

フィクサー「奴らが動くそぶりが見られない。作戦を見破られたようだ」

ドレッド「見破られただぁ!?野蛮で愚図な西の連中にそんな勘のいい野郎がいるってのか!?」

フィクサー「敵の戦力を見誤ったかも知らんな」

ドレッド「ちぃっ…!救い主をエサに奴らが不利な国境・山岳地帯に誘きだして一網打尽にする手筈だったんだろうが!?
ここで大々的に勝利の狼煙をぶち上げて一気に西の本国を詰めりゃ終わる話だったんだぞ!?」

フィクサー「さすがにそうはいかんよ。地理を把握する者ならばある程度の予測は立てられる。ましてや敵は百戦錬磨の強国だ」

ドレッド「なにぃ!?だがあんたの作戦じゃ…?」

フィクサー「だからこそ敢えてこちらの誘いを外し、貿易拠点から少々離れた高原地帯に侵入し、奇襲を迫ってくるかと考えていたが……」

ドレッド「結局はあてが外れたんだろう?全部台無しだ!くそっ!?」ガタンッ
73: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:50:13 ID:rjm0FZnxdY
副官「どうも引っ掛かる?」

ドレッド「なにがだ!」

副官「政務官殿の話では以前にも西の国が予想だにしない政治戦略に打って出たとか?」

ドレッド「こっちとは関係ねぇだろ!」

副官「西の国は軍事国家、あくまで軍主体の統治を掲げている?
その証拠に女王直属の配下、三銃士にも政務に携わる者はおりませんよねぇ?
しかし今はどちらかと言えば外交や同盟破棄の手引きなど政治色の強いやり方が目立っている…」

フィクサー「軍略、政治、どちらにも長けた切れ者がいるのかもな」

ドレッド「…軍の最高指揮官は"殺戮将カカドゥーラ"だろう?それ以外で目立った奴は知らんぞ?」

フィクサー「どうやら…甘く見過ぎていたようだ」

副官「ふむ。非常にまずい立ち回りとなりましたねぇ。
敵に攻め入る気が無ければ動きようがないですから?」

ドレッド「お、おい…それじゃどうすんだ!?」

フィクサー「…敵が誘いに乗らない以上、わたしに軍を動かす権限はない。
来るべき日に向け、軍備を強化し、各地に防衛線を張り巡らすぞ」

副官「ははっ!」

ドレッド「また一からやり直しかよ…。西の蛮人の分際でしゃらくせぇ真似を…!」ギリッ

フィクサー「(…時代が少しずつ我ら軍人に傾いてきた。この機を逃す手はない。西国の内部に探りを入れてみるとするか)」

フィクサー「(どの史実をめくってみれど…血にまみれた時代が最も面白いからな)」ニヤリ
74: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:04:21 ID:YUaqlqK50k
―――王国(議場)―――

ヒメ「ふっ…」クスッ

ウダウダ ギャーギャー

高官1「であるからして…それは…!」ギャーギャー

高官2「ここは万に一つの望みを賭けて武力行使に打って出るべきだ!!」ギャーギャー

ネバル「西の国の人達はお腹空いてるです!ごはんをあげて説得するです!!」ギャーギャー

高官3「救い主を差し出してはいかんのか!?血を流すよりマシだろう!?」

高官4「貴様!!救い主様は陛下のご友人だぞ!?」

政務官「奴らは争いそのものを楽しむ感覚の持ち主だ!たとえ目的を遂げたとしてもおとなしく引き下がるとは思えん!
奴らを説得するのではなく奴らが納得せざるを得ない状況を作らねばならない!!」

ヒメ「(戻してやった貴族上がりの高官達も積極的に意見を出すようになった。
政務官の本格復帰で息を吹き返したんだろうが…さすが王国1の弁舌家だ。
周囲を煽り、明確な目的意識を促す力に長けている)」

ネバル「おいらの知り合いに美味しい大根を作ってる農家があるです!そこの大根おろしは絶品です!西の国の人達も飛び上がって和睦するです!!」ギャーギャー

ヒメ「(とりあえずあいつは後でぶっ飛ばすとして…良い流れに入ってきた。
これなら絶望的な状況を退ける上策が生まれるかもしれない)」

政務官「陛下の意見をお聞きしたい?」

ヒメ「そうだな…。奴らを強引に納得させるのには賛成だ。具体的な手段はないのか?」

政務官「西の国と平和協定加盟国の貿易が本格実施される前に各国との連携を強化するのが妥当かと!」

ヒメ「…それしかないよな。やっぱり?」

政務官「…不服かもしれませぬが、やはりあの方に頼るべきかと存じます」

ヒメ「そうだな。強化する前に…まず盟が生きていると証明するのが重要だ」

政務官「では…!」

ヒメ「あぁ、僕と東の国へ行ってくれるか?政務官!」

政務官「すぐに手配を!」

ネバル「はいはーい!おいらも行きたいです!」

ヒメ「どうせまたなんかやらかすからダメだ?」

ネバル「そんな!?」ガーン
75: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:08:20 ID:T0csLKu60c
〜〜〜1ヶ月後〜〜〜

―――東の国―――

ザッザッ ザッザッ

ワァァァァアアアア!!

パチパチ パチパチ

政務官「(なんという事だ…!城下のみらなず王宮内でさえ多大なる歓迎を受けている!?)」スタスタ

ネバル「あ、前にお話した貴族さんたちです!どーもー!」フリフリ

ヒメ「浮かれるな!バカ!」ポカッ

政務官「(…物珍しさに群がる他国民に歓迎を受けるのはある意味、当然だ。
しかし役人や騎士族までが微笑ましく迎え入れるとは…裏がないとすればヒメ様の人望は相当なものであると考えていい!)」

ブルードル「遂に答えを出したようだな!ヒメ君!!」

ヒメ「お待たせして申し訳ございません。ブルードル陛下」ザッ

ミリア「今日はずいぶん可愛らしいお衣装ですのね?」ニコニコ

ヒメ「ど、どうも…」ヒクヒク

政務官「好感触ですな?ヒメ様…!」コショコショ

ヒメ「(ブルードル陛下は変態じゃないと何度言えば…!こんな派手なヒラヒラした衣装、用意する必要ないんだよ…!)」イライラ

ネバル「孫の衣装です?」ニコニコ

ヒメ「(それを言うなら馬子にも衣装だ!こいつも結局、付いてきた…!)」イライラ

ブルードル「あぁ…緋色と琥珀の色彩…短い手足に余る袖…なんと眼福なものか!
あとで肖像を描かせてくれたまえ!彫像に彫り直して我が宮に飾りたい!」ハァハァ

ヒメ「(やっぱり変態かもしれない)」

ミリア「陛下、落ち着きましょ?」ポンポン

ブルードル「ごほんっ!むふんむふん!」ゲフンゲフン

ヒメ「ブルードル陛下、此度は何も衣装をお見せしに来たのではございません」

ブルードル「う、うむ!もちろんだとも!いやー私としたことが……」

ヒメ「大事な話をしに参りました…!」ジッ

ブルードル「」ピクッ
76: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:11:35 ID:T0csLKu60c
ヒメ「今一度、お頼み申し上げます!王国に力をお貸しください!!共に西の国を打倒しましょう!!」

ブルードル「おぉ…!こちらの条件を受け入れてくださるか!?」

ミリア「」クスクス

政務官「いえ、養子縁組に関しましてはお断りさせていただきたいと存じます!」

ブルードル「…そなたは?」

ヒメ「紹介が遅れました。私の後見人としてそばに仕えてくれている政務官です」

政務官「リルラと申します。どうかお見知り置きを?」

ブルードル「ふむ…まぁ非常識は自覚しておったが…それにしても悪い話ではなかったはずだ?」

ヒメ「…私が東の国の王位に乗り出してしまったら両国共に滅びます」

ブルードル「無用な心配だよ?」

ヒメ「……」

ブルードル「以前より私は君を見ていた。国交の場…協議の場…そして記念すべき少年王聖誕祭、正面に座して君との話を楽しんだ日だ?」

ヒメ「……」

ブルードル「私は認めておるよ。そうでなければ易々と王位など譲れん?」

宰相「我々、東国の高官一同も納得しております」ザッ

ヒメ「…いいえ、僕では無理です」

ブルードル「なぜ断定するのだね?分からないじゃないか?」

ヒメ「東の国は豊かで国土も整っており、民は窮する事なく穏やかに過ごしている。御しやすいと言えば…そうなのかもしれません」

政務官「ぎょ、御しやすいなどと…お言葉を選ばねば…!?」コショコショ

ヒメ「いい。この際、はっきりさせる必要がある!」

ブルードル「構わんよ。続けてくれたまえ…」
77: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:14:01 ID:T0csLKu60c
ヒメ「富に溢れ、文明は広まり、大勢の人が行き交う城下の景色は実に調和が取れていました。
しかしそれらの平穏な生活は賢い王族の下にあると彼らも理解しているはず…」

ブルードル「褒められてしまった…!」ポッ

ミリア「はい、よしよし?良かったですわねー?」ナデナデ

ヒメ「…いかにお世継ぎがおられないとはいえ、余所の国からやって来た者を民は受け入れられないでしょう。それほどに陛下の威厳は深い?」

ブルードル「ならば民に示せばよい。君にはその力がある?」

ヒメ「不可能です!」キッパリ

ブルードル「ほ!?」ビクッ

ヒメ「今の統治に満足している彼らには私の成す、いかなる変化も煙たく感じるでしょう!
時には民に無理を強いる場面も先々に多く出てきます!そうなった時、彼らは必ずこう囁くはずです!」

ヒメ「『今の王ではダメだ』『前の王はよかった』『正統な王でもないのになぜ従うのか』と…」

宰相「……!」ググッ

ヒメ「此度の件にしても…西の国と衝突間近にある状況下で決戦が他の王による決定であれば誰も争いには向かえない!」

ヒメ「東の国は貴方の人望に支えられているのです!なれば国民も役人達も…貴方による統治を望まれる!!」

宰相「……!」プルプル

ブルードル「…私はただの傀儡だよ。役を演じて客を喜ばすのは人形だが演目を組み立て、糸に括って操るのは有能な演出家だ?どうだね、宰相?」

宰相「へ、陛下…」

ヒメ「確かにそうかもしれません。ですがそこに揺るぎない説得力を産み出すのは他ならぬ演者自身です!」

ブルードル「私はただ妃とのほほんと微笑ましく贅沢に溺れた愚王だ。
君のように自ら何かを産み出そうとする行動力も能もない」

ブルードル「そう…何も産まず、何も守れず、ただ面白可笑しく生き永らえただけだ」フッ

ミリア「陛下…」ポンポン

ヒメ「そこの宰相は貴方を操っている訳じゃない!貴方の人格に合った政治を成しているだけだ!」

ブルードル「私に合った…?」

宰相「!?」
78: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:17:29 ID:YUaqlqK50k
ヒメ「その者は貴方が望まれる政治を実行する為に尽くしているのです!」

ブルードル「……」

ヒメ「でなければ子の無い王に野心無くして付き従う利はない!
西の国との貿易を断るといった自滅行為はありえない!
なにより他国民に王位を譲るなど…賛同出来る筈がない!!」

宰相「……!」パチクリ

ブルードル「ふ…フホホ!君は…宰相の思惑に裏があるとは考えないのか?」

ヒメ「それはありえません!」

ブルードル「ホ?」

ヒメ「万人に愛される貴方だからこそ東の国は成り立っているのです!!」

ブルードル「やはり…聡明だよ、君は?」ニコッ

ヒメ「……!」
79: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:18:35 ID:T0csLKu60c
ブルードル「よく尽くしてくれているよ。彼は…?」

宰相「くっ……」ウルッ

ブルードル「だが宰相も私も年寄りだ。せいぜい10年……もう長くはないだろう。
しかし貴族や王家直属の家臣達は…有能かもしれんが王の器かと問われれば…なんとも?」

ブルードル「となれば…せめてこの眼で確かめた上で信を置ける世継ぎが欲しい」

政務官「…そ、それでヒメ様に白羽の矢が立った訳か」

ネバル「陛下すごいです!」

ブルードル「フホホ!お前があと20若ければ…のう?宰相?」ニコッ

宰相「ご冗談を…!?」

政務官「…なぜ子を成さなかったのです?」

ヒメ「成さなかったんじゃない。成せなかったんだ」

政務官「存じ上げております。しかし王の血を残すは至上の使命…最も真剣に取り組むべきはそこにあったのでは?」

ブルードル「フホホ…耳の痛い話だ…?」

ミリア「…話してあげましょうよ?」

ブルードル「よいのか?」

ミリア「えぇ、ここまで言ってくれたのですから…全てをさらけ出してしまいましょう?」

ブルードル「うむ…聞いてくれるかな?王国のお客人よ?」

政務官「はっ!」

ネバル「はっ!」

ヒメ「…お願いします!」
80:名無しさん@読者の声:2015/8/14(金) 21:21:33 ID:M3gqXJXWA6
初めてリアタイ遭遇してしまった…
支援せねばなるまいっ!!
CCCCCCCCCCCC
81: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:21:34 ID:YUaqlqK50k
〜〜〜回想(ブルードル)〜〜〜

東の高官「…報告します!拐われた子らの所在、生死共に不明!派遣した300の調査隊も同様です!」

ブルードル「…分かった」

東の高官「引き続き調査隊を派遣しますか!?」

ブルードル「…宰相、どうだろうか?」

宰相「お気持ちは重々…ですがこれ以上は…犠牲を増やすばかりやもしれませぬ」

ブルードル「西の皇帝に宛てた抗議文はどうなった?」

東の高官「…早馬にて送らせたのですが返答はおろか抗議文を届けた伝者も帰って参りません」

宰相「向こうは話し合う気もないようですな。西の地を踏めば死に直結する…。もはや立て続けに抗議をするのも危険過ぎます」

ブルードル「…そうか。中止しろ」

東の高官「よろしいのですか…!?」

ブルードル「明日、遺族を城に招いておくれ?城下の民には私が直接、顔を見せて説明しよう」

東の高官「へ、陛下自らがそこまでなさらずとも!」

ブルードル「…私はこういう時、どういった言葉をかけてやればよいか知らぬ。
宰相よ、なんと言えば遺族の傷に響かせず僅かでも慰められるだろうか?」

宰相「必要ありません」

ブルードル「?」

宰相「王の言葉には光が宿っております。陛下の心の赴くまま遺族に語りかけて差し上げればよろしい」

ブルードル「フホホ…何が光なものか?何よりも失ってはならぬ純然たる希望の欠片を手放した愚か者が…?」

宰相「自棄になりなさるな!陛下がそれでは失われた命どころか残された命までもが浮かばれませぬぞ!」

ブルードル「フホホ…悲しみを癒す間もなく他者を労らねばならぬか。王とは難儀だな…」
82: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:24:08 ID:YUaqlqK50k
宰相「史実・歴王典にあるように…嘆きを安らがせ、暴走を諌め、戸惑いは導き、悲哀には励まし、喜楽あらば共にする。王とは陰りなき永遠の光と説きます」

ブルードル「王とは光……なるほど、偉大なる先人方はやはり美しい教えを遺される?」

ブルードル「だが子のない私達には…この国の今を楽しみ、未来を待ちわびる無数の瞳は…一点の曇り無く輝ける存在なのだ…!」ググッ

東の高官「」ビクッ

ブルードル「王であれ、使命であれ…あと20年保つか分からぬ…老い先短い微かな灯し火…!
いかに貧しかろうと…卑屈を強いられようと…身分が低かろうと……80年、100年先の未来を生きたかもしれない…眩い命!どちらが優先されて然るべきか!?」ウルッ

宰相「……」

ブルードル「明日、遺族には救出不可能として調査隊を撤退させる旨をしかと伝えなくてはならぬ。
すなわち愛すべき子らを見捨てると断じた王の慰めに耳を傾けさせねばならぬのだ…!」

ブルードル「分からぬ…分からぬよ。宰相…。
私が遺族であったなら…王の慰めも豪奢な宮の煌めきもひしめく屈強な護衛、家臣らさえも…。
王家の栄光の全てが憎しみを増幅させ、拐われた民に射し込まぬ偽りの光を決して許しはしないだろう…!」

宰相「そうであっても…陰りを悟らせてはなりませぬ」

ブルードル「ぐぅっ……」ググッ

宰相「東の地を照らす大いなる光が褪せてはならぬのです!」

ブルードル「…ふ、フホホ……光…」
83: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:26:52 ID:T0csLKu60c
〜〜〜〜〜〜

ブルードル「苦しゅうない。一同、面を上げられよ」

遺族's「」スッ

ブルードル「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

ブルードル「(はかり知れん…)」

宰相「……」

遺族's「」ジーッ

ブルードル「(…この感情はとても受け止めきれるものではない。複雑だ…あまりにも……)」ゴクリ

宰相「陛下、ご説明を」

ブルードル「うむ…。此度の拉致騒動だが…」

遺族's「!!!!」ギンッ

ブルードル「…すまぬ」ペコッ

遺族's「!!!!!」カッ

ブルードル「余計な言葉は要るまい…。全ては王である私の責任だ。力不足でまことに申し訳ない」

遺族's「」ブルブル

ブルードル「(…複雑な感情を受け入れられないのは彼らも同じか)」

ウオオオオオオオオ!!!

ガタンッ ドガッ ガンッ

遺族1「※★→】゙}@△#!!!」ギャーギャー

遺族2「ふごぉおおお!!むごぉぉふぉっふぉっ!!」ポロポロ

遺族3「メイ…ヒヨ……」ボーッ

遺族4「返せぇエエエエ!!!返せヨォォオオ!!?」ガァーッ
84: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:29:07 ID:T0csLKu60c
宰相「鎮まれ!王の御前であるぞ!?」

遺族5「関係あるかぁ!?」ダンッ

宰相「なっ…!?」

遺族6「私達の子供は…どうなってるの!?生きてるの!?死んでるの!?」

遺族7「西の国がやったんだろ!!分かっててどうして何もしないんだ!?」

宰相「…ま、まだそうと決まった訳では!」

遺族8「西の軍旗を掲げた兵が迫ってくるのをこの目で見たんだ!?」

遺族9「奴ら、わざと俺達に旗を振ってた!!混乱したのを見計らってはぐれた子供らを最初から街に仕込んでた間者を使って拐わせたんだ!?」

宰相「さ、幸い街自体の被害は少ない!まずは探りを入れて……」

遺族10「街が無事なら、それでいいのか!?そこに住まう民の被害など…どうでもいいと言うのか!?」

遺族11「どうなんだ、陛下!?」

ブルードル「(なんとも言えぬ、な…)」

宰相「」ギャーギャー

遺族12「おぉぉおおおお!!おおおお!!!」ポロポロ

遺族13「許さない!!許さなぁぁぁい!!!」ポロポロ

遺族14「あっ…ひ……あぁぁああああ!!!」ワシャワシャ

ブルードル「(かける言葉がない…。予想はしていたが…ここまでとは)」
85: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:31:20 ID:YUaqlqK50k
宰相「これ以上、騒ぎになるようなら衛兵に取り押さえさせるぞ!?」

ギャーギャー ギャーギャー

ブルードル「(打ち合わせた通り、宰相が傍らで憎まれ役を買って出てくれているが…そんな易い感情ではない)」

ブルードル「(憤怒…悲哀…喪失…諦め…孤独…希望…絶望……私の語彙力では語りきれない)」

遺族15「ふぇっ…ぇっ…ぇ……いき…できな…」ドクンドクン

遺族16「考えたくない…信じない…そんなはずない…夢…そう、これは悪い夢……」ブツブツ

ブルードル「(たった120名の遺族が向ける感情は万にも及ぶ…。
果てしない怒りと悲しみは紡がれていき…やがて私は民を裏切った王として世に知れ渡るだろう)」

ブルードル「(ならばもう…光だなどと…くだらない)」スクッ

宰相「お前たち!しずま……へ、陛下!?」

遺族17「…立った」ジーッ

遺族18「陛下が…立った!」ジーッ

ブルードル「そなたらの子は取り戻せぬ。西の国から無事に奪い返すだけの力が今の我が軍にはない」

遺族's「あぁ…!?」ビキビキィッ

ブルードル「…よって西の国に深く踏みいるのは危険と判断し、調査も終了。
抗議も中止し、この件に関する活動を全面停止する!」

遺族19「冗談ですよね…?」ヒクヒク

ブルードル「冗談ではない」

遺族20「こ、この…!!」

遺族21「どう責任を取るんだ!?」

宰相「責任だと?貴様、平民の分際で……」

ブルードル「よい!」

宰相「は…!?」

ブルードル「もうよいのだ、宰相…悪を演じるのは」

宰相「陛下…?」

ブルードル「暗闇に佇む者らに強い光を浴びせかけても…目を焦がし、光を失わせるやもしれぬ」

宰相「…お待ちください!何を言うおつもりですか!?」
86: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:37:00 ID:T0csLKu60c
ギャーギャー ギャーギャー

ブルードル「聞け!皆の者!」

宰相「……」

ブルードル「私は決して西の国を許しはしない!」

遺族's「」ピタッ

ブルードル「時を待て!いつの日か必ずや…皆の無念を晴らしてみせよう!!」

遺族21「どの口が言うんだ!?」

ブルードル「…それまで皆に深く刻まれた傷を……我が国が受けた屈辱を…未来永劫、忘れさせぬ為にも城下に拐われた子らの彫像を建てる!!」

宰相「」ビクビクゥッ

遺族's「」ギョギョッ

ブルードル「決して忘れるな!!決して許すな!!決して諦めるな!!
我々は一蓮托生、血の通わぬ悪逆非道な野蛮国に報復を誓いし同士なり!!」

遺族's「お、お、おぉぉぉ…!?」ガクガク

宰相「陛下!!今すぐ撤回なさいませ!?」アセアセ

ブルードル「……」

宰相「陛下ぁっ!!」

ブルードル「…撤回はせん!!」カッ

宰相「(い、いかん!王族の権威が…光が……闇に支配されてしまう…!?)」

ブルードル「そなたらはまさしく…光を失い、闇に囚われておる。
無根拠に諭す救いの言葉で照らしてみせたところで影はいっそう深まるばかりだろう」

ブルードル「しからば闇の中にあればよい。絶望の淵にて希望を見出だすのだ」

宰相「なりません!!なりませんぞ!?」ザッ

ブルードル「私には彼らの意を汲んでやる義務がある」

宰相「お、おやめください!?それだけは…絶対に…!?」

ザワザワ ザワザワ
87: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:39:19 ID:T0csLKu60c
ブルードル「血を分けた愛し子を失う痛みは…私も知るところだ!!」ギリッ

遺族21「」ビクッ

遺族22「そ、そんなの…分かる訳ないじゃない?」カタカタ

遺族23「こ、国王様は…子などおられないでしょう?」ワナワナ

ブルードル「いたとも!最愛の我が子が…私は今も…愛している!!」プルプル

宰相「衛兵!陛下はお疲れのご様子!奥に連れ立って休ませよ!?」

東の衛兵1「はっ!!」

ブルードル「私は疲れてなどいない!!王の身に触れる者あらば断じて許さぬ!!」カッ

東の衛兵's「っ…」タジッ

ブルードル「我が妻ミリアは3度、子を宿し、3人の子らは光を浴びる事なく世の涯へと流れた!!」

ブルードル「第一子の名はサリアドル、第二子の名はヨードル、第三子の名はルクアドル!
性別も分からず王位を継いだかも分からぬが…紛れもなく私とミリアの子だ!!」

遺族's「ひっ…ひっ……」

衛兵's「ま、まことなのか…?」ヒソヒソ

宰相「あ、あぁぁあ……」ヘナヘナ

ヒエエエエエエエエエエエエ!!!

ブルードル「案ずるな!遺族達よ…いや、我が同士よ!!私はお前達を見捨てはせんぞ!!」

遺族's「」パァァ

ブルードル「その日が来るまで復讐の剣を研ぎ澄ませ!!お前達と戦える日を余は楽しみにしておるぞ!?」

ウオオオオオオオオ!! ウオオオオオオオオ!!

バンザーイ!! バンザーイ!!

…………………
88: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:41:26 ID:YUaqlqK50k
政務官「城外に飾られた少年少女の石像は…遺児を祀り偲ぶものだったのか」ワナワナ

ネバル「3回も流産しちゃった…ですか?」ガタガタ

ブルードル「うむ…。もはや妃の身に負担はかけられなかったので…私は子を諦めた」

ミリア「…天に与えられた3人の命を地上へと放ってあげられなかった私の責任ですわ?」

政務官「…で、でしたら別の宮女に役目を代わらせれば?」

ミリア「私もそのように勧めたのですが…」

ブルードル「私は我が儘でね…」

政務官「?」

ブルードル「愛した妻との子でなければ嫌だったのだよ」

政務官「い、嫌だった…!?」

ネバル「かっちょいいです!よっ!王様!?」ヒューヒュー

ブルードル「フホホ!また褒められてしまった?」テレッ

ミリア「ねー?よしよし?私も愛してますよー?」ナデナデ

ブルードル「私もさ…?」ジッ

ミリア「……」ジッ

ブルードル「んーっ…」スッ

ミリア「んーっ…」スッ

宰相「うぉっほん!!」

ブルードル&ミリア「」ビクッ

宰相「お客様の御前ではしたないマネはおよしください!」

ブルードル「す、すまないな?」テレッ

ミリア「……」ポッ

ネバル「ひゅーひゅー!アツアツですー!」

政務官「貴様は少し黙っていろ!」アセアセ

ヒメ「っ…!」ドキドキ
89: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:43:07 ID:T0csLKu60c
政務官「宰相殿は何も言わなかったのですか?」

宰相「国王にその気がないのならどうにもなるまい…」

ブルードル「フホホ!よく言うな?ある時期は毎晩のように我が宮に女をあてがっておいて?」

ミリア「あらあらまぁ?宰相殿も頑張ってらしたのね?」ニコニコ

宰相「そ、それはどうかご内密にと!?」アセアセ

ヒメ「……」

ネバル「そういえばうちの陛下はどうなんです?許嫁とかいるですか?」ヒソヒソ

政務官「…私や大臣ら反王族勢力で固められた頃は王族にあらゆる制限を課していたのでな。
継承の儀に迫るまで何者も近付けぬようにしていたのだ。
その上、陛下自身も人付き合いを嫌っていて深い仲に至った相手は今まで一人もいない…」ヒソヒソ

ネバル「それって…うちの王様もまずいんじゃ…?」ヒソヒソ

政務官「そうだな。まだ小さいからと考えていたが…深刻化する前に対策を講じねばならないかもな…?」ヒソヒソ

ヒメ「…おまえら、なんの話をしてるんだ?」ジロッ

政務官「…いえ」

ネバル「な、なんでもないですー!」アタフタ

ブルードル「フホホ!」

ミリア「」クスクス
90: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:45:34 ID:YUaqlqK50k
ヒメ「…西の国に対する遺恨、陛下と妃様の経緯(※いきさつ)、共に包み隠さず教えてくださり、ありがとうございます。
改めて口に出すのは心苦しいものと思われますが…おかげでこちらも本心から話を進められます」

ブルードル「そうか。話した甲斐があったよ」ニコニコ

ヒメ「私からも改めてお願い申し上げます。養子縁組は断らせてください!」

ブルードル「……」

ヒメ「そちらの事情を考慮しても…やはり明確に断ち切らなければならない選択肢であると見ます!」

ブルードル「聞かせてくれたまえ…」

ヒメ「東の国と王国は隣接地に境があり、問題化した事案や衝突に至った経歴もありません。
もしも国土を繋げるとして弊害は少ないように感じられますが…それでも両国には重大な不安要素があります」

ブルードル「…分かっているとも?」

ヒメ「!」ピクッ

ネバル「へ?なんです?不安要素って?」

政務官「…黙れ。お二方の話に集中しろ」

宰相「……」

ミリア「」ニコニコ

ブルードル「子を生むべきか、だね?」

ヒメ「…はい!」

ネバル「???」
91: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:48:24 ID:YUaqlqK50k
宰相「そんなものは決まっておりましょう」

政務官「うむ…。東の国より妃を娶り、王国の次期継承者とするべきかと」

ヒメ「東の国には王の血が流れていないんだぞ」

宰相「……!」

政務官「……!」

ミリア「……」

ヒメ「万人に愛された偉大な国王の血を絶やし、無関係の新たな血に東の国土は吸収される。
我が国の民は王国の権威を誇りに思い、東の民は母国の権威が落とされたと落胆するだろう」

政務官「…人種差別が生まれると?」

ヒメ「ホビットへの差別を無くす活動がいまいち滞っているのは民の差別意識が残っているからだ。
燻った民意に火種を投じるのは危険だと考えるが?」

政務官「…そうですな」

ブルードル「身を切る覚悟は出来ているよ。東の民にも号外に記してそれとなく悟らせてある?」

ヒメ「…お言葉ですが」

ブルードル「……?」

ヒメ「それは貴方の傲慢に他ならない」

ブルードル「ホ…?」

宰相「傲慢…ですと?」

ヒメ「そうしたところで喜ぶのは今を生きる者達だけですよ?」

ブルードル「今を…?」

宰相「先ほどから傲慢を押し付けているのは貴方の方では?」ジロッ

ヒメ「…なに?」

宰相「これだけの好条件を無償で差し出し、余すことなく全てをさらけ出したというのに…まだごねられるのですか!?」

ヒメ「…申し訳ないが最初から断るつもりでしたので?」

宰相「……!」ブチブチィッ
92: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:53:47 ID:T0csLKu60c
ヒメ「貴殿方の提示する条件はどれも素晴らしく王国を豊かに彩ってくれるでしょう」

ブルードル「私もヒメ君の治める両国の繁栄を期待しておるよ?」

ヒメ「ですが…貴殿方の判断は同時に自国をないがしろにした愚かな選択です!」

宰相「愚かだとぉ!!」ダンッ

ブルードル「宰相…!?」

宰相「こ…の…青二才がぁ…!陛下が…妃様が……我々が…どれほどの想いで納得したと…!?」ギリギリ

ヒメ「重々承知しています。ですが私は納得出来ません」

宰相「なぜだ!これを機にそなたは栄華を掴むがいい!!
我々は悲願の復讐さえ果たせれば…それでいいのだぁ!!」ガァーッ

ネバル「……こ、怖いです」ブルッ

ヒメ「私が国を預かるからには民に復讐などさせません」

宰相「……!?だ、打倒しようと…!?」

ヒメ「言いました。しかし武力による弾圧ではなく…交渉を主として打倒を掲げます!」

宰相「話が違うぞ!?王国めぇ!?」

ヒメ「たとえ今、西の国を武力で滅し、王国・東国が手を取り合って結合したとしても…列国を震わせた怪物、西の国を蹴散らした英雄は私となってしまうでしょう!!」

ヒメ「そうなれば更に旧王国民の自意識は高まり、旧東国民は無下に扱われていく!!
この時代に起きた事は、この時代を生きた者の責任だ!それはしかたない!!
だが陛下が再三に渡って語られた"未来の光"は潰えてしまうだろう!!」

ヒメ「生まれ来る子供たち、その子供たち、孫から曾孫、脈々と受け継がれていく東国の血族!!
その全てに悲惨な未来を約束して得る勝利など…僕に言わせれば、なんの価値もない!?」

宰相「おっ…く!」

ヒメ「一度、戦争をした以上は拡大した国土も手伝って軍備の強化が押し進められるだろう!
なぜなら歴史が王国を勝者と認めてしまったからだ!もう後戻りは出来ない!
そして列国もその驚異を恐れ、軍備強化に動き出す!
第二の終わらない争い開戦の秒読みが始まるんだ!」

ヒメ「だが東国民と王国民の団結はこの時代にしか約束されていない!
よほど上手くやらない限りはいずれ決別の道を辿る!
緊迫感漂う状況にあって内乱の可能性が上がり、国内外の調和も取れなくなっていく!」

ヒメ「そこから先、何年…いや何十年、何百年かも分からない!
この時代が招いた悲劇の枷を未来に託さなければならなくなるんだぞ!?」

ネバル「(陛下って…本当に13歳です?なんか凄すぎて怖くなってきたです…!)」メダパニ
93: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:58:02 ID:YUaqlqK50k
ヒメ「私は間違っていますか?ブルードル陛下?」

ブルードル「一国の王としては非常に間違っておるよ。自ら繁栄を妨げているようなものだ?」

ヒメ「自覚はしています…」

ブルードル「しかし私は…そんな君が大好きだ?」ニコッ

ヒメ「!?」

ブルードル「自国のみに留まらず我が東の国までも思いやってくれる。
その暖かな広い器…王にして王にあらず…君の未来は無限に照らされ、光の渦を生み出すだろう」

宰相「…あ、貴方様のお考えは大仰だ!?たとえそうなれど道を切り開くのが我々、国の役目……」

ミリア「もうよいのではありませんこと?」ニコニコ

ブルードル「そうだな。もうよい」ウンウン

宰相「なっ!?」

ヒメ「……どうか断らせてください」ペコッ

ブルードル「君のような子が欲しかった。つくづく…私は天に愛されていないようだ」

ミリア「毎日、着せ替えして可愛く着飾ってあげたかったのに残念?」ニコニコ

ヒメ「…申し訳ございません」ペコッ

宰相「陛下…まことに…?」

ブルードル「よいのだ。初めから強制する気もない」

宰相「ふぅ…では西の国をどう交渉すると?」

ヒメ「東の国と王国の両国で西の国に対し圧力をかけます」

ブルードル「…圧力を?」

ヒメ「はい。東の国の拉致被害者142名の返還、王国に対する不審な動きについての言及。争点をこの二つに絞って抗議に挑みます」

宰相「なるほど…」
94: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 22:00:33 ID:T0csLKu60c
ヒメ「そして盟が生きていると示した上で平和協定加盟国に西の国の牽制を促し……」ペラペラ

ブルードル「……宰相?」

宰相「はっ!その話に付きましては私が請け負いましょう!議場へ……」

ヒメ「陛下は?」

ブルードル「私が加わっても妙案は出そうにない。今は妃と話し合って新たな後継者探しに専念させていただくよ」

ミリア「力になれなくて申し訳ありません…?」

ヒメ「いえ、あとはお任せください」

ブルードル「フホホ…孫ほど歳の離れた君に託すのは忍びないが…」

ヒメ「お構い無く?最も優先されるのはそちらの事情ですから?」

ブルードル「恩に切るよ。礼は尽くす」

宰相「ではヒメ様、こちらへ案内致します」スタスタ

ヒメ「…リルラ!ネバル!行くぞ?」スタスタ

政務官「はっ!」スタスタ

ネバル「はいです!」スタスタ

スタスタ スタスタ………

ブルードル「……断られてしまったぁ!?」ダキッ

ミリア「そうねぇ。本当に残念でしたわねぇ?よしよし?」ナデナデ

ザワザワ ザワザワ

ブルードル「うおおおん!!ヒメくぅぅん…!!」シクシク

ミリア「家臣の皆様も見てますから?元気を出しましょうねぇ?」ナデナデ
95: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 22:02:44 ID:T0csLKu60c
〜〜〜1週間後〜〜〜

―――南の国(宮殿)―――

顧問官「…御公務、お疲れ様でした。残りはこちらで済ませておきますので陛下は自室でお休みくださいませ」

南の王「毎夜、無理をかけてすまぬな。爺や」

顧問官「いえ…伽も大事な公務にございます」

南の王「ハハハ…なぁ爺や。それももちろん大事なんだが…」

顧問官「はい…?」

南の王「…王国からの文、爺やはどう読む?」

顧問官「…最近の西の動きは怪しい。牽制は正しい判断と言えるでしょうな」

南の王「ハハハ…そうか、そうか」

顧問官「…陛下はどうお考えになられる?」

南の王「あのヒメ国王…まだ幼いが相当なやり手だと聞いている。余も何度かお会いしたが…」

顧問官「儂の目には…そうは見えませんでしたがな」

南の王「うむ…そうだな。彼は思想を熱く語りすぎだ?
あれでは正直者のブルードル陛下をやり込めるのが精々…」クックッ

顧問官「協議の場においても目に余りまする。経験も浅い。
配下の指示に操られる人形の分際で他の国々に正義を諭すなど…」

南の王「そうだろうか?勢い任せで底が浅いの別として…あの歳であそこまで思想を掲げられる熱意は評価に値すると感じたがね?」

顧問官「は…?」
96: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 22:06:05 ID:T0csLKu60c
南の国「それに彼はおそらく先代と違って配下の手を離れているんじゃないかなぁ?」フンフン

顧問官「まさか…?齢13の未熟者に務まりますまい?」

南の王「まだまだ粗削りだが…あれでなかなか末恐ろしいよ?
今、最も注目すべきは"魔性のファルージャ"よりも"王国の姫君"なのかもしれん?」

顧問官「は…!?」

南の王「平和協定加盟国・6国に加え、西の蛮国、更にかつて終わらない争いで領土を奪われ、大陸方々に散った小国がいくつか……」

南の王「どれを取っても用心ならないが…中でも新たな時代を迎え、活発な動きを見せているのは西と王国の二つだ?」

顧問官「…両国の小競り合いが何か大きな問題に繋がるとでも?」

南の王「小競り合いかどうかは…当人の抱える問題の深刻さに左右される?」

顧問官「それほどの問題があの二つの国に?」

南の王「実はまだどの国も口に出してはいないが…2年前の巡礼で教団が演出した奇跡?あれは何か…解せないんだなぁ?」

顧問官「し、しかしあれはタイマによる幻覚と……」

南の王「皆一様に共通の物を魅せられる幻覚症状があるか?」

顧問官「そ、それは…」

南の王「…教団の神官があの巡礼で王国の首都を侵略するよう依頼してきたが…ふっ?一国の王を易々動かそうとは…甘いなぁ?」

顧問官「あの国は王が配下を御しきれず遂には反乱を許してしまった歴史上、最も愚かな国です」

南の王「しかし反乱まで起こす理由があっただろうか?あの国は傀儡政権で十分、成り立った筈だ?」

顧問官「…そこに何か裏があると?」

南の王「西の国の動きも妙だというのも…どこも鉱石財源に狂ってあまり眼に映っていない?
これはもしかすると…もしかするのかなぁ?」

顧問官「何を企んでおいでか?」

南の王「…企んでなどいないよ。考えているだけだ?如何にすれば我が南の王家が得をするか…な?」ニヤリ

顧問官「深入りは禁物かと…」

南の王「ハハハ…下手に動いて目を付けられても厄介だしな?慎重に事を運ばねば?」

顧問官「(隙がなく、抜け目なく…表面上は人格者と評される我が王に秘められた狡猾さは儂の他に知る者はいない)」

南の王「ファルージャかヒメ…どちらに恩を売っておくべきか?」ニヤニヤ

顧問官「(我が南はまだまだ安泰だな…)」
97: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 22:10:09 ID:YUaqlqK50k
―――宮殿(寝室)―――

南の王「さーて…夜の公務に励むとしようかな」ガチャッ

少女「お待ちしておりました」

南の王「(……少女?)」

少女「今宵、陛下の心身をお世話させていただきます。ラウロと申します」オズオズ

南の王「(ふっ?爺やめ…たまには趣向を凝らそうという訳か?)」

少女「衣服をお預かりしますのでお側に寄りまするがよろしいでしょうか?」

南の王「…良いとも?苦しゅうないぞ?」ニコッ

少女「では…失礼します」スッスッ

南の王「……そちは手慣れておるな。前にも呼ばれたか?」ヌギヌギ

少女「いえ…初にございます」サッ

南の王「ふっ…なかなか…いや、悪くない」ジッ

少女「は?」

南の王「ハハハ!」ガバッ

少女「えっ…?」ドサッ

南の王「」ムチュッ レロレロ

少女「んっ…んぅ…んぐぅ!」ジタバタ

南の王「ぷはぁっ…はぁっ…」ゴソゴソ

少女「……」

南の王「ぶっ…!」ウプッ

少女「んふふ…?」ニタァァァ
98: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 22:13:02 ID:YUaqlqK50k
南の王「ごっ…ぼへっ!ぶぇぇああぁぁ……かぁぁあっ…!」ゴボッゴボッ

少女「きったな…」ボチョッ ビチャビチャ

南の王「っ〜〜〜!!」バタッ

少女「ふぅぅ…まさかいきなり押し倒されて強引に口吸いの洗礼を受けるとはねぇ。びっくりしちゃったよ」ムクッ

南の王「あぁぁぁっ…かっ……」ギロッ

少女「そんな目で見られてもねぇ?毒まみれの化け物の舌なんかべちゃべちゃ舐めるからだよ?ばっちぃなぁ?」

南の王「(呼吸が…できない…!?)」パクパク

少女「もうちょっと我慢すれば楽に殺してあげたんだよぉ?恨むなら自分さね?」バッ ベリベリ

パサッ

南の王「(!? ばげ…もの……)」フッ

魔導師「さぁてと…シャルウィン特製の変装道具で姿を眩ませるとするかねぇ…?やっぱり衛兵が一番、怪しまれないかなぁ…?」ゴソゴソ

魔導師「あ、借りたドレスは脱ぎ捨てよ。どうせもう使わないし?」ヌギヌギ

南の王「」ピクッピクッ

魔導師「それにしても…ほんとに毎夜、快楽に興じてたのかねぇ?
君の口吸いさぁ、正直、乱暴でヘタだったよぉ?」ジーッ

魔導師「女王の口付けはもっと優しくてイイところに導いてくれる?
ちょっと中和薬の匂いが濃いけど…んふふふふ!してほしいなぁ?」ボーッ

カツンカツン カツンカツン

魔導師「さてさて、さてさて、さてさてと…次は"東"か。忙しいよねぇ…」カツンカツン
99: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 22:16:16 ID:T0csLKu60c
>>80
リアタイ支援されてしまった!感謝するしかない!
感謝感謝感謝感謝感謝感謝感激!!!

支援ありがとうございますw
100:名無しさん@読者の声:2015/8/25(火) 09:56:08 ID:QUkGXcOYqo
南の王は魔導師の生着替えを見たのかどうか…それが問題だ。見たんならちょっとそこ変われこのペドヤロー!w

CCCC
101: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 20:50:05 ID:o15GMJURy6
〜〜〜数週間後〜〜〜

―――王都(王宮)―――

ヒメ「南の王が暗殺された…?」

政務官「そのようです…」

ヒメ「間違いないのか…?」

政務官「…間違いありません。以前から通じていた南の役人に確認しました」

ヒメ「そうか…。あの方はとても理知的で冷静に物を見れる人だった。
長いお付き合いを出来たらと思っていたが…惜しい人を亡くしたな」

政務官「私も東の国と連携するにあたり、まず南の国との交渉を最優先にと考えておりましたが…。
予定していた協議もしばらくは先伸ばしになるでしょうな…」

ヒメ「…葬儀は?」

政務官「1ヶ月後、南の国にて大々的に行われます。
陛下にもご出席願いますがよろしいでしょうか?」

ヒメ「もちろんだ。で、次期国王は?」

政務官「順当に行けば第一子のラフテン王子が…しかし現在、内部で対立候補との王位争いが激化しているようで…?」

ヒメ「…対立候補だと?」

政務官「ラフテン王子は放蕩無頼の遊び人な上、気性に難があるらしく…王にそぐわないとして第二子のローレン王子を推す勢力があると?」

ヒメ「そのローレンはどんな奴なんだ…?」

政務官「兄のラフテン様とは対照的に落ち着きがあり、文武共に類い稀なる才を備えたお方だとか?」

ヒメ「ふーん…。ならローレンが継承するんじゃないか?」

政務官「そうとも限りませぬな」

ヒメ「? なんでだ?」

政務官「周囲から畏怖されるラフテン王子は宮内において絶大な権力を誇っておられます。
しかし一方、ローレン王子はごく一部の層しか取り込めておりません」

ヒメ「……優秀なのはローレンなんだろ?」

政務官「優秀は優秀…ですが配下を取り纏め、外部者に上手く取り入る社交性は王に備わるべき絶対条件と言っても過言ではございません」

102: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 20:51:29 ID:11qXMK4X9o
ヒメ「…足して2で割ったら良い具合に収まりそうなものだけどな」

政務官「なんにせよ王位を継ぐ者は一名…争いは過酷なものとなりましょう。
しばらく南の国には触れずにおくのが妥当かと思われます」

ヒメ「暗殺を仕組んだ黒幕は分かってるのか?」

政務官「判明しておりません…。夜伽を狙って暗殺を企てたとの事ですので…」

ヒメ「ふ、ふーん…?よ、よとぎの…?」カァァ

政務官「」ハッ

ヒメ「べ、別にいい…。続けろ?」モジモジ

政務官「は、はっ…おそらく王宮内の人間の仕業ではないかと疑われているようです?」アセアセ

ヒメ「そ、そうか…。大変だな?」モジモジ

政務官「おほんっ…そ、それはともかくとして非常にまずい事態に陥りましたな?」

ヒメ「そうだな…。北の国王辺りを説得してみるしかないか。
あの方は卑しさが前面に出てて苦手だったけど…この際、贅沢は言ってられないしな」

政務官「そうですな。ブルードル様にもそのように……」

バァンッ!

ヒメ「」ビクッ

政務官「何事だ…!?」
103: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 20:54:41 ID:11qXMK4X9o
ネバル「た、大変!大変です!陛下!リルラ様!!」ハァッハァッ

ヒメ「ど、どうした?ネバル…そんなに慌てて?」

政務官「王宮内で無闇に騒ぎ立てるとは何事か!?」

ネバル「す、すみませんです!でも…どうしても…報告しなきゃ…」ゼェゼェ

ヒメ「何かあったのか…?」

ネバル「東の国の…ブルードル国王が…病死したと!?」

ヒメ「えっ…!?」ピクッ

政務官「な、なん…だ…なんだとぉぉおおお!!?」ガタッ

ネバル「ふ、二日前に…亡くなって…今日、訃報の知らせが…!」

政務官「そ、そんな…バカな…!?」

ヒメ「ブルードル陛下が…死んだ…!?」ピシィッ

ネバル「さ、宰相さんが…すぐ東の国に来てほしいと!?」

政務官「わ、分かった!今すぐ出発するぞ!近衛を召集しろ!」

ネバル「は、はいです!」ダッ

ヒメ「……」ズーン

政務官「陛下!予定はネバルに整理させますので出立の準備を!?」

ヒメ「」ボーッ

政務官「くっ…無礼とは存じますが一刻の猶予もございませぬゆえ!?」ガッ

ヒメ「はっ…?」グンッ

政務官「うっ……くく…ば、馬車まで私がお連れします…!」ヨロヨロ

ヒメ「か、抱えるな!なにするんだ!おい!?」アタフタ
104: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 21:00:41 ID:o15GMJURy6
―――西の国(魔導研究所)―――

魔導師「毒蛇の牙を砕いて毒虫を磨り潰した粉に混ぜ混ぜ…そこに毒草の絞り汁を数滴たらして、と…仕上げにココアとお砂糖を加えて出来上がり…」ジャジャンッ

参謀「なぜココアと砂糖を…?」

魔導師「ん?普通に飲んだらまずくて吐き出しちゃうからねぇ?ココアとお砂糖があれば完璧さ?」

参謀「の、飲むのですか…?」

魔導師「一杯どう?」スッ

参謀「結構です…」

魔導師「あ、そう…んぐっんぐっ…」ゴクゴク

参謀「……」

魔導師「おんえっ…げふっ…うぇっ…えほっ…!」ビタビタ

参謀「(結局吐いた…)」

魔導師「ふぅ…イイね。悪くない出来だ。で、なんか用?」クルッ

参謀「…話が違いますね。パカラゥロ殿?」

魔導師「…なにが?」カランッ

参謀「僕は病死扱いでとお願いしたのですが?」

魔導師「なってないのかい?」クルクル

参謀「東の国は予定通りですが南の国王は暗殺と触れられています」

魔導師「あ、そう。まぁ…アレはね、自業自得だから」トプトプ

参謀「……」ギロッ

魔導師「おっかないなぁ…?自分はやることやったじゃないの?」ゴリゴリ

参謀「まぁいいでしょう…。南の国ならどうにでもなりますしね」プイッ

魔導師「じゃあ帰ってくれるかい?新しい魔溶液の研究に没頭したいんだよねぇ?」プチップチッ

参謀「(東国は病死で済んだが…さて、どう出るか。万一にもこちらの計画を悟られる心配はないと思いたいが…)」

魔導師「(…いつになったら帰ってくれるのかねぇ。ゆっくり研究したいんだけど…)」ジーッ
105: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 21:13:19 ID:11qXMK4X9o
―――西の国(王宮)―――

側近3「東の国、王国が団結し、陛下に当てた抗議文が届きました」

ファルージャ「なんの抗議かえ?」

側近3「東の国から拉致した民の返還を求めるとの内容です。先代の皇帝が黒魔術の研究に使う為、拐った子供らの事を言及しているのでしょう…」

ファルージャ「フゥン…」ビリッ

バリバリッ パラパラ

側近3「な、何をなさいますか!?」アセアセ

ファルージャ「床が散らかっておるぞ?」

側近3「は…!?」

ファルージャ「さっさと塵を拾え?目障りじゃ?」

側近3「た、只今…!しかしよいのですか?」スッスッ

ファルージャ「なにが?」

側近3「なんらかの返答をせねばならないのでは…?」

ファルージャ「このようなくだらぬ文に宛てて返す為、妾に筆を持てと申すか?」

側近3「め、滅相もございません!しかし放置という訳には…?」

ファルージャ「可愛い配下共が勝手にやってくれるじゃろうて…?」ゴロンッ ポフッ

側近3「……」ポカーン

ファルージャ「あぁ、そうじゃ。側近よ、今すぐホビットの雌を集め、その血を搾取せよ?」

側近3「は、はぁ…なにをなさるので?」

ファルージャ「啜るに決まっておろう?長命なるホビットの血は若さの源よ?」

側近3「だ、誰がそのような出任せを!?」

ファルージャ「…妾の勘」

側近3「勘!?」

ファルージャ「今宵の食事は全てホビットの血を浸して食す…。速やかに用意せい?」

側近3「か、かしこまりました…」オロオロ
106: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 21:16:08 ID:o15GMJURy6
〜〜〜2週間後〜〜〜

―――東の国―――

宰相「我が主の通夜にご参列くださり、まことに感謝申し上げます」ペコリ

ヒメ「いえ…此度の不幸、お悔やみ申し上げます」ボソッ

政務官「申し訳ない…。陛下もまだ受け止めきれていない部分がありましてな…」

宰相「いえ、ヒメ国王にそれほどまで偲んでいただけて我が主も、さぞ喜ばしく思われるでしょう…」

ヒメ「…もう受け止めてます。ブルードル陛下の亡骸をじかに看取らせていただきましたから」

政務官「……ブルードル陛下を襲った病とはいかなる物だったのですか?」

宰相「皆目見当も付きません…。宮廷医術師団でさえも原因が全く分からぬと…」

政務官「…?」

宰相「身体中に醜いイボのような物が浮かび、肌は真紫に変色しておりました。何より異質であったのは…口元が……」

政務官「口元?」

宰相「はい…。舌が強い力で握られたようにしぼみ、口回りが最も深い紫に変色しておったのです」

政務官「新種の病か…。ブルードル陛下の御遺体を埋葬せずに運び出したのも合点がいく?」

宰相「…えぇ、病魔について探る為、医術師団の手によって隅々まで調べさせる予定です」

政務官「(一国の王が棺に眠る事なく解体されるか…。
病が流行しない内に対処法を発見するのが先決と考えたのだろうな)」

ヒメ「(あまりにも無残だ。宰相殿やミリア王妃様も浮かばれない…)」キュッ

宰相「あれは亡くなる前日の夜でした…。陛下が庭園に飾られた彫像を見て回っていると…」

ヒメ「彫像を?」

宰相「えぇ、趣味が高じて毎夜、手入れを日課としておられました…」
107: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 21:16:29 ID:11qXMK4X9o
政務官「その時に何か症状が出たと?」

宰相「…はい。突然、周囲に付き従っていた衛兵共々、倒れてしまったのです…」

政務官「誰かその様子を見ていた人はいたのですか?」

宰相「なかなか戻らない陛下を不審に思ったミリア王妃が4階の小窓から様子を伺ったところ横たわる陛下達の姿を発見したのです」

政務官「暗がりの中、よく見えましたな?」

宰相「邸内には隈無く灯りを設置してありますので…」

ヒメ「いい加減にしろ。リルラ!おまえは探偵か!?」

政務官「し、失礼しました。決して変な意味では?」アセアセ

宰相「承知しております。不意に起こった状況ですから詳細を掴もうとするのは当然ですよ」
108: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 21:21:17 ID:11qXMK4X9o
宰相「…その後、意識不明の重体に陥り、手当ての甲斐もなく、一晩で息を引き取ってしまわれた…」ズーン

政務官「……」

宰相「…無念だったろうと思います。悔しかったでしょうとも…。
長きに渡って堪え忍び、ようやく拐われた民とその遺族に報いようという時に…!」ググッ

ヒメ「(ブルードル陛下…)」

『大国を担う若き国王!実に夢のある話だ!』

『子供とは尊く素晴らしい!まだ見ぬ未来に輝きをもたらすのは次世代を生きる子供たちに他ならない!

『私は世界中の子供に愛を捧ぐ伝道師でありたいと願っている!フホホホホッ!!』

『君のような子が欲しかった。つくづく…私は天に愛されていないようだ』

ヒメ「(……)」

宰相「ヒメ国王!…勝手を承知で申し上げます!」

ヒメ「分かっています…」コクッ

宰相「は…!?」

ヒメ「…ブルードル陛下の無念は僕が晴らします」キッ

宰相「そ、そうおっしゃってくださるか…!?」バッ

政務官「陛下……」
109: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 21:22:51 ID:11qXMK4X9o
ヒメ「…微力ながら亡きブルードル陛下の使命に報わせてください」

宰相「微力だなどと…とんでもない?私も全力で……」

ミリア「いけませんわよ、宰相殿?この国の問題を押し付けては?」カツンカツン

宰相「お、王妃様…慰霊の儀に移られていたのでは!?」バッ

ミリア「あの人のいない棺のそばに立っていてもしかたありませんもの?」ニコニコ

宰相「ぬ、抜け出してきたのですか!?」

ミリア「今日は来てくれてありがとう?国王に代わってお礼申し上げます…?」ペコリ

ヒメ「…ミリア王妃はそれでいいのですか!」

ミリア「あら、どうして?」ニコニコ

ヒメ「ど、どうしてって…!」

ミリア「…人はいずれ亡くなる。分かってた事でしょう?」ニコニコ

ヒメ「そ、そんな簡単に割り切れるものだったんですか!?貴女とブルードル陛下は……」

ミリア「……」フッ

ヒメ「」ハッ

ミリア「そうですね…。思えば色々ありましたよ?ありすぎて思い出せないくらい?」ニコニコ

ヒメ「(化粧が僅かに滲んでる…。よく見たら目元も腫れて……)」ジーッ

ミリア「割り切れるかと問われたら、そうじゃないんでしょうけれど…私だけではないですものね?」

宰相「は…?」

ミリア「ご参列くださった皆様の表情はどれも目を引くものでしたわ…?
追悼式でお別れの花を握り締めて咽び泣く民の列…。
泣きじゃくりながら、それでも頑張って声高らかに斉唱する聖歌隊の子供たち……」

ミリア「愛されていたのですね。あの人は……あんなに大勢の方々に惜しまれていたんですもの?」ニコニコ

ヒメ「……」

ミリア「…ねぇ、ヒメくん…いえ、ヒメ国王。貴方にお願いがございますの」

ヒメ「なんでしょうか…?」

ミリア「…東の国の問題から手を退いていただけませんこと?」

政務官&宰相「!?」ギョギョッ
110: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 21:23:50 ID:11qXMK4X9o
ヒメ「……」

ミリア「貴方はまだ子供ですもの…。
陛下は共に戦う事を望んでおられましたけれど無理する必要はありませんわ?」ニコニコ

ヒメ「…そうは参りません」

ミリア「……?」

ヒメ「…僕の身を案じてくださる気持ちはありがたく受け止めます。
ですが西の策略によって孤立させられた王国に無償で手を差し伸べてくださったブルードル陛下には…少なからず恩を感じています」

ミリア「…そうではないわ?西の国に立ち向かう手段として王国に取り入ったとも考えられるでしょう?」

ヒメ「でしたらなおさらです!」

ミリア「え?」

ヒメ「こちらも初めは西の国を退ける打開策として東の国との親善交流に臨みました。理由は変わりません!」

ミリア「……」

ヒメ「それに…子供を語るブルードル陛下のお顔はすごく輝いてました。
僕自身、あの方の愛に溢れたお人柄に憧れのような感情を抱いていたんです…」

ミリア「…憧れ?」

ヒメ「あの方が父であったなら、どれほどの愛情を知ることが出来ただろうかと…」

ミリア「……!」

ヒメ「せっかくのご厚意ですが…申し訳ありません」ペコッ

ミリア「…戻れなくなりますわよ?」

ヒメ「最初から、そのつもりです…!」

ミリア「分かりました…。では貴方に一つ告げねばなりません」

ヒメ「……?」
111: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 21:24:27 ID:o15GMJURy6
政務官「紫色のローブを纏った男が立ち去っていくのを見た…?」

ミリア「はい。上から庭園の様子を窺った時なのですけれど陛下が家臣の方々と倒れていて…。
そのすぐそばに見知らぬ者が立っていて…しばらく倒れた皆を眺めた後、闇に紛れて姿を消しましたの」

宰相「な、なぜそれを早く申されなかったのです!?」

ミリア「もし話したら直情的な貴方の事…ヒメくんに打ち明けてしまうでしょう?」

宰相「ぐっ…!?」

政務官「となると…これは南の国と同様に暗殺された可能性が高いですな?」

ヒメ「……!」プルプル

政務官「陛下…?」

ヒメ「その者は…仮面をしていましたか?」

ミリア「? お顔は見えませんでしたわ?ちらと風貌を認識した程度です?」

宰相「な、何か知っているのですか!?」

ヒメ「……」

宰相「お、王妃様もよく思い出してください!?僅かでも手掛かりになるのでしたら…!?」

ミリア「……そういえば少し不思議な行動を取っていましたわね。陛下の口元に手を添えていたような…?」

ヒメ「や…やっぱりそうか!」

ミリア「へ?」

宰相「やっぱりとは…どういう意味で!?」

ヒメ「ブルードル陛下を手に掛けたのは西の国の手先です!」

政務官「は…!?」

ヒメ「カロルが前に話してくれたんだ。癒しの力を狙う謎の男に襲われたって…」ボソッ

政務官「そ、それが此度の暗殺者であると…?」

ヒメ「間違いない…。風貌も手口もまさしく当てはまる!」ギリッ

宰相「西の国が陛下の死を仕組んだ…だと!」ブチィッ

ミリア「……」
112: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 21:25:50 ID:o15GMJURy6
宰相「もはや許さん…!子供らを拐うだけでは飽きたらず、陛下をその手に掛けるとは…!!」ググッ

政務官「さ、宰相殿…」

宰相「王妃様!兵を起こす許可を!?」

ミリア「なりません」

宰相「は…!?」

ミリア「陛下の死から間もないのですよ?」

宰相「だからこそです!今であれば民も兵も皆、陛下の仇を討つ為に立ち上がりましょうぞ!?」

ミリア「」チラッ

ヒメ「宰相殿、まだその時ではありません」

宰相「…なぜです!?」

ヒメ「時間をください。南の国に行き、今の話を伝えて参ります」

宰相「南の国に…!?」

ヒメ「南の国でも同様の事態が起こっています。
事実を確認し、味方に付くよう交渉してきます」

宰相「し、しかし南の国は今まさに王位争いの真っ只中では…!?」

ヒメ「少々厄介ですが…なんとかしてみせます!」

宰相「ひ、ヒメ国王…!?」

ヒメ「…今すぐ出発するぞ!」クルッ

政務官「ははっ!」

ミリア「…くれぐれも無理をしてはいけませんよ?」

ヒメ「…お気遣い痛み入ります!」スタスタ

政務官「では…また後程」スタスタ

宰相「吉報をお待ちしております!」

ミリア「(ヒメくん……)」
113: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 21:27:18 ID:11qXMK4X9o
―――東の国(国境地帯)―――

ガガガッ ガガガッ

ガランガラン ガランガラン

馭者1「この先、揺れが強いのでご注意ください!」ピシンッ

ヒメ「あぁ、構わない!全力で駈れ!」

政務官「またしても…奴らに出し抜かれましたな」

ヒメ「……」

政務官「しかし奴らは決定的な失敗を犯しました…。暗殺の黒幕さえ割れれば南の国の助けを借りられるでしょう」

ヒメ「…なぁリルラ」

政務官「はっ!」

ヒメ「前に僕は…おまえ達に戦争をしないと宣言した」

政務官「確かに申されましたな?」

ヒメ「…甘かったよな」

政務官「は…?」

ヒメ「争いを回避したくても…避けられない状況は必ず来る。
それを間延びさせていたら…その分、多くの危機が迫るんだ」

政務官「……」

ヒメ「交渉、交渉って…正直、そんなのが通じる相手じゃないって分かってた…。
痺れを切らして何か仕掛けてくるだろうとも予測してた…。だけど……」

政務官「陛下……」

ヒメ「それが実際に…自分じゃない誰かの身に起きるなんて…そうそうないって軽く考えてたんだ」ブルッ
114: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 21:27:51 ID:11qXMK4X9o
政務官「…責任に感じる事はございません」

ヒメ「僕が対応を遅らせたから…じゃなかったら…ブルードル陛下を…死なせずに済んだかもしれない…!」プルプル

政務官「…致し方ありません。貴方は間違っていませんでしたよ」

ヒメ「ミリア王妃もっ…いちばんっ…ツラかったはずなのに…ぼくを…思いやってくれた…!!」ポロッ

政務官「……」

ヒメ「ぼくは……いつもそうだ…!いつだって独りよがりで…!」ポロポロ

政務官「(…これまでの毅然として振る舞うサマから見落としがちだが、やはりまだ幼い陛下には酷だろうな)」

ヒメ「こんどは…絶対に守ってみせる…!親友も…民も…残された人々を……」グシグシ

政務官「……?」

ヒメ「戦ってやる…!死力を尽くして…西の国を倒すぞ!リルラ!!」カッ

政務官「!?」

ヒメ「ついて…きてくれるか…?」グシッ

政務官「フッ…」

ヒメ「……」ジーッ

政務官「無論です!共に戦いましょうぞ!!」

ヒメ「……!」パァァ
115: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/25(火) 21:38:50 ID:yaXDMG2LZo
>>100
魔導師(パカラゥロ)は黒魔術(※毒薬)の研究で改造されたとある国の少女
所々皮膚が破れた水色の肌、目は黒目の無いクリーム色
全身の体毛が無く骨張ったガリガリの身体に血管が浮き出ている
魔溶液(※毒)の影響で成長しない身体なのでギリギリ幼女という設定ですが…死と引き換えに生着替えを見たいと思いますか?w

支援ありがとうございましたw
116:名無しさん@読者の声:2015/8/25(火) 22:36:05 ID:TLxzuGRtio
うわああブルードル陛下があああ!!!(号泣)

しかし盛り上がってきましたね、全力で支援!
117:爆発的に投下します! ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:09:39 ID:yaXDMG2LZo
〜〜〜数日後〜〜〜

―――南の国―――

南の王子1「これはこれは可愛らしいお客様だ?王国の雛鳥様がわざわざ我が国にどういったご用件で?」

ヒメ「……」

政務官「ひ、雛鳥だと…!?」イラッ

南の衛兵's「」ザッ

政務官「っ…!?」タジッ

南の王子1「お〜?何か言いたげではないか?親鳥クン?」ニヤッ

政務官「(う、噂には聞いていたが…ここまで歪んだ性格の持ち主とは…!?)」ギリッ

顧問官「お戯れもほどほどになさいませ。ラフテン王子」

南の王子1(ラフテン)「あ…?」ギョロッ

顧問官「弟君を見習われてはいかがか?」チラッ

ラフテン「ふん…ぃやあ、ローレンくん?今朝から君の声を聴いてないが喉でもイカれちまったのかい?」ニヤニヤ

南の王子2(ローレン)「……」

ラフテン「カッ…これだから下級官族の出は?愛想というものがないのかね?仏頂面で腕組みなんかして何様のつもりだい?」ボフッ

顧問官「ラフテン王子の失言、南国主席顧問官である儂が代わってお詫びを…」ペコッ

ヒメ「いえ…」

政務官「(ロクに教育も出来てないな!恥知らずめ…!)」ギロッ


ラフテン「で?なんの用だね?我々は明日に控えた現国王の葬儀、そして王位継承の儀に向けて忙しいのだが?」

政務官「王位継承…!?」

ヒメ「…世継ぎを事前に決めておられたのですか?」

顧問官「陛下自身は指定しておりませぬ…。しかし……」

ローレン「王位継承の資格は長男であること…」ボソッ

ラフテン「そう!そうだよ、ローレンくん?よく分かってるじゃないかぁ!」パァァ

ローレン「どうぞお好きになさいませ。俺は兄上ほど王の座に興味を示してはおらん…」
118: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:10:49 ID:yaXDMG2LZo
政務官「なぜ長男のみが…?資質を見定める過程などはないのですか…?」

顧問官「詮索はおやめください」ギロッ

政務官「も、申し訳ございません」

ラフテン「我が国の伝統よ?」ニヤニヤ

政務官「伝統…?」

顧問官「王子!!」

ラフテン「よいではないか?話したところでなんになる?」ニヤニヤ

顧問官「……!なりませぬぞ!
他所の人間に軽はずみな言動はせぬよう申し上げたはず!?」

ラフテン「それは貴様の失態ではないか、爺や?」ニヤニヤ

顧問官「なっ…!?」

ラフテン「軽はずみに話されたくなくば何故、この雛鳥の謁見を許した?」ニヤニヤ

政務官「(ま、またも我が王を侮辱するか…!?)」ググッ

ヒメ「リルラ…頭を冷やせ」ボソッ

政務官「」ビクッ

ヒメ「この程度で熱くなるな…。おまえらしくもない?」ジッ

政務官「はっ…!申し訳ございません…!」
119: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:11:47 ID:tkZwUH.J0s
ラフテン「簡潔に言えば競わせてるのだよ?王子同士をな?」

ヒメ「競わせるとはどのように?」

ラフテン「長男の座を勝ち取った者だけが王座に腰を据える…。簡単な仕組みよ?」

政務官「ま、まさか…?」ブルッ

ラフテン「父上は生前、実に64人の子を産ませた…?それぞれ収まる腹は違うがな?」

ヒメ「椅子取り競争…ですか?」

ラフテン「そう!そう!そう!それだよ、雛鳥くん!?理解が早いじゃないかぁ!?」パァァ

ヒメ「お褒めにあずかり光栄です」

ラフテン「そうだよ?まさしく椅子取り競争だ?王の血を引く者が玉座を狙って長男の命に食らいつく!」

ラフテン「長男は迫り来る刺客、張り巡らされた罠を掻い潜り、野望を抱いた弟共を徹底的に滅ぼしていくのだ!」

ラフテン「アァ〜…あれはいつだったろうか!初めて兄上の背に定めて弓を引き絞ったのは…そう!7歳の時だ!?」アヘアヘ

ラフテン「まだ王位争いなど自覚せぬ母親任せの暢気なお坊っちゃんが満面の笑みで狩猟を楽しむ、その背後で私は更に輝かしい笑みを湛えて矢を放ってやった!」ニヤァァァ

政務官「」ゾクゾク

ラフテン「泣き叫び、悶え苦しみ、爽やかな笑みが無様な泣きっ面へと変貌するサマはただただ笑いを誘ったよ?
その場にいた母親、付き人共もまとめて配下に殺害させた!
転げ回る兄上を見下ろした時は私こそが勝者なのだと心から胸躍ったなぁ!?」アヘアヘ

政務官「(聞くに耐えない…!この男…いや、この国の異常性は西の国に匹敵する…!)」

ラフテン「低俗な臣下の中には私を蔑む声も聞こえる?」

ラフテン「が…私は残酷ではない。無慈悲でもない…。むしろ冷静で思慮深い?」

ラフテン「なぜなら幼き頃より既に己の成すべき使命を理解していたのだから?
つまり私は誰よりも聡く、王となる才を秘めていたのさ!」カッ

ヒメ「……」
120: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:12:25 ID:tkZwUH.J0s
ラフテン「ここに来るまで32年…長いもんだ?数名の兄上を囮に残し、可愛い弟共を密かに殺して回るのは楽しくてたまらなかったよ?」ニヤァァァ

ラフテン「各専属の調理人、毒味役を買収し、王子の口にする料理を劇薬まみれにするなど日常茶飯事…。
まだ幼い赤子を何匹も拐い、城の屋上から放り投げてやったのも懐かしい?」

ラフテン「親しいフリをして話があると持ち掛け、兄上共の仕業に見せかけて騙し討ちもしたか?
ベーベー鼻水垂らして泣きわめく弟共の必死な命乞いを遮って振りかざす刃は最高に切れが良かったよ?」

ラフテン「精神的に貶めて自殺に追いやった者もいれば、女をあてがって殺させたりもした…?」

ラフテン「アァ〜そうそう!弟を麻薬浸けにして他の弟に同士討ちさせた時の城内の騒乱っぷりと言ったら……」

顧問官「王子!!」

ラフテン「……?」

顧問官「……!」

ラフテン「カッ…思い出を語っただけではないか?なぁ、ローレンくん?」

ローレン「……」

ラフテン「悔しかろう?明日の朝までに私を殺さねば貴様は全てを失うのだから?」ニヤニヤ

ローレン「興味がないと申しましたが…」

ラフテン「カッ…澄ました顔の裏に醜悪な野心が覗いておるわ?」ギョロッ

ローレン「……」

ラフテン「私が王となった暁には貴様を後押しする愚かな臣下共々皆殺しにしてくれようぞ!なぁ、爺や?」ニヤニヤ

顧問官「ぐっ…!」
121: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:14:24 ID:yaXDMG2LZo
ヒメ「…ラフテン王子」

ラフテン「ん?」

ヒメ「貴方の考える王とは何か聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」

ラフテン「王のなんたるか…?」

ヒメ「はい。貴方はどういった王になりたいのですか?」

ラフテン「なぜそんな事が気になるのか理解に苦しむが…面白い問いだ?」ニヤァァァ

ヒメ「……」

ラフテン「私の思う王とは偉大で!高潔で!誰もが平伏す圧倒的な存在感を放ち、一声で全てを思うままに動かせる!」

ラフテン「謂わば全知全能の神!私の描く王とは下々の民を支配し、天高く君臨する神の化身である!!」

政務官「(な、なんと幼稚な…!?)」

顧問官「……」

ヒメ「分かりました…。ではローレン王子は?」

ローレン「」ピクッ

ラフテン「お〜…!?王の座を降りるとぬかす弱者に聞く必要があるのかね…!?」ビキィッ

ヒメ「どちらが王となるかは明日になるまで分かりません」

ラフテン「言うねぇ〜…!?雛鳥クン…!?」ビキビキィッ
122: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:14:47 ID:tkZwUH.J0s
ヒメ「お聞かせ願えますか?ローレン王子?」

ローレン「先ほど話した通りだ…。俺は王になどなりたくない」

ヒメ「では見解で構いません。貴方にとってお父君はどういう存在でしたか?」

ローレン「…一言で言えば狂ってる。我が子を殺し合わせる為に宮廷の女共を無差別に孕ませ、我関せずとばかりに淡々と役目をまっとうしていたのだから」

ラフテン「これだから下級官族の坊っちゃんは…?
伝統あるしきたりに難を示すなど愚の極みだよ?」シラー

ローレン「…下級官族の母に宿された。それが唯一の幸と言えるか」

ラフテン「あ…?」

ローレン「兄上らが謀略と殺戮の渦中にあった中で力を持たぬ家系であった俺は身を隠して学ぶ時間を貰えた」

ラフテン「何をだ…?」

ローレン「王などという下らぬ地位に踊らされた醜い馬鹿連中を相手にするよりも…己を高める方がよほど有意義であるとな?」

ラフテン「アァ〜…!?」ブチィッ

ローレン「どうぞ王座を占領してくれ?何も持たぬ兄上にこそ偽りの冠が相応しい?」

ラフテン「君にユーモアの才能があったとは意外だよ…!笑わせてくれるじゃないか!?」ガタッ

顧問官「落ち着かれよ!慰問に訪れて下さった客人を前に言い合いなど見苦しい!」

ラフテン「ッ…!」ドカッ
123: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:17:44 ID:tkZwUH.J0s
ヒメ「お二方の思う王とは何か…よく分かりました。お答えくださり、ありがとうございます」

ラフテン「で、つまらぬ雑談もほどほどに…貴様はなんの目的があって我々への謁見を求めた?」ギョロッ

ヒメ「…ラフテン王子、ローレン王子、共に関わる重大な事実をお伝えに参りました」

ラフテン「ほぉ〜う?」ニヤッ

ローレン「……?」

顧問官「その事実とは…?」

ヒメ「…此度の暗殺騒動、裏で絵を描いていた首謀者の正体を掴みました」

ローレン「」ピクッ

ラフテン「……?」

顧問官「なんだとぉ!?」

政務官「我々は東の国に赴き、ほぼ同時期に起こった国王の不審死について真相を突き止め、全容を理解しております。
この度、慰問といった形で南の国に訪れてはおりますが…その目的は真実をありのままに話し、そちらの対応をお聞かせ願えたらといった次第です」

顧問官「それが本当だとして…なぜ東国と南国で起きた騒動が同様の物だと言える?」

ヒメ「…遺体の口元、もしくは口内に異変はありませんでしたか?」

顧問官「……!?」

ヒメ「あったんですね?」
124: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:18:08 ID:tkZwUH.J0s
顧問官「なぜ無関係の貴方がそのような予測を立てられる…?」

ヒメ「その暗殺者は一度、我が国にも侵入していますので…」

顧問官「…よもや国王殿の放った刺客ではございますまいな?」ギロッ

ヒメ「だとしたらわざわざ自ら危険を犯してまで敵地に足を踏み入れる意味がありますか?」

顧問官「…我々には計り得ぬ企みをお持ちやもしれませぬ」

政務官「聞き捨てなりませんな?」ギロッ

近衛兵's「」ザザッ

顧問官「…なんじゃい?」ギロッ

南の衛兵's「」ザザッ

ヒメ「おいっ…」

ラフテン「ハハハハハハハ!!!」ゲラゲラ

ザワッ

政務官「は…?」ポカーン

顧問官「王子…!?」

ラフテン「面白い!面白い!雛鳥クン!君は素晴らしいよ!?」ニヤニヤ

ヒメ「…どうも」

ラフテン「鬼が出るか蛇が出るか…事の真相とやらを聞こうじゃないか?」ニヤニヤ

ヒメ「…ではお話させていただきます」
125: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:20:17 ID:yaXDMG2LZo
顧問官「西の国が…一連の事件を仕組んだだと?」

ラフテン「魔性のファルージャかぁ…」ニヤッ

ローレン「……」

ヒメ「勘の良い皆様方であれば…既に王国と西国の間に亀裂が生じていることも察しておられるでしょう?」

ラフテン「君も狙われたと言うのかい?」

ヒメ「いえ、狙われたのは僕ではありません」

ラフテン「他に誰がいる?」

ヒメ「救い主をご存知ですか?」

ラフテン「知っているとも?王国滅亡の危機とまで囁かれた教団による大規模な反乱…あれを治めた功労者である偉大なホビットであろう?」ニヤニヤ

顧問官「もしや…?」

政務官「狙われたのは救い主です」

顧問官「……!?」

ラフテン「分かる。分かるなぁ〜?ファルージャ女王はやはり私と馬が合いそうだ?」

ヒメ「ラフテン王子も救い主に興味がおありですか…?」

ラフテン「あぁ、実は個人的に収集していてね。美しく装飾してやったホビット共を腐らせぬよう保管しているのだ?」

ヒメ「……」

ラフテン「噂に聞くが救い主は絶世の美男子であるそうだねぇ〜?そこんとこどうなんだい?」ニヤァァァ

ヒメ「さぁ…審美眼は人それぞれですから」

ラフテン「過去、親類縁者に至るまで八つ裂きにし、奪い尽くしてやった王子共の豪奢な飾りが似合うだろうか…?」ニヤニヤ

ヒメ「どうでしょうね」サラリ

ラフテン「ファルージャ女王は美に妥協がないと言うだけあって凄まじい色香をお持ちらしい…?
救い主とファルージャ…なんと美しく羨ましい組み合わせか?
そこに是非、私も交えていただきたいものだ?」ニヤニヤ

ヒメ「救い主は現在、行方不明です。所在は僕でさえ分かっておりません」

ラフテン「おためごかしは聞こえないよ?雛鳥クン?」

ヒメ「存じ上げない事柄についてはお答えしかねます」

ラフテン「…カッ!つまらない?」ドカッ
126: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:21:39 ID:yaXDMG2LZo
顧問官「今の話が真実であるとするならば…我々も相応の対策を講じねばなりますまい」

ラフテン「父上の仇か…。と言っても王座を狙う私にとっては都合が良い?」

顧問官「なっ…!?」カッ

ラフテン「もちろん冗談だとも?本気にするなよ?」ニヤニヤ

顧問官「非常識な発言は控えなされ!」

ラフテン「やかましい爺やだ…?で、それを聞かせて君たちは何を望む?」

ヒメ「王国、東国と盟を結び、連合軍を名乗っていただきたい」

ラフテン「はぁ…?」

顧問官「連合軍だと…!?」

ヒメ「これ以上、平和の名の下にある6国を西国の策略に溺れさせる訳には参りません。3国で武力を掲げ、西国に警告を促すのです!」

ラフテン「警告?」

ヒメ「各国、それぞれの要求に応じなくば…武力行使を開始すると告げます!」

顧問官「要求とは…?」

ヒメ「我が王国からは一切手を退いてもらい、東国から拐った民を返還させます」

顧問官「我が国はどうする…!?王を殺されたとなれば…報復は欠かせんぞ!?」

ヒメ「…しかしラフテン王子もローレン王子もそれは望まれていない」

ラフテン「いかにも?」

ローレン「……」

顧問官「汚名を着たままどう落とし処を着けろと!?」

ヒメ「…西国の領地を一部没収といった案はいかがでしょう?」

ラフテン「…どこを?」

ヒメ「西の鉱石財源です」

ラフテン「……!」

顧問官「……!?」

ローレン「……」

政務官「(ば、バカな…!そんな要求…まかり通る訳がない!?)」
127:スライム:2015/8/26(水) 22:22:16 ID:yaXDMG2LZo
顧問官「せめて現実的な意見を出していただこう。ヒメ国王…!」ギリッ

ヒメ「現実的ではないと?」

顧問官「そのような馬鹿げた要求を呑む国などあるかっ!?」ダンッ

政務官「(至極真っ当な意見だ…!)」

ラフテン「そう興奮するなよ。爺や?」

顧問官「これが怒鳴らずにいられるかぁっ!?」

ラフテン「ここまでの経緯はあくまでも雛鳥クンの推測…証拠も何もない空論だよ?」

顧問官「そ、それはそうじゃが…!」

ラフテン「ところで爺や、何か忘れてないかい?」

顧問官「は…?」

ラフテン「誰に口を聞いてるか分かってんのか?俺を敬えよ?」ギョロッ

顧問官「」ビクッ

ザワザワ ザワザワ

顧問官「も、申し訳ございませぬ…」ペコッ

ラフテン「よかろう?私は心が広いからな?」

ヒメ「さすが王を志すラフテン様は器が大きくていらっしゃいますね?」

ラフテン「なかなか見所があるじゃないか?雛鳥クン!」

ヒメ「とんでもない…?」クスッ

ラフテン「恐ろしいねぇ…。親子ほど歳の離れたお坊っちゃまが…まさかこんな際どい手に打って出るとは?」

ヒメ「お気付きでしたか?」

ローレン「…ヒメ殿の要求を受けた西国は八方塞がりとなるな」

ラフテン「お〜!冴えてるねぇ、ローレンくん?」ニヤッ

顧問官「…どういうことだ?」
128: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:23:04 ID:tkZwUH.J0s
ラフテン「西の鉱石財源は我が国を含めた4つの平和協定加盟国に壌土すると明言されている?
つまり…ここで我が国が先ほどの要求を出したとなると西国からしてみれば、どちらとの約束も果たせなくなってしまう訳だよ?」

顧問官「……そ、そうか!分かりましたぞ!」

政務官「連合軍の要求を呑めば残りの加盟国との約束を果たせず敵対することになる…。
だが要求を断れば3国連合軍と争うことになる…。どちらを取っても圧倒的不利は免れない…!」

ローレン「だがそれを実行するには確証が要るのでは…?」

ヒメ「不要です」

ローレン「なに…?」

ラフテン「東、南、王国の3国で拡散すればいいじゃないか?」

顧問官「か、確たる証拠もないのにですか…!?」

ラフテン「所詮、内輪の話だ?そこまで気にはせんだろ?」

顧問官「だ、だが…もし暴かれたらどうなさるおつもりで!?」

ラフテン「暴かせなければ良い。嘘から出た真…という言葉もある?」

ローレン「悪知恵を働かせるのは兄上の得意とするところか。貴殿にとっては前向きな展開だな…?」

ヒメ「えぇ、まったくです」

ラフテン「悪知恵ねぇ…?なんであろうと知恵は知恵…賢者の特権だ?」

ヒメ「率直にお伺いします。この話、受けますか?受けませんか?」

ラフテン「いいんじゃないか?」

ローレン「…兄上の好きになさればいい」

顧問官「真相はともかく…騒動も決着し、南国の武勇を高め、西国の鉱山を手中に納められると言うのなら決して悪い話ではない」

ヒメ「聞き入れてくださり、ありがとうございます」ペコッ
129: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:24:32 ID:tkZwUH.J0s
顧問官「いくつか確認がございます?」

ヒメ「はい?」

顧問官「我が南国の要求を西の鉱山地帯一画とするならば…当然、全て我が国に壌土されるのでありましょうな?」

ヒメ「もちろんです。権利的主張を掲げていただく南国には最も政略に尽くしてもらわねばなりませんから…。
3国共同で要求を勝ち取った場合においてもそれぞれの国に要求通りの分配をさせていただきます」

顧問官「承知しました。ではもう一つ…」

ヒメ「はい」

顧問官「東国は王を失い、指定された世継ぎもおられぬと聞き及んでおります。
一体どのようにして指揮を執っていかれるおつもりか?」

ヒメ「…向こうの宰相殿にお願いしようかと思っております」

顧問官「……」

ヒメ「ご安心ください。東国は信頼の置ける国ですので?」

顧問官「委細、承知しました。ではまた改めて場を設けましょう」

ヒメ「よろしくお願いいたします」ペコッ

ラフテン「ま、物騒な話はこれくらいにして明日に備えるとしようかね…」ニヤニヤ

ローレン「……」

顧問官「ヒメ国王、ならびに家臣の皆様には城内に客室を用意させていただいております。
案内人を付けますので、どうぞ遠慮なくおくつろぎください」
130: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:26:34 ID:tkZwUH.J0s
―――南の城(客室)―――

ヒメ「……」ポフッ

コンコン コンコン

ヒメ「…なんだ?」

「リルラです。入ってもよろしいでしょうか?」

ヒメ「あぁ」

ガチャッ

政務官「…失礼します」バタンッ

ヒメ「どうした?」

政務官「事前にお伺いさせていただきたい」

ヒメ「…?」

政務官「今回、取られた策は…貴方らしいと思えませんな」

ヒメ「多少、強引に押し進めたのは自覚してるけどしょうがないだろ…?
人格者に見えたあの南の国王の治める国の内情がこんな歪んだ物だったなんて思わなかったんだ?」

政務官「いえ、話の流れ自体は見事でした。
あのような相手に取り乱さず、淡々と冷静に対応なさっていたのですから」

ヒメ「…じゃあ何がいけなかったんだ?」

政務官「本気で戦争をなさる覚悟があるのか…?」

ヒメ「反対か?」

政務官「いえ、賛成です。こうなる日が来る事は分かっておりました」

ヒメ「…そうか」
131: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:26:57 ID:tkZwUH.J0s
政務官「私がお伺いしたいのは陛下の決意が本物であるかどうか…?」

ヒメ「分からない…」

政務官「は…?」

ヒメ「それが正しいとは思えないし、間違っているとも断言出来ない…」

政務官「…生半可な覚悟で乗り切れるほど易い決断ではございませんぞ」

ヒメ「そうなってみるまで分からないよ…」

政務官「うぅむ……」

ヒメ「僕は戦争なんてしたくない。多くの者が平穏を望んでる事も知ってる…。
だけど…そうしないとまた東の国のような犠牲が産まれる」

政務官「……」

ヒメ「だから…やるしかない。それだけは分かってる」シュン

政務官「…ならば私から申し上げる事はございません。今の言葉を忘れず、胸に刻んでおいてください」

ヒメ「…あぁ」
132: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:28:02 ID:yaXDMG2LZo
コンコン コンコン

政務官「…誰だ!?」バッ

「ローレン王子が陛下にお目通し願いたいと参られましたが…いかがなさいますか?」

政務官「ローレン王子が…?」

ヒメ「通せ!」

「許可が降りました!どうぞお入りください!」

ガチャッ

ローレン「失礼する…」スタスタ

政務官「(供を連れていないのか…?)」

ヒメ「…どうしました?」ジッ

ローレン「貴殿に頼みがある…」

ヒメ「は?」

ローレン「俺を匿ってくれないか?」

政務官「匿う…?」

ヒメ「ラフテン王子の刺客から…ですか?」

ローレン「そうだ…。さすがに地位ある客人を前に仕掛けてはこないだろう…?」

ヒメ「しかし、ここにいても明日になれば…」

ローレン「あぁ、俺は殺される」

政務官「!?」

ローレン「だが…易々と殺されてやる気はない」

ヒメ「何か手を打ってあるのですか?」

ローレン「いや、何も…?」

ヒメ「……?」
133: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:30:26 ID:yaXDMG2LZo
ローレン「ラフテンは今夜、確実に仕留めにくるだろう。
しかし俺は明日の王位継承の儀まで生き延びなければならない…」

政務官「大変申し上げにくいのだが…」ザッ

ローレン「……」

政務官「我々は他国民です。そちらの御家騒動に巻き込まれる筋合いはございません」

ローレン「俺に恩を売って損はないぞ…」

政務官「ほう…?どのような見返りが望めると?」

ローレン「貴殿らは我が南国を取り込み、西の国を打倒したいのであろうが…?」

政務官「いかにもその通りです」

ローレン「では明日、王となる俺を邪険にするなど言語道断だ…。能無しが…」ボソッ

政務官「は!?」イラッ

ヒメ「…ローレン王子、貴方は王の座を降りたのでは?」

ローレン「表向きはな…?」

ヒメ「表向き…?真意は別にあると?」

ローレン「王位になど興味はないが…死ねない理由がある」

ヒメ「……?」

ローレン「城下に残した妹がいるんだ…」

ヒメ「妹…?」

ローレン「俺は元々、城下に住んでいた。身分の低い母は俺と妹を守る為に市民に紛れさせたのさ…?」

ヒメ「……嘘でしょう?」

ローレン「意外にも勘が鋭いんだな…。激情型だと聞いていたが先ほどのやり取りからしても…どうやらそうではないらしい?」

ヒメ「…それほどでも」

ローレン「あぁ嘘だよ。そんなのがいれば、とうに人質に取られるか、殺されるかしてるさ…?」

ヒメ「……」

ローレン「断るなら居座ってやるまでだ…」
134: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:32:15 ID:tkZwUH.J0s
ヒメ「急に申されましても…困ります」

ローレン「ならば追い出してみろよ…?」

政務官「なんですと…!?」

ローレン「腕付くでも構わないぞ…?」

ヒメ「…ご冗談を?」

ローレン「冗談に聞こえたか…?」ジッ

ヒメ「やめましょう?二回り以上、年下の僕に勝負を挑むなんて不毛ですよ…?」

ローレン「そうか…?貴殿からは年に見合わない武の才が窺えるがな…?」ジロジロ

ヒメ「滅相も…?」

ローレン「気に入らないな…」

ヒメ「何がです?」

ローレン「その余裕はなんだ…?俺を見下しているのか…?」

ヒメ「態度がお気に召さなければ謝罪を…ですが見下してなどいないとだけ先に申し上げておきます」

政務官「先ほどから聞いていれば…とても物を頼む言い方ではありませんな?」

ローレン「なんだ、能無し…?」

政務官「ぐっ…!」ムカァッ
135: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:33:38 ID:tkZwUH.J0s
ヒメ「分かりました…。一晩、ここにいてもらって構いませんよ。それでいいですね?」

ローレン「あぁ…それでいい」

政務官「お、お待ちください!部屋を提供していただいてる身で不躾とは存じますが…。
ほぼ初対面のローレン王子とヒメ様を二人きりになどさせられません!」

ローレン「そちらの都合は聞かん…。心配なら護衛でも付ければいい…」

ヒメ「その必要はありません。寝る為だけの部屋に大人数でいるのも落ち着きませんしね?」

政務官「はぁっ…!?」

ヒメ「リルラ、おまえは自分の客室に戻れ」

政務官「し、しかし…」

ヒメ「くどいぞ?」ジロッ

政務官「……かしこまりました」シブシブ

ヒメ「それではローレン王子…夜も長い事ですし明け方まで何か楽しい話でもしましょうか?」ニコッ

ローレン「あぁ…ゆるりと語らおう?」ニヤッ

政務官「(…付近の護衛を増強しておくか)」
136: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:35:29 ID:tkZwUH.J0s
〜〜〜朝〜〜〜

―――客室―――

ザザッ ジャキッ

親衛隊「」ギランッ

政務官「くっ…は、離せ!なぜ…!?」グッ

近衛兵's「も、申し訳ありません!陛下ぁ!?」ググッ

ヒメ「……」

ローレン「……」

ラフテン「ぃやあ!良い朝だね?目覚めに紅茶でもいかがかな?」ニヤニヤ

ヒメ「これはどういう事でしょうか?ラフテン王子?」

ラフテン「ラフテン"国王"だ?口の聞き方に気を付けたまえ?」ニヤニヤ

ヒメ「…まだ継承式も始まっていませんよ?」

ラフテン「すぐ始めるさ?君の隣の邪魔者を始末したらね?」

ローレン「……」

ラフテン「しっかしローレンくんと雛鳥クンが同じ部屋で夜を共にしているなんて…随分と仲が良いんだねぇ?愛でも芽生えてしまったのかい?」ニヤニヤ

ヒメ「説明してください。これはなんですか…?」

ラフテン「処刑さ?王位奪取を目論む不届き者は断罪せねばならない?」

ローレン「…兄上、いったいなんの話だ?」

ラフテン「貴様を取り巻く役人に追及してやったら…なんとも笑える計画を聞かされたよ?」

ローレン「……!」

ラフテン「なぁ、爺や?」

顧問官「…見損ないましたぞ。ローレン王子」ザッ

ヒメ「え…?」チラッ

ローレン「……」
137: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:37:03 ID:tkZwUH.J0s
ラフテン「父上を殺したのが君だったとはなぁ?」ニヤッ

ローレン「潜伏させていた家臣らを尋問したのか…?」

顧問官「全て聞き出しましたぞ!王位継承の儀に移る時を見計らい、民衆の面前でラフテン王子を殺害しようと計画していたそうですな!」

ラフテン「しかも我が国の兵力を手土産に西の国に寝返ろうとしたそうじゃないか?なかなか大胆な事をするねぇ…?」ニヤニヤ

政務官「わ、我々には関係ないだろう!ヒメ様を避難させろ!?」

ラフテン「関係ない?国王殺しの反逆者を匿っておいてかい?」

政務官「な、な、な……で、ですからお止めしたではありませぬか!?」ブルッ

ヒメ「…ローレン王子、今の話は本当ですか?」

ローレン「……」

ヒメ「もし本当であったなら…まさか東の国王の暗殺にも関わっていたんじゃ…?」

ローレン「俺には…夢があった」

ヒメ「?」

ローレン「だが王族などに生まれてしまったおかげで無意味な争奪に組み込まれ、俺の夢はあっさり絶たれた…」

ラフテン「カッ!バカだねぇ、君は?王になればいくらでも好きに振る舞えるじゃないか?」

ローレン「……」
138: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:37:43 ID:tkZwUH.J0s
ローレン「母は身分の低さ故に自らの無力さを悟っておられた。だから俺を親類に預けて城から離れさせた…」

ローレン「何も知らずに育った俺は叔父夫婦が付けた師範に無理やり剣を叩き込まれ、政治や軍事について学ばされた…」

ローレン「そうして稽古と勉学に明け暮れていると…いつしか俺は周囲との違いに気付いた」

ローレン「同年代で剣術を嗜む平民の子などいない…。政治経済、軍略に明るい大人もいない…」

ローレン「自分の存在に違和感を感じた時、叔父から真実を告げられた…」

ローレン「…そして城に行き、王位を取り戻すよう命じられた。
叔父夫婦は俺を王に就かせ、国王の親として城で贅沢に暮らしたかったのだろう」

ローレン「だがその頃にはもう…軍に所属し、軍師を目指したいという夢があった。
どうせ俺が血筋である証拠もない。叔父夫婦には悪いが…説得して軍に入ろうと考えた」

ローレン「だが時すでに遅く、叔父夫婦は城に赴き、俺の存在を打ち明けてしまった…。
王族を城下に匿った重罪人として叔父夫婦は処刑、俺は城に戻され、王子と呼ばれるようになった…」

ローレン「腕には覚えがある。度重なる暗殺や謀略の手は剣一つで振り払った…」

ローレン「父上に説明し、王子の位を解いてもらおうともしたが親父殿は聞き入れてくださらず…醜い争いの渦中で身を守り、堪え忍ぶしかなかった」

ローレン「…だがそれだけでは終わらなかった。
平民時代の友人達が次々に殺され、懐かしい顔ぶれが首一本になって俺に宛がわれた宮殿に飾られた」

ローレン「…貴様の仕業だろう。兄上?」

ラフテン「ふぁぁ〜…話が長いなぁ?」アクビ

ヒメ「……!」

ローレン「なぁ、ヒメ国王…。昨夜、妹がいると言ったよな?」

ヒメ「はい…」

ローレン「実は半分、本当だ。血の繋がりはないが叔父夫婦の間に出来た小さな、小さな妹…。
彼女は叔父夫婦が処刑された後、商館に拾われてな。幼くして身寄りなき孤児に堕ち、辛い環境下で働いていた…」

ヒメ「……」

ローレン「いずれ地位を手に入れ、迎えに行こう…。そう考えていた矢先に妹は…城に招かれ、父上の夜伽役に選ばれた」

ローレン「12才だった穢れない妹は…無理な性交渉を受け入れられず、ほどなくして自殺した」

ヒメ「(せ、性交渉って…い、いや意識するのはそこじゃない!)」ブンブン

政務官「(じゅ、13歳のヒメ様になんという話を…!?)」
139: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:38:32 ID:tkZwUH.J0s
ラフテン「ぃやあ、可哀想になぁ〜?ほとんど聞いてなかったが同情するよ?」

顧問官「ラフテン王子!早くこの逆賊を始末なされ!」

ラフテン「親衛隊長?」クイッ

親衛隊長「」ビュバッ

バシュッ

ヒメ「……!?」

政務官「あぁ…!?」

顧問官「ぐ…ぶふっ」ドサッ

ラフテン「偉そうに命令するなよ?クソジジイ?」ギョロッ

顧問官「ぉ…のれ…ラ…フテ……ン」フッ

ヒメ「いい加減に…!!」カッ

ローレン「これが南の国だ。ヒメ国王」

ヒメ「は…!?」

ローレン「表向きは誠実な王が仕切る穏やかな国…だが現実はこうだ?」

ラフテン「さて、そろそろ終わりにしないかい?ローレンくん?」ニヤッ

ローレン「西の悪魔に魂を売ってでも…歪んだ王族を滅ぼさなければならなかった」

ヒメ「ローレン王子は最初から…お父君とラフテン王子を始末する為に動いていたのですか?」

ローレン「内部で絶大な権力を誇る父上とラフテンに抗う術はない…。強大な外部の力が必要だったんだ」

ヒメ「……」

ローレン「俺は孤独だ。親類縁者、誰一人として残っていない…。
西の国に亡命し、魔性のファルージャの手先になってでも…こいつらを殺したかった」

ラフテン「惜しかったねぇ?しっかり家臣達を管理していれば上手くいったかもしれないのに?」ニヤニヤ

ローレン「……」
140: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:39:31 ID:tkZwUH.J0s
ラフテン「さぁ?死んでもらおうか?」

親衛隊「」ザザザッ

政務官「ひ、ヒメ様に刃を向けるとは何事かぁっ!?」ジタバタ

ヒメ「(くそっ…団長がいれば…!やっぱり長期休暇なんて取らせるんじゃなかった!)」ギリッ

ローレン「」ガシッ チャキッ

ヒメ「へ!?」グンッ

政務官「ヒメ様ぁっ!?」

ラフテン「ほぉ〜う?まだ悪あがきするのかい?ローレンくん?」ニヤニヤ

ローレン「寄るな…!ヒメ国王が命を落とせば国際問題に発展するぞ…」ギランッ

ヒメ「」ゴクリ

ラフテン「ならばヒメ国王の首を手土産に西の国と盟でも結ぶかな?」

ローレン「なに…!?」

ラフテン「私は最初からどっちでもよかったんだよ?王国でも…西の国でも?」

ヒメ「そんな…!?」

ラフテン「ここで雛鳥クンが死ねば東国も王国も国王不在で統制が効かなくなる?
西の国と対等な条件で組み、王国、東国、共に侵略してしまった方が楽な上に得なのは明らか?」

政務官「き、貴様ぁ…!!」ワナワナ

ラフテン「無闇に他国の事情に首を突っ込むのが悪いんだよ?クハハハハハ!!!」ゲラゲラ

ヒメ「……!」

ラフテン「王国を侵略した暁には救い主を我がコレクションに加えさせてもらうかなぁ?」ニヤァァァ

ヒメ「なっ…!?」キッ
141: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:40:19 ID:yaXDMG2LZo
ローレン「ま、待ってくれ!兄上!!」アセアセ

ラフテン「」クイッ

親衛隊長「ローレンは生け捕りにしろ。民衆の面前でラフテン陛下自ら首を切り落とされる?ヒメ国王とその家臣共は皆殺しだ!!」バッ

親衛隊「ははっ!!」ジャキッ

政務官「や、やめろ…よせ!?」ジタバタ

ローレン「多勢に無勢か…!せめてヒメ国王の兵が自由であれば…?」タジッ

ヒメ「た、助けてくれ…!」

ラフテン「クハハハハハ!いいねぇ!もっと必死に命乞いしたまえよ!?」ゲラゲラ

ヒメ「っ……団長!!!」

近衛兵?「御意!!」ヒュッ

南の衛兵1「ばぎふっ!?」ゴカッ

ラフテン「ハハハハ……は…?」ピタッ

近衛兵?「おぉぉりゃあああ!!」シュバッ

バキッ ガゴッ ビシッ ドフッ

親衛隊「ぐわあああ!!」バタバタ

ヒメ「え…?」ジッ

親衛隊長「ちぃっ!!取り囲んで殺せ!!」

南の衛兵's「はっ!!」バッ

近衛兵?「ワシに続けぇっ!!」ブンッ

スパパパパバパッ

近衛兵's「は、ははぁっ!!」シュルリ

親衛隊長「ば、馬鹿者!!拘束を解かせるな!?」アセアセ

近衛兵?「遅いわぁっ!?」ダッ ブォンッ

親衛隊長「うごっ!!」ズサァァ
142: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:44:43 ID:tkZwUH.J0s
ギャーギャー ギャーギャー

ローレン「」ポカーン

近衛兵?「お待たせしましたな!ヒメ様!!」バッ カランカラン

ヒメ「だ、団長!?来てたのか!?」

団長「ワシなくして誰があなたをお守りすると?」ニヤリ

ヒメ「ど、どうして鎧兜なんか着込んで下級兵士に紛れてたんだよ!?いつも憲兵が着用する革の制服で行動してたじゃないか!?」

団長「……」

ヒメ「?」キョトン

団長「あまり役に立たないワシが出しゃばっても邪魔かと思い、配慮させていただいた?」ジトッ

ヒメ「あっ…」ハッ

『西の国との問題は頭を使う事になるし…そうなるとあんまり役に立たないじゃん?』

団長「思い出していただけましたかな?」

ヒメ「ご、ごめん…」シュン

団長「ふっ…主君が配下に易々と頭を下げるものではありませんぞ?」

ヒメ「…も、もっと早く助けてくれたってよかったんじゃないか?」モジモジ

団長「それではワシが頼れる忠臣であると証明出来ますまい?気長に機を探り、絶好の時を選んだ次第!」

ヒメ「おまえって意外と根に持つんだな…?」ムスッ

団長「陛下の役に立つは我が生き甲斐にござる。そこを否定されてはワシとて落胆致しますとも?」

ヒメ「ふん…だったら喋ってないで働け!役に立つところを見せてみろ!?」

団長「無論!!」ダッ

ローレン「ヒメ国王!あの方は…!?」

ヒメ「…僕の自慢の家臣です。もう心配要りません」

ラフテン「おのれぇ!!皆殺しだ!!王国の連中もローレンも八つ裂きにしろぉっ!!」

団長「数の利は敵にあるが躊躇するな!!司令塔は先に始末した!!
指揮官不在の隊の殲滅などワシら近衛に掛かれば赤子の手を捻るようなものだ!?」バッ

ウオオオオオオ!! ガキンッ ギャリンッ キンッ キキンッ
143: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:47:29 ID:tkZwUH.J0s
>>116
ブルードル陛下は自分でも書いてて楽しいキャラだったのでちょっと名残惜しいですw
ここから更に盛り上げていくつもりなので、ほどほどに期待しててくれると嬉しいですw
支援ありがとうございました!
144: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/30(日) 21:33:13 ID:Buemia0KPk
ワァーワァー ワァーワァー!

ギンッ ガガッ カィンッ ギャリンッ

団長「ぬぁあっ!!」ブォンッ

南の衛兵3「うぐっ!」ドカッ

近衛兵's「うおおおおお!!!」バッ

南の衛兵4「くっ…て、手に負えないぞ!」ギンッ

南の衛兵5「あの騎士…強すぎる!」タジッ

ラフテン「増援を呼べ!城中の兵を掻き集めて、この不届き者共を殺すのだ!?」

団長「…ヒメ様!!道を作りますので先に避難を!?」

ヒメ「その必要はない!」スラッ

団長「なっ…!?」ギョギョッ

政務官「ま、まさか参戦する気ではございますまいな!?」

ヒメ「城の人間は城下で行われる南の国王の葬儀に取り掛かって、ほとんど出払ってる!!
そうでもなかったら、こんな大胆な手段に出なかった筈だ!!」

ラフテン「そ、それがどうした!?ここから城門まで10分も掛からん!!兵を呼び寄せるのは容易いぞ!?」

ヒメ「往復20分程度か。だったら15分……いや、10分でケリを着けるぞ!!」

政務官「へ、陛下!?これ以上、他国で騒ぎを大きくしてはまずいですぞ!?」

ヒメ「増援が来る前にラフテンを捕らえろ!」

団長「…はっ!!」ダッ

南の衛兵6「させるかっ!?」ブンッ

団長「邪魔だ!?」ヒュッ

南の衛兵6「うぎゃはっ!?」ドカッ
145: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/30(日) 21:38:28 ID:Buemia0KPk
ローレン「…な、なぜだ。貴殿にしてみれば俺を引き渡せば済む話だろう?」

ヒメ「そうしてほしいのなら、そうしましょうか?」クスッ

ローレン「っ……い、いや」タジッ

ヒメ「悪魔に魂を売ったのは貴方だけではありませんよ」

ローレン「は…?」

ヒメ「僕も西の国を倒す為に…あんな悪魔のような男に頼ろうとしてしまいました。
でも…やっぱり一緒に戦うからには信頼の置ける味方が欲しいんです?」ニコッ

ローレン「お、俺で…いいのか?仮にも父と兄を殺し、ファルージャに国を売ろうとしたんだぞ!?」

ヒメ「自分のした事を気にかけてるんですね?」

ローレン「は…?」

ヒメ「なら大丈夫ですよ。貴方はまだラフテンほど腐ってない?」

ローレン「……」

ヒメ「してきた事は認められないけど…境遇には同情出来ます。
僕も昔は王子なんて重荷、背負いたくないとごねてましたしね」

ローレン「ヒメ国王も…?」

ヒメ「はい。ローレン王子と事情は異なりますが…自分の国に絶望していたという意味では似てるかもしれません」

ローレン「……」

ヒメ「貴方の考えは間違っていなかった。亡くなった先代やラフテンのやり方では…いずれ必ず綻びが出たでしょう。ですが手段を間違えたんです。貴方の決断は…もしかすれば国を滅ぼしかねない」

ローレン「……分かってたさ。だが俺には貴殿の臣下達のような頼もしい味方がいなかったんだ」

ヒメ「では作りましょう。今、ここで!」

ローレン「信用していいのか…?」

ヒメ「…僕の親友は信じる力を持ってました。絆で道を切り開いたんです」

ローレン「…親友?」

ヒメ「それが王国の救い主です」

ローレン「す、救い主…ホビットの…か?」

ヒメ「種族とか教えなんて馬鹿馬鹿しく思えるくらい、いいヤツですよ?」ニコッ

ローレン「……!」
146: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/30(日) 21:41:41 ID:Buemia0KPk
ギャーギャー ギャーギャー!

ラフテン「雑兵など相手にするな!雛鳥だ!!雛鳥を狙え!?奴を人質に取ればこいつらは固まる!?」

親衛隊「ははっ!!」ダッ

団長「ぬぅ!?ひ、ヒメ様を守れ!?何人たりとも近付けるな!?」

近衛兵1「も、申し訳ございません!敵の数が多すぎて…目の前の相手に集中するのが精一杯です!」ギギギッ

政務官「こ、こうなれば私が…!」ズイッ

南の衛兵7「どけぃ!?」ブンッ

政務官「ぐわっ!?」ズサァァッ

ヒメ「リルラ!?」

政務官「お、おぐっ…ういぃっく…!」ゴロゴロ

ヒメ「…なんだ。柄で殴られただけか。心配して損した」シラー

南の衛兵7「他人の心配などしてる場合ではなかろうが?」ズイッ

ザザザッ

ヒメ「(なんとか団長達が食い止めてくれてるが…6人か。僕一人じゃ無理だな)」

ローレン「控えろ。無礼者?」ズイッ

ヒメ「ローレン王子…?」ピクッ

南の衛兵7「…なんの真似ですか?」ギロッ

ローレン「それはこちらの台詞だ。王子である俺に刃を向けるとは何事か?」

南の衛兵7「あんたはもう王子じゃない。国王殺しの逆賊だ?」

ローレン「…王位争奪に関すれば、いかなる非道も許される。それが貴様らの主のやり方だろう?」

南の衛兵7「殺るぞ!!」ダッ

ダダダッ

ローレン「来るぞ!ヒメ国王!」ジャキッ

ヒメ「…はい!」ジャキッ
147: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/30(日) 21:44:27 ID:47qDB4JxU6
団長「…陛下の方はなんとかなりそうだな」ホッ

南の衛兵8「よそ見してる場合か!?」ヒュンッ

団長「」ブォンッ

ズバァァァッ

南の衛兵8「がぶ……」プシャアアアアア

ザワッ

南の衛兵8「」バタッ

ラフテン「……!?」ゾワッ

団長「貴様らがどこまでもやり合うと言うのなら受けて立とう」ピシュッ

親衛隊「」ブルッ

団長「だが…峰打ちで済むのはここまでだ?」ギロッ

近衛兵1「(…そうか!他国での騒動と考えて配慮してたのではなく、剣身を使わずに戦う事で格の違いを見せつけていたんだな?)」

親衛隊「……!」ガクガク

近衛兵1「(団長の圧力に敵は縮み上がってる…!これなら…!)」

ラフテン「こけおどしに怯むなぁ!!バカ共がぁ!?」

南の衛兵9「し、しかしラフテン様…!あの騎士、ただ者ではございません!
ここは一度、城門に避難し、立て直しを図るのが最善かと…」

ラフテン「」ヒュンッ

南の衛兵9「ひっ…!?な、何をなされるので!?」ピタッ

ラフテン「ガキの率いる少数部隊、下級官族出身の弟…こんなカス共を相手に一国の王が退けるかぁ!?」ズブッ

南の衛兵9「んっ…ぐえっ」ゴフッ

ラフテン「貴様らは黙って俺様の命令に従ってりゃいいんだよ!?
有象無象のお前らが何人死のうが俺様の代わりはいねぇんだ!?」クワッ

ザワザワ ザワザワ
148: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/30(日) 21:45:57 ID:47qDB4JxU6
団長「…見ちゃおれんな」

ラフテン「なんだと…下朗が!?」ギョロッ

団長「こんなくだらん男を生涯の主と崇め奉る為に貴様らは血を流すのか?」

親衛隊「」ピクッ

ラフテン「アァ〜…!?」ピキッピキッ

団長「見てみろ?もう一人の王子を?」

親衛隊「」ジーッ

ガィンッ キキンッ ガガッ ドシュッ

団長「ワシはただなんとなく王族に仕えているのではない。
己の持てる全てを捧げるに値すると認めた主に心から忠誠を誓っておるのだ」

親衛隊「……」

団長「自ら剣を握り、逆境に立ち向かう王と…味方の背後に隠れ、あまつさえ臣下に刃を突き立てる王…貴様らはどちらを選びたい?」

ラフテン「なにを黙って聞いてるんだ!耳を貸すなぁ!?」

団長「まだ間に合うぞ。王位継承権を持つ者は二人いるのだ」

ラフテン「さっさとそいつを殺せぇ!?」

団長「南の国に忠を捧ぐ勇敢な兵士達よ!!」

親衛隊「」ビクビクゥッ

団長「二つに一つだ…!」

親衛隊「〜〜〜!!」プルプル
149: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/30(日) 21:47:41 ID:47qDB4JxU6
ラフテン「何をやってんだ!殺せというのが分からないのか!?命令だぞ!?」

親衛隊「……」

ラフテン「このっ愚図がぁ!?」ヒュンッ

南の衛兵10「うっ…!?」ザクッ

バタッ

ラフテン「こいつのようになりたいか!?えぇっ!?」バッ

親衛隊「」ワナワナ

団長「終わったな。貴様?」

ラフテン「はぁ…!?」

クルッ クルッ クルッ クルッ

ラフテン「!?」

ジリッジリッ ジリッジリッ

ラフテン「お、おい…!待てよ?お、俺を誰だか分かって……」アセアセ

親衛隊長「む……ぐく…!」ムクッ

ラフテン「し、親衛隊長!こいつらを止めろ!?」

親衛隊長「お、お前達…何をしてる…?」ヨロッ

南の衛兵11「邪魔するのなら隊長であっても容赦しませんよ」ジャキッ

親衛隊長「な、なにぃ〜…!?」

ラフテン「こいつら…敵の甘言に踊らされて寝返ろうとしているのだ!」

親衛隊長「な、なんですと…!?」

ゾロゾロ ゾロゾロ

団長「道を空けろ!!」

親衛隊「」ビクッ

ザザザッ

ローレン「……」スタスタ

親衛隊長「ローレン…王子」
150: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/30(日) 21:50:40 ID:47qDB4JxU6
ローレン「無様だな。兄上…?」

ラフテン「〜〜〜!!こ、殺せ!!ローレンが無防備にも貴様らに背を向けているぞ!?今なら確実に殺れる!?」

シーン

ラフテン「おい、聞いてるのか!?殺れと言ってんだよ!?命令だ!?」

シーン

ラフテン「くっ…!王族に飼われる身でありながら…許さんぞ!!」

ローレン「俺も王族だ…」

ラフテン「貴様ごときが王族を名乗るな!?
上流階級の母と国王である父の血を継ぐ俺のみが純潔な王族ぞ!?」

ローレン「貴様が殺した兄弟の中には…そんな奴がわんさかいたんじゃないのか?」ギロッ

ラフテン「知るかぁ!?あいつらは俺に敗れ、王位を奪われた負け犬だぁ!!勝ち残った俺こそが真なる王……」

ローレン「変わらんよ」

ラフテン「アァ〜!?」ギョロッ

ローレン「お前もここで俺に敗れ、王位を奪われる哀れな王族の一人だ」

ラフテン「っ……おい、何ボサッとしとるんだ!?行け!?」バシッバシッ

親衛隊長「は!?」ビクッ

ラフテン「ローレンを討つんだ!!奴の首を切り落とした者には褒美を取らすぞ!?」ハァッハァッ

ローレン「…命令だ!!」カッ

親衛隊「……!?」

ローレン「ラフテンを拘束せよ!!」

親衛隊「ははぁっ!!」ザッ
151: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/30(日) 21:55:12 ID:47qDB4JxU6
ジリッジリッ ジリッジリッ

ラフテン「ま、待て!俺に従え!褒美を…褒美を取らす!!階級も上げてやる!?女だって思うがままだぞ!?」アワアワ

親衛隊長「ふむ…」

ラフテン「くそがぁ!!親衛隊長!!殺せ!?この反逆者共を八つ裂きに…!」

親衛隊長「」ヒュンッ

ラフテン「ッッ!?」ビクッ

親衛隊長「…剣を捨て、両腕を上げろ?」ピタピタ

ラフテン「お、おい…なんの真似だ…?」ブルブル

親衛隊長「」グッ

ラフテン「ひっ!分かった!言う通りにする!?」タラァァァ

親衛隊長「ローレン国王!!私めが見事、逆賊を捕らえてご覧に入れましたぞ!?」キリッ

ローレン「…大義である」

親衛隊長「覚悟しろ!逆賊め!我らが王、ローレン様に牙を剥くなど無礼千万!
民衆の面前で、これまでの罪を暴き、首を跳ねてくれるわー!?」ボーヨミ

親衛隊「」シラー

ローレン「どうだ。兄上?味方を奪われる気分は?」

ラフテン「み、認めん…ぞ」プルプル

ローレン「……」

ラフテン「き、貴様などが王になどなれるものかぁ!?」

ローレン「城外の広場に引きずり出せ。葬儀の前に王位継承の儀に移るぞ」

ラフテン「ば、バカな…継承権は長男である俺に……」

ローレン「決闘だ」

ラフテン「は…!?」

ローレン「俺と貴様、どちらが王に相応しいか…南の王族らしく互いの血で決めようじゃないか?」

ラフテン「……!?」ゾワッ
152:名無しさん@読者の声:2015/8/30(日) 22:17:05 ID:Jyy7L0BC1s
ローレン頑張れ!
153: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 21:39:42 ID:n15p5hTuR6
―――南の城下町(広場)―――

ゾロゾロ ゾロゾロ

ヒソヒソ ヒソヒソ

親衛隊長「民衆に告ぐ!!偉大なる我らが先代国王の葬儀を一時中止し、王位継承の儀を執り行う!!だがその前にだな……」

ザワザワ ザワザワ

南の高官's「」ヒソヒソ

南の貴族's「」ガヤガヤ

親衛隊長「えぇい!騒ぐな!?」

ローレン「……」

南の高官1「ローレン王子!これはどういう事だ!?」

南の貴族1「他国から慰問に訪れた要人の方々も混乱しておりますぞ!しかと説明していただかねば!?」

ローレン「皆、疑問はあるだろうが詳しく説明している暇はない。
趣旨のみを端的に伝えるので耳を傾けてくれ」

南の貴族1「…な、何が起きてるんだ!ラフテン王子が即位されるんじゃなかったのか…?」ヒソヒソ

南の貴族2「し、しかし兵に拘束されているぞ…?」ヒソヒソ

南の貴族3「ま、まさかこの場で処刑し、ローレン様が王位に返り咲こうと…?」ヒソヒソ

南の貴族4「な、なんだとぉ…!?わ、我らがこの日の為にどれだけラフテンに貢いできたか…全て台無しではないか!」

親衛隊長「鎮まれぃ!!」

シーン

親衛隊長「これよりローレン王子とラフテン王子が互いの王位を賭けて決闘なさる!!」

ザワザワ ザワザワ

親衛隊長「この国の王座を勝ち取るのはどちらか…これよりそなたらには南の民として我が国の歴史の証人となってもらう!!」

ワァァァァアアアアアア!!!
154: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 21:41:08 ID:n15p5hTuR6
ヒメ「ことのほか盛り上がってしまいましたね。もう後には退けませんよ?」

ローレン「20万近い城下の民が見届ける舞台…悪い気はしないな」

ヒメ「ハハハ…すごい胆力ですね?敬服しますよ?」

ローレン「兄上の粋な計らいで死線をいくつも越えてきたから…かもな?」ニヤッ

ヒメ「貴方の即位を願う一人として御武運を祈っております?」

ローレン「ここに辿り着かせてくれた貴殿には恩返しせねばならん…?
その為にも必ず王となって舞台を降りよう…」

ヒメ「……」ニコッ

親衛隊「行ってらっしゃいませ!"陛下"!!」ピシッ

ローレン「……あぁ!!」ググッ

カツンカツン カツンカツン

政務官「ろ、ローレン様に勝っていただかねば…我々も生きて、ここを出られませんな?」ドキドキ

ヒメ「心配するな、リルラ。あの方は強いよ。
共闘して見させてもらったが少なくとも剣術では僕より何枚も上手だ?」

政務官「ほ、ほう…!それほどに!?」パァァ

ヒメ「…問題はラフテンの腕のほどだな?団長、どうだった?」

団長「直接、太刀合わせした訳ではござらんが…まぁ平凡でしょうな?
王族であるだけに一応、剣術も教養には含まれていたかもしれませんがヒメ様を凌ぐ剣技をお持ちであれば心配無用かと思われる?」

ヒメ「おまえがそう言うなら安心だな?」

団長「い、いや…それほどでもござらんが!?」デレデレ

政務官「頼むぞ、ローレン王子…!」

ヒューヒュー キャーキャー
155: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 21:43:23 ID:n15p5hTuR6
親衛隊長「おら!じたばたと足掻くな!壇上に登れ!ローレン様がお待ちであろうが!?」グッグッ

ラフテン「くっ…いいのか?貴様?」ボソッ

親衛隊長「あぁん…!?」

ラフテン「俺が王位を勝ち取った暁には…貴様を親族もろとも凌辱し尽くし、有らん限りの方法で苦痛を与え、俺を裏切った事をあの世まで後悔させてやるぞ…!?」ギョロッ

親衛隊長「っ…!?」ゾクッ

ラフテン「楽しみにしてるんだな…?」ボソッ

親衛隊長「い、イヤだなぁー?ほんの冗談ではございませぬか!
こ、心の底ではラフテン王子を応援しておりますとも!」アタフタ

ラフテン「……」カツンカツン

親衛隊長「き、聞いておられますか!ラフテン王子?ラフテン王子!」アワアワ

ラフテン「」タッ

ローレン「」タッ

ワイワイガヤガヤ

ラフテン「……」ギョロッ

ローレン「……」ギロッ

ラフテン「…思えば王族、いや兄弟として向かい合うのはこれが初めてか?」ニヤッ

ローレン「だからどうした…?」

ラフテン「…弟よ?」

ローレン「……」

ラフテン「考え直すんだ?貴様がしてきた無礼の数々…全て許してやろう?
だから…大人しく引き下がり、王位を私に譲るんだ?良いな…?」

ローレン「断る」キッパリ

ラフテン「……貴様は王になりたくないのだろう?軍師になりたいと申していたな?その願い、私が聞き届けて……」

ローレン「あまり長引かせるな。父上の葬儀が迫っている…」

ラフテン「……!どの口がほざく!?父上を殺したのは貴様だろうが!?」ブチィッ

ローレン「あぁ、そして貴様も殺す。王となるのは俺だ?」

ラフテン「もういい…!もういいさ…!後悔しても遅いぞ、ローレン!?」ギリッ
156: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 21:45:07 ID:ZOCTCuwxeE
ローレン「では…始めようか」

親衛隊長「そ、それではどちらも剣を……」

ラフテン「待てぃ!!」

親衛隊長「は…?」

ラフテン「口惜しいが剣では弟に劣る…。得物を変えたいのだが?」

親衛隊長「し、しかし決闘は剣で行うものと定まっております!」

南の貴族1「ラフテン王子のおっしゃる通りだ!!」

南の貴族2「貴様ら騎士族がローレン様を王に担ぎ上げたいのか知らんが得物を限定するなど不平等ではないか!?」

南の貴族3「互いの得意な得物で闘うのが最も公平だ!!」

ブーブー ギャーギャー!

ラフテン「ほれ?皆もこう言っておるぞ…?」

親衛隊長「(ラフテン派の貴族共か…!そ、そうだった…!人脈は明らかにラフテン様が勝るんだった!あぁ〜寝返るのは早計だったか!?)」グワングワン

ローレン「俺は構わん。好きにしろ…」

親衛隊長「そ、それではラフテン王子の希望される得物を私めが用意致しましょう!何になさいますか!?」ヘコヘコ

ラフテン「弓だ!私は弓を使う!!」

親衛隊長「ゆ、弓でございますね?かしこまりました!すぐに手配致します!」

ラフテン「私の部屋にある弓だぞ…?」ニヤァァァ

親衛隊長「ははぁっ!!」ダッ

ローレン「……」
157: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 21:46:16 ID:n15p5hTuR6
政務官「ラフテンが武器を急遽、変更しましたが…?」

ヒメ「弓、か…」

政務官「どうなのだ?勝敗に響く程の武器か?」

団長「うむ。まずいな」

政務官「!?」

ヒメ「でも舞台はそんなに広くないぞ?飛び道具で挑むのは逆効果なんじゃないか?」

政務官「天下一武闘会の武舞台くらいの広さですな?」

ヒメ「ん?なんて?」キョトン

団長「そうとも限りませぬ。近距離から放たれた矢を避けるのはいかな達人と言えども至難の技…。
この局面で弓を選んだということはつまり…己の技術に絶対の自信があったからでしょう」

ヒメ「おまえだったら、どう対処する?」

団長「開始と同時に間合いを詰め、居合いにて両断します」

ヒメ「…そこを逃したら?」

団長「距離を取られるでしょうな。そうなれば勝ち目は非常に薄くなりましょう」

ヒメ「……!」

団長「弓は間合いが広い上、近付けば近付くほど命中率が高まる武器です。
連続して放てない欠点はあれど一撃必勝を狙うなら剣で挑むよりも勝率は数倍跳ね上がる…!」

ヒメ「開始の合図が決め手か…!」

政務官「頼む!頼むぅ…!」グッ
158: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 21:47:50 ID:n15p5hTuR6
親衛隊長「それでは両者、準備はよろしいか?」

ローレン「あぁ…」

ラフテン「待て」

ザワッ

親衛隊長「ま、まだ何か…?」

ラフテン「こうも距離が近いと私が不利だ。お互いの武器に適した間合い…中間距離を保ちたい」

ブーブー ブーブー

親衛隊長「(待ちくたびれた民衆がヤジを飛ばしているが……)」

南の貴族's「」ギロッ

親衛隊長「(貴族の顔を立てるのが得策…だな)」ニヤリ

親衛隊長「承知しました!公平を期す為、ラフテン王子の言い分を認めましょう!互いに5歩、下がってください!」

ラフテン「…」スッ

ローレン「」スッ

親衛隊長「今度こそ準備はよろしいか?」

ラフテン「いつでもいい?」ニヤニヤ

ローレン「……」

親衛隊長「…決闘、始め!!」バッ

ローレン「」スラッ

ラフテン「」チャッ
159: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 21:49:48 ID:ZOCTCuwxeE
政務官「お、おい!最初から距離を取られてしまったぞ!?」

ヒメ「…合わせて10歩か。おまえの考えてた戦法は封じられたな?」

団長「はっ…しかし最後まで権力を行使してみせる図太さはある意味、天晴れですな」

政務官「た、互いに武器を構えて見合ったまま動かないぞ?」

団長「うむ。それでいい。ここは敢えて距離を保ったまま相手の出方を窺うしかござらん」

ヒメ「そうだな。ローレン王子の立場だったら僕もそうする」

政務官「し、しかしそれでは矢の餌食に…?」オロオロ

ヒメ「放てる矢は一本だ。勝機はある」

団長「いかにも…初撃をかわせばローレン様の勝利は確実?」

政務官「う、射った後に隙が生じたとしても、ああも離れていたら立て直されるのではないか?」

団長「それは万に一つもない」

政務官「な、なぜだ!」

団長「弓使いにとって集中と的は死活問題だ。
これだけの民衆が見守り、期待と重圧を背負う場であれば気が張り詰めて緊張を抑えるのにも苦労を要する」

団長「そして奴が最も拘ってきた王位…それを得られるかが一矢に懸かっていると思えば…なおさらだろう」

ヒメ「あぁ、外せば終わりだ。ラフテンも気が気じゃないだろうな」

政務官「な、なるほど…」
160: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 21:52:53 ID:n15p5hTuR6
ラフテン「どうした、ローレンくん?攻めてこないのかい?
小蝿のように飛び回ってみたまえよ?私の集中が削がれるやもしれんぞ?」ニヤニヤ

ローレン「……」

ラフテン「そうか…。怯えているのだな?無理もない…なにせ私の弓術は南国屈指!
すばしこく森を走り回る野兎や大空を駆け巡る鷹を捉える正確無比な狙いはもちろんのこと、重厚な象の皮膚さえ射抜いてしまう威力はまさに驚異だ?」

ローレン「……」

ラフテン「ぃやあ、君は王となるには底が浅いというか…臆病風に吹かれて縮こまるような情けない男に民は付いていきたいと願うかなぁ?」

ブーブー ブーブー

ラフテン「次第に歓声もヤジに変わってきた?怖がりな君への失望だろうか…?なぁ、ローレンくん?」

ローレン「……」

ラフテン「澄ましてみせているが…本当は決闘なんてやらなきゃよかったと後悔してるんだろう?
いいんだよ?無しにしてあげても…ただし、王位を譲ってくれたらねぇ?」

ローレン「…貴様こそ口ばかり動かしていないで射ってきたらどうだ?」

ラフテン「無理するなよ…?怖いなら怖いと正直に言え?君の周囲にいた者達はとても素直だったぞ?」

ローレン「なに…?」

ラフテン「」ニヤッ
161: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 21:54:00 ID:n15p5hTuR6
ラフテン「君を隠そうとしたメス豚(※母親)も…野心を抱きながら匿ってくれた卑しい叔父夫婦も…。
平民になりすましてた君と心を通わせた下賤な庶民の友人達も…幼くして身売りした汚ない汚ない妹も…みぃぃぃんな素直だったよぉ?」

ローレン「……!?」

ラフテン「死ぬ間際の反応ほど面白いものはないよねぇ?
どれも醜く無様な成れの果て…見れば見るほど笑いと殺意が込み上げる?」ニヤァァァ

ローレン「……!」ビキビキィッ

ラフテン「クハハハハハ!!なんなら一つ一つ細かく教えてあげようかぁ?
君に関わったばかりに死んだ哀れな下等民の最期をさぁ!?」ゲラゲラ

ローレン「……!」ザッ

ヒメ「挑発に乗るな!!」

ローレン「」ピクッ

ラフテン「ちぃっ…これは決闘だぞ!!部外者が横槍を入れるなぁ!?」

ヒメ「……」ジーッ

ローレン「分かっている…!心配するな!」

ラフテン「おいおい…私を無視して檄の応酬か?」イラッ

ローレン「決闘を見守る全ての者共よ!!この俺が王となる瞬間を見逃すな!!」

ワァァァァアアアア!!!

ヒメ「……」ニコッ

ラフテン「アァ〜…!?」ビキビキィッ
162: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 21:55:45 ID:ZOCTCuwxeE
ローレン「ラフテンよ!!射ってこい!?」

ラフテン「はぁ…?」イライラ

ローレン「貴様の野望は王の剣によって断たれる!
醜く無様な成れの果てとやらを民衆の目に焼き付けてやろう!!」

ラフテン「くっ…クハハハハハ!挑発のつもりかな?浅はかだねぇ?」イライラ

ローレン「ふっ!自信がないか?」ニヤリ

ラフテン「あ…?」ピキッ

ローレン「それもそうだな?貴様ごときの矢が俺に届くとは思えん…?武器を捨て、命乞いしてみせろ!」

ラフテン「なんだと…?」ピキッピキッ

ローレン「構えてはみせても不安でたまらないか?
卑怯者の貴様が真正面から決闘など出来る訳がないものなぁ!?」

ラフテン「…下級官族の小倅がぁ!?」キリリッ

ローレン「(よし、これでいい…!後は奴の矢をかわし、一気に勝負を決める…!)」ギュッ

ラフテン「死ねぇい!!」ピッ

ボシュッ

ローレン「(はやっ……)」ザッ
163: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 22:02:21 ID:n15p5hTuR6
ピィィィィィン

ザワザワ ザワザワ

ラフテン「……!」

ローレン「っ…はぁっ!掠りはしたが…勝負はもらったぞ!」ダラダラ

親衛隊長「(お、おぉ…この距離から放たれた矢を間一髪かわしたか…!?)」ドキドキ

政務官「よっ…ヨォォォシィィィ!!」グッ

団長「いや、まだだ…!」

ヒメ「立て直される前に走れ!!」

ローレン「」ダッ

ラフテン「かわした…か。それはどうかなぁ?」ニヤァァァ

ローレン「!?」ガクッ

政務官「ローレン様が躓いたぞ…!?」

ヒメ「あ、焦るな!冷静に……」アセアセ

団長「躓いたのではない…!」

ヒメ「え…?」

団長「も、もしや…先ほどの一撃か…!?」ハッ

政務官「どういう意味だ!?」

ヒメ「暗殺を潜って場馴れしているローレン様はその辺の兵士より強靭な精神を持っている筈だ!掠り傷くらいで……」

団長「いや…ラフテンはわざわざ自分の所持する弓を指定して用意させました。なんらかの仕掛けを施しておるやもしれませぬぞ…!」

ヒメ「毒矢か…!」ギリッ

政務官「ひ、卑劣な…!?」

団長「当然の準備だ!」

政務官「なに!?」キッ

団長「一矢をかわすのが至難なら…一矢で仕留めるのもまた至難!正々堂々と勝負するような相手ではないと分かっていた!
警戒を怠った我々の責任だ!あの場でしかと抗議しておくべきであったわ…!」ギリッ

ヒメ「ローレン…!」ジッ
164: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 22:04:12 ID:ZOCTCuwxeE
ラフテン「お〜こわい?危うく斬られてしまうところだった?
あと二歩、前に出ていれば君の勝利だったろうにねぇ?」ニヤニヤ

ローレン「くそっ…掠めた左足が動かん…!」ズキズキ

ラフテン「さぁて…2本目の矢をつがえさせていただくかな?」キリリッ

ローレン「ふぅっ…ふぅっ…!」ギロッ

ラフテン「どうしたのだね?ローレンくん?命のやり取りだよぉ?
ひざまづいてる余裕はないんじゃないだろうか?」ニヤニヤ

ローレン「ラフテン…!貴様…!?」

ラフテン「それとも私を王と認め、忠誠を誓いたいと?となれば無様な格好も多少はマシに見えるがね?」

ローレン「(何か塗ってあるな…!掠った左足が異様に腫れ上がり、痺れている…!)」プルプル

ラフテン「大変ありがたい申し出なんだが…慈悲深い私は弟を臣下として扱うなど心苦しい?」

ラフテン「よって……君には今、ここで死んでもらう?私からのせめてもの餞だ?」

ローレン「(まだだ…!まだ…立ち上がらねば…!)」ワナワナ

ラフテン「言い残すことはあるかね?」ググッ

ローレン「……!」バッ

ラフテン「ないようだね?」シュピッ

ドスッ!

キャアアアアアアア!!!
165: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 22:06:24 ID:n15p5hTuR6
ラフテン「……!?」

ローレン「ぐっ…これが象の皮膚をも撃ち抜く矢か!?笑わせるな!?」ブシュッ

親衛隊長「(肩を差し出して矢を防いだ…だと…!?)」

ワァァァァアアアア!!!

ローレン「心臓ではなく頭を狙うべきだったなぁ…!ラフテン!?」フシューフシュー

ラフテン「バカな…!?」ブルッ

ローレン「気弱な貴様のことだ。なるべく広い的を狙おうとしたんだろうが…その臆病な気質が俺に猶予を与えてしまった…!」ギロッ

ラフテン「お、同じ事だ!!もろに肩を射ぬかれた…今度は毒が全身に廻るぞ!?」ニヤリ

ローレン「なら、その前に殺す!!」スチャッ

ラフテン「ま、まま待てぃ!?なぜ立ち上がる!?」アタフタ

ローレン「なぜだと…?」ギュッ

ラフテン「ひ、左足は…!?それに…今も肩から全身に毒が…!?」アワアワ

ローレン「毒がどうした…!貴様ら王族に運命を曲げられた俺の孤独は…こんな物ではなかったぞ!!」グオッ

ラフテン「ま、待て!待て!待て!待て!」アセアセ

ローレン「言い残す…事は!?」フシューフシュー

ラフテン「あ、ある!ある!無限にある!だから待て!とりあえずおちつ……」

ローレン「おぉおおおおお!!!」ブンッ

ドバッ!

ラフテン「っ……!!!」ブシャアアアアア

ローレン「聞く気はないがな……」ピシュッピシュッ

オォォォオオオオオ!!!
166: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 22:10:52 ID:n15p5hTuR6
ラフテン「うっ…ぎぁああああああああ!!!!」ゴロゴロ

ローレン「ちっ…外したか…!」ゼェゼェ

ラフテン「うえぁああああ!!う、う、ウデェェエエエ!!!」バタバタ

ローレン「次は…外さん」グッ

ラフテン「ば、ばばばばでぇ!!まっでぐれぇぇぅ…!!」バッ

ローレン「……?」

ラフテン「わだしの…まげだぁ…!もう…おうになんか…ならない…!だがら…だが…ら……ゆるしてくれぇ!!」ブワァッ

ローレン「……」

ラフテン「たのむ…!たのむよ…ローレン…」ポロポロ

ローレン「……」

政務官「耳を貸してはなりませんぞ!!
ここで切らねば奴はまた同じように貴方を付け狙う!!」

団長「容赦は要らぬ!!外道を叩き切ってしまえ!!」

ローレン「」チャキッ

ラフテン「ひやあっ!!」ビクビクゥッ

ローレン「……」ググッ

ラフテン「ロー…レン……ちがうんだ…ちがうんだよ…ぜんぶ、うそだ?」ブルブル

ローレン「……」

ラフテン「おれは…きみの知人を…ころしてない…!ほかのきょうだいだ!!」ポロポロ

ローレン「今さらそんな言い訳が通るとでも…!」ギリッ

ラフテン「ほんとなんだよ!ぜんぶ、でたらめだ!!おまえをまどわすためのうそだ!!しんじてくれぇ!!」ガバッ

ローレン「しがみつくな!!」ゲシッ

ラフテン「ぐげっ!?」ドサッ
167: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 22:12:45 ID:ZOCTCuwxeE
ローレン「潔く散れ…!貴様に殺された多くの犠牲者の為にもな…!?」

ラフテン「〜〜〜!」ポロポロ

ローレン「っ……」タジッ

ラフテン「…わかった」

ローレン「は…?」

ラフテン「殺せ……私の負けだ」

ローレン「兄上……」

ラフテン「これで罪滅ぼしとなるのなら…それでいいさ」

ローレン「……」

ラフテン「さぁ殺れ!!私の首を跳ねるがいい!!」カッ

ローレン「…いい覚悟だ」チャキッ

ラフテン「……!」キュッ

ローレン「ふんっ!!」ブンッ

ラフテン「……!」ブルブル

ラフテン「…」ブルブル

ラフテン「え…?」パチッ

ローレン「……」

親衛隊長「(ローレン様の降り下ろした剣がラフテン様の眼前で止まっている…?)」

政務官「な、何をしてるんだ…!」ギリッ

団長「……!?」

ヒメ「……」
168: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 22:17:58 ID:n15p5hTuR6
ラフテン「ローレン…!私を…許してくれるのか…?」ウルウル

ローレン「……」クルッ

ラフテン「ありがとう…!ありがとう…!」グシッ

ローレン「」スタスタ

ラフテン「本当にありがとう…!片腕にはなってしまったが……」ガッ

団長「いかん!!」ハッ

ラフテン「これで王位は…私の物ダァァァアアアア!!!」ダッ

政務官「直接、毒矢を突き刺す気だ!!」

ラフテン「もう遅いわぁぁあああ!!」ブンッ

ヒメ「ローレン!!」

ジャッ ヒュオンッ

バシュッ!!

ラフテン「え?」プシャアアアアア

ローレン「全部、読めていたさ…。俺はただ公言を果たしたまでだ?」ピシャッ

ラフテン「(あれ…?視界が…急降下して…?)」ヒューン

ボトッ

ローレン「醜く無様な成れの果て…確かに見させてもらったぞ。ラフテン?」チャキンッ

ヒメ「…!!」

団長「(振り向き様、一刀で正確に首を切り落とした…!よほどの達人でもほぼ不可能な芸当だ…!?)」
169: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 22:20:10 ID:n15p5hTuR6
ワァーワァーキャーキャー!

親衛隊長「」ポカーン

ローレン「おい…!」ゴフッ

親衛隊長「……」ポカーン

ローレン「おい!!」ガシッ

親衛隊長「うっ…」グンッ

ローレン「決着は付いたぞ…!」ギロッ

親衛隊長「うっ…わ、分かりました。お離しください!」プルプル

ローレン「……」パッ

親衛隊長「この決闘!ローレン王子の勝利とする!!よって南国第9代国王は…」

オォォォオオオオオ!!!

パチパチ パチパチ

親衛隊長「まだ言い終わっておらんだろうが!?」

南の貴族1「ふざけるなぁっ!?」

ザワッ

南の貴族1「我々に断りもなく決闘など始めおってぇ!?どういうつもりじゃあ!!」

南の高官1「そ、そうだ…!先代の追悼もせずに兄弟で覇を争って殺し合いをするなど非常識にも程がある!?」

南の貴族2「だいたいそこにいる貴様らはなんだ!?
鎧に王国の紋が入っているが…まさか貴様らが仕向けたんじゃなかろうな!?」

ヒメ「……」

政務官「ま、まずいですぞ…!?」
170:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 22:21:34 ID:ZOCTCuwxeE
ワァーワァーギャーギャー!

親衛隊長「(こ、ここはどちらに付くべきか…!)」

ローレン「鎮まれぃ!!」カッ

ピタッ

ローレン「はぁっ…はぁっ…王族の血は流し尽くした…!次は皆の番だ…!?」ヨロッ

ザワザワ ザワザワ

ローレン「国王として…最初の決定を告げる…。一度しか言わん…よく聞け…」ゼェゼェ

シーン

ローレン「我が南の国はこれより王国を盟主とし、東の国と3国連合軍を結成する!!」

南の貴族's「なっ…!?」

南の高官's「!?」

南の民's「」ギョギョッ

ローレン「打倒すべしは我が父を暗殺し、平和協定に亀裂を入れようと企む邪悪な蛮族、西の国なり!!」

オォォォオオオオオ!!!

南の貴族1「国王を…暗殺…?」

南の貴族2「どういうことじゃあ!?」

南の高官1「し、知りません!私は何も!?」

南の高官2「だが…それが本当だとしたら……」

ローレン「」バタッ

親衛隊長「ローレン様!?」ガバッ

ローレン「しゃべり…すぎたか」ハァッハァッ

親衛隊長「い、医術師を呼べ!?」

親衛隊「ははっ!!」

ヒメ「……!」
171: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 22:24:34 ID:n15p5hTuR6
>>152
応援ありがとうございます!
ローレンよりも自分が励まされましたw
172:名無しさん@読者の声:2015/8/31(月) 22:43:26 ID:dxZVYTtbOU
よし、これでいよいよ西の国に…!

