http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-10
1スレ(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1385288769/1-10
2スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1416136192/1-10
3スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】)
あらすじはそれぞれの1参照(考えるのがめんどくかったんです。ごめんなさい)
>>2から本編になります!
2: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:02:01 ID:Uy/w6CDiOE
〜〜〜回想(マリー)〜〜〜
タッタッ タッタッ
フィズス「早くおいでよ、マリー!」クルッ
マリー「はぁっ…ちょっと!置いてかないでよ!」タタタッ
フィズス「ごめん、ごめん。女の子の足にこの丘は急すぎた?」アセアセ
マリー「それもあるけど…あなたに走られたら追い付けないのよ。ホビットと人間じゃ歩幅が違うんだもの!」プンプン
フィズス「おぶってあげた方がよかったかな?」ニコッ
マリー「そ、そんな恥ずかしい…じゃなくて村の人間に見られたらどうするのよ!」アセアセ
フィズス「もうとっくに知られてるよ。君とぼくの仲がただ事じゃないのなんて?」
マリー「え!うそ…!?」サァァァ
フィズス「あぁ、大丈夫だよ。今はまだみんな知らん顔してるし父さんも何も言ってこないから?」
マリー「で、でも…もし知られたら…」ズーン
フィズス「うん。もう村にいられなくなるだろうね」サラッ
マリー「」ガーン
フィズス「そんな事よりさ」
マリー「そんな事よりって……」カッ
フィズス「見てよ、ほら?」ビッ
マリー「? その木がどうかしたの?」キョトン
フィズス「よく見て?太い枝が二本あるだろ?その間にさ……」
マリー「鳥の巣…?」ジーッ
フィズス「ね?」ニコッ
マリー「……も、もしかしてこれだけの為にわざわざ村から外れた高地まで歩かせたの?」ジロッ
フィズス「うん。そうだよ」ニコニコ
バチンッ!!
3: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:03:59 ID:/WYEXwH6vk
フィズス「喜んでもらえると思ったんだけどなぁ…?」ヒリヒリ
マリー「あのねぇ!人間がホビットを連れ立って村の外に出歩くだけでも不信感を持たれるのに何してるの!?
ましてやあなたは次の村長になる人なのよ!?人望を失うような事したらダメじゃない!?」
フィズス「そうだけどさ…」
マリー「もっと考えて行動してちょうだいよ!?
ただでさえあたしみたいなホビットなんかに構うから村人達にも嫌な顔されて…お父様からもお叱りを受けてるんでしょう!?」
フィズス「……」
マリー「ひょっとしたら…なにか大事な話があるんじゃないかって意識してた自分がバカみたい…」プイッ
カラッ パキパキッ
フィズス「あっ!見てみて?」パァァ
マリー「ちょっと!マジメに聞いてるの!?」プンプン
ピヨピヨ ピヨピヨ
フィズス「わぁー…!」キラキラ
マリー「…まぁ?」ハッ
バサバサッ ピヨピヨ
フィズス「親鳥が飛んできた?きっと雛たちが産まれるのを知ってたんだね?」
マリー「素敵…!まさかこんな奇跡に立ち会えるなんて?」マジマジ
フィズス「そうだね」
マリー「…ねぇ、フィズス」
フィズス「ん?なんだい?」
マリー「もしかしてこうなるのを知ってて…あたしを連れてきてくれたの?」ジッ
フィズス「ううん、隣村に行った時、高地の一本杉に鳥の巣があるなぁって気付いたから見せたかったんだ」
マリー「そう…よね。奇跡を演出なんて出来っこないものね。ちょっぴり期待しちゃったわ?」シュン
フィズス「……」
4: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:05:47 ID:Uy/w6CDiOE
フィズス「奇跡を作り出すことはできないけどさ、奇跡に気付くのは簡単だよ?」
マリー「…なによ、それ?」
フィズス「今、こうやって雛の誕生日に立ち会えたのもそうだけど…」
マリー「……?」
フィズス「そこにいたのがぼくと君だった。これもすごい奇跡じゃないかな?」ニコッ
マリー「えっ…」ドキッ
フィズス「あの親鳥がなぜだかこの丘を選んで巣を作って、それをたまたまぼくが見つけて、ぼくが一緒に見に行きたかった相手が君だった。
たったそれだけの事なのに…とてもいい瞬間に巡り会えたんだよ?」
マリー「……!」カァァ
フィズス「どう?さっきまで君が抱えてた不安も掻き消すくらい素晴らしい奇跡に思えない?」ニコニコ
マリー「き、急にやめてよっ!」ドキドキ
フィズス「へ?なにが?」キョトン
マリー「な、なんか…ずるい!そういうの!」ドキドキ
フィズス「…ごめん。気を悪くしたなら謝るよ」シュン
マリー「そ、そうじゃなくて!」アセアセ
フィズス「だったらなんなのさ?」
マリー「て、照れくさいっていうか…恥ずかしいのよ!すごく!」ドキドキ
フィズス「どうして?」
マリー「どうしてって…だって…う、うまく言えないわよ、そんなの!」アセアセ
フィズス「そっか?」ニコッ
マリー「!」キュンッ
フィズス「今日の君はいろんな表情を見せてくれるね?」ニコニコ
マリー「だから…そういうのが恥ずかしいって言ってるの!?」プンプン
5: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:08:43 ID:/WYEXwH6vk
フィズス「でもさ、考えてもごらんよ?」
マリー「こ、今度はなによ…!」ムスッ
フィズス「ぼくと君は違う種族で…本当ならお互い、ここにはいなかった筈だよ?」
マリー「……」キュッ
フィズス「ホビットが大昔に罪を犯したなんて馬鹿馬鹿しい話が出回ったせいで君たちも住み処を追われて…こうやってここにいる訳だけどさ」
マリー「そう…ね」
フィズス「君たちにとっては心底辛くて浮かばれないのかもしれないよ?でもね……」
マリー「…出会っちゃいけなかったのよ。あたしたちなんて……」
フィズス「マリー?」
マリー「そうよね…。あなたは人間、あたしはホビット。こんな関係、どうかしてたのよ」
フィズス「……」
マリー「…ほんのちょっとだけ、本当に…少しだけど……もしかしたらなんて…」ブルッ
フィズス「?」
マリー「もしかしたら…あたしも…あなたと普通の恋人同士みたいに…そういう運命を期待していいのかも、とか…」ブルブル
フィズス「え…!?」ギョギョッ
マリー「(『え…!?』………)」ビクッ
6: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:09:58 ID:Uy/w6CDiOE
マリー「やっ…ぱり……」ウルッ
フィズス「そ、そんな…」ワナワナ
マリー「ご、めんなさい…!」ブワァッ
フィズス「!?」
マリー「わあああああん……」ガクッ ポロポロ
フィズス「マリー!?どうしたのさ!?」アタフタ
マリー「ダメに…決まってるわよね…っ!ごめ…なさい!あたしみたいな…ホビットなんかがっ…!」ポロポロ
フィズス「……!」
マリー「ひん…ぇっ…!ごめ…なさい…ごめんなさぁぁい……!!」ポロポロ
ガシッ
マリー「」ビクッ
チュッ
マリー「」ビクビクゥゥッ!
フィズス「……はっ…泣かないで、マリー?」スッ
マリー「!!!」ボンッ
7: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:12:53 ID:/WYEXwH6vk
マリー「」ポカーン
フィズス「マリー?マリー!」フリフリ
マリー「」ハッ
フィズス「大丈夫かい?目が虚ろだったから…」ホッ
マリー「ね、ねぇ…今のって……」オソルオソル
フィズス「?」
マリー「そ、そうよね?あたしの勘違いよね?そんないきなり口付けなんて……」アタフタ
フィズス「え?したけど?」
マリー「!?」カァァ
フィズス「弱々しく泣く君を見てたら愛しくなっちゃって?」クスッ
マリー「ば、ばばバカバカバカバカ!!は、はじ…初めてだったのに!?」ポコポコ
フィズス「あはは!ごめんよ。イヤだった?」ジッ
マリー「そ、そんな訳…ないじゃない」プイッ
フィズス「そう。よかった?」ニコッ
マリー「〜〜〜!」ドギマギ
フィズス「ありふれてるけど…一つ一つの出会いって奇跡に等しいよね。出会えたのが君で本当によかった」ニコニコ
マリー「な、なによ…!さっきは…言葉に詰まってたじゃない!」グスンッ
フィズス「だって…先に言われちゃうと思わなかったからさ?」テレッ
マリー「え?」ジッ
フィズス「今日、しようと思ってたんだ。告白?」テレテレ
マリー「えぇっ!?」ドッキン
8: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:14:22 ID:/WYEXwH6vk
フィズス「指輪とか…ちゃんとした式は用意できなかったんだけどね…。
ぼくが伝えて、君が受け入れてくれたら、それでいいかなって…?」カァァ
マリー「!」キュンッキュンッ
フィズス「や、やっぱり変だよね!いきなりこんな…困らせちゃってごめんね!」アセアセ
マリー「バカぁっ!!」ガバッ
フィズス「わっ!?」ドサッ
マリー「ホントに…あなたってバカ!」ギュッ
フィズス「え…?」オロオロ
マリー「鳥の巣を見せてから告白って…どうしたらそんな訳の分からない事が思い付くのよ!?」キッ
フィズス「あ、あはは…ぼくも迷ったんだけど…二人きりになれる口実が欲しくて?」アセアセ
マリー「バカっ…」チュッ
フィズス「っ…!?」
マリー「ぷあっ…もう!今度はちゃんと考えてよ!?」ジッ
フィズス「…うん。君に喜んでもらう為だったら、頑張るよ?」ニコッ
マリー「そ、そういうのがずるいの!?」ドキドキ
フィズス「?」
9: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:16:07 ID:/WYEXwH6vk
〜〜〜〜〜〜
マリー「はぁ…結局、村から追い出されちゃったわね…」トボトボ
フィズス「分かってもらえるなんて思ってなかったしいいよ」スタスタ
マリー「あのねぇ…!そんな気楽に構えてられないでしょ!?」キッ
祖父(マリーの父)「これ、マリーや。興奮してはいかん。腹に宿る命を労らんか?」スタスタ
マリー「…うん」
フィズス「お腹蹴ってる?」
マリー「まだそんな時期じゃないわよ…。全然膨らんでないでしょう?」ハァッ
フィズス「ふふふ!」ルンルン
マリー「なにはしゃいでるのよ?」クスッ
フィズス「また一つ、君と大きな奇跡を分かち合えたなぁって?」
マリー「…もう!お父様からも言ってあげてよ?フィズスったら、いっつもこんな恥ずかしい事ばっかり言ってくるのよ!?」テレテレ
祖父「言葉の割には嬉しそうに見えるぞ」
マリー「そ、そんなことないわよ!」テレテレ
フィズス「産まれたら、お義父さんに名前をもらいたいですね?」ルンルン
祖父「いやいや…お前たちの子なのだから、そういう訳にはいかん?」
マリー「うーん…それはあたしも賛成?」
祖父「なっ…!?」
マリー「思えばお母様が病で亡くなった時、あたしはまだちっちゃくて…それからここまで育ててもらうまで、とても苦労をかけてきたから」
フィズス「それにぼくたちが結ばれた時も快く許してくれて…本当に感謝してます。マリーの親があなたでなかったら、きっとこうはなれなかった」
祖父「い、いやしかし…!」
マリー「おねがい?あたしたちはお父様に名前をもらいたいの…?」ジッ
フィズス「お腹の子の名付け親になってください。お願いします!」ペコッ
祖父「む、むぅぅ…!」
10: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:19:10 ID:/WYEXwH6vk
祖父「で、では…"カロル"というのはどうだ?」
フィズス「いい名前ですね。どういう意味が込められてるんですか?」
祖父「昔のホビット族が使っていたクレオール語という古語が由来だが人間の言葉に訳すと…」
マリー「"親愛"……」
祖父「ん…?知ってたのか?」
マリー「お母様が昔、ちょこっとクレオール訛りが強かったから、それを聞きかじってただけ?」
祖父「…まぁ妻と私が生まれ育った集落は人間の文化に適応していなかったからな」
フィズス「"親愛"で"カロル"……いい!すごくいいですよ!」パァァ
祖父「そ、そうかね?」
フィズス「はい!ぼくは気に入ってます!マリーはどう?」
マリー「…あたしもいいと思うわ?」ニコッ
祖父「ふぅ…それはよかった。しかし孫の名付け親にしてもらえるとは…なんとも言えないが喜ばしい気持ちでいっぱいだ?」ニコッ
フィズス「カロル。聴こえるかい?お祖父様が君に名前をくれたよ?
君が受け取った最初の贈り物は何より素敵な意味が込められたかわいらしい名前だよ?
お母様のお腹から出たら最初にお礼を言おうね…」ピトッ
マリー「…だから、まだそんなにお腹も膨らんでないったら?」
フィズス「まだ性別も分からないけど、どっちに似るかなぁ?君に似たらすごく美人な女の子になるだろうなぁ…」
マリー「美人だなんて…別に普通よ。でもあなたに似たら…誠実で優しい子になるでしょうね」スリスリ
11: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:20:50 ID:Uy/w6CDiOE
祖父「どちらにせよ、お前たちの間に産まれれば良い子であるのは間違いなさそうだな?」
フィズス「そ、そんなぁ…」テレッ
マリー「あ、でもあなたに似たら少し頼りないかも…?」
フィズス「え?そ、そうかな?」オロオロ
マリー「えぇ、いつもヘラヘラしてるし身長は高いのに体は細いし…言葉遣いもナヨナヨしてるもの?」
フィズス「うっ…」グサッ
祖父「はっはっ…君も父親となる以上、お腹の子とマリーを守れるようにならなくてはな?」
フィズス「ど、努力します…!」
祖父「まずはその口調から直してみたらどうだ?"ぼく"というのを"俺"にしてみるとか…」
フィズス「は、はい!お、おれ…俺が二人を守ってみせます!」キリッ
マリー「ぷっ…あはははは!全然合ってないじゃない!」ケラケラ
フィズス「えぇ〜…」ガーン
祖父「ま、まぁ…続ければ馴染むだろうさ…ぷぷ!」プルプル
フィズス「お、お義父さんも笑ってませんか!?」
マリー「きゃはははは!」ケラケラ
祖父「はっはっ…」クスクス
フィズス「な、なんで二人とも笑うのさ!俺って言っただけなのに!?」アタフタ
アハハハハハハ!