そして主人公が120レスほど不在な件。
173: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/31(月) 23:07:41 ID:xEzm2y3PV.
>>172
ここまで書くのに1年以上かかりましたw
ようやく西の国との戦いを書けますねw

正直なところ最初のお祭りのくだりは物語と全く無関係なんですが展開的にヒメが主人公になっちゃいそうな勢いだったので無理やり入れましたw
主人公なのに登場はもうちょっと先になりそうですw
感想ありがとうございました!
174:名無しさん@読者の声:2015/9/7(月) 15:48:35 ID:9iH8agCG2s
めっちゃ盛り上がってきましたね!
楽しみです!
兵法?とか政治戦略とか、とても面白く書かれているのですが、一体どこから学んでいるのでしょうか…笑

175: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/7(月) 22:09:03 ID:NGXd8txerw
>>174
そう言っていただけて嬉しいです!
作中の兵法や戦略は以前に書かせていただいた『とある兵隊のおはなし』でもそうだったのですが特に下調べはせず独断と偏見で書いてますw
なので詳しい方から見ればツッコミ所満載のデタラメな作りになってるかもしれませんw
これから出てくる策略や戦法も多分おかしな内容だと思いますが暖かい目で見ていただけたら幸いです!
感想ありがとうございました!
176: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/9(水) 20:56:51 ID:uPayho02ls
〜〜〜数週間後〜〜〜

―――東の国(協議堂)―――

ヒメ「まずは両国にお力添え賜れた事、誠に感謝申し上げます!」

ローレン「ふっ…張り切っているな?」

ヒメ「当然ですよ。やっと活路が見えたんですから!」

ローレン「そう言ってもらえるなら、こちらも了承した甲斐があるというものだ…」

ヒメ「あれから経過はどうですか?病み上がりですから不調を感じたら遠慮せずに言ってくださいね?」

ローレン「心配無用だ。多少の麻痺は残っているが…」

宰相「…おほんっ!!」

ヒメ「あ…すみません?こちらだけで話してしまって?」

宰相「いえ…」ギロッ

ローレン「ん…?」

ヒメ「宰相殿…?」

宰相「最初に確認がございます…」

ローレン「何を確認したいのだ…?」

宰相「…そちらが西の計略に関わっていたというのなら我が王の暗殺にも関与していたのでは?」

ヒメ「……!」

ローレン「あぁ、聞かされてはいたな…」

ヒメ「え?」

宰相「……!」ガタッ

ローレン「だが俺は関与していない」

宰相「知っていながら黙認したと言うのなら同じ事だ…!」
177: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/9(水) 20:59:26 ID:uPayho02ls
ローレン「早速、決裂だな…。ならば俺とヒメ殿でやらせてもらう」

ヒメ「ちょ、ちょっと待ってください!まだ始まって間もないのに…!」アセアセ

ローレン「俺は東の国とは縁もゆかりもないからな。
突然、難癖を付けてくるような相手と分かれば親しくはせんよ」

宰相「ヒメ国王はこちらに付く!西の国を滅ぼしたら次は貴様らの番だ!?」

ヒメ「お、おやめください!お二人とも冷静に…!」アセアセ

宰相「我が王を見殺しにした者と組む気はない!!」

ローレン「結論は出た。続けても無駄だ」

ヒメ「なぜですか!ようやく…ようやくこの時が来たんですよ…!?」

宰相「急を要する事態であれ、見過ごせぬ事もございましょうが!!」

ローレン「こうも敵愾心を持たれては話にならん」

ヒメ「落ち着いてください!ちゃんと話し合ってからでも遅くは…」

宰相「私は譲りませぬ!!」

ローレン「同じく…」

ヒメ「〜〜〜!」
178: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/9(水) 21:01:56 ID:JkKuuTtydw
宰相「ヒメ国王!南の国などに出しゃばらせるまでもございません!我々のみで立ち上がりましょうぞ!」

ローレン「ヒメ殿に力を貸すのは構わないが…この有り様では連携は望めない。東の国には外れてもらおう」

宰相「王国に話を持ち掛けたのはこちらが先だ!?」ダンッ

ローレン「貴様らの事情など知らん。世継ぎ探しに専念するがいい?」

宰相「若造がぁ…!」

ローレン「言葉に気を付けろよ?俺もあまり気長な方ではない?」

ヒメ「もうやめっ…」ガタッ

ギィィィィィイイ

3人「!?」ピクッ

ミリア「お話は進んでらして?」ヒョコッ

宰相「お、王妃様!?」

ローレン「……」

ヒメ「み、ミリア様…なぜここに?」
179: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/9(水) 21:02:50 ID:uPayho02ls
ミリア「根を詰めすぎると疲れちゃいますわ?一休みなさって甘い物でもいかがですか?」ニコニコ

東の召し使い「」ガラガラ

宰相「王妃様!そのような気遣いは無用です!」アタフタ

ローレン「解せないな。王妃殿、自ら茶菓子を用意させるとは…?」

宰相「なんだと無礼者め!?」

ミリア「まぁまぁそういがみ合わず?さ、皆様のお席に配って差し上げて?」

東の召し使い「」コトッ

ヒメ「……?」オロオロ

ローレン「毒は入ってないだろうな…?」

宰相「王妃様の気遣いになんたる言い様だ!?」

ミリア「ローレン様は冗談がお上手ですのね?」ニコニコ

ローレン「……」

ミリア「宰相殿もカッカなさらず召し上がってくださいな?」ニコニコ

宰相「きょ、恐縮です…」パクッ

ミリア「どうぞ皆様も遠慮なく?」

ヒメ「い、いただきます!」パクッ

宰相「むぅ…」モグモグ
180: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/9(水) 21:03:53 ID:uPayho02ls
ヒメ「ご、ごちそうさまでした!いやーおいしかったなー?」チラッ

宰相「…貴様、なぜ手をつけないのだ?」

ローレン「……」

宰相「答えんか!?」

ヒメ「……」オロオロ

ミリア「」ヒョイッ パクッ

3人「えっ」

ミリア「んぅ…美味しいですわよ?」モグモグ

宰相「ミリア王妃…?何を…!?」

ミリア「ローレン様が安心なされるかと思いまして毒味を?」ゴックン

宰相「ど、ど、毒味…!?」

ミリア「どうぞローレン様?」ニコニコ

ローレン「……」スッ パクッ

ミリア「お味はいかが?」ニコニコ

ローレン「…美味だ」

ミリア「ありがとうございます?宮廷の料理人さん達も喜びますわ?」ニコニコ

ローレン「……」
181: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/9(水) 21:05:13 ID:JkKuuTtydw
宰相「王妃様!!」

ミリア「はい?」ニコニコ

宰相「そのような者に配慮なさる必要はございません!!その男はブルードル陛下を……」

ミリア「ねぇ、ヒメくん?」ニコニコ

ヒメ「は、はい!」ビクッ

宰相「聞いてますか!?」

ミリア「貴方にとってローレン様は信頼に足るお方ですか?」ニコニコ

ヒメ「もちろんです!でなければ協力を要請したりしません!」

ミリア「そう?なら私も信じます?」ニコニコ

宰相「はぁ!?」

ローレン「……!?」

ミリア「宰相殿のお言葉に気を悪くされたかと存じますわ…。代わって心よりお詫び申し上げます」ペコッ

ローレン「…王妃殿に頭を下げていただく謂れはない」

宰相「ミリア王妃!!」

ミリア「貴方は先ほどから何をしているのです?」フカブカ

宰相「は…?」

ミリア「私に頭を下げさせたまま傍観なさいますの?」フカブカ

宰相「うっ…!」
182: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/9(水) 21:05:37 ID:uPayho02ls
ローレン「お気持ちは重々伝わった…。俺は何も気にしておらん…」

ミリア「宰相殿が暴言を撤回し、謝罪するまでは畏れ多くて面を上げられないですわ?」フカブカ

宰相「……!」

ヒメ「宰相殿…」ジーッ

宰相「くっ…申し訳ございませぬ。どうか先の言葉は記憶から消してもらえないだろうか…!」ペコッ

ローレン「うむ。許そう…」

ミリア「ありがとうございます?なんて寛大なお方でしょう?」パァァ

ローレン「とんでもない…」

ミリア「宰相殿?」クルッ

宰相「……?」

ミリア「ヒメ国王のお味方を疑ってはなりませんわ?それはヒメくんを疑うのと同じ事ですわよ?」

宰相「は、はっ…しかしブルードル陛下の暗殺を知っていながら……」

ミリア「ローレン様を逆恨みするのはおよしなさい。亡き陛下も呆れておられますわよ?」

宰相「…も、申し訳ございませぬ」

ミリア「誠に大変ご迷惑おかけしました…」ペコッ

ローレン「お構い無く…こちらも不謹慎な発言をしてしまい、申し訳なかった」
183: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/9(水) 21:07:46 ID:JkKuuTtydw
ミリア「ではごゆっくり?」パタンッ

シーン

宰相「……」

ローレン「……」

ヒメ「気を取り直して話し合いましょうか?」ニコッ

宰相「その前にローレン様…」

ローレン「なんだ?」

宰相「改めて失言をお詫び致します」ペコッ

ローレン「…その話は終わっている」

ヒメ「……」ホッ

宰相「ヒメ国王にも申し訳ないことを…」

ヒメ「僕は何も…?」

ローレン「悪いが自国の問題を抱えていた俺はそちらに気を配る余裕もなかったんでな…」

宰相「当然でしょう…。とんだ醜態をお見せしてしまいました…」

ヒメ「ローレン様はどのような繋がりで西の国と共謀されたのですか?」

ローレン「実のところ…俺はほとんど計画に関わっていない。奴らが忍ばせた間者から密書を受け取っただけだ」

ヒメ「そうだったんですか…。では密書の内容は?」

ローレン「西の国への亡命を条件に王位獲得を後押しするとあったので俺は間者に返事を渡した。
その後、計画の説明や手引きなど、やりとりはしていたが直接は会っていない…」

ヒメ「…なるほど」

ローレン「後は知っての通りだ?」

宰相「ますます誤解しておりましたな…」ズーン

ローレン「いや、説明不足だった…」

ヒメ「(一切の情報を明かさずにローレン様を動かしていたのか…。
やっぱり、ただの独裁国家じゃない…。政略、軍略に秀でた者もいれば無鉄砲で大胆な奴もいて…まるで知性と野生が共存したような国だ)」

ヒメ「(そして何より恐ろしいのは曲者揃いの配下を一手に纏めてみせてるファルージャの異常なカリスマ性……魔性の異名はあながち嘘じゃなさそうだな…)」

ヒメ「(3国で立ち向かう心強さはあっても全く安心できない敵だ…!)」
184: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/9(水) 21:09:40 ID:uPayho02ls
〜〜〜〜〜〜

宰相「…これで纏めましょう。お二方とも異存はございませんか?」

ヒメ「異存ありません」

ローレン「俺も異存ない」

宰相「では3国代表による会談を締めたいと思います。ありがとうございました」ペコッ

ヒメ「ありがとうございました」ペコッ

ローレン「ありがとうございました」ペコッ

宰相「最後にこれを…」ピラッ

ローレン「…?」

宰相「はい。こちらに署名いただきたい」

ヒメ「誓約書…?」

宰相「今回は情報漏洩を防ぐ為、敢えて家臣らを加えずに代表のみで会合の場を設けました。
よって…各代表の署名を頂き、ここに共闘の誓いを立ててもらいたいのです」

ローレン「いい案だ。何か一つ形に残しておけば後世にまで楔を打てる」

ヒメ「この誓いが有る限り、裏切った者は歴史的大罪人となりますね。まぁ裏切る方なんていないでしょうけど?」

宰相「お二方を疑う訳ではないのですが事の大きさを考えますれば必要な措置かと思いましてな」

ローレン「うむ…」カリカリ

ヒメ「では僕も?」カリカリ

宰相「ふむ…これで3国は運命共同体となりました。我らの誇りに誓って本懐を遂げてみせましょうぞ!」

ローレン「ふっ…」ニヤッ

ヒメ「えぇ、必ず?」ニコッ

宰相「うむ…!では…決戦の日、またお会いしましょう!」コクリ
185: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/12(土) 21:58:12 ID:80Swz/CGlc
―――西の国(宮殿)―――

ギシギシ アンアン ギシギシ アンアン

美男1「お、おぉ…もぉ…!」ズンッズンッ

ファルージャ「んっ…アァ…!まだじゃ…!足りぬ!」ガシッ

美男2「れろ……えっ?」グイッ

ファルージャ「むちゅっ…」ジュルッ

美男2「っ…っ…ッッッ!!!」ヘナヘナ

ファルージャ「はっ…」ニギッ

美男3「あがぁぁああ!!じょ、じょ女王陛下ぁぁああ!!!」ガクガク

ファルージャ「はぁん…?硬くいきり立っておるわ?そんなにも妾を求めるか?」シュッシュッ

美男3「ぐっ…!ま、まずい…ぐあぁぁぁっ!!」ビクンビクン

美女1「女王様の汗と私の汗が混ざりあって…んっ…」ピチャピチャ

ファルージャ「よいぞ…?もっとじゃ…妾に快楽を捧げよ?」スッ グチュッ

美女1「あっ…あぁ!ハァァァァン!!!」プシャー

美男1「女王様ぁぁぁああああ!!!」ビクンビクン

ファルージャ「……果ててしもうたか。次?」

側近3「ははっ!どれでもお好きにお召し上がりくださいませ!」

美男's「ハァッハァッ!」ズイッ

美女's「もう…我慢できない…!」クネクネ

ファルージャ「クスス…少しは退屈も紛れそうさな?」レロッ

全員「(女王陛下の舌なめずりィィィィヒィィアアアア!!!)」ドクンドクン
186: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/12(土) 21:59:17 ID:NoRmDAGEHw
ギシギシ アンアン ギシギシ アンアン

女装家「なによ…!なんなのよ、これ…!?」ギリギリ

将軍「め、目の前に楽園があるというのに…我輩らはただ見ている事しか出来ぬのか…!?」ワナワナ

魔導師「(いいなぁ…)」ジーッ

側近3「申し訳ございません。女王たっての希望ですので?」

女装家「な、なんでよ…!なんでオネェ様はアタシ達にこんな苦しみを与えるワケ…!?」

将軍「グオォォェ…ッグフゥ!鎮まれ、鎮まるのだ、カカドゥーラ2世よ…!まだその時ではないぃぃ…!」ギンギン

魔導師「……」

側近3「見られてると意識するのが気持ちいいとおっしゃってました。
それから営みを晒す事で美容に繋がるのだとか…」

女装家「じゃあアタシがオネェ様とムチュムチュアハンしてくるからアンタ達が眺めてなさいよ!?」

将軍「くそオカマがぁ!?誰が貴様なんぞに触らせるかぁ!?女王は我輩の嫁だぁ!?」

女装家「はぁぁぁ!?いつアンタの嫁になったのよ!?オネェ様はアタシのなんだから!?」

魔導師「おやおや…聞き捨てならないなぁ…?」

将軍&女装家「あぁん…?」ギロッ

側近3「……!?」

女装家「テメェら首へし折るぞ、ゴラァッ!?」ガァーッ

将軍「イチモツを握り砕いて"女"にしてやろうか…?」グッパッ

魔導師「今からその身に起こる不幸、受け入れる覚悟は出来たかい?」ニギニギ

側近3「お、お三方とも……」アセアセ

ファルージャ「んっ…はぁ…そなたら、何をじゃれあっておる?」キッ

三銃士「」ビクッ

ファルージャ「よそ見するな?ンゥゥっ…妾に、集中せよ…?」ギシギシ

女装家「いやぁんっ!違うの、オネェ様?こいつらが邪魔するから…」アセアセ

将軍「な、何をぅ!?元はと言えば貴様が……」アタフタ

魔導師「ごめんよ、女王…嫌わないでおくれ?」シュン
187: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/12(土) 22:01:57 ID:NoRmDAGEHw
美男美女's「」グッタリ

ファルージャ「フゥ〜…馳走であった」ホクホク

側近3「衛兵!交わった連中を処刑場に連れていけ!」

西の衛兵's「ははっ!!」ザザザッ

ファルージャ「見せつけるのも良いものさな…?いっそう肌が艶めくわ?」ツヤツヤ

側近3「(一度に20人も相手して息一つ乱していない……)」

女装家「くぅぅ…!し、下衣がビショビショに…」プルプル

将軍「わ、我輩もだ…!」ベチョッ

魔導師「疼くなぁ…」モジモジ

ファルージャ「そなたらの視線もなかなか扇情的であったぞ…?」ニタァァァ

将軍「お、お役に立てたのであれば…」ウズウズ

女装家「この上ない光栄……」ウズウズ

魔導師「……」ウズウズ

ファルージャ「クスス…」

女装家「あのぅ…オネェ様ぁ?」

ファルージャ「なんじゃ?」

女装家「そ、その…ずいぶんお預けくらってますしぃ?そろそろ…」

ファルージャ「…はっきり申さぬか?」

女装家「…あ、アタシもご褒美が欲しいなぁ…なんつって…?」ムラムラ

将軍「そ、それを言うなら我輩もご無沙汰だ…!?」

魔導師「自分も半年以上、触らしてもらってない」

ファルージャ「ほう?おねだりかえ…?」

女装家「だ、だってオネェ様ってば最近、奴隷を飼ってみたりホビットの血を啜ったりアタシ達に見せつけたり…全然、構ってくれないんですもん」イジイジ

将軍「正直に申しますればヤりたいの一言に尽きる!!」ドドンッ

魔導師「」ジーッ

ファルージャ「フゥン……」
188: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/12(土) 22:06:23 ID:NoRmDAGEHw
ファルージャ「側近、手を差し出すがいい」

側近3「はっ!」スッ

ファルージャ「は…む……」カプッ

側近3「」ビクンッ

チュピッ チュパッ レロォッ ニュチュッ ジュルルルル

女装家「(ゆ、指を…!?)」

将軍「(な、なんといやらしく、そそられる舌使いだ…!?)」ゾクゾク

魔導師「(なんであんな奴に…)」ムカムカ

ファルージャ「ふはぁっ…ふふふ……」チュポンッ

側近3「あひぇ〜」ヘナヘナ

ファルージャ「そなたらがもたついておる間…妾がどれほど身の渇きに悶えていたか知ってるか?」

女装家「っ…」

将軍「うぐぅ…!」

魔導師「……」

ファルージャ「焦らされているのはどちらか理解できような?」

女装家「で、でもぉ〜…待ったら待った分だけ手に入れた時、甘美になるって言うしぃ〜?」

ファルージャ「」ジッ

女装家「は…!?」

ファルージャ「待つのは嫌いじゃが…待たされるのはもっと嫌いじゃ?」

女装家「!?」ガーン
189: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/12(土) 22:11:36 ID:NoRmDAGEHw
ファルージャ「妾の元に再三に渡り、このような文が届いたぞ?」ピラッ

将軍「そ、それは…!?」

ファルージャ「抗議文だそうな?」ピンッ

将軍「」パシッ シゲシゲ

女装家「ちょ、ちょっとぉ〜!なによ、コレぇ!?
鉱山地帯一画、南の国に壌土せよとかどんだけぇ〜!?
あの鉱山はアタシの所有地よ!?あんな金脈、タダでやれるワケないじゃなぁーい!?」

魔導師「東国民の返還…?あぁ、自分と一緒に研究所に連れてこられた連中だっけ…。
懐かしいなぁ。もうとっくに死んじゃったもんねぇ」シミジミ

将軍「お、王国領への立ち入りを一切禁じるだとぉ…!?何様のつもりだぁ…!?」ギリギリ

「拉致騒動、暗殺…どちらも関与した確証はありませんが一方的に流布されているようです」タッ

三銃士「!?」クルッ

参謀「流言を阻止し、不当な要求を公に明かそうかとも考えましたが…。
当事者である3国の一致した公言もさることながら…"西の国"の悪名が祟って擁護派に回る国は皆無となっておりまする」

将軍「…何をしている?貴様を呼んだ覚えはないぞ?」

ファルージャ「妾が呼んだのじゃ」

将軍「はっ…!?」

参謀「ご機嫌麗しゅう。我らが愛しき女王陛下」ザッ

ファルージャ「うむ。苦しゅうない?」

将軍「……!」ビキビキィィッ

ファルージャ「ピクスィよ。そなたを最高司令官に任ずる」

参謀「はっ!」ザッ

女装家「さ、最高司令官って…?」

側近3「っ…ぐ、軍の権限だけでなく、政務においても独自の決定権を持つ官の最高位ですね…」フラッ

将軍「な、ん、だ、とぉぉおおお………!!!!!」ゴゴゴゴゴ

魔導師「なんで急に偉くなったんだい?」

参謀「…以前より女王に打診してましてね」
190: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/12(土) 22:14:15 ID:NoRmDAGEHw
将軍「認めんぞぉ…!女王、何故こいつが最高司令官に…!?」

ファルージャ「そなたらが動かぬからと言うておろうが?」

参謀「皆さんの不甲斐ない働きが敵を調子付かせ、女王の美しいお顔に泥を塗ってしまったのですよ?」

女装家「だ、だってアンタが色々イチャモン付けて、まだ早いだの作戦があるだの…!」

将軍「我輩を出し抜こうと作戦を遅らせてきたのではあるまいなぁ…!?」

魔導師「自分は言われた通りに二国の王を殺してきたんだけど」

参謀「言い訳は聞こえませんね?なんにしろ皆さんが遅れを取っておられたのは確かでしょう?」

将軍「なぁにぃをぉぉううう〜〜…!?」

参謀「閣下は策も練らずに突撃だ、突撃だと息巻くばかり」

将軍「あぁん…!?」ギヌロォォォ

参謀「シャルウィン様は鉱山を空にしてから明け渡すとごねて交易を遅らせてますよね?」

女装家「ど、どうせ向こうだって産地がどうだの、どの宝石が欲しいだの言い争って全然、細かく決まらないんだからいいじゃないのよぅ!?」

参謀「今はなんとか隠してますが本格的に視察に訪れた際に掘り尽くされた鉱山を見られれば交易は破棄になりますよ」

女装家「っ…!?」

参謀「パカラゥロ様に至っては致命的ですね。あれだけ病死扱いでとお願いした筈ですが…まさか暗殺を見破られるとは?」

魔導師「見破られるような計画立てたのはキミじゃないの…」

参謀「貴方の失敗が引き金となり、大いに日を費やして孤立させた王国も今や2国を味方に付け、持ち直しておりまする。
果ては連合軍の盟主に登り詰める程の大躍進…もはや驚異と言っても過言なき大敵にございます」

魔導師「……」ムスッ
191: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/12(土) 22:18:45 ID:80Swz/CGlc
ファルージャ「フッ…顔に泥を塗られた、か。妾にしてみればどうという事もないわ?」

参謀「?」

ファルージャ「この身にこびりついた汚点の数々…振り返れば、まっさらであった頃すら見当たらぬ」

ファルージャ「唯一残されたのは全てを凌駕する美のみよ…。
この美さえも窶れ果てようものなら…妾にはいったい何が残ろうか?」

将軍「……!」

女装家「う、うぅん…」

魔導師「自分はどんな女王だって好きさ」

ファルージャ「クスス…なんと嬉しい言葉か。じゃが…僅かな愛では満たされぬのよ」

魔導師「女王…」

ファルージャ「愛されたいのじゃ。誰からも。愛すればこそ人は一途に執着する」

ファルージャ「愛する者の為とあらば、その身を擲つ程に熱を宿した使命感が産まれる…」

ファルージャ「愛とはすなわち究極の束縛じゃ…」ニタァァァ

将軍「……!?」

ファルージャ「愛による支配…。狂気とまで呼べる崇拝…。
捧ぐ愛、受け入れる愛…純粋な愛に溢れた素晴らしき世界…ふっ……ふふふ」プルプル

参謀「(危険思想とかじゃない。単なる異常者だ…)」シラー

女装家「ステキ…!とってもステキよ、オネェ様!!」パァァ

将軍「たぎってきたぞぉぉぉううう!!!我輩は女王への愛に生きる!!!」ムキムキィッ

魔導師「…んふふ。なんでもいいさね。女王が喜ぶなら」ニヤリ

側近3「女王陛下バンザーイ!!」

西の衛兵's「おぉぉぉぉぉおおお!!!」バンザイ

ワァーワァー! ワァーワァー!

ファルージャ「妾に楯突く愚かな国々に知らしめてやるがいい。真の愛の力をな…?」ニヤニヤ
192:名無しさん@読者の声:2015/9/18(金) 18:13:58 ID:yaw1TjHUAo
ファルージャのカリスマに心酔しないとか、参謀はある意味最強候補だな…
他に悪役サイドのキャラだと、ファルージャや魔術師が好きです。悪人ながら己の信念を貫いてるのがいい
193: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/18(金) 21:32:45 ID:1ddY1OvGrg
―――王都(王宮)―――

宣教師「どういう事なのですか!」バンッ

役人1「どうもこうもない。とっくに決まった事だ」

宣教師「あなたでは話になりません!国王を呼んでください!」

役人1「な、なにぃ…?こっちはわざわざ政務の合間を縫って対応してやってるんだぞ!
この多忙な時期に突然、押し掛けて国王に謁見賜ろうなど思い上がりも甚だしい!」

宣教師「説明もなく、こんな要求を押し付けてきたのはそちらでしょう!」バサッ

役人1「だからなんだ!国の決定に逆らう気か!」

宣教師「国民の権利を無視して法案を通すのですか?民を主とした国家に違反してますよ!」

役人1「ああだこうだと喚くな!いかがわしい宗教団体の分際で……」

宣教師「いかがわしいとは聞き捨てなりませんね!私達は公式に認められた慈善活動家ですよ!」

役人1「くっ…」

ガチャッ

政務官「何事だ」

役人1「り、リルラ政務官…」

政務官「言い争う声が廊下にまで響き渡っているぞ」

役人1「こ、この女が怒鳴り込んできまして…人の話も聞かずにずけずけと騒ぎ立てるんですよ」

宣教師「話を聞いてないのはあなたでしょう!私はただ納得のいく説明を求めてるだけです!」

役人1「だから何度も言ってるだろ!国の決定であると!?」

宣教師「そんな雑な説明でどう納得しろと!?」

政務官「分かった、分かった…。お前は仕事に戻っていい。私が話を着けよう」

役人1「え?いや、しかし政務官の手を煩わせるまでも……」

政務官「下がれと言ってるんだ?」ギロッ

役人1「うっ…は、はい…」シブシブ
194: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/18(金) 21:35:10 ID:1ddY1OvGrg
政務官「では改めて要件を伺おうか」

宣教師「この法案の概要と教団に対する命令、二つの説明を求めます」バサッ

政務官「…書いてある通りだ。我が国はこれより西の国打倒に向けて軍備を整える」

宣教師「なぜ国民の意思も問わず戦争をするのですか!?」

政務官「…国王自らが打ち立てた決定だ」

宣教師「ヒメくんが…!?」

政務官「そちらもある程度の事情は聞いているのだろう?」

宣教師「知ってますけど…彼に限って、そんな決定する筈がありません!」

政務官「西の国による被害が本格化しているとしてもか?」

宣教師「え?」

政務官「先日、南と東の両国王が暗殺された件は知っているな?」

宣教師「は、はい…」

政務官「これが何を意味するか分かるか?」

宣教師「た、大変な事態かと…」

政務官「世界的に見ても稀…というより、絶対にあってはならない一大事だ」

宣教師「……!」
195: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/18(金) 21:37:26 ID:1ddY1OvGrg
政務官「確実に言えるのは…今回、国王陛下の下された決定は紛れもなく英断であった」

政務官「なにせ二つの国の象徴が易々と剥ぎ取られ、丸裸同然にさせられたのだ。この事実は各国に激震を与え、どの国も現在、戒厳令が敷かれている」

宣教師「で、ではなぜ3国だけで対処するのですか?同盟国で力を合わせれば……」

政務官「そうもいかないからこそ早期の対応が迫られているのだ」

宣教師「?」

政務官「理由はいくつか挙げられるが…まず此度の連合軍結成は同盟国を通さず打ち上げた物だ」

宣教師「そ、それなら打ち上げた後でお声かけすればいいのでは?」

政務官「幼い王の立つ国が盟主に掲げられ、王を失った危うい統制下にある2国を率いて戦う…端から見れば無謀極まりない話だ?」

宣教師「どの国も立ち上がらないと…?」

政務官「立ち上がるどころか警戒視されている」

宣教師「え?な、なぜです?」

政務官「この連合勢力は同盟から独立した組織と見なされているからだ」

宣教師「な、なんだか…難しいんですね?」

政務官「当然だ。思惑の数だけ話は拗れ、キリのない問題に追われれば疑心暗鬼に駆られる。
そこで様子見を決め込むか、打って出るか…どちらにしろ正解は永久に出ない」

宣教師「永久に…?」

政務官「たとえ今は良い結果を残したとしても…ここから先、100年後か200年後か分からないが…その経緯が何か恐ろしい事態に結び付く可能性が無い訳ではない」

宣教師「っ…」ゴクリ

政務官「我々がいかに頭を悩ませ、議論したところで保障してやれる未来など2、3年がせいぜいだ?
その保障さえ確信ではなく、"おそらく"といった勘に留まる」

宣教師「せ、政治についてはよく分からないですが…本当に…どうにもならないのですか…?」

政務官「なるべくなら戦闘は回避したいが…残念ながら手を尽くした上での決定だ」

宣教師「そんな……」

政務官「貴方は私より余程、陛下の性格をご存知だろう」

宣教師「はい…」

政務官「その陛下が誰に指図を受けるでもなく…御自身で決められた答えだ」

宣教師「……」
196: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/18(金) 21:43:07 ID:1t/IcgHa3c
政務官「次はこちらの要求に関する説明だったな?」

宣教師「は、はい」

政務官「司祭殿には教団の代表として想定される反対運動の鎮静化に当たってもらいたい」

宣教師「鎮静化…ですか?」

政務官「各地の拠点確保は軍部の対応が早かったので難なく済んだが住民の移動に手間取っているようでな。
速やかに戒厳令を敷けるよう教団の方で促し、各聖堂を避難拠点として移住するよう伝えてもらえないか?」

宣教師「分かりました…」

政務官「それから教団員の中で医術に長けた者を300名ほど貸し出してほしい。軍の医療班だけでは心許ないのでな」

宣教師「…教団員も戦場に行かされるのですか?」

政務官「あぁ、だがそれは民も同様だ。既に徴兵制度を設け、各地から若い男手を募集している」

宣教師「……」

政務官「強制ではない為、実際はほとんど集まっていないが…君達も危機感を持った方がいい」

宣教師「……?」

政務官「戦場に出れば確かに命を落とす確率は高まるだろう。
だが誰も立ち上がらなければ軍が機能しなくなった際には守る者がいなくなるのだ」

宣教師「……!」

政務官「"戦争"という語句のみに目を向ければ為政者の勝手な都合に思えるのも分かる。
しかし陛下は西の国土や利益目的で戦いを決意したのではない」

宣教師「」ズキンッ

政務官「国を…民を…仲間を…ひいては自分自身を守る為に道を切り開こうとなさっておられる」
197: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/18(金) 21:59:00 ID:1ddY1OvGrg
政務官「貴方が争いを望まれないのは承知している。
教団で平和を叫び、反対運動を起こせば民や教団員が巻き込まれる心配はなくなるだろう」

宣教師「……」

政務官「平和を口にし、いずれ来る滅びを待つか…多くの血と犠牲を引き換えに新たな平穏を掴み取るか…」

宣教師「…話は分かりました」

政務官「お…?」

宣教師「教団の代表として全力で後方支援に務めると約束しましょう…」

政務官「…正直、驚いている」

宣教師「はい…?」

政務官「すんなり聞き分けてもらえるとは思っていなかった…」

宣教師「…私だって本心ではお断りですよ」

政務官「……?」

宣教師「きっとヒメくんも…こんな気持ちで決断を下したのでしょうね」

政務官「…あぁ、幼い陛下に負っていただくには、あまりに辛い役回りだ。
勝敗に限らず、恐ろしく根深い問題が無数に産まれ、過酷な道を約束されるだろう」

宣教師「…裏で通じて民意を抱き込み、民を煽動するなんて、まるで以前の王国と教団ですね」

政務官「だが今回は意味合いが異なる」

宣教師「えぇ、分かってます」

政務官「それならいい。話は終わりだ」ガタッ

宣教師「変わられましたね…?」

政務官「?」

宣教師「ヒメくんと家臣の方々の関係も…あなた自身も?」

政務官「そう思えるなら…やはりこの国を変えられるのはあの方の他にいないということだろうな」

宣教師「…背負いますよ。私も共に?」

政務官「あぁ、頼む」スタスタ

ガチャッ バタンッ

宣教師「……」
198: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/18(金) 22:00:04 ID:1ddY1OvGrg
〜〜〜〜〜〜〜〜

―――南の山脈(山間の村)―――

ワイワイギャーギャー

ドタバタ ドタバタ

教徒「移動の準備が済みましたら慌てず焦らず教団員の指示に従って列に並んでください!
お子様、老人、女性優先でお願いします!なお病気や怪我を負われてる方も対象です!」

ゾロゾロ ゾロゾロ

部隊長1「食糧はこっちだ!金具はそっちの荷車に積むんだ!家畜は向こうの輸出用馬車に押し込め!」テキパキ

ボスッボスッ ガラガラ

役員「せっかく築き上げた農耕地が…大事に育ててきた家畜や作物が…全部、全部……」ヨロッ

部隊長「兵糧の回収を済ませたら一帯に聳える木々を切り倒し、整地して防衛拠点の増築に取り掛かれ!!」

王国兵's「ははーっ!!」

役員「うぅ…そっだらことしちゃなんねぇだ!周辺の土地さ、50年は禿げ上がっぞぉ…!?」ワナワナ

家畜商「諦めっぺ、村長」ポンッ

役員「うっ…うぅ…ちくしょう…ぢぐじょ〜〜〜!!」メソメソ

家畜商「せっかく村さ、でっかくなりかけてただっつーに…世知がれぇなぁ」

教徒「…す、すみません。後がつかえてるんで立ち止まらないでもらえますか?」オズオズ

家畜商「おう、わりぃな、兄ちゃん。ほれ、村長行くべ?名残惜しむのもほどほどによ?」スタスタ

役員「くぅぅっ…」メソメソ

教徒「……」シュン
199: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/18(金) 22:00:51 ID:1ddY1OvGrg
―――山間の村(門前)―――

ワイワイガヤガヤ

王国兵1「こんなホビットの小娘を連れてくのか…?」

王国兵2「おう、なんでも人智を越えた大層な医術をお持ちだそうだ?」

クーペ「……」

王国兵1「ふーん…まぁいいや。乗れ?」

クーペ「はい…」トットッ

ココット「お姉ちゃん!」タタタッ

クーペ「」ピクッ

ココット「はぁっ…はぁっ…」ゼェゼェ

医術師「ふぅ…間に合ったか」スタスタ

王国兵1「またホビットか?こいつも医術を?」

王国兵2「いや…知らん?」

クーペ「ココット…」

ココット「……!」

医術師「水くせぇな?何も言わずに行くつもりか?」

王国兵1「お前の知り合いか?」

クーペ「…少し、お時間を頂いても?」

王国兵1「少しならな?」

クーペ「ありがとうございます…」ペコリ
200: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/18(金) 22:01:27 ID:1t/IcgHa3c
クーペ「…どうしてここにいるの?避難したんでしょ?」

ココット「……」

医術師「俺がそうしたんだ」

クーペ「…先生、どういうこと?」ムッ

医術師「俺から聞かされたって納得しねぇだろ?」

クーペ「……」

医術師「気持ちは分かるが弟にくらい、きっちり話しとけよ?」

クーペ「……」

ココット「お姉ちゃん、せんそーに行くの?」

クーペ「…そうだよ」

ココット「どうしてお姉ちゃんが行かなきゃいけないの!」

クーペ「あのね、ココット…」

ココット「兵士さん!お姉ちゃんを連れていかないで?」

王国兵1「は?」キョトン

クーペ「違うよ。ココット。ちゃんと聞いて?」

ココット「え…?」

クーペ「わたしが自分で決めたの」

ココット「な、なんで…?」

クーペ「司祭様に頼まれたから…」

ココット「……!」

医術師「ずいぶん信用してるんだな?」

クーペ「それはそうですよ。司祭様がいなかったら、こうして村の一員にはなれなかったし、弟と先生と充実した暮らしをさせてもらえる事もなかったんですから…」

クーペ「司祭様がわたしを頼ってくださるなら、わたしはそれに全力で応えたいんです」

医術師「だそうだ?」

ココット「……」
201:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2015/9/18(金) 22:04:02 ID:1t/IcgHa3c
ココット「」ヒシッ

クーペ「…ココット」オロオロ

医術師「……」

ココット「帰ってくる…?」ジッ

クーペ「…いい子にしてたらね?」

ココット「ほんと…?」ウルッ

クーペ「ほんとだよ?」ニコッ

ココット「……」

クーペ「わがまま言って先生を困らせない」

ココット「?」

クーペ「嫌いなニンジンも残さず食べる」

ココット「えっ」

クーペ「早寝早起き。家事のお手伝い。お勉強。毎日続けなくちゃダメ?」

ココット「え〜…」ゲンナリ

クーペ「…寂しくても泣かない」

ココット「うぅ〜…」ウルウル

クーペ「守れたらご褒美にココットの大好きなハンバーグ作ってあげる…?」ニコニコ

ココット「……!」パァァ

クーペ「約束できる?」

ココット「……がんばる!」グッ

クーペ「」クスッ

王国兵1「そろそろいいんじゃないのか?」

クーペ「はい…。先生、弟をよろしくお願いします」

医術師「あぁ、任せとけ」

ココット「いってらっしゃい…!」

クーペ「うん…。行ってきます?」ニコニコ
202: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/18(金) 22:20:14 ID:1t/IcgHa3c
>>192
そう言っていただけてすごく嬉しいです!
たくさんキャラを出しすぎて誰がなんなんだか、役割や設定がちゃんと伝わってないかなと心配してましたので、とてもありがたく感じます!

悪役側のキャラも主人公側のキャラもそれぞれ愛着を持って書いているので好きになってもらえたら、それだけで励みになります!
雰囲気だけ出しといて開戦もまだですし肝心の主人公が全然出てこないですけど暖かい目で見守っていただけたら幸いですw
感想ありがとうございました!
203: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/23(水) 22:13:45 ID:DKuSij4epo
〜〜〜1ヶ月後〜〜〜

―――西の国(国境地帯)―――

パカラッパカラッ パカラッパカラッ

ヒヒーン! ブルルルルル!

ドレッド「っ……クゥ〜〜〜!!たっまんねぇなぁぁぁああ!?」ウズウズ

副官「いつになく昂っておられますなぁ?」パカラッパカラッ

ドレッド「…これがおめぇ、感じずにいられっかよ?このどでけぇ予感と高揚の波をよ!」

ザッザッ ザッザッ ザッザッ ザッザッ

ドレッド「万を越える大軍が50年の禁を破って他国の地を踏む歴史的な瞬間に俺は立ち会っているんだぜ!?」

副官「全軍長の私兵、及び訓練兵、徴兵で募った民間兵、締めて10万…や、壮大、壮大?」

ドレッド「お、来なすったぜ?」

副官「お待ちしておりましたよ。全軍総指揮、フィクサー軍長?」

フィクサー「まずまず…だな」ガガッ

副官「出来れば…あと2万ほど欲しかったところですなぁ」

ドレッド「おいおい…なんのこった?」

フィクサー「西の兵力はおよそ40万…」

ドレッド「は?40万!?」

副官「とはいえ、強制的に集められた民間歩兵が主でしょうから…実質、正規兵は25万程度かと」

フィクサー「南の軍は15万、東の軍は8万…まぁ数のみで計れば戦えない事もないが…クク……」ニヤリ

ドレッド「わ、笑い事じゃねぇぞ!?事前の情報と全く違うじゃねぇか!?
20万弱が急に40万なんてどうやって相手に……ってか、いつ調べたんだ!?」

副官「敵が誘いを外してきた時点で諜報に重きを置いたんですよ?」

ドレッド「な、なんでそんな大事な話を黙って……」

フィクサー「敵の諜報員がどこに紛れているともしれん。諜報は"探り"より"隠蔽"を重視して行うものだ」

ドレッド「し、信用がねぇんだな…」

副官「まぁまぁ?収穫は上々。我々も先を見据えて動けるというもの…ここは一つ穏便に?」
204: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/23(水) 22:16:16 ID:NGXd8txerw
フィクサー「…こちらが平和に甘んじた50年、敵は着実に準備を整えていた。その差は歴然たるものだ」

ドレッド「…だ、だが連合軍総出で約30万!見込みはある筈だ!?」

副官「別々に戦う以上、共同戦線は期待できませんがね。
バラバラな指揮系統で足の引っ張り合いだけは避けたいものですな?」

フィクサー「そこは各国の代表も賢く対処しているとも。
無理に結合させるのでなく役割を持たせて活動範囲を分担しているのだから」

ドレッド「南の軍は南西部を戦場に全面衝突…東の軍は手薄な北東から侵攻……そして俺達は最も堅固な正規の国境から攻城戦か」

副官「全く別の地点から遠距離に渡って囲む事で敵戦力を分割する、と。こういう事ですなぁ」

ドレッド「しかしよ…条件はこっちも同じだろ?」

フィクサー「あぁ、ファルージャのいる中心部で落ち合うまでは…我々は孤立無援で戦う一国の軍に過ぎない」

ドレッド「3国の内、一つでも崩れたら終わりじゃねぇか…!?」

フィクサー「…そうでもない」

ドレッド「はぁ…!?」

フィクサー「南と東が敵を引き受けている間に…早々とファルージャを討てばいい」ニヤリ

ドレッド「っ…そんな事が出来るのか!?」

フィクサー「ドレッド軍長、貴様に中央の4万を預けよう」

ドレッド「…!?」

フィクサー「我が軍の主攻を担う覚悟はあるか…?」

ドレッド「はっ…望むとこだ…!」
205: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/23(水) 22:18:02 ID:DKuSij4epo
―――西の国(南西部)―――

ザザザザザザザザザッ

騎士長「此度の連合軍、最大勢力である我らの役目は実に重い!!」

騎士長「ここで奴らの主戦力を引きずり出し、2つの友軍の侵攻を簡略化させる!!!
その為、事前に総攻撃に当たる地点の情報を流しておいた!!!」

騎士長「見ろ!!!敵の陣営を!!!」バッ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

騎士長「ふっ…数にして10万じゃきかんな?いったいどれだけ集めたやら…?」

騎士長「だが多ければ多い程、都合がいい!!ここで奴らを根絶やしにし、王国、東国軍に続くぞぉおおおお!!!」

南兵's「オォォォオオオオ!!」

騎士長「数に差はあれど案ずるな!!我が南国の誇る歴史上、最も逞しく勇敢な国王、ローレン陛下が全軍を率い、勝利へと導いてくださる!!!」

騎士長「陛下のお言葉をしかと胸に刻み付けよ!!!」

ザッ

ローレン「皆、士気は高まっているようだな。それでこそ誇り高き南国の戦士だ!」

オォォォオオオオオォォォオオオオ!!!!

ローレン「敵の最終目標は王国の侵略だ!然るにこの連合軍、南国は血に餓えた蛮人共を王国から退ける盾となる!!」

ローレン「だが目的を見誤るな!我々は此度の主戦場において守りに出る為に西の軍と相対するのではない!!」

ローレン「徹底的に攻め、奴らの血を一滴でも多く平野に滲ませ、南国の武威を全土に知らしめるのだ!!」

オォォォオオオオ!!!!

ローレン「恐れるな!!顧みるな!!奮い立ち、雄々しく叫べ!!!」

ローレン「この一戦に立ち会えた事を誇り、時代に恵まれた幸運に感謝せよ!!神々は歴史に我らの名を刻む好機を与えたもうた!!」

ローレン「今日を境に我らは英雄となるのだ!!!」

南兵's「オォォォォオオオオアアアアアアアア!!!!!!!」

ビリビリ ビリビリ
206: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/23(水) 22:19:51 ID:DKuSij4epo
―――南西部(西軍本陣)―――

将校1「っ…身の程知らず共が何を浮かれているやら?」ビリビリ

将校2「本気で正面から我が軍とやり合えるとでも思っているのか?」

将校3「バカめ…!此方の指揮を務められるのは何を隠そう……」

ズォォオオオン

将軍「……」ムキムキィィッ

将校1「くっ…!」タジッ

将校2「(味方でさえ圧倒される…!)」ブルッ

将校3「(齢60を過ぎた今も西の武勇を高め続ける真の武将…!)」

将校4「(終わらない争いで最大功績を残した生ける伝説、殺戮将カカドゥーラ様が率いる西軍は何者にも揺らぎはせぬ…!!)」

将軍「……」

〜〜〜回想(カカドゥーラ)〜〜〜

参謀「閣下、よろしいですか?」

参謀「僕が最高司令官を買って出たのは何も閣下を謀ろうとしたのではございません?」

参謀「閣下に全軍を委ねれば勝利は確実…ですが、それでは直接の功が閣下に入りませぬ」

参謀「なので…今回は敢えて僕が矢面に立ちましょう」

参謀「閣下は最大勢力の南国を滅し、更には王国を侵略し、癒しの力と永遠の大樹。
女王の望まれる二つの秘宝を奪取する任に当たっていただきましょうという算段にございまする」

参謀「さすれば閣下は間違いなく西軍の勝利の栄光と女王のお心をわし掴み、晴れてめでたく女王を嫁に迎えられましょう?」

参謀「閣下に抱いていただけなくなるのは大変、名残惜しゅうございますが…一家臣として主の幸福を願っての配慮、どうかお許しを?」

…………………

将軍「ムフ…ムフフ…ムフフフフフフ……!!」ニタニタ

将校1「(さすがは閣下!敵陣営の士気高揚にも一切動じておられぬ!)」

将校2「(堂々たる立ち居振舞い…!もはや南国など巨象の歩みに踏み殺される蟻の集団に過ぎない!)」

将校3「(余裕綽々で笑みまでこぼされる始末…ふん、甘く見すぎたな?南国の若輩者共が…?)」
207: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/23(水) 22:22:16 ID:NGXd8txerw
―――西の国(北東部)―――

東軍長「進め!!今こそ亡き陛下の無念に報いし時なり!!」

ザスッザスッ ザスッザスッ

ヒュールルルルル

ブォオオオオオッ

兵士長1「くっ…砂塵に覆われて視界が濁るな!」

兵士長2「防衛地点をすり抜けたとはいえ、敵がどこに潜んでいるとも知れない!各隊、警戒を怠るな!?」

兵士長3「トライド軍長!この先、断崖に挟まれて通路が入り組んでおります!」

東軍長(トライド)「進路は事前に把握済みだ…。伏兵を忍ばせるとしたら、ここだな。まず偵察隊、1000で様子を見てこい!」

東の兵's「ははぁっ!!」

ザスッザスッ ザスッザスッ
208: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/23(水) 22:23:18 ID:NGXd8txerw
―――断崖上の高地―――

アンアン アッ アーーン!

西の兵1「来ました!タビラ軍曹!」バサッ

慰安婦1「も、もっ…だめぇん!」ガクガク

軍曹(タビラ)「ヘイヘイ!まだまだ休んじゃダメだよぉ?」ユサユサ

慰安婦2「あたしにもしてぇん?」ヒシッ

タビラ「うえーい!いいぜぃ!しっぽりイッちゃおうかぁ?」

西の兵1「軍曹!?敵襲です!?」

タビラ「ちっ…うるせぇな。お前ら、こんな楽な作戦も俺無しじゃこなせねぇの?」

西の兵1「ど、どうか指示を!」

タビラ「あーはいはい。わーりましたよ?やりゃいいんでしょ、やりゃー?」パッパッ

慰安婦's「えー」プクー

タビラ「ごめんねぇ、君たちぃ?終わったら、またしてあげるからテントでお留守番ねぇ?」ヘラヘラ

慰安婦's「はーい…」シブシブ

タビラ「さぁて…とっとと蹴散らして続きと洒落混むかなぁ?」

西の兵1「お、お願いします…」
209: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/23(水) 22:24:35 ID:NGXd8txerw
ザスッザスッ ザスッザスッ

兵士長1「トライド様!偵察隊から問題なく抜けたとの報告が!!」

トライド「よし…はぐれぬよう出来るだけ固まれ!本隊、前進だ!」

兵士長1「ははっ!各自、本隊に続け!」

ザスッザスッ ザスッザスッ


タビラ「あちゃー…来てるねー?」シゲシゲ

西の兵1「迷路のように入り組んだ崖下で敢えて一つの道に絞って侵攻しているようです!
敵はここの地形を把握していると見てよろしいかと!」

タビラ「…はいはいはいはい、なるほど、なるほど」

西の兵1「砂塵に阻まれて正確な数は予測出来ませんが…」

タビラ「第一陣の偵察隊をみすみす通してやったんだぁ。安心して全軍率いてくるだろぉ?」

西の兵1「では予定通り…」

タビラ「おう、やっちゃっていいぞーう?」

西の兵1「はっ!総員、配置に着け!!」

ガラガラ ガラガラ
210: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/23(水) 22:27:15 ID:NGXd8txerw
ザスッザスッ ザスッザスッ

兵士長1「砂に足を取られて馬が走れませんな…」

兵士長2「あぁ、加えて砂塵が視界を奪い、精神的にも体力的にも消耗が激しい…」

トライド「…我々は東部と北部の防衛拠点をすり抜けて本土を目指すのだ。
無駄な戦闘を避けて進めるのなら多少の難も苦になるまい?」

兵士長1「それはそうですが…後ろの歩兵は我々以上に厳しいでしょうな」

ガッ ガガッ ゴロゴロ ゴロゴロ

トライド「…なんだ、この音は?」ピクッ

兵士長1「頭上から何か……」

ズゴンッ ゴゴンッ グシャグシャッ ドシンッ

トライド「なっ…!?」

ギャアアアアアアアアアア

兵士長2「ら、落石です!!」

兵士長3「後ろの隊に被害が!?」

ゴロゴロ ゴロゴロ

トライド「ま、まずい!走れ!!全速力で突っ切るんだ!!」パシンッ

兵士長1「て、敵襲だ!?とにかく馬を走らせろ!!」パシンッ

ヒヒーン!

ザスッザスッ ザスッザスッ

ゴゴンッ ドシンッ ドシンッ

ギャアアアアアアアアアア
211: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/23(水) 22:29:45 ID:DKuSij4epo
タビラ「てってれ〜!落石ドッキリ大成功〜!」パチパチ

ギャハハハハハハハハハ!

タビラ「偵察隊を囮に伏兵の存在を確かめたつもりだろうが…甘いっての?
逆に偵察隊を敢えて通して本隊を誘ってやったぜぇ?俺って頭いい〜!」

西の兵1「お見事です!」パチパチ

タビラ「ヘイヘイ!そんじゃ落石に挟まれておたついてる連中に引導を渡してやっちゃってぇ!」パチンッ

西の兵1「しゃあ!!ありったけ矢を打ち込めぇ!!」

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュッ

ドスッ ドスッ ドスッ ドスッ ドスッ

ギャアアアアアアアアアア

タビラ「…ぬるい平和に浸かった代償はでかいぞぉ。ド素人共がぁ?」ニヤリ
212: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/23(水) 22:33:44 ID:DKuSij4epo
トライド「はぁっ…はぁっ…」ゼェゼェ

兵士長1「あ、あぁぁぁ……」ガクガク

ヒェェエエエエエエエエエエ!!

ギャアアアアアアアアアア!!

トライド「くそっ…」ギリッ

兵士長1「なんとか我々は抜けましたが落石に包囲された隊は敵の罠に嵌まり、壊滅……」

兵士長2「そんな事は分かってる!!」

トライド「先に抜けた偵察隊と合流するしかない…!行くぞ…!」

兵士長1「う、後ろの隊を見捨てるのですか!?」

トライド「どうにも出来ないだろうが!今は少しでも兵を補充し、先に進むべきだ!?」

兵士長1「くぅぅっ…」ググッ

兵士長2「第一陣、2万の勢力があっという間に1000ぽっちになってしまったか…」ガクッ

トライド「落石の被害を逃れた最後尾の隊は別の通路を抜けてくる筈だ!
そうすれば少なく見積もっても5000弱は残る!!まだ終わってはいない!!」

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュッ

ドスッ ドスッ ドスッ ドスッ ドスッ

ギャアアアアアアアアアア

トライド「くっ…!こちらにも矢が迫ってきた!早く行くぞ!?」パシンッ

ザスッザスッ ザスッザスッ
213: ◆WEmWDvOgzo:2015/9/23(水) 22:36:21 ID:DKuSij4epo
タビラ「落石に閉じ込めた連中は片付いたなぁ?」

西の兵1「はい。それ以外は混乱し、隊形が乱れてます!」

タビラ「4000の兵を送り込め?崖下に取り残された後ろの残党を挟んで殲滅するんだ?」

西の兵1「ははっ!!」

西の兵2「第二陣への警戒はいかがいたしましょう!?」

タビラ「いらん、いらん。どうせ来やしねぇし」

西の兵2「!?」

タビラ「落石で迷路染みた断崖地に踏み込む度胸なんかねぇって?」ニヤリ

西の兵2「な、なるほど!」

タビラ「防衛拠点がねぇから侵攻するんじゃなくてなぁ…。
なんでここに防衛拠点がねぇのか考えねぇとダメなんだよなぁ?
わざわざ砦なんか作らんでも対処出来るだけの地の利があるからに決まってんだろうがぁ?」

西の兵2「がはは!間抜けな連中ですな!」

タビラ「やっぱこんなもんか。つまらんぜぇ…。可憐な女子達を待たせてるし終わらせちまうかなぁ?」

西の兵2「我々と奴らでは地力が違うのですよ!格の違いを見せてやりましょう!」

タビラ「うーし、俺に付いてこい。敵軍長の首をかっさらうぞぉ」

西の兵2「ははぁっ!!」
214: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 21:53:25 ID:87duYR6vE.
―――王宮―――

伝者1「報告します!!フィクサー総指揮が西の国境防衛拠点への攻撃を開始した模様!!現在、第1軍4万の兵が砦、陥落に先駆け、攻城戦を仕掛けております!!」

伝者2「ローレン国王率いる南国軍は現在、南西部の平野で西軍と睨み合っており、衝突は間近と思われます!」

政務官「ついに始まりましたな?」

ヒメ「安全な場所で報告を受けるだけの身じゃ、まるで実感が沸かないけどな…」ムスッ

政務官「…陛下の役目は戦況を見守り、兵を信じて国内の治世を保つ事です。戦いは軍に任せればよろしい」

ヒメ「ローレン様や宰相殿は自ら戦場に立って指揮を執ってるじゃないか?」

政務官「ローレン様は元軍師志望とあって兵法に聡い。
宰相殿は3国の代表では唯一"終わらない争い"を経験された方です。陛下とは立場が異なりましょう?」

ヒメ「ふん…」

政務官「戦況によっては、ここが戦場となる可能性も大いにございます。気を引き締めてお臨みください」

ヒメ「あぁ、分かってるよ…」

政務官「とりあえず開戦から今のところ目立った動きはなさそうですが…」

伝者3「報告!!東国軍ですが…トライド軍長率いる先鋒隊、2万が壊滅したそうです!!」

ザワッ

高官1「か、壊滅…早すぎないか…!?」オロオロ

伝者3「敵軍と当たらぬよう断崖地から兵を分けて侵攻を試みたそうなのですが…既に罠を張られていたと。
東国軍は一度、体勢を立て直す為に兵を下げたそうです…」

高官1「ど、どうするんだ!まだ始まって間もないのに!?」

政務官「ここからではどうも出来ん…。現地の指揮官に託すしかない…」

ヒメ「…援軍を送ろう。防衛に当たらせてる団長の隊に使いを!」

政務官「なりません!それではこちらの守備ががら空きになってしまう!」

ヒメ「このままじゃ東国軍はズルズルとやられるぞ!?」

政務官「宰相殿の判断に委ねるべきです!」

ヒメ「っ…他に報告はないのか!」

伝者3「……」フルフル

ヒメ「……!」
215: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 21:55:20 ID:87duYR6vE.
伝者1「フィクサー軍長の隊なのですが…」

ヒメ「」ピクッ

伝者1「不可解な動きを見せておりまして…」

ヒメ「不可解な動き?」

伝者1「はっ!副官のオドアイル様が1万の兵を率い、国境の防衛拠点とは大きく外れた地に向かっております」

ヒメ「…どこに向かってるんだ?」

伝者1「北側を進軍しているようなのですが…フィクサー軍長からは特に連絡を受けておりません」

政務官「どういう事だ…?フィクサー軍長には西国東側の国境攻略を命じた筈だが……」

ヒメ「…リルラ」

政務官「はっ!」

ヒメ「フィクサーはどういう人物なんだ…?」

政務官「私が知る限りでは…兵営の兵法学部を首席で卒業。
軍に所属してからは野党の集団や山賊、ホビット等の人里を荒らす族徒の討伐に当たっておりました。
それらの族徒が支配する山々や土地、合計6つの領土を平定して国土を拡大させた実績から若くして軍長の任に着いているとか」

ヒメ「…じゃあ酔狂で変わった行動に出たりするような奴じゃないんだな?」

政務官「そうですな。むしろ冷静沈着な完璧主義者と伺っております。
なにせ無駄なく効率的に戦局を進める手腕から預言者の異名を取る程の知略家ですからな」

ヒメ「……」

政務官「副官の妙な動きも…何か狙いがあっての事かもしれません」

ヒメ「一度、様子を見てみるか…」

政務官「はっ!」
216: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 21:57:31 ID:87duYR6vE.
〜〜〜夜〜〜〜

―――西の国(北東部・東国軍本陣)―――

宰相「…おのれぇ!!」ダンッ

東国軍長2「西国の内部に侵攻し、虚を突く手筈が…まさか逆に虚を突かれるとはな」

東国軍長3「ひとまず本陣は下がらせたんだ…。敵も地の利を手放してまで追っては来るまい」

東兵1「申し訳ございません…!申し訳ございません…!」ボロボロ

東兵2「わ、我々も…追撃を逃れるので精一杯で…」

宰相「お前達を責めているのではない…。私自身の不甲斐なさに怒りを覚えるのだ…!」

東兵's「……」

宰相「よくぞ帰ってきてくれた…!お前達が戻らなければ今頃、我々も断崖地に踏み入れ、罠の餌食となっていたかもしれん!」

東兵1「も、もったいなきお言葉…!」ウルッ

東兵2「くぅぅ…!」グシッ

宰相「下がってよいぞ。傷付いた体を休めておけ」

東兵1&2「はっ…!」
217: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:00:28 ID:87duYR6vE.
宰相「作戦開始から初日の段階で2万の兵ばかりか…大事な指揮官まで失わせてしまった…!とんでもない失態だ…!」ググッ

東国軍長2「悔やんでも結果は変わりませんぞ。宰相閣下」

東国軍長3「然り…今、我々が成すべきはこのまま断崖地の攻略に臨むか、別の方法を取るかを早々に決め、戦局を立て直す事です」

宰相「うむ…。取り乱してすまんな…。まず両者の意見を聞かせてくれ」

東国軍長2「全軍を引き下げ、改めて別経路を探るべきです。
断崖地に敵軍が潜んでいるとなれば侵攻しても無駄に兵を消耗するだけでしょう」

東国軍長3「同意だ。敵の数も不明な上、更なる罠が仕掛けられているとも限らん。深追いは避けた方がいい」

宰相「…分かった。全軍に退却命令を……」

バサッ

見張り1「報告です!!」ザッ

東国軍長2「なんだ、貴様は?軍儀の最中だぞ!」

見張り1「も、申し訳ございません!い、急ぎ報告せねばならぬ事が!?」

宰相「何があった…?」

見張り1「北側と東側より大軍が迫っていると…!」

宰相「なっ…」ガタッ

東国軍長2「なんだとぉ…!?」
218: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:01:58 ID:kFMVoMRQpc
見張り1「おそらく我々が敵の防衛拠点の合間を縫って進軍したのを悟り、挙兵して背を追ってきたものと思われます!!」

宰相「……」ジーッ

東国軍長2「な、なぜこんなにも早く…!?」

東国軍長3「ありえん…!先ほどの断崖地での戦闘後に伝達されたとしても…ここに到達するには明日の夕刻までは掛かる筈だ!?」

宰相「そ…そういう事か!」ハッ

東国軍長2「宰相閣下…!?」

東国軍長3「何かお気付きに…!?」

宰相「我々は最初から誘い込まれていたのだ。この地にな…!」ギリッ

東国軍長2「ば、バカな…どこから情報が…!?」

宰相「情報が漏れたのではない!!」

東国軍長3「なっ…では何故!?」

宰相「この西国本土に通じる断崖地は…そもそもこうなるように配置されていたんだ!!地図を確認してみろ!?」バンッ

東国軍長2「」ジッ

東国軍長3「」ハッ

宰相「分かったか…!」

東国軍長2「二つの防衛拠点を挟んで奥まった地にある断崖…よく見れば構図が見事な三角形になっている…!」

東国軍長3「ここを通るには岩山に囲まれ、枝分かれした迷路のような道を通る必要がある…。
先鋒隊を買って出たトライドの軍はここで罠に嵌まり、全滅させられてしまった…」

宰相「そうだ!警戒した我々は一度、軍を防衛拠点と断崖の中間地点まで下がらせ、戦況を立て直すべく、ここに本陣を移したが…」

東国軍長3「つまり防衛拠点を通過出来る安全経路に見せかけて断崖地に誘導し、罠に嵌めて足止めを喰らわせ、二つの防衛拠点から背後に兵を寄せて我々を挟んだということか…!」

東国軍長2「で、では我々がこの経路を選んだ時点で既に勝負は着いていたのか…!?」ブルッ

宰相「敵はここで文字通り"全滅"させる気なのだ…!」ギリッ
219: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:05:39 ID:87duYR6vE.
東国軍長2「どこまで迫っている!?」

見張り1「た、退路を塞いで中央に構えています…。松明の数からして明らかに万を越すものかと…」

東国軍長2「夜戦を仕掛けてくる気はないようだな…。明け方と共に一気にケリを着けるつもりか!」ギリッ

宰相「二つの防衛拠点から兵を興してきたのなら…その数はおよそ6万…今の我が軍と同等の戦力か」

東国軍長2「…闇に乗じて奇襲を狙いますか?」

宰相「いや、この闇の中で肉迫すれば自軍の隊形が乱れ、バラバラになってしまう…」

東国軍長2「では一か八か全軍で断崖地の攻略を目指しますか?」

宰相「…落石で地形を変えられ、我々の得た地理情報は全て無に帰してしまった。不用意に飛び込んでも罠の餌食となるだけだ!」

東国軍長2「手詰まり、か…!」

宰相「ヒメ国王とローレン国王に申し訳ない…!真っ先に本土を目指し、作戦の要となる筈だった我が国が……真っ先に敗れ去るとは…!」ググッ

東国軍長3「…宰相閣下、項垂れるのはまだ早い」

宰相「なっ……!」

東国軍長3「この戦い、何がなんでも爪痕を残さねばならぬ」

東国軍長2「…手があるのか?」

東国軍長3「手などない!!」

東国軍長2「……!?」

東国軍長3「だが何もせず敵の手に落ちるのなら…死に者狂いで光明を探すぞ!!
でなければ立ち上がってくれた国民、友軍…何より亡き陛下に申し訳が立たぬ!!」

宰相「!」ハッ

東国軍長2「ブルードル陛下…!」グッ
220: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:08:43 ID:kFMVoMRQpc
東国軍長3「宰相閣下、どうか私に1万の兵をお預けくださいませ!」

宰相「ど、どうする気だ!?」

東国軍長3「背後の6万は私がお引き受け申す。宰相閣下らは断崖地へ進んでくだされ!!」

宰相「だ、だが!」

東国軍長3「もはや一刻の猶予もない!夜が明ければ敵の攻撃を受け、我が軍は本当に壊滅してしまう!!」

東国軍長3「迷ってはおれません!何しろ対策など打ちようもない状況です!我々に出来る事は…ここで死を覚悟し、がむしゃらに突き進むのみ!!」

宰相「……!」

東国軍長3「1秒でも多く時を稼いでみせます!あとは頼みましたぞ。宰相閣下!」

宰相「(陛下の想いを受け継ぐと誓っておきながら…なんと不甲斐ない有り様だ)」

東国軍長2「ここで宰相閣下に死なれては東国の滅亡に繋がろう?断崖地の突破は俺が請け負うので閣下は今すぐ避難を……」

宰相「いや…私が出なければならない」

東国軍長2「は…!?」

宰相「そもそも軍が倒れれば抑止力を無くし、東国は終わりだ。ならば私が先頭に立ち、士気の増幅に努めよう!」

東国軍長「な、何を言っているのです?」

宰相「初戦の敗北に伴い、兵達は明らかに不安を感じているだろう。その上で総軍指揮の私が離脱すれば軍全体の士気に関わる!」

東国軍長2「し、しかしですな!宰相閣下は国王の後任であらせられる身!つまり貴方様の命は東国その物と考えて差し支えない!!」

宰相「…確かに先代がご存命で私が貴公らの立場にあれば迷わず避難を促しただろう」

東国軍長2「そ、その通りです!考え直していただけましたか!?」

宰相「だが私は誰よりも先代の気性を存じている…」

東国軍長2「……!」

宰相「ブルードル陛下であれば誰になんと言われようと我らを見捨てて逃走したりはしない!!」

東国軍長2「……っ…!」

宰相「夜明けと共に出陣だ!心して掛かれ!!」

東国軍長2「は…ははっ!」ザッ

東国軍長3「委細承知!!」ザッ

宰相「(私は絶対に諦めぬぞ…!東国の光を沈ませはしない!!)」
221: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:09:20 ID:kFMVoMRQpc
―――西国北東部(断崖地)―――

ドッドッ ドッドッ

西兵3「いたか!?」

西兵4「向こうの報告は!?」

西兵5「ダメだ!見当たらん!!」

西兵1「軍曹!!」

タビラ「わぁーってるよ!いないんだろぉ?」

西兵1「はっ!奴らのいた地点にはおよそ1000騎ほどの馬が取り残されています!」

タビラ「目立つ馬を捨てて身一つで潜伏したか…。なかなかお利口さんじゃねーの?」

西兵1「奴らは一体どこに…!」

西兵2「もしや…味方を待たずに本土へ進んだか!?」

タビラ「だとしたら無謀通り越して単なるバカだ。ほっといても問題ねぇ、が…それはありえないなぁ?」

西兵2「え…?」

タビラ「砂地に不向きったって、さすがに馬の方が速やかに動くし移動の体力的にも助かるだろ?
それを捨ててまで歩いて本土へ向かうか?1000やそこらの兵力で?」

西兵2「…た、たしかに」

タビラ「まだ隅々まで探した訳じゃねーし、こう暗くちゃやりづれーよ?後はお前らでやれ?」

西兵1「はっ!」

タビラ「どうせ夜が明けりゃ東国軍は総崩れだ?お前らもぼちぼちしたら戻っていーぞ?」

西兵1「そ、それもそうか」

西兵2「馬はどうします?」

タビラ「食用に確保しとけ?馬肉は精がつくからな?」

西兵2「ははっ!」

タビラ「じゃ、俺は一足先に上に戻って可愛子ちゃん達と肉弾戦してくっかな」パシンッ

ドッドッ ドッドッ
222: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:10:02 ID:kFMVoMRQpc
―――断崖上の高地―――

タビラ「おーう、かえっ……た…ぞ?」ピタッ

ボォォォォオオオ

ヒュールルルル

トライド「遅かったな。西国の蛮人共!」

兵士長1「わはは!先回りさせてもらったぞ!今度はこちらが反撃する番だ!」

タビラ「」ポカーン

トライド「貴様が隊長か?」

タビラ「どうなってんだ…?お前ら、一体どうやって…?」

トライド「偵察隊と合流した後、貴様らの追撃を察知し、馬を置いて夜まで潜伏していた」

タビラ「ど、どうして、ここに…?」

トライド「足跡を辿って崖上に通じる道を発見し、闇に乗じて攻め落としたまでだ!」

タビラ「……!」

トライド「そちらの本隊が呑気に我々を探索している間になぁ!」

タビラ「…女は!?」

トライド「は…?」

タビラ「そこにストックしといた女達はどうしたか聞いてんだよ!?」ガァーッ

トライド「……」

兵士長1「……」

タビラ「まさか殺したんじゃねぇだろうなぁ…!?」

兵士長1「い、慰安婦や非戦闘要員は捕虜として捕らえてあるが傷付けてはいないぞ!我々は貴様らとは違うからな!」

タビラ「ほっ…そうか、そうかぁ…」

トライド「よほど大切な存在なんだな?」

タビラ「あぁ、大切な穴さ?」

トライド「あ、あな…?」チンプンカンプン
223: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:13:24 ID:kFMVoMRQpc
タビラ「にしたって俺が出し抜かれちゃうなんてなぁ…。君たちド素人にしちゃ頑張ったもんだ?」

兵士長1「ナメるなよ…!我々は何年もこの日を待ち望んでいたんだぞ!」

トライド「貴様らに奪われた子供らの命…遺族の怒り…陛下の悲しみ…それら全てが執念となって、この日に集ったんだ!!」

タビラ「…」ゴソゴソ

トライド「貴様らの思う以上に我々の復讐心は強い…!この激情は西国人の血でしか洗い流せん!!」

兵士長1「覚悟し……」

タビラ「」ピピーッ!

トライド「!?」

タビラ「俺の隊は笛の音に呼応するよう教育してある。ここまで登って来るのも時間の問題だ?」

トライド「なに…!?」

タビラ「復讐だ、なんだ、おたくの事情はよく知らんけど…文句があんならかかってこいよ?」

トライド「……!」ビキッ

兵士長1「卑劣な真似ばかりしておきながら…なんだ、その言い種はぁ!?」ズイッ

タビラ「んな安っぽい劇みたいなやりとりはいらねーんだって?君たち、分かってる〜?」

兵士長1「あぁ…!?」ギロッ

タビラ「俺たちは戦争やってんだぜ?」ニヘラッ

トライド「」ピクッ

タビラ「分かったら、とっとと得物を構えなぁ?とことん戦争しようぜぇ!」ニヤニヤ

兵士長1「ば、バカな!貴様一人に何が出来る!?」

ドッドッ ドッドッ

トライド「」ハッ

タビラ「ほれほれほれぇ!はえーとこ指示を出してやんないと部下たちが登ってきちゃうぞぉ!?」

トライド「迎撃準備だ!重歩兵、600で守備陣を固め、崖道を封鎖しろ!?
弓兵は援護射撃だ!登ってくる敵兵にありったけの矢を見舞ってやれ!!
残りの歩兵達は敵が設置した罠や落石を最大限、活用して敵兵力を削るんだ!?」バッバッ

オオォォオォオオオオ!!!
224: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:16:24 ID:kFMVoMRQpc
タビラ「死になぁ!!」ザウッ

ガキィィンッ!

トライド「ぐっ…!」ギギギッ

タビラ「へぇっ…!?」ギギギッ

トライド「ずぁっ!!」ガインッ

タビラ「おっと…!」ズザザッ

兵士長1「弓、引けぃ!!トライド軍長をお守りしろ!!」バッ

東弓隊「」キリリッ

タビラ「臆病者の東国民にゃ一騎討ちする気概もないか!?」

トライド「なんだと!?」

タビラ「俺を卑怯者呼ばわりするなら男らしく戦ってみろよぉ!?」

トライド「…誰も手を出すな!俺が仕留める!?」ジャキッ

タビラ「そうこなくっちゃなぁ…」ジャキッ

兵士長1「何を言ってるんですか!れ、冷静になってください!」

トライド「指揮はお前に任せたぞ!」ダッ

タビラ「ヘイヘイ!」ブンッ

ガッ ガキンッ ギギギッ ギィンッ

兵士長1「何をしてるんだ!敵の指揮官が無防備にも孤立しているんだぞ…!
起死回生の一手とも言える夜襲で得た地の利を手放さぬ為にも早々に討たなければ…!?」

東兵3「兵士長!敵部隊と重歩兵が交戦しておりますが騎馬の突進力に押されています!」

東兵4「弓兵の援護のみではもちません!指示をください!!」

兵士長1「くっ…向こうの岩山に弓兵を移せ!真横から馬を狙い射ち、崖から転がしてやれ!」

東兵5「下に続々と敵が集まっておりますが!」

兵士長1「ならば軍長の指示通り敵の準備していた罠を使え!?
岩が無くなったら松明でも、その辺にある石でもいいから下にガンガン投げ付けろ!?」

東兵's「ははーっ!」

兵士長1「くそっ…!潜伏する為に馬を捨てたのが仇となったか…!」
225: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:19:15 ID:kFMVoMRQpc
ガッ キンッ ガガッ

ガィンッ!

タビラ「……!」ビリビリ

トライド「……!」ビリビリ

タビラ「くっ……ぎゃはははは!!」

トライド「…なんだ?何がそんなに可笑しい?」

タビラ「別にぃ…?」ニヤニヤ

トライド「……?」

タビラ「その戦力じゃ俺を倒しても登ってくる部下たちに押し切られて全滅かもなぁ?分かってる〜?」

トライド「…分かってるとも」

タビラ「ほんとかぁ…?」ニヤニヤ

トライド「だが…ここで倒れても後を任せられる方が控えている!」

タビラ「捨て石でいいのかぁ…?」ニヤニヤ

トライド「あぁ、構わない」

タビラ「バカな奴だねぇ…。生き残ってなんぼだろ、戦争ってのは?」

トライド「それなら貴様はなぜ戦うんだ?」

タビラ「俺かい?そりゃもちろん…でっかい報酬目当てさぁ?」ニヘラッ

トライド「報酬…?」

タビラ「それがなきゃやってらんねーよ。何が悲しくて危険を犯すんだ?」

トライド「我々の目的は子供らを奪い、陛下を殺した貴様らへの報復だ…!」

タビラ「あくまでお国の為か。くっだらないなぁ〜…」

トライド「それ以上のものがあるとでも言うのか…!?」

タビラ「あるさ?」

トライド「!?」

タビラ「俺はこの戦いで手柄上げて女王を抱くんだ!!」

トライド「……ん?」
226: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:23:27 ID:kFMVoMRQpc
タビラ「あのボインボインを揉みしだいてぇ…くびれた細い腰を撫で回してぇ…豊潤で艶っぽい唇をこれでもかと貪ってぇ…とにかくムチャクチャにしてやりてぇ…!!」ハァハァ

トライド「……」アゼン

タビラ「その為なら、なんだってするさぁ…!じゃなきゃ俺たちには一生、順番が回ってこないからなぁ…!?」ハァハァ

トライド「…正気か?」

タビラ「俺は飯より睡眠より女が好きでなぁ…!いつだって俺の頭にゃ女の事しかないのさ…!」

トライド「そんな理由で武器を持ち、兵を率いて自国民をなぶり殺すのか…!
他国の領地に侵入し、幼子を拐かすのも…お優しい王を暗殺したのも…そうさせたのは己の欲望からか!?」

タビラ「ぎゃっはっは!何を熱くなってんだか知らないが…あの女王は絶品だぞぉ?
これまで何十もの女を抱いてきた俺がよぉ…一目で勃〇しちまったくらいだぁ!?」ゲラゲラ

トライド「……!」ブチィッ

タビラ「あぁ…?」

トライド「はぁぁぁああ!!」ビュバッ

タビラ「くぉっ…」ガッ

トライド「るぁあああ!!」キィンッ

タビラ「っ…!?」ドサッ

トライド「色欲魔め…!恥を知れ!?」ジャキッ

タビラ「ってて…いてぇじゃんよ」スリスリ

トライド「あぁ…!?」

タビラ「ほんとに戦争ってのをなんにも分かってないんだなぁ…?」パッパッ

トライド「どういう事だ…!?」
227: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:28:43 ID:87duYR6vE.
タビラ「この国じゃよぉ…なんだって奪い合いだ…?」

タビラ「飯を食うにも寝床を確保するにも持ってる奴から奪わなきゃならねぇ…。
それが出来ない奴は労働施設に売り飛ばされるか、徴兵に駆り出されるか…のたれ死ぬかだ?」

タビラ「その点、女はいいよなぁ…?よっぽどブスでもない限り持ってる奴に引っ付きゃ最低限の生活にありつけるんだからさぁ…?」

タビラ「だが女っつーのはそれでいいんだ…。そうでなきゃいけない…。
持ってる男に女は群がる…。だから男は気合い入れて、とことん奪ってやろうって腹ぁ決められんだ…」

トライド「くだらん!!幼稚な思考だ!?」

タビラ「分かってないねぇ、君たちぃ〜?」ニヤリ

トライド「なにぃ!?」

タビラ「西の国は広い国土と豊富な資源、んでもって輝く宝石が有り余る大国だ?
行き渡らせれば貧困なんかあっちゅう間に解決する?だがそうしないのは……」バッ

トライド「!?」ピクッ

タビラ「持ってる奴らにゃ何の得にもならねぇからさぁ!?」ブンッ

トライド「うおっ!?」ギンッ

タビラ「そりゃそうだなぁ!?貧しさを知れば知るほど富のありがたさがウンと分かる!!」ビュンッ

トライド「おっ…!?」ズドッ

タビラ「欲しけりゃ奪え…。奪われたら倍、奪い返せ…。泣き言なんか聞きたくもないねぇ!!」グンッ

トライド「おっ…ごぇ…!?」ズボッ

タビラ「貧乏人が食ってくには軍に入るしかないんだよ…。んで軍人がのし上がるには戦争しかないのさぁ?」ピシュッピシュッ

トライド「ぼはぁっ!!」ゴフッ

タビラ「お前らだけじゃねぇ…。全世界から奪ってやる…!
奪い尽くして…たっぷり膨らんだモンをまた奪い合うのさぁ!?ひっ…ひひ!ヒャアハハハハ!!!」ゲラゲラ

トライド「く…そっ……きさ、まぁ…!」ググッ

ヒュンッ

タビラ「ハハハばぁぁっ!!」ドスッ

トライド「!?」

タビラ「はっ…はっ…はは……」フラッ ヨロヨロ トットトト

タビラ「」バタッ
228: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:31:16 ID:kFMVoMRQpc
兵士長1「トライド軍長!ご無事ですか!?」タタタッ

トライド「っ…な、ぜ?」ゼェゼェ

兵士長1「一騎討ちを汚した罰は後でいくらでも受けます!?」ガバッ

トライド「うっ…ぐ!」ズキンッ

兵士長1「こ、これは…脇腹を見事に貫通しておりますな…!」

トライド「……敵は…!?」ボタボタ

兵士長1「今はなんとか凌いでおります…。とにかくお身体を休め、後方の医療班の手当てを受けましょう!!」

トライド「いい…!」

兵士長1「は…!?」

トライド「もう…ごほっ!たす…からん」ゴホゴホ

兵士長1「な、何を弱気になっているのですか…!?」

トライド「…のろ、しを……」

兵士長1「喋らなくていい!安静に……」

トライド「狼煙を上げろぉ!!」

兵士長1「」ビクッ
229: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:34:39 ID:87duYR6vE.
トライド「今なら…ここに引き付けている今なら…本隊は断崖地を突破できる…!」

兵士長1「……!」

トライド「我々は…敵を一時でも長く…ここに留めるんだ…!」ゼェゼェ

兵士長1「……」

トライド「共に…死んでくれるか…?」ジッ

兵士長1「分かりました。用意します」コクッ

トライド「…すまんな…。頼り…ない、指揮官で…?」

兵士長1「…いえ、必ず良い報せを持って、そちらに参ります!」

トライド「たの…しみ、だ」フッ

兵士長1「後は我々にお任せください…」グッ

東兵6「兵士長!敵に押し込まれております!!」タタタッ

兵士長1「…歩兵を出して守備陣を分厚く固めろ!それから狼煙を上げて本隊に交戦を知らせるんだ!」

東兵6「ははっ!!」

兵士長1「ただではやられないぞ…!蛮人共め…!?」ギリッ

兵士長1「踏ん張れぇ!!東国人の意地を西の蛮人共に見せつけてやるんだぁ!!」

オォォォオオォオオオ!!!
230: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:35:37 ID:87duYR6vE.
〜〜〜夜明け前〜〜〜

東国軍長2「宰相閣下、出撃準備が整いました」

宰相「うむ、私はいつでも大丈夫だ…」

東国軍長3「ふん…背後の敵陣から早速、突撃の狼煙が上がりましたな」

宰相「すまん…」

東国軍長3「何をおっしゃる?東の国に殉じて死ねるのなら本望ですとも?」

東国軍長2「頼んだぞ…!」

東国軍長3「おう、任せ……ん…?」ピクッ

東国軍長2「どうした?」

東国軍長3「おい…向こうからも狼煙が上がってるぞ?」

宰相「なに…!?」

東国軍長2「…断崖地から我が軍の狼煙が?」

宰相「ま、まさかトライド軍長の部隊が生きていたのか!?」

東国軍長3「もしそうだとしたら、この機をむざむざ逃す手はないな…!」

東国軍長2「だ、だが罠かもしれんぞ!?」

宰相「いや、最初から罠に飛び込む気構えで臨んでいたんだ。やる事は何も変わらん」

東国軍長3「これで心置きなく逝けるというものよ…!」

東国軍長2「っ…!?」

東国軍長3「宰相閣下!御武運をお祈りしておりますぞ!」クルッ

宰相「うむ!勝利を約束する!!」

東国軍長3「…行くぞ!!我と共に死ぬ覚悟あらば全身全霊を持ってして突撃せよ!!」パシンッ

ヒヒーン!

ドドドドドドドッ

宰相「我々も行くぞ!!」

東国軍長2「はっ!何がなんでも断崖地を突破し、本土へ入るぞ!宰相閣下に続けぇっ!!」パシンッ

オオォォオォオオオオ!!!
231: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:36:46 ID:87duYR6vE.
〜〜〜昼〜〜〜

―――西の国・東側防衛拠点―――

王国兵隊長「兵は出払ってがら空きだ!門をこじ開けてやれ!!」

ガガッ ガガッ

バリーンッ ガシャッ ガラガラ ドゴォッ

バッカァァン

パカラッパカラッ パカラッパカラッ

ドドドドドドドッ

ヒィィィィイイイイイ!!!

王国兵隊長「よぅし!!住民共を殺して回れ!?」

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュッ

ドスドス ドスドス

ギャアアアアアアアアアア!!!

王国兵隊長「家屋に火を放てぇ!?西国民の財産は一つ残らず焼き尽くすんだぁ!!」

バッ ボォオオオオオ

ワァーワァーギャーギャー

ダダダダダダダッ

ザシュッ ドバッ ズブッ ゴシャッ

ギャアアアアアアアアアア
232: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:40:13 ID:kFMVoMRQpc
―――西の国・北側防衛拠点―――

王国兵1「報告致します!東側防衛拠点、陥落とのこと!!」ザッ

副官「よしよしよし、うん。じゃあ報告がてら勝利の狼煙をね、上げてきちゃってちょうだいよ」

王国兵1「はっ!!」ダッ

副官「さ、て、と…こうして砦も落としたし君らの処遇を決めようか?」

西の捕虜's「」ブルブル

副官「や、まぁそんなね、怯えなくともさ?国王様から略奪や殺戮は許さないとのお達しだからね?」カッカッ

西の捕虜's「」ホッ

副官「や、でもね…。もしも君らがこちらの寛大な処置に感謝して財貨や兵糧を譲ってくれたりなんかしたら…多少の厚遇もやぶさかではないかもなぁ〜?」カッカッ

西の捕虜's「」ビクッ

副官「まぁしかし誇り高き西国民であるからには敵に大事な大事な財産を差し出すくらいなら死を選んだとしても…うん、不思議じゃない?」ピタッ

副官「例えば…我々の目を盗んでバルコニーから飛び降りてみたり…隠し持っていた武器で自害してみたり?」ニヤリ

王国兵's「」ジャキッ

ヒィィィィイイイイイ!!!

副官「賢い人は頭を床に付けなさい」

ガンッガンッ ガンッガンッ ガンッガンッ

副官「そんな勢いよく打ち付けんでも…?怪我するよ?」

西の捕虜1「お許しを…!命ばかりは…!」ズリズリ

西の捕虜2「私達は関係ないです!国に強制されて奴隷のように働かされているだけなんです!」ズリズリ

西の捕虜3「お願いします!助けて!殺さないで!」ズリズリ

西の捕虜4「なんでも差し上げますからぁ…!」ズリズリ

副官「うんうん、いいですよ。じゃあ誰か一人、内部に詳しい人を解放してあげなさい?」

西の捕虜1「わ、私が案内します!」

王国兵2「よし!妙なマネはするなよ?」スパッ

西の捕虜1「はい…!」シュルリ
233: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:41:43 ID:kFMVoMRQpc
〜〜〜夜〜〜〜

―――王都(王宮)―――

伝者4「報告!!オドアイル副官が1万の隊を二つに分け、主力の出払った東、北側両拠点を陥落せしめたとの事です!!」

政務官「なっ…本当なのか!?」

伝者3「それにより断崖地で東国、第3軍・1万と交戦していた防衛拠点の主力が踵を返していったそうです!!」

ヒメ「…宰相殿の軍は無事に断崖地を通過出来たのか?」

伝者3「はっ!トライド軍長率いる第1軍の生き残りが僅かな隙を狙って敵本陣を奪い、東国軍の断崖地突破を助けたそうです!」

政務官「よし!これで戦況は我らへと大いに傾いた…!」グッ

ヒメ「東国軍の被害は?」

伝者3「戦死したトライド軍長を含め、第1軍は全滅。
背後から迫ってきた軍と交戦していた第3軍もほぼ同様の被害に遭っておりますので全体でおよそ3万ほどかと!」

ヒメ「……」

政務官「? お喜びになられないのですか…?」

ヒメ「気に入らない…」

政務官「は?」

ヒメ「副官の動きが迅速すぎる」

政務官「それが何か…?」

ヒメ「こうなる事を見越して…というより東国軍を囮に使ったようにしか見えない戦局だ」

政務官「……」
234: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:45:05 ID:87duYR6vE.
政務官「偶然では…?」

ヒメ「偶然?じゃあおまえはそれぞれ3万の兵が配置されてる砦に5000ずつで攻撃を仕掛けたりするのか?」

政務官「……!」

ヒメ「フィクサーは東国軍が壊滅寸前まで追い込まれると読んでいて、敢えて黙ってたんだ」

政務官「…そうでしょうか?」

ヒメ「事前に宰相殿に伝えておけば同じ状況でも犠牲は押さえられた筈だ…!」

政務官「やむを得ず…という場合も?」

ヒメ「理由があっても…平気で味方を殺せる男を信用していいのか!」

政務官「……」

ヒメ「どうなんだ!」

政務官「…陛下には申し訳ないが私は納得しております」

ヒメ「!?」

政務官「必要とあらば利用出来るものは利用するべきです」

ヒメ「本気で言ってるのか!?」

政務官「むしろ…犠牲を少なくしようと考えるのは虫が良すぎます」

ヒメ「…だとしても宰相殿には知らせるべきだったんじゃないか!?」

政務官「それを分かった上で宰相殿が同様の作戦を選んだと思いますか?」

ヒメ「っ…!」

政務官「東国軍の動きが変わればフィクサー総指揮の思い描く戦略とは異なってしまう…となれば当然、地力で劣る連合軍全体の盤面が窮地に落とされます」

ヒメ「そう…だけど!」ググッ

政務官「…犠牲の数よりも一つの勝利に拘るのは軍を仕切る者として全うな判断です」

ヒメ「……!」
235:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:45:54 ID:87duYR6vE.
政務官「どうか受け入れてください。戦争とはそういうものであると?」

ヒメ「分かってるよ!分かってるけど…!」

政務官「…割り切れていないのは負い目に感じているからですか?」

ヒメ「え…?」

政務官「ご友人に秘密にしたまま戦争に踏み切った事を?」

ヒメ「あ、あいつは関係ないだろ…!」

政務官「彼には何も知らせず辺境地で今までと変わらない生活を送らせていますが…現状を知ったらなんと言われるかとお考えか…?」

ヒメ「……」

政務官「私個人と致しましてはすぐにでも王都へ避難させるのがよろしいかと」

ヒメ「…あいつはやっと普通の幸せに落ち着いたんだ。それを壊してやりたくない」

政務官「ならばなおのことフィクサー総指揮の判断は最良であったと言えましょう」

ヒメ「……」

政務官「何事も起きない内に終わらせるには素早い判断と巧妙な策を要します。そして同時に多大な犠牲も伴うでしょうな…」

ヒメ「……」

政務官「全てを理解した上で決定を下された筈…今になって躊躇されましても、もう遅いのですよ。陛下?」

ヒメ「…外の空気を吸ってくる」スクッ

政務官「はっ…」

スタスタ スタスタ………

政務官「……」
236: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/4(日) 22:54:10 ID:kFMVoMRQpc
オーキド博士のポケモン講座という番組(スレ)で、とても素敵なCMを書いてもらえました!
素敵な紹介、本当にありがとうございました!
あんな簡潔に綺麗にまとめられる文才が欲しくてたまりません…!

スポンサー延長していただけるということで、ただただ舞い上がっております!
全然構わないので遠慮なく、むしろお願い致しますw
ここを見ておられるか分かりませんが、あまりコテ付きでお邪魔するのは出しゃばっているようで忍びないので、こちらでお礼させていただきます!

もちろんラジオもいつも楽しく聴かせていただいてます!
これからも毒舌博士と健気なクルミさんの愉快な掛け合いを楽しみにしておりますw
乱文、失礼しました!
237: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 21:42:23 ID:7fMdibXDzA
―――西の国・南西部(平野の丘)―――

ウォオオオオリャアアアアアア!!!

ドドドドドドドッ

ガガッ ガガンッ ガギンッ ズガァァァッ

ローレン「……」

騎士長「中央の被害が甚大だ!!左右の部隊を寄せて敵軍の勢いを食い止めろ!?」

南兵1「ははぁっ!!」ダッ

騎士長「くそっ…!やはり危うい戦況となりましたな!」

ローレン「真っ向からぶつかれば数の差がモロに出る。特に分厚く固まる中央はなおさらだ」

騎士長「だが中央を突破されれば隊型の瓦解を意味する…!
最も削られる場所だと分かっていても兵の補充は欠かせませんぞ!」

ローレン「そう慌てるな。被害は大きいが士気は保たれている」

騎士長「しかし士気のみで戦力差を埋めきれるものではありませんぞ…!」

ローレン「分かっている。だからこそ、ここは慎重に行くべきだ」

騎士長「……!」

ローレン「数で劣る我々は1兵でも多く敵を削らなければならない。
だが現実的に考えれば体力勝負を仕掛けて先に崩れ落ちるのはこちらだ」

騎士長「敵兵力は推定で22万…15万の我が軍で、まともに戦い続ければ勝ち目はない…!」

ローレン「しかし戦力とは必ずしも数で測れるものではない。重要なのは質量だ…」

騎士長「おっしゃる通りですが…その質でさえも敵は我が軍を大きく上回ります」

ローレン「そこを覆し、戦力差を埋める為に俺達が狙うのは指揮官の首だ…」

騎士長「……!」
238: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 21:46:12 ID:7fMdibXDzA
ローレン「調査結果を速やかに報告しろ」

騎士長「はっ!現在、確認出来ている敵将は右軍6万ジルレイ陸曹、左軍6万バグダッド中将、そして中央軍8万を率いる元帥エレファンの3名です!」

ローレン「……」

騎士長「対して我が軍の布陣は右軍4万、左軍4万、中央6万と明らかに劣っております…!」ググッ

ローレン「…各将、個々の特性を分かりやすく説明しろ」

騎士長「事前調査では…ジルレイは攻撃主体の戦術を好む猛将であると」

ローレン「なるほど…敵右軍と交戦中の左軍の動きが活発化しているのは戦意に当てられて血が昇っているからか」

騎士長「はっ…そして左軍を務めるバグダッドは守備重視の戦法を取る極めて慎重な男です」

ローレン「たしかに…こちらの右軍に目立った動きはないな。攻めあぐねているようだ」

騎士長「エレファンはカカドゥーラの配下では最古参の将校で、かつての"終わらない争い"にも出陣していた戦歴があると…」

ローレン「ハッタリはいらん。特性は?」

騎士長「分かりません…」

ローレン「は…?」

騎士長「地形戦術の猛者であるとも攻撃特化の猛将であるとも囁かれてますが…ここ30年ほど戦場には立っていないとの噂で?」

ローレン「…そんな隠し球が満を持しての登場か。敵も必死だな」

騎士長「残りの軍師は他の戦場に配置されているものと思われますが…」

ローレン「聞き及んでいる限りでは東国軍が北東防衛線を突破したそうだな」

騎士長「はっ…」

ローレン「ならばここで我々が東国軍に続き、3つの頭脳を削れれば敵戦力は大いに揺らぐというもの」

騎士長「か、可能なのですか…!?」

ローレン「勝算を導き出すのが軍師の役目…俺も、そのはしくれだ」

騎士長「しょ…承知しました!」
239: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 21:48:31 ID:7fMdibXDzA
ローレン「初戦、狙い目となる首は……あそこだな」ビッ

騎士長「っ…」ゴクリ

ローレン「派手な被害が出ない内に左軍4万を退却させ、半数は中央の援護に回せ。残り2万を本陣まで下がらせるんだ」

騎士長「はっ!?し、しかし、それではここまでの道中、がら空きになってしまいますぞ!?」

ローレン「それでいい。この本陣に誘い込むんだからな…」

騎士長「で、ですが左軍が後退したのを見計らって中央軍の左端を攻め込まれる可能性も…」

ローレン「それは万一にもない」

騎士長「なぜ!?」

ローレン「扱う戦術によって軍師の性格が読み取れる…。
右軍のジルレイが噂通りの男なら真っ先にここへ来るはずだ」

騎士長「……?」

ローレン「安心しろ。俺に任せておけ?」

騎士長「わ、分かりました…!」ザッ
240: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 21:50:52 ID:7fMdibXDzA
―――南西部(西軍中央)―――

バラバラ バラバラ

西兵1「報告!!敵左軍が後退しております!!」

元帥(エレファン)「……」

西兵2「中央に合流させているようですが…」

西兵3「被害が拡大している中央の守備を強化する気か?」

西兵4「バカめ!それで左を疎かにしては意味があるまい!?」

西兵5「元帥!!ここはジルレイ陸曹に伝達し、敵中央軍を横側から攻め破っていただきましょう!」

エレファン「…んぅ。無理じゃにゃ」

西兵's「え!?」

エレファン「見ぃ?回り込んで本陣に向かっちょる?」ビッ

西兵6「なぁぁ!?」

西兵7「ちゅ、中央軍を落とせば勝利は確実なのに…!?」

エレファン「ありゃ落ち着きっちゅうか詫び錆びがないんじゃよ。にゃぁんでも急いで…自分の手柄にしたがる?」

西兵8「くそっ!共闘する気はないのか!」

エレファン「ま、えーがの。ここは王都侵略の足掛かり、言うたら前哨戦じゃ?
気張ったとて南国王の細い首一つじゃ大した成果にもにゃらん?」

エレファン「さっさと本陣を落として次に進めるにゃら…それでもよかろ」

西兵8「さ、さすが余裕に満ち溢れてますな?」

エレファン「おーい…誰ぞあつーい茶ぁをくれ」

西兵9「は、ははっ!ただいま!」タタタッ

エレファン「(はてさて…将軍閣下の出番は来るかの…?)」ニヤリ
241: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 21:52:35 ID:7fMdibXDzA
〜〜〜夜〜〜〜

―――南西部(平野の丘)―――

ガガガッ ガガガッ

南兵1「来ました…!」ジッ

騎士長「やはり一直線に本陣を目指してきたな…!ローレン陛下の読み通りだ!」

騎士長「弓隊、射撃開始!!」

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュン

ドスッドスッ ドスッドスッ

ワァァアアアアアアアア!!!

ガガガガガガッ

南兵1「ジルレイの騎馬隊が守備隊を蹴散らして坂道を上がってきます!?」

騎士長「予定通りだな…?」ニヤリ

騎士長「中腹まで上がってきたところで合図を出せ!?」

南兵1「ははぁっ!!」
242: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 21:54:44 ID:2uHj0k8hi.
ガガガガガガッ

陸曹(ジルレイ)「!? 全隊、止まれ!?」

ピタッ ピタッ ピタッ ピタッ

ジルレイ「………」

ヒュールルルル

ジルレイ「誰も…いない?丘の本陣を捨てたのか…!?」

西兵10「我々の位置とは逆方向から丘を下って退却したようですな」

ジルレイ「下の守備も妙に手薄だとは思ったが…小賢しい!南国王は逃げ腰の腑抜け野郎か!?」

西兵10「追いますか?」

ジルレイ「森林地帯に入られたんじゃやりにくいが…それしかないな!2万の兵を置いてくから、この丘を占拠しとけ!」

西兵10「はっ!」

ジルレイ「行くぞぉ!!俺様の隊でドカンと手柄を頂くんだぁ!?」パシンッ

ガガガガガガッ
243: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 21:56:43 ID:7fMdibXDzA
〜〜〜朝〜〜〜

―――南西部(山中)―――

パカラッパカラッ パカラッパカラッ

騎士長「ローレン陛下…!ただいま到着しました…!」パカラッパカラッ

ローレン「うむ。追手は?」

騎士長「来ておりません!山中で完全に我々を見失っています…!」

ローレン「そうか…」

騎士長「それにしてもまさか…こんな作戦は前代未聞だ」

ローレン「ほう…それはいい。前例が無いのなら敵も予測しにくいだろう」

騎士長「普通なら総指揮が本陣を捨てて敵将を討ちに行くなど誰も考えますまい?」

ローレン「…最初の首はアレだ?」ビッ

騎士長「敵左軍中将バグダッドですな…!しかしここから届きますか!?」

ローレン「…出来れば、もっと奥まで踏み込みたかったが山中を抜ければ遮蔽物のない荒原地帯だ。これ以上の接近は無理だろうな」

騎士長「では…?」

ローレン「強行突破だ」

騎士長「」ゴクリ

ローレン「心配するな。こちらの右軍に気を取られてバグダッドの本陣は兵が少ない」

騎士長「い、行きますか!」

ローレン「あぁ、突撃だ」パシンッ

騎士長「はっ…!全軍、続けぇ!!」パシンッ

ドドドドドッ
244: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 21:58:36 ID:7fMdibXDzA
―――西国左軍(野営地)―――

ドドドドドドドッ

ゴシャアッ バキィンッ ガッ ガガッ

ザシュッ ズバッ ドシュッ

ワァーワァーギャーギャー

ローレン「ふんっ…!」ブンッ シュバッ

西兵11「ぐぎゃっ!」ズバッ

西兵12「ぎえっ!?」バシュッ

バタバタッ

ザッザッ ザッザッ

ゾロゾロ ゾロゾロ

騎士長「お、奥まで入れましたが…予測より遥かに早く敵兵が集まってきましたな!」ギンッ

ローレン「対応が速いのは認めてやるが、ほとんどが歩兵だ!騎馬の突進で蹴散らしながら進むぞ!」

騎士長「ははっ!!」パシンッ

ガガガガガガッ

ゴシャアッ ボキュッ ゴリィッ メキィッ
245: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:01:45 ID:7fMdibXDzA
西兵13「バグダッド中将!!敵がこちらまで迫っております!一度、下がりますか?」

中将(バグダッド)「あれはどこの部隊だ…?」トントン

西兵13「分かりません!突然、向こうの山岳方面から出現し、襲撃されました!?」

バグダッド「規模は?」

西兵13「2万5000…いや、3万ほどかと!」

バグダッド「…右軍の侵攻経路を塞いでる守備陣に召集をかけろ。奇策頼りの素人集団を磨り潰すとな?」

西兵15「ははっ!知らせて参ります!」ダッ
246: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:03:12 ID:2uHj0k8hi.
バシュッ ドバッ ザンッ プシャアアアアアアアアア

ワラワラ ワラワラ

南兵1「ちくしょっ…倒しても倒してもワラワラ群がってきやがって…!」ギャリンッ

ローレン「踏ん張れ!敵陣まで後僅かな距離だ!?」ブンッ ガシュッ

南兵2「ローレン陛下!守備陣から敵の騎馬隊が押し寄せてきました!囲まれています!」

騎士長「まずいな…!敵の増援に割って入られ、隊を分断された…!
乱戦の中、兵力を割かれるのは非常に厳しい…!?」

ローレン「……!構うな!このまま突っ切るぞ!」ザウッ

騎士長「ははぁっ!!者共!!ローレン陛下に続けぇ!!」

バシュッ ズドッ

ドドドドドドドッ

ローレン「(バグダッドめ…!大国の守備を担う軍師だけあって隙はない、か…)」パカラッパカラッ

騎士長「邪魔だぁあああ!!」シュバッ

西兵14「ぐぼぉぉ!?」ドシュッ

ローレン「(だが…一度、後手に回った代償は高く付くぞ…!一気に間合いを詰め、その首をもらう!!)」

ズガガガガガガガッ
247: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:04:39 ID:2uHj0k8hi.
ワァーワァーギャーギャー

ガガガッ ドゴォォオッ!

西兵15「て、敵の勢いが一向に収まりません!?」

西兵16「中将!!やはりここは一度、陣を下げて距離を取りましょう!?」

バグダッド「…主戦場の方はどうなってる?」トントン

西兵17「兵をこちらに寄せた分、苦戦していますが戦況は依然として変わりなく!敵の攻撃を防いでおります!」

バグダッド「(……連携してる訳じゃなさそうだな。いや、奇襲を悟らせぬ為に敢えて伏せていたのか)」ピタッ

西兵18「も、もうそこまで迫ってます!!」

バグダッド「重装歩兵隊、10列に並び、防御体勢に入れ。弓隊は広く構えて敵襲に備えろ」

西兵19「ははぁっ!!」

ザザザッ バラバラ

西兵18「中将…!どうか安全な場所までお下がりください!?」

バグダッド「…運任せの特攻で戦局を塗り替えられるほど俺の守備は容易くない」

西兵18「で、ですが万が一という事も…!」

バグダッド「来れるものなら来てみろ?俺に奇策は効かん?」

西兵18「……!」
248: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:09:17 ID:2uHj0k8hi.
ドドドドドドドッ

騎士長「っ……包囲を抜けたぞぉ!!突っ切れぇ!?」ガガガッ

南兵1「お、お待ちください!目の前に巨大な柵が!?」パカラッパカラッ

騎士長「…我が南国の誇る騎馬隊は柔い木の柵ごときに止まりはせん!!私に続けぇっ!?」パシンッ

ヒヒーン!

南兵1「騎士長!?」

ローレン「待て…!一人で先走るな!?」

騎士長「うおおおおおおりゃああああああ!!!!」ガガガッ

西兵20「バカが一匹、突進してきたぞ!」ニヤニヤ

西兵21「柵の隙間から長槍を突き立てろ!無謀な特攻の犠牲者第1号だ!!」

ビュッ ビュッ ビュッ ビュッ

ドッカァァァン

西兵20「ぐおっ!?」ズシャッ

西兵21「な、なんて突進力だ…!だが、あの騎士はメッタ刺しに……」

騎馬1「」ピクッピクッ

西兵21「!? う、馬だけ…!?」ハッ

騎士長「邪魔な柵は取っ払ってやった…!我が愛馬と引き換えになぁ!!」ザッ バッ

ヒュンッ ビュバッ ブォンッ

ドバッ ザクッ ブシャッ バタバタッ バタバタッ

西兵21「き、貴様…いつの間に…!?たった一人で何をする気だ!?」

騎士長「道は開きましたぞぉおおおおお!!!」ザウッ

西兵21「この阿呆を突き殺せぇ!?」

ボガガァンッ!

西兵21「」ビクッ

ローレン「もう遅い…!」ブォンッ

西兵21「ぐはぁっ!?」ズバッ
249: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:12:01 ID:7fMdibXDzA
ドドドドドドドッ

西兵22「と、突入されたぞ!食い止め…ぎゃっ!?」グシャッ

南兵1「騎士長!私の背にお乗りください!」バッ

騎士長「すまんな!」ザッ

ローレン「ここで決めるぞ!!」ガガガッ

ゴガガガガガガァァン

西兵17「柵の前に整列させた重装歩兵隊、一点から突き破られています!!」

西兵18「敵部隊を率いる男が相当の手練れであると見られます!我が隊の陣形を真っ向から崩されました!?」

バグダッド「……号令をかけろ」トントン

西兵18「弓隊、一斉に放てぇ!?」

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッ

ズドッズドッ ズドッズドッ

ドッ ドガガガガッ ゴロゴロ

南兵3「ぐきゃあっ!!」ベシャッ

騎士長「盾を構えて進めぇ!!ローレン様をお守りするのだぁ!?」ドッドッ

ビュッ ビュッ ビュッ ビュッ

ドスドスドスドス

ヒヒーン! ゴッシャアアン!

南兵1「くそっ!歩兵共め!馬を突いてきやがって、ちょこざいな!?」ガキンッ

南兵4「ぐあっ…」ドスッ

ゴロンッ ドシャッ

ローレン「怯むな!!ここが正念場だ!!全速力で突破するぞ!?」ブォンッ ビュバッ

ザシュッ ドシャッ

オォオオオオォオオオオォオオオ!!!
250: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:14:46 ID:2uHj0k8hi.
ウワァァァァアアアアアア!!!

ガガァンッ ゴシャアァァッ

バグダッド「……」トントン

西兵18「殺れ!殺れ!殺れぇ!?絶対、ここに辿り着かせるなぁ!?」アセアセ

バグダッド「(全滅するどころか…まったく勢いが衰える気配さえないか。
我ながら完璧な守備陣であると自負していたのだが…)」トントン

バグダッド「(…大昔の南国騎馬隊と言えば列国を震わせた驚異と名高いが、時を経て錆び付いた力がなぜ今になって発揮される?)」トントン

バグダッド「(そもそもこの戦場全体を見渡せど明らかに普通ではない…。
なぜ敗北必至の戦を請け負った南国軍が士気を高められるのか?)」トントン

バグダッド「(友軍の援護を期待して持ちこたえているのだと考えていたが…だとすれば、この奇襲の意図は?)」トントン

バグダッド「(自軍の本陣を奪わせてまで戦力をこちらに集結させたのはなぜか?
焦りから判断を誤ったか、単なる阿呆の仕業か…?)」トントン

バグダッド「(いずれにしろ…この隊には何かありそうだ?)」ピタッ

西兵18「あ、あぁぁああ!!重装歩兵隊を抜けました!弓隊に迫って………」アセアセ

ドガガガガッ ザシュッ ズバッ ゴガァァンッ

西兵18「ゆ、弓隊、猛攻を受け…も、目前に…うわぁあああ!!」ヒィィィイイイ

バグダッド「おたつくな、馬鹿者」トントン

西兵18「む、迎え撃てぇ!!」ジャキッ

ザザザッ
251: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:20:19 ID:7fMdibXDzA
ガガガッ バサッ ブォンッ

西兵17「ぎあああ…ぶっ!!」ザシュッ

西兵19「ぐえっ!?」ドバッ

バタバタッ ドシャッ ズシャッ

ゾロゾロ ゾロゾロ

南兵's「」ゼェゼェ

ローレン「貴様がバグダッドか…?」ジャキッ

バグダッド「……いかにもそうだが貴様は何者だ?」

騎士長「控えろ!下郎が!?このお方は我らが国王、ローレン陛下であらせられるぞ!?」

バグダッド「国王…!?」ピクッ

ローレン「……」

バグダッド「がっははは…なるほどな。ジルレイの部隊に本陣を奪われ、おめおめと逃げ回ったが…敗北を悟り、やけくそに走ったか」

ローレン「…これまでだな」ズイッ

ビュオンッ ズドォッ!

騎馬2「ぶるるっ…!!」ガガガッ

ローレン「なっ…!?」ガクンッ

騎士長「ローレン陛下ぁぁ!?」ビクッ

ヒヒーン! バタァァン!

ローレン「…馬を刺されただけだ!?」スタッ

バグダッド「決死の特攻がたまたま功を奏し、浮かれてしまうのも仕方ないが…」ジャキッ

ローレン「(槍術を扱うようだな…。それもかなり使う…!)」ジリッ

バグダッド「思いつきで動いた事を後悔させてやろう?」ニヤリ
252: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:25:31 ID:7fMdibXDzA
バグダッド「」ジリッ

ローレン「」グッ

バグダッド「ふん…たとえお前が奇跡的に我が首を地に落とそうと、ここ左軍の戦局を揺らがせる程度…それもさざ波の如くだ?
既に左軍の戦況を読み取った中央の指揮官が対応しておられる事だろうさ?」

騎士長「ま、負け惜しみを抜かすな!?」

バグダッド「無謀なる国王よ…。お前の首は南国軍の首そのものだ。分かっているのか?」

ローレン「時間稼ぎに付き合う気はない!」ビュンッ

バグダッド「くっ…時間稼ぎだと…思い上がるなよ?」ガキンッ

ローレン「騎士長!!背後の隊は任せたぞ!?」ギギギッ

騎士長「はっ!我が命に賭けましても寄せ付けませぬ!!行くぞ!?」ダッ

南兵's「は、ははぁっ…!!」パカラッパカラッ

バグダッド「馬鹿者が…!敵陣の真っ只中に孤立した小隊など物の数分で磨り潰されるぞ!?」ギギギッ

ローレン「貴様などに言われずとも…俺の首は誰にも渡さん…!」ギギギッ

バグダッド「ぬぅっ…らぁっ!!」ギィィンッ

ローレン「」ザッ

バグダッド「…ここに辿り着いた強運は認めてやるが運任せでなんとかなる程、甘くはないぞ!?」ビュンッ

ローレン「(鋭いっ…!?)」サッ

バグダッド「うらぁああああ!!!」ババババババッ

ローレン「(っ…重い装備をしていながら一撃一撃が速い!いなすのが精一杯だ…!)」ギンッ サッ ガインッ
253: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:28:21 ID:7fMdibXDzA
バグダッド「がはははは!!守備重視の兵法家ならば楽に討ち取れるとでも!?笑わせるな、未熟者が!?」ビュンッ

バキィィッ!

ローレン「ぐぅあっ…!?」ミシィィッ

バグダッド「死ね!阿呆が!?」ビュオンッ

ズンッ!

ローレン「がっ…はぁぁあ…!」ブバッ

バグダッド「勝負あったな…!?」ニヤリ

ローレン「ん…ぐくく…!?」ガシッ

バグダッド「あ?あ…ぬ、抜けんっ…!?」グググッ

ローレン「つか…まえたぞ…!」ギュゥウウ

バグダッド「は、離せ!死に損ないがぁ!?」グッグッ

ローレン「この程度の死地になら何度も立ち会ってきたさ…!」ググッ

バグダッド「……!?」

ローレン「ふんっ!!」シュッ

ドスッ!

バグダッド「ご…がふっ……」ブバッ

ローレン「敗北寸前、ギリギリの境地を幾度となく越えてきた…」

バグダッド「」ズダァァンッ

ローレン「強大な力に溺れ、弱者を弄んできた貴様らとは育ちが違うんだよ…っ!?」ブシュッ
254: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:31:07 ID:7fMdibXDzA
ローレン「っ…はぁ…敵将、討ち取ったりぃぃいいい!!」バッ

オォオオオオォオオオオォオオオ!!!

騎士長「よ、よくぞ…!」

ザワザワ ザワザワ

西兵23「そ、そんなバカな…バグダッド中将が…!?」ワナワナ

騎士長「よぉし!!この勢いで残軍を切り伏せろぉぉおお!?」

ウオオオオオォオオオオォオオオ!!!

南兵's「」ドドドッ

ローレン「ぐっ…はぁ…!」ズキズキ

南兵1「陛下!?大丈夫ですか!?」ガガッ

騎士長「ち、血止めを…!」ヒョイッ スタッ タタタッ

ローレン「心配は要らん…。掠り傷だ…!」ボタボタ

騎士長「な、なるほど、確かにそこまで深くはなさそうだ…。防具に救われましたな…!」ビリィィッ

南兵1「で、でも脇の部分が砕かれてますよ…!?」

ローレン「あぁ、強かに打ち付けられたからな…。あばら骨もっ……」ズキンッ

騎士長「とにかく今は応急処置を…!」シュルシュル

ローレン「すまんな…」
255: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:33:52 ID:7fMdibXDzA
ガキンッ キンッ ズバッ ドシュッ バタバタッ

騎士長「な、なんとか動揺を狙って敵を押さえてますが、このままではまずいですぞ!
分断された兵達を呼び戻し、陣形を立て直しましょう!?」

ローレン「いや…この本陣はもう用済みだ。火を放って脱出するぞ」

騎士長「は!?」

ローレン「バグダッドの本陣が落ちたと知れば敵左軍の足取りはおぼつかなくなるだろう。
右軍の戦況を逆転させるとしたら…今をおいて他にない!」

騎士長「しょ、承知しました!ですが傷を負われたまま立て続けに戦うのは危険です!陛下は一度、山中に身を隠して……」

ローレン「山中はもう使えん…」

騎士長「なっ…」

ローレン「ここの騒動は瞬く間に伝わる。俺達を追って山中に入ったジルレイの隊にも報告が行くだろう。
活路を求めるなら敵左軍を排除し、右軍に陣を敷くべきだ…」

騎士長「……!」

ローレン「もう一踏ん張りだ…頼む?」

騎士長「御意…!」グッ
256: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:36:25 ID:7fMdibXDzA
―――西の国・本土(帝都)―――

西兵長「物見の報告では東国軍はまっすぐこちらに向かっておるとのこと!!
砦を押さえた王国軍の部隊は主要施設を焼き払い、その場を後にしたそうだぞ!?」ダンッ

参謀「(うるさい…。いちいち…)」ウンザリ

西兵長「カカドゥーラ将軍の不在時にこの失態!!
閣下が戻られたら、なんと言われるか!?」

参謀「(あぁめんどくさい…。事ある毎に閣下、閣下と……)」

西兵長「黙っておられるが最高司令官殿にこそ責任があるぞ!?」

参謀「(女々しい妬み嫉みから来る揚げ足取り…あわよくば立ち位置を奪おうと付け狙う小心者の空威張りに付き合えるものか)」シラー

西兵長「聞いておるのか!?」ダンッ

参謀「北東部の防衛戦術は看破されてましたか…。
なかなか広く戦場を見渡せる軍師家がいるようですね」クルッ

西兵長「!?」

参謀「それぞれ個別に攻めてくるものと考え、別動隊の動きを見切れなかった僕の責任です」

西兵長「そ、そうだ!お前が悪い!なんとかしろ!?」

参謀「即席の連合軍に連動した策を用いるだけの洞察と知力を持った相手がいるなんて思いませんでね…?」

西兵長「言い訳するな!閣下が戻られたら真っ先に報告してやるぞ!」

参謀「おそらく王国軍は別動隊を国境防衛地の背後に寄せ、奇襲を仕掛けて門を開け放とうと企んでおいでかと?」

西兵長「あ、あぁそうだ!そういうことだ!」コクコク

参謀「ですよね。まぁ、あの砦がそう易々と落ちるとは思えませんが…何かしら手を打たなければ?」

西兵長「そ、そうだ!」
257: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:38:10 ID:7fMdibXDzA
参謀「何か良い手はあります?」

西兵長「は?あ、う、うぅん……ま、まぁ手なんかいくらでもあるが最高司令官はお前だ!甘えるな!」

参謀「うーん…そうですねぇ。では兵長殿に指揮を託しましょうか?」

西兵長「は!?な、なんで俺が…!?」

参謀「帝都に置かれた兵を半数、貴方に預けますので国境防衛地に援軍として向かってください」

西兵長「……!?」

参謀「道中で拠点を失った北東の敗残兵を集めれば6万の兵力が見込めますよ」

西兵長「ろ、ろ、6万…?この俺が…?」

参謀「大隊を指揮する才覚を示されれば大々的に貴方を支持する声も上がるでしょう。将軍閣下の右腕となれるやもしれませぬよ?」

西兵長「お、俺…が…右腕…!」

参謀「やりますか?やりませんか?」

西兵長「よ、よし!引き受けた!早速、準備をしてこよう!」スタスタ

参謀「自滅しろ…古参気取りが…」ボソッ

西兵長「は?」クルッ

参謀「ご武運をお祈りしています?」ニコリ

西兵長「はっはっは!任せておけ!」スタスタ
258: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/11(日) 22:43:04 ID:7fMdibXDzA
参謀「さぁて、帝都の兵力も減らしましたし…」バサッ

参謀「…そろそろ、ですかね」ジーッ

ガチャッ

参謀「……」チラッ

軍師「おや…最高司令官殿、お一人でたそがれてらしたか」スタスタ

参謀「師匠殿こそ軍師が戦場を空けてよろしいのですか?」

軍師「老骨の出る幕などありませぬよ…?」

参謀「何をおっしゃいますか?師匠殿を越えられる軍師は未だ輩出されていませんよ?まだまだ頑張っていただかないと?」

軍師「困りますな。過度な期待は?」

参謀「ま、白々しい世間話もほどほどに…どうです?計画は進んでますか?」

軍師「いつでも取り掛かれますとも」

参謀「…そうですか」ニヤリ

軍師「各戦場の様子が予想に反して劣勢に追いやられているのが気になりますが…」

参謀「南国軍を取り込めなかった誤算もありますし…王国軍の出方も意外でしたからね。
ですが、あの砦は数日で落とせる代物ではありませんし援軍も送り出しましたから問題ないでしょう」

軍師「かしこまりました…。では始めてよろしいのですな?」

参謀「采配は師匠殿にお委ねします。信頼できるのは貴方だけですから…」

軍師「光栄にございまする……」

参謀「ふふ。確実にお願いしますよ…?あの"妾"の纏う魔性は油断ならないですからね…?」

軍師「存じ上げておりまする。必ずや朗報を手土産に持参いたしましょうぞ…」

参謀「…師匠殿」

軍師「はい…?」

参謀「願わくは先々も……僕と一緒に覇道を歩んでくださいますか?」

軍師「……!喜んでお供致します…!」ペコッ

参謀「ご武運をお祈りします」クスッ

軍師「はっ…」ザッ
259: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:07:37 ID:G41uxMId7g
―――西の国(国境防衛拠点)―――

ワァーワァーギャーギャー

ドレッド「ぅらあ!!休まず射ち込めぇ!?
敵が一本、矢を放ってきたら、こっちは千本返してやれやぁ!?」

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュン ヒュヒュヒュヒュヒュヒュン

ドレッド「投石部隊もガンガンぶち当てろぉ!!壁上の雑魚共を蹴散らせやぁ!?」

ドヒュンッ ボガァンッ パラパラ パラパラ

ドレッド「おらおら、補給、運搬の連中はモタモタすんな!!どんどん矢と岩を追加しろ!!土袋もだ!?」

ガラガラ ゴトンゴトン

ドレッド「浮き足立つな、民間兵共ぉぉ!!どんどん土袋を放って堀を埋めてくんだよぉ!?ビビってんじゃねぇぞぉ!?」

バッ ボシャンッ バッ ボシャンッ

ドレッド「守備隊!垣盾なんか使い捨てろ!?そんなボロじゃ構えても意味ねぇだろ!?」

ワイワイガヤガヤ

ドレッド「ちっ!おぉい!?」

王国兵1「はっ!」ザッ

ドレッド「負傷した連中はいつになったら戻ってくんだ!?人員が足りてねぇだろうがよ!?」ドンッ

王国兵1「うおっつ!?で、ですが…重傷の者も多々おりまして手当てが追い付かず…!?」ヨロッ

ドレッド「クソカスがぁっ!!手足もげようが動ける内は這いつくばってでも戦うんだよぉ!?」

王国兵1「ひっ!た、ただいま…呼び戻して参ります…!」ダッ

ワァーワァーギャーギャー

ドレッド「くっそ!まさかここまで強固な城だとはなぁ…!まいったぜ!
肝心のフィクサーからは何も指示がねぇし、兵の補充もしやがらん…!なに考えてんだ…ボケが!?」ブツブツ

王国兵2「伝令!伝令!フィクサー総指揮より指示が!?」タタタッ

ドレッド「あぁ!?」

王国兵2「夕刻には城門が開かれ、畳まれた橋が下ろされるとのこと!!
全兵に突撃の準備をさせるようにと仰せつかりました!?」

ドレッド「な、なんだ、そりゃ…!?」
260: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:09:50 ID:8VYUmGqBd.
―――王国軍・野営地―――

ドレッド「ぅおい、ゴラァッ!!」バサッ

フィクサー「どうした?」スッスッ

ドレッド「のんきに地図なんか並べてる場合じゃねぇぞ!どうなってんだ!?」

フィクサー「何がだ?」

ドレッド「夕方には勝手に城門が開くってのはどういう事か説明してもらおうか!?」

フィクサー「なんだ、そんな事か?」

ドレッド「そ、そんな事…!?こ、こっちは何日も必死に攻め続けてんのに攻略の糸口を見つけられずにいるんだぞ!!
それなのにどうやったら、あの頑丈な城を陥落させられると言うんだよ!?」

フィクサー「黙って指示に倣え。このようなやりとりは無駄な時間でしかない」

ドレッド「だ、とぉ…!?こ、この…!?」プルプル

フィクサー「」カリカリ

ドレッド「……!てめぇ、これで城門が開かなかったら、どう落とし前つける気だ!?」

フィクサー「ほう?わたしを信用出来ないか?」

ドレッド「そうじゃないが…ここまでの戦いで実質的に出遅れてんのは俺達の軍だ!
なのにあんたは戦場にも立たず、後ろに陣を敷いて地図になにやら分からん点線打ってるだけじゃねぇか!」

フィクサー「ならばこうしよう?」

ドレッド「?」

フィクサー「わたしがしくじれば軍の指揮権は貴様に譲ってやる。
だが作戦通りに事が運んだなら今後一切、余計な口出しはするな?」

ドレッド「た、大した自信だな?いいのか!俺は一度、決めた事は何があっても破らせんぞ!?」

フィクサー「好きにするといい…。わたしの予言は外れんよ?」ニヤリ

ドレッド「…ちっ!すかしやがって!」バサッ スタスタ

フィクサー「……」カリカリ
261: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:11:53 ID:8VYUmGqBd.
〜〜〜夕方〜〜〜

ガッションガッション ギギギギギギギ………

ザワザワ ザワザワ

ガララララララ ザァァァァァン

ドレッド「……ほん、とうに…開きやがった?」ポカーン

王国兵1「軍長!門が開け放たれ、橋が渡されました!!?」

ドレッド「ちくしょう…!あの野郎…!?」ギリッ

王国兵1「ドレッド軍長!?」

ドレッド「分かっとるわ!!第1軍、全兵突入だぁぁあああ!!!」パシンッ

ウオオオオオオオオ!!!

ドガガガガガガガガガガッ
262: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:13:00 ID:G41uxMId7g
〜〜〜夜〜〜〜

―――西の国(国境防衛砦)―――

ガキンッ ズバッ ギャリィンッ ザシュッ

バタバタッ バタバタッ

西の城主「ひ、ひぃいい!?」ズサァァ

ドレッド「貴様が城主か。散々てこずらせやがって…?」ザッ

西の城主「お、お助けを…!命ばかりは…!?」ガクガク

ドレッド「クククッ…もう降伏かよ?侵入しちまえば雑作もねぇもんだ?」

王国兵1「いかがなさいましょう?」

ドレッド「展望台に立たせろ?」

王国兵1「見せしめに突き落とすのですか?」

西の城主「ひぃあああ…!」ガクガクブルブル

ドレッド「アホ!んな事すりゃ王国軍の品位を落とすだろが?」

王国兵1「ではどうされるので?」

ドレッド「決まってんだろうが…ぅおい!!」

西の城主「」ビクッ

ドレッド「まだ外で兵が交戦中だ。降伏を叫び、投降を勧めろ?」

西の城主「お、お安いご用です!!」ヘコヘコ

ドレッド「お前らは下の兵に呼び掛けて戦闘を中止させろ。無駄に殺すのは無しだ?」

王国兵1「ははぁっ!!」ダッ

西の城主「た、助かった…」ホッ

ドレッド「ぅおい!?さっさと行けや!?」ゲシッ

西の城主「ぶっ!?」ドシャッ
263: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:14:31 ID:8VYUmGqBd.
ゾロゾロ ゾロゾロ

ドレッド「これで全部か…」

王国兵1「はっ!!2万ほどの兵、および6万の住民を保護しました!!」ピシッ

パカラッパカラッ

ドレッド「あーん?」ジロッ

フィクサー「任務遂行、か。誉めて遣わそう」ガガッ

ドレッド「ちっ…奇しくもあんたの予言が的中したよ…。一体どんな手使ったんだ?」

副官「それは私から説明しましょうかね」カッカッ

ドレッド「あぁ…!?てめぇ、いねぇと思ったら…今まで何してやがった!?」

副官「まぁまぁまぁ!まずはお手柄でしたな。ドレッド軍長!」ポンポン

ドレッド「馴れ馴れしいわ!?質問に答えろ!!」バッ

副官「や、いろいろ言いたいのは分かりますがね、追って説明しますから?」ドウドウ

ドレッド「はぁ…!?」

副官「東部と北部、両砦の兵が不在にしているのを見計らってね、攻め落とした訳なんですけども…」

ドレッド「ふ、不在…?あ、ありえんだろ!それじゃなんの為の……」

副官「まぁ〜まぁ!まぁまぁまぁ!」ドウドウ

ドレッド「ぐむっ…」タジッ

副官「で、えー…なんだっけな?……あぁ、そうそう。アレした訳でね。これこれこうこうと…」

ドレッド「わからねぇよ!?」
264: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:19:33 ID:8VYUmGqBd.
副官「まぁ手っ取り早く言うと彼らがね、活躍してくれたのですよ?」

ドレッド「この薄汚い連中が?」

西の捕虜1「そ、そうだ!俺達が中に入って城門を開けたんだ!!」ザッ

西の捕虜2「これでいいんだよな!自由にしてくれるんだろ!?」

西の捕虜3「約束は守ってもらうぞ!?」

ドレッド「……おい、なんなんだ、こいつらは?」

副官「私が落とした砦の捕虜です。彼らに財貨と兵糧を持たせて補給班を偽装し、城内に入らせました」

ドレッド「……」

副官「後は想像が付きましょう?」

ドレッド「…お前の部隊が雪崩れ込んでる隙にこいつらが城門を開いたのか?」

副官「ご名答!諸君、惜しみない拍手を!?」パチパチ

パチパチ パチパチ

ドレッド「ちっ…どうりで手応えがなかった訳だ?」

副官「ドレッド様が早々に降伏を促してくださったので助かりましたよ?
派手に引き付けすぎてしまって我々も危うかったんでね?」

ドレッド「…しかし、どうも腑に落ちんな?お前らはどうやって北東の拠点を……」

副官「主の予言に従ったまでですよ」

ドレッド「……」ジロッ

フィクサー「…言っただろう?わたしの予言は外れないと?」ニヤリ

ドレッド「…出来すぎだ」

フィクサー「……」

ドレッド「ここから北東の動きを読める訳がねぇ?」

フィクサー「戦況を逐一把握する必要はない。事前に予測を立て、戦略を組み立てれば、この程度の成り行きは自由に操作できる?」

ドレッド「味方にまで間者を仕込んでたのか…?」

フィクサー「そうだ」

ドレッド「(こ、こいつ…俺に黙っておいて平然と…!)」ギリッ
265: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:22:24 ID:8VYUmGqBd.
副官「やぁ〜しかし意外でしたな?全滅を予想された東国軍が生き延びるとは?」

フィクサー「構わんよ。作戦に支障がなければな」

ドレッド「(…黙って聞いてりゃ好き勝手に…!)」イライラ

副官「やや?まだ不満がおありですか?ドレッド様?」

ドレッド「当たり前だぁ!?」ズイッ

副官「?」

ドレッド「幹部の俺が何も知らされずに主攻の任を背負って必死に戦ってきたのに…それが出汁に使われてただけだとぉ!?」

フィクサー「…いきり立つな。目障りだ」

ドレッド「あぁ…!?」ワナワナ

フィクサー「わたしは与えられた指揮権に基づいて軍を動かしているのだ。
不満を口にするのなら、わたしにではなく己の実力不足を責めるんだな?」

ドレッド「〜〜〜!!」ブチブチィッ

副官「まぁ〜まぁ!むしろ感謝するべきでは?」ドウドウ

ドレッド「はぁ!?」ギロッ

副官「フィクサー様の作戦ではありますが、この城を落としたのは間違いなくドレッド様なのですから?」

ドレッド「こ、こんな形で手柄を納めても嬉しかねぇよ…!」ギリギリ

フィクサー「そうか?」

ドレッド「…!?」ギロッ
266: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:23:51 ID:G41uxMId7g
フィクサー「これでお前は歴史に一つの功績と共に名を刻んだのだぞ?」

ドレッド「れ、歴史に…?」

フィクサー「お前は開戦前、何者かになりたいから軍に入ったのだと語っていたな?」

ドレッド「お、おう…?」

フィクサー「既になっているんだよ」

ドレッド「お、俺が…?」

フィクサー「この戦いにはそれだけの重みがある。
そしてわたしの指示に従えば、その名は未来永劫、忘れられる事のない物にまで昇華されるだろうさ?」

ドレッド「そ、そんなうまく……」

フィクサー「戦場を彩った我々は国王を超越し、時代を代表する名として残されるのだ」

ドレッド「っ……」ゴクリ

副官「……」ポリポリ

フィクサー「言い争う時間が惜しい。今こうしている間に時代は進み続けている…。納得してはもらえないか?」ジッ

ドレッド「……!」
267: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:25:41 ID:8VYUmGqBd.
ゾロゾロ ゾロゾロ

副官「えー…あぁ…おほん!話が付いたのでしたら彼らの処遇を決めましょうか?」

西の捕虜's「……?」キョトン

ドレッド「は?処遇?保護するに決まって……」

フィクサー「財貨と兵糧を積み次第、砦と共に焼き払え」サラリ

ザワッ

ドレッド「は…?あ、あんた何を言ってんだ?」オロオロ

フィクサー「不要な荷は始末し、先を急ぐぞ」

ドレッド「無益な殺戮や略奪は禁止されてるだろうが!あの坊っちゃん国王に知れたら処刑されちまうぞ!?」

フィクサー「…先ほどから否定的な進言が多いが何か忘れてはいないか?」

ドレッド「な、なんの事だ…?」

フィクサー「これまでわたしの予言は的中しているだろう?」

ドレッド「」ハッ

フィクサー「確か…今後一切、異論は挟まないと誓っていた筈だったな?」

ドレッド「い、異論ではないだろうが!明らかにまずいから注意してんだ…!」

副官「や、ドレッド様はお堅いですなぁ?」

ドレッド「お堅いぃ?てめぇ誰に口聞いてんだ!?」

副官「どうにでもなるでしょう?我々が始末したという証拠もないのですから?」

ドレッド「兵に口止めしたとこで数万の人間が消えれば不自然だとバレるだろう!?」

副官「や、なんのなんの?陥落した砦に捕虜を解放し、我々は先に進んだが敗北を受け入れられなかった西の民は自ら火を放って同胞を道連れに心中したとか報告しとけばいいんですよ?」

フィクサー「敵国の捕虜など生かしても弊害にしかならん。野蛮で低能な西の民となればなおさらだ?」

副官「そうそう。それに戦場での出来事に死因なんかいらんのですよ?
『〇〇人、死にました。以上!』でいいんです?」

ドレッド「あ、悪魔か…お前らは…!?」ゾクッ

ザワザワ ザワザワ
268: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:28:05 ID:8VYUmGqBd.
ブルブル ブルブル

ドレッド「ほ、本気か…?本当にやる気か…?」オロオロ

西の捕虜1「お、お待ちを!?俺達はあなた方に協力して…!?」

副官「では諸君、潔い敗残者の皆さんに惜しみない拍手を!」パチパチ

王国兵's「」パチパチ

パチパチ パチパチ

西の捕虜1「そ、そんな…話が違うじゃねぇか…!?」アワアワ

西の捕虜2「こ、厚遇を受けられるって……」ヘナヘナ

西の捕虜3「ほ、報酬は…?自由は…?」ガクンッ

西の城主「ざまぁみろ!裏切り者が!?」ペッ

西兵24「そもそも貴様らが加担しなければ、この砦が落ちる事もなかったんだぞ!?」ギシギシ

西兵25「王国の偽善者に魂を売った馬鹿共め!くたばってしまえ!」

ワァーワァーギャーギャー

副官「…ではお二人は先に城外へ?後始末は私が?」

フィクサー「頼んだぞ」パカラッパカラッ

ドレッド「(知ったこっちゃないと言えばそれまでだが…本当にいいのか…?)」シブシブ
269: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:29:31 ID:8VYUmGqBd.
ボォォオオオオオオオ………

ギャアアアアアアアアア!!!

メラメラ メラメラ

アツイヨォオオオオ!!! タスケテェェエエエ!!!

イヤダァァアアアアア!!! カミサマァァァアアアアア………

ゴゴゴッ ガランッ ゴシャアッ

ガラガラガラ ズシンッ ドガァッ

パラパラ パラパラ
270: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:31:15 ID:8VYUmGqBd.
〜〜〜深夜〜〜〜

―――王国軍・野営地―――

王国兵1「今夜はここに陣を敷き、待機するとのお達しだ!
フィクサー総指揮の計らいにより、各自に酒肴が行き渡ったと思うが…。
今宵は勝利を祝福し、大いに飲んでくれと仰せつかった!ありがたく頂戴するがいい!?」

ワァァァアアアアアア!!!

バンザーイ!! バンザーイ!!

カンッカンッ ドンチャン ドンチャン
271: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:33:38 ID:8VYUmGqBd.
ワァーワァー ワァーワァー ドンチャン ドンチャン

教団員1「向こうは気楽でいいな…!こっちは何日も昼から夜通しかけて施術してるってのに!」

教団員2「本当ですよね?僕たちの気も知らないで?」

教団員3「負傷した人達も可哀想だよ。重傷でも動ける内は前線に駆り出されてさ…」

教団員4「あの指揮官、人の使い方を分かってないよ。自分勝手で粗っぽすぎる?」

教団員5「それにしても…目の前に石や矢が飛んでくるなんて考えもしなかったでしょうね。こんなに恐ろしいものだなんて…」

教団員6「…ここ数日だけで1000人は死んでますよ。自分たちも、いつそうなるか…」ブルッ

負傷者1「ひっぐ…ぐぅぅ…!」シクシク

負傷者2「おっかねぇ…家に帰りてぇよぉ…」シクシク

負傷者3「ひぃやぁああ…!石が…矢がぁあああ!!」ブルブル
272:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2015/10/18(日) 22:42:49 ID:G41uxMId7g
ウウウ〜 ウウウ〜

負傷者4「あっ…ぐふぅぅ」ズキズキ

教団員7「痛みますか?」ピトッ

負傷者5「はぁっ…はぁっ…」ゼェゼェ

教団員8「氷を取ってきて!酒と布も!?」

教団員9「はい!」ダッ

ドタドタバタバタ

クーペ「……」ジーッ

負傷者6「ごぼっ!おぅえっ!」ビタビタ

クーペ「(ダメ…刺さった矢が内臓に届いてる…)」キュッ

負傷者7「うわあああああ!!?」ジタバタ

クーペ「」ビクッ

負傷者7「俺の足は!?どこだ!?早く持ってこぉぉい!!」バタバタ

教団員10「暴れないでください!まだ塞がってませんから…!」ガシッ

クーペ「……」

教団員11「また一人、息を引き取ったから何人か運ぶの手伝ってもらえる!?」

教団員12「手伝います!」スクッ

クーペ「(力になれたらなんて自惚れてみたけれど…誰も助けれてない…)」

クーペ「(ココットを一人にしてまで…わたしは何しに来たんだろう…)」シュン

クーペ「(……)」

負傷者8「い、いづぅぃ…!」ボタボタ

クーペ「」ハッ

ウウウ〜 ウウウ〜

クーペ「(…悩んでもしょうがないよね。一人でも多く救わなくちゃ…)」

教団員13「誰か薬師の方、手ぇ空いてませんか!裂傷が酷くて膿んでしまったみたいなんですが!?」

クーペ「はい!今、行きます!」スクッ
273: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/24(土) 21:34:28 ID:6FAwtITC1A
〜〜〜〜〜〜〜〜

ブワァアアア ビュオオオオン ヒュールルル

『才知ある者よ。吹きすさぶ風の呼び声を聞け』

『果敢なる者よ。彼の地へ続く道を行け』

『憂いを秘めし者よ。悪逆の蔓延る都に集え』

『民草よ。枯れた心に火を灯し、争乱渦巻く世に大炎を撒き散らせ』

『我ら、神の意思の下、勇気ある民・イアマンとなりて魔の者を砕く礎となろう』

『自由を望むなら立ち上がれ』

『平等を掲げるなら武器を取れ』

『振るう刃は天の裁きと讃えられよう。その手を濡らす血は史に正義を記した証と誇れ』

『イアマンの手に触れた魂は遥かなる約束の地・ザリオンへと昇る』

『非道の世を洗い清める道の者、陽は陰りに射し煌めく』

『揃え、イアマン………今こそ闇を裂く光となりて』

『戦え、イアマン………度重なる不条理に決着を』

『愛すべき同志達よ。風吹く声に共鳴せよ』

『我ら、イアマン……同志よ……同志よ………』

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

「イーアーマン!!イーアーマン!!イーアーマン!!イーアーマン!!」

イーアーマン!! イーアーマン!! イーアーマン!! イーアーマン!!
274: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/24(土) 21:35:44 ID:EZ0/NsJFHM
―――西の国・本土(帝都)―――

ゾロゾロ ゾロゾロ

ワァァァァアアアアアア!!!

ダダダダダダダダダダッ

西の衛兵1「止まれぇい!!奸賊共めぇ!?」ジャキッ

西の衛兵's「」ザザザッ

レジスタンス5「悪魔の手下に屈するなぁ!!我らイアマンの加護を受けし勇者なりぃぃいいい!!!」ダダダッ

レジスタンス's「オォォアアアア!!!」ダダダッ

ガガンッ! バシュッ ドバッ ズンッ ゴスッ バキッ ブシャッ

バタバタッ ドサドサ ゴロゴロ

メキィッ ゴリッ グシャッ ズシズシ ダダダッ

ヒギィィィイイイイ!!! グワァァァアアアアアア!!!

ワァーワァーギャーギャー
275: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/24(土) 21:39:25 ID:6FAwtITC1A
―――西の城(バルコニー)―――

側近3「野猿の集団め…!よもや、この機に乗じて攻めてこようとは…!?」ギリィッ

官吏4「有能な戦術家が各所に出払ってる隙を狙ったものかと思われます!」

側近3「…猿の分際でいらぬ知恵を働かせおって!おい!最高司令官殿はどうした!?」ギリッ

官吏5「東国軍を討伐すると言い残し、帝都にいた兵のほとんどを連れて出ていきました!!」

側近3「なにぃ!?それでは今、残っているのは城の衛兵だけなのか!?」

官吏6「ご、ご覧ください!!衛兵達が左右に押し込まれ、中央の守備を突破されました!?正門に迫っています!?」

側近3「ま、まずい…!まずいぞ…!城内に入られたら、あっという間に…!?」

官吏7「ひぃぃ!!」ヘナヘナ

側近3「奴らがここまで来る前に渡り廊下を封鎖しろ!!女王の宮に近付けるな!?」

官吏4「ははっ!下僕共に呼び掛けてまいります!!」

軍師「おやおや…どなたもお忙しくしてらっしゃる?」スタスタ

側近3「ん…!お、おぉ…老師も城に残っておられましたか…!」

軍師「これは一大事ですな。女王の御身は既に安全な場所に隠されたので?」

側近3「う、うむ!部下に命じて宮殿の宝物庫から地下に続く隠し通路に案内させた!」

軍師「そうですか…」

直属兵's「」ザザザッ

側近3「おぉ!老師殿の兵も残っていたか!ありがたい!これで身の程を弁えぬ猿共を……」

直属兵's「」ジリッジリッ

側近3「え…?」

官吏4「な、なぜ我らに迫る!?さっさと外の連中を制圧してこい!?」

軍師「ご苦労様でしたな?黄泉に浸かり、ゆるりとお身体を労りなされ?」ニコニコ

側近3「ジジイ!!きっ…さま…!?」カッ

ダダダダッ

ヒィィィイイイイ!!!

276: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/24(土) 21:43:34 ID:EZ0/NsJFHM
―――女王の宮殿(地下の隠し部屋)―――

女王親衛隊1「き、貴様ら!なぜ、ここが……ぐあっ!」ドシュッ

女王親衛隊2「おのれ!よくもぐきゃあっ!?」ズバッ

ワァーワァーギャーギャー

ガシュッ ドバッ ザンッ ズドッ

バタバタッ バタバタッ

ファルージャ「……」

軍師「お迎えに上がりました。ファルージャ女王陛下」

直属兵's「……」ジャキッ

ファルージャ「よきにはからえ?」ポフッ

直属兵's「……!」ドキンッ

ファルージャ「ここは蒸し暑いのう…?」ハラリ

直属兵's「!!?」ドキドキ

軍師「絶体絶命の危機ともなりますれば、いかに豪胆な気性をお持ちでも多少は心の揺らぎが表に現れてしまうもの…。
その点、貴殿の落ち着き払った立ち振舞いはさすがであると讃えられましょう?」カツンカツン

ファルージャ「さようか?」

軍師「下々の身分から這い出てこられた卑しい娼婦にしては…ですがな?」ニヤリ
277: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/24(土) 21:45:25 ID:6FAwtITC1A
ファルージャ「……」

軍師「おや…押し黙ってしまわれましたな?
私めのような老人に暴言を吐かれ、お怒りでいらっしゃるか?」ニヤニヤ

ファルージャ「はて…?」キョトン

軍師「……?」

ファルージャ「いずれかの感情を向けられるほど…妾がそなたに興味を抱くとでも?」シラー

軍師「……言葉を選ばれよ?惨い死に目を迎えたくなければな?」ギロッ

ファルージャ「なんと…?妾に命令しておるのか?」クスクス

軍師「宮女の分際で出しゃばり過ぎたのが運の尽きと…お諦めくだされ?」

ファルージャ「先ほどから身分、身分とのたまうが……何者の手先かえ?」

軍師「帝たりえるは正統の血筋のみ…。はたして貴女の内に流れし血は…高潔であると言えましょうや?」

ファルージャ「ほう…皇族の生き残りにでもそそのかされたか?」ニヤニヤ

軍師「よもや語らう必要もございますまい?お覚悟を…?」

ファルージャ「クスス…そうさな?」ダラーン

軍師「(あくまで足掻かぬか…。最期まで己を貫く姿勢、見事なり。じゃが少々、拍子抜けだのう?)」ジッ

ファルージャ「」ジッ

軍師「!」ドキンッ

ファルージャ「」クスッ

軍師「(っ…い、いかん!儂とした事が…!やはりこの女は危険だ…!?)」ゾワッ
278: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/24(土) 21:48:43 ID:6FAwtITC1A
軍師「こやつを生け捕りにせよ!?」バッ

シーン

軍師「……おい、聞こえなかったのか?こやつを……」

直属兵's「」ボーッ

軍師「な、何を見とれてるんだ!?早く、この女を……」

ファルージャ「其奴の身ぐるみを剥ぎ捨て、我が前に這いつくばらせよ?」

軍師「は…?」キョトン

直属兵's「」バババッ

軍師「なっ…お前たち、なにす……」ビクッ

ウワァァ ヤメッ ガシッ グイッグイッ バッバッ

ファルージャ「……」ジーッ
279: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/24(土) 21:55:58 ID:6FAwtITC1A
ズダァンッ

軍師「ぎゃはあっ!?」ズシャッ

ファルージャ「フゥ〜…萎びた身体じゃのう?魅力の欠片も持ち合わせておらぬわ?」

軍師「お、お前たちぃっ!?なぜ儂を取り押さえる!?何をしておるか分かってるのか!?」ジタバタ

直属兵's「」ググッ

軍師「んぅおのれぇ!!いつからだ!いつから寝返っていた!?」

ファルージャ「寝返る…とな?」キョトン

軍師「こやつらは儂に長年仕えてきた私兵だぞ!?
一体どんな手を使って…いや、それよりもいつから儂らの企みを悟っていたのだ!?」

ファルージャ「企み?知らぬわ?」サラッ

軍師「はぁ!?」

ファルージャ「そなたが其奴らと、どれほどの月日を共にしたかは知らぬが…」

軍師「……!?」

ファルージャ「丹念に築き上げた信頼よりも…瞬間、目にした美が遥かに上回ったそうさな?」ニタァァァ

軍師「そ、そんな…バカな…!?」

ファルージャ「さぁ…そなたも骨抜きにしてくれようぞ?」ヒタヒタ

軍師「……!な、何をする気だ!?来るな!来るなぁ!?」ジタバタ

ファルージャ「案ずるな?乾いた皺肌も潤うというものよ?」ガッ クイッ

軍師「わ、私は…あのお方を…!」グググッ

ファルージャ「そんな輩は忘れておしまいな?」

軍師「っ…だま、れ」ギリッ

ファルージャ「妾の虜となるがいい?」ニタァァァ

軍師「っ〜〜〜!」

ヒィィィイイイイイ…………
280: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:33:05 ID:mMBbNGzqdU
―――西の国(南西部)―――

ドガガガガガガッ

ガキンッ キンッキンッ ザシュッ ドバッ ズブッ

ゾロゾロ ゾロゾロ

騎士長「ゴォォアアアアア!!!!」ブンッ

ズバァッ!

西兵26「ぐぎゃあっ!!」バシュッ

騎士長「ローレン様ぁ!!ご無事ですかぁ!?」ヒュンッ

西兵27「べふっ!?」ズブッ

ローレン「案ずるな!!」ガキンッ シュバッ

西兵28「ごえっ……」ザクッ

騎士長「深手を負われておるのですから無茶は禁物です!どうか後ろにお下がりください!」

ローレン「構うな!無駄に命を散らしたくなければ雑念は捨てろ!?」

騎士長「こ、これ以上の深入りは危険です!!」

ローレン「戦局を見極めるのは俺の役目だ!お前は自分の使命に全力を注げ!?」

騎士長「し、しかし…!」

西兵29「隙ありぃっ!!」ザウッ

西兵30「死ね!素人集団が!?」バッ

騎士長「」ハッ

ローレン「せやぁっ!!」ヒュンッヒュンッ

バシュッ ズバッ ドサドサ ゴロゴロ

騎士長「ろ、ローレン様…!お、お手を煩わせて申し訳……」アセアセ

ローレン「集中しろ…!手強い部隊が迫っているぞ…!?」

騎士長「は…?」

ドドドドドドドドッ

ザンッザンッ ドシャッドシャッ ギャアアアアアアアアアア
281: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:33:48 ID:BEe3Pd2fB.
―――南西部(西軍中央本陣)―――

西兵1「エレファン元帥!!敵右軍の包囲、完了しました!」

西兵2「バグダッド中将討ち死にの報を受け、統制を失った左軍の残兵も取り込めたとの事です!」

エレファン「んぅ…ご苦労、ご苦労。隊列を整え、確実に押し潰せ?」

西兵3「敵中央軍、先ほどから勢いを増しております!味方の朗報が激となって士気が増大したものかと!?」

エレファン「まさか本陣の手を抜いて左軍の陣営を排除に掛かるとは思わにゃんだからにゃあ…。さすがの儂もびっくらこいたわい?」

西兵4「まったく後先を考えぬ手ですな。素人の考えは読めませぬ」

エレファン「そうか?」

西兵4「は?」

エレファン「敵もにゃかにゃか目の付け所が良いではにゃーか?
正攻法では戦いににゃらぬと見て将を抹殺に掛かるのは決して奇策にゃどではにゃいぞい?」

西兵4「そ、そうでしょうか…。丘の本陣を捨てれば戦場を見渡す事も出来なくなります。
そうなれば当然、戦況把握は困難になり、敵味方の動き、被害の推算も読めず、単純に地の利まで手放してしまいますぞ?」

エレファン「簡単じゃわい。あれらは勝ちにこだわっちょらんのじゃよ?」

西兵4「!?」

エレファン「にゃりふり構わず捨て身で我が軍に大打撃を与えようと躍起ににゃっちょる。
中央軍の配置は謂わば司令塔である儂への牽制じゃい」

エレファン「んでもって左軍の大移動は退却に見せかけた誘い。
単細胞のジルレイはあっさり引っ掛かり、敵は予定通り、山岳を伝ってバグダッドの右軍陣営を急襲したっちゅう訳じゃにゃ?」

西兵4「な、なぜ序盤から大きな被害を与えていたジルレイ陸曹ではなく、守備一転で沈黙していたバグダッド中将を…?」

エレファン「そこよ?じゃからこそ目の付け所が良いと誉めてやったのじゃ?」

西兵4「は…?」

エレファン「ジルレイのように攻撃的で単独行動を好む将は序盤こそ戦況に響かせるが、その分、長引いてしまえば消耗が激しく中弛みしやすい?
逆を言えば守備重視のバグダッドは決着に迫る直前まで兵力を温存し、後半に差し掛かっても戦況を釣り合わせるか、もしくは逆転させる安定感と驚異がある?」

西兵4「な、なるほど…」

エレファン「にょほほ…敵ながら天晴れじゃわい。時代が時代なら英雄と呼ばれたかもしれんにゃ?」

西兵4「し、しかし今度こそ終わりです!我らの包囲陣にもがく間にジルレイ陸曹の部隊が追い付きました!」

エレファン「ふむ…まぁ相手が悪かったにょう?もはやこれまでじゃい?」
282: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:37:44 ID:BEe3Pd2fB.
―――南西部(南国右軍陣営)―――

ワァーワァーギャーギャー

ザンッザンッ ザンッザンッ

南兵5「うごぅっ!!」ズシャアッ

南兵6「げぶっ!!」ゴロンッ

南兵1「な、なんだ…!あの両刀遣いは…!?」ビクッ

南兵7「奴を先頭に我らの陣が食い破られておる!?」

騎士長「ローレン様、やはり危険です!あの男は…!」ギリッ

ローレン「言われずとも分かるさ。奴がこちらの左軍を大いに葬ってくれた敵将ジルレイだな?」

騎士長「存じておられるのであれば、どうか陣の中央に避難を…!?我々で対処しますゆえ!」

ローレン「必要ない…」グッ

騎士長「ご理解ください!私や兵達の代わりはいても貴方の代わりはいないのですぞ!?」

ローレン「代わりの利く者など、俺のそばには一人としていない…。共に生きる仲間は皆、かけがえのない存在だ…」

騎士長「そ、そのような…おやめください!貴方はただ一人の……」

ローレン「そのただ一人となる筈だった王の血族がことごとく道なかばで倒れていった…。
一歩違えれば俺もその一人となっていたかもしれない…」

騎士長「っ…!」

ローレン「王は官職…人は人。地位は手放せても人である事はやめられない…」

騎士長「何をおっしゃりたいのです…!?」

ローレン「ラフテンと決着を付ける前夜にヒメ国王が語らってくれた思想だ?」

騎士長「お、王国の…?」
283: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:39:07 ID:BEe3Pd2fB.
ローレン「彼は若年ながら俺などでは遠く及ばぬ遥か先を目指している…」

騎士長「ろ、ローレン様が心惹かれるほどの野望が…!?」

ローレン「人は皆、平等であると認めた世の中の創造。
そして彼は…それを示せる国家の象徴となろうとしている…」

騎士長「……!?そ、そのような大言壮語に乗せられて…!?」

ローレン「彼の行く道を共に歩みたいと思わされたよ…。それだけの説得力があった?」

騎士長「な、なりませんぞ…!そんな考えは子供の唱える稚拙な絵空事…!もっと現実的な道が…!?」

ローレン「大事を成すべき王者が小さくまとまってなんとする?」

騎士長「うっ…」

ローレン「今、この目に映らぬ景色を見渡せる者にこそ時代は変化を受け入れるんだ…」

ドドドドッ

ザンッザンッ ザンッザンッ

騎士長「っ…き、来ましたぞ!?」ハッ

ローレン「俺などが軌跡となれるのなら喜んで請け負うさ…。まさにこの身朽ち果てるまでな…!」ググッ
284: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:40:59 ID:BEe3Pd2fB.
南兵8「くそぉ!!なんとしても止めろ!?奴をローレン様に近付けるな!?」バッ

南兵9「おぉ!!」ズイッ

ジルレイ「るぁっ!!」ヒュンッヒュンッ

ガシュッ ズバァッ

南兵8「」プシャアアアアアア

南兵9「」ボトッ

ジルレイ「しゃあっ!!」ヒュンッヒュンッ

西兵31「え……ちょっぶべ!?」ザシュッ

西兵32「わ、我らはみか……びぃっ!?」ブシャッ

ジルレイ「ゲハハハ!!死にたくなけりゃ俺様の間合いから外れるんだな!?」ヒュンッヒュンッ

ザンッザンッ ザンッザンッ

ギャアアアアアアアアアア

ジルレイ「」ヒュンッ

ガキィィンッ!!

ジルレイ「ッッッ!!」ピクッ

ローレン「……!」ギギギッ

ジルレイ「いぃ〜い甲冑だぁ?貴様が国王だな?」ニタリ

ローレン「ほう…?蛮人にも物の良し悪しを見る目はあったか?」ニヤリ

ジルレイ「……全軍に告ぐ!!雑魚はお前らで相手しろ!!この鼻垂れ小僧は俺様の獲物だぁ!?」

西兵's「ははぁっ!!」ドドドドッ

南兵's「させるかぁっ!!」ガガガッ

ガンッ バシュッ ドガァッ ズシャアッ

ワァーワァーギャーギャー
285: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:42:59 ID:BEe3Pd2fB.
―――南西部(西軍中央本陣)―――

エレファン「しゃーてと…そろそろ儂も本腰入れてやるとするか。あん…ぐ」カパッ

西兵1「(い、入れ歯を外してる…)」

エレファン「ほわふぁまはへひふひほ」フガフガ

西兵1「(な、なんて?)」

西兵2「(さ、さぁ…?)」

エレファン「ふりやひりや…あん…ぐ」カキッ

西兵3「な、なぜわざわざ入れ歯を換えられたので?」

エレファン「にょひひ!これが儂の勝負入れ歯じゃ!」ギラーン

西兵1「ま、まぶしい!」

西兵2「だ、ダイヤモンド…!?」

西兵3「(なんだよ、勝負入れ歯って…)」

エレファン「ゴールド、シルバー以外にもラピスラズリやエメラルド、ブルーサファイアにトルマリンの入れ歯もあるぞい?」

西兵1「(な、なんて贅沢な無駄遣い…!)」

エレファン「よしよし、ほんじゃジルレイめが大将首を切り落とす間に中央の雑兵共を亡き者にするとしようかのう…?」ギラーン
286: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:44:22 ID:mMBbNGzqdU
―――南西部(南国右軍陣営)―――

ガンッガンッ ガンッガンッ ガンッガンッ ガンッガンッ

ジルレイ「ゲハハハ!防戦一方だなぁ?ビビってんのか!?」ヒュンッヒュンッ

ローレン「っ……」ガンッガンッ

ジルレイ「脇腹をしこたま打ったらしいなぁ?バグダッドにでもやられたか!?」ヒュンッヒュンッ

ローレン「」ガンッガンッ

ジルレイ「(降り下ろしの連撃に慣れさせてと…空いた脇をぶっ刺して幕だ!)」ヒュンッヒュンッ

ローレン「」ガンッガンッ

ジルレイ「であぁぁ!!」ビュッ

ローレン「」サッ

ジルレイ「おっ…」スカッ

ローレン「もらったぁ!!」ビュバッ

ジルレイ「うおっと!?」ガキンッ

ローレン「ちっ!」ズザァッ

ジルレイ「…一度に二撃与え、攻守を兼ねる!これが二刀流の利よ!」ジリッ
287: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:45:34 ID:mMBbNGzqdU
ローレン「……」ジャキッ

ジルレイ「さぁ!首を寄越しなぁ!?」バッ

ローレン「」パシンッ

騎馬3「ヒヒーン!」ガガガッ

ジルレイ「なっ…!?」ピクッ

ドカァンッ ドタタッ

ジルレイ「のあああ!?」ゴロンゴロン

ローレン「ぐあぁっ…!」ズシャアッ

ジルレイ「(う、馬の手綱を放してぶつけやがった…!正気か、こいつは!?)」ググッ

ローレン「ッ……」ヨロッ

ジルレイ「(や、奴より先に剣を拾わなけりゃな!?)」ガッ

ローレン「(そ、想像以上に衝撃が強かったな…!?)」ガッ

ジルレイ「しっ…ねぇぇい!!」ブンッ

ローレン「くっ…!?」ザウッ

バキィィンッ!
288: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:48:04 ID:BEe3Pd2fB.
ポトッ カンカランカラン

ローレン「(まずい…刀身を折られた!?)」

ジルレイ「しゃいっ!!」ビュンッ

ローレン「うおっ…!?」ズサッ

ジルレイ「終わったな…!?」ジャキッ

ローレン「…くそっ!」ギリッ

騎士長「させるかぁ!?」シュバッ

ジルレイ「あぁん!?」ギンッ

ローレン「騎士長…!?」

騎士長「私がいる限り、ローレン様を討たせはせん!?」ギギッ

ジルレイ「へぇー?貴様がいたら、こいつは斬れねぇのか?」ギギッ

騎士長「当然だ!?」ググッ

ジルレイ「じゃあ失せろ?」ジャッ バウンッ

騎士長「なっ…」ピクッ

ローレン「(い、いつの間にもう一本の剣を回収していたんだ…!?)」ハッ

ドッガァァァ!

騎士長「ぎああああ!?」ガシャンガシャン
289: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:49:53 ID:BEe3Pd2fB.
ローレン「…大丈夫か!?」バッ

ジルレイ「かってぇ〜鎧だなぁ…?」ジンジン

騎士長「う…ぐぉおお……」ピクッピクッ

ローレン「よくも…!」ギロッ

ビュッビュッ ドスッドスッ

ローレン「っ…!?」ズダァンッ

ジルレイ「どうよ?両肩貫かれて地面に磔になった気分は?」グッグッ

ローレン「ごっ…ぐぁぁ…」ブシュッ

ジルレイ「この場で首を跳ねるのもいいが…まずは身柄を頂いて貴様の軍を思考停止状態にしておこうか?」

ローレン「なん…だと…!?」プルプル

ジルレイ「てめぇをズタズタのバランバランにして蹂躙し尽くしたザマを南国のチンカス兵共に見せつけてやるぜ…?」ニヤニヤ

ローレン「悪趣味な…!西の…蛮人め…!」ギリッ

ジルレイ「よく言うぜ…。こっちからすりゃ貴様らは侵略者だ?」ペッ

ローレン「……!」ビチャッ
290: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:53:27 ID:mMBbNGzqdU
ジルレイ「剣は一旦、返してもらう…ぜ!」ググッ

ローレン「ぐぎぁっ……」ズボッ ブシュッ

ジルレイ「とりあえず処刑はエレファンのジジイに任せるか…。
おーい!そこの!こいつを中央の野営地に運べ!?」

西兵33「ははっ!!」パカラッパカラッ

西兵34「お任せあれ!!」ガッ

ローレン「うっ……やめ、ろ…!はな…せ……」グンッ ドサッ

ジルレイ「うしっ…落とすなよ!誰か俺にも馬、寄越せ!?あれじゃ使い物にならん!」ザッ

バッ ドカァッ

ジルレイ「いでぇっ!?」ズザァッ

騎士長「ローレン様…!今、お助けしますぞ…!」ゼェゼェ

ジルレイ「つつ……なぁ〜にしてくれちゃってんだ、くたばり損ないがぁ?殺しちゃうぞ?」ムクッ スリスリ

騎士長「だま、れ…下郎が…!」ジリッ
291: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:54:16 ID:mMBbNGzqdU
騎士長「覚悟ぉおお!!」バッ

バシュッ ドバッ

騎士長「うっ…」ブシュッ

西兵33「バカめ!させるか!」ジャキッ

西兵34「ジルレイ様!我らに恩賞を!?」ニヤリ

ジルレイ「うしっ!よくやった!後でババンと褒美をくれてやる!」ニヤリ

騎士長「邪魔…するなぁ!?」ビュバッ

西兵33「ぶはっ!?」ガシュッ ドタァッ

西兵34「なっ…!?」ビクッ

騎士長「ぐっ…くく…!ロー…レ…ぼはぁ!」ゴポォッ

ジルレイ「っぜぇな…。先に行け!こいつの始末は俺が着ける?」ジャキッ

西兵34「ははぁっ!!」パシンッ

パカラッパカラッ パカラッパカラッ

南兵1「ローレン様が拐われるぞ!取り戻せ!?」ガガガッ

南兵's「うおおお!!」ガガガッ

西兵's「切り伏せろ!!」ガガガッ
292: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:55:59 ID:BEe3Pd2fB.
―――南西部(西軍中央前線)―――

ウオオオオオオオオオ!!!

エレファン「……?向こうが騒がしいのう?」チラッ

西兵1「ジルレイ様が敵将を仕留めたのでは?」

エレファン「にょほほ!もうか?アレもやるもんじゃの?」

ワァァァアアアアアアアアア!!!

ゴガガッ バガァッ ズドォンッ

西兵2「敵中央防衛陣、崩しました!このまま一気に中央軍を叩きます!」

エレファン「兵を補充したとはいえ、元の半数を失い、防御も砕かれて混乱しとるわな。勢い任せのケダモノが戦など100年早いわい?」

西兵3「急報!急報!向こうから大隊が迫っております!?」ガガガッ

エレファン「はぁ…?ジルレイの奴め、敵将の首では飽きたらず儂の手柄までも横取りする気かや?」

西兵3「それが…どうやらジルレイ様の部隊が敵将を人質に取ったらしく南国軍の部隊が追随してきているようです!」

エレファン「にゃんじゃ…珍しく機転が利くのう?」

西兵3「いかがなさいますか?」

エレファン「援軍を寄越して背を追う南国兵を殲滅せい。人質は本陣で預かろう」

西兵3「ははっ!ではそのように!」

エレファン「儂は一度、戻るぞい。後は勝手にやれぃ」パカラッパカラッ

西兵4「承りました!」
293: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 21:58:23 ID:BEe3Pd2fB.
―――南西部(西軍中央本陣)―――

エレファン「これが南国王かや?」ツンツン

ローレン「」プラーン

西兵34「ははっ!ジルレイ様が仕留め、私が運びました!」

エレファン「にょふふ!でかしたぞい?存分に褒美を取らそう?」

西兵34「」ニヤリ

エレファン「しっかしひどいのう…身体中、ボロボロじゃにゃーか?死んどりはせんじゃろな?」

西兵34「暴れるので少々、痛め付けましたが気絶しているだけです。どうされますか?」

エレファン「知れたことよ?こやつの身柄を条件に投降を促せぃ?」

西兵34「敵の降伏を許すのですか?」

エレファン「もちろんただ降伏させる訳ではにゃい。
儂らに刃向かった愚か者共に西の恐怖を知らしめる為、この小僧っ子を公開処刑してやるんじゃい」

西兵34「おぉ!それはいい!」

エレファン「さしずめ麻袋にでも積めて地べたに転がし、馬の大軍を駈って轢き倒し、グシャグシャのベキベキにしてやるかい?
にょふふ……無様な国王の死にざまを眺める下等民の絶望に満ちた表情をとくと拝んでやろうとするか?」

西兵34「ぎゃっはっはっは!さすが元帥殿!良い処刑法を考案されますな!」ゲラゲラ

ローレン「ゅ…さん……」ボソッ

エレファン「ん?」

西兵34「は…?」

ローレン「うごぉおおおおお…!!!」ギギギッ ブチィッ

西兵34「な、縄を千切った!?」ビクッ

西兵35「何をしやがる!このクソヤロウが!?」バッ

エレファン「にょほほ…馬鹿力じゃのう?じゃが丸腰でにゃにが出来ようか?取り押さえよ?」

ローレン「がぁぁぁあああああ!!!」ダッ

西兵's「ぶっ殺せぇええい!!!」バババッ
294: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 22:00:06 ID:mMBbNGzqdU
西兵34「ずあっ!」ブンッ

ローレン「」サッ ビュンッ

西兵34「ぶっ!?」ガツンッ

西兵35「おのれがぁ!?」バッ

西兵36「死にさらせぇ!!」ブンッ

ローレン「」ガシッ バッ

西兵34「げげ!げべぶ!?」ザクッザクッ

ローレン「」バッ

西兵35「ぬっ!?」ドンッ

西兵36「うお!?」ドタァッ

バシュッ

ローレン「っ……!」ビクンッ

西兵37「ひひひ!」ビチャッ

ローレン「」ザウッ

西兵37「えっ……ぼばっ!?」ドスッ

ローレン「」ズブッ ブシュッ

西兵37「あ…がは……」ドサッ

西兵38「こ、こいつ…いつの間に武器を奪いやがったんだ…!?」タジッ

西兵39「くそ…!怯むんじゃねぇ!押し包んでバラバラにしてやるぞ!?」

ザンッ ドバッ ガシュッ ゴカァッ
295: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 22:01:20 ID:BEe3Pd2fB.
西兵40「ぎゃあああ!!」プシャアアアアア

ローレン「はぁ…ふぅぅぅ」コヒューコヒュー

西兵38「ば、バケモンが…!」ブルッ

西兵39「ふ、不死身か、こいつは…!?」ビクビク

ローレン「」ダッ ビュバッ

西兵41「りゃあああ…のはっ!?」ブンッ ドバッ

西兵39「ひぃぃ!?」タジッ

ガッ ズバッ ザンッ ギャアアアアアアア

エレファン「なにゆえもがき苦しみ続けるやら?事切れるまで戦おうとハナから勝ち目もあるまいに?」ザッ

ローレン「……」ボタボタ

エレファン「満身創痍じゃにゃーか?何がお主をそうさせるんじゃい…?」

ローレン「俺…と、っもに……」ボソッ

エレファン「はぁ?耳が遠いでな?聴こえるように言うとくれ?」

ローレン「」クラッ

西兵39「い、今だぁ!!一斉に八つ裂きにしてやれぇ!?」バッ

ダダダダダッ

ローレン「」グッ

ガンッ ズバッ ドシュッ バギィッ

エレファン「……」
296: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 22:03:04 ID:mMBbNGzqdU
西兵39「そん…ばが…な……」プシャアアアアア

バタバタッ バタバタッ

ローレン「ぶっ…ぼぼほ!!」ゴパァッ

ビチャビチャッ

エレファン「おったまげたわい?お主、産まれる国を間違えたんじゃにゃーか?
我が軍におれば将軍に次ぐ地位と名声を得られたかもしれんものを…もったいないのう?」

ローレン「お、れ……もに………かぇ…」ズチャッズチャッ

西兵's「」ザザザッ

ゾロゾロ ゾロゾロ

エレファン「じゃが…まぁ当然、一人の力には限界がある?よう頑張ったがの?」

ローレン「うっ…オォオオアアアアァァアアア!!!!」カッ

エレファン「」ビクッ

西兵's「っ…!」ビリビリ
297: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 22:04:15 ID:mMBbNGzqdU
ローレン「俺はここにいるぞぉぉおおおお!!!」

イルゾォォオオオオ………

エレファン「……!?」

ローレン「共に戦えぇええええ!!!誇り高き南国の戦士達よぉぉおおお!!!」

センシタチヨォォオオ………

エレファン「こ、鼓膜が…張り裂けるじゃろが…!?」キーン

ローレン「ふぅぅぅぅ………」クタァッ

エレファン「…にゃ、にゃにがしたいんじゃ!お主は!?」

ウオオオオオオオオオ…………

西兵42「な、なんだぁ?遠くからなんか聞こえるぞ…?」

西兵43「獣のうなり声か?」

エレファン「ま…まさかこやつの声に兵が呼応したとでも?」ビクビク

ローレン「」ダッ

ザンッ バシュッ ドサドサッ

西兵42「ま、まだ動けるのか!?」

西兵43「殺せ!」ダッ

「ぐおぉぉおお………よぉく寝たわ?」ズシッズシッ

エレファン「」ハッ
298: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 22:06:56 ID:mMBbNGzqdU
エレファン「あ……あ、うあ……」ガクガク

ズォォオオオオン

エレファン「しょ、しょしょ…ひょぅふんはっは!」ガポッ

将軍「もう終わったのだろうな?」ゴシゴシ

エレファン「い、いえ…しょ、しょれが…?」フガフガ

将軍「ヌハハハハ!やはり我輩の出る幕もなかったか?」

エレファン「あ、あぁいやあの…」フガフガ

将軍「む?」チラッ

ザンッ ズドッ ドガァッ

将軍「あぁ〜ん?何奴だ、あのボロキレは?」

エレファン「……!」アワアワ

将軍「元帥よ?貴殿は確か…前哨戦で我輩が出張るまでもない。
後ろでゆっくり休んでいて構わないとほざいたな?」ギロッ

エレファン「ふ、ふふぐに!あん…ぐ!すぐに始末……」カパッ

バゥンッ

エレファン「ぼげぁああっ!!」ゴシャンッ

将軍「役立たずが…貴様の隊は使い物にならんな」コキッコキッ

西兵's「」ビクビク

将軍「ぬんっ!!」ブォンッ

ズババババババッ!

グシャッ ベシャッ ミチッ ドチュッ ボトボトッ

ヒェェエエエエ!!! ワァァァアアアアアア!!!

ダダダダダッ バラバラ バラバラ

将軍「…恥さらし共が?」フンスッ
299: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 22:10:46 ID:BEe3Pd2fB.
ローレン「」ジャッ ビュバッ

将軍「お…?」ガインッ

ローレン「」ブンッブンッ

将軍「ヌハハハハ!虫けらごときがいじましいものよ?
我輩の甲冑は宝石大国、西の最高級オリハルコンをあしらえて造られた最強防具であるぞ!」ガインッガインッ

ローレン「」ブンッブンッ

将軍「鋳鉄か鋼か知らんが柔い刃では傷一つ付けられんよ」ガインッガインッ

ローレン「」ブンッブンッ

将軍「まぁだ分からんのか?」ガインッガインッ

ローレン「」ブンッブンッ

将軍「……」ガインッガインッ

ローレン「」ブンッブンッ

将軍「」ガインッガインッ

ブンッブンッ ガインッガインッ

将軍「」イラッ

ローレン「」ブンッ

将軍「うぬがぁっ!?」バゥンッ

ローレン「ッッッ……」ドッ ブワンッ

ヒューーーン ズドシャアアアッ!
300: ◆WEmWDvOgzo:2015/10/31(土) 22:12:03 ID:BEe3Pd2fB.
ゴロゴロ ズシャッ

将軍「しつこい奴め…」ズシッズシッ

ローレン「」ピクッピクッ

将軍「っ…ぶははははは!!やりすぎたか!胴から真っ二つにしてしまったわ!?」ゲラゲラ

ローレン「」ジワァァァァア

将軍「惨めだのう?えぇ?」ゲシッゲシッ

ローレン「」グラッグラッ

将軍「お前のような弱者を惨殺してやるのは勝者の特権よ?ヌハハハハ!!」

将軍「ふん…こんなつまらぬ戦いにもたついてもいられんな。
女王を娶る為にも、さっさと南国王の首級を挙げてしまうか」ズシッズシッ

ローレン「……」ボーッ

ローレン「(あと……は…たの……むぞ)」

ローレン「ひ……め………どの……」フッ
301:名無しさん@読者の声:2015/10/31(土) 22:35:26 ID:X6zpnu5r..
ローレンさあああん!!。゚(゚´Д`゚)゚。
302:名無しさん@読者の声:2015/11/1(日) 03:50:46 ID:0vDNTNdJbA
ローレンさん…(´;ω;`)ウッ…
303:名無しさん@読者の声:2015/11/1(日) 12:21:22 ID:qa9CfpXeNw
つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚

ローレンさんイケメンだった……あとは、ヒメか主人公がどうにかしてくれると信じてる
304: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/1(日) 22:28:06 ID:w.7DrG1zg2
>>301-303
ま、まさかまさかのローレンさんコール!?
少ない出番での退場ですが偲んでもらえてキャラも自分も浮かばれますw
そろそろ戦いも佳境に迫りますがカロルやヒメはどう動くのか、先の展開にご注目いただけたら幸いです!
支援ありがとうございました!
305: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/3(火) 20:22:47 ID:0fd8NEJ9sQ
〜〜〜夜〜〜〜

―――西の国(荒れ地)―――

ゴロゴロゴロ ビカーッ

宰相「雲行きがあやしいな」

東国軍長2「稲光…。豪雨を警戒しなければなりませんな」

ゾロゾロ ゾロゾロ

ザスッザスッ ザスッザスッ

東国軍長2「砂漠地帯を抜けたは良いものの…なんとも枯れ果てた、でこぼこ道に出ましたな?」ザスッザスッ

宰相「……人の手が掛かったような形跡もずいぶん見受けられる。それだけ西国の闇は深いのだろう」ザスッザスッ

東国軍長2「煤けた野に変色した沼地、人里と思われる焼け跡も幾度か通りましたが…まさに凄惨極まりない状態です。
何をどうすれば自国の領土を、ここまで荒廃させられるのか不思議でなりませぬよ?」

宰相「うむ……」

東国軍長2「このような国に拐われてしまった子供らは…今頃どうなっている事やら…?」

宰相「あれから10数年の時が経つのだな…」

東国軍長2「生きてくれていればいいのですが…」

宰相「生きていると信じよう。そして我らの手で確実に救い出すのだ」

東国軍長2「そうですね…。その為にブルードル陛下は準備を続けていたのですから…想いに報いる為にも必ずや!」グッ
306: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/3(火) 20:23:16 ID:0fd8NEJ9sQ
東兵7「宰相閣下!軍長殿!後ろの兵達が何か発見したようです!」

宰相「ん…?何をだ?」クルッ

東兵8「空に気球のような物が浮いてまして…」

東国軍長2「気球…だと?」パッ

フワーン フワーン

東国軍長2「なんだ、あれは…?まるで海月のようだが?」

宰相「…?」

東兵8「ここだけではなく後続の隊の真上にもいくつかございまして…」

東国軍長2「なに!なぜ早く報告しなかった!?敵の罠かもしれんだろう!?」

東兵8「も、申し訳ございません!曇天の中、月明かりも射さなかったもので確認が遅れました!」

東国軍長2「走るぞ!後続の部隊にも報せろ!?」パシンッ

東兵8「ははぁっ!!」

ガガガガガガガッ
307: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/3(火) 20:24:32 ID:0fd8NEJ9sQ
ヒュンッヒュンッヒュンッ

スパーン パンッパンッパンッ

宰相「気球の方から破裂音がしたぞ…!?」ビクッ

ザバァァァァァァァアア

宰相「あ、雨…?」ジッ

バタバタ モガモガ ズダダダダァァン

ウワァァァアアアアア!! ヒィィィイイイイイ!!!

宰相「な、なんだ…?なんなのだ、いったい…!?」ブルッ

東国軍長2「立ち止まってはいけません!このまま走り続け、ここを抜けましょう!」パカラッパカラッ

宰相「う、うむ!」パカラッパカラッ

ギェェエエエエエエ!!! グルジィィィイイ!! ジヌゥゥゥゥ………
308: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/3(火) 20:27:54 ID:zZ0LLNhnzs
東兵7「軍長殿!後続の隊が付いてきておりませんが!?」パカラッパカラッ

東国軍長2「ちっ…やはり何かあったんだな!?」パカラッパカラッ

宰相「あ、あれはなんだ!?」ビクッ

東国軍長2「は!?」バッ

ビュッ

東兵7、8「ぐぎゃあっ!?」ズブブッ ドタァンッ

東兵9「な、なんだ…この馬鹿でかい矢は…な、長槍でも飛ばしてるのか!?」ギョギョッ

ビュビュビュビュビュビュビュビュビュビュッッッ

ズドドッ ズブブッ ズシャアッ ゴロゴロ

東兵9「お、大盾がまったく意味を成さない…!?」

東兵10「それどころか一発の射撃で馬ごと3人は持ってかれ……ぶきっ!?」ズドンッ ドシャアッ

東兵11「軍長!指示を…指示をぉぉおお!?」アワアワ

東国軍長2「(は、背後は謎の雨に苦しむうめき声……目の前は巨大な矢の一斉掃射……よ、横に反れるしか……)」

ドドドドドドドッ

東兵12「りょ、両側から騎馬の大群がごげぇいっ……」ズドンッ ドシャアッ

東国軍長2「(打つ手なし…か!くそぉ…ここまで来て…!)」ギリッ

ズドンッズドンッ ドシャアッ ゴロゴロ………
309: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/3(火) 20:29:11 ID:0fd8NEJ9sQ
東国軍長2「宰相閣下…!お逃げくださいませ!なんとか我々で防いでみせま……」

宰相「おのれっ!!おのれぇっ!!卑劣な西の蛮族共めぇ!?」ギャーギャー

東国軍長2「さ、宰相閣下…!?」

宰相「非道を繰り返し、子供らを拐い、陛下を……東国の光を失わせるばかりか…騙し討ちや罠に掛け、真っ向から戦おうともしないのかぁ!?」ギャーギャー

東国軍長2「お、落ち着いてください!宰相かっ…ぐふっ!」ズドンッ ドシャアッ

東兵13「軍長…!軍長殿!?」ハッ

東兵14「あ、あぁぁあ!!もう終わりだぁぁ……ぎえ!?」ズドンッ ドシャアッ

宰相「お前たちのやっている事は何一つ…何一つとして許されんぞぉ!?
正義のない貴様らの傲った所業はいつか必ず酬いとなって、その身に降りかかるであろう!!」ギャーギャー

東国軍長2「(も…はや……これ、まで…か。すまぬ…子…ど、も…たちよ……)」フッ

宰相「呪ってやるぞ!!たとえ、ここで我らを殺そうと…貴様らの築き上げた屍の数だけ不幸を見舞ってやる!!
死後の世界から、いつまでも滅びの呪詛を唱えてやる!!
この怨念が後世まで受け継がれ、西の悪魔共が破滅へと導かれる日が必ずやってくるぞぉ!!」ギャーギャー

東兵15「そ、そうだ…!そうだぁぁあああ!!」

東兵16「西国の悪魔めぇ!!我らの恨み、思い知るがいい!!」

東兵17「我らの戦いは終わらぁぁああん!!東国の怨念に呑まれよ、悪魔共ぉぉおおお!!!」ギャーギャー

ワァーワァーギャーギャー!

ズドンッズドンッ ドシャアッ ゴロゴロ

ギャアアアアアアアア………
310: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/3(火) 20:35:57 ID:zZ0LLNhnzs
参謀「矢の残数は気にせず撃ち込みなさい」

ビュビュビュビュビュッ

参謀「意外とあっけなかったですね。北東防衛線を突破したというので多少は善戦を期待したのですが…」

ワァァァアアアアアア ギャアアアアアアアア

参謀「…まぁそれもひとえに貴方の助力があったからでしょうがね?」チラッ

魔導師「それはどうも…」

参謀「あれだけの手勢を見事に封じ込めてみせるとは大したものですね。
あんな強力な毒兵器、いつの間に開発なされてたんですか?」

魔導師「毒兵器じゃないよ…。黒魔術さね?」

参謀「黒魔術、ですか?」クスッ

魔導師「そうそう。呪文をぶつぶつ呟きながら煮えたスープを混ぜてたら出来たのさ?」

参謀「なるほど?」クスクス

ギャーギャー ギャーギャー

参謀「怖い、怖い。彼らはおぞましいほどに声を枯らしながら何を訴えているのでしょうね?」

魔導師「つまんない怨み言さ。人の本質は傲慢と強欲…正義だのなんだの、あざとい綺麗事を吐く奴に限って追い詰められると醜い本性を露にするものだ?」

参謀「本質…ですか。なんとも業の深そうなお話ですねぇ?」

魔導師「……」

参謀「正直に申しますとパカラゥロ様が協力くださるとは思いませんでしたよ。実は貴方も戦争に興味がおありなのでは?」ニヤリ

魔導師「…ないない。女王以外はどうだっていい」

参謀「ではなぜ女王のそばを離れてまで、こちらの戦場に足を運ばれたので?」

魔導師「女王に仇成す連中は生かしておけない。それだけ」

参謀「それでしたら、なおのこと城に残ってお守りして差し上げた方がよろしかったのでは?」

魔導師「……何が言いたいの?」ギラッ

参謀「睨み付けないでくださいよ。貴方、見た目も雰囲気も物々しいんですから?」

魔導師「ふん…」プイッ
311: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/3(火) 20:39:36 ID:zZ0LLNhnzs
参謀「僕はただ…貴方がここに来なければならない理由があったんじゃないかと推測してみただけです?」ニコッ

魔導師「……」

参謀「東の国との遺恨…少しは晴れましたか?」ニコニコ

魔導師「あいにく自分はつまらない怨み辛みなんかとは無縁でね。
あんな奴らに向ける情なんて持ち合わせちゃいないよ…?」

参謀「乾いてますねぇ…。貴方を見捨てた憎き郷国に思う存分、復讐してやれる好機ですのに?」クスクス

魔導師「でもねぇ…あまりいい気分じゃないんだ」グッパッ

参謀「……?」

魔導師「昔のことなんか、とっくのとうに忘れてた。どうだってよかったんだ。本当に…どうだって…」

参謀「……」

魔導師「なのにあいつらは今になって、うざったい記憶を呼び起こさせる…。女王がくれた幸せを…ぶち壊しにしようとする」

参謀「彼らは貴方と…かつてのお仲間を助けたくて、ここへやってきたのですよ?」

魔導師「……」
312: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/3(火) 20:39:57 ID:0fd8NEJ9sQ
〜〜〜回想(パカラゥロ)〜〜〜

子供1「ここ…どこ…?」

子供2「暗いよぉ…あぁぁぁあああん……」

子供3「ママぁぁ……パパぁぁ……」

少女「み、みんな…大丈夫だよ…。絶対、助けに来てくれる…」

子供4「わぁぁん…こわぁぁい……」

子供5「かえりたいよぉぉ……」

少女「大丈夫…大丈夫…大丈夫だから…」

子供6「なんで大丈夫なの…?」

少女「パパもママも言ってたもん…。東の国は日いずる国……暖かな光が優しく包み込んで、みんなを照らしてくれるの」

子供6「…じゃあ…はやくかえれるの?」

少女「帰れるよ…?だってわたしたちは…やさしい、やさしい国に生まれたんだもの」

少女「パパとママも心配して王様にお願いしてるよ。そうしたらお城の兵士さんたちが来てくれるから大丈夫?」

子供's「〜〜〜!」ウルウル

少女「だから泣かないで…待とう?みんな帰れるからね…?」

子供's「ゔん…」コクリ

少女「大丈夫……大丈夫……大丈夫……」

………………………
313: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/3(火) 20:41:34 ID:zZ0LLNhnzs
魔導師「大丈夫……大丈夫……助けに来てくれる……守ってくれる……。
家族を信じよう……国はきっと見捨てない……それでもダメなら神に祈ろう……」

参謀「……」

魔導師「大丈夫……大丈夫……大丈夫……だい、じょうぶ……」

参謀「…大丈夫には見えませんけど」

魔導師「…どれだけ待ったかな。そうしてる内にみんな死んだよ」

参謀「おかわいそうに?」

魔導師「いいんだ…。そんなの…女王が愛してくれるから…女王が自分を見ていてくれたから……」

参謀「ははぁ…なるほど」

魔導師「過去に愛着もないし哀愁もない…。だけど…今さら乗り込んできて助けに来たなんて息巻かれちゃ…腹が立つよねぇ?」

参謀「嬉しくはなりませんか?10数年越しにはなりますが…あなた方を忘れずにいてくれた証拠ですよ?」

魔導師「自分らをダシに甘い汁を啜りたがってるのさ…」

参謀「無謀な戦いを挑んでまで?」

魔導師「じゃなかったら自己満足…助けに向かった事実が欲しいだけ……助けてほしい時には何もしなかったクセに……」

参謀「機を伺っていたんですよ?」

魔導師「…女王だけが自分の道標。あいつらはそれさえ奪おうとする」

参謀「悪逆非道な独裁者を打ち倒し、拐われた民を救い出す…なんとも麗しい美談ではありませんか?」

魔導師「悪いのは全部、女王?かわいそうな被害者は自分?英雄はあいつら?バカ言ってんじゃないよ…?」

参謀「ふふ……」クスクス
314: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/3(火) 20:46:07 ID:0fd8NEJ9sQ
魔導師「だいたいさ…今さら助けたからってどうなんの?自分が喜ぶとでも思ってんの?」グッ

魔導師「こんな醜い化け物になって…さんざん痛め付けられて、女王以外に自分を認めてくれる人はいない…!」ギュウウウ

魔導師「奴らが自分らを放って平和とかいう気色の悪い日々を貪っていた間に…。
…もう、もう取り返しの付かない事になってるじゃないのさ…!?」ワナワナ

魔導師「拐われた可哀想な子供が10数年で化け物になってました…。
これからは見も知りもせず事情もなんにも理解しない素敵な国の人達と幸せに暮らしましょうって?」

魔導師「そもそも分かるの…?誰の子か…誰の家族か…本当に東国の人間だって認められるかい…?」

魔導師「こんな化け物を…誰が愛してくれるって言うんだい…!?」ギラッ

参謀「はぁ…僕に言われましても?」シラー

魔導師「自分を救ってくれたのは女王さ…。だから…女王を狙う奴は許さない…!
永遠の命が欲しいなら作ってやる…!女王の望みは…自分が叶える!」ググッ


参謀「心酔しておられるのですね…?」

魔導師「女王を傷付ける奴は皆殺しさね…!」

魔導師「自分の命は…女王の為に使うって決めたんだからさ……」

参謀「…そろそろ鞍替えしてもいいのでは?」

魔導師「は…?」

参謀「大事な…とても大事なお話があります。聞いてくれますか?」

魔導師「……?」
315: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/4(水) 21:16:00 ID:uI2Wh2UJdg
参謀「実は先ほど…ある訃報が届きました」

魔導師「いいね…。将軍あたりが死んだのかい?」

参謀「まさか?閣下はご健在ですよ。南国軍も全滅させたとの事で素晴らしい快進撃を見せておられます?」

魔導師「ちっ……あーそう。死んでないのね…」ムスッ

参謀「帝都が陥落されたそうです」

魔導師「」ピクッ

参謀「イアマンに籠絡せしめられた民衆が大挙して城に攻め入り、女王を……」

魔導師「」バッ

参謀「」ビクッ

魔導師「冗談でも殺すよ…?」ギラッ

参謀「…冗談なんかじゃありませんよ」

魔導師「……!」ワナワナ

参謀「だから言ったじゃありませんか?そばでお守りした方が良かったのではないかと?」

魔導師「何かの間違いだろ…?」

参謀「間違いなどでは…?」

魔導師「間違いだって言え…!?」ズイッ

参謀「僕を殺すのは構いませんが…そうしたって女王は蘇ったりしませんよ?」

魔導師「っ…!」ギリィッ
316: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/4(水) 21:21:11 ID:k81ksGofh2
魔導師「じゃあ…なんで東国軍を後回しにしなかったんだい…!?」カッ

参謀「…戦ってる最中に報せが届いたものでして」

魔導師「ざけるな…ざけるな…ふ、ざけるなぁ!!」ガリガリ

魔導師「そん…そんな筈ない…!女王が…女王は死んだりしない…!
癒しの力を手に入れたら…永遠の命を授かって…じ、自分も……女王と、いっしょにぃい……」ボリボリ

参謀「」パシッ

魔導師「!?」ピタッ

参謀「僕と共に報復しませんか?」

魔導師「ほう…ふく…?」

参謀「貴方と女王の間にはただならぬ信頼関係があるのも知ってます?許せませんよね?」

魔導師「……」

参謀「今から帝都に向かいましょう…。暴動を起こした反乱者共を駆逐し、女王の仇を取るのです…!」

魔導師「……」

参謀「現在、王国軍は僕の寄越した援軍が足止めしていますが…もしもこの事実が知れれば大変な事態に陥ります。
戦争の最中に反乱を許した上に女帝の権威を失ったとあれば付け入る隙ありと見られてしまう。
そうなれば諸国は王国軍側に靡くか…王国、西国の対立そのものに介入しようとするやもしれません」

魔導師「……」

参謀「早く帝都を奪還しなければ、もはや西の国に未来はありませんよ?」
317: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/4(水) 21:24:23 ID:k81ksGofh2
魔導師「痒い…」ボリボリ

参謀「パカラゥロ様…!」

魔導師「女王がいない世界に…自分の未来なんかない」ボソッ

参謀「は…!?」

魔導師「鬱だ。死のう…」ボーッ

参謀「(こいつ…)」チッ

魔導師「女王…すぐそっちに行くよ…」ヒタヒタ

参謀「どこへ行くのですか!?」

魔導師「」ヒタヒタ

参謀「(こいつの毒兵器は強力だが…物が物だけに生身の人間じゃ扱えない…。
実際に試してそれが分かった…。けど、それだけに自在に使えれば1国の軍も容易く蹂躙出来る殺傷力があると証明されている…)」

参謀「(今回の戦いで我が軍も多大な犠牲を負った…。
次の段階で北国、他2国の平和協定加盟国と戦い抜く体力は残ってない…。
ともなると、こいつの毒兵器と高い暗殺能力は勝負の分かれ目を左右する決め手となるでしょうね…)」

参謀「(なんとしてでも取り込まないと……)」ギリッ
318: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/4(水) 21:33:21 ID:k81ksGofh2
参謀「聞いてください!パカラゥロ様!」スタスタ

魔導師「……」ヒタヒタ

参謀「女王をお救いする方法があります!」スタスタ

魔導師「」ピタッ

参謀「癒しの力です!永遠の命を実らせる程の力ならば…女王を蘇生させられるに違いありません!」

魔導師「……」

参謀「癒しの力は閣下が奪取されるでしょう!我々は女王の御遺体を取り戻すのです!」

魔導師「……」

参謀「そうすれば、また…」

魔導師「」シュコォォォウ

参謀「」ビクッ

参謀「」ガタガタブルブル

参謀「(な、なんだ…この悪寒…!さ、寒いのに汗が噴き出て…!?)」

魔導師「余計な話はいらないよ…。最初から必要な事だけ教えておくれ…」パッ

参謀「は…ははふはふひは……」ガタガタブルブル

魔導師「あ、そうそう…次、回りくどい言い方して利用しようとしたら殺すから。いい?」ギラッ

参謀「(お、悪寒が…止まった…!)」ダラダラ

魔導師「行こうか。指揮はお願いするよ」スタスタ

参謀「(どいつもこいつも女王、女王と…あの妾のどこにそんな求心力が…!)」イライラ

参謀「(……まぁいい。師匠殿が女王を始末し、レジスタンス共を取り込んで帝都を占拠している筈…これでようやく僕は西の皇帝に返り咲ける。そうすれば後は…どうにでもなるさ)」クスッ
319: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/4(水) 21:36:28 ID:uI2Wh2UJdg
〜〜〜数日後〜〜〜

―――王都(王宮)―――

ヒメ「ローレン様と宰相殿が……戦死した…!?」ガタッ

政務官「事実なのか!?」

伝者1「はっ…残念ながら南国軍、東国軍、共に全滅……。
フィクサー総指揮率いる王国軍は西国内部にて6万の残党軍と交戦中…事実上、敵の領内で孤立無援の状態となっております」

ヒメ「……よくも…!よくもローレン様と宰相殿を…!?」ブチィッ

政務官「落ち着いてください!まだ報告を聞き終えておりますまい!」

伝者2「幸いにして南国軍は国王を討ち取られた事に気付かず士気を保ったまま戦い続けたそうなのですが…」

政務官「おぉ…!そうか…!」

伝者2「殺戮将カカドゥーラが戦場を荒らし回り、とてつもない勢いで南国軍の陣形を崩壊させ、あえなく惨敗といった形で……ぐえっ!」グンッ

ヒメ「惨敗…!?ふざけるなよ、おまえ…!?」ググッ

伝者2「……!?」プルプル

ヒメ「…決死の覚悟で戦い抜いた英雄達の勇姿を"惨敗"なんて無粋な言葉で締め括ろうとするな!?」ドンッ

伝者2「うぐっ!も、申し訳ございません…」ドサッ

ヒメ「……!」イライラ

政務官「カカドゥーラの軍は侵攻してきておるのか?」

伝者2「はっ!それが勝利の祝杯を挙げており、三日以上経った今も宴を続けております!」

政務官「…ずいぶんとナメられたものだな」ギリッ

ネバル「大変です!」バァンッ

政務官「ど、どうした!?」

ヒメ「……」ジロッ
320:名無しさん@読者の声:2015/11/4(水) 21:37:28 ID:y5m8SzNMlo
師匠殿はアテにならんが参謀頑張れ
参謀と女王のガチバトルに期待 
321: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/4(水) 21:39:30 ID:k81ksGofh2
ネバル「救い主様が…拐われました!?」

ヒメ「はぁ!?」ギョギョッ

政務官「拐われたぁ!?」ギョギョッ

ネバル「東の国領内から山岳地帯を通って辺境地に回り込んだ西国の刺客が拐っていったそうです!」

ヒメ「ま、待てよ…!なんであいつがあそこにいるって西の国の人間が知ってたんだ…?
救い主の存在も居場所も僕と親い城内の人間にしか伝わってない筈……」

ネバル「分かんないです!教団のミシングさんっていうシスターから伝書鳩が届いて慌てて知らせたです!」アセアセ

ヒメ「ミシング…?あぁ…宣教師の友人か…!」

政務官「辺境地から、ここまで…おい!いったい誘拐から何日経っているのだ!?」

ネバル「わ、分かんないです!最低でも1週間は……」

ヒメ&政務官「1週間!?」ギョギョッ

ネバル「あ、あと…ラムっていう子も拐われたって書いてあるです!」

ヒメ「あ、あいつまで…!?」

政務官「(な、内乱で大いに暴れまわったホビットか…!?)」ゾクッ
322: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/4(水) 21:44:23 ID:k81ksGofh2
ネバル「ど、どうするです!助けなきゃですよね!」アワアワ

政務官「い、いや…まずは事実を確認しなくては…それにカカドゥーラの軍勢への対策も検討せねばならない…」

ヒメ「そんなダラダラしてられるか!!」ダッ

政務官「へ、陛下!!どこへ行こうとしている!?」ガッ

ネバル「も、もしかして助けに行くです!?」アワアワ

ヒメ「離せよ…。もうジッとしてるのはたくさんだ!」バッ

政務官「貴方は事態の重さを理解しておられないのか!?」カッ

ヒメ「分かってるよ!僕が倒れたら…その時点で、この戦争の敗北が決まる!!」

政務官「それだけではございません!王国は侵略され、土地や街々を汚されるだけでなく民も虐殺の憂き目に遭います!
残された南国、東国も同様に蹂躙され尽くすでしょう!その意味が分かっておられるのか!?」

ヒメ「……僕がここにいたって遅かれ早かれ侵略されるだけだ!!」

政務官「まだフィクサー総指揮の軍が戦っております!団長も国境に防衛陣を敷いて迎撃体勢を取っている!貴方が出向く必要はない!!」

ヒメ「性に合わないんだよ!!」

政務官「は…!?」

ヒメ「誰かをあてにして待つなんて…!」

政務官「だ、駄々をこねるのもいい加減に……」

ヒメ「…カロルとラムだって、どんな目に遭うか分からない!早く救出しないと拉致された東国民の二の舞だ!」

政務官「ですから…今は堪えよと…!」

ヒメ「ただ待つのが国王の役目なら、こんな冠、いつだって捨ててやるさ!!」

政務官「なっ…」タジッ

ヒメ「自分の力で守れる物も無くて何が国王だ!?」

ネバル「……!」

ヒメ「国の向かう先が王の歩みに懸かっているのなら僕の手で道を切り開かなきゃ意味がない!!」

政務官「っ…!」パチクリ

ネバル「へ、陛下…おいら、ジーンときたですぅ…!」ウルウル
323: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/4(水) 21:47:41 ID:uI2Wh2UJdg
政務官「お、お待ちくだされ!!絶対になりません!!」

ヒメ「…国王として奴らの侵略を見過ごす気など毛頭ない!!強行してでも僕は行くぞ!?」キッ

ネバル「おいらも付いてくです!」

ヒメ「ダメだ!リルラとネバルはここに残れ!領内の安寧を保てる役人が城には必要だ!」

ネバル「う…そ、それならしょうがないです」シュン

政務官「どうしても行かれるおつもりか!?」

ヒメ「あぁ、そうだ!何度も言わすな!?」

政務官「〜〜〜!!」ワナワナ

ヒメ「ネバル!城内の兵士をありったけかき集めろ!!
城下の領民にも召集をかけて戦えそうな大人達を募るんだ!」

ネバル「はいです!」

政務官「〜〜…わ、私が掛け合ってみましょう!!」

ヒメ「リルラ……」

政務官「お止めしたとて聞き入れはしないのでしょう!
ならば勝利を掴んでいただくべく全力をあげてみせます!!」

ヒメ「あぁ、頼りにしてるぞ!」パァァ

政務官「身支度を整え、正門でお待ちいただけますか!10分で用意を済ませます!」

ヒメ「恩に着る!」ダッ

ネバル「頑張ってくださいですぅー!」フリフリ

ごつんっ!

政務官「我々も急ぐのだ、バカ者!」プシュー

ネバル「は、はいですぅ…」ヒリヒリ
324: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/4(水) 22:15:20 ID:k81ksGofh2
>>320
そう言っていただけて嬉しいです!
参謀vsファルージャは明日の更新で決着させます!
感想ありがとうございました!
325: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/5(木) 22:42:10 ID:1.PrppOx/o
―――帝都(市街地)―――

ダダダダダダダダッ

ガガガッ ガガガッ

ウガアアアアアアア!!!

ザシュッ ドバッ ゴカァンッ ズシャアッ

レジスタンス6「我らイアマンの加護を授かりし勇者なり!
女神ファルージャの導きたもうた答えを解し、真の敵を見つけたり!!」ダダダッ

レジスタンス7「怯むな!この手で悪魔を滅するのだ!?」ダダダッ

ヒュンッヒュンッ ドスッドスッ

レジスタンス's「」バタタッ

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュッ

ドスドスドスドスドスッ

レジスタンス8「な、なんだ、この矢はぁ!?」アセアセ

レジスタンス9「どこから飛んできやがる!?」

レジスタンス10「さ、刺さった奴らがバタバタ倒れてくぞ!」

ワァァァアアアア!!! バラバラ バラバラ
326: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/5(木) 22:44:30 ID:1.PrppOx/o
―――市街地(物見櫓)―――

参謀「へぇ〜…さすが効きますね。大魔導師様お手製の毒矢は?」シゲシゲ

西兵44「(まさに即死だな…。呻き声さえ聞かなかった…)」ブルッ

参謀「散らばった雑魚は騎兵を投入して殲滅、建物を次々に占拠して更に毒矢を浴びせなさい」

西兵45「はっ!各部隊に伝達して参ります!」

参謀「突入地点は、あの商店の密集地を抜けた大通りがいいでしょう…」

西兵46「ははっ!」

参謀「…ふふ。それにしても師匠殿も人が悪い?
僕が到着する頃合いに開門し、無血開城させる手筈が…レジスタンスを使って市街戦を仕掛けてくるなんて?」クスクス

西兵44「老師殿め…ここにきて裏切るとはな…!」

参謀「違いますよ。あの方は温厚に見えて存外、厳しいのです。こうして戦う事で僕を試しているのでしょう」

西兵44「ですが王国軍の始末も残っているというのに兵を削らずとも…」

参謀「それは同感ですが…難局を乗り越える力が僕にあるか見定めようとなさっているのかと」キョロキョロ

西兵44「しかし…なかなか城に近寄らせてもらえませんぞ」

参謀「えぇ。市街の建物や通路に合わせて必要な数の人員が配置されてますからね。
模擬戦では、まず見られない高度な守城戦術を展開しておられます。さすがは師匠殿?」
327: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/5(木) 22:47:09 ID:1.PrppOx/o
西兵44「なんにせよレジスタンスの数が多すぎる…。集めすぎたのでは?」

参謀「面倒な作業ですが難しい戦局ではありませんよ」

西兵44「なっ…こちらの倍以上の数が押し寄せているのですぞ…?」

参謀「各地点の戦力図をよくご覧なさい」

西兵44「」ジッ

参謀「数の上では劣勢ですが…半分以下の人員で敵を押しています。いくつか誘いもありますが…」

参謀「軍の正規兵と痩せ細った民兵では個の力が明らかに割れるのですよ」

西兵44「な、なるほど」

参謀「彼らが勢い任せに城を攻め落とせたのは僕が帝都の兵力を意図的に弱体化させ、師匠殿が上手に誘導した結果でしかありません」

参謀「まともに衝突させれば、あのような泥臭い連中は人溜まりもありませんよ…?」ニヤリ

西兵44「」ゴクリ

参謀「…各布陣に穴も空いてきましたし、この程度の余興はあっさり終わらせるとしますかね」

参謀「尊敬する師匠殿に弟子の成長も見せてあげたいですし…?」クスッ
328: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/5(木) 22:48:55 ID:1.PrppOx/o
―――帝都(宮殿)―――

バカァンッ

ザッザッザッ ザッザッザッ

軍師「…早かったですな」

参謀「失礼のないよう正門から入らせてもらいましたよ?」クスッ

軍師「……」

参謀「さぁ…余興は締めましょう。ファルージャの首をこちらへ?」

バサッ

ファルージャ「妾の首ならば、ここにあろうが?」ヒタヒタ

参謀「」ビクッ

ファルージャ「そなたにくれてやる気はないがのう…クスス?」ニヤニヤ

参謀「…師匠殿。どういう事ですか?」キッ

軍師「…故あって正式にファルージャ様を主とし、忠誠を誓う次第と相成りました」

参謀「はい…?」

ファルージャ「クスス…」ピトッ

軍師「はぅっ…」ビクンッ

参謀「……」ジロッ

ファルージャ「もたれ掛かるのに丁度よい肘掛けを探しておったのじゃ?」ニヤニヤ

軍師「はぁ…はぁ…」ハァハァ

参謀「女王陛下。師匠殿に何をされたので?」

ファルージャ「…さぁ?何をしたのやら?」ニヤニヤ

参謀「……!」
329: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/5(木) 22:54:27 ID:DhzqO8ss.s
参謀「お戯れもほどほどにしてもらえませんかね?」

軍師「還暦を過ぎた今になって…私は真の絶頂に辿り着いたのでございます」ハァハァ

参謀「なんの話ですか?いいですから、その女を引き渡しなさい?」

軍師「」ハァハァ

参謀「僕と共に覇道を行こうと誓い合ったのをお忘れか?」

軍師「はい」キッパリ

参謀「」ポカーン

軍師「どうでもよい過去は捨て申した」

参謀「……」

軍師「これからはファルージャ様のお役に立てる事のみに余生を費やす所存」

参謀「恩師である貴方には…少なからず信頼を寄せていたつもりだったんですがね?」

軍師「知りませんな」

参謀「貴方も所詮は下品な男だった訳ですか…。なら、もういいです。ここでお別れと参りましょう」
330: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/5(木) 22:57:43 ID:DhzqO8ss.s
参謀「二人まとめてお逝きなさい。細々と切り刻み、骨も残さず焼き捨て、地の底に葬って差し上げましょう」

ファルージャ「」ニヤニヤ

参謀「? これから殺されるというのに何が可笑しいのですか?」

ファルージャ「どのような気分じゃ?」ニヤリ

参謀「はぁ…?」キョトン

ファルージャ「信頼する配下を寝取られた感想…聞かせておくれな?」ニヤニヤ

参謀「……!」イラッ

ファルージャ「可愛い配下を呪縛から解き放ってやるには"女の魅力"が足りなかったようさな?」フフンッ

参謀「…そ、そんなもの…僕にはいりません…!大股開きの娼婦紛いが下品な男共を従えたくらいで図に乗らないでいただけますかっ…!」ギリッ

ファルージャ「…そうかえ?」サスサス

軍師「はっ…はっはぁ…おぉう……」ビクンッビクンッ

参謀「!?」

ファルージャ「フゥッ…」

軍師「み、耳は!あふぅ!?」ビクンッビクンッ

参謀「……!!」イライラ
331: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/5(木) 23:00:39 ID:DhzqO8ss.s
ファルージャ「コレから聞いたが…そなたの計画、なかなか良いぞ?」スリスリ

軍師「おっおっ…」ビクンッビクンッ

参謀「なかなか良いですって…?偉そうに…!?」ワナワナ

ファルージャ「イアマンなる虚構の英雄を民衆に噂させ、情報を巧みに操作して反乱軍を結成し、指定した時と場所で暴動を起こさせる…。
そして妾をイアマンに始末させ、そなたの軍が暴動を鎮圧し、救世の勇士となりて西の皇帝に昇華してしまおうという算段よな?」

参謀「……」

ファルージャ「まぁ…コレの受け売りじゃ?内容はほとんど理解出来ぬが……」

ファルージャ「直接、妾の手を煩わせたのは皇帝を除いて、そなたしかおらぬ?誇るがいい?」

参謀「…まるで僕に勝ったような言い分ですね」

ファルージャ「はて?妾の勝ちではあるまいか?」

参謀「状況をよく見極めてご覧なさい…。包囲しているのはこちら。外の戦況も圧倒的有利、追い詰めているのは僕なんですよ?」

ファルージャ「どうであろうな?」クスッ

ダダダッ ダダダッ

直属兵's「」ジャキッ

参謀「(こいつらは…師匠殿の抱える精鋭集団…!)」

軍師「この狭い宮内では大隊の利は発揮されず…腕利きで掛かれば少数でも貴方を討てる率は跳ね上がりまするぞ?」

参謀「どいつも…こいつも…!?」イライラ
332: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/5(木) 23:02:52 ID:DhzqO8ss.s
ジョーオーウ!!! ジョーオーウ!!!

ファルージャ「外のレジスタンス共も妾に尽くそうとよく働いておるようさな…?」ニヤニヤ

参謀「師匠殿や、その配下のみならず女王や国家そのものを憎悪していた民衆までも操っておられるのは…どういったカラクリで…?」

ファルージャ「さぁてのう…?妾はただ民衆に笑みをたたえて手を振ってやったまでよ?」

参謀「……」

ファルージャ「あれほど殺気に満ちていた集団が物の数秒もせぬ内に虜となりよったわ?」ニタァァァアア

参謀「(でたらめにも…程がある……)」イライラ

ファルージャ「一汗かいた方が、より艶も増すのであろうなぁ…?」ピチピチ ツヤツヤ

軍師「う…うぉっほん!イアマンなどという虚像よりも女王という実像を選ばれたのでございましょう」

参謀「貴方達は人をバカにしてるんですか…!?」ヒクッヒクッ

ファルージャ「?」キョトン

参謀「もう…限界だ…。こんな…あぁイライラする…!」ワシャワシャ

ファルージャ「ハァン…?なんぞ言いたい事でも?」

参謀「お前はな!貧しい庶民の出身で人格も歪んでるんだよ!!
努力を怠り、目的意識の向上もロクにしない堕落思考の体現者だ…!
自分の力では何も出来ない無能な愚か者で、はしたなく品格の欠片もない痴女の分際で……なぜこうも容易く人心を支配出来るんだ!?」ブチィッ

ファルージャ「……」

参謀「僕こそが純血の皇族!!誰よりも、その座に相応しい者だ!!
才覚も持ち合わせ、知力にも優れ、多様な教養も備わってる!!努力だって惜しまない!!」

参謀「そんな僕が…理不尽も恥辱も嫉妬も耐え抜き、薄闇に紛れて、それでも焦らず静かに煮詰め、今日まで準備し続けた計画だぞ!?」

ファルージャ「妾にも分かる言葉を選んでおくれな?」

軍師「要は嫉妬でございましょう」

ファルージャ「ふむ…それは仕方あるまい。かように美しい妾への嫉妬を挙げればキリがなかろうて?」サラッ

参謀「どこまでも…ふざけた態度を…!」ギリィッ
333: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/5(木) 23:06:13 ID:DhzqO8ss.s
ファルージャ「しかしそなた、先ほどから醜いのう…?」ボソッ

参謀「はぁ…!?」

ファルージャ「敗者が何を叫ぼうと見苦しいだけよ…?」

参謀「」ガーン

ファルージャ「絶世の美の前では醜いそなたらなど平伏して然るべき…勝負は初めから決まっておったのじゃ?」

参謀「くっ…くく…!」

ファルージャ「のう?」ピトッ

軍師「は、はひっ!」ビクンッ

参謀「僕の完璧な計画が……お前一人の…存在感に砕かれたと言うのか…!?」

ファルージャ「左様?」

参謀「……!」パリィィィンッ
334: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/5(木) 23:07:25 ID:DhzqO8ss.s
参謀「は…ハハ……ハハハ……」ガクッ

参謀「(緻密な策略も計算高い頭脳も積み重ねた努力も揺るがぬ意思も割り切る覚悟も…何を以てしても補いきれない圧倒的差が僕とこいつの間にはある…)」

参謀「(笑えない話だ…。優れた容姿を持って生まれただけで他人の努力を全部、帳消しにしてしまえるなんて……)」

参謀「(だが…まだ終わってはいない!)」キッ

ファルージャ「ほう?なおも反抗的な眼を向けるか……良いぞ?ゾクゾクするわ?」ヒューッ

参謀「主要な兵はこちらが先に取り込ませてもらいました…。
対して貴女に付いたのは僅かな裏切り者とみすぼらしい民兵集団……」

ファルージャ「フゥ〜…?」

参謀「ここからは単純な力比べです…?」クスッ

ファルージャ「楽しませてくれるのかえ?」ニヤニヤ

参謀「…その余裕に満ちた笑みを消して差し上げましょう」

ファルージャ「……」ニヤニヤ

参謀「こうして向かい合って感じませんか?己の自信が無根拠であてにならないものであると?」

ファルージャ「妾は美しい?自信を持つ根拠は十分にあろう?」ニヤニヤ

参謀「!!!」ブチィッ

ファルージャ「クスス…妾と同じ時代に生まれたおなごらが哀れでならぬわ?」ニヤニヤ

参謀「大いなる野望を背負って戦う僕の軍と…お前の体目当てに戦う烏合の衆とでは……話にもなりはしない!!」カッ

ファルージャ「ほうほう、なるほど、それはそれは……」ニヤニヤ

参謀「レジスタンス共と貴様を始末し、暴動鎮圧の功を納めれば…皇帝の座は僕のものだ!!」

ファルージャ「」ニヤニヤ

参謀「地獄に堕ちるがいい!!魔性のファルージャ!?」カッ
335: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/5(木) 23:14:02 ID:1.PrppOx/o
参謀「全兵、突撃せよ!!この妾をころ……」バッ

ヌッ

参謀「」ビクッ

グワシッ

参謀「ぱか……がふっ!?」モガモガ

魔導師「やあ?」ギラッ

参謀「(こいつ…今まで、どこに…!?)」ジタバタ

魔導師「」ギュウウウ

参謀「ごぼっ…ぶがっ…ぅ…え゛え゛っ…」ゴポォッ

魔導師「ショックだなぁ…?自分は本気で女王が死んだんじゃないかと悲しんでたのに?」グッグッ

ファルージャ「妾の死は世界滅亡に勝る損失じゃ…むざむざ殺す阿呆などおるまい?」

魔導師「うんうん。自分もそう思ってた」コクコク

参謀「ぶっ…ブブ!ゲボゥ……ばっ…ばば…」ビクンビクン

魔導師「んふふ…」パッ

参謀「」ドシャアッ

魔導師「こいつはもう助からないけどいいかい?」クルッ

ファルージャ「だそうな?」チラッ

軍師「……」

ファルージャ「よいのかえ?親子同然の間柄なのであろう?」

軍師「私めの瞳に映る物はもはやファルージャ様のみ…他は些末なことにございます」

ファルージャ「そうか…そうかえ…っ……キャッハッハッハッハッ!!!」ケラケラ
336: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/5(木) 23:16:20 ID:1.PrppOx/o
参謀「(あぁ…そうか……)」ピクッピクッ

参謀「(この女が異常だったんじゃない…彼女の魅力に屈しまいと意地を張る僕が異常だったんだ……)」ウツラウツラ

参謀「(下品で…傲慢で…強欲で…性根から腐りきってるけれど……)」スーッ

参謀「(透明感のある澄んだ声色…細くしなやかでありながらハリのある曲線美……この世のものとは思えないほどに整いすぎたお顔……全身から滲み出る言い知れぬ魔性の魅力………)」キュッ

参謀「(勝ち目なんて……なかった……その…証拠に……)」ジッ

西兵's「」トロォン

参謀「(僕の兵も……)」

魔導師「(女王が喜んでる…。嬉しいなぁ…)」ウキウキ

参謀「(僕を殺したあいつも…)」

軍師「(脚をばたつかせて高笑いするサマもお美しい…)」ジーッ

参謀「(僕を育ててくれた師匠殿も……)」

ジョーオーウ!!! ジョーオーウ!!!

参謀「(だ…れも……ぼく、を…みてい……ない)」ダラァァァン

ファルージャ「クスス…退屈が紛れたわ…。そなたには感謝しておるぞ…?」ジッ

参謀「」ドキンッ

ファルージャ「来世でもまた妾を楽しませておくれな…?」クスッ

参謀「あ……あ…」ドキンッドキンッ

参謀「」フッ

ファルージャ「さぁて…そろそろ本命が届く頃かえ…?」ペロリ

魔導師「」ゴクリ

軍師「(な、なんと色っぽい舌使い…!)」ハナヂ タラー
337: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:24:58 ID:UavECGF.sw
―――ミラルドの町(孤児院)―――

ミシング「……」ボーッ

孤児1「ミシングねえちゃん!あそぼ!」グイグイ

孤児2「ぼくもー」グイグイ

ミシング「ん……うん、いいよー?なにしよっか?」

孤児1「勇者ごっこ!」

孤児2「じゃあぼく勇者やる!」

孤児1「勇者はぼく!」

孤児2「ぼくも勇者がいい!」

孤児1「おまえは悪者なの!」

孤児2「やーだー!ぼくが勇者だい!」

ミシング「はいはい。ケンカしないの!二人とも勇者!ね?」

孤児1「やだよ!ぼくが勇者だもん!」

孤児2「ぼくだってば!」

ミシング「がおー!!」バッ

孤児1、2「」ビクッ

ミシング「美人大怪獣ミシングちゃんが大暴れしちゃうぞー?がおー!!」ドタドタ

孤児1「わー!にげろー!」タタタッ

孤児2「あはははは!」タタタッ

ミシング「まてー!食べ散らかしちゃうもんねー!」タタタッ

ドタドタ バタバタ キャハハハハハハハ
338: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:27:10 ID:YvuzyYVhZU
―――孤児院(談話室)―――

宣教師「院の扉にこの置き手紙が…?」

母「…」コクッ

宣教師「……」カサッ

『いやしの ちからは いただきよ〜ん By.シャルウィン(はぁと)』

宣教師「……!」クシャクシャッ

母「すみません…。ご迷惑おかけして…」

宣教師「迷惑なんかではありません!」ズイッ

母「」ビクッ

宣教師「…事情を知っていながら何も対策していなかった私の責任です…!」プルプル

母「そ、そんな…あたしも移り住んでからは安心していて…目を離しがちでしたから…」オロオロ

宣教師「お母様は悪くありません…。私が責任を以て二人を救ってみせます!」

母「…あ、あたしも一緒に!」ガタッ

宣教師「いえ…お母様は残ってください」

母「でも…あたし達の問題なのに…いつも任せきりにして…」

宣教師「そうではありませんよ。私達、人間があなた方を巻き込んでしまっているのです」

母「……」

宣教師「ヒメくんもミシングの報せが届けば、すぐに対処してくれるでしょう。お母様は普段通りにお願いします」

母「ふ、普段通り…?」

宣教師「まだ幼い子たちは何も分かっていませんが…ルーボイくんとナラちゃんはとても落ち込んでいる筈です。どうかお母様から励ましてあげてください」

母「……!そ、そうよね…。あたしったら…また自分の事ばっかり…」ズーン

宣教師「しかたないですよ…。一番、身近な存在なのですから…?」

母「……」キュッ

宣教師「ですがみんなにとっても今やお母様とカロルくんは欠かせない家族となってます…。辛く苦しい状況だと窺えますが…年長者としてみんなを支えてはいただけませんか?」

母「分かりました…」

宣教師「…ありがとうございます」ペコッ
339: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:29:43 ID:YvuzyYVhZU
ガチャッ

孤児1「いんちょー!」タタタッ

孤児2「いんちょーもあそぼうよ!」グイグイ

宣教師「きゃっ!す、すみません!ちょっと大事な用事があって、また出掛けないと…?」アセアセ

孤児1「えー!なんで!?」

孤児2「いんちょー、いっつもでかけちゃうじゃん!」

ミシング「ダメダメ、おチビちゃん達!今、大事なお話してるんだから?」スタスタ

母「あ、大丈夫よ?もう終わりましたから?」ニコッ

ミシング「……マリーさん」

母「…ごはんの支度しなくちゃ!宣教師様も食べていかれたら?」ニコニコ

宣教師「え…あ、あの…私は…もう行きますから…お食事はまたの機会に…?」アセアセ

孤児1「ママのごはん、まずいからきらーい」

孤児2「ぼくもー」

宣教師「!?」ギョギョッ

母「あら、最近はミシングさんに教わって上達してきてるのよ?今日こそウンと食べてもらうんだから!」

ミシング「そうそう!マリーさんの炊いたご飯はお焦げが付いてて美味しいよー!」

孤児1「やっぱりコゲコゲじゃーん」

母「まぁ!ミシングさんったら?」

キャハハハハハハハ

宣教師「(…すっかり馴染んでますね。良かったです)」ニコッ
340: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:31:19 ID:YvuzyYVhZU
―――ミラルドの町(大通り)―――

ルーボイ「……」キョロキョロ

ナラ「…さがしたっていないよ。みんなしんぱいするから、かえろ?」

ルーボイ「……」ガサガサ

ナラ「ルーボイ!」スッ

ルーボイ「うるっせぇ!!」バッ

ナラ「」ビクッ

ルーボイ「……」スタスタ

ナラ「か、かってに…すれば!」プンスカ

ルーボイ「……」ガサガサ

ナラ「ルーボイのバカ!」ダッ

タタタッ………

ルーボイ「……」ガサガサ

宣教師「いけませんね。女の子を怒鳴ったりしては?」ザッ

ルーボイ「……!」ビクッ
341: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:32:57 ID:UavECGF.sw
ルーボイ「い、いたのかよ…。あいつが連れてかれたからか…?」

宣教師「…それもありますが久しぶりに皆さんと顔を合わせたいと思いまして?」ニコッ

ルーボイ「……なぁ、宣教師様」

宣教師「はい、なんでしょう?」

ルーボイ「パッチ…まだ見つかんねーの?」

宣教師「…えぇ、個人的に探し続けてますが未だ見つかってません」

ルーボイ「……」

宣教師「……」

ルーボイ「俺…パッチが消えていっちゃうの止めれなかった」シュン

宣教師「ルーボイくん…」

ルーボイ「友達なくして…すっげーイヤだった」

宣教師「……」オロオロ

ルーボイ「だから…カロルとラムは……なくしたくない」

宣教師「……」

ルーボイ「あいつらも…いなくなっちゃったら…俺、どうなるんだろ…?」ブルッ

宣教師「」ダキッ

ルーボイ「!?」ポフッ

宣教師「取り戻しますよ…。必ず?」ポンポン

ルーボイ「」ジワァァ
342: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:36:42 ID:UavECGF.sw
宣教師「ナラちゃんも出てきていいんですよ?」チラッ

ナラ「」ビクッ

ルーボイ「っ…な、ナラ?帰ったんじゃ…!?」ビクッ

宣教師「心配して見守ってくれてたんですよね?」ニコッ

ナラ「」コクッ

ルーボイ「な、ナラ…」

宣教師「仲直りしましょうか?」ニコニコ

ルーボイ「ど…どなって…ごめんな?」グシッ

ナラ「……うん」グスッ

宣教師「ふふ。泣いてばかりいてはいけませんよ?キミたちは院のお兄さん、お姉さんなのですから?」ナデナデ

ルーボイ「う…えっ……うんっ…」ギュウウウ


ナラ「…っ……」ゴシゴシ

宣教師「…またみんなで楽しく笑える日が来ますから少しの間、我慢してくださいね?」ニコニコ

ルーボイ「…おぅ」ズビー

ナラ「がんばって、ね…」ウルウル

宣教師「はい。お任せください?」ニコニコ
343: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:40:32 ID:YvuzyYVhZU
―――王国領(国境警備城塞)―――

ワァーワァーギャーギャー

「い、急げぇ!!西の軍が攻めてくるまで1ヶ月と掛からんぞぉ!!」ダダダッ

ドタドタ バタバタ

「運び出した武器の調整を怠るなよ!錆びて使えんでは話にならんぞ!」

ガラガラ ドシンドシン

団長「……」

警備隊長「此度はよくぞお越しくださいました。わたくしはこの城の警護を任されております、レーグと申します」ペコッ

団長「王家直属親衛隊、近衛師団長、ダパーシ・ルフィアスと申す。
微力であるとは存じるが、そちらと共に城塞の守護を仰せつかった。よろしく頼む?」スッ

警備隊長(レーグ)「いやいや!国家反乱を諌めた立役者であるとされる貴方と共に戦えるなど身に余る光栄!」パシッ

団長「ワシはあの場に居合わせただけだ。全ては国王と救い主の成した偉業に他ならん」パシッ

レーグ「ご謙遜を!ルフィアス殿は王国最強の剣士であると伺っております!
どうかその逞しく勇敢な腕を我らにお貸しくださいますればと!」パッ

団長「気遣わなくとも結構だ。ここにおる以上は慎み、指揮官であるレーグ殿の采配にお委ねしよう」

レーグ「は?ルフィアス殿が指揮を執られるのでは?」キョトン

団長「ワシは軍略に携わる類いの役割とは無縁だ。国王の身辺警護を旨とする私兵に過ぎん」

レーグ「そ、そうは申されましても…わたくしはてっきりルフィアス殿が指揮されるものかとばかり?」

団長「? 何か気掛かりでもおありか?」

レーグ「……」モゴモゴ
344: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:43:49 ID:YvuzyYVhZU
レーグ「じ、実はわたくし…争い事に直面するのは今回が初めてでして…」オロオロ

団長「それはそうであろうが…国境警備を務めていたのであれば多少なりとも備えておられたのでは?」ジロッ

レーグ「は、恥ずかしながら申し上げますれば…平和協定が硬く守られた現在まで、この城は国家間の行き来を審査、承認する関所のような役割を持っておりまして?」オドオド

団長「詰まる所…国境警備とは名ばかりのお役所仕事しかしてこなかったと?」

レーグ「…い、一応は不測の事態に備え、訓練されておりますが」オドオド

団長「兵の数は?」

レーグ「い、1万ほどになります…」オドオド

団長「……」

レーグ「も、申し訳ございません!まさかこのような日が来ようとは夢にも思わず…!」ペコッ

団長「お気に召されるな?」ポンッ

レーグ「」ビクッ

団長「…ワシも貴殿も同国の勇士として国家に殉ずる立場だ。こうなってしまった以上は仕方なかろう?」スッ

レーグ「……!」ブルブル

団長「委細、承知した。後で再度、煮詰め直そう」スタスタ

レーグ「うぅぅ……なんで、こんな事にぃ……」ガクガク
345: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:45:34 ID:YvuzyYVhZU
―――国境警備城塞(客室)―――

団長「城主は年老いた外交官、警備兵は役人同然ときたか…。まったく…頭を悩ませるばかりだな?」

副長「は、はは…気が立っておられますな?紅茶でも淹れましょうか?」

団長「いらんよ…。悠長に茶など啜ってられるか」

副長「そ、そうですか…」

団長「…この城が落ちれば王国は滅びるのだぞ。戦った事がないので不安です等と漏らされてもな?」

副長「危機感が足りなかったと言えば、それまでですが…平穏を信じたくなる気持ちも分かりますよ」

団長「……分かっとるよ。誰も責められん。こうなるべきではなかったのだ」

副長「この城の警備で侵攻は防げそうなのですか?」

団長「無理だな。1日ともたず突破されるだろう」

副長「……」

団長「無論、諦める気はないがな。王都に援軍を要請してある。もうじき到着する筈だ」

副長「おぉ…!」

団長「と、言ってもせいぜい2万弱だろうがな…」

副長「合わせて3万ですか…。西の軍はどれほどの規模で侵攻を?」

団長「およそ14万の兵が進軍しておるそうだ」

副長「じゅ、じゅう…よんまん…ですか!?」

団長「唯一の頼みの綱は西の国を攻めている王国軍だが…間に合うかどうか?」

副長「」ゴクリ
346: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:47:58 ID:YvuzyYVhZU
〜〜〜1週間後〜〜〜

レーグ「ルフィアス殿!援軍が!援軍が到着しました!」パァァ

団長「む?そうか…。おい!」

副長「はっ!今のところは物見の報告も挙がっておりません!」ピシッ

団長「……何か動きがあったら即座に鐘を鳴らせ」スタスタ

副長「はっ!」

レーグ「わ、私もお供致しましょう!」スタスタ
347: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:48:55 ID:UavECGF.sw
ゾロゾロ ワラワラ

ワイワイガヤガヤ

団長「……!?」ワナワナ

ヒメ「来てやったぞ?」ニヤリ

団長「へ、へへ、陛下ぁぁああ!?な、なぜここに!?」ギョギョッ

レーグ「こ、国王陛下が…直々に…!?」

ヒメ「おまえらだけじゃ心許ないんだろ?僕も手伝ってやるよ?」

団長「いぃぃいけません!いけません!いけません!いけませんぞ、陛下ぁああ!!危険ですから王都にお戻りくだされ!?」アタフタ

レーグ「そ、そうです!畏れながら陛下のお命に関わるかと存じます!?どうか引き返していただきますればと!?」

ヒメ「」イラッ

団長「いくらなんでも無茶が過ぎますぞ!?今回ばかりはお控えなされ!?」アタフタ

ヒメ「ほー?そうか、そうか?僕は邪魔者か?足手まといか?」イライラ

団長「い、いや…そういうことではなく…」タジッ

ヒメ「人がせっかく1週間も掛けて足を運んでやったのに着いた途端、休む間もなく問答無用で帰れと?」イライラ

団長「うっ……」

レーグ「あ、あの…しかしですね…?」オロオロ

ヒメ「とんだ忠義者だな、おまえらは?」ギロッ

団長「……」ダラダラ

レーグ「い、いえ…」ダラダラ
348: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:51:30 ID:YvuzyYVhZU
ヒメ「とりあえず5万人、戦える人間を集めてやったぞ」フフンッ

レーグ「ご、5万!?そんな数をどうやって!?」

ヒメ「王都の兵だけじゃ足りないだろうから道中、立ち寄った町や村を片っ端から当たってみたんだ。
一応は僕も国王だからな。皆、恭しく呼び掛けに応じてくれたよ」

レーグ「そ、それは頼もしゅうございます!」

ヒメ「政務官が全国の憲兵、各領主の私兵、賞金稼ぎや傭兵も集めてくれたんだ?」

レーグ「おぉ!我が主もリルラ様に仕えております!大変、喜ばれるでしょう!」

団長「リルラが…!?奴め、なぜお止めしなかったのだ!?」

ヒメ「助っ人もいるぞ?」

団長「は…!?」

ラキア「父上ー!!」ダダダッ

団長「ら、ラキア!なぜお前まで…!」

宣教師「私もお忘れなく?」スタスタ

団長「君もか!?」

ラキア「悪を挫き、正義に生きる!俺がいる限り、西の国の好きにはさせない!」シャキーン

宣教師「あの巡礼の時のように力を合わせ、平和を勝ち得ましょう!」

団長「……!」

アリアス「あたしもい………」ザッ

ヒメ「さぁ!ここからは王国の総力戦だ!皆の力を一つにして西の軍を追い返すぞ!!」

オォォォオオオオオ!!!

アリアス「……」ポツン
349: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:55:13 ID:YvuzyYVhZU
―――国境警備城塞(城主の間)―――

ヒメ「悪いが少しの間、おまえの席を借りるぞ?」

外交官「め、滅相も!?国王様に座っていただけるなど光栄の至りにございまする!座り心地が気に入らなければ、すぐに替えをご用意しますゆえ!?」アセアセ

ヒメ「そんなにかしこまらなくていいよ。城主はおまえなんだから楽にしていろ?」

外交官「そ、そうもいきませぬ…!国王陛下自ら御助勢くださるなど…まこと…まっこと感涙してございまする!」ウルウル

ヒメ「…大袈裟な奴?ま、いいや!団長!おおよそは見当が付いてるのか?」

団長「は、はい…!現在、敵軍はこちらに進行中、その数およそ14万と見られる!」

ザワッ

外交官「14万…!?」

レーグ「こちらの倍以上ではございませぬか…!?」ブルッ

ヒメ「…おたつくな!」

シーン

ヒメ「南国軍との戦いで奴らは二人の指揮官を失ってる。これは大きい」

団長「うむ…ですが単純な力比べでは確実に分が悪いのも確かでござる」

ラキア「父上ともあろうお方が怖じ気づいたか!敵が多いのなら一人で大勢、倒せばいい!」

団長「バカ者!?こちらは経験もなく、訓練もしておらん民間人が主戦力なのだぞ!?
敵は血に慣れた生粋の軍人!対して我々は統率の難しい寄せ集めだ!そんな子供染みた理屈が通用するか!?」

ラキア「だったら俺が一人で10万人、倒してやるさ!!」

団長「おう!出来るものならやってみせろ!後で泣き言を言ってもワシは助けんぞ!?」

ラキア「あんたの助けなんかいるか!腰抜けめ!?」

団長「貴様、父に向かってなんたる言い様……」

宣教師「」パンッパンッ

団長&ラキア「」ビクッ

宣教師「口喧嘩ではなく話し合いをしましょう?」ニコッ

団長&ラキア「……!」ムグッ
350: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:58:13 ID:YvuzyYVhZU
宣教師「具体的にはどのように戦うのですか?まさか真正面から…という訳ではありませんよね?」

団長「籠城し、攻め登る敵を迎え撃つしかあるまい」

宣教師「城の構造は?」

レーグ「階層は6つに分かれており、地上4階、地下2階となっております!」

宣教師「見たところ外壁は鉄を使ったものみたいですね」

外交官「い、一応は国境に位置しますゆえ…強度には自信がございます」

宣教師「ふむふむ…それなら…もしかすると…」ウンウン

団長「な、何か閃いたのか…!?」ゴクリ

宣教師「え?いえ、特には…」

団長「(思わせ振りな…)」ガクッ
351: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 21:59:37 ID:UavECGF.sw
ヒメ「兵糧はあるだけ積んできたし武器も行き渡るように手配してある。問題なのは数だ」

団長「うむ…。しかしもはや王国で集められる限界に達しております。ここにいる人間だけでどうにかせねば……」

ヒメ「それなんだけどな。実は宣教師が預かってるホビット族も協力してくれるみたいなんだ?」

団長「なに!?そうなのか!?」

宣教師「はい。私たち人間の問題に皆さんまで巻き込みたくはなかったのですが…」

外交官「ほ、ホビット…?あんな連中に頼って大丈夫なのですか…?」

宣教師「それはどういう意味ですか?」キッ

外交官「い、いや…」

ヒメ「ホビットも王国民としての自覚を持って立ち上がってくれたんだ。
こんなにありがたい話を受けない訳にはいかないな?」

外交官「……」

レーグ「そ、そのホビットたちはいかほどの数で?」

宣教師「1万ほど…6日後には到着する見込みです」

団長「1万か…。それでもやっと敵の半数だな」

ラキア「十分だ!これで戦える!」

ヒメ「いや、圧倒的に足りない」

ラキア「え…!?」

団長「……」

宣教師「……」

レーグ「……!」

外交官「や、やはり…無理なのか」ガクッ

ヒメ「項垂れるな!」

ザワッ
352: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:01:59 ID:YvuzyYVhZU
ヒメ「まだあてはある…。国内に限らなければな?」

団長「ま、まさか…!?」

外交官「そうか!参戦していない同盟国に……」

ヒメ「いや、そうじゃない」

外交官「は?で、ではどこに助けを求めようと…?」

ヒメ「東の国だ」

外交官&レーグ「ひ、ひひ……東の国ぃぃ!?」ギョギョッ

団長「東国軍は既に全滅しておるのでは…?」

ヒメ「あぁ、でもあの国には他にない特殊な領土が存在するんだ」

ラキア「と、特殊な領土…?ま、まさか正義の科学者によって秘密裏に開発された超大型兵器の製造工場が!?」

団長「そんな訳があるか!?誰だ、正義の科学者とは!?」

ヒメ「兵器とかそういうのじゃないけど…要は東の国土の一部がホビット族の領土として区画されているんだ」

宣教師「東の国の方々はホビットと共存してるのですか?」パァァ

ヒメ「残念だけど、それも違う。領土を分け与える事によってホビットと完全に決別してるらしい?」

宣教師「け、決別……ですか」シュン

ラキア「関わらずにいられる分、差別されるよりはマシなんじゃないですか?」

ヒメ「…まぁそんなのはいい。僕が言いたいのは東のホビット族を説得して共闘を持ち掛けようという話だ」

外交官「た、他国のホビットに…!?」

レーグ「か、可能なのですか…?」

ヒメ「…難しいだろうけど残った同盟国は信用ならないし、今から助けを求めるにも時間が無さすぎる。
東の国なら隣合わせで比較的、近いし無下にされる心配もない」
353: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:04:32 ID:UavECGF.sw
レーグ「っ…ですが正直、自国のホビットでさえ不安なのに」

宣教師「何が言いたいんです?」ジッ

レーグ「…い、以前に西領各地でホビット族が人里を襲撃し、大量虐殺を繰り返す問題が度々、話題に登ったじゃございませんか…。
そ、そんな連中を大事な戦いに加えて…もし裏切りにでも遭ったら…」

宣教師「なら私たちはどうなんです?」キッ

レーグ「え…?」

宣教師「ここにいる全員を含め、私たち王国民は今までホビット族を不当に差別してきました。
労働力や見世物として奴隷のように扱い、虐待し、執拗になじり、意味もなく殺戮の限りを尽くしてきたんですよ?」

レーグ「わ、私はそのような…?」

宣教師「いいえ、疑わず無関心に振る舞ってきた者は皆、彼らの眼を通せば差別した人間と同罪です」

レーグ「…あ、揚げ足取りじゃございませんか」

宣教師「何が揚げ足取りなのですか?」

レーグ「……」

宣教師「そうやって責任を逃れようとしても事実は変わりませんよ?
あなたも私も皆、往々にして、この罪と向き合わなければならないのです!」

レーグ「くっ…だ、だから私が言うのはホビット族と人間の関係性を考えるにあたり、不安要素が無い訳ではないと…!」

外交官「い、一理ある!現に巡礼の際も争いを仕掛けたのはホビットからであった!」ウンウン

宣教師「罪無き者に疑惑を向け、団結を乱そうとするあなた達の方がよほど信用なりませんね!」

外交官「な、なにを小娘が偉そうに!?」ガタッ

ヒメ「座れ!」

外交官「へ、陛下はこの無礼な娘の肩を持つのですか!?」

ヒメ「僕は公平な立場でいるつもりだ。だが会議の場で興奮した者を諌めない訳にもいかない?」

外交官「っ……」

ヒメ「多少、声を荒げるのは構わない。意見交換の範疇ならな?」

外交官「……!」ドッカ
354: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:08:35 ID:YvuzyYVhZU
宣教師「私はこの試練を協力して乗り切る事で人間とホビット族の隔たりを取り除く真の絆が生まれると信じています」

外交官「どうだかな…!」ムスッ

レーグ「獅子身中の虫とならなければいいですが…?」フンッ

宣教師「でしたら…あなた達はどうすれば満足するんですか?」

外交官&レーグ「は?」

宣教師「何がどうこう…あれがそうだからと大した理屈や信憑性もない御託を並べ立てて否定するばかり…。
そんなにホビットを信用したくないのですか?それとも小娘の意見に乗りたくないだけですか?」

外交官&レーグ「……」

宣教師「私にはあなた方が自分を優位に立たせたいと駄々をこねてるようにしか見えません」

外交官「なっ…い、言わせておけば!?」

レーグ「ルフィアス団長…!貴方からも言ってやってくださいよ!」

団長「ワシは宣教師の意見に賛成だ。今は内部で揉めている場合ではない」

ラキア「俺も同意見です。偏見で良し悪しを決め付けるのは正義の名に恥じる行いだ!」

レーグ「な、なんですとぉ…!?」

団長「だが貴殿らの意見も頷ける。ホビット族と我々の現状は未だ不安定なもので…確執を拭えない上では裏切らない保証もないとは言えん」

宣教師「だ、団長さんまで…!?」

外交官「や、やはりそう思われるか!さすがはルフィアス殿!」パチパチ

団長「…だがそこを踏まえたとしてもワシはホビット族に助力願うべきであると考える」

レーグ「え…!?」

団長「宣教師が言うように…ここが大きな分け目であるとワシも感じている。
信じられるか否かではなく信じ合う気持ちが大切だと思わんか?」

レーグ「よ、世迷い事を申されるな!奴らと我々では協力など…」

団長「なればこのまま人間のみで心中するか?」

外交官「」ゾクッ

団長「我々で14万もの軍に抗う術があると言うのなら是非ともお聞かせ願いたいものだが?」

レーグ「う……」

外交官「……」ブルブル
355: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:13:01 ID:YvuzyYVhZU
外交官「こ、ここ……こ…」ガチガチ

ヒメ「?」

外交官「降伏…という手も…あ、あぁるのでは…?」ガチガチ

ヒメ「……」

団長「…それこそ本気で言っておるのか?」イラァッ

ラキア「臆病者め!戦わないと敵のいいように略奪されるばかりだぞ!?」ダンッ

宣教師「論外ですね」キッパリ

外交官「て、敵は…一国の軍力で実質的に2国を壊滅させたのですぞ!?」ガタッ

レーグ「た、確かに…それでいて尚も我が国を上回る戦力を誇っている…!」ブルッ

ラキア「だったらどうした!?倒された盟友達を弔ってやる為にも俺達が仇を取らなきゃだろ!?」

外交官「…ど、どのみち戦力差がありすぎて勝負にもなりますまい!ならばいっそ降伏して命を拾うのも…!」

ダァンッ!!

外交官&レーグ「ひぃあっ!?」ビクビクゥッ

団長「そこを動くな…!素っ首跳ね落としてくれる…!」スラッ

外交官&レーグ「わ、わわわ…へ、へへ陛下ぁぁ!?」アワアワ

ヒメ「団長、やめろ!おまえ何考えてるんだ!?」

団長「たとえ降伏を認められ、我らの命が保証されようと…連合軍の盟主である陛下は戦争を起こした大罪人として全責任を負わされるんだぞ!?」

ヒメ「……」

ラキア「そ、そうだよ…!どうしたって諦めたら陛下は…!」

外交官「も、申し訳ありません!お、おぉお許しをぉ……」ペコペコ
356: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:15:42 ID:UavECGF.sw
宣教師「命惜しさに13歳の子供の尊い命を差し出すなんて…絶対に許されません!」

ヒメ「…いや、今14歳だから。もう大人だから」

宣教師「14歳なんて思春期じゃないですか!子供以外の何者でもありませんよ!」

ヒメ「僕の立場も考えろよ。一応、王様なんだからさぁ…?子供扱いされたら威厳とか無くなっちゃうだろ?」

宣教師「そんな事を気にしてる場合ですか!?」

ヒメ「一つの提案だろ?決定は別にして…意見としてはまともじゃないか?」

団長「な、なな…なにをおっしゃる!?」ギョギョッ

ラキア「へ、陛下…まさか自分を犠牲に全員を救おうと…せ、正義の鑑だ!?」ワナワナ

ヒメ「は?やだよ?死にたくないし?」キョトン

ラキア「えぇ!?で、ですが今まともな意見だと…!?」

ヒメ「意見は認めるよ。でもなるべくなら死にたくない」

外交官「もももも申し訳……申し訳ございませんぅぅ!!そ、そこまで頭が回らず…!」ビクビク

ヒメ「別にいいよ。皆も命懸けて戦おうとしてくれてるんだ。僕だけが優先されていい訳がない?」

外交官「そ、それは違います!陛下のお命こそ何より重要視されなければ…!?」

ヒメ「いいや、違わない。僕だって戦う為にここへ来たんだぞ?」

外交官「た、戦う!?陛下がですか!?いけません!いけませんぞ!?」

団長「そ、そうですぞ!戦闘は我らにお任せを!?」

ヒメ「ふん、やだね」プイッ

団長「や、やだねって…わがままは困りまするぞ!」アタフタ

ヒメ「オレは王様だからワガママ言っていいんだよ?」ツーン

団長「(ま、また始まった…!いざとなれば気を失わせてでも、お止めしなくては…)」ハァッ
357: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:21:15 ID:UavECGF.sw
アーダコーダ アージャナイコージャナイ

ヒメ「……だいたい意見は出揃ったか」

団長「うむ!やはりここは……」

宣教師「ホビット族に助けを求めるのが最善と言えるでしょうね」

ラキア「ホビットは心優しい種族です!きっと俺達の正義に応えてくれる!」

外交官「陛下の身柄を差し出す訳にはいきませんからな…はぁ……」

レーグ「た、頼んだからって助けてくれるとは限らないですが……しょうがないか」

ヒメ「じゃあ決定だな!宣教師、団長、外交官、頼んだぞ?」

宣教師&団長&外交官「えっ」

レーグ「最大戦力であるルフィアス団長を出払わせるのでございますか!?」

外交官「た、大変恐縮なのですが、どういった選定基準で…?」

ヒメ「ホビット族を説得するなら宣教師以上の適任者はいないし、外交官だって交渉術には長けてる筈だ?
二人だけで行かすのは危険だから団長を護衛に付けて守らせる。完璧な人選だろ?」

ラキア「陛下はどうされるんですか?」

ヒメ「ん?ここに残って戦うって言っただろ?」

ラキア「さすが勇敢だなぁ!それでこそ俺の命を預けるに相応しい!」

ヒメ「そんな重いの預かれるか?自分で管理しろよ?」

団長「…承知しました」

ヒメ「お?珍しく素直だな!」

団長「ワシが残りますゆえ、陛下が行ってくだされ?」

ヒメ「はぁ?おまえ、ちゃんと話聞いてたか?」

団長「対等な条件で交渉するのならば陛下が王国の代表として権威を示すべきです。
ワシらが説得を試みてもホビット族にしてみれば下っ端を使いに寄越されたようで気を悪くされるやもしれませぬ」

ヒメ「うーん…それもそうかもな」

宣教師「さりげなく私まで下っ端呼ばわりされて気分が悪いのですが…」

外交官「……」
358: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:30:13 ID:YvuzyYVhZU
ヒメ「僕から漂う気品に圧倒されてホビットたちが緊張してしまわないか心配だけどな!」エッヘン

宣教師「背丈が近いから親しみやすいんじゃないですか?」

ヒメ「は…!?」イラッ

宣教師「目線が同じ方が話しやすいでしょうし?」

ヒメ「僕の身長が低いって言いたいのか…!?」ヒクヒク

宣教師「私より小さいじゃないですか?」

ヒメ「おまえがでかすぎるんだよ!?僕は普通だ!?」

宣教師「そんなに大きくありませんけど?170cmくらいしかないですし?」

ヒメ「十分でかいよ!女のクセになんなんだよ!?」

宣教師「見たところ……150cm…?」ジーッ

ヒメ「そんな小さい訳あるか!?163cmだ!!」

宣教師「厚底は身長に含まれませんよ?」

ヒメ「」ギクッ

ラキア「自慢じゃないけど俺は185cmあります!」フフンッ

ヒメ「…身長を自慢した奴は禁固刑にする法律でも作ってやろうか?」ヒクッヒクッ

宣教師「自慢してませんよ?ただキミの背を指摘しただけです?」

ラキア「俺も自慢じゃないと断りました!」

ヒメ「だぁぁもう!じゃあ問答無用で死刑だぁ!?」ムキーッ

団長「お、おい!今はそんな話はよかろうが!?あまりヒメ様をからかうな!?」アセアセ
359: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/10(火) 22:34:34 ID:YvuzyYVhZU
団長「では陛下と宣教師と外交官殿で東の国に向かっていただくという決定で問題ござらんな?」

宣教師「私は喜んで行きますよ。他国のホビット族とも交流をはかりたいですから?」

外交官「わたくしも異存ありませぬ……(戦場に留まるよりは安全だろうしな…)」

ヒメ「…しかたないな。やっぱり僕がいないとダメか」

団長「(ほっ…)」

ラキア「陛下たちが戻ってくるまで俺達が、ここを守り抜いてみせます!」

ヒメ「ふふ!おまえに似て頼もしい奴だな?」ニコッ

団長「! い、いやぁ…まだまだ未熟でござるが…?」デレデレ

ラキア「むむ…!」ジロッ

ヒメ「ま、おまえらに任せておけば僕も気兼ねなく東の国に行けるよ?」

団長「ふっ…!ふっふっふ…!」ニヤニヤ

ラキア「なにだらしない顔してんですか…。気持ち悪い?」シラー

団長「や、やかましい!」

レーグ「(私も戦場から離れて東の国に行きたい…)」ズーン
360:爆発的に投下します! ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:22:51 ID:UdCBQzYwOk
―――西の国(帝都)―――

ガガッガガッ ガガッガガッ

ザスッザスッ ザスッザスッ

ドレッド「見えたな…」

副官「ほうほう!あれが本拠地ですか。やや、壮観だ!」

フィクサー「女帝の首は目前だ…。全兵に告げよ?ここを取れば我々の勝利だとな?」

副官「承知しました?」ニヤリ

ドレッド「なんだかんだとあんたの采配で俺達は連戦連勝ときたもんだ?
最初はビビりまくってた連中も自信がみなぎってイイ顔してやがるぜ?」ニヤリ

フィクサー「喜べ、ドレッド?」

ドレッド「……?」

フィクサー「間もなく我々の時代がやってくるぞ…?」ニヤリ

ドレッド「はぁ…?」
361: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:23:56 ID:UdCBQzYwOk
ゾロゾロ ゾロゾロ

副官「やあやあ諸君!今まで、よく尽くしてくれた?
おかげで被害は最小限に留まり、なおかつ数々の栄えある勝利を収められましたよ?」

王国兵's「……」キリッ

副官「ふんふん…どれも精悍な顔付きだ!もはや諸君らは疑うまでもなく兵士の眼差しを宿しているよ!」

副官「それはそうと、あれが見えるかな?そう、敵の本拠地…つまり最終決戦の舞台だ!」

王国兵's「……!」ググッ

副官「ここを勝ち抜けば、いよいよ長かった戦いは終わり、君たちの頑張りが大いに評価されるだろう?
勇猛果敢なる王国軍の兵士として惜しみ無い功績を残した全員に漏れ無く報酬が行き渡るという訳だ!」

王国兵's「おぉ…!」パァァ

副官「楽しみにしてるといい!見たこともない金銀財宝の雨霰が諸君らの頭上に降り注ぐ!
それだけじゃない!君たちは救国の勇士として母国の地を踏む事になるんだ!」

副官「すなわち英雄の凱旋!守られた家族、友人、恋人、見知らぬ人々まで君たちの無事に歓喜し、誇り、奮い起つ!!」

副官「生涯、噛み締めたらいいさ!皆を守ったのは誰か?国を救ったのは誰か?讃えられるべきは誰なのか!?」

副官「それは君だ!君だ!君だ!君だ!君だ!君だ!……君たちだ!?」ビシィッ

副官「国王も役人も関係ない!揺るぎない意思を持って命の限り、剣を振るった君たちこそが真の勝利者なのだ!?」

ウオォォオオオオオ!!!

副官「さぁさぁさぁ!!いよいよ以て我々の番が巡ってきた!ここに新たなる歴史を造り出す礎となろう!」

ドレッド「……は?」ポカーン
362: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:24:44 ID:m4Uz9RrgRI
副官「ここまでに一城を陥落せしめ、援軍を屠り、計10万にも昇る敵に打ち勝った諸君ならば…高まった士気に乗じて女帝を討つ事、容易いものと思われる!!」

副官「だがそれで満足してはいかん!いかんよ!?」

ザワワッ

副官「何故ならば今も再び争いの火種が各国に散り、禍々しく燃え移ろうとしているのだよ!」

副官「人は争う!懲りずに驕り、恐怖を忘れ、怒りのままに!何度も!何度でもだ!?」

副官「あぁ〜なんと愚かだろう!でも仕方ないさ!人間だもの!」

副官「そうなる以上、我々は戦い続け、勝利を掴まなければならない!
たとえ一部の国が滅び、数多の人々が病んでも…区別ある限り、人の世に平和は訪れないんだよ!」

副官「分かる!分かるよね?分かるだろう!?つまり真の最終目標は何かというと……」

副官「我が王国軍による大陸全土の総支配!!これによって争いは完結し、終わりなき平穏が約束される!!」

ドレッド「な、なに言ってんだ、あいつ?止めさせ……」

フィクサー「構うな」スッ

ドレッド「はぁ…!?あんな支離滅裂な演説、聞いてられるか!?」

フィクサー「わたしの決定に逆らうなと言った筈だ?」

ドレッド「け、決定だぁあ…?あんたの指示で、んなハチャメチャな演説をしてんのか…!?」
363: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:25:30 ID:m4Uz9RrgRI
ザワザワ ザワザワ

副官「だがしかぁし!!そこに理解を示せない者達がいる!それは果たして何者か!?」

王国兵's「???」

副官「そう!ご存知の通り…国王以下、従属する穢らわしき俗物達!
主は民としながら国政を維持し続ける意地汚い権力者共だよぉぉお!!!」

王国兵's「」オロオロ

副官「例えば…現国王、ヒメ!彼は幼くして即位し、人格、品性共に足る素晴らしき賢者であると謡われている?」

副官「だが実際、どうかなぁ?諸君らが満足するだけの安息を与えられているだろうか?」

副官「否!奴は本質を見失い、偉大なる王国の歴史を踏みにじるような政策を執り行う為政者である!!」

副官「あの雄大な国土がいかにして王国と名付けられたか?
我々が当たり前に感じてきた日々の中にどれだけの血と汗と涙が滲んできたか!」

副官「今は亡き、崇高な先駆者達が多岐に渡って造り上げた文明の叡知!!
尊い先人達が犠牲を投じてなお諦めず守り育てた豊かな土地の恵み!!」

副官「これらを築き上げたのは他ならぬ我々、人間である!!」

副官「だが国王……いや、奴はそれを何一つ理解せず蔑ろにしてしまっている!?」

ドレッド「(な、なに言ってやがる…?これから最後の戦いが控えてるってのに全く関係ない事を…?)」
364: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:28:18 ID:m4Uz9RrgRI
副官「全国民の共有財産である土地をあっけなく手放し、他種族に差し出してしまう軽薄な思考回路は、とうに知れ渡っているだろうさ?
大事な大事な血税をあろうことかホビットへの保証に充ててしまっている事もよくご存知の筈だ!?」

ザワザワ ヒソヒソ

副官「人材派遣と称し、各地の新事業に難民や職にあぶれた人々を斡旋しているが…。
それはつまりホビットにかまけた分の消費を人民による負担で補填しようとする馬鹿げた政策だ!」

副官「ホビットは働かずして王都のバックヤードを始めとした、あらゆる生活拠点に根付いている!!」

副官「そのバックヤードの開発費、住居や施設の改築費、建造費、維持費は甚大!
そして人の働きで生産された貴重な食料、生活用品、家具、衣類、水、火種、娯楽、諸々の資財が全て我々の税で賄われている現実!!」

副官「なぜ我々の納めた税が我々の為に使われないのか?私は不思議でしょうがない!」

副官「何が平等か!?何が差別廃止だ!?これではまるで人間差別じゃないか!?
笑わせる!笑わせるよ!さぁ笑え!ギャハハハハハ!!!」ゲラゲラ

シーン

副官「………ぅほん!えー…まぁ私が言いたいのはだね?
かのお坊ちゃま国王は決して人格者などではなく、ひたすらホビットに奉仕する事に喜びを覚える異常者であると」

副官「兵士となる前は善良な民として労働に身を捧げていた諸君なら、きっと分かってくれるものと思う!」

王国兵's「……」

副官「え?」アルェー
365: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:29:07 ID:m4Uz9RrgRI
王国兵1「…僭越ながら国王はお優しい方であるとお見受けします」

王国兵2「少なくとも我々は…以前の王政に比べ、心の暖かみや豊かさを一層感じられるようになりました」

王国兵3「半年に一度、無料で提供される国王専属農園の完熟苺を私も家族も楽しみにしております」

王国兵4「国王の意向により設立された民間の報道機関から発行される紙面を読む限りでは、とても好感の持てる発言、提案を数多く拝見しましたが…」

王国兵5「正直に申しますと我々は…国王に信頼を寄せています」

王国兵6「ホビットに対する手厚い待遇も優しさ故なのでは…?」

王国兵7「それに国民投票で選抜された役人の意見も身分に左右されず積極的に取り上げて下さっているそうですし…」

副官「………おやおやおやおや、呆れる。呆れるよ!呆れますねぇ!?」

王国兵's「」ビクッ
366: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:30:40 ID:m4Uz9RrgRI
副官「じゃあこの戦争はなんだね!?発端である国王はのんびり城で寛ぎ、ホビットは1割も参戦せず、戦場に駆り出されるのは僅かな軍人と寄せ集めの民間人ばかりときた!?」

副官「教団は後方支援と偽って安全な医療、補給班に回り、団員や難民を半強制的に徴兵に駆り出しておいて…参戦してすらいない司祭は大金をもらって自国でぬくぬくホビットのお世話だ!!」

王国兵's「……!」

副官「民間の広報?そんな物は圧力でいくらでも捏造出来るんだよ!!
無料で配られる苺なんて肥溜めから掬われた糞尿を撒き散らして毒物紛いの薬品をべちゃべちゃ染み込ませた腐敗栽培地の汚染物その物だ!?」

王国兵8「な、なぜオドアイル副官はそのように言い切れるのですか!?」

王国兵9「いくらなんでも非難の内容が不当に聞こえます!」

副官「なぜか?愚問だよ?我々、軍上層部は国政の真実を身近に体感しているのさ?」

王国兵's「……!?」

副官「何を隠そう今回の作戦において総指揮に任命されたフィクサー軍事指揮官は全役人を束ね、国政を揺り動かす最高官、リルラ政務官と密接に通じ合っておられた?」

副官「それがどういう事か分かるかね?なんなら余さず打ち明けてやってもいいんだよ?
我が国の闇を?君たちの知らない実情を?役人らの作り替えた事実を?そして国王の裏の顔も…?」

王国兵's「」ブルッ
367: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:32:10 ID:m4Uz9RrgRI
副官「君らは何も分かってなかったのか?そうやって都合良く騙された挙げ句の報われない仕打ちを先代の執政時に散々味わって…まだ気付かないと!?」

王国兵10「そう…かもな」ボソッ

王国兵11「お、おい!お前…!」

王国兵12「きゅ、急に言われても…何がなんだか…」オロオロ

副官「ならば決定的な事実を教えよう?」

王国兵's「」ピクッ

副官「此度の戦争が起こるに至った経緯は実に単純…救い主を巡ってヒメ陛下と女帝ファルージャがいがみ合ったからだ?」

王国兵's「……はい?」ポカーン

副官「救い主は知っているだろうね?そう!国王の親友であり、人とホビットの和睦を助けた救世主だ!」

副官「なんとその救い主が一部では癒しの力を有していると囁かれ、実際に目撃者も多数いると噂されているんだよ」

副官「もちろんそんな力は存在しないだろうが…最悪な事に国外へ漏れ伝わった噂はファルージャの耳に届き、驚くほどにあっさりと信じてしまった?」

副官「もう大体把握出来たかなぁ?そう、これは有りもしないおとぎ話に魅せられた暴君女帝と私的な感情で動く未熟な国王の巻き起こした…極めて個人的な喧嘩に過ぎないんだよ?」

王国兵's「……!」フツフツ
368: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:33:25 ID:m4Uz9RrgRI
副官「そろそろ怒りも沸いてきたかな?」ニヤニヤ

副官「だろうねぇ…国王は万にも昇る諸君の命よりも、たった1匹のホビットと結んだ友情を優先したのだから?」ニヤニヤ

王国兵12「っ……」ググッ

王国兵13「本当なのか…!?」ワナワナ

王国兵14「そんな筈……いや、でも…」

王国兵15「信じていたのに…っ!」ポロッ

王国兵14「……そんなこったろうと思ってたさ」ペッ

王国兵15「お、俺だって薄々感付いてたよ?今さらだっての!」

王国兵16「そうそう!よく考えろよな!あんなガキがまともに王様なんか出来やしないんだからさ!?」

王国兵17「くそぉ!?そんな理由で俺たちは戦わされてたのか!?」

王国兵18「…ここに来るまで何人の仲間が死んだと思ってんだ?
ホビットと仲良くする為なら…人間は死んでもいいって言うのかよ?」

王国兵19「そ、そういやホビットが集団で町や村を襲撃した時…真っ先に退治してくれたのはフィクサー軍長だったと聞いたぞ?」

王国兵20「あぁ、そんで国王の護身刀とか言われてる憲兵団長のダパーシとホビット贔屓の司祭は襲撃に関わったホビット連中を敢えて見逃したとか…」

王国兵21「なんだよ、それ…ますます馬鹿馬鹿しくなってきた。こんな戦いに命張って、どうすんだ?」

王国兵22「…西の国がイカれてるのは知ってたがウチも大概だな」

副官「(しめしめ…ようやく統制が乱れてきたな?)」ニヤニヤ
369: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:34:14 ID:m4Uz9RrgRI
副官「やっと分かってくれましたか…。時間は掛かったが共に戦う有志として団結を深められた事、まことに嬉しく思う!!」

副官「よって我々はここに…独立遊軍となる意思を宣誓しようじゃないか!!」

ザワッ

ドレッド「ど、独立遊軍…!?」

副官「今は矮小な一個大隊でしかないが…僅かながらの兵力で大国を揺るがした実績は証明済みだ?」

副官「強き者の下に人は集まり、弱き者のそばから足音は遠ざかる」

副官「それはなぜか…言うまでもないだろ?強者の懐に収まれば確実に守られるからだよ?
世の中の大多数は弱者であり、弱者は強者の影に隠れたいと願う。
ともすれば王の冠を戴く基準は血筋でも人格でもない!強者か否か!それだけさ!?」

副官「ならば答えは至極全うである!!弱者を蹴落とし、栄光を勝ち取るんだ!!」

副官「これまでを振り返れば危険な場面も多々あった!だがそこを乗り越えてきた諸君らであれば不可能な話ではない!」

副官「強者でありたければ力を示せ!?嘘に塗り固められた現実を憎むなら自分たちで真実を作り出すんだ!?」

王国兵's「……!」ゴォォォ

王国兵's「うっ……」グッ

王国兵's「おぉぉぉおおおおおおおお!!!!」バッ

オォォォオオオオオオオ………

副官「(はい、洗脳完了)」フイー
370: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:35:13 ID:m4Uz9RrgRI
フィクサー「適当な糾弾をまくし立てれば深く考えずに頷いてしまう…。
思い込みの強い国民性は、さすがに2年や3年では矯正されんな?」

ドレッド「お、おい…!あんたが言ってた俺達の時代がどうのってのはアレの事じゃないだろうな…!?」

フィクサー「呼応した者らの共鳴は我々を指導者と認め、新時代を切り開く剣となるよう切望している。応えねばなるまい?」

ドレッド「……!自分の国だぞ!?俺達が生まれ育った国だ!!分かってんのか!?」

フィクサー「……」

ドレッド「あんたにだって残してきた家族や仲間がいるだろうよ!?
大切な故郷を残虐な連中に侵させない為にも母国を守るのが俺達、兵士の役目じゃないのか!!」

フィクサー「……」

ドレッド「独立遊軍!?謳い文句だきゃご立派だが要は無作為に暴れまわる、ならず者の集団じゃねぇか!?
こんなくだらん話に全員を巻き込んで…あんた一体、何がしたいんだ!?」

フィクサー「そうか。分かってくれないか」

ドレッド「何を分かれと言うんだ!?この戦いで俺達は歴史に名を残す英雄になれるんだぞ!?
裏切り者の烙印を押されて悪名を語り継がれるなんざまっぴらだ!?」

フィクサー「…誰ぞの為と叫び、失ったところで、さして気にも病まない者らに尽くすのが、そんなに素晴らしい事なのか?」

ドレッド「はぁ…!?」

フィクサー「新時代の到来と共に歴史もまた生まれ変わる。その始まりにわたしの名をしたためよう」

フィクサー「誰もが戦いに身を費やし、争いが争いを呼び覚ます…。
純然と血を流し続けるツワモノ共の果てなき野心と憎悪の軌跡……。
そう。かつての終わらない争いを彷彿とさせる荒れ狂った時をわたしは感じたい」

ドレッド「(な…な……終わらない…争いだとぉ…!?)」

フィクサー「平和と安らぎに満ちた史書の何が面白い?
ありふれたページなど読み飛ばされ、忘却に沈みいくのを待つのみだ?
何かが巻き起こり、胸熱く疼かせる闘争本能に焦がれる至福は究極の娯楽と言って差し支えない?」

フィクサー「歴史とはこうあらねば…?それをなぜ拒み、つまらない日々に貴重な時を埋め込むのか?」

フィクサー「私利私欲で戦って何が悪い?俺を悪とするならば…己らの願望に平穏を組み込ませ、強制を促す貴様らの方がよほど罪深い…!」ギリッ

フィクサー「わたしは新時代の創造者たりえる傑物…この退屈に紛れ、忘れ去られる気など毛頭ない…」

ドレッド「(駄目だ…。こいつには何を言っても無駄だ…)」ボーゼン
371: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:39:21 ID:UdCBQzYwOk
カッカッ

フィクサー「……」チラッ

副官「あ゙〜…あ゙〜…やぁ〜喉を痛めてしまいましたよ?」ンンゥッ

フィクサー「なかなかの弁舌だったな。オドアイルよ?」

副官「いやぁ〜我らが国王陛下はお坊ちゃんながらに人気ですよ?よもや反発されるとは?
しかたなく勢いとでっち上げで畳み掛けてやったら、あっさり縮み上がりましたがね?」

フィクサー「ふっ…短い間に王の尊厳を民に思し召すとは器にかなう名声の持ち主ではあっ……!?」バッ

ビュンッ

ガキィィンッ!

ドレッド「ざ…けんなよぉ…!?」ギギギッ

フィクサー「…なんのマネだ?」ギギギッ

ドレッド「あんたに仕切らせたら……ズルズルと破滅に向かわされるだけだ…!?」ギギギッ

フィクサー「?」ギギギッ

ドレッド「だいたいにして今までも…そうだっ…友軍や身内を騙し、容赦なく…切り捨ててきたよな!?
城と共に…焼かれた奴らも…道中、制圧した領民や敵の援軍も…無抵抗の人間を!あそこまで徹底的に……殺すだけの理由があったか…!?」

フィクサー「ふっ…ふっふっ…」プルプル

ドレッド「な…に笑っ…!?」

フィクサー「殺すだけの理由…?ならば殺してはならない理由がどこにあった?」

ドレッド「あぁ……!?」

フィクサー「生かしておく必要のない連中を殺して何か問題でもあるのか…!?」ニヤァァ

ドレッド「やっぱり…あんたは…っ!!」

ドスッ!

ドレッド「」ピクッ

副官「ご納得いただけましたかな?ドレッド軍長?」グリグリ

ドレッド「ぎはっ!あぁぁがぁぁああ!!!」ボバッボフッ
372: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:40:04 ID:UdCBQzYwOk
パラパラ パラパラ

副官「イヤぁ〜な空模様ですなぁ?ポツポツと雨が……」

フィクサー「ちょうどいい。豪雨が激しく打ち付ける頃合いを見計らって作戦を決行するぞ」

副官「ははっ!」

ドレッド「」ダラァン

フィクサー「(誰かの植え付けた倫理観に操られ、あたかも己が正義と信じ込む。愚かしさに気付けぬ者共よ…)」

フィクサー「(これからはわたしが造り上げる真理を唱え、さまよい続けるがいいさ…)」

フィクサー「(終わりなき争いの世界でな…)」ニヤリ


???「……」ソーッ
373: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:41:01 ID:UdCBQzYwOk
―――東の国(城)―――

ミリア「……」ゲッソリ

東の高官「ミリア王妃…休まれてはいかがですか」

ミリア「…私は疲れておりませんことよ?」ニコッ

東の高官「…戦争が始まってからというもの、ほとんど睡眠を取っておられませんよ。お顔も少しやつれてしまわれた…?」

ミリア「ふふ……なぜだか眠くなりませんの。歳を取ると横臥するのも億劫で?」ニコニコ

東の高官「ご自愛なさいませ…。宰相殿に関してはまこと残念と申し上げるほかございませんが…」

ミリア「何も心配はしてませんよ?まだ王国の方々が戦ってくださってますもの?」ニコニコ

東の高官「……」

ミリア「ですが…南の国の方々や宰相殿には本当に申し訳なく想いますわ。
陛下と私がもっと上手にやれていたら…こんな事にはならなかったのかもしれません」

ミリア「戦争なんて…するべきではなかったのね。分かっていたつもりでも…こうなると心底、自らの過ちを悔いるばかりですわ?」ボーッ

東の高官「……」

ミリア「ふふ…そんなお顔をなさらないで?安心してよいのですよ?」ニコニコ

東の高官「は、はい…」
374: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:42:19 ID:UdCBQzYwOk
ミリア「…もしも兵が攻めてきたら皆さんで降伏を申し出なさい?」

ザワッ

ミリア「私の身柄を差し出せば…引き換えに救済措置も望めるでしょうから」

東の高官「そ、そんな事…出来る訳が…!」

ミリア「……」

東の高官「わ、私供は王妃様と共に死ぬ覚悟です!最後まで戦い抜きましょう!」

東の騎士「某もでござる!」ザッ

東の召し使い「わ、わ、私だって!」ブルッ

ミリア「あらら……」
375: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:43:34 ID:UdCBQzYwOk
ミリア「あなた…家族は?」

東の高官「わ、私でございますか…?私は妻と二人の子がおります…。
王妃様にも何度かお目通しいただいたかと存じますが…」

ミリア「えぇ、若く美しい奥様で…二人の娘さんもとても可愛らしく仲睦まじい姉妹でしたわね?」ニコッ

東の高官「ま、まぁ…はは。照れますな…」

ミリア「あなたは?」

東の騎士「某は未婚だが…故郷には年老いた両親と四人の兄弟がおります」

ミリア「そう…。きっとご両親にとって城で働くあなたは誇らしいことでしょう?」ニコッ

東の騎士「い、いえ…!」

ミリア「あなたは?」

東の召し使い「わ、わわ、私は城下に石膏技師見習いの夫が…こ、子供はまだ…です」モジモジ

ミリア「…それなら、まだまだこれからですわね?」ニコッ

東の召し使い「は、はは、はいぃ!!」オドオド
376: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:44:42 ID:UdCBQzYwOk
ミリア「……今、申し上げた方々の他にも大切な存在はおられますか?」

東の召し使い「はい…?」

東の騎士「はぁ…?おりますが…?」

東の高官「し、質問の意図が分かりかねます…」

ミリア「その方々と、この先もずっと寄り添って生きていきたいとは思えませんか?」

東の召し使い「……!」

ミリア「この国には前途ある人々が多く残っているのですよ?
どなたも大切な人との出会いを授かり、守るべき物があって…今という人生の中で必死に戦っておられます?」

東の騎士「……」

ミリア「愛しい者と過ごして…夢や希望に打ち込んで…厳しく辛い現実に向き合いながらも…見守り、見守られて生きていく…。
誰しもそうした…歩みたい未来というものがあるのではないかしら?」ニコニコ

東の高官「お、王妃…さ、ま」

ミリア「私の命には…そんな方々の尊い時間を潰えさせるだけの価値がありまして?」フッ
377: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:46:11 ID:m4Uz9RrgRI
ミリア「どうか私に最後の役目をくださらない?」ニコニコ

東の召し使い「」ブワァッ

ミリア「この命で贖えるなら、それ以上に喜ばしいことはございませんもの?」ニコニコ

東の騎士「……」

東の高官「……!」プルプル

東の召し使い「う……ひぐっ…」ポロポロ

「それには及びません!」

東の高官「!?」ビクッ

東の騎士「何奴!?」バッ

東の召し使い「へ!?」クルッ

ミリア「……!ひ、ヒメ…くん?」パチクリ

ヒメ「諦めてはなりません!僕らと共に…この戦況を打開しましょう!!」

ミリア「なぜ…あなたが…ここに?」

ヒメ「急を要する事態でしたので…勝手ながら無理を言って通していただきました!
詳しい事情はこちらの外交官から説明させています!」
378: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:48:15 ID:UdCBQzYwOk
東の高官「こ、国王殿…なぜ今、我が国を訪れられた?」

ヒメ「連合軍を勝利へ導く為にも東の国の力が必要なのです!」

東の騎士「…し、しかし我が国にはもはや僅かばかりの兵と民しか残されておりませぬぞ」

ヒメ「……」

東の召し使い「お…王妃様を助けられるのですか?」ポロポロ

ヒメ「」ピクッ

東の召し使い「お、おぉお願いします…!もう…もう嫌なんです!
国王陛下や宰相閣下のような悲劇を…産み出したくない…!」ポロポロ

東の召し使い「子供たちも…もう……戻ってこないじゃないですか…!
こんな争い…続けたって、人が死んでいくばかりです!?」ポロポロ

東の召し使い「お願いします!どうか…どうか助けてください!?」ポロポロ

ヒメ「」コクッ

東の召し使い「……!」ウルウル
379: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:51:25 ID:m4Uz9RrgRI
ミリア「…最後まで戦い抜く決意ですのね」

ヒメ「始めた以上、途中で投げ出す気はさらさらありません!」

東の騎士「…なおも多くの命を散らして勝利に食らい付こうと申されるか?」

ヒメ「そうです…!」

東の騎士「王妃様のように潔く救える命を残そうとは考えぬのか…!?」

ヒメ「…ミリア王妃のお考えは英断であると思います。
ですが、ただ闇雲に生き永らえさせても残された者らの絶望は拭えません!」

東の騎士「……!」

ヒメ「私達は国を預かる王として…幸福ある未来を民に約束出来なければならないんです!!」

ザワザワ ザワザワ

ヒメ「略奪を強いられ、虐待に見舞われ、奴隷となって家畜同然の身に堕とされるかもしれない…!
残された命の行き着く先をよくよくお考えください!?」

ヒメ「自分たちの居場所を奪い、支配し、せせら笑う侵略者に屈しなければならない…。
周囲どころか己さえも守れない…!敗北の歴史に怯え、震えて眠るしかない…!」

ヒメ「支配する者たちを呪い、戦いに負けた我々を恨み、無力な両手で涙をこらえ、悔しさをどこに向けていいかも分からない…!
ここで諦めてしまえば…誰も幸せになんかなれない!誰も幸せに出来ないんだ!!」

東の騎士「……」

ヒメ「はぁっ…はぁっ…」ゼェゼェ

ミリア「……」ジッ
380: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:52:31 ID:m4Uz9RrgRI
ヒメ「…どうか僕を信じて力を貸してください…!」ペコッ

東の高官「……」

東の召し使い「ふぐぅ……えう……」シクシク

ヒメ「お願いします!時間が無いんです!」

ミリア「断ったりしませんよ…。私供に出来る事なら、なんでもさせてください?」ニコリ

ミリア「皆さんもそうですわね?」

東の高官「…ははっ!!」

東の騎士「なんなりとお申し付けあれ!!」スラッ

東の召し使い「……!」グシグシ

ヒメ「ありがとうございます…!」パァァ
381: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:53:30 ID:m4Uz9RrgRI
ミリア「ホビット族の領地に…?」

ヒメ「はい!そこへ踏み入る許可を頂きたいのです!」

東の高官「し、しかし彼らは…」

東の騎士「んぅぅ……」

ヒメ「なにか不安が…?」

ミリア「実は…亡くなった陛下は一度、共存を求めて彼らに掛け合いましたのよ?」

ヒメ「は、はい…。以前に話されてましたね?」

ミリア「けれどホビット族は陛下に会ってもくださらなかったわ?
それだけでなく、彼らの住まう地に入る事さえ許されなかったの…」

ヒメ「……」

ミリア「…こう申し上げてはなんですがホビット族は東の国から独立した種族。互いに干渉しない掟は50年に渡って守られています。きっと…力にはなってもらえないわ?」

ヒメ「そうですか…」

ミリア「ここまで訪ねてくださって申し訳ございませんけれど…」

ヒメ「…構いません。やるだけやらせてもらいます」

ミリア「?」パチクリ

ヒメ「僕の友は…ホビットでありながら人や歴史が不変の物であると証明してきた現実を変えてみせました」

ミリア「……」

ヒメ「僕達も…いや、人も変えようとし、また変わろうとするべきです。諦めた先に変化はないのですから!」

ミリア「……」チラッ

東の高官「…これをお使いください」スッ

ヒメ「……!」パシッ

東の高官「こちらの通告許可証を提示すれば、いかなる場においても検閲を受けず、速やかに国内を行き来可能になります」

ヒメ「…恩に着る!」ゴソッ

ミリア「…頑張って?」ニコニコ

ヒメ「はい!」ペコッ
382: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:58:05 ID:m4Uz9RrgRI
ミリア「……」

東の高官「…ホビット族はどう出ると思われますか?」

ミリア「ヒメくんに一任しましたので後の事は考えておりませんわ?」

東の召し使い「な、なな、何か心配事が…?」

東の騎士「…ヒメ国王殿はお若く、感情に流されやすい。窮地に追い詰められて周りが見えておられぬやもしれん」

東の高官「…我々の窮地を知ったホビット族が果たして…味方に着くか、それとも不干渉を貫くか、はたまた…」

東の騎士「この期に乗じて東の国土を吸収しに掛かるか…でござろう?」

東の高官「最も可能性が高いのは後者だな…」

東の召し使い「え…え、えぇ…!?」

東の高官「王妃様が少々渋っておられたのは…国内の混沌を危惧された為でございましょう?」

ミリア「さぁ…どうしてでしょうね?」ニコニコ

東の高官「……しかしながら、よもや打つ手もない状況ですからな」

ミリア「なんであれ、あんな純粋な瞳で見つめられたら断れません?」

東の高官「……」

ミリア「はぁ…子供、欲しかった」

東の召し使い「お、王妃様…」

ミリア「(途中で投げ出す気はない、なんて…ふふ。本当に責任感が強くて、優しくて勇敢な子?
自暴自棄になって勝手に自己完結しようとした私とは大違いですわね?)」

ミリア「ちゃんとあの子たちを産んであげられてたら…私達も……」ボソッ

東の召し使い「……?」

ミリア「(私達は人の命を…どこか軽く考えてしまっていたのでしょうね。本当に大切と思える相手がいなかったから……もう遅いですけれど)」フッ
383: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:58:53 ID:UdCBQzYwOk
―――王国(国境防衛城塞)―――

ドッドッドッドッ ドッドッドッドッ

ガションガション ズシッズシッ ガションガション ズシッズシッ

ジルレイ「ハッハァ〜?なんだぁ、ありゃ〜!?バカ面、引っ提げて降参するかと思いきや…門を固く閉じて徹底抗戦の構えかぁ!?」

ガランガランガランガラン!

将軍「ヌハハハハハ!!虫けら共が慌てておるわ!?」

ジルレイ「鐘なんざ鳴らさんでも、この大軍の足音が響いてるだろうによぅ?」ニタニタ

将軍「ジルレイよ?」

ジルレイ「ハハッ!」

将軍「突撃だ?」ニタァァァ

ジルレイ「いよっ!待ってましたぁ!!」パシンッ

ジルレイ「てめぇらぁ!?ドカンとぶちかませぇ!!」ガガガッ

ドガガガガガガガガァァァッ
384: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 22:00:25 ID:UdCBQzYwOk
―――壁上―――

レーグ「き、来た…!?」ビクビク

ガンッガンッ ズダダダダダダッ

レーグ「そ、そ、そそそ総員、は…はい!はいはいはいはち…はち…あぁい!は、配置に着けぇ〜!?」ガタガタ

警備兵's「」オロオロ

レーグ「な、な、ななな…にして…だ?は、ひゃやく!」ガタガタ

団長「狼狽えるな?何を言ってるのかさっぱり分からんぞ?」ポンッ

レーグ「」ビクッ

団長「指示は正確にはっきりと伝えろ?でなければ兵も動きようがあるまい?」

レーグ「ず、すすずびばぜん…」ガタガタ

団長「(ちっ…これでは使い物にならんな)」

ヒュンッヒュンッ ドスッドスッ

ヒィィィイイイ!! ギャアアアアアア!!

団長「何をしている!?さっさと矢をつがえろ!?当てようと思わんでいい!!ただただ無心で射ち放て!?」

キリリッ ピーン

ヒュンッヒュンッ ヒュンッヒュンッ

ヒュンッヒュンッ ヒュンッヒュンッ

ドスッドスッ バタッバタッ

警備兵1「ひぁぁあああ!?いでぇぇぇええ!?」ブスッ

団長「痛みを感じる暇があるなら一本でも多く射ち返せ!?」

ヒュンッヒュンッ ヒュンッヒュンッ ヒュンッヒュンッ ヒュンッヒュンッ
385: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 22:03:19 ID:UdCBQzYwOk
副長「梯子を掛けさせるなぁ!?登ってこられたらひと溜まりもないぞぉ!?」

ヒュンッヒュンッ ヒュンッヒュンッ

ドスッドスッ ドスッドスッ

近衛兵1「副長!なにやら櫓のような台車がいくつも接近しておりますが…!?」ガスッガスッ

近衛兵2「な、なんだ、あれは…どでかい矢を装填してまっすぐこちらを見据えている…!?」ガスッガスッ

副長「…そ、そのまま大楯を構えて防げ!?王国の誇る鉄鋼製の分厚い楯ならばあれしき…!」

ビュンッビュンッビュンッ

ドガァァッ ゴシャアアッ バキィィンッ

副長「ば、バカな…!?あの楯は大の男が3人がかりでようやく持ち上がる重量だぞ…!?」

近衛兵's「ぐああああっ!!?」ズダダァンッ

副長「あぁ…な、成す術もなく…吹き飛ばされてしまった…!?」

ガゥンッ ガゥンッ

副長「」ハッ

近衛兵1「は、梯子が掛けられたぞぉ!?」

副長「振り落とせ!?登らせるな!?」

ダダダッ ゾロゾロ

ワァーワァーギャーギャー!
386: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 22:06:17 ID:m4Uz9RrgRI
ビュンッビュンッビュンッ ドガガァンッ

ヒュンッヒュンッ ヒュンッヒュンッ ドスッドスッ ドスッドスッ

近衛兵1「くそ…!破壊力のあるでかい矢と無数に飛び交う小さい矢に妨害されて…!?」

近衛兵2「このままじゃ続々と登ってくるぞ!死守……」

ヒューン ゴッシャアアアアア

グワァァァアアアアアア!!!

ガラガラッ ボロボロ

副長「く、加えて投石だとぉ…!?一体どれだけの兵器を抱えているのだ…!?」

ゴゥンッゴゥンッ! ゴゥンッゴゥンッ!

副長「な、なんの音だ!?」

近衛兵3「まずい!!こうしてる間に正門を破ろうとしています!?」

副長「なっ…む、向こうには団長が控えているんじゃ…!?」

近衛兵4「ど、どこも似たような戦況らしく…!」

副長「(は、速すぎる…!?何もかもが…!?)」ゾワッ

副長「(開戦からどれほど経った…!時間にしておよそ10分にも満たない筈…!?)」

副長「(それなのに…もう我々は壁上の陣形を砕かれ、翻弄され、梯子を掛けられ、正門の突破を許そうとしている…!?)」

副長「(……強すぎる…ただただ奴らが強すぎるんだ…!?)」ガクガク
387: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 22:07:17 ID:UdCBQzYwOk
ヨジヨジ ザッザッ

民間兵's「の、登ってきたぞ…!」

ラキア「臆するな!?」ジャキッ

民間兵's「」ビクッ

ギャリンッ ガキンッ ザシュッ

西兵45「グワハハハハ!!くそ雑魚共がぁ!?」ブンッ ザシュッ

西兵46「ヒャァハハハ!」ブンッ ドバッ

民間兵1「あ、ひぃぃ…!」ズルッ

ラキア「」ダンッ ヒュォンッ

ズガガガガガァァッ

西兵45「ごへっ…」プシャアアアアアア

西兵46「がっ!ぎぇっ!」ドッ ゴンッ ズザァッ

ラキア「恐れずに立ち向かえ!?正義は必ず勝つ!!」ダッ

民間兵1「」ビクッ

民間兵2「あ、あの人は…!?」

民間兵3「と、とにかく強そうな、あの人に続こう!?」ダッ

ワァァァアアアアアア!!!
388: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 22:15:50 ID:UdCBQzYwOk
ラキア「えやぁぁぁあああ!!!」ヒュッ ズバッ

ドサッ バタッ

西兵47「な、なんだぁ!?」タジッ

ザンッザンッ ドサドサドサ

西兵47「」ハッ

ジルレイ「ゲハハハハ!おっもしろそ〜なガキがいるじゃねぇの!?」ニタニタ

西兵47「じ、ジルレイ様!!」

ジルレイ「俺を登らせちまった時点で勝負は決まったようなもんだが…ま、それなりに楽しませてくれよ?」ヒュヒュヒュヒュッ

ザンッザンッ ザンッザンッ

ギャアアアアアア!!!

ラキア「(……あいつ)」ジロッ

民間兵1「うわああああ!!こ、こここっちに来るぅぅ!?」ビクビク

ラキア「…俺が相手しておくから、みんなは登ってくる敵を食い止めるんだ!出来る事なら梯子ごと叩き落とせ!?」

民間兵1「わ、分かった!」グッ

ラキア「いくぞ…!」ダッ

ジルレイ「おっ…自分から死にに来たか。可愛い奴め…?よしよし、ズバズバっと細切れにしてやろうなぁ?」ジャキッ

ラキア「ナメるな!?」ブンッ

ガキンッ!

ラキア「っ…!?」ギギッ

ジルレイ「ゲハハハ…!俺様の見込みに狂いはねぇ!こりゃ楽しめそうだなぁ?」ギギッ

ラキア「(くそっ…早く倒さないと…登ってくる敵を食い止めなきゃ一気にやられる!)」イラッ
389:名無しさん@読者の声:2015/11/29(日) 22:17:02 ID:YGhriUlVQg
ラキア頑張れ!死ぬなよ!
390: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 22:17:36 ID:UdCBQzYwOk
―――城塞(正門)―――

ゴゥンッゴゥンッ! ゴゥンッゴゥンッ!

将軍「ヌワーッハッハッハ!なかなか頑丈な造りではないか?」

西兵48「エイヤッサー!!」ガッ

西兵49「オイヤッサー!!」グッ

西兵50「あ、ソレソレソレソレ!!」グンッ

ゴゥンッゴゥンッ! ゴゥンッゴゥンッ!

将軍「ヌハハハハハ!!よいぞ、よいぞ!!その調子で音鳴らせ!?
それだけで奴らは下の正門を意識し、迷いが生じて上の守備が疎かになろう!?」

将軍「さすれば壁上を攻めている者らが内側から正門を開け放つのを待てばいい!!」

将校1「(参謀殿が不在でありながら閣下の指示は見事に的確だ…)」

将校2「(意外にも兵法への造詣が深いのだな…。正直、馬鹿力だけの暴れん坊将軍だと思っていたが…)」

ブォンッ

将校1「ぐきゅふ!?」ゴシャッ

将校2「ばぎぼっ!?」スバッ

将校3「か、閣下!何をなさって…!?」アセアセ

将軍「なんとなしにではあるが気に入らなかった。それだけだ?」ピシュッピシュッ

将校3「(す、少し距離を置こう…。でないと、いつ殺されるか分かったもんじゃない…!)」ススーッ
391: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 22:19:48 ID:UdCBQzYwOk
―――壁上―――

ワァァァアアアアアア

ガキンッ ガガッ ギンッ ドガァァッ

団長「ぬんっ!?」ブォンッ

西兵51「ぐはぁ!!」ザシュッ

レーグ「ひ、ひええ…!」ヘナヘナ

団長「バカモン!!隊の長が腰抜かしてどうする!?率先して戦わねば部下の士気にまで影響するぞ!?」ブォンッ

西兵52「げぁっ!!」バシュッ

レーグ「で、ですが…」ガタガタ

警備兵2「う、うぅおおお…!」バッ

西兵53「ちっ!」ガキンッ

警備兵3「わぁぁあああ!!」ブンッブンッ

西兵54「うおっとと!アホみてぇにぶんぶん振り回しやがって…!?」サッ

団長「部下が決死の覚悟で戦っているというのに恥ずかしくはないのか!?」ギンッ

レーグ「〜〜〜!!」

団長「立て!そして戦え!?逃げ場のない城内で是が非でも生き延びたくば己で命を勝ち取れ!?」シュバッ

西兵55「ごぶん!?」スパンッ ゴロッ

生首「」コロリン

レーグ「ひぃぃぃ!!!」ビクンビクン

団長「誰かが戦ってくれる!目を瞑って事なきを得る!そんな手段はもう使えんぞ!?」

団長「貴様を助けてやれるのは貴様自身だ!!」ブォンッ

ザシュッザシュッ ズダダァンッ

レーグ「……!」ガタガタ
392: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 22:21:11 ID:UdCBQzYwOk
レーグ「(た、戦う…!俺が…?)」ワナワナ

西兵53「うぐ…」バタッ

警備兵2「や、やった!た、倒した!やってやったぞ!」

警備兵3「こ、こここっちもだ…。ら、楽勝だぜ…」ガクガク

レーグ「(あ、あいつらが…な、なら俺も!)」ムクッ

ガシュッ ドバッ

警備兵2「あ……がふ」プシャアアアアアア

警備兵3「」ドサッ

レーグ「や、やっぱムリ!?」ダッ ドンッ

警備兵4「うっ…れ、レーグ隊長!どこへ!?」ヨロッ

団長「なっ…何をやってる!?逃げるなぁ!?」ガキンッ

レーグ「ひあああああああ!!!」ダダダッ
393: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 22:21:59 ID:m4Uz9RrgRI
レーグ「(し、ししし死にたくない死にたくない死にたくない)」ダダダッ

レーグ「(だってそうだろ!何人倒せば生き残れるんだよ?その間に殺られない保証がどこにあるんだよ?)」ゼェゼェ

レーグ「(目の前で人が殺されてんだぞ?切られて、刺されて、えぐられて血ぃ噴き出して!あんな痛そうなの…絶対いやだ!!)」ガチャッ

レーグ「(でもあの近衛師団長の言う通り、包囲された城に逃げ場なんてどこにもない!)」キョロキョロ

レーグ「(か、隠れられる場所…誰にも見つからない場所は…?地下?入られたら袋小路だ!怖い!)」ウルウル

レーグ「(城の中は隈無く探られそうだ…。隠し部屋も脱出用通路も用意されてない!当たり前だ!
国境関門は内外の人間を検閲する為の施設!わざわざ不審人物を脱出させてしまうような余計な経路は造らない!)」

ゴゥンッゴゥンッ! ゴゥンッゴゥンッ!

レーグ「ひあっ!?」ビクッ

レーグ「(せ、正門が破られる…?だ、ダメだ…終わりだぁ…!?)」クシャクシャ ズビッ

レーグ「(し、死ぬか?むごたらしく殺されるくらいなら自分で死んじゃおうか?)」

レーグ「(あぁでもひょっとしたら素直に降参すれば捕虜として生かしてくれるかもしれない!
い、いやでもその後に待ち受ける虐待が…!ていうかそもそも降参したって殺されるんじゃないの?拷問とかされてさぁ!?)」ハラハラ

レーグ「(は、はは、歯を抜かれたり…爪を剥がされたり…目玉をくり貫かれたり…全身に焼き印を押されるのか…!?)」

レーグ「は、はははハヒィィヤァァアアアア!!!」ペタッ ブルブル

レーグ「ど、どうしたらいい?だ、だ誰か!助けて!神様!神様ぁぁ……」ポロポロ

アリアス「バッカじゃないの?」ザッ

レーグ「え゙…?」クルッ
394: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 22:24:58 ID:UdCBQzYwOk
アリアス「あんた隊長よね?さっきから一人でジタバタ走り回って何やってんの?」

レーグ「……?」

アリアス「このホールは予備軍の待機場でしょう?隊長さんに縋られても困るのだけれど?」

警備兵's「」ジロジロ

民間兵's「」ヒソヒソ

レーグ「……!」サァァァ

アリアス「今さら青ざめても遅いわよ」

レーグ「ひっ…ぐ……うぇっ…えっ…」ポロポロ

アリアス「…あのねぇ?あんたの存在その物が全員を不安にさせてるの分かってる?
皆、これから戦う為に少しでも気を落ち着かせたいのに隊長が真っ先に逃げ帰って泣きじゃくってる姿なんか見たくないの?」

アリアス「そうして保身に震えて情けない醜態を晒す奴がいると、あたしらは戦う前から恐怖心が芽生えて、うまく力を発揮出来なくなるの?
つまり勝率もガクンと下がって死の秒読みを速めてるの?
いい?あんた迷惑?死ぬなら壁上の敵を一人でも蹴散らしてから死んで?
でなきゃ私達があんたを担いで壁下に群がってる連中に放り投げるわよ?分かった?」クドクド

近衛兵's「そうだ、臆病者め!!」ブーブー

警備兵's「隊長なら潔く戦って死ねぇ!?」

民間兵's「俺らと違って正規兵のクセに男らしくねぇぞ!?」

アリアス「(…なんとか中の士気は下げずに済んだわね)」
395: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 22:25:25 ID:m4Uz9RrgRI
レーグ「や、やべ…て…!たす…けて…!かぁみさまぁ…!」ガクガク

アリアス「一つ…神の系譜を世に伝えてきた元信仰者から助言してあげるけれど…」

レーグ「おたすけくださいおたすけくださいおたすけください…!」スリスリ

アリアス「いないわよ。神様なんて?」バッサリ

レーグ「」ピタッ

アリアス「あたしは教団の司祭に仕えていた者だけれど…なんなら教えてあげましょうか?神の作り話の誕生秘話とか?」シラー

レーグ「」ガクンッ

アリアス「行きなさいよ…」ドンッ

レーグ「」ヨロッ フラッフラッ

レーグ「」ブツブツ

フラッフラッ フラッフラッ………

アリアス「(可哀想な事したわ…。でもここで中の不安を煽る訳にはいかないのだし…それに?)」

ワァーワァーギャーギャー

アリアス「(そろそろ外からお呼びが掛かる頃合いでしょうしね…)」ジッ
396: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 22:37:21 ID:UdCBQzYwOk
>>389
ローレンを倒したジルレイが相手ですが、はたしてどうなるか…(笑)
感想ありがとうございます!

関係ないですけど、なんか更新内容がごちゃごちゃしてますね。読みにくかったらすみません!