……………………
12: 名無しさん@読者の声:2015/8/6(木) 19:11:33 ID:27huhh/BmI
マリーさんマジ天使
CCCCCCCC
13: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/7(金) 22:20:00 ID:MjrjC5RLn.
>>12
なんてもったいないお言葉!ありがとうございます!
自分のキャラに愛着を持っていただけるのはとても嬉しいです!
支援ありがとうございました!
14: 名無しさん@読者の声:2015/8/8(土) 01:12:12 ID:pmvdmKrZIQ
私ファルージャが好きだわ…あの傲慢さに見え隠れする哀しさが何とも言えない
15: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/8(土) 18:48:09 ID:YUaqlqK50k
>>14
おぉ!まさかのファルージャですか!
美人でエロい女帝といういかにもありがちなキャラなので自信が無かったですが気に入っていただけてありがたいです!
前スレでは出番が少なかったですが今回こそは活躍させたいですねw
本当に嬉しいです!ありがとうございました!
16: 遅くなってすみません! ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:12:44 ID:jOOK1VnbDQ
〜〜〜昼〜〜〜
―――ミラルドの町(市場)―――
母(マリー)「(……また、思い出しちゃった。けれど、もう辛くない)」
母「(あれから色々な出来事に見舞われてはきたけど…今はこうして最愛の息子と新しい場所で静かに暮らしてるんだもの)」スタスタ
孤児1「ママー!あれも買おうよ?」グイグイ
孤児2「ぼくもほしいー!」
母「ダメよ?お夕飯の食材を買いに来たんだから?」メッ
母「(それに血は繋がってないけど大勢の賑やかな家族も出来て穏やかな生活を続けられてるわ……)」シミジミ
17: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:15:01 ID:ghswXoejkk
―――ミラルドの町(孤児院)―――
母「帰りましたよー…あら?」
スッスッ パサッ
ナラ「あ、おかえりなさい」セッセッ
母「まぁナラちゃん!お洗濯してくれたの?」ビックリ
ナラ「きょうはミシングさんもいないし、マリーおばさんだけだと…たいへんだから」
母「ありがとう!とっても助かるわ?」ニコッ
ナラ「えへへ…どういたしまして?」テレッ
母「ナラお姉ちゃんはしっかり者ねー?二人も見習いましょうねー?」ニコニコ
孤児1「うん。ねーちゃん、えらーい!」
孤児2「ぼくもてつだう!」
ナラ「あ、じゃあ…たたむの、おねがいしていい?」
孤児1「いいよー!」
孤児2「やるー!」
母「(普段はおとなしくて控えめな子だけど気立てが良くて頼りになる子…。
ナラちゃんはきっと将来、いいお嫁さんになるわ?)」ニコニコ
母「さてと…お風呂の準備して、ご飯作っちゃいましょ」スタスタ
18: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:16:50 ID:ghswXoejkk
〜〜〜夕方〜〜〜
ガチャッ
ルーボイ「帰ったぜー!」ポイッ
ドサッドサッ
カロル「ただいまー!」スタスタ
マルク「わんっわんっ!」ハッハッ
ナラ「おかえり…あ、ルーボイ!ちらかしたらダメ!」
ルーボイ「うるせーな!後で片付けるっつの!」
ナラ「あとじゃなくて、いま!」
ルーボイ「うっ…な、なんだよ!疲れてんのに!?」
ナラ「あそんでただけでしょ!」
ルーボイ「そ、そうだけどよ…」マゴマゴ
カロル「いいよ。ボクが部屋に戻しておくね?」ヒョイッ
ルーボイ「お!サンキュー!」
ナラ「じ、じぶんでやらせないとダメだよ…?」オロオロ
ルーボイ「いいじゃん!こいつがやりてーっつーんだから!な?」
カロル「うん、そうだよ?」ニコッ
ナラ「うー…あ、あんまり…あまやかさないで?」モジモジ
ラム「そうそう。ただでさえ、だらしないんだから少しは自分でやってもらわないとね?」ヒョコッ
ルーボイ「うわあ!?いつからいたんだよ、おまえ!?」ピョンッ
ラム「今、帰ってきたとこ」スタスタ
19: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:19:17 ID:ghswXoejkk
ラム「あー疲れた。もうご飯出来てるの?」
ナラ「まだ、だよ。きょうはおしごとだったの?」
ラム「まぁね。仕事っていうか手伝いだけど」
カロル「お疲れさま!荷物重たいでしょ?部屋に戻してくるよ?」スッ
ラム「ありがとう?僕は自分でやるから平気だよ?自分でね?」チラッ
ルーボイ「うっ…」
カロル「そう?じゃあルーボイくんのだけ2階に片付けちゃうね!」タッタッ
ラム「」ジーッ
ナラ「」ジーッ
ルーボイ「な、なんだよっ!?」
孤児1「いーけないんだ、いけないんだー!」
孤児2「おしおきオバケに言っちゃーお!」
ルーボイ「や、やめろっ!またケツひっぱたかれんだろ!?」アセアセ
20: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:21:23 ID:ghswXoejkk
母「あら、3人とも帰ってきてたの?」
カロル「うん!ルーボイくんと町外れの川で釣りしてきたの!」
ルーボイ「ぜんぜん釣れなかったけどなー。やっぱパンの耳じゃ食わねーのかな?」
母「そ、そう…楽しそうでよかったわねぇ?(パンの耳……)」ヒクヒク
カロル「ボクはお魚さん見ながらのんびりしてるだけで楽しかったよ?ねー、マルク?」ナデナデ
マルク「クゥーン!」スリスリ
ルーボイ「釣れなくて何が楽しいんだっつの。変なやつ…」
母「うふふ…」ニコニコ
母「(ルーボイくんは坊やが初めて一緒に遊んだお友達だったっけ…。
ちょっぴり乱暴でわがままだけど…わんぱくで友達思いのいい子だわ?)」
ルーボイ「明日はチビ達も連れてって森で虫取りしよーぜ!」
カロル「うんっ!」パァァ
母「(面倒見もよくて毎日、坊やと遊んでくれて…親としてはこういう子が一番ありがたいのよね。
まぁ自分が遊びたいのもあるんでしょうけど?)」クスッ
21: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:23:12 ID:ghswXoejkk
母「ラムくんは図書館でお手伝いしてきたんでしょう?どうだったの?」クスッ
ラム「え?あ、えっと…普通です…。
まだ何もさせてもらってないし…掃除とか本の整理とか…雑用ばっかりですから」モジモジ
母「そんなことないわよ?雑用も立派なお仕事ですもの?」
ラム「…そうですね」
母「あなたはとても利口だから、ちゃんと続ければみんなに分かってもらえるわ?」ニコッ
ラム「……う、うん。ありがとう…ございます」ドギマギ
母「(この子はまだあたしに慣れてくれてないみたい…。それもそうよね。
友達の母親なんて関係上は割と縁遠い立場だし他人行儀になっちゃうのかも)」シュン
『ラム……いい子で待っててね。すぐ…迎えに行くから』
ラム「かあ…さん…」ズキンッ
母「え?」
ラム「あ、違います!なんでもないです?」アタフタ
母「そう…?」キョトン
ラム「(カロルくんのお母さんだって分かってるけど…なんか……)」ハァッ
22: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:24:43 ID:ghswXoejkk
母「さ、みんな先お風呂に入っちゃって?もうすぐご飯も出来上がりますからね?」グツグツ
カロル「はーい!」
ルーボイ「俺は後でいいや」
ナラ「わたし、はいってこようかな。いい?」スクッ
カロル「いいよ!」ニコニコ
ナラ「じゃあ…さきにはいっちゃうね」スタスタ
ガチャッ バタンッ
ラム「ナラが上がったら入ろうかな…。二人も洗ってあげるから入ろうね?」
孤児1「えー?いつもミシング姉ちゃんが洗ってくれるんだよー?」キョトン
ラム「ミシング姉さんは遅くまで帰ってこないから今日は僕と入ろう?」
孤児2「じゃあママはー?」
ラム「…か、カロルくんのお母さんはご飯の支度してるから」
孤児1「カロル兄ちゃんのじゃないもーん!みんなのママだもーん!」プンプン
孤児2「そうだ、そうだ!」プンプン
ラム「」チラッ
ルーボイ「げっ!お前の母ちゃんが作ってんのかよ?本当に大丈夫か…?」ビクビク
カロル「どうして?お母さまのご飯、おいしいじゃない?ね、マルク?」
マルク「わ、ゎんっ…」モゴモゴ
ラム「(カロルくんは気にしてないみたいだけど…いいのかな)」
孤児1「ママとはいるー!」ジタバタ
孤児2「ぼくもママがいいー!」
ラム「……」
23: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:26:20 ID:ghswXoejkk
ワイワイキャッキャッ
パクパク モグモグ
母「どう?ちょっとお塩入れすぎちゃったかしら?」
カロル「ちょうどいいよ!」パクッ
ルーボイ「(何がどう丁度いいんだよ…?)」ズーン
ラム「(塩の量とか関係ない…)」ブルブル
ナラ「(カロル…おいしそうにたべてる)」ヒクヒク
孤児1「うえー!まずーい!」ペッペッ
孤児2「コゲコゲだよー!」
ルーボイ&ナラ&ラム「」ビクビクゥゥッ
カロル&母「え…?」ピタッ
孤児1「ぼくたべなーい!ヘタクソだもん?」プイッ
孤児2「ぼくも!ミシング姉ちゃんに作ってもらうからいらなーい!」コトッ
ラム「ふ、二人ともなに言ってるんだよ!」オロオロ
孤児1「だ、だってまずいもん」ムスッ
カロル「そ、そんなことないよ。おいしいじゃない?」アセアセ
ナラ「そ、そう!おいしい!」パクッ
ナラ「うっ…」クラッ
孤児2「やっぱりまずいんじゃん!」
ナラ「お、おいしい…よ。うぷっ…」プルプル
ルーボイ「む、無理すんなよ……あっ」ハッ
母「無理…させちゃってたの?」
ルーボイ「ち、ちちちちげーし!してねーし!」アタフタ
ナラ「うっ…んぅ……」プルプル
母「……」
24: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:28:41 ID:jOOK1VnbDQ
ラム「作ってくれた物に文句言ったらダメだよ!」
孤児1「な、なんでよ!本当にまず……」
ラム「まずいって言うなら何も食べなくていい!ミシング姉さんにもそう言うから!」カッ
孤児1「じゃあラム兄ちゃんは食べれるの!?」
ラム「え?た、食べれるよ!当然だろ!」
孤児1「じゃあ食べてよ!ぼくのもあげる!」ササッ
孤児2「ぼくもあげるー」ススッ
ラム「え…ちょっと待っ」
ズラァァァァ
孤児1「食べれるんでしょ!」
孤児2「全部食べてよ!」
ラム「た、食べるよ…。食べるけど…食べれるかって聞かれたら…食べれるんだけど…食べるの?これ全部…?」ブツブツ
ルーボイ「ら、ラム!気持ちは分かるけど落ち着け!」アセアセ
ナラ「わ、わたしたちも…っ…て、てつだうから」ヨロッ
母「いいのよ。みんな?何か出来合いの物を買ってくるわね?」ニコッ
ラム「えっ」
ルーボイ「おばさん…?」
ナラ「だ、だいじょうぶ…だよ?」
母「ううん、いいの!自分でも味付け間違えちゃったかなーって気付いてたのよね!
食材、無駄にしちゃってミシングさんには申し訳ないわ!後で謝らないと…」スクッ
ラム&ナラ&ルーボイ「………」
母「お皿、一回全部洗い場によけちゃうわね…」サッサッ
孤児1「お腹すいたー!」
孤児2「ぼくも!」
母「あ、ごめんなさい、もう遅いものね?先にご飯買ってきましょ!」ダッ
ガチャッ バタンッ
25: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:31:14 ID:ghswXoejkk
ラム「はぁ…なんであんなこと言ったの?」ジロッ
孤児1「本当だもん!」
孤児2「そうだよ!」
ルーボイ「お前らぁ!?」ガタッ
孤児1「」ビクッ
孤児2「」ウルッ
ルーボイ「まずいとか言ったら、おばさん落ち込むに決まってんだろ!なんでそんな事も分かんねーんだよ!?」プンスカ
孤児1「びえーん!」ブワァッ
孤児2「ルーボイ兄ちゃんが怒ったー!」ブワァッ
ルーボイ「泣いてりゃなんでも許されると思ってんじゃねーぞ!?」ブチィッ
カロル「…いいよ。怒らないで?」
ルーボイ「え?」
カロル「二人は悪くないよ。好き嫌いってあるもんね?」ニコッ
ルーボイ「はぁ?こいつら、お前の母ちゃんにひでーこと言ったじゃんかよ!?」
カロル「しょうがないよ。苦手なのに我慢して食べるのってツラいじゃない?」
ルーボイ「だ、だからってまずいとか言うことねぇじゃねーか!」
ラム「そうだよ。ルーボイにしては珍しく正しい事を言ってると思うけど」
ルーボイ「"しては"ってなんだ!"しては"って!?」
26: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:32:31 ID:jOOK1VnbDQ
カロル「そういうの、まだ難しいよ。それにボクもちっちゃい頃は好き嫌いあったもの」
ナラ「カロルが…?」ビックリ
カロル「うん…。お母さまとお祖父さまと三人で旅してた時ね、あんまり食べる物がなかったんだ」
カロル「だから葉っぱと水だけとか…芋虫に蛙に栗鼠…木の幹をかじったりもしたよ」
ルーボイ「げぇっ…!そ、そんなのどうやって食うんだよ…!?」オエッ
ナラ「い、いもむし…カエル…リス…!?」ヒィー
ラム「あ、分かるなぁ。僕も人間に無理やりキリギリスとかカラスの死骸なんかを食べさせられたりしたよ」
ルーボイ&ナラ「!?」ギョギョッ
カロル「…ボクも喜んで食べてた訳じゃないから、お母さまにひどい言葉を言っちゃったりもしたんだ」
ルーボイ「そ、そりゃそんなモン食える訳ねーじゃん」
カロル「この子たちにとってはお母さまの作ったご飯がそうだったんだよ。たまたま?」
ルーボイ「(いや、正直、俺達だって食いたくねぇけど…)」
孤児1「ひっ…うえ…」グズグズ
孤児2「うわーん…」グシグシ
カロル「泣かなくていいよ。大丈夫。みんな怒ってないからね?」ヨシヨシ
孤児1「ぁぁあああん!!」バシッ
カロル「えっ?」ビクッ
孤児2「やぁぁだぁぁぁ!!!」ゴロゴロ
カロル「」アセアセ
ルーボイ「もうほっとけよ。どうせ何言ってもずっと泣いてっから?」
ラム「そうそう。こういう時はミシング姉さんか宣教師様が宥めるんだ。
どうしたって僕たちじゃ悪化させるだけだからね」
ナラ「…なきつかれたら、おとなしくなるよ?」
カロル「そうなんだ…」
27: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:35:34 ID:ghswXoejkk
〜〜〜夜〜〜〜
ミシング「はー…クッタクター……」ガチャッ
母「おかえりなさい。お疲れ様でした?」パタンッ
ミシング「あれれ?お母さん、まだ起きてたんですか?」
母「えぇ、ミシングさんが外で頑張ってらっしゃるのにあたしが先に寝てしまうのは申し訳なくて…」ウトウト
ミシング「そんなー!気にしないでいいんですって!