余談ですがオーキド博士とクルミちゃんのラジオで4回に渡って放送していただいた当SSのCMが、ついに完結?した模様です!
毎回とても楽しみで放送される度にドキドキとワクワクが止まりませんでした!
綺麗な表現で簡潔にまとめ上げる文章がスゴく魅力的で今までのスレに自分で書いてきたあらすじを全部、CMの文に差し替えたいくらい素敵です!
クルミちゃんから感想まで頂けたサプライズには心躍りました!
本当に感謝しておりますし、放送20回目に行われる新企画の概要もかなり気になります!
これからもオーキド博士とクルミちゃんのファンとしてラジオを応援させていただきます!ありがとうございました!
乱文失礼しました!
397: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:18:58 ID:MvVpHIxlN.
―――西軍の櫓(大槍砲射出地点)―――

西兵56「装填完了!合図が来たら、いつでもぶっ放せるぜ!」ジャコンッ

西兵57「へっへっへ!兵器に掛かりゃ人間なんざ脆いもんよ?」ニヤニヤ

西兵58「さっきもこいつを喰らってあたふたしてやがったのが笑え……」

ヒュンッ ヒュンッ

西兵56「ぐわっ!?」ブスッ バタッ

西兵57「んぎっ!!」ドスッ ズサッ

西兵58「あ!?な、なにぃ!?どっから…!?」アタフタ
398: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:19:59 ID:gUlMLlO5yg
―――国境防衛城塞(屋上)―――

ホビット女「ふん、ヤってやったね。あれでしばらくでかい矢は射てないよ!」

ホビット男「人間はおおざっぱなのが好きだよねー。あんなん使わなくたって腕さえあれば、こっちのが楽なのに?」

ホビット女「弓術の祖はホビット族さ?人間なんかお呼びでないよ?」

ホビット男「みんな!この調子でバンバン射ち倒してやろうぜ?人間たちにホビット族の凄さを見せ付けてやるんだ!」

オォォォォオオオ!!!

ホビット女「あんな連中、屁でもないね!ブランケ!あんたも気ぃ抜くんじゃないよ!」

ホビット男(ブランケ)「お互い様だろ、シーラ?せっかくの機会だ。戦況に響かせるくらいには貢献しないとな?」

ホビット女(シーラ)「ふふん…まさかあいつらも城の屋上から壁越しに狙われてるなんて思わないでしょうしね!」

ブランケ「どんな場所からでも的を見据える超視力……」

シーラ「距離をものともしない正確無比な命中率……」

ブランケ「これぞ…」ズズズ

シーラ「ホビット族の…」ズズズ

ブランケ&シーラ「神業!!」ババンッ

シーン

ホビット's「……」ポカーン

ブランケ「……とりあえずでかい引き矢と投石砲台の射手を狙おっか」キリリッ

シーラ「歩兵とか弓兵とかチョロチョロ細かいのはキリがないし、的を外しやすいからね」ピュンッ

ホビット's「(司祭様に頼まれたしがんばろーっと)」ヒュンヒュンッ
399: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:22:07 ID:gUlMLlO5yg
―――壁上―――

団長「ハァァァァッ!!!」ズガァンッ

グラッ ベシャアアアアアン!!

警備兵's「これで三つ目だ!!」

西兵59「くそっ…あのバケモンめ!梯子がどんどん落とされてくぞ!」ギリッ

西兵60「こりゃ合図出した方がよさそうだな…!」

警備兵's「やってやんぞぉぉぉおおお!!!」バババッ

西兵59「ちっ!調子付きやがって!やれぇ!?大槍砲でブッ飛ばせぇ!!?」

シーン

西兵59「……あり?」メダパニ

団長「吹き飛ぶのは貴様らだ!?」ザッ

ドガガガガァンッ

西兵60「ぎえええ!?」ドカッ

西兵59「のぺふ!?」ズバァッ

団長「(…ひとまずここはどうにかなりそうだ。彼らに援護射撃を頼んで正解だったな)」

ヒュンヒュンッ ヒュンヒュンッ

ドスッ ブスッ ドスッ ブスッ

西兵61「うぎゃっ!ど、どっかに弓兵がいるぞ!?」ブスッ

西兵62「壁上じゃ逃げ場がねぇ!?」ドスッ

団長「(シヴァとか名乗るホビット族達との戦いで痛感したが彼らの弓術は大したものだ…。
これだけ優秀な狙撃主がいれば壁上はそうそう傾かんだろう…)」

ウワアアアアアアアア!!!!

団長「む…?」ジッ
400: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:23:42 ID:MvVpHIxlN.
近衛兵1「副長!抜かれました!奴らが階段を降りて城内に入っています!?」アセアセ

副長「わ、分かってる!なんとしても止めろ!?」ガキンッ

近衛兵2「む、無理です…!続々と登ってくる兵をどうにかしませぬと…!?」ギンッ

副長「よ、弱音を吐くな…!門を開けられれば一巻の終わりだぞ!?」ヒュッ ズドッ

団長「むんっ!!」ビュバッ ザウッ

ドバッ ガシュッ バタバタッ

副長「だ、団長!?」

団長「何をやっている…!?さっさと増員を蹴散らし、梯子をどけろ!?」バウンッ バシュッ

副長「し、しかし…下の門が!?」

団長「下にも予備隊が控えている!今はこれ以上、敵を門に迫らせぬよう戦え!?」

副長「…は、ははっ!」

団長「ここの守備は唯一の正規兵である我々、近衛師団の管轄だ!!
この場所こそが本来、鉄壁の要でなくてはならんのだぞ!?これ以上、無様な醜態を晒すな!?」

近衛兵's「……!」ゴォォォ

団長「存分に力を発揮しろ!!我々は王家直属、近衛師団なるぞぉ!!」

ウォォオオオオオオ!!!

団長「(この分では残りの守備も怪しいな…。折を見て援護に向かわなければ…!)」
401: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:26:36 ID:MvVpHIxlN.
―――城内(正門付近)―――

西兵63「がぁぁああっ!!」ブンッ

予備兵1「いぎゃっ!!」ザクッ バタッ

西兵64「殺せ、殺せぇえええ!!ギャッハッハッハッ!!」ブンッ

予備兵2「ぎゃんっ!!」ガシュッ

ワァーワァーギャーギャー

レーグ「(あ、あぁぁあ……こんな…こんなのどうしたらいいんだ…)」ブルブル

ドバッ ザシュッ ズドッ ガンッ

レーグ「(敵の一人一人が馬鹿みたいに強い…!果敢に向かってった人達をあっさり殺していく…!)」

レーグ「(あんな血を浴びても高笑いして…イカれてる!ただの人殺しじゃないかよ!?)」

レーグ「(こんな奴らに勝てる訳がなかったんだ…!なのに国王が戦争なんかしたから…)」

レーグ「(くそぉ…こんな事なら、城塞警備なんかやめて田舎に帰るんだった…。
都住まいの上流民に憧れて外交役人の補佐なんかしてたばかりに…!)」ワナワナ

西兵64「んはゃあっ!!」ダンッ

西兵63「ぶぼっ!?」ゴバンッ

レーグ「え!?」ギョギョッ

アリアス「あんた、まだ縮こまってたの!?いい加減にしなさいよ!?」

レーグ「い、今の…あ、あなたが…?」ビクビク

アリアス「あの門が開かれたら全てが終わるのよ!?黙って見てないで死守しなさいよ!?」ダッ

レーグ「ひえっ!!は、はいぃ!?」ピシッ
402: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:28:18 ID:gUlMLlO5yg
バウンッ ドガァッ ゴスッ バキッ

レーグ「(あ、あんなおばさんが屈強な兵隊をバタバタ投げ倒してる…!?)」

レーグ「(いくらなんでもおばさんに…?も、もしかしたら見かけ倒しなのか?)」

レーグ「こ、これなら俺も…!」グッ

レーグ「」ガクガク

レーグ「(だ、ダメだ!やっぱり怖い…!)」ブルブル

レーグ「(…だ、だけど、どっちみちやらなきゃ…殺られるんだ!)」

レーグ「(…まだ結婚もしてないのに……こんな所で死にたくない…)」

レーグ「(…やろう。俺だって警備隊の訓練を修了した兵士だ!
実戦どころかロクに喧嘩もした事ないけど…おばさんにやれて俺に出来ない訳がない!)」

ワァーワァーギャーギャー

レーグ「や、やややってやる…!やってやるぞ…!」ハァハァ

レーグ「いぃやぁああああ!!」ダッ
403: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:31:32 ID:gUlMLlO5yg
西兵65「ぺっ!いい身形してやがるから手強いかと踏んだが、とんだ見かけ倒しだなぁ?」

レーグ「うぎゃああああああ!!!」ゴロゴロ

西兵65「へっ!威勢よく突っ込んできた割にゃ味気ねぇ?雑魚はとっとと死んじゃえよ?」ニヤァァァ

レーグ「イダイダイダイダイダイィィィィ!!!」ジタバタ

西兵65「死ねオラァ!?」ブンッ

レーグ「ぶぐ…!」ザクッ

西兵67「くのっ!ボケが!?」ブンッブンッ

西兵65「らっ!ラァッ!!」ブンッブンッ

西兵66「ウヒャハハハハ!!」ブンッブンッ

レーグ「うげぇぇえああぁぁぁあああああ!!!?」プシャアアアアアアア

ズンッ ドガッ バキョッ グシャッ

ギャアアアアアアアアアア………
404: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:32:36 ID:MvVpHIxlN.
―――壁上―――

ギャリンッ ガキンッ グァァンッ

ラキア「はっ…っあぁ…!」ググッ

ジルレイ「おぅっと?もうバテたなんて言わんよな?
こちとら余裕かまして、てめぇらの負け戦に付き合ってやってんだ?まだまだ楽しもうぜ?」ジャキッ ジャキッ

ラキア「負け戦…!?ふざけるなよ…!」ブチィッ

ジルレイ「……?」

ラキア「正義は勝つ!!絶対にだ!?」ブンッ

ジルレイ「せぇ〜ぎぃ〜?」ヒュヒュヒュン

ラキア「!?」ズバッズバッズバッ

ビシャッビシャッ

ラキア「くぁっ!!」ガクッ

ジルレイ「そんなもんはなぁ…ガキの内に卒業しとくんだよ!?」ビュンッ

ラキア「あぐっ!」バキィッ

ジルレイ「この世のどこに正義なんてもんがあるんだ?今、まさに殺し合いしてやがるお前が正義か?」レロォォン

ラキア「…〜〜!」ポタポタ

ジルレイ「考えるだけ時間の無駄だ?んなしちめんどくせぇ事はいいからよ…楽しもうぜぇ〜!?」ギラッ
405: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:33:54 ID:gUlMLlO5yg
ザシュッ ズバッ ドガッ ダンッ

西兵68「よえー!よえーなぁ!?ギャハハハハハ!!!」ブンッ

西兵69「くたばれやぁ!?」ブンッ

民間兵2「ぐきぃ!?」バシュッ

民間兵1「…ちくしょう…!」ガキンッ

西兵69「ウヒャハハハハ!!!なにチビってんだ!?恥ずかしくねぇのか!?」ゲラゲラ

民間兵3「ひぃ…ひぃ…た、たす……け…」ジョー

西兵69「ねーよ、バーカ?」ビュオッ

民間兵3「がぶっふ!!」ズドッ

ラキア「(このままじゃ味方が殺されていく…!)」チラッ

ジルレイ「…いぃ〜いこと思い付いたぜ〜?」ニヤリ

ラキア「は…?」

ジルレイ「お前は敢えて生かしてやるよ?動けなくなるまで痛め付けちゃうけどな?」ニヤニヤ

ラキア「なんだと…!?」イラッ

ジルレイ「ゲッハハハ……この城を落とした後に目の前でお仲間を一匹ずつ焼いてやるか?」

ラキア「」ゾワッ

ジルレイ「無様な泣きっ面を俺に見せてくれや…?正義の味方さんよ?」プッ

ラキア「ぜぁぁぁっ!!!」ビュバッ

ジルレイ「っと!?」ガキンッ

ラキア「お前のような…外道は許さない…!」ギリッ

ジルレイ「許さない…だぁ〜あ?俺はてめぇに許しを乞うた覚えはねーぞ?」ギロッ
406: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:35:34 ID:gUlMLlO5yg
ラキア「たぁああああ!!」ビュババッ

ガインッ キンッ ズカンッ

ジルレイ「っ…らあぁぁしゃああああ!!?」ヒュヒュヒュン

ギャリンッ ギギンッ ピシィィィッ

ラキア「くっ…」ガィンッ ギギンッ

ラキア「(目が…霞む。切られすぎたか…!集中を解けば一瞬で全身の力が抜けてしまいそうだ…!?)」ウツラウツラ

ラキア「(でも…負けられない!俺の信じる正義を裏切らない為にも…負けられないんだ!)」ジャッ

ジルレイ「づりゃあ!!」ヒュオンッ

バシュッ

ラキア「カッ……ハ………」プシッ

ジルレイ「どうしたぁ!?正義ってのは、んなモンかぁ!?」ニィィッ

ラキア「まだ…だ!」ギリッ

ジルレイ「……あ?」イラッ

ラキア「(どんなに強大な敵を目の前にしても諦めず立ち向かう…!)」グッ

ラキア「(倒されても…挫けずに何度だって立ち上がる!)」ググッ

ラキア「(時には自分を置き去りにしてでも大事な物を守り抜く!!)」カッ

ラキア「それが俺の信じる…正義だぁぁあああああ!!!!」バッ

ジルレイ「……なぁ〜に張り切っちゃってンダァァアアア!!!?」シャッ

ガァンッ!!
407: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:40:59 ID:gUlMLlO5yg
ジルレイ「っ……!!」ビリビリ

ラキア「うっ……!」ビリビリ

ヒュールルル

西兵69「ヒャハハ!死…べぼ!?」ドスッ

キンッキンッ カッカカッ

ジルレイ「お、俺様が…こんなガキ相手に剣を弾き飛ばされただと…!?」ガクゼン

ラキア「は、ハハ…!どうだ…思い知ったか!」ゼェゼェ

ジルレイ「てめ…ぐあっ!?」ズキッ

ジルレイ「(て、手首がグニャリと曲がって…そんなバカな…!?)」ジンジン

ラキア「終わりだ…!」ググッ

ジルレイ「く…クソガキぃぃいいい!!」ギリィッ

ラキア「正義は…勝ああああつ!!!」ダンッ ビュオッ

ドバッ!!

ジルレイ「ごっ…ぱはぁあ……!!」ブシャッ
408: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:42:25 ID:MvVpHIxlN.
ズゥゥゥゥン………

ラキア「ふっ…ふぅっ……見たか!悪め!?」ハァッハァッ

西兵70「じ、ジルレイ陸曹が殺られたぞ!?」

西兵71「そ、そんな…バカな…!?」

ラキア「やった…!やったぞ…!強敵を…俺一人の力で…!」ギュウウウ

民間兵1「うわあああああ!!!」

ラキア「え?」

民間兵1「せ、正門が!正門がぁぁああああ!!!」

ラキア「」ハッ

ワァーワァーギャーギャー

ラキア「(内側から続々と攻め込まれて…!?ま、まだ予備隊がなんとか押さえてるけど…!?)」

西兵's「ぎははははは!!!」ドドドドドッ

ラキア「(お、俺が戦ってる間に…ここも抜かれてたのか!?早く立て直さないと…!?)」

ギャリンッ バキッ ズドッ ザシュッ

ギャアアアアアアアアアア!!!

ラキア「(は、半分以上、敵の勢力で埋められている…!?)」

民間兵4「ぐばはぁ!?」ドスッブスッ

バタバタッ

ラキア「(俺が一人の敵を倒してる間に…ここにいた半分以上が…死んでたのか?)」ブルッ

西兵70「やりやがったなぁ!?」ブンッ

西兵71「のやろうっ!?」ビュンッ

ラキア「!?」ピクッ

ドバッ ズブッ

ラキア「(は、反応が遅れた…!?こんな…奴らに…!?)」ガフッ

ラキア「ぶはぁっ!?」ゴボォッ
409: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:44:42 ID:gUlMLlO5yg
西兵70「じ、ジルレイ陸曹を殺った奴を俺が…!?ぐっふふふ…!!」ニタァァァ

西兵71「バカヤロウが!俺が殺ったんだよ!?」

ラキア「ぶぼほぉ!?がっ…ばはぁ!!」ガクガク

バタッ

ラキア「(…俺は……なんだったんだ?)」ウツラウツラ

ラキア「(誰も…まもれなかった…だれもたすけ…れなかった)」ボタボタ

ラキア「(せい…ぎっ…て、なんだ…)」ビクンビクン

ダダダダダダッ

西兵70「あぁ!?おぉい!!なんだ、こ……ぶがぁ!?」ズバッ

西兵71「げあっ!?」バシュッ
410: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:46:39 ID:MvVpHIxlN.
ガシッ グイッ

ラキア「……?」ダラァン

団長「ラキア!大丈夫か!」グンッ

ラキア「と……さ…?」ピクン

団長「肩を貸してやる!気をしっかり持て!?」グッ

ラキア「も…たすか…らないよ」ボーッ

団長「バカモノ!!親より先に逝く奴があるか!?」

ラキア「…と……さん」

団長「喋るな!?今すぐ医療班の所まで連れていってやるぞ…!」ガバッ

ラキア「…」ガシッ

団長「どうした…?」ハッ

ラキア「せいぎ…は……あるのか、な」ポツリ

団長「……!?」

ラキア「…おれ…おれ……なにも…」ポロポロ

団長「おい…!何を泣いて…!?」アセアセ

ラキア「おし…えてよ…!」ジッ

団長「……」
411:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2015/12/9(水) 21:49:20 ID:gUlMLlO5yg
団長「…何が正義かなどワシには分からん」

ラキア「っ…」ポロポロ

団長「だが一つ言えるのは…」

ラキア「……?」

団長「己に恥じぬ行いであれば…それは正義なのではないか?」

ラキア「……!」

団長「納得出来るかは知らん。答えはお前の信念に基づいて出せ?」

ラキア「……」

団長「よいな?」

ラキア「……」コクッ

団長「よし…それだけ意識が保たれていれば安心だな!行くぞ!」スクッ

ザザザッ

西兵72「ゲヒヒ!」ジャキッ

西兵73「死に損ない担いで、どこに行くって?髭面のおっさん?」ニヤニヤ

西兵74「ジルレイを殺った奴を殺れば次期幹部、間違いなしだぜ!」ジャキッ

団長「」ギロッ

西兵's「」ビクッ

団長「多少、揺れるが辛抱してくれるか?」

ラキア「…おもっ……きり…あばれ、て…くれ……おやじ…」ニィィッ

団長「ふん…ワシも伊達に最強と呼ばれてはおらん。
片手で貴様らを葬り、怪我人を城内へと運ぶ事など雑作もない?」ゴキッゴキィッ

西兵's「し…しゃらくせぇ!?」バッ
412: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 21:50:18 ID:dM41ziAA.s
―――西の国(シャルウィンの宝玉御殿)―――

女装家「フンッ!フンッ!」ボッボッ

ドッ ゴッ ボフッ バキィッ

ズゴンッ ドボッ ガンッ ベキィィッ

ラム「」ベシャッ

女装家「まだ寝かさないわよ〜?」ムンズッ

ラム「」グイッ

女装家「はい、飛んでけ〜!」ブンッ

ゴッガァァァン!

パラパラ パラパラ

ラム「……」ベタァァァ

女装家「ウフフ〜?効くでしょ?プラチナの指輪で飾った高級な拳は?」ズシッ

ラム「」ミシミシ

女装家「なんとか言ったらどうなのよぅ?ネェ〜ん?」グリグリ

ラム「」メキッメキッ

女装家「顔面、踏み潰しちゃうわ…よっ!」グンッ

グシャッ!

ジワァァァァアアアアア

女装家「あんらまぁ〜…鮮血の泉が湧いたわぁん?キレーイ!」キャピッ
413: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 21:51:41 ID:riAK.jgmGM
ラム「」グジュッグジュジュ

女装家「何度見てもすごいわねぇ〜?」シゲシゲ

ラム「」シュウウウウウ

女装家「死んでも死んでも再生しちゃうんだから?
どーりで首を叩き折ってあげたのに生きてた訳よネェん?」

ラム「」グッタリ

女装家「もう何度目かしら…?飽きないわぁ〜?」ウットリ

女装家「だって…?」バッ

ボカンッ

ラム「ぎあっ!?」ドカァッ

女装家「フンッ!フンッ!」ボッボッ

ラム「お゙っ…うげぇ……べふっ!?」ゴッ ガンッ バキィッ

女装家「再生すんだから何したっていいんでしょ〜?」ニヤニヤ

ラム「……」ズシャッ

女装家「アハァン…クセになっちゃいそ?」ツヤツヤ

ラム「ぶっ……げぅっ!ぶぇほっ!ごはっ!」ゲロゲロ

女装家「癒しの力って最高ネェ?こんなイィ〜オモチャを量産し放題な訳でしょ?毎日いたぶっても飽きないわぁん?」

ラム「ふっ…ふっ……」ビチャビチャ

女装家「あ、そだ!」キャピッ
414: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 21:55:22 ID:riAK.jgmGM
女装家「ネェネェ〜ん!覚えてるかしらぁ?」ツンツン

女装家「アンタ…アタシを焼いてくれちゃったじゃなぁ〜い?」

ラム「ぼふっ…ぶぁ……えほっ…」ゼェゼェ

女装家「熱かったんだから〜?死ぬかと思ったわよ、ホント?」ムンズッ

ラム「っ……」グイッ

女装家「まぁ癒しの力で元通りになったからイイんだけど?救い主様々よぉん?」キャピッ

女装家「で……なんか言うことある?」ギロッ

ラム「…る……くんは」

女装家「ハァ?」

ラム「カロル…くんは?」ゼェゼェ

女装家「あんらぁ〜…質問に質問で返しちゃう?」ピキッ

ラム「カロルくんには…手を出すな…!僕が…代わりに…!」キッ

ボガァンッ!

ラム「ぃ……あぎ…」ゴロッ

女装家「…はぁ〜もうダメね、アタシったら?全然収まんない?」コキッコキッ

ラム「う……く…!」プルプル

女装家「…ん?」
415: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 21:58:39 ID:lPDOndQsx.
ラム「……!」ググッ

女装家「ぷふっ…必死に立ち上がろうとしてる?生まれたてのヤギみたい?」プークスクス

ラム「友達は…友達を裏切らない…!」ヨロッ

女装家「あんよがじょ〜ず!あんよがじょ〜ず!」パチパチ

ラム「カロルくんは…ひとりぼっちになった僕と…手を繋いでくれた!」ウルッ

ラム「たくさんの…ぬくもりをくれた…!」フラッ

ラム「だから…だから…」ブツブツ

女装家「…独り言?きもちわるっ」

ラム「僕も絶対に…裏切らない!」ダッ

女装家「」シュッ

バキンッ!

ラム「っ…っ……」メリィッ

ドタッ

女装家「弱っ!シラケる〜?」プフゥッ
416: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:00:17 ID:riAK.jgmGM
女装家「友達ごっこしなくていーの?ねぇ、なんとか言ってみたら〜?」グリグリ

ラム「」グシャッグシャッ

魔導師「まだやってんの…?」ヌッ

女装家「ギョワアアアアアア!!!?」ギョギョッ

魔導師「うわ…ズタボロ……」マジマジ

女装家「あ、アンタ急に後ろから出てくんじゃないわよ!?びっくりすんじゃない!?」バクンバクン

魔導師「まぶしいなぁ…。この悪趣味な屋敷、どうにかなんないのかい…?」キョロキョロ

女装家「このオシャレで高級な内装にケチ付けるなんて頭オカシイんじゃないの!?」キーッ

魔導師「……まぁいいや。そろそろ行くよ…」シラー

女装家「」ピクッ

魔導師「……」

女装家「ウフフ…フフっ……やっとオネェ様の美が完成されるのネ?」ニタァァァ

魔導師「…女王の美貌は最初から完成してるさ。それを永久に保持するんだ」

女装家「あっそ…救い主を愛でたいとか言い出して地下室に籠った時はどうしようかと思ったけど?」フンスッ

魔導師「アレは本当の意味で"特別"だからねぇ…。自分らなんかより優先されて当然さ?」

女装家「救い主ったってホビットのガキでしょ?あんなのにオネェ様を取られてたまるもんですか!
こっちだってご褒美をもらう為に必死で潜入してきたってのにオネェ様ったらアタシをほったらかして…」ブツクサ

魔導師「気が変わるのを待つしかないさね?女王は飽きっぽいから?」

女装家「」ペッ

ラム「」ビチャッ

魔導師「それ…どうすんの?」

女装家「…余計な荷物になるから置いてくわよ。身動き取れないように胴体、串刺しにしちゃいましょっと!」ルンルン

魔導師「ふーん…それでも生き続ける訳だ。地獄だねぇ」

女装家「どうでもいいでしょ、別に?永遠の命が本物って証明になるしイイじゃない?」

魔導師「まぁねぇ…」
417: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:05:00 ID:lPDOndQsx.
〜〜〜回想(ラム)〜〜〜

―――ミラルドの町―――

ラム「……」スタスタ

カロル「ふんふふ〜ん」ルンルン

ラム「楽しそうだね?」ジーッ

カロル「うん!楽しいもの!」ニコニコ

ラム「(おつかい頼まれただけなのに…)」

カロル「えと!カボチャと香草とベーコンとお味噌とヨーグルト!間違えないようにしなくちゃ!
お母さま、今日の晩ごはん、なに作るのかな?楽しみだね?」カサッ

ラム「そ、そうだね…(こんな組み合わせで何を作る気なのか、ある意味楽しみではあるけど…)」ヒクヒク

カロル「えへへ!いっぱいおかわりしよっと!」

ラム「…君って毎日、楽しそうだよね?少しは退屈になったりしないの?」

カロル「ならないよ?どうして?」キョトン

ラム「ほら、たとえばさ?毎日、単調な繰り返しで代わり映えしなかったり飽きたりするだろ?そういうの感じたりしない?」

カロル「うーん…そう?ラムくんはつまんないの?」

ラム「つまらない訳じゃないけど…何か物足りなかったりはするよ?」

カロル「そうなんだ?ラムくんって大人だね!」ニコッ

ラム「お、大人…?」
418: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:12:20 ID:riAK.jgmGM
カロル「ボクね、みんながいたらすっごく嬉しくなるの!」

ラム「へぇ…」

カロル「みんながいるーって思えるから嬉しいんだ!」ニコニコ

ラム「そ、そうなんだ…?(同じこと二回言った…)」

カロル「あったかいベッドで寝るのも、ポカポカなお日さまの下で遊ぶのも、おいしいごはん食べるのも、お風呂に入るのもみんなと一緒だから楽しいよ?」クスッ

カロル「友達と町を歩いてみたりするのもワクワクする?
お店でお買い物なんて夢みたい!どこにでも行けるんだもの!マルクとお散歩するのだって……」ペラペラ

ラム「……」

カロル「あとね!知らない人間でも同じ場所に住んでると仲良くなれるんだよ?
この前、こんにちはって挨拶したらね?こんにちはって言ってくれたの!?うれしいよね!」キャッキャッ

ラム「普通の事だけどね…」

カロル「うん!普通ってステキ!こんなに毎日が楽しいんだもの?」ニコッ

ラム「……」
419: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:13:39 ID:riAK.jgmGM
〜〜〜〜〜〜

町の住人1「この前、ホビットが声をかけてきたんだよ。一端にこんにちはって?
無視したら何されるか分かったもんじゃないから返しておいたけど怖いよねー」

町の住人2「あぁ、あのチビか…。たしかにアレは不気味だよな。いつもヘラヘラしててさ」

町の住人1「なんかでかい犬連れてるし脅されてるみたいで気分が悪いよ」

町の住人3「うちの子らにも無視しろって言っておいたがしつこく話しかけるみたいでよ?
この前なんか一緒に遊んだとかぬかして困ったもんだ?」

町の住人4「うちもだよ。あんなみなしごやホビットの連中と関わったら、どんな影響受けるか分かったもんじゃない」

町の住人5「町長にも相談してみたが商会の老害共が何やら贔屓してるみたいでなぁ…」

ベチャクチャ ベチャクチャ

ラム「……」スタスタ

町の住人3「ん?今、歩いてったの……」

町の住人4「げっ…聞こえたか?」

町の住人5「別にいいだろ」

ラム「……ふん」スタスタ
420: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:15:24 ID:lPDOndQsx.
〜〜〜〜〜〜

孤児1「びえーん!」ベーベー

母「あらあら、どうしたの?3人で遊んできたんでしょ?なんで泣いてるの?」アセアセ

孤児2「ひっ…ふぅ…」グシグシ

母「坊や。何があったの?」

カロル「…お砂場で遊んでたら知らない子たちが来て二人の作ってた山とお団子潰しちゃったの」

母「まぁ…!そんなことされたの!?」

カロル「うん…。二人に謝ってっておねがいしたんだけど…聞いてもらえなくて……」

母「何かされたの…!?」

カロル「…だいじょうぶだよ?二人は何もされてないから?」ニコッ

孤児1「カロルおにいちゃん…いっぱいぶたれてた…!」グスッ

孤児2「すなに…かおをバンってされて…みず、バシャッてかけられてた」グシッ

母「な、なんてひどい…!?だからこんなに汚れてたのね?」ハラハラ

カロル「へいき、へいき?ボク、すぐ治っちゃうからへっちゃらだもん?」ニコニコ

孤児1「…いたくない?」ウルウル

カロル「うん!だいじょうぶ!二人ともケガしなくてよかったね?」ニコニコ

母「な、なに言ってるの、もう…。はぁ…あとでミシングさんに相談しなくちゃ…」ガクッ

孤児1「ママー…」ダキッ

孤児2「うえーん…!」ダキッ

母「…大丈夫よー?あたしたちがいるわ?何も怖くないから?」ナデナデ

ラム「……」ペラッ

カロル「あ、ラムくん!なに読んでるの?」タッタッ

ラム「」パタンッ

カロル「?」キョトン

ラム「カロルくん…ちょっといい?」

カロル「うん…?いいよ?」
421: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:17:17 ID:lPDOndQsx.
ラム「…無理してない?」

カロル「? なんで?」

ラム「今日の事だけじゃなくて…いろいろ聞くから」

カロル「ぜんぜんへいきだよ!」ニコッ

ラム「…ならいいんだけどさ」

カロル「心配してくれてありがとう?」ニコニコ

ラム「…何かあったら頼りなよ?僕らじゃなくてもミシングさんとかなら解決してくれるだろうしさ?」

カロル「うん!わかった!」

ラム「とにかく…みんな力になるから?一人で抱え込んじゃダメだよ?」

カロル「はーい!」ピシッ

ラム「……」
422: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:18:58 ID:riAK.jgmGM
〜〜〜〜〜〜

ナラ「ねぇ、カロルしらない?」

ルーボイ「しらね!またマルク連れて散歩してんじゃねーの?」

ワンッワンッ!

ルーボイ「」ビクッ

ナラ「マルクは、にわにいるよ?」

ルーボイ「えー?チビたちはカロルの母ちゃんと買い物に行ったし…俺だって大聖堂で勉強しに行ってたから見てねーぞ?」

ナラ「ラムは?」

ラム「僕も図書館の手伝いしてたから知らないけど」ペラッ

ナラ「もうすぐ、よるになるよ?みんなもかえってくる、じかん…」

ラム「そうだね。カロルくんが門限破るなんて考えられないし、僕とマルクで探してくるよ」パタンッ

ルーボイ「じゃあ俺も!」

ラム「ルーボイは残りなよ。女の子一人で留守番させられないだろ?」

ルーボイ「」ドキッ

ナラ「え…?」

ルーボイ「そ、そっか!ナラ一人じゃカワイソーだもんな!あ、あはは!」ドキドキ

ナラ「わたしは…べつに…」

ラム「頑張りなよ?」ポンッ

ルーボイ「な、何がだし!?」アセアセ

ラム「じゃあ行ってくる」スタスタ

ナラ「きをつけてね?」

ラム「マルクの鼻なら、すぐ見つけられるだろうから心配要らないよ?」ガチャッ

バタンッ

ルーボイ「な、なぁ!ナラ!と、トランプしねぇ!?」ドキドキ

ナラ「おふろ、あらわなきゃ…カロル、だいじょうぶかなぁ」スタスタ

ルーボイ「」ガーン
423: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:22:10 ID:lPDOndQsx.
〜〜〜〜〜〜

カロル「きゃっ!?」グンッ

町人?「つっかっまっえたぁ〜…」ガシッ

カロル「え…?」キョトン

町人?「ブォホホホホ!?」ベリベリ

カロル「わぁっ!?」ギョギョッ

女装家「オーホッホッホ!!おバカちゃんねぇ!?まぁだ分かんないのぉ!?」ガッ

カロル「キャー!?きゃああああ!?」ジタバタ

女装家「あ、ちょっ!?人の手の中で暴れんじやないわよ!?」ガッ

カロル「ま、待っててね!すぐ治すから?」ペタペタ

女装家「ちょっ…だから…人の顔をベタベタ触るんじゃ……?」ムギュッ

フワッ

女装家「!? な、なに今の感覚……も、もしかして」ピトッ スリスリ

女装家「(や、火傷痕が消えてる……スゴッ!?)」パァァ

カロル「あ、あれ…!どうしよう?おじさまのお顔が治らないよ!?」アワアワ

女装家「ハァ?治って……」

カロル「ここがまだデコボコしてる…腫れちゃって痛そう…?」サスサス

女装家「そ、そこはエラなんですけどぉ〜…!?」ビキビキ

カロル「だ、だいじょうぶだよ!心配しないで?ボク、がんばるから!」グッ

女装家「何をじゃいゴラァッ!?」ガァーッ
424: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:23:34 ID:riAK.jgmGM
カロル「痛い…よね?ケガしてる人っておじさまだったんでしょ?」ハラハラ

女装家「?」

カロル「お顔が剥がれちゃって大変だね…。もうちょっと我慢してて?」ピトッ

女装家「ケガしてる人……あぁ、あんな出任せ、まだ信じてたの?」

カロル「え?だっておじさまが…」

女装家「あんなんアンタを連れてくる口実に決まってんでしょう!?
あとアタシの事はおじさまじゃなくてオネェ様とお呼び!?」

カロル「た、倒れてる人間は…?森で苦しんでたって…?」ビクビク

女装家「嘘に決まってんじゃない!?そんなのどこにもいないわよ、おバカ!?」ゲラゲラ

カロル「…ホントに?」

女装家「ぶっふ!!あんなジョーダン真に受けてたのぅ?」

カロル「はぁ…よかった…。イタズラだったんだ?」ホッ
425: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:24:45 ID:lPDOndQsx.
女装家「こんな森にまでホイホイ付いてきちゃって…アンタ自分がどんだけぇ〜の価値あるか分かってないワケェ〜!?」

カロル「……?」

女装家「ま、いいわ!これでアタシは晴れてオネェ様とランデブー……ハッピーエンドも近いわよぉん!!」ウキウキ

カロル「? よくわかんないけど、おめでとう?」ニコッ

女装家「ブォホホホホ!!ど〜もありがと!!」ゲラゲラ

カロル「じゃあボクは帰るね」ヒョイッ ストッ

女装家「ォホホホ………ハァ?」

カロル「また遊ぼうね!」ニコニコ

女装家「あ、遊ぶ…?」パチクリ

カロル「あ、でも…ああいうイタズラはやめてね?ホントに心配しちゃうから?」アセアセ

女装家「な、なに言って…」アセアセ

カロル「誰もケガしてなくてよかった…。夜になっちゃったから、みんな心配してるかも?」スタスタ

女装家「ちょ、ちょい待たんかい!?」

カロル「? ……あ、そっか」

女装家「そ、そうよ〜?アンタを……」

カロル「またね?ばいばーい!」フリフリ

女装家「」ポカーン

スタスタ スタスタ………

女装家「だから待ちなさいってのよ!?」ダッ
426: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:26:24 ID:riAK.jgmGM
女装家「なに普通に帰ろうとしちゃってるワケぇ?アタシをナメてんの!?」ピキピキ

カロル「……?」キョトン

女装家「なんにも分かってないのネェ〜?平和なおミソだこと?まぁそれならそれでいいわ…?」ゴキッゴキィッ

カロル「分かってないって…なに?」チンプンカンプン

女装家「アンタは黙ってアタシに付いてきてりゃいいのよぅ?そしたら痛い目に遭わなくて済むから……」ニヤリ

ガササッ バサッ

女装家「!?」

マルク「ウォンっ!!」バッ

女装家「犬……なによ、びっくりした」

カロル「マルク!」

マルク「クゥン!」スリスリ

カロル「探しに来てくれたの?」ナデナデ

マルク「あぅ〜ん」シッポフリフリ

ラム「カロルくん、こんなとこにいたの!?」タタタッ

カロル「あ、ラムくんも来てたんだ?」

ラム「森になんか入って何してたのさ?帰りが遅いから、みんな心配してるよ?」

カロル「ごめんなさい…。おじさまと遊んでたら、こんな時間になっちゃって?」シュン

女装家「(だから遊びじゃないってのよ)」
427: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:27:57 ID:lPDOndQsx.
ラム「」ジッ

女装家「(あぁん?…このガキ、なんか見覚えが……)」

ラム「…どちら様ですか?」ジトッ

女装家「(アッー!!こいつ……)」ハッ

ラム「こんな時間まで僕の友達を連れ出さないでもらえま……」

女装家「ドラッシャアァァイ!!!」ブンッ

ゴシャッ!

カロル「え!?」ビクッ

マルク「わんっ!わんっ!」フシューフシュー

ラム「」ピクッピクッ

女装家「アー…思い出したわぁん?スッキリした?」ガッ

カロル「きゅ、急にどうしたの?ラムくんはなにもしてないじゃない!?」バッ

女装家「邪魔」ペシッ

カロル「いっ…」ダァンッ

マルク「グルルルル……!」

カロル「ま、マルク!お母さまたちに教えてきて!?」アセアセ

マルク「……わんっ!」ダッ
428: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:29:25 ID:lPDOndQsx.
女装家「フンッ!フンッ!」ブンッブンッ

ラム「あっぐあっ!」バキッ メキィッ

カロル「や、やめてよ!もうぶたないで!ラムくん、死んじゃう!?」ガシッ

女装家「ハァ?こいつが悪いのよ?可愛いアタシにあんな事してくれちゃったんだから?」

カロル「ラムくんがおじさまにケガさせたの…?」オロオロ

女装家「そぉうよ?あの苦しみ…絶対に許せない!」ギロッ

カロル「っ…ご、ごめんなさい!ラムくんにも、ちゃんと謝ってもらうから許して!」ペコッ

女装家「ゆ・る・さ・な・い……許さない!」オモテナシ

カロル「……!じゃ、じゃあ…」

女装家「じゃあ?」

カロル「ボクが…代わりになる。おじさまの気持ちが落ち着くまで…好きにしていいよ?」ジッ

女装家「……」

カロル「だから、もうラムくんを傷付けるのはやめてよ…?おねがい…?」ウルウル

女装家「(な、なんて凶悪な上目遣い…潤んだ眼がいっそう加虐心を駆り立てるわネェん…。オネェ様とは違った魅力があるかも)」ムラムラ

カロル「」ブルブル

女装家「(アァン…!小刻みに震えちゃって…小動物みたいで超可愛い!
こういう子をメチャクチャになるまで痛め付けたら……新しい快感に目覚めちゃいそ!)」ゾクゾク
429: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:34:41 ID:riAK.jgmGM
女装家「でぇもぉ…お・あ・ず・け?」

カロル「お、おじさま…?」ビクビク

女装家「オネェ様の物に手ぇ出すなんてありえないし?」

カロル「ゆ、ゆるして…くれるの?」ビクビク

女装家「NO!COME ON!シャルウィンBOYS!?」パチンッ

ガサッ ガササッ ゾロゾロ ゾロゾロ

カロル「へ…?」

官吏3「シャルウィン様、このホビットが…?」ジロッ

女装家「そ!救い主よ?」

カロル「な、なに…なんなの…?」ブルブル

官吏3「よし、荷馬車に積み込め?」

西兵's「ははぁっ!!」ジリジリ

カロル「や、やだ…!」アトズサリ

西兵's「ヒヒヒ!」ズイッ

カロル「(やだよ…!もう…なくしたくない!)」ウルッ

カロル「(幸せなのに…すごく…スゴく幸せなのに…!お母さまも…喜んでたのに…!)」ウルウル

女装家「あっらぁ〜!逃げようっての?薄情なコだわぁ?」チョンッ

ラム「」ピクッピクッ

カロル「あっ…」ハッ

女装家「」ニヤニヤ

西兵's「」ニヤニヤ

カロル「……」ピタッ

女装家「どうしたの〜?逃げなくていいのぉ〜?」ニヤニヤ

カロル「(どうしよう…。ボクが逃げたらラムくんがひどいことされる…。それに…院のみんなにも……)」

カロル「(お母さま……)」ウルッ
430: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:40:23 ID:lPDOndQsx.
女装家「お望み通り遊んであげるわよぉ〜?ためしに町まで追いかけっこしてみるぅ?」ニヤニヤ

カロル「わかりました…。逃げないから…ラムくんには……」

「逃げて!!」

カロル「」ビクッ

女装家「ハァ…?」チラッ

ラム「僕は…へい…き、だから…君だけで逃げて!」ググッ

カロル「ラムくん…!」

ラム「はやく!町に…行って…憲兵に報せるんだ…!」ヨロッ

カロル「……」

ラム「なにやってるのさ!?早くしなよ…!?」

カロル「できないよ…」

ラム「はぁ…!?」イラッ

カロル「…ごめん」シュン

ラム「君はまたそうやって…!!」イライラ
431: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:44:52 ID:riAK.jgmGM
ラム「逃げろって!?」

カロル「と、ともだちが危ないのにボクだけ逃げるなんてやだもん…」

ラム「僕は大丈夫だって言ってるだろ?いいから……」

ドシャッ!

ラム「わぷっ!」ズリッ

カロル「っ…!」ビクッ

女装家「はい、そこまで〜」ズシッ

カロル「……!」

女装家「クーイズ!アタシの目的はなーんだ?」

カロル「い…癒しの力が欲しいんだよね?」

女装家「せいかぁ〜い!豪華景品は西の国にご招待よぉ〜?」パチパチ

カロル「ボク、おじさまに付いていくよ…?だからラムくんは帰してあげて?」

女装家「アンタ、おバカ?」

カロル「え?」

女装家「条件なんか出せる立場?ていうか嫌がっても無理やり連れてくわよ!ブォホホホホ!!」ゲラゲラ

官吏3「やれ?」

西兵's「」バババッ

カロル「やっ…やだっ!ラムくん…!ラムくん!!」ジタバタ

ラム「か、カロ…ル…くんを…はなせぇ!!」ズリッズリッ

ガッ グイッ ジタバタ アバレンナ! バキッ ドカッ

女装家「ついでにあのムカつく孤児院の連中にも置き手紙してあげましょっか…。ウフフ!悔しがるでしょうネェ〜…!」ムフフ


…………………
432:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2015/12/14(月) 22:47:22 ID:lPDOndQsx.
ラム「ごぉえっ…!えっふぅ!!」ゴボゴボ

ビチャビチャ

ラム「(また…だ)」

ラム「(また…守れなかった…!)」ジワァァ

ラム「(父さんと母さんがヘマトバザールの奴らに殺された時も…シープとバンパが人間を許そうとした時も……)」

ラム「(いつも僕が……みんなの足を引っ張ってた…!)」ポロッ ツツー

ラム「(やっと見つけたのに…僕たちが生きられる場所と…信じられる家族を……)」ポロポロ

ラム「ひっ…ひぐ…」ポロポロ

ズンッ!

ラム「あっ…ぐ…!?」ズブッ

ラム「うっあ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!」ブシュッ

女装家「メソメソしてたらハンサムが台無しよぉん?」ニヤニヤ

魔導師「まさか本気で腹に杭を刺し込むとは思わなかったよ…」

女装家「そんぐらいしないと再生して逃げ出すでしょ?帰ったら思いっきり遊んであげちゃうんだから〜?」ニヤニヤ

魔導師「…じゃ、行こうかね」ヒタヒタ

女装家「せいぜいそこで泣きわめいてたら〜?だぁれも助けに来ないから!?ブォホホホホ!!」ゲラゲラ

ラム「くっ…そぉぉぉおおお!!」ゴパァッ

オーホホホホホホ〜………
433: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:17:12 ID:M3wYd3wb5.
―――東の国(ホビッツ岬)―――

ザブンザブン ザブンザブン

船長「…到着しやしたぜ。この運河を越えちまったからにゃ、もう奴らの領域ですわ」

ザッザッザッ

ヒメ「ここがホビット族の領地なのか?」キョロキョロ

外交官「そ、そのようで…」ブルブル

宣教師「へー…涼やかで居心地の良さそうな浜辺ですね?
澄みきった川のせせらぎと陽気にそよぐ風がとても癒されます…」

船長「そんな甘いものではござんせんよ。ここはもはや奴らの国でやすからね」

ヒメ「国…?」

東の騎士「ご安心を…皆様の身は某ら精鋭守護隊でお守り致します」

東兵's「」ザザッ

宣教師「あのー…私達はホビット族に協力を願う為に来たんですよ?」

東の騎士「…穏便に済むのなら、それで良し。ですが念のため…」

宣教師「……」ムスッ

ヒメ「護衛だけじゃなくて案内の意味もあるんだ。そう邪険にするなよ?」

宣教師「……」

ヒメ「早速、入ってみるか。早くしないと団長達がやられてしまうからな」

東の騎士「では某が先頭を……お三方は兵らの中心に?」

船長「あっしはここで待機してやすんで、お気をつけて…」

東の騎士「うむ。皆様、こちらは徒歩での移動になり申すが…不調を感じられたら、その都度、お声かけくだされ」

ヒメ「分かった。よろしく頼む」

東の騎士「では参りましょう」

ザッザッザッ ザッザッザッ
434: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:18:16 ID:M3wYd3wb5.
―――湿地帯―――

ガサガサ バササッ

外交官「ぜぇ…はぁ…空気が湿って蒸し暑いですな」ヨボヨボ

ヒメ「悪いけど休んでられないぞ。僕達には時間が無いんだ」スタスタ

外交官「も、もちろんでございます…。しかし虫や鳥、小動物を多く見かける上、道幅も整地されてませんな…。本当にホビット族が住んでいるのやら?」キョロキョロ

東の騎士「もうとっくに気付いてるだろうさ。なんせ奴らは用心深く周到だ。常にどこかで我々を見張っている…」

宣教師「この森林の出口も近そうですね」

ヒメ「分かるのか?」

宣教師「…木を見れば分かりますよ。一本、一本、鋭利な物で幹を削った痕があります」

外交官「そ、それがなんだと言うんだ?獣の仕業じゃないのか?」

宣教師「あれは目印です。その証拠に…特定の木々にしか痕が付いてません」

東の騎士「やけにお詳しいのだな?」

宣教師「独自にホビット族と交流を深めてましてね。彼らに伝わる風習や生態について教えてもらいました」

ヒメ「…にしても見てるなら出てきてほしいよな。その方が手っ取り早く進むのに」

外交官「はたして、そう上手くいくでしょうか…?」ビクビク

ヒメ「上手くいくでしょうか、じゃなくて上手くいくよう持ってくんだよ。
外交に携わってるんなら、それくらい弁えて準備しろ」

外交官「は、はっ…!」

宣教師「厳しいですね?」

ヒメ「どこが?うちの役人は甘ったれが多いから僕が引っ張ってやんないと何もしないんだよ!」

宣教師「(立派になりましたね…。つい数年前までは重すぎる立場を嫌がって城下に逃げ出しては駄々を捏ねるワンパクぶりでしたが…成長って早いです)」クスッ
435: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:19:09 ID:M3wYd3wb5.
東の騎士「しかし…そろそろ着いてもよさそうな…」スタスタ

東の騎士「!?」ズブブ

ヒメ「……!?ど、どうした!?」

東兵's「隊長!?」ダッ

東の騎士「く、来るな!?」

ベチョッ ヌチャッ ズチュチュ

東兵's「うおおお!?あ、足が……」ズブブ

ヒメ「お、おい!?何が……」

宣教師「泥濘です!それもかなり深い!」

外交官「は!?え!?」アワアワ

宣教師「何か長い棒や蔓草を使って引き上げましょう!」ダッ

ヒメ「わ、分かった!?」ダッ

シュルッ バシュッ バササッ

外交官「あぁ…陛下、陛下ー!?」ギョギョッ

ヒメ「な、なんだ…これ?」ズルルッ

宣教師「く、草網…!?」ギチギチ

???「アッハッハッハッハッハ!」パチパチ

全員「」ビクッ
436: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:21:25 ID:PFgfnAqhNQ
???「ウケる!人間ってマヌケ!?」ケラケラ

ヒメ「だ、誰だ!?」ブラーン

???「誰?そんなの決まってるじゃんか?」ガサッ

ヒメ「あっ…!」

外交官「ほ、ホビット…!?」ゾワァッ

ホビット娘「そっ?お前らの大嫌いなホビットでーす!」ニィィッ

ヒメ「な、なんの真似だ、これは!?今すぐ外せ!?」ジタバタ

ホビット娘「なんの真似?こっちのセリフだよ!あんたら人間がウチらの領域に入ってどういうつもり!?」

宣教師「ご、誤解です!何も疚しいことなどありません!ただあなた方の力をお借りしたくて……」

ホビット娘「はぁ…?ウチらの力…?まぁた癒しの力がどうとか言い出すわけ?」

宣教師「違います!私達は決して危害を加えたりしません!どうか話だけでもさせてください!?」ブランブラン

ホビット娘「イーヤーでーすー」

宣教師「」カチンッ

ヒメ「(な、なんか腹立つ)」ムカッ
437: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:22:44 ID:PFgfnAqhNQ
ホビット娘「ん?でもよく見たらお姉さん、べっぴんさんだね?」マジマジ

宣教師「はい…?」ギチギチ

ホビット娘「わっ!おっぱいデカっ!?なに食ったら、そんなことになっちゃうの!?」ワシッ

宣教師「あっ…ちょ、ちょっ…なに…するんですか!」クネクネ

ホビット娘「す、すごい…人間って体だけじゃなくておっぱいも育つんだ…?」モミモミ

宣教師「…あ、あの!そんなことより…話を…んっ」ピクンッ

ホビット娘「ウチなんてペタンコなのに…むぅ!いーな!いーな!人間っていーなー!」モミモミ

宣教師「く、くすぐった…いですから…や、やめ…」ピクンッピクンッ

ヒメ「(ど、どうしよう……。見ちゃいけない筈なのに目が離せない…!)」ジーッ

東の騎士「くっ…くそ!抜けん!?このままでは沈んでしまうぞ…!?」グッグッ

外交官「(い、今のうちに陛下を…!)」ソローリ

ヒュンッ ドスッ

外交官「はっ!?」ビクッ

ホビット娘「あ、言っとくけどこそこそやっても無駄だから?
とっくに取り囲んでるし…風通しのいい身体になりたくなかったらおとなしくした方がいーよ?」

外交官「ぐぅ…!」ブルブル
438: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:24:39 ID:M3wYd3wb5.
ホビット娘「で、どーする?死ぬ?それともおとなしく帰る?」

ヒメ「だ、だから待てよ!僕たちは別に揉め事を起こしたい訳じゃないんだ!」アセアセ

ホビット娘「まぁだ言ってんの?めんどいなー!」ジトッ

宣教師「お、お願いですから…話を聞いてください…」ゼェゼェ

ホビット娘「やーだね!兵隊なんか連れちゃってさ?ウチらと戦う気マンマンじゃん?」

ヒメ「何度も言ってるだろ?誤解だって!?」

東の騎士「某らは他国の客人を案内してやっただけだ!そこもとらと戦う意思はない!?」ズズズッ

宣教師「私達を解放してください!絶対に暴れたりしませんから!?」

ホビット娘「ふーんだ?」プイッ

宣教師&ヒメ「……!」イラァッ

ホビット娘「え?なに、その目?射ってって?合図出せばいーの?」

宣教師&ヒメ「」ビクッ

ホビット娘「今晩のおかずは人間の串焼きかなぁ〜?お腹空いてきちゃった?」

宣教師「ち、違いますよ!敵意ではなく友好の眼差しを、ね!」ニッコリ

ヒメ「そ、そうそう!お近づきになれたらいいなと思ってさ!?」アセアセ

ホビット娘「……おっぱい」ボソッ

宣教師「はい?」キョトン

ホビット娘「おっぱい揺らしながら『私は牛小屋で小汚ないオヤジにお乳搾られながら育ったスケベなメス牛です』って自己紹介して?」

宣教師「……はぁ?」ピキッ

ホビット娘「やらないの?」

宣教師「あなたねぇ…いい加減にしないと怒りますよ…?」ゴゴゴゴゴ

ヒメ「宣教師!?落ち着け!?それくらい言ってやればいいだろ!?」アセアセ

宣教師「」ギロッ

ヒメ「」ビクッ

宣教師「キミまで私にあんな辱しめを強要するんですか?」ピキッピキッ

ヒメ「……し、しないです」ズーン
439: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:26:06 ID:M3wYd3wb5.
ホビット娘「言うの?言わないの?」

宣教師「言いませんよ!」

ホビット娘「なによ、ケチ!」プクー

宣教師「とりあえず網から下ろしなさい。その曲がった性根を叩き直したいので」ギロッ

ホビット娘「は?つ、強がっちゃってバカみたい?下ろす訳ないじゃん!」ビクッ

宣教師「今ならありがたいお説教12時間と左右の頬を35発ひっぱたくだけで許してあげましょう」

ホビット娘「そ、そんなのさせないから!」タジッ

「何をしておるかぁ!?」カッ

ザワッ

宣教師「こ、今度はなんですか?」チラッ

ヒメ「?」チラッ

ホビット娘「やばっ…!」クルッ

酋長「ルイ…!その人間共はなんだ…!?」ビキビキィィィ

ザワザワ ザワザワ

ホビット娘(ルイ)「あ、アハハ…ゴメン、お爺ちゃん…?」ダラダラ

酋長「…皆もだ!遊んでないで仕事せんか!?」

ヒィィィィイイイ!!!

ヒメ「(…あのコワモテの老ホビットが長か?)」
440: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:28:36 ID:PFgfnAqhNQ
酋長「たく…どこをほっつき歩いてるかと思えば?」ブツクサ

ルイ「……」シュン

宣教師「あの!すみません?あなたはこの集落を束ねてらっしゃる方ですか…?」

酋長「……チッ!人間め?」ジロッ

宣教師「え?」

酋長「このところ、しつこく絡んでくるのう?
城から使者を寄越すわ、勝手に領地を横切るわ…なんなんだ、うぬらは?」

宣教師「わ、私達は王国から来ました!あなた方に助けを……むぐっ!」グワシッ

酋長「王国だとぉ…!?」ググッ

宣教師「痛っ…!」ギュウウウ

酋長「殺されたくなきゃさっさと消えな!?」バッ

宣教師「うっ……!」ヒリヒリ

ヒメ「せめて話を聞いてくれ!僕はその王国の国王だ!?」

酋長「ガキの分際で何が国王だ!?話す事などないわ!?うぬぼれるな!?」

ヒメ「僕たちは変わったんだ!もうホビットと人間は争わなくても……」

酋長「知るか!?失せろ!?」ブンッ

ヒメ「あぐ!?」バキッ

ルイ「お、お爺ちゃん…!」オロオロ
441: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:30:45 ID:M3wYd3wb5.
酋長「ルイ!帰るぞ!」ガシッ

ルイ「っ……う、うん」グイッ

ヒメ「うぅ…頼むから…聞いてくれよ!?」ボタボタ

酋長「くどい!!四肢を引きちぎって狼共に喰わせるぞ!?」

ヒメ「このままじゃ…おまえたちも危ない…!西の国が侵攻してくるぞ…!?」

酋長「……?」

ヒメ「ブルードル陛下が西の刺客に暗殺された…!東国軍も壊滅してる…!残ってるのは王国軍だけなんだ…!」

酋長「…また戦争か。懲りん奴らめ?」フンッ

ヒメ「ぼ、僕だって好きでしてるんじゃない!仕方なかったんだ!」ムッ

酋長「うぬら人間はアピシナ様の犠牲から何も学んでおらんな…」

ヒメ「は?アピシナ…?」
442: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:31:09 ID:PFgfnAqhNQ
宣教師「アピシナ……伝説の大樹にまつわるおとぎ話の?」

酋長「ふん…とぼけおって?うぬら王国がアピシナ様を現世から抹消したのだろうが?」

宣教師「い、今では伝承を改めて真実のみを伝えています!教団もかつての物ではなくなりました!」

酋長「バカが…アピシナ様の名を聞いても覚えがないような反応じゃないか。真実もへったくれもないわい?」

ヒメ「そ、そういえば…ブルードル陛下とミリア王妃がアピシナの争いがどうとかって……」

酋長「」ピクッ

ヒメ「大陸全土を巻き込んだ…終わらない争いを凌ぐ歴史上、最大規模の戦争……」

宣教師「え…?な、なんですか?そんな話…聞いた事もないですが…?」

ヒメ「あぁ…僕も知らなかった。というか…そんな史実はどこにも残ってない」

酋長「うぬらが得意とする嘘で塗り替えられた書物に真実など一文字も綴られておるまいが?」

ヒメ&宣教師「……」

酋長「…いいか?これだけは教えてやる?」

ヒメ「……?」

酋長「ホビット族と人間が手を取り合うなど未来永劫ありえん?
どちらかが滅びる、その日まで…うぬらは我らの敵だ!」ケッ

シーン

ルイ「……」シュン
443: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:32:40 ID:M3wYd3wb5.
ヒメ「……そんなのダメだ」ボソッ

宣教師「同意見です…」ボソッ

酋長「!」ピクッ

ヒメ「後世に受け継ぐべきモノは憎しみじゃない!友愛だ!」カッ

宣教師「あなた方の抱える負の遺産を未来にまで背負わせていいのですか!?」

酋長「なにぃ…!?」

宣教師「いつまでも過去に縛られ、憎しみを蔓延させ続けては真の平穏など訪れません!次世代に希望を繋げようとは考えないのですか!?」

ヒメ「変わらなきゃいけないんだよ!今、変わらなきゃ…また何度でも戦争は起こる!?
おまえも…そこの孫娘も!そのまた曾孫も…産まれてくる筈だった命まで…何もかも奪われる時が来る!!」

酋長「うぬら人間が始めたんだろうがぁ…!?」ブチブチィッ

ヒメ「そうだ!だから…僕たちは変わる!!絶対に変わってみせる!!」

宣教師「それを私達に気付かせてくれたのはあなた方の仲間……ホビット族の少年です!!」

酋長「!?」

ルイ「……!」
444: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:33:57 ID:M3wYd3wb5.
ヒメ「そいつは女みたいにか弱くて…泣き虫で!おまけにドジでバカでアホだけど…大切な事をたくさん教えてくれた!!」

宣教師「彼は純粋な真心と優しさで私達を憎しみから解き放ってくれました!
どんなに虐げられても…裏切られても…利用されても…信じ抜く勇気を持って王国を変えてくれたんです!!」

酋長「だ…だからどうしたぁ!?我々には関係ないだろうがぁ!?」

ヒメ「あるんだよ!!この戦争は…そいつを巡って巻き起こってるんだ!?」

酋長「あぁ!?どういう意味だ!?」

宣教師「彼の持つ癒しの力が大樹に注がれた時、永遠の生命を宿す実が成る!!それを知った西の女帝が彼を狙ってるんです!!」

酋長「癒しの…力…?」ピタッ

ルイ「え?だって…アピシナ様はもう……」

ヒメ「アピシナじゃない!!カロルだ!!どういう訳か分からないけど、なぜかあいつは癒しの力を使えるんだよ!?」

宣教師「その力を持っていた為に以前も大きな争いが生まれたんです!!」

酋長「な、なんのこっちゃ分からん!いっぺんに言われても…!?」

ルイ「カロル……親愛…?」
445: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:34:32 ID:M3wYd3wb5.
ヒメ「時間がないんだよ!!もうその時が迫ってるんだ!!
カロルが誘拐されてから…1ヶ月近く経ってる!!」

宣教師「信じてください!!お願いします!!」

酋長「な…な……」タジッ

ルイ「お爺ちゃん!この人間たちウソついてるようには見えないよ!」ユサユサ

酋長「……!い、いかん!耳貸すとこだった!」ブルンブルン

ルイ「え!?」

酋長「こんな人間共の戯言なぞ信じられんわ!!
お前たち!こいつらを拘束して集落の籠に閉じ込めろ!?」

東のホビット's「」コクリ

ルイ「お爺ちゃん!?」ユサユサ

酋長「お前は黙ってろ!!」バッ

ルイ「そ、そんな…!」ウルッ

ヒメ「疑ってしまうのは分かる!!でも本当なんだよ!!」ギチギチ

宣教師「考えを放棄せず、話に向き合ってください!!私達は騙したりしませんから!!」ブランブラン

酋長「うぬらもだ!!黙っとれ!?さぁ連れていけ!?」

ガッガッ グイッ ドサッドサッ ズルズル
446: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 21:59:35 ID:IHQ0bs/URY
―――ホビッツの里(木編みの檻)―――

ヒメ「はぁ…ダメだったか」

東の騎士「某が付いていながら面目ない…」

外交官「や、奴ら…我らをどうする気でいるのだろうか?」ブルブル

ヒメ「さぁな?串焼きにでもするんじゃないか?」

外交官「ひ、ひぃぃぃぃ!!!」ガクブル

ヒメ「騒ぐな。冗談だ?」

外交官「し、しかしこのままでは城塞を守っている兵が倒されてしまいます!何か手を打たないと…!」

ヒメ「うーん…武具も奪われちゃったしな…。それにこの籠、見た目は柔そうに見えるけど、かなり頑丈に造られてる。素手で脱け出すのは難しそうだな?」

東の騎士「これだけの人数を乗せても揺らがぬとは大した技術だ…。
しかも宙に浮いてる以上、下手に暴れて転落しようものなら即死でしょうな」

外交官「くぅぅ…!し、下に群がってる連中は全部ホビットなのか…!?」

宣教師「それはそうでしょう。ホビットの里なのですから?皆さーん!ごきげんよう?」フリフリ

ザワザワ ザワザワ

ヒメ「よくこの状況でノンキに手なんか振れるな?連中も戸惑ってるじゃないか?」

宣教師「これを機会に親睦を深めたいですからね」ニコニコ

ヒメ「おまえもカロルもすごいよな?なんでいつも先行きを見送って大胆な行動に出れるんだか…?」

宣教師「危険を顧みずに自分を人質に取らせたキミに言われる筋合いはありませんよ!」

ヒメ「あぁ…懐かしいな。あの時はホント自分でも何してるのか分かんなかったよ」

外交官「思い出話に浸ってる場合ですか!?」
447: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:01:45 ID:9v4P6Xr0tU
〜〜〜夜〜〜〜

ヒメ「さむっ……」ブルッ

宣教師「……真っ暗ですね」

東の騎士「夜はあまり活動しないのですな。日が落ちてからめっきりと姿が見えなくなった」

外交官「我々はどうなるんだぁ…」ガクブル

ガラッ ガラガラ

ヒメ「」ビクッ

宣教師「? 降りて…る?」

東の騎士「何奴か!?」スクッ

外交官「ひぃぃ!!と、とうとう処刑されるのか…!?」ガクブル

ゴトンッ

ブチッ ビリビリィィッ ガコンッ

パカッ

ヒメ「あ、開いた……?」
448: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:04:01 ID:IHQ0bs/URY
宣教師「! キミは先ほどの……」

ルイ「よっ!」ニコッ

外交官「っ……?」ビクビク

ルイ「ほい!」ポイッ

ドサドサッ

宣教師「この袋は…?」

東の騎士「おぉ…某らの武具ではないか!?」シュルッ バサァァァ

東兵's「」ワラワラ

ヒメ「ルイ…だっけ?」

ルイ「さんを付けな!デコスケ!」

ヒメ「誰がデコスケだ!そんなことより、おまえ…自分が何をしてるか分かってるのか?」

宣教師「私達を助け出してくださるのですか…?」

ルイ「松明持って!」スッ ボォォ

ヒメ「な、なんなんだよ?」パシッ ボォォ

ルイ「こっち来なよ。面白いの見せたげるから」スタスタ

宣教師「どうします?」

ヒメ「…付いてくしかないだろ」

東の騎士「某らもお供致そう」スクッ

外交官「わ、私も参ります…」

ルイ「なにボサッとしてんのさ?早く来なっての!」クルッ
449: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:05:12 ID:IHQ0bs/URY
―――ホビッツの里(御神木)―――

ズォォォォン

ヒメ「なんだ、これ…?」

宣教師「ずいぶん精巧に造られてますが…」

東の騎士「見事だな…。我が国の最先端石膏技術を以てしても、ここまでの傑作は産まれぬだろう」

外交官「英霊を称える遺物か…?歴史的価値が高そうだ…!」

ルイ「すごいでしょー!ウチらの御先祖様が掘ったんだから?」エッヘン

宣教師「はぁ…なんとも言えない儚さというか…まるで木像その物に命が宿ったような神々しさを感じられますね」

東の騎士「石像では表現し得ぬ細かなシワ…太く絡む根の曲線…繊細な技巧が窺える…」

ルイ「まぁ当然だよね!樹齢5000年の御神木を掘って祀られたホビット族のお宝だもん!」

ヒメ「…そんな大事な物をなんで僕らに見せびらかすんだ?盗み出そうと狙うかもしれないぞ?」

ルイ「え!?どうやって!?」

宣教師「…しっかり地面に根を張ってますし、そもそも人が持ち運べる大きさでもないと思うのですが?」

ヒメ「いや、例えばの話だよ!不用意にこんな価値のある物を見せたりしていいのかって聞いてんの!?」

外交官「こ、これを持ち帰れば王国に一躍、芸術の風が吹くぞ…!他国からも見物人が訪れ、巨額の財が動く…」ブツブツ

ヒメ「ほら見ろ!こういう奴だっているんだぞ!?」ビッ

ルイ「あー」

宣教師「なるほど」

外交官「」ハッ
450: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:09:38 ID:9v4P6Xr0tU
ルイ「これね、アピシナ様を象ってるんだって?」

ヒメ「あぁ…昼間におまえの爺さんが言ってたやつか」

ルイ「そっ!」

宣教師「アピシナ様とは何者なんですか?
王国に伝わる限りでは伝説の大樹を癒しの力で育て上げたホビットと聞いてますが?」

ルイ「まぁそうなんだけど…何から話したらいいんだろ。
とりあえず一言でまとめるとアピシナ様は"ホビットを世界から切り離した"お方なんだよね」

宣教師「世界から切り離した…?どういう事ですか?」

ルイ「昔ね、300年も前くらいにアピシナ様はホビット族の中に現れたんだって」

ヒメ「現れた…?」

ルイ「うん。どこから来たのかも分からない。何から産まれたのかも分からない…だけどホビット族の中にいたの」

東の騎士「ホビットではないのか?」

ルイ「だからホビットだってば?」

東の騎士「???」チンプンカンプン

ルイ「アピシナ様を語った当時の仲間は口々にこう言うの。"アピシナはおかしい"って」

ヒメ「おかしい?現代まで祀られる程の奴がか?」

ルイ「アピシナ様は愛に溢れすぎていたの。同族はもちろん人間だって分け隔てなく接するし…。
動物なんかの生き物はもちろん目に見えないものにまで慈しむように愛を囁いてたんだって?」

宣教師「素晴らしい…!聖者さながらの徳を備えたお方なのですね…!」

ヒメ「いや、行き過ぎてるだろ…。どう考えても…?」

ルイ「アピシナ様はいつだって世界の素晴らしさと一生のときめきを諭そうとするんだけど…誰にも理解してもらえなかった。
癒しの力でたくさんの命を救って、暖かい心で依り場のない者たちの嘆きを慰めても…それでもみんなアピシナ様を不気味がって遠ざけたの」

宣教師「……」

ルイ「…自分は受け入れてもらえないと知ったアピシナ様は癒しの力を一つの種粒に注いで大樹を実らせた。
自分がいなくなっても誰も傷付き苦しむ事のないように…すべての命を争いから解き放ってあげられるようにって願いを込めて」

ルイ「けど…その大樹が原因で争いは大きくなって…世界は殺伐とした混沌の闇に迷いこんでしまった」

宣教師「…永遠の命を奪い合って、ですか?」

ルイ「……そっ。それで絶望したアピシナ様は自殺しちゃったってわけ」
451: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:14:34 ID:9v4P6Xr0tU
ヒメ「要するに昔も今もやってる事は同じって訳か。おまえの爺さんが頑なに耳を貸そうとしないのも頷けるな?」

宣教師「かといって、このまま見過ごす道理はありません」

東の騎士「うむ。王妃様をお守りする為にもなんとしても危機的状況を打破せねばならぬ」

ルイ「……」

ヒメ「それで?おまえはどうしたいんだ?」

ルイ「…もう少しだけウチの話、聞いてくれる?」

宣教師「えぇ、構いませんよ?ぜひ聞かせてください?」ニコッ

ルイ「……」ジッ

宣教師「?」

ルイ「なんか…お姉さんの笑顔、すごくキレイ」

宣教師「え?そ、そうでしょうか?」ポッ

ルイ「うん…笑い方に含みがないもん。素敵だなぁ」

宣教師「そ、それほどでも…?」テレテレ

ルイ「この里にはね、嘘の笑顔がいっぱい?」

宣教師「と言いますと…何か不満が?」

ルイ「ううん。楽しいよ?居心地もいーし…何も困らないから」

宣教師「ではなぜ…?」

ルイ「お姉さん、ホビットと仲良しだって言ってたよね?」

宣教師「はい。仲良しですよ?」ニコニコ

ルイ「じゃあホビットが一番、求めてる物がなにか分かる?」

ヒメ「一番、求めてる物…?」

東の騎士「人間への復讐か?」

外交官「貨幣制を取り入れてないとするならば…食料を確保出来る土地や水源?」

ルイ「……正解は」

宣教師「自由、ですかね」

ルイ「…あたり!」
452: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:18:55 ID:IHQ0bs/URY
ルイ「自由に歩き回れて平等に生きられる。そんな夢みたいな話が現実になったら素敵じゃない?」

ヒメ「……そうだな」

宣教師「賛同します」ウンウン

ルイ「ウチのパパとママはさ、外の世界に出たことがあるんだ?」

ヒメ「外って言われても…範囲が広すぎて、なんかあんまりピンと来ないよな?」ヒソヒソ

宣教師「野暮を言うのはおよしなさい?」ヒソヒソ

ルイ「外の景色をいつかウチにも見せてくれるって約束してたんだけど…パパもママも帰ってこなかった」

宣教師「……」

ルイ「後で、ここに流れてきたホビットに聞いたらね。たぶん人間に捕まったんだって教えてもらったの」

ヒメ「……」

ルイ「ヘマ…バザーだっけ?なんかそういうウチらを捕獲して回ってる組織とか、ホビットだからって見境なく殺す人間とか…とんちんかんな噂を広めてる宗教があるから…きっと帰ってこないよって」

宣教師「」ズキンッ

ルイ「……まぁいいけどさ。20年近く経ってるし」

東の騎士「!? お主、子供ではないのか!?」

ルイ「子供?もう28だよ?」

東の騎士「ジーザス……」oh....

ヒメ「(どうりで見た目の割りに大人びた言葉を使うと思った…?)」
453: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:21:08 ID:9v4P6Xr0tU
ルイ「話、戻すけどさ。ウチはパパとママが見たかった景色ってのを見てみたいんだよね」

ルイ「火を噴く山、黄金の湖、雪の降り積もる谷、嵐の海、そして……人間が作る未知の文明!」

ルイ「好奇心をくすぐるのがありすぎて、どこから目指していいのか分からない!けどウチは知りたいの!」ウキウキ

ルイ「たくさんの感動が世界には溢れてるってパパが教えてくれたから!」

宣教師「ふふ…そうですね。この世界は不思議がいっぱいです」ニコッ

ヒメ「期待を越えるかは別だが見ても損はないかもな?」ニコッ

ルイ「じゃ、よろしく!」スッ

宣教師「こちらこそ?」パシッ

ルイ「あー楽しみ!」キャッキャッ

ヒメ「言っとくけど、その前に大事な戦いが控えてるんだからな?」

ルイ「まっかせなさい!ウチらは狩猟民俗だから弓と槍の使い方ならバッチリだよ!」

東の騎士「おぉ!それは頼もしい!」

ルイ「ふふん!」エッヘン

外交官「(は、はたしてこんなチビ共を、どこまで信用していいものやら…)」ハラハラ
454: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:22:29 ID:9v4P6Xr0tU
ルイ「アハハ!仲間にも声かけとくよ!自由を求めてるのはウチだけじゃないもんね!」

宣教師「ありがとうございます!」ペコッ

ヒメ「けど、そう簡単に説得出来るのか?」

ルイ「え?むりむり。だからあんた達に協力してほしいの!」

ヒメ「ふーん…どうすればいい?」

ルイ「明日、お爺ちゃんをまた説得してよ!」

ヒメ「あの頑固な爺さんをか?それこそ無理だろ?」

ルイ「だいじょーぶだって?その間、ウチがみんなに話して回るからさ。お爺ちゃんも怖そうに見えて、案外優しいところあるんだよ?」

ヒメ「不安だなぁ…」

宣教師「まず聞いてもらえるかどうかですよね…」

ルイ「…お爺ちゃんが一番、怒ってるのはパパとママを人間に奪われたことなの。アピシナ様の話を引き合いに出してたけど…」

ヒメ「ていうか…そのアピシナとかいうのは結局、おまえらにとってなんなんだ?」

ルイ「んー……呪縛、かな」

ヒメ「…そんな怨念めいたものなのか?」

ルイ「アピシナ様は豊かな愛で世界を変えようとして失敗した…。
けれど、それがあったからホビット族は争いから離れて静かに暮らす決意が出来た…」

ルイ「でもウチらの世代になってみると…狭い場所に押しやられてるみたいで窮屈なんだよね」

宣教師「……」

ルイ「だからウチはアピシナ様の呪縛から抜け出したいんだ?もっとたくさんの世界をみられる内に?」

ルイ「ヨボヨボのお婆ちゃんになっちゃったら、どこにも行けないじゃん?」クスッ

ヒメ「なるほどな…」

宣教師「私達にお任せください!必ず酋長さんを説得してみせます!」

ルイ「ん!頼むよ!」グッ

「ずいぶんと懐いたものだな?」ザッ

ルイ「」ビクッ
455: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:25:04 ID:9v4P6Xr0tU
ボッ ボッ ボッ ボッ ボッ

宣教師「周囲の松明が一斉に…!?」

ヒメ「囲まれてるぞ…!?」

東の騎士「我々の背後にお隠れください!!」スラッ

外交官「」アワアワ

酋長「やりかねんとは思ったが…お前という奴は本当に?」ヤレヤレ

ルイ「っ…!」

酋長「人間共よ。下手な抵抗はよせ?一族の中でも特に優れた弓の使い手で囲んどる?剣では勝負にならんぞ?」

東の騎士「ちぃっ…!」

ヒメ「騎士殿。ここは素直に従おう」

東の騎士「よろしいのか…?」

ヒメ「あぁ、四方八方、民家の屋根や高台からも狙われてる。どう足掻いたって矢の餌食になるだけだ」

東の騎士「承知した…。剣を鞘にしまえ!!」チャキンッ

東兵's「」チャキンッ

酋長「さすがに一国の王とあっては肝の据わりようも違うな?迷わず武器をしまえるとは?」

ヒメ「……」

酋長「ルイを盾にすれば或いは我らの動きを鈍らせたかもしれんものを…」

ルイ「え…?」

ヒメ「…そうしたら、もうおまえ達と信頼を築けなくなるだろ」

酋長「まぁだほざきよるか…」
456: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:27:10 ID:9v4P6Xr0tU
ヒメ「で、どうするんだ?僕らを殺すのか?」

外交官「な、な、何を言っておられます!?い、命ばかりは…!?」

酋長「はてさて…どうしてくれようか?」ニィィッ

宣教師「お待ちください!どうか今一度、こちらの話に耳を傾け……」

ルイ「」バッ

宣教師「えっ」

ヒメ「ルイ…?」

東の騎士「……!?」

外交官「ま、まさか…私供を庇って…!?」

ルイ「お願い!この人間たちに手を出さないで!?」

酋長「……」
457: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:29:34 ID:9v4P6Xr0tU
酋長「ルイ!!」

ルイ「」ビクッ

酋長「同族に立ちはだかり、人間を庇う気か?」ジロッ

ルイ「」プルプル

ヒメ「お、おい…やめておけよ?」ポンッ

宣教師「そうですよ…。無理をなさってはいけません?」

ルイ「そんなんじゃ…ないから」プルプル

ヒメ&宣教師「?」

ルイ「いい加減にしてよ!お爺ちゃん!!」

酋長「……?」

ルイ「もう…いいじゃん!!外に出たって!?この人間たちがホントにウソついてると思う!?」

ザワッ

ルイ「アピシナ様、アピシナ様ってさぁ!アピシナ様を言い訳にして逃げてるだけでしょ!?」

ルイ「ウチも里のみんなも本当は外の世界を知りたがってるんだから!?
なのにお爺ちゃんたちの世代が頑固だから……だからパパもママも勝手に出てったんじゃん!?」

酋長「……」

ルイ「…ウチは信じてる。パパもママも死んでなんかない!どこかで絶対に生きてる筈だよ!」

酋長「探しに行くとでも言うのか?」

ルイ「」コクッ

宣教師「ルイさん…」

ヒメ「(単なる好奇心で協力するなんて妙だと思ったけど、そういうことか…)」
458: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:32:00 ID:9v4P6Xr0tU
酋長「おい、小僧!」

ヒメ「なんだよ…?」

酋長「アピシナ様の話を聞いても引き下がろうとは思わんのか?」

ヒメ「…そのつもりだ」

酋長「癒しの力を持った同族が出現した。それが事実だとするならば…うぬらもまた力を狙う人間の一味ではないのか!」

ヒメ「だとしたら?」

酋長「あぁん…?」

ヒメ「たとえそうだとして…阻止しなかったら結局、癒しの力は王国か西の国に渡り、人間の手に落ちるぞ?」

酋長「ぬ、ぐぐ…!」

ヒメ「おまえらが危惧するアピシナとやらの過ちは繰り返される。それでもいいのか!」

酋長「…我らが参戦しなければ癒しの力を悪用せんとする訳か」

宣教師「むっ…誓って悪用なんかしませんよ!」

ルイ「そんなのなんだっていいから!もう難しい話はいーよ!」

ヒメ「なんだっていいって、そっちにしてみれば重要だと思うんだけどな…?」

ルイ「みんなだってそうだよね!?外に行ってみたいでしょ!?」

東のホビット's「……」マゴマゴ

ルイ「ほらね!そうなんだよ!」

酋長「チッ…」

ルイ「アピシナ様が本当に望んでたのは世界の繋がりじゃんか!?」

ルイ「今のウチらがやってる事ってアピシナ様の望んだ形なの!?違うじゃん!!
外と向き合いもしないで溝を深めて…!人間のせいだって恨むけど結局、ウチらがそうしてるんじゃん!!」

ルイ「ここに移ってくる仲間はこの里を"最後の楽園"なんて呼ぶけど…ウチからしてみたらホビット族を閉じ込める檻みたいにしか思えないよ!?」

ルイ「この広い大陸の中で…小さな山一つで一生を過ごせなんて残酷すぎるじゃんか!!」

酋長「ルイ…お前…!」

東のホビット1「私もだ」ズイッ

酋長「!?」
459: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:35:04 ID:IHQ0bs/URY
東のホビット1「酋長の息子夫婦とは旧知の仲だった…。
よくこっそりと里を抜け出しては変装して一緒に外界を散策したものだ」

酋長「い、いつの間にそんな…!?」

東のホビット1「あの二人の血を継ぐルイちゃんなら…止めどない好奇心に揺らぐのも無理はない」

東のホビット2「だけどなぁ…。人間って生き物は融通が利かないんだ?
何かにつけて自分たちが絶対に正しいと思い込んでる?」

東のホビット3「俺も同感。移住してくるまでは、ずっと人間を避けて生きなきゃならなかったから大変だった」

東のホビット4「…そうかな。僕は見てみたい。ルイさんから色々聞いて…いつか外を冒険しようかなって考えてた」

東のホビット5「俺も!今時、故郷に永住なんて流行んないよ?男なら冒険しなきゃな!」

東のホビット6「にしたって協力したら人間と戦うんだろ?人間に付き合って血を流す必要があるか?」

東のホビット7「そうだよ。外の世界を見るだけなら別に方法はいくらでもある」

東のホビット8「いや、話の争点はそこだけじゃない。癒しの力を悪用される可能性があるのも…」

東のホビット9「なんだかややこしいわね…。あたしは今まで通りでいいわよ」

東のホビット10「だいたい癒しの力なんて本当にあるの?アピシナ様だって実在したかも分からないんだぞ?」

東のホビット11「実在するとしたら人間に力を渡すのは危険なんじゃないか?」

東のホビット12「むしろ俺達が癒しの力を手に入れたら…永遠の命をもらえるかも」

東のホビット13「そりゃ夢みたいな話だなぁ!」

ザワザワ ザワザワ

酋長「くっ…!?」
460: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:38:57 ID:9v4P6Xr0tU
ワイワイガヤガヤ

ヒメ「なんだかんだで皆、感じるところはあったみたいだな」

宣教師「やはり大勢の中で話をすれば、それぞれの意見が出ますね」

外交官「に、人間に協力するか否か、もしくは外の世界への憧れか。
はたまた癒しの力をどうするべきか…ごちゃごちゃですな…!」

ルイ「ねぇ!あんた達からもなんとか言ってよ!ラチがあかないじゃん!」

ヒメ「こんな状態で僕らが説明しても堂々巡りは目に見えてる…」

宣教師「…となると今、この場において最も重い発言力を持っている方に決断していただくしかありませんね」ジッ

酋長「むぅ……!」ギリッ

ヒメ「ほぼ全員の意見が出尽くしたけど…おまえはどう考えてるんだ?」

酋長「……!」

宣教師「あなたの決定に懸かってますよ」

酋長「急にやってきて…こんな難題をぶつけてきおって!」ギリギリ

ヒメ「悪いけど僕らも時間がないんだ。なるべく早めに頼む」

ルイ「お爺ちゃん…!」ジーッ

酋長「〜〜〜!!」ワナワナ
461: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:40:28 ID:IHQ0bs/URY
酋長「ひ…一晩、考えさせろ!」

ヒメ「分かった。じっくり考えて答えを出してくれ」

酋長「チッ…いちいち指図するな!うぬらには今一度、檻に入ってもらうぞ?」

ヒメ「あぁ、立場は弁えてるから安心しろ。僕らの要求は西の国と戦う協力だけだ。そっちの条件は、よほど無茶でもない限り呑ませてもらう」

酋長「…その言葉、忘れるなよ?」

ヒメ「……」

酋長「皆の者!今夜のところはひとまず解散だ!明日、答えを決める!」

バラバラ バラバラ

ルイ「お爺ちゃん!ウチも一緒に考えるよ!」

酋長「バカモン!!勝手に人間共を出した罰としてお前も檻に入っとれ!?」

ルイ「え〜!そんなぁ〜!?」ガクッ

宣教師「大事なお孫さんを人間と同じ檻に入れていいのですか?」

酋長「ふん…何かしてみろ?うぬらの寿命を早めたければな?」

宣教師「多少は信用いただけたと捉えておきます?」ニコッ

酋長「ほざけ!くだらん!」スタスタ

ルイ「お爺ちゃんったら素直じゃないんだから…」

宣教師「しかたありませんよ。それほど私達とキミ達の因縁は深いですからね」

ルイ「昔のこと根に持ってたら、いつまで経ってもおんなじじゃん!」ムスッ

ヒメ「ふあぁ……うーん、僕らも戻ろう。眠くてしょうがないし」ゴシゴシ

外交官「はぁぁ…ドッと疲れましたな」スタスタ

東の騎士「どうなるものやら…無駄足で済まなければいいが」スタスタ

宣教師「そうならないよう、せいぜい神に祈りましょうか…」スタスタ
462: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:47:45 ID:cyjwnRCe9I
〜〜〜朝〜〜〜

ヒメ「んぅー…久しぶりにゆっくり寝れた!」ノビッ

宣教師「少し寒かったですけど毛布を借りられて助かりましたね?」

ルイ「そりゃそうだよ。ウチもいるんだから?」

外交官「一睡も出来なかった…」ガタガタ

東の騎士「王国の御仁らは肝が据わっておられますな…」

ガララッ ガラガラ

ヒメ「おっ!降りたな?」

ワイワイガヤガヤ

宣教師「おや?いつの間にやら里の皆さんが集まっておられますね?」

ルイ「お爺ちゃんが呼んだみたい」
463: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:48:20 ID:cyjwnRCe9I
ゴトンッ パカッ

酋長「…昨夜は眠れたか?」

宣教師「おかげさまで」

ヒメ「ぐっすりと」

酋長「うぬらにゃ聞いとらん!!」

ルイ「いいから早く教えてよ!どうするの!?」

酋長「反省しとらんようだなぁ…?」ビキッビキッ

ルイ「っ……ご、ごめんちゃい!」ビクビク

酋長「たく…!それでは決定を下そう。これは里の皆の意見を踏まえ、長老たちと話し合って出した結果だ!異存は認めぬぞ!?」

ヒメ&宣教師「」ピクッ
464: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:48:57 ID:cyjwnRCe9I
酋長「我々ホビッツの里の一族は……アピシナ様の惨劇を繰り返さぬ為にも彼らの争いに参戦する!!」

ザワッ

酋長「女、子供は里に残り、土地を美しく保て!!男衆はすぐさま支度しろ!?」

ザワザワ ザワザワ

ヒメ「よし…!」グッ

ルイ「やった!」パァァ

酋長「うぬらは集会所に案内してやろう。食事を用意しておいた」

ヒメ「ほんとか!?ありがたい!!」パァァ

ルイ「お腹空いたっ!」パァァ

宣教師「……」

東の騎士「どうされた?必死の説得が実を結んだというのに浮かない様子だが?」

宣教師「仕方がなかったとはいえ、無関係の彼らを巻き添えにしてしまったようで……」

外交官「今さら何を言う!私供の反対を押しきって陛下を焚き付けたのは貴殿ではないか!?」

宣教師「分かってますよ。私の責任です。しかしながら…複雑ではありますね」

ルイ「なーにへこたれてんのさ!?」バンッ

宣教師「いっ!?」ビクンッ

ルイ「そんなのより、ウチらにでっかいお礼する事でも考えたら?期待してるからね!」ニカッ

宣教師「……!」

ヒメ「そういうことだな?」ニヤリ

宣教師「……ふふ。確かにその通りですね」ニコッ
465: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:50:02 ID:6iJ4MFJfgg
―――里の集会所―――

料理「」ズラァァァァァ

宣教師「んぅ…ふむふむ。美味しいですね!」モグモグ

東の騎士「うむ。この山羊肉のローストなど臭みがなく絶品だな!」ガツガツ

外交官「(ほう…ジンジャースープか。なかなかイケるな。ホビットにしては達者な料理を出すものだ)」ズズッ

宣教師「カリカリに焼けたパンに濃厚なバタークリームを塗ってレタスを敷き、薄切りのロースト肉を乗せて重ねると…。
ふふふ!はたしてこれ以上の贅沢があるでしょうか?」ポワーン

ヒメ「んむ…麦に肉に山菜…食材に偏りがないんだな?」モグモグ

ルイ「へへー!里全体が農耕地だからね!家畜も育ててるし狩り場も豊富だから食うには困らないよ!」

ヒメ「ふーん。来る途中、水車も見かけたっけか。意外とホビットの生活も発達してるんだな」

ルイ「意外だなんて失礼な!」

ヒメ「でも…この食器はどうなんだ?」ヒョイッ

ルイ「どうって?」

ヒメ「料理を一品、一品、細い二本の棒切れで挟んで口に運ぶなんてやりづらくないのか?」

ルイ「え!?人間って、お箸使わないの!?ウチらは普通に昔からコレだけど!?」

宣教師「私も最初は驚きましたが慣れてみると案外、こちらの方も馴染みますよ?」

ルイ「あぁお姉さん!持ち方違うよ!こう!」チャッ

宣教師「へ?あ、すみません!こうでしょうか?」チャッ

ルイ「ちがうちがう!こうだってば!あとお椀ちゃんと持って!行儀悪すぎ!」チャッ

宣教師「は、はい…(奥が深すぎる…)」ズーン

ヒメ「(銀製食器と違って使いにくいな…。肉もうまく刺さらないし、こんな棒切れで、どうやってスープを口に運ぶんだ?)」オロオロ

酋長「慣れぬなら手掴みで食えばいい。人間の作法など知らん…」モグモグ

ヒメ「ははは…まさかこんな豪華にもてなしてくれるとは思いもしなかったよ。恩に着る?」

酋長「ふん。我々は人間を迎合する気はない。今回は目的が一致しただけだ」

ヒメ「あぁ、今はそれでいいさ」ニコッ

酋長「チッ!」
466: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:52:04 ID:6iJ4MFJfgg
ルイ「ふー食った食った」ゲプッ

酋長「…空きっ腹も収まったところで本題に移るが」

ヒメ「」コクッ

宣教師「……」

酋長「ここからの手筈を話し合うが…まずはうぬらの考えを聞かせてみろ?」

ヒメ「戦力を把握して分散し、二手に別れようと思ってる」

東の騎士「二手に…?」

宣教師「団長さん達を助けに行くのでは…?」

ヒメ「もちろんそうだけどもう一つ重要な場所があるだろ?」

酋長「アピシナの大樹か」

ヒメ「そうだ。おそらく敵の狙いは王国を侵略し、大樹への行き来を可能にする事…けどファルージャの性格上、そこまで待つ気はないだろう」

宣教師「相手側はどうやって王国に入り込むのですか?」

ヒメ「団長達に守らせてる防衛拠点に全戦力を集中させてしまったから入ろうと思えば、どこからでも回り込める」

外交官「し、しかしですぞ!まだ西の本国にフィクサー総指揮の率いる軍が…!」

ヒメ「あぁ、奴らはフィクサーと交戦しているから動員できる兵力は限られてる」
467: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:52:34 ID:6iJ4MFJfgg
ヒメ「けど少数の配下を引き連れて抜け出す程度の余裕はある筈だ」

ルイ「ヤバいね、それ!もたもたしてたら永遠の命が悪い奴に持ってかれちゃうじゃん?」

酋長「…里から出せる戦力はたかたが10万程度だぞ?」

外交官「じゅ、10万!?」

東の騎士「いつの間にそこまで力を付けていたのだ…!?」

ヒメ「なら…1万の兵力を大樹に配置しよう」

酋長「敵の兵力の推定は…?」

ヒメ「多くて5000だろうな…」

外交官「5000…たったの?」

ヒメ「あぁ、敵はこっちが出せる限りの兵を防衛拠点に注いだと考えてるからな…。
ホビット族の援軍は視野に含まれていない筈だ。となると…目立つ上に行軍を遅らせる大軍勢は不要だろう」

ヒメ「そしてことごとく勝鬨を上げてるフィクサーを相手取る為にも本土には戦力を残しておくと見る」

東の騎士「なるほど…ではファルージャを止める事は決して不可能ではないと?」

ヒメ「むしろその方が好都合だ。いくら戦況が劣っていてもファルージャさえ捕らえれば、この戦争は決着する」

ルイ「ファルージャって?」ヒソヒソ

宣教師「永遠の命を欲する西の女帝です」

ルイ「へー…じゃあそいつをどうにかすればいいって訳ね!」

外交官「…しかし絶対的に有利な状況下においてファルージャはそこまで事を急くでしょうか?」

ヒメ「さぁな。けど万が一を考えると向かわせる必要はあるだろ」

酋長「……」
468: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:54:28 ID:cyjwnRCe9I
酋長「まぁよい。采配は任せよう。それよりも条件についてだが……」

宣教師「え…?」

ルイ「条件…?」

外交官「どういう事だ!無償で手を貸してくれるのではなかったのか!」

酋長「そんなバカな話があるか?きっちり見返りは求めさせてもらうぞ?」

外交官「くっ…!」

ヒメ「当然だ。なんでも言ってくれ」

酋長「ではそちらの領地を一部、頂こうか。小川の流れる水源地が望ましいな」

外交官「なっ…」

ヒメ「分かった。全てが終わったら、おまえたちに明け渡すと約束しよう」

ルイ「やたっ!ちょい手狭だったし渡りに船ってやつね!」

宣教師「いいのですか?そこに住まう人々に断りもなく…」

ヒメ「…穏便に済むよう取り計らってみるさ。双方が納得のいく形でな」
469: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:54:53 ID:6iJ4MFJfgg
酋長「それからもう1つ、東の国に我らの独立を許してもらいたい」

東の騎士「……!建国すると言うのか?」

酋長「そうだ。我らはホビット族の名の下に国家を立ち上げ、各国から同族に限定した移民を募ろうと考えている」

外交官「(これを機に勢力を強化する気か…!なんと小賢しい!)」

東の騎士「某の一存ではなんとも…」

酋長「駄目だ。今ここで返答しろ。これは絶対条件だ」

東の騎士「むむ…!」

酋長「無論、東の国からも一部、領地を譲り受ける。運河を越えた平原一帯が望ましい」

東の騎士「ば、バカな!それではあまりにも分が悪すぎる!」

酋長「知ったことか。別に我らが助力してやる筋合いもないんだぞ?」

東の騎士「ぐぅ…くく!」ギリッ

ヒメ「せめて代表を通して話し合わないか?一介の兵である騎士殿には荷が重すぎる?」

酋長「二度も言わすな。今ここで決めろ」

ルイ「ね、ねぇ?あんまり困らせない方が……」

酋長「お前は黙っていろ」

ルイ「」シュン

ヒメ「(決められる訳がない…。独断を決行するには騎士殿では政務からかけ離れ過ぎてる…!)」
470: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:55:52 ID:cyjwnRCe9I
東の騎士「そ、某では返答出来ぬ…!なんとか説得を試みる故…力を貸してはもらえぬか!」ワナワナ

酋長「ならば白紙に戻すまでだ」

東の騎士「き、きき、キサマぁぁ…!」ビキッ

ヒメ「僕からも頼む!時間をくれ!王国側はそちらの条件を呑むと確約するから!」

酋長「…ほう?その言葉に嘘はなかろうな?」ギロッ

ヒメ「……!」ゴクリ

酋長「しからば最後の条件だ。癒しの力を持つというホビット……」

ヒメ「!?」

宣教師「……!」

酋長「我らがもらい受ける」

ルイ「お爺ちゃん…!?」

ヒメ「な、なんだと…?」

酋長「あの力を人間の手元になど置いておけん」

宣教師「カロルくんをどうするんですか…!」

酋長「どうもせんよ。我らの里に移住してもらうだけだ」

ヒメ「……」

酋長「了承してもらえるな?」

ヒメ「それは僕が決めていい事じゃない」

酋長「なにぃ?」ギロッ

ヒメ「あいつ自身がそうしたいならそうすればいい。僕はそこに口を出すつもりもない」

酋長「本人の意思など関係あるか!うぬらがおとなしく引き渡せばいい話だ!」

ヒメ「あいつの自由を奪うような真似はしたくない」

酋長「あぁん……!?」ギリギリ
471: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 18:02:05 ID:6iJ4MFJfgg
酋長「しのごの言うな!?我らの助力なくしてうぬらに生き残る術はなかろうが!?」ダンッ

ヒメ「…親友だからさ」

酋長「はぁ…!?」

ヒメ「僕はあいつを幸せにしてやりたいと思ってる。だからあいつの邪魔はしない」

酋長「ざ、戯れ言をぬかしおって!」

宣教師「私も彼の友達です!どうか彼の生き方を制限するような真似はしないでください!」ペコッ

酋長「チッ…!人間の近くにいれば、また同じような事が何度でも起こる!うぬらはその度に…このような争いをしていくのか!?」

ヒメ「……」

宣教師「……」
472: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 18:03:14 ID:cyjwnRCe9I
酋長「アピシナ様は己の存在が招いた混沌を鎮めるべく自らの命で償った!
そのカロルだの言うのが、そうならないと確信できる理由があるのか!?」

ヒメ「あいつは挫けた時にこそ希望を見つけるような奴だ。アピシナが諦めた未来にもあいつなら絶対に立ち向かっていける!」

宣教師「私は彼に出会ったおかげで犯した過ちに気付き、悔い改める事が出来ました!
彼には他者を思いやり、惹き付ける誠実な真心が備わっています!
決して苦痛の果てに歩みを止めたりはしないと断言できます!」

酋長「…それがどうした?実際にそいつが残って何になる!
また野望が芽生え、争奪を続ける羽目になるのではないか!?」

酋長「それでも助け続けるのか!?犠牲しか産まぬ実りなき命を!?」

ヒメ「……!」

宣教師「っ……」

酋長「うぬら人間のほざく主張は決まって宛のない綺麗事だ!!だがそれをいくつ実現してきた!?
実現した気になってくだらぬ歴史を刻んだだけではないのか!?」

酋長「何が平穏か!何が融和か!?うざったい思想を当て付けられ、陰でいたぶられた我らの憎悪を…耐えてきた日々を…本気で理解したつもりかぁ!!」バァンッ

外交官「ヒエエエ!?」ブルッ

ルイ「……」
473: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 18:04:48 ID:cyjwnRCe9I
酋長「もう…二度と言わんぞ!癒しの力は我らで始末する!!」

ヒメ「〜〜〜!」

宣教師「る、ルイさんっ!」アセアセ

ルイ「…ごめん、お爺ちゃんの気持ち、分かるわ」ウルッ

宣教師「そ、んな……」

ルイ「やっぱり…悔しかったよ。だってさ…ウチら、なにしたって言うの?」ウルウル

宣教師「うっ……」ギュウッ

ルイ「これ…感じた事ないホビットなんていないよ?きっと…そのカロルって子もそうだったんじゃないの?」

ヒメ「……」

『キミに何が分かるのさ!?』

『ボクがどんな想いでいたかも知らないのに!?』

『何度も人間を信じたよ!何度も騙された!それでも分かり合えると思ってた!』

『他にどうしたらよかったのさ!?』

ヒメ「……〜〜〜!!」ゾクッ

宣教師「〜〜〜!」ブワッ

ヒメ「」ピクッ
474: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 18:06:31 ID:6iJ4MFJfgg
宣教師「か…彼は絶望の淵にいながらも立ち上がってきました!」バッ

宣教師「私達、人間に…そしてホビットにも…多くの希望をもたらしてくれたんです!」グシッ

宣教師「すくっ…なぐとも!お…こくは…王国は…変わりましだ!?
私達が…諦めてしまった未来を……彼が繋げてくれたんです!!」ポロポロ

宣教師「わっ…だし、は…わだ、しは…!ふぅぇ……そんな…彼が……カロルくんが…大好きなんです!心の底から…だいすきっ!だから!」ポロポロ

宣教師「彼と…しあわせになりたい…!しあわせに…したい!ただ何気ないありふれた日を…彼と笑って過ごしたい!!」グズグズ

宣教師「だ、から…助けなくては…私は…私の……夢を叶える為に……その夢に…彼はいなくてはならないんです!!」ダンッ

ルイ「お、お姉さん…」ハラハラ

宣教師「助けてください!!お願いします!!私では…何もしてあげられないから…!!ひぃ…んっ…うっ」メソメソ

ルイ「」ズキンッ

ヒメ「ぼ、僕からも…もう一度だけ…頼む」ペコッ

酋長「……」

ヒメ「大切な友達なんだ…。他に理由なんか…思い付かない」フルフル

東の騎士「……」

ヒメ「頼むよ…!僕だって…あいつが好きなんだ!ずっと…ずっと一緒に笑い合っていたいんだ!」バッ
475: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 18:09:35 ID:cyjwnRCe9I
酋長「情に訴えかけようと…浅はかな」フンッ

東の騎士「相分かった!!!」ダンッ

酋長&ルイ「!?」ビクッ

東の騎士「お主らの要求、東国の代表に替わって某が承認しよう!!」

ヒメ「え…?」ポカーン

宣教師「……!」ポロポロ

東の騎士「独立だろうとなんだろうが好きにさせてやる!!望む領地をくれてやろう!!
引き換えにお主らの力を余さず敵にぶつけてくれぃ!!」カッ

ヒメ「きし…どの?」

東の騎士「…ミリア王妃であれば迷わず決断したであろう。ブルードル陛下であれば尚更だ」

東の騎士「某の決断は決して間違ってはいない。そう断言出来る!」

東の騎士「某も王妃様や家族、仲間、旧知の者を救って差し上げたいと願う…一人の人間だからだ!!」

ヒメ「あり…がとう…ありがとう…ございます…!」ブワッ

宣教師「うぅ…ふ…ぅええぇん…!」グシグシ
476: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 18:10:19 ID:cyjwnRCe9I
酋長「バカ共が!安い涙で誤魔化されるとでも……」

ルイ「お爺ちゃん!!」バンッ

酋長「……ルイ?」

ルイ「この人間たちは…本気だよ。本気で泣いてる…」

ルイ「本当はお爺ちゃんだって…分かってるんでしょう?」ジッ

酋長「……!」

ルイ「こんな純粋な気持ち…ホビットだって、そうそうないよ。ウチら…このままじゃ薄情な分からず屋だよ」

酋長「ルイ……」

ルイ「ウチは助けてあげたいよ!見返りとかいらない!こんな人間たちと…友達になりたい!」

酋長「………」

ルイ「一生のお願いだよ、お爺ちゃん!助けて!?」

酋長「癒しの力に魅せられて人間とホビットの争いは繰り返された…。
お前の両親も…アピシナ様の遺された禍根に消されたようなものなんだぞ!?」

ルイ「違うよ!アピシナ様を誰も分かってあげようとしなかったから…ホビットは孤立して行き場をなくした!」

ルイ「でもウチらには教訓がある!アピシナ様の失敗が…今度こそ世界を変えてくれるかもしれないんだよ!」

ルイ「信じよう!この人達を…カロルって子を信じてあげようよ!?」

ヒメ「頼む…!」ジッ

宣教師「おねが…じます」グスンッ

酋長「……!」
477: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 18:11:05 ID:cyjwnRCe9I
〜〜〜〜〜〜

―――西の国(帝都)―――

ザァァァァァァ ザァァァァァァ

バシャバシャッ ピチャッピチャッ

ドバッ ガシュッ ズンッ

ドサドサドサッ

ヒィギャアアアアアアアア………
478: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 18:11:53 ID:cyjwnRCe9I
―――宮殿―――

軍師「ひげぇぇぇぇぇえええ!!あ゙っ…あ゙ぅぁっ…アァァァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」ギチギチ

副官「よーしよし、もう一本イってみましょうか!」

王国兵1「す、すでに両手足指の爪に釘を刺しましたが…」ゼェゼェ

副官「くふふふ……蝋を垂らしてやんなさい!」ニタニタ

ツー ツツー ジワァァァ……ジュワァァァアアア

軍師「ギッ!!ギッ!!ギッ!!ギヒィィゥゥゥゥウウウウ!!!!?」バタバタ

副官「くふ、ふ!ヒィヒャヒャヒャヒャヒャ!!」ケタケタ

王国兵1「(うっ…む、むごすぎる…)」ウプッ

軍師「え゙ゔ…ぶべべ!ぶぼぼ…ゔぐぅぅ」ブクブク

副官「やや、気絶しましたなぁ?」

フィクサー「瞼を開いて眼を炙れ。口元さえ動けば、どこを不能にしても構わん」

王国兵1「うっ…あ、あい…!」プルプル

フィクサー「全身をなぶり、耳を引き裂き、頭皮を剥ぎ取り、指に釘を打たれ、傷口に蝋を垂らされてなお口を閉ざすか…。老いたりとはいえ素晴らしい忠心だ?」

軍師「あ゙ぁ!!ばばぁぁ!!ひぎょおええええん!!!」ガクガク

副官「ファルージャはどこへ消えた?教えておくれよぉ?」ニタニタ

王国兵1「(は、早く吐いてくれ…!俺だって…こんな事したくないんだ!息が詰まる…心臓が痛い…!もういやだ…やりたくない!)」バックンバックン

フィクサー「(ファルージャ、か。どうやらわたしの想像を大幅に上回る大物だったようだ)」

ファルージャ「(このわたしが女ごときに出し抜かれるとはな…。だが……)」

ファルージャ「(この城の宝物…武具、兵器、食糧……有り余る兵糧……)」

ファルージャ「(わたしの国を強化するには充分過ぎる収穫だ…)」ニヤリ
479: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 18:33:41 ID:yVYOJVGV8I
あぁもうダメだ
予測変換に頼りすぎてフィクサーがファルージャになってる
もうダメだ
ネームセンスがダメだ
フから始まるキャラ終盤に残しすぎた
キャラ多すぎて自分でも把握できてない
もうダメだもうダメだもうダメだorz
480:名無しさん@読者の声:2015/12/29(火) 20:27:37 ID:IW32TSy8jc
>>479
が、頑張れ!
481: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 20:58:58 ID:6iJ4MFJfgg
>>480
ごめんなさい
宣伝までしておきながら自分が情けないです
今度こそちゃんと更新します
482:名無しさん@読者の声:2015/12/30(水) 21:37:36 ID:iGoluuLBq.
出てくるキャラは多いけどそれぞれキャラが立ってるから口調や流れでわかりますし、大丈夫ですよ!というより、話しにひきこまれ過ぎてて言われるまで気づきませんでしたw
予測変換って普段使う分には便利ですがこういう時は少し不便ですよね。物語も佳境で、大変だと思いますが毎回楽しみにしてます!特に最近は手に汗握る展開でwktkしながら読ませて頂いてます!!頑張ってください

つCCCCCC

東の騎士がイケメンすぎて生きるのが辛い。良かった、本当に良かった!!!
軍師……(`;ω;´)
483: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:24:13 ID:7FwZM..EWU
〜〜〜2週間後〜〜〜

―――国境防衛城塞(正門)―――

ワァァァァァァアアアアアアア!!!

ガンッガガンッ ギンッ バキンッ

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッ

ドスッドスッドスッドスッドスッドスッ

ガラララララララ

将軍「ムフフ…なかなかしぶとかったが、これまでだな?」ズイッ

将校3「正門は開け放たれた!!城内に閉じ籠った臆病者共を皆殺しにしてやれぃ!!」

ダダダダダダダダッ
484: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:25:37 ID:7FwZM..EWU
―――城内(2階)―――

近衛兵1「あ、ははは。どうしろってんだ?こんなおびただしい数の敵……」ボーゼン

近衛兵2「あぁ、ダメだ。防御陣形が機能してねーや。見ろよ、迎え撃った奴らが成す術もなく殺されてく……」

副長「…我々にはまだ団長が控えておる。なんとしても持ちこたえるぞ!」

近衛兵1「大丈夫なんですか?団長のお子さん……一昨日の晩に息を引き取ったとか?」

近衛兵2「まだ若いのにねぇ…。団長の落胆も相当だろうに?」

副長「ラキア君は立派に戦った…。南国軍に大打撃を与えた恐ろしい敵将を討ち取ったのだから…団長もきっと誇っておられる」

近衛兵1「厳しいなぁ…。いろいろと?」ジャキッ

近衛兵2「はぁ…身体中ガタガタだ。気を引き締めてやんないとな」グッ

副長「今度は我々が彼の雄姿に続かねば…!」

近衛兵3「縄梯子を掛けられました!?敵は回廊から侵入する気です!」

副長「よし!我々は2、3階からの侵入を防ぐぞ!!俺に続け!!」ダッ

近衛兵's「ははぁ!!」ダッ
485: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:27:04 ID:7FwZM..EWU
―――城内(地下)―――

バカァァンッ ドドドドドドッ

アリアス「ど…すんの?上から足音が響いて……中まで…入られてるわよ?」ウツラウツラ

団長「防壁を破られ、城内まで押し込まれたとあっては…もはや手詰まりだな」ボーッ

ズゥゥゥゥゥン

団長「…ここまで戦ってきた兵士らも流石に疲労困憊だ。よくもった方だがな?」

アリアス「なに言ってんのよ…!あんたが諦めたら……」

団長「諦めはせんよ。死力を尽くす…。死んでいった者らの為にもな」

アリアス「良…かった…。その意気なら、まだまだ…イケそうね?」ニィィッ

団長「お前もまだ休んでおけ?目が虚ろではないか?」グッ

アリアス「あんたこそ…大丈夫なの?」

団長「……昔から体は丈夫なものでな」

アリアス「ほんと疲れ知らずよねぇ…。呆れちゃうわ」

団長「…ヒメ様が戻られるまで倒れる訳にはいかん」

アリアス「なんでそこまで他人に尽くす事が出来るわけ?武人の魂とか?」

団長「ワシは王族に拾われ、貴族に飼われる下僕同然の生活から抜け出せた…。恩に報いねば、な」

アリアス「そう…。ふふ。あたしも陛下のお情けで牢屋から出してもらえたし…最後まで付き合うわ?」クスッ

団長「休息は十分だな…。行くぞ!」ダッ

アリアス「あんた達もほどほどにして来なさいよ?」ダッ

カンッカンッカンッカンッ

予備隊「……」グッタリ
486: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:29:08 ID:.cUSspOk4Q
―――城内(エントランスホール)―――

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッ

ドスッドスッドスッドスッドスッドスッ

ドタドタバタバタ

シーラ「あぁしつこっ!キリなっ!うざっ!?」ピュンピュンピュン

ホビット1「矢が切れた!補充しなくちゃ!」

ブランケ「代われ!」バッ

ダダダダダダダダッ

シーラ「なにあの数!?射っても射っても一向に減らないんだけど!?」ピュンピュンピュン

ブランケ「逆に狙いを付けなくていいからやりやすい!こういう時は無心で早射ちに限るね!」ピュンピュンピュン

西兵75「ひぎっ!?」ブスッ

西兵76「いっぎゃっぎゃあ!!」ブスブスブスッ

ガッションガッション ガッションガッション

シーラ「ん!?なんかゴツいの来た!?」ピュンピュンピュン

ブランケ「あぁ、重曹歩兵ってやつだ!やっこさん、力業で中の弓隊を始末する気らしい!」

ホビット2「あんなのが階段を上がってきたら僕たちなんかあっさりやられちゃうよ…」ブルッ
487: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:30:35 ID:.cUSspOk4Q
カカンッ キキンッ カァーンッ

シーラ「矢を浴びてもへっちゃらそうね…!ナマイキ!?」ピュンピュンピュン

ブランケ「どうしよっかなぁ…。主力の人間たちは回廊を押さえてるし…」ポリポリ

ザッ ザッ

西の重曹歩兵1「……っぷげら!?」ドタァン

西の重曹歩兵2「おげぇぇ!?」ドスッ

バタァァァァァン

シーラ「あらん…?」キョトン

ブランケ「おっ?」

団長「お前たちは狙撃に集中せよ!!階段に迫る敵はワシらが引き受けた!?」

アリアス「ふぅ……ぶん投げられたいなら、いらっしゃい?」クイックイッ

シーラ「ふーん!いいね!ようやく共闘っぽくなってきたじゃない?」クスッ

ブランケ「ハハハ!人間に負けてらんないな?ホビットの底力、見せちゃおうか?」ニヤリ

西兵's「殺すぞぉぉぉおおおお!!!」ダッ
488: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:32:09 ID:.cUSspOk4Q
将軍「ヌハハハハハハハハ!!!愉快、愉快!!虫の息でありながら、まだあがこうとするか!?」ゲラゲラ

将校3「時間の問題ですよ。それよりも本土の侵攻が気掛かりですな」

将軍「問題なかろう?ピクスィめが我輩に代わって女王を守護しておるわ!」

将校3「…しかし敵はなかなかに狡猾な策士。ピクスィ殿と言えども危ういのでは?」

将軍「我が軍に敗北があり得ると…!?」ビキッビキィッ

将校3「あ、いえ!なんでもござんせん!さーせんした!」ヘコヘコ

将校4「た、大変だ!敵が……」

将軍「あぁ〜ん?」

将校4「ぞ、増援だ!?敵の増援が進軍して来ます!」

将軍「…なんだと?」

将校4「その数…およそ8万から9万と見られます!!」アセアセ

将校3「ど、どうなってんだ!王国はおろか…東国、南国にも兵なんぞ残っちゃねぇ筈だぞ!?」

将校4「大軍勢ではあったが全体が細く見えた!あれはホビットに違いない!?」

将校3「ホビットぉ!?なんであいつらが加勢すんだよぉ!?」

将校4「知るか!城ん中にもホビットの弓使いがいた!あいつら手ぇ組んでんじゃないか!?」

将校5「閣下!!至急、指示を!?外側から囲われ、城外に配置された兵が襲撃を受けております!」

将軍「脆弱な下等民族の分際がぁ…!?」イライラ

将校5「ここは一度、外の兵を立て直すべきかと!?」

将軍「敵の武器は!?」

将校5「弓、槍、投石、漏れなく騎馬しております!!」

将軍「ふん!ビチ糞共が!!奴らの騎馬などチビがポニーにまたがってお馬さんごっこをしてるようなもんだ!?こちらも重装騎馬隊を出して押し潰せぃ!?」

将校5「イエッサー!!」
489: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:34:29 ID:.cUSspOk4Q
―――城外の平野―――

グルンッ ヒュオッ ヒュオッ

西兵77「ぶお!?」ズゴンッ ドシャッ

西兵78「ぎゃん!!」バキンッ ドシャッ

シャシャシャシャシャシャッ

ズドッズドッズドッズドッズドッ

西兵79「あぁあああ!!?う、馬が…んご!?」ゴロンッ ドタァッ

西兵80「げげっ!ど、どけ!足を取られて転倒しちまっ……ぶべっ!?」グシャアッ

酋長「目前の敵はスリングとボウガンで馬ごと地べたに引きずり落ろせ!
予期せぬ襲撃を受けて混乱に陥っている箇所もちらほら見える!遠慮なしに矢を叩き込んでやれ!?」

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッ

ドスッドスッドスッドスッドスッドスッ

ギャアアアアアアアア

東のホビット1「酋長!全身を鎧で覆った奴らが迫ってるぞ!あれには飛び道具が効かない!!」

酋長「全体、大きく旋回しろ!!部隊を3つに分けるぞ!!」パシンッ

ガガガガガガガガガッ
490: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:37:56 ID:.cUSspOk4Q
将校5「ひよこ共がピーピー逃げ回ってらぁ!?こちとら馬の体格も倍の倍の倍!!
西国軍に楯突いたらどうなるか分からせてやる!?」ガガガッ

重装騎馬兵1「敵が分散しましたが!?」ガガガッ

将校5「ぎゃはははは!!構うもんか!!どうせホビットに策なんかない!!
このまま突っ込んで目の前の群れを踏み潰せぇ!!」ガガガッ

重装騎馬兵1「イエッサー!!」ガガガッ

東のホビット1「くっ…酋長!追い付かれそうだ!」パカラッパカラッ

酋長「……!!とばせ!!あと少しで網に掛かるわい!!」パシンッパシンッ

将校5「ソォラソラソラァ!!潰しちゃうぞ!潰しちゃうぞぉぉ!?イックゾォォオ!!?」ガガガッ

ガァンッ

東のホビット's「ぎゃあああ!!」ズシンッ

ベキベキ ボキボキ グシャアッ バギバギ

将校5「イヤッホー!!この骨が軋み、肉がひしゃげて血ぃ噴き上げて砕け散る感触……サイッコー!!」アヘアヘ

重装騎馬兵1「げぇっ!?」ビクビク

将校5「あぁん!?どしたぁ!?」

重装騎馬兵1「は、挟まれてます!!両側から大隊が突進してきます!!」アセアセ

将校5「にゃんですとぉ!?」ビクッ
491: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:42:50 ID:7FwZM..EWU
ズドドドドドドッ

重装騎馬兵2「ば、バカな!!こんなへなちょこ槍にぶきぃっ!?」ズンッ

東のホビット3「へへ!ホビット族、伝統のミスリル鉱石で作られた武具は下手な鉄より強力さ!!」ビュンッ

重装騎馬兵3「ぐほ……」ズンッ

ドシャッ ゴロゴロ

将校5「(あ、あいつら…虚を突いただけじゃねぇ!強力な武具も備えてやがる!)」ギリッ

将校5「(しかしどこから……はっ…そうか…!分散させた部隊を回り込ませやがったんだなぁ!?)」ハッ


重装騎馬兵1「た、隊形が瓦解してしまいますぞ!?」アワアワ

将校5「ほ、ほほホビットごときがぁ!?」

ドガガガガガガガガッ
492: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:44:30 ID:7FwZM..EWU
西兵81「ま、まずい!あのままでは重装騎馬隊が全滅しますぞ!?」

将校3「…けっ!突進力に欠ける分、小回りの効くリタルポニーで誘い込みを仕掛けたか!小癪な!」

将校4「俺に任せろ。誘い込みでチビ共の動きがバラついてらぁ。
このまま騎馬隊で突っ込んで重装騎馬に絡んでやがる連中を始末してやる」ザッ

将校3「うし!じゃあ周囲の弓使い共は俺がやっとく!投石器と大槍砲射で一網打尽だぜ!!」

将校4「っくぞぉ!!」パシンッ

ドドドドドドドドドッ

将校5「こっちも準備だぁ!!城に合わせた照準を向こうの蟻ん子共に合わせろやぁ!?」

西兵81「イエッサー!!」ダッ

将校5「へへへ!人間様に逆らいやがってよぉ…!近代兵器の恐ろしさってもんを味合わせてやらぁ!?」ギラギラ
493: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:47:23 ID:.cUSspOk4Q
ドドドドドッ

将校4「出しゃばってこなけりゃ死ぬ事もなかったのによぉ?糞ホビットが!」ガガガッ

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッ

将校4「矢が降って来たぞ!盾を構えろ!!」バッ

ザスザスザスザスザスッ

将校4「ぃよーし!見えてきた、見えてきた?このまま矢の雨を突き抜けたら重装騎馬隊にタカる蟻共をグシャグシャにしてやれぃ!!」ガガガッ

西兵's「ウォォォォォオオオ!!!」ガガガッ

???「王国、東国!連携部隊!!突撃!!」パシンッ

ドドドドドドドドドッ

将校4「え!?」チラッ

西兵82「あ、あれは…東国の旗!?」

西兵83「横から突っ込んでくるぞぉ!?」オロオロ

ドカァンッ!!

ギャアアアアアアアア!!!
494: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:49:11 ID:7FwZM..EWU
シュバッ バシュッ ザクッ ドバッ

ズダダァァン ゴロゴロ ゴロゴロ バタバタ

将校4「なんだってんだよぉ!?ど、ど、どこに潜んでやがったぁ!?」

ズバッ ガシュッ ドサドサッ

将校4「はっ…そうか!あの大きな岩影だな…?クソッ!ホビットに気を取られて…!」ギリッ

将校4「(だが冷静に見りゃ、せいぜい5、600の少数部隊…まともにかち合えば瞬殺だぜ!)」ニヤッ

将校4「包囲してぶっ殺せぇ!!押しくらまんじゅう押されて泣くなってなぁ!!グハハハハハハ!!!」ゲラゲラ

ガガガッ ゾロゾロ

東の騎士「ソリャァァァ!!!」ヒュンッ

西兵83「うごふ!?」ズドッ

将校4「あれが将か…!ぃよーし!とっとと片付け……」

シュバッ

将校4「て……!?」プシャアアアアアアアア

ドシャッ ゴロゴロ

ヒメ「残念だったな。将は僕だ?」ガガガッ

西兵82「将校殿ぉぉぉぉおお!!?このホビットめ!よくも!?」バッ

ヒメ「うわっと!誰がホビットだ!?」サッ ヒュンッ

ザクッ ヒヒーン!

西兵82「うおっ!た、たたたたた……ヒギャアッ」ズシャッ ゴロゴロ
495: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:50:59 ID:7FwZM..EWU
ヒメ「敵将は討ち取ったぞ!!2000の歩兵を呼び込め!?」

ブォォオオオオン

西兵84「ほ、ホラ貝で合図してるぞ!まだ潜ませてるのか!?」

西兵85「将校殿が討ち取られたぁ!?どど、どうすればいいんだ!?」アワアワ

西兵86「指揮無しには迂闊に動けん!更に攻め込まれたら全滅するぞ!?」

西兵87「隊形もグチャグチャ!ホビット共の背も見えなくなった!これじゃ作戦そのものが成り立たん!?」

西兵88「一旦退こう!そうしよう!」

西兵's「さんせーい!!!」ドドドドドドドドドッ

ヒメ「……」ニヤリ
496: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:52:47 ID:7FwZM..EWU
東の騎士「ハッハッハ!頭の悪い連中ですな?実は潜伏兵などおらぬと言うのに?」

ヒメ「あぁ、思わぬ形で邪魔が入った上に指揮を奪われて混乱してるみたいだ。
あのまま混戦に持ち込めば泥沼化しても僕らを全滅出来たろうにさ?」フフンッ

東の騎士「小で大を打ち負かす合理的な戦術、お見事!恐れ入った?」

ヒメ「騎士殿の兵が柔軟だからさ。よく鍛練されてるよ?」

東の騎士「お褒めに預かり光栄……では!」

ヒメ「あぁ、奴らの背を撃つぞ。これで主力の騎馬と重装騎馬を一掃出来る!!」

東の騎士「いざ!!」パシンッ

ヒメ「行くぞ!!」パシンッ

東兵's「ははぁっ!!」パシンッ

ヒヒーン!!!!

ドドドドドドドドドッ
497: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 00:54:27 ID:7FwZM..EWU
ヒューン ドグシャアッ!

ビュッビュッビュッビュッ

ズブブッ ズブブッ ズブブッ

将校3「ウッホー!いいぞぅ!やれやれぃ!!近代兵器の破壊力を思い知らせてやれぃ!!」ウヒョー

西兵89「やべぇっす!投石器の方、岩が無くなってきました!?」

将校3「なぁにぃ〜?」ギロッ

西兵90「大槍砲もです!この城を攻め落とす分しか計算してなかったんで弾切れ寸前です!」

将校3「そいつは困ったな…!早いとこ騎馬隊の奴らが向こうを始末してくんねぇと相手しきれねぇ…!」ブツブツ

西兵91「ふぅ…はぁぁ……」ゼェゼェ

将校3「(連日の城攻めで休みなく戦ってきた俺達は体力的にも不利だ…!
そこに加えて急に襲撃を受けて指揮系統は乱れ放題……かなりの被害も出てる…!)」ブツブツ

将校3「あーくそ……中の戦況はどうなんだ?」

西兵92「依然として拮抗しております!敵も最後の力を振り絞って足掻いてるようで!」

将校3「なにチンタラやってんだよぉ…!!手っ取り早く火でも放って終わらせちまえよぉ……!」ギリギリ

西兵92「そうなると城に眠る財貨、兵糧まで灰と化してしまいます」

将校3「だ、だったら閣下に出てもらえ!あの方が暴れりゃ一気に終わるだろ!?」

西兵92「分かりました。そのようにお伝えします」

将校3「それから加勢も寄越してくれ!予想外に数を減らしちまってヤバそうだ!?」
498: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 01:00:02 ID:7FwZM..EWU
西兵90「将校殿!将校殿!」

将校3「あ…!?」

西兵91「東国の旗を掲げた部隊の奇襲により、騎馬隊、重装騎馬隊が壊滅!ホビット共が防御陣形を突破して迫ってきます!」

将校3「な、ななななななぁにぃ!?主力部隊が全滅したのかぁ!?」ギョギョッ

西兵90「弾切れです!投石も大槍も射てません!?」

将校3「(残ったのは、ただの歩兵か…!くそっ!数の利も完全に向こうに分がある!)」

将校3「(幸い奴らは体格に合わせてリタルポニーみたいなチビ馬で来てる!
歩兵でぶつかっても吹っ飛ばされる心配は無さそうだが…重装騎馬を蹴散らした攻撃力を考えりゃ正面衝突は避けたい!)」

将校3「(ちくしょう!ホビット相手に馬鹿馬鹿しいが…。
こうなりゃ城に入って正門を閉じちまった方が良さそうだ!
中の連中をぶっ殺してから再び全軍で外のホビットを叩き潰す…!)」

将校3「退却だ!!城に入れ!!」ダッ

西兵92「退却!?」

西兵's「ウワアアアアアアア!!!」ダダダッ

ギィィィィィイイイイ

ガコォンッ
499: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 01:02:17 ID:7FwZM..EWU
東の騎士「城に入られてしまいましたな?」

ヒメ「力任せな作戦を仕掛けてくる割りには慎重だったな」

酋長「おい、小僧!どうする!?まさか壁をよじ登っていくんじゃないだろうな!?」パカラッパカラッ

ヒメ「いや、地中を攻める!」

酋長「地中!?モグラじゃあるまいに!?」

ヒメ「外交官から地下2階の通路に繋がる水路の出入口を教えてもらったんだ!」ニヤリ

東の騎士「隠し通路という物か」

ヒメ「あぁ、表向きは無い事になってるから城主の外交官と一部の役人にしか知らされてないんだけどな」

酋長「ふん!御託はいい!さっさと案内せい!?」

ヒメ「怒鳴らなくたっていいじゃないか…。僕に付いてこい!」パシンッ

酋長「指図するな!!」

ドドドドドドドドドッ
500: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 01:03:34 ID:.cUSspOk4Q
―――城内(地下2階)―――

予備兵3「…もう終わりだ。じき、ここも見つかるよ」グッタリ

予備兵4「ひっぐ…ひぃぃ!ずずっ……死にたくない!死にたくない!」ガタガタ

予備兵5「故郷に残した娘や妻、おふくろ達も…こんな気持ちで死んでいくんだろうなー…」ボタボタ

予備兵6「惨めったらないよな…。でも……力が入んないんだ。しょうがねーじゃん…」ピクピク

予備兵7「先に加勢に行った連中……もう死んだかな」

予備兵8「死んだよ。どーせ……」

予備兵9「これが戦争か…。過去の人達が無くしたがった訳だ?」

カンッカンッ カンッカンッ カンッカンッ

予備隊「」ビクッ
501: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 01:04:52 ID:7FwZM..EWU
カンッカンッ カンッカンッ カンッカンッ

予備兵3「き、来たか…?」オソルオソル

ゾロゾロ

予備兵4「いやぁだぁぁ!!おたすけぇぇええ!?」ジタバタ

酋長「騒ぐな!鬱陶しい!?」

予備兵3「え?ほ、ホビット…?」

東の騎士「案ずるな!某らは味方だ!!」

予備兵4「み、みか…た?助けて…くれんのか?」

ザワザワ ザワザワ

ヒメ「待たせたな!」バッ

予備兵5「!?」

予備兵6「へ、へへ、陛下ぁぁあああああ!!!?」ドッシェー

予備兵's「ははーっ!!」ドゲザ

酋長「っ……!」タジッ

ヒメ「面を上げろ!」

予備兵's「」ブルブル
502: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 01:06:02 ID:7FwZM..EWU
予備兵3「へ、陛下…お、おぉお許しを…我々は…」ガタガタ

ヒメ「ん…?」

予備兵4「ち、違うんです!隠れてたんじゃなくて…休んでたというか!」アセアセ

ヒメ「……」

予備兵's「〜〜〜!!」ガタガタ

ヒメ「この戦場には…果敢に立ち向かい、死んでいった者もいれば怯え逃げ惑い、命を惜しんだ者もいるだろう」

予備兵's「(や、やはり戦意喪失した俺達を叱咤なさるんだ…)」ズーン

ヒメ「でもさ、どんな有り様であれ…この場所に立っていた。
それだけでも、とてつもない勇気が要ると思わないか?」ニコッ

予備兵's「……!?」

ヒメ「僕たちが間に合ったのはひとえに…この戦場に立ってくれた、おまえ達、みんなのおかげだ」

ヒメ「その勇気によって開かれた未来、絶対に閉ざしはしない?
みんなの守った命を今度は僕たちに守らせてくれ?」ニコニコ

予備兵's「え!?」

ヒメ「…みんな、よく持ちこたえてくれた!!おまえ達は王国の誇りであり、宝だ!!」

東の騎士「(まだ幼くありながら……なんと尊い輝きを纏うお方か…)」ジッ

ヒメ「あとは任せろ!!」グッ

東の騎士「(ブルードル陛下がお認めになられた理由がはっきりした…。この少年は…まさしく人の上に立つ器の持ち主だ)」
503: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 01:10:08 ID:7FwZM..EWU
ヒメ「おまえ達は休んでろ。大丈夫。大勢、味方が来てくれたからさ?」

酋長「ヘボが…人間は使えんな」

ヒメ「こいつらだって必死に戦ったんだよ!責めてやるな!?」

予備兵5「(う、上の戦いに参加しないで地下に身を潜めていた俺達を…激励してくださっているのか…!?)」

予備兵6「(無理やり戦わせようとしないのか…?)」

予備兵3「(いや、違う…俺達は紛れもなく自分たちの意思でここに来た。国王陛下は……最初から強要などしていなかったんだ)」

予備兵4「(守るべき物を知り、ここに来た…!そうだ!俺達は……)」


ヒメ「行くぞ!?」カンッカンッ

予備兵's「お待ちください!!!」ザザザッ

ヒメ「……?」ピタッ

予備兵's「国王陛下にお供します!!」ピシッ

ヒメ「え?む、無理するなよ?満身創痍じゃないか!」アセアセ

予備兵's「」ゴゴゴゴゴ

ヒメ「え、え…?」パチクリ

東の騎士「ハッハッ!熱い眼差しだ。戦力としては申し分ない?」

ヒメ「で、でも…」

酋長「こんな甘えん坊共を連れ立っても荷物になるだけだ!我らは勝手に行かせてもらうぞ!!」カンッカンッ

東のホビット's「」カンッカンッ

ヒメ「あっ…おい…!」

予備兵's「陛下!!」

ヒメ「はぁ…しょうがない奴らだな…!来い!!」カンッカンッ

予備兵's「ははぁっ!!」カンッカンッ
504: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/1(金) 01:16:56 ID:7FwZM..EWU
>>482
すごく優しいフォローありがとうございます…!
読む側の目線でキャラがごっちゃになってないか不安だったのでめちゃくちゃ励みになりました!!
タグ付けまでしてくださって感謝感激です!!

久しぶりに意欲がドッと湧きました!本当にありがとうございました!
505: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/2(土) 18:41:56 ID:nhkhr2ewlE
―――城内(屋上)―――

将軍「追い詰められたなぁ?虫けら共が?」ニタニタ

西兵's「」ザザザッ

団長「」ゼェゼェ

アリアス「」ハァハァ

シーラ「矢…あと何本ある?」プルプル

ブランケ「10本足らず…」

シーラ「あたしも……みんなもそんな感じだろうね」

ブランケ「しんどいね…」

シーラ「…ん、もう限界だわ。腕なんか弦みたいにピンと張っちゃってさ?指なんか血豆だらけ?」ポタポタ

ブランケ「ま、ね…。司祭様たちが助けを呼んでくるまでの辛抱ってやつ?」

シーラ「その前に死んじゃわない…?」

アリアス「あんたら…弱音ばっか吐いてんじゃないわよっ…!」ヨロッ

ブランケ「……だ、大丈夫ですか?」

団長「ヒメ様は必ず味方を連れて、ここへやってくる…!まだまだこれしきで参っていられんぞ…!」ググッ

シーラ「…そうだね。司祭様も嘘を付く人じゃないし、もうちょっと頑張ってみますか?」ニヤッ

ブランケ「ん…いいんじゃない?」ニカッ

将軍「何をボソボソ馴れ合っておるのだ?ぬんっ!」ポイッ

ドサッ

副長「」グタァァ

団長「!?」ハッ

将軍「フンヌゥゥ!!」ズシンッ

ズゴシャアアアアア!!

副長「」バキボキベシャッ

将軍「命乞いはよいのか?ん?」グシャグシャ

団長「貴様ぁ…!?」ワナワナ
506: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/2(土) 18:43:58 ID:nhkhr2ewlE
―――エントランスホール―――

ゾロゾロ ゾロゾロ

将校3「けっ!閣下はどこで何やってんだ?」

ヒュンッ

将校3「あぶねっ!?」サッ

酋長「チッ!外したか?」パチンッ

将校3「まだ中を殲滅しきれてなかったのか…!?」

西兵's「」ジャキッ

将校3「はえーとこ皆殺しにして…外の連中もまとめて片付けてやる!!突撃だぁ!!」

西兵's「」ダダダッ

バァンッ

将校3「え…!?」ビクッ

ヒメ「誰の許可を得て城に入り込んでるんだ、不届き者め?入国審査は受けたんだろうな?」スタスタ

東の騎士「東国軍の無念、晴らさせてもらうぞ」ズイッ

将校3「な、な、なんで…貴様らが中にぃぃ!!?」

ヒメ「突撃だ!!」ビッ

予備兵's「」ダダダッ

ズバンッ ドゴッ バキッ ズガァァン

グワアアアアアアアアアアアア………
507: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/2(土) 18:47:34 ID:nhkhr2ewlE
ワァーワァーギャーギャー

将校3「…な、ぜだ。どうやって…あの短時間で正門を…こじ開けた?」ピクピク

ヒメ「最初から別経路を把握してたんだよ?」

将校3「なんだ、お前は?ガキじゃないか…?」

ヒメ「ガキ呼ばわりするな。国王だぞ?」

将校3「国王…!?」

ヒメ「……」

将校3「ここ、こんな…ガキに…!?」

酋長「おい、待て!勘違いするな!ほとんど我らがやったんだぞ!?」

ヒメ「ちょっとくらいカッコつけさせてくれたっていいだろ?」

東の騎士「東国の無念は今ここで晴らす…」ズイッ

将校3「あ…あ…あぁ…ぁぁあああぁぁぁ……」ヘナヘナ
508: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/2(土) 18:48:38 ID:nhkhr2ewlE
ヒメ「降伏しろ。そうすれば全員、命は保証してやる」

将校3「く……くひひ…くひ…ヒヒ!」プルプル

ヒメ「?」

将校3「か、勝ったつもりか…?」

ヒメ「は?」

将校3「勝ったつもりか勝ったつもりか勝ったつもりか……勝ったつもりかってんだよ、バーーーカ!!!」ゲラゲラ

東の騎士「こやつ…!」ジャキッ

ドゴッシャアアアアン

ヒメ「」ビクッ

将校3「響くなぁー!ありゃカカドゥーラ将軍だ!?」

ヒメ「カカドゥーラ…?」

将校3「カカドゥーラ将軍閣下は殺戮将の異名を取る西国の最終兵器だ!!
頭使った小細工はもういらねぇー!こっからはハッタリ抜きの力比べだぁ!!」

ヒメ「(予備隊以外にも交戦中の兵を助けて合流してきたけど団長たちの姿が見えないな…。カカドゥーラとかいうのと戦っているのか?)」

将校3「ぐえっ!!うっ…ゔぐぅぅ…」ドスッ

ヒメ「は!?なにしてるんだ、おまえ!?」

将校3「ど、どのみち失態を犯した俺は…閣下に殺される…なら、自分でうげぇっ!!」ビチャビチャ

東の騎士「…腐ってるな。お主らというものは」

将校3「げばぁ!!ごぼっごほっ!!!うっ…うえぇぇっぷ!!ぶはぁぁ……」ドチャッドチャッ

バタッ

酋長「潔い人間もおるじゃないか!感心、感心!」

東の騎士「早く向かった方がよい…。あの振動はただ事ではないぞ?」

ヒメ「……あぁ、そうしよう」
509: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/2(土) 18:52:48 ID:gvQ8CaIXqU
―――屋上―――

将軍「フンヌッ!!」バウンッ

ドゴォォンッ

ホビット's「うわあああああああああああああ!!!?」ドサッドサッ

ブランケ「な、薙ぎ払われただけで…とんでもない威力だ!?」ガクガク

シーラ「なにさ?このデカブツ…!?」ブルブル

団長「はぁぁぁぁっ!!」ダダダッ ブォンッ

ガィンッ ガィンッ ガィンッ ガィンッ

将軍「ヌハハハハ!!ちょこまかと突っついてきおって!?無駄だと言うのが分からんのか!?」バウンッ

ゴバババババンッ

ゴシャッゴシャッ ドズゥゥゥン……

団長「ちぃっ!!瓦礫が飛んでくるぞ!?避けろぉ!?」サササッ

西兵's「ぐけぇぇぇ!!!」ベシャベシャミシィッ

西兵93「か、閣下から離れろ!!巻き込まれるぞ!?」バラバラ

ブランケ「っ…は、柱を一振りで崩した!?」タタタッ

シーラ「敵味方お構い無しだねぇ…!?」タタタッ

アリアス「怯えてないで援護しなさいよ!?」

ピュンピュンピュン

カカカッ カンカンカンッ

ホビット1「や、矢がちっとも刺さらない!?」

将軍「学習せんなぁ?我輩の甲冑は一切の攻撃を通さんのだぞ?」

団長「(…なんだ、あの頑丈さは…!?これではラチがあかん!!)」
510: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/2(土) 18:58:49 ID:gvQ8CaIXqU
将軍「チョロチョロとやかましい鼠を始末せよ?」

西兵94「サー!イエッサー!!」

ドッカァァァン

西兵's「いぎゃああああ!!?」ズダダダダァン

酋長「どけぃ!!」ダダダッ

東のホビット's「」ドドドッ

将軍「あぁ〜ん?」

酋長「カカドゥーラとかいうのはこいつか!まさしく鋼の熊だな?」

将軍「熊ぁ…!?」イラッ

酋長「熊狩りだ!槍を一斉に投げつけろ!!」

東のホビット's「」ビュビュビュビュン

ガィンッ ガィンッ ガィンッ ガィンッ

将軍「オモチャで遊ぶな。チビすけ共?ここは戦場であるぞ?」ニィィィッ

酋長「なっ…!?鋼にも匹敵するミスリル製の槍を受けて傷一つ付かぬだと!?」ギョギョッ
511: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/2(土) 19:00:38 ID:nhkhr2ewlE
ザザザッ

ヒメ「みんな無事か!?」

団長「ヒメ様!?」

アリアス「やっと増援が来たのね…!遅すぎるわよ!」

東の騎士「西の蛮人共を切り伏せろ!!」

予備兵's「ウオオオオオ!!!」ドドドッ

西兵's「殺せ、殺せぇぇぇぇ!!!」ドドドッ

ズバッ ザシュッ ドガッ ビシャアッ

ワァーワァーギャーギャー
512: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/2(土) 19:01:56 ID:gvQ8CaIXqU
将軍「蟻がぞろぞろと…?」ギロッ

ヒメ「…決着を付けてやる!」キッ

団長「お任せを…!」ズイッ

将軍「虫けらが…?」グッ

ヒメ「…団長!!」

団長「ははっ!!」ダッ

将軍「ぬぐぁぁぁ!!」バウンッ

団長「っ!?」ズカァァン

ズズズッ ジャリッ

将軍「止めてみせたか…!グワハハハハ!!ちょいと力を込めてやろう!?」グンッ

団長「(む!?う、受けきれん…!?)」ブォンッ

バゴォォォオオオ!!!

ヒメ「(え…!?吹っ飛ばされ…た…?)」

パラパラ パラパラ

団長「っ……は………」グランッ

バタッ

ヒメ「だ、団長!?」タタタッ
513: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/2(土) 19:04:58 ID:nhkhr2ewlE
ヒメ「おい!しっかりしろ!おい!?」ユサユサ

団長「」グッタリ

将軍「たまらんなぁ…?弱き者らの絶望は?悲鳴は?」ニタニタ

ヒメ「ウソだろ…!?」パチクリ

将軍「ヌハハハハ!!いいぞ!?無力さを実感するがいい!!
弱さを嘆け!!悔しさに押し潰されろ!!己を恥じ、己を恨め!!惨めな泣き顔を見せてみろ!?」ゲラゲラ

ブランケ「はは…シーラ、どう思う?」ヒクヒク

シーラ「死ぬわね、全員……」ヒクヒク

ブランケ「同感……」ガクガク

ヒメ「(団長は…王国最強だ……最強の…僕の剣…!折れる訳ない…!団長は最強なんだ…!)」プルプル
514: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/2(土) 19:08:00 ID:gvQ8CaIXqU
ヒメ「起きろよ!団長!おまえがこんなヤツに負ける訳ないだろ!?起きろ!!」ユサユサ

アリアス「…無理よ」ボソッ

ヒメ「……!?」ジロッ

アリアス「その男…あなたの時間を稼ぐ為に2週間以上も戦い続けたのよ…?」

ヒメ「っ…!」プイッ

アリアス「戦闘の素人ばかりを寄せ集めた烏合の衆を励ましながら…ほとんど一人で敵を押さえてたわ。
体力の限界もそうだけど……一人息子も戦死して相当気落ちしてた」

ヒメ「戦死…?ラキアがか…!?」

アリアス「……それでもあなたの為に死力を尽くして戦った。もう…無理よ」

ヒメ「……!」

将軍「話は終わったか?ん?」ニタニタ

ヒメ「…団長、ごめん」ツツー

将軍「お?泣くか?泣くか?え?泣くのか?泣け泣け!目ぇ腫らして鼻水垂らして泣き叫べ!?」ニタニタ

ヒメ「…おまえがいてくれたら、どんな事があっても守ってくれると安心してたんだ?」ポロポロ

ヒメ「何度も威張り散らして…わがまま言って…困らせても…傷付けても……それでも僕を見放さないでいてくれた」ポロポロ

ヒメ「ずっと孤独だった僕を……ずっとそばで守ってくれてたのは…父上でも母上でもなく、おまえだけだった…!」ポロポロ

ヒメ「……ごめん。ごめん…!おまえの家族を…死なせてしまって…!」ポロポロ

団長「ひ…め……さま」ボロッ

ヒメ「!?」ビクッ

団長「おに…げ…くだ、され…!やつは…ワシがぁっ…ぐふぅ!」ゲホッゲホッ

ヒメ「なに言ってんだよ…!死んじゃうぞ!?ジッとしてろよ!?」
515: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/2(土) 19:11:34 ID:nhkhr2ewlE
団長「ワシは……あなたの…つるぎ…!みちを…きりひらく…つるぎ…!」ヨロヨロ

ヒメ「いいよ!!僕の為に無理すんな!?寝てろ!!」ガッ

将軍「そうだ。無理はするな?弱者の悪あがきはみっともない?」

ヒメ「おまえ…!」キッ

将軍「…我輩の楽しみは戦いではない。弱者を弄ぶ過程である?」

ヒメ「黙れ!!万全だったら…おまえなんか軽くやっつけてたさ!!」

将軍「……口の減らんクソガキだ。言うに事欠いて我輩を軽くやっつけるだと…!?」グオッ

ヒメ「……!?」ビクッ

東の騎士「お下がりくだされ!!某が相手致す!!」バッ

アリアス「やってやろうじゃない…!」バッ

酋長「久しぶりに腕が鳴るわい…!」ジャキッ

将軍「素晴らしい蛮勇であるな?褒美に死をくれてやろう!!」バウンッ

アリアス「っ……」サッ

東の騎士「もらったぁ!!」ブンッ

酋長「いやぁっ!!」ビュンッ

バキンッ ズガンッ

東の騎士「剣身が折れた…!?」カランカラン

酋長「穂先が砕けた…!?」パラパラ

将軍「ヌハハハハ!!究極のオリハルコン鉱石で包まれた我が身に敵はない!!」バウンッ

東の騎士&酋長「くっ…!?」サッ

ドゴォォンッ

アリアス「あんな一撃を受けたら一溜まりもないわ…!?」

東の騎士「オリハルコン…!?ダイヤを上回る硬度とゴールドに勝る柔軟さを併せ持つ伝説の金属ではないか!?」

酋長「硬すぎてやりようがないな!!脱げ!!卑怯者め!?」カッ

将軍「最強の武具と最強の肉体……我輩に敵う者はおらんのだよ!!」

ヒメ「(何かないのか…!こいつに太刀打ちする方法は…!?)」
516: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/3(日) 21:47:46 ID:XGKLoZU7pM
将軍「ヌハハハハ!!どうした、どうした!?もっと抵抗してみせろ!?」バウンッバウンッ

ドゴォォンッ ドゴォォンッ ドゴォォンッ

酋長「馬鹿力め…!?」サササッ

東の騎士「避けるのが精一杯だ…!」サササッ

アリアス「なんとかならないの!?」サササッ

ブランケ「弱点とかは!?」タタタッ

シーラ「はぁ!目元も隠されてるし関節の接合部も隙間が無さすぎて狙えないんだよ…!」タタタッ

団長「ワシに…やらせてください」ゼェゼェ

ヒメ「団長…!?」

団長「考えがあ…ごふっ!」ゴホゴホ

ヒメ「起き上がるな!傷に響くから!?」

団長「はぁ…!なんのこれしき…!」ムクッ

ヒメ「いいから休んでろ!命令だ!」

団長「しかし…!」

ヒメ「僕がやる!」

団長「は…!?き、危険です…!ワシが…!」

ヒメ「いいから言えって!!みんなも聞いてくれ!奴を倒す策がある!!」

団長「う……」タジッ

東の騎士「っ…承知した!某も出来る限りの協力は惜しまぬ!!」バッ

酋長「言うなら言え!とっとと終わらせるぞ!?」

アリアス「あたしもやるわ?」サッサッ

ブランケ「僕らも!ね?」タタタッ

シーラ「」コクッ

ヒメ「よし!みんなでやるぞ!」グッ

団長「……!」
517: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/3(日) 21:50:18 ID:XGKLoZU7pM
将軍「愚かな!?虫けらが束になろうと、まとめて握り潰すのみよ!?」バウンッバウンッ

ドゴォォンッ ドゴォォンッ

ヒメ「はっ!はっ!」タンッタンッ

将軍「くっ…すばしこいな…?鬱陶しいチビが!!」バウンッ

ヒメ「(まずは僕が懐に飛び入って奴の顔にマントを被せる!)」ピョンッ グワッ

将軍「ぬぅぅお!?」バサッ

ヒメ「よぉしっ!!」シュタッ

東の騎士「(視界を奪ったところで某と酋長殿が……)」ザッ

酋長「(後ろから奴の脚を全力でぶっ叩く!!)」ブゥンッ

ガァンッ!!

将軍「おぉっぐ!?」ガクンッ

アリアス「(体勢が崩れたところであたしが……)」バッ ガシッ

将軍「んっ!?おっ!おぉっ!?」フワッ

アリアス「(ぶん投げるっ!!)」ブォンッ

ズッダァァァン!!

ヒメ「奴が矛を手放したぞ!!拾え!?」

シーラ&ブランケ「よしきた!!」ダッ
518: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/3(日) 21:52:26 ID:auX18HPvvY
ブランケ「シーラ!いっせーのーせで持ち上げるよ!」ガッ

シーラ「分かってるってんだよ!いっせーのー……」ガッ

将軍「くっ…ぐぐ…!」ムクッ

ブランケ「あれ…意外と…!?」ググッ

シーラ「おもっ…!?」ググッ

酋長「急げぇ!!立て直されるぞぉ!?」

ブランケ「いや、だってこれ…!!」ググッ

シーラ「あたしらにゃ…でかいし重いぃ…!?」ググッ

グンッ

ブランケ「あっ……」グオンッ

シーラ「急に軽く…!?」ビックリ

団長「手を貸そう…!」ググッ

シーラ&ブランケ「えぇっ!?」

ヒメ「団長…!」ハッ
519: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/3(日) 21:55:13 ID:auX18HPvvY
将軍「ぬぐぅ……コケにしおってぇ…!?この我輩を地に叩きつけるなど、かつてない屈辱であるぞ…!!」ビキッビキィッ

団長「三人の膂力を同時にぶつけるぞ…!?」ゼェゼェ

シーラ&ブランケ「っ〜〜!!」ゴクリッ

将軍「!? き、貴様ら!その矛は…!?」ハッ

東の騎士「あやつの甲冑がオリハルコン製であるならば矛もまた然り!!」

酋長「岩をも砕く破壊力を今度はうぬが受ける番だ!!」

アリアス「思いっきりくらわせてやんなさい!!」

団長&シーラ&ブランケ「いくぞ(よ)!!」ギュウウウ

将軍「くっ…か、返さんかぁ!?」バッ

団長「ぬぁああ!!」ブォンッ

シーラ&ブランケ「りゃあああ!!」ブゥンッ

将軍「う、うおっ…ぁぁ!?」アセアセ

ゴガァァァン!!!

将軍「ンガァァ!!?」ズザザザザザァァッ

ヒメ「やったぁ!!」パァァ

団長「ふぅ…!ふぅ…!」ヨロッ

ブランケ「腕…痺れちゃった」ジンジン

シーラ「これ当分動かせないわ…」ジンジン
520: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/3(日) 21:58:01 ID:auX18HPvvY
将軍「い…ぢぢ……くっ!この…!?」クラッ

東の騎士「まだ意識があるのか…!?」

酋長「だが胸当てが割れたぞ!!」

アリアス「とどめを刺しましょう!!」

将軍「ふざっ…けるなぁ!?我輩は…女王に永遠の命を…!!」ググッ

東の騎士「陛下の仇ぃっ!!」ブンッ

酋長「くたばれぃ!!」ビュンッ

将軍「あぁぁぁああ!!」ブンッ

バキッ ドカッ

東の騎士&酋長「ぎゃあっ!!」ズダンッ

将軍「女王をよ…めに…わが、はいの…嫁にするのだぁぁ!!!!」ダッ

アリアス「く、来るわよ!?」バッ

将軍「虫けらの分際で…我が野望に立ちはだかるなぁぁ!!」ブンッ

アリアス「ぶほっ!?」バゴンッ ドサッ

ヒメ「アリアス!!大丈夫か!?」
521: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/3(日) 22:00:21 ID:XGKLoZU7pM
将軍「ヌハハハハハ……矛などあらずとも…オリハルコンの拳で粉砕してくれるわぁぁ!!」ブンッブンッ

ヒメ「わっ…!」ヒョイッ

ガンッ ゴンッ ミシミシッ

団長「ヒメ様ぁっ!!」

ヒメ「……!?」

団長「もはやその程度の相手は恐れるに足らず!!弱点を見極め、一撃でお仕留めくだされ!?」

ヒメ「(……そうか!そうだ!もう奴の甲冑は完全無欠の防具じゃない!穴の空いた欠陥品だ!)」ピコーン

将軍「死ね!死ね!死ね!死ねぇぇい!!?」ブンッブンッ

ヒメ「(無駄にでかい図体に加えて重い装備を纏っているから動きも遅い!これなら楽に踏み込める!)」タンッタンッ

バゴンッ ドガッ ズゴンッ

ヒメ「(幼い頃から団長に習って染み着いた戦術は…接近戦に特化した一撃必殺の剣だ!!)」ジャキッ

将軍「ぬがぁぁ!!ちょこまか動くなぁ!?」ブンッブンッ

ヒメ「さんざん好き勝手やってくれたな……!」ダンッ

将軍「……!?」ビクッ

ヒメ「……てゃぁぁっ!!」ヒュオンッ

将軍「じょっ…じょおぉぉぉおおおお!!!!」カッ

ズドォォッ!!

将軍「お゙ぐぅっ」ゴパァッ

ズダァァァン………

団長「お見事ですぞ…!」ウルッ
522: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/3(日) 22:08:26 ID:XGKLoZU7pM
ヒメ「くっ…りゃあ…!」ズボッ

将軍「お゙ごっ……ぼほ…!?」プシャアアアアアアアア

ヒメ「あぁっ!ふっ!て、敵の将軍を……討ち取ったぞ!!」バッ

団長「よくぞやり遂げました…!」パチパチ

ザワッ

西兵95「ば、バカな…?」

西兵96「閣下だぞ…!あの閣下が…!?」

西兵97「俺達が王国ごときに負けたって言うのかよ…!?」ワナワナ

東の騎士「つつ…!ハッハハ!ヒメ国王!!勝ち名乗りを!?」ヨロッ

ヒメ「王国、東国、南国…ホビット……4大連合軍の勝利だ!!!」

ウワァァァァァアアアアアアアアアア!!!!

ヒメ「さぁ!命が惜しい奴は武器を捨てて降伏しろ!!」

ポイッポイッ カランカラン ドサドサッ

酋長「ふん…勝ち名乗りに我らを含むとはなかなか機転が利くじゃないか?」ニィィッ

アリアス「おわっ……たの、ね」グッタリ

シーラ「もう二度と戦争に手を貸したりするもんか…!」ゴロンッ

ブランケ「同感……次は生き延びれる気がしないや」バタッ

オォォォオオオオォォ!!!

ヒメ「なんとか…一段落付いたな」ゼェゼェ

ヒメ「(でもまだ終わりじゃない…。急いでアピシナの大樹に向かわないと……)」フッ バタッ

団長「ヒメ様…!?」ビクッ

予備兵's「陛下ぁぁああ!!」ワラワラ
523:遅くなってすみません! ◆WEmWDvOgzo:2016/1/13(水) 22:28:24 ID:7FwZM..EWU
―――大樹に続く森林―――

ザッザッ ザッザッ

ゾロゾロ ゾロゾロ

西兵99「見えたぞ!あれが大樹に違いない!」

西兵100「おいおいおお……スゲーな!」

西兵101「どうしちまったら、あんなバカでかい木が出来上がるんだ?」

西兵102「幹を削ってお土産に持って帰ろう」

西兵103「蜂蜜塗ってホーンビートルをおびき寄せよう!」

西兵104「じゃあ俺は登って雲の上に巨人がいるか確かめてくる!」

西兵105「遠足気分か!?目的忘れてメルヘンチックに浸ってんじゃねーよ!?」

西兵106「あの木の下でお弁当食べたら美味しいだろうなー?」

西兵107「バッカヤロー!用が済んだら燃やすんだよ!女王以外の奴に永遠の命を取られねぇ為にもな?」

ガササッ

西兵99「ん!?おい!今、物音がしなかったか!?」

西兵100「その辺の草が風に揺れたんじゃないか?」

西兵101「ビビりすぎだろ。奴らはまともな兵力を残してないんだ。あとは永遠の命を頂くだけさ」

ビュビュビュビュッ

西兵102「ぐわっ!」ドスッ

西兵103「ぎゃあっ!?」ズンッ

西兵99「て、敵襲だ!?」

西兵100「なにぃ!?奴らのどこにそんな兵力が…!?」

西兵101「やりやがったなぁ!?」
524: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/13(水) 22:30:14 ID:.cUSspOk4Q
西兵99「どこだ、どこにいやがる!?」キョロキョロ

西兵100「隈無く探せぇ!?一匹残らず刈り取るぞ!!」ダッ

西兵101「女王の馬車に近付けるな!周囲を覆うようにして警護しろ!?」バッ

ワァーワァーギャーギャー

ヒュンッ

西兵99「ぶきっ!?」ドスッ

西兵100「そっちかぁ!!」ダッ

バッバッバッ

西兵100「ぐひぃ…!?」ドサッ

猟犬's「バウッバウッ!」ガッ

西兵101「な、なんだぁ…!このデケー犬の群れは!?」

ザザザッ

東のホビット14「僕らの相棒、ウォリードッグ!」シャキンッ

東のホビット15「こいつらも僕たちと同じようにお前ら人間に住み処を追われ、行き場を狭まれた哀れな種族さ」

西兵101「ほ、ホビット…!?」

???「そっ!せーかい!」ピョンッ スタッ

西兵101「え…!?」クルッ

バキッ

西兵101「ふぎゃっ!?」バタッ

ルイ「さすがに殺すのは気が引けるからね!気絶くらいで勘弁したげる?」ウインク
525: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/13(水) 22:34:55 ID:.cUSspOk4Q
西兵104「な、なんだ、お前ら!?」

西兵105「ホビットの分際でナメやがって!邪魔すると殺すぞ!?」

シュビッ

西兵104「ぎえっ!?」ゴンッ

ルイ「ふふん?なーんだ、ウォリー達を呼ばなくてもあたしらで十分っぽかったかなー?」ニヤニヤ

西兵105「このクソアマがぁっ!!」ブンッブンッ

ルイ「わったた!よっと!ほいほい!ほいさっさ!」サッサッ

西兵105「ちょこまかと……だらぁっ!!」ブンッ

ルイ「…ほっ!」シュバッ

西兵105「うほぁ!?」ビシッ

ルイ「せいっ!やぁっ!とうっ!」シュッシュッ

西兵105「あ゙っ!ぐっ!ぼはっ!?」バキッ ビシッ ドフッ

ルイ「人間は動きが"にぶちん"だなー!かよわい少女にボコられて悔しくないわけ?」ニヤニヤ

西兵105「くっ…おらぁぁぁあああ!!!」バッ

ルイ「はい!はい!はいぃぃい!!」バッバッ グルン

西兵105「ぶっへぇあ!?」バコォォッ ドサッ

ルイ「究極奥義!竜巻回転クルクル蹴り!!一丁上がり?」ドヤッ

西兵106「く、クソだせぇネーミングセンスしやがって!」ジャキッ

西兵107「ぶっころじばぁっ!?」ゴンッ ドタッ

猟犬1「ガゥルルル…!」ガブッ

西兵107「ぎええぇぇ!!」ジタバタ

ビュビュビュビュッ ドスッドスッドスッドスッドスッ

ギャアアアアアアアア!!!

ルイ「ムリだって?自然界でウチらに先手取らしたら、もう獲物は檻の中ってね!」ニヤッ

西兵106「ぐ…ぞぉお…!」バタッ

ルイ「さぁてと!親玉の馬車に突撃しちゃいますか!」ダッ
526: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/13(水) 22:36:47 ID:7FwZM..EWU
バサッ

???「な、何奴じゃ!?」ビクッ

ルイ「やっと会えたね!あんたがファルージャ?」

ファルージャ?「い、いかにもワラワがファルージャじゃ!」

ルイ「(あれ?なんか聞いてたより、ずっとブス………あ、そっか。人間の価値観って、ちょっとズレてるんだ?)」ポンッ

ファルージャ?「ワラワの邪魔をするでない!あっちへお行き!」シッシッ

ルイ「悪いけど、そーもいかないんだよね?癒しの力を持ったホビット返してくれる?」

東のホビット's「」バババッ

ファルージャ?「……!」

ルイ「おとなしく降参してくれたら助かっちゃうんだけどさ?どーする?」

ファルージャ?「わ、分かった。そなたらの要求を呑もう…」

ルイ「…ありがと。じゃあちょこっと縛らせてもらうから両手上げて膝着いて?」

ファルージャ「こ、こうかえ?」スッ

ルイ「うんうん!素直でよろしい!痛くしないから我慢しなね?やっちゃって!」

東のホビット's「」シュルッ

ファルージャ?「気安く……触ってんじゃないわヨォ!?」クワッ

東のホビット's「うわっ!?」ドカドカドカッ

ルイ「は!?ちょっとあんた何やってんのよ!?」

ファルージャ?「ざぁ〜んねんでしたぁ〜?ア・タ・シは……」ベリベリ

ルイ「え!?」ビクッ
527: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/13(水) 22:44:55 ID:.cUSspOk4Q
女装家「何を隠そうシャルウィンちゅわんでぇ〜っす!」パッ

ルイ「は!?だれ!?ファルージャじゃないの!?てかだれ!?どうやって顔剥がしたの!?」

女装家「ピーピーうるさいガキだこと?大樹を目前にして、どんな罠があるか分かったモンじゃないのに素直に女王を乗せて走ると思った?」

ルイ「ファルージャはどこさ!?」

女装家「女王を呼び捨てにしてんじゃないわよ!調子こいてんの!?」

ルイ「教えないとブッ飛ばすよ!!」

女装家「いやん!こわ〜い?でも…もうおっそいのよ、おバカ!?」

ルイ「へ?」

女装家「遂に叶っちゃうのよーん!オネェ様のドリーム幕開けニューロマンス!!も、サイッコー!ウヒョー!!」ルンルン

ルイ「はぁ?どうかして………あ!」ハッ

女装家「あらん?何か閃いちゃった?」

ルイ「あんた…ひょっとしてファルージャだけ大樹に先回りさせたんじゃ!?」キッ

女装家「そ?アタシ以外は知らされてないから行軍の様子も不自然に感じなかったんじゃなぁ〜い?」

ルイ「サイッアク!!こっちは最初から囮だったんだ!!踊らされた!?」イライラ

女装家「そうよ〜!アンタはアタシたちの作戦にあっさり引っ掛かっちゃったのヨォ〜ん?」ニヤニヤ

ルイ「うぅ〜…!く、悔しい〜…!!」ワナワナ

女装家「これでオネェ様はパーフェクト・ビューティフルになれるわぁん?
ついでにアタシも永遠の命で若さと美しさを手に入れちゃうの!ブォホホホホホ!!!」ゲラゲラ

ルイ「そんなのさせない!あんたをソッコーでブッ飛ばして大樹に行って悪巧みも終わらせるんだから!?」

女装家「ハァ?生意気な小娘ネェン?」ポキッポキッ

ルイ「小さいからって、あんまりナメないでよね…!」

女装家「ウフフ……ルナムーンとサンライズの指輪で彩ったゴージャスな拳でぶっ潰してあげる?」ギラギラ

ルイ「やれるもんなら!」ダッ

女装家「シャオラッ!!」ブンッ

ズガァァァン………
528: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 21:26:20 ID:mkjLEtwy6U
―――大樹―――

ズオオオオオン………

ファルージャ「フゥ〜…!」キラキラ

魔導師「……でかっ」ボソッ

ファルージャ「これぞまさしく見紛う事なき伝説……永遠なる生命力を宿すにふさわしい巨木よなぁ?」ニタァァァ

ファルージャ「のう?そなたもそう思わぬか?」チラッ

カロル「う、うん……」キュッ

ファルージャ「クスス?緊張せずともよい?」ナデリ

カロル「……!」ピクンッ

ファルージャ「始めようぞ?妾の為に実らせてたもれ?」

カロル「…約束、守ってね」

ファルージャ「案ずるでない?」ニヤニヤ

カロル「」スタスタ

「お待ちなさい!」ザッ

ファルージャ「……?」

魔導師「……」ジロッ

カロル「……!」
529: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 21:32:36 ID:mkjLEtwy6U
宣教師「…待ち伏せていた甲斐がありました!やはり現れましたね!」

カロル「宣教師さま…!?」

宣教師「あなたが西の女帝ファルージャですか?」

ファルージャ「…さよう?そなたは?」

宣教師「私は彼の友達です!」

ファルージャ「…友、とな?」ヒクッ

宣教師「身勝手な欲望の為に罪を重ねるのはおやめなさい!
あなたの野心によって、どれだけの命が奪われたかお分かりですか!?」

ファルージャ「ハンッ…キーキーと生娘のよがり声にも似た戯れ言を…?」シラー

宣教師「き、生娘のよがり…!?な、なななんてはしたない!?」ボッ

ファルージャ「顔を赤らめておるが、そなた処女ではなかろう?」

宣教師「!?」カァァァ

ファルージャ「かといって男慣れしている様子も無さそうな…?」ジロジロ

宣教師「だ、だだ、だから…!や、やめ……」モジモジ

ファルージャ「ハァン…さてはそなた、絶頂を知らぬのであろう?」ニヤッ

宣教師「ち、小さい子の前で下品な話はよしなさいと…!?」

ファルージャ「そう必死にならずともよい?そなたの操など妾にかかれば透けて見えるわ?」ニヤニヤ

宣教師「か、勝手なことばかり…!?」ワナワナ
530: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 21:37:10 ID:mkjLEtwy6U
ファルージャ「なんなら妾が手解きしてやってもよいぞ?ン?」ニヤニヤ

宣教師「大きなお世話ですっ!?」

ファルージャ「んぅ…あっ」レロッ チュピッ

宣教師「」ビクッ

ファルージャ「あ…ん……ハァッ……」チュプ ピチャピチャ

宣教師「な、なんですか…?自分の指を…そ、そんな卑猥な…!恥じらいというものはないんですか…?」オロオロ

ファルージャ「……ン?」チュポンッ ツツー タラァァァ

宣教師「」ゴクリ

ファルージャ「指先一つで溢れよるわ……」ヌラァァ

宣教師「」ハッ

宣教師「(な、なんであんな物を見て意識してしまってるんですか、私は!?おかしい!こんなの違います!!)」ブンブンッ

ファルージャ「…ハァン?そなた、見かけによらず好き者さな?」ニヤニヤ

宣教師「ち、違います!!あなたが変なことしだすからでしょう!?」

ファルージャ「女の悦びを教えてやろうと言うに……のう?パカラゥロ?」

魔導師「女王に教えてもらったら、もう他じゃ満足出来なくなるよ…?」

宣教師「知りませんよ!下卑た物言いをやめなさいと言ってるんです!?」アセアセ

カロル「……」ジーッ

宣教師「(うっ…そんなつぶらな瞳で見つめられると、なんだか罪悪感が…)」グサッ
531: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 21:40:23 ID:mkjLEtwy6U
宣教師「と、とにかく!そんな痴女に従ってはいけませんよ!さぁ、こっちへ?」

カロル「……」ジッ

宣教師「カロルくん…?」

カロル「ボク…ファルージャさんと約束したんだ。だから…」

宣教師「や、約束…?」

カロル「うん…」

宣教師「はぁ…キミは騙されてるんですよ。思い出してごらんなさい?
アントリア神官と約束した時も簡単に破られてしまったでしょう?」

カロル「でも……」モジモジ

宣教師「彼女は信用に値しません。一緒に行きましょう?」

カロル「ラムくんが…」ボソッ

宣教師「え…?」

カロル「……」

宣教師「…あなた!ラムくんに何をしたんですか!?」キッ

ファルージャ「…クスス」ニヤッ

宣教師「卑劣な…!恥を知りなさい!」

ファルージャ「控えぬか?」

宣教師「は…?」

ファルージャ「妾の気分次第でどうとでもなるのだぞ?」クスクス

宣教師「くっ…!」ギリッ
532: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 21:42:57 ID:repttFbQKM
ファルージャ「さ?もう茶番はよかろう?」ポンッ

カロル「っ…」オロオロ

宣教師「カロルくん…!」ガシッ

カロル「」ビクッ

宣教師「あの女に何を言われたか知りませんが…」

魔導師「さっきから…女王に向かって痴女だとか、あの女呼ばわり……殺されたいのかい?」ニギニギ

宣教師「」ビクッ

カロル「……!」キッ

魔導師「……」ピタッ

カロル「宣教師さまに何かしたら怒るよ…?」ジーッ

ファルージャ「パカラゥロ、お下がり?」

魔導師「んふふ……くわばらくわばら」スッ

カロル「大丈夫だよ?ボクにまかせて?ね!」ニコッ

宣教師「っ…ですから!キミがそんな事をする必要はないんです!」ガッ

カロル「わっ……」グイッ

宣教師「どうそそのかされたか知りませんが…キミが責任に感じる事なんて何一つないんですよ!?」

カロル「……心配しないで?」ニコニコ

宣教師「〜〜…どうしてキミはいつもいつも……私達の気持ちを顧みずに一人で先走るんですか!?」

カロル「……」

宣教師「お母様も心配されてますよ!?院のみんなも待ってます!!ヒメくんも団長さんもキミの為に必死で戦って……」

カロル「…知ってるよ。ボクのせいで争ってるんでしょう…?」シュン

宣教師「ですからキミのせいなんかではありません!」

カロル「ボクの為にって…言ったじゃない」ブルッ

宣教師「い、言い方一つの問題でしょう?そういうつもりで言ったのではなく……」タジッ

カロル「もう、いいよ。終わらせたいんだ…」ブルブル

宣教師「か、カロルくん…」ズキンッ
533: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 21:48:40 ID:mkjLEtwy6U
宣教師「…と、とにかく今は逃げましょう。大丈夫です。きっとラムくんも助けてみせますから?」

カロル「……」

宣教師「ね?カロルくん?聞き分けてくださいますね?」

カロル「で、でも…」

ファルージャ「面倒さな?そなたは暫し眠っておれ?」アゴクイッ

宣教師「やっ!な、な…んっ?」チュッ

ファルージャ「ンっ…ハァン……れろっ……くちゃ」ニュチニュチ

宣教師「!?!?!?」メダパニ

クチュクチュレロレロペチャペチャピチョピチョ

宣教師「っ…〜〜〜!?」ジタバタ

ファルージャ「……ふっ」パッ

宣教師「い、いきな…り……ふあっ……」クラッ ベシャッ

ファルージャ「さぁ…これで邪魔は無くなったぞ?」ニヤリ

カロル「っ…宣教師さまになにしたの!?」キッ

ファルージャ「身悶える魔法に掛けただけよ?じき目が覚めような?」ニヤニヤ

宣教師「か、か…ろる…くん」ビクンビクン

カロル「……ごめんなさい」

宣教師「うぅ……!」ジャリッ
534: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 21:50:14 ID:repttFbQKM
ファルージャ「はようせぬか?待ちくたびれたわ?」ジッ

カロル「はい…」ピトッ

ファルージャ「いよいよさな…。フフ……さすがに興奮を禁じ得ぬわ?」ドキドキ

魔導師「女王の夢が叶ってなにより…」

宣教師「いけま……せん」ピクピク

カロル「……」スーッ

フワッ

ズズズズズズズゥゥゥン………

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

ファルージャ「お、おぉ!風が叫ぶ…!地が唸る…!ハハハ……なんと摩訶不思議な光景よ!?」ゾワッ

魔導師「……!」ブルッ

宣教師「そん…な……」ウツラウツラ

ヒューン ボトボトボト

ファルージャ「おぉ!実が…こんなにも…!?」プルプル

カロル「…いっぱいできたよ。全部あげる」

ファルージャ「青白い果実…!これが…これが永遠の命を…!」ワナワナ

魔導師「ん、ふふ…んふふ……すごい…!すごいじゃないの…これなら確実に永遠の命が手に入るよ!?」ブルブル

カロル「……!」キュッ
535: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 21:51:37 ID:repttFbQKM
カロル「ファルージャさん」クルッ

ファルージャ「どれからかじろうかのう…!フフ!すべて妾の物じゃ…!」ハァハァ

カロル「ファルージャさんったら!」

ファルージャ「クスス…そう急かすでない?まずはこの実を食し、まことに永遠の命を得たか確かめようぞ?」ヒョイッ

カロル「……」

ファルージャ「アッ……ンゥ…」カプッ

ファルージャ「フゥン…まずまずの味…?」シャクシャク

ファルージャ「…さて、パカラゥロや?」ジッ

魔導師「んふふ…」グワシッ

ファルージャ「むぐっ!ゔっ……うぐぅぅ…!?」ジワァァ

魔導師「」パッ

ファルージャ「あっ…えほっ……ぶぇあぁぁ!!ぅえっ!!」ゲロゲロ

魔導師「ん…?」

ファルージャ「な…んじゃ、ごれ…あ?」ビタビタ

魔導師「……!?」

ファルージャ「…うげぇぅぶ!あ゙あ゙あ゙ぼぇばぁぁぁ!!!」ジタバタ

魔導師「女王…!女王!?」アタフタ

カロル「……」

ギャアアアアアアアアア………
536: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 21:54:48 ID:repttFbQKM
ファルージャ「あぐっ…ふ、うぐぅ…!」ヨロッ フラフラ

ファルージャ「ハァっ…ハァ……は、ハハハ!キャハハハハハ……」ゼェゼェ

魔導師「だ、大丈夫かい…?」ハラハラ

ファルージャ「苦しっ…苦し…かった…。死を感じたぞ!ハァ…死とはかくも恐ろしいものか…!?」ダラダラ

魔導師「ご、ごめんよ…」オロオロ

ファルージャ「されど妾は生きておる…!死を確信した直後であろうに…たった数十秒で生を取り戻したのじゃ…!」ガクガク

魔導師「……?」

ファルージャ「これが永遠の命……ふ、フフフ……」プルプル

ファルージャ「キャハハハハハ!!!」ケラケラ

魔導師「おめでとう?」パチパチ

ファルージャ「フゥ〜…これほどの感動は未だかつてないわ?
これで老いに怯える事もなく、完璧な美が窶れ衰える事もないのだから…?」ニタァァァ
537: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 21:56:06 ID:mkjLEtwy6U
カロル「ねぇ…もういいでしょう?」オドオド

ファルージャ「クスス……」

カロル「?」キョトン

ファルージャ「あれを?」

魔導師「はいはい」つ【銀煙管】

ファルージャ「火?」パクッ

魔導師「ん」シュッシュッ シュボッ

ファルージャ「」スパー

カロル「ねぇ!約束だよ?争いを止めてラムくんも返して!」

ファルージャ「そなたも吸うてみるか?神の草は心地よく香るぞ?」プカプカ

カロル「い、いらないよ…!それより早くみんなを止めて!?」タジッ

ファルージャ「」ピンッ

シュボッ パチッパチッ

カロル「わっ!?」ビクッ

ファルージャ「クスス…手入れもなされておらぬゆえ、枯れ草がよう燃えるわ?」クスクス

魔導師「んふふ…物騒だねぇ?早く逃げないと自分らも火の餌食だよ?」

ボォォ……

カロル「なにしてるの!?消さなきゃ…ひゃっ熱い!?」アセアセ

ファルージャ「じきに残りの果実も大樹もろとも消し炭と化そうぞ…?永遠の命は妾の物よ!キャーハハハハ!」ケラケラ
538: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 21:57:57 ID:mkjLEtwy6U
メラメラ メラメラ

ファルージャ「よもやここに用はない。燃え広がる前に行こうぞ?」パシッ

カロル「きゃっ…ま、待ってよ?火を消さなきゃ周りに燃え移って危ないよ!それに宣教師さまが…」グイッ

ファルージャ「あの程度の女子(おなご)など忘れておしまいな?
これからは絶世の美を持つ妾の膝元で甘い声を聴かせておくれ?」クスッ

カロル「離してよ!」バッ

ファルージャ「!!!」パッ

カロル「宣教師さま!」ダッ

ファルージャ「他の女子の為に…妾の手を振り払ったじゃと?」ポカーン

魔導師「女王。早いとこ行かないと本当に……」

ゴォォォオオオオ

ファルージャ「……」イラッ
539: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 21:59:09 ID:repttFbQKM
カロル「宣教師さま、へいき?今、助けるからね!」ガシッ

宣教師「か、カロル…くん」グッタリ

カロル「んっ…んぅっ!うぅぅ……」ググッ

宣教師「じ、自分で立てますから無理は…」オロオロ

カロル「あうっ!!」ベシャン

宣教師「だ、大丈夫ですか!?」アセアセ

カロル「ごめんなさい…。ボク、力ないから…」ムクッ ヨロッ

宣教師「い、いえ…お気になさらず。私が重すぎただけかもしれませんし…」カァァ

カロル「そんなことないよ!宣教師さま、とっても痩せてるもの?」

宣教師「は、はは…なんかすみません。気を遣わせたようで?」テレテレ

カロル「? あ、もう火がこんなに……宣教師さま、歩けそう?」

宣教師「えぇ!行きましょう!」

カロル「うん!」

ファルージャ「妾に断りなく決めるでないわ?」ザッ

宣教師&カロル「」ビクッ

ファルージャ「勝手に飼い主のそばを離れるようなペットには罰を与えねばな?」ジッ

カロル「ペット…?」キョトン
540: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 22:01:26 ID:repttFbQKM
ファルージャ「思えばそなたは初めから…妾の寵愛を受けようと靡くそぶりもなかったか?」ヒタヒタ

カロル「……」プイッ

宣教師「寵愛…?も、もしかしてあの女に何かされたのですか!?」

カロル「…く、くすぐったいこと」ギュッ

宣教師「!? あなた、こんないたいけな少年にナニしてるんですか!?」ギョギョッ

ファルージャ「美貌にも取り憑かぬ…。快楽にも従わぬ…。なればそなたを支配する方法はなんじゃ?」

カロル「わ、分かんないよ…。そんなの…知らないもの」オロオロ

ファルージャ「痛みか?恐怖か?さもなくば絶望…?」

カロル「……」ブルッ

ファルージャ「試しに一つ…絶望でもくれてやろうか?」ニタァァァ

カロル「へ…?」

ボォォォオオオオ

宣教師「きゃあっ!?」ズザザッ

カロル「わっ!?」ゴロンッ

宣教師「す、すみません…げほっ!げほっ!」ゴホゴホ

カロル「う、ううん…だいじょ……あっ!?」ハッ
541: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 22:04:26 ID:repttFbQKM
カロル「あぁ…!」キョロキョロ

宣教師「ひ、火の勢いが強まって…私達を囲んでしまいましたね…ごほっ!?」ゴホゴホ

ファルージャ「周囲はもうじき火の海となろうな?そのままではそなたらも大樹と共に焼け死んでしまうぞ?」

宣教師「ごほっ…!で、でしたら…あなたを退けて彼と逃げますよ!」ゴホゴホ

魔導師「おっとと…女王には指一本触れさせないよ?」ニギニギ

宣教師「くっ…!」キッ

カロル「……!」キッ

ファルージャ「…なんじゃ、その目は?反抗しておるのかえ?」ピクッ

カロル「約束したじゃない!ボクが協力したら…全部やめてくれるって!?」

ファルージャ「気が変わったのよ?やはりそなたが欲しくなった?」

カロル「そんなのズルいよ!!」

ファルージャ「…ラム、とか申したな?」

カロル「!」

ファルージャ「クスス…あくまで背くとあらば置き去りにした友も仲良く火炙りにしてくれようか?」ニヤニヤ

カロル「そんなっ…!ラムくんも返してくれるって……」

ファルージャ「気分次第と申したであろう?」ニヤニヤ

カロル「っ……」

宣教師「人でなし…!噂に違わない悪女ですね!?」

ファルージャ「なんとでも?」フフンッ

宣教師「こんな女にいいようにされてはなりません!
私がなんとか道を開いてみせますから…キミは全力で走りなさい!」

カロル「……!」
542: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 22:10:14 ID:mkjLEtwy6U
モワモワ モワモワ

宣教師「げほっ!げほっ!熱っ…煙が充満してきましたね…早く…しないと」クラッ

カロル「宣教師さま…!」オロオロ

宣教師「ご心配なく…!あなた達を倒してでも先に進ませてもらいます…!」ジッ

魔導師「んふふ…なにもわざわざ苦しい死に方を選ばなくてもいいのにねぇ?」ニギニギ

ファルージャ「じわりと殺しておやりな?黒魔術にのたうち回りながら盛る炎に呑まれて逝くのも一興よ?」

魔導師「仰せのままに…?」ニヤッ

宣教師「…いきますよ!」グッ

カロル「待って!宣教師さま!」ガシッ

宣教師「? なんですか?もう話している暇は…」

カロル「やっぱりボク、ファルージャさんに付いてく!」

宣教師「はい!?」

カロル「それでいいでしょ…?」ジッ

ファルージャ「そうさな?出来る事なら妾もここでそなたを手放しとうない?」ジッ

カロル「……!」

ファルージャ「愛でてやろうと思ったが気が変わったわ…。
妾の好みに染まるまで、ゆるりと調教してやろう…?」ペロッ

カロル「っ!」ゾクッ

宣教師「だ、ダメです!こんな痴女に付いていくなんて絶対にいけません!!」ヒシッ

ファルージャ「なにせ途方もない時よ。もて余す事もあろうが…良い遊びを見つければ多少は退屈も紛れような?」ジュルリ

カロル「っ…せ、宣教師さまには…なにもしないでよ!」ブルブル

ファルージャ「よかろう?」クスッ
543: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 22:12:08 ID:repttFbQKM
ファルージャ「フフ…命拾いしたな、宣教師とやら?」チラッ

宣教師「よしなさい、カロルくん!私の事なら大丈夫ですから!」

カロル「宣教師さま…」ギュウウ

宣教師「へ!?」ドキンッ

カロル「…助けに来てくれてありがとう?」ニコッ

宣教師「!」キュンッ

宣教師「(こ、こんな時に久々の…)」ドキドキ

カロル「みんなにも…ありがとうって伝えてね」スタスタ

宣教師「え?ちょっと待ちなさい!それはどういう……」

カロル「…ボクのことは忘れて?」クルッ

宣教師「……は?」ポカーン

カロル「」ウルッ

宣教師「」ハッ

カロル「さよなら…」タタタッ

宣教師「か、カロルくん!」ダッ

魔導師「」バッ

宣教師「!?」ピタッ
544: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 22:18:43 ID:repttFbQKM
魔導師「そろそろしつこいなぁ…?引き際、大事だよ?」ギラッ

宣教師「カロルくんをどうする気ですか?」

魔導師「君が気にしなくていいんじゃないの…?あれは女王の所有物なんだから?」

宣教師「彼を物みたいに扱わないでください!?」

魔導師「なんにしろさ…もうどうこう言ってらんないよ」チラッ

宣教師「っ……」タジッ

メラメラ メラメラ

魔導師「間に合うかは知らないけど…早くお逃げ?拾った命と勝ち取った幸運…大切におしよ?」

宣教師「……!」

魔導師「自分は先に行ってるよ。焼け死ぬなんて御免さね?」スタスタ

宣教師「うぅ…げほっ!」ダッ

バサバサッ ヒューン ゴシャアッ

ボォォォオオオオオオ

宣教師「あっ…落下した大樹の枝に活路が…!?」ハッ

メラメラ メラメラ

宣教師「そんな……」ガクッ

モクモク モクモク

宣教師「げほっ!ごほっおほっ!?」ゴホゴホ

宣教師「(息が…!)」プルプル

宣教師「(こんな…こんな最期……あまりにも…)」フラッ

バタッ

ゴォォォオオオオ ゴォォォオオオオ………
545: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/14(木) 22:30:19 ID:mkjLEtwy6U
ゴォォォオオオオ ゴォォォオオオオ

西の馭者「女王陛下ぁ!!火の手がそこまで迫っております!速やかに避難を!?」ガラッ

ファルージャ「うむ。馬車に乗り込むぞ?」スタスタ

カロル「……!ねぇ…宣教師さま、ホントにちゃんと逃げられたの!?」ガシッ

ファルージャ「パカラゥロ…?」チラッ

魔導師「平気、平気…しっかり見届けたからさ…?」ニヤリ

カロル「ほ、ホントに…?」ハラハラ

ファルージャ「はよう乗らぬか?妾まで火事に巻き込まれようが?」シラー

カロル「……う、うん」スッ

ファルージャ「……」

魔導師「シャルウィンたちはどうするんだい?」

ファルージャ「永遠の若さが手に入れば…もはや美容の必要もあるまい?」クスッ

魔導師「ん……それもそうだねぇ…」ポリポリ

ファルージャ「呼び戻したければ行ってきても構わぬぞ?」

魔導師「いや、せいせいした…。あいつ嫌いだし…?」

ファルージャ「さようか。では帰還するとしよう」スッ

魔導師「」スッ

西の御者「ハァッ!!」パシンッ

パカラッパカラッ パカラッパカラッ………

ボォォォオオオオ………
546: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/18(月) 21:50:24 ID:4/U2eI1hYQ
〜〜〜夢(宣教師)〜〜〜

宣教師「……」パチッ

宣教師「」ムクッ キョロキョロ

宣教師「(おかしいですね、私…火に呑まれて死んだのでは?)」ボーッ

???「目が覚めましたか?」

宣教師「え?」クルッ

???「と言っても…夢の中ですけどね」ニコッ

宣教師「あなたは…?」

???「私は何者でもありません。ただの残留思念です?」ニコニコ

宣教師「ざ、ざんりゅう…しねん?」ポカーン

???「それはそうと…いいんですか?このまま死んでしまっても?」ニコニコ

宣教師「なぜあなたがそれを……あぁ、分かりました。これは走馬灯ですね。
死の恐怖を和らげようと主が最期に与えてくださる幻想……」

???「どう捉えても構いませんよ。それより少しお話でもしませんか?」ニコニコ

宣教師「お話?」

???「はい!」ニコニコ

宣教師「(ずっと笑ってる…)」ジーッ

???「?」ニコニコ

宣教師「(でも…ふしぎと不気味には感じませんね。むしろ安らげるような…暖かい笑み…いったい何者なんでしょうか?)」ジーッ
547: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/18(月) 21:51:37 ID:ZVvoP18ass
???「貴女はなぜここに来てしまったのですか?」ニコニコ

宣教師「…友人を助けようとして、ですかね」シュン

???「ふむふむ、どんな友人ですか?」ニコニコ

宣教師「ホビットで…癒しの力という特異な才能を秘めた…とても穏やかで優しい少年、です」

???「なぜ助けようとなさるんですか?」ニコニコ

宣教師「? 友人なのですから当然でしょう?」

???「そうですか?」ニコニコ

宣教師「あなた…さっきから何が言いたいんですか?」ジトッ

???「だって助けなければいけないような状況なんですよね?
つまりなんらかの危機が生じているということ。であれば関わると貴女にも火の粉が降りかかるかもしれませんよ?」ニコニコ

宣教師「それがなにか?」ムスッ

???「見捨ててしまえばいいじゃないですか?」ニコニコ

宣教師「はい…?」イラッ

???「そうすれば何事もなく無事にやり過ごせますよ。違いますか?」ニコニコ

宣教師「……」イライラ
548: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/18(月) 21:58:24 ID:ZVvoP18ass
宣教師「なんで見ず知らずのあなたにそんな事を言われなければならないんですか?大きなお世話ですよ!」プンプン

???「友人なら、また作ればいいじゃないですか?その子にこだわらなくても替えが利くでしょう?」ニコニコ

宣教師「そういう問題ではありません!だいたい替えが利くとか…そんな考え方をする人に友人を作る資格なんてありませんよ!」プンプン

???「資格なんてなくても友人はできますよ。嫌いな相手とだってニコニコ話してれば形だけの友人にはなれます?」ニコニコ

宣教師「歪んでますね!理解出来ません!」

???「そうでもしないと、いずれ仲間はずれにされてしまいますよ?」ニコニコ

宣教師「嘘で固められた自分を演じるくらいなら正直に生きて孤立した方がマシです!」

???「その方がよほど歪んでますよ」ニコニコ

宣教師「は…!?」

???「ひとりぼっちは寂しいです。心がしぼんで臆病になります。
鬱結と抑圧に蝕まれ、やがては誰とも向き合えなくなってしまいます」

宣教師「……」

???「私達の生きてきた世界は平等ではありません。
それらによって価値観も性質も人格も異なるからです」

宣教師「っ…そんなのは百も承知ですよ!かといって無理に合わせてなんになるんですか!」

???「心が豊かになります」

宣教師「無理をして自分を圧し殺して豊かになど…」

???「孤独に苛まれず、輪の中で安心に満たされ、大勢に溶け込む優越感を得られます。ひとりぼっちで悩み続ける弱者とは大違いです」

宣教師「……」
549: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/18(月) 22:02:14 ID:ZVvoP18ass
???「孤独は人を弱くします。喜怒哀楽を分かち合う相手もいませんから自分の感情を過敏に感じてしまいます。
不満を感じれば自分を責め、なじり、恥じて、不安と葛藤にまみれながら見えない何かに許しを乞う惨めな心と寄り添わねばなりません」

???「健全に生きたいのなら利口になることです。普通という概念の中で絶えず移り変わる常識と呼ばれる流行を汲み取って精神を大衆化させるのです」

???「身に降りかかる災いや、異変に繋がる行いは避けましょう。
また、そうした出来事を及ぼす交友も迷いなく断ち切り、私的感情に左右されることなく便利な付き合いを選びましょう」

宣教師「………」

???「例えるなら…貴女の友人」

宣教師「!」ピクッ

???「長年、対立してきた他種族、人智を超越した異才、イビツですね」

宣教師「……」

???「普通とは程遠い。むしろ疫にしかなりません。ご自身の為にも切り捨てた方がいいですよ?」

宣教師「ですからあなたに言われる筋合いはありません!」

???「不幸な子はかわいそうですか?」

宣教師「は!?何を言って……」

???「そんな子に構って不幸をお裾分けされる方が、もっとかわいそうですよ」

宣教師「! いい加減にしないと怒りますよ!?」カッ

???「自分を大事にしましょう。でないと幸福なんて訪れませんよ」

宣教師「私は十分、幸せです!彼と関わって不幸を感じたことなんてありません!」

???「そうでしょうか」

宣教師「まだなにか…!?」
550: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/18(月) 22:08:57 ID:ZVvoP18ass
???「幼少にご両親を亡くされて天涯孤独となり、拾われた教団でみなしごとからかわれて執拗に虐めを受けてきた。
後に10年も慕い続けた親代わりであった方にさえ裏切られ、現在では大きな争いの渦中に在りますね」

宣教師「な、なぜあなたが私の生い立ちを……」

???「これは貴女の夢ですから。記憶が投影されるのはごく自然なこと」

宣教師「くっ…」イライラ

???「貴女はどう見ても不幸です。分岐点はいくつもあった筈なのにすべて間違った方向に進んでしまいましたね」

宣教師「私は後悔してません!正しい道を選んできました!」

???「あの少年との出会いが不幸を増幅しているのです」

宣教師「そんなのありえません!!勝手な憶測はやめてください!!」

???「本当に?」

宣教師「……!?」

???「では死の間際、貴女はなんと思いました?」

『こんな…こんな最期……あまりにも…』

宣教師「……!」ギリッ
551: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/18(月) 22:12:21 ID:ZVvoP18ass
???「後悔しましたよね」

宣教師「彼を救えずに死んでしまう自分の不甲斐なさがやりきれなかっただけです…!」

???「見捨てていれば、もっと楽しい時間を長く過ごせたかもしれませんよ?」

宣教師「偽りを信じたまま過ごす時など……」

???「思い出してみましょう。村で布教していた頃の自分を」

宣教師「……!」

???「子供たちに囲まれ、村人たちとふれあい、忙しなく教えを授けながらも充足感を得られた日々…」

宣教師「っ……」

???「偽りの平穏だったのだと知った今、あの時間は貴女にとって苦痛でしたか?手放してもいいと思える程度のものでしたか?」

宣教師「そうでは…ないですが」ブルッ

???「あんな子を助けようとしなければ…今も貴女は」

宣教師「や、やめてください!!」

???「……」

宣教師「そんな言い方…しないでください」ブルブル

???「なぜ?」

宣教師「たしかにあの日々は…私にとってかけがえのない時間でした。
あのような惨劇に見舞われてしまったのも今となっては悔やまれますし、正直に言えば心残りです…」

???「そうですね。それというのも…」

宣教師「ですが!!」

???「……?」

宣教師「カロルくんと出会い、目まぐるしく過ごした日々も同等に思えるくらい大切で…素晴らしい思い出です!」

???「……」

宣教師「起こってしまったものは仕方ありません…。未来など誰にも分からないのですから…。
彼の友達になったことも決して悔やんでなどいません!
私は自分の意思に従って共に生きていける希望を探しているんです!」

宣教師「あなたになんと言われようと…私は絶対、彼を見捨てたりはしません!
何度、絶望に襲われようと挫けずに希望を探し当ててみせます!」

???「…そうですか」ニコッ
552: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/18(月) 22:21:37 ID:ZVvoP18ass
???「貴女は強いお人ですね」ニコニコ

宣教師「え…?」

???「ふふふ、本当に…ひた向きで熱心です」ニコニコ

宣教師「?」

???「とりとめのない話ですが…とある素晴らしい力を授かりながらも、それを上手に活かせなかった方を私は知っています」

宣教師「……?」

???「力というのはね、何かを起こすきっかけでしかないのですよ。
不変の物に目を向け、どうしていくかは今を生きる方々の意識に委ねられます」

???「貴女たちはそうして時代を造り上げる命題を担っています。新たに生まれくる命もまた同様に」

???「必要なのは力ではありません。その力に関わる、あなた方の意思なのです?」ニコニコ

宣教師「そ、そんな事…言われなくても分かってます…」

???「はぁ……ふふ。自分に足りなかった物をようやく探し得た気がします」ニコニコ

宣教師「今度はなんの話ですか…?」

???「これは独り言です?」クスッ
553: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/18(月) 22:32:21 ID:ZVvoP18ass
???「最後になりますが…」

宣教師「はい…?」

???「貴女はとても真面目で厳しい性格。ゆえにキッパリと善悪を分けてしまいがちです」

宣教師「」ムッ

???「…貴女が悪だと見定めてしまう事象も長い目で見てみると、より良い先々へ繋がる架け橋なのかもしれませんよ?」

宣教師「どういう意味ですか…?」

???「失敗から何かを学べるように…波乱に満ちた現代の行いが未来を戒める教訓となれば、それもまた良いことだと思いませんか?」

宣教師「一理ありますが…失敗ばかりでは何も成し得ません」

???「そうですね。正しいですよ」ニコニコ

宣教師「……」

???「ですが皆、一様に正しいと信じて我が道を進んでいきます。
それらに善か悪かを決定付ける方法なんて存在しません」

宣教師「…そんな事を言ってしまったら私達は何を信じていけばいいのですか?」

???「信じたい物を信じればいいんです?」ニコニコ

宣教師「……?」チンプンカンプン
554: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/18(月) 22:36:57 ID:4/U2eI1hYQ
???「貴女の信じたい物を信じて、貴女が正しいと思う事を納得いくまで全うなさってください」ニコニコ

宣教師「? 結局、あなたは何がしたいんですか?」

???「…今、貴女に告げたままにしているのですよ」ニコニコ

宣教師「(な、なんと言いますか…まったく掴めない人物ですね?)」ヒクヒク

???「どうかこの世界を…もう少しだけ和らげてあげてください」パチッ

宣教師「(細められた目がはっきり開いて…?)」

???「貴女と……"彼"ならきっとそれができます?」クスッ

宣教師「(瞳の色が……黄色い…)」ハッ

???「癒しの力とは純粋な真心を差し伸べる思いやりの奇跡。
心を歪めてしまったら二度と使えなくなってしまいます」

宣教師「(ま、まさか…まさか…!?)」

???「乱されず、囚われず、あるがままで…穏やかに……健やかに………」

宣教師「ま、待ってください……!」アセアセ

???「…さようなら。宣教師さん。お達者で?」フリフリ

宣教師「もしかして、あなたは……」スッ

???「……託しましたよ?」ニコニコ

パァァァァァァァァ………

宣教師「(っ……まぶしっ)」バッ
555: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/18(月) 22:39:27 ID:ZVvoP18ass
―――大樹の焼け跡―――

「お……て……きて…!」ユサユサ

宣教師「ん、んぅぅ……」パチッ

ルイ「よ、よかったぁ…!もう死んだかと思ったんだから?」パァァ

宣教師「ルイ…さん?」ムクッ

ルイ「大丈夫?どっか痛くない!?」

宣教師「…大丈夫、です。あの…それより……」

ルイ「ほんと運がよかったね!お姉さんの周りだけ燃えてなくて?」

宣教師「え?」キョロキョロ

東のホビット's「」ゾロゾロ

猟犬's「」ワラワラ

宣教師「……」

ルイ「実はさ!もうどかしちゃったんだけど、お姉さんを囲むようにして太い枝が落っこちてて…それが火から守ってくれたみたい!」

宣教師「大樹の枝が…?」

ルイ「そうだよ!」

宣教師「」ハッ

ルイ「? どうかした?」

宣教師「いえ…」

ルイ「そう…?」キョトン

宣教師「(やはりあれは夢ではなかったんですね…)」ボーッ

ルイ「で、なんだけど……なんでこんな事になっちゃったの?」オロオロ

宣教師「……そ、それがですね」モゴモゴ
556:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/1/18(月) 22:40:50 ID:ZVvoP18ass
ルイ「えぇっ!?カロルって子を拐われた上に永遠の命まで取られちゃったの!?」ギョギョッ

ザワザワ ザワザワ

宣教師「すみません…」シュン

ルイ「あー…謝んなくていいって?ウチらもそんな気はしてたから?」アセアセ

宣教師「……」ズーン

ルイ「そっか〜…でもまぁ取られちゃったもんはしょうがないよ?元気出しな!」ポンポン

宣教師「ありがとうございます…」

ルイ「こっちは一応、ヒメの読み通りだったから敵も撃退できたし、人質も捕まえちゃったから!」

宣教師「人質…?」

ルイ「うん。なんか変態っぽいオッサンだけどファルージャの手下なんだってさ?
わりと手応えあったけど仲間に加勢してもらってリンチしてやったんだ!」ニカッ

宣教師「は、ははは…」ヒクヒク

ルイ「とーりあえず…ここにいてもあれだし、お爺ちゃん達と合流しちゃおっか?お姉さん、地図読める?」つ【地図】

宣教師「あ、はい。防衛城塞の位置は…ここですね」ピラッ

ルイ「ん、じゃあ道案内よろしく!行こう!みんな?」

東のホビット's「」コクッ

ルイ「お姉さんはウチの後ろに乗って?先頭走るから!」ヨイショ

宣教師「で、では失礼します」ヨイショ

猟犬1「バウッ!」フンスッ

宣教師「(心なしかマルクくんに似てますね…。同じ犬種なのでしょうか)」

ルイ「いっくよー!しっかり捕まって!」バッ

宣教師「っ……!」グンッ

ダダダダダダダダダッ
557: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/28(木) 21:47:43 ID:V/E4S4pAY2
〜〜〜2週間後〜〜〜

―――西の国(帝都・宮殿)―――

副官「領民の弾圧ならびに領地の支配、資産の確保。どれも滞りなく進んでおります」

フィクサー「…本国の様子は?」

副官「やや、なんとも信じがたい話ではありますが…陛下が東国よりホビットに救援要請し、カカドゥーラ率いる主力軍を返り討ちにされたとか?」

フィクサー「なんだと…?」ピクッ

副官「これは珍しく総指揮の予想が外れてしまわれましたなぁ?」ニヤリ

フィクサー「誤差の範疇だがな…」

副官「まぁとりあえず今は西国の領土を獲得していくのが先決でしょうなぁ」

フィクサー「…こちらの動向はおおかた知れ渡っているだろう。至急、足場を踏み固めねば労も報われん」

副官「では本国は……」

フィクサー「泳がせておけ?」

副官「承知しました」

フィクサー「さしあたって…東国、南国は滅亡寸前。本国も虫の息、か。
そろそろ……静観に徹した国々がなんらか動きを見せる頃合いだな…」

副官「いやはや慌ただしいことで?」

フィクサー「だがそれより何より……」

王国兵1「総指揮!!」ザッ

フィクサー「……」ジッ

副官「なんだね?騒々しい?」

王国兵1「報告がございます!!」
558: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/28(木) 21:52:42 ID:repttFbQKM
副官「ファルージャを名乗る美女が入城を求めているだと!?」ギョギョッ

王国兵1「ははっ!!」

フィクサー「行方を眩ませていたかと思えば……」

副官「我々の侵攻を恐れて逃げたのかとばかり……正面から堂々と現れるなんて一体なにを考えているやら?」

フィクサー「懸命なのか…命知らずか……読めぬ女だな」

王国兵1「いかがされますか?」

フィクサー「通してやれ」

副官「捕らえないので?」

フィクサー「…捕らえて殺すのはたやすいが領地を恙無く平定するのであれば易々と奪える命でもあるまい?」

副官「独裁者が処刑されて喜ばれこそして恨まれる事があるとでも?」

フィクサー「奴の家臣らは拷問にかけられながらも一人として口を割る事なく潔い死を遂げてみせた?
あれほどに忠誠心を持たせる求心力は民にすら及んでいると見ていい」

副官「…買いかぶり過ぎでは?」

フィクサー「買いかぶりかどうかは直接、この目で見極めれば分かることだ」

副官「なるほど。まさしく?」

王国兵1「で、ではお通ししても?」

フィクサー「うむ。丁重にな…」

王国兵1「はっ!」ダッ

フィクサー「(とうとう相見える(※あいまみえる)運びとなったか…。"魔性のファルージャ"…どれほどの器か見定めてやろう)」
559: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/28(木) 21:55:27 ID:mkjLEtwy6U
―――王国(城下町)―――

ワァァァァアアアアア!!!

ワイワイガヤガヤ

ランランラン ルララールラー ドンチャンドンチャン

憲兵1「ははは!祝宴も3日目だってのに大した賑わいだな?人もホビットも関係なしだ?」

憲兵2「あぁ、なんせ陛下の見事な手腕で強大な敵国の軍を返り討ちにしてやったんだ!王国人なら誇らしくて当然さ?」

憲兵3「いやー!俺もあん時ばかりはダメかと思ったけど…やっぱ陛下ならやってくれると思ってたぜ!
ホビットも大活躍だったし、これからは今まで以上にうまくやってけそうだな?」

憲兵4「浮かれるな!!」カッ

憲兵's「」ビクッ

憲兵4「…この騒ぎだ。人混みに紛れて不審なそぶりを見せる輩がいるとも限らん。入念に見回れ」

憲兵1「は、はい…。すみません」タジッ

憲兵4「」スタスタ

憲兵2「…なんかピリピリしてんのがあちこちいるな?」

憲兵1「そりゃそうさ。あの戦いで何万人も死なせてるんだから」

憲兵3「たしかに気の毒だけどよ…。俺たちに当たってもしょうがねぇだろ?」ブツクサ

憲兵5「おい、お前ら。滅多なこと言うもんじゃないぞ?」スタスタ

憲兵1「あ、先輩…!見回りお疲れ様です!」ピシッ

憲兵5「あぁご苦労さん。俺だから良かったものの…タチの悪い奴に聞かれてたら大変だったぞ?」

憲兵3「へへ!すんません?」ヘラヘラ

憲兵5「……」ジロッ

憲兵3「?」キョトン

憲兵5「城内の広場を見てこい?」

憲兵2「はい?なぜでありますか?」

憲兵5「少しは彼らの気持ちが分かるだろうさ。ここは俺が見ておくから行ってこい」

憲兵1「はぁ…?」
560: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/28(木) 21:56:58 ID:repttFbQKM
―――城内広場―――

プーン

ウワァァァァアアアアアン………

町娘「ひぃっ…ふぅぐ…!どうじて…弟がこんな目に…!」シクシク


幼女「パパ〜!おっきして?ねぇパパ!」ユサユサ

幼女の母「レコちゃん…パパはもう起きないのよ?」

幼女「なんで〜?」

幼女の母「だって…だって…!うぅぅぅ……」ジワァァ

幼女「ママ?」キョトン


老婆「息子や…!立派だったねぇ…!さぞ勇敢に戦ったんだろうねぇ…!」ナンマンダブ

老人「儂らがこうしておれるのは彼らのおかげじゃて…」ナンマンダブ


青年「俺も戦えたら…ごほっ……お前がこんなになるまで頑張ってくれたのに自分が情けないよ…」


憲兵1「……なんだ、こりゃ」

憲兵2「戦死者の遺体が並べられてるのか…」

憲兵3「うぷっ…すげぇ臭いだ…!やべ…もどすかも?」プルプル

憲兵1「なんで王家の膝元でこんな……」

教徒「陛下のお達しです」ザッ

憲兵's「」ビクッ
561: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/28(木) 22:01:34 ID:mkjLEtwy6U
教徒「城下で宴に賑わう人々も今日という平和がなぜあるのか深く考え、決して忘れないようにしてほしいと願っての配慮だそうです」

憲兵1「へ、へぇ?」オロオロ

教徒「お見かけしたところ憲兵団の方々と思われますが…皆様も誰かにお別れを?」

憲兵2「う、うん…。まぁな」

教徒「そうですか…。この度はまことに御愁傷様でした」

憲兵3「あ、あぁ…うん」

教徒「…小蝿のたかる冷たい亡骸に頬擦りして泣きじゃくる皆様をどう思いますか?」

憲兵1「え?」

教徒「…先ほど訪れた方々は鼻をつまんで帰っていかれましたよ」

憲兵's「……」モゴモゴ

教徒「自分の家族、友人、恋人……いる分にはなんとでも感じられますがいなくなってみるとなんとも言えなくて…考えさせられますよね?」

憲兵1「…そ、そうだね」プイッ

憲兵2「あ、あれって?」ビッ

団長の妻「……」パンッパンッ

憲兵1「だ、団長の…奥方様?」

団長の妻「あら…?」チラッ

憲兵2「ど、どうも」ペコッ

団長の妻「見回りご苦労様です?」

憲兵3「あ、いえ…団長は一緒ではないのですか?」

団長の妻「主人は先にお別れを済ませてますから…」

憲兵3「な、なるほど…む、息子さんのご冥福を?」

団長の妻「えぇ、私も、もう済みました…。供養をお願い致します」

教徒「はい。お任せください」ペコッ

団長の妻「では失礼します?」ペコッ

教徒「お悔やみ申し上げます…」ペコッ

憲兵's「……」
562: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/28(木) 22:03:57 ID:repttFbQKM
衛兵1「大変だ!」ダダダッ

教徒「どうされました?」

衛兵1「政務官からとんでもない発表が出た!今すぐ町の連中にも伝えて回れ!」

憲兵1「な、なんだって言うんです?」

衛兵1「王国軍、軍事総指揮フィクサーが反旗を翻した!!」

ザワッ

衛兵1「西の帝都を拠点にしたまではよかったが…ファルージャを…ファルージャを娶って西の国土を全面支配すると宣言しやがった!」

憲兵2「え…!?なになに!?なに言ってんの!?」

衛兵1「だから!つまりっ!!フィクサーは王国が危機に瀕していると知りながら独断専行したばかりか…西の国を自分の物にしちまったんだよ!?」

衛兵2「また逆戻りだ…!皆、兵に駆り出される!?」

憲兵's「」ブルッ

衛兵's「緊急!!緊急の報せだ!!走れ、走れ!!」ダダダッ

ヒィィィィィイイイイ!!!

衛兵2「悪夢だよなぁ…!えぇ!?こんな死体の中でさぁ!?ハハハ!また死にに行けって言うんだぜ?全く笑っちゃうよなぁ!?」ゲラゲラ

遺族's「……」ボーッ

団長の妻「……」

教徒「…そん、な」ガクッ

憲兵1「あ、はは…ははは」ガクガク

憲兵2「い、生き延びたんじゃなかったのか…俺たちは……?」ヒクヒク

憲兵3「お、俺は御免だ!御免だからな!?」ダッ

衛兵1「あ、おい!!お前、どこに行くんだ!?」

衛兵2「無理もねぇやな…?一回目は気力で乗りきったが……二度目はねぇよ。戦意喪失は免れん」

衛兵3「まだ戦うと決まった訳でもねぇのに不安を煽ってんじゃないよ…。
とりあえず伝達はひとまず中止、城内広場の混乱を防ぐぞ」

衛兵4「おう!」

ダダダッ
563: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/28(木) 22:07:11 ID:repttFbQKM
―――王宮―――

政務官「各地の戦力図を洗い出せ!隅々まで調査結果を報告せよ!」バッ

伝者's「ははっ!」

ネバル「予め用意していた備蓄は惜しみ無く分配するです!
大事なのは貯蔵じゃなくて生産です!至急、農耕再促進に向けて人を送り込むです!」サッサッ

役人's「はい!!」ザッ

高官1「城下町で騒動が起きた!反対運動を鎮静化すべく憲兵団を動員しろ!」

高官2「だからまだ早いと言ったんだ!」

高官3「うるさい!陛下のお達しなのだから仕方なかろう!」

高官4「し、しかし…よく政務官殿が許されたな…」チラッ

高官5「……あのルフィアス団長が伴って推したというしな。それに実績もある」

高官6「とはいえ…危険すぎるだろ」

高官7「あぁ、危険だが…陛下の思し召すままに動くのが我らの役目だ」

高官8「うむ。我らの王は…常に結果で証明される方だからな」

政務官「喋ってる暇はないぞ」

高官's「……」

政務官「我々はまたしてもファルージャにしてやられた!今度こそ取り戻すのだ!」

政務官「正真正銘、最後にするぞ…!王国の威信にかけて…連合軍の犠牲を無駄にせぬ為にもな!」

高官's「」コクッ

政務官「(大丈夫だ…!陛下ならば必ずや…!)」ググッ
564:名無しさん@読者の声:2016/1/29(金) 00:57:20 ID:6NtAUAUHF6
楽しみに毎日チェックしてる
幼女の おっきして が
最初別の意味に見えてしまった恥ずかしい
565: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/29(金) 21:16:31 ID:N0iEIhkfnQ
〜〜〜回想(政務官)〜〜〜

政務官「な…なんと!?永遠の命がファルージャの手に…!?」

ネバル「し、しかも焼かれたですか!?大樹が!?」

ヒメ「あぁ、事前に配置したホビット達も囮に誘導されて気付けなかったらしい。見事に作戦の裏をかかれてしまったようだ」

宣教師「申し訳ありません…」

ヒメ「おまえばかりを責められないよ。加勢に向かう筈だったのに…僕が気を失ってしまったから」

団長「陛下の責任などではござらん!酋長殿らが向かわれたが一足違いであったと…!」

政務官「そ、それで…東国のホビットらは?」

ヒメ「東国にお借りした兵士もろとも帰らせた。このままでは手薄な本国が他国の権勢に脅かされてしまいかねないからな」

ネバル「す、救い主様はどうなったです?」

ヒメ「誘拐されたままだ」

宣教師「」ズキンッ

ヒメ「でも時間の問題さ。フィクサー総指揮が帝都を占拠したのなら実質的に勝利は確定してる。あとは報せを待つだけだ」

宣教師「……」

政務官「その…ことなのですが」

ヒメ「?」

政務官「じ、実は陛下に緊急の報告が…」

ヒメ「なんだ…?」

政務官「フィクサー総指揮から連絡がございました」

ヒメ「!」

団長「ファルージャを捕らえたか!」

政務官「い、いや…そうではなく…」

ヒメ「……?」
566: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/29(金) 21:24:30 ID:ct23qpuRuY
ヒメ「フィクサーがファルージャとの結婚を表明した…?」

団長「た、たぶらかされたというのか…!?」ビキィッ

ネバル「…オラたちも嘘だと思ったです…。でも詳しく調べさせたら…フィクサー総指揮は西の民衆を帝都に召集して式の準備に取り掛かってるです!」グッ

政務官「付け加えれば…奴はファルージャを迎える以前から我々に断りもなく西の領土を侵略していた事が分かった。最初から、この事態を想定していたのかもしれん…」

団長「フィクサーは貴様が推薦したのだったな…!?」

政務官「そ、その通りだ…!責任は取る…!」ググッ

ヒメ「いいよ、もう」

団長&政務官「!?」

ヒメ「なぁ宣教師……」

宣教師「はい…?」

ヒメ「カロルとおまえが始まりな訳だけど…どう思う?」

宣教師「……」

団長「ひ、ヒメ様!何をおっしゃって…!?」

ヒメ「あいつとおまえが真実を追い求めた日から……いくつも明らかになった事がある」

ヒメ「光が射した代償に闇は増した。明かせば明かすほど濃くなっていくばかりだ…」

ネバル「司祭さんが悪いって言うですか…!?」アセアセ

ヒメ「別に悪いなんて言ってない。でもおまえの話を聞く限り、あいつはまた逃げた。僕たちを守る為…なんて都合のいい言い訳をして」

宣教師「」ピクッ

ヒメ「また…初めからやり直すのか」

宣教師「……」

ヒメ「これじゃ…あいつが姿を消した日から何も変わってないよな」

宣教師「そんなことはありません」

ヒメ「……」
567: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/29(金) 21:26:27 ID:ct23qpuRuY
宣教師「確かに私達がしてきた事は結果的に何も残せていませんが…」

ヒメ「そうだな。何も残せてないし何も変えられてない」

宣教師「差別は続き、争いに呑まれ、利害に目を奪われて……人はまるで成長していない」

宣教師「それでも私達は何かを変えようとする意思を持ち、視野を広げていく自覚に目覚めました」

宣教師「その結果がどうであれ……すべき事は今までとなんら変わりありません」

ヒメ「今までとって…何を?」

宣教師「キミの言うように…また初めからやり直すんです?」ニコッ

ザワッ

宣教師「必死で越えた矢先にまた苦難が襲いかかってくるのなら…また必死に越えていくしかありません」

宣教師「何かを変えるというのは、つまるところ…この繰り返しだと思います」

宣教師「不変を証明するのはやった結果ではなく…投げ出してしまった後です。嘆いても名案は閃きません。考えましょう?」

ヒメ「……」

団長「むぅ……」ポリポリ

政務官「……!」ググッ

ネバル「そうです!みんなでいっぱい考えるです!」

宣教師「ふふ…」ニコニコ

ヒメ「…やっぱりおまえに聞いて正解だったな」

宣教師「へ?」

ヒメ「優秀な人物の的確な助言よりも、おまえの無根拠であてにならない励ましに救われるよ?」

宣教師「な、なんですか、それ……けなしてますよね?」ガーン

ヒメ「ハハハ…違う、違う?」クスクス

宣教師「むっ…にやつきながら言われても説得力がないですよ!」

ヒメ「あぁ、ごめんな。でも現状に負けそうな時ほど、おまえみたいに前向きなのがいると心強いって意味だよ?」クスクス

宣教師「…そ、そういう意味ならいいんですけど」
568: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/29(金) 21:33:37 ID:ct23qpuRuY
ヒメ「じゃあ気を取り直して早速、意見を言わせてもらうかな」

団長「もう思い付かれたので!?」

ヒメ「は?」ジロッ

団長「」ビクッ

ヒメ「もうっておまえ……まさか会話中、ボーッとして何も考えてなかったんじゃないだろうな?」

団長「い、いやその……」モゴモゴ

ヒメ「……」ジーッ

団長「う、ぐぅ…!」ダラダラ

ヒメ「はぁ…おまえらは?」

政務官「まとまってはおりませんが、いくつかの案はございます」

ヒメ「うん。さすがだ」ウンウン

ネバル「え?オラはまだなんにも……」

ヒメ「団長はまだしもおまえは役人だろ。こういう時に頭使わないで、いつ使うんだよ?ちょっとはリルラを見習え?」ジロッ

政務官「もったいなきお言葉…」ペコッ

ネバル「」ガーン

ヒメ「……まぁいいや。僕から話すぞ」

団長「面目ない…」ズーン

ネバル「です…」ズーン

宣教師「(なんか不憫ですね…)」シミジミ
569: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/29(金) 21:37:35 ID:N0iEIhkfnQ
政務官「奴らの思惑に沿わせる…ですと?」

ヒメ「あぁ、どうせ今から手間の掛かる事をしたって先手、先手を打たれてしまうだけだろ?なら、もう煩わしい作戦は無しだ?」

団長「ど、どのように…?」ゴクリ

ヒメ「僕があいつの立場なら、この期に動きそうな国を揺さぶりかける。
同盟は実質、破棄された状況下で今回戦った3国は瀕死状態。その中でも武力を示した王国は弱ってる内に潰したいとな」

ネバル「え!?そんなの困るです!」ドキッ

ヒメ「そしてフィクサーの独立遊軍が率先して3国支配に向けて働く代わりに侵略後の領土権を主張する。
もちろん主要な広い土地を譲ってもらえる訳じゃないが……フィクサーからすれば西の国と3国の一部を丸儲けだ?」

政務官「も、元を正せば西の国も我らと南国、東国の武力で手に入れた物だ…!
数多の血を流し、掴み取った勝利を掠め取るばかりか…味方を見限って他勢力と結託するなど…さながらハイエナの所業ではないか!」ムカムカ

団長「くっ…!祖国を裏切ってまで意地汚く…羞恥心の欠片もない男だな!?
外道め…!同じ武人としてのさばらせておく訳にはいかん!!」ギリッ

ネバル「みんなで平和を目指して立ち上がったのに…たくさんの死を利用して欲望のままに動くなんて許せない!です!!」ワナワナ

宣教師「…で、沿わせる…というのはつまり、今キミがおっしゃった行動の数々を黙認すると?」

ヒメ「あぁ、しかも奴が動きやすいようにこっちで混乱を起こすんだ」

宣教師「?」
570: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/29(金) 21:46:57 ID:ct23qpuRuY
ヒメ「まずは戦争が終わったと安堵しきった国民にフィクサーの反逆を伝える」

政務官「そんな事をすれば城下で大規模な反対運動が…対応に追われ、統制が揺らぎますぞ?」

ヒメ「それでいい。敵がおおまかに予想してる中で最も自然な流れが望ましいからな」

ネバル「で、でも普通なら隠すですよね?不自然にならないですだか?」

ヒメ「普通ならな。でも今は異常事態だ。残存する兵力は僅か。
連合も壊滅的であてにならないとするなら妥協して国民の命を絞り出すしかない」

ネバル「ま、また…戦わせるです?」ゴクッ

政務官「無茶だ…!」

ヒメ「……」

政務官「なんとか私が先回りして北国らに取り計らいましょう。
いつでも連絡出来るよう独自に密書のやりとりをしておりますので…」

団長「き、貴様!また隠れてコソコソと…!?」

政務官「黙れ!国交を預かる身ならば当然だ!?」

ヒメ「却下だ?それじゃどうにもならない?」

政務官「なっ…!?」

ヒメ「確かに役人の頭で考えるなら、おまえの提案が一番分かりやすいし正攻法だ」

政務官「で、であれば…」

ヒメ「でもな、正攻法っていうのは力関係が対等であるからこそ成立するんだよ。
例えば10人対100人で真っ向から挑んでも勝てないだろ?」

政務官「そ、それとはまた異なりましょう…?」

ヒメ「いや、違わないね?どう背伸びしたって不利な立場の3国に助けを求められても北国らは素直に応じたりしないと断言できる」

ヒメ「良くても国とは名ばかりの植民地にされるか…攻勢に転じてくるかだ」

政務官「バ、バカな!」

ネバル「で、でも今までの事を考えたら…同盟国なのに自分たちの都合が悪い時は全然、助けてくれなかったです!」

団長「ぬぅ…!これではなんの為の同盟か分からんな!」イライラ
571: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/29(金) 21:52:11 ID:ct23qpuRuY
ヒメ「同盟が形作られて50年あまり…個々の差はあれど6国の力関係は均等に保たれていたから対等な交渉と最低限の不干渉を貫けた。
ここまでの状況に陥ったのは初だから実感が沸かなくても無理はない……」

政務官「っ……く!一度、不平等な条約を結ばれでもすれば時を経ても修正は難しい、か」ギリッ

ヒメ「王国の兵力はフィクサーにまるごと吸収されてしまったしな。
西の鉱石財源も奪われ、そしてあの"魔性のファルージャ"までもが癒着したんだ」

政務官「」ハッ

ヒメ「…北国らを落とせる手札はみんな奴に持っていかれてるんだよ。僕らの付け入る隙なんかない」

政務官「た、確かにファルージャに掛かれば……卑しい北の王など、すぐさま魅了されてしまうかもしれん…!」

ネバル「鉱石財源を確保してるとなると…当初の予定通り、交易を持ち掛けて親密になる事も出来ちゃうです!」

ヒメ「だからこそ僕らはどこにも頼れないし、じり貧だと分かってて無理やり国民を奮起させても、なんら不思議じゃない」

宣教師「…そうしたところで、どう作戦に繋がるのです?」

ヒメ「…思い通りになったとぬか喜びさせて直接、奴に接近するのさ?」ニヤッ

宣教師「?」
572: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/29(金) 21:57:11 ID:N0iEIhkfnQ
ヒメ「リルラとネバルはさっき言ったようにフィクサーの裏切りを吹聴するんだ。
また戦争させる風に仄めかせて民衆の不安を煽れ。その後の対応は任せるから臨機応変にな?」

政務官「なっ…!?」

ネバル「ほ、本当にやるです…!?」

ヒメ「団長には立て続けに働いてもらうが…カカドゥーラとやり合った傷は大丈夫か?」

団長「御意!あの程度の傷など3日で完治しております!」ザッ

ヒメ「よし…じゃあ誰か腕の立つのを5、60人揃えられるか?」

団長「承知しました!」

宣教師「ま、まさか…少数で潜り込む気じゃ…?」

ヒメ「理解が早いな?」

政務官「は…!?」

ネバル「えぇ!?」

団長「んなっ…!?」

ヒメ「もうこれ以上、疲れきった民を戦わせる訳にはいかないし、そもそも勝負に持ち込める戦力なんか残ってないからな」

政務官「なりません!それでしたら、もう一度東国のホビットに……」バッ

ヒメ「それは出来ない」

政務官「な、なぜ…!?」

ヒメ「これは王国の問題だ。それに連合軍は役目を果たし、解散している」

政務官「で、ですから再度、呼び掛ければ…」

ヒメ「東国も南国も自国の復権に臨まなければならない期間だ。これ以上、迷惑をかける訳にはいかない」

政務官「くっ…!」
573: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/29(金) 21:59:29 ID:N0iEIhkfnQ
ヒメ「団長!」

団長「はっ!」

ヒメ「丸裸で敵陣に入る事になるが…僕を守りきる自信はあるか?」

団長「無論にござる…!」

政務官「い、いかんぞ…!たった数人で何が出来る!?」

ネバル「そうですよ!危なすぎです!殺されちゃうです!」

ヒメ「大丈夫さ。急ごしらえの軍は規模が大きい分、穴も大きい?入り込む隙間は十分にある!」

宣教師「確かに一枚岩とは言えなさそうですが…かといって、こちらの背負う危険の度合いは変わらないのでは?」

ヒメ「…奴の軍は元々、王国軍だ」

宣教師「……?」

ヒメ「家族や友人、故郷を手放してまで本気でフィクサーに付いていくとは思えない。あいつらは戦う道具じゃなく意思を持った兵士だから…」

宣教師「……」

ヒメ「…僕は国王だ。たとえ反目しても自国の兵士は可能な限り、救ってやりたい」

政務官「……」

ネバル「……」
574: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/29(金) 22:03:43 ID:ct23qpuRuY
ヒメ「もしも僕が死んでしまった時は真っ先に民の安全を優先しろよ?
もちろんおまえ達自身の安全もだ。義理立てて死に急いだりしたら許さないからな?」

政務官「しょ…承服しかねますな」タジッ

ネバル「オラも……死ぬなんて言わないでほしいです…!」グスッ

ヒメ「僕が王国の未来を背負ってるように…おまえ達も国民の未来を背負ってるんだ。そこを履き違えるな」

政務官「っ…はっ!」

ネバル「分かりました、です…」

団長「案ずるな!ヒメ様の命は必ずやワシが守り抜いてみせよう!」

ヒメ「頼りにしてるぞ?」ニコッ

団長「ははぁっ!!」

宣教師「私は蚊帳の外ですか?」

ヒメ「いや、おまえにも来てもらう」

政務官「し、司祭殿は女性ですぞ!そのような……」

宣教師「安心しました」ニコッ

ネバル「え…!?」ギョギョッ

宣教師「私でもまだ…力になれるのですね?」

ヒメ「あぁ、僕らは戦争をしに行くんじゃない。間違いを正し、今度こそ新たな未来に踏み出すんだ!」

宣教師「はい!」グッ

団長「……」ニコッ

政務官「」ゴクッ

ネバル「……!」ギュウッ
575: ◆WEmWDvOgzo:2016/1/29(金) 22:16:01 ID:ct23qpuRuY
>>564
ありがとうございます!
のろまな更新で申し訳ありません…osz

分かります!幼女におっきしてなんて言わせたら、もうそれ以外考えられないですよね!分かります!
幼女とおっきしては我ながら鉄板の組み合わせだと思います!
耳元で囁かれたら赤飯3杯ペロリとたいらげちゃいますね!
ごま塩振ったら5杯は固い!というか幼女を食(ry
576: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/10(水) 21:25:13 ID:WDqI.QgUIw
―――西の国(後宮)―――

ファルージャ「フゥ〜…」キュッキュッ キュポンッ

ファルージャ「…さ、グラスを傾けなさいな?」ジッ

ファルージャ「クスス…クイッとおいき?妾をして絶賛させた美酒ぞ?」トクトクトク

ファルージャ「…こんなものかえ。気が抜けてしまうゆえ蓋を閉じるぞ?」キュッ

ファルージャ「ン?あぁ、妾はよいのじゃ?」コトッ

ファルージャ「フフ……勘繰るでない?これでも酒には目がない方よ?」クスッ

ファルージャ「妾のグラスは……ここにあろうな?」チョンッ

ファルージャ「そうよ…?口に含んで?」レロッ

ファルージャ「その唇と舌で…しっとりと酔わせておくれ?」ウインク

ファルージャ「ンぅっ……」チュッ

ファルージャ「ン……ア、ハァン……うぅん…」ゴクゴク

ファルージャ「ふはっ……ふぅ…ふぅ」タラー

ファルージャ「…美味なるぞ?」ペロリ

ファルージャ「……」

ファルージャ「ン…」チラッ

ファルージャ「辛抱できぬとな?……こんなに?」ナデリ

ファルージャ「もう……今宵はゆるりと酒を酌み交わしたかったのに…」

ファルージャ「ま、よいわさ…」スルッ ハラリ

パサッパサッ

バッ ポフッ

ファルージャ「ッ…!強く掴みすぎじゃ…?繊細ゆえ…優しく……イッ……アッ!」ギシッ

ファルージャ「ソコ…はっ……あっん……アァァ…!」ピクンッ
577: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/10(水) 21:32:30 ID:esacBCDh.U
ギッギッ ギッギッ

アッ イイッ アッ アァァアアアアン!!!

王国兵1「またやってら?」コツコツ

王国兵2「ここの見回りにはよく響くわな…」コツコツ

王国兵1「毎晩、毎晩、よく飽きもせずに…」ケッ

王国兵2「そりゃあんだけの上玉ならな…。男心に火が点くってもんだろ」コツコツ

王国兵1「…結納を控えておきながらヤりたい放題だな」

王国兵2「んなこと言って羨ましいだけだろ?」

王国兵1「…ちっ!あんな色気、見せつけられちゃたまんねぇよ!」

王国兵2「おう、魔性のファルージャ……想像以上にイイ女だ」ジュルリ

王国兵1「なぁ…」

王国兵2「あ?」

王国兵1「の、覗かねぇか?」ハァハァ

王国兵2「…そりゃー名案だ」ニヤリ

王国兵1「よし、きた……ぶぐわっ!?」ムグッ

王国兵2「は?」

魔導師「……」パッ

王国兵1「ぼぇぇぇえええ!!!」ゴボゴボ

王国兵2「ひっ!!」

魔導師「今からその身に起こる不幸、受け入れる覚悟は出来たかい?」ニギニギ

王国兵2「え…?え?」タジッ

魔導師「腐った目で女王を汚すんじゃないよ…」ギラッ

王国兵2「ひ、ひぃああぁぁ」ガクガク

ギャアアアアアアアアアアア………
578: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/10(水) 21:35:39 ID:esacBCDh.U
―――宮殿(大浴場)―――

ザァァァァ モワモワモワ

ファルージャ「フゥー……3種のハーブを染ませた湯は芯から暖まるのう?」チャプッ

ファルージャ「引き立つ香りが鼻腔をくすぐり…身体の内をなぞる清涼感が時折、ふと情熱的なぬくもりを孕んで…ハァン……火照りをもて余すわ?」スンスン

魔導師「(地下では火起こしと汲み上げする奴隷たちのゲホゲホ咳き込む声が響いてるんだろうなぁ…)」シミジミ

ファルージャ「そなたは入らぬのかえ?実に心地よいぞ?」クタァァ

魔導師「……入らない」ムスッ

ファルージャ「クスス……拗ねておるのか?」

魔導師「…なんであんな奴と」プイッ

ファルージャ「妾の決定になんぞ不満でも…?」ニヤリ

魔導師「自分は何も言わないさ。女王が本気で望んでるんならねぇ…」プイッ

ファルージャ「ならば祝福しておくれ?」ニコッ

魔導師「…結婚おめでとう」

ファルージャ「よきにはからえ?」ニコニコ

魔導師「……」ジーッ

ファルージャ「ハァァァ……」ヌクヌク

魔導師「……」ジーッ

ファルージャ「まだ何かあるのかえ?」チラッ

魔導師「別に…」プイッ

ファルージャ「…そなたの方が愛しいに決まっておろう?」

魔導師「」ピクッ

ファルージャ「アレは利用しているに過ぎぬ?」クスッ

魔導師「う、うん……」テレッ
579: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/10(水) 21:42:49 ID:esacBCDh.U
ファルージャ「ちと偏屈持ちではあろうが、それなりに有能な男じゃ?
配下の大半を失った穴を埋めるだけでなく、なお余りある働きをしてくれるじゃろうて?」クスッ

魔導師「自分は気に入らないね…。あいつ、ずっと女王を見下ろして…何様なんだか?」

ファルージャ「そうぼやくでない?男というのは常に見栄を張りとうてたまらぬ生き物なのよ?
己を大きく見せよう、見せようと振る舞うサマが攻撃的な姿勢に出てしまうのじゃ?」

魔導師「つまんない生き物だねぇ…」

ファルージャ「そうさな…。つまらぬ生き物よ?だが妾にとっては…何より愛おしくてたまらぬ生き物じゃ?」

魔導師「なんで…?」

ファルージャ「くだらない意地や誇り、体面や気取った佇まい。
自意識で象られたナルシズムを優しくほどいて露にしてしまえば男など皆、そう代わり映えのせぬ生き物よ」

ファルージャ「本心を見せまい、見せまいと抗う葛藤が愉快でならぬわ…?」

魔導師「ふぅん……」

ファルージャ「人は等しく愛に焦がれる健気な生き物よ…。なればこそ全ての心は妾の手の内に在る?」

魔導師「……」

ファルージャ「使えなくなれば、また探せばよいわ。替えなど、いくらでもあるのだから……」ホカホカ

魔導師「……あれはどうなんだい?」

ファルージャ「あれ、とな?」

魔導師「…あのホビット」

ファルージャ「……」

魔導師「?」

ファルージャ「フゥ〜…」チャポン
580: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/10(水) 21:46:51 ID:WDqI.QgUIw
〜〜〜数日後〜〜〜

―――西の国(貧民街)―――

グゥゥ〜 グゥゥ〜

護衛1「地面に寝そべった貧民らめ…豪快な腹の虫を?さながら獣の唸りにも似た…?」スタスタ

護衛2「うぅえ…!くぅぅ…おぇっぷ!せ、せめて匂いだけでもどうにかしたい…!ここに来てからというもの、ずっとこの調子だ…!」ツーン

護衛3「衣服も泥水の乾いたようなのがこびりついて肌触りが最悪だ…!生乾きの湿った布が張り付いて気持ちが悪い…!」カピカピ

団長「静かにせんか…!こうでもせねば潜入出来なかったのだから仕方あるまい?」ボソボソ

護衛1「で、ですが…これではあんまりです…」

団長「バカモン!ヒメ様を見習わんか?文句一つおっしゃらず見事に物乞いの変装をしてらっしゃるではないか?」

護衛1「へ、陛下…」チラッ

ヒメ「……」ジロッ

護衛's「」ビクッ

ヒメ「余計な話はするな。誰かに聞かれでもしたら終わりだぞ?」

護衛's「し、失礼しました…!」

ヒメ「」チラッ

貧民1「」ブツブツ

貧民2「」グッタリ

貧民3「」フラッフラッ

ヒメ「…大丈夫そうだな」
581: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/10(水) 21:48:50 ID:esacBCDh.U
ヒメ「いいか?今の僕たちは西の国の貧民だ?身形だけじゃなく心まで貧民になりきれ?」

護衛's「」コクリ

ヒメ「…一瞬でも気を抜けば命取りだぞ。くれぐれも言葉には気を付けろ?」

護衛's「」ゴクッ

貧民4「ねぇ…あんたら、見ない顔だね?」ヘラヘラ

護衛's「」ビクッ

団長「ここはワシが…」ボソッ

ヒメ「あぁ、頼む…」ボソッ

貧民4「大人数でつるんでるみたいだけど…どこの人?」

団長「ワシらは…先の侵略で故郷を追われてしまいましてな…。こうして故郷の仲間と逃げ延びてきたんで?」

貧民4「あ、そう…。それよりさ。どう?」クイッ

団長「は?」

娼婦「」スパー

団長「……?」

貧民4「銅貨100枚でいいよ?破格の値だろ?」ヘラヘラ

団長「な、何がだ?」

貧民4「一発ズンドコさせてやるって言ってんの」

団長「!?」ブッ

ヒメ「!?」ブッ

護衛1「(あ、あんな痩せぎすの汚い女と…?)」ドンビキ

護衛2「(金もらっても無理だな)」
582: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/10(水) 21:50:20 ID:WDqI.QgUIw
貧民4「ほら、どうすんの?早くしないと客付いちゃうよ?」

ポンッ

貧民4「ん?」クルッ

宣教師「私の連れに何か用ですか?」

貧民4「は…?」

ヒメ「母ちゃん!」ダッ

宣教師「いい子にしてた?」ダキッ

ヒメ「うん!」ギュッ

団長「そ、そういうことだ!」

貧民4「ちっ…どうせ半月もすりゃ妻子なんて売り飛ばす事になるのによ?」

団長「……」

貧民4「行くぞ?」スタスタ

娼婦「ん゙あ゙っ……ぺっ!」スタスタ
583: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/10(水) 21:52:17 ID:WDqI.QgUIw
団長「身内を売るとは、よほど生活に窮しておるのだな…」

宣教師「お盛んなことで…?」ジトッ

団長「な、何がだ!?」

ヒメ「ん?またなんか来たぞ?」

貧民女「あ、あの…」オドオド

団長「なにか?」

貧民女「お、奥さんに…」オドオド

宣教師「私に?」

貧民女「こ、子供に乳を分けてもらえないですか…?」オズオズ

宣教師「!?」

貧民女「あそこにいる…指しゃぶりしてる赤ちゃん…」ビッ

姉「」ダッコ

赤ん坊「」チュパチュパ

宣教師「……!」

団長「むぅ……」

護衛1「(なんてみすぼらしい…。ぶかぶかの破れた布切れを羽織った全裸の少女が大事そうに赤子を抱えている…)」

護衛2「(二人とも生気のない顔をしてるな…。可哀想に)」

貧民女「どうか…!」ペコッ

宣教師「す、すみません…。あげたいのは山々なのですが…ぼ、母乳はその…出ないんです」モジモジ

貧民女「そんな…」ガクッ

宣教師「せめてこれを…」ゴソッ

ヒメ「」ガシッ

宣教師「え?な、なぜ止め……」

団長「ワシらも余裕が無くてな。悪いが他を当たってくれ」

貧民女「……そう。無理言ってごめんなさい」トボトボ

宣教師「あっ…」
584: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/10(水) 21:55:27 ID:WDqI.QgUIw
宣教師「…どういうつもりですか?」キッ

ヒメ「こっちのセリフだ」ジロッ

宣教師「……!?」

ヒメ「なにげなく周りを見てみろ」

宣教師「?」キョロキョロ

ジロジロ ジロジロ

宣教師「見られてる…?」

団長「外様のワシらを品定めしているのだ。タカるに値するかどうかをな?」ボソボソ

ヒメ「あそこでおまえが施しなんかしてみろ。飢えた連中が一斉に取り囲んでくるぞ?」

宣教師「で、ですが…あの子たちが」

ヒメ「面倒事は避けろ。何度も言うけどバレたら終わりなんだぞ?」

宣教師「っ……」ググッ

ヒメ「可哀想だよ。でもここで僕たちが倒れたら、あの親子のような境遇が全国に普及するんだぞ」

団長「今は耐えろ…」ポンッ

宣教師「…分かりました」シュン
585: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/10(水) 21:59:00 ID:WDqI.QgUIw
ヒメ「とりあえず歩いて廻ろう。それとなく情報を集めるんだ」

団長「ははっ!」

宣教師「……」

浮浪者「…あ?なに見てんだよ?」ジロッ

護衛1「は?」

団長「どうした?」クルッ

護衛1「い、いえ…なにも」

浮浪者「見せ物じゃねぇぞ!!」プーン

護衛1「な、なんだ、こいつ…」

団長「…相手にするな。行くぞ」スタスタ

護衛1「は、はい…」スタスタ

浮浪者「バカにしてんじゃねぇよ!!」ペッ

護衛1「ちっ…!ムカつく奴だな…!」イライラ

護衛2「誰でもいいから当たってるんだろ」

宣教師「……」チラッ

ならず者1「ぶはぁ〜!やってらんねぇや!どこもしけてやがら?」グビグビ

ならず者2「強盗しようにも金目のモン持ってる奴なんざ、ほとんどいねぇし墓荒らしても骨とガラクタばっかで大した供物もねぇもんなぁ?」

ならず者3「腹減ってムカムカすっからよ。さっきそこでみなしごのガキを犯してやったぜ!ひゃはは!」ゲラゲラ

ならず者4「あんなん相手して股ぐら痒くなっても知んねーぞ?薬なんかどこにもねーんだからよ?」ホジホジ

宣教師「(貧苦に耐え兼ねているせいか、どなたも心を病んでいますね…)」キュッ

586:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/2/10(水) 22:01:45 ID:WDqI.QgUIw
老人「はぁ?おめぇさん達、なんにも知らんのか?」

団長「あぁ、余所から逃げてきたはいいが状況がいまいち分からんでな」

老人「知ったからってどうなるもんでもねぇが…まぁ見ての通りだ?
それも全部、王国あたりと戦争してからだな?」

団長「ふむ…」

宣教師「……」

老人「若い男手はみんな引っ張られて女達もお慰み用に連れてかれちまった。
まぁ元々、強制労働だ、徴兵だのとあるから、そう珍しくもねぇんだが…」

老人「なにしろ備蓄してある食料品や武器の製造に使われる資材は丸々、持ってかれて生産性のない空っぽの街に年寄りと子供だけが取り残されちまった」

老人「外からも似たような連中が押し掛けて気が付きゃ、ここはすっかりはぐれ者の街だて」

老人「水は引いてあるから渇きは潤わせるが人が溢れて食い繋ぐあてがねぇ。
田畑の作物や肥料、種、牧場の家畜から何から軍に奪われちまって外からの援助も期待出来ねぇかんな」

老人「せいぜい気の荒いならず者共がよそを歩き回ってタカるか、貨物車を襲って物資を強奪するかくらいだなぁ」

老人「うちの婆さんも数週間前に干からびて死んじまったし、おいらもそろそろお迎えが来る頃だ。
水ばっか飲んで草っぱや虫をかじるのもうんざりしとったしなぁ」

団長「それは気の毒にな…」

老人「…最期に酒でも飲めりゃなぁ。それだけが心残りだで」

団長「いろいろ教えてもらって助かった。恩に切る」

老人「酒が飲みてぇなぁ…。なーんもかも忘れてぇや…」ボーッ

団長「では行くか」スタスタ

宣教師「……」

ヒメ「行くぞ…」グイッ

宣教師「はい…」スタスタ
587: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 21:35:41 ID:lBZMgJx./k
ヒメ「だいたい聞いて回ったけど、あまり有力な情報は入らないな…」

団長「どうやら中央の都市部から離れた区域には現状が広まっておらんようですな」

宣教師「というより…どなたも興味無さげに見えましたね」

ヒメ「まぁ長年、圧政と弾圧に泣かされてきた国民からしてみれば他人事でもおかしくないかもな…」

ワァーワァーギャーギャー!

ヒメ「……?」

団長「なにやら向こうがざわついておりますな」

護衛1「き、来ました!我が軍……いや、裏切り者の王国兵です!」タタタッ

ヒメ「……来たか」

宣教師「予定通りですね」

団長「うむ、フィクサーが皇位継承者としての権威を示すべく帝都に召集させる民衆に紛れて潜入するのですな」

ヒメ「あぁ、みんな…絶対に勘付かれるなよ?」

護衛's「ははぁっ!!」
588: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 21:38:52 ID:3wYAsB3RjM
ザワザワ ザワザワ

副官「や、素直に呼び掛けに応じてもらえて誠に助かります!本日はお日柄も良く……」ペラペラ

貧民6「(誰だ、こいつら?)」ボケーッ

貧民7「(すげー人数の兵隊だな…。うちの国の鎧じゃないみたいだが…)」ジーッ

貧民8「(ま、まさか俺達を殺しに…?)」ブルッ

貧民9「(言いなりになっとけば済みそうな空気だな…。おとなしくしとこ)」ボケーッ

副官「えぇ〜という次第でこれより皆様には帝都に移動していただきたく……ここまでで何か質問はございますか?」

シーン

宣教師「いやに静か…というか従順ですね」

ヒメ「慣れてるんだよ。こういう状況に」

団長「うむ。強引に従わされるのが彼らの日常ならば当然、やり過ごすのも日常茶飯事だろう」

副官「ふーむふむ」ジロジロ

ゾロゾロ ゾロゾロ

副官「思ってた以上に多いな…」

ザザザッ

王国兵's「」ジャキッ

貧民's「」ビクッ

宣教師「え…?」

副官「こんなにいる訳だし…ちょっとくらい減らしても構わんよね?」ニヤァァ

ヒメ「ま、まさか……」

副官「せっかく整列してもらって悪いが…前から10列は消えてもらおう?」ピッ

王国兵's「」バババッ

ワァァァァァアアアア!!!

副官「おっとと?後ろの列の皆さんも気を抜いちゃいかんよ?
前の列が後ろに逃げて列が入れ替わった場合も同じく10列以内に数え、切り捨てる?必死に前の列を押さえないと?」ニヤニヤ

ワァーワァーギャーギャー!
589: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 21:40:37 ID:lBZMgJx./k
ザシュッ ドバッ ズンッ ビシャァァァ

ギャアアアアアアアアア………

ヒメ「あ、あいつら…!」

宣教師「彼らのやっている事は理不尽な殺戮ですよ!あれも見過ごすんですか…!?」

団長「し、しかし…ここで目立った動きをすれば…!?」

ヒメ「止めるぞ!!」

団長「なっ…!?」

ヒメ「全員に呼び掛けろ!」バサッ

護衛1「へ、変装を解いてしまわれた…!?」

ヒメ「作戦はまた考える!被害が増える前に奴らの暴挙を止めるんだ!?」

団長「…やむを得ませんな!」バサッ

護衛's「……!」バサッ

宣教師「私も戦います!」バサッ

ヒメ「いや、おまえは民衆を先導して避難させろ!僕らも後から追いかけるから!」

宣教師「…わ、分かりました!皆さん、私が安全な場所へ誘導します!さぁこちらへ!?」ダッ

ダダダダダダッ
590: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 21:47:03 ID:3wYAsB3RjM
副官「ハッハッハ!逃げなさい、逃げなさい!惨めな敗戦国の民には無残な死がよく似合う?」ゲラゲラ

バシュッ ドスッ ガンッ ベシャアアア

副官「ん!?」

ガキンッ ギャリンッ ギィィン

副官「なんだ、あの小汚ない集団は?一端に剣を握って反抗か?たかだか100人足らずで生意気な……」

ドガガガガッ

王国兵's「ぎゃああああ!!!」ズダダァァン

団長「貴様ら、それでも誇り高き王国兵か!?弱った民衆に刃を突き立てるなど恥を知れ!?」ダンッ

王国兵's「な、なんだこいつは…!?」タジッ

副官「正義の味方気取りか?くだらん?押し包んで膾にしてやんなさい!」

オォォォオオオオオオオオオ!!

団長「ふん…やれるものならやってみろぉ!!」ダッ

ズバッ ガシュッ ドバッ ブシャアアアアア

副官「……!?」
591: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 21:48:32 ID:lBZMgJx./k
王国兵20「うるぁっ!!」ブンッ

護衛1「おわっ!」ギャリンッ

カランカラン

護衛1「け、剣が…!」アセアセ

王国兵20「死ね!クソカスがぁっ!?」バッ

護衛1「(ひっ…殺され……)」ビクッ

ズバッ

護衛1「あ…あ…うあ!」ピシャッピシャッ

王国兵20「ぐ……ふっ」プシャアアアアア

バタッ

ヒメ「大丈夫か?」ピシュッ

護衛1「あ、あ……う……」ガクガク

ヒメ「どうした…?」

護衛1「うっ……ゔぉえええ」ゲロゲロ

ビチャビチャ ジワァァァ

ヒメ「……」

護衛1「も…しわげ…うぶっ……」ベショッ

ヒメ「…おまえも行け」

護衛1「え゙…?」

ヒメ「宣教師だけじゃ民衆を守りきれないだろ?あいつを護衛して一緒に先導してこい!」

護衛1「あ、いや!私も戦い……」

ヒメ「命令だ!!早くしろ!?」

護衛1「っ……申し訳ありません!!」ダッ

王国兵's「ガキぃ…!!」ザザザッ

ヒメ「……」ジャキッ
592: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 21:51:20 ID:3wYAsB3RjM
ヒメ「せやっ!!」ヒュンッ ザシュッ

団長「ぬおぅっ!!」ブォンッ ドバッ

副官「ん〜…しぶといなぁ…。何人か手練れもいるようだが…こういうのは長引かせるといけないんだ?」

副官「総員!!陣形を立て直せ!!針のむしろだ!!」バッ

ザザザッ

ヒメ「囲まれたか…!」

団長「…ご安心を!陛下の御身は必ずやお守り致す!!」ズイッ

ヒメ「あっバカ…!」

ザワッ

団長「」ハッ

王国兵21「今、陛下って…?」

王国兵22「俺も確かに聞いたぞ…?」

王国兵23「そういえばあの泥んこの少年剣士……どことなく陛下に似ているような…?」

王国兵24「ま、まさかぁ…?他人のそら似だろ?」アセアセ

王国兵25「いや、でも民間人にしてはどいつも妙に剣術が達者な気が……」

ザワザワ ザワザワ

副官「……」
593: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 21:56:13 ID:lBZMgJx./k
団長「も、申し訳ございません!ワシの不用意な発言で……」

ヒメ「…気にするな。こうなってしまったからには、どのみち暴かれてたさ」

団長「……!」

ヒメ「聞け!!誉れ高き王国の兵士達よ!!」カッ

王国兵's「」ビクッ

ヒメ「僕はおまえ達の仕える主君、ヒメだ!!」

王国兵21「そ、そんなバカな…!?」ゾワッ

王国兵22「なぜこんなところに陛下が…」

ザワザワ ザワザワ

副官「ほっほ〜う?どうりで不自然に感じておりましたが……」ニヤリ

ヒメ「」ジロッ

副官「まことに国王陛下ですかな?」ニヤニヤ

ヒメ「おまえは主の顔も思い出せないのか?」

副官「はぁて…?こんな貧民街に捨てられた薄汚ない野良犬に忠誠を誓った覚えはございませんな?」ニヤニヤ

ヒメ「今なら、まだ僕に刃を向けた罪も不問にしてやる!武器を捨て、投降しろ!?」

副官「ご冗談を?本当にそうだとしたら……なおのこと刃向かうしかございませんねぇ!?」

王国兵's「」ジリッ

ヒメ「やっぱり…そうなるよな」ジャキッ

王国兵's「!?」ギョギョッ

団長「貴様らぁ……」ゴゴゴゴゴ

王国兵21「(あ、あの少年が陛下だとしたら…隣にいる凄腕の剣士は……)」ダラダラ

王国兵22「(お、王国最強と称される剣術家…ルフィアス団長…!?)」ゾゾゾッ

王国兵23「お、俺達じゃとても…太刀打ちできない!」ガクガク
594: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 22:02:22 ID:lBZMgJx./k
副官「怯むな!さしものルフィアスと言えど1000からいる兵を相手に大立ち回りは出来んだろうさ?」

王国兵23「し、しかし…」オロオロ

王国兵24「そ、そうだ…!」ザッ

王国兵's「」ビクッ

王国兵24「ここまでの戦いを思い出せ!俺達はあの西国軍を相手に大勝を挙げてきたんだぞ!」

王国兵's「……」

王国兵24「本国でぬくぬくとアクビこいてた奴らに負ける訳がねぇ…!」ビキィッ

王国兵25「お、おうさ!何が陛下だ、団長だ!こっちは傷だらけになりながら命懸けで戦ってきたんだぞ!」

王国兵26「今さらノコノコ出てきやがって…!俺達の力を思い知らせてやる…!」

ヒメ「……」

団長「おのれらぁ…!!」ワナワナ

護衛's「」オロオロ

王国兵27「あんたら王族には分かりゃしないよ…!あれやれ、これやれ言われて、ただ頷くしかない俺達の気持ちは…!」

ヒメ「何がそんなに不満だったんだよ…。自分で言うのもなんだけど…僕は誠心誠意、おまえ達の意を汲み取って執政に務めてきたつもりだぞ」

王国兵27「はっ!笑わせんじゃないよ!あんたも一度くらい身を費やしてみりゃいいんだ!?」

ヒメ「……」

王国兵27「奉仕するだけのつまらない人生なんてまっぴらだ……」ワナワナ

王国兵28「あんたは贅沢三昧なんだろうなぁ!いいよなぁ!王族に生まれてさ!?」ジロッ

王国兵29「表立って笑顔振り撒いてりゃ大勢に讃えられ、数百もの召し使いに抱えられ、口先一つでなんだって好き放題だ!羨ましいぜ!」

王国兵30「あんたの道楽で俺達は割りを喰ってんだ!冗談じゃねぇ!!」

ヒメ「何を吹き込まれたか知らないが…ひどい言われようだな」

副官「吹き込むなどと滅相もない?民の正直な意見ですよ?」ニヤニヤ

ヒメ「ふん…」
595: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 22:08:27 ID:3wYAsB3RjM
ヒメ「…羨ましい、か」ボソッ

王国兵's「」ピクッ

ヒメ「代われるものなら代わってやりたいよ。僕だって、こんな立場は願い下げだ」

王国兵27「なにを〜!?」

ヒメ「…でもおまえ達では決して務まらないだろうな」

王国兵's「あぁ〜…!?」ビキッビキッ

ヒメ「国王というのは人の上に立つ存在だ。僕の思想や言動一つでおまえ達の今後を大いに左右することが出来るのも事実だろう」

王国兵24「けっ…とうとう本性表しやがったな」

ヒメ「だがそれは同時に数多の命と未来を抱え、守り育てる途方もない道のりだ。それを覚悟して望むのか?」

王国兵21「……?」

ヒメ「もしおまえ達の中の誰かに国王を任せたら…すべての国民に均等な報酬と生活を保証し、身分や姿形、貧富や種族に関わらず公平に分け隔てなく慮った国作りをすると約束出来るか?」

王国兵27「へっ…あ、あんたよりはマシな事が出来るさ?」

ヒメ「ふーん…?」

王国兵27「な、なんだよ…!?」
596: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 22:10:01 ID:3wYAsB3RjM
ヒメ「ならおまえは具体的にどうするんだ?」

王国兵27「は?」

ヒメ「おまえが国王であったなら、まず何を第一に掲げるのかと聞いてるんだ?」

王国兵27「え?だ、だから良い国作るって……」アタフタ

ヒメ「はぁ……もう一度、質問するぞ?良い国を作るにあたって何をどうする?」

王国兵27「う…ぐっ…!あ、商いだ!商いをどんどんしてく!!金が流れなきゃ国は成り立たないからな!?」ムッ

ヒメ「へぇ…なかなか的を射てるな?」

王国兵27「あ、あたりめぇだ!大人を馬鹿にしてんじゃ……」

ヒメ「で、どうやって?」

王国兵27「あぁ!?」

ヒメ「民がおおらかに独立した商売をやっていける環境を作るにはどうすればいいのかと聞いてる?」

王国兵27「だ、だから!そりゃお前!か、金を…国が渡して……」アタフタ

ヒメ「補助金制度はとっくに導入してるよ。積極的に取り入れてもらう為にも城下の民間施設で定期的に新制度の説明会を開いてる。
それでもなかなか商売に踏み切れない者は多いし、その制度を悪用して不当に利益を得ようとする動きも見受けられる。
そういった悪意ある行動、無関心な民意を改善、抑止する為にはどうしたらいい?」ペラペラ

王国兵27「うぅ…」

ヒメ「それに商売をするにも資金だけじゃなく土地の確保や人員の募集、健全な就労条件、業務内容の見合わせ、そもそも需要があるかどうか、検討する事案を挙げればキリがないよな?」

王国兵27「く、く、くくぅ…!」ギリッ

ヒメ「ちなみに言っておくが商売人を志す者を後押し出来るよう学習院の高等科で商業学科の受講が可能になってる。
ゆくゆくはこれを全国的に増設して商業発展の要とし、経済的な影響が見込めるよう取り計らっていくつもりだ?
予算案は未だ協議の最中にあるが、そこは度外視してくれて構わないから、ここまでの説明を参考に意見を頂戴したい?」

王国兵27「あぐぅ…き、共通語で喋れや……何を言ってんだかさっぱりだ!?」ギリギリ

ヒメ「なんだ、この程度で?地位と名声が欲しくないのか?
国作りなんか簡単なんだろ?王たらしめる素晴らしい提案を聞かせてくれよ?」

王国兵27「こ、このクソガキィ…!!」ビキッビキッ
597: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 22:12:18 ID:3wYAsB3RjM
ヒメ「他にいないのか?我こそは国王に相応しいと唱える候補者は?」キョロキョロ

ザワザワ ザワザワ

ヒメ「僕に代わって出来ると断言するなら王座なんかいつでも明け渡してやるよ」

王国兵's「っ……」ゴクリ

ヒメ「そうすれば僕は憧れの平民になって好きなだけ自由な時間を堪能できるし、気兼ねなく友人も作れる?」

団長「……」ググッ

ヒメ「自分で選んだ職業にだって就けるし、行ってみたかった場所にも気の向くままに行ける」

護衛's「へ、陛下……」

ヒメ「寝る間も惜しんで思案する必要もなくなるし剣術の稽古や政治学の勉強もやめられる。
趣味を作って、夢を追って、年相応に自分の人生を楽しんで……」

ヒメ「ふふ。恋もしてみたいな?きっと素敵な人がどこかにいる…。
狭い城の中で着飾った女達や当て付けられた許嫁から自由に選ぶより、なにげなく出会った人とふれあいながら自然に生まれる感情に委ねたい?」キラキラ

副官「ぅっ…くっくっく!純情なことで?」プゥークスクス

王国兵's「(こ、国王って、そんな制限される立場なのか…?)」
598: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 22:15:01 ID:lBZMgJx./k
ヒメ「ここまで聞いてなんとなく分かるだろうけど…おまえらが思うほどいいものじゃないぞ?」

ヒメ「責任は重いし、常に試され、疑われ、嫌われながらも期待に応えるという重圧に耐えて悩み抜かないといけない。
納得しきれない決断を迫られる場面も多くあるし、今みたいな裏切りにだって何度でも遭う?」

王国兵's「……!」タジッ

ヒメ「もし今、おまえ達が僕に向ける怒りや憎しみの感情を、その身で受ける事になっても…『自分が国王になった方が良い国作りが出来る』と無責任にのたまえるか?」

王国兵27「あ、いや……」

ヒメ「幾万もの人心に訴えかけようとすれば、そこに協調性なんて一欠片もない。
正解の分からない議論を不毛とも思えるほど繰り返し、吟味し、やっと実らせた結論を起こしても…結果が追い付かなければ全て白紙に戻して、また0からやり直しになる」

ヒメ「人が人の上に立つにはそれ相応の努力と覚悟が必要だ。
百人の上に立つなら百人分、千人なら千人分、1万人なら1万人分の働きをする気概がなければ到底務まらない役目だ」

王国兵's「」プルプル

ヒメ「この西国のように民を人として扱わず、武力にものを言わせて弾圧し、強制的に労働を強いて、対価も与えずに己の贅沢に充て、公務の一切を放棄するような独裁者なら誰にでも代わりが務まるさ?」

ヒメ「だけどそれは民の代表なんかじゃない!民を脅かす敵だ!」

王国兵's「」ピクッ
599: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 22:19:21 ID:lBZMgJx./k
ヒメ「いいか?僕の政治に不満があるなら遠慮なく主張を通せ!」

王国兵's「!?」

ヒメ「その為に民間から役人に立候補出来る投票制度も作ったし、役所で意見投書も出来るようにしてあるだろ!?」

ヒメ「僕がいくら頑張ったところでやれる事なんか限られてるんだよ!
本気で自分たちの生活を豊かにしたいなら、なりふり構わず声を挙げろ!
デモでもストライキでもなんでもいい!国はおまえ達の物でもあるんだ!」

ヒメ「自由に叫べ!実行しろ!誰かをあてにしたら、その時点で望む変化は得られなくなるぞ!自分の望む未来を全力で開け!!」

ヒメ「王の為じゃなく国の為に戦え!!民は奴隷じゃないということを自らの行動で示せ!!」

ヒメ「僕の描く理想は民と造り上げる国家だ!僕はおまえ達の敵じゃない!」

ヒメ「たとえ全国民が僕を憎んでいたとしても…僕は国王の責務に殉じて民の味方であり続けると約束する!!
だから…僕個人を非難するも破滅に追いやるも好きにすればいい!!ただ…これだけは聞いてくれ!!」

ヒメ「同じ国に生きる民の間で殺し合うような真似だけはするな!!
おまえ達が戦うべき相手は僕だ!!不満も意見も何もかも僕にぶつけろ!!」

ヒメ「解決出来なくても、望んだ結果にならなくても、力不足でも…おまえ達が出した声を決して無駄にはしない!!」

王国兵's「〜〜〜!!!」ジワァァ

団長「ヒメ様…!」ウルウル

護衛's「陛下…」
600: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 22:22:30 ID:3wYAsB3RjM
ヒメ「…だからもう、こんな事はやめてくれ。
弱った西の国民を弄んで虐げる王国民の醜い姿を…長々と歴史に晒してほしくないんだ」

王国兵's「うっ…く、ぐふぅ…!!」ガチガチ

ヒメ「長く国を離れて戦ってきた、おまえ達の苦労はよく分かるよ…。
本当に感謝してるし、大変な役目を担わせて申し訳なかった…」

王国兵's「……」ブルブル

ヒメ「…出来ることなら王国の地で凱歌を挙げ、民衆の面前に英雄として立たせ、誇らしい気持ちでおまえ達を讃えてやりたかったよ」シュン

王国兵's「!!!」ブワァッ

団長「!?」

王国兵's「うおぉぉおお…おおぉぉおおぉぉおお……!!!」ポロポロ

ヒメ「……」

団長「こ、これは…」

護衛2「泣いて…いますな?」オロオロ

副官「はい、シャラーップ!!」ガンッ

王国兵's「」ビクッ

ヒメ「……」ジロッ
601: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 22:27:25 ID:3wYAsB3RjM
副官「ふんふん、あーそうですか。ご立派、ご立派。はい!国王陛下の素晴らしい御高説に惜しみ無い拍手を!」パチパチ

王国兵's「」オロオロ

ヒメ「……」

副官「や、しかし…あまっちょろい理想論は残忍な本性を包むベールでしかない?」

ザワザワ ザワザワ

副官「だいたいにして戦争を引き起こしてしまった張本人が何を口にしても説得力に欠けますなぁ?
意見だ、投書だ、平和ボケしたノンキな言論も血塗られた歴史の後ではなんと傲慢に映るものでしょうか?」

副官「いくらきれいごとにすり替えたところで本質的な部分は変わりませぬよ?
貴方は力で平和を勝ち取り、都合の悪い者を抹殺することで政を企てる為政者です?」

ヒメ「……」

副官「ですがそれは何も間違っておりませぬ?いやいや、むしろ正しい?国王としてあるべき姿と言えましょう!」

団長「おのれぇ…陛下を侮辱するかぁ!?」ズイッ

副官「やや、鼻息の荒い?私はお褒め差し上げてるのですよ?」

団長「なにぃ…!?」

副官「なんと言っても結局は力が全てを決する?いくら時代が流れても争いが尽きることはありえませぬ?」

副官「なればこそ我々は…平和などというおためごかしで、その事実を曲げてはならぬのですよ?」ニヤァァァ

団長「なんだと…?」
602: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 22:30:12 ID:lBZMgJx./k
副官「なぜなら、この広い大陸!魅力に溢れすぎている!
西の金山然り!南の心地よい気候然り!東の石膏技術然り!北の雪原然り!
王国の雄大な国土然り!!世界は常に我々を誘惑している!?」

副官「ともすれば我々の欲望が尽きるのはいつか!?そう!
全てを手にした時……ずばり大陸の総支配こそが真の平穏に繋がるのですよ!?」

団長「た、大陸の…総支配…!?」ワナワナ

副官「不可能と笑うかね?だが私は確信しておりますよ!
フィクサー総指揮の才知は易々とこれを実現されるであろうとねぇ!?」ニヤニヤ

ヒメ「そんなことをすれば……」

副官「おぉっとお待ちを!反論される前にご一考くださいませ?」

ヒメ「?」

副官「貴方はそれを既にやっているんですよ!?
西、東、南、王国、いったいどれほどの命を散らしたやら!?」

ヒメ「っ…!」

副官「敗者に語る言葉無し!正義は勝者の気心次第!
貴方の戯言はまさしく勝者の理屈ではございませぬかな?」ニヤニヤ

ヒメ「……!」
603: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 22:41:14 ID:3wYAsB3RjM
副官「どうです?ご自身を正当化する素敵なきれいごとは思い浮かびましたか?」

ヒメ「っ…!」

副官「ふっふっ…何を執着されておられたか知りませんが救い主を辺境地に隠したのは失敗でしたなぁ?
さっさと始末しておけば、ここまでの大事には至らなかったでしょうに?」

ヒメ「は!?」ピクッ

副官「ん…?」

ヒメ「なんで軍部のおまえがカロルの居場所を知ってるんだ?」

副官「や、以前から政務官殿にいろいろとお話を伺って……」

ヒメ「…まさかおまえら……」

副官「おやおや、なにやら思い付かれましたか?」ニヤニヤ

ヒメ「カロルが東領のミラルドにいた事を西国に流したのはおまえらだな!?」

副官「馬鹿げたことを…?ご自分の失敗を棚に挙げて責任転嫁ですか?」

ヒメ「ふざけるな!!僕が戦争を回避する為にどれだけ手を尽くしたか…!
おまえらが…おまえらが余計な真似をしたから…!?」ワナワナ

副官「存じませんなぁ?」ニヤニヤ

ヒメ「やっと分かったぞ…!フィクサーは最初から、こうなる事を見越してたんだな…!?」

副官「……」

団長「は…?ど、どういうことですか?」

ヒメ「さっきから聞いてれば、こいつの発言は戦争を肯定するものだ…!だとしたら……」

副官「だとしたら…?」ニヤニヤ
604: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 22:46:38 ID:3wYAsB3RjM
ヒメ「戦争を拡大するのが目的か…!だから王国を切り捨てたんだろ!?」

副官「んぅ……どうでしょうかねぇ?」ニヤニヤ

ヒメ「王国に戻れば戦争は終着し、徴兵に駆り出された兵は解散する…。
だからおまえらは西の国に留まり、確保した兵力と共に平定を進めて軍備の強化と国土の統治に重きを置いたんだな?」

王国兵's「え…?」ザワッ

ヒメ「自由意思で戦争を仕掛けられる国家を立ち上げるのが狙いだったんだろ!?」

副官「さすがお坊っちゃま。子供らしく想像力がたくましくていらっしゃる?だいぶ飛躍的ですがね?」ニヤニヤ

ヒメ「やっと分かったよ…。リルラがアントリアに促されて戦争に行き着く流れを作ったんだと思ってたけど…その裏で暗躍してたのはフィクサーだったんだ!」

団長「な、なんと…!?それはまことか!?」

副官「まぁまぁ…ね。もうお話はいいでしょう」ニヤリ

ヒメ「は…!?」
605: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 23:13:55 ID:3wYAsB3RjM
副官「さぁて、兵士の諸君にはお節介な説得なんていらんだろう?彼らに引導を渡してしまおうか?」

王国兵's「……」

副官「情にほだされてしまったら、それまでだよ?」

王国兵's「……!」

副官「それに諸君はまざまざと実感したんじゃないかなぁ?
その手で濡らした血が力の証明とするならば…何者もねじ伏せる力こそが正義を示す唯一の方法だと?」

ヒメ「踊らされるな!おまえたちは利用されてるだけだ!?」

副官「ハッハッハ!やぁ利用だなんて…ハッハッハ!いやいやいや……」ニヤニヤ

団長「黙れ!!貴様らの下卑た企みなど見え透いておるわ!?」

副官「現実的にねぇ…考えてもみましょうよ?」

団長「なにぃ…!?」

副官「そもそも王国にはお先がない?なにせ犠牲を払いすぎた?
国力を再生するには最低でも10年近くかかるでしょうが……それまでのんびり待ってもらえますかな?」

ヒメ「……!」

副官「加えて言うなら我々が勝利を手土産に王国に戻っていたと仮定してもね…。
政略に尽くして、ぐちゃぐちゃになった同盟関係の修復。共闘して弱まった東国、南国の面倒も見なきゃならない。
西国に講和条約を突き付け、統治もしてやらなきゃならない訳ですよ?」

ヒメ「……!」

副官「はっきり申し上げますとねぇ…。自国の復権さえままならない状況下で、これだけのことを平行していくなど不可能です?」

ヒメ「くっ…」ギリッ
606: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 23:15:38 ID:lBZMgJx./k
ヒメ「そ、それでも…抑止力となる軍が戻っていれば時間を稼げたんだ…!」ワナワナ

副官「えぇ、でしょうね?ですがこちらからしますと…そんな面倒で時間の掛かる事をするより軍拡を進めた方が楽なんですよ?」

ヒメ「狂ってる…!平和を捨てて混沌とした戦乱の世に進ませるなんて…!?」ギリッ

副官「ハッハッハ……時代を造るのは国王だけじゃない。軍人は軍人らしく…戦いにロマンを求めないと?」ニヤニヤ

ヒメ「守るものを持たないで何が軍人だ…!おまえらが振りかざすのは単なる暴力じゃないか!」

副官「正解!」ビッ

ヒメ「……!」プルプル

副官「そろそろいいかなぁ…?」チラッ

王国兵's「」ブルブル

副官「お人好しのお坊っちゃまと心中するか、共に大陸総支配を目指し、世界の頂点に君臨する新国家を旗揚げするか…はたしてどちらがより夢のある現実かなぁ?」ニヤニヤ

王国兵's「……」ザザザッ

副官「賢い選択だ?」ウンウン

ヒメ「っ……」

団長「腐れ外道め…!?」
607: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 23:22:32 ID:lBZMgJx./k
副官「…さぁて、楽しい楽しい議論は閉幕。という訳で国王を生け捕りにし、存分に殺戮の限りを尽くしましょうか?」

王国兵's「」ジャキッ

ヒメ「おまえら……」

団長「…まだ分からんのか!?陛下がどれほど民を想い、努力されてきたか…!!」

王国兵's「」ギロッ

ヒメ「……」

副官「あ〜そうそう。国王を人質に取って交渉すれば王国に残した君らの親類演者は傷一つなく取り戻せるからね。張り切っていこー!」

王国兵27「国王陛下、申し訳ありません…」ジリッ

王国兵22「我々は引き際を見失いました…」ジリッ

王国兵30「弱肉強食…自然の理に習わせていただきましょう」ジリッ

王国兵31「大人になるとね…きれいごとだけではままならん事も分かってしまうのですよ」ジリッ

王国兵32「心苦しいが、ね」ジリッ

ヒメ「それがおまえらの答えか…!」

副官「かかれ!?」バッ

オォォォオオオオ!!!

ヒメ「団長!!」

団長「はっ!」

ヒメ「住民の避難は済んだ!時間稼ぎは十分だ!!退くぞ!!」

団長「ははっ!!ワシに続けぇ!!」ダッ

護衛's「おぉう!!」ダダダッ
608: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 23:25:10 ID:lBZMgJx./k
ガガァンッ! ギキンッ ギャリンッ

副官「ハッハッハ!!あがきますなぁ?」ニヤニヤ

王国兵33「お、オドアイル様!」

副官「ん?」

王国兵33「なにやら見知らぬ大群が迫ってるとの報告が……」

副官「は?」クルッ

ドドドドドドッ

王国兵33「あ、あれはいったい…」

副官「…な、なんだと?」ヒクッヒクッ

???「かかれぇ!!」ドドドッ

賊徒's「おぉおおお!!」ドドドッ

ドガァンッ!!

副官「なんの真似だぁ!?」カッ

王国兵33「急襲に備えられず陣形が崩されました!!」

王国兵34「覆っていた隊が蹴散らされたぞ…!」

副官「ちぃっ!!何をやってるぅ!?絶対にヒメを取り逃がすな!!
首一つにしても構わん!!奴だけはなにがなんでも…!」バッバッ

ワァーワァーギャーギャー!
609: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 23:30:23 ID:lBZMgJx./k
賊徒's「ウオラァァァ!!!」ドドドッ

ガガァンッ!

王国兵26「な、なんだこいつらは…どっから現れた…!?」アセアセ

ヒメ「何が起きてるんだ…!?」ギギッ

団長「分かりませんが…好機であることは確か!!」ブォンッ ザシュッ

護衛1「陛下!!」ザッ

ヒメ「お、おまえは…!逃げたんじゃなかったのか!?」ガィンッ

護衛1「陛下を救出しに参りました!」

ヒメ「なっ…どういうことだ!?」

護衛1「どうか速やかに避難を!?事情は追って説明します!!」

ヒメ「わ、分かった!!走るぞ!?」ダッ

団長「ははぁっ!!」ダッ

王国兵35「逃がすかぁ!!」ダッ

護衛1「邪魔するな!!」ヒュンッ

王国兵35「ぶほっ!?」ズドッ

護衛1「陛下は大道を歩まれるお方だ…!俺達ごときの為に立ち止まっていただく訳にはいかない!!」ブシュッ

王国兵36「おぉりゃああ!!!」ブンッ

護衛1「がはっ!」ズバッ

バタッ
610: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 23:31:31 ID:3wYAsB3RjM
王国兵36「追うぞっ!!……あん?」ググッ

護衛1「ゔ……ぐぎぎ…!」ガシッ

王国兵36「な、なんだこの…!しがみつくな!離せ!?」ガッガッ

護衛1「(陛下は尊いお方だ…!俺達なんかより…ずっと…!)」ギュウウ

王国兵36「な、なんなんだよ…!しつけぇな…!死に損ないのくせに…気味が悪いぞ!?」ゾゾゾッ

護衛1「(それなのに…それなのに…一介の護衛に過ぎない俺を……怯えて腰抜かした情けない俺を……身を挺して救おうとなさった…!!)」ウルウル

王国兵37「おらぁアンデッド野郎!?地べたに寝やがれ!?」ヒュンッ

護衛1「ごふっ!!」ズンッ

王国兵36「た、たすか……あ!?は、離れねぇ…!?」グッグッ

護衛1「(死んだって…いぃ……陛下に生き延びていただけるなら…)」フッ

王国兵36「死んでるよなぁ!?死んでんだよなぁ!?なぁ!?なんで全然離れねぇんだよ、こいつはよぉ!?」アワアワ

王国兵37「も、もう知るか!自分でなんとかしろ!?」ダッ

王国兵36「どうなってんだよ!こえー!こえーよ!?」ジタバタ
611:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/2/17(水) 23:34:50 ID:3wYAsB3RjM
ザシュッ ドバッ ズドッ ガガァンッ

ギャアアアアアアアア

副官「どうなっているんだ…!何がどうなっているんだぁ!?あいつらはなんなんだぁ!?」

王国兵34「分かりません!!全く分かりません!!」アタフタ

???「よう、オドアイル?」ザッ

副官「はぁ!?……あ、貴方は!?」ギョギョッ

王国兵34「ドレッド軍長…!?」ギョギョッ

???(ドレッド)「久しぶりだなぁ?元気してたかよ?」ニィィッ

副官「な、なぜあんたが…!」

ドレッド「クックッ!なんでだろうなぁ?」

副官「(こ、こいつは確かに殺したはず…!?なぜ生きている…!?)」

ドレッド「さぁ…数はどっこいってとこだ?再会を祝して存分にやり合ってみようか?」ジャキッ

副官「で、出直すぞ!退けぃ!?」パカラッパカラッ

王国兵34「はっ!」パカラッパカラッ

ドレッド「けっ…フィクサーの腰巾着が?」ペッ

パカラッパカラッ………

ドレッド「しっかし…まさかこんな巡り合わせがあるとはな?俺の運も捨てたもんじゃねぇや?」ニヤリ

ドレッド「まずはここをケリ着けて国王陛下のツラでも拝んでみるか?」パシンッ

ワァーワァーギャーギャー
612: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:03:15 ID:m4Uz9RrgRI
―――西の国(街道沿いの窪地)―――

ヒメ「ぜぇっ…はっ…あぁ……」グッタリ

団長「陛下…!大事ござらんか!?」サスサス

ゾロゾロ ゾロゾロ

賊徒1「」クチャクチャ

賊徒2「かぁ〜…ぺっ」ビチャッ

団長「む!?貴様ら…何者だ!?」ジャキッ

???「まぁまぁそう凄むなよ?」ザッ

団長「……!」ジッ

???(クンバヤ)「俺の名はクンバヤ。ここにいるのはイアマンに命を捧げる穢れなき戦士達だ」

団長「い、イアマン…?」

宣教師「あ、ヒメくん!団長さん!怪我はありませんでしたか!?」タッタッ

団長「ぬ…宣教師!ひ、避難はどうした!?」

宣教師「住民の皆さんは、この方々が保護してくださいました!」

団長「なに…?敵ではないのか…?」

ヒメ「っ…うぅ…」ムクッ

団長「へ、陛下…!激しい切り合いを脱して間もないのですから、どうか御身を休めなさいませ…!?」

ヒメ「僕の…判断で……皆を死なせ、すべて台無しにしてしまうところだった…!」ギリッ

団長「な、何をおっしゃるか!ヒメ様の判断は正しゅうございましたぞ!?」

宣教師「そうですよ。むしろあのような惨劇さえ見放すようであれば私はキミに失望していました?」

ヒメ「いや、軽率だった…すまない……」
613: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:06:38 ID:UdCBQzYwOk
クンバヤ「息は整ったかい?」

ヒメ「あ、あぁ…」

クンバヤ「ま、いろいろと気掛かりだろうが、とりあえず俺達の活動拠点まで案内しようかい。話はそこでゆっくりと聞かせてもらう」

ヒメ「……」ジッ

クンバヤ「あぁ王様だったか?恭しくおもてなししてやったほうがいいかい?」

ヒメ「え…?」

クンバヤ「なんで知ってるか…ってぇツラだね?そう怪しむなよ?」ニヤニヤ

団長「ま、まさかフィクサーの手の者か!?」ジャキッ

宣教師「あ、すみません…話したの私です」オドオド

ヒメ&団長「!?」ガクッ

クンバヤ「んじゃ早速だが馬を貸してやろう。ちょいと荒っぽいが…あいにくと馬車なんて上等な品はねぇ。ケツを痛めるだろうが辛抱してもらえるかい?」

ヒメ「…」コクッ

クンバヤ「そんじゃ追っ手が来る前にさっさと移動しちまおう。付いてきな?」スタスタ

団長「むぅ…よろしいのですか?」

ヒメ「ここはおとなしく従おう…。さっきの戦いに割って入ったのがこいつらだとしたら…目的は僕じゃないかもしれない」

団長「そ、そもそもどういう経緯で奴らに助けを求めたのだ?」

宣教師「わ、私も街の外れまで住民の皆さんを避難誘導していたら彼らに出くわしまして…詳しいことは何も?」

クンバヤ「おい!なにモタモタしてんだ!来い!?」

宣教師「」ビクッ

ヒメ「なにしろ行ってみるしかないな…」スタスタ

団長「くっ…」スタスタ
614: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:09:02 ID:UdCBQzYwOk
〜〜〜夜〜〜〜

―――廃村―――

グルルルルル グルルルルル

クンバヤ「野良犬共が……っせぇおらぁ!?失せろ!?」ブンッ

キャンキャン! タタタッ

ヒメ「……」ゾクッ

ガッガッ ムシャムシャ

負傷者1「がちゅっ…ごりっ……ぐしょっ…」ムシャムシャ

団長「か、彼らは何を食べているのだ…?ずいぶん臭うが……」

クンバヤ「人の屍肉」スタスタ

団長&ヒメ&宣教師「」ビクッ

クンバヤ「食い物がほとんどねぇからな。なんでも再利用するんだよ」

ヒメ「よく平気で食えるな…!」

クンバヤ「食わなきゃ自分が食われる身になる。うちの国じゃ常識だ」

宣教師「ま、まさか…貧民街の人々も屍肉を食べて…」ゾワッ

ヒメ「そういえば人が死んだような話はたくさんあったけど…街には骨の一つもなかったな」ブルッ

団長「普通ではない…!」ゾゾゾッ
615: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:11:25 ID:m4Uz9RrgRI
クンバヤ「お、そうだ。知ってるか?人の骨ってよ、白くないんだぜ?」

宣教師「え…?」

クンバヤ「取り出したばっかだと、まだ血がたっぷり染み込んでるから肌色なんだよ。
そうだな…あんたの肌なんか陽に焼けてないからそっくりだ?」

宣教師「っ……うぶっ」ガクッ

ヒメ「お、おい!大丈夫か!?」ガシッ

クンバヤ「ふん…」ニヤリ

宣教師「〜〜〜!!」ウルウル

ヒメ「おまえ…!」キッ

クンバヤ「上品なあんたらにゃ聞いてられねぇか?最底辺の世間話はよ?」ニヤニヤ

ヒメ「くっ…!」

宣教師「おぇ…うぐぅ…!」

団長「しっかりせんか…!」サスサス

クンバヤ「ハハハ……」ニヤニヤ
616: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:13:33 ID:m4Uz9RrgRI
―――廃屋―――

クンバヤ「悪いが椅子はこれ一つでな。ゴザ敷いてあるから床に座ってな」ストッ

ヒメ「うっ…固い…」ザリッ

宣教師「けほっ…ほ、埃が……」ゴホゴホ

団長「灯りもないのか…?暗くてかなわんぞ…?」

クンバヤ「何度も言わせんなよ。蝋燭も敷き床も椅子もねぇ。屋根もねぇし壁は穴だらけだ?
あんたらにとっちゃあって当然なんだろうが…俺達にとっちゃこれが当たり前だ?」

ヒメ「二人とも…我慢しろ」

宣教師「…はい」

団長「はっ…」

クンバヤ「ま、水くらいは出してやる?喉が渇いたら、そこの湧き水に口付けて飲め?」クイッ

宣教師「湧き水…?」チラッ

ヒメ「(割れた地面に小さな水溜まりがあるだけじゃないか…)」

団長「(あ、あんな泥水を飲んだら腹を下すぞ…!?)」

クンバヤ「糞や小便はそこの壺にしろ。間違っても湧き水にすんじゃねぇぞ?」

ヒメ「(き、気分が悪くなってきた…)」サァァ

宣教師「(…恵まれた日々への感謝が足りなかったですね。もっとこういった環境に目を向けていかなければ…)」

団長「(噂には聞いておったが…こんな場所に陛下をいつまでも置いておけん!)」
617: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:17:20 ID:m4Uz9RrgRI
クンバヤ「さて、改めて自己紹介しようか。俺はクンバヤ。いわゆるレジスタンスの一員だ」

ヒメ「レジスタンスって、さっき言ってた…?」

クンバヤ「そう。イアマンだ?」ニヤリ

ヒメ「…一時期、波紋を呼んでた女帝暗殺を企てる過激派集団か」

クンバヤ「ほう?知っててくれたのかい?王様の耳に入ってたなんて光栄だね?」

ヒメ「結果的に戦争を後押しした一因だからな。気にも留めるよ」

クンバヤ「そうかい。そりゃ悪いことをしたな」

ヒメ「…そのレジスタンスが僕らになんの用だ?」

クンバヤ「用って程でもねぇが…王国軍の侵略を邪魔してやろうと乗り込んでみたら、たまたまあんたらがいてな?」

ヒメ「それで…?」

クンバヤ「事情は知らんが仲間割れしてんだろう?こりゃうまくいきゃ…俺達に運が傾きそうだ?」ニヤリ

団長「……!」バッ

クンバヤ「おぉ待て待て!早とちりすんな?」

団長「このお方をどなたと心得るか!!貴様らごときに易々と利用させてたまるか!?」

ヒメ「よせ!団長!!」サッ

団長「!?」

ヒメ「すまなかったな…。続けてくれ」

クンバヤ「…どうやら、あんたは話せる性格みたいだな?」

ヒメ「世辞はいい。余さず事情を教えてくれ」

クンバヤ「……」
618: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:27:18 ID:m4Uz9RrgRI
クンバヤ「ま、ざっくり言うとだな…俺達は重大な使命を抱えて地道に戦ってきたんだが今は窮地に立たされていると」

ヒメ「…王国軍の侵攻か?」

クンバヤ「それもそうだが…根本的な問題だ」

ヒメ「?」

クンバヤ「レジスタンスはもう残ってない」

ヒメ「壊滅させられたのか?」

クンバヤ「…そうでもないんだが、あーややこしいな」

ヒメ「ちゃんと説明してくれないと分からないぞ。全滅したなら、ここにいる奴らはなんなんだ?」

クンバヤ「あいつらは…生き残ったレジスタンスと西軍の残兵、侵略される前にいち早く救助した領民の寄せ集めだ」

団長「なぜ敵対するレジスタンスと西軍が…?」

宣教師「何があったんですか…?」

クンバヤ「実は連合軍との戦争の真っ只中に…全区域に召集が掛かったんだ。
イアマン総出で主力軍の出払った帝都を襲撃し、女帝ファルージャを討ち取れとな」

団長「っ…どうなったのだ?」ゴクリ

クンバヤ「恐ろしいほどうまくいったよ。都はものの数時間であっさり落ちた」

宣教師「で、ではなぜファルージャが生きているのです?」

クンバヤ「…城に雪崩れ込んだ時、展望台からとてつもない美女が現れて…皆、目を奪われて一瞬でピタリと止まっちまった」

クンバヤ「その美女はもちろんファルージャだったんだが…あの女が何も言わず俺達に視線を落として手を振ったらだ?
まるで帝都全体を揺るがすんじゃないかってくらいの歓声と地響きが城を包んだ!」

クンバヤ「そして誰かが叫び始めた。あれは女神だと」

ヒメ&団長「……」

クンバヤ「……どうした?」

ヒメ「いや、途中からなんの話を聞かされてるのか分からなくなって…」シラー

クンバヤ「…真面目な話だぞ」

ヒメ「ご、ごめん」

シーン
619: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:30:29 ID:m4Uz9RrgRI
ヒメ「えっと…つ、つまりファルージャに腑抜けて負けたのか?」

宣教師「はしたない…」ジトッ

クンバヤ「分かってないな!お前達もあの女を見れば頷ける筈だ!」

宣教師「実際に会いましたけど…そ、そんな大したこと…な、なかった、ですよ?」モジモジ

クンバヤ「嘘つけ!?体が反応してるじゃないか!?」

宣教師「っ…!」カァァ

ヒメ「そ、そんなすごいのか?」

クンバヤ「あぁ、あれはまさしく"魔性"だ!この世に魔法なんて物があるんだとしたら…あの女は色気を操る魔女に違いない!!」

ヒメ「……あ、うん。そうなんだ」シラー

クンバヤ「俺も危うく落とされかけたが理性でなんとか持ちこたえた…」

クンバヤ「だがイアマンは分解し、とても革命を続けられるような状態じゃなくなってな。
ファルージャに乗せられた大勢の仲間を残して俺と一部のレジスタンスは帝都を脱出した」

ヒメ「じゃあその後は…」

クンバヤ「そこからだ。話の肝は!」

ヒメ「?」

ワァァァァァァァァァアアアアア!!!!

ヒメ&団長&宣教師「」ビクビクゥゥ

クンバヤ「ちょうどいい…そこで待ってな!」スクッ

ヒメ「あ、あぁ…」
620: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:32:43 ID:m4Uz9RrgRI
―――廃村―――

賊徒3「見ろ!ドレッドの旦那がまたやってくれたぜ!」ジャラジャラ

賊徒4「侵略者共を蹴散らして武器やら馬を根こそぎ奪ってやったぜ!」ガラガラ

賊徒5「酒と食糧もあるぞぉ!!今夜は宴だぁ!!」ゲラゲラ

ワラワラ ワラワラ

ドレッド「へっ…普段は死んだようなツラして見向きもしねぇのにイイ時ばっか擦り寄りやがって?」パカラッパカラッ

クンバヤ「ドレッドぉ!!」

ドレッド「あぁん…!?」ギロッ

クンバヤ「…いろいろと話してぇ事がある。来な?」クイッ

ドレッド「……先に始めろ!」

賊徒's「ヒャッホーイ!!」ヒューヒュー

ドレッド「……」ジッ

クンバヤ「……」ジッ

賊徒1「火ぃ起こせ!!水を溜めろ!!」

賊徒2「ついでにそこらの野犬を捕まえてこい!今日はめいっぱい食うぞぉ!!」

ワイワイガヤガヤ
621:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:37:58 ID:m4Uz9RrgRI
―――廃屋―――

ドレッド「よっこらしょと…あぁ〜くたびれたぜ?」ドスンッ

ヒメ「」ジッ

ドレッド「ちっ!相変わらずケツ痛めるな!ゴザ敷いてる意味あんのか…ってか砂利被ってんじゃねぇか!洗えや!?」ブツブツ

クンバヤ「文句の多い野郎だな…。拾ってやっただけありがたく思え?」

ドレッド「なぁ〜に抜かしやがる?誰のおかげで、ここまで勢力伸ばしたと思ってんだ?」

クンバヤ「はぁ…?」

ドレッド「てめぇら素人だけじゃ何も出来やしねぇだろう?俺様が指揮してやったから……」

クンバヤ「んだぁおらぁ!!」ガタッ

ドレッド「やんのかぁ!?」ガタッ

団長「おい!貴様ら……」

ヒメ「座れ!!」カッ

クンバヤ&ドレッド「」ピタッ

ヒメ「もう一度言うぞ。座れ」

クンバヤ「あんた…口の聞き方ってぇのを覚えた方がいい?屍肉になりたくなきゃな?」ギロッ

団長「なにを貴様ぁ!?」ダンッ

ドレッド「へっ!」ドスンッ

クンバヤ「あ?」

ドレッド「座ろうぜ。しらけちまった?」

クンバヤ「ちっ!」ドスンッ

団長「(た、立ち上がったもののやり場がない…)」

ヒメ「なにしてんだ?おまえも座れよ?」

団長「は、はい…」スッ

ドレッド「…ククッ!何から話しゃいいもんか」

ヒメ「決まってるだろ。知っていること全てだ」

ドレッド「」ニヤリ
622: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/26(金) 12:39:28 ID:NA5BbxDVyU
遅蒔きながらランキング1位ありがとうございました!
すみません、更新と同時にお礼しようと考えてたのですが全然更新できないんでお礼だけ書いておきます…
投票してくださった皆様!本当にありがとうございました!
自分もすでに投票しましたが次のランキング結果が気になりますね!
はたして栄冠は誰の手に!