ここは三食昼寝付き、就労時間はご自由にがモットーなんですから!」
母「ふふふ…そういえば今日は遅かったんですね?」
ミシング「ホビットの二人の移住先が決まったんで役場で住民登録の解除手続きと移住許可証の発行をしてもらったんですよー。
その後、大聖堂まで送ってー…向こうに待機してもらってー…って感じで?
いやーこんなに遅くなるなんて思わないから…もうみんな寝ちゃってるかなーなんて!」ヌギッ
母「あぁ、前に話してましたわね…。二人は大聖堂に待機したまま帰ってこないんですか?」
ミシング「先に出発の準備だけ済ませてあったんで他の移住者と交流しながら迎えの馬車を待つみたい?
馬車は1週間くらいでこっちに着く見込みだけど…送別会とかしたかったにゃー」
母「いいじゃありませんか!是非しましょうよ?」
ミシング「…断られちゃったんですよねー」
母「まぁ?どうして?」
ミシング「『思い出はたくさんもらったから、これ以上、増やしちゃったら前に進めなくなる』って……」
母「…でしたら、ここに残る選択肢も……」
ミシング「あたしはそうしてくれて構わないんだけどー…。
二人は二人でいっぱい悩んだだろうし、それでも一人立ちしたいって決めたんならね…?
短い間だけど保護者だった身としては見送ってあげるべきなのかも?」
母「あたし達がお邪魔して…気まずくさせちゃったのかしら」シュン
ミシング「あはは!違いますよ、全然?マリーさん達が来る前から、ちょくちょく相談されてたから?」
28: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:39:08 ID:jOOK1VnbDQ
ミシング「まぁー…あの二人、ああ見えてあたしより年上だったんですよねー。びっくり!
だからか知らないけど、いろいろ考えてて…なんだかんだ自分たちで生活していくのを望んだのかにゃ?」
母「そうですか…。寂しくなりますわね?」
ミシング「うん、そうなんだけど…寂しいのはお互い様ですもんね。
あんまり名残惜しくしちゃうとホビットの二人も辛くなりますよ、やっぱり?」
母「そうですね…。子供たちもいつそういう選択をするとも限りませんし…。
そうなった時、何も言わず背中を押してあげるのが保護者の役目なのかもしれないわ…」
ミシング「そうそう。お別れを悲しむより祝福して見届けなくちゃ?」ニコッ
母「(……坊やにもいつかそんな日が来るのかしら)」
ミシング「…マリーさん?」
母「あ、すみません!ちょっとボーッとしちゃって?」ハッ
ミシング「もうこんな時間ですもんね。あたしは湯浴みして日誌書いてから寝るんで遠慮せず寝ちゃってください」
母「は、はい…。じゃあお言葉に甘えて…」
ドタバタ ガタンッ
母「あら…?二階から…?」
ミシング「んもー!あの子たちったらー…お仕置きオバケの出番かにゃ!」
タタタッ
ナラ「ま、マリーおばさん!ミシングさん!」アセアセ
ミシング「あ、ちょっと待って!まだ変身してない!」ヌギヌギ
母「こんな真夜中に慌ててどうしたの?」
ナラ「カロルが…!」
ミシング「んー?ケンカしてるの?」
ナラ「ケンカ…っていうより」マゴマゴ
ダンッダンッ ガタンッ
ミシング「…とりあえず近所迷惑だから止めなきゃだねー」
母「ぼ、坊やったら…何したのかしら?」アセアセ
ナラ「は、はやく!」
29: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:44:20 ID:ghswXoejkk
―――孤児院(共用部屋)―――
ルーボイ「だぁぁもう!やめろっつってんだろ!?」ガシッ
孤児1「やーだー!やだやだ、やーだー!!」ジタバタ
孤児2「うわーん!!」ブンッ
ガンッ
ラム「積み木なんか投げたらダメじゃないか!当たったらケガするんだよ!?」ガシッ
カロル「……」シュン
ナラ「ミシングさんたち、よんできたよ!」タタタッ
ミシング「なにやってんのー!消灯過ぎてるでしょー?」スタスタ
母「いったいどうしたって言うの?」スタスタ
孤児1「ママー!うわぁぁあああん!!」ダキッ
孤児2「兄ちゃんたちがいじめるのー!?」ダキッ
母「え…?」
ミシング「あー散らかしちゃって、もう?お掃除大魔王ミシングちゃんの腕の見せどころじゃないのよ?」キョロキョロ
30: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:46:45 ID:ghswXoejkk
ルーボイ「いじめてなんかねーよ!こいつらが勝手に……」
孤児1「うわぁぁぁんあんあん!!」バタバタ
ルーボイ「あーうるせぇ!泣くな!」
母「坊や…何があったの?」
カロル「……」
母「ちゃんと説明してちょうだい。お母さん、怒ってないから?」
ラム「あの…」
母「?」
ラム「二人が急に…カロルくんに怒り出したんです」
母「…そうなの?」
ラム「カロルくんがマリーさんの話をしてて…それを聞いたら、いきなり」
母「それだけで…?」
ラム「…『ママはぼくたちのママだ』って」
母「え…?」ジッ
孤児1「えぅ…ひっく」ウルウル
孤児2「だって…そうだもん」ウルウル
母「み、みんなで仲良くしましょ?ね?」アセアセ
孤児1「やだっ!ぼくのママがいい!!」ジーッ
孤児2「ぼくも!?」ジーッ
母「そ、そんなこと言われても…」
ミシング「マリーさんを困らせないの!めっ!」
孤児1「こまらせてない!」ガァーッ
ミシング「は、反抗期…!?」ガーン
孤児2「ぼくたちの…ママになってくれたもん…!」グスッ
母「(思ってくれていいとは言ったけど…)」オロオロ
31: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:49:22 ID:ghswXoejkk
カロル「ホントなの…?」ジッ
母「え?」
カロル「お母さまは…もうボクのお母さまじゃないの?」
母「…そんなはずないでしょ?」ナデリ
孤児1「えっ」ピシィッ
孤児2「うそ…だったんだ」ピシィッ
母「へ!?い、いや…嘘というか……」アセアセ
孤児1「ウソつき!!」パッ
孤児2「ママになるって言ったのに!?」パッ
母「え、えと…その、ね?あのー…分かるでしょ?親代わりなら…」
孤児1「おかわりなんてしない!!」
母「お、おかわりじゃないのよー?おやがわりって言ったの?」オロオロ
孤児1「おまえのごはん、まずい!おかわりしないし、食べたくない!!」
母「!?」ガガーン
孤児1「ホビットだからウソつきなんだ!」
孤児2「そうだよ!町の人たちに言われたもん!ホビットはウソつきだって!」
母「……!」
カロル「……」
ラム「……」
ルーボイ「お前ら変なこと言ってっと泣かすぞ!」ムカァァァ
ナラ「ルーボイ、やめて!」ガシッ
ルーボイ「はぁ!?なんでだよ!?」
ナラ「こういうときは、せんきょうしさまか、ミシングさんにまかせないと!」
ミシング「そゆこと!お子ちゃまはお布団でぐっすり好きな女の子の夢を見てなさい!」ポンッ
ルーボイ「っ…み、見ねぇし!」
32: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:51:30 ID:ghswXoejkk
孤児1「ウソつきホビット!」
孤児2「ホビットなんかきらい!」
母「お、落ち着きましょ!あたしを嫌いになるのはいいわ?でもラムくんや坊やは関係ないじゃない?」
孤児1「うるさーい!ウソつき!」
孤児2「きらいきらいきらい!ホビットだいっきらい!」ジダンダ
母「(あ、あぁどうしましょう…。せっかく頂いた居場所なのに…あたしが余計なことを言ったせいで良くない空気に…)」オロオロ
ミシング「はい、おしまーい!おねんねしないとお仕置きオバケが食べ散らかしちゃうぞー?」パンッパンッ
母「み、ミシングさん…?」
ミシング「今夜のところはあたしの部屋で寝かせますからマリーさんはみんなを寝かし付けちゃってくださいな?」
母「わ、分かりました…?」
ミシング「はーい、おチビちゃんたちー!今日はミシングお姉ちゃんと寝ましょうね?」ガシッ
孤児1「やーだー!!」ジタバタ
孤児2「バカホビット!いなくなっちゃえ!」
ルーボイ「こ、こ、コノヤロー……!」ワナワナ
ナラ「ルーボイはホビットじゃないでしょう?」ポンポン
ルーボイ「うるせぇ!!俺のダチをバカにしたんだぞ!?」
ナラ「……」モジモジ
33: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:53:21 ID:jOOK1VnbDQ
ミシング「はいはい!明日用に買っておいたドーナツがあるからおとなしく来なさい!」
孤児1「ドーナツ!?」ピクッ
孤児2「ほんと!?」パァァ
ミシング「ホントよー?今ならかわゆいミシングちゃんと甘いドーナツを食べながらあまーい密室デートが楽しめるよ!
特別に膝の上で歯磨きもしてあげちゃうんだから!世の男性ファン達に憎まれちゃうかも、なんてね?」
孤児1「えー!歯みがきやだー!」
孤児2「ドーナツ!ドーナツ!」
ミシング「うんうん、じゃあ、お部屋に行きましょう!」
ルーボイ「俺のドーナツは!?」
ミシング「あ、ごめんね。ルーボイくん!あたしの部屋、3人用なんだ!」
ルーボイ「いや、部屋なんかどーでもいいし!ドーナツだよ、ドーナツ!」
ミシング「2個しか買ってないよ?」
ルーボイ「はぁ!?6人いるだろ!?」
ミシング「数間違えちゃったー?てへっ!」
ルーボイ「どうやったらそんなに間違うんだよ!?」
ミシング「じゃ、おやすみーん!」ガチャッ
ミシング「(本当は明日、みんなにナイショでこっそり食べる予定だったんだもーん)」シランプリ
34: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:56:54 ID:ghswXoejkk
母「…み、みんなも寝ましょっか?」
ルーボイ「いいのかよ、おばちゃん!あんなん言われて!?」
母「え?」
ルーボイ「カロルとラムだってムカつくだろ!?」
ラム「…いいんじゃないの?」
ルーボイ「はぁ!?」
ラム「小さい子の言う事だしムキにならなくてもさ?」
ルーボイ「そ、そりゃあいつらはガキだけど…それだけで許せるかよ!」
カロル「…ボクのせいでイヤな気持ちにさせちゃったよね。みんなも…二人も…」
ナラ「へいきだよ。あしたになったらわすれてるよ?」ニコッ
母「そうよ…。あたしが軽はずみに親代わりになるなんて言っちゃったから…」
カロル「ううん…ボクも二人がお母さまを好きになってくれて嬉しかったの。
『ママができた』って喜んでくれたから…お母さまのこと、もっと知ってほしくて……」
母「坊や…」
カロル「でも…そうじゃなかったんだね。ボクの思い出は…ボクしか知らないことだから、二人には自慢に聞こえちゃったのかも」ウルッ
ラム「考えすぎじゃない?」
ナラ「カロルがやさしすぎるだけ?」
ルーボイ「ふつー逆だろ!お前があいつらに母ちゃん取んじゃねぇって怒んだよ!?」
カロル「うん…。さっき話してた時、お母さまが二人に取られるって思ったら…すごくイヤだった」
『お母さまは…もうボクのお母さまじゃないの?』
母「(……)」
カロル「きっと同じ…。こんなにツラい気持ちを二人に我慢させてたんだもの。怒るのも…しょうがないよ」シュン
ルーボイ「(こ、こいつ…)」ヒクヒク
ラム「(な、なんか…ここまでくると優しさっていうより?)」ヒクヒク
ナラ「(よくわかんない…?)」ヒクヒク
35: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 01:59:03 ID:ghswXoejkk
〜〜〜3日後〜〜〜
ルーボイ「カロル!今日、市場で祭りがあんだってよ?」
カロル「そうなの?」パァァ
ラム「町が出来た日を祝うんだってさ?」
カロル「へー!そうなんだ!」キラキラ
ルーボイ「夜にミシング姉ちゃんが連れてってくれるけどお前も行くよな?」
カロル「うん!行きたい!」キラキラ
孤児1「ナラ姉ちゃん!一緒にまわろーね!」ダキッ
ナラ「へ?」
孤児2「ぼくもナラ姉ちゃんとがいいー?」
ナラ「…で、でもみんなで?」アセアセ
孤児1「やだー?」
孤児2「ナラ姉ちゃんとまわるのー!」
ナラ「えー…?」アセアセ
ルーボイ「(まだ根に持ってんのかよ…)」
カロル「…」ズーン
ラム「じゃあ僕らはカロルくん達と回るからナラは二人をよろしく?」
ナラ「わかった…」シュン
孤児1「イヤ?」ウルウル
孤児2「ナラ姉ちゃん…ぼくらがきらいなの?」ウルウル
ナラ「そ、そんなことないよ?いっしょにまわろ?」ニコッ
孤児1「へへへー」ニコニコ
孤児2「やった!」
ナラ「(カロルとまわりたかったなぁ…)」ションボリ
ルーボイ「(ちくしょう…。ナラいねーのかよ)」ションボリ
36: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:00:57 ID:ghswXoejkk
〜〜〜夜〜〜〜
―――ミラルドの町(市場)―――
ワイワイガヤガヤ
ミシング「さぁーやってきましたよー!ミラルド名物、一夜限りの町興し記念祭ー!
こちら現場からミシングちゃんがお送りしてまーす!」
ポンポポポンポン ポポンポポン
ミシング「まずはこちらをご覧ください!町の人たちで結成された楽団による民謡奏楽に合わせて老若男女、さまざまな人が輪になって伝統舞踊を楽しんでまーす!」
ランランラン ランランラン
ミシング「月の欠けた夜とは思えないくらい明るいですよー!
多くの出店を伝って紐に吊るされた可愛い装飾の雪洞(※ぼんぼり)が町の隅々まで照らしてくれてまーす!」
ワァーワァーキャーキャー
ミシング「ではここで一旦、子供連れのご夫婦に感想を伺ってみましょう!そこの楽しげな新婚さん!」ポンポン
町人1「かれこれ結婚12年目ですかね」
ミシング「楽しんでますかー!」
町人1「えぇ!楽しんでますよ!」
町人1の妻「毎年、この日が楽しみです!」
町人1の子供「見てー!水風船!」ボヨンボヨン
ミシング「うーん!なんて幸せいっぱいなんでしょう!あー結婚したい!!」キュンッ
ゾロゾロ ゾロゾロ
ミシング「あ、そこの若い団体さん!お祭り楽しんでますかー?」
若者1「えー?つかー?まぁまぁー?みたいなー?」チャラチャラ
若者2「てかおねーさん、なに?誘ってんの?一緒に回りたい感じ?」チャラチャラ
若者3「あーそっかー!ゴメンねー?俺ら彼女いっからー?」チャラチャラ
若者4「つか早く合流すんべ!待たせんとカチキレっぞ!」チャラチャラ
チャラチャラ チャラチャラ………
ミシング「若い男女でイチャイチャお祭り……あはっ!ミシングちゃんったら奥歯がギシギシ言ってるよ!」イライラ
ミシング「あーあ、急な大雨とかで中止になんないかにゃー」ケッ
37: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:03:16 ID:jOOK1VnbDQ
ミシング「という訳でお祭りです!」
ラム「(この人、さっきから一人で喋ったり知らない人に話しかけたり何してるんだろう?)」
ミシング「ここで大事な御約束をします!まず絶対に一人で行動しないこと!」
ミシング「それからお小遣いは銅貨500枚まで!それ以上のお買い物はしちゃいけません!ミシングちゃんのお財布が餓死しちゃいます!」
ミシング「そして町人全員が行き来してるお祭りに参加するからには人に迷惑をかけちゃいけませんっ!当たり前だのクラッカーなのです!」
ミシング「あたしがみんなをここに連れてきたのは人とのふれあい、お金の管理、正しい道徳心を育んでもらう為です!」
ルーボイ「ちっ…普通に遊ばしてくれりゃいいじゃんか?」ブツクサ
ミシング「なんか言ったー?バッキバキにしちゃうよー?」コキッコキッ
ルーボイ「な、なんでもないし…」ビクビク
ミシング「今言った御約束を守れたらオールオッケー!大いに楽しんじゃってください!」
ハーイ!
ミシング「うんうん、元気が一番!じゃあみんなお小遣い渡すから並んで!」
ワーイワーイ!!
ミシング「(初めて自由に使わせるお金……これもたくさんの寄付から成り立つ物だけど)」
ミシング「(お金の使い道っていうのは自分で使っていかないと分からないんだよねー。
もちろん自分で頑張って働いて得るのが一番いいんだけど…こういうことを教えてあげられる機会ってあんまりないもんね)」
ミシング「(立派になんてならなくてもいい…。この子たちが大人になれる手助けを少しでも多くしてあげたいな。一緒にいてあげられる内に?)」
ミシング「(…任せて、宣教師。あなたの願いはあたしが叶えてあげる。
あなたが目指してる理想は到底、不可能に思えちゃうような話だけど…あたしはあんたを信じてるからね)」
38: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:06:18 ID:ghswXoejkk
―――露店通り―――
ワァーワァー!
カランカラン
輪投げ屋「はい、残念でした!全部はずれ!5等のオモチャ、どれでも一つ持ってっていいよ?」
ルーボイ「ちぇー!遠すぎんだよな?…これにしよ!」スッ ゴソゴソ
カロル「惜しかったね!あとちょっとだったよ?」
ルーボイ「そうか!?もっかいやろーかな?」
ラム「無駄遣いしたら貰ったお金無くなるよ?」
ルーボイ「うるせぇな!お前は俺の母ちゃんか!?」
ラム「違うけど」シレッ
ルーボイ「冷静に言うなし!?つーかカロルは欲しい景品ねーのかよ!」
カロル「あるけどボクじゃ取れないかも…?」シュン
ラム「どれ?」
カロル「あれ!」ビッ
ラム「昌石を原料にした貴重なインク一式……画材じゃないか?あんなの貰ってどうするんだい?」
カロル「ボク、お絵描きが好きなの?」ニコニコ
ラム「ふーん…そっか。ちょっと待ってて?」
カロル「え?」
39: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:08:39 ID:ghswXoejkk
カランカラン!
輪投げ屋「んな…アホな…!?」
ラム「思ったより簡単だったね?」クルクル
ルーボイ「すげぇ!?全部入れたし!?」
カロル「わぁぁ…!ラムくん、すごーい!」パチパチ
輪投げ屋「はぁ…まさかホビットに取られるとはな」
ラム「3等のインク、ちょうだい?」
輪投げ屋「は?こんなのでいいのか?」スッ
ラム「カロルくん」パシッ
カロル「?」
ラム「あげるよ」スッ
カロル「いいの!?」パシッ
ラム「うん。僕は絵心なんてないから?」
カロル「そ、それならラムくんが欲しい景品に…?」アセアセ
ラム「じゃあ喜んでみせてよ?」ニコッ
カロル「へ?」
ラム「一等の景品より君の笑顔が見たいな?」
カロル「え…えへへ!」テレッ
ラム「ふふ?」ニコニコ
カロル「ホントにこんなのでいいの…?ちょっぴり恥ずかしい?」テレテレ
ラム「うん、十分だよ。君にはかなり助けられたしね」
カロル「…そんなことないよ?」
ラム「君が笑顔を向けてくれたから僕はやり直せたんだ。本当にありがとう?カロルくん?」ニコニコ
カロル「ラムくん…」
ラム「受け取ってくれるかい?」
カロル「うん…!大事にするね?」ギュッ
40: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:10:43 ID:ghswXoejkk
カロル「水色の兎飴一つください!」チャリッ
飴細工屋「はいはい。銅貨70枚、ちょうど。ところでお前さんはホビットだね?」スッ
カロル「引っ越してきました!」パシッ
飴細工屋「ほー…そうかい、そうかい。この町の住み心地はどうだい?」
カロル「とっても幸せです!」ニコッ
飴細工屋「し、幸せ…?」ポカーン
カロル「はい!」ニコニコ
飴細工屋「…そか、そか。幸せか…。うん、いいこった?」ニコッ
カロル「ともだちと一緒にお祭りに来られるなんて夢みたい…えへへ!」ニコニコ
飴細工屋「…お連れさんは何人いるんだい?」
カロル「えと…二人!」
飴細工屋「じゃあこれ、おまけしてあげよう」スッ
カロル「? でも…お金が…?」キョトン
飴細工屋「町を褒めてくれたお礼さ?幸せなんて言葉…そうそう出てくるもんじゃない?」ニコニコ
カロル「だ、ダメだよ?お母さまに怒られちゃうもの?」アセアセ
飴細工屋「ならお友達に私の飴細工を広めておくれ?宣伝になるから?」
カロル「せ…でん?」チンプンカンプン
飴細工屋「商売人にとってはお金を受け取るより嬉しいことさ?宣伝してくれたらお代はいらないよ?はい?」スッ
カロル「そ、そうなの?ホントにいいのかな…」ウーン
飴細工屋「私の作った飴をたくさんの人に見せたいんだ?君はその手助けをしてるんだよ?」
カロル「そうだったんだ!がんばらなくちゃ!」
飴細工屋「ふふ…がんばっておくれ?」ニコニコ
41: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:12:55 ID:ghswXoejkk
ルーボイ「あーうめぇ!」パクパク
ラム「買い食いしすぎ?まだ2時間もあるのにお小遣い足りるの?」
ルーボイ「ん?フランクフルトだろ?綿飴だろ?かき氷だろ?焼きそばだろ?焼き鳥だろ?ジャガバターも食ったな?まだまだ食えるぜ!」
ラム「食欲があったってお金が無かったら意味ないだろ?」
カロル「ふんふふーん!あ、ラムくん!ルーボイくーん!」ルンルン
ルーボイ「ん?あ、お前、同じの3つも買ったのかよ?」
ラム「き、君まで…」
カロル「買ったんじゃないよ?おまけしてもらったの!」
ルーボイ「はぁ!?なんでお前だけ!ずりーぞ!?」
カロル「はい?せんでん!」スッ
ルーボイ「お!くれんのか?てかせんでんってなんだし?」パシッ
ラム「あ、ありがとう?」パシッ
カロル「飴屋さんのおばあさまに教えてもらったんだ?せんでんすると嬉しいんだって?」ペロペロ
ルーボイ「だからせんでんってなんだよ!」
ラム「へー…鳥の形してる?」
カロル「すごいよね?食べるのがもったいなくなっちゃう?」ペロペロ
ラム「ふふ…たしかにね?」
ルーボイ「」ガリッ
ルーボイ「」ボリッボリッ
ルーボイ「」ゴックン
ルーボイ「まぁ普通の飴だな」
ラム「……」
カロル「……」
ルーボイ「なんだよ?」キョトン
カロル「な、なんでもないよ?あはは!」アセアセ
ラム「(花よりダンゴ…って感じ?)」シラー
42: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:15:08 ID:jOOK1VnbDQ
お面屋「どれにする?」
カロル「あれがいい!」キャッキャッ
ルーボイ「お面なんか食えねーじゃん!」
ラム「君はなんか一つくらい思い出を形にしようとしないの?」
ルーボイ「へっへーん!腹ん中に入ってるぜ?」ドヤァッ
ラム「あっそ…君の思い出は明日の朝にでも厠に流れてくだろうね?」シラー
ルーボイ「きたねーからやめろし!?」
カロル「わんっ!」バッ
ルーボイ「うおっ!?」ビクッ
カロル「えへへー!驚いた?」スルッ
ルーボイ「お、お前かよ!?お面被って飛び出すなっつの!?」ビクビク
ラム「犬のにしたのかい?」
カロル「うん!マルクとお揃い!」カポッ
ラム「僕も一つ買おうかな?どれがいいと思う?」キョロキョロ
ルーボイ「狐!ズルそうだしお前にそっくりだぜ!」
ラム「え?なに?ケンカ売ってるの?」イラッ
カロル「ボクも狐がいいと思うよ?頭がよさそうだからラムくんにピッタリ!」
ラム「そ、そう…?じゃあそうしよっかな」テレッ
ルーボイ「俺も…げっ!もう金ねぇ?」ジャラッ
ラム「だから言っただろ?おじさーん、狐のお面ください!」チャリッ
お面屋「はいはい。狐ね!どうぞ!」スッ
43: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:17:58 ID:jOOK1VnbDQ
ルーボイ「ちぇっ!」
カロル「いいよ。ルーボイくん?ボク、まだ残ってるから出してあげる!」
ルーボイ「え?い、いいのかよ?」
カロル「うん。大丈夫だよ!」
ルーボイ「へへ!じゃあ…」
ラム「甘やかしたらダメだよ?」カポッ
ルーボイ「なんだよ、狐!」
ラム「狐じゃ…いや、狐でいいのかな?狐のお面してるし…じゃなくてカロルくん!」
カロル「?」
ラム「ルーボイは自分の欲しい物を買って渡されたお金を無くしたんだから自業自得?君が出してあげることないよ?」
カロル「え…」
ルーボイ「カロルがいいっつーんだからいいじゃんか!」
ラム「友達同士でもお金の貸し借りはいけないって習っただろ?」
ルーボイ「借りてねーよ!奢りだよ!」
ラム「なおさら悪い!」
カロル「……」モジモジ
ルーボイ「カロル!どうなんだよ!」
カロル「…み、みんなで楽しく遊べたらボクはなにも買えなくていいよ?」チラッ
ラム「そんなのダメだよ!ミシング姉さんはお金の使い方を学びなさいって言ってたんだからさ!」
ルーボイ「うるせぇな!狐は黙ってろよ!」
ラム「今は狐だけど狐じゃない!……あれ、僕なに言ってるんだ?」メダパニ
カロル「う、うーん…」モジモジ
44: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:20:05 ID:jOOK1VnbDQ
ラム「だいたい今、二人はいくら持ってるの?