では乱文失礼しました!お目汚しすみません!
623: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:32:22 ID:7ZmvR.FKR.
ドレッド「その前に聞きてぇことがある?」

ヒメ「なんだ?」

ドレッド「国王陛下ともあろうお方が…あんなとこで何してたんだ?」

ヒメ「あぁ…僕達はフィクサーの暴挙を止める為、貧民に紛れて帝都に侵入する手筈だったんだ」

ドレッド「そうじゃねぇだろ?」

ヒメ「?」

ドレッド「なぜあんた自らが危険を犯してまでやってきたのか…。その理由を聞いてんだ?」

ヒメ「……」

ドレッド「それにあんた?」ビッ

宣教師「わ、私…ですか?」

ドレッド「教団の司祭だよな?有名人だから一目で分かったぜ?」

クンバヤ「ほ〜?またでけぇ宗派の……にしちゃ、ずいぶんとお若いね?」ジッ

宣教師「は、はぁ…それがなにか?」オロオロ

ヒメ「…なんでおまえがこいつを知ってるんだ?西の国の人間じゃないのか?」

ドレッド「へっ…お偉方にゃ俺の存在なんざ見えちゃねぇか?」

団長「何者だ、貴様…!?」

ドレッド「俺はドレッド。元王国軍長さ?」ニヤリ

ヒメ「なに…!?」

宣教師「王国軍…!?」

団長「軍長だと…!?」
624: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:34:05 ID:7ZmvR.FKR.
団長「そ、それが本当だとするなら貴殿こそ、なぜこのような場所におるのだ!?」

ドレッド「俺にゃどうも奴のやり方が気に食わなくてな。軍を離脱してやったのさ?」

団長「離脱だと…?」

ドレッド「まぁその代償といっちゃなんだが…こんな土産を貰っちまったがな?」バッ

ヒメ「……!?」

宣教師「!」プイッ

団長「刺されたのか…」

ドレッド「背中から見事に貫通したが…腕のいい医術師に救われて、なんとか一命を取りとめる事ができた?」

宣教師「医術師…?」

ドレッド「そいつはクーペって言うんだが…あんたの知り合いだと聞いてるぜ?」

宣教師「クーペさんが!?」

団長「誰だ?」

宣教師「以前に聖堂で預かっていたホビットの方です!クーペさんもここにいらっしゃるんですか!?」

ドレッド「クーペなら外で怪我人の手当てを施してるぜ?会いたいなら行ってくるといい?」

宣教師「いいですか…?」チラッ

ヒメ「いいよ。行ってこい」

宣教師「ありがとうございます!では失礼します!」スクッ

ガチャッ バタンッ
625: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:36:17 ID:7ZmvR.FKR.
ドレッド「さて、と…さっきの質問に答えてもらおうか?」

ヒメ「僕がここに来たのは……」

ドレッド「ぅおい!待ちな?」バッ

ヒメ「なんだよ…?」

ドレッド「適当な事は抜かすなよ?発言一つであんたの置かれる立場も変わるからな?」ジッ

ヒメ「……」

団長「黙って聞いておれば…元は陛下に仕える身でありながら、なんと無礼な…!?」

ドレッド「へっ…俺はもう王国軍でもなんでもねぇ。国王陛下の御前だろうが膝は崩すし丁寧に喋ってやる気もねぇよ?」

団長「なにを…!?」ビキッ

ヒメ「」サッ

団長「なっ…陛下…?」タジッ

ドレッド「覚悟は定まったか?」ニヤニヤ

ヒメ「別に覚悟するような事じゃない。ありのままを話すだけだ」

ドレッド「ほーう…?」

ヒメ「僕がここに来たのはフィクサーを止める為だ」

ドレッド「それはさっきも聞いたぜ…?俺が聞いてんのは、なぜ国王のあんたが……」

ヒメ「国王だからなんだ?」

ドレッド「はぁ…?」

ヒメ「誰かがやらなきゃいけないなら、それは誰であってもいい筈だ」

クンバヤ「へぇ…?」ニィィッ

ドレッド「だからよ…。そりゃ王様の役目じゃねぇだろ?配下にやらせときゃ……」

ヒメ「そんなの知るか?」

ドレッド「あ…?」

ヒメ「おまえの思う国王像なんかどうでもいい。どうするかを決めるのは僕だ」

ドレッド「……」

クンバヤ「ハハハ……たまげたね、こりゃ?」ニヤニヤ
626: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:37:40 ID:YSi2nOfsJM
ヒメ「納得いったか?」

ドレッド「いくもんかよ?なんの理由にもなっちゃいねぇ?」

ヒメ「どう言われても他に思い当たる理由なんかないぞ」

ドレッド「じゃあなにか?ガキらしく正義の味方ごっこしてますってか?」

団長「その言いぐさはなかろう…!侮辱にも程があるぞ!?」

ドレッド「どうにでも受け取れよ?」

団長「たたっ切るぞ!青二才がぁ!?」イラァッ

ドレッド「よしな?年寄りの冷や水だぜ?」

団長「よかろう…!素っ首、跳ね落としてくれる…!?」ビキッビキィッ

ヒメ「…団長」

団長「はっ…!ただちに!」

ヒメ「話の邪魔」バッサリ

団長「なぬっ!?」ガガガガガーーーン

クンバヤ「ぶふっ!」ニヤニヤ

ドレッド「くっ…くっくっく…!」プルプル

団長「笑うな、貴様らぁ!?」ガァーッ
627:"クンバヤ"と"クソバカ"って似てますね ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:39:37 ID:7ZmvR.FKR.
ヒメ「なにがそんなに気に入らないんだ?僕がいて困る事でもあるのか?」

ドレッド「そうじゃねぇがよ…。多少なりと見ておきてぇだろ?」

ヒメ「なにを?」

クンバヤ「あんたってぇ存在に値打ちがあるのかどうか、だ?」

ヒメ「値打ち…?」

クンバヤ「何をしようにも足手まといは増やしたかねぇのさ?」

ヒメ「心外だな…」

クンバヤ「温室育ちのお坊っちゃんには分からねぇだろうが…俺達は革命を起こそうとしてんだ。それこそ命懸けでな?」

ドレッド「腸煮えくり返るぐれぇムカつく野郎だがよ。
はっきし言ってフィクサーは歴代王国軍長と並べても異彩を放つ策士家だ。用心に越したこたぁねぇ?」

クンバヤ「そいつのことはよく知らねぇが…加えてウチの女王も待ち受けてっからな」

ドレッド「へっ…魔性のファルージャか。たかが女だろ?」

クンバヤ「バカが……俺達、西の国民がとことん恐れて逆らえなかった皇帝一族をあっさりと葬っちまった、とんでもねぇ女だぞ?
あれに勝る悪女は後にも先にも現れねぇと言い切れる?」

ドレッド「けっ?どーだかな?」

ヒメ「……」

クンバヤ「王様さんよ…?あんたは本気で奴らを止められると踏んで、この国に来たのかい?」

ドレッド「甘い考えでやらかしたってんなら…そりゃ勇気でもなんでもねぇぞ?無謀なだけのクソバカだ?」

ヒメ「そうだな…」

ドレッド&クンバヤ「」ジッ

団長「」ズーン

ヒメ「団長、気が散るからへこむのやめろ」

団長「(落ち込む事すら禁止された……だと…?)」ピシィィッ
628: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:42:15 ID:7ZmvR.FKR.
ヒメ「おまえらの言い分は分かったよ。でも僕だって命懸けなのは変わらない」

ドレッド「口じゃなんとでも言えんだよ?」

クンバヤ「そのとーり?なんにしたって、やることやんなきゃダメなのよ?」

ヒメ「正直、勝算の少ない賭けに出た自覚はあった」

ドレッド「だろうな?」

クンバヤ「帝都内部の構図も知らねぇおたくらが少数で乗り込んだって、なんも出来やしないだろうよ?」

ヒメ「けどそうするしかなかったんだ」

クンバヤ「ほー?と言うと?」

ヒメ「この戦いはあまりにも時間が無さすぎる。短期決戦に持ち込むしか道はない」

ドレッド「……」

ヒメ「僕の考えでは婚礼を目処に決着を付けるつもりだったけど…予想外の事態に見舞われて全部、水の泡になってしまった」

クンバヤ「水の泡、ね…。なぜそう思うんだい?」

ヒメ「3日もすれば貧民街の騒動が帝都に届き、フィクサーは予定を早めるだろう。
そして奴が皇位に着いたら本格的に国家として始動し、外交を開けるようになる…」

クンバヤ「そうすっと、どうなるんだい?」

ヒメ「この戦争を止める手立ては無くなり、王国と結託した連盟国はまとめて滅ぼされるだろうな」

団長「っ…!?」ゾクッ

クンバヤ「戦うってぇ手は?」

ヒメ「こんな烏合の衆じゃ無理だ」

クンバヤ「おー?言ってくれるね?」

ヒメ「事実だからな」

ドレッド「要約すりゃ…無謀な蛮勇に駈られてきたんじゃねぇと?」

ヒメ「」コクッ
629: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:46:44 ID:YSi2nOfsJM
ドレッド「だがそれだけじゃ話になんねぇな?どっちにしたって、あんたの出る幕はなかったんじゃねぇか?」

ヒメ「…そう言われてもな」

ドレッド「懐刀のおっさんに託して自分はのんびり安全圏で報告を待ちゃいいだろ?」

ヒメ「……」

ドレッド「それともやっぱしガキの遊びか?」

クンバヤ「え?どうなんだい?」

ヒメ「…僕なら、いざという時、フィクサーを表舞台に引きずり出す事が出来る」

ドレッド「あぁ?」

ヒメ「連合軍の盟主である僕の命は3国の国家元首に相当する価値があるからな…」

クンバヤ「なんのこっちゃだが…それがどうしたって?」

ヒメ「どんなにフィクサーが用心深い男でも僕を処刑するとなれば、その目で一部始終を見届ける筈だ」

団長「なっ…!?」

ヒメ「婚礼の義を逃した場合は…そうなる覚悟もしてた」

ドレッド「ククッ…勝つ為なら囮も辞さねぇってか?」ニヤリ

クンバヤ「なるほどね?並外れてらっしゃるわ?」ニヤリ
630: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:48:24 ID:YSi2nOfsJM
ドレッド「どうだ?うちの王様は?」

クンバヤ「俺ぁ気に入ったね?お値打ちは十分だ?」

ドレッド「決まりだな?」ニヤリ

団長「決まり…?どういう意味だ?」

クンバヤ「王様さんよ?ここから巻き返すあてはあんのかい?」

ヒメ「今は…ない」

クンバヤ「なら…もし俺達に策があるとしたら?」

ヒメ「……?」

団長「まだ方法があるのか…!?」

クンバヤ「俺達がなんのあてもなく奴らとやり合ってたと思うのかい?」ニヤリ

団長「……!」ゴクリ

クンバヤ「なぁ?ドレッド?」

ドレッド「おうよ。お世辞にも奴ほどたぁ言えねぇが…俺だって兵を率いる軍長だ?無駄な体力は使わねぇ?」

団長「もったいぶらずに教えんか!?」

ドレッド「放流された西の残軍を引き入れ、可能な限り、奴らから領民を奪取した。
今は方々に散らせてあるが合流すりゃ3万は数えられる?」

団長「3万…!?」

クンバヤ「奴らの推定兵力が10万だとしてもよ。正面からぶつかるんじゃなく固まったとこを襲撃するんだとすりゃ…十分、事足りる数だ?」

ヒメ「確かに……でも守りの硬い帝都を襲撃させるのは厳しいんじゃないか?」

ドレッド「そこで、だ」ニヤリ

ヒメ「……?」
631: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:51:36 ID:7ZmvR.FKR.
ドレッド「あんたを利用さしてもらう?」

ヒメ「どうするんだ…?」

ドレッド「人質としてフィクサーに差し出すんだよ?」ニヤァァァ

団長「な、なんだと…そんな馬鹿な真似は許さんぞ!?」ジャキッ

クンバヤ「おーいおいおい…その覚悟でいたんじゃなかったのか?」

ヒメ「それが手段になるなら従ってもいい」

団長「!?」

ヒメ「聞かせてみろ」

クンバヤ「王族ってのも、なかなか肝が据わってるじゃないか?いいね、ますます気に入ったぜ?」

団長「ならん!!」ダンッ

ドレッド「あぁ?陛下がそれでいいと言ってんだぜ?」

団長「ならばワシが行く!!」

ドレッド「聞き分けねぇこと言ってんじゃねぇよ?そもそもあんたに人質の価値なんざねぇだろが?」

団長「ではワシが単身、乗り込んでフィクサーの首を取ってきてやる!それでよかろうが!?」

ドレッド「寝言は寝て言えってんだよ?」

団長「寝言かどうか、その身に思い知らせてやろうか…!?」ズイッ

ヒメ「よせ」

団長「聞けませんな…!陛下は事態の重さを分かっておられんのか!?」

ヒメ「分かってるよ」

団長「いいえ、分かっておられませぬ!!こいつらは陛下の命を一切顧みず……」

ヒメ「黙れ」

団長「」ビクッ

ヒメ「僕は戦争が始まった時から命懸けで戦ってる。今さら惜しんでる場合か?」

団長「し、しかし…しかし!!」ワナワナ

ヒメ「まだ口答えする気か?」

団長「〜〜〜!!」
632: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:53:19 ID:7ZmvR.FKR.
団長「わ、ワシは一人息子を亡くしております!」

ヒメ「っ…そ、それと今の話となんの関係がある?」ズキンッ

団長「ワシごときがこのように申すのは大変、差し出がましいと心得ますが…しかし言わせていただきたい!!」

ヒメ「…な、なんだよ?」ジトッ

団長「ワシにとって陛下は……ヒメ様は!主君である前に…もう一人の息子のように想う…かけがえのないお方なのです!!」プルプル

ヒメ「え…?」

団長「幼少の頃よりお父君に放任され、寂しげになさる貴方を…憚りながらも気の毒に思っておりました…!」

団長「ワシが剣術指南役を仰せつかり、身近に接するようになってからも…一度として笑顔を見せた事はなく、それどころか成長と共に塞ぎこむ一方で…」

団長「…なんとかしてやれぬものかと、そればかりに思案しておりました!」

団長「ですからワシは…お父君に代わって貴方の成長を見守り、いずれ来るその日、最も信頼の置ける配下として力になろうと決めたのです!!」

ヒメ「だ、団長…」

団長「家庭をないがしろにしてしまい、ラキアには恨まれましたが…それでもワシは…ヒメ様を…立派な国王に育てたかった…!その一心においては今も変わりませぬ!!」

ドレッド「エゴだな。だいたい図々しいんだよ?近衛の分際でなにが息子のように想うだ?」

団長「ぐっ…!なんと言われようと結構だ…!どうか考え直してはいただけませぬか!?」

ヒメ「……」

団長「陛下!!」カッ

ヒメ「私情を押し付けるな」キッパリ

団長「は…!?」

ヒメ「生半可な気持ちで、ここにいる訳じゃない。おまえだって覚悟してきたんだろ?」

団長「……!!」ジワァァ

ヒメ「…戦いを終えて、カロルとラムを取り戻して、また平和な日々に帰るんだ」ポツリ

団長「」ハッ

ヒメ「…その為ならなんだってする。分かってくれるな?」

団長「……くっ…!」プルプル

ヒメ「……」
633: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:55:52 ID:YSi2nOfsJM
ドレッド「…くだらねぇ」ケッ

ヒメ「くだらなくなんかない…」キッ

ドレッド「……!?」

ヒメ「……」ジーッ

ドレッド「ちっ…変人が?」プイッ

クンバヤ「ハハハ!なんだがよく分からねぇが…王国ってぇ国はなかなか面白いみたいだね?」ニヤニヤ

ドレッド「あぁ?」

クンバヤ「うちの国にもあんたみたいなお坊っちゃんがいてくれたらなぁ…ちったぁマシになっただろうによ?」

ヒメ「…ならおまえが変えたらどうだ?」

クンバヤ「は?」

ヒメ「フィクサーをどうにかした後、どうしていくかはおまえ達が決めればいい」

クンバヤ「なんだい、もらえる収穫もいらねぇと?」

ヒメ「そんな目的で戦った訳じゃないからな」

クンバヤ「かぁ〜…?呆れた?」

ドレッド「甘ちゃんもいいとこだぜ…」シラー

ヒメ「もういいだろ。そろそろ策を教えてくれ」

クンバヤ「だとよ…?」

ドレッド「へっ…」ニヤリ
634: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:57:07 ID:7ZmvR.FKR.
―――廃村―――

ドンチャン ドンチャン

ギャハハハハハハハハハハ!!!


宣教師「すごい騒ぎですね…」

クーペ「戦いに勝った夜はいつもですよ?」クスッ

宣教師「そうなんですか…。それにしてもまさかこんな所でクーペさんに会えるとは思ってもみませんでしたよ?」

クーペ「わたしもです…。司祭様がいらしてくださるなんて…しかも国王陛下までご一緒なんですよね?」

宣教師「えぇ、まぁ…」

クーペ「……どうかされました?」キョトン

宣教師「(足も指先も所々擦りきれて…衣服も砂や血の染みが……大変だったんでしょうね)」ジーッ

クーペ「……?」オロオロ

宣教師「……すみませんでした」ペコッ

クーペ「へ?」パチクリ

宣教師「私が行かせた為に…このような事になってしまって…」

クーペ「…謝る理由が分かりません」

宣教師「……」ズキンッ

クーペ「司祭様は正しいと思ったから、そうされたんでしょう?」ニコッ

宣教師「……ですが、それは私の勝手な都合で」

クーペ「いいじゃないですか。それでも?」ニコニコ

宣教師「え?」

クーペ「わたしもあなたが正しいと思ったから、こうしたんです?」ニコニコ

宣教師「クーペさん…」ジーン
635: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:58:43 ID:7ZmvR.FKR.
クーペ「それに救い主様が拐われてらっしゃるんですよね?」

宣教師「あ、はい…。そういえばクーペさんも彼に会ったことがあるんでしたね?」

クーペ「えぇ、とてもお世話になりました。あの子、お母さんと一緒に司祭様を健気に探してましたよ?」

宣教師「そうだったみたいですね…。山間の村以外にも西の領土と南の領土を行き来していたとか…」

クーペ「あれからお会いできたんですか…?」

宣教師「はい。聖堂で…」

クーペ「あー…よかった。わたしも弟と心配してたんです。憲兵に追われてたようなので何かあったらと……」

『…ボクのことは忘れて?』

宣教師「……」

クーペ「司祭様?」

宣教師「…あ、いえ」

クーペ「お助けできるといいですね…?」

宣教師「…助けますよ。必ず…!」ググッ

クーペ「…ふふ。その意気です。ではわたしは…まだ怪我人が残ってるので?」

宣教師「でしたら私もお手伝いしますよ」

クーペ「へ?」

宣教師「実践経験は少ないですが多少なりと医術は身に付けてますので!」ニコッ

クーペ「ふふ。ではお願いしていいですか?」ニコッ

宣教師「はい!お任せください?」ニコニコ
636: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 23:00:38 ID:7ZmvR.FKR.
〜〜〜3日後〜〜〜

―――西の国(宮殿)―――

フィクサー「貧民街にヒメが現れた…?」

副官「は、はい…!すぐさま捕らえようとしたのですが…邪魔が入りまして…!」

フィクサー「ドレッドか…。気にも留めなんだが…生きていたとはな」

副官「ま、まったくしぶとい男で…」

フィクサー「あれだけの深手を負いながら大したものだ?」

副官「わ、私に1万の兵をお預けくださいませ!必ずや、この汚名を返上してみせましょう!?」

フィクサー「ふん…この程度の綻びに狼狽えるとはらしくないじゃないか…。オドアイルよ?」ジッ

副官「」ブルッ

フィクサー「追っ手は要るまい?」

副官「す、捨て置くとおっしゃるのですか…!?」

フィクサー「奴らの目標がわたしであるならば…いずれ、ここにやって来るだろう。
わざわざ追っ手を差し向け、戦力を分散させたところで無駄に兵を削られるだけだ」

副官「や、しかし…あのヒメというのは我らの想像を優に越える危険因子…!速めに手を打つべきかと!?」ググッ

フィクサー「……」

副官「どうか…今一度、挽回の機会を…!」

フィクサー「わたしが何も手も打たずにいると思うか?」

副官「は…!?」バッ

フィクサー「お前の報告など待たずとも、わたしには全ての成り行きが見えている」

副官「こ、この事態を想定し、既に備えておられたと!?」ブルブル

ガチャッ

フィクサー&副官「」ピクッ
637: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 23:02:39 ID:7ZmvR.FKR.
ヒタヒタ ヒタヒタ

副官「……!」ハッ

フィクサー「おぉ…君か」ニコリ

ファルージャ「なんぞ大事な用がおあり?」スッ

フィクサー「ふっ…君が案ずるような事はない?」サスッ

ファルージャ「……そう?」ヒシッ

フィクサー「うむ。そうだとも?」サスサス

副官「(くっ…!な、なんとも…!)」ゴクリ

フィクサー「待っていてくれ。もうすぐ君を妃に迎えられる?」

ファルージャ「ふむ…それは楽しみじゃのう?」

フィクサー「君ほどわたしの心を奮わせた女性は他にいない…」ジッ

ファルージャ「何度も聞いたわ…?」ジッ

フィクサー「ふっ…必ず君をわたしの物にしてみせよう…?」ニヤッ

ファルージャ「それも…何度も聞いたわ?」

フィクサー「……今、初めて口にした筈だが?」

ファルージャ「妾を口説いた男は皆、口々にそう語るのよ?」クスッ

フィクサー「ほう?だがわたしは違う?」

ファルージャ「何を根拠に?」

フィクサー「わたしの予言は外れんのだよ」

ファルージャ「クスス…そうであればよいな?」クスクス
638:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 23:04:27 ID:7ZmvR.FKR.
副官「フィクサー様…先ほどの続きを……」

フィクサー「席を外してもらえるか?」チラッ

副官「は?」

フィクサー「華燭の典に移るまでの残りわずかな日数…抜かりなく準備しておけ?」

副官「か、かしこまりました…」

フィクサー「しかと頼んだぞ…」

副官「はっ…」ペコッ

スタスタ ガチャッ バタンッ

フィクサー「さて、愛しき我が妃よ?」サスッ

ファルージャ「フフ…堪え性のないこと?」ニィィッ

フィクサー「君を愛しく思うあまりのことだ…?」

ファルージャ「ほう…それは妾に非があろうな…?」ナデリ

フィクサー「あぁ、罪な女だ…」ガバッ

ファルージャ「…誰ぞに見られてもよいのかえ?」ドサッ

フィクサー「見せつけてやればいい…」スッ

ファルージャ「アンッ…頼もしいこと…?」ハラリ

フィクサー「っ…美しい…!」カッ

ファルージャ「(瓜二つよな…)」ジーッ

フィクサー「ファルージャ…!」サスサス

ファルージャ「(見た目も声も似つかぬが…忌まわしき皇帝を思い起こさせるわ)」

ファルージャ「(男とはかくも浅はかなものよ…)」フゥッ
639: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:28:10 ID:bKCYR0A6ec
〜〜〜数日後〜〜〜

―――帝都周辺地区―――

ザッザッザッ

クンバヤ「さぁてと…本拠地が見えてきたぜ?おめぇらは今からあん中に入ってく訳だが?」

ドレッド「ちっ!冷やかしてんじゃねぇよ?」

ヒメ「世話になった。ひとまず仲間を預けるが…くれぐれも頼んだぞ」

クンバヤ「はいよ」

ヒメ「ドレッド…大丈夫なのか?」

ドレッド「あ?」

ヒメ「おまえが考えた作戦だからなんとも言えないけど…おまえはホントにそれでいいのか?」

ドレッド「おうおう?」ズズイッ

ヒメ「……」

ドレッド「今さら怖じ気づいたか?あん?」ギロッ

クンバヤ「おーいおいおい、そいつはおめぇを心配してんだろが?」

ドレッド「うるせぇボケが!」

クンバヤ「あんだぁぁおらぁぁ!!?」ガッ

ドレッド「やんのかぁ!?」ガッ

ヒメ「やめろ!!」

ドレッド&クンバヤ「」ピタッ

ヒメ「…悪かったよ。謝るからやめてくれ」

ドレッド「ちっ!」バッ

クンバヤ「ぺっ!」ビチャッ
640: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:30:54 ID:bKCYR0A6ec
ドレッド「ぅおい!王様よぉ?」

ヒメ「なんだ…?」キョトン

ドレッド「あんまりナメてもらっちゃ困るぜ?俺は軍人だ!」

ヒメ「分かってる…」

ドレッド「いぃや、分かってねぇ!」

ヒメ「え?」

ドレッド「俺たちのやり方ってのはな!生き残る為じゃねぇ!勝ち上がるのが大前提にあんだ!」

ヒメ「あ、あぁ…」

ドレッド「確実に死ぬと分かってようが勝利の為なら構いやしねぇ!覚悟からしてちげーんだよ!」

ヒメ「なんでそこまで割りきれるんだ…?」

ドレッド「あぁ?んなもん…輝いた今に価値があるからだろ!!」

ヒメ「……?」

ドレッド「俺はなぁ!死に方一つ取っても妥協しねぇ!輝かしい勝利の後にゃ俺の名が歴史に語られるんだからな!!」

クンバヤ「……わっかんねぇ〜」シラー

ドレッド「ぅおい!!るせぇぞ!?」

クンバヤ「へいへい…?」ポリポリ

ドレッド「あんたもだ!分かったら二度とくだらねぇこと聞くんじゃねぇぞ?」

ヒメ「……」コクッ
641: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:32:41 ID:51.WaVWWTg
クンバヤ「なーんだ、なんだなんだなんだ?やる前からバッラバラじゃねぇか?」

ドレッド「たりめぇだ!馴れ合う気なんざサラサラねぇぞ?」

クンバヤ「…ま、気ぃ付けろよ」

ドレッド「あん?なんだ、急にしおらしくしやがって?」

クンバヤ「しかしまぁ…偉いさんだってのに汚ねぇ身なりで来たもんだ?」ニヤッ

ヒメ「……」

ドレッド「やっぱ喧嘩売ってんだな?」ジロッ

クンバヤ「よくこんなとこに来ようとしたよな。王様ともあろうもんが?」

ヒメ「…おまえこそ、よく僕らを味方にしようと思ったな。敵国の王族相手に…」

クンバヤ「俺たち最下層の穴蔵育ちにとっちゃ国だなんだは知ったこっちゃねぇ。敵か味方かはこの目で決める」

ヒメ「ふふ。そうか」クスッ

クンバヤ「…ありがとな。どうしようもねぇ瀬戸際に俺らを選んでくれてよ?」ニッ

ヒメ「礼には及ばないよ。お互い様だ…?」

クンバヤ「よろしく頼むぜ?」ポンッ

ヒメ「そっちこそ…頼りにしてるぞ」ニコッ

クンバヤ「ハハハ……王様に頼られるなんざ一生の記念にならぁ?」

ドレッド「けっ!無駄話に与太ってねぇで、とっとと行くぞ!真正面から堂々とな!」ザッザッ

ヒメ「あぁ!じゃあ行ってくる!」ザッザッ

クンバヤ「ハハハ!気張りすぎてしくじらんでくれよ!」

ザッザッ ザッザッ………

クンバヤ「ああしてバカやらかしてくれる奴がたまーにいるから、たまんねぇんだよな。革命ってなぁ」

クンバヤ「聖戦開始だ…。イアマンよ。彼の意思に倣う者らに栄光あれ…」
642: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:34:54 ID:bKCYR0A6ec
―――宮殿―――

王国兵34「フィクサー様!急報であります!」ザッ

王国兵35「ドレッドが国王を連れ立って正門前に現れました!?」

フィクサー「来たか…」

王国兵36「切り捨てますか…!?」

フィクサー「通せ」

王国兵34「は…!?」

フィクサー「失礼のないよう陛下は特に注意を払い、厳重にお通ししろ」

王国兵34「ははっ…!承知しました!」ダッ
643: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:35:48 ID:51.WaVWWTg
ドレッド「けっ!戦友との再会だってのに大したもてなしじゃねーか!フィクサーさんよ?」

ヒメ「……」ジッ

王国兵's「」ザザザッ

ドレッド「わざわざあんたが欲しがってたモンを手土産に来てやったんだぜ?ねぎらいの一言も浮かばねぇか?」

フィクサー「…よくぞ陛下を無事に送り届けてくれた」

ドレッド「送り届けただぁ?ものは言いようだな、おう?」

フィクサー「…貴殿には伝えきれない程に感謝している」

ドレッド「他人行儀もいいとこだ…。血が冷えきってんだな、あんたって奴は?」

フィクサー「それは失礼仕った(※つかまつった)…」ペコッ

ドレッド「まぁいいぜ。陛下の身柄をあんたに引き渡す条件は一つ…俺を軍に戻す事だ?」

フィクサー「ほうほう…しかしなぜ今さらになって貴殿がわたしの下に就きたいと申し出るのだ…?」

ドレッド「野盗同然に身を落として考えを改めたのさ?あんたの下で戦った方が得だとな?」ニヤリ

フィクサー「そうか…。実に懸命だ」

ドレッド「ククッ…」ニヤニヤ
644: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:37:15 ID:51.WaVWWTg
ドレッド「(しっかり演技しろよ?)」チラッ

ヒメ「(分かってる)」チラッ

ドレッド「残念だったなぁ、お坊ちゃん?俺はあんたを利用して生き延びさせてもらうぜ?」ポンッ

ヒメ「…恥を知れ」ジロッ

ドレッド「おーこえー?」ポンポン

ヒメ「くそっ…!」ギリッ

ドレッド「こいつの御伴はこっちで始末しといてやったぜ?感謝しろよ?」

フィクサー「うむ、よくやった。では陛下を引き渡してもらおうか」

ドレッド「おら、行け?」ドンッ

ヒメ「くっ!」ドサッ

王国兵34「」バッ

王国兵35「」ガシッ

ヒメ「離せっ!!無礼者め!?」ジタバタ

ドレッド「恨むんじゃねーぞ?これが大人のやりとりってもんさ!」ニヤニヤ

ヒメ「くそぉっ!!よくも…よくもぉ!!おまえなど死んでしまえぇ!?」ギャーギャー

ドレッド「ギャハハハハハハハハ!!!」ゲラゲラ

王国兵's「」ザザザッ

ドレッド「おっ!もうやっちまうのか?気がはえーなぁ?」

ヒメ「ひっ!よ、よせ…!やめろ!僕を誰だと思ってる!国王だぞ!!国王!?国王だぁあ!?」ジタバタ
645: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:38:28 ID:51.WaVWWTg
ドレッド「あ?」

王国兵's「」ジャキッ

ドレッド「おい…剣先が俺に向いてるぜ?なんかの間違いじゃねーのか?」ヒクッヒクッ

王国兵34「いいえ、違いませんとも」ジリッ

ドレッド「待て、待て待て?疑ってんのか?俺は本気で服従すると言ってんだ!
掠め取った土地も5000の野盗も全部まとめてくれてやる!本心からだ!分かるよな!?ぅおい!?」タジッ

フィクサー「見え透いているぞ。ドレッドよ?」

ドレッド「おぉ!?」

フィクサー「…無駄な小細工はよせ?不毛でしかない?」

ドレッド「だからなんの話だってんだよ!?」

ヒメ「あ、あぁぁ…ひぃぃ…!?」ブルブル

フィクサー「ご安心召されませ。国王陛下…かような不届き者は、このフィクサーめが厚い忠心に懸けて成敗致しましょう?」

ヒメ「え…?」

フィクサー「これより、この者を始末させます。お許し頂けますな?」

ヒメ「……!」

ドレッド「ま、待ちやがれ!どういうこった!?あんたは国王を裏切ったんじゃ……」

フィクサー「黙れ、下衆が?」

ドレッド「はぁ…!?」

フィクサー「我が心、常に陛下の膝元にあり。貴様の邪な野心などと同一視するな?」

ドレッド「なぁに抜かしやがる!?てめぇが散々、野望だなんだ語ったから……」

フィクサー「あぁ、まんまと釣られたな。貴様も…オドアイルも?」

ドレッド「なにぃ!?」

フィクサー「アレを陛下にお見せしろ」クイッ

王国兵34「ははっ!」バッ
646: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:40:41 ID:51.WaVWWTg
ガラガラ ガラガラ

王国兵34「布を外します。心して…?」ガッ バサッ

生首「」ダラァァン

ヒメ「こ、れは…!?」ワナワナ

フィクサー「我が副官……いや、謀反者の首に御座います」

ヒメ「なっ…!?」

ドレッド「ど、どうなってんだ、おい!?」

フィクサー「コレに関与する者も含め、陛下に仇なす奸臣はこちらで始末させていただきました。
我が配下に紛れていた事が大変、偲ばれますが…最悪の事態に至らず、何よりにございます」

ドレッド「…てめぇ、なに考えてやがる?でたらめにも程があるぞ…!?」

フィクサー「…陛下を害しましたる不心得者共の罪、この場で命を以て償わせましょう。
わたくしめの至らなさにおきましても…それにてどうか寛大なる処置を願います」ペコッ

ヒメ「まっ…!」

ドレッド「ざっけんじゃねぇ!?」ズイッ

ヒメ「」ビクッ

ドレッド「(いいんだよ、これで…!俺の役目はあんたを潜り込ませるとこまでだ!)」ジロッ

ヒメ「(ど、ドレッド…!?)」

ドレッド「(こうなるのは最初から分かってた…!後は任したぜ!国王様よ!?)」ニヤリ

ヒメ「っ……!」ゴクリ

ドレッド「くそがぁっ!!殺されてたまるかぁ!?」ダッ

王国兵34「貴様!!何をするか!?」バッ

王国兵35「やれ!!こいつを殺せ!?」スラッ

王国兵36「血迷いやがって!!」ダッ

ワァーワァーギャーギャー

ザシュッ ズバッ ドシュッ ガスッ

王国兵37「陛下はこちらへ!」バッ

ヒメ「(すまない…!すまない…!)」プルプル
647: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:42:27 ID:bKCYR0A6ec
ドサッ

王国兵34「はぁっ!はぁっ!暴れやがって…疲れさせんじゃねーよ!?」ゼェハァ

王国兵35「カスがっ!?」ブンッ

王国兵36「らぁっ!くそぉっ!?」ブンッ

ドシュッ ズンッ ブシャッ

フィクサー「時同じくして厳しい戦いに明け暮れた戦友と袂を分かつというのは…些か心苦しいものがありますな」

ヒメ「……!」ワナワナ

フィクサー「陛下?」チラッ

ヒメ「」ハッ

フィクサー「お喜びくださいませ。これであなた様を害する謀反者は消え失せました」

ヒメ「…あ、あぁ…よく、やった」

フィクサー「おいたわしや…さぞ恐ろしい仕打ちを受けられたのでしょうな。
これから先、陛下を虐げる者あらば、このフィクサーめが身命を賭してお守り致しますゆえ…」

ヒメ「……ぼ、僕は…どうなるんだ?」

フィクサー「決まっておりましょう?」

ヒメ「……!」

フィクサー「こちらへおいでませ」スッ

ヒメ「は…?」

フィクサー「玉座に腰を据えられよ?」

ヒメ「なに…?」

フィクサー「陛下御不在の間、不肖わたくしめが暖めてまいりました…。
どうぞ尊き、その御身を相応しき座に休ませられますよう?」

ヒメ「おまえ…」

フィクサー「さぁ…陛下?」

ヒメ「っ……」スッ
648: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:44:38 ID:51.WaVWWTg
ヒメ「」ポスッ

フィクサー「国王陛下の御前である!!一同、敬服を以て礼をせよ!!」ザッ

ザザザザザッ

ヒメ「…フィクサー!どういうことだ?」

フィクサー「…まずは数々の違反行動をお詫び致します」ペコッ

ヒメ「……」

フィクサー「しかしながら…これらは全て陛下の為を想ってのこと」

ヒメ「分からないな…」ジロッ

フィクサー「信用いただけませぬか」

ヒメ「…何があったのか説明しろ。話はそれからだ」

フィクサー「報告するまでもございません」

ヒメ「なに…?」

フィクサー「此度の戦争、我が国の完全勝利と相成りました。
すでに女王以下数名の側近も身柄を押さえ、西国民の支配も順調に進めて御座います」

ヒメ「…そうか。よくやってくれた」

フィクサー「ははっ!」

ヒメ「とでも言うと思ったか?」ジロッ

フィクサー「……」
649: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:45:37 ID:51.WaVWWTg
ヒメ「なぜ僕を通さずに勝手な真似をした?納得のいくワケがあるんだろうな!?」

フィクサー「勝ち取った国益の全ては陛下に献上致します。それにてお許しを……」

ヒメ「そんな事は聞いてない!!」

フィクサー「失礼しました…」

ヒメ「…ファルージャと結婚するそうだな?それについてはどう釈明する気だ?」

フィクサー「女王には話を通して御座います。そちらにも書状にてご報告させていただいたかと存じますが」

ヒメ「あんなおざなりな文言で納得できると思うか?」

フィクサー「しかしながらこれ以上、西の国への攻撃を続けたとて我が国には統治するだけの力がございません。
それゆえ講和を持ち掛け、なるべく西国民の反感を買わずに国政を乗っ取る条件を確約させました」

ヒメ「その条件が女王との婚姻か?」

フィクサー「さすがは陛下、素晴らしい洞察をお持ちで?」

ヒメ「おだてても無駄だ!そんな勝手な決め事を許す道理はないぞ!?」

フィクサー「陛下…」ジッ

ヒメ「」ビクッ

フィクサー「これで誰憚る事なく、西の国は貴方様の物となります」

ヒメ「っ…!」ゴクリ
650: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:47:00 ID:51.WaVWWTg
フィクサー「と申しましても……」

ヒメ「」ピクッ

フィクサー「陛下のお立場に沿うて案じれば易々と結論付けられるものではござらん」

ヒメ「…当然だ!」

フィクサー「そこで一つ妙案が御座います」

ヒメ「なんだ…?」

フィクサー「わたしがファルージャと婚約し、弁務官の立場より西の国の実権を預かりましょう」

ヒメ「それだと…結局、王国軍は僕の統制から外れて独立することになるじゃないか」

フィクサー「無論、これまで頂いた兵の半数は陛下の元にお返し致します。
その上で西の国は大西領と名を改め、王国が保有する領土の一部とさせれば問題ないでしょう」

ヒメ「大有りだ!名前だけ変えたって国民の理解を得られる訳がない!!」

フィクサー「理解など必要ありません」

ヒメ「なに…!?」

フィクサー「口では反対を唱えても行動に起こす気概がない。時が経てば迎合する。それが民意というものです」

ヒメ「……!」

フィクサー「そう警戒されずとも国政など予定調和に過ぎないのですから…?」ニヤリ

ヒメ「なんだと!?」カッ
651: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:49:06 ID:bKCYR0A6ec
ヒメ「…本気で言ってるのか!?」

フィクサー「…これは失言でございました。どうかお忘れくださいませ」

ヒメ「いいや!聞き捨てならないぞ!はっきりと言ってみろ!?」

フィクサー「差し出がましい事ですが…国政というのは所詮、内輪の出来事。よほどの愚行に走らぬ限りはどのようにでも操作可能にござる」

ヒメ「そんな甘い考えで務まるものか…!民意はあくまで大衆の意思であって総意じゃない!」ギリッ

フィクサー「ほうほう、なるほど。それは謂わば…陛下ご自身の挫折にまつわるご意見でしょうか」

ヒメ「そうだ!たった2、3年の経験しかないが…執政の厳しさは誰より学んできた!」

フィクサー「畏れながら…わたしは以前より陛下の政策に疑問を抱いておりました」

ヒメ「は…!?」

フィクサー「なぜああまで非効率な統治方法を採用されるのか……」

ヒメ「何が言いたい…!?」

フィクサー「偽りなき誠実な国家形成。謳い文句は素晴らしく地道な活動も非常に好感が持てましょう」

ヒメ「ならっ……」

フィクサー「しかしそうではないでしょう?貴方は国家というものを見誤っておられる?」

ヒメ「!?」

フィクサー「国王とは決して民の代表などではない。絶対的優位に立つ支配者です」

ヒメ「支配者…だと!?」
652: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:55:18 ID:51.WaVWWTg
フィクサー「情報操作し、世論を工作すれば民意などどうにでもなりましょう。
無理に誠実性を重んじなくとも国家は成り立ち、支配体制を整わせる事でより繁栄する」

ヒメ「おまえはなんにも分かってない!不誠実な政略の乱用は民衆の不満を増幅させ、内政悪化を進行させるだけだ!」

フィクサー「ですから表向きは誠実であると刷り込ませればよろしい」

ヒメ「それで裕福になれるのは、ほんの一部じゃないか!民は格差に敏感だ!偽りの安息を与えても間違っていると、すぐに気付く!」

フィクサー「格差も社会競争を促す立派な政策ではありませぬか」

ヒメ「身分に偏りがありすぎて、その競争が成り立たないんじゃ意味がないだろ!!」

フィクサー「集団的活動におきましてはある程度の線引きは必要不可欠です」

ヒメ「なら弱者は一生、弱者のままか!強者の優位性を磐石にしたいが為に押さえ付けるのが正しいのか!?」

フィクサー「そうは申しておりません。ですが陛下の政策には根本的な見直しと合理化を要すると…」

ヒメ「効率、効率って…ただ国を肥え太らせても行き渡らないから窮する民が増えるんじゃないか!」

フィクサー「でしたらホビットの基本的人権を尊重するとした法を破棄なさればいい」

ヒメ「な、なんでそこでホビットが…!」

フィクサー「かつての反王族勢が成されたように…民の苦痛はホビットに宛てがってしまえばよいのでは?」

ヒメ「またホビットに全部押し付けようと言うのか!?」

フィクサー「平たく申し上げますれば…?」

ヒメ「今までの活動を全て無駄にしろと…!?」キッ

フィクサー「時には再構築も求められましょう?」シレッ

ヒメ「おまえ…!」ギリッ
653: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 21:57:51 ID:bKCYR0A6ec
フィクサー「円滑に世の中を回していくには汚れ役というものが確実に出てくる。うってつけだとは思いませぬか?」

ヒメ「ふざけるなっ!!そんな役回りがなくてもいいように平等な国を作るのが僕の役目だ!?」

フィクサー「貧しさとは心持ちに現れる。不満を解消する材料があれば民は機能するのです」

ヒメ「それが差別か!?それこそ貧しさの象徴だ!!不満を解消するなら娯楽や職の充実でも十分に賄える!!」

フィクサー「しかしそれらには財を要します。格差とは無償で心持ちを補える唯一の法則……」

ヒメ「そんな価値観で形成された人心に正義はない!!」

フィクサー「正義…?クックッ……」プルプル

ヒメ「なっ…何がおかしい!?」

フィクサー「目に余る理想論が過ぎますな?子供の遊びと錯覚しておいでか?」

ヒメ「……!」イラッ

フィクサー「ただ甘やかし、優しく語りかけるだけの政治は民を堕落させましょう」

ヒメ「違う!!僕は民を育てる事を第一に考えてるだけだ!!」

フィクサー「育てる…?」

ヒメ「政治の内面を具体的に知らせ、農民から政治家に至るまで身分にこだわらず就けるよう育成する機関を設ける!
それが格差を取り払い、健全で平等な国に繋がる一歩だ!そして民の進歩が…いつしか国の繁栄に結び付く!」

ヒメ「誰が何を目指したっていい!どんな生き方をしたって…自由である以上に満たされる物なんかない!!」

ヒメ「決定付けられた運命がいかに不自由でやりきれないものか…僕は知ってる。
だから…生まれや貧富に嘆いて望みを捨てる者達を救ってやりたいんだ!」

ヒメ「ホビットも人間も…生い立ちや種族、身分に左右されて虚しい日常を受け入れてきた。
それが間違ってると分かってたって諦めるしかなかったのが今までの王国だ!!」

ヒメ「でも今は違う!!王族に生まれた僕でさえ諦めかけた自由を…最も辛い環境から立ち上がって手にしたヤツがいたから…!」ワナワナ

王国兵's「……」
654: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 22:02:40 ID:51.WaVWWTg
ヒメ「僕に出来る事を教えてくれた仲間に恩を返したい!
そして僕自身も自由を手にする為に……諦める訳にはいかないんだ!!」

フィクサー「…ははぁ、なるほど。それはまこと素晴らしい御言葉です。さすがは陛下」

ヒメ「バカにするなら、それでもいいさ!けど僕はこのやり方を変える気はない!」

フィクサー「ふむ…」

ヒメ「……!」キッ

フィクサー「…出過ぎた申し出を致しましたる無礼、どうかお許し願います」ペコッ

ヒメ「…命令だ!すぐに戦闘停止し、全軍を撤退させろ!西の国に対する侵略行為は一切禁ずる!」

フィクサー「しかと承りました」

ヒメ「……」ジッ

フィクサー「長引かせてしまいましたな…。今日のところはお疲れでございましょう。ひとまずお休みください」

ヒメ「……それもそうだな」

フィクサー「陛下を部屋までご案内差し上げろ?」

王国兵34「はっ!こちらへ!」スッ

ヒメ「……」スタスタ

フィクサー「ごゆるりと…」ペコッ

王国兵's「」ペコッ

ガチャッ バタンッ

フィクサー「……」
655: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 22:08:50 ID:bKCYR0A6ec
副官「いやはや…」ザッ

フィクサー「…生きていたのか?」

副官「や、ご冗談を?まさか死なされるとは思いませんでしたよ?」

フィクサー「ふっ…別の首にすげ替えてやったのだ。そう文句を言うな」

副官「文句の一つも出ましょうよ?私は単独で国王に刃向かった逆賊扱いですぞ?」

フィクサー「失敗した罰だと思えば安いものだろう」

副官「う、うぅむ…おほん!ま、まぁ…そうですな?」ヒクヒク
656: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 22:10:08 ID:51.WaVWWTg
フィクサー「ふっ…何しろ向こうから訪れてくださったのだ…。存分に利用させていただこう」

副官「…しかしなぜ背き続けた我々がこの場面で敢えて国王を立てるので?」

フィクサー「先の国境城塞での活躍は瞬く間に大陸全土に広まった。
殺戮将カカドゥーラ率いる主力軍を弱小戦力で返り討ちにした恐ろしい強者だとな」

副官「運が傾いただけでしょう。あの城は王国が誇る鉄鋼技術の粋を結集した外壁全面鉄製の強固な要塞ですからな」

フィクサー「そんなものは誰も気にせんよ。証明されるのは結果のみだ」

副官「ふむ…して総指揮の狙いは?」

フィクサー「陛下の名声が際立ってしまった以上、わたしの反逆行為はより醜悪に映る。
裏切り者の汚名を着て戦乱に身を移すのはさすがに過酷だ」

副官「…多少は信頼性を保っておかなければ、この西の国のように袋叩きにされてしまいますからねぇ」

フィクサー「うむ。だからこそ今、手にするべき物は権勢だ…。
国王の名声と権益を手中に収め、より強固な枠組みを練り上げる」

副官「や、ですがねぇ…あのお坊っちゃまは想像していたよりも遥かにやり手ですぞ?」

フィクサー「…素直に聞き入れてくだされば傀儡にでもしてやろうかと考えていたが、それも叶わぬのであればしようがあるまい」

副官「…いかがされるので?」

フィクサー「救い主を脅迫材料にし、ひとまずは華燭の典を執り行わせてもらおう…。
その後は約束通り、王国に撤退し、奴の支配体制を徐々に崩していく」

副官「……!」

フィクサー「国王派の役人や取り巻く重鎮を買収、暗殺し、徹底的に弱らせ、こちらは勢力を吸収拡大する。
そうして水面下で各国に国王の評判を貶める噂でも吹聴していけば…4、5年と保たずに陥落するだろうさ」

副官「ははぁ…?総指揮の思い描いた成り行きとはこの事でしたか…。まったく恐ろしい…?」

フィクサー「既に王政内部に仕込みは入れてある。合図さえ出せば即座に動けるようにな…」

副官「(前もってあらゆる局面に備えた準備を済ませてあった訳か…。我が主ながら余念がない…?)」

フィクサー「わたしの予言に狂いはない…」ニヤリ
657: ◆WEmWDvOgzo:2016/3/16(水) 22:14:00 ID:51.WaVWWTg
お礼が遅くなってすみません!キャラ名鑑に加えていただいた方、ありがとうございました!
これから更新が少し遅くなりそうですが頑張りますのでよろしくお願いいたします!
658: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:12:31 ID:LdYq8qibu2
〜〜〜夜〜〜〜

―――宮殿(皇族の寝室)―――

コンコン コンコン

ガチャッ

王国兵34「…お休みのところ申し訳ございません。失礼しま…す?」ギョギョッ

ヒュオオオオン………

王国兵34「……!?」

王国兵35「おい、どうした?」スタスタ

王国兵34「や、やられた!報告だ!?」アセアセ

王国兵35「はぁ?なにをだ?」

王国兵34「逃げられたんだよ!窓から!?」ビッ

王国兵35「…な、なに言ってんだ。ここ4階だぞ?下の中庭にも見回りがいるし……」

王国兵34「隣のベランダに乗り移ったかもしれんだろ!?とにかく至急、オドアイル様に報告するぞ!」

王国兵35「わ、分かったから、そう急かすなよ!」

王国兵34「これで奴をみすみす逃がしてみろ!?文字通り俺達の首が飛ぶぞ!?」

王国兵35「うっ…」ゴクリ

王国兵34「命が懸かってんだ!走れ!?城中の兵を叩き起こして絶対に見つけ出すんだ!?」

王国兵35「わ、分かった!」ダッ

王国兵34「ちくしょう!!」ダッ

ダダダダダッ………

クローゼット「」ガラッ

ヒメ「…行ったか」スッ
659:遅くなってすみません!再開します! ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:14:01 ID:ZdCmVadIqU
―――宮殿(通路)―――

ヒメ「……」タタタッ

ザッザッ ザッザッ

ヒメ「(見回りか…。柱の影に隠れてやりすごそう)」サッ


王国兵36「ふあぁ〜…ねみぃなぁ?」

王国兵37「ぶつくさ言うな」

王国兵36「夜中に見回りなんてやってらんねーよ…。広々してて灯りもまばらだから不気味だしよ」スタスタ

王国兵37「もしもの為だろうが」

王国兵36「もしもって…ヒメを捕まえたんだろ?なんでフィクサー様はさっさと処刑しねーんだ?」

王国兵37「知るかよ。あの方が大事な話を末端の俺たちにしてくれたことがあったか?」

王国兵36「ねぇけどよ…。しっかし、なんでもヒメを国王扱いして恭しく崇めてんだって?」

王国兵37「らしいな」

王国兵36「わっかんねぇなぁ?やる事がコロコロ変わるもんだから…」

王国兵37「噂じゃ各国が戦争に向けて動き出してるんだと?
だからフィクサー様が手を下さんでも勝手に大陸総支配への道は開かれるとか?」

王国兵36「誰が言ってんだよ、それ?」

王国兵37「人づてに聞いた話だから俺も詳しくは知らんが…結局のところヒメを利用して戦力拡大を図ってんじゃないかともっぱらの噂だ」

王国兵36「噂、噂って…あてになんねぇや」


ヒメ「(……)」
660: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:15:27 ID:ZdCmVadIqU
―――宮殿(客室)―――

副官「ヒメが逃げ出したぁ!?」

王国兵34「は、はい!様子見に部屋を覗いたところ窓が開け放たれておりました!」

王国兵35「隣のベランダに飛び移るか、なんらかの方法で庭園に降りたものと思われます!」

副官「室内はよく見たのか!?」

王国兵34「は…そ、それは…その……」マゴマゴ

王国兵35「なにぶん…急な出来事だったもので…!」アセアセ

副官「このっ…バカ共が!?」シュバッ

王国兵34「ぐえっ!?」ズバッ

王国兵35「ひぃっ!?」ビクッ

副官「はぁっはぁっ…」フーッフーッ

王国兵35「も、申し訳ございません!どうか命ばかりは!」ガバッ

副官「やかましい!?」ブンッ

王国兵35「ぐふっ!?」ズンッ

副官「こんな幼稚な小細工に引っ掛かったなど絶対に報告出来ん…!
ただでさえ死人扱いされ、軍の直属部隊から外されかけてるんだ…!」ブツブツ

副官「おのれぇ…二度もおめおめと失態を演じてたまるか!今度こそ殺されてしまう…!」ギリッ

副官「…総指揮への報告は止めておくか。なんとしてもヒメを取り押さえねば…!」ワナワナ
661: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:16:45 ID:LdYq8qibu2
―――帝都(外壁前)―――

クンバヤ「さぁて…一世一代の大勝負ときた。ウズウズするなぁ!」ワクワク

団長「作戦は確実なんだろうな!?」

クンバヤ「あぁ?何度も言わせんなよ。大丈夫だって?それよりも……」チラッ

宣教師「なにか?」キョトン

クンバヤ「女が付いてこれるような戦いじゃねぇぞ?クーペと一緒に留守番してな?」

宣教師「イヤです」キッパリ

クンバヤ「……」

賊徒1「まぁまぁいいじゃねぇか!女がいた方が華やかでよ?」ヘラヘラ

賊徒2「俺、頑張っちゃうからねぇ〜?宣教師ちゃーん!」スッ

宣教師「触らないでください」ペシッ

賊徒2「って〜!たく!釣れねぇんだから?」ヒリヒリ

宣教師「あなた達…この数日間で何回、夜這いをかけてきたと思ってるんです!?
いい加減にしないと、また団長さんに懲らしめてもらいますよ!?」

団長「ふむ…か弱き女を手籠めにしようとは男の風上にもおけん」コキッコキッ

賊徒's「」ブルルッ

クンバヤ「けっ!お高く止まった王国人は貞操観念もかてーんだな?」

宣教師「国民性に関わらず嫌がる相手を強引に組み敷いていい道理などありませんよ!」

クンバヤ「ま、冗談はさておき……開くぜ」ビッ

ガララララッ

宣教師「」ハッ

団長「む…!」ジッ

護衛's「おぉ…!」ドキドキ

賊徒's「ぐしし!」ヘラヘラ
662: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:18:05 ID:LdYq8qibu2
レジスタンス11「よく来たな。イアマンの同志達よ!」スッ

クンバヤ「おうともよ!よくやってくれたな!」ゴツン

レジスタンス11「あぁ、危なかったぜ。検閲を受けさせられた時は心臓がバクバクしたが丸腰で来て正解だった!」ゴツン

団長「? なぜ拳を叩き合わせるのだ?」

クンバヤ「これが俺達の流儀でな。挨拶は拳で交わすのさ」

レジスタンス11「あ?こいつらは?」ジロッ

クンバヤ「ちょいと予定が変わってな。ま、仲間だから心配すんな」

団長「よろしく頼む」スッ

レジスタンス11「……」

団長「む?」

クンバヤ「ハハハ……いきなり異国人が現れちゃ緊張もすらぁ?ここは一つ俺の顔を立ててくれよ?」ポンッ

レジスタンス11「信用できんのか…?」ジロジロ

クンバヤ「できなきゃ連れてこねーよ」

宣教師「……」

団長「……」

レジスタンス11「ふん…」
663: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:19:30 ID:ZdCmVadIqU
クンバヤ「で、塩梅はよ?」

レジスタンス11「見張り連中にゃ酒を振る舞うと嘯いて一服盛っといた。今頃は物見櫓でグースカ寝てるだろうぜ」

クンバヤ「集められた民衆は?」

レジスタンス11「手筈通りだ。さすがに全員分の薬は用意出来ねぇから飲み水に仕込んで眠らせといた」

クンバヤ「じゃあちょっとやそっと暴れてみたって起きやしねぇな?」

レジスタンス11「少なくとも明日の昼頃まではおねんねしてるさ」

クンバヤ「都に敷かれた戦力はどうなってる?」

レジスタンス11「あぁ、それは……」ペラペラ

クンバヤ「ふんふん、まぁなんとかなんだろ」
664: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:21:27 ID:ZdCmVadIqU
宣教師「事前にお仲間を潜り込ませていたんですね?」ヒソヒソ

団長「うむ…。華燭の典を催す為に集められた群衆に混じり、帝都に忍ばせておいたそうだ」

宣教師「その方々が内側から離れの門を開けて私達を引き入れると…」

団長「そうだ。そしてここからは……二手に別れる」

宣教師「……」チラッ

護衛's「」ゴクリ

団長「そもそもこれは我々、王国の問題だ。気を引き締めてかかれ?」

護衛's「はっ…!」ググッ

団長「今夜で全てを終わらせるぞ…!」

宣教師「……!」ギュッ
665: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:22:59 ID:ZdCmVadIqU
―――宮殿(通路)―――

ダダダダダッ

「探せ探せ!草の根掻き分けてでも見つけ出せ!!」

「ヒメを捕らえたら褒美が出るぞ!」

「うらぁ!!どこだぁ!?」

「生け捕りだぁ!!間違っても殺すなよぉ!?」

「中だけじゃなく庭や広場も隈無く調べろ!!」

ワァーワァーギャーギャー

副官「ちぃっ!まだ見つからんのか?」イライラ

王国兵39「お、オドアイル様!大変です!」

副官「はぁ?なんだ、今はそれどころじゃ……」

王国兵39「て、帝都が攻め込まれております!!」

副官「な、なにぃ!?」ギョギョッ

王国兵39「い、いかがなさいましょう…?帝都に兵を送り……」

副官「ならんっ!!」ドガッ

王国兵39「ウゲェッ!?」ドタッ

副官「すぐに帝都の駐屯所へ連絡しろ!?熟練者のゲリュラ大佐ならば小蝿の奇襲ごとき物の数分で払い落とせるはずだ!!」

王国兵39「ば、ばび…!」ダラダラ

副官「くぅ〜そぉ〜……ガァァァアアアア!!!」ワシャワシャ
666: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:24:19 ID:ZdCmVadIqU
―――帝都(居住地)―――

ダダダダダッ

ワァーワァーギャーギャー!

ガキンッ ギギンッ ズガッ ギャリィィンッ

王国兵40「どはっ!?」ズブッ

賊徒's「ウヒャヒャヒャヒャ!!」ドドドッ

クンバヤ「聞いてた通りだな。指示がなけりゃからっきしだ、こんな奴ら?」ビュンッ

王国兵41「く、くそっ!貴様らどこからぶげぇっ!?」ズバッ

クンバヤ「こちとらいっぺん攻め入ってんだ。地理は頭にしっかりとあらぁ?」

王国兵42「ぬぅ…!鼠賊共めがぁ…!」ジャキッ

クンバヤ「たとえば…警備が手薄な侵入経路も伝達が遅れやすい守備領域も宮殿までの道筋も余さず把握済みさ?」ニヤリ

王国兵42「…こ、このような奇襲で浮かれるな!すぐさま騒動が宮殿にまで知れ渡り、全兵総動員で駆逐しに来るぞ!そうなれば貴様らごとき……」

賊徒1「ごちゃごちゃうるせーんだよ!?」ブンッ

王国兵42「ごはぁ!?」バキッ

クンバヤ「野郎どもっ!!俺達の国を取り戻すぞぉ!!」バッ

オォォォオオオオオ!!!
667: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:25:37 ID:ZdCmVadIqU
―――帝都(駐屯所)―――

大佐「火急を要する事態だ!総員、装備を整え、迎撃に向かえ!?」

王国兵's「おぉう!!」

王国兵?「急報!!急報!!ただちに宮殿の警備を増員せよとのお達し!」

大佐「な、なにぃ!?帝都に万を越す大軍が雪崩れ込んできたんだぞ!俺たちとて余裕はないんだ!?」

???「しからば我々にお任せあれ」

大佐「んあぁ!?なんだぁ…!?」

???「後方支援に回され、これまで燻ってきた補給班の者です」

大佐「ほ、補給班…?雑魚が進言とは大した度胸だなぁ!?」

???「このままでは我々は手柄なく戦いを終えることになります。これが最後の機会なのです…!」

大佐「雑兵にも満たない弱小戦力で何ができる?戦に関わってこなかったんだろうが?」

???「だからこそ混濁した市街戦に紛れるよりも守備隊系の整った城内に配置してもらった方が我々もやりやすい」

王国兵43「……お前、妙に詳しいな?」

???「一つでも手柄を得るべく息を潜め、虎視眈々と総指揮の戦略采配を研究してまいりましたので」

大佐「…兜を外してみろ」

???「は…?」

大佐「その訛りない饒舌さと言い、圧力を感じさせる佇まい…何より勘の鋭さが気になる?」

???「………」

大佐「俺は長年、フィクサー様の下で働いてきたが…ここまで察しよく的確な戦況把握が出来る奴は初めて見た?」

???「お褒めに預かり、光栄です」

大佐「しかも一介の民間兵が…だ?」ジロジロ

???「……」
668: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:28:40 ID:ZdCmVadIqU
大佐「囲め!」バッ

王国兵's「」ザザザッ

???「………」

大佐「貴様…何者だ?」ジロッ

???「見抜かれたか…やはり一筋縄ではいかんな。敵ながら天晴れだ!」スッ ポイッ

カランカラン

王国兵?「あっ…!?」

大佐「……!?」ハッ

団長「小細工はよそう。指揮官の首が目の前にある…成果は十分だ」スラッ

大佐「…ルフィアス!!」ギッ

団長「ほう?軍部の者がワシを見知っておったか?」

大佐「貴様は我ら軍部にとって目の上のコブだ…!」

団長「……?」

大佐「お前の成した数々の偉業が…我らを霞ませ、最大的守護者である国軍の必要性を忘れさせた!?」

大佐「6ヶ国協定などという束縛の憂き目に遭い、戦いを禁じられ、我ら軍人は税収悪化の根源だと嘲られてきたのだ!?」

大佐「許さん…!軍人を蔑ろにした国王も…我々を葬った歴史も…すべての借りは戦で返す!!」

大佐「フィクサー様は我々、軍人の夢を思い起こさせた偉大なるお方!!」

大佐「平穏など切り払い、フィクサー様と新たな時代を造り上げる!!何人たりとも邪魔はさせん!!」カッ

団長「…愚かな!独りよがりな貴様らに平和を信じる民の心は分かるまい!?」

大佐「かかれ!?」

バババババッ

団長「…ここを落とせば帝都戦は決着する!!持てる力を余さずぶつけてやれぃ!!」ジャキッ

護衛's「オォォォオオ!!!!」ジャキッ
669: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:30:45 ID:LdYq8qibu2
―――宮殿(後宮)―――

ヒメ「(さすがに女王に所有権が残された城だけあって…ウチの兵が出入りしてる様子はないな)」スタスタ

西兵108「ぐぉらぁ!!ぎさまぁ!?だぁれに断って入ってぎやがっだ!?」ノソノソ

ヒメ「!」ササッ

王国兵43「い、いや、実はこちらの不手際で後宮に侵入者を入れてしまったかもしれぬのだ。悪いが捜索を……」

西兵108「ダメだ!!ごこに入っでいいなぁ女王の許したヤツだけだ!?」

王国兵43「そ、そこをなんとか…」

西兵108「ネズミはごっちで片付ける!!失せろ!?」

王国兵43「し、しかし…」

王国兵44「お、お前ら敗戦国の分際で俺達に指図すんのか!?」

西兵108「あ゙ぁ゙!?」ギロッ

王国兵44「ひっ!?」

西兵108「勘違いずんな!!俺たちゃでめぇらに手ぇ貸じてやっだだけだ!?」

王国兵43「わ、分かった…。兵も引き下げる…だが国王を見つけたら我らに報せを……」

西兵108「じゃかあしい!?ネズミは殺す!!それだけだ!?」

王国兵43「うっ…」

西兵108「消えろっでんだぁよ!!!」ガァーッ

王国兵's「ヒィー!!!」ピュー

西兵108「けっ…クソが?」ペッ

ヒメ「(警備が強化される前に辿り着かないとな…)」
670: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:33:37 ID:LdYq8qibu2
―――女王の寝室―――

フィクサー「…華燭の典には北国と他2国の重鎮が列席される予定だ。これで正式に我々の新国家を認められるだろう」

ファルージャ「手際のよいこと?」

フィクサー「彼らもわたし達を心から祝福してくれているんだ。喜ばしいとは思わないか?」

ファルージャ「腹の探り合いは嫌いじゃ」

フィクサー「ほう?君ほどの洞察眼の持ち主が?」

ファルージャ「読めてしまうからイヤなのよ。意地汚い腹の虫が聴こえてくるようで耳障りさな」

フィクサー「なるほど…」

ファルージャ「いっそなにもかも偽りにほだされていられたら…かような幸福はあるまいにのう?」

フィクサー「偽り、か…。ふっ…わたしは君を本気で愛しているがね」

ファルージャ「それは…妾が女王でなかったとしてもかえ?」

フィクサー「……」

ファルージャ「クスス…戯れ言よ?」

フィクサー「運命の日を楽しみにしているよ」チュッ

ファルージャ「ンッ…妾も同じ気持ち?」クスッ

フィクサー「では…また明晩に」スタスタ

ファルージャ「楽しみにしておるぞ?」ニコニコ

ガチャッ バタンッ

ファルージャ「フゥ〜……つまらぬわ?」ポスッ
671: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:34:59 ID:LdYq8qibu2
―――帝都(駐屯所)―――

ズバッ ザシュッ ガキンッ ドバァッ

護衛2「ぐあっ…」ドサッ

護衛3「団長!追い詰められました!このままでは全滅します!?」キンッ

団長「諦めるなぁ!!死力を尽くして立ち向かえ!!」ブォンッ

王国兵45「ぎあ!?」ズバッ

大佐「これ以上、足止めを喰わされるな!!帝都市街の戦況を立て直す為にも速やかに始末せよ!?」

ドガガガガガガガッ

大佐「」ピクッ

王国兵46「う、うおっ!なんぶはぁっ!?」ザシュッ

クンバヤ「まぁ〜だ手こずってんのかい!?オッサン!!」ダダダッ

賊徒's「ヘヒャハハハハ!!」ドドドッ

大佐「す、すでにここまで侵攻されていたのか…!?」イラァッ

団長「くっ…遅れを取るな!!奴らより先に敵を殲滅するのだ!?」

護衛's「ははぁっ!!」ドドドッ

大佐「ぬ…ぐ…くぅ…!」ギリィッ
672: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:37:28 ID:ZdCmVadIqU
大佐「どぉあああああ!!!」バウンッ

賊徒1「ぐぎゃあ!?」バシュッ

大佐「笑止!笑止!笑止なりぃ!!軍人相手に素人の出る幕なぞないわぁ!?」ジャキッ

団長「ふん…とうとう大将のお出ましか」ジロッ

クンバヤ「はぁ〜…イビツな鎌だな?」

大佐「斧も知らぬとはふざけた輩だ…!この俺がやるまでもないが…早々に屠ってくれよう!!」ビキッビキッ

クンバヤ「ここは俺に任せなよ」ザッ

団長「む?」

クンバヤ「どうせ坊っちゃんがかき回してくれてっから増援は来ねぇし心配いらねーさ。
それよりも早いとこ助けに行ってやんねーと城内が厳しいだろ?」

団長「うむ…ヒメ様を危険にさらす訳にはいかんな。ならば頼めるか?」

クンバヤ「あんまり多くても邪魔くせーだろうから腕利きを100人ばかし貸してやらぁ?」

団長「ありがたい!では行かせてもらうぞ!」ダッ

大佐「待てぃ!ルフィアスぅぅ!?」バッ

クンバヤ「どこ見てんだ、オラァ!?」ヒュッ

大佐「っ…!?」ガァンッ

クンバヤ「雑魚に構ってられねーんだよ。脇役は脇役らしく……」

大佐「」バウンッ

クンバヤ「ぐっ……ぬお!?」ガギッ

ズサァァァ

大佐「…軍人をナメるなよ」ギロッ

クンバヤ「や、やるじゃないの…?」ヒクッヒクッ
673: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:38:48 ID:ZdCmVadIqU
―――後宮(回廊)―――

フィクサー「」スタスタ

バッ

フィクサー「ん…?」

ヒメ「伴も連れずに密会か…。婚前交渉を重ねる、ふしだらな男だったなんてガッカリだ」ジッ

フィクサー「陛下……このような場所で何をなされておられる?女王に夜這いでも掛けようと?」

ヒメ「おまえと一緒にするな」

フィクサー「…お戻りあそばせ。今なら見なかったことに……」

ヒメ「秘密を知られたのはおまえだろ?他国の女王と淫らに通じた現場を…」

フィクサー「なんのことやら……わたしはただ後宮の夜景を眺めに散歩していたまで?」

ヒメ「……」

フィクサー「お気は済みましたか?では部屋に……」

ヒメ「おまえ程の男が気付いていないのか?」

フィクサー「は…?」

ヒメ「耳を澄ましてみろ」

フィクサー「……」
674: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:41:28 ID:LdYq8qibu2
フィクサー「……なにも聴こえませぬが」

ヒメ「女に狂って自分の置かれた状況さえ読めなくなったみたいだな?」

フィクサー「? 先ほどからおっしゃられている意味が……」

ヒメ「おまえの野望を断ちに来た」スラッ

フィクサー「……気は確かか?」

ヒメ「ファルージャとの婚姻を認めさせれば…もうおまえを止める術はなくなる」ジャキッ

フィクサー「忠告しておきますが…わたしどもは貴方と敵対する立場にはござらん」

ヒメ「心に秘めているのなら同じことだろ…」

フィクサー「…様々な試練が続き、不安定に陥ってしまわれるのは察しましょう。しかし貴方は間違った結論を出されている」

ヒメ「……」

フィクサー「焦ってはなりません。逸る気持ちを抑え、先行きに目を向けませぬと?」

ヒメ「そんな時間はないぞ」

フィクサー「は?」

ヒメ「…僕もおまえも」

フィクサー「……」
675: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:43:07 ID:LdYq8qibu2
フィクサー「どうやら話を聞いてもらえそうにないようだ…」

ヒメ「抜け、フィクサー」ジリッ

フィクサー「不意討ち紛いな真似をしておきながら……あくまで正々堂々にこだわりますか?」

ヒメ「抜けぇっ!!」バッ

フィクサー「!」シュバッ

ガキィィンッ!

フィクサー「今ならば…まだ戻れますぞ…?」ギギギッ

ヒメ「最後の最後で失態を演じたな…!」ギギギッ

フィクサー「……!?」ギンッ

ヒメ「僕を……侮るなぁっ!!」ビュンッビュンッ

フィクサー「っ……」ガィンッキキンッ

ヒメ「…民を支配するのが国の在り方?笑わせるなっ!!」

フィクサー「……」イラァッ

ヒメ「僕がおまえを御せなかったように…おまえが僕を御せる道理はないっ!?」

フィクサー「……」ジャキッ

ヒメ「人の心を簡単に考えるなっ!?おまえなんかの煽動に…民の心は動かない!!」キッ

フィクサー「ふん…しばし眠っていただこうか!」グッ
676: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:44:34 ID:LdYq8qibu2
―――宮殿(通路)―――

副官「ヒメはまだ見つからないのかぁっ!?」ダンッ

王国兵43「も、申し訳ございません!鋭意捜索中です!!」

副官「鋭意だろうが一生懸命だろうが見つけ出さなきゃ意味がないんだよっ!!」ブンッ

ガシャンッ

王国兵43「うわっ!?」ビクッ

副官「…さっさとしろぉ!?」

王国兵44「あ、あの!オドアイル様!!」

副官「はぁ!?」

王国兵44「せ、正門が突破されましたぁ!!」

副官「なにぃっ!?」

王国兵44「城内に侵入してくるのも時間の問題ですよ!?」

副官「あぁわてるなあぁぁああ!!!」ジダンダ

王国兵47「(オドアイル副官が一番慌ててる…)」
677: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:46:52 ID:ZdCmVadIqU
副官「…ゲフンゲフン!!」ゴホゴホ

王国兵48「いかがされますか…」

副官「…フィクサー総指揮の影に隠れてはいるが私も超一流の指揮官ですからね。何も案ずることはない!」

王国兵48「……」

副官「戦力を2階に集結させなさい。各階段を封鎖し、徹底的に迎え撃つんだ」

王国兵48「ははっ!!」

王国兵44「そ、装備は!?」

副官「弓が確実だな…」

王国兵43「ゆ、弓は城外の武器庫に……」

副官「…くそっ!被害は増えるが白兵戦を仕掛けるしかないか。数は!?」

王国兵44「150ほどです!!」

副官「…150?なんだ、余裕じゃないか?」

王国兵48「では…」

副官「あぁ、存分にやっちゃいなさい。ひとまず捜索は打ち切る」

王国兵's「はっ!!」
678: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:48:41 ID:LdYq8qibu2
―――宮殿2階(大階段)―――

団長「ぬりゃあっ!!」ブォンッブォンッ

王国兵's「っ〜〜!!」ドババババッ

護衛's「がぁぁあああ!!!」ドドドッ

賊徒's「ウハハハハハ!!!」ドドドッ

王国兵43「こ、こいつら…!」タジッ

王国兵44「か、数じゃ圧倒してる筈なのに…なぜ止められないんだぁ!?」ギンッ

王国兵47「先頭の奴が仕切ってるんだ…!あいつさえ殺れば…!」

王国兵48「…無理だな」ボソッ

王国兵47「あ…?」

王国兵48「気迫が違う…」

王国兵47「な、なんだと!?」
679:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/4/13(水) 21:49:39 ID:ZdCmVadIqU
王国兵48「俺は副官と侵略を進めていた時、実際に国王と対面した」

王国兵47「ひ、ヒメがどうしたってんだ!」

王国兵48「分からないのか?このタイミングの良さ…偶然じゃない。すべては国王の差し金だろうさ!」

王国兵47「あ、あのガキが仕組んだってのか?」

王国兵48「先頭の男は国王の懐刀、ダパーシ・ルフィアス団長だ」

王国兵47「あ、あれが…王国最強の…!?」

王国兵48「…ヒメは子供だが立派な国王だ」

王国兵47「なっ…おまえ…!」

王国兵48「…だが俺たちは深く考えずに疑ってしまった。
口車に流されて…なあなあなまま良いとこに乗り換えたツケが回ったんだ」

王国兵47「……!」

王国兵48「それでもやるしかない。乗り換えた事を悔やむより、自分たちの選択は正しかったんだと証明するしかないんだ!」グッ

王国兵47「……」

王国兵48「ここで負ければ俺たちが犯した過ちの代償が…国に残した家族にまで降りかかる!!」

王国兵48「負けられないんだ!!俺たちだって…!」

王国兵47「っ…」ゴクリ

王国兵48「なあなあはもうやめだ!他人任せ?くそ食らえっ!!」

王国兵48「ヒメの言葉を借りるのは癪だが、そんな事も言ってられない!!」

王国兵48「自分たちで未来を切り開くんだ!!」

王国兵47「目が覚めたぜ…!」

王国兵48「いくぞぉぉ!!」ダッ

王国兵47「うおおおおお!!」ダッ

ガガンッ キキンッ ズカァァン ギャリンッ
680: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/17(日) 22:01:36 ID:cv36kIUfMA
団長「ずりゃあっ!!」ブォンッ

王国兵44「んがばっ!!」ドシャッ

護衛2「う……ぐはっ」バタッ

王国兵47「ざ、ざまぁねぇな!」ハァッハァッ

王国兵48「怯むなぁ!!勝つのは俺たちだぁ!!」バッ

オォォォオオオオオ!!!

護衛3「くそっ…!裏切り者の逆賊共がぁあああ!!」ダッ

ワァーワァーギャーギャー!!

団長「ちぃっ…!予想外に城内の守備が堅いな…!」ギリッ

賊徒2「ぶっ!!」ベシャッ

団長「む…?」ジロッ

ドドドドドッ

賊徒3「やべぇ…!別経路からも来やがった!挟み撃ちにする気だ…!?」

王国兵48「俺たちの勝ちだな!?」ザッ

団長「くっ…おのれぇ…!!」ワナワナ

「お待ちなさい!!」バッ
681: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/17(日) 22:04:30 ID:cv36kIUfMA
団長「お、おい!何をやっとる!下がれ!?」アセアセ

王国兵48「女…?」

宣教師「…!」キッ

団長「……!?」

宣教師「皆、争いを止めて聞きなさい!!私は教団の司祭です!!」カッ

ザワッ

王国兵48「し、司祭…だと」ボーゼン

宣教師「更なる争いを生むと分かっていながら、なぜそうまでして戦うのですか!?」

宣教師「あなた方が守ろうとしている物はなんですか!?」

宣教師「ここにある大勢の命を散らしてまで得るべき物とは…なんなんですかっ!!!」

王国兵's「っ…」タジッ

宣教師「答えなさい!!それさえも考えないまま闇雲に戦うなど愚か者のする事です!!」

王国兵48「か、構うなぁ!!続けるぞ!?」

王国兵's「」ジャキッ

護衛's「くっ!」ジャキッ

団長「もうよかろう!ワシらの背に隠れておけ!」

宣教師「っ…ならば私を殺しなさい!!」

王国兵48「は…!?」
682: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/17(日) 22:06:17 ID:cv36kIUfMA
宣教師「さぁ!?」ザッ

団長「いい加減にせんか!」ガシッ

宣教師「離してください!」バッ

団長「なっ…?」

宣教師「どうしたのですか?私を殺して争いを続けてみせなさい!?」


王国兵47「な、なに言ってんだ、あの女は…?」

王国兵49「し、司祭様って本当なのか?」

王国兵50「小汚ない格好をしているが…あの金髪はまさしくそうだ!」

王国兵51「だ、だとしたら、なんでここにいる!?」

王国兵50「わ、分からん!だがあれは司祭様だ!俺も何度か城下の催しで見た事があるから間違いない!」

王国兵48「……掛かるぞ!!」

王国兵's「!!?」ピクッ

王国兵48「あいつが誰であろうと関係ない!!俺たちは負けられないんだ!?」

王国兵's「」オロオロ

王国兵48「行くぞぉ!!」ザッ
683: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/17(日) 22:08:31 ID:cv36kIUfMA
宣教師「……」ジーッ

王国兵48「……!どけっ!?本当に殺すぞ!?」ジャキッ

宣教師「やれるものなら、どうぞ!私は一歩も退きませんから!」ズイッ

王国兵48「ぐ…うぅっ!女の分際で出しゃばるな!!おとなしくしていれば生かしてやっても……」

宣教師「黙りなさい!!」

王国兵48「う……」ビリビリ

宣教師「殺すのか殺さないのか、はっきりしなさい」

王国兵48「な…ん、だとぉ…!?」ビキッビキッ

宣教師「この戦いを正しいと信じる、あなた方の覚悟に問いかけています」

王国兵48「……!?」

宣教師「あなたが正しいのなら、あなたに背く私は間違いを信じている事になる。間違っている者を裁く事にためらいなどいらないでしょう?」

王国兵48「そ、そんな単純な理屈じゃねぇんだ!もうどうにもならないんだよ!?」

宣教師「どうにもならない事など一つとしてありませんよ」

王国兵48「うるせぇ!?今さら遅いんだ!!」

宣教師「そうやって諦めて流されるから同じ事が繰り返されるのではないのですか!?」

王国兵48「じゃあどうすりゃいい!?信じた物がことごとく灰になるような虚しさを味わってもまだ…何かを信じなきゃならないのか!?」

王国兵48「俺たちは国王を信じてた!だが国王は俺たちをチェスの駒のように戦場に送り出して…その背景にあったのはホビットの取り合いだったと言うじゃないか!?」

宣教師「……」

王国兵48「救い主だかなんだか知らないが…民をないがしろにしてまで庇ってきたのがホビットだと!?バカにするのも大概にしろ!!」
684: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/17(日) 22:12:33 ID:CoIvnYpYEw
宣教師「それはこっちのセリフです」

王国兵48「なに!?」

宣教師「民をないがしろにしてまで…?ホビットは民ではないと言うのですか?」

王国兵48「そ、それは…!」

宣教師「そこから抜け出せていないのであれば信じる物を見失ったとしてもおかしくはありませんね」

王国兵48「…そうさ。本当のところは誰もホビットなんか認めちゃいない」

宣教師「それはなぜ…?」

王国兵48「ホビットとの和平なんざ国が決めたことだ。俺たちがそう望んだんじゃない!」

宣教師「……」

王国兵48「俺たちの暮らしが豊かになっていくなら、まだしも…あんな奴らがいたとこで食い扶持が増えて民はますます凌ぎを削り合うだけだ!」

王国兵48「大陸総支配にしてもそうだ!牽制しながら水面下で奪い合う、この世界には必要で…いずれやらなきゃならない事なんだ!」

王国兵48「どんな形にしろ平和を目指して戦う以上、意義はある!お前たちこそ我々の邪魔をするな!?」

宣教師「今ある平和を壊して新たな平和を望むと?」

王国兵48「そうだとも…!これが最後の忠告だ!どけぇっ!!」

宣教師「……」

王国兵48「……!」
685: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/17(日) 22:21:05 ID:cv36kIUfMA
宣教師「創造と破壊は表裏一体…確かにそれも一種のサダメなのかもしれませんね」

王国兵48「やっと分かったか…」

宣教師「ですが…その悪循環こそが進歩を妨げる最大の要因」ジッ

王国兵48「…まだ馬鹿げたことを」

宣教師「積み木遊びをしたことはありますか?」

王国兵48「ガキの頃にやったきりだが…それがどうした?」

宣教師「いくつもの型からなる積み木細工をより高く精巧に積み上げる満足感はたまらなく誇らしいものですよね」

王国兵48「なんの話だ…?」イラァッ

宣教師「裏腹に…丹念に組み上げた積み木を自らの手でバラバラに崩す瞬間もまた恐ろしい充足感を得られます」

王国兵48「……?」

宣教師「私達は生み出す喜びと破滅への憧れを同時に秘めた種族…それゆえに何度、平和を掴もうとも長続きする事がない」

王国兵48「哲学…ってやつか。俺には当たり前のことを難しく話してるようにしか見えんね」

宣教師「…私達、人間とホビットの違いはそこにあります」

王国兵48「は?」

宣教師「変化を望む人間と変化を拒むホビット。どちらも正しく、どちらも間違っている」

王国兵48「…あんた、さっきから何言ってんだ?」

宣教師「この両極端な属性がすんなり交わるとは思えません。
それでも『出来ないからやらない』では済ませられないのです」

王国兵48「……」
686: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/17(日) 22:22:37 ID:cv36kIUfMA
宣教師「つまるところ、あなた方のしている事は単なる責任放棄です。
大陸総支配などど浮わついた理想を口にしても…その先の破滅は目に見えてます!」

王国兵48「あぁ!?」

宣教師「国の文句を言う前に自分たちが変わりなさい!ヒメく…国王は何度もその挫折を乗り越えてあなた方を含めた全国民を守ろうとしていたんですよ!!」

王国兵48「…あーそうか。よーく分かったよ」

宣教師「……」

王国兵48「実のところ…浅はかだったのは否めない」ジリッ

団長「……!」ジロッ

王国兵48「女を斬るのに気が引けて説得を試みたが…そういうことじゃないんだよな」グッ

宣教師「……」

王国兵48「いずれにしたって分かり合えないモン同士……何を語っても虚しいだけだぁ!!」バッ

団長「さ、させるかぁぁ!!」ダッ

ズバッ プシャアアアアアア
687: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/17(日) 22:24:23 ID:cv36kIUfMA
宣教師「……!?」

王国兵48「うっ…が…!」バタッ

王国兵50「すまん…」ブシュッ

宣教師「な、なぜ…?」

王国兵50「…いくら俺たちが庶民と言ったってあんたの事ぐらいは知ってる」

宣教師「……?」

王国兵50「俺の妻が病に掛かって寝込んだ時に娘が教会に助けを求めようと駆け込んだ事がある」

宣教師「……」

王国兵50「そん時にたまたま来ていたあんたが立場を顧みず妻を手厚く治療してくれたと娘が喜んで話してた」

宣教師「あの時の母子の…」

王国兵50「軍の宿舎に閉じ籠る俺たち兵士はなかなか家族の元に帰ってやれない。
だからなんだが…無償で何かと援助してくれる教団にはかなり助けられてる」

王国兵51「俺んとこもだ…。ヨボヨボのお袋を故郷に残して出ていっちまったから不安だったが…。
教団に相談したら僅かな寄付金と引き換えに世話役を付けてもらえた。おかげでお袋は今も元気だ」

王国兵52「…大恩ある司祭様を手に掛けるなんて、とてもじゃないが出来ない」

王国兵53「俺も…そこまで落ちぶれたくはないな」

宣教師「皆さん…」

王国兵48「げぐぐ…ぞぉっ……じにたぐ…ない…じにたぐ…ないぃ……」ズリッズリッ

宣教師「」ズキンッ

王国兵48「な…にが…し、さいだ…ひとご、ろし……ぐふっ」フッ

宣教師「………」ギュッ
688: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/17(日) 22:26:32 ID:cv36kIUfMA
王国兵's「……」

宣教師「で、では…もう」

副官「なにをやってるんだ!?」

宣教師「」ビクッ

団長「や、奴は…貧民街で出くわした!?」

副官「いつまでも捜索を再開しないと思って来てみれば…戦いもせずにノロノロと!?」

宣教師「もう彼らは戦いませんよ!」

副官「なに!?」

宣教師「そうですよね!皆さ……」

王国兵50「オドアイル副官!!」

副官「……?」

王国兵50「これにおわすのは教団の司祭様にござる!」

副官「…だからどうした?」

王国兵50「どうか司祭様の命だけは保証してくださらぬか!?」

宣教師「え?」

副官「血迷ったか?情にほだされたか知らんが私情を持ち込むな、アホ共が!?」

王国兵's「……」

副官「そんな女…わざわざ生かしてやる価値などあるものか!
つべこべ言わずにさっさとそいつらを殲滅してヒメの行方を追うんだよ!!分かったか!?」

王国兵's「」ジロッ

副官「うっ…なんだ、その反抗的な態度は?」タジッ

王国兵50「副官殿!今一度お尋ね申す!!」ザッ

副官「き、貴様ら…兵の分際で…!」ギリッ

王国兵50「これなる要望はここに集いし全兵の総意にござる!!今一度ご検討願いたい!!」

副官「(うんぬぅぅぅ…!!ひ、非常に腹立たしいが…ここで統制力を弱める愚は避けたい…!)」ワナワナ
689: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/17(日) 22:28:54 ID:cv36kIUfMA
副官「や、や、いいだろう?確かに彼女は失うには惜しい存在だ?副官の権限において保護を許可する!」ヒクッヒクッ

王国兵50「ありがたく!!」ザッ

宣教師「あ、あの…それって…?」オロオロ

王国兵50「これで心置きなく戦えますな」

宣教師「え?たたか……」

団長「ぬんっ!!」ザウッ

王国兵50「ぐばぶっ!!」ガシュッ

宣教師「団長さん!なにを!?」アセアセ

団長「下がっていろ!!」ブォンッ

王国兵51「げぉっ!!」ズガッ

宣教師「な、なんで…どうしたんですか!?もう…戦わなくたっていいじゃないですか!?」ウルッ

団長「無駄だ!!」

宣教師「」ピタッ

団長「訴えかけて止められるのなら陛下もそうしていた!!」

宣教師「……!?」

団長「たとえここで改心したとして…反逆に荷担した兵は皆、極刑は免れん!!」

宣教師「そ、そんな…」

団長「これだけの事態を招いた罪人が裁かれなければ司法は機能しなくなる!!
咎のない空間でまともにいられる者などおらん!誰もが簡単に許されていい国など存在しないのだ!!」

宣教師「……!」

団長「たとえ陛下が許されたとしても…こいつらを許せない者たちが新たな反乱分子となって膨れ上がるだろう。
自らが犯した罪の意識と他者に向けられる憎悪を背負って生きる道など選べる筈もない!」

宣教師「それは…そうかも、しれませんけど」
690:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/4/17(日) 22:31:40 ID:CoIvnYpYEw
団長「切り伏せろぉぉ!!」ダッ

護衛's&賊徒's「りゃあああああ!!!」ダダダッ

副官「たかだか200にも満たない少数部隊だ!蹂躙してしまえ!!」

王国兵's「ぜぁぁああああ!!」ダダダッ

ガガンッ ギキンッ ズバッ ザシュッ ドバッ

宣教師「(許し合えないなら…この争いの果てに何が残ると言うのだろう?)」ツツー

宣教師「(私達は…どこを目指して戦っているの…?)」ポロッ

宣教師「」グシッ

宣教師「(…かつてアピシナもここで挫けてしまった。痛いほど…分かる)」

宣教師「(でも私は諦めない…諦めてたまるもんですか!)」キッ

宣教師「(せめて…この争いを目に焼き付けましょう…。いずれまた起きるであろう時に備えて…!)」ジーッ

宣教師「(この世界から争いをなくす為にも…私が真実を伝える宣教師となるっ…!)」ポロポロ
691: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 21:39:25 ID:KyQ3C7cIb6
―――帝都(駐屯所)―――

ドゴォッ

クンバヤ「いっでぇ!」ズサァァァ

大佐「雑魚が!口ほどにもないわ!?」ニヤリ

クンバヤ「オッサン強いねぇ〜。びっくらこいたよ」ムクリ

大佐「今さらだな…」ジリッ

クンバヤ「…こりゃ確かに素人の俺じゃ勝負にならないわ」パッパッ

大佐「悟ったところで命乞いは聞かんぞっ!!」バウンッ

クンバヤ「うおっ!!」ゴロンッ

大佐「ちぃっ!往生際が…わるっ……!?」ガクッ

クンバヤ「ククッ!」ニヤリ

大佐「な、なんだ…!目が…霞んで…身体が支え…きれん!?」ブルブル

クンバヤ「効いてきたみたいだな?」ニヤニヤ

大佐「貴様の…仕業かぁ!?」プルプル

クンバヤ「真っ向勝負じゃやられることは分かってた。だから…仲間を通じて軍の中枢が集う駐屯所の飲み水に毒を混ぜといたんだよ」

大佐「ひ、ひきょ…ものめぇぇぇ!!!」グワッ

クンバヤ「なけなしの材料で作ったお手製の毒なんで効くまで時間が掛かったが…新参に腕のいい薬師がいてね。威力は抜群だとよ?」ニヤニヤ
692: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 21:40:14 ID:ZIBx4oG0hk
大佐「あっぐ…つぅぅ!!」バタッ

クンバヤ「わりーな。俺らはお高く止まった軍人様じゃねぇんだ?」

クンバヤ「カビや泥のこびりついた生の芋をきたねぇ手でひっ掴んで必死に頬張って生き抜いてきたドブネズミにゃ……」グッ

大佐「……!?」ブルッ

クンバヤ「誇りなんて安い感情は持ち合わせちゃいねーんだよ…っと!!」ブンッ

ザクッ

大佐「がふぅっ…!!」ブバッ

クンバヤ「…西の野蛮人をナメんじゃねーや!ぺっ!」ズボッ

ドサァァッ

クンバヤ「いよいしょっと…いい装備してんじゃねぇか。やっば上級職は違うねぇ」ムンズッ

賊徒's「しゃあっ!!こっちもあらかた終わったぜぇ!?」

クンバヤ「おうテメェらぁ!!奪うモン奪ったら一気に城攻めだぁ!!気合い入れろよぉぉ!!?」

オォォォオオォォォオオオオオ!!!!!
693: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 21:42:09 ID:ZIBx4oG0hk
―――後宮(回廊)―――

ガンッ キンッ ギャリィィンッ

ヒメ「せやっ!!」ビュンッ

フィクサー「ぬっ!」ガィンッ

ヒメ「ハァァッ!!」ビュバッ

フィクサー「」サッ

ヒメ「なぜ仕掛けてこない!?」シュタッ

フィクサー「…その必要はない、とでも申しましょうか」

ヒメ「なんだと…!?」

フィクサー「付け加えるなら、その首にはまだ幾らかの価値がある?切り落としてしまうのは実に惜しい?」ニヤリ

ヒメ「ナメるなと…言うんだぁ!?」ブンッ

フィクサー「ふんっ……」ザウッ ビュバッ

ガッキィィィン

剣「」カランカラン

ヒメ「……!?」ビリビリ

フィクサー「」シャッ

ヒメ「わっ!?」ゴロッ

フィクサー「そちらこそ…見くびるなよ、小僧が?」ピタッ

ヒメ「うっ…!」ゾクッ

フィクサー「お遊戯に付き合ってやるのもここまでだ?」ツンッツンッ

ヒメ「こ、この…!」ギリッ
694: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 21:43:50 ID:KyQ3C7cIb6
フィクサー「ふっ…カカドゥーラを討ち取った事で慢心なされたか?」ニヤリ

ヒメ「殺すなら殺せっ!?」ブルブル

フィクサー「上擦った震え声で言われても説得力に欠けるがな…?」ニヤニヤ

ヒメ「だま…れ!」キッ

フィクサー「素直にわたしの傀儡となれ。さすれば栄えある未来を約束しよう」

ヒメ「おまえになんか従うものか…!」

フィクサー「強情な…?これだから王族というのは…?」

ヒメ「……!」

フィクサー「自尊心ばかり拗らせた救いようのない阿呆だ…」フンッ

ヒメ「悪かったな…!不器用な生き方しか出来なくて…!?」

フィクサー「なればこそ治世も立ち行きならず、政も遅らせ、ひいては国家形成に支障をきたす…。百害あって一理なしとはまさにこの事?」

ヒメ「逆賊に蔑まれる謂れはない…!」

フィクサー「…逆賊、か?大いに結構?」

ヒメ「はぁ…!?」

フィクサー「歴史は常に勝者の栄華に彩られるものだ。アーディス・フィクサーの名は逆賊に始まり、果ては英雄へと昇華する?」

ヒメ「まだおまえが勝つと決まった訳じゃないぞ!」

フィクサー「生まれてこの方、勝負事に負けた経験はない」

ヒメ「大した自信だな…」

フィクサー「わたしの二つ名は預言者……すべてのあらましはこの目に見据えている」

ヒメ「……」

フィクサー「ふっ…殺しはしない。ただ…ほんの少し痛いだけだ?」グッ

ヒメ「っ…!」キュッ

「なにをしておる?」

フィクサー「」ピタッ

ヒメ「……!?」
695: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 21:46:56 ID:ZIBx4oG0hk
フィクサー「…寝室で休まれていたのでは?」

ヒメ「え?」チラッ

ファルージャ「妾の宮にてかような振る舞い……無礼と心得よ?」ヒタヒタ

フィクサー「…申し訳ございません」ペコッ

ヒメ「」ボーッ

ファルージャ「それなる童は?」

フィクサー「我らが国王陛下にござる」

ファルージャ「ほう?そなたが王国の…」ジッ

ヒメ「」ハッ

ファルージャ「クスス…なかなか良い面構えではないか」クスッ

ヒメ「(な、なんだ…この感覚は?まるで時間が止まってたような……)」ボーッ

ファルージャ「妾こそ西の国を統べる唯一無二の帝なり?」スッ

ヒメ「え…?」キョトン

ファルージャ「そうら…妾の手を握ってごらんな?」クスクス

ヒメ「っ……」ゴクリ

ファルージャ「ン?」

ヒメ「し、つれい……」パシッ

ファルージャ「よきにはからえ?」ギュッ

ヒメ「!!!」ドキンッ

ファルージャ「フフ…指を絡めてみせただけでその有り様……耳まで真っ赤じゃぞ?」ツンッ

ヒメ「ひっ!?」バッ

ファルージャ「ン…もうよいのかえ?妾の手に触れられる機会などそうそう無いと言うに?」パッ

ヒメ「(な、んなんだ…知らない…こんなの……)」ゾクゾク

ファルージャ「」ニヤニヤ
696: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 21:50:21 ID:ZIBx4oG0hk
ヒメ「(無理やり体ごと吸い込まれるような危うさ…本能から支配されていく凄まじい欲求の波……)」ドキドキ

ヒメ「(魔性の通り名なんて、どうせ大袈裟に誇張されただけで先入観を持って見るから目を奪われるんだと…そう思ってた)」

ヒメ「(けどこいつから漂う何かは…そんな単純なものじゃない!)」

ヒメ「(今、まさに生死を分かつ戦いの最中で…不覚にも見惚れてしまった…!)」プルプル

ヒメ「(…くそっ!惑わされるな……)」ワナワナ

西兵's「女王!!」ザザザッ

ヒメ「」ハッ

フィクサー「ふん…」

西兵108「でめぇら女王に何しやがる!?」ズイッ

ファルージャ「よいよい。コレらは客人よ」

西兵108「さ、さいでっか!」デレー

ファルージャ「付いて参れ、国王よ。ささやかながら妾が自らもてなしてやろう」

フィクサー「女王殿…」

ファルージャ「ン?」

フィクサー「ご冗談もほどほどに…?」

ファルージャ「妬いておるのかえ?」クスッ

フィクサー「何をおっしゃいますやら…わたしはただ国家間で不義があってはならぬと配慮し……」

ファルージャ「ふあぁ…しかし先ほどから城内が慌ただしゅうて眠れぬわ。はよう静まらぬものか?」チラッ

フィクサー「は…?」

ファルージャ「国王の安全は妾が責任を持って保証しよう。そなたはやかましい騒音を早急に鎮めてまいれ?」

フィクサー「」ジロッ

ヒメ「」プイッ

フィクサー「…なるほど、では致し方ありますまい…?」

ファルージャ「さ、おいでなさいな」ヒタヒタ

ヒメ「(気を引き締めないと…この女に取り込まれかねない。集中を保て…!)」グッ

スタスタ スタスタ………
697: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 21:52:36 ID:KyQ3C7cIb6
―――後宮(地下の隠し部屋)―――

ファルージャ「ここであれば見つかる心配はない。暫し寛がれよ?」ポスッ

ヒメ「…どういうつもりだ」

ファルージャ「?」

ヒメ「なぜ敵である僕を助けた?」

ファルージャ「はて…敵とな?」

ヒメ「ぼ、僕は敵対国の王でおまえらを打倒するべく……」

ファルージャ「」ドロォォン チュピッ

ヒメ「」ドキッ

ファルージャ「ンゥ〜…甘美なる舌触り?そなたも舐めてみるか?」ペロッ

ヒメ「く、クリーム…?」ドキドキ

ファルージャ「ローヤルゼリーよ。濃厚な甘味と微かな酸味がクセになる珍味さな」チャプッ

ヒメ「…蜂蜜か」

ファルージャ「ほれ?」スッ

ヒメ「!?」ビクッ

ファルージャ「遠慮はいらぬのだぞ?」ニッ

ヒメ「た、他人の指に着いた蜜なんか舐められるか!?」プイッ

ファルージャ「ほう?口移しがよいか?」レロォォ

ヒメ「っ……ふ、ふしだらな発言は慎め!淑やかさの欠片もないな!?」

ファルージャ「クスス…」

ヒメ「も、目的を言え!僕をどうする気だ!?」

ファルージャ「さぁ…?」

ヒメ「なに…!?」

ファルージャ「面白そうなので連れてきたまでよ。暇潰しくらいにはなりそうじゃしな?」

ヒメ「な、なに言ってるんだ、おまえ…?」
698: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 21:55:42 ID:KyQ3C7cIb6
ヒメ「事の重大さを分かってるのか…?僕とおまえは戦ってるんだぞ!?」

ファルージャ「そうなのかえ?」

ヒメ「城内の騒動に気付いてたんだろ!分からないとは言わせないぞ!?」

ファルージャ「ハァン…?あれはそなたが?」

ヒメ「そうだよ…!おまえたちを止める最後の手段だ!」

ファルージャ「もうそなたの国に興味はないぞ?欲しい物は手に入れたでな」

ヒメ「だ、騙されるか!フィクサーと組んで軍拡を……」

ファルージャ「アレが勝手にやっていることよ。妾は関わっておらぬ?」

ヒメ「だ、だとしても奴に協力してるなら同じ事だ!」

ファルージャ「協力…?」ジッ

ヒメ「な、なんだよ…?」タジッ

ファルージャ「よしておくれな?なぜ妾から手を差し伸べてやらねばならぬのか?」

ヒメ「は…?」

ファルージャ「フゥ〜…」スラリ

ヒメ「(し、仕草がいちいち目に付くな)」ドキッ

ファルージャ「あやつが妾を欲し、妾はそれに応えてやった…。それだけよ」シラー

ヒメ「どういう意味だ?」

ファルージャ「世界制服でも大陸総支配でもどうでもよいが妾に尽くそうというのなら殊勝なこと。拒む理由はあるまい?」

ヒメ「…その為に他の国々がどうなるのか考えないのか」

ファルージャ「なぜそのような考えに至る?」

ヒメ「……」

ファルージャ「己に利あらば、それでよかろうな。見知らぬ誰ぞの為に頭を悩ませるような無駄はせぬ?」

ヒメ「……今、はっきり分かった」ボソッ

ファルージャ「……?」

ヒメ「やはりおまえは僕たちの敵だ!」キッ

ファルージャ「フフッ…さようか」サラッ
699: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 22:00:42 ID:KyQ3C7cIb6
ヒメ「カロルとラムはどこにやった?」ジロッ

ファルージャ「はて…聞かぬ名じゃな」

ヒメ「シラを切っても無駄だ!おまえが拐ったことは分かってる!」

ファルージャ「あ〜…アレらか」

ヒメ「二人をどうする気だ!?」

ファルージャ「それを聞いてなんとする?」

ヒメ「あいつらを取り戻して王国に帰る!」

ファルージャ「」ニタァァァ

ヒメ「」ビクッ

ファルージャ「そうまで望むのなら会わせてやってもよいぞ?」

ヒメ「ホントか…!?」

ファルージャ「そろそろ…あやつも限界であろうさ」ニヤニヤ

ヒメ「……?」

ファルージャ「クスス!さ、参ろうぞ?」スクッ

ヒメ「あ、あぁ……」スクッ
700: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 22:02:09 ID:KyQ3C7cIb6
―――宮殿2階(大階段)―――

バシュッ ドバッ ズギャンッ ゴカァッ

クンバヤ「ウラァァアア!!!包囲してやがる連中をぶっ叩くぞぉ!?」ブンッ

王国兵54「ぐおぉ!?こ、こいつらどこから……」バタッ

王国兵55「新手か!くそっ!せっかく包囲したのに逆に挟まれてしまった!」ギリッ

団長「よし…!これならば階下に気を取られずに済む!蹴散らして階段を駆け上がるぞぉ!!」ダッ

護衛's「今度はこっちが反撃する番だぁぁ!!!」ドドドドッ

宣教師「はぁっ…くっ!ぜぇっぜぇっ!」タタタッ

王国兵56「ぬあああああ!!」ダッ

宣教師「っ…!?」ハッ

王国兵56「死ねぇぇぇえ!!!」ブンッ

賊徒3「ヒャッハー!!」ゴシャッ

王国兵56「ぐぇっ!?」ドサァッ

宣教師「……!」バックンバックン

賊徒3「無理して走らんでも階下に守備陣張って拠点確保しといたから、そっちでおとなしく守られてなよ〜?」ニヤニヤ

宣教師「よ、余計なお世話ですよ!」ダッ

賊徒3「お!じゃじゃ馬だね〜!まぁそこが可愛いんだがよ!」ダッ
701: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 22:04:29 ID:ZIBx4oG0hk
護衛8「きぇい!!」ブンッ ザシュッ

宣教師「(…皆、がむしゃらになっていて何も目に入らなくなってますね。目の前に立った相手をひたすら斬っているような…)」タタタッ

プシャアアアアアア

宣教師「きゃっ…」ピシャッピシャッ

賊徒3「ぎゃはは!血飛沫浴びちまったか?」ヘラヘラ

宣教師「……」ヌルッ

賊徒3「おいおいおお!?立ち止まったら死ぬよ!?」ガキンッ

宣教師「分かってます…」ダッ

宣教師「(…こんな惨劇の末に私達はまともな日々を受け入れられるのでしょうか)」タタタッ

宣教師「(たとえ平和な未来が訪れて次の世代が生まれこようとも…同じ歩幅で進める気がしない)」

宣教師「(私達は平和を取り戻そうともがきながら…恐ろしく底深い闇へ沈んでいるだけなのかもしれない)」

宣教師「(それでも……希望があると信じて戦い続ける他にない…)」

宣教師「(なんと無力で…なんと救えないのだろう)」シュン
702: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 22:06:00 ID:ZIBx4oG0hk
副官「や…や…ややや!?」ヒクッヒクッ

王国兵57「オドアイル様ぁ!!包囲陣を敷いていた増援部隊が外から入ってきた新手に背を討たれましたぁ!!」

副官「さ、さ、さらに増援を!」アセアセ

王国兵57「城内の兵は皆、召集してしまいました!残りの兵は帝都で交戦中です!」

副官「(な、なんでだぁ〜!!あれが帝都を抜けてきた隊であれば外の兵は突破された事になる…!)」

副官「(なぜあんな虫けら共に…!駐屯所に待機していた部隊は何をやってるんだ!?)」

副官「(そ、そもそもこいつらはどうやって帝都に侵入したのか…!あの数の大群が移動すれば確実に見張りが気付いていた筈だ!)」

副官「(ま、まさか以前から既に内通者を潜ませていたのか!?)」

副官「(や、しかし総指揮もそこは危惧し、検閲を徹底させてきた!集めた民衆の管理も怠ってはいない!)」

副官「(ともなれば誤算はどこ……に…)」ハッ

副官「こ、くお…う」ボソッ

王国兵57「オドアイル様!!」オロオロ

副官「うるさぁい!?」シュバッ

王国兵57「どはぁ!?」ズバッ バタッ

副官「ヒメか…!そうだ…あのガキがこの国に入った時から…予定とはだいぶ食い違った事態が発生した…!?」ブルッ

副官「我々はあのガキの使い道ばかりに集中し、城内も奴の噂で持ちきりに……」ブルブル

副官「あいつは敢えて自分の身を差し出すことで…我々に大きな隙を作らせたんだ!」ギリッ

副官「だとしたら…ドレッド軍長の死も…我々を信じ込ませる為の策!?」ドクンッ

副官「総指揮に真っ向から反論し、言い合ってみせたのも自らが一方的に追い込まれていると錯覚させる為の演技ということになる!」

副官「は、は、ハハハ…は……なんて恐ろしい試みを実践するんだ。まったく笑えない話だよ…」ガクッ

副官「一連の騒動があんなガキによって仕組まれ、我々はその通りに踊らされたと…!?」ワシャワシャ

ザッ

副官「だがいくらなんでも無謀すぎる賭けだ!!こんな運頼みの強行が罷り通る訳がない!?なのになぜ我々が追い詰められているぅぅ!!?」アワアワ

「オドアイル」

副官「」ビクッ
703: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 22:08:18 ID:ZIBx4oG0hk
副官「」オソルオソル

フィクサー「速やかに報告せよ。なぜこうなった」ジッ

副官「!!!」ゾクッ

フィクサー「わたしの許しなく兵を動員させるに至った経緯は?」

副官「〜〜〜!!」ガクガク

フィクサー「被害総数、敵の規模、先導者の名、味方の配置、補給線の確保状況、これら全ての質問に答えろ」

副官「や、や……」アワアワ

フィクサー「貴様…!?」ビキィッ

副官「あ、あぁぁ!あぁぁ!!申し訳ありませぇぇん!!!」ガバッ

フィクサー「よくも兵を無駄に散らしてくれたものだな…!わたしが指揮していれば、このような連中は一瞬で消し去れたものを…!」ギリッ

副官「……!」ブルブル

フィクサー「すでに城内まで侵食されていたか…。これでは帝都に配置しておいた主力との連絡手段も絶たれたと見てよさそうだな」

副官「て、帝都の方は熟練のゲリュラ大佐がご承知おきくださってまして…」

フィクサー「ならばなぜこれだけの敵兵が城内に集まっている?」

副官「そ、そそ…それ、は」

フィクサー「下がれ…役立たずが」ギロッ

副官「」ガーン
704: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 22:11:41 ID:ZIBx4oG0hk
フィクサー「全兵に告ぐ!!」

ザワッ

王国兵58「お、おぉ!フィクサー総指揮だ!」パァァ

王国兵59「フィクサー総指揮が来てくれたぞぉ!!」バッ

フィクサー「ここからはわたしが一切の指揮を執る!!死に急いだ愚かな蛮人共に引導を渡してやろうぞ!?」

王国兵60「よぉし!!あのお方に従ってさえいれば勝利は決まったようなものだぁ!!」

王国兵61「うおおおおおお!!!」バッ

オォォォォオオオオオ!!!

フィクサー「(見る限り難しい盤面でもない、が)」ジーッ

フィクサー「(ちっ…この失態で野望への道は何歩も遠ざかった…。計画を練り直さなければな)」イライラ
705: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 22:13:49 ID:ZIBx4oG0hk
団長「フィクサー…!奴の存在が敵の士気を大いに奮い起たせたか!」ブォンッ

ズバッ ドサァッ

団長「(……それにしてもおかしい。こちらは順調に駆け上がっている筈だが、むしろ勢いが弱まっている?)」バッ

護衛's「」ゼェゼェ

団長「(たかが階段とはいえ、迎え撃つ敵を蹴散らしながら上がる以上、体力の消耗は平地戦の何十倍も激しい)」ブォンッ ザシュッ

団長「(しかし、そこを考慮しても異常だ…。ワシが先頭で積極的に切り伏せ、鼓舞し続ける事で勢いは衰えさせないように戦況を組み立ててきた!)」ガキンッ ガンッ

団長「(フィクサーめ…いったい何をしたのだ!?)」ギロッ

706: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 22:15:38 ID:KyQ3C7cIb6
フィクサー「(ふん…こんな単純な兵法も読めんとは?所詮は軍略と無縁な国王の犬に過ぎんか)」

フィクサー「(はたまた先頭に固執したのが仇となったか…)」

フィクサー「(少数突破で士気高揚を重視するのは正攻法と言えるが…自らも目前の敵に集中せねばならぬ以上、隊を見渡す視野は狭まろう)」

フィクサー「(その見落としが隊の綻びを加速させ、戦況把握を遅らせる。気付いた時には……)」

ドドドドッ ズブッ ガスッ ビシャッビシャッ

ギャアアアアアアアアアアア!!!

フィクサー「(完全に隊形が崩壊している…という訳だ)」ニヤリ
707: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 22:16:46 ID:ZIBx4oG0hk
ワァーワァーギャーギャー!

団長「(しまった…!ワシとしたことがぁ…!?)」ギリッ

王国兵's「先頭と後方の隊を引き離したぞぉぉ!!このまま呑み込めぇ!!」

団長「(奴の狙いはこれだったか…!)」アセアセ

ガキンッ ドガッ ズシャンッ ブシュッ

団長「(ワシを先頭に突っ込んでいく部隊に対し、敢えて守備を固めず覆うようにして広げ、両側から圧迫するようにして挟み込んだ…!)」

団長「(見抜けずに攻撃を続けてしまったが為にこちらは隊を分断され、同時に兵を大幅に削られた…!)」

団長「(順調に駆け上がっているだと…?バカめ!それは敵が陣形を変え、中央の守備を減らしたからだとなぜ気付けなかった!)」イラッ

団長「(違和感はあったのだ…!だがワシが切り開いているものだとばかり考えてしまった!!)」イライラ

団長「(情けない…!よもや己の腕を過信し、敵の策に溺れるとは…!?)」ググッ
708:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/4/20(水) 22:18:26 ID:KyQ3C7cIb6
王国兵62「隙だらけだぁ!?」ヒュンッ

王国兵63「殺せぇ!!」ブンッ

王国兵64「はぁぁ!!」バッ

団長「」ヒュンヒュン ブォンッ

王国兵62「げっふ!?」ザンッ

王国兵63「ぐきゃあ!!」バシュッ

王国兵64「ぶぐっ!!」ドバッ

バタバタバタッ

団長「もはやこれまで…ぬぁぁぁああ!!!」ダッ

ザンッ ドガッ ズシャンッ

団長「お前たち!!両側から迫る敵は無視していいぞ!!」ブォンッブォンッ

護衛's「団長……!」ハァッハァッ

団長「こうなれば策などいらん!!ワシが力づくで切り開く道に全力で続けぇ!!」ダッ

護衛's「おおおおおう!!!」ダダダッ
709: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/29(金) 22:03:17 ID:IpAX9y2WJM
団長「ぬぉぉおおお!!」ブォンッ

ドガガガガガガガッ

フィクサー「……」ジッ

副官「た、単独で兵を切り破るとは…なんという豪腕だ!?」アセアセ

フィクサー「後方小隊…迎撃体制を整えよ」バッ

副官「そ、総指揮…?」ハッ

フィクサー「中央守備隊、両翼に散れ」バッ

王国兵's「ははぁっ!!」ザザザッ

フィクサー「標的は駆け上る小隊だ…。迎撃陣形"つるぎの舞い"を展開せよ!!」ババッ

副官「(そういうことか…!)」ニヤリ

団長「ぬぅらぁぁあ!!」ガスッドガッ

護衛's「おぅぅ!!」ダダダッ

副官「抜けてきたぞ!一斉に飛ばせぇい!!」

王国兵's「てぁぁああああ!!!」ブンッブンッブンッ

団長「(守備陣を抜けたぞ…!よし……なっ!?)」ハッ

副官「掛かったな!飛び交う刃の餌食となるがいい!?」ヘラヘラ

団長「ふ、防げぇぇ!!」バッ

護衛's「わぁぁああああ!!!?」オロオロ

ザクザクザクザクザクッ
710: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/29(金) 22:05:06 ID:IpAX9y2WJM
バタバタバタッ

護衛's「ごっ……うぇぇ…あ………」ピクッピクッ

副官「…ハーハッハッハ!やあ、さすがだねぇ?これだけの剣を瞬時に防いでみせるとは!!」ヘラヘラ

団長「うぐっ…よく、も…!」ギリッ

副官「だが一緒に登ってきた手勢までは守りきれなかったか!孤立してしまったねぇ!んぅ!?」

団長「なんのこれしき…!」グッ

副官「さぁ!!やってしまいなさい!?」

王国兵's「」ジャキッ

団長「ぬぅん…!」ググッ

フィクサー「…観念しろ」

団長「…観念するのは貴様だぁぁ!!」ザウッ

ドバッ ザシュッ

副官「し、しぶとい…!」

フィクサー「近接戦ではラチがあかん。槍で仕留めろ」

槍兵's「はっ!」ザザザッ
711: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/29(金) 22:07:09 ID:8PiAZwx7gI
ガガァァンッ!!

クンバヤ「よぉ!侵略者共!?」ザンッ

副官「く、くそっ!向こうからも別隊が突破してきたか!」アセアセ

クンバヤ「お値打ちの高そうな首じゃねーの!早速いただくとするかなぁ!!」ジャキッ

フィクサー「…無駄だ」

ドドドドッ ガゴォォン

賊徒's「ぐえぇぇえ!?」ドシャッ

クンバヤ「なにぃ!?お、押し込まれ……る!?」ズズズッ

フィクサー「いくら駆け上がろうとも待ち受ける予備隊に呑まれるのが関の山だ。階下と階上では地の利が圧倒的なのだから」

クンバヤ「けっ…しゃらくせぇ!?」ビュンッ ズバッ
712: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/29(金) 22:08:44 ID:8PiAZwx7gI
ワァーワァーギャーギャー!

フィクサー「勝負あったな」

副官「や、さすがは総指揮!見事な采配で!」パチパチ

フィクサー「」ギロッ

副官「うっ!」ビクッ

フィクサー「何を浮かれている?貴様も戦え?」

副官「は…!?」

フィクサー「ルフィアスの首を取れば失態は帳消しにしてもいい」

副官「……!?」

フィクサー「が、それが出来なければ……」

副官「」ガクガク

フィクサー「わたしの方針はよく知っているだろう?」

副官「は、ははぁ!!」スラッ
713: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/29(金) 22:14:42 ID:IpAX9y2WJM
王国兵65「ふぃ、フィクサー様ぁ!!」オロオロ

フィクサー「どうした」

王国兵65「あ、新手が2階通路を伝い、背後に迫っております!!」アワアワ

フィクサー「なんだと?」ピクッ

ガンッ ゴキッ ズドッ ボグシュッ

ウワアアアアアアアアア!!!

レジスタンス's「侵略者を粉砕しろぉ!!今こそイアマンの真価を見せる時ぃぃ!!」ズガガガッ

王国兵66「おごっふ!?」ズザッ

クンバヤ「やっと来たな!おせぇんだよ!?」ニィッ

フィクサー「…予備の隊列を組み直し、背後に迫る敵を迎え撃て!」サッ

ザザザッ

クンバヤ「いいのかぁ?こっちを手薄にしちまってよぉ!!」ザッ

フィクサー「ちっ…先ほどからやかましいが…誰だ、貴様は?」ジロッ

クンバヤ「初めましてだな?俺がこの反乱のリーダーさ?」ニカッ

フィクサー「ほう…ならばこれも貴様の手引きか?」

クンバヤ「へっ!そういうこった?この大階段以外にも2階に通じる経路はあるもんでね?」

フィクサー「城の見取り図は完璧に把握しているが、そのような経路はどこにもない筈だ……」

クンバヤ「ねぇなら作りゃいい」

フィクサー「作る…だと?」

クンバヤ「なんせ俺ら貧民は野生の獣みたいなもんだ。鉤縄引っ掛けて壁登るくらいは雑作もねぇやな」ニヤニヤ

フィクサー「古典的な手を思い付くものだな…。まるで獣の発想だ」

クンバヤ「ハハハハハ!!そんな手に一杯喰わされてんなぁどこのどいつだろうなぁ!?」

フィクサー「ふん……」チラッ
714: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/29(金) 22:17:55 ID:8PiAZwx7gI
ギャリンッ ズガッ ピキィィンッ ドゴッ

フィクサー「(階下は乱戦に縺れ、指示が行き届かない)」チラッ

フィクサー「(大階段に配置された守備陣は階下から迫り来る敵との攻防にせめぎあっているが…中央守備を誘い込みに利用したことで階上への突破口が開いてしまっている)」チラッ

フィクサー「(ここ階上は……2階通路からの急襲を塞き止めるのが限界だ)」チラッ

フィクサー「(残存する兵力差は五分五分といったところか)」

フィクサー「(しかし…致命的ではないにしろ我々は退路を閉ざされ、なおかつ意表を突かれた)」

フィクサー「(主導権を奪われた形となり、敵の勢いを目の当たりにしたことで、こちらの精神的負担は大きいが…)」チラッ

クンバヤ「」ジリッジリッ

団長「でぁぁぁあああ!!」ビュンッ ガキィィン

フィクサー「(所詮は装備も整わぬ烏合の衆。戦力に偏りがある分、支柱となる二つの首を落とせば一気に形勢は我らに傾く…)」スラッ

フィクサー「(となれば……)」スタスタ

王国兵65「そ、総指揮!?お一人で前に出られては……」アワアワ

フィクサー「」スタスタ

賊徒7「ボケッとしてっとやっちまうぜぇ!?」バッ

賊徒8「もらいっ!!」ブンッ

ヒュオンヒュオンッ フヒュッ スパパパパパッ

賊徒7「!?」ピピッ

賊徒8「んがっ!?」プシュッ

プシャアアアアアアアアアア

賊徒's「」ドサドサドサッ

クンバヤ「!?」ビクッ

フィクサー「生臭い雑兵ごときの血で我が剣を汚したくはないのだが…」ヌルッ

クンバヤ「(なんだ、こいつ…!剣どころか腕の動きさえ見えなかったぞ!?)」ワナワナ

フィクサー「…そうも言ってられんようだ?」ギラッ

クンバヤ「!!!」ゾワァッ
715: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/29(金) 22:21:56 ID:8PiAZwx7gI
団長「ぬりゃあああああ!!!」ドドドッ

槍兵's「ぐけぇぇあああぁぁ!!?」ズダダァン

副官「(あ、あんなのにどうやって立ち向かえと…!?)」ガクガク

副官「(な、なにか無いのか!奴を確実に討ち取る方法は…!?)」キョロキョロ

ドドドドドドドッ

レジスタンス11「負けるなぁぁ!!ここで決めるぞぉぉ!!」ガィンッ

王国兵67「ちぃっ!こんな浮浪者丸出しの連中にやられたら恥の極みだ!!押し込めぇ!!」ブンッ ズドッ

副官「(違う…!)」チラッ

ギャリンッ ガキンッ ザシュッ ギィィンッ

王国兵65「こ、これ以上は上がらせるなぁ!!蹴落とせぇ!!」アワアワ

副官「(あそこでもない…!)」イラッ

タタタッ

賊徒3「ほいっと!宣教師ちゃん、生きてっかー?」ブンッ バコッ

宣教師「い、生きてますよ…。失礼な…!」ゼェゼェ

副官「!!!」ピコンッ

副官「」プルプル

副官「(あった…!あったぞ…!まだ…!)」ニヤァァァ
716: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/29(金) 22:26:11 ID:IpAX9y2WJM
団長「…ワシはまだまだ戦えるぞ!死にたい者から来るがいい!?」ゼェゼェ

王国兵69「おのれ…!」ギリッ

王国兵70「お、俺たちでは手も足も出せない…」オロオロ

護衛8「やぁっ!!」ビュンッ ズバッ

護衛9「とうっ!!」シュバッ ザシュッ

団長「(別動隊が奴らの背後を取ったことで、こちらの勢いも取り戻しつつあるな…!この流れであれば…!)」ググッ

副官「や、これはこれは激しくやり合ったものだね」ザッ

団長「む…!貴様か!」ジロッ

副官「そう睨まないでくれよ?怖いじゃないか?」ニヤニヤ

団長「ちょうどよい。そろそろ指揮官級の首を奪い、全体の流れを磐石にしたいと考えていたところだ」ジャキッ

副官「や、や、なんとお早い判断で?」ニヤニヤ

団長「その首もらうぞ…!」ジリッ

副官「これを見ても、そんな事が言えますかな?」チョイッ

王国兵71「らぁぁ!!」グイッ

宣教師「くっ!はなし…なさい…!」ズイッ

団長「宣教師!?」ハッ
717: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/29(金) 22:27:31 ID:8PiAZwx7gI
王国兵71「剣を捨てろぉ!!さもなくば司祭を殺すぞぉ!?」チャッ

宣教師「すみませんっ……」オロオロ

団長「ひ、卑劣な…!」ギリッ

副官「たしか司祭と国王陛下は救い主を通じて懇意にしておられたとか…?」ニヤニヤ

団長「……!」ワナワナ

副官「もし死んだらどうなるだろう?あ〜陛下の悔やまれる姿が目に浮かぶなぁ?」ニヤニヤ

団長「離せ!!女を手に掛けるなど畜生以下の所業だ!!」

副官「女ぁ〜?ハッハッハ!戦場に立てば男女もクソもあったものか!?」ゲラゲラ

宣教師「私のことは構いません!皆さんの足を引っ張るくらいなら死んだ方がマシです!!」ジタバタ

王国兵71「おとなしくしろ!?」バチッ

宣教師「あぐっ!」タラー

副官「彼女はこう言ってるが…どうするね?」

団長「……」

副官「まさか誉れ高い武人の鑑であらせられるルフィアス殿が、かよわきおなごを見捨てたりはしませんよねぇ〜?」ニヤニヤ

団長「外道が!」ポイッ

カランカラン

宣教師「だ、団長…さん!」ジタバタ
718: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/29(金) 22:29:34 ID:8PiAZwx7gI
団長「要求通りにしてやったぞ!その薄汚い手を離さんか!?」

副官「と、その前に……」クイッ

団長「?」

副官「掛かれ!!」バッ

槍兵1「ぬおおおう!!」ビュンッ

団長「んぅぐ……!?」ドスッ

王国兵72「ぜぁあああ!!」ヒュッ

団長「ごふっ…」ズドッ

宣教師「団長さぁぁぁぁん!!!?」

副官「そうそう…それでいい。弱らせたところで……」スタスタ

団長「ぎぁ…うぐぅぅ…!」ゴボゴボ

副官「残る首は私がいただく?」ジャキッ

宣教師「や、やめっ…!」ジタバタ

副官「死ねぇい!!」ビュンッ

ドバァァァッ
719: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/29(金) 22:34:53 ID:8PiAZwx7gI
副官「」ピシャッピシャッ

宣教師「あ…う……」ガチガチ

副官「ぶっ…」ゴフッ

宣教師「え!?」ピクッ

副官「ぐひっ……いぎゃああああああああ!!!」ゴロンッ

団長「ふん…!剣士たる者、予備の一本や二本は用意して然るべきだ…!」ズルッ ブシュッ

王国兵71「オドアイル様!?」ギョギョッ

宣教師「っ……!」シュッ

王国兵71「ふぎゃっ!?」ゴツンッ

宣教師「いったた…!」ズキズキ

王国兵71「いぎぃぃ……鼻血が出たじゃねぇか、このアマぁ!?」ガッ

宣教師「っ!」シュッ

王国兵71「あがっ!?」ガツンッ

バタッ

宣教師「(あ、頭が割れそう…です…!)」ズキズキ

宣教師「だ、団長さ……」バッ

団長「ハァッ!!」ブンッ

槍兵1「き、きさ……ぶはっ!?」ブシャッ

団長「」ブォンッ

王国兵72「げはぁっ!?」ドバッ

団長「」ダッ ヒュンッ

王国兵73「うごぉあが!?」ズブッ

団長「ぐっ……ふぅぅ…これしきの手傷でワシを殺ったつもりになるとは……呆れた奴らめ!」フラッ

宣教師「さ、さすがですね」ホッ
720: ◆WEmWDvOgzo:2016/4/29(金) 22:49:16 ID:8PiAZwx7gI
団長「む……大事ないか…?」ザッ

宣教師「わ、私は…なんともありませんが…だ、団長さんは…」ズキズキ

団長「くっ…こんなもの…かすり傷だ…!」ボタボタ

宣教師「ひ、ひどい出血じゃないですか…!なんでわざと斬らせたり…!」アセアセ

団長「虚を突かねば…確実に助けてやれなかったのでな…つぅぅ!」ズキンッ

宣教師「す、すぐに止血を…!」ビリィッ

副官「い、いひぃぃたぁぁ…!わ、わた…しも…たすけ…!」ググッ

宣教師「……」シュルシュル

副官「お、おい…全身、しびれて…寒い…血が冷たい…!」ダラァァ

宣教師「……」キュッキュッ

副官「だす……げ、ぼはぁっ!!」ゴボォッ

宣教師「とりあえず応急処置だけ…」パッパッ

団長「うむ…」ヒョイッ

宣教師「予備の剣を持ってたのですか?」

団長「あぁ…息子の愛用していた剣を研ぎ直し、護身刀として懐に忍ばせておいたのだ」チャッ

宣教師「ラキアくんの…」

団長「……因果なものだな。親でありながら子を救えず、むしろ救われてしまっておるとは」

宣教師「ありふれた言い方ですけど…自分の分まで生きてほしい、という想いからくるのかもしれませんよ?」

団長「…それは本来ならば親が子に託す望みだ」

宣教師「……」

団長「…が、今はありがたく受け止めておこう。気落ちしている暇もないからな」グッ

宣教師「えぇ…ラキアくんの想いも乗せて頑張りましょう」ニコッ
721:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/4/29(金) 22:53:59 ID:8PiAZwx7gI
王国兵74「お、オドアイル様!?」

王国兵75「やってくれたなぁ!?」バッ

団長「」ギロッ

王国兵's「」ビクッ

団長「指揮官を討ち取ったぞ!!者共!この勢いを逃すなぁ!!」

ウオオオォァアアアアアアア!!!

王国兵's「なっ…にぃ…!?」ビリビリ

ドドドドドドッ

ワァーワァーギャーギャー!

団長「よし……通路を塞いでいる予備隊をどかしてやろう。君は先に陛下を探しに行け」

宣教師「え?」

団長「ここにいたところで危険が迫るだけだ」

宣教師「で、ですが…」

団長「陛下の安否を確かめるのも重要な役回りだぞ」

宣教師「わ、分かりました」

団長「(……)」ジワァァ

団長「」スーッ

団長「ふぅー……行くぞ!!」ダッ

宣教師「はい!」タタタッ
722:まいど更新遅くてごめんなさい ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:07:01 ID:CTUVzw6Lcc
ザッ ヒュオンッ ズシャッ

クンバヤ「がふぅ!?」ブシッ

フィクサー「よくも手を焼かせてくれたものだ。野鼠が…」ジリッジリッ

王国兵's「オォォォオオオ!!さすがは総指揮だぁぁ!!!」

クンバヤ「へっ……だ、めだ、こりゃ……は、歯がぁ立たねぇや」ボタボタ

フィクサー「」ジャキッ

クンバヤ「おいおい…容赦ねぇな?」ブルッ

フィクサー「言い残しがあるのなら好きにせよ。覚えてやる気もないが…」フンッ

クンバヤ「(あ〜…なんでいつもこうなっちまうんだか?あと一歩ってぇとこで上手くいかねぇや…)」

クンバヤ「(まったくツイてねぇよ…。そういやガキの時から、なんにも手に入らずじまいだったっけか)」
723: ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:09:04 ID:CTUVzw6Lcc
〜〜〜回想(クンバヤ)〜〜〜

ワァーワァーギャーギャー

店主「待て!!クソガキめぇ!!」ダッ

『誰が待つかよ!オッサン!!』タタタッ

店主「くそぉ!!今度来やがったらぶっ殺してやる!!」


『はぁ!はぁ!よ、ようやく振り切ってやったぜ……。これで今日の飯にありつける!』

ドンッ

『わっと!?あぶねぇな!前見て歩けよ、オッサ……』

バキィッ!

ズサッ

『てて…!な、なにしやが……』ヒリヒリ

浮浪者「」ブツブツ

『……!?』

浮浪者1「ヨコセ…」ブツブツ

『だ、誰が渡すかよ!?』バッ

ゾロゾロ ゾロゾロ

『なっ…!?』

浮浪者2「オレのだ…」ボソッ

浮浪者3「飯……飯ぃ…」フラフラ

浮浪者4「あぶ…ぐふふ」ズリズリ

浮浪者1「おめぇらどっか行けぇ!!俺が最初に見つけたんだ!!」

ワァァァアアアアアア!!!

『や、やめろ!来るな!俺が取ってきたんだぞ!!』ヒシッ

バキッ ガスッ ボコッ ドカッ


(あん時も必死の思いで盗んだパンを泥まみれのオッサンたちに奪われた…)
724: ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:10:38 ID:CTUVzw6Lcc
〜〜〜〜〜〜

店主「またてめぇらかぁ!!クソガキ共ぉ!!」

『へへっ!今日は大量だな!』タタタッ

仲間「おう!でも今日ばっかしは逃げ切れそうにねぇな!」

『ちっ!あの親父、ガキの俺ら相手にごろつきなんか雇いやがって!』

仲間「俺が引き付けとく!お前は先に行け!」

『いいのか?』

仲間「アジトで腹空かせて待ってる兄弟の為だ!」

『分かった!お前もほどほどにして逃げろよ!』タタタッ

仲間「……」


ごろつき1「ぐはは!少しは懲りたか?」

『うぐ…な、なんでここが…』

ごろつき1「てめぇの仲間がご丁寧に教えてくれたぜ?」

『あ、あいつになにしやがった!?』

ごろつき1「バーカ?あいつからお前を売ったんだよ?」

『は…?』

ごろつき1「パンの一切れで素直になったぜ?てめぇを売って腹の足しにしたらしいや?」

『でたらめ言うなぁ!!』

ごろつき1「でたらめなんか言うもんかい?そんなに信じられんなら直接、聞いてみたらどうだ?」

『……!』


(結局、それきりあいつは姿を消した)

(数年間、苦楽を共にした俺たちを捨てて売り物にもならねぇ出来損ないのパンを頬張ったんだ)

(…………)
725: ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:15:42 ID:dDDS7ew8SI
〜〜〜〜〜〜

ドドドドドドッ

『ウオオオオ!!ファルージャを殺せぇ!!』

レジスタンス's「オォォオオオオ!!!」ダダダッ

レジスタンス1「ん!?あれは……」

ファルージャ「クスス……」フリフリ

レジスタンス1「はぅっ!!」ズキュンッ

レジスタンス2「び、美女だ?美女が手を振っている!」

レジスタンス3「あ、あの美女は誰だ!!」

レジスタンス4「女神様だ!きっとそうに違いない!!」

『な、なにしてんだ!ありゃどう見ても……』

ファルージャ「」チラッ

『うっ!』ドキンッ

オォォォォオオオオ!!!

『ま、まずい!一旦引き返すぞ!おい!おい!?』

ファルージャ「よきにはからえ?」ニコニコ

ワァァァアアアアアア!!!

『ちくしょう!なんだってんだよぉ!!』


(革命の一歩手前でファルージャ一人にしてやられた……)

(思えば何一つ上手くやれてねぇ……)

(けど……裏切られはしても裏切ることはしてこなかった)

(俺のくだらねぇ人生…後悔がねぇとしたら、そこだけか。ハハ……やっぱくだらねぇや)

…………………
726: ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:20:40 ID:dDDS7ew8SI
―――宮殿(大階段)―――

クンバヤ「(あぁ…これが走馬灯ってやつか。イヤな事ばっか思い出させやがってよ…?)」

フィクサー「」ジャッ

クンバヤ「(こんなんでいいのかよ、俺は……最後の最期までパッとしねぇ)」

フィクサー「」ヒュオンッ

ザンッ!

ボトッ

クンバヤ「ってぇぇぇ……いいわけ、ねぇよなぁぁ!!!」プシャアアアアア

フィクサー「片腕を身代わりに致命傷を避けたか」ピシャッ

クンバヤ「ドォォルァァアアアア!!!」グワッ

フィクサー「」シュバッ

クンバヤ「ブごッ…!」バシュッ

ズダァァン!

フィクサー「愚かな…死に逝く苦痛を増しただけだ」スッ

クンバヤ「っ…あぁぐ!」ジワァァァ

フィクサー「足掻きもせねば楽に死ねたものを?」

クンバヤ「やっ…ばり…だ、べが……」ブフッ

フィクサー「今度は外さん?」チャキッ

クンバヤ「す、ぎに…しやがれ」ペッ
727: ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:23:20 ID:dDDS7ew8SI
「でぁぁああ!!」ドッ

ザッ ブォンッ

フィクサー「!?」バッ

ガインッ! ズザザッ

フィクサー「……貴様」ジッ

クンバヤ「オッサン……」

団長「ちぃっ!」ジャキッ

フィクサー「…オドアイルめ。しくじったか」

団長「通路側の予備隊を撃破し、背後は陣取らせてもらったぞ!もはや貴様に勝機はない!!」

クンバヤ「…へっ」ニヤッ

フィクサー「……」

クンバヤ「そ…ゆうことなら……も、一踏ん張りだな」ググッ
728: ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:27:29 ID:dDDS7ew8SI
団長「貴様の首さえ落とせば最後だ…!」

フィクサー「見くびるのも大概にしておけ」

王国兵65「さ、させるかぁ!!総指揮を守れぃ!!」ダッ

王国兵66「えやぁっ!!」ブンッ

団長「邪魔をするなぁっ!!」ザッ

バシュッ ズガッ ドシャドシャ

王国兵's「ひっ…」ブルッ

団長「半端な覚悟で、この決戦に水を差すでないわぁ!!」ギロッ

王国兵's「ひぇぇ!?」ズサァッ

クンバヤ「お、いつめた…みたいだぜ」ヨロッ

フィクサー「ふん…」ジッ

団長「兵法さえ封じれば、こちらのものだ!」ジリッ

フィクサー「…その深傷では勝負にもなるまい」

団長「む!?」ピクッ

クンバヤ「あぁ…!?」ピキッ

フィクサー「しかしこのような泥臭い無頼に縋りついてまで醜く足掻くサマは何より見苦しい…。
貴様も国王も恥を忘れた愚か者……軽蔑すら失せ、なにより哀れみの念が増すというものだ?」

団長「ぐぬぬ…!」ギリィッ

クンバヤ「んだとぉ…!?」ワナワナ
729: ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:30:48 ID:dDDS7ew8SI
フィクサー「だが…これしきの戦力で善戦してみせた強引とも取れる突破力は評価に値する」

団長「随分と上から物を言ってくれるな…!?」

フィクサー「国軍の力無く西の主力軍を倒してみせたのも貴殿の功績による物と伺っている」

団長「馬鹿を申せ!陛下が迅速な判断をなさり、全員の意思を結託させてくださったからこそ得られた勝利だ!?」

フィクサー「建前は不要。本音で語ってみせろ?」

団長「なにぃ!?」

フィクサー「その剣の技巧たるや燻らせておくにはあまりに惜しい」

団長「べらべらと二枚舌を並べおって…言いたい事があるなら、はっきりさせんか!?」

フィクサー「闘争とは本能。生存とは競争。不平等は現し世の習いだ」チャッ

フィクサー「真に平穏を願うのであれば強者となり、弱者を屈服させるしかない」

団長「ねじ曲がった矜持だな…!理解に苦しむわ!」

フィクサー「どうだ、ルフィアス殿?力を持つ貴殿ならば分かり合えるとわたしは信じているのだが?」

団長「この期に及んで血迷ったか…?」

フィクサー「大陸総支配こそが平穏に通ずる唯一の道だ。我が片腕となり、共に目指さないか?平穏な世界を……」

団長「断る!!」キッパリ

フィクサー「惜しいな…。貴殿ほどの腕利きが弱き王の下で埋もれようとは?」

団長「抜かせぃ!貴様ごときが大それた口を聞くなぁ!?」ズイッ

フィクサー「…が、まぁ是が非でも欲しいという訳ではない」

団長「……?」

フィクサー「ここに積み上がる死体が一つ増えるだけのこと。後始末が面倒ではあるが」

団長「ぬぅぅっ…もはや聞き捨てならん!!」バッ

クンバヤ「俺も忘れんじゃねぇぜッ!!」ブンッ

フィクサー「」ヒュオンッ

ガインッ ギャリンッ キィィンッ!
730: ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:34:06 ID:CTUVzw6Lcc
―――後宮(地下牢)―――

西兵's「」ザッザッ

ファルージャ「」ヒタヒタ

ヒメ「よく裸足で歩けるな?足を痛めないのか?」カツンカツン

ファルージャ「生まれが貧しいゆえ慣れぬのよ」ヒタヒタ

ヒメ「…貧民の出なのか?」

ファルージャ「うむ。長く宮廷暮らしに甘んじておるが未だにどうも履き物は落ち着かぬわ?」ヒタヒタ

ヒメ「(だから蜂蜜を指で掬って舐めたりしてたのか…。意識的にやってるのかと思ったけど)」

ファルージャ「教養も持たぬでな。字の読み書きはおろか己の年齢さえ知らぬ」

ヒメ「…それはさすがに冗談だろ?」

ファルージャ「嘘ではない。宮廷に呼ばれるまでの生活で妾が教わった事と言えば、せいぜい男の悦ばせ方と…何かしら腹に入れておけば死期が延びることくらいさな」サラッ

ヒメ「……」

ファルージャ「しかし不思議なものよなぁ…」

ヒメ「なにがだ?」

ファルージャ「あの頃と比ぶれば気まぐれに欲する物のほとんどが、この手の届く内にあると言えよう」

ヒメ「まぁ…そうだろうな」

ファルージャ「されど何かを掴めば掴むほど手放していいと思える物ばかりが増えるように思えてな」

ヒメ「?」

ファルージャ「…今となっては何を欲するべきかに迷うわ」

ヒメ「ふーん…話を戻すが人質は返してくれるんだろうな?」

ファルージャ「……ここよ?」ピタッ

ヒメ「……!」ピタッ
731: ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:39:08 ID:dDDS7ew8SI
ファルージャ「」クイッ

西兵109「はっ…」ガッ

ガラガラ ゴゴォォン………

ヒメ「」ドキドキ

ファルージャ「クスス……」ニヤッ

ヒメ「は……?」ドクンッ

ヒメ「」ドクンドクンドクンッ

ヒメ「」ガタガタブルブル

ヒメ「わ、わ……わあああああああ゙あ゙あ゙あ゙!!」ダッ

ガシッ

ヒメ「は、はなっ……」グッ

ガツンッ!

ヒメ「おぐっ!!」ドサッ

西兵108「じゃかあしいんだよぉ!だぁっとけや!?」ギロッ

ヒメ「ぅ…ぐ……」ピクッピクッ

ファルージャ「なぜ取り乱す?せっかく無事を拝ませてやったと言うに…?」ニヤニヤ

ヒメ「おまえ…ふざけるなよ?」キッ

西兵108「あぁん!?なんつったぁ!?」ズイッ

ファルージャ「その辺でよい」サッ

西兵108「へい!」スッ

ファルージャ「なんぞ気に食わぬことでも?」

ヒメ「ぅっ…う、くく…!」フーッフーッ

ファルージャ「およそ絶世の美女に向ける眼差しとは思えぬな?」ニヤニヤ

ヒメ「醜悪だよ…!おまえを取り巻く何もかもが…!?」ギリィッ

ファルージャ「フゥン……ま、入ろうぞ?」ヒタヒタ

ヒメ「……!」ムクッ
732: ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:42:05 ID:CTUVzw6Lcc
―――地下牢(最奥の独房)―――

ファルージャ「ふむ…よい具合ではないか?」

魔導師「あ、女王…」スクッ

ヒメ「……!」プルプル

魔導師「ん…なにそのガキ」ジロッ

ファルージャ「生きておるかえ?」ツンツン

カロル「」ボタボタ

魔導師「そっちは寝てるよ。こっちは元気だけど」チラッ

ラム「むぐ…ンンーッ!!」ギチギチ

ヒメ「ラム!?」

ファルージャ「ン…こやつはなんじゃ?」

魔導師「なにって……女王が連れてきたんじゃん」シラー

ファルージャ「はて?そうだったかの?」

魔導師「え〜……」

ヒメ「カロル……カロル…!なぁラム…カロルは…!?」ブルブル

ラム「む…うぅぅ……」プイッ

魔導師「ふーん……」ジッ

ヒメ「おい…おまえ、なにしたんだよ?なんで……なんでカロルが…こんなことになってるんだよ!?」ガッ

魔導師「おっとと…初めまして?第一印象サイアクだけど?」グンッ

ヒメ「なにしたかって聞いてんだよ!?」ユサユサ

魔導師「あぐ…ちょ……く、くるし…から」ブランブラン

ファルージャ「パカラゥロ。教えておやりな?」

魔導師「や、やぶさかじゃないんだけど……は、離してくれるかい?」ブランブラン

ヒメ「っ…」パッ

魔導師「ふぅ……」ゴホッ
733: ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:47:40 ID:dDDS7ew8SI
魔導師「…1日1痛がこの坊っちゃんに与えられた義務なんだとさ」

ヒメ「は…!?」

魔導師「お仲間を目の前に繋いで気まぐれに一ヶ所、まぁなんかやって痛め付けるんだけど」

ヒメ「なんだよ、それ!?」

魔導師「もし力を使って傷を癒したりしたら仲間にそっくりそのまま同じ痛みを与える…。
耐えかねて命乞いとかしたら仲間と役割交代。その繰り返しさね」

ヒメ「……!?」チラッ

カロル「……」ダラァァン

ヒメ「(全身におびただしい痣と裂傷…右手首から先が千切られて雑に血止めしてある…釘……蝋……ピアス……焼かれたのか…腹から胸にかけてめくれて…!?)」ウプッ

魔導師「ま、今んとこ交代してないけど…ガッツあるよねぇ」

ヒメ「いったい…いつから……」

魔導師「ここに来てから。自分も最近、知らされた」

ヒメ「それって…!?」

魔導師「打っても切っても刺しても焼いても抜いても剥がしても我慢できるんだから偉いよねぇ?自分だったらゾッとするよ?」

ヒメ「ゔっ!ぐぇぇぇぇ!!」ゲロゲロ

ビタビタッ ビチャッビチャッ

ファルージャ「ほんに痛ましい…そなたもむごい事をするものよ?」

魔導師「や、だから女王がやらせたんじゃないの?」

ヒメ「ら、ラム…おぇ…ホン、トか?」ハァッハァッ

ラム「……!」ウルッ

ヒメ「!!!」ゾワッ
734: ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:54:57 ID:CTUVzw6Lcc
魔導師「なんにしたってよかったじゃないの?お友達に守られたんだから?友情、友情?」ポンポン

ラム「うぅ〜!!むぐぅぅ!!」ジタバタ

魔導師「シャルウィンに磔にされてた時は痛そうで見ちゃらんなかったけど……君の痛みはぜーんぶ彼が肩代わりしてくれるとさ?」ツンツン

カロル「」ジャララッ

ラム「がぁぁぁ!!!ばあぁあああ!!!」ガシャッガシャッ

魔導師「んふ…んふふ」ニタニタ

ファルージャ「今宵の趣向は?」

魔導師「うーん…そうだねぇ。歯は抜いたし爪や生皮もだいぶ剥がしたし…ベタなとこはあらかたやり尽くしちゃったんだよねぇ」ムムムッ

ラム「〜〜〜!!」ガシャッガシャッ

魔導師「ありきたりだけど目でもくりぬいてみようかね?」

ヒメ「……!」ブチィッ

魔導師「今夜はゲストもいるんだし盛り上げ……」チラッ

ザウッ シュッ

魔導師「なきゃ……え?」ハッ

バキィィィッ!!