それ次第でこれから先の行動も変わってくるよ?」
ルーボイ「お前はどうなんだよ!」
ラム「銅貨283枚だけど」
ルーボイ「覚えてんのかよっ!?」
カロル「ん…と、ボクは172枚!」ジャラッ
ルーボイ「お、俺は…26枚」ジャラッ
ラム「……」
カロル「あはは…?」ヒクヒク
ルーボイ「どうすんだよ!?なんもできねーぞ!?」
ラム「知らないよ!?」
カロル「あ、そっちの金魚すくいは?銅貨25枚で2回だって?」ビッ
ルーボイ「お!やろうぜ!」
ラム「はぁ…結局、なんにも学習してない」ヤレヤレ
45: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:21:46 ID:ghswXoejkk
パシャパシャ ピシャッ
金魚屋「お、お見事!10匹取ったから3匹まで持って帰っていいよ!」ガサゴソ
カロル「ラムくん、すごーい?ボクなんてすぐ破れちゃったのに?」
ラム「3人で1匹ずつ分けようか」
ルーボイ「デメキンくれよ!」
町の女の子「あっ…」パサッ
金魚屋「あー残念、お嬢ちゃん!2回、破れちゃったからおしまいだ?」
町の女の子「うっ…ふえっ…うえぇぇぇぇん!!!」ビエー
金魚屋「」ビクッ
ルーボイ「うわ!びっくりした!?」
ラム「あーあ?」
カロル「……おじさま!ボクたちの金魚、その子に1匹あげて?」
金魚屋「え?い、いいのか?君たちのだよ?」
カロル「うん!いいよね?」
ラム「いいんじゃない?」ニコッ
ルーボイ「ずっと泣かれてもうるせーしな」
金魚屋「お嬢ちゃん!よかったね!優しいホビットのお兄ちゃん達が1匹くれるとさ?」スッ
町の女の子「いらなぁい!!」バシンッ
バチャッ
金魚屋「お、お嬢ちゃん!?」オロオロ
46: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:23:35 ID:ghswXoejkk
町人2「かき氷買ってきたぞ……ん?」
町の女の子「」ビエーン!
町人2「だ、誰だ!うちの娘を泣かしたのは!?」
金魚屋「あ、あっしは何も!?」ブンブンッ
町の女の子「あのホビット…ふえっ…邪魔したから、金魚取れなかったぁ…」グズグズ
町人2「なにぃ…!?」ギロッ
カロル「ぼ、ボクたち?」キョトン
ラム「みたいだね?」
ルーボイ「はぁ!?勝手に泣いたんだろ!?」
町人2「この腐れホビット共がぁ!?町の伝統的な祭りに紛れやがって図々しい!
まだ小さな娘に嫌がらせすんのがそんなに楽しいか!あぁ!?」ガッ
カロル「きゃっ…」グイッ
町人2「おら、来い!この人混みじゃ迷惑が掛かるからな?向こうでとっちめてやる!」グッ
カロル「いっ…!」ズザァッ
ラム「カロルくん!」
ルーボイ「てめぇ!なにすんだよ!?」
ザワザワ ザワザワ
町人2「うるせぇ!てめぇらもだ!ホビットなんかとじゃれやがってクソガキが!」
町の女の子「あっかんべー!」ベロベロバー
ラム「…分かった。行ってやるよ」ギロッ
ルーボイ「このおっさん、俺たちでぶっ飛ばしてやろうぜ!」スクッ
町人2「な、なんだ、大人に向かって…」タジッ
「やめなっ!!!」
ザワッ
47: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:25:47 ID:ghswXoejkk
町人2「……!?」オロオロ
飴細工屋「そこまでにしときな」ザッ
町人2「なんだ、この婆さん…?」
飴細工屋「あたし達は祭りを主宰させてもらってる町会の役員さ」
お面屋「」ザッ
輪投げ屋「」ザッ
町人2「そ、それがなんだってんだ!」
飴細工屋「その子たちを離しな!祭り囃子が聴こえる内は揉め事なんかさせないよ!」キッ
町人2「こいつらが俺の娘を泣かしたんだ!叱って当然だろ!?」
飴細工屋「叱る?笑わせんじゃないよ!大の男が子供相手に髪の毛、引っ付かんで地面に擦り付けるのが躾ってかい!?」
町人2「くっ…!」
お面屋「この子らはうちの店にも来たが悪さなんかしねぇで行儀よく遊んでたぜ!」
輪投げ屋「おう、どうなんだ?金魚屋!」
金魚屋「あ、あぁ。気持ちよく遊んでくれたよ。それに泣いたお嬢ちゃんを見かねて自分たちが取った金魚を分けてやろうとしてた?」
町人2「!?」
町の女の子「」ギクッ
飴細工屋「それ見たことか!躾がなってないのはあんたの娘の方じゃないかさ!?」
町の女の子「ちがうもん!ホントだもぉん…!」グズグズ
町人2「……!」
48: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:27:32 ID:ghswXoejkk
飴細工屋「祭りはそこにいる全員のもんだ!ロクに遊び方も知らないなら失せな!?」
ソーダソーダ! カエレカエレ!
町人2「くっ…くぅぅ!」プルプル
町の女の子「うえぇぇぇぇん!!!」
ラム「自業自得だね」
ルーボイ「知ーらね」プイッ
カーエーレ! カーエーレ!
町人2「…くそぉ!」パッ
カロル「……」ジッ
町人2「なんだよ、その目はぁ!?俺たち親子が罵倒されんのがそんなに嬉しいか!?」
カロル「」スクッ パッパッ
町人2「」ビクッ
カロル「ごめんなさい!!」ペコッ
シーン
飴細工屋「え…?」
ラム「な、なんで君が謝るの…?」
ルーボイ「そうだよ!お前は悪くねーだろ!」
カロル「ううん、ホントはボクが悪いの。さっき間違って女の子に肘をぶつけちゃったんだ?」
ザワザワ ザワザワ
49: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:29:39 ID:ghswXoejkk
カロル「そうだよね?」
町の女の子「そう!肘でぶってきた!」コクコク
町人2「ほ、本当か?」
カロル「怒られるのが怖くて隠してました。ホントにごめんなさい」ペコッ
金魚屋「い、いや…正面から見てたけど、そんな場面は一度も?」
カロル「ぶつけました!」
金魚屋「え、えぇ…?」オロオロ
町の女の子「ね!パパ!本当でしょ!」ユサユサ
町人2「お、おう…」
カロル「隠したりしてごめんなさい。次から気をつけて遊びます」
町人2「わ、分かればいいんだよ!行くぞ?」ケッ
町の女の子「べーっだ?」ベロベロバー
スタスタ スタスタ……
お面屋「ま、まさか…」
飴細工屋「バカだね、そんな訳ないだろ?」コショコショ
お面屋「え?」
飴細工屋「怒られるのが怖かったんなら隠し通せばよかった話じゃないか?あの子は庇ってあげてんだよ?」コショコショ
お面屋「あ、そうか…!」
輪投げ屋「そ、それにしたって…どうして?」
飴細工屋「そこは私にも分かんないね…」
50: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:32:48 ID:jOOK1VnbDQ
カロル「ごめんね!二人とも?」
ラム「な、なんであんなこと言ったの…?」
ルーボイ「そうだよ!お前が謝るのおかしいだろ!」
カロル「だってボクがいけないんだもの?」ニコッ
ラム「……!?」
ルーボイ「ど、どうかしてんじゃねーの?」
ジロジロ ヒソヒソ
カロル「…見られちゃってるからボク、先に帰るよ?お小遣いは二人で使って?」ジャラッ
ラム「か、カロルくん…」
ルーボイ「……」
飴細工屋「いいんだよ。気にしなくて?」スタスタ
カロル「飴屋さん…」
飴細工屋「ほらほら、立ち止まってないで散った散った!」バッ
バラバラ バラバラ
飴細工屋「たく!困ったね、ここの連中ときたら?未だにホビットがああだこうだ言って…そんなだから田舎者呼ばわりされんだよ!」
カロル「ありがとうございました」ペコッ
飴細工屋「…なんであのロクデナシ親子を庇ったりしたんだい?」
ラム「そうだよ…。君が悪者になることないだろ?」
ルーボイ「しかもお前、俺とラムの真ん中にいたクセに端っこにいたあいつにどうやって肘ぶつけんだよ?」
カロル「…」
51: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/10(月) 02:34:50 ID:ghswXoejkk
飴細工屋「言ってごらんよ?お友達も心配してるよ?」
カロル「お祭りはみんなで楽しむもの…だよね」
飴細工屋「? あぁ、もちろんさ?」
カロル「あそこでボクが謝らなかったら、あの女の子とお父さんがお祭り楽しめなくなっちゃうかなって…」
飴細工屋「それ…本気で言ってんのかい?」
カロル「……?」
飴細工屋「(あ、呆れたお人好しだねぇ…)」ヒクヒク
ルーボイ「バカなヤツ!」ニカッ
ラム「…君って学習しないよね、ホント?」クスッ
カロル「ごめん…」ショボン
飴細工屋「…ま、いいさ。最後まで楽しんでおいきよ?」ニコッ
カロル「でも…」
飴細工屋「町の連中には後でうまく言っとくよ?祭り囃子が聴こえる内は帰るなんてもってのほかだ?」
カロル「……!」パァァ
ラム「次はどれ行こうか?」ニコッ
ルーボイ「どうせ俺、金ねーし暇潰しに付き合ってやるよ!」
カロル「うん!いっぱい遊ぼ?」ニコニコ
52: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:46:45 ID:rjm0FZnxdY
ポポンポポン! ポポンポポン!
ワァーワァーキャーキャー!
チャンチャカチャンチャン
ミシング「こうやって全員で踊ってると余所者なのに町の一員になれた気がしますよねー!」ランラン
母「そうですわね?皆さんも普段と打って変わってご機嫌?ホビットが交じっても気にしてないようですし?」ランラン
ミシング「ここも布教の訂正はしてあるんですけど、あんまりうまくいかないんですよねー」ランラン
母「そうなんですか…。あまりホビットは歓迎されてませんものね?」ランラン
ミシング「でもあの子たちを遊ばせておくと流れが変わるんじゃないかにゃー?」ランラン
母「? どういうことです?」
ミシング「意外とね。こういう催し事って貴重なんですよー?
普段は顔も合わせない区画の人達とか町の有力者が一同に期すから、ここで交流を深めておくと先々の暮らしにも大きく影響しちゃうんです?」
母「まぁ…?そんな大事な意味があってみんなを?」
ミシング「…みんななら町の人達の誤解を解くにはうってつけかと思って?」ニヤッ
母「お、おほほ…?い、いろいろと考えてらっしゃるんですのね?」
ミシング「そりゃそうですよ。孤児院なんて少ない人数でも維持費がバカにならないですし町の財政に大きく関わりますから領主や町人から疎まれるんですもん?」
母「……」
ミシング「自分たちの居場所を住み良くするには積極的に交流してってくのが一番!塞ぎ込んでると変な噂しか立たないですしね?」
母「あなたも宣教師様もお若いのにとても立派ですわねぇ…」
ミシング「そうですか?」
母「あたしはなるべく人目を避けよう、避けようとして他との関わりを絶ってきてましたから…それが良くなかったのかも」
ミシング「なーに言ってんですか!」ポンッ
母「は、はい?」
ミシング「誰にも頼らず頑張ってきたお母さんの方が立派ですよ!
あたしは人に頼って楽したいだけのちゃらんぽらん女ですもん?」
母「…あなたも十分、一人で頑張ってらっしゃるじゃない?」
ミシング「そうかにゃ?まぁ独り身彼氏募集中ではあるんだけども!」
母「」クスッ
53: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:48:50 ID:Sx9bep0/Fk
カロル「みんなで踊るのって楽しいね?」ランラン
ルーボイ「そうかぁ?なんか恥ずいけどな?」ランラン
ラム「恥ずかしがる方が浮くよ?」ランラン
ナラ「たのしまなきゃ?」ランラン
孤児1「あはははは!」ランラン
孤児2「わーい!」ランラン
カロル「ねぇ、それなぁに?」ランラン
孤児1「えへへー!勇者クライスの缶バッチ!かっこいいでしょ!」
カロル「うん!かっこいい!」
孤児2「カロル兄ちゃん!きな粉餅食べる?」
カロル「いいの?」
孤児2「いいよー!」
カロル「じゃあお返しにチョコバナナ買ってくるよ!」
孤児2「ホントに?ありがとー!」パァァ
カロル「待っててね!」タタタッ
母「すっかり仲直りしてますわね?」ランラン
ミシング「子供ってすぐ忘れちゃいますからねー。叱り付けるより時間を置いた方がいい時もあるんですよ?」
母「ふふふ…よかった?」
ランラン ランラン
54: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:49:50 ID:rjm0FZnxdY
―――西の国(宮殿)―――
ペロペロ ビチャビチャ
ファルージャ「クスス…皿に注がれた湯がそんなに美味かえ?」ニヤニヤ
下僕1「はっ…はっ…じょ、女王陛下の味が…します…」ズズッ
ガチャッ
将軍「こちらにおいででありましたか!」
ファルージャ「はんっ…そなたか?」ジッ
将軍「(目が合ったぁァァアアア!!!)」ドキドキドキンッ
ファルージャ「なんぞあったか?」
将軍「む?あ、足元にうつ伏せているボロキレは?」
ファルージャ「妾の愛犬じゃ」サラッ
下僕1「ふ…ぐへへ…陛下のお味……極上のスープ…!」ペロペロ
将軍「愛犬…!?」ギヌロォォォ
ファルージャ「……?あぁ、両腕が無いのが気になるかえ?」
側近2「私から説明しましょう。実はこの男、奴隷の身でありながら女王陛下の入浴時を狙って衣類を盗み…それだけに留まらず、入浴後の残り湯を密かに啜っていたのです」
ファルージャ「そうさせてしまった妾にも非はある。美を持ちすぎるのも考え物さな?」
下僕1「ふ、ふへへ…」ビチャビチャ
ファルージャ「別れた腕が恋しいか?」
下僕1「ちっとも…女王様に飼ってもらえるなんて…夢心地です…ふへへ」ニタニタ
側近2「という訳です」
将軍「……」スタスタ
ファルージャ「……?」
55: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:52:51 ID:Sx9bep0/Fk
将軍「ヅアアァ!!!」ヒュッ
下僕1「ぼぎゅっ!!!」ゴキィッ
将軍「フンッ!!奴隷の分際でっ!!女王の浸かった残り湯をいただくだとぉ!?」ズシッズシッ
グシャッグシャッ
将軍「ハァッ…ハァッ…陛下の残り湯は我輩が飲み干す!!」ドドンッ!
ファルージャ「…何をしておる?妾がいつ踏み潰せと命じた?」ジッ
将軍「」ハッ
ファルージャ「返り血がかかったでないか?」
将軍「あ、あ、いや…」アタフタ
ファルージャ「汚れた脚を綺麗にせよ」スラリ
将軍「た、只今拭き物を……」アセアセ
ファルージャ「馬鹿を申せ?早うせねば血が落ちなくなるであろうが?」
将軍「(うっ…ふぁ、ふぁふぁファルージャ様のおみ足が間近に……ヌホオオオオオオ)」ハァハァ
ファルージャ「舌を出せ。一滴も残さぬよう、そなたが血を舐め取るのじゃ?」
将軍「なっ……」
側近2「(ま、まずい!いくら陛下と言えど数々の武勇を誇り、列国に"西の殺戮魔"とまで言わしめたカカドゥーラ将軍に脚を舐めろなど…!?)」
将軍「な、な、な…なんという…!」ワナワナ
側近2「いけません!将軍!抑えて……」アセアセ
将軍「なんというご褒美だ!!」ヌオオオオオ!
側近2「えっ」ピタッ
ファルージャ「早うせい。いつまで妾を待たせる気じゃ?」シラー
将軍「ンッホオオオオアアアアありがたき幸せェェエエエエ!!!!」ムチュッ
ペロペロ ジュルジュル ヌチャヌチャ
ファルージャ「あんっ!これ、そうがっつくでない?」クスッ
将軍「あぁも!あぁ!ももももも!!!」ペチャペチャ
側近2「お、おぉぉ……」マジマジ
56: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:54:25 ID:rjm0FZnxdY
ファルージャ「…もうよい。口を離せ」
将軍「ムホ…」プハッ
ファルージャ「…」ヌラァァァ
将軍「い、いかがか?」ドキドキ
ファルージャ「痴れ者」ゲシッ
将軍「ぐはっ!…おぉぉぉイイィィィィ!!!」クンカクンカ
ファルージャ「お前の唾液がへばりついて肌が乾燥しておるわ?側近、拭く物を?」ゲシッゲシッ
側近2「こちらに」スッ
ファルージャ「…」パシッ フキフキ
将軍「よ、よろしければ、その手拭い、我輩に…!」ハァハァ
ファルージャ「己の唾液が染み付いた手拭いが欲しいとな?」パチクリ
将軍「じ、じじ女王のおみ足に触れた手拭いを使わせていただきたいと存じておりまする!!」ハァハァ
ファルージャ「…好きにせい」ポイッ
将軍「うひょおおおお!!!」パサッ
側近2「………」
ファルージャ「側近、死骸を処分なさいな」
側近2「……は、はい。おい!女王陛下のお足元を清めろ!」
西の衛兵's「ははっ!!」
57: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:56:09 ID:Sx9bep0/Fk
将軍「女王ん……女王のナマ足付き手拭いぃぃ…」クンカクンカ
ファルージャ「して、そなた何用で参った?」
将軍「はっ…いかぬな!忘れてはならぬ!実は……」ブルンブルン
ファルージャ「実は?」
将軍「お喜びください!!癒しの力の在処が遂に判明しましたぞ!?」
ファルージャ「ほう?それで?」シラー
将軍「そ、それで…とは?」キョトン
ファルージャ「ここに持ってきたのかえ?」
将軍「……!い、いえ!」ハッ
ファルージャ「…あれからもう1年が経ったというに」ボソッ
将軍「で、ですが…その…しかし、それは……」アワアワ
ファルージャ「そなたら三銃士はさも事無げに勇んでみせたが…一向に良い報告を持って参らぬな?」
将軍「」ガーン
ファルージャ「この忌まわしき老いを…一刻も早く捨ててしまいたい。それには永遠の命が必要じゃ?」
将軍「か、返す言葉もございませぬ…!」ブルッ
ファルージャ「…妾を愛しく想うそなたらのこと。何も心配はしておらぬが…妾とて限度という物がある?」
将軍「す、すぐに…すぐに女王陛下の御前に癒しの力を御覧に入れてみせまする!!」ブルブル
ファルージャ「そうさな。期待に応えておくれ?」
将軍「ハハァっ!!」ザッ
58: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:57:38 ID:rjm0FZnxdY
―――西の国(将軍の砦)―――
ドッゴォォォン!!!
パラパラ パラパラ
将校1「(いつにも増して荒れておられる…)」
将校2「(せ、石柱を薙刀の一振りで粉々に…!?)」ガクガクブルブル
将軍「貴様らぁァァ…!ノロノロとだらしのない働きをしおってぇ…!?」ビキビキィィィ
参謀「……」
将軍「たるんどるぞ!!あぁん!?」ダァァンッ!
参謀「閣下個人とされましてはどういった戦局をお望みでございましょうか?」
将軍「貴様は我輩の参謀でありながら、そんな事も分からぬのか?」ギロッ
参謀「まさか?僕は貴方様の忠実なしもべにございます。
全身に流れる血の一滴に至るまで捧げる覚悟……閣下のお心は口になさらずとも把握させていただいておりますよ?」ニコッ
将軍「ほう!?では我輩の心を読み当ててみせるがいい!?」
参謀「ご安心あれ、我らが偉大なる英傑、カカドゥーラ将軍閣下?」
将軍「んぬぅ…!?」
参謀「既に幾重にも及ぶ計を案じておりまする?」
将軍「しからば何故もたついておるか!?」ダンッ
参謀「そう焦らずとも?」
将軍「これが焦らずにいられるかぁ!?女王陛下たっての願いを聞き入れて1年以上の時が経っているのだぞ!?」ガァーッ
参謀「(またあの"妾"か…)」
59: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 08:59:43 ID:Sx9bep0/Fk
将軍「よもや我慢ならぬ!!我輩が全軍を率い、王国を叩き潰してくれるわぁ!?」
参謀「つまり敵の狙いに沿って動くと?」
将軍「!?」
参謀「これまで打ってきた布石が台無しになってしまいますが…それでもよろしいと?」
将軍「……!?」
参謀「もちろん知謀に優れた将軍閣下のことです。ただただ焦ってがむしゃらに軍を動かそうという訳ではないのでしょうが…」
将軍「と、とと、当然である!!」アセアセ
参謀「…引き続き僕にお任せいただけるのであれば必ずや手柄をお約束しましょう」
将軍「なに!?」
参謀「まず今、攻め入るのは得策とは言えません。敵もそれは感じておりましょう」
将軍「壁となる同盟は切り崩したのであろうが!?」
参謀「不信を煽り、少々の信頼を寄せただけです。段階的にはまだ初めの……」
将軍「初めだとぉ!?まだ進んでおらんのかぁ!?」
参謀「シャルウィン様がなかなか採掘場を明け渡してくださらないもので些か交渉に手間取っておりまする」
将軍「あんのオカマァァ…!?何を考えておるかぁ…!?」ギリッ
参謀「明け渡す前に採り尽くして鉱山を空にしたいのだとか?そんな時間はないとお伝えしたのですがね?」
将軍「…挙兵せよ!ぶっ殺す!!」ダンッ
参謀「まぁ捨て置きましょう。あの方には別の所で役立ってもらいますから?」
将軍「あんなオカマ商人ごときに三銃士の称号を授けること自体が間違いだったのだぁああ!!」
参謀「(あ、もう聞いてないな…)」
60: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:03:41 ID:Sx9bep0/Fk
将軍「パカラゥロにしてもそうだ!?なぜ奴のような醜い化け物が我輩に並んで三銃士と称されるか!?そうであろうが!?」
参謀「えぇ、まったくおっしゃる通り」
将軍「そもそも奴らが王国潜入時に功を奏しておれば速やかに事が運んだのだ…!恥さらし共めが…!?」ギリッ
参謀「それについてはまた追々ゆっくりと?とりあえず説明させていただいてよろしいですか?」
将軍「あぁ!?なんの説明だ!?」
参謀「ですから今は攻め時ではないと…」イラッ
将軍「貴様ァァアアア!!今、眉をしかめたなぁ!?我輩にイラついておるのか!?おぉう!?」
参謀「いえいえ、滅相も…」
将軍「言いたい事があるなら言え!?」
参謀「いい加減になさいませ」
将軍「今…なんつったぁあぁああ…!?」ビキッビキッ
参謀「女王陛下に喜んでいただきたくはないのですか!?」
将軍「」ハッ
参謀「一刻も早く閣下の手で功を成し、女王のお望みを叶えて差し上げなければ!違いますか!?」
将軍「く、口答えしおったなぁ…!?」
参謀「なぜ分かってくださらないのですか!僕は…僕は閣下に……」
将軍「?」
参謀「女王陛下と添い遂げていただきたい一心で申しているのです!」ドンッ
将軍「そ、添い遂げ…る?陛下が…我輩のよ、よよ、よ、嫁にか!?」ブルブル
参謀「はい!陛下は永遠の命を捧げた配下に一つだけ望みを叶えると明言されました!
ということは今回の作戦で閣下が手柄を挙げ、女王に求婚されますれば必ずや陛下は閣下を夫とし、毎晩毎晩飽きるまで夜を共にさせてくださるはず!!」
将軍「言葉を慎まんか、貴様ァァアアア!!」
参謀「……!も、申し訳ございません!出過ぎたマネを……」
将軍「我輩が陛下に飽きるなどありえるかぁああ!!その気になれば100年でも1000年でも抱き続けられるわぁ!!?」ゴゴゴゴゴ
参謀「(そっちですか…?)」
61: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:07:34 ID:Sx9bep0/Fk
将軍「しかし貴様の言う事も一理ある?
我輩ごときが陛下と添い遂げるなど願ったり叶ったり…。
ではなくおこがましく思うが実際、我輩以外に女王の伴侶に見合う男はおらぬゆえな?」ウヘヘヘ
参謀「…では僕の説明を聞いてくださいますか?」
将軍「ムフフ…聞いてやろう?」
参謀「(まったくこの方は与し易いと評するべきか、めんどくさい……)」
参謀「まず攻め入るにも大義がございません」
将軍「大義…?なんだそれは?」
参謀「簡潔に申しますれば理由付けにございます」
将軍「必要なかろう?」
参謀「は?」
将軍「終わりなき争いにおいては大義などなんの意味も成さんかったわ?」
参謀「…しかし戦争となるからには何かしらのきっかけがあったはずでは?」
将軍「女王の望みである…それで十分ではないか?」
参謀「……」
将軍「癒しの力があると思わしき地点は特定した!ならば迷わず侵略あるのみよ!!ヌハハハハハ!!!」
参謀「その情報はおそらく誘いですよ」
将軍「なに?」ピタッ
62: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:15:21 ID:rjm0FZnxdY
参謀「地図を開け?」
将校1「はっ!」バサッ
参謀「指し示すは王国と我が国を繋ぐ境、海に面した南西の領地、貿易はここで執り行われ、例の情報もこちらから流れてきました」
将軍「で?それがどうした?」
参謀「かくしてこちらは癒しの力を匿っているとされる王国・東の辺境地、この東の領地は山々や森林に囲まれ、更に東国との隣接地点になっておりまする」
将軍「だから…それがどうした?」ピキッ
参謀「以前に東国は我が国との貿易を断り、王国と接触を果たしておりまする」
将軍「いい加減にせぬか…!」ピキッピキッ
参謀「ここを攻め入るには東国領を通らねばなりません。
その上、馬の足には向かない山岳地帯、実戦経験を重ねた屈強な我が軍と言えども、まともに機能しません」
参謀「となりますれば東国は"領地侵犯"を大義に…王国は"不当な侵略行為"を大義にこれを迎え撃つでしょう。
そして東国が加わるということは盟が生きている証拠、助勢とまではならずとも同盟下にある他の4国は静観に徹し、戦況によっては卑しい動きを見せる国も出てくるかと」
参謀「例えば手薄な本国側を突き、鉱石財源を狙う国…はたまた両国に加勢し、権利を主張しようとする国……」
参謀「そうした危険を踏まえ、あらゆる策を講じ、練り上げ、僕の割り出した勝率は……0です!」
将軍「がぁぁ!!!」シュバッ
ピタッ
参謀「……」
将校's「」ゴクリ
63: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:17:05 ID:rjm0FZnxdY
将軍「我が軍は最強だ!その程度で勝敗が揺らぐか!?」ギロッ
参謀「勝てませんよ」
将軍「言い残す事はあるか?」
参謀「僕の構想は閣下とも…女王とも別にあります」タラァァ
将軍「……?」
参謀「永遠の命のみならず王国そのものを奪い尽くすつもりです…。
そして王国を足掛かりに東・北・南・各国を攻め落とし、この大陸の頂点に君臨する!!」ギンッ
将軍「なん…だ…とォォオオ!!?」ブォンッ
ドガァァァン!!
将校's「……!?」ビリビリ
参謀「(机と地図が……)」アーア
将軍「貴様ァァアアア……!!」グオッ
将校1「(ぴ、ピクスィ参謀が閣下の怒りを買ってしまった…!)」
将校2「(ひ、避難せねば我らまで巻き添えをくらう…!)」
64: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:18:36 ID:Sx9bep0/Fk
将軍「お前という奴は……お前という奴はァァアアア!!!」バッ
将校1「ひぃっ!!」ダッ
将校2「に、逃げ……」
将軍「なんと果報者なのだぁぁァァアアア!!」ダキッ ギュウウウウウ
参謀「ぐっ!うぎっ!?」ゴキゴキ
将校1「は?」
将校2「ん!?」
将軍「我輩を女王と結びつけ、更には全世界を差し出そうとは…やはりお前は果報者ヨォオオオ!!ヌハハハハハ!!」パッ
参謀「おぐっ!うぶっ……ぜぇ…ぜぇ…ありがたき…しあわせ」ゲッソリ
将軍「…で?どの程度掛かりそうだ?」
参謀「3年は……」
将軍「そうか。半年か」
将校's「」ギョギョッ
参謀「1年……」
将軍「さすが我輩の認めた切れ者よ?1ヶ月ときたか?」ニヤリ
参謀「…かしこまりました。半年でなんとか手を打ちましょう」
将校1「(さ、3年越しになる作戦を……半年でだと!?)」
将校2「(む、無茶苦茶にも程がある…!)」
将軍「ヌハハハハハ!!なんとめでたいことか!今宵は酒がうまそうだ!!のう?」
参謀「…各隊の補給、運搬班に酒肴の用意を?」
将校1「わ、分かった…!」
将軍「ピクスィよ?後で我輩の寝屋に来い?久々に可愛がってやろう?」ニタァァァ
参謀「ありがたい申し出ではございますが半年後に向けて作戦を組み直さねばなりませんので宴席も空けたいと……」
将軍「二度言わすな?」ビキッビキッ
参謀「……かしこまりました」ペコッ
将校's「……え?」ピクッ
65: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:21:43 ID:Sx9bep0/Fk
〜〜〜夜〜〜〜
将軍「遠慮はいらんぞ!今日は大いに飲むがいい!?」
ギャハハハハハ!!