魔導師「むげぇええ!!」ズダァァン

ファルージャ「あら……」

ヒメ「ゆるさない…!」ゼッゼッ

ラム「!?」ビックリ

ヒメ「殺してやる…!おまえら全員…皆殺しにしてやるぅっ!!」カッ

ファルージャ「武具を取り上げられたそなたがこの手勢を相手にどう立ち回るのじゃ?」

ヒメ「わぁぁあああ!!!」ザッ

ファルージャ「フフ…やっておしまいな?」クイッ

西兵's「らぁぁぁっ!!!」ザザザッ
735: ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 22:59:25 ID:CTUVzw6Lcc
バキッ ガンッ ゴッ ビタァァン

ヒメ「」ドサッ

ファルージャ「ほれ、たわいない?」ニヤニヤ

ラム「あ…う、うぅぅ〜〜やぇおぉぉ!!」モガモガ

西兵's「ゲヒャヒャヒャヒャ!!」ゲシッゲシッ

ファルージャ「殺すでないぞ?」

西兵's「へいっ!」スススッ

ヒメ「」ベシャッ

ラム「むぅぅううう!!!むぅぅううう!!?」ガシャッガシャッ

ファルージャ「パカラゥロ?」

魔導師「」ハラホロヒレハレ

ファルージャ「フゥ〜……そなたも魔術を差し引けば、ただのか弱き娘よな?そのまま寝ておれ?」シラー

736:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/5/19(木) 23:05:36 ID:dDDS7ew8SI
西兵111「女王!お楽しみのところ申し訳ありません!!」タタタッ

ファルージャ「ン…?」

西兵108「あぁ!?どしたぁ!?」

西兵111「敵兵が渡り廊下を通過し、後宮内に侵入してきました!!」

西兵108「んだどぉ!?」ビキッ

西兵111「取り急ぎ始末に向かいますが女王はどうか安全な場所へ避難を!?」

ファルージャ「この地下通路に入ってきてから対応すればよかろう」

西兵111「は!?それでは避難経路が使えませんぞ!?」

ファルージャ「構わぬ。値打ちのある人質も捕らえたでな。いざとなれば、これらを利用するまでよ」

西兵111「か、かしこまりました!」

ファルージャ「さて…ついでに国王も繋いでおやり?」

西兵108「へっ!お安いご用で?」ジャラッ

ヒメ「」クタァァァ

ラム「!」オロオロ

ファルージャ「フゥ…寝むとうてならぬわ。誰ぞ部屋で身体を揉みほぐしておくれな?」ヒタヒタ

西兵108「お、おでが!!」ハイハイ

西兵109「い、いやぁ俺が!!」ハイハイ

西兵110「わ、私こう見えて按摩には自信が!?」ハイハイ

ファルージャ「別に誰でもよいわ…」ヒタヒタ

西兵's「お、お待ちください!女王!!」カツンカツン

ラム「ぅ…むぅ……!」プルプル

ヒメ「」ピクッピクッ

カロル「……」ダラァァン

ラム「〜〜〜!」キュゥゥッ
737:支援ありがとうございました!遅くなってすみません! ◆WEmWDvOgzo:2016/6/2(木) 22:07:36 ID:0/OGOTd61c
―――後宮(通路)―――

ズカズカズカ ズカズカズカ

ワァーワァーキャーキャー!

賊徒10「うらぁ!?女王はどこだ、吐きやがれぇ!?」ガッ

宮仕え1「ひ、ひぃぃ!?わたくしどもはなにも!?」ガクガクブルブル

宣教師「やめなさい!戦えない方々に乱暴してはなりません!」

賊徒10「うるせぇ!女はすっこんでろ!?」

宣教師「私の性別とあなたの行いは関係ないでしょう!無闇に狼藉を働くのはやめなさいと言ってるんです!」

賊徒10「んだと〜!?」ギロッ

宣教師「あなたもですよ!」

宮仕え1「え…?」ビクビク

宣教師「あのように身勝手な女を庇ってどうなるんですか!自分を苦しめているだけだと、なぜ気付かないのです!」

宮仕え1「……!」

宣教師「居場所を教えてください!あなた達の安全は私が保証しますから!」

賊徒10「おうおう、姉ちゃん!なに勝手に決めてんだ!?」

宣教師「何か異論でも?」ジッ

賊徒10「あぁ!?」ズイッ

宣教師「なんですか!?」ズイッ

賊徒10「うぅ…くっ……こ、この尼!?」タジッ

宮仕え1「」ブツブツ

宣教師「?」チラッ
738: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/2(木) 22:10:33 ID:EpaEGFgW5M
宮仕え1「じょ……るな」ブツブツ

宣教師「はい…?」

賊徒10「お?なんだぁ!?」ギロッ

宮仕え1「俺の女王を……侮辱するなぁぁあああ!!!」スチャッ

宣教師「!?」ビクッ

賊徒10「うおぉ!?てめぇどこにナイフなんか忍ばせてやがった!?」オロオロ

宮仕え1「アァァァアアアアアアア!!!」ダッ

宣教師「や、やめなさ……」アセアセ

ズンッ!

宮仕え1「ご……ぶ」ブシャッ

ズボッ

宮仕え1「」バタァァ

レジスタンス11「ちっ!なにをやってんだ?」ジロッ

賊徒10「た、助かりやした」ペコッ

レジスタンス11「おら、引き締めろ!」バンッ

賊徒10「へい!すいやせん!」ペコッ
739: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/2(木) 22:11:33 ID:EpaEGFgW5M
レジスタンス11「おい、王国人!てめぇもだ!」

宣教師「……」

レジスタンス11「敵とじゃれ合ってんじゃねぇぞ!ふざけてんのか?」

宣教師「助けてくださったのは感謝します。ですが私が間違っていたとは思えません」

レジスタンス11「なぁにぃ〜…?」ビキッ

宣教師「戦わなくていい相手まで痛めつけることはないでしょう」

レジスタンス11「で、この有り様か?」

宣教師「…軽率ではありました。反省しています」

レジスタンス11「反省だぁ?ちっとも分かっちゃねぇ!」チッ

宣教師「?」

レジスタンス11「こいつらはなぁ……骨の髄まで絞られて、あの女無しにゃ生きてけねぇようにされちまった腑抜け共だ!?」

宣教師「……」

レジスタンス11「甘い考えを捨てきれねぇなら今すぐ抜けろ。足手まといもいいとこだ」

宣教師「………」
740: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/2(木) 22:14:37 ID:EpaEGFgW5M
宣教師「…私は宣教師です」

レジスタンス11「……はぁ?」ポカーン

宣教師「人々に教え、導き、説く聖職者である以上、非道を見過ごす訳にはいきません」

レジスタンス11「てめぇがなんだろうが知ったこっちゃねぇ。足並みを揃えらんねぇなら邪魔だっつってんだよ!」

宣教師「ただ不満を爆発させ、憤りを暴力で発散するだけでしたら誰にでも出来ます!」

レジスタンス11「あ?」

宣教師「あなた達はこの戦いを愚劣な惨劇にしたいんですか?
それとも弱き民が圧政に立ち向かい、みごと打ち勝ってみせたのだと誇れる勝利で締めたいのか…どちらなのです?」

レジスタンス11「当然、後者だ?」

宣教師「でしたら忠告を……」

レジスタンス11「忠告?」

宣教師「私達が生きる今は常に未来へと繋がっています。
だからこそ私達は言葉や行いを正しくし、志を高く持たなければなりません」

レジスタンス11「んなもん、とうに分かりきってるだろ…?」

宣教師「あなた方が死に物狂いで掴もうとしている平和も…振る舞い次第で束の間の物となってしまいますよ!」

レジスタンス11「なんだと…?」

宣教師「どんな正しい行いも美徳がなければ、ただの自己満足になってしまいます。今一度、考えてみてください」

レジスタンス11「……」

宣教師「ここで無意味な殺戮に興じれば、あなた方に正義を見いだす人達まで殺戮を正当化してしまうかもしれないんですよ!」

レジスタンス11「」ポリポリ
741: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/2(木) 22:18:15 ID:0/OGOTd61c
レジスタンス11「回りくどいな…。結局、なにが言いたい?」

宣教師「弱き民に降りかかる受難、理不尽、あらゆる圧迫……。
それらを振り払うには武器を取り、容赦を忘れ、怒りのままに殺戮を尽くせばいい」

宣教師「先人がそうしたように……自分たちもまた殺戮を起こす権利があるのだと錯覚するのです」

宣教師「暴力衝動を"勇気"と言い換え、おびただしい血に濡らした手を"正義"と称え、繰り返してはならない過ちを数多の歓喜が拭い去る……」

レジスタンス11「だからなんだ?」

宣教師「だからなんだ…ですって!?」カッ

レジスタンス11「イアマンによって召された魂はザリオンへと還る。
こいつらは幸福な死を享受できる贅沢な連中なんだよ?」

宣教師「それがあなたの答えであり、イアマンの教えなのですか…?」ジトッ

レジスタンス11「あぁ、そうなるな」

宣教師「狂った信仰ですね」

レジスタンス11「なっ…今、なんつった!?」カッ

宣教師「狂ってると言いました。あなたも、そのイアマンとかいう神も?」

レジスタンス11「こ、殺……!!」ブチィッ

宣教師「人を殺し合わせる神がいてたまりますかっ!!」キッ

レジスタンス11「っ…!?」ビクッ

宣教師「そんな神がいたとしたら、それは神を騙る邪悪な魔物でしょうね!」

レジスタンス11「なんだとぉ…イアマンを冒涜する者は許さんぞ!?」ガァーッ

宣教師「罪悪から逃れたい一心で、でたらめに偶像崇拝しているだけでしょう!?」

レジスタンス11「!!!」ビキィッ
742: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/2(木) 22:24:00 ID:0/OGOTd61c
レジスタンス11「か、仮にも宗教団体の長ともあろう者が……教えは違えど信仰を!強固たる希望を全否定していい道理があるのかぁ!?」ワナワナ

宣教師「関係ありませんね!間違っていれば間違っていると、はっきり言わせていただきます!!」

レジスタンス11「ならばお前の信じる神を侮辱されたら、どうだ!?何も感じないと言えるのか!?」

宣教師「間違っていたなら受け入れますよ!そもそも私の教団では神なんて信じていませんけどね!?」

レジスタンス11「んなぁ!?神が存在しないだと!?」ガーン

宣教師「存在しないとまでは言いませんが…いくら私達が信じ、崇め奉ったところで神が救いの手を差し伸べることはないと言い切れます!」

レジスタンス11「こ、こ、この……異端者めぇ!!」ブチィッ

宣教師「そんなに都合良く救ってくださるなら今を必死に生きているのが馬鹿馬鹿しくなりますね!?
だいたい信じる者しか救わない神の手を借りるなんて願い下げですよ!」

レジスタンス11「じ、自分が何を言ってるか分かってんのか…!?」プルプル

宣教師「分かってますよ!意思を持って生まれてきたからには神の気まぐれに踊らされる玩具でなどありたくないと言ってるんです!」

レジスタンス11「ぐっぬぅぅ……!!」ギリッ

宣教師「世界を動かし、未来を切り開くのは他の誰でもありません。自分自身です!」

レジスタンス11「だ、だったら…お前らは何を信じているんだ!」

宣教師「ですから…自分自身と言ってるでしょう?」

レジスタンス11「はぁっ…!?」
743: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/2(木) 22:25:24 ID:0/OGOTd61c
宣教師「その手を血に染め、命を奪う罪悪も…それら全てを抱えてでも平和を勝ち取ろうと戦う勇気も…神のせいには出来ませんし、神のおかげでもありません!!」

レジスタンス11「っ……!」

宣教師「たとえあなた方の行いが神の意思によるものだとしても…私は絶対に屈しません!神を説き伏せてでも自分の意思を貫いてみせます!」

レジスタンス11「い、イアマンは……神の化身だ!俺たちは神の力を賜った戦士だ!!」

宣教師「いい加減、神などという便利な言葉に頼るのはおやめなさい!」

レジスタンス11「ぐ……!」

宣教師「あなたはあなたの意思で、ここにいるのでしょう?」ジッ

レジスタンス11「……!」

宣教師「奪った命に償う術はありませんよ!その後悔から救ってくれる神もいません!
懺悔に苦しみ続ける覚悟が無いのなら勢い任せの横暴は即刻やめさせなさい!!」

レジスタンス11「……屁理屈ばっか並べやがって!」ギリッ

宣教師「えぇ、理屈がなければ主張を通すことはできませんからね!」

レジスタンス11「もういい!勝手にほざいてろ!異端者が!」ペッ

宣教師「……!」
744: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/2(木) 22:27:52 ID:EpaEGFgW5M
レジスタンス11「おい!武器を隠し持ってる奴がいたぞ!」

賊徒11「ういっす!じゃあ殺しても問題ねぇと…」

宣教師「待ち……」

レジスタンス11「いぃや!時間もねぇし頭数も少ねぇから、とっとと女王の居所を突き止めるぞ!」

宣教師「えっ」

レジスタンス11「……」

賊徒12「つったって、どうやって見つけんだ?」

レジスタンス11「だいたいの見当はついてる!1階に降りるぞ!」

賊徒13「こいつら、どーすんだ?」

宮仕え's「〜〜〜!」ブルブル

レジスタンス11「……」チラッ

宣教師「……」ジーッ

レジスタンス11「ほっとけ。さっさと行くぞ」スタスタ

賊徒13「うい」スタスタ

宣教師「……」ニコッ

レジスタンス11「…なに笑ってんだ?」ジロッ

宣教師「いえ?」ニコニコ

レジスタンス11「ちっ!うざってぇ…」ブツクサ

宣教師「ふふ!」スタスタ
745: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/2(木) 22:28:56 ID:0/OGOTd61c
賊徒12「降りたはいいが誰もいねーぞ?」

賊徒13「しかし女が見当たらねーなぁ?後宮ってなぁ帝の側女が大勢いるんじゃないのかよ?」

レジスタンス11「ファルージャは男女問わずイケるクチらしいが…一度寝た奴は文字通り切り捨てるんだとよ」

賊徒13「おーこわっ」

賊徒10「もったいねぇなぁ?それだったら商館にでも売り飛ばして下々にお裾分けしてほしいくらいだぜ!」

宣教師「あなた達は女性をなんだと思ってるんですか…!?」ムカムカ

賊徒10「性の捌け口」

賊徒11「下の世話」

賊徒12「ヤりてぇ」

宣教師「そこに直りなさい!全員、煩悩が消し飛ぶまで説教してやります!!」ガァーッ

賊徒13「じょ、冗談だっての?あんま怒るなよ?」アセアセ

宣教師「言っていい事と悪い事の違いも分からないなら、なおさら説教する必要がありますね!」プンスカ

レジスタンス11「んなの後だ!それよか片っ端から部屋を探ってけ!?」

賊徒14「あ?なんで?」

レジスタンス11「どっかに財宝の唸る蔵がある筈だ!」

賊徒14「ウヒョッ!財宝!?」ギラギラ

宣教師「こんな時に盗賊の真似事をするつもりですか?早くファルージャかヒメくんを見つけ出さなければ……」

レジスタンス11「アホ!そうじゃねーよ!?」

宣教師「?」
746: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/2(木) 22:30:37 ID:EpaEGFgW5M
宣教師「ではなぜ財宝の在処を探ろうなどと?」

レジスタンス11「おめぇら、いくらヤバい状況だからって何も持たずに逃げられるか?」

賊徒15「どういうこった?」

レジスタンス11「地震、雷、火事、親父、恐ろしいもんはいくらでもあるが……そういうのから逃げる時、絶対に手放したくねー物があるだろう?」

賊徒11「……?」

賊徒12「食い物なんか準備してる暇はねーしな…」

宣教師「分かりました。思い出の品ですね?」キランッ

レジスタンス11「バカばっかりかよ」

宣教師「む……」カチンッ
747: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/2(木) 22:32:02 ID:0/OGOTd61c
レジスタンス11「金だよ、金!!他のもんは持たなくても炉銀さえありゃ生きてく糧になるだろうが!?」

宣教師「あぁ、なるほど」

賊徒13「そりゃそうだ」

レジスタンス11「だから奴らが、もし避難するとしたら…いつでも持ち出せるように隠し通路を宝物庫と連結させとくにちげぇねぇ」

賊徒14「おー!それだな?」

賊徒15「そいつは盲点だったぜ?」

宣教師「浅ましいと言いますか……意地汚いですね」

レジスタンス11「意地汚かろうが生き残ったもん勝ちだからな」

宣教師「まぁそうでしょうけど…」

レジスタンス11「とっとと探せ!狙いは宝物庫だぁ!!」

賊徒's「オーーーーー!!!!」ダダダッ
748:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/6/2(木) 22:39:07 ID:EpaEGFgW5M
―――後宮(地下道)―――

賊徒13「ドンピシャだったな」カツンカツン

宣教師「まさか本当に繋がってるとは…」カツンカツン

レジスタンス11「だから言ったろ。貧乏人も皇族も最後のところは金にかじりつくんだよ」カツンカツン

賊徒14「肝心の財宝が空っぽだったけどな」

賊徒15「そういや鍵はどうやって手に入れたんだよ?」

レジスタンス11「あ?開きっぱだったから、そのまま……」

ザザザッ

宣教師「」ビクッ

レジスタンス11「出やがったな!?」ピタッ

西兵108「ギヒヒ!ノコノコ入ってきゃあがってボケナス共がぁ!?」ジャキッ

西兵's「」ゾロゾロ

賊徒15「100人ばかしか…ちとキツいな」

レジスタンス11「やれねぇことはねぇ。こういう時の神頼みだ!」

賊徒16「ハッ!イアマンよ、我らに力を…ってか」ニヤリ

西兵108「道、開けろ!」

バババッ

レジスタンス11「……?」

「クスス…ずいぶん時間が掛かったようじゃが?」ヒタヒタ

宣教師「あっ…!?」ハッ

ザワッ

レジスタンス11「なっ!?」ビクッ

ファルージャ「待ちかねたぞ?」ニタァァァ

ザワザワ ザワザワ
749: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/8(水) 21:47:00 ID:7jNp6A9lTg
ファルージャ「ンゥ……一寝入りしたせいか目がシバシバするわ?」ゴシゴシ

宣教師「これだけの事が起きているのに寝てたですって!?なんて非常識な……」

レジスタンス11「ファルージャ!!」ズイッ

宣教師「」ビクッ

レジスタンス11「よくも今まで苦しめてくれたなぁ…!もうお前に振り回されるのはたくさんだ!!」ジャキッ

西兵108「あんだとぉ!?」ビキィッ

レジスタンス11「ここでお前を捕らえ、民衆の面前で八つ裂きにしてやる…!」ギロッ

ファルージャ「ふむ…そなたには興味がない。下がれ」シッシッ

レジスタンス11「なっ…なにぃぃ!?」ブチィッ

ファルージャ「」ヒタヒタ

西兵110「じょ、女王!!前に出られては危険です!」ガシッ

ファルージャ「痴れ者め」ジロッ

西兵110「は…?」

ファルージャ「妾がいつ触れてよいと申した…?」シラー

西兵110「」ビクッ

ファルージャ「断罪せよ」クイッ

西兵110「お、おゆる……」パッ

西兵108「りゃあっ!!」ブンッ

西兵109「しぇいっ!!」ブンッ

西兵110「ばっ!ぐぶぶっ!!」ドスドスッ

レジスタンス11「(んなっ…一人でも兵が惜しい状況だろうに、あんなにあっさり…!?)」

ファルージャ「……」ニィィッ

レジスタンス11「(わ、笑った…?なんでだ!?)」ブルッ
750: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/8(水) 21:49:59 ID:P0KKVjOjRo
レジスタンス11「(こ、この女……なにがしたいんだ?)」ブルブル

ファルージャ「」ヒタヒタ

レジスタンス11「く、来るぞ!殺せ!?」ググッ

賊徒's「うっ……」タジッ

ファルージャ「」スッ

レジスタンス11「あうっ……く、くくぅ!?」ブルブル

ファルージャ「どうした?互いの息遣いが伝わるほどに……妾とそなたは近しく添うておろう?」ピトッ

レジスタンス11「さ、触る…な……!」ゾクッ

ファルージャ「跳ねてみせるか?この首を?」サスッ

レジスタンス11「う、あ…あ……」ゾクゾク

ファルージャ「ほれ、息の根を止めてみせよ?」ニヤッ

レジスタンス11「い、言われるまでも……」カッ

ファルージャ「フゥっ…」スルッ

レジスタンス11「がっ…!」カクンッ

ファルージャ「なぜ膝を着く?この首が遠ざかろうな?」ピタピタ

レジスタンス11「(な、なにをされた!?耳元に……生暖かな柔らかい風が…あ、微かに甘いかお…り…………溶けて……なくなる)」フッ

バタッ

賊徒's「アニキ!?」ギョギョッ

ファルージャ「」クスッ

レジスタンス11「」ヘナヘナ

パシンッ!

レジスタンス11「いでっ!?」ビクンッ
751: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/8(水) 21:57:39 ID:P0KKVjOjRo
レジスタンス11「だ、誰だ!ケツひっぱたいたのは!?」ガァーッ

宣教師「なにやってんですか!?しっかりなさい!?」プンスカ

レジスタンス11「おうっ!?」タジッ

宣教師「まったく…こんな事で腰を抜かすなんて、だらしないにも程がありますよ?」

レジスタンス11「う、うるせぇ…!おもいっきりぶっ叩きやがって!」ヒリヒリ

宣教師「残念でしょうが…あなたの思い通りにはさせませんからね!」キッ

ファルージャ「そなたは…あぁ、あの時の?」ポンッ

宣教師「忘れたとは言わせませんよ…!」

ファルージャ「生きておったのじゃな…?」ニヤッ

宣教師「っ…今すぐ降伏し、人質を解放しなさい!でなければ……」

ファルージャ「でなければ?」

宣教師「…ここであなたを倒し、強引にでも決着させます!!」

ファルージャ「フゥン…」

宣教師「さぁ!?どうするのですか!?」

ファルージャ「妾に指図してみせるとは…なかなかふてぶてしい女子よのう?」

宣教師「あなたにだけは言われたくありませんね…」シラー

ファルージャ「妾はこの美に釣り合う姿勢をとっているのみよ?」フフンッ

宣教師「それがふてぶてしいと言うんですよ!」プンスカ
752: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/8(水) 22:00:23 ID:P0KKVjOjRo
レジスタンス11「おい!ノンキにじゃれてる場合か?」ズイッ

ファルージャ「……」チラッ

レジスタンス11「はっきり目が覚めた…もう躊躇はしないぞ!」ジャキッ

ファルージャ「ほう?」クスッ

レジスタンス11「目の前にある首を落とせば我々の勝利だ!?」ズイッ

ファルージャ「」スルッ ボインッ

レジスタンス11「!!?」ギョギョッ

賊徒's「お、オォッパッパッパッパイ!!!」ハナヂブーッ

ファルージャ「」ガッ クイッ

レジスタンス11「おぁぁっ!?」グンッ

ファルージャ「」チュッ

レジスタンス11「ンォォ!?」ビクンッ

クチャクチャレロレロニュチニュチピチャピチャ

レジスタンス11「おっおっおっオゥゥフ!!」ピクッピクッ

ファルージャ「はっ……」チュポンッ

レジスタンス11「んがっ…あぁぁ……」ベタァァァ

ファルージャ「たわけが?」ペロリ

宣教師「(男ってほんと……)」シラー
753: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/8(水) 22:06:06 ID:7jNp6A9lTg
ファルージャ「そなたもしてほしいのかえ?」ジッ

宣教師「!」ゾクッ

ファルージャ「ン?素直に申せば褒美をくれてやらぬでもないぞ?」ニィィッ

宣教師「だ…誰が、そんな卑猥なこと!それよりも先ほどの要求に答えなさい!」

ファルージャ「意地を張らずともよいというに?」ガッ

宣教師「なっ…」グイッ

ファルージャ「これが欲しいのであろう?」スッ

宣教師「やめな、さい!!」バッ

ファルージャ「ハ…?」ヨロッ

宣教師「気色の悪い…!」ジトッ

ファルージャ「……今、なんと?」

宣教師「気持ち悪いと言ったんですよ!同性な上に恋仲でもない相手に迫られて喜ぶ人がいますか!?」

ファルージャ「……それの何が問題じゃ?んっ」クイッ

宣教師「へ?……んぅぅっ!?」ブチュッ

ファルージャ「くちゃっ…れるぅぅ……ぴちゃ」ニュチニュチ

宣教師「ん…ん、んぅぅぅ……だからやめなさい!!」ドンッ

ファルージャ「ッ…!」ドタッ

西兵's「女王!?」アセアセ

宣教師「はぁはぁ…やめなさいと言うのが分からないんですか!?」ゼェゼェ

ファルージャ「……」ポカーン
754: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/8(水) 22:14:51 ID:7jNp6A9lTg
ファルージャ「妾が……気持ち悪いとな…?」ブツブツ

西兵108「おぃゴラァ!!くそアマがぁ!?でめぇ女王になにじやがる!?」ズシッズシッ

宣教師「こっちのセリフですよ!あなた方の主は、なに考えてるんですか!?」

ファルージャ「はて…以前のそなたは甘んじて受け入れたように感じたが?」

宣教師「あ、あの時は驚いてしまっただけですよ!受け入れたつもりはありません!」カァァ

ファルージャ「(一度、妾の口付けに溺れておきながら……二度目を拒むじゃと…?)」アゼン

宣教師「…な、なんです?そのいかにも信じられないといった表情は?」オロオロ

ファルージャ「(あのホビットだけでは飽きたらず……かような小娘にまで……)」

宣教師「? あの…聞いてますか?」アセアセ
755:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/6/8(水) 22:16:59 ID:7jNp6A9lTg
ファルージャ「殺せ……」ボソッ

宣教師「はい!?」ギョギョッ

ファルージャ「もうよい。十分に戯れたわ」ヒタヒタ

ザザザッ

宣教師「」ビクッ

西兵108「ギヒヒ…女王の許しが出たぞ?」ニヤァァァ

宣教師「くっ…どきなさい!」

西兵108「皆殺しだぁーーー!!!」ダッ

西兵's「ぬおぉりゃぁあああ!!」ドドドドドッ

賊徒's「来るぞぉ!!やっちまえぇぇ!!」ダダダッ

ガンッ ガキンッ ドシュッ ズバッ ゴスッ

宣教師「……!」ギリッ

ヒタヒタ ヒタヒタ………

宣教師「(あっ…ファルージャが行ってしまう!)」ハッ

賊徒14「ゴハァッ!!」ドシャッ

宣教師「(ここにいても力になれそうもありませんし、私だけでも見失う前に追わなくては…!)」ダッ

タタタッ………
756: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 21:55:44 ID:I9OmQWwMWw
宣教師「ハァッハァッ…!」タタタッ

宣教師「……み、見失ってしまいましたね」ゼェゼェ

宣教師「それにしても迷宮のように入り組んでいて何がなんだか……」キョロキョロ

宣教師「微かに戦っている皆さんの怒声が響きますが、これではまるで居場所が掴めません…」

宣教師「どうしましょう…。間違いなく迷ってしまいました…」ズーン

ンンーッ…… ンンーッ……

宣教師「……!」ピクッ

宣教師「…どこからかくぐもったような声が?」スタスタ

宣教師「…この奥、ですかね」ジッ

ズォォォオオン

宣教師「暗闇に覆われていて不気味ですが…誰かがいるかもしれませんし」ゴクリ

宣教師「……」ブルッ

宣教師「い、今さら怖じ気付いてもしかたありません!行ってみましょう!」グッ

宣教師「…れ、霊の類いでありませんように」オソルオソル
757: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 21:57:04 ID:LP9zIHGTpU
―――地下牢―――

宣教師「…灯りもなければ人の気配もしない」スタスタ

宣教師「(埃や砂利がひどいですね…。あまり手入れされていないのでしょうか?)」ザリッ

宣教師「(それになにより……)」

ムワァァァァア………

宣教師「(異様に立ち込める生臭い臭気……悪寒を刺激する湿った息苦しさ……)」ギュッ

宣教師「(これは死臭ですね…。それも一人や二人じゃなさそうです……)」

宣教師「(乾いた血の匂いが全面にへばりついて……なんだか背筋が痺れる感じが…)」ゾクッ

宣教師「鼻を押さえても口や目、耳からも香ってくる……五感すべてに訴えかけるような、おぞましい怨念の籠った空間……)」スタスタ

宣教師「(…何度も嗅いだ事のある匂いですが、やはりこれだけは身体が受け付けません)」プルプル

宣教師「う……眼が痛くなってきました」ウルッ

宣教師「(ここがなんらかの意図で作られたとするなら…)」スッスッ

宣教師「!」ピトッ

宣教師「やはりそうでしたか…」ニギッ

宣教師「ふむふむ…目を凝らすとうっすら見えますね…。感触からしても間違いなさそうです」サスサス

宣教師「柵があるということは…おそらく囚人を閉じ込めておく為の牢獄でしょうか」パッ

宣教師「だとすれば人質にされた二人が閉じ込められている可能性も高いですね…!」ダッ

タタタッ………
758: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 21:58:34 ID:LP9zIHGTpU
ンンーッ! ンンーッ!

宣教師「声が近付いてきました!やはりここに……」タタタッ

宣教師「!」ピタッ

宣教師「…階段?」ジッ

宣教師「さらに地下があるとは驚きましたね…」

宣教師「踏み外さないように気を付けて降りなければ…」カツンカツン

宣教師「……」カツンカツン
759: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 21:59:39 ID:LP9zIHGTpU
―――地下牢(最奥の独房)―――

宣教師「またも通路に出てしまいました…」スタスタ

宣教師「この地下迷宮はいったいどこまで続いているのでしょうか…?」スタスタ

宣教師「!!!」ハッ

「んんーっ!!んんーっ!!」

宣教師「……!」スッ ピトッ

宣教師「(ひんやりしていて滑らかな固い感触……この扉の奥に!?)」サスサス

宣教師「(しかしおかしいですね…。見張りはいないのでしょうか?)」スリスリ

宣教師「(もしかすると戦いに駆り出されて……ん?)」ピクッ

宣教師「(指先に鉄製の輪っかのようなものが?取っ手…でいいんでしょうか?)」ガシャッ

宣教師「」ググッ

ギィィィィイイ………

宣教師「(開きました…!)」ビクッ

宣教師「(あ、でも中に誰かいたらどうしましょう…!私一人ではどうにも…!)」

宣教師「」ヒクッ

宣教師「(…血の匂い)」スンスン

宣教師「(上の階ほどではないにしろ……ま、まさか!)」ゾゾゾッ
760: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 22:19:29 ID:I9OmQWwMWw
ガラララッ!

宣教師「二人とも大丈夫です……か」ハッ

カロル「」ダラァァァン

宣教師「え…?」

宣教師「あ…い、やぁぁぁぁあああ!!!」ガクッ

「んんーっ!!」

宣教師「!?」ピクッ

ラム「んっんんーっ!!んんーっ!!」ギチギチ

宣教師「ら、む…くん」ガタガタ

ラム「ん!!んんん!!」モガモガ

宣教師「す、すぐにほどきますから!」ガッ

ラム「……!」ギチッ

宣教師「くっ…!うぅ〜!」ググッ

ラム「んっ!」クイッ

宣教師「え!?」ググッ

ラム「んーん?」ズイッ

宣教師「あっ…すみません!先に口の枷を外してからですね?」ガッ バッ

ラム「ぷふぅっ!!はぁ……えぇふっ!あ゙〜…ゔ!ぅふんっ!!」ゲホゲホ

宣教師「ず、ずっと叫んでいたんですか?」オロオロ

ラム「喉が潰れるかと思ったよ…」ゴホッ

宣教師「大丈夫ですか?」サスサス
761: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 22:21:50 ID:I9OmQWwMWw
宣教師「すみません。遅くなってしまって…」

ラム「…ありがとう」

宣教師「え?」

ラム「来てくれて…」

宣教師「…当然のことですよ。お礼なんて要りません」ニコッ

ラム「正直、怖かった」プイッ

宣教師「……」

ラム「誰も…来てくれないんじゃないかって……」ブルッ

宣教師「」ヒシッ

ラム「」ビクッ

宣教師「どこへでも駆けつけますよ。大切なキミたちの為であれば?」ナデナデ

ラム「人間を…ううん…みんなを信じてよかった…!」ウルッ

宣教師「ふふ…そうですか」ナデナデ
762: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 22:23:30 ID:I9OmQWwMWw
ラム「あ…僕の口枷掴ませたから手、ベトベトに汚しちゃったね」

宣教師「あ、いえいえ、お気になさらず?しかし頑丈に縛られていてほどけそうにありませんね…」ギッギッ

ラム「床にナイフが落ちてない?」ギチッ

宣教師「ナイフですか…?」キョロキョロ

ラム「カロルくんの足元にあるやつ…」ジッ

宣教師「カロルくんの…ひっ!?」ビクッ

ラム「……」キュッ

宣教師「こ、これ…ですかね」ヒョイッ

ラム「…ごめん」シュン

宣教師「な、なぜキミが謝るんですか!」

ラム「あの時、僕も一緒にいたのに……守れなかったから」

宣教師「…子供を守ってあげるのは大人の役目です。悪いのは頼りにならない私達の方ですよ」スイスイ

ラム「でも……」

宣教師「はい!切れましたよ?」スパッ

ラム「…ありがと」シュルッ
763: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 22:25:24 ID:I9OmQWwMWw
ヒメ「」ジャラッ

ラム「…ヒメも、さっき連れてこられたんだ」

宣教師「ヒメくんまで……ん?」ピクッ

魔導師「」バタンキュー

宣教師「あっ…」

ラム「知ってるのかい?」

宣教師「え、えぇ、まぁ…」

ラム「とりあえず二人を繋いでる鎖は鍵がないと開かなそうだし、そいつが持ってないか探ってみるよ」スッ

宣教師「め、目を覚ましたら危ないのでは…?」

ラム「平気、平気、僕に任して?こういうの慣れてるから?」

宣教師「(なぜ慣れてるのかは聞かない方がいいのでしょうか…)」

ラム「ん……うーん。このチャラチャラした飾り邪魔。あ、この辺かなぁ?」ゴソゴソ

宣教師「(本当に物怖じしないですね…。すごいです…)」ドキドキ

ラム「うわ……なんかあやしい小瓶がいっぱい入ってるや。これじゃなくて……」モゾモゾ

ラム「ぶぐっ…!」グワシッ

宣教師「え?」

ラム「ゔ……ゔえ゙……ゔぅぅ…」サァァ

宣教師「ら、ラムくん!どうしたんですか?」アセアセ

ラム「はっぎ……ぃぎゃああっぐぁぁああ!!!」ゴフッ

宣教師「ラムくん!?」ガシッ

ラム「」バタッ

宣教師「え…え…!?」ギョギョッ
764: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 22:28:32 ID:I9OmQWwMWw
宣教師「いったい何が……」ハッ

魔導師「やあ?」ギランッ

宣教師「ひあっ!?」ビクッ

魔導師「こっちが気持ちよく気を失ってるのをいいことに……あ、いたた」ムクリ

魔導師「殴られたとこがまだ痛むよ…」サスサス

ラム「」ブクブク

魔導師「んふふ……それにしても寝込みを襲うなんて王国人もなかなか大胆じゃないの?」チラッ

宣教師「こ、この子に何をしたんですか!」キッ

魔導師「いやぁ…別にたいしたことはしてないけど」パッパッ

魔導師「ほんのちょっと殺傷力の高い魔術に掛けただけさ」スクッ

宣教師「なっ…すぐに治しなさい!」

魔導師「さてさて、さてさて、さてさてと……」ニギニギ

宣教師「!?」

魔導師「あのまま火に呑まれて焼け死んでれば、まだ……いや、無意味な話はよそうかね」フッ

魔導師「なんにしたって、それまでの運。幸が無いのもそれまでのことさ」ジリッ

宣教師「っ…!」

魔導師「大丈夫。死は怖いだろうけど、そんなの忘れてしまうくらい苦しめばいいよ?」ニヤァァァ

宣教師「(こ、ここまで来てっ……)」ギリッ
765: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 22:40:05 ID:LP9zIHGTpU
宣教師「な、納得いきません…」ブルッ

魔導師「?」ユラリ

宣教師「…あ、あなたはなぜ平然と、こんな事ができるんですか?
なぜ…ファルージャなんかに仕えているんですか!?」アトズサリ

魔導師「んー……」ポリポリ

宣教師「私には…とても信じられません!」キッ

魔導師「つまり恋バナってこと?」

宣教師「はい?」キョトン

魔導師「あ、違うのね…。ま、いいや。なんだって」

宣教師「た、たぶん違います…」

魔導師「なんにしたって…愛してるんだ。尽くしたくもなるよ?」

宣教師「あなたがファルージャを…ということですか?」

魔導師「まぁね」

宣教師「…分かりません。体目当てでもなければ好意を寄せる理由なんてなさそうなものですが」

魔導師「大概はそうかもね」

宣教師「あ、あっさり認めるんですね?」

魔導師「んふふ…別に取り繕うようなことじゃないから」

宣教師「……」
766: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 22:44:01 ID:LP9zIHGTpU
魔導師「自分にとって女王は友であり、仲間であり、恋人であり、母でもある。すべての愛しさが詰まった…大事な大事な人だ」

魔導師「だから何があっても女王の喜びを優先する。今にも溢れる想いを奥底に押し留めてでもねぇ」

宣教師「…どれだけ奉仕してみせても、あの女があなた方の愛情に報いるとは思えませんよ」

魔導師「それでいいよ」

宣教師「そ、それでいいって……」

魔導師「健やかでいてくれればいいんだ」

宣教師「……」

魔導師「星の瞬く夜の空も…日の出に目映く輝ける海も……女王の笑顔に比べたら、なんてことない景色の一つ」

魔導師「女王に喜びを与えてあげられる人生に恵まれたのは何より甘美な幸運だ…」

宣教師「…不思議な気分です」

魔導師「ん?何がだい?」

宣教師「私はあなたを理解できない…。これまでの行いも今、目に映る惨状も決して許す事はできません」

魔導師「だろうねぇ」

宣教師「けど、あなたもまた大切な物を守りたい一心だというのは伝わりました」

魔導師「んふふ…」クスッ

宣教師「それでも私はあなたを肯定したくありません。
通ずる想いはある筈なのに……なぜこうも相容れないのか」シュン

魔導師「そうかい…。難しいよねぇ…」フムフム

宣教師「……」

魔導師「答えは出ない…じゃあせめて悩みだけでも忘れさせてあげようかね」スッ

宣教師「」ピクッ

魔導師「…これからその身に起こる不幸。受け入れる覚悟はできたかい?」ギランッ

宣教師「っ…」ゴクッ
767: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 22:50:46 ID:LP9zIHGTpU
宣教師「」ブルブル

魔導師「おやおや、震えてかわいそうに?」ジリッジリッ

宣教師「わぁぁああっ…!!」ドッ

魔導師「えっ…」ズシッ

ドフッ!

魔導師「ぐげっ…!?」ズサァァァ

宣教師「私だって…守りたい物があるんです!!」ガッ

魔導師「ぉごほ!!あぐぅ…やめ、ろ……」ギュウウウ

宣教師「鍵を渡しなさい!!でないと、このまま絞め続けますよ!?」ググッ

魔導師「(っ……ま、ずい。意識……トぶ…!?)」パチンッ

シュコォォオオオ………

宣教師「(なっ…急に異臭が…?)」ピクッ

魔導師「うぅ…」ギュウウウ

宣教師「(め、目眩が……頭、くらくら……)」フッ

バタッ

魔導師「ふぅ…ふぅ…危ないとこだった。虫も殺せないような顔して図太い女だよ」ゼェゼェ
768: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 22:55:56 ID:LP9zIHGTpU
魔導師「まさか不意討ちしてくるとは考えもしなかった。自分もまだまだかねぇ…」カパッ

宣教師「(身体に…力が入らない…)」ベタァァァ

魔導師「んふふ…これは祟り気。簡単に言えば霧状の毒さ」キュッキュッ

魔導師「軽くホール一室は蔓延させられる強力な災いの素」

魔導師「これを近くで目一杯吸ったら助からないだろうねぇ」

魔導師「君も…この子たちも」ニヤァァァ

宣教師「ぶぇっ…ぐ!あぁ!がはっ!」ビチャビチャ

ヒメ「おぅえっ……えふっうえぇぇ!!」ビチャビチャ

魔導師「人質はいなくなってしまうけど…ま、いいか」

魔導師「こんなのに頼らなくても自分がいれば女王は守ってあげられる」

魔導師「…最初からそうさ。女王のそばにいるのは自分だけでいい」

「さっきから、なに一人でぶつぶつ言ってるの?」

魔導師「」ビクッ

ヒュンッ

魔導師「だれっ…」バッ

ズンッ!

魔導師「き、みは…そ、か」ズシャッ

ラム「君が拷問に使ってたナイフ貸してもらったよ?」ハナツマミ

魔導師「んふ…ふ。また、油断しちゃったよ…」ゴフッ
769: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 22:58:29 ID:LP9zIHGTpU
魔導師「ん、ふふ…毒、効かないんだっけ…?」ダラァァ

ラム「鍵、もらうよ」モゾモゾ

魔導師「永遠の命か…羨ましいなぁ……」

ラム「あった…ブフッ!」ゴパァッ

魔導師「……?」ビシャッビシャッ

ラム「はぁ…はぁ…永遠に生きれたって苦しいだけだよ」ジャラッ

魔導師「効いてたんだ…よく動けるねぇ…?」ピクッピクッ

ラム「やせ我慢してないと、こんな体質、耐えらんないよ」カチャカチャ

魔導師「あ、そう……」

パキンッ

ラム「…外れた」

フッ

ラム「ととっ!」ポスッ

ラム「…起きて、カロルくん。君の力が必要なんだ」ナデナデ

カロル「」ダラァァン

ラム「っ…ごめんね」ヒュッ

パシンッ! パシンッ!

カロル「うっ…あぅ……」ヒリヒリ

ラム「……!」ヒュッヒュッ

パシンッ! パシンッ!
770:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/6/11(土) 23:09:55 ID:d5hJ0M3DQ.
ラム「起きた?」ジッ

カロル「」ボーッ

ラム「聞こえるかい?まずは自分の傷を癒すんだ?」

カロル「……」

ラム「時間がないんだ!お願いだから早く……」

カロル「ぼ、く…いやし、たら…ラムくん……が」

ラム「……!」

ラム「(ほとんど意識もないのに…まだあんな約束を信じて……)」ググッ

カロル「」ボタボタ

ラム「(こんなになってまで僕を庇おうとしてるんだ…)」ウルッ

ラム「(それなのに僕は…なんにも……)」ポロッ

ラム「ひっ…う……」ポロポロ

カロル「ないて…るの?」プルプル

ラム「え…?」ポロポロ

カロル「ボクの…せいだよね…ごめ、なさい」ナデリ

ラム「…平気。平気だよ?」ギュッ

カロル「ふあ…?」ポフッ

ラム「僕はもう平気だから…自分を大事にしてよ」ナデナデ

カロル「うん…」ボーッ

ラム「もっと僕たちを頼ってよ…!」ポロポロ

カロル「なか…ないで…」

ラム「なら…早く元気になってよ!じゃないと泣き止まないからね!」ジッ

カロル「…わかっ…た……」コクッ

ラム「……」ホッ
771:名無しさん@読者の声:2016/6/27(月) 22:20:12 ID:E8IaVs2AYQ
続きが気になって毎日何回もきてしまう…支援!
772: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/29(水) 23:20:45 ID:cWyMdNqFA.
フワッ

カロル「……」パチッ

ラム「大丈夫かい?」

カロル「ら、む……くん」ボーッ

ラム「うん。僕だよ」クスッ

カロル「え…あ、ボク」ハッ

ラム「?」

カロル「あ、うあ……ご、ごめん!ごめんなさい!」ガタガタ

ラム「ど、どうしたの?」

カロル「ち、ちがう!ちがうんだ!ぼ…ボクがわるいの!ラムくんはなにも…ボクだからぁっ!?」ブワッ

ラム「か、カロルくん…」アセアセ

カロル「ごべんなざぁい!ふわぁぁん!!」ポロポロ

ラム「な、泣き出したりしてどうしたの?」アセアセ

カロル「そんなつもりじゃなかったの!なんにもわかんなくて…間違えちゃったんだよ!!」ポロポロ

ラム「も、もしかして…さっきのこと覚えてなかったりする?」

カロル「さっき…?なに…?」グスッ

ラム「ふふ…君ってほんと強いんだか弱いんだか分からないや?」クスクス

カロル「なん…で…?」キョトン

ラム「…心配しないで?」ギュッ

カロル「ふえ?」ポフッ

ラム「僕なら平気だよ。あんな約束は忘れていいんだ」ナデナデ

カロル「ひぐっ!えぅ……」グズグズ

ラム「…ありがとう。庇ってくれて」ナデナデ

カロル「うわぁぁん!あぁぁん…!!」ガシッ
773: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/29(水) 23:24:42 ID:cWyMdNqFA.
カロル「ひっく…ひっく!」グスッ

ラム「落ち着いたかい?」ポンポン

カロル「う゛ん!なにが…あったの?」グシッ

ラム「まぁいろいろね。それよりカロルくんにお願いがあるんだけど」

カロル「? おねがい?」キョトン

ラム「二人を癒してあげてもらえないかな?」

カロル「え……」チラッ

宣教師&ヒメ「」ダラァァン

カロル「えぇぇぇぇっ!!?」ギョギョッ

ラム「……」

カロル「な、なんで倒れてるの…?どうして宣教師さまとヒメくんが……」ブルブル

ラム「悪いけど急いでもらえる?本当に危険な状態だから!」

カロル「…う、うん!」キュッ
774: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/29(水) 23:26:29 ID:cWyMdNqFA.
フワッ フワッ

宣教師「う……」クラッ

ヒメ「ぼ、僕はいったい……」クラッ

カロル「二人ともだいじょうぶ!?」アセアセ

宣教師「か、カロルくん!?」

ヒメ「おまえ、どうやって…!」

ラム「話は後!ここを出ないと、またさっきの術に掛かるよ!?」

宣教師「お…ぅえっ」ウプッ

ヒメ「気持ち悪い…なんだ、この息苦しさは?」クラクラ

カロル「あ……」ハッ

ラム「肩持つから、なんとか歩いて通路に出て!この部屋にいたら死ぬよ!」ガッ

ヒメ「わ、分かった…」ヨロッ

宣教師「げほっ…うぅえっ!」ゴホゴホ

ラム「カロルくんも手伝っ……」グイッ

カロル「」ピトッ

ラム「な、なにしてんの!?」

フワッ

カロル「え?」クルッ

ラム「そいつはいいんだよ!君だって、あんなに痛め付けられただろ!?」

カロル「で、でも……」アセアセ

ラム「もう…!目を覚まさない内に出るよ!早く手伝って!?」

カロル「ごめん…」スクッ
775: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/29(水) 23:29:06 ID:l86Bd6tQRs
―――地下牢獄(通路)―――

ラム「ここまで来ればいいかな…。カロルくん、もう一度、二人を癒して?」

カロル「はい…」ピトッ

フワッ フワッ

宣教師「す、すみません…。助かりました」

ヒメ「これじゃ立場が逆だな…」

ラム「いいんだよ。二人が来てくれなかったら僕たちも今頃、殺されてたかもしれないしね。それよりも……」チラッ

カロル「」ビクッ

ラム「さっきのはなに?」キッ

カロル「え、えと……」モジモジ

宣教師「なにかあったんですか?」

ラム「カロルくんが魔導師を癒してたんだ」

ヒメ「は?おまえ、また…」ジロッ

カロル「……」オロオロ
776: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/29(水) 23:33:40 ID:l86Bd6tQRs
宣教師「ま、まぁまぁ…いいじゃありませんか?」オロオロ

ラム「よくないよ!」

カロル「……」

ラム「あいつがしたこと、絶対に許せない……」ギリッ

宣教師「それはそうかもしれませんが…」

ラム「それにあいつを生かしておいたら、また君を狙うに決まってる!そしたら、また逆戻りだよ!」

ヒメ「…そうだな」

宣教師「キミまで…?」

ヒメ「僕らだけの問題じゃない。上で戦う仲間たちにも関わる話だ?」

宣教師「で、ですが…」

ヒメ「今は心を鬼にしないといけない。おまえだって分かるよな?」

宣教師「……まぁ」

ヒメ「なんとなく察してるかもしれないが…僕たちは、ただここに来た訳じゃない」

ラム「知ってるよ。戦ってるんだろ?」

カロル「」ハッ

ヒメ「そうだ。そして今、この時も……多くの仲間と敵を死なせてる」

カロル「……!」ゾクッ
777: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/29(水) 23:36:21 ID:l86Bd6tQRs
ヒメ「もしかすれば、おまえがした事で死ななくていいヤツまで死なせてしまうかもしれないんだ…。そこをよく……」

カロル「う、あう…!」ブルブル

ヒメ「おい…?」

カロル「あぁぁぁあああ!!!」ガクンッ

ヒメ「は…!?」

ラム「な、なになに!?」

宣教師「ど、どうしたんですか!?」ガッ

カロル「うわっ…あ……うああああああ!!!」パシンッ

宣教師「!?」ヒリヒリ

ラム「あ、あのカロルくんが……宣教師さんの手を払った!?」

ヒメ「どうしたんだよ!!落ち着けって!?」ガッ

カロル「ひっ…!」ダッ

ヒメ「あ……」パッ

ラム「どこ行くの!?」
778: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/29(水) 23:38:04 ID:cWyMdNqFA.
ヒメ「くそっ!なんなんだよ、いきなり!?」

ラム「分からない…。とにかく追うしかないよ!」

ヒメ「相変わらず世話焼かせるな…!おい、宣教師!」

宣教師「」ズーン

ヒメ「なにしてるんだ!早く行くぞ!」

宣教師「きら…われた?天使のように純粋で優しかった彼が……あんな乱暴に手を払いのけるなんて…」ブツブツ

ヒメ「おまえまでどうしたんだよ!?」

ラム「よ、よっぽどショックだったんだろうね」

ヒメ「言ってる場合か!?さっさと行くぞ!」ガッ

宣教師「私なんて…私なんてぇ!!」ビエーン

ヒメ「な、なんだ、こいつ……びくともしない!」グググッ

ラム「カロルくんを一人にしていいのかい!?」グググッ

宣教師「」ピクッ

ヒメ「敵兵に出くわしたらタダじゃ済まないぞ!」グググッ

ラム「そうだよ…!今度こそ殺されるかもしれないし…!」グググッ

宣教師「そんなことさせません!!」バッ

ラム&ヒメ「うわっ!?」ビタンッ

宣教師「今、行きますよー!!」ダッ

ダダダッ……

ヒメ「いたた!まったく…どいつもこいつも!」プンスカ

ラム「ふぅ…しょうがないなぁ」サスサス
779: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/29(水) 23:40:01 ID:cWyMdNqFA.
カロル「……!」タタタッ

カロル「(どうして…!)」ウルッ

カロル「(どうしてボクなんかの為に争ったりするの…!?)」ポロッ

カロル「(ボクはただ……)」

ドンッ

カロル「ひゃっ!」ドタッ

レジスタンス11「おっ…!だ、誰だ!?」クルッ

カロル「あ、ごめんなさ…」ムクッ

ブンッ バキッ!

カロル「いっ!?」ズサァッ

レジスタンス11「動くなぁ!!」カッ

カロル「っ…!」ヨロッ

レジスタンス11「その眼はホビットか…!なぜ地下に……」

カロル「いたい…!」ポロポロ

レジスタンス11「答えろ!!貴様はファルージャの手先か否か!?」ジャキッ

カロル「ふ…ぇぐっ!痛いよ…!」シクシク

レジスタンス11「答えろと言ってるんだぁ!?」ジリッ

カロル「イヤだよ…!も…やだ!」ブンブンッ

レジスタンス11「なにをぉ!?」

カロル「…どうして……どうしてなの!?」ポロポロ

レジスタンス11「ちっ……」
780: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/29(水) 23:42:16 ID:cWyMdNqFA.
レジスタンス11「素性は知れんが、どちらにしろ我々の陣営とは思えん」ジャッ

カロル「……!」キュッ

レジスタンス11「死……」

宣教師「やめなさい!!」タタタッ

レジスタンス11「き、貴様…今までどこに!?」ハッ

宣教師「人質を解放していました!あなたこそ…ファルージャに倒されたのでは?」

レジスタンス11「くっ!あ、あんな事で死んでたまるか!?」

宣教師「あんな事で戦意喪失しておいて、よく言いますよ…」シラー

レジスタンス11「黙れ!忘れろっ!!」ガァーッ

カロル「っ…宣教師さま?」ポロポロ

宣教師「か、カロルくん!」
781: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/29(水) 23:45:07 ID:l86Bd6tQRs
レジスタンス11「なっ…これが人質だったのか?」タジッ

宣教師「彼になにをしたんですか!頬が腫れてますよ!」キッ

レジスタンス11「し、仕方ないだろ。こんな状況で突然ホビットに出くわしたら怪しいと疑うに決まってる!」

宣教師「こんな子供にどんな脅威があると!?」

レジスタンス11「ここは戦場だぞ!!用心して何が悪い!?」

宣教師「……!」

レジスタンス11「そんなに大事なら一人でうろつかせるな!?俺でなかったら殺されてたところだぞ!?」

宣教師「あなただって刃を向けていたじゃありませんか!?」

カロル「やめてっ!!」

レジスタンス11「……」

宣教師「……」
782: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/29(水) 23:48:48 ID:l86Bd6tQRs
カロル「」グシグシ

宣教師「もう大丈夫ですからね!一緒に帰りましょう!」ダキッ

カロル「…ねぇ、宣教師さま」

宣教師「…なんですか?」

カロル「どうしたらいいの…」

宣教師「?」

カロル「わからないんだ…。ボクはボクなのに……」

宣教師「……」

レジスタンス11「なにを抜かしとんだ、こいつは?」

カロル「教えて、宣教師さま…!」ヒシッ

宣教師「…いいですよ?キミの気持ちを聞かせてください?」ギュッ

レジスタンス11「そんな悠長な……」

ヒメ「カロル!宣教師!」タタタッ

ラム「大丈夫かい!?」タタタッ

レジスタンス11「あぁ!?ま、またガキか!?」
783: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/29(水) 23:53:29 ID:cWyMdNqFA.
レジスタンス11「なるほど、クンバヤが話してた国王ってのはお前か…」

ヒメ「まぁな…。地下にいて戦況が掴めなかったが、どうなっているんだ?」

レジスタンス11「開戦時こそ押せ押せでいってたが、はっきりしない状況だ。今のところは優勢だと思いたいが……」

ヒメ「……フィクサーは?」

レジスタンス11「分からん。上に残ってる連中が戦ってる最中だ」

ヒメ「…まだ決着が付いてないのか。ここはどうなんだ?」

レジスタンス11「それも分からん…。奴らの数と勢いに呑まれかけたんで一度、バラバラに逃げてきたんだ」

ヒメ「……」

ラム「ヒメ。僕たちはどうしたらいい?」

ヒメ「…ファルージャを探すしかない」

レジスタンス11「俺もそう考えたが…こんな迷宮で敵も大勢いる中じゃ身動きが取れないぞ?」

ヒメ「たしかに無謀だけど…それでもやるしかない!」

レジスタンス11「女子供と俺一人でどうするんだ?どこから敵が現れるかも分からんのに……」

ヒメ「どこにいたって同じだよ。それに勝利を決定付けるにはある意味、最大の好機かもしれない」

ラム「でもカロルくんがあんな状態じゃ…?」チラッ

ヒメ「…それは宣教師に委ねるしかないな」

レジスタンス11「ちっ…こんな非常時に子守りか!なんにしたって動くなら急がなきゃならんぞ?」

ヒメ「あぁ、分かってるよ…」

ラム「……」
784: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/29(水) 23:57:45 ID:l86Bd6tQRs
宣教師「ゆっくりでいいですよ?」ナデナデ

カロル「うん…」

宣教師「なにがキミを悩ませているのか私も考えますから…ね?」ポンポン

カロル「ありがとう…」

宣教師「いえいえ?」ニコッ

カロル「」ギュウウウ

宣教師「ふふ…そんなに抱き締められたら、ちょっと恥ずかしいですよ?」クスッ

カロル「ホントは…助けてくれて嬉しかったんだ」

宣教師「はい」ナデナデ

カロル「でも…そうしたら、どうなるんだろうって」

宣教師「どうなると思いました?」

カロル「また、こうなっちゃうかも…」シュン

宣教師「それはなぜ?」

カロル「ずっと…そうだったもの」

宣教師「そうでしたか?」

カロル「うん…」

宣教師「ふむふむ、それは知りませんでした?」

カロル「…みんなボクは悪くないって言ってくれる」

宣教師「私もそう思いますよ?」

カロル「だけど……悪いとか悪くないじゃなくて」

宣教師「……」

カロル「イヤなんだ…!」
785: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/30(木) 00:00:25 ID:cWyMdNqFA.
カロル「…ただみんなといたかっただけなのに」

カロル「それなのに…みんな…みんな傷付けてるっ…」ウルッ

カロル「だから…」ウルウル

宣教師「分かりました……」

カロル「え?」

宣教師「キミを悩ませているものが…」

カロル「……」

宣教師「…それはね」

カロル「うん…」

宣教師「どんな言葉をかけても解決できません」

カロル「…へ?」
786: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/30(木) 00:03:02 ID:cWyMdNqFA.
宣教師「心を病むのは当然です。実際、それだけの経験をしてきましたもんね」

宣教師「ですが、それはみんなも同じことですよ?」

カロル「……」

宣教師「誰しもどこかで消えない痛みを抱え、それらの想いを解消できずにいます」

宣教師「たとえば私なら…教団に拾われて間もない頃に受けたいじめが今でも頭から離れません」

宣教師「夜、ベッドに入って目を瞑ると思い出して眠れなくなる事がよくあります」

宣教師「それをどうにかしようとは思いませんし、できる筈もありません」

宣教師「私にとって、この悩みは一生、付いて回ることになるでしょう」

カロル「…宣教師さま」

宣教師「キミの悩みもそうじゃありませんか?」

カロル「そう…かも」

宣教師「これからも…多くの不安と葛藤がキミの胸を焦がし、悲惨な現実が襲いかかるかもしれません」

カロル「……」シュン

宣教師「それでもね。私達はキミに生きてほしいと願い、キミもまた生きたいという希望を強く持ってほしいんですよ」

カロル「……」

宣教師「それが私の支えであり、キミの支えであってほしい…」

宣教師「だって私達はもうただの友人ではないのですから」

カロル「?」

宣教師「キミもルーボイくんもナラちゃんもラムくんもおチビちゃん達も…。
全ての孤児院に住まう子供たちはみんな私の大事な家族であり、平等にかけがえのない存在です」

カロル「……!」

宣教師「悩みは尽きないでしょうが…どうかこの先も私達と生きていただけませんか?」
787: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/30(木) 00:11:27 ID:cWyMdNqFA.
カロル「…ボク」

宣教師「はい」

カロル「……」ギュッ

宣教師「?」

カロル「また…おんなじことしてた…」ブルッ

宣教師「……」

カロル「もう…離れたくないって思ってたのに」

宣教師「ふふ。心って、そういうものじゃないですか?」

カロル「ごめんなさい……」ポロポロ

宣教師「おやおや、キミの涙は渇れることを知りませんね?」クスッ

カロル「うん…ルーボイくんにも弱虫ってからかわれた…」グシッ

宣教師「いいえ、泣くのは弱さではありませんよ?」

カロル「……?」ポロポロ

宣教師「感情が豊かな証拠です」

カロル「ぐすっ…そうなの?」

宣教師「楽しいことや嬉しいことも素直に感じ取っていけるんですから、とても幸福なことですよ?」

カロル「…そう、なんだ。えへへ」テレッ
788: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/30(木) 00:29:06 ID:cWyMdNqFA.
ヒメ「もういいか?」

宣教師「えぇ、大丈夫ですよ」

カロル「あ…ご、ごめんなさい。心配させちゃったよね」

ヒメ「気にするな。友達だろ?」

カロル「う…うん!」パァァ

ラム「あんなことされた後だもんね」

カロル「……」

ラム「ん?」

カロル「さっき、みんなのこと考えないでごめんなさい…」

ラム「本当だよ。普通、自分を痛め付けた相手を助けたりする?」

カロル「……」

ラム「まぁでもしょうがないよね。君ってそういう奴なんだからさ?」

カロル「うぅ……」

ラム「でもいきなり叫び出したのはびっくりしたよ?」

カロル「いろいろ考えちゃって…ラムくんは平気なの?」

ラム「僕は君みたいに繊細じゃないからね。いちいち悩んだりしないし、あいつらをぶん殴ってやりたいとしか思ってなかったよ?」クスッ

カロル「あ、あはは…そうなんだ」ヒクヒク

ヒメ「図太いヤツだな…」

宣教師「ふふふ…持ち味は人それぞれですよ?」クスクス
789:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/6/30(木) 00:32:20 ID:cWyMdNqFA.
レジスタンス11「おい、いつまでくっちゃべってるんだ?」

ヒメ「あぁ、待たせてすまないな」

ラム「そろそろ行こうか」

宣教師「どうするか決まったんですか?」

ヒメ「あぁ、今度こそファルージャを捕らえる」

レジスタンス11「かなり無茶だが…やるとなったら、それしかねぇわな」

ラム「僕が後ろに付くよ。カロルくんと宣教師さんは真ん中にいて?前はヒメとおじさんが歩くから?」

カロル「え?でもそれじゃヒメくんもラムくんも危ないよ!」

ヒメ「おまえらが前や後ろに付いて攻撃を受けたら僕たちまで出遅れるだろ?」

ラム「そうそう。その方がよっぽど危ない」

カロル「あう……」ガーン

宣教師「3人を信じて付いていきましょう?ね?」

カロル「うん…」ショボーン

ヒメ「ふふん!おとなしく僕に守られてればいいんだよ?」

カロル「…そうだね。ヒメくんたちを信じるよ?」ニコッ

ヒメ「あぁ、そうしろ?」クスッ

ラム「武器も独房から拾い集めておいたから護身用に持ってて?」スッ

カロル「あ、ありがとう…」パシッ

宣教師「ちゃっかりしてますね…」パシッ

レジスタンス11「もういいだろ。行くぞ」

ヒメ「あぁ!」

カツンカツン カツンカツン………
790: ◆WEmWDvOgzo:2016/6/30(木) 00:38:00 ID:l86Bd6tQRs
>>771
毎回ホントすみません…
こんなノロノロ更新なのに見捨てないでいてくださって心から感謝してます
更新ペースを上げられるよう頑張らせていただきますので、お付き合いいただけたら幸いです
791:名無しさん@読者の声:2016/7/1(金) 00:53:49 ID:ZIIFL95sEs
ゆっくりでいいよ!
まってるから!
792: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/1(金) 22:40:59 ID:WFTG5.yQN.
>>791
ありがとうございます!
完結まで頑張ります!
793: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 22:12:20 ID:G1jlIHyNRY
―――宮殿(大階段)―――

ガキンッ キキンッ ギャリンッ

ドバッ ズブッ ザシュッ

王国兵67「いったいあと何人、殺ればいい…!いつになれば終わるんだ!」ゼェゼェ

王国兵68「もう疲れた…。腕が持ち上がらない…」フラッフラッ

王国兵69「なにを弱気になってる!?条件は同じなんだ!下がるな!?」

ザザザッ

賊徒21「けっ!心配しねーでも終わるさ!てめぇらが一人残らずくたばったらなぁ!?」ズイッ

王国兵69「ぐぬっ…!ほざきおって!」ギリッ

賊徒21「ヒャヒャヒャ!またとない祭りだ!まだまだ盛り上げようぜ!」

護衛8「…やはり西国人は気性が荒いな」

護衛9「あぁ。しかし味方に付けば、この上なく頼もしい」

護衛10「あと一歩だ。あと一歩で……」

ウワァアアアアアアアアアアアアア!!!

護衛's「」ビクッ
794: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 22:13:52 ID:G1jlIHyNRY
護衛8「ど、どうした!何事だ!?」

護衛9「階上に異変があったようだな!」

護衛10「階下からでは分からん!我らも向かうぞ!」

王国兵70「ハァーハハハハ!!そう急ぐこともなかろう!?」ザッ

護衛10「くっ!邪魔だぁ!」シュバッ

王国兵70「おっと?そういきり立つな?」ギンッ

護衛8「どけぃ!!」ザウッ

王国兵71「ふんっ!!」ガキンッ

護衛9「くそっ…これでは埒があかん!」ギリッ

王国兵72「そんなに上の様子が気になるなら教えてやってもいいぞ?」ニタニタ

護衛9「なにぃ…!?」

王国兵72「聞いて驚け!なんとフィクサー総指揮が、あのルフィアスを討ち取ったのだ!?」

護衛9「なっ…ふざけるな!せめてまともな嘘を……」

王国兵72「信じがたいか?まぁ無理もない!」

護衛9「当たり前だ!団長程のお方がそう易々とやられてたまるか!」

王国兵72「ククク!ならば証明してやろう?」

護衛9「は?どうやって……」

王国兵72「刮目せよ!!」バッ

護衛9「!?」

護衛11「あ、あれは…!」
795: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 22:15:50 ID:PC4GokIlCo
王国兵72「フハハハハ!この剣に見覚えがあろう!?」キランッ

護衛9「だ、団長が愛用していた剣じゃないか…!なぜお前らが…!」

護衛11「ば、バカな!どうなってるんだ!?」

護衛12「まさか本当に…!?」

ウワアアアアアアアアアアアアア!!!

護衛's「」ビクッ

王国兵72「あの歓声が何を意味するか……察しが悪くても勘付くだろう!?」

王国兵73「ぎゃはははは!!ルフィアスが死んだぁ!!奴の不敗神話に終止符を打ってみせたぁ!!」ダダダッ

王国兵74「あぁ!総指揮が……我らが主、フィクサー様が王国最強と謳われた剣士、ルフィアスを討ち取ったぞぉぉぉ!!!」

王国兵75「さ、さすが!さすがだ!!」

護衛9「……!」ダラダラ

護衛11「そんな……」ガクッ

護衛12「頼むよ…!嘘だと言ってくれ…!」ガタガタ

王国兵72「ヒヒヒ…その調子だ!方々に言いふらしてやんな?」ニヤッ

ザワザワ ザワザワ
796: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 22:18:42 ID:G1jlIHyNRY
バンザーイ! バンザーイ!

護衛's「」ボーゼン

王国兵72「勝敗は決した!喰らい尽くせぇぇぇ!!」バッ

王国兵's「おぉうっ!!」ニタァァァァ

護衛's「」ゾクッ

ウォォオオオオオオオオ!!

賊徒23「ぎゃあっ!!」バシュッ

賊徒24「なんだ、こいつら急に…ぐふっ!」ズンッ

護衛10「ひっ…やめぐへあっ!?」ズドッ

賊徒25「けっ!威勢がいいな!クソ共がぁっ!!」ダッ

バシュッ ズバッ ドシュッ ビチャッ
797: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 22:20:08 ID:G1jlIHyNRY
護衛8「げはぁっ!!」ドシャッ

護衛9「(もうダメだ)」ボーッ

ザンッ ガガンッ バキィッ グシャッ

護衛9「(優勢だった筈なのに……あと少しで勝てていたのに……)」

護衛9「(まるで柱が砕け、あっけなく崩れ落ちる家屋のように……)」

護衛9「(たった一人を失った…それだけで俺たちはこんなにもたやすく挫けてしまうのか)」

王国兵71「ゲェハハハハ!!」ピシャッピシャッ

護衛9「(とても嬉しそうだ……あいつは本当にあんな人間だったんだろうか)」

護衛9「(仮にも同じ国に生まれ、同じ城で過ごしていたが俺は彼らの事を全く知らない)」

護衛9「(だが少なくとも……こんな事をして喜べる連中ではなかったと思う)」

護衛9「(いや…)」

護衛9「(俺や、ここにいる全ての人間が同じなのかもしれない)」

護衛9「(負けると悟ってしまったから負け惜しみに彼らを憐れんでみただけだ)」

護衛9「(…この手に正義があると信じて血を流した…。誰も責める資格なんてない)」

護衛9「(人と人とが争うっていうのは……そういうものなんだ)」

護衛9「(はは…なんか仕方ないとしか)」ヘラッ

王国兵71「アハハハ!!死ねぇぇえ!!」ビュッ

ズバァッ!!

護衛9「」ドシャッ
798: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 22:27:20 ID:G1jlIHyNRY
フィクサー「…だいぶ死臭が濃く漂ってきた」ギギギッ

ギャリンッ!

フィクサー「…貴殿の身体からも匂うのではないか?死の香りが……」ニヤッ

団長「っ…ほざけ!」ググッ

フィクサー「ふっ…まだ粘るか。しぶとい御仁だ」

オォォオオオオォォオオオ!!

クンバヤ「ひぃ…はぁ……てめぇ…なんかしたろ?」ゼェゼェ

フィクサー「なんのことだ?」

クンバヤ「さっきから…アホみてぇに騒いでやがる連中……てめぇの差し金じゃねぇのか!」ゼェゼェ

フィクサー「だとしたら?」

クンバヤ「ちっ…この期に及んで小細工かよ…!気の小せぇ野郎だな?」ギロッ

団長「む…階下の乱戦が激しくなっておるようだが…?」

フィクサー「なぁに…軽く毒を染み込ませてやったまでだ?」

クンバヤ「毒…?そんな準備、いつ…!?」

フィクサー「ここだ?」トントン

クンバヤ「頭…?」

フィクサー「配下に貴殿の討ち死にを触れて廻らせた」ニヤッ

団長「なんだと…!?」

フィクサー「オドアイルの死に際、貴殿の手から離れた剣を掲げさせてな?」

クンバヤ「ハッタリじゃねぇか!んな子供騙しに引っ掛かるか!」

フィクサー「分かっていないな。言葉とは使い道によっては究極の猛毒になりうる…?」

ガガンッ バキンッ ドシャッドシャッ

団長「…押されているな」ジーッ

クンバヤ「くそったれが…!」ギリッ
799: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 22:35:06 ID:PC4GokIlCo
ウワァァァアアアアアアア!!!

ズゴッ ドガァッ バキィッ ベシャッ

フィクサー「く、ククッ…」プルプル

フィクサー「ふ……ははは」ニィィィ

フィクサー「ハハハハハハハハ!!!」ゲラゲラ

団長&クンバヤ「!?」

フィクサー「これだ……これだよ。わたしが見たかったモノは?」ニヤニヤ

フィクサー「まさしく…これこそが戦争だ!」カッ

フィクサー「争え…!血を撒け…!死に悶えろ…!殺すんだ!!」

フィクサー「わたしの輝かしい勝利を華々しく祝ってみせろ!!」

フィクサー「くっ!ははは!はは!ハハハハハ………」ゲラゲラ

団長「腐れ外道め…!」

クンバヤ「調子こきやがって…そうあっさりやられてたまるかよ」ペッ
800: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 22:39:08 ID:G1jlIHyNRY
クンバヤ「おい、ふにゃチン野郎!」

フィクサー「ははは………」ピクッ

クンバヤ「目ん玉ひん剥いて、よーく見な?」

フィクサー「……」

クンバヤ「聞いてんのか?てめぇだよ?ふにゃチン!」

フィクサー「今、なんと言った…?」ピキッ

クンバヤ「あー?さては目ん玉とキンタマ勘違いしてやがんな?
ふにゃチンだからって、すぐそっちに持ってくんじゃねーよ?」ヘラヘラ

団長「(下手な皮肉より数倍、堪えるだろうが…もう少しマシな言い方は出来んのか!)」ヒクヒク

クンバヤ「へっ…」ニヤッ

ウォォォォォォアア!!

ドドドドドドッ

団長「なに!?」ハッ

フィクサー「……!?」
801: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 22:42:38 ID:PC4GokIlCo
団長「か、階下が勢いを取り戻し、攻勢に転じている…。偽の訃報を見破ったのか!?」

クンバヤ「思い上がんなよ、おっさん」

団長「む…?」

クンバヤ「たとえあんたがやられようが知ったこっちゃねぇ。俺たちは俺たちでやるだけだ」

団長「なにっ…!」

クンバヤ「怒んなよ?あくまで、ここの主戦力は俺たちってこった?」

団長「むぅ…だ、だがあれだけの勢いを押し返せる程の戦力だったか?」

クンバヤ「あぁ?ナメんなよ?」

団長「い、いや、軽んじているのではないが…」

クンバヤ「こちとらなんも持たず国と戦おうってぇ命知らずの集いだぜ?」

クンバヤ「装備は安っぽいし剣術なんかとは無縁だが…長年、溜め込んできたムカつきと死に物狂いで噛み付く根性だきゃ負けやしねぇ!」

クンバヤ「お上品なおめぇらと違ってよ。半端じゃなく必死なんだよ…!」

クンバヤ「そうでもなけりゃ革命の先陣なんざ切れやしねぇぜ…。そうだろうが?」

団長「……!」ゴクリッ

クンバヤ「つーわけだ?予定がズレて残念だったな、ふにゃチンくんよ?」ニィィッ

フィクサー「……」
802: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 22:45:41 ID:PC4GokIlCo
フィクサー「だからどうした?」スッ

クンバヤ「あ?」

フィクサー「」ザッ

団長「!」ピクッ

ドスッ!

フィクサー「いずれにせよ結果は同じこと…」ズボッ

クンバヤ「ぐ…はぁ!」ズダァァン

フィクサー「潔く眠っていろ。雑魚が」ピシュッ

団長「(は、速い…!ワシとしたことが反応出来なかった…!)」

フィクサー「詰まる所、勝敗を結するは力と力」

団長「大きく出たものだな…!」

フィクサー「…敗者に手向けをくれてやるのが勝者たる務め。心して召されよ」ジャキッ

団長「ぬぅ!若造がやかましい!」ダッ
803: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 22:48:31 ID:G1jlIHyNRY
ガッガガガッガガンッ!

団長「ぐぅ…!」ギキィィン

フィクサー「口ほどにもない!その程度か?」ヒュッヒュッ

団長「(やはり速い…!これほどの連撃を浴びせられては反撃する暇もない…!)」ガガンッ

フィクサー「ククッ!防ぐばかりでは勝機など訪れぬぞ!!」ヒュオンッ

ガィンッ!

団長「(これでは隙を見つけられん!せめて全快であれば…!)」ジャッ

フィクサー「……」ジリッ

団長「(こうなれば捨て身で相討ちを狙うか…!)」ジリッ

王国兵75「フィクサー様!」ダダダッ

団長「む!?加勢か!こんな時に…!」バッ

王国兵75「報告します!地下迷宮を攻め込まれ、ファルージャ女王のお命が危ういと宮仕え連中が助けを求めてきました!」

フィクサー「なに…!?」

団長「……!」
804: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 22:57:59 ID:PC4GokIlCo
団長「(先に行かせた宣教師か…!でかしたぞ!)」グッ

王国兵75「ここは我らに任せ、一度……」

団長「フンヌッ!!」ビュバッ

王国兵75「ぎゃんっ!!」ドシュッ

フィクサー「……!」ギロッ

団長「良い報せを聞いた…。これで残すは貴様のみ!」

フィクサー「ハァッ!!」ザウッ

団長「おっ!」ギンッ

フィクサー「ぬああああ!!」ヒュッヒュッ

ガンッ ギキンッ ガガンッ

団長「(な、なんだ…!明らかに剣筋が乱れだした…?)」ガィンッ

フィクサー「ふんっ!つあぁ!!」ヒュッヒュッ

団長「だが…好都合だ!」シュバッ

ガァァァンッ!

フィクサー「ゴフッ!」ドシャッ

団長「鎧に救われたな?だが次はないぞ!」ジリッ

フィクサー「フゥ…ぐぅぅっ…!」ワナワナ

団長「…なにを狼狽えておる?まさかファルージャの安否を気遣っている訳でもあるまい?」ジャキッ

フィクサー「くっ…おのれに言う筋合いはない!」ググッ

団長「なんでもよいが…そんな雑念まみれの剣でワシと戦うつもりか?」

フィクサー「っ!?」ダッ

団長「(ま、まさかこいつもファルージャの魔性に掛けられたというのか…?)」
805: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 23:08:07 ID:G1jlIHyNRY
ガガンッ キキンッ ギキィィン

フィクサー「死ね!一刻も早く!?」ガァンッ

団長「なぜ勝負を急ぐ…!そんなにファルージャが気掛かりか!?」ギンッ

フィクサー「っ…であれば、どうする!?」ヒュオンッ

団長「軽蔑するよりないわ!!」ガィンッ

フィクサー「く……」シュタッ

団長「…反逆者と言えども剣に優れ、知略を併せ持つ貴様を少しは見直していたが」

フィクサー「……」

団長「権力を欲し、女に溺れるサマは誇り高き騎士像とは程遠い!!やはり陛下に敵う器ではなかったな!!」

フィクサー「っ……」ギリッ

団長「恥を知れ!!うつけ者め!?」

フィクサー「…善し悪しを司るは勝者、唯一人」ボソッ

団長「なにぃ…!?」

フィクサー「大陸の覇者となり!海を渡り!天地をも従える王者となれば!!」

団長「……!」ピリピリ

フィクサー「誰あろうとわたしを否定することは叶わぬ…!」

団長「偉そうに語ってくれるな!そんな子供染みた横暴は誰も認めんぞ!?」

フィクサー「忠義、矜持、正義……そのような戯れ言に踊らされた愚か者には分かるまいよ」

団長「愚かだと…!?」
806: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 23:11:22 ID:PC4GokIlCo
フィクサー「手柄欲しくば集え!!ルフィアスの首を討ち取った者には報酬を惜しまぬぞ!!」

ザザザッ

団長「なっ…ひ、卑劣極まりない!貴様、それでも……」

フィクサー「言ったろう?矜持や正義に興味はないと?」ニヤッ

団長「(こ、ここで倒れる訳にはいかん…!陛下が成し遂げられるまではワシが食い止めなければ…!)」

王国兵76「背中がガラ空きだ!?」シュバッ

王国兵77「もらったぞ!!」ビュンッ

団長「っ…ちぃ!!」ブォンッ

王国兵76、77「ごぎゃっ!?」ドバッ

団長「(フィクサーとこいつらを同時に相手するとなると骨が折れ……)」チラッ

コツゼン

団長「(や、奴はどこに行った!?)」ハッ

王国兵's「」ゾロゾロ ゾロゾロ

団長「(しまった…!)」ゾクッ
807:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/7/6(水) 23:15:51 ID:G1jlIHyNRY
―――宮殿(渡り廊下)―――

ヒュールルル………

フィクサー「ひとまずは配下に任せ、こちらを優先するか…」スタスタ

フィクサー「く…くく……しかし、このわたしが…こうもことごとく辛酸を舐めさせられるとは……」プルプル

フィクサー「逆鱗に触れるとは、まさにこのこと…!!」ビキィッ

フィクサー「もはや…この手で殺さねば気が済まぬ!」ググッ

フィクサー「待っていろ!国王よ…!!」ダッ

ダダダッ………
808: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 21:30:54 ID:snk7nMamVo
―――地下迷宮(通路)―――

ドドドドドドッ

西兵108「ぐぉらぁ!!鼠がぁ!!チョロチョロしやがってぶっ殺してやらぁ!?」ダダダッ

西兵's「」ダダダッ

ラム「さっそく見つかった!」タタタッ

レジスタンス11「あんな数、どうにもならんぞ!」ゼェゼェ

ヒメ「いいから走れ!追い付かれるぞ!」タタタッ

宣教師「はぁはぁ!前……分かれ道になってますよ!」タタタッ

カロル「どっちに行くの!?」タタタッ

ヒメ「別れるぞ!」タタタッ

カロル「え!?」

ヒメ「敵は僕とレジスタンスで引き付ける!宣教師はカロルとラムを連れて左に回れ!?」

宣教師「…分かりました!」コクッ

カロル「そんなのダメ!みんなで行こうよ!?」

ラム「」ガッ

カロル「わっ…」グイッ

ヒメ「頼んだぞ!」タタタッ

ラム「任せて!」コクッ

ヒメ「よし…右だ!!右に行くぞぉ!!」ダッ

レジスタンス11「くそっ…なんで俺まで囮役に……」ブツクサ

西兵108「聞いだか!右だぁ!!」ダダダッ

西兵's「ドォリャアアアア!!!」ダダダッ
809: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 21:33:08 ID:/HhXhL32IQ
ラム「追ってこないね!」タタタッ

宣教師「えぇ!なんとか助かりました!」タタタッ

カロル「ねぇ!戻ろうよ!」アセアセ

ラム「カロルくん!さっき、ヒメを信じるって言ったばっかでしょ?」

カロル「う…で、でも」タジタジ

宣教師「大丈夫ですよ。あの子は考えなしに行動するような真似はしませんから、ね?」ポンッ

カロル「…はい」シュン

ラム「……誰だ!?」ジロッ

カロル「へ?」

ゾロゾロ ゾロゾロ

宣教師「そ、そんな…!ここにも…!?」

カロル「っ……待って!」バッ

ラム「あ、危ないよ!?」

カロル「ボクらは戦う気なんてない!ホントだよ?」ジッ

賊徒26「あぁ〜?なんだ、姉ちゃんらもここにいたんか?」クッチャクッチャ

宣教師「あ!あなた達は…!?」

カロル「?」

ラム「知ってるの?」
810: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 21:35:15 ID:snk7nMamVo
宣教師「安心してください。この人たちは味方です?」

カロル「そうなの!?」パァァ

ラム「ふーん?見た感じは敵っぽいけど?」

賊徒26「よぉよぉ?ドタバタしちまって、どうもなんねーよぉ?アニキともはぐれちまうしよぉ?」クッチャクッチャ

賊徒27「逃げてみたはいーが出口も分かんなくなっちまったし、どうすんのよ?」

ラム「それなら今すぐ向かってほしいところがあるんだけど?」

賊徒28「あぁん?なんだ、ガキンチョがえらそーに?」

宣教師「あなた方のお仲間が敵に追われているんです」

賊徒26「アニキらか?」

ラム「そ!だから加勢してきて?」

賊徒28「コラ!なに命令してんだ?」

カロル「は、早く助けてあげないと危ないの!おねがいします!」ペコッ

賊徒26「けっ!やなこった?女とホビットに指図されて行けるかよ?」ボタボタ

カロル「あっ…」ハッ

ラム「は?なんだよ、その言い方…!」ズイッ

宣教師「」サッ

ラム「宣教師さん…?」ピタッ
811: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 21:40:29 ID:/HhXhL32IQ
宣教師「いい加減になさい!今はそんなことにかまけていられないでしょう!」

賊徒26「るせぇ!おめぇらなんかにごちゃごちゃ言われる筋合いねぇってんだよ?」

賊徒29「だな。俺らは俺らの好きにすらぁ」

宣教師「(こんな時まで…いったい何回、説き伏せなければならないんですか…!)」ムカムカ

ラム「なんなの。こいつら?ぜんぜん意味分かんないし!」ムカムカ

カロル「……」スッ

ラム「ん?」

宣教師「カロルくん…」

賊徒26「あぁん?なんだ、ガキ!文句あっか?」

カロル「…ない、です」モジモジ

賊徒26「は?じゃあなんだよ?」

カロル「……」モジモジ

賊徒26「イライラすんなぁ…はっきりしろや!?」

カロル「腕…ケガしてるよ?」ビッ

賊徒26「お?こんなモンはイアマンの加護できっちり……」ボタボタ

カロル「ちょっとだけ…ごめんなさい」ピトッ

賊徒26「おぉ!てめぇ気安く……」

フワッ

賊徒26「ん…?あ?痛みが……」

賊徒30「どした?」

カロル「おじさまも?」ピトッ

賊徒30「?」ズキズキ

フワッ

賊徒30「!?」スッキリ
812: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 21:42:27 ID:snk7nMamVo
カロル「どう…?平気そう?」

賊徒26「すげぇ…痛みもねぇわ頭もスッキリすらぁ?」

賊徒30「何したか分からんが…要はケガを治したってのか?」

賊徒28「クッソ意味深だがありがてぇや?あいつらに追っかけ回されてズタボロだしな!」

賊徒29「おい、ガキンチョ!俺にもやれや!」

カロル「いいよ?順番だから、ならんでね?」ニコッ
813: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 21:43:41 ID:snk7nMamVo
フワッ フワッ フワッ フワッ

オォォォオオオオオ!!!

宣教師「安易に力を見せてしまっていいものなのでしょうか…」

ラム「しょうがないよ。どうせ言ったって聞かないし?」

宣教師「困ってる人をほっておけない性格なのは分かりますが…」

ラム「むしろカロルくんが一番ほっとけないよね」

宣教師「私もそう思います…」シンミリ
814: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 21:47:05 ID:/HhXhL32IQ
フワッ

カロル「はい。おしまいだよ!」パッ

賊徒26「バッチリじゃねぇか〜?」グッパッ

カロル「これしかできないから…」

賊徒26「あ?」

カロル「ボクもなにか力になりたくって…」

賊徒26「ほっほ〜?そんでまた俺らに戦ってこいと?」

カロル「…ううん」フルフル

賊徒26「?」

カロル「暴力はしてほしくないんだ」

賊徒26「なぁ〜にさみぃこと抜かしてやがる?」ズイッ

カロル「」ビクッ

賊徒26「暴力しかありえねぇよ。ここはそういう場所だろうが?」ギロッ

カロル「っ…」キュッ
815: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 21:49:08 ID:snk7nMamVo
カロル「そ、それ以外にも…あるはずだよ!」バッ

賊徒26「…それ以外ってなんだよ?」

カロル「ちゃんと話し合ったら分かってもらえる!だってボクらがそうだったから!」

ラム「……」

カロル「だから…」

賊徒26「よぉ!おめーら?」

賊徒's「あぁん?」

賊徒26「傷も治ったし暴れたくてウズウズしてんだろ!報復だ!」

カロル「ま、待ってよ!」アセアセ

賊徒26「…お前みてぇなのに構ってる暇はねぇよ。おら、どけ?」ドンッ

カロル「あうっ!」ドタッ

宣教師「なにをするんですか!」

賊徒26「クッソムカつくぜ。俺はおめーみてぇなあざとい野郎ってのが大っ嫌いなんだよ?」

カロル「……?」キョトン

賊徒26「どうせ恩を売りまくってカタぁ付いたら上前を撥ねようって魂胆だろ!そうはいかねーかんな!?」

カロル「ボクは…おじさまたちにも生きてほしいだけだよ?」ジッ

賊徒26「クッセェ芝居しやがって?王国人ってぇなぁホビットにも仕込み入れてんだな!」

カロル「え…?」

賊徒26「クンバヤやアニキは騙せても俺ぁ騙されねぇぞぉ?」

カロル「騙したりなんて…しないのに」シュン

賊徒26「そっちの国王にも言っとけ!俺達が勝ち取ったモンは俺達のモンだとなぁ!?」

宣教師「なんですか!その言いぐさは!まず傷を癒したカロルくんにお礼をするのが筋なのでは!?」

賊徒26「当て付けられた恩に義なんざねーわ!グダグダ言ってっとてめぇらからぶっ殺すぞ!」

宣教師「……!なんて非常識な!?」

賊徒26「行くぞぉ!!」ズカズカ

ザッザッ ザッザッ……
816: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 21:53:13 ID:snk7nMamVo
ラム「いちいちめんどくさいな!こんな時になに考えてんだか!」スタスタ

宣教師「同感です!」プンスカ

カロル「はぁ…なんで、いつも怒らせちゃうんだろう…?ボク、気付かないで傷付けてるのかな…?」ズーン

宣教師「キミに悪いところがあるとすれば、そうやって卑屈に考えてしまうところですよ?」

ラム「そーそー?ああいうのはね。天の邪鬼って言うんだよ?」

カロル「アマテラス…ってなに?」キョトン

ラム「あまのじゃくだよ。なにを言われても反発する人のこと?本で読んだんだ?」

カロル「へぇ…そうなんだ?ラムくん、本読むの好きだったもんね?」

宣教師「あの方々も劣悪な環境に悩まされ、劣等感を強く植え付けられた反面、それに逆らおうとして歪んだ人格を形成してしまったのでしょう」

宣教師「一概にひねくれ者とは決め付けられませんが…この国民性を矯正できない限り、西の国の悪評が和らぐ事はないでしょうね」

ラム「環境は大事だよ。僕だって今は穏やかでいられてるけど昔は…ね」

カロル「…ヒメくんみたいな王様がいてくれたら、ここの人間たちもアマガエルじゃなくなってくれるかな?」

ラム「だからあまのじゃくだってば!僕ってそんな滑舌悪いかい!?」

宣教師「まぁまぁまぁ?」ドードー
817: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 21:55:27 ID:snk7nMamVo
宣教師「ふーむ…それもなかなか難しいでしょうけどね…。国作りと人の心はかけ離れてますから?」

カロル「そうなんだ…」ショボン

宣教師「それでも可能性はあるんですよ?」

ラム「可能性…?」

宣教師「国が様々な環境を広げられれば、そこに住まう人々の見聞は高まり、秩序を安定化させれば道徳観も養われます」

ラム「ふーん…でもそんなことできるの?」

宣教師「まぁそれを実践し、継続するとなると…それこそ途方のない道のりになるでしょうけど…」マゴマゴ

カロル「ボク、国のこと、よく知らないけど…みんなが仲良くなったらいいと思う!」

ラム「いや、それができないから苦労してるんだって?」

宣教師「ふふ…そうなれたら、この上なく素敵ですけどね?」クスッ

818: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 21:59:49 ID:snk7nMamVo
カロル「どういう国だったら、みんなが仲良くなれるんだろう…?」ウーン

宣教師「そうですねぇ…。やはり第一に自由が挙がるのでは?」

ラム「たとえばどんな?」

宣教師「無限の経験と豊富な知識を得られ、努力で叶えられる夢がある。
これらが約束された国であれば……私たちは本当の意味での自由を満喫できるのかもしれません」

カロル「…ヒメくんが作ろうとしてるのは、そういう国なの?」

宣教師「えぇ、なるべく不平等をなくそうと頑張っているみたいですよ?」

カロル「じゃあ王国はいつか自由な国になるんだね?」パァァ

宣教師「どうでしょうね…」

カロル「宣教師さま?」

宣教師「それを国政だけに任せきるのは無理な話です…」

カロル「? こくせい?」キョトン

宣教師「教団の代表として各地を回ってみて分かったことがあります」

ラム「なに?分かったことって?」

宣教師「…あらゆる環境が揃えられていても最終的にどうするかは自分で決めなければなりません」

宣教師「自分が本当に望んでいる物を見つけ、その為に努力する決断力がなければ…結局、社会を敵視して逃げ出すようになってしまいます」

宣教師「一度、塞ぎこんでしまった方は孤立してしまいます。弱い自分を隠そうと周囲を拒絶するのです」

宣教師「…そこから立ち直らせようと言葉をかけても傷は深まり、自ら向き合おうにも自信が持てず、最後まで救えなかった人も大勢いました」

ラム「…そんなの甘えだよ」

宣教師「まぁ…そう言ってしまえば、それまでなんですけどね」
819: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 22:03:15 ID:/HhXhL32IQ
カロル「うーん…」

ラム「どうしたんだい?」

カロル「甘えるのっていけないこと?」

ラム「へ?」

カロル「だって…甘えるのは誰かに頼りたいからでしょう?」

ラム「いや、自分のことなんだから自分でやらなきゃダメでしょ…」

カロル「でも自分でやれないこともあるよ?」

ラム「ま、まぁ…うん」

カロル「その人たちは誰も頼れなかったから誰も信じられなくなったんじゃないかな…」

ラム「……!」

カロル「ボクは甘えてもいいと思う。信じられるまで、いろんな人に?」

ラム「(…そっか。そういえば僕もそうだった)」

宣教師「キミらしい考えですね?」ナデリ

カロル「えへへー!ボクもお母さまに甘えてばっかりだもの」テレッ

ラム「…たしかにね。甘えたい時もあるかも」ボソッ
820: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 22:05:09 ID:snk7nMamVo
宣教師「何はともあれ彼がやろうとしている事は私たちの想像では計り知れないほどに過酷なんです」

ラム「僕らと手紙でやりとりしてた時は何も言わなかったのに…」

カロル「…ヒメくんはどうしてボクたちに甘えてくれなかったのかな」

ラム「……」

カロル「もしかしたら気付かないで一人きりにしてたのかも…」シュン

宣教師「いいえ、一人きりではありませんよ?」

カロル「……?」

宣教師「たしかにヒメくんにとって政は今すぐにでもやめてしまいたいほど辛い苦行だったことでしょう」

カロル&ラム「……」

宣教師「しかしキミたちと過ごした楽しい時間が励みとなり、キミたちと分かち合った喜びをヒントに新たな国の形を見いだしたのです」

ラム「僕らは別になにもしてないけど…」

カロル「そうだよ…。いっぱい迷惑かけちゃったし…」

宣教師「そばにいるだけが支えではないのですよ?」

カロル&ラム「……?」
821: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 22:07:35 ID:/HhXhL32IQ
宣教師「思い出が安らぎとなり、経験が次なる進歩の発展に繋がります」

宣教師「一つ一つの瞬間が私たちに成長をもたらし、一人一人の結び付きがさまざまな影響を及ぼしている…」

宣教師「そこに出会いがあるから善も悪も学び知ることができる。すべてのきっかけは人と人から始まるのです」

宣教師「だから生命は尊く、人によって紡がれる絆は美しい…」

宣教師「そしてキミたち自身も常に多くの絆を共有しているんですよ?」ニコッ

カロル「みんなと……」

宣教師「そうです。なので心配は要りませんよ?キミたちから貰った力を糧にヒメくんも多くの人々へ絆を広めているんです!」

ラム「…ちょっと難しいけど、なんだかホッとした気がするよ」

カロル「えへへ…うれしいな。ボクもみんなと繋がってるんだ?」テレッ

宣教師「そうです。みんな支え合って和となっているんです」ニコニコ
822: ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 22:14:10 ID:snk7nMamVo
ラム「話してる間に結構、歩いたね。灯りが増えてきたし…」スタスタ

宣教師「相変わらずどこに向かってるのか皆目見当も付きませんが…」キョロキョロ

カロル「あれ?行き止まりだ?」

ラム「えー…また引き返さなきゃだね」

カロル「…?」ピトッ

宣教師「どうしたんですか?」

カロル「……あ、やっぱり?」ハッ

ラム「なにかあるのかい?」

カロル「ほら、ここに模様がある?」ビッ

ラム「壁に…?あ、ホントだ!近くで見たら分からないけど……全体で見ると蛇の絵みたいだ?」ジーッ

宣教師「壁画でしょうか…。それにしても蛇とはまた悪趣味ですね」ゾゾッ

カロル「? ここ出っ張ってる?」グッ

ラム「なにしてるの?石でできた壁を押したってピクリともしないよ?」
823:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/7/14(木) 22:26:32 ID:/HhXhL32IQ
ズゴゴゴゴゴ………

カロル「わっ!?」ギョギョッ

ラム「か、壁がひとりでに開いた!?」

宣教師「まさか隠し扉…?」

カロル「隠し扉って?」

宣教師「そのままですよ。何かに擬態させたりして巧妙に隠された秘密の出入口です」

ラム「なんでそんなのが必要なのさ?」

宣教師「襲撃に備え、身を潜めたり誰にも悟られてはならない秘密を守る手段として使われるんです。
一定以上の立場を持った人達は大抵、こういった隠し通路や隠し部屋などを用いて安全にいられる場所を確保しているんですよ」

ラム「へぇ、こんな広い地下通路に隠し部屋まであるなんて……」

カロル「すごいや!わくわくするね?」

ラム「いや、探検しに来た訳じゃないんだから」

宣教師「こうした素晴らしい仕掛けを見ると少年の心が疼いてしまうものですよ?」

ラム「でもさ、たぶんここ……」

宣教師「えぇ、最後の最後に逃げ込むとしたら…他にないでしょうね」

カロル「はやく入ってみようよ!」キャッキャッ

ラム「はぁ…勝手に先走ったらダメだからね?」

宣教師「気をつけていきましょう」

カロル「はーい!」
824:遅い更新ですみません! ◆WEmWDvOgzo:2016/8/14(日) 22:31:18 ID:nXQmAoWB0E
―――地下迷宮(通路)―――

ダダダダダッ

西兵108「ヴゥエッ!!ハァッ!やっどおいづめだぞぉ〜!?」ゼェゼェ

西兵's「ヒィ〜ヒィ〜…」ゼェゼェ

レジスタンス11「ふ、袋小路だぞ!どうするんだ!?」ゼェゼェ

ヒメ「はぁ…僕に聞くな…!」ゼェゼェ

レジスタンス11「!? な、何も考えてなかったのか!?」

ヒメ「団長たちが加勢に来るまで持ちこたえれば…なんとかなる…!せいぜい足掻け!」

レジスタンス11「クソッ!王族ったって所詮はガキか!信用するんじゃなかったぜ!?」アセアセ

西兵108「さんざん走らせやがってぇ〜!粉々にしてやんよ!」ビキッビキィッ

レジスタンス11「万事休すか…!」

ヒメ「ちっ…!」ジャキッ

ドガガガガァァンッ!!

ヒメ&レジスタンス11「!?」

西兵108「あ゙!?」クルッ


賊徒26「うらぁ!どけどけぇ!!ならず者のお通りだぁ!?」ブンッ バシュッ

西兵109「な、なんだてめ……フギャッ!?」ズバァッ

ワァーワァーギャーギャー
825: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/14(日) 22:33:17 ID:nXQmAoWB0E
レジスタンス11「あ、あいつら…くたばってなかったのか!?」

ヒメ「あれも味方か!?」

レジスタンス11「おう!だが、あの手勢じゃ、この数の兵を相手には…!」

ヒメ「…いや、そうでもないぞ!」ジッ

レジスタンス11「あぁ!?無理だろ!?さっきだってボロ負けしてトンズラこいたんだぜ!?」

ヒメ「見てみろ!」ジーッ

レジスタンス11「……?」

バキッ ガンッ ゴッ ボキィッ

レジスタンス11「お、押してる…?な、なんでだ?さっきは……」

ヒメ「必死に逃げたのも、あながち無駄じゃなかったかもな!」ニヤッ

レジスタンス11「はぁ…?」

ヒメ「僕らもやるぞ!」ザッ

レジスタンス11「お、おい!本気か!?」

ヒメ「付いてこい!」ダッ

レジスタンス11「ちぃっ!付き合いきれんがやるしかないか!!」ダッ
826: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/14(日) 22:35:46 ID:nXQmAoWB0E
西兵108「ぐらぁっ!?なにじでんだぁ!!ざっさどやらねぇがぁ!?」

西兵111「ヒィっヒィっ…も、もうヘトヘトだぁ…」ゼェゼェ

西兵112「こんなジメジメした暗がりで走らされてヘバっちまったよぉ…」ゼェゼェ

西兵113「夜中っから、ずっと動きっぱなんだぜぇ…?もう身体がガタガタだよぉ…!」ゼェゼェ

賊徒27「なんだ、こいつらぁ!!ちょれーぞ!?」ブンッ ガスッ

賊徒28「なんか知らねーが、こっちのモンだ!!」ブンッ ドカッ

賊徒29「へへへ!あのガキに治療されてから妙に身体が軽いぜ!」ブンッ バコッ

西兵's「グギャアアアアア!!」バタバタバタッ

西兵108「グゾォ〜…おめぇら、ぞれでも女王の親衛隊がぁ!?」ワナワナ

ヒメ「おい!」ザッ

西兵108「おぉう!?」ギロッ

ヒメ「こいつらの首領格はおまえか?」ジャキッ

西兵108「で、でめぇの仕業かぁ!!クソガキがぁ〜!?」

ヒメ「武器を捨てて全員に降伏を促せ?そうすれば命は保障してやるぞ!」ジリッ

西兵108「ギガァァァアアア!!」ブンッ

ガンッ!!

西兵108「ヒヒ……んが?い、いねぇ?」キョトン

ヒメ「ここだよ」トンッ

西兵108「ケェイッ!?」バッ

ヒメ「遅い!!」ヒュンッ

西兵108「うっ!?」ビクッ

ヒメ「力任せのおざなりな剣技だな。それじゃ僕は殺せないぞ?」ピタピタ

西兵108「で、でめぇ…いつ後ろに!?」ワナワナ

ヒメ「次は振り抜くからな?」ジロッ

西兵108「う、ぐぐ!」プルプル
827: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/14(日) 22:37:29 ID:ikW458cjLg
ヒメ「これが最後だ。よく聞け?」

西兵108「ぐぎぎ…きき!」ギリッ

ヒメ「死にたくなかったら降伏しろ。無駄に死人を増やしたくない」

西兵108「だ、だぁれがでめぇの言うことなんか…!?」

ヒメ「…おまえたちの主君、ファルージャの命も奪わないと約束する」

西兵108「でめぇ気安く女王を呼び捨てんじゃねぇぞ!?」

ヒメ「上の戦いも決した。残るはおまえらだけだが…勝ち目がないのは分かるだろ?」

西兵108「ん、だどぉ…!?調子に乗りやがってぇ…!?」

ヒメ「無謀な真似はよせ」

西兵108「あぁん!?」

ヒメ「おまえがいなくなったら誰がファルージャを守ってやるんだ?」

西兵108「!?」

ヒメ「本気で尽くしたいなら生き残って、そばにいてやるのが真の忠心じゃないのか?」

西兵108「お、おでが…女王のそばに…!?」

ヒメ「そうだ。彼女には、おまえが必要だろ?」

西兵108「……お、おでが…女王を……揉んで、舐めて、ウヒ!うへへへへ…!?」ニタァァァ

ヒメ「…こほんっ!」

西兵108「ホゲッ!?あ、あぁぞうだ?ほ、ほんどに女王にゃ何もしねぇんだな?」アセアセ

ヒメ「あー、僕は約束を破らない。絶対にだ」シラー

西兵108「わ、わがった…。女王を守れんなら……」
828: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/14(日) 22:37:51 ID:nXQmAoWB0E
ヒメ「よし!レジスタンスも止まれ!!」

レジスタンス11「あぁ!?今イイとこだろうよ!?」ブンッ ズバッ

ヒメ「おまえの気分なんか知るか!いいから仲間を止めろ!!」

レジスタンス11「おい…!勘違いすんなよ…?俺たちはてめぇの手下でもなんでもねぇぞ…!?」

ヒメ「……」

レジスタンス11「いつまでも黙って従うと踏んでんなら大間違いだぞ…!?」

ヒメ「おまえ、何しに来たんだ?」

レジスタンス11「はぁ…!?決まってるだろ!俺たちの尊厳を勝ち取る為だ!!」

ヒメ「それなら無駄話するな!!」

レジスタンス11「」ビクッ

ヒメ「おまえが無駄にした1秒が何千人を殺すか考えろ!!刹那の遅延も許されない状況だぞ!?」

レジスタンス11「ぐぅぅ…!」

ヒメ「さっさと止めろ!!勝負の際を見誤るな!?」

レジスタンス11「あぁ分かったよ!クソ生意気なガキめ!今に見てろよ…!?」ブツクサ
829: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/14(日) 22:38:42 ID:ikW458cjLg
賊徒26「おぅい!?どうなってんだ!なんで止めやがった!?」

賊徒27「そうだぜ!こちとらイケイケでいってたじゃんかよ!?」

賊徒28「あとちょっとで奴らをぶっ殺せたんだぞぉ!!」

レジスタンス11「うるせぇんだよ!!いいから黙っとけ!?」

ワァーワァーギャーギャー

西兵112「なぁんだって俺らが、あんな泥虫相手に降伏せにゃならんのだ!?」

西兵113「そうだ、そうだ!!まとめてぶちのめしてやりゃいいんだ!!」

西兵114「ヒヨってんのか?あぁゴラァ!?」

西兵108「うるぜぇぞ!!でめぇからぶっ殺されでぇか!?」

ワァーワァーギャーギャー

ヒメ「(…こいつら、やっぱり同じ西国民だな。やりとりに知性が感じられない)」シミジミ
830: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/14(日) 22:40:53 ID:nXQmAoWB0E
レジスタンス11「で、止めたはいいがどーすんだ?押さえつけてられんのも時間の問題だぞ!?」ギロォォッ

西兵108「ゴイヅらを皆殺しにずりゃ〜いいのが!?」ギロォォッ

レジスタンス11「あぁなんつったぁ!?」ズイッ

西兵108「おぉう文句あっがぁ〜!?」ズイッ

バチバチ バチバチ

ヒメ「やめろ。せっかく止めたのに争ってどうする?」

レジスタンス11「けっ!んなら、さっさと言わねぇか!」

西兵108「武器は捨ててやっだぞ!あどはどーすりゃいい!?」

ヒメ「上に戻って団長たちに西国側との休戦を伝えてくれ」

レジスタンス11「きゅ、休戦だぁ〜?」

ヒメ「西の兵たちも形だけで構わないから捕虜を装って降伏の意を示し、レジスタンスに倣って停戦を訴えるんだ」

西兵108「待てやぁ!?なんでおで達が、ごんなクソゴミ共や王国のクソッタレに従わなきゃ……」

ヒメ「我慢しろ。ファルージャを救えるかは、おまえらに懸かってる」

西兵108「っ……お、おう…」ゴクッ

レジスタンス11「そ、そんなんで、どうにかなんのか?」

ヒメ「なるさ。おまえ達にしかできない詰みの一手だ」

レジスタンス11「はぁ〜?」シラー

ヒメ「分からないなら黙って僕の言うことを聞いてろ」

レジスタンス11「くっ…!言わせとけば…!?」ピキッ

ヒメ「これでおまえらの勝利が確定するんだ。素直にしろよ?」

レジスタンス11「勝利っ……気に入らねぇが言われた通りにしといてやるよ…!」

ヒメ「頼んだぞ!」

ザッザッザッ………

ヒメ「……単純な奴らで助かった」ボソッ
831: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 22:52:03 ID:g5X5idGIPQ
ヒメ「ふぅ……」スーハー

ヒメ「……」キョロキョロ

ヒメ「(結構経ったし誰もいないよな?)」

ヒメ「よし…!よし!よぉし!!」ガッツポーズ

ヒメ「勝った…!勝ったぞ!!」ググッ

ヒメ「(あとは団長たちが報せを受けるのを待つだけだ!それでこの戦争は決着する!!)」

ヒメ「あいつらにも伝えてやらないとな!」ルンルン

「どなたかを探しておいでか?」

ヒメ「」ビクッ

カツンカツン

ヒメ「な、なんで……おまえが……」

フィクサー「ずいぶんと浮かれたご様子だが…なにか良きことでもござったか」ジリッ

ヒメ「フィクサー…!」

フィクサー「お覚悟を…」ジャキッ

ヒメ「どういうことだ!?上で戦ってたんじゃ……」

ヒュオンッ

ヒメ「くっ!!」スラッ

ガァンッ!!

ヒメ「ぎゃっ!?」ドタッ

フィクサー「こんなものか……」チャッ

ヒメ「な、なんで……」ヨロッ

フィクサー「生ぬるい…。その程度の力で、わたしを下そうと言うのか?」フゥッ

ヒメ「!?」イラッ
832: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 22:54:34 ID:1.Ek.8qzag
ヒメ「おまえこそ!指揮官が戦場を放り出して来たのか!?」ムクッ

フィクサー「配下に任せてこそこそと動き回る子ネズミがほざけた義理か?」

ヒメ「曲がりなりにもおまえの為に戦っている兵士たちを捨ててきたのか!?」

フィクサー「捨てる…?ハッハハ……心外この上ない」

ヒメ「どれだけ数で圧倒しても支柱を失った兵の末路は目に見えてる!軍を扱う者ならば何よりも分かっている筈だ!!」

フィクサー「ご忠告かたじけのう存じます…が、まぁ心配ご無用。しかと踏まえておりますゆえ」スチャッ

ヒメ「……!」

フィクサー「畏れながら案ずるべきは己の身では…?」

ヒメ「くっ…!」ガッ スチャッ
833: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 22:57:59 ID:g5X5idGIPQ
ヒメ「僕を…どうする気だ?」ブルッ

フィクサー「悟れぬほど愚かでもございますまい?」

ヒメ「よせ…!もう十分に戦った筈だ!ここで止めなかったら本当に全ての国を巻き込むことになるぞ!?」

フィクサー「狂信的な平和主義、恐れ入る…。しかしわたしはそれを望もうとは思わない」

ヒメ「どこまでやるんだよ…!大義のない、ただの殺し合いを…!?」

フィクサー「どこまでも…」

ヒメ「……!」ギリッ

フィクサー「いや、おっしゃる通り戦争において最も傾けるべき置き所は大義であると心得る…」

ヒメ「道理を外した卑劣漢が今さらぬけぬけと…!?」

フィクサー「そして大義を押し通すには圧倒的な力がなくてはならない」

フィクサー「力の在処を示せば自然と力は呼び寄せられる」

フィクサー「故に力の証明こそが、それ即ち大義と認められるのだ」

ヒメ「誤った力の使い道は破滅を招くだけだ!!いい加減、目を覚ませ!!」

フィクサー「存外、惜しいものです…。高い地位に恵まれ、秀でた才を生まれ持ちながら思考が凡夫と変わりないときている」

ヒメ「見下した気になっていれば高みを望んだ気分にでもなれるんだろうが…僕からしてみれば、おまえらのような俗物が描く野心ほどちっぽけな物はないぞ!?」

フィクサー「ほう…わたしの野望が、ただおとなしく過ごそうという退屈な思想に劣ると?」

ヒメ「平穏を維持する…。たったそれだけの事ができないヤツに平和思想を笑う資格はない!!」

フィクサー「臆病風に吹かれた虫けらの戯れ言だな。挑戦しようという気概もないか」

ヒメ「なにが挑戦だ!!ふざけるな!?」
834: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 23:02:10 ID:g5X5idGIPQ
ヒメ「おまえが殺戮の限りを尽くした…この西国の惨状を知ってるのか!?」

フィクサー「なぜ知る必要がある?わたしには関わりなきことだ?」

ヒメ「僕たちが引き起こしたんだぞ!?」

フィクサー「は…?」

ヒメ「この戦争に巻き込まれた町々が焼かれ、人々が惨殺と略奪の憂き目に遭った!!
食糧も資産も労働力も没収され、荒廃した街に取り残された、かよわく無力な老人や乳飲み子が今も飢えて死んでるんだぞ!!」

フィクサー「あぁ、死ぬるがよかろう。大道に犠牲は付き物だ」

ヒメ「大道だとか野望だとか…カッコつけた言葉で正当化するな!!」

フィクサー「ふん…」

ヒメ「その犠牲に見合うだけの価値が、この戦いにはあるのか!?」

ヒメ「おまえが勝手に決めた正義に本気で続いていける味方がどれだけいる!?」

ヒメ「何十年も守られた平和を壊した責任がおまえに取れるのか!?」

フィクサー「責任…?」
835: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 23:05:54 ID:g5X5idGIPQ
ヒメ「戦争が終結したとして、その後の未来をきちんと見据えているのか!?
そこに住まう一人一人が戦争は正しかったと言えるような国家がおまえに創れるのか!?」

フィクサー「そんな物を抱える気はない」キッパリ

ヒメ「……!?」

フィクサー「これより時代は荒れ果てた戦乱の世に突入する。それが何十年続くかは分からんが……」

フィクサー「いかなる敵が立ちはだかろうとも捩じ伏せ、勝利の栄冠を勝ち取ってみせよう」

フィクサー「わたしの予測では15年もあれば国家を統一し、大陸の覇者となれる」

フィクサー「そこが一段落すれば海を渡り、更なる開拓を目指すとしようか」

フィクサー「わたしの治める世界は無限に広がる…。貴様のように縮こまった思想しか持てぬ愚か者には成せぬ所業だ」

フィクサー「ゆくゆくは万民がひれ伏す王となりて世界統一の創世記を飾ろうではないか?」

ヒメ「この…救いようのない大馬鹿が…!」ワナワナ

フィクサー「これを成し遂げられるは力ある者のみ……ふ!まさしくわたしにこそ託された天命であろう!」

ヒメ「狂ってるな…!いつからそんな夢見がちになったんだ…!?」

フィクサー「これは預言……そう、神々が与えし命題。語りかけてくる…。わたしは神の導きに尽くそう」

ヒメ「(自己陶酔が過ぎて、とうとう妄想まで持ち込んできた…。こうなったら何を言っても無駄だ!)」
836: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 23:09:24 ID:1.Ek.8qzag
フィクサー「クク……全てを手にした暁には妃の心も染まることだろう。
わたしだけにとらわれ…わたしだけを見つめ…わたしの物となる」ボソッ

ヒメ「りゃあっ!!」シュバッ

フィクサー「!」キィンッ

ヒメ「」ビュンッ

フィクサー「ちっ!」ガィンッ

ヒメ「」シュタッ

フィクサー「無粋な…まだ会話の途中だろうが?」シュタッ

ヒメ「おまえの痛々しい妄想話をいつまでも聞いてられるほど寛容じゃないんだよ!」イラッ

フィクサー「なんとでも言え。実現させれば誰もが我が前に控える。
恩恵にあやかれると感じれば憎悪さえ忘れてしまうのが人という生き物なのだから」

ヒメ「ふん!もう遅いさ!」

フィクサー「なに…?」

ヒメ「おまえが来る前に先手を打たせてもらった!既に勝利は確定してるんだ!」

フィクサー「話が読めんな…?」

ヒメ「レジスタンスと西の帝国側に合議を持ち掛けて休戦を成立させた」ニッ

フィクサー「……!」ピクッ

ヒメ「腐っても名だたる軍長を押さえて王国軍の総指揮を務めた知将だ。当然、この意味が分かるよな?」

フィクサー「なるほど、そうきたか…」

ヒメ「軍略家のおまえには思いもよらなかったか?」

フィクサー「いや、この程度の画策は常套手段だ。開戦後に打つ手としては諸刃だがな」

ヒメ「踏み切るのは容易いさ。政略の点では立場上、僕の方が何枚も上手だからな」

フィクサー「だが休戦を成立させるには女王の言質が要るだろう。勿論、直接の交渉は済ませてあるのだろうな?」

ヒメ「……あぁ、双方の合意は取ってある」

フィクサー「そうか…」
837: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 23:13:23 ID:g5X5idGIPQ
ヒメ「これで分かっただろ。もはや争いは無用だ。僅かでも武人としての誇りが残ってるなら兵士達の命を尊重してやれ」

フィクサー「わたしに降伏を受け入れろと?」

ヒメ「そうだ!今なら、まだ内々に処理できる。無駄に命を散らさなくてもいいんだ!」

フィクサー「ほうほう、なるほど…」チャッ

ヒメ「男らしく腹を決めろ…!くだらない野心にとらわれるな!?」

フィクサー「断る」ザウッ ビュンッ

ヒメ「えっ……」ピッ

ヒメ「ふ…ぐっ……」プシャッ

ヒメ「う…ぁぁぁああああ!!」ブシャァァ

フィクサー「貴様こそくだらぬ嘘はよせ?」ニヤッ

ヒメ「いった…い…!あう……ぐぅぅぅ!!!」ボタボタ

フィクサー「おめおめと負けを認め、申し出を受け入れるなど…気高く美しい我が妃に限ってありえまい?」

ヒメ「お、まえ…!なにを…!?」ガシッ

フィクサー「彼女こそが唯一わたしと並び立つに相応しい女性なのだから」

ヒメ「〜〜〜!?」ギュウウ

フィクサー「しがみつくな」ドンッ

ヒメ「うあっ!?」ドタッ

フィクサー「クク…おおかた女王の親衛隊を言いくるめ、西国側の代理として進言させようとでも企んでいたのだろう?」

ヒメ「う……」ヨロッ

フィクサー「悪くない策だ。賭けとしては十分に成立するが…とんだ誤算が生じたな?」

ヒメ「はぁ!くそ…くそ…くそぉ…!!」ギリッ
838: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 23:15:57 ID:g5X5idGIPQ
フィクサー「丁度いい。貴様の首を持ち帰り、女王自らに訂正の旨を伝えさせれば苦労して案じた計略も雲散霧消するだろう」

ヒメ「ハァァッ!!」ヒュンッ

フィクサー「おっと」サッ

ヒメ「うぐ…!」バタッ

フィクサー「多少は健闘したが詰めが甘かったな」ズシッ

ヒメ「ぎぃ…くぅぅ」ズリッ

フィクサー「貴様の始末を優先して正解だった…。預言者の勘もまだまだ衰えていなかったようだ」グリグリ

ヒメ「ぎ、あぁぁぁ…!!」ジャリッ

フィクサー「が、何より単純に腸が煮えくり返っていたのだが…な!!」グンッ

ベシャアッ!!

ヒメ「」ピクピク

フィクサー「じっくりといきたかったが、もはや猶予をもたせるゆとりもなし…これまでにしよう」ジャキッ

フィクサー「さらば…幼き国王よ、平和にしがみついた惰弱として歴史の狭間に埋もれるがいい」バッ

フィクサー「」ヒュオンッ

ガシュッ!
839: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 23:19:47 ID:g5X5idGIPQ
フィクサー「……」

フィクサー「ぶ……」ゴポッ

フィクサー「……!?」ドロッ

フィクサー「な…んだ、と」ヒクッ

フィクサー「うっぐ……かだぁぁ!!?」クルッ ブンッ

ガキィィンッ!

フィクサー「ぎ、さまぁ…!?」ギンッ

団長「ふぅ…う!間に合ったな!」ギギギッ

フィクサー「がぁぁっ!!」ギャリンッ

団長「うぬ…!」タンッ

フィクサー「なぜだ…!?」ゼェゼェ

団長「はぁ…!陛下の身を最優先するは家臣たる……いや、忠臣たる務めよ!!」ググッ

フィクサー「足止めを命じた兵は…!?」プルプル

団長「大義を見失った者らにワシが止められると思うか!?」

フィクサー「ぐ、く……たかが私兵の分際で…よくも、げぅふっ…!」ゴフッ

団長「背中を切るのは武人の名折れだがやむを得まい…!陛下の命には代えられんからな!」ゼェゼェ

フィクサー「ちぃっ!!くそっ…がはあぁっ!!」ゴホゴホ

団長「今こそ成敗してくれるぞ!!覚悟は決まったか、フィクサー!?」
840: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 23:23:44 ID:1.Ek.8qzag
フィクサー「はぁぁああ!!!」ヒュオンッ

団長「ぬぅりゃあああああ!!」ブォンッ

ガァンッ ギンッ ガッ キキンッ

フィクサー「ふっ!はぁぁ!う゛う゛あ゛あ゛あ゛!!!」ガガッ ガガンッ

団長「ぐぬ…!だぁぁああ!!!」ガィンッ キキンッ

フィクサー「うぐ!?」ザシュッ

団長「ぬぅ…!!」プシャッ

フィクサー「はぁぐ…!」ボタボタ

フィクサー「(血が…止まらん…!)」

団長「傷の度合いは五分といったところか…!これでようやく…正々堂々とやり合えるな?」ニィィッ

フィクサー「(まず、い…まずい!このままでは……このまま……では)」ハァハァ
841: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 23:28:00 ID:g5X5idGIPQ
団長「これまでだっ!!」ブォンッ

フィクサー「邪魔立てするなぁっ!!」ヒュオンッ

団長「っ…粗いわぁ!!」ガキンッ

フィクサー「く……」シュタッ

フィクサー「(弾かれた…!やはり腕力の上では分が悪い…!)」ジンジン

フィクサー「(身体が思うように動かん…!!速度が…足りない!)」ズキッ

フィクサー「(やられる…!このままこの男とやり合うのは得策ではない…!だが今やらねば……ヒメを討ち取る機会が…!?)」

団長「神妙にせいっ!!」ブォンッ

フィクサー「っ!?」ピシャッ

団長「しぶとい奴め…!」ジリッ

フィクサー「がはっはぁっ!!」ゴホゴホ

フィクサー「〜〜〜!!」タラー

フィクサー「おぅぐ!!な、ぜだ…!!なぜ…!!」ゴホッ

フィクサー「なぜ…思い通りにいかない…!?」ブチィッ

団長「なおも足掻くか…!?」

フィクサー「ウアァァァアガアァァアアアアア!!!!」ブンッブンッ

団長「なっ…!?」ビクッ
842: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 23:29:36 ID:g5X5idGIPQ
フィクサー「アァァァ!!なんだ!これは!?なんなんだ、これはぁぁ!?」ボタボタ

団長「な、なんだ…!?」メダパニ

フィクサー「預言にはなかった!!あってはならない!!」ググッ

フィクサー「ごんな…無様な……わだしが…世界の中心にあるわらじが……ボヘァッ」ゴパァッ

フィクサー「きざまぁ……なにをしたかわがっでいるのが…!?」ギロォッ

団長「……?」ゼェゼェ

フィクサー「損失だ!!ごの才能が使い果たされるごとなぐ終わるのは……大いなる損失だぁっ!!」ガァーッ

団長「……なにを、言っとるんだ、お前は…?」ゼェゼェ

フィクサー「はぁっ…ゔばぁっ…!!馬鹿ばかりだ!!なんにもわがっでない!!なぜわがらない!?」ギリッ

フィクサー「戦争は必要だ!!改革が必要だ!!わたしが必要なんだぁ!!」ヨロッ

フィクサー「わたしが世の覇者となり……世を手にする!!それが真理だろうがぁ!?ちがうかぁ!?」

団長「……」

フィクサー「国も民も論も法も資本も必要ない…!わたしが…わたしによる、わたしの為の……わたしで、いいんだ……ウブッ!!」ゴホッゴホッ

団長「…始末におえん。本物の馬鹿だ」
843: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 23:32:42 ID:g5X5idGIPQ
フィクサー「グェッ!!ゲェフッエフッ!!」ゴボゴボ

団長「いいか、馬鹿者が?これだけは言っておくぞ?」

フィクサー「フゥ…グフゥ〜…!」ゴホッゴホッ

団長「民が真に欲している物……それらを誰より理解しておられる方は我が王を置いて他にない!!」

フィクサー「〜〜!?」ビキィィッ

団長「私欲に溺れ、不用意に混沌を招いた貴様ごとき国賊の出る幕などないわぁっ!!」

フィクサー「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」ブンッ

団長「貴様のツラは見飽きたぁ!往生際よく討たれろ!外道があぁぁあっ!!」ブォンッ

ズバァァァッ!!

フィクサー「ア゛…あ……がふっ!!」ブバァッ

フィクサー「ぐ……がはぁ」ドシャッ

団長「…陛下の下された苦渋の決断、民の心に渦巻く喪失、そしてワシの怒りをとくと味わえ!!」カッ
844: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 23:34:20 ID:1.Ek.8qzag
ヒメ「」ダラァァァン

団長「」ハッ

団長「陛下!!」ガバッ

ヒメ「」ピクピク

団長「……!なんとむごい!許せん…!?」ギリッ

団長「一刻も早く小童に癒してもらわねば!いったいどこに…!?」キョロキョロ

団長「えぇいっ!仕方あるまい!!」グワッ

ヒメ「」ポスッ

団長「うっ…!」ボタボタ

団長「なんの…これしき!!」ギュゥゥッ

団長「死ねん…!陛下を…お救いするのだ…!ワシは……」フラッ

団長「ど、こだ…!小童ぁ…!?」ヨロヨロ


タッタッタッ………
845: ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 23:37:40 ID:1.Ek.8qzag
フィクサー「」ピクッピクッ

フィクサー「う、ごぉぇ……」ジャリッ

フィクサー「ま、だ……ぐふぉっ」ゴパァッ

ビチャッビチャッ

フィクサー「わ、たし……は、わたし…こそが…えらばれ、し……もの!」ググッ

フィクサー「っ……!」ズシャッ

フィクサー「(ば、かな……死ぬのか…こんな、ところで…潰える…のか)」ハァハァ

ジャッ

フィクサー「」ピクッ

魔導師「お困りかい?」

フィクサー「お、まえは……」

魔導師「なぁに?通りすがりの大魔導師様さ?」ニヤニヤ

フィクサー「きさきの…そっきんか」ゼェゼェ

魔導師「妃?なに勘違いしてんの?女王は誰の物でもない。女王自身の物さね」

フィクサー「ぐっ…!」

魔導師「見たとこぼろ負けしてへたばっちゃってる感じかい?
自慢気に武勇を語ってたクセに情けない。女王の気を惹けないわけだよ」

フィクサー「あざ、わらいに…きたのか……それ、とも」

魔導師「んふ…死にかけでも、そのくらいの予測はつくか。まぁご名答」

フィクサー「さっ…さと、よ、けん…を……いえ」

魔導師「うん、今にもくたばりそうだし、そうしようかね」ゴソゴソ
846:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/8/23(火) 23:41:41 ID:g5X5idGIPQ
魔導師「そう悪い話でもないから心配は……ん、あったあった」ゴソッ

フィクサー「……?」

魔導師「これはキヌプスの根を素にあらゆる動植物の効能を配合して作った秘薬」ジャーン

魔導師「それをこの治癒の魔溶液と組み合わせて飲むと……」キュポッ

魔導師「ちょっとした延命効果が期待できる優れものなんだよねぇ…」ポチャッポチャッ

魔導師「さてさて、さてさて、さてさてと……どうす」

フィクサー「つかえっ!!」

魔導師「即答かぁ…大声出すからビクッとしたよ」

フィクサー「ごへぇっ!!う゛っふ!!はやく、しろ……」ゲホゲホ

魔導師「はいはい、そう急かすんじゃないよ……口、あけて」クイッ

フィクサー「あ……」カパッ

魔導師「よしよし、いい子だねぇ…?たーんとお飲みよ?」ドボドボ

フィクサー「ばっぶ!ぶぐぐ!!」ゴキュゴキュ

魔導師「ちょっとしたら、えげつない苦痛が襲うだろうけど…まぁ辛抱強くね?」ドボドボ

フィクサー「」ズシャッ

魔導師「君なんかすこぶるどうでもいいんだけど…女王が危ない訳だから」ポイッ

パリンッ

魔導師「せいぜい役に立ってもらうよ?どーせ後遺症に苦しんで死んじゃうけども?」

魔導師「んふふ…待っていておくれ、女王。今、行くから…」

魔導師「ぜんぶ終わったら、ずっと、ずっとそばにいてあげる…」ニィィッ
847: ◆WEmWDvOgzo:2016/9/20(火) 21:40:23 ID:loRd6VWyX.
自主的に保守!
まだ待っていてくださってる方がいたら申し訳ございません
必ず完結させますm(__)m
848:名無しさん@読者の声:2016/10/2(日) 20:14:33 ID:YLpMofwbjo
保守!頑張れ作者!
849: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/3(月) 22:20:14 ID:1xWFuB2HZQ
>>848
遅れてすみません!ありがとうございます!
もう少しでまとまりそうなので、あとちょっとだけお付き合いいただけたら幸いです!
850:お待たせしてすみません! ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:38:31 ID:6FAwtITC1A
―――地下迷宮(隠し部屋)―――

ファルージャ「」スゥー

ファルージャ「」パッパッ

モワモワモワ

ファルージャ「……」ジュッ

シュウウウウ………

ファルージャ「…」ガッ

サクッ クルクル キュポンッ

トクトクトク

ファルージャ「ンッ……」グビッ

ファルージャ「」ゴキュッゴキュッ

ファルージャ「フゥ〜…」カランッ

ファルージャ「」ポイッ

パリンッ!

ファルージャ「……」
851: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:40:56 ID:EZ0/NsJFHM
ザッ

ファルージャ「ン…」チラッ

カロル「やっぱりここにいたんだね…」

ラム「やっと見つけた」

宣教師「もう逃げ場はありませんよ」

ファルージャ「…生きておったか」クスッ

ラム「ケホッ!煙た……密室でなに焚いてんの?」コホッ

ファルージャ「はてさて……庶民には手の届かぬ旨味であろうな」

宣教師「有害な煙と無造作に転がる酒瓶があなたの贅沢ですか…。荒みきってますね」

ファルージャ「美意識のない者にこれらの価値は分かるまい…。やはりそなたとは気が合いそうにないわ」

宣教師「そうでしょうか?少なくともその意見のみで言えば……私とあなたはとても通じ合えていると感じますよ」

ファルージャ「フ……皮肉がお上手だこと」クスッ
852: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:42:46 ID:EZ0/NsJFHM
宣教師「あまり時間がないので簡潔に言います」

ファルージャ「ほう…地位も持たぬ他国民風情が帝に何を申し付けようというのか」

宣教師「今、ここで敗北を認め、投降しなさい」

ファルージャ「またそれか…。そなたの執念には畏れ入るぞ」

宣教師「西の国が降伏を受け入れた暁には王国軍はこれを無条件で承諾し、軍を撤退させると誓いましょう」

ファルージャ「フゥン…さようか…」

宣教師「聞き流すのは勝手ですが…これは最後通告ですよ」

ファルージャ「(爪の塗料が薄まっておるな。後でシャルウィンに……ああ、もうおらぬのだったか)」ボーッ

宣教師「帝都を押さえられ、宮殿まで攻め込まれ、地下に追いやられ、隠れ蓑さえ暴かれた現状……そろそろ窮地だと理解した方がいいですよ」

ファルージャ「如何様にでもなろうさ…」

宣教師「過信は身を滅ぼしますよ…」

ファルージャ「フン…なんの権限があって妾に指図しておるのだえ?」

宣教師「…私はただ国王の意向に基づいて停戦を促しているまでですが」

ファルージャ「しからば国王を呼ぶがいい。そなたでは話にならぬ」

宣教師「そんな時間はないと申し上げた筈です」

ファルージャ「なぜ妾がそちらの事情に付き合わねばならぬのじゃ?」

宣教師「……」

ファルージャ「下がれ、目障りよ」シッシッ

宣教師「失敬…言葉を間違えました」

ファルージャ「ハァン…?」

宣教師「これは要望などではありません。命令です!」

ファルージャ「ほぉ…?」ニヤニヤ

ラム「」スチャッ

カロル「」オロオロ
853: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:44:30 ID:EZ0/NsJFHM
宣教師「あまり手荒な真似はしたくなかったのですが…まともな対話は難しそうですね」

ラム「最初から話の通じる奴だなんて、これっぽっちも思わなかったけどね」

カロル「ら、乱暴はよくないよ!ちゃんと話せば分かってくれるかも!」オロオロ

ラム「……」ジロッ

カロル「」ビクッ

ラム「宣教師さんも言ってただろ。時間がないんだよ」

カロル「あう……」

宣教師「少し気を失わせるだけです。身柄を確保出来れば交渉は十分に成立するそうですから」ポンッ

カロル「……」シュン

ファルージャ「クスス…滑稽さな」クスッ
854: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:46:00 ID:6FAwtITC1A
ラム「僕と同じで死なないんだろ。じゃあ痛くしても平気だよね」チャキッ

ファルージャ「フゥ…」ムニュッ

宣教師「(胸に手を入れた…?)」

ファルージャ「煩わしい…」スッ

ラム「なにそれ?」

ファルージャ「可愛い配下より護身用にと渡された邪香よ」

ラム「ジャコウ…?」

宣教師「……!」ハッ

ファルージャ「ひとたび嗅げば香りを確かめる間もなく息を引き取る程の殺傷力だそうな」ニィィィ

宣教師「(最奥の拷問部屋で使われた毒と同じモノ…!)」ゾクッ
855: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:47:21 ID:EZ0/NsJFHM
ファルージャ「たとえ僅かなれど……逃げおおす時は稼げよう」

ラム「ふん…僕とカロルくんはそんなの効かないよ」

ファルージャ「承知の上よ。じゃが…そのおなごはどうする?」

宣教師「くっ…!」ギリッ

ファルージャ「犠牲はやむ無しと割りきれるか。己らの振りかざす正義は醜いものよなぁ」クスクス

ラム「っ…」

宣教師「悪あがきはよしなさい!その場逃れではどのみち凌げませんよ!」

ファルージャ「勘違いするな。妾はただ…そなたらに権利を与えてやっているまでよ」

ラム「権利…!?」

ファルージャ「そのおなごを捨てるか、妾の前から消え失せるか…選ばせてやろうぞ」

ラム「……!」ゴクリ

ファルージャ「クスス…どうじゃ?妾は寛大であろう?」ニヤニヤ
856: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:49:35 ID:6FAwtITC1A
宣教師「そ、そんな物を放出したらあなただって無事では済まないでしょう!」

ファルージャ「普通であればな。されど妾には不死の肉体がある…」ニタァァァ

カロル「……!」

ファルージャ「これまで数えきれぬ貢ぎ物を受け取ってまいったが……そなたの贈り物は実に気に入っておるぞよ?」ニヤニヤ

カロル「」プイッ

宣教師「なにが贈り物ですか…!彼の気持ちを踏みにじった上、拷問にまでかけておいて!!」カッ

ラム「宣教師さん、ここは一旦退こう!」ガシッ

宣教師「お構い無く!このような傲慢女の卑劣な仕打ちに屈する謂れはありません!」

ラム「け、けど…そしたら」

宣教師「時間がないんです!ここを逃したら、また大勢を犠牲にしてしまいますよ!」

ラム「〜〜〜!」

宣教師「君が止めても私はやりますから…!」ザッ

ファルージャ「それでよいのであれば妾とて遠慮はせぬぞ」グッ

宣教師「やれるものならやってみなさい!そんなことをしてもあなたは破滅を歩むだけです!」

ファルージャ「クスス…楽しみじゃな。そなたのもがき苦しむサマをじっくり堪能するとしよう…?」クイッ

ラム「まっ…」

カロル「やめて!!」

ファルージャ「」ピクッ
857: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:51:56 ID:6FAwtITC1A
シーン

宣教師「……!?」クルッ

ラム「カロルくん…」

カロル「そんなこと、しなくていい…しちゃダメだよ」

ファルージャ「……」ジッ

カロル「二人はヒメくんを探してきて」

宣教師「で、ですが…」

カロル「やっぱりよくないよ。暴力でおどかしたって納得できる筈ないもの…」

ラム「君が話したところで何ができるのさ…。こいつには言っても無駄だよ」

カロル「それならまた違う方法を考えるしかないよ。戦ってる人間たちに呼び掛けてみてもいいし…」

ラム「同じだよ!そいつらも結局、大きなきっかけがなかったら変われない!」

カロル「……」

ラム「君がしてることは思いやりなんかじゃない!単なる自己満足だ!」

カロル「っ……」
858: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:53:29 ID:EZ0/NsJFHM
ラム「たしかに僕も宣教師さんもヒメも…教団も王国も変わったよ!君が訴え続けたから!」

ラム「だけどそれもきっかけがあったからだ!全部が全部、君のおかげじゃない!」

ラム「この国と僕たちはお互いをなんにも知らないんだ!そもそも説得できるような環境がないんだよ!」

カロル「…分かってるよ。ボクのおかげだなんて思ってないもん」

ラム「は…!?じゃあなんだって言うのさ…!」

カロル「同じ世界に生まれて、変わらない時間を過ごして、みんな幸せを夢見て生きてる」

ラム「……!?」

カロル「たくさん違いはあるけど、それだけは変わらないんじゃないかな」

ラム「そ、そんな理屈でどうにかなる訳ないだろ…!」
859: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:54:43 ID:6FAwtITC1A
ラム「君は甘過ぎるよ…!また前みたいに都合よくいくと思ってるのかい!あんな奇跡、そう簡単には……」

カロル「ラムくんが間違ってないの、分かるよ。だけど…」

ラム「だけどなんなのさ…」ジトッ

カロル「もしあの巡礼の時もそうしてたら…ボクたちはともだちでいれたかな」

ラム「は…?」

カロル「ラムくんはあの時、どうして人間を許そうと思ったの」

ラム「それは…キミが……」

カロル「ホントにそれだけ?」

ラム「……」

カロル「みんなの言葉とかいろんな出来事があったからって知ってるよ。でも最後には自分で決めたよね」

ラム「そうだけど…」

カロル「ボクもそうだよ。何回も反対されたし、諦めちゃったりしたけど…そうしたいって思ったから続けられたんだ」

ラム「……」

カロル「続けるのもやめるのも大事なことだから自分で決めないとね…」

カロル「じゃないと、なんにも満足できないで終わっちゃうもん」

ラム「この女にも…それが出来るって言うのかい」チラッ

ファルージャ「……」ニヤッ

ラム「っ…!」プイッ

カロル「どうかな。それを決めるのはボクじゃないから…」

ラム「だったら…!」

カロル「それでも話しておきたいんだ」

ラム「……!」

カロル「ボクはまたみんなと笑って過ごしたいから…後悔して笑えなくなるのはイヤなんだ?」ニコッ

ラム「はぁ……もういいよ」
860: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 22:04:06 ID:6FAwtITC1A
ラム「どうする?こうなったら聞かないよ」

宣教師「…仕方ありませんね」

カロル「……」

宣教師「非情に徹してでも守る意思を貫いてきたヒメくんの決意や、この戦いに平和を願った人々の心を思えば…正直、賛同しかねますが」

カロル「!」ズキッ

宣教師「キミはそういう風に割りきれない子だということもよく分かってます」

カロル「ホントにごめんなさい。いつもワガママばっかり…」

宣教師「いいんですよ。私自身、このやり方が真の解決に結び付くかは分かりませんでしたから」

カロル「どうなんだろ…。ホントはヒメくんの言う通りにするのがいいのかも」

宣教師「…でしたら、そうしてみますか?」

カロル「……」

宣教師「自分が正しいと思うのなら自信を持ちなさい。でなければ私達もキミを信じてあげられませんよ」

カロル「ボクは…やっぱり違うと思う」

宣教師「それならキミのやり方にお任せします。私達も信じますから」ニコッ

カロル「はい…!」コクッ
861: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/16(日) 21:40:31 ID:egsNPOvF9c
―――地下迷宮(通路)―――

ラム「あれでいいのかい?」

宣教師「……」

ラム「たしかにカロルくんは嘘がつけないから信用しやすいけど、とても通用する相手とは思えないよ」

宣教師「…どうでしょうか」

ラム「へ?」

宣教師「結局のところ人心が彼女に靡いている限り、捕縛して呼び掛けても火に油を注ぐだけかもしれませんよ」

ラム「で、でもヒメは…」

宣教師「彼に落ち度はありませんが…理屈で納得できる相手でないからこそ私はカロルくんに懸けてみたくなりました」

ラム「……」

宣教師「あの子は物事を深く考えていないようでありながら…実は私達が思うより、ずっと繊細な子です」

宣教師「きっと…なにか思うところがあって説得を試みたのではないでしょうか」

ラム「そうかな…。何も考えてないだけな気がするけど…」

宣教師「どうなるかは分かりませんが信じてみましょう。
彼はいつだって、こうした逆境に立ち向かってきたのですから」

ラム「前から思ってたけどカロルくんに甘くない?」ジトッ

宣教師「ふふ、そうでしょうか?」

ラム「はぁ……ま、僕もあんまり言えないけどさ」プイッ

宣教師「」クスッ
862: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/16(日) 21:44:00 ID:5kGwsSNxvs
―――地下迷宮(隠し部屋)―――

ファルージャ「ンッ…」ゴクゴク

ファルージャ「フゥ〜…香に浸れず美酒にも酔えず……」

ファルージャ「よもや肉体に求められる快楽は貪り尽くしてしもうたか…」

ファルージャ「また新たな趣向を探さねば時をもて余すばかりよなぁ…」カランッ

ファルージャ「……」

ファルージャ「して、一人残ってまで妾に何を話すつもりじゃ?」

カロル「……」

ファルージャ「再び飼われたいと申すのではあれば一向に構わぬぞ?とくと可愛がってやろう?」ニィィッ

カロル「…どうしてあんなウソついたの」

ファルージャ「ウソ…とな?」ピクッ

カロル「それ、ただの香水だよね」

ファルージャ「……」

カロル「パカラーロさんがそんなの渡すはずないもの」

ファルージャ「ハァン…なにを根拠に」

カロル「それを使ったらファルージャさんも苦しい思いをするよ。
大好きな人を守りたいのに…そんな方法は選ばないんじゃないかな」

ファルージャ「そなたにあやつの何が分かるというのかえ…?」

カロル「知ってるよ」

ファルージャ「……?」

カロル「パカラーロさんも、この城の人間たちも…みんなファルージャさんが大好きだって」

ファルージャ「フゥン…」
863: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/16(日) 21:50:32 ID:5kGwsSNxvs
ファルージャ「フフン!よくぞ見抜いた。誉めて遣わそう」クスクス

カロル「やっぱり…」

ファルージャ「たしかにこれは単なる香水よ。開けてもこの通り害はない」パカッ

ファルージャ「が、それを見抜いておったなら、なぜ口にせなんだ?妾を捕らえる好機であったろうに?」

カロル「それは…」

ファルージャ「クスス…さては今頃になって我が魅力に堕ちたのかえ」

カロル「ボクはまだ…なんで争わなきゃいけなかったのか、よく分かってないから」

ファルージャ「……?」

カロル「敵だからとか考え方が違うとか…そういう理由で納得したくないんだ」

カロル「なんにも知らない人のことを悪いって決めつけたくない…」キュッ

ファルージャ「ほう…」

カロル「だから話してみようって思ったんだ…。ちゃんと向き合ってみたくて…」

ファルージャ「フゥン…さようであったか」ガッ キュポッ

ファルージャ「ゥゥン……」グビグビ

ファルージャ「フゥ〜…良い気分じゃ」ボー

カロル「お酒は体によくないってお母さまが言ってたよ…」

ファルージャ「どうせ永遠に生き永らえる身よ。娯楽がなくてなんとする?」ニヤッ

カロル「……」

ファルージャ「さすれば…」ポイッ

バリンッ

カロル「」ビクッ

ファルージャ「存分に語らおうではないか、心いくまで?」クスッ

カロル「っ…」ゴクッ
864:名無しさん@読者の声:2016/11/16(水) 22:56:06 ID:2f74OR/8Q6
保守
865:長引かせてすみません!m(__)m ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 22:42:15 ID:2f6ATVrpfk
ファルージャ「くちゃっ……くち……」モグモグ

ファルージャ「そなたも食すかえ?我が国原産のクリームチーズじゃぞ?」クスッ

カロル「いらない…」

ファルージャ「この部屋には妾の好物のみが取り揃えられておる。いくらでもある故つまんでも構わぬのだぞ」クスクス

カロル「いい…」

ファルージャ「フゥン……ではそろそろ話とやらを聞こうではないか。なんなりと申すがよ……」

パラパラ パラパラ

ファルージャ「ン……なにやら上が騒がしいのう。埃が舞いよるわ」

カロル「戦ってる人間たちの足音が地下に響いてるんじゃないかな…」

ファルージャ「フゥン……よう飽きもせずやるものよ」

カロル「……」

ファルージャ「なにをそう熱くなっておるのやら…これだから男というのは」

カロル「…必死にもなるよ」

ファルージャ「ハ…?」

カロル「勝たなきゃいけないって、そう信じてるんだもの」

ファルージャ「なにゆえじゃ…?」

カロル「……」

ファルージャ「ハッ…問われ押し黙るそなたになぜ彼奴らの胸の内を語れるのか」

カロル「…戦う理由があるからだよ」

ファルージャ「戦う理由…とな?」

カロル「一人一人違うからボクには分からない…。でも戦わなきゃいけない理由があるんだ」

ファルージャ「ずいぶんと大雑把じゃのう」

カロル「ファルージャさんはどうしたいの…?」

ファルージャ「ンゥ…」

カロル「理由なんてないのに戦いを続けて…ホントはなにがしたかったの?」

ファルージャ「……」
866: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 22:45:24 ID:Ou70Vp7aU.
ファルージャ「はて……」

カロル「」ジーッ

ファルージャ「クスス……あまり見つめるな。妾とて返答に困ろうが」

カロル「止めてあげてよ」

ファルージャ「……」

カロル「ファルージャさんが止めれば、みんながやめる理由になるんだよ」

ファルージャ「そうねぇ、どうしたものか…」クスクス

カロル「ここでじっとしてるならそうしてよ…。みんなを意味なく死なせないで」

ファルージャ「そなたは勘違いをしておる」

カロル「へ…?」

ファルージャ「いくら情熱的な戯言をほざこうと我が胸を打つことはなかろうよ」

カロル「どうして…ファルージャさんは戦わなくてもいいんでしょ?」

ファルージャ「うむ、どちらでもよい」

カロル「なら…」

ファルージャ「心底どうでもよいのじゃ」

カロル「え…?」
867: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 22:46:58 ID:Ou70Vp7aU.
カロル「どういうことなの…?」

ファルージャ「フフ……それはこちらの言い分よ」

カロル「……?」

ファルージャ「なぜそなたらの身勝手な振る舞いを妾に結びつけようとするのか」

カロル「みがって…?」

ファルージャ「戦うもやめるも好きにせよ。止めはせぬ」

カロル「なにを…言ってるの?」

ファルージャ「まったく押し付けがましいわ」フンッ

カロル「……」

ファルージャ「話というのはそれだけか?」

カロル「なにもしてないって言うの…?」

ファルージャ「ハァ…?」

カロル「ボクはお母さまやみんなと離れたくなかった……」

カロル「大好きな人たちが戦わなくちゃいけなかったのも悲しかった……」

カロル「それでも……ファルージャさんを信じて、ここにいるんだよ?」

ファルージャ「クスス……」

カロル「……?」ブルッ

ファルージャ「美しく高貴なる帝のそばに置かれ、感謝すらせず不平不満を漏らすとは……」

カロル「……」ブルブル

ファルージャ「それ以上の誉れを求めようというのが……つくづく浅ましいのよ」

カロル「……!」
868: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 22:48:50 ID:Ou70Vp7aU.
カロル「そんなのおかしいよ…!」

ファルージャ「ほう、まだ食い下がるか?」

カロル「みんながみんなファルージャさんの為にいるんじゃないんだよ…!?」

ファルージャ「なれば意識を改めるがよかろう」

カロル「……!?」

ファルージャ「広大なる西の大地に立つ全ての命は帝たる妾にひれ伏し、身命を賭して尽くそうと願うが必然」

ファルージャ「代々の皇帝もなんちゃらとかいう神話になぞらえ、民にそうさせてきた」

ファルージャ「それより他になにを望むと?」ジロッ

カロル「ファルージャさんも…その内の一人だったんでしょ?」

ファルージャ「」ピクッ

カロル「なのにどうして分からないの…?奪われて傷付けられる気持ちを……どうして繰り返そうとするの!?」

ファルージャ「…ほんにそなたはむず痒く苛立たしい物言いをしてくれるものさな」

カロル「……?」

ファルージャ「確かに妾は下賤な貧民の出よ。別にその過去を恥じてもおらぬ」

ファルージャ「じゃが……なにも知らぬホビットの童ごときに説教を受ける謂れはない」

ファルージャ「ただひたすら耳障りじゃ…」

カロル「ぼ、ボクは…」

ファルージャ「一つ良いことを教えてやろう」

カロル「へ?」

ファルージャ「貧民、隷属、物乞い、盗人、罪人、カタワ……下には下がいくらでもあるものじゃが」

ファルージャ「それら全てを踏まえても……何より劣るのがホビットという下等種であろうな?」

カロル「っ……!」
869: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 22:50:32 ID:2f6ATVrpfk
ファルージャ「そなたの口から出る言葉はどれも賤しい種族の妬み嫉みからくる……実に見苦しい妄言よ」

カロル「!」ドクンッ

ファルージャ「妾は貧民ではあったが人の子……ゆえに多少の強引を押してでも帝の座に収まれた」

ファルージャ「しかしホビットのそなたにはそれも叶うまい?」

カロル「……」グッ

ファルージャ「寛大な妾なればこそ、そなたの価値を買ってやったまでのこと」

ファルージャ「とはいえ所詮はホビット……あまり思い上がるな」

カロル「思い上がってなんか……」

ファルージャ「妾に意見を申し入れたくばマシな身分を持て」

ファルージャ「さすれば少しは耳を傾けてやってもよいぞ…?」ニヤァァ

カロル「…」
870: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 23:03:15 ID:Ou70Vp7aU.
ファルージャ「語るに落ちるとはまさにこのこと。まことに願いを聞き入れてもらいたくば、まず頭を垂れるが筋というものよ」

ファルージャ「無知なホビット風情が……無謀にも帝を説き伏せようというのがそもそもの間違いなのじゃ」

カロル「……!」グッ

ファルージャ「されど慈悲に満ち、心身共に美しき妾はなおも寛容に尽くそうぞ」ニヤッ

ファルージャ「今一度、傅くと誓うのであれば、そなたを再び我が従属に加えてやってもよい」

カロル「……」

ファルージャ「そなたはホビットに生まれた不幸を授かりながらも癒しの力という素晴らしい才を賜っておる」

ファルージャ「…妾と同様に多大な価値を持ちながら認められなかった類いなのであろうよ」

ファルージャ「しからば同じ痛みを分ける者として、そなたを救い上げてやらぬでも……」

カロル「ホビットとか価値とか……」

ファルージャ「ン……」

カロル「もう聞き飽きたよ、そういうの」

ファルージャ「聞き飽きたとは…?」

カロル「そんな話の方が全然どうでもいーよ」

ファルージャ「……妾の誘いを一蹴するか。ほとほと呆れた童よな」

カロル「ボクはもうそこで悩んでないもの」

ファルージャ「……?」
871: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 23:07:32 ID:2f6ATVrpfk
カロル「お父さまは人間で…お母さまはホビット。もしかしたらボクは人間に生まれることもあったかもしれないんだね」

カロル「でもボクはお母さまの血を引いてホビットに生まれてよかったって思ってる」

カロル「お母さまがいなかったらボクはボクじゃないし、ホビットじゃなかったら知れなかったこともたくさんあったもの」

カロル「だから偉くなりたいとか、そういうのは考えてないよ」

カロル「差別なんて気にしなくていいって言ってくれるともだちが…ボクにはいるから」

ファルージャ「あの小娘らのことかえ…?」

カロル「うん、そうだよ」ニコッ

ファルージャ「あの程度の者らに妾の魅力が劣ると申すか…」

カロル「ファルージャさんにはいないの?」

ファルージャ「……?」

カロル「一緒にいるだけで楽しい気分になれるともだち…」

ファルージャ「稚拙な……この美を愛し、永遠の忠誠を誓う果報者であれば大勢おるわ」

カロル「その人たちはファルージャさんの大切な人?」

ファルージャ「…はて、な」

カロル「……?」

ファルージャ「愛してやることもある。気が向けばの話じゃが?」クスッ

カロル「そう……やっぱり」

ファルージャ「やはりとは?」

カロル「お話してみてファルージャさんのこと分かった気がする。ちょびっとだけ」

ファルージャ「ふむ、なんと?」

カロル「ファルージャさんもひとりぼっちなんだね」

ファルージャ「……ハァ?」
872: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 23:10:48 ID:2f6ATVrpfk
ファルージャ「妾が孤独…?」

カロル「うん」

ファルージャ「そなたを靡かせぬまでも……多くの男に愛され、守られる妾がなぜ孤独と言える?」

カロル「ファルージャさんが寂しそうだから」

ファルージャ「寂しい…?フフ…どこを見て、そう思うのじゃ?」

カロル「だってファルージャさんは誰にも本心を見せてないじゃない」

ファルージャ「なんじゃと……」

カロル「そうやって割りきらないと人を信じられないの?」

ファルージャ「」イラッ

カロル「キレイだから慕われてるって思い込んで自分の気持ちを隠してる…」

ファルージャ「抜かせっ…」

カロル「……」

ファルージャ「己の才能を誇って何が悪い…。事実、妾は美のみで全てを手に入れた」

ファルージャ「帝の寵愛も皇族の冠も配下の忠誠も……全てはこの美で勝ち取ったものじゃ」

カロル「それでも満足できないんでしょ?」

ファルージャ「ッ……」ギリッ

カロル「受け入れてもらえないのが怖いから心を開けないでいるんだよね」

ファルージャ「図に乗るでない…!」

カロル「ホントは誰にも愛されてないのかもって……」

ファルージャ「煩いっ!!」

カロル「っ…」ビクッ
873: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 23:15:05 ID:Ou70Vp7aU.
ファルージャ「薄気味悪い眼をしおって…!」キッ

カロル「……?」

ファルージャ「お前のようなホビットが見透かしたように……不愉快極まりないわ…!」ワナワナ

カロル「…ホビット、だからだよ」キュッ

ファルージャ「……!?」

カロル「分かるんだ。ボクも……そうやって疑ってたから」

ファルージャ「……どういう意味じゃ」

カロル「…たまに不安になるの。ホビットのボクと一緒にいて迷惑じゃないかなとか…ホントは嫌われてるんじゃないかって」

カロル「そんな風に考えるのはみんなを信じてないことになるからいけないって分かってるんだけど、どうしても考えちゃうんだ…」

カロル「そのたびにツラくなる…。ともだちになってくれたみんなを裏切ってるみたいで」

ファルージャ「そなたと妾のどこが通ずるというのじゃ…?」

カロル「…自信がないところ」

ファルージャ「自信が…ない?」

カロル「ホビットだから、キレイだから…そういうのを気にして自分の気持ちを打ち明けないでいるもん…」

ファルージャ「……!?」イラッ
874: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 23:18:34 ID:2f6ATVrpfk
カロル「ホビットでも気にしない人はたくさんいるのに一人で勝手に悩んでた…」

カロル「だから、そうじゃないんだって気付いた時にすごく安心したんだ」

カロル「自信を持って、ともだちだと思えるようになったから…」ニコッ

ファルージャ「……」

カロル「ファルージャさんも無理しないで…ちゃんと向き合うところから始めてみたら?」

カロル「きっとキレイだけじゃないファルージャさんを好きになってくれる人、見つかるよ」

ファルージャ「戯けが…」

カロル「?」

ファルージャ「くだらぬ話で妾を籠絡せしめようと企むか。哀れな奸知よなぁ…」

カロル「…ボクはファルージャさんがどういう人間なのか知りたかっただけだよ?」

ファルージャ「そなたごときに計れる器と侮るな…」

カロル「なんで怒るの…?」

ファルージャ「そなたが無闇に愚弄するからよ…」

カロル「……」
875: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 23:21:10 ID:2f6ATVrpfk
ファルージャ「妾は西の大地を統べる唯一無二の女帝なり…。下賤の者に御託を並べられるなど心外でならぬわ…」

カロル「…偉さを気にしたりキレイなのを自慢するのは認められたいから?」

ファルージャ「もうよい、下がれ…。そなたとの対話は無意味に神経を逆撫でされるばかりじゃ」

カロル「自分の価値を認めてもらえなかったのが苦しかったの…?」

ファルージャ「下がれと……言うておろうが!?」ガッ ブンッ

カロル「っ!?」ピッ

バリンッ

ファルージャ「二度はない…。下がれ!!」カッ

カロル「……」ツツー

ファルージャ「十分であろう…!これほどまでの恥辱を与えたのじゃ……」フーッフーッ

カロル「言ったでしょ。ボクはファルージャさんを知りたいだけで傷付けたい訳じゃないよ」

ファルージャ「黙れ下等種がっ!?」キッ

カロル「…どうしてそこまで自分を否定するの?」

ファルージャ「いつ己を否定した!?妾こそ美しく……」

カロル「ボクの言葉を否定するのはホントの自分を知りたくないからでしょう?」

ファルージャ「消え失せろっ!!二度と顔を見せるな!!」

カロル「イヤだ」

ファルージャ「!?」

カロル「ファルージャさんがホントの気持ちを教えてくれるまで、ここにいるよ」

ファルージャ「クッ……」
876:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 23:24:48 ID:Ou70Vp7aU.
ファルージャ「なぜじゃ!そなたの目的は戦争の終結であろうが!なにゆえ妾に執着する!?」

カロル「きちんと終わらせたいからだよ」

ファルージャ「……!?」

カロル「無理やり参ったって言わせても納得しない人間たちがたくさんいるはずだもの」

カロル「ファルージャさんが自分で止めようとしなくちゃ意味がないんだ」

ファルージャ「…そなたに妾の意思を決定付ける力があるとでも?」

カロル「そんなのないよ」

ファルージャ「なれば……」

カロル「だからファルージャさんの気持ちをもっと分かりたいの。知らないままじゃ説得なんて出来っこないもんね?」ニコッ

ファルージャ「忌々しい…!」

カンカンカンッ

カロル「え…?」クルッ

宣教師「はぁっカロルくん!すぐに来てください!」アセアセ

カロル「宣教師さま…どうしたの?」

宣教師「ヒメくんと!団長さんが…!」

カロル「!」ピクッ

ファルージャ「……!?」
877: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/25(金) 22:17:23 ID:n4xBg0Pe5M
―――地下迷宮(通路)―――

ラム「む、無理しないで座りなよ!すごい血だ…!」アセアセ

団長「うぐぅ…わ、ワシはいい!ヒメ様を……」ゼェゼェ

カンカンカンッ

宣教師「つ、連れてきました!」タタタッ

カロル「二人とも平気!?」タタタッ

団長「おぉ…!ヒメ様だ!ヒメ様を頼む!」スッ

ヒメ「」グッタリ

ラム「うわっ!な、なにされたの…!?」ゾォッ

宣教師「か、顔中に石粒が刺さって……鼻も歪んだ形に…!?」

カロル「ま、任せて!」ピトッ

団長「ふぅ……たすか」ズンッ

ラム「え?」

団長「〜〜〜!?」ガクッ

宣教師「団長さん!?」

カロル「ど、どうし……」ハッ

カツンカツン

「おやおや、そんなところにいたのかい」ザッ

宣教師「あ……!」
878: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/25(金) 22:19:27 ID:AAS5HN/OAk
魔導師「困るなぁ。そこにいられたら……」

カロル「パカラーロさん!?」

魔導師「女王が安らげないだろう…?」ギラッ

カロル「……!」

ラム「あいつ、また…!」ギリッ

団長「ご……ぅはぁっ!!」ゴボッ

宣教師「だ、大丈夫ですか!?」ガシッ

魔導師「そうそう、それは象にも効く即効性の毒矢だよ。ま、ありがちなね」クルクルッ

ラム「(吹き矢…!あれで背中を打ったのか!)」

団長「お、のれぇ…!?」ググッ

魔導師「へぇ、立てるんだねぇ」

団長「悪あがきをしおって…捻り潰してくれるわ…!」ヨロッ

カロル「う、動いたらダメだよ!癒すから……」

団長「構わんでいい…!陛下の傷を癒して差し上げろ!」フラッ

カロル「で、でも…!」

団長「奴の標的は陛下とお前だっ!!ワシが食い止める間に陛下を癒し、安全を確保しろ!!」

カロル「っ……」ゴクリ
879: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/25(金) 22:22:21 ID:n4xBg0Pe5M
魔導師「悪いけどキミらの安全なんて保証してやらないよ」クイッ

フィクサー「」ズシッ

団長「なっ…!?」

宣教師「あ、あの人は総指揮の…!」

魔導師「んふふ、こいつはちょっと頼もしいよ…?」

フィクサー「グギギギ…!!!」ビキビキィッ

団長「バカな!奴は確かにこの手で…!?」

宣教師「全身の血管が浮いて焦点も定まっていません…!なにかされたのでは……」

団長「なんだとぉ…!?」

魔導師「ご名答……ドーピングってやつさ」カラカラッ

ラム「ほら!だからあんなヤツほっとけって言ったじゃないか!」

カロル「あ…う……」シュン

魔導師「女王に逆らう不逞の輩は全員ここでおしまいさね」ニヤッ
880: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/25(金) 22:23:40 ID:AAS5HN/OAk
魔導師「とりあえず強そうなのから死んでもらおうかね…。残りのガキはどうとでもなるし」

フィクサー「フオォ……フオォ……」ハァハァ

団長「ぬぅ…!」ジャキッ

魔導師「さ、行っておいで」

フィクサー「グアァッ!!」ブゥンッ

団長「うっ…!」ギィンッ

フィクサー「フングゥゥ!!」バウンッ

団長「ぐほっ!?」ダァンッ

宣教師「団長さん!?」

ラム「か、片手で吹っ飛ばした…!どんな腕力してるんだよ…!?」
881: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/25(金) 22:25:00 ID:AAS5HN/OAk
カロル「(ヒメくんを癒して、すぐ団長さんも…!)」スッ

ヒュッ

カロル「いっ…!」グサッ

魔導師「そうはさせないよ…?」ニィィッ

カロル「……!」キッ

ラム「この…!」ザッ

魔導師「ん……キミか、ちょっと相性が悪いなぁ」

ラム「こいつは僕が倒しておくから君は治癒を急ぐんだ!!」スチャッ

カロル「うん、ありがとう!」

魔導師「んふふ…倒す、ねぇ。見くびられたもんだよ」
882: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/25(金) 22:25:56 ID:AAS5HN/OAk
宣教師「」ヒョイッ

カロル「……!」ハラハラ

宣教師「ふぅ…石粒は取り除きましたよ!」

カロル「ありがとう!」ピトッ

フワッ

ヒメ「」スゥゥウ

宣教師「ど、どうですか…?」

カロル「うん…まだ気を失ってるみたい」

カツンカツン

宣教師「は…!?」クルッ

ファルージャ「フフン……」ブンッ

カロル「え…?」

宣教師「危ない!?」ガバッ

バシャアアン!
883: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/25(金) 22:27:11 ID:AAS5HN/OAk
ファルージャ「小娘が…分も弁えず邪魔立てしおって……」ジッ

宣教師「」ドクドク

カロル「せん…きょし、さま?」

ファルージャ「まぁよい。割れてはしまったが、そなたを始末するには事足りる」ポタポタ

カロル「(硝子の破片……宣教師さま、いっぱい血が出てる。癒さなきゃ)」スッ

シャッ

カロル「ぃぎっ!?」ザクッ

ファルージャ「クスス……妾の手を汚させた罪、実に重いぞ」グリィッ

カロル「はぁっぐ……ぃああっ……」ブシュッ

ファルージャ「パカラゥロ!フィクサー!」

魔導師&フィクサー「」ピクッ

ファルージャ「思い知らせておやり…?」ニタァァ

魔導師「んふ!」ギラッ

フィクサー「ンォオオ…!」ミキミキィッ
884: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/25(金) 22:28:53 ID:AAS5HN/OAk
フィクサー「わだしが…ダイリグの覇しゃとナる…!!」ギンッ

団長「ぐぅ…ふぅぅ…貴様にその資格はないと…言っておるだろうがぁ!?」ダッ

ギャリィィンッ!