ドンチャン ドンチャン
将校1「…参謀と将軍はどういう関係なんだ?」グビッ
将校2「分からん…。色仲であるのは間違いなさそうだが…」グビッ
将校1「ファルージャ様一筋ではなかったのか?」
将校2「それとこれとは別なのだろうよ?そばに愛人を囲う将など腐るほどいる?」
将校1「し、しかし相手は男だぞ…!?」
将校2「そう珍しい話でもない。まさか閣下が衆道を嗜まれるとは思わなかったがな」
将校1「……!」
将校2「まぁ確かにあの参謀は指揮官の割に年若い。顔の造りも…まぁまぁまぁ」
将校1「何を言ってるんだ!あんな優男の分際で屈強な兵の上に立ち、挙げ句、閣下に擦り寄るなど気色の悪い!!」
将校2「閣下に聞かれたら殺されるぞ?」
将校1「うっ……いったいなぜ閣下は…血迷っておられるのか?」
将校2「…俺もよく知らんがピクスィが参謀として軍に所属したのは14の事だそうだ」
将校1「14!?俺が小隊を任されるようになった歳でさえ奴の倍だぞ!?」
将校2「前皇帝時代から将軍に仕えていたらしいが誰も奴の詳細は知らない…。謎の多い男だよ」グビッ
66: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:23:17 ID:rjm0FZnxdY
軍曹「ギャハハハハ!!分かってねぇなぁ、君たちぃ!?酒の肴は女と決まってんじゃないのよぉ!?」モミモミ
西の女1「イヤァーン!!タビラ様のエッチぃ?」
西の女2「あーん感じちゃーう?」
将校1「…ちっ!女タラシが?」
将校2「あれに聞いてみるか?軍の中じゃ古株だしよ?」
将校1「宮女喰いで悪名高いタビラにか!冗談じゃねぇ!?」
将校2「参謀殿の疑惑を晴らしたくないのか?色事で上官職に就いてるとしたら蹴落とすにゃいい口実になるぞ?」
将校1「しかたねぇな…。ピクスィのような陰間の優男に仕切られて動いてるかと思やぁヘドが出る!徹底して暴いてやろうぜ!?」
将校2「よしきた…軍曹殿!こちらで一緒に飲まぬか!?」
軍曹「あん?男となんか飲んでられるかい?隅で牛の小便でも飲んでろ?」
将校1「」ブチィッ
将校2「こらえろ、こらえろ」サスサス
軍曹「お前らモーホーかぁ?綺麗所が並ばねぇたぁ寂しいなぁ?」
将校2「」ブチィッ
将校1「お前がこらえろと宥めたんだぞ…?」サスサス
67: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:27:13 ID:rjm0FZnxdY
軍曹「将軍と参謀の仲ぁ?」
将校1「あぁ、先ほどただならぬやり取りを聞いてな?」
軍曹「そうかぁ?成り上がりのお前らは知らねぇかぁ?叩き上げの俺らは昔から周知のなんとやらだがなぁ?」ヘラヘラ
将校1「」イラァッ
将校2「やはりそういう関係なのか…?」
軍曹「つってもねぇ…そんなんじゃねぇぜ?あいつは俺らん中でも生粋の叩き上げさぁ?
並み居る軍師をはね除けて最年少であの地位に登り詰めた天才ってやつだな!」ヘラヘラ
将校1「…色事で将軍に取り入ったんじゃないのか?」
軍曹「君たちぃ?カカドゥーラ様を分かってねぇなぁ?」ヘラヘラ
将校2「どういうことだ?」
軍曹「あの方はよぉ?何かにつけて弱い者いじめをしたがる?
抵抗の少ない赤子や女、老人を痛め付けるのがだぁぁ〜い好きだぁ?」ヘラヘラ
将校2「」ゾクッ
軍曹「西の国が野蛮だとされるのは…もっぱら閣下の行いの悪さにある?
殺しを楽しむのに飽きた猛将の下品な遊び心が西の武勇を貶めてる訳さぁ?」ヘラヘラ
軍曹「だがしかし…その他の追随を許さない蛮行があらゆる意味で名を広めた?
大魔導師パカラゥロ、宝石商シャルウィンと並び称されるものの…格で言えば圧倒的に殺戮将カカドゥーラが上回る?」
軍曹「西の国に対する各国の畏怖は…ある意味カカドゥーラ様への畏怖なんだよぉ?分かる?」ヘラヘラ
将校1「」ゴクリ
将校2「…カカドゥーラ様が参謀への見方を甘くしている可能性は?」
軍曹「万に一つもありえねぇ?だが一つあるとすりゃ…奴の出生の秘密だ!」
将校1「出生の…」
将校2「秘密…?」
68: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:29:32 ID:rjm0FZnxdY
軍曹「奴に関する経緯は閣下以外、誰も知らねぇ?
だが奴は4歳から高名な軍師に引き取られ、9歳で初陣を飾り、兵500を率いて2000の無国籍軍を打ち破った化け物だ?」
将校1「(4倍の数を…9歳のガキが!?)」
軍曹「当然っちゃ当然の出世だが…異例っちゃ異例の出世だ?当時は皆、頭を悩まされたぜぇ?」
将校2「…そ、それは凄いがなぜ9歳のガキが指揮官の任で初陣を?」
軍曹「おうよ、そこが奴の謎を深めてる?」
将校1「…奴の謎とはなんなんだ!?」
軍曹「…閣下は弱者を理由に守られる存在ってのが許せねぇんだとよぉ…?
弱い奴は弱い奴らしく苦痛の末にへし折れて無様にのたれ死にやがれってのがあの方の持論だぁ?」ヘラヘラ
将校1「ん?」
軍曹「何か裏があんだよぉ?奴は?」
将校2「つ、つまり参謀殿はただの愛人ではなく…!」
軍曹「あぁ、なんらかの秘密を抱えた"慰み者"である可能性が高い!」ニタリ
将校1「…!?」
軍曹「ボインでやらけぇ女の肉は最高さぁ?男色趣向なんざ俺には一生、わからねぇ趣味だな?」
西の女1「ねー?話終わったぁ?」ヒシッ
西の女2「あたし達も相手してよぉ?」ヒシッ
軍曹「いいねぇ〜?とことんイクとこまでイこうぜぇ〜?」モミッ
将校1「(いったい参謀殿は……)」
将校2「(何者だ…?)」
69: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:33:54 ID:rjm0FZnxdY
―――将軍の砦(回廊)―――
カツンカツン カツンカツン
将軍「…よい酒であったわ」フラッ
参謀「大丈夫ですか?過度の飲酒はお身体に障りまする。どうか部屋でお休みに……」
ガシッ グワッ
参謀「っ!?」ムグッ
将軍「…誤魔化せるとでも思うたか?」グッ
参謀「っ……!っ…!?」
将軍「眠り薬など仕込みおって…小癪な!我輩には通用せんぞ?」ググッ
参謀「お…はな…しくだ、さい!」プルプル
将軍「解毒薬を出せ?」パッ
参謀「げほっ!ごほっ!」
将軍「さっさと出せ…?」ギロッ
参謀「は、はい…」ゴソゴソ スッ
将軍「ふん…」グビッ
参謀「(くそっ…!)」ギリッ
将軍「さぁて…ヤるか。今夜は寝れぬものと思えよ?」
参謀「…先日、領内から拐った女達ではいけないのですか?」
将軍「貴様がいいのだ?我輩が手塩に掛けて育ててやった…みじめで虚しい皇女殿?」クイッ
参謀「…その呼び方はおやめくださいませ」プイッ
将軍「くっ…ぐふふ!」ニヤニヤ
参謀「(あの"妾"にしろ…こいつにしろ…性の匂いがする者にロクなのはいない…!)」ギリッ
70: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:42:52 ID:Sx9bep0/Fk
〜〜〜回想(参謀)〜〜〜
ダダダッ バババッ
西の宮女「はぁ…!はぁ…!」
赤ん坊「ウアアアン!!」
ザッ
西の宮女「」ハッ
将軍「見つけたぞ?」ニヤリ
西の宮女「ど、どうか…お見逃しくださいまし…!?」
将軍「ならんな?皇帝陛下の下に連れ帰らせてもらう?」ザッザッ
西の宮女「…この子は女に生まれた身!王位争いとは無縁なのです!どうか!」
将軍「ならなぜ堕胎しなかった?」
西の宮女「慈悲を…!もう…こんな場所で生きていくのは疲れたのです!この子と二人、安らかに……」
将軍「安らかに眠りたいと?」
西の宮女「……!?」ギュッ
ズバシャッ! ポトッ
赤ん坊「ぎゃあああああ!!」ベーベー
将軍「ムフフ…陛下の隠し子、というより隠された子か?
お前の母が犯した罪は大きい。皇族に生まれながら…日陰の奴隷として一生を過ごす事になるだろう?」
将軍「が、しかし…宮女共の堪え性の無さもまた異常だ。
今月も5人の皇子が他界したしな。そう思えばお前はまだ運がいい?」
将軍「…何はなくとも血族であるのは確かだ。皇帝陛下の先々を考慮し、我輩が内密に飼っておいてやろう?」ニタァァァ
将軍「…しかしこの宮女、なかなかの美人であったな。我ながら惜しいことをしたか」チッ
…………………
71: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:45:29 ID:Sx9bep0/Fk
〜〜〜明け方〜〜〜
―――西の国(砂漠地帯)―――
ザスッザスッ ザスッザスッ
参謀「……」
軍師「顔色が悪うございますが到着まで眠られては?」
参謀「そうもいきませんよ。いつイアマンの反逆者共が刺客を放つか分からないですからね」
軍師「ここ2年ほどは閣下も落ち着いておられましたが…いやはやまた卑しい目を向けられるとは」
参謀「…"そこ"だけはあの"妾"に感謝してたのですがね。
まぁ閣下も我欲の強い男…王位から退かれたとはいえ、一応の皇族である僕をなぶって自己満足に浸っているのでしょうよ」
軍師「…辛いですな」
参謀「そう言ってくださるのは貴方だけですよ。師匠殿」
軍師「師匠だなどと恐れ多い?私はただの配下にございまする?」
参謀「…ご心配には及びませんよ。僕はまだ諦めておりませんから」
軍師「それは良うございました。私も微力ながら貴方様の背を押させていただきたいと存じておりまする。"皇帝陛下"」
参謀「気が早いですよ」
軍師「いずれはそうなるのですから同じことかと」
参謀「あの妾の台頭で一度は失敗に終わりましたが…まぁ問題ありませんね。
むしろ正統な王位を継ぐ次期皇子共を皆殺しにしてくれたので助かりましたよ…」
軍師「……」
参謀「この国の長所は軍の強大さにあらず…独裁制を許される政治的圧力の強さに起因します」
軍師「(軍事のみならず政治の才も一線を画する…。やはり私の目に狂いはない!)」
参謀「僕もそろそろ軍の一指揮官から…ちょうど良い位置まで駆け上がりましょうかねぇ?」ニヤリ
軍師「(この方こそ王の器なり…!)」
72: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:49:11 ID:Sx9bep0/Fk
〜〜〜1ヶ月後〜〜〜
―――王国軍の砦―――
フィクサー「…読まれた、か」コトンッ
副官「えぇ、えぇ、そのようで?」
ドレッド「どういうことだ!西の国の貿易拠点に流布したんじゃないのか?」
フィクサー「奴らが動くそぶりが見られない。作戦を見破られたようだ」
ドレッド「見破られただぁ!?野蛮で愚図な西の連中にそんな勘のいい野郎がいるってのか!?」
フィクサー「敵の戦力を見誤ったかも知らんな」
ドレッド「ちぃっ…!救い主をエサに奴らが不利な国境・山岳地帯に誘きだして一網打尽にする手筈だったんだろうが!?
ここで大々的に勝利の狼煙をぶち上げて一気に西の本国を詰めりゃ終わる話だったんだぞ!?」
フィクサー「さすがにそうはいかんよ。地理を把握する者ならばある程度の予測は立てられる。ましてや敵は百戦錬磨の強国だ」
ドレッド「なにぃ!?だがあんたの作戦じゃ…?」
フィクサー「だからこそ敢えてこちらの誘いを外し、貿易拠点から少々離れた高原地帯に侵入し、奇襲を迫ってくるかと考えていたが……」
ドレッド「結局はあてが外れたんだろう?全部台無しだ!くそっ!?」ガタンッ
73: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:50:13 ID:rjm0FZnxdY
副官「どうも引っ掛かる?」
ドレッド「なにがだ!」
副官「政務官殿の話では以前にも西の国が予想だにしない政治戦略に打って出たとか?」
ドレッド「こっちとは関係ねぇだろ!」
副官「西の国は軍事国家、あくまで軍主体の統治を掲げている?
その証拠に女王直属の配下、三銃士にも政務に携わる者はおりませんよねぇ?