ラム「なんであの毒霧みたいな術を使わないんだい?あれなら一度に始末できたのに」

魔導師「女王に障気が届いたら一大事だからねぇ」

ラム「無茶をしたってあいつは死なないだろ。本当の理由は他にあるんじゃないの?」

魔導師「んふふ…小賢しいなぁ」

ラム「それに…手の色が変わってる」チラッ

魔導師「……」

ラム「手を握り合わせて使う魔術と関係あるのかな」

魔導師「あんまりじろじろ見ないでおくれよ。気持ち悪いなぁ…」

ラム「別にいいんだけど…どうせお前は負けるから」ザッ

魔導師「さてさて、さてさて、さてさてと……」ゴソゴソ

ラム「……」

魔導師「これからその身に起こる不幸……受け入れる覚悟はできたかい?」カプッ

ラム「」ダッ

魔導師「ふっ!」ヒュッ

ラム「っ……」グサッ

魔導師「」ニィィッ

ラム「そんなの効かないって……っ!」ガクンッ

魔導師「んふ」ニヤッ
885: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/25(金) 22:32:29 ID:AAS5HN/OAk
ラム「く……な、んだ…!?」ググッ

魔導師「痺れ薬を塗ってあるのさ。徐々に再生するだけで効くには効くんだろう?」

ラム「こんなの…時間稼ぎにしか……」キッ

魔導師「まぁまぁまぁ…ねぇ?」トポッ

ラム「その瓶…なに…?」ゾクッ

バシャッ

ラム「ぎっァアアアアアア!!!」ジュウウウ

魔導師「濃い目にブレンドした特製の酸だよぉ…」ニタニタ

ラム「あっい…あづ……ぃぎゃああああ!!!」ジタバタ

魔導師「一度のまぐれで気を弛めるからそういう目に遭うのさ」

ラム「はっひひ…ヒヤァ!ぃぐっ!!」ペシペシ

魔導師「無駄無駄。液体をはたいたって更に塗り込むだけさね」トポッ

ラム「ぎっ…!?」ギョギョッ

魔導師「再生する間もないくらい溶かし尽くしてあげようじゃないの…?」ヒュンッ

バシャッ

ウギャアアアアアアアア!!!

魔導師「跡形もなくなれば再生もなにもないだろう?んっふふふ」ニタニタ
886: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/25(金) 22:34:48 ID:AAS5HN/OAk
ファルージャ「ふむ、よい働きをしてくれるわ…。さすが妾の見込んだ下僕達じゃ」チラッ

ファルージャ「はてさて……そなたとその仲間は命を繋げたものか、のう?」グリィッ

カロル「ぶぁあっ!!」ブシュッ

ファルージャ「クスス……そなたらは三つの禁を犯した」

カロル「ー……」ゼェゼェ

ファルージャ「一つは妾を罵り、否定してみせた無礼」ズボッ

カロル「がっ…あぁあああ!!!」ブシャァァッ

ファルージャ「一つは妾の誘いを幾度となく無下にした傲岸不遜な振る舞い」ブンッ バキンッ

カロル「ぎゃっ…!」ドサッ

ファルージャ「最後の一つは……悪戯に妾の気分を害した重罪よ」ズシッ

カロル「べふぅっ…」ミシッ

ファルージャ「不愉快じゃ、どれを取っても」ジロッ

カロル「ぇ…ふぅ……は、あ」コヒューコヒュー

ファルージャ「が、妾は情け深い」クスッ

ファルージャ「死ぬる前にそれらの罪を償う機会を恵んでやろう…」スラリ

カロル「……?」ウツラウツラ

ファルージャ「足を舐めよ」ズイッ

カロル「……」ピクピク

ファルージャ「クスス……これではまるで褒美よな。じゃが遠慮せずともよい」

ファルージャ「美味を堪能し、快楽に溺れて逝け。それがそなたにくれてやる何よりの手向けじゃ」グッ

カロル「うぅ……」ベシャッ
887: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/25(金) 22:37:45 ID:AAS5HN/OAk
カロル「(なにがなんだかわからないよ……)」ボーッ

カロル「(ボクはなんで……ここにいるんだろう)」グワングワン

カロル「(差別がなくなって…仲直りして……お母さまとみんな……しあわせ、だったのに)」

カロル「(宣教師さまが起きない…ヒメくんも団長さん、ケガしてた)」

カロル「(ラムくん、どこ…?ルーボイくんは…なにしてるんだろう……)」

カロル「(ナラ、元気かな…ミシングさんも二人もお母さまと待ってくれてるかな……)」

カロル「(パッチくんに…また、会いたいなぁ)」

カロル「(どうして…どうしてボクは大切なともだちと…一緒にいられない、の)」

カロル「(もう…ひとりぼっちはいやだ……)」フッ

888:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/11/25(金) 22:39:35 ID:AAS5HN/OAk
ファルージャ「フン……事切れたか」スッ

ファルージャ「あっけないものじゃ」

ドシャッ

団長「」ダラァァン

ラム「」グチャッ

ファルージャ「……」チラッ

魔導師「んふふ…終わったよ、女王」

フィクサー「ザイギョウのヂガラ…!!わだしごそザイギョウ…!!」フシューフシュー

ファルージャ「フフン……」

魔導師「安心しておくれ。残りの敵もまとめて片付けてあげるから」ニィィッ

フィクサー「グフ…ヴハハハハハ!!!」ゲラゲラ

ファルージャ「そなたらに問う」

魔導師「?」

ファルージャ「この世で最も美しいのは誰じゃ?」

魔導師「…聞くまでもないよ」ニィィッ

フィクサー「ぎみごそが…ウヅクシイ」フシューフシュー

ファルージャ「…誉めて遣わす」ニタァァァ

魔導師「はっ…」ザッ

フィクサー「ハハァッ!!」ザッ

ファルージャ「フン……素直に我が美を崇めておればよかったものを」チラッ

宣教師「」ドクドク

ファルージャ「口ほどにもなく……」

カロル「」ダラァァン

ファルージャ「憐れむ価値さえない……」

ファルージャ「馬鹿は死ななければ治らぬ、か」クスッ
889: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/9(金) 22:44:03 ID:Rbp1gb8IvI
―――王国・辺境地(ミラルドの町)―――

ルーボイ「はぁ〜…今日もつまんなかったなぁ。学習院なんか行きたくねーっつの」スタスタ

ナラ「せっかくミシングさんたちがかよわせてくれてるのに、もんくいっちゃダメだよ」

ルーボイ「そんなことしてる場合かよ…」ケッ

ナラ「……」

ルーボイ「あいつらが帰ってこねーのに……宣教師さまだって何してっか分かんねーし」

ナラ「まつしかないよ…」

ルーボイ「もうどんだけ経ってんだよ。ナラは心配じゃねーのかよ?」

ナラ「しんぱいだよ。しんぱいだけど…」

ルーボイ「いつまで待てばいいんだよ」

ナラ「わたしにきかれたって…」

ルーボイ「…俺はもう待ちたくねぇ」

ナラ「じゃあどうするの?わたしたちになにができるの?」

ルーボイ「なんにもできねーよ…」

ナラ「…ならやめてよ。そういうの」

ルーボイ「けっ…」
890: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/9(金) 22:46:35 ID:Rbp1gb8IvI
ルーボイ「昔、俺の親友がいなくなった時もよ」

ナラ「……?」

ルーボイ「こうやってヤキモキしてばっかだった」

ナラ「……」

ルーボイ「大きくなっても変わんねぇな。ダチの一人も助けてやれねぇ」

ナラ「かえってこないっておもうなら、まっててもしょうがないよ」

ルーボイ「はぁ…!?べ、別にそういうことじゃねーし!」

ナラ「ならまとうよ…かえってくるって、しんじて」ニコッ

ルーボイ「っ…分かってるっつの!ちょっと言ってみただけだろ!」

ナラ「そう…」ニコニコ

ルーボイ「はぁ…ま、そうだな!俺がくよくよしてたらダメだよな」

ナラ「うん…」ニコニコ

ルーボイ「…あいつら帰ってきたらビックリさせてやっか!俺のが勉強出来んぞってな!」ニカッ

ナラ「そうだよ。ビックリさせよ?」ニコニコ

ルーボイ「おう!そうと決まったら復習だ!早く行こうぜ!」ダッ

ナラ「もう!せっかちなんだから」ダッ

タタタタッ………
891: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/9(金) 22:48:28 ID:Rbp1gb8IvI
―――ミラルドの町(孤児院)―――

孤児1「ねーママ!ぼくの宝物あげるね」スッ

母「まぁドングリ?宝物なのにもらっていいの?」ニコッ

孤児1「うんー!」ニパッ

母「ありがとう。大切にするわね!」ナデナデ

孤児1「えへへー」テレテレ

母「うふふ……」ニコニコ

パキッ

母「あら……」ハッ

孤児1「どーしたの?」

母「ううん、なんでもないのよ」ニコニコ

孤児1「ふーん、あそんでこよーっと」タタタッ

母「いってらっしゃい」ニコニコ

ガチャッ バタンッ

母「……」ジッ

母「(ひとりでに殻が割れた……)」コロッ

母「(……)」ギュッ

母「…大丈夫。なにも心配してないわ」

母「(あの子はいつでも笑顔で戻ってきてくれた。あたしを悲しませないでくれた…だから大丈夫)」

母「そろそろ暖炉が恋しい季節ね…。薪を買ってこなくちゃ」スクッ
892: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/9(金) 22:50:02 ID:gTRPXbGnWE
―――大聖堂―――

司教「司祭様はまだ戻られんのか…」

教徒「しばらくの間、活動を離れると言い残してから未だ姿を見せないままですね…」

修道女「司祭様、どうしちゃったんだろう…」

司教「またも戦争の兆しが浮き上がり、国内もばたついているというのに…」

教徒「教団の方でも民衆に冷静を保つよう働きかけてますが、なかなか収まりませんもんね」

修道女「ここにも戦争反対を訴える人たちが連日やってきてごった返すし…」

司教「うーむ、一刻も早く司祭様に戻っていたたかねば……」

ミシング「どーもー!遅くなってすみませーん!もうすんごい賑わいで!」スタスタ

司教「おぉ、ミシング殿!ようこそおいでくださった!」

ミシング「もー司教のおじさんったら!そんな堅苦しくしなくても呼び捨てでいいのに?」

司教「いやいや、そうもいきませぬよ。ミシング殿は司祭様と共に国の窮地を救われた功労者の一人ですからな」

ミシング「だーかーら!あたしはなんにもしてませんってば!ただあそこにいただけです!」
893: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/9(金) 22:51:31 ID:gTRPXbGnWE
教徒「お久しぶりです!」

ミシング「およ?教徒くんじゃん!おっきくなったねー」

教徒「ミシングさんもお元気そうで?」

ミシング「にしし!それだけが取り柄だもんねー!」

教徒「ははは、またまた」

ミシング「あ、そっちのお嬢さんは?」

修道女「は、はじめまして!私は修道女です!以後お見知りおきください!」ペコッ

ミシング「あはは!緊張しすぎ。あたしなんか偉くもないんだから気楽にしていいんだよ?」ポンポン

修道女「す、すみません。司祭様のご友人と伺っていたので」

ミシング「ま、付き合いはそこそこ長いかも。よく叱られちゃうけどね」テヘペロ

修道女「ふふ…」クスッ

教徒「お、おい!笑ったら失礼だろ」アセアセ

修道女「あ、ごめんなさい!」ハッ

ミシング「いーのいーの!人生笑ってなんぼ!せっかく生きてるのに楽しまなきゃ損じゃん?」

教徒「み、ミシングさんがそうおっしゃるなら…」

修道女「なんだか思ってたより、ずっと親しみやすい人だね」コショコショ

教徒「だからそーゆーこと言うなって…」コショコショ

ミシング「」ジーッ

修道女&教徒「?」キョトン

ミシング「なんか耳打ちしあってるけど…もしかして二人はそういう感じなのかにゃ?」ニヤッ

修道女「えぇっ!?」ボンッ

教徒「ち、違いますよ!」アセアセ
894: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/9(金) 22:53:39 ID:Rbp1gb8IvI
ミシング「ひゅー!見せつけちゃってぇこのこのぅ!」ニヤニヤ

教徒「か、からかわないでください!」カァァ

修道女「そうですよ!そういうんじゃないですから!」カァァ

ミシング「怪しいにゃー?」ニヤニヤ

司教「おほん!ミシング殿、よろしいか?」

ミシング「あ、ごめんなさい!なんでしたっけ?」

司教「司祭様の件なのですが…」

ミシング「あーそれでしたら前に話した通りですよ!もう少し待っててください」

司教「せめて詳しい事情だけでもお聞かせ願えないか」

ミシング「んー…そう言われてもあたしもよく知りませんし」

司教「それではこちらが困るのです。司祭様の導きなく不用意に動く訳には…」

ギャーギャー ギャーギャー

ミシング「ほよ?」

教徒「また反対運動か、僕達に頼っても仕方ないのに…」

修道女「再び戦争を決断された国王様は城に籠ってますし、役人の方々は各地を沈静化なされようと尽力してて…私達にできることなんてあるのかな」

司教「ご覧の通りでしてな。我々も頭を悩ませるばかりです…」

ミシング「ほほーん!ちょっといいこと思い付いちゃったかも」ニシシ

司教「は…?」

ミシング「皆さんにも協力してほしいんですけどいいですかー?」

司教「それは構いませぬが…」

教徒「僕達にできることならなんでもします!」

修道女「でもいったい何を?」

ミシング「んーとね、愉快なこと!」

司教&教徒&修道女「???」
895: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/12(月) 22:18:19 ID:4a/V8q7lfc
―――王都(議場)―――

政務官「陛下不在の中、諸君の働きは実に懸命であると言えるだろう。
まだまだ改善の余地は多分に見られるがひとまずは良い結果が出せた」

ネバル「いやいやそんな」テレテレ

政務官「お前はまだ畜産業の再生計画を練り直してる最中だろうが!いい加減にまとめ案を提出しろ!何度言わせる気だ!?」

ネバル「ひっ…現地の皆さんとよく話し合って農耕地分配の段取りは固めましたです…!」

政務官「ふん…そちらは概ね好調か。再来年には市場まで持ち込めるんだろうな?」

ネバル「え、いやそれは実際に取り組んで土の質や出来栄えを見ない限りは…」

政務官「見込みはあるのか伺っているんだ。事前調査はしてあるんだろう」

ネバル「も、もちろんです。夏と冬さえ持ち越せば果物類から順々に!」

政務官「よろしい。引き続き農耕促進に励め。気を抜くなよ!」

ネバル「は、はいです…」

ネバル「(なんでオラばっかし怒られるですか…)」ズーン
896: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/12(月) 22:20:40 ID:4a/V8q7lfc
政務官「さて、ここで諸君に一つ伝えねばならぬ事がある」

ザワッ

政務官「各地で頻発していた民衆による反対運動だが…非常にまずい状態だ」

シーン

政務官「既に耳には入っているかもしれないが先日、城の警備に当たっていた衛兵が襲撃に遭い、数名が重体に陥った」

ネバル「やっぱり混乱は解けないですか…」

政務官「一部の話ではない。城下の住民は危機的状況に我を失い、城そのものを襲撃しようという声も出ている」

高官1「ダィール子爵、ソメリア卿、ロードホズ軍長が先頭に立って民衆を煽り、反乱者の支持を得ようとする動きが見られます」

高官2「このままでは陛下の帰還を待たずして内乱が勃発する可能性も大いにありうる!」

高官3「もとより貴族はあらゆる制限を課され、現在の体制に不満を抱いている。これを機に……ということは十分考えられますぞ」

高官4「こうしてはいられませんな。我々もすぐさま兵を……」

政務官「逸るな。我々が挙兵など企てればあちらに大義を持たせてしまう。事態が泥沼化するだけだ」

高官1「しかし早々に手を打たねば…!」

政務官「焦ってはいけない。我々までもが取り乱しては誰が城を守れる?」

高官1「それはそうでしょうが……」

政務官「まずは民衆の不安を取り除くのが先決だ。その為には教団の協力が不可欠になるだろう」

高官2「ですが司祭も陛下に伴って不在にしておりますぞ!」

政務官「問題ない。治安維持を任せるに値する適任者が名乗り出てくれた」

高官2「ほう!いったい誰が!?」

政務官「司祭の孤児院を預かるミシング院長だ」

ザワザワ ザワザワ
897: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/12(月) 22:24:54 ID:4a/V8q7lfc
政務官「彼女は司祭から全幅の信頼を置かれる優れた指導者だ。
陰ながら教団の活動を支えてきた功労者としても名高い」

高官3「ミシング……聞いたこともございませんな」

ネバル「おいら一回会ったことあるです!すごい陽気で愉快な人だったですよ!」

高官3「おほん!陽気で愉快はさておき…本当に任せられるのでしょうな」

政務官「あぁ、教団内の意見も彼女が司祭代理を務める方向で合致している」

高官3「…かしこまりました。そうまでおっしゃるなら手並みの程を拝見させていただこう」
898: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/12(月) 22:26:29 ID:4a/V8q7lfc
ネバル「でもそれだけで治まるですか?」

高官1「ふむ、民衆の理解を求めるのも然り。貴族の方々との接触が必要でしょうな」

高官2「ならば由緒ある血筋に掛け合ってみるのがよろしいかと」

高官3「だがダィール子爵も名家ハリアンス家の血族、ソメリア卿もまた名の知れた大御所です。その手の繋がりとなれば我々では及びますまい」

高官4「と、すれば買収か」

政務官「そのような無駄金にはたく予算はない」

高官4「は…?」

政務官「貴族との交渉はひとまず後回しでいい」

高官1「それはつまり…?」

政務官「民衆の信用を取り戻しさえすればダィール共は丸裸だ。今の内に好き勝手喋らせてやろう」

ネバル「???」

政務官「支持を得ていようと所詮は貴族、真に民の心など理解出来ていない」

政務官「勢い付いている今だからこそ付け入る隙が生まれるだろう」

政務官「それらの失言や過激な暴言を徹底的に記録し、いつでも追及出来るよう手元に置くのだ」

高官1「なるほど!うまくいけば自然に決着させられますな!」

高官2「結局は民衆の心を傾けた方に軍配が上がる訳ですか」

ネバル「おいらがやらしてもらった選挙とそっくりです!」

高官3「もし成功すれば貴族側は失墜し、発言力を失う…。だが敗れれば今後、貴族による政への介入を許してしまう…か」

高官4「そうなれば、またも王族と貴族に別れ、対立は激を増すことになりそうですねぇ」

政務官「それだけに失敗は断じて許されん。心して掛かれ」

高官's「ははぁっ!!」

政務官「(…まずは教団の出方次第だ。ここで一人でも多くの民を王国側に寄せてもらわなければな)」
899: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/12(月) 22:28:48 ID:4a/V8q7lfc
―――城下町―――

ワイワイガヤガヤ

修道女「はーい、ただいま混み合っております!列を乱さず順番にお並びくださーい」スッ

教徒「本日限定!青花の刺繍が入った衣服を配布してます!お越しの方は記念にどうぞ!」スッ

ゾロゾロ ゾロゾロ


ミシング「んー!やったね!大盛況!」

司教「ふむ、慰霊碑への参拝とは考えましたな」

ミシング「結局のとこ、みんなの不安はそこですからね。平和的に戦争を否定するには他にないかなーって」

司教「素晴らしい機転かと。おかげで過激思想を巡らせる者も減ったようで」

ミシング「それもですけど…未だに遺族の人たちは色々受け入れられない部分があるだろうから、ちゃんとお別れの日を決めておいた方がいいと思うんです」

司教「…そうですな。たとえ傷は癒えずとも、こうした行事があれば多少は割りきれる」

ミシング「そうしたからって何も変わらないけど気の持ちようですからね」

司教「ですがこれで民衆の不満は軽減し、教団の意向を示せましょう。それだけで大きな意味がある」

ミシング「…戦うか戦わないかで争うなんてバカみたいですもん。平和を望むなら、そういうやり方をしなきゃ」

司教「おっしゃる通り…では私は演説を控えているので」

ミシング「ビシッとお願いしますね!」

司教「私に務まるか不安だが」

ミシング「平気ですって!気持ちを込めて話すだけですから!」

司教「ほほ…なんとかやってみましょう」ニコッ
900: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/12(月) 22:36:05 ID:4a/V8q7lfc
司教「今日お集まりの皆様に教団を代表してお伝えしたい事がございます。どうか暫しの間、お付き合い頂けますでしょうか」

パチパチ パチパチ

司教「我々、民の願いは平穏無事に過ごす日々……それは決して破られてはならないものです」

ゾロゾロ ゾロゾロ

司教「しかし現在の方針は如何か。国は我らを戦場へ導こうとなさるおつもりだ」

司教「多くの血を流し、多くの死者を生み、多くの涙が滲んだ……あの悪夢に再び魘されようとしておられる」

ソーダソーダ!ソノトーリ!

司教「これは教団と致しましても由々しき事態と捉え、皆様の後押しもあり、此度は反対運動に力を尽くす運びとなりました」

司教「今こそ真の平穏を勝ち取る時!もはや種族や貧富になど構っておれません!」

司教「この国を愛する民である!!それ以上の絆がございましょうか!?」

オォォォオオオオッ!!!

司教「教団は戦争を許しません!尊き命を授かりし民の血を一滴も流させないと、ここに誓いましょう!!」

ワァァァアアアアアア!!!
901: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/12(月) 22:40:00 ID:4a/V8q7lfc
―――城(応接間)―――

政務官「実に見事だった!感謝のしようもない!!」ガバッ

司教「そ、そのような!政務官様に頭を下げられてはかないません!」アセアセ

ミシング「そうですよー!別に大したことしてないですし!」

政務官「いや、十分だ!我々の期待を上回る働きだった!」

ミシング「えーでも皆さんを敵に回すような発言しちゃいましたよ、司教のおじさんが」

司教「わ、私はただミシング殿に言われるまま喋っただけで!」アセアセ

政務官「あれでいい。民衆の心が貴族と役人の対立から外れ、第三の手に渡った事が重要なのだ」

ミシング「そうなんですか?」

政務官「あぁ、おかげで揉める事なく問題が解消された。暫くは国内の乱れも治まりそうだ」

司教「おぉ!それは実に喜ばしい!」

政務官「…然るにこの一件、深い遺恨を残したホビットと人との調和を取りなす意味もあったのだろう?」

ミシング「……見破られちゃいました?」テヘッ

司教「は?そうだったのですか!」

政務官「そこも含めて陛下共々、最も頭を悩ませてきた課題だけにありがたい」

ミシング「和睦は成立しても差別を無くすってとこが難しかったですもんね。
でもこうやって少しずつ一体感を覚えていけば、いつか実を結ぶんじゃないかなと!」

司教「ほほう…そこまで見越しての…!」

ミシング「ま、思いつきなんで…そう上手くいくか分からないですよ」

政務官「そんなことはない。今日という日は王国の平穏に結び付く歴史的日となる」

ミシング「…だといいんですけどね」

政務官「その為にも…一刻も早く西国との戦争を決着させ、陛下に帰還いただかねばな」

司教「帰還…?陛下は城内におられるのでは?」

政務官「……そうだな。言葉を間違えた」

ミシング「……」

司教「……?」
902: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/14(水) 22:06:09 ID:Jfx4ihZFO.
―――東の国(王宮)―――

ミリア「もう一度、読み上げてくださる?」

東の大臣「はっ…!親愛なる盟友、東国のお妃ミリア様へ……」ペラッ

ミリア「…内容のみで結構です」

東の大臣「失礼しました…!」バサッ

ミリア「いえ……」

東の大臣「此度の戦争、盟約を結びし友好国としてまことに遺憾……」

東の大臣「平和協定の名を汚した罪は重く、盟の意に反する争乱を糾弾せねばならない」

東の大臣「同盟国の代表として北国より命ずる。三国連合を破棄し、条約の改正を受け入れよ」

東の大臣「東、南の両国は禁を破りし大罪を認め、自国の保有する財産を以て平和協定加盟国へと賠償すること」

東の大臣「領地の一部を没収とする。両国代表ならびに両国民の権利を一部剥奪する」

東の大臣「軍の解散を命じる。貯蔵する武具の始末を命じる。戦争に関わった兵及び役人の処刑を命じる…」

ミリア「……」
903: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/14(水) 22:08:39 ID:HRmJsGwD6k
東の大臣「くっ……」クシャッ

ミリア「どうぞ読み上げてください…」ニコッ

東の大臣「東国を代表するミリア様の王位を返上せよとのこと……!」ギリッ

東の騎士「実質、追放ではないか…!」

ミリア「そうですか…」

東の大臣「くそっ…!くそっ!!」グシャグシャ

東の騎士「なぜだ!!平和を取り戻すべく死に物狂いで戦った我らがなぜこのような仕打ちを受けねばならぬ!?」ダンッ

ミリア「……」

東の大臣「北国め!さんざん西国の危険を訴えたにも関わらず静観に徹し、よもや味方を背後から刺してきおったわ!!」

東の騎士「奴らはいったい何を見てきたのだ!分からぬ物でもなかろうに……なんたる醜さよ!!」

ミリア「…憤慨なさるお気持ちは重々。ですが落ち着いて」

東の大臣「いいえ落ち着けませぬ!!なぜ落ち着けましょうか!?」

東の騎士「王国も南国も世の秩序を保つ為に血を流したのです!それを奴らは……奴らは裏切りで返したのでござるぞ!?」

ミリア「…分かっています。私も悲しく……怒りさえ覚えました」

東の大臣「……!」

ミリア「しかしこの条件を呑まなければ北国は軍を差し向け、弱りきった我が国を民もろとも容赦なく殺戮するでしょう」

東の騎士「ぐ、グヌゥ…!」ワナワナ

ミリア「これは現実……避けられない運命なのですよ」

「お邪魔するよー!」ザッ

ミリア「……?」
904: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/14(水) 22:10:13 ID:HRmJsGwD6k
ミリア「あ、あなた方は…」

ルイ「ども!」ニカッ

酋長「ふん…無駄に広い場所に住みおって」ジロジロ

東の大臣「な、なぜここに…!?」

東の騎士「里へ帰ったのではなかったのか!?」

酋長「うぬらがいつまでも約束を先延ばしにするから、こうして出向いてやったんだ」

ルイ「お城にはヒメから貰った証書があったから楽に入れちゃったよ!」

東の大臣「あ、あの証書は私がヒメ国王にお譲りした…!?」

東の騎士「か、勝手に渡したのか…!」

ミリア「ヒメくんったら…お茶目さんですのね」クスッ

酋長「ふん…ホビット族の独立を認めん気じゃないだろうな」

ミリア「話は伺っておりますわ。回答を遅らせて申し訳ありません…」

酋長「チッ!とろい…!これだから人間は……」

東の大臣「なっ…!」

東の騎士「聞き捨てならぬぞ!」

酋長「やかましい!」

ルイ「まーまーそう喧嘩腰にならないでよ、お爺ちゃん」

東の大臣「だいたいこちらはそれどころじゃ……」

酋長「それどころだと!?誰のおかげでぬくぬく生き延びてられると思っているんだ!?」イラッ

東の大臣「くっ!」

ルイ「もー…すぐカッカしちゃうんだから」

ミリア「ふふ……」
905: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/14(水) 22:11:49 ID:HRmJsGwD6k
酋長「土地を早く明け渡せ!いつまで待たせるつもりだ!」

ミリア「そうして差し上げたいのは山々なのですが……」

酋長「なにぃ…?」

東の大臣「そうもいかなくなってな…」

東の騎士「う、ぅむ…」モゴモゴ

酋長「…貴様ら、そんな言い分が通用すると思っているのか?」ギロッ

ミリア「……申し訳ありません」キュッ

酋長「ふざけるなぁ!!!」ガァーッ

ルイ「お、お爺ちゃん!」アセアセ

酋長「これは立派な裏切りだ!!儂らだけではない……ホビット族への侮辱としか思えぬわ!?」ビキビキィッ

ルイ「な、なにか事情があるんだよ!話だけでも……」

酋長「話す余地などない!!こいつらなど所詮…どう足掻いても人間なのだ!!」

ミリア「……」

酋長「己らが窮地に立たされれば甘え、平気で利用し、切り捨てる!!それが人間だ!!」

ルイ「……!お、王妃様もなんとか言ってよ!」

ミリア「弁明のしようもございません…」

東の大臣「確かに……仰る通りだ」

東の騎士「うむ…今なら貴公らの言葉も頷けよう」

酋長「あぁん…!?どういうつもりだ!開き直りか!?」

ルイ「やっぱり何かあったんだよ…。じゃなきゃ、こんなに辛そうな顔しないよ」

酋長「チッ……分からん奴らだ。事情があるなら曖昧にするな!はっきりせい!!」
906: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/14(水) 22:14:02 ID:HRmJsGwD6k
東の騎士「〜〜〜といった次第でござる」

酋長「ふん…内輪揉めか。くだらん」

ミリア「大恩ある皆さんにはきちんとお礼申し上げたいと思っていましたが……このままではお約束を果たせそうにありませんの」シュン

ルイ「な、なんでよ!そんな理不尽な要求断っちゃえばいいじゃん!」

東の大臣「断れるものか…。力を失った我々に……」

酋長「情けない…。先の戦いで少しは骨のある人間もいるものだと感心したが結局は腑抜けの集いか」

東の騎士「っ…!!」ギリッ

ルイ「う、ウチらも戦うよ!それなら……」

ミリア「お気持ちだけ……」ニコッ

ルイ「どうしてさ!前の戦いで活躍したじゃない!」

東の騎士「以前の戦いとは訳が違う…!」

ルイ「へ?」

東の騎士「あの戦いはあくまで王国軍と西国軍の衝突が主であり、我々は伏兵とした形で敵の虚を突いたからこそなし得た勝利…!!」

酋長「むぅ……」

東の騎士「今回は欺きようもない真っ向からの戦いとなる…!貴公らを活かす策も地の利もない!闇雲に立ち会えば確実に負けるぞ!!」

ルイ「う……!」
907: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/14(水) 22:16:39 ID:HRmJsGwD6k
ルイ「じゃ、じゃあ他の国に頼るのは!?ヒメとかさ……」

ミリア「ヒメくんは今、自国の問題に悩まされ、それどころではありません」

ルイ「そんな…!」

東の大臣「南国も我らと同様だ。おそらく全ての条件を呑み、降伏に徹することだろう」

酋長「使えんな…。どいつもこいつも」

ミリア「ですから皆さんはどうか一足先に避難を……」

酋長「避難だと?馬鹿にするな!」

ミリア「え…?」

酋長「東の地が奪われるということは即ち儂らホビット族の住み処も奪われるということだ!」

ミリア「……?」

酋長「お前達など、どうでもいいが儂らの地まで荒らそうとほざくなら受けて立つ!」

東の騎士「お、おい、聞いておったのか…?勝ち目など……」

酋長「黙れ腰抜けが!?なにもしない内から怖じ気づきおって!?」

東の騎士「……!?」

酋長「儂は戦うぞ!逃げ隠れし、略奪を許すなんぞもっての外だ!!」

酋長「欲にまみれた人間共を一匹残らず殺し尽くしてやる!!!」ギンッ

ルイ「お爺ちゃん…!」パァァ

ミリア「…お噂通り、血気盛んな御仁でいらっしゃいますのね」

酋長「せいぜい指をくわえて見ていろ!腰抜け共め!?」

東の騎士「くっ…!」ググッ
908: ◆WEmWDvOgzo:2016/12/14(水) 22:19:11 ID:HRmJsGwD6k
ミリア「はぁ……どうして私の周りはこうも諦めの悪い方ばかりなのでしょう」

東の騎士「お、畏れながら……」プルプル

ミリア「……」チラッ

東の騎士「某も彼らにお供仕りたいと…!」

ミリア「ふふ…殿方とは皆、そうしたものなのかしら」クスッ

東の大臣「い、いけませぬぞ!もし負ければ全ての民が……築き上げた文化が……!」

ミリア「そうなれば……それまでとしましょう」

東の大臣「ま、ま、お待ち……」

東の騎士「お妃様…!」

ミリア「東国はこれより……北国との友好を破棄し、全面的に戦う意を表明致します」

ルイ「やったぁ!」ピョンッ

酋長「なにを喜んどる!こいつらなど足手まといだ!」

東の騎士「そう申すな!また共に再起と参ろうではないか!」

東の大臣「は、始まってしまうのか…。また……」

ミリア「(そう、これは……終わらない争いの再来)」

ミリア「(もう誰にも止められない……長い長い時代の渦に巻き込まれる……)」

ミリア「(……いえ、違う。きっと、もう……亡き陛下とヒメくんが手を取り合った時から既に始まっていたのでしょう)」

ミリア「(争いが争いを呼ぶ、この愚かな時代は……どのような代償を払って結末とするのかしら)」フッ
909:名無しさん@読者の声:2017/1/14(土) 22:30:37 ID:phX.jLhYDY
保守
910:名無しさん@読者の声:2017/2/16(木) 08:38:02 ID:aotAc0vzsc
ほしゅ
911:名無しさん@読者の声:2017/2/22(水) 14:01:05 ID:4UVZj/rlsA
ようやく追いつけました〜

うーん……、好きだから最後まで読みたいけど終わって欲しくなーい!でも読みたい!矛盾!

作者さんのペースで頑張ってください
応援しています
C
912:名無しさん@読者の声:2017/3/12(日) 16:38:05 ID:I9rRRmuB5o
しゅ
913: ◆WEmWDvOgzo:2017/3/12(日) 21:49:30 ID:XiUVsR3VT.
〜〜〜夢(カロル)〜〜〜

か…ろる……かろ…る……カロルよ……

カロル「……」スヤスヤ

目を覚ましましたか?

カロル「ん……」パチッ

まだ眠りにつくのは早いですよ

カロル「だ、れ…?」ムニャムニャ

はじめまして

カロル「どこ…?」キョロキョロ

走馬灯です

カロル「そうま…とー?」ボーッ

まだ眠たいようですね

カロル「うん…ボク、いつ寝たんだろ。あんまり覚えてないや」ゴシゴシ

本当に覚えていませんか?

カロル「へ…?」パチクリ
914: ◆WEmWDvOgzo:2017/3/12(日) 21:50:21 ID:XiUVsR3VT.
あなたは今、死に向かっています。
あなたの愛した人たちと共に

カロル「ボクが…みんなと……あっ!」ハッ

思い出しましたか?

カロル「ここはどこなの!?戻らなきゃ!?」アワアワ

落ち着いて、落ち着いて

カロル「早く戻らないとみんなが死んじゃうよ!」アセアセ

えぇ、そうなるでしょうね

カロル「……!?」

しかし戻ってどうするのです?

カロル「ど、どうって…助け……」

助けられますか?

カロル「……?」

説得に応じない、武力でも敵わない、そもそも争いを望まないあなたが
戻って彼らを助けたとして、また襲い来る魔の手から守れると想えますか?

カロル「っ……」

傷を癒しても、新たな傷を刻まれる
苦痛は重なり、心の恐怖は消えない
癒しの力に頼るだけでは大切な仲間を救えません

カロル「……」シュン
915: ◆WEmWDvOgzo:2017/3/12(日) 21:50:59 ID:sL1tEWAnpc
あなたは現実に目の前で殺されるお友達の無残な姿を受け止められますか?

自分の無力さを受け入れられますか?

そうさせた相手を恨まずにいられますか?

不条理に尽きる世界を……愛せますか?

カロル「そんなの……」プイッ

わたしはかつて多くの人々とふれあい、きらめく世界を夢見ました
あなたのしたように……穢れのない生き方をしてきたつもりです

カロル「……」

清く正しく美しく、とはいきませんが
それはあなたも同じこと
時に傷付き、時に悩み、時に荒み、時に諦め、泥臭くもがいてきたものです

カロル「……」

そう生き続けた日々は悔しくもあり、哀しくもあり……遂には希望を棄てた
誰が聞いても愚かで投げやりな結末、だからこそ人はこの運命を避けようと改める
わたしにとっては失敗でしたが未来への教訓にはなれました
916: ◆WEmWDvOgzo:2017/3/12(日) 21:52:52 ID:sL1tEWAnpc
この身が魂となって大樹に宿り、世界を眺める
ただそれだけに費やした300年という月日
観測者というのはあまりにもどかしい役割です

けれど……この300年はわたしのいた時代と程遠く豊かに育ち
過ぎ去る平穏と争乱に一喜一憂するのも悪くはなかった
なにより、立ち会えなかった未来を覗けるなんて夢のよう

……あなたが生まれてくるまでは

カロル「!」

わたしはアピシナ。癒しの力を使い、争いの源となる大樹を産み出した戦犯
そしてあなたもまた……わたしと同じ道を辿ろうとしている

カロル「アピシナ…さま…!?」

あなたの存在は幾度もの混沌、再びの争い、欲望の坩堝へといざなう
そしてあなた自身、誰よりも深く悟っているはず

カロル「〜〜〜!」キュッ

己は"災い"なのだと

カロル「ボクはっ…」

あの時、割れた酒瓶で胸をえぐられたあなたは
回復する術を持っていながら使おうとはしなかった

カロル「」ドクンッ

お友達や家族を思い浮かべ、命を手放そうとした

カロル「や……」ブルッ

なぜ?

カロル「わ、かん…な……」ブルブル

……………

カロル「……」ブルブル
917: ◆WEmWDvOgzo:2017/3/12(日) 21:55:28 ID:XiUVsR3VT.
……本当は気付いていますね?

カロル「……!」

優しいあなたが、誠実なあなたが、悪意なきあなたが
大勢を不幸に陥れている事実

カロル「ふ、ぐ……」ツツー

あなたを愛してくれた家族

あなたが信じるお友達

あなたに敵意を向ける人々

あなたの力に心惹かれる者たち

癒しの力は誰も幸せにしません
あなたを含めて、誰も……

カロル「ふ、ぅ…ぅ…」ポロポロ
918: ◆WEmWDvOgzo:2017/3/12(日) 21:56:40 ID:XiUVsR3VT.
それらを踏まえてもなお
あなたはあの世界に残っていたいと望みますか?

カロル「ひっ…く……」グスグス

幸せになどなれないのに生きることを選びますか?

カロル「っ…っ……」ギュッ

わたしにはあなたの気持ちがよく分かります
なぜならあなたはわたしだから
あなたを分かってあげられる唯一の理解者だから

カロル「ボク…は……」ジッ

そうです。今こそ本当の答えを見つける時
本心から言葉を紡ぎ出しなさい
恐れずに……あるがまま

カロル「ボクは……」
919: ◆WEmWDvOgzo:2017/3/12(日) 22:01:55 ID:sL1tEWAnpc
カロル「ボクは生きたいっ!!」

……………生きたい?

カロル「生きて!またみんなといたい!」

それはまた皆を不幸に………

カロル「ちがうっ!!」

……………

カロル「アピシナさまのお話は分かるよ…!でもボクはアピシナさまじゃない!」

そうでしょうか?
わたしとあなたは……

カロル「そっくりだよ!でもおんなじじゃない!」

カロル「癒しの力があって、ホビットで、似てるかもしれないけど…!」

カロル「出会った人も生まれた時も育ててくれた親もちがう!」

カロル「ボクはボクで……アピシナさまはアピシナさまだよ!」

……………

カロル「…だから、やめてよ。そんな風に…悪く言わないで」ズズッ

……やはり受け入れられませんか?
自分が他を脅かす"災い"だと……

カロル「アピシナさまは誰も不幸にしてないよ」ウルウル

は……?

カロル「だって誰も……アピシナさまを恨んだりしてない」グズッ

………まさか、わたしの為に泣いていたのですか?

カロル「自分を好きになれないのは悲しいよ…。ボクも、そうだったもの」ヒック

…………
920: ◆WEmWDvOgzo:2017/3/12(日) 22:08:02 ID:XiUVsR3VT.
カロル「おねがい…。ボクをみんなのいる所に戻して」

まだ希望を棄てないのですか…
今を乗り越えられたとしても、あなたが生き続ける限り不幸は終わりませんよ

カロル「…みんなもそうだよ」

…………?

カロル「幸せと不幸せを繰り返して生きてる」

カロル「ボクやアピシナさまだけじゃなくて、みんな」

あなたは……怖くないのですか?

カロル「怖いよ。でも怖がるだけじゃダメ」

カロル「ボクがみんなを失うのが怖いみたいに……きっとみんなもボクを必要だと思ってくれてる」

カロル「怖くても、やるせなくても一人じゃないから」

カロル「だから一緒に生きていきたいの」

カロル「それがボクの幸せなんだ」ニコッ

……仲間に必要とされたまま過ごせると本気で信じていますか?
自分を嫌い、自分に好意を向ける人たちを不安に思っていたあなたが

カロル「」コクッ

……どうしてそう強く言い切れるのです?
しつこいようですが、この先も幾度となく……

カロル「…たくさんのことがあったよ。ツラいことも嬉しいことも」

カロル「でもそのたびにともだちができたんだ。ツラいのなんて忘れちゃうくらいステキなみんな!」パァァ

…………

カロル「みんなのおかげでボクもやっと自分を好きになれそうなの」ニコッ
921: ◆WEmWDvOgzo:2017/3/12(日) 22:09:46 ID:sL1tEWAnpc
ふふ………

カロル「……?」

あなたのお友達も似たような答えを出していましたよ

カロル「え?」

挫けない訳です
こんなに前向きなんですもの
あなたも……あなたのそばにいる方々も

カロル「アピシナさま…」

試すような真似をしてごめんなさい、カロルくん
あなたにわたしの言葉など要らなかったでしょう

カロル「…ううん、大事なこと、たくさん思い出したよ。ありがとう。アピシナさま!」ペコッ

……わたしの方こそお礼を言わせてください
夢を見させてくれてありがとう
あなたの軌跡はわたしに希望を思い出させてくれました

カロル「……」ニコッ

人とホビット、異なる種族の生きる道は限りなく照らされた
思い残しはありません
これでもう……わたしの役目は本当に終わり

カロル「終わりって…?」

さようなら。癒しの力を継ぐ少年
たとえ世界は変わらなくても、あなたの見る世界が満ち足りたものでありますように

カロル「待ってよ!消えちゃうの!ねぇ!」

さぁ……お戻りなさい
あなたを待つ方々のもとへ

カロル「アピシナさま…?アピシナさま!」

シュワァァァァァァァァァアアアン………
922: ◆WEmWDvOgzo:2017/3/12(日) 22:31:06 ID:sL1tEWAnpc
長らく放置して本当に申し訳ありません…
支援してくださった方々、保守してくださった皆様、ありがとうございます!
すごく嬉しかったですし本当に勇気づけられました!

支援スレの283さんのレスを見て笑い転げると同時にとても感動しました!
1スレ目からのエピソードやほとんど出番のないキャラの名前など深く読み込んでいただけてるのが伝わって、言葉にできないくらい嬉しかったです!
かれこれ30回は読み返して、もはや暗記するレベルにまで達してしまいました!
おかげさまで改めて自分のSSを1から読み返す機会にもなり、原点回帰できた気がします!
本当にありがとうございました!

>>911
すみません、かなり間が空いてしまいました…。
更新する更新すると口ばかりで長引かせて、謝るのもこれで何度目かと…
再三、優しさに甘えてしまう形となって本当に申し訳ありません…
こんなとろい自分を励ましてくださってありがとうございます!
今度こそ口ばかりで終わらないように更新を頑張ります!
923: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:02:07 ID:u8oh19UNDM
―――西の国(地下迷宮)―――

魔導師「ずいぶん散らかしたものだねぇ。後処理が大変だ…」ジロジロ

ファルージャ「腐らせておけばよい…。死なば、ただの肉塊よ。いずれ地の底へ還るわさ」

魔導師「地の底か…自分も、いずれはそこに堕ちるのかね」

ファルージャ「恐ろしいのかえ…?」

魔導師「…そりゃあね」

ファルージャ「案ずるな。そなたの見た目ほど恐ろしいものはなかろうよ」クスッ

魔導師「……」

ファルージャ「惑わされるでない。妾とそなたは確かな愛で結ばれておる?」サスッ

魔導師「この命は女王に預けてある。だから…その時が来ても躊躇いはしないよ」

ファルージャ「良い子じゃ?」ニヤリ
924: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:02:39 ID:u8oh19UNDM
ズォォオオオン………

カロル「」グッタリ

宣教師「」グッタリ

ラム「」ベチャア

団長「」グッタリ

フィクサー「マ、ダだ……!」ググッ

魔導師「おや…まだ生きてるのかい?そろそろ時間切れだろうけど」

フィクサー「王ノ首……!奪ワナケレバ勝利ではナイ…!!」ミキミキィッ

ファルージャ「王……あぁ」チラッ

ヒメ「」グッタリ

魔導師「だとさ、どうする?」

ファルージャ「好きにせよ。そやつの首になど関心ない」クスッ

フィクサー「ヴグフ…ヴフファァア…!!」ザッ

ヒメ「……」パチッ

フィクサー「ガァアアアアハハハハァ!!!」ジャキッ

ドスッ!

フィクサー「ヴムグっ!?」ガクッ

ヒメ「誰の首を取るっ…て!?」ズボッ

フィクサー「アァグッ!!」ブシュッ

ファルージャ「ンゥ…?」
925:容量と残りレス数が心配 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:05:24 ID:u8oh19UNDM
魔導師「うわ…痛そう。脛ザックリ刺された」ドンビキ

フィクサー「グ、オェォ…!ギザマァ…!!」ダラダラ

ヒメ「(ファルージャ…!?)」ハッ

ファルージャ「息のある者が残っていたか。なんたるしぶとさよ」

ヒメ「(気絶してた間に癒されたのか…。身体が軽い…。けど、なぜみんなが倒れてる?)」チラッ

ファルージャ「ほとほと呆れるわ…。そなたらは何度、妾の前に立ちはだかろうというのか」フー

ヒメ「(状況が読めない…。だが確実に悪い予感がする…!)」ギロッ

ファルージャ「フィクサー!」

フィクサー「」ビクッ

ファルージャ「誰が膝を付けと申した?」

フィクサー「ウッ……ゥウグ」ググッ

ファルージャ「もたつくな。情けない男は好かぬぞ」

ヒメ「(フィクサー…そうだ、あいつにやられて、そこから記憶が……)」
926: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:05:47 ID:u8oh19UNDM
ファルージャ「…そなたで最後となろうか」ジッ

ヒメ「……!?」ジャキッ

ファルージャ「ふむ。青いが、瑞々しい」クスッ

ヒメ「仲間に何をした…!」カッ

ファルージャ「熟した実の肉々しい甘味も良い…。なれど未熟さもまた味よ」

ヒメ「質問に答えろ!」ズイッ

ファルージャ「クスス…その反抗的な眼差し。噛みごたえのありそうな?」フッ

ヒメ「……!」ゾワッ

ファルージャ「ちょうど三銃士も欠けておること。そなたに一席預けてもよいぞ」

ヒメ「なに…!?」

ファルージャ「妾に忠誠を誓ってもよいと…そう申しておるのじゃ」ニタァァァ

ヒメ「ふざけるな!誰が……」

ファルージャ「ならばそこに転がる仲間と運命を共にするか?」

ヒメ「なっ…!」

ファルージャ「なぁに。難しいものでもない。生きるか死ぬか、ただそれだけのこと」ニヤニヤ

ヒメ「お、おまえ…!」

ファルージャ「…女の誘いには黙って頷け。それが男の甲斐性というものぞ?」ニヤニヤ

ヒメ「〜〜〜!」ギリッ

ファルージャ「返事は…?」ニヤニヤ

ヒメ「死んでも断る!!」キッ

ファルージャ「……馬鹿な男」ボソッ

フィクサー「ウゴォアアアア!!!」バウンッ

ヒメ「くっ…!?」サッ

バゴォォン!

フィクサー「ヴゥグルルル…!!」ガラッ

ヒメ「(っ…石床がひび割れた!?なんて怪力だ…!)」チャッ
927: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:06:32 ID:u8oh19UNDM
フィクサー「ハァグアアァア!!!」バウンッ

ヒメ「!?」ピョンッ

ゴシャアッ!!

ヒメ「あっ…つ…!」ゴロゴロ

魔導師「」ヒュッ

ヒメ「うっ…!」バサッ

ビシャッ

魔導師「咄嗟にマントで防いだかぁ…。素早い判断だねぇ」ゴソッ トプンッ

ヒメ「…起きろカロル!!なにやってるんだ!?」ムクッ

カロル「」クタァァ

ヒメ「おまえが倒れたら誰が仲間を助けるんだ!?癒しの力はおまえにしかないんだぞ!?」

魔導師「ムダムダ。呼び掛けたって聞こえやしないよ」

ヒメ「諦めないのがおまえの取り柄だろ!?諦めたらおまえに何が残るんだ!?」

カロル「……」

ヒメ「家族や仲間を失う前に自分を失ってどうする!?」

ヒメ「おまえが守ろうとした絆は…おまえ自身にも繋がってるんだぞ!!」

カロル「」ピクッ

ヒメ「起きろ!起きて救え!仲間も自分自身も!!」

フィクサー「グラァアアッ!!」ブゥンッ

ヒメ「うっ…!」ササッ

ガァァンッ!!

ヒメ「(防いでも吹き飛ばされかねない剣圧だっ…!こいつ、いったい…!?)」サッ
928: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:11:32 ID:7TPSqG30CI
ファルージャ「フゥ〜…無意味よな。声を枯らしたとて死人には響くまいに」

魔導師「叫ぶしかないのさ。絶望に立たされたら…」

ファルージャ「それで何が変わると言うのじゃ?」

魔導師「何も……ただ虚しいだけ」

ファルージャ「つまりは無意味ではないか」

魔導師「…そう。無意味だよ。助けを求めるなんて……」

ファルージャ「フゥン。往生際の悪いこと……パカラゥロ」

魔導師「ん?」

ファルージャ「出し惜しみせずともよい。一思いに始末なさいな」ニヤッ

魔導師「……」

ファルージャ「ン…?いかがした?」

魔導師「いやぁ……うん、分かったよ。危険だから女王は避難してて」

ファルージャ「…なんぞ気掛かりかえ?」

魔導師「別に…あんなのに使うのはもったいないと思っただけさ」

ファルージャ「あやつは妾を侮辱した。そこらに転がる仲間も……捨て置く訳にはいかぬ…。
女として、魔性の異名を取る妾の誇りがあやつらの存在を許せぬのよ」

魔導師「そうかい…。それは良くないねぇ」

ファルージャ「…この世界は無情なるモノ。一つの輝きを得る為にはいくつもの代償を払わねばならぬ。
妾の魅力は虜となる有象無象がいて初めて成り立つのよ」

ファルージャ「なれば…その価値を認めぬ輩は排除せねばなるまい?」

魔導師「……」

ファルージャ「妾の為…頼んだぞ?愛しき従者よ?」ナデリ

魔導師「」コクッ

ファルージャ「では地上で待っておるぞ?」ヒタヒタ

魔導師「うん、すぐ行くよ…。待っていておくれ」

ヒタヒタ ヒタヒタ………

魔導師「………」
929: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:13:11 ID:u8oh19UNDM
ドゴォッ!

ヒメ「くそっ!どうなってる…!急にこんな怪力……」

フィクサー「グッ!ブフゥウ!!ムゴハッ!!」ゴホゴホ

ヒメ「(吐血…?)」

フィクサー「バァオ゛…!グフゥゥ…!」ゼェゼェ

ヒメ「(苦痛に呻いてる。突然の豹変と何か関係があるのか…?)」

魔導師「やれやれ」ザッ

ヒメ「!」ピクッ

魔導師「いつだってそうさ。自分らは玩具。気まぐれに翻弄されて、飽きられたら棄てられる」ボソボソ

ヒメ「(まずいな。一人でも手一杯なのに…カロルたちも目を覚まさないままだし)」アセアセ

魔導師「だけどそれでいいんだ。遊ぶのも棄てるのも満たされた上での特権。自由を楽しんだ証拠」ゴソッ

ヒメ「(また何か容器を取り出した…。液体じゃなさそうだが……)」

魔導師「この世は彼女の楽園さ。全ての喜びは彼女に恵まれる。だから美しいんだ。恵まれた彼女は」カパッ

ヒメ「(仮面を外した…?)」ピクッ

魔導師「ふぅ」スッ

ヒメ「……女!?」ギョギョッ

魔導師「自分も一緒になんて浅ましかった。楽園に住めるのはただ一人……」キュッ

シュコォォォ

ヒメ「!」ハッ

魔導師「う゛っ!!ぐえ゛っ!!」ギュウウ

ヒメ「(こ、れは…猛毒の霧、か!?)」ゴボッ

魔導師「さぁ、君も自分も糧となろう。彼女を楽園に導くんだ…っ」サァァ

ヒメ「おまえっ…っ!」クラッ
930: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:14:06 ID:u8oh19UNDM
フィクサー「グモォッ…ムグッ!ヴゥガァアアア!!!」ジタバタ

ヒメ「う゛……お゛ぅえ」バタッ

魔導師「うぶ…ふぅえ…!」クラッ

魔導師「(くるしい…。こんなに……自分で作ったとは…おもえないなぁ)」ケホッ

魔導師「(ま、それもそうか…試したことなんてないし)」ガクガク

魔導師「あぐぅ…!」ガシッ

魔導師「(息がまるで、大量の砂を飲まされてるみたいだ。喉に…空気が通らない…!)」ガクッ

魔導師「(この苦しみも……女王の喜び……あぁ…)」ウツラウツラ

魔導師「(死……死……死が……女王の…ため…死……死!)」フッ

魔導師「(死…!!)」ゾワァッ

魔導師「〜〜〜!」ゾクゾク

魔導師「ひ、ひぃ。ひぃぃ…」ズルズル

魔導師「うぇっぐ!ごふ……」コヒューコヒュー

魔導師「う……」ギュッ

魔導師「(女王……)」ウルッ

魔導師「(…じょ、お…う!)」ボロッ

パァァァァアアアア!!!
931: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:16:58 ID:7TPSqG30CI
シーン………

ヒメ「な、なんだ…なにが、起きた?」パチクリ

カロル「う…ん」ムクッ

ヒメ「カロル…!」

カロル「あ、ヒメくん…」ムニャッ

ヒメ「お、おまえがやったのか……今の…」

カロル「今の…?」キョトン

ヒメ「突然、ヤツが撒いた毒の霧が晴れたんだ!おまえじゃないのか?」

カロル「あ……」

ヒメ「え?」

カロル「アピシナさま…」ホワンホワン

ヒメ「アピシナ…?大樹を育てた伝説の…?」

カロル「…少し夢を見てたみたい」ニコッ

ヒメ「夢…?」

カロル「あんまり覚えてないけど、いい夢だったよ」ニコニコ

ヒメ「はぁ?」チンプンカンプン

カロル「ヒメくん」ジッ

ヒメ「? な、なんだよ?」タジッ

カロル「みんなで帰ろう!」

ヒメ「!」

カロル「約束だよ?」ウインク

ヒメ「あぁ、当然だ!!」グッ

カロル「ふふ、なんだろ。ふしぎな気分」クスクス

ヒメ「?」

カロル「こういう気持ちになれるから頑張ろうって思えるんだろうね」ニコニコ

ヒメ「そうかもな…」ニコッ
932: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:18:53 ID:u8oh19UNDM
魔導師「そうか…そんなことも出来るのか」ジャリッ

カロル「?」

ヒメ「!」ハッ

魔導師「完敗だよ。成す術もない…。やっぱり本物は違うなぁ。君は特別だ」ボソボソ

ヒメ「……?」

魔導師「は、はは…は……」ブルッ

カロル「パカラーロさん、もう…」

魔導師「…偽物」ガリッ

カロル「!?」

魔導師「偽物だ、こんな……化け物のふりも、散々だ」ボリボリ

ヒメ「(か、顔を掻きむしってる…?)」

魔導師「醜さが、醜さが欲しい。女王が愛してくれた、醜さが」バリバリ

カロル「やめなよ!血が出てる!」パシッ

魔導師「触れるなぁ!!」バチンッ

カロル「っ……」ゴクリ

魔導師「血が乾かない…。息苦しさがない…。腹の底から冷えきった、あの感覚がない…」ボリボリ

カロル「パカラーロさん!」アセアセ

魔導師「……触れるだけで傷も、毒も、苦痛も、歪みも……」ブルブル

カロル「パカラーロ…さん?」

魔導師「自分から"特別"がごっそり消滅した…」

カロル「とくべつ…?」

魔導師「怖い力だよ。黒魔術なんかより、よっぽど恐ろしい。まるで過去を無かったことにされたみたいだ…」

魔導師「仰々しく覆うローブも目深に被ったフードも素顔を秘めるマスクもまやかしだ…」ブツブツ

魔導師「…もう、誤魔化しきれない」キュッ

ヒメ「…事情がよく飲み込めないが要は利用されてるだけじゃないか。なんでファルージャに固執するんだ?」

魔導師「……」ピタッ
933: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:22:24 ID:7TPSqG30CI
魔導師「ん、ふふ……ふふふ」プルプル

ヒメ「な、なんだよ。いきなり笑いだして?」

魔導師「なにも分かっちゃない…」

ヒメ「……?」

魔導師「献身と享受。それが愛だ。自分らなんかは献身、女王はもちろん享受。利害なんて求めてない」

ヒメ「あ、愛…?」

魔導師「自分は昔、思い知った。ある国から連れ去られて…何年もこの地下に閉じ込められてから」

ヒメ「連れ去られた…?」ピクッ

魔導師「可笑しくなるくらい不運だった…。どれだけ待ちわびても幸運の兆しなんて訪れなかった…。呪ったよ。不運を。その裏側にある真実も」

魔導師「故郷、家族、友達、覚えてる限りの絆……当たり前に信じてた繋がりは全部、全部まやかしだったのさ」

ヒメ「おまえ、まさか……」ハッ

魔導師「……愛されてなかった。だから自分には不運しか訪れなかった」

魔導師「だけど彼女は違う。愛された。幸運に満ちてた。自分の不運を感謝したいくらい、美しかった」

魔導師「全てを捧げる喜びが自分を生かしてる…。女王との間にあるのは至純の愛だけさ」

ヒメ「共依存関係だ…。そんなの愛とは呼べない」

魔導師「ん、ふふ…子供には早すぎたかなぁ。その内知るよ。自分らの愛がどれだけ空っぽでちっぽけな物か」

ヒメ「おまえは知らないだろうけど…ブルードル陛下は……東の国はおまえたちを見捨ててなんかいないぞ」

魔導師「!」

ヒメ「あの方はずっとおまえたちの身を案じてた。いつか必ず助け出そうと力を蓄えてたんだ」

魔導師「……」

ヒメ「遅すぎたと言えば、それまでかもしれない。でも…おまえは確かに愛されてたよ」

魔導師「…哀しくなるなぁ。響かないんだよ。今さら…そんな話で喜べるほど静謐な過去じゃないんだ」

カロル「だけど信じようとしたんでしょ…?」

魔導師「……」

カロル「信じても…助けてもらえなかった。だから辛いんだよね」

魔導師「ふん…」
934: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:23:28 ID:u8oh19UNDM
魔導師「忌々しいなぁ…。どうして、どいつもこいつもうざったい過去を持ち出すのかね」

カロル「…パカラーロさんはしあわせだったの?」

魔導師「ん…?」

カロル「ファルージャさんのそばで悲しいことも楽しいことも…しあわせって感じてた?」

魔導師「感じてたさ。自分は特別だった。女王もそう褒めてくれた」

カロル「うん…」

魔導師「君がいなければ全部うまくいってたんだ…。ずっと特別でいられて、この命も女王に捧げられた」

魔導師「偽物は…取り繕っても偽物だ。こうして化けの皮を剥がされてみて、よく分かった」

カロル「そうなのかな」

魔導師「……?」

カロル「特別って、そういうものじゃないと思うよ」

魔導師「なに…?」

カロル「ただ便利な物を特別っていうなら人じゃなくてもいいでしょう?」

魔導師「?」

カロル「ボクたちは物じゃないよ。生きてる。だからいろんな感情を一緒に分かち合えるんだ」

魔導師「……!」

カロル「そうやって過ごしてきた思い出とか、信頼を特別っていうんじゃないかな?」

魔導師「詭弁だ…!そんな戯れ言、なんの意味もない!」

カロル「……」

魔導師「な、にも……うっ」ズキッ

カロル「パカラーロさん……」ジッ

魔導師「〜〜〜!!」ドクンッ
935: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:24:20 ID:7TPSqG30CI
『あぁ……くるしぃ…』

『たすけて…おねえちゃん……』

『かえり、たい……ママ、パパ……あいたいよぅ』

魔導師「!!!」ゾワァッ

『わたしとおねえちゃん、ふたりになっちゃったね……ごほっ』

魔導師「……!」ゾクゾク

『ねぇ、だいじょうぶって言って…?いつもみたいに優しく撫でて…?』

魔導師「(やめ、ろ。思い出させるな…!)」ガリッ

『ナニゴレ!?ぎぼぢわるい!ごんなの!ワダシじゃナイ!!げほっう゛ぇぶぅごぼはっ』

魔導師「聞きたくない!イヤだ!やめてくれっ!!」ボリボリ

ヒメ「お、おい!どうした!?」アセアセ

『ヴゾヅギィ!!ガエレルッデ!!イッダノニィ!!?』

魔導師「あっあっひやぁ!うやぁぁああああ!!!?」バリボリ

カロル「」パシッ

魔導師「!!?」ビクッ

カロル「血が出てる…」ギュッ

魔導師「へ、あ……」フワッ

カロル「大丈夫」ニコッ

魔導師「あ、あぁ……」ブルブル

カロル「大丈夫だよ」ニコニコ

魔導師「ふ、う……」ジワァァ
936: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:25:59 ID:7TPSqG30CI
魔導師「…自分には、なにもない」グシッ

魔導師「特別だった物を失ってきた…。助けられなかった…!」ググッ

魔導師「女王だけなんだ…。どんなに醜くなっても…愛してくれたのは…」

カロル「…だからホビットの里を襲ったの?」

魔導師「……?」

カロル「あの日、たくさんの人が大切な物を奪われたんだよ…?」

魔導師「なんの…はな、し」

カロル「ボクは覚えてるよ。パカラーロさんがボクを探しに来た時のこと」

魔導師「あ……」ハッ

カロル「悲しむ人。怒る人。我慢する人。復讐しようとする人。耐えられなくて、おかしくなっちゃう人…いろんな人がいた」

魔導師「……」

カロル「誰かの為にしたことなら、誰かを不幸にしてもいいの?」

魔導師「っ…そうやって成り立つもんさ。イヤって言うほど経験してきた…!」

カロル「……」

魔導師「自分の為に生きてるヤツなんか一握りさ!みんな誰かに使われて生きてるんだ!その中で意味を探すのが大変だから…愛を求めるんだ!」
937: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:26:50 ID:7TPSqG30CI
魔導師「女王の為なら、いくらでも手を汚す…!全ては献身……愛がそうさせるんだ!」

カロル「…とっても怯えてたね。なにを思い出したの?」

魔導師「」ビクッ

カロル「…パカラーロさんがしてきたこと?それともされてきたこと?」

魔導師「言うな…!」ブルッ

カロル「悲しいね。憎んできた人たちと同じことをしてるなんて」

魔導師「言うなぁ!!!」

カロル「お母さまがいつも言ってた。自分たちもいつそうなるか分からないって…」

カロル「だから大切な人を愛するんだ。愛情は心の拠り所なんだって…そう言ってたよ」

魔導師「〜〜〜!!」

カロル「愛にもいろんな形があるんだね。でも人を繋げて希望になる。そういう愛をボクは知ってるよ」

ヒメ「……」

カロル「…きちんと伝えた方がいいと思う。ホントに好きで一緒にいたいなら」

魔導師「っ…だったら死んでくれ!めんどくさいんだ、説教なんていらないんだよ!自分はただ女王の役に立ちたいだけなんだ!」

ヒメ「ここで死んでも無駄だぞ」

魔導師「!?」

ヒメ「おまえが二度とあいつの役に立つことはなくなる。死んだら、そこで終わりなんだよ」

魔導師「……!」ギリッ

カロル「お互いに、だよ」

ヒメ「……」

カロル「愛は人と人を結ぶものでしょう。欠けてしまったら、どうして喜べばいいの?」

魔導師「ぐ、ぐ……」プルプル
938: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:27:37 ID:u8oh19UNDM
カロル「行こ?」

魔導師「ど、こ…?」

カロル「本当の気持ちを聞いてみたらいいよ。ファルージャさんに」

魔導師「女王に…今の自分をさらけ出せって言うのかい…!?」

カロル「…本当に特別なら関係ないよ。どんな形でも好きになってくれる」

魔導師「……!」ブルッ

カロル「平気だよ。信じて?」

魔導師「なにを…!?」

カロル「ファルージャさんと自分の気持ちを」

魔導師「っ……」ギュッ

カロル「ヒメくん、いいかな…?」

ヒメ「良い訳ないだろ。そいつは何度も僕たちを殺そうとしてきたんだぞ。なんの利もないし時間の無駄だ」

カロル「そんな……」シュン

ヒメ「…けど、東国の民だと分かった以上、手出しは出来ないな」フー

カロル「!」

ヒメ「亡きブルードル陛下への義理を果たす意味でも、この場は不問にしておいてやる」ニコッ

カロル「〜〜〜!」パァァ

ヒメ「さ、皆を起こして行くぞ」

カロル「うん!」
939: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:28:21 ID:7TPSqG30CI
カロル「宣教師さま!ラムくん!へいき?」ユサユサ

ヒメ「おーい団長生きてるかー?国王命令だ、起きて働けー」ゲシゲシ

カロル「(ふ、踏みつけてる…)」ハラハラ

魔導師「(なんなんだ、こいつらは……)」

魔導師「(敵だ…女王を否定し、憎まれた敵……)」

魔導師「(あんな戯れ言に動じるような自分じゃなかった…)」

魔導師「(なのになんで……自分は……)」

『そなたの命は妾の為に使え……』

魔導師「……」チラッ

フィクサー「」スースー

『妾はそなたを愛しておる……』

魔導師「(女王……)」スッ

魔導師「(大丈夫…自分もだよ)」クスッ
940: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:29:57 ID:u8oh19UNDM
ドバッ

プシャアアアアア

カロル「へ?」クルッ

ヒメ「なっ…!?」ハッ

フィクサー「ちっ…」ザッ

魔導師「ぁ……ふ」ドシャッ

フィクサー「下衆が…」ヒュンッ ピシュッ

カロル「パカラーロさん!」ダッ

ヒメ「やめろ!行くな!」ガッ

カロル「な、なにするの!パカラーロさんが!?」ジタバタ

ヒメ「おまえ…なんでもかんでも助ければいい訳じゃないんだぞ!ラムにも叱られただろ!?」カッ

カロル「」ビクッ

ヒメ「下がってろ!」バッ

カロル「……!」サッ

ヒメ「フィクサー!!」ジャキッ

フィクサー「ふっ…」ニィィ
941: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:30:57 ID:u8oh19UNDM
ヒメ「どうあっても僕とおまえの間には決着が必要らしいな!」キッ

フィクサー「…傍らには救い主、か」ジロッ

カロル「……!」キュッ

フィクサー「……なるほど、これが……ずいぶんと研ぎ澄まされた心地だ」グッパッ

魔導師「ん、ふふふ……」ダラァァン

カロル「っ……どうして!」

魔導師「なにも…自分じゃなくても、いい。守れたら…それで……」ジャリッ

カロル「……!?」

魔導師「あいし、てる」ズズッ

カロル「死なないで…!死んじゃダメだよ!!」

魔導師「あい…てるよ、じょ……」ズリズリ

ドスッ!

魔導師「ぶっ…!」ゴフッ

フィクサー「耳障りだ。黙っていろ」グリィッ

魔導師「んぅ!!」ブシュッ

ヒメ「……!?」

カロル「!!!」ダッ

ヒメ「お、おい!カロル!」アセアセ

カロル「……!」タタタッ

フィクサー「迷信だとばかり考えていたが、いざ体感すると疑いようもないな」ズボッ

魔導師「」ピクピク

カロル「〜〜〜!!」バッ

フィクサー「」ヒュンッ

カロル「あつっ!?」バシンッ
942: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:32:04 ID:u8oh19UNDM
カロル「くぁっ…」ズサッ

ヒメ「カロル!?」

フィクサー「心配するな。刃は当てていない」ザッ

ヒメ「このっ…!」ザッ

フィクサー「が、懲らしめる必要がありそうだ」ズシッ

カロル「ぐっき…ぁぁあああ!!!」バタバタ

ヒメ「やめろぉ!!足をどかせ!?」

フィクサー「手は痛みの宝庫だ。与えるにも受けるにも関わらず、ほとんどの痛みは手から生み出される」グリグリ

カロル「ひあぁっ!ひっ…いぎゃああああ!!!」バタバタ

フィクサー「だが貴様はその手で人を癒し、痛みを取り除く。酔狂なものだ」グリグリ

カロル「う゛っ!!はぁ!はぁ!」ゼェゼェ

フィクサー「空いた手をなおも伸ばすか。貴様を脅かす敵の為に……」パッ

カロル「いま…いや、すから」ピトッ

魔導師「」フワッ

カロル「」ホッ

魔導師「」ダラン

カロル「……!?」パチクリ

フィクサー「」ズシッ

カロル「うっ!あぐぅ…!」ズシャッ

フィクサー「遅かったな」グリグリ

カロル「そん…な……いや…ぁぁあああ!!!」バタバタ

ヒメ「!!」ダッ ブンッ

フィクサー「」ヒュンッ

カァァァンッ
943: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:38:06 ID:u8oh19UNDM
フィクサー「激昂しているのか?」ギギギッ

ヒメ「…!?」グググッ

フィクサー「」シュッ

ヒメ「おぅっ…」ドフッ

フィクサー「剣に集中しすぎだ。胴ががら空きだったぞ」ニヤッ

ヒメ「うっ…」ゲホゲホ

フィクサー「…わたしもだ。とてつもなく憤怒に駈られたよ」

ヒメ「…うぅ!」ジャリッ

フィクサー「誤算ばかりだった。予測し得る対策はほぼほぼ講じていた筈なのにだ」

フィクサー「ファルージャの……我が妃の魅力。このわたしがもはや恋に堕ち、情欲に溺れるとは……思えばアレが全てだったか。
本来の目的にズレが生じるほどに…単なる男女の営みではない未知の感覚に支配されたのだ」

フィクサー「西国の統治、長期作戦による王国の権威剥奪。どれも予定していた計画とは違う。だが妃を手に入れる為には必要だった。だからこそ杜撰(ずさん)なものになってしまった」

フィクサー「わたしは彼女に踊らされた道化に過ぎないのかもしれん」フッ

フィクサー「彼女はまさしく……魔性の女だ」

ヒメ「はぁっ…!」ムクッ

フィクサー「どうやらこいつもわたしも取り憑かれていたらしい」ゲシッ

魔導師「」ゴロン

フィクサー「しかし頂けないな。愛の為に命を捧ぐなど、まったく愚かな決断だ」

ヒメ「ふん!女に溺れたヤツが言っても説得力がないな…!」ヨロッ

フィクサー「愛も野望も手に入れればいい。欲望がある限り、夢は見られるのだから」

ヒメ「…じゃあおまえの目的ってなんなんだよ!国の未来も見ていないのに争いを望む理由はなんだ!?」ジャキッ

フィクサー「…いろいろあるさ。その時々に感じた物の積み重ねだ」

ヒメ「僕はこの戦いを通して何一つ意味なんか感じられなかった!なぜこんな事をしてるのか自分でも分からない!」

フィクサー「そうか…」

ヒメ「やめる気はないのか…!もうたくさんだ…!」ググッ
944: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:39:46 ID:u8oh19UNDM
フィクサー「やめる気など毛頭ない。思考を取り戻した今となってはむしろ本来の目的を果たすのが最優先だ」

ヒメ「なに…!?」

フィクサー「ここまでの犠牲を踏まえても有り余る成果が…ここにあるからな」ズシッ

カロル「ひぐ…!」ググッ

フィクサー「圧倒的な暴力と死者を産み出す技術……近代までの軍事はそればかりに費やし、同様に戦略も組み立てられた。その真逆をいく発想がコレだ……」チラッ

カロル「はっ…あぁぐ…」ピクピク

フィクサー「生命を保管し、不死を完成させる魔力……ふ、はは。なんたる嘘めいた絵空事だ!想像の域を遥かに越えている!」ワナワナ

フィクサー「かつての教団が起こした国家反逆……あの鼻白む愚行の意味がようやく分かった。
妃をして欲望に狂わせたのも頷ける。わたしも今、果てしない野心に埋もれそうだ…!」

ヒメ「……!」ブチィッ

フィクサー「不死の兵、不死の民、不死の帝国!!不死の軍による戦乱!!」

フィクサー「まさに終わらない!終わりようのない争いだ!比喩でない血の海をじかに見られるぞ?はっははは!!」ゲラゲラ

ヒメ「喋るな!!」バッ

フィクサー「っ…」ギィィンッ

ヒメ「なんなんだ、なんなんだよ、おまえは!?」ビュバッ

フィクサー「……」ガィンッ ギギンッ

ヒメ「争い、争い、争い…!なにがしたいんだよ!今もその先もぶち壊してどうしたいんだ!?」ガァンッ ギャリンッ

フィクサー「」サッ

ヒメ「!?」ズザッ
945: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:42:24 ID:7TPSqG30CI
フィクサー「わたしはただ…持て余していたんだ」

ヒメ「はぁ…!?」

フィクサー「今の時代はあまりに刺激が無さすぎる。憂いているんだよ、わたしは」

ヒメ「憂いてるだと…!」

フィクサー「冷戦と呼べる駆け引きもさほど無く、国々は自己保身に積極的だ。何も進展しない。誰も大志を抱かない。流されるままありふれた日常にのめり込む」

フィクサー「果てしない静けさがわたしの胸をざわつかせるんだ。このままでは何一つ残せない。ただ生きてみただけだとな」

ヒメ「おまえは夢でも語ってるつもりか…!そんなくだらない理由でこの惨劇を引き起こしたのか!?」

フィクサー「極めた分野による優秀な能力を遺憾無く発揮し、望む結果を勝ち取る。一種の遊戯だよ」

ヒメ「遊戯…!?遊びで、こんなことを…!?」

フィクサー「大袈裟に言えばな。根本にあるのは挑戦とも言える好奇心だ。
誰もが一度は夢に向かい目標を立て、到達点を目指すだろう?それの延長といった具合か?」

ヒメ「馬鹿な…!狂ってるとしか思えない!」

フィクサー「正常さ。わたしもおまえもここにいる全ての者が普通ではないことをしている」

ヒメ「これが正常だと…!?」
946: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:43:49 ID:7TPSqG30CI
フィクサー「なにも不思議な事はない。我々は自由なのだ。全ては許容される」

ヒメ「許される筈がないだろ!こんなのが正常だって言うなら何を信じればいいんだ!?」

フィクサー「何かを信じればいい。結果次第では偉業とも過ちとも捉えられる。
本当に狂っているのは…許容も拒絶もせず、ただ与えられた日常に甘んじる民衆なのかもしれんな」

ヒメ「ふざけるな…!おまえの起こした事で悲鳴を上げる人々は今も平和を待ちわびてるんだ!修正しようと戦う皆が…日常に帰りたいと願ってる!」

フィクサー「救い主に振り回され、視野の狭い行動を繰り返しているだけだろう」

カロル「……!」ピクッ

フィクサー「ここに集まった者は全て、このホビットによって巡り会った。修正すべきと言うのなら"因果"から断つのが筋ではないのか?」

ヒメ「そんな理屈が…まかるかぁ!?」バッ

フィクサー「」ヒュオンッ

ガァンッ

ヒメ「ぐあっ!」ドサッ

フィクサー「救い主よ。罪深きは貴様だ。貴様が争いを呼び、皆を死に向かわせたのだ」

カロル「………」

フィクサー「貴様もだ。国王という重責を負い、全うな政治に尽くそうというのなら、いずれ知るだろう」

ヒメ「うる、さい…!」ググッ

フィクサー「利用するか、始末するか、二つに一つの選択を迫られる」

ヒメ「どちらも選ばない!こいつは普通に生きたいだけだ!」

フィクサー「だから…こうなった」シュッ

ヒメ「ぎゃっ!?」バキッ

フィクサー「…選べないのならわたしが代わろう。"魔性"も"癒しの力"も…この才知に委ねるがいい」
947: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:50:31 ID:u8oh19UNDM
カロル「ヒメくん…!」ムクッ

フィクサー「……」ジロッ

カロル「もう、やめて……おねがい」ヨロッ

フィクサー「」シュッ

カロル「うぶっ!」バキッ ズダァァン

フィクサー「かよわいものだな」ガッ

カロル「いたっ…」グイッ

フィクサー「いいか。貴様は道具だ。わたしの意思のままに力を行使すればいい」ブンッ

カロル「ひぐっ!」ビタンッ

フィクサー「貴様を尊重してやる気はない。管理から外れた言動をするな」

カロル「は、ふ……」ボタボタ

フィクサー「癒しの力が実在するとなれば永遠の命も見込める訳か。妃が大樹に赴いたのなら既に…ふっ」ニヤリ

カロル「」ズズッ

フィクサー「嬉しい誤算だ…。また一から組み立てねばな」ニヤニヤ
948: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:51:01 ID:u8oh19UNDM
カロル「うっ……」フワッ

フィクサー「…そうか。自身の傷も癒せるんだったな」

カロル「……」ムクッ

フィクサー「まずは軽く耳でも削ぎ落とすか。少しは従順になるだろう」ジャキッ

カロル「ごめんなさい…」スッ

フィクサー「クックッ…物分かりは良さそうだ。素直にしていれば……」ニィィ

カロル「助けられなくて…ごめんなさい」サワサワ

フィクサー「……?死体などまさぐって何をしている?」

カロル「…なにもできなくてごめんなさい…」パシッ

フィクサー「……!?」ハッ

カロル「あなたにも…ごめんなさい。ボク…悪いことをします」キュッキュッ

フィクサー「!!!」ザウッ

ガキィィンッ!

ヒメ「ぐっ…うぅ!やれ!こいつを退けるには…もうそれしかない!」ギギギッ

フィクサー「ヒメぇ……!?」ギギギッ

カロル「こんなことしたくなかった…。誰も傷付けたくなかった…。ホントだよ?」グッ

フィクサー「やめっ……」

カロル「だけど…ごめんなさい」キュポッ

シュコォォォオオ
949:投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:52:58 ID:u8oh19UNDM
カロル「」ピトッ

ヒメ「」フワッ

カロル「…これでみんな」パッ

宣教師「」スースー

団長「」スースー

ラム「」スースー

カロル「……」

フィクサー「ヴボゥッ!オゲッグフゥッ!」ゴボッ

カロル「……!」ギュウ

フィクサー「がっふ!がはっ!うっ……あ゛は」フッ

カロル「」スッ

フワッ

フィクサー「」スースー

カロル「(やっぱりできないや…。また叱られちゃうかな)」ズーン

カロル「……」スッ

魔導師「」フワッ

カロル「〜〜〜!」プルプル

カロル「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめ、なさい」ポロッ

カロル「ふっ…うぅ……ぅぅ……」ポロポロ
950: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:00:16 ID:8RM3./Nalk
―――宮殿―――

ファルージャ「ふあぁ…誰もおらぬのか。玉座で寝こけてしまいそうじゃ」クタァァ

スタスタ スタスタ

ファルージャ「ンゥ…」クルッ

ピタッ

ファルージャ「クスス…待ちくたびれたぞ?」スクッ

魔導師「……」

ファルージャ「地下の始末は済んだのか?」ジッ

魔導師「」コクリ

ファルージャ「ふむ、しからば残る者共の選別に参るとしようか」

魔導師「せん…べつ?」

ファルージャ「…さよう。渡り廊下の向こうにおる兵らに妾を愛し、命を捧げる覚悟を問うのよ」

魔導師「……どうやって?」

ファルージャ「フフ…!そなたの術にかけ、生死をさまよわせるのじゃ」ニタァァ

魔導師「……」

ファルージャ「その中で生き延び、なおも妾の寵愛を望むとあらば飼ってやってもよい」ニヤニヤ

魔導師「どうして…?」

ファルージャ「ン?」キョトン

魔導師「どうして…そんなことするの?」

ファルージャ「愉快であろうな?」ニヤァァ

魔導師「ゆかい…?」

ファルージャ「妾欲しさに命を賭ける卑しい男共の狂宴じゃ。そなたも見たいと思わぬか…?」ニヤニヤ

魔導師「イヤだって…言ったら?」

ファルージャ「」ピクッ
951: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:01:04 ID:8RM3./Nalk
ファルージャ「…それはどういう意味じゃ?」

魔導師「……」

ファルージャ「よもやそなたまでもが……」

魔導師「……」

ファルージャ「フッ…戯れるでない。そなたの一途さを妾はよう知っておる」クスッ

魔導師「……」

ファルージャ「拗ねておるのかえ?ここ最近は構ってやれなかったものなァ?」ニヤニヤ

魔導師「……」

ファルージャ「フフン…おいでなさいな。よく働いてくれた褒美じゃ」ヌギッ

魔導師「ファルージャさま」

ファルージャ「ンゥ?」スラリ

魔導師「ボクが…見えてますか?」

ファルージャ「ボク…?」キョトン

魔導師「どんな形をしていても…好きでいてくれますか?」

ファルージャ「妾とそなたの間じゃ。口にせずとも察しておろう?」クスッ

魔導師「……」

ファルージャ「ふむ、様子が変わっておるな。どれ、久しぶりに顔を見せておくれな」

魔導師「」カパッ

ファルージャ「醜くも…二つとない特別なる容姿。妾に興奮を覚えさせた愛しきそなたを?」ニヤニヤ

仮面「」カランカラン

ファルージャ「そうそ……う」ピタッ
952: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:03:25 ID:8RM3./Nalk
ファルージャ「そ、そなたは……」

ファルージャ「いつから……」

ファルージャ「………」

魔導師?「騙してごめんなさい」バサッ

ローブ「」ファサッ

ファルージャ「……!」

カロル「…脱いだら、ちょっぴり肌寒いや。パカラーロさん、ずっと暑いの我慢してたのかな」

ファルージャ「なぜ……パカラゥロは……」

カロル「……死んだよ。金色の鎧を着た人間に斬られて」

ファルージャ「!……では、そやつは」

カロル「パカラーロさんの服に入ってたお薬を使って寝かせた…」

ファルージャ「…その服はパカラゥロが着てた物かえ?」

カロル「そう、だよ…」ブルッ

ファルージャ「なにゆえ…?」ジッ

カロル「ファルージャさんの気持ちが知りたかったから……」ブルブル

ファルージャ「……」

カロル「……!」ガチガチ

ファルージャ「……」

カロル「う、うぅ…」ブワッ

ファルージャ「……」

カロル「ふっぅ…もう、パカラーロさんに…えぐ…知らせてあげられないのに…うっ…なにがしたいんだろ」グシグシ

ファルージャ「…フゥ〜」ポスンッ
953: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:04:38 ID:8RM3./Nalk
カロル「ひっく…ごめ、なざい」グズッ

ファルージャ「…あやつはなんと?」

カロル「ボクが…癒したから、化け物じゃなくなったって……よく、わかんなかった…」ズビッ

ファルージャ「……ほう」

カロル「ど、ゆうことなの…?」ジッ

ファルージャ「他人が知るものではない。二人だけの秘め事よ」

カロル「……ファルージャさんは、それでキライになった?」

ファルージャ「はて、な」

カロル「はてな…?」ウルウル

ファルージャ「あやつは妾の愛を疑い、妾はそなたの変装を見抜けなかった」

カロル「う……」タジッ

ファルージャ「少し前まではあやつの仮面の内にある表情も見えたものじゃが…なぜであろうな?」

カロル「愛してるって言ってたよ…」

ファルージャ「……」

カロル「苦しそうにしてても…最後まで言ってた」

ファルージャ「さようか…」
954: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:05:47 ID:Z3/ar.vMUI
ファルージャ「クスス……」

カロル「?」キョトン

ファルージャ「パカラゥロ、シャルウィン、カカドゥーラ……」

カロル「(???)」

ファルージャ「妾の為の帝国を築き上げた忠実なしもべ。三銃士と名付け、格別に愛でた者たちよ」

ファルージャ「よく尽くし、持て囃してくれたわ。女として、これほど悦ばしいことはない」

ファルージャ「果ては命を差し出してまで…気に入られようと健気に…く、」

カロル「……?」

ファルージャ「キャハハハハハ!あーっははははは!」ケラケラ

カロル「ど、どうしたの?なんで笑うの?」オロオロ

ファルージャ「これが魅力よ。愛の成せる業よ!」クスクス

カロル「……?」

ファルージャ「あやつらは所詮、妾を伸し上げる奴隷に過ぎぬ。いくら貢がれ、愛を伝えられようと情など沸くものか!馬鹿馬鹿しい!」ケラケラ

カロル「…ホントに言ってるの?」

ファルージャ「ハァン?」ジロッ

カロル「あんなに思ってくれてたんだよ?ファルージャさんの為に必死になって……」

ファルージャ「クスス…嬉しいぞ?来世でもまた存分に可愛がってやろうでないか?」

カロル「…来世なんてないよ。生まれてくる人たちは死んだ人の代わりにはなれないもの」

ファルージャ「代わりなど、どこにでもおろう」

カロル「……!」

ファルージャ「この魅力が永遠にある限り、妾の未来に滅びはない。新しい奴隷がそこかしこに群がるわ」ニタァァァ
955: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:10:38 ID:8RM3./Nalk
カロル「……」シュン

ファルージャ「なんじゃ、その目は?」ジッ

カロル「寂しくならないの…?」

ファルージャ「寂しい?なにゆえ?」

カロル「……」

ファルージャ「望み通り妾の為に死ねたではないか。何を嘆くのじゃ?」

カロル「ボクは…そんな風に喜べないもん」プイッ

ファルージャ「…ここはそういう国よ。圧倒的な富裕か極限までの貧苦。平等などという言葉すら存在せぬ」

カロル「ボクも…ホビットだから。いろんなことがあったよ。でも……」

ファルージャ「それがどうした?」ジロッ

カロル「」ビクッ

ファルージャ「溌剌とした目…まるで穢れを知らぬような素振り…どれもが目に余る。それで妾と通じ合えるとでも思うておるのか?」

カロル「だ、だけど…」

ファルージャ「初めて見知った時からずっと…その愛情に満たされた顔を快楽に染め上げてやりたくてたまらなかった…!」

ファルージャ「傅かせ、脚に頬を擦り付け、妾に媚びる無様な顔が見たかった!」

カロル「……?」

ファルージャ「されど皮肉にも…そなたは妾など眼中にないように振る舞い、仲間も同様に妾を拒絶した」

ファルージャ「許せるものではない…許されてはならぬ。なればこそ…そなただけは消えてもらわねば」スクッ

カロル「へ…?」

ファルージャ「」ヒタヒタ

カロル「ど、どこに行くの…!?」

ファルージャ「妾を愚弄した罪……あの世で悔いるがいいわ」ニヤッ

カロル「まっ…」

「カロルくん!!!」

カロル「わっ!」ビクンッ
956: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:17:57 ID:8RM3./Nalk
宣教師「こ、ここにいたんですか!心配しましたよ!」ザッ

カロル「宣教師さま…!」

ヒメ「目が覚めたら、おまえだけいなくなってて混乱したぞ!何をしてたんだ!」

ラム「あの二人も倒れてたし、まさか君がやったのかい?」

カロル「ヒメくん!ラムくん!……あれ?団長さんは?」

ヒメ「団長には捕縛したフィクサーを見張らせてる。それよりもこれはどういう事態なんだ!」

カロル「あ、ごめんなさい…。その…二人きりで話したくて」

宣教師「ふ、二人きり…?」

カロル「うん。ファルージャさんと……」

宣教師「二人きりで……ま、まさかあの女にそそのかされたのでは!?」

ラム「落ち着きなよ。カロルくんに限ってそれはないって?」

宣教師「そ、そうでしょうけど…なぜわざわざ二人になる必要が?」

カロル「えっと、それは」チラッ

ポツン

カロル「あっ!ファルージャさんが!」

ヒメ「なに!?」

宣教師「と、扉が開いてますよ!」

ヒメ「向こうは渡り廊下に続いてる!その先は主戦場となった大階段だ!あいつを兵士と接触させたらまずい!」

ラム「たぶん、まだ遠くには行ってないよ!追おう!」ダッ

カロル「うん!」ダッ

ダダダッ
957: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:18:52 ID:Z3/ar.vMUI
―――宮殿2階(大階段)―――

ザワザワ ザワザワ

王国兵78「それは…本当なのか?」

レジスタンス11「そうだ。俺たち反乱軍と帝国軍は和睦を認め、争いを放棄する。な?」

西兵108「おうよ!女王が決めだんだ!イヤどは言わぜねぇ!」

王国兵78「な、ならば我々は…我々はどうなるんだ!?」

レジスタンス11「知るかよ。そっちはそっちでやりやがれ」

西兵108「おで様たちの城で暴れようっでんなら承知しねぇ!ぶっ殺すぞぉ!?」

王国兵78「ひっ!」

王国兵79「訳が分からん…。総指揮は…フィクサー様はどこだぁ!?」

護衛13「団長もおられない…。いったい宮殿で何が起こってるんだ」

護衛14「こ、これじゃまるで……俺たちの戦いはなんだったんだ」

賊徒29「よく分かんねぇが勝ったんだな!しゃあっ!!」ガッツポーズ

西兵108「あぁ!?誰がんなごど言っだぁ!?」

ワァーワァーギャーギャー

レジスタンス11「(………ダメだな。こりゃきっかけ一つで、どうにでもなっちまう)」

ズォォォオオオン

レジスタンス11「(こんだけの屍を積み上げたんだ…。なんとなしに引き下がれる筈もねぇ)」

レジスタンス11「(早く来い…!お前らがいなけりゃ、ここはまた戦場と化すぞ!王国人ども!)」ググッ
958: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:20:49 ID:Z3/ar.vMUI
ザッ

レジスタンス11「!!!」クルッ

西兵108「あぁん!?」ギロッ

ファルージャ「クスス…」ニィィ

レジスタンス11「ふぁ、ファルージャ!?」

西兵108「女王!!」カッ

ザワザワ ザワザワ

ファルージャ「乾いた風。血の味がする…。今にも狂気に当てられそうな。なんともむせ返す香りよ…」ヒタヒタ

王国兵's「あ、あれは……」

護衛's「だ、誰だ…」

賊徒's「うっひょ!」ギンギン

ファルージャ「そなたらに朗報じゃ」

ザワッ

ファルージャ「妾のしもべにしてやってもよい」

王国兵's「なっ…!?」

護衛's「し、しもべ…!?」

賊徒's「なんの冗談だぁ…!?」ビキッ

ファルージャ「」ハラリ

全員「」ドキィッ
959: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:23:01 ID:Z3/ar.vMUI
ファルージャ「どうさな?見事であろう?」クネッ

全員「……!」ゴクリ

ファルージャ「この肢体が欲しくば……それなりの誠意を示せ」クスッ

ファルージャ「態度次第では極上の快楽にいざなってやろうぞ?」スラリ

王国兵's「お、おぉ……」ボーッ

西兵's「ぐし、グシシシシ!」ジュルリ

護衛's「い、いかん。われ、われは……」ボーッ

賊徒's「な、なんて色っぽいんだ…!むしゃぶりつきてぇ!」ギンギン

レジスタンス11「お、おい!ふざけんな!なにその気になってんだ!」アセアセ

ファルージャ「苦しゅうない。すべてを忘れ、熱い猛りを見せてたもれ?」スラリ

全員「っ……」ゴクリ

ファルージャ「どうした?手を伸ばせば、いかようにでも出来るのだぞ?」ムチッ

西兵's「じょ、おう…!!」ジリッ

賊徒's「たまんねぇ…!たまんねぇよぅ…!!」ジリッ

レジスタンス11「くそっ…てめぇらまで何してんだ!イアマンの誇りを棄てるのか!?」

王国兵's「だ、駄目だ!我慢出来ん!」ズイッ

護衛13「よ、よせ!行くな!」ガッ

護衛14「うるせぇ!あんなの見せられて辛抱出来るか!」バッ

護衛15「俺も…」ジリッ

護衛16「へ、陛下や団長に背くことになるぞ!」

護衛17「引き寄せられるんだ…分からないけど目が離せないんだよ」ボーッ

ファルージャ「さぁおいでなさい。まとめて可愛がってやろう…」ボイン

ダダダッ

ファルージャ「クスス…」ニヤニヤ

ビュンッ ザスッ!

全員「」ピタッ
960: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:24:55 ID:8RM3./Nalk
ファルージャ「……!」ドキドキ

ザワザワ ザワザワ

ファルージャ「…誰ぞ」ポツリ

レジスタンス11「……!?」

ファルージャ「妾の前に剣を突き立てたのは誰ぞ!?」カッ

西兵108「ひ、ヒィッ!?」タジッ

王国兵78「わ、私は知らん!知らんぞ!」アワアワ

賊徒33「あ、あっちから飛んできたぞ!?」アタフタ

護衛13「陛下!!」

レジスタンス11「なにぃ!?」

ヒメ「遅れてすまない!」ザッ

カロル「…わ」クラッ

宣教師「改めて見ると…なんて悲惨な…」ジッ

ラム「独房と違って真新しい匂いだね。これはこれでキツいなぁ」ツーン

ファルージャ「また、そなたらか…!!」ワナワナ
961: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:25:32 ID:Z3/ar.vMUI
ヒメ「王国軍に告ぐ!ただちに武器を捨て、投降しろ!」

王国兵's「なに…!?」

ヒメ「憎き国賊、アーディス・フィクサー総指揮の身柄はこちらで拘束した!もはや勝敗は決している!」

王国兵's「バカな!総指揮が!?」

護衛's「か、勝った…ということか?」

ヒメ「そうだ!この戦い、国王直属近衛師団の勝利は揺るぎない!
西国反乱軍及び西国帝国軍の代理戦争からは手を引き、我々は帰還する!
沙汰は王国領内王都議事堂にて下す物とする!速やかに降伏を受け入れろ!」

王国兵78「そん…な」

王国兵79「我々の…我々による新時代が……」

ヒメ「夢から覚めろ!おまえ達の行き先はその手で汚した現実だ!!」

王国兵's「あ…うあ……」ガクッ

護衛's「やった…やったぞ!勝ったんだ!」プルプル

ウオオォォォオオオァァァアアアアアア!!!!!

ヒメ「ふぅ…なんとか間に合ったな」

宣教師「…立派になりましたね」ニコッ

ラム「ホント!王様の風格ってやつ?」クスッ

ヒメ「まぁな!」ニィッ
962: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:26:19 ID:Z3/ar.vMUI
ワァーワァーギャーギャー

宣教師「さて、残るは…」

ラム「ファルージャがどう出るかだね」

ヒメ「いや、もう大丈夫だ」

宣教師「へ?」

ヒメ「4つの戦力には偏りがある」

ラム「……?」

ヒメ「僕らの陣営となる近衛師団が約100。レジスタンスの反乱軍が約3万。
ファルージャ配下の西国帝国軍は6000弱。フィクサーが引き抜いた王国軍が約10万。これが初期の戦力図だ」

ヒメ「この中でファルージャが動かせる戦力は西国帝国軍だが…以前の戦いで主力を欠いている帝国軍だけでは反乱軍と戦う余力さえない」

ヒメ「頼みの綱の王国軍は総指揮のフィクサーを失い、僕の呼び掛けで完全に停止した」

ヒメ「つまりファルージャに残された手は強引に負け戦を続けるか、降伏に応じて反乱軍との交渉に移るかの二つだ」

宣教師「……へぇ」ニコッ

ラム「……そうなんだ」ニコッ

ヒメ「おまえらなんとなく頷いてるだろ」
963: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:27:44 ID:8RM3./Nalk
西兵108「じょ、女王!どうじまじょう!」アセアセ

ファルージャ「フゥ〜…なにを慌てふためいておるか」

西兵108「ず、ずいやぜん!」

カロル「ファルージャさん!」

ファルージャ「!」ピクッ

カロル「…終わらせよう?」

ファルージャ「……」

カロル「もう十分でしょう?やめようよ!」

ファルージャ「クッ…」ギリッ

カロル「ファルージャさん…!」

ファルージャ「煩い!!妾に指図するでないわぁっ!!」キッ

カロル「」ビクッ

レジスタンス11「!?」ギョギョッ

西兵's「ヒィッ!?」ズサッ

ファルージャ「……そこのホビットを殺した者に褒美を取らす」

ザワッ

ファルージャ「誰でも構わぬ!妾を抱きたければ、あの童の首を跳ねてまいれ!!」シュルッ ボインッ

西兵's「う……」ワナワナ

賊徒's「お……」ググッ

王国軍's「おぉぉ……」ズズズッ

オォォオオオオオ!!!!!
964: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:28:58 ID:Z3/ar.vMUI
ラム「ちょっと!話が違うじゃないか!あいつの一声で暴動が起こってるよ!」アセアセ

ヒメ「そんなバカな…!?」ガクガク

宣教師「えぇ、バカですよ!男というのは本当に…!」イライラ

ラム「どうするんだよ!なにか秘策はないの!?」

ヒメ「冗談じゃない…!こんな……これ以上どうしろって言うんだ!」

宣教師「ひとまずカロルくんを避難させましょう!ここでは危険です!」

ラム「そ、そうだね!また地下に潜ればなんとか…」

ヒメ「くそっ!僕は残って食い止める!団長を呼んでくれ!」

宣教師「分かりました!」コクッ

ラム「カロルくんを逃がさないと!」ダッ

宣教師「では私も!」ダッ

ヒメ「頼んだぞ!」

「イアアァァアアアマァァァン!!!!」

宣教師、ヒメ、ラム「!!!」ビクッ
965: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:29:54 ID:8RM3./Nalk
アアァァァン………

宣教師「い、今の声は…!?」

ラム「あ、あれ!」

ヒメ「あいつ…!」


クンバヤ「ぐぅ…はあ!イアマンよ…おれに…ちか、らを」ズルズル

レジスタンス11「クンバヤ…!生きてたのか!?」

賊徒's「アニキ!!」

ファルージャ「なんじゃ…!?」ギロッ

クンバヤ「あくまを…たおす力を…!おれたちの自由を…とりもどす力をぉぉ…!!」ギンッ

ファルージャ「!?」ゾワッ

クンバヤ「ウガァァアアアアア!!!」バッ

ファルージャ「だ、誰ぞ!こやつを止めっ……」

ドシュッ!
966: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:31:23 ID:Z3/ar.vMUI
ファルージャ「ぐ……」ボタボタ

クンバヤ「」バタッ

ファルージャ「いっ……あっぐぅ!」ペタン

西兵108「じょ、女王!大丈夫ですがぁ!!」ハラハラ

ファルージャ「か、顔に……妾の、妾の美しき顔に…傷が…!?」ハァハァ

西兵's「」ハッ

ファルージャ「よ、くも…よくも…!!」ブチィッ

西兵108「女王…!」

ファルージャ「殺せっ!!そやつをなぶり殺しにせよ!!妾の顔を傷付けた罪、とくと思い知らせるのじゃ!?」ガァーッ

賊徒's「なんだ、ありゃ…!?」

王国兵's「ひ、ひでぇ…」

ファルージャ「なにをしておる!はよう!はよう殺さぬか!?」

西兵's「……」

ファルージャ「き、貴様らまで…!なぜ黙っておる!命令じゃ!」

「ひどい醜態ですね」

ファルージャ「なにぃ…!?誰じゃ!妾にかような……」クルッ

宣教師「目元から鼻にかけて顎先まで一文字が刻まれ、怒りを露にわめき散らす姿は誰の目から見ても醜いでしょう」ザッ

ファルージャ「そなた…!またしても…!?」

宣教師「その顔ではもはや誰も誘惑出来ませんね。魔性のファルージャさん…でしたっけ?」クスッ

ファルージャ「小娘がぁ…!」ワナワナ
967: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:34:05 ID:8RM3./Nalk
ファルージャ「たかが傷一つで…!?」ズキズキ

宣教師「完璧に清潔を保った部屋ほど埃が目立つものですよ。あなたのそれは致命的ですが」

ファルージャ「ありえぬ…!こんな、こんなもの……いっ!」ズキンッ

宣教師「無闇に触ると痛みますよ」

ファルージャ「う、ふぅ。ぐ……」ズキズキ

宣教師「"魅力"さえ失ったあなたに人の心を動かす力はありません」

ファルージャ「ほざくな…!小娘がぁぁ…!!!」ブシュッ

宣教師「敗北を認めなさい。そして…あなたに狂わされた人々の命に償うのです」

ファルージャ「だ、れが…グホッ!ゴフッ!」ブバァッ

ザワザワ ザワザワ

ファルージャ「(痛い…!黒魔術による苦悶とも無造作に抱かれる屈辱とも違う……純粋な激痛!)」ボタボタ

ジロジロ ヒソヒソ

ファルージャ「(なんじゃ、その目は…!なぜそんな目で見る…!?これしきで妾の美貌が霞むとでも…!?)」ブルッ
968: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:44:15 ID:8RM3./Nalk
ワラワラワラ

賊徒29「ヒヒヒ!あ〜やうく騙されんとこだったぜ!」ニヤニヤ

賊徒30「おう!こんなブスに従う俺らじゃねぇ!今こそアニキの意思を継ぎ、イアマンの鉄槌を降す時だ!」ジャキッ

ファルージャ「……!ふ、不埒者め!親衛隊!こやつらから妾を守れ!?」バッ

シーン

ファルージャ「守れと言うのが分からぬか!二度言わすな!?」キッ

西兵's「へ、へい……」シブシブ

ヒメ「やめておけ。勝ち目はないぞ」ザッ

ファルージャ「……!?」ビクッ

ヒメ「帝都や近隣の諸侯から全兵を召集したとしてもレジスタンスの勢力には到底及ばない。
しかもこの城内を占める兵の半数以上はレジスタンスと王国軍だ」

レジスタンス11「言っとくが俺達は一歩たりとも退かねぇぞ。やるならとことんやってやらぁ!?」ズイッ

ヒメ「帝都も事前の仕掛けで、ほぼ反乱軍が占拠した。
増援、補給等の後方支援も見込めない上、おまえ達をまとめられる指揮官級は不在と来ている」

西兵's「」ゾクッ

ヒメ「忠告はした。まだやるなら受けて立つぞ」ジッ

西兵's「」タジッ

ヒメ「その女と心中する覚悟があるなら話は別だが」

西兵's「」ポイッポイッ

カランカランカラン
969: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:46:26 ID:Z3/ar.vMUI
ファルージャ「な、なんの真似じゃ…!?なぜ武器を捨てる…!?」

宣教師「国王の説明を聞いたでしょう。彼らは敗北を認めたんです」

ファルージャ「馬鹿な!妾は帝ぞ!下僕は帝に尽くすが道理!!そのような小僧の戯れ言に耳を貸すなどありえぬわ!?」

ヒメ「おまえもそうやって地位を勝ち取ったんだろ」

ファルージャ「!?」

ヒメ「なんせ情婦の身でありながら皇帝一族を一人残らず抹殺した悪女だ。
裏切りと報復の恐ろしさを最もよく知るのはおまえじゃないのか?」

ファルージャ「わ、わら、妾が…棄てられると…!?」ガクガク

宣教師「あなたは長年、この国の女帝に君臨してきたそうですが…家臣の方々との信頼は稀薄だったのですね」チラッ

西兵's「………」

宣教師「どうやらこの方々はあなたの外見にしか興味が無かったようです」

ファルージャ「〜〜〜!!」ワナワナ

宣教師「内面も愛されていれば…結末は違ったかもしれませんね」

ファルージャ「あ、あぁアアアアア!!!アァァアアアアアア!!!」ワシャワシャ

宣教師「可哀想に……」ジッ

ヒメ「……終わったな。ようやく。全てが」

スタスタ

ラム「あっ!」

ヒメ&宣教師「!?」ピクッ
970: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:47:47 ID:Z3/ar.vMUI
カロル「」スッ

ファルージャ「」ビクッ

カロル「」ピトッ

宣教師「カロルくん!?」

ヒメ「な、何してるんだ!よせ!?」アセアセ

ラム「そうだよ!せっかく苦労して倒したのに!?」

カロル「……」

ファルージャ「お、おぉ…」ガッ

カロル「……」

ファルージャ「そなた……そなたじゃ!そなたの力を使えば、この忌々しい傷も…!」パァァ

ヒメ「カロル!!!」

カロル「……」チラッ

ヒメ「その傷はさっきの男が命懸けで託した最後の希望だ!何もするな!絶対にだ!!」

ラム「そうだよ!犠牲を無駄にしない為にも、このままにしておくんだ!」

宣教師「手負いの彼女を見過ごせない気持ちは分かります!ですが…それは今でなくてもいい筈です!」

カロル「……」
971: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:48:13 ID:Z3/ar.vMUI
ファルージャ「み、見捨てまいな…?よもや……妾にはそなたしかおらぬ?」ブルブル

カロル「……」

ファルージャ「そなたは妾を救ってくれる…。そうであろう!?」ギュッ

カロル「昔ね、お母さまと約束したんだ」

ファルージャ「!?」

カロル「やりきれなくなったらやめなさいって」

ファルージャ「ハァ…!?」

カロル「人間の世界に入って、たくさんのことを知れて楽しかったよ」

カロル「もし諦めてたら出会えなかった人がこんなにいるなんて嬉しくて…ホントにしあわせだった」

カロル「それでも…同じくらいやりきれないこともあったんだ」

カロル「だから全部やめて元通りに暮らそうとしたけど……やっぱりできなかった」

ファルージャ「……!!どうでもよいわ!!はよう癒さぬか!?」カッ

カロル「…ともだちがボクを見捨てないでいてくれたから」ニコッ

宣教師「……!」

ヒメ「っ…!」

ラム「カロルくん…」
972: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:49:53 ID:Z3/ar.vMUI
ファルージャ「長々とくだらぬ話を…!無駄に時間を取らすな!!」

カロル「……」

ファルージャ「妾の美を返せ!!この激しい痛みから解放するのじゃ!?」ドクンドクン

カロル「…その痛みは今までファルージャさんの為に死んできた人たちの痛みだよ」

ファルージャ「うぐぁぁあ!!痛い!痛い痛い痛い!早く!早くしろぉ!?」ガシッ

カロル「傷付いて、動けなくなって、見捨てられて、それでもあなたを信じてひとりぼっちになった人たちの」

ファルージャ「コワッパァァァアア!!!」ググッ

カロル「っ…!」ズキッ

宣教師「(つ、爪を立てて…!?)」

ファルージャ「あたかも己が正しいように…!虫酸が走る!たかだか…ホビットの分際でぇ…!?」クワッ

カロル「…う……」タラー

ファルージャ「そなたは!石にかじりつき、泥を貪って飢えを凌いだことがあるかえ!?」

ファルージャ「襤褸を纏い、骨張った手足をひくつかせ、媚びへつらい、嘲られても!」

ファルージャ「粛々と野獣のように抱かれ、汚濁にまみれた肌を固く冷たい地べたに打ち捨てられる女の気持ちが分かるのか!?」

カロル「………」

ファルージャ「く、くす…クスス!笑えるであろう…?魔性と謳われた美姫の正体が薄汚い枯木のごとき不細工だったなど……」ガタガタ

カロル「笑わないよ…」

ファルージャ「じゃが妾はこうして登り詰めたっ…!悪罵にさらされ、陵辱を受け、絶望に満ちた苦痛の内にあろうとも死に物狂いで…!」

ファルージャ「生きる者を喰らい、死人をも喰らい、喰らえない物にさえかじりつき……生き抜いてきたのじゃ!」ギリッ

ファルージャ「銅貨一枚で身体を売り歩く貧民窟の遊女が……愛され、羨まれ、帝国の頂にさえ君臨してみせるには……どれほどの惨憺たる現実を見なければならなかったか分かるかぁ!!!」

カロル「……」シュン
973: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:52:05 ID:8RM3./Nalk
賊徒30「ゲヘへ!おい、聞いたかよ?」ニヤニヤ

賊徒31「おうよ。なっさけねぇ〜わ」ニタニタ

賊徒32「さんざんでけぇツラしてのさばってくれた割にはなぁ?」ププッ

賊徒33「女帝様はくっせぇ〜穴蔵育ちのあばずれ女だったってかぁ?グヒャヒャヒャヒャ!!!」

賊徒34「こいつぁ〜いいや!ほれ!」ピンッ

チャリンチャリン

ファルージャ「〜〜〜!!!」プルプル

賊徒34「銅貨一枚くれてやらぁ?さっさと股ぁ開けよビッチが?」ニタニタ

ファルージャ「なん、じゃと…キサマ…!?」ギロッ

賊徒35「俺も俺も〜」ピンッ

賊徒36「こんな傷物とヤるのかよ〜?俺は勘弁っすわ〜?」

賊徒37「顔なんざ布切れ被して隠しときゃいいだろ。腐っても身体は上等だ!ギャハハ!」ゲラゲラ

賊徒38「それもそうだなぁ!んじゃ俺も一枚投じてやっか!」ピンッ

賊徒39「おいおい、いったい何人でマワす気だよ〜!後に抱くヤツがバッチぃじゃねぇか?」

賊徒40「うしし…いいじゃねぇか。堕ちた女を汚すってのも乙なモンよ」ピンッ

ピンッ ピンッ ピンッ ピンッ

ファルージャ「お、のれ…!やめろ!小銭を投げつけるなぁ!?」ビシビシッ

賊徒30「ギャハハハハ!見ろよ!あの必死なツラ!血と涙で崩れた化粧がどろどろになってらぁ!」ゲラゲラ

ファルージャ「アァ…!ウアァァアアア!!」ボロボロ
974: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:53:09 ID:8RM3./Nalk
カロル「」バッ

ファルージャ「」ビクッ

カロル「……!」ビシビシッ

賊徒30「あぁ?なんだぁこのガキぃ?」

賊徒31「どけよ!邪魔だろうが!」

カロル「やめなよ…。男の人なのに女の人をいじめるなんてかっこ悪いよ!」キッ

賊徒32「てめぇ…!なんだその生意気な目ぇ?ぶっ殺すぞウラァ!!」

バキィッ

賊徒32「ぎゃふ!?」ズダァァ

レジスタンス11「みっともねぇんだよ。バカヤロウ」コキコキ

賊徒's「……!?」

レジスタンス11「リーダーのクンバヤが命を振り絞って掴んだ勝利に女を抱いて祝福ってか?意地きたねぇにも程があんだろうがよ!?」カッ

賊徒's「」ブルッ

レジスタンス11「王国人も見てる前でなんだ、このひでぇ有り様は?馬鹿にすんじゃねぇ!俺たちはイアマンだぞ!?」

レジスタンス11「この聖戦を勝利に導いた英雄だ!神に愛された戦士だ!路上でくだ巻くならず者じゃねぇ!誇りはねぇのかクソヤロウ共!?」ガァーッ

賊徒's「」ズーン
975: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 21:54:50 ID:8RM3./Nalk
ファルージャ「ひっ…ヒィ……」ボロボロ

カロル「怖かったよね。ごめんなさい」ダキッ

ファルージャ「!?」ギュッ

カロル「ボクも知ってるよ…」ナデナデ

ファルージャ「……!?」ブルブル

カロル「ボクたちに石を投げつける人たちは何を言ってもやめてくれなかった」

カロル「誰も止めようとしないし助けてくれることもなかった」

ファルージャ「……!」

カロル「だからボクは見捨てたくない。あんな苦しみは知らなくていいんだ」

ファルージャ「やかましい!!」バッ

カロル「!」

ファルージャ「そなたは…何がしたい…!?なにゆえ、庇おうとする…!?」ポロッ

カロル「……」

ファルージャ「落ちぶれる妾を見下しておるのであろうが…!?癒す気もないのなら、妾に情けなど…!」ググッ

カロル「ううん」フルフル

ファルージャ「はぁ…そうかっ…!味方のふりをし、欺くのだな…!?誰がそなたなどに振り回されるか!」

カロル「ちがうよ」

ファルージャ「なんなんじゃ…!魅力を無くした妾に…何を望む…!?」ポロポロ

カロル「なにも望んでないよ」ナデッ

フワッ

ファルージャ「!!!」

ファルージャ「……!」

ファルージャ「ふ、う」ポロポロ
976: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 22:38:50 ID:8RM3./Nalk
ラム「あ〜あ、またやっちゃったね」

ヒメ「よせって言うのに…」

ラム「でもいいんじゃない?あの様子なら大丈夫だよ。たぶん」

宣教師「……」

ラム「どうかしたの?」

宣教師「これで済むような相手でしたら最初から苦労していませんよ」

ラム「どういうこと?」

ヒメ「さすがに女の方が鋭いな」

宣教師「キミも?」

ヒメ「…あぁ、女心は分からないがヤツとは浅からぬ因縁がある。簡単に覆せるタマじゃない」

ラム「な、なにさ!二人だけで納得して!」

宣教師「キミも半年以上、この城で彼女を見てきたのなら、なんとなく察しませんか?」

ラム「……?」

ヒメ「成り上がりとはいえ、仮にも大国の支配者まで登り詰めたんだ。その自我は強いってことさ」

ラム「……!」
977: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 22:40:16 ID:Z3/ar.vMUI
カロル「へいき?」ナデナデ

ファルージャ「う、うっ…」ポロポロ

カロル「」ナデナデ

ファルージャ「(なんという屈辱…!ホビット風情に涙を見せ、懇願させられるなど…あるまじき醜態!)」ジワァァ

カロル「……」ナデナデ

ファルージャ「(なぜじゃ…なぜこやつには妾の魅力が通じぬ…!)」

ファルージャ「(ひとたび誘惑すれば皇族もその臣下も民衆さえも平伏した…)」

ファルージャ「(童の仲間とて初めは我が美に揺れていた…!)」

ファルージャ「(じゃがこやつは…こやつだけは!)」キッ

カロル「?」ニコッ

ファルージャ「(最初から靡かなかった!凪のごとく、なにも望まぬと言い切った…!無償で傷を癒した!)」

ファルージャ「(敵対した妾を愛するでもなく救った…!)」ギリッ

ファルージャ「(まるで妾を女とも見ておらぬかのように…!)」フーフー

ファルージャ「(侮辱じゃ…かつてない…!)」ググッ
978: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 22:41:19 ID:8RM3./Nalk
西国兵108「うへへ!じょ、女王の美貌が戻っだぞ!」

西国兵's「ぐしし…!やはり女王が一番だ!」ジュルリ

ファルージャ「……!」ジャリッ

西国兵108「さぁ女王!今度こそ、ごのネズミどもを一網打尽にしてやりやしょうや!」

ファルージャ「痴れ者めっ!?」カッ

西国兵's「ひっ!」タジッ

ファルージャ「ようも黙っておったものよ…!下僕の分際で高みの見物か!?」ジロッ

西国兵's「〜〜〜!」モゴモゴ

ファルージャ「…自害せよ」

西国兵's「え…?」

ファルージャ「互いに心臓を刺し合え…!妾を裏切った罪、死を以て償うのじゃ!!」

西国兵's「」オロオロ

ファルージャ「どうした!命令じゃ!やらぬかぁっ!?」

カロル「ふぁ、ファルージャさん…!やめなよ!」オロオロ

ファルージャ「そなたもじゃ…!」

カロル「え…?」

ファルージャ「価値の分からぬホビット風情が妾の心を手に入れたつもりか…!?」

カロル「な、なんのこと…?」

ファルージャ「こやつの心臓に剣を突き立てよ!無価値な愚か者はまとめて死ぬがいいわさ!」

パシンッ!

ファルージャ「ッ……」ヒリヒリ
979: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 22:42:01 ID:8RM3./Nalk
ファルージャ「……!?」マジマジ

宣教師「……」

ファルージャ「キ、サマ……わ、妾の顔を張ったな…?」ワナワナ

宣教師「いい加減にしなさい!!」

ファルージャ「」ビクッ

宣教師「まだ分からないのですか!もう終わったんですよ!」

ザワザワ ザワザワ

宣教師「いつまでも喚いてないで現実を受け止めなさい!」

ファルージャ「……!」プルプル

宣教師「少しは改心するかと思いましたが手の尽くしようがありませんね」

ファルージャ「改心…!?妾が何を改める必要が…!?」

宣教師「それから!」ピシャリッ

ファルージャ「!」

宣教師「私はカロルくんのように無条件であなたを許す気にはなれません…。それだけの罰を覚悟なさい」

ファルージャ「ふ、ふざ…!」イラッ

宣教師「ふざけるな、は私のセリフです!」

ファルージャ「」ムグッ

宣教師「幾度となく差し伸べられた手を払ってきた…掴む手を失ってからでは遅いんですよ」

宣教師「犯した過ちもそうですが…自分の心に問いかけなさい。何が間違っていたのか、なぜ最後の最後で見捨てられたのか」

宣教師「それが分かる時まで…あなたに愛を語る資格はありません」

カロル「宣教師さま…」

宣教師「キミもやりすぎです!この女から離れなさい!」グイッ

カロル「あっ…」グンッ
980: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 22:44:05 ID:8RM3./Nalk
宣教師「さぁ帰りますよ」

カロル「……」

宣教師「…まだ気掛かりですか」

カロル「パカラーロさんとは…ホントに仲良しなんだと思ってた」

宣教師「?」

カロル「ファルージャさんはホントに誰も信じてなかったのかな…」

宣教師「諦めましょう…」ボソッ

カロル「へ…?」

宣教師「もう十分ですよ。キミはよくやりました」

カロル「……」

宣教師「女という生き物はね、見栄っ張りなんですよ」

カロル「そうなの…?」

宣教師「えぇ、私にも少なからずそういった部分がありますから」

カロル「宣教師さまも?」

宣教師「自分を押し通そうとするあまり他人を省みなくなることが多々あります。ファルージャはそれの究極……どこまでも"女"なのでしょうね」

カロル「分からないよ…」

宣教師「…キミも男の子なら分かる日が来ますよ。もう少し大きくなってから、ね」クスッ

カロル「…はい」チラッ


ファルージャ「そんな馬鹿な…妾が…?なぜこうなる…なにゆえ……誰か、誰か」ボー


カロル「っ…」シュン
981: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 22:54:27 ID:Z3/ar.vMUI
ヒメ「元王国軍はこちらの指示に倣い、速やかに撤退の準備をしろ!」

ヒメ「人員が不足してる分、みっちり働いてもらうぞ!真面目にこなした者には特例で恩赦も与える!贖罪と思って誠実に励め!」

王国兵's「……!」ググッ

ヒメ「女王以下帝国軍の処遇は反乱軍に委ね、王国はこれに関与しないものとする!いいな?」

レジスタンス11「おう」

ヒメ「よし、話はまとまった!僕たちも帰り支度を始めるぞ!」

ラム「か、帰るって…このまま?」

ヒメ「…あぁ、そうだ」

ズゥゥゥゥゥン

ラム「…いいのかい?」

ヒメ「…帝都も同様の被害に遭ってる。いくつもの軍勢から遺体を掻き分けて持ち帰ってやるのは不可能だ」

ラム「そっか…。しょうがないな」シュン

ヒメ「過酷なのはこれからだ…」

ラム「え…?」

ヒメ「いや、なんでもない。団長を呼びに行ってくる」スタスタ

ラム「あ、うん…」
982: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 22:55:18 ID:8RM3./Nalk
ザッザッザッザッ

ファルージャ「……!」

レジスタンス11「さぁて、と」ザッ

ファルージャ「なっ…」タジッ

レジスタンス11「分かってるよなぁ?」ギロッ

賊徒's「」ザザザッ

ファルージャ「ぶ、無礼者め…!道を開けよ!」ブルッ

ジリッジリッ

ファルージャ「う、あああ!!!」ダッ

賊徒36「おっとぉ」ガシッ

ファルージャ「触れるな!穢らわしい!!」ガリッ

賊徒36「おっつ!?引っ掻きやがった!このアマ!?」パッ

ファルージャ「はっ…は!」フラフラ

ドンッ

ファルージャ「グッ!?」ドサッ

レジスタンス11「逃げ場なんかねぇよ」

ファルージャ「わ、妾を…どうする気じゃ…!?」ブルブル

レジスタンス11「お前がしてきた事を思い出せよ。なんとなく想像出来るだろ?」ニヤリ

ファルージャ「」ゾワァッ
983: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 22:56:15 ID:8RM3./Nalk
レジスタンス11「地下に連れてけ。この女が拷問に使ってた独房がある筈だ」

賊徒37「あいよ」ガッ

ファルージャ「だ、誰か!誰か!助けて!イヤッ!?」ジタバタ

賊徒38「目ん玉ひん剥いてよく見てみな」グッ

賊徒39「てめぇの手下はみーんな空っぽになってらぁ」

西国兵's「」ボー

ファルージャ「な、なにをしておる!はよう!はよう!」ジタバタ

レジスタンス11「あいつらはもう脱け殻だよ。あんたがいくら泣き叫ぼうが石ころみてぇに固まってるさ」

ファルージャ「身の程を知れ!妾は帝……」

レジスタンス11「」ガッ

ファルージャ「ぉぐっ!」ギュウウ

レジスタンス11「ブスだな」ジーッ

ファルージャ「……!?」

レジスタンス11「あんた、この短時間でずいぶん人相変わったぜ。こえーな。一瞬にして全てを失うってのは」

ファルージャ「ぶ、す…?」ヘナヘナ

ガシッ ガシッ ズルズルズル………

984: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/19(水) 23:02:17 ID:Z3/ar.vMUI
スレ数があまり残ってないので、ここまでにしておきます!
続きは次のスレ立て時に更新しようと思ってます!
5スレも使ってしまって申し訳ございませんorz

支援スレの286さん
それぞれのキャラに重心を置いた支援すごく嬉しいです!
まさかの5スレ目突入で、もはやSSといっていいのか分かりませんが、これからもお付き合いいただけたら幸いです!
ありがとうございました!
985:名無しさん@読者の声:2017/4/21(金) 09:11:32 ID:aeiPKD4Roo
更新お疲れ様でした!いつも楽しく読ませていただいてます。
以前、作者様のとあるSSでお話しさせて頂いた者ですがようやく、漸く追い付く事が出来ましたのでご挨拶させて下さい(何の事か分からなかったら…恥ずかしいので全力でスルーして記憶から消してくださいお願いします)

あれからリアルが忙しくなり来れない事も多く、なかなか読めない期間もありましたが…。戻ってきてからは少し忘れている所もあり、読み返したりしているうちにまた再び三度ハマって、気づけば最初の《少年「僕が世界を変えてみせる」》から《カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編その2】》の投下終了、と書かれた最新レスまで一晩かけて一気に読み進めた事も少なくありません。
味わうように何日もかけてじっくりゆっくり読ませていただいた事も何度もあります。

作者様の話の構成の仕方、一人ひとりが生き生きとして実際に居るかのような深いキャラメイク、緻密な戦術や心理描写、読む度に新たな発見と驚きのある物語
(最近の気づきはカロルの名前の意味が“愛情”で、アピシナの樹は“愛情を注がないと育たない”という点です)、そして作者様の人柄。
全部すっごく大好きです!

あの時レスしてよかった!
最初に支援してくれた読者さんのおかげで、カロルたちが殺されなくてホッとしてますw
あの頃はいつ支援しようかと見計らっていたんですが、捕えられた宣教師がどうなるのか心配していたりお母さまの手練手管にドキドキしていてタイミングを逃してしまっていました。

実は…通常板にまとモバ内のまとめ依頼スレで龍さんにカロルスレをまとめて欲しいとお願いしたのは私ですw
大大大好きなSSなのでもっと多くの人に読んで欲しくてお願いしました。

次スレへと続くとの事で、またカロルたちの活躍が見れると思うと、とっても嬉しいです。何度も読み返しながら次のスレを楽しみに待ってます。
…長々と書いてしまって申し訳ありません。2年数ヶ月分の想いがつい爆発してしまいました
986: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/21(金) 22:07:45 ID:MqaGU0TjNY
>>985
至上最も下品で最低なあのクソSSですよね!もちろん覚えてますよw
お話してて凄く楽しかったので、たまにやりとりを読み返したりして励みにさせてもらってました!
ご無沙汰してます!また応援していただけて嬉しいです!

こんな長い話を読み返していただけるなんて、もうなんと言ったらいいか…!
自慢じゃないですが書いてる本人でさえ読み返そうとして断念したくらいです!
書き手よりも読み手の方のほうが作品を愛してくれているんだなぁとしみじみ感じますw
頂いた一つ一つの感想から愛が伝わってきて、改めて自分もこの作品が好きになりました!
また再チャレンジして一から読み返してみます!きっと矛盾だらけかもしれませんがw

あの時の支援レスですが本当に感謝してます
SS板がまだ活発だった頃に書いていながら箸にも棒にも引っ掛からず、敢えて毎日更新をやめてみたり必死に上げながら更新してみたりと迷走していましたのでw
ですが、自分みたいな者が書いた話でも面白いと言ってくれる人がいて救われました
くどいようですが本当にありがとうございます
カロルを殺さなくて本当に良かったです(笑)

まとめ依頼もしてくださってたんですか!?
それはもうありがとうございますというか重ね重ね申し訳ありません!
さまざまな形でバックアップしていただけて物凄く助かります!
おかげさまで評価システムというもう1つの励みも貰えました!
管理人様共々感謝してもし足りません!

まとめに入っていた時は気付いたのが数日後だったので心臓飛び出そうなくらいビックリしましたw
そうそうたる作品の中に自分なんかのSSが入っていて感動すると同時に自作自演を疑われるんじゃないかと一喜一憂してしまいましたw
その時のトップページは今も保存してあります!気持ち悪いですよね!(笑)

長々となんてとんでもないです!
例によって自分の方が舞い上がって倍返ししてしまってますので!
これからも作品を好きでいてもらえるよう精一杯考えます!
読み手の皆様から頂いた愛ある感想に報いられるよう更新頻度を速めるように頑張ります!

嬉しいご報告と感想、本当にありがとうございました!
987:名無しさん@読者の声:2017/4/22(土) 04:22:30 ID:WBEjxRUfDg
まとめで見つけてから毎日読んでやっと追いつけた。壮大なSS、一旦お疲れ様さまです。
自作自演に疑われる?ナイナイ
まとめられたのも面白いから実力と実績で、って事読み手はわかってるから
更新>>1のペースでいいよ、早い方が読み手は嬉しいけど無理せずに自分のペースで投下してくれたら嬉しいな
988: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/22(土) 21:30:01 ID:gRwPK6sp4k
>>987
労いのお言葉、ありがとうございます!
想定から大きく外れて次スレ突入という結果になってしまいましたので多少焦る気持ちがあったのですが、お気遣い頂けて気が楽になりました!
読み手の皆様の暖かさにいつも励まされています!
期待に応える為にも無い知恵を振り絞って頑張ります!
4スレ目もお付き合いいただき、ありがとうございました!
989:真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
973.18 KBytes

名前:
sage:


[1] 1- [2] [3]最10

[4]最25 [5]最50 [6]最75

[*]前20 [0]戻る [#]次20

うpろだ
スレ機能】【顔文字






information
QRコード
友達に教える
お問い合わせ
TOP

(C)2009 llike.net/2ch/