しかし今はどちらかと言えば外交や同盟破棄の手引きなど政治色の強いやり方が目立っている…」
フィクサー「軍略、政治、どちらにも長けた切れ者がいるのかもな」
ドレッド「…軍の最高指揮官は"殺戮将カカドゥーラ"だろう?それ以外で目立った奴は知らんぞ?」
フィクサー「どうやら…甘く見過ぎていたようだ」
副官「ふむ。非常にまずい立ち回りとなりましたねぇ。
敵に攻め入る気が無ければ動きようがないですから?」
ドレッド「お、おい…それじゃどうすんだ!?」
フィクサー「…敵が誘いに乗らない以上、わたしに軍を動かす権限はない。
来るべき日に向け、軍備を強化し、各地に防衛線を張り巡らすぞ」
副官「ははっ!」
ドレッド「また一からやり直しかよ…。西の蛮人の分際でしゃらくせぇ真似を…!」ギリッ
フィクサー「(…時代が少しずつ我ら軍人に傾いてきた。この機を逃す手はない。西国の内部に探りを入れてみるとするか)」
フィクサー「(どの史実をめくってみれど…血にまみれた時代が最も面白いからな)」ニヤリ
74: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:04:21 ID:YUaqlqK50k
―――王国(議場)―――
ヒメ「ふっ…」クスッ
ウダウダ ギャーギャー
高官1「であるからして…それは…!」ギャーギャー
高官2「ここは万に一つの望みを賭けて武力行使に打って出るべきだ!!」ギャーギャー
ネバル「西の国の人達はお腹空いてるです!ごはんをあげて説得するです!!」ギャーギャー
高官3「救い主を差し出してはいかんのか!?血を流すよりマシだろう!?」
高官4「貴様!!救い主様は陛下のご友人だぞ!?」
政務官「奴らは争いそのものを楽しむ感覚の持ち主だ!たとえ目的を遂げたとしてもおとなしく引き下がるとは思えん!
奴らを説得するのではなく奴らが納得せざるを得ない状況を作らねばならない!!」
ヒメ「(戻してやった貴族上がりの高官達も積極的に意見を出すようになった。
政務官の本格復帰で息を吹き返したんだろうが…さすが王国1の弁舌家だ。
周囲を煽り、明確な目的意識を促す力に長けている)」
ネバル「おいらの知り合いに美味しい大根を作ってる農家があるです!そこの大根おろしは絶品です!西の国の人達も飛び上がって和睦するです!!」ギャーギャー
ヒメ「(とりあえずあいつは後でぶっ飛ばすとして…良い流れに入ってきた。
これなら絶望的な状況を退ける上策が生まれるかもしれない)」
政務官「陛下の意見をお聞きしたい?」
ヒメ「そうだな…。奴らを強引に納得させるのには賛成だ。具体的な手段はないのか?」
政務官「西の国と平和協定加盟国の貿易が本格実施される前に各国との連携を強化するのが妥当かと!」
ヒメ「…それしかないよな。やっぱり?」
政務官「…不服かもしれませぬが、やはりあの方に頼るべきかと存じます」
ヒメ「そうだな。強化する前に…まず盟が生きていると証明するのが重要だ」
政務官「では…!」
ヒメ「あぁ、僕と東の国へ行ってくれるか?政務官!」
政務官「すぐに手配を!」
ネバル「はいはーい!おいらも行きたいです!」
ヒメ「どうせまたなんかやらかすからダメだ?」
ネバル「そんな!?」ガーン
75: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:08:20 ID:T0csLKu60c
〜〜〜1ヶ月後〜〜〜
―――東の国―――
ザッザッ ザッザッ
ワァァァァアアアア!!
パチパチ パチパチ
政務官「(なんという事だ…!城下のみらなず王宮内でさえ多大なる歓迎を受けている!?)」スタスタ
ネバル「あ、前にお話した貴族さんたちです!どーもー!」フリフリ
ヒメ「浮かれるな!バカ!」ポカッ
政務官「(…物珍しさに群がる他国民に歓迎を受けるのはある意味、当然だ。
しかし役人や騎士族までが微笑ましく迎え入れるとは…裏がないとすればヒメ様の人望は相当なものであると考えていい!)」
ブルードル「遂に答えを出したようだな!ヒメ君!!」
ヒメ「お待たせして申し訳ございません。ブルードル陛下」ザッ
ミリア「今日はずいぶん可愛らしいお衣装ですのね?」ニコニコ
ヒメ「ど、どうも…」ヒクヒク
政務官「好感触ですな?ヒメ様…!」コショコショ
ヒメ「(ブルードル陛下は変態じゃないと何度言えば…!こんな派手なヒラヒラした衣装、用意する必要ないんだよ…!)」イライラ
ネバル「孫の衣装です?」ニコニコ
ヒメ「(それを言うなら馬子にも衣装だ!こいつも結局、付いてきた…!)」イライラ
ブルードル「あぁ…緋色と琥珀の色彩…短い手足に余る袖…なんと眼福なものか!
あとで肖像を描かせてくれたまえ!彫像に彫り直して我が宮に飾りたい!」ハァハァ
ヒメ「(やっぱり変態かもしれない)」
ミリア「陛下、落ち着きましょ?」ポンポン
ブルードル「ごほんっ!むふんむふん!」ゲフンゲフン
ヒメ「ブルードル陛下、此度は何も衣装をお見せしに来たのではございません」
ブルードル「う、うむ!もちろんだとも!いやー私としたことが……」
ヒメ「大事な話をしに参りました…!」ジッ
ブルードル「」ピクッ
76: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:11:35 ID:T0csLKu60c
ヒメ「今一度、お頼み申し上げます!王国に力をお貸しください!!共に西の国を打倒しましょう!!」
ブルードル「おぉ…!こちらの条件を受け入れてくださるか!?」
ミリア「」クスクス
政務官「いえ、養子縁組に関しましてはお断りさせていただきたいと存じます!」
ブルードル「…そなたは?」
ヒメ「紹介が遅れました。私の後見人としてそばに仕えてくれている政務官です」
政務官「リルラと申します。どうかお見知り置きを?」
ブルードル「ふむ…まぁ非常識は自覚しておったが…それにしても悪い話ではなかったはずだ?」
ヒメ「…私が東の国の王位に乗り出してしまったら両国共に滅びます」
ブルードル「無用な心配だよ?」
ヒメ「……」
ブルードル「以前より私は君を見ていた。国交の場…協議の場…そして記念すべき少年王聖誕祭、正面に座して君との話を楽しんだ日だ?」
ヒメ「……」
ブルードル「私は認めておるよ。そうでなければ易々と王位など譲れん?」
宰相「我々、東国の高官一同も納得しております」ザッ
ヒメ「…いいえ、僕では無理です」
ブルードル「なぜ断定するのだね?分からないじゃないか?」
ヒメ「東の国は豊かで国土も整っており、民は窮する事なく穏やかに過ごしている。御しやすいと言えば…そうなのかもしれません」
政務官「ぎょ、御しやすいなどと…お言葉を選ばねば…!?」コショコショ
ヒメ「いい。この際、はっきりさせる必要がある!」
ブルードル「構わんよ。続けてくれたまえ…」
77: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:14:01 ID:T0csLKu60c
ヒメ「富に溢れ、文明は広まり、大勢の人が行き交う城下の景色は実に調和が取れていました。
しかしそれらの平穏な生活は賢い王族の下にあると彼らも理解しているはず…」
ブルードル「褒められてしまった…!」ポッ
ミリア「はい、よしよし?良かったですわねー?」ナデナデ
ヒメ「…いかにお世継ぎがおられないとはいえ、余所の国からやって来た者を民は受け入れられないでしょう。それほどに陛下の威厳は深い?」
ブルードル「ならば民に示せばよい。君にはその力がある?」
ヒメ「不可能です!」キッパリ
ブルードル「ほ!?」ビクッ
ヒメ「今の統治に満足している彼らには私の成す、いかなる変化も煙たく感じるでしょう!
時には民に無理を強いる場面も先々に多く出てきます!そうなった時、彼らは必ずこう囁くはずです!」
ヒメ「『今の王ではダメだ』『前の王はよかった』『正統な王でもないのになぜ従うのか』と…」
宰相「……!」ググッ
ヒメ「此度の件にしても…西の国と衝突間近にある状況下で決戦が他の王による決定であれば誰も争いには向かえない!」
ヒメ「東の国は貴方の人望に支えられているのです!なれば国民も役人達も…貴方による統治を望まれる!!」
宰相「……!」プルプル
ブルードル「…私はただの傀儡だよ。役を演じて客を喜ばすのは人形だが演目を組み立て、糸に括って操るのは有能な演出家だ?どうだね、宰相?」
宰相「へ、陛下…」
ヒメ「確かにそうかもしれません。ですがそこに揺るぎない説得力を産み出すのは他ならぬ演者自身です!」
ブルードル「私はただ妃とのほほんと微笑ましく贅沢に溺れた愚王だ。
君のように自ら何かを産み出そうとする行動力も能もない」
ブルードル「そう…何も産まず、何も守れず、ただ面白可笑しく生き永らえただけだ」フッ
ミリア「陛下…」ポンポン
ヒメ「そこの宰相は貴方を操っている訳じゃない!貴方の人格に合った政治を成しているだけだ!」
ブルードル「私に合った…?」
宰相「!?」
78: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:17:29 ID:YUaqlqK50k
ヒメ「その者は貴方が望まれる政治を実行する為に尽くしているのです!」
ブルードル「……」
ヒメ「でなければ子の無い王に野心無くして付き従う利はない!
西の国との貿易を断るといった自滅行為はありえない!
なにより他国民に王位を譲るなど…賛同出来る筈がない!!」
宰相「……!」パチクリ
ブルードル「ふ…フホホ!君は…宰相の思惑に裏があるとは考えないのか?」
ヒメ「それはありえません!」
ブルードル「ホ?」
ヒメ「万人に愛される貴方だからこそ東の国は成り立っているのです!!」
ブルードル「やはり…聡明だよ、君は?」ニコッ
ヒメ「……!」
79: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:18:35 ID:T0csLKu60c
ブルードル「よく尽くしてくれているよ。彼は…?」
宰相「くっ……」ウルッ
ブルードル「だが宰相も私も年寄りだ。せいぜい10年……もう長くはないだろう。
しかし貴族や王家直属の家臣達は…有能かもしれんが王の器かと問われれば…なんとも?」
ブルードル「となれば…せめてこの眼で確かめた上で信を置ける世継ぎが欲しい」
政務官「…そ、それでヒメ様に白羽の矢が立った訳か」
ネバル「陛下すごいです!」
ブルードル「フホホ!お前があと20若ければ…のう?宰相?」ニコッ
宰相「ご冗談を…!?」
政務官「…なぜ子を成さなかったのです?」
ヒメ「成さなかったんじゃない。成せなかったんだ」
政務官「存じ上げております。しかし王の血を残すは至上の使命…最も真剣に取り組むべきはそこにあったのでは?」
ブルードル「フホホ…耳の痛い話だ…?」
ミリア「…話してあげましょうよ?」
ブルードル「よいのか?」
ミリア「えぇ、ここまで言ってくれたのですから…全てをさらけ出してしまいましょう?」
ブルードル「うむ…聞いてくれるかな?王国のお客人よ?」
政務官「はっ!」
ネバル「はっ!」
ヒメ「…お願いします!」
80: 名無しさん@読者の声:2015/8/14(金) 21:21:33 ID:M3gqXJXWA6
初めてリアタイ遭遇してしまった…
支援せねばなるまいっ!!
CCCCCCCCCCCC
81: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:21:34 ID:YUaqlqK50k
〜〜〜回想(ブルードル)〜〜〜
東の高官「…報告します!拐われた子らの所在、生死共に不明!派遣した300の調査隊も同様です!」
ブルードル「…分かった」
東の高官「引き続き調査隊を派遣しますか!?」
ブルードル「…宰相、どうだろうか?」
宰相「お気持ちは重々…ですがこれ以上は…犠牲を増やすばかりやもしれませぬ」
ブルードル「西の皇帝に宛てた抗議文はどうなった?」
東の高官「…早馬にて送らせたのですが返答はおろか抗議文を届けた伝者も帰って参りません」
宰相「向こうは話し合う気もないようですな。西の地を踏めば死に直結する…。もはや立て続けに抗議をするのも危険過ぎます」
ブルードル「…そうか。中止しろ」
東の高官「よろしいのですか…!?」
ブルードル「明日、遺族を城に招いておくれ?城下の民には私が直接、顔を見せて説明しよう」
東の高官「へ、陛下自らがそこまでなさらずとも!」
ブルードル「…私はこういう時、どういった言葉をかけてやればよいか知らぬ。
宰相よ、なんと言えば遺族の傷に響かせず僅かでも慰められるだろうか?」
宰相「必要ありません」
ブルードル「?」
宰相「王の言葉には光が宿っております。陛下の心の赴くまま遺族に語りかけて差し上げればよろしい」
ブルードル「フホホ…何が光なものか?何よりも失ってはならぬ純然たる希望の欠片を手放した愚か者が…?」
宰相「自棄になりなさるな!陛下がそれでは失われた命どころか残された命までもが浮かばれませぬぞ!」
ブルードル「フホホ…悲しみを癒す間もなく他者を労らねばならぬか。王とは難儀だな…」
82: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:24:08 ID:YUaqlqK50k
宰相「史実・歴王典にあるように…嘆きを安らがせ、暴走を諌め、戸惑いは導き、悲哀には励まし、喜楽あらば共にする。王とは陰りなき永遠の光と説きます」
ブルードル「王とは光……なるほど、偉大なる先人方はやはり美しい教えを遺される?」
ブルードル「だが子のない私達には…この国の今を楽しみ、未来を待ちわびる無数の瞳は…一点の曇り無く輝ける存在なのだ…!」ググッ
東の高官「」ビクッ
ブルードル「王であれ、使命であれ…あと20年保つか分からぬ…老い先短い微かな灯し火…!
いかに貧しかろうと…卑屈を強いられようと…身分が低かろうと……80年、100年先の未来を生きたかもしれない…眩い命!どちらが優先されて然るべきか!?」ウルッ
宰相「……」
ブルードル「明日、遺族には救出不可能として調査隊を撤退させる旨をしかと伝えなくてはならぬ。
すなわち愛すべき子らを見捨てると断じた王の慰めに耳を傾けさせねばならぬのだ…!」
ブルードル「分からぬ…分からぬよ。宰相…。
私が遺族であったなら…王の慰めも豪奢な宮の煌めきもひしめく屈強な護衛、家臣らさえも…。
王家の栄光の全てが憎しみを増幅させ、拐われた民に射し込まぬ偽りの光を決して許しはしないだろう…!」
宰相「そうであっても…陰りを悟らせてはなりませぬ」
ブルードル「ぐぅっ……」ググッ
宰相「東の地を照らす大いなる光が褪せてはならぬのです!」
ブルードル「…ふ、フホホ……光…」
83: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:26:52 ID:T0csLKu60c
〜〜〜〜〜〜
ブルードル「苦しゅうない。一同、面を上げられよ」
遺族's「」スッ
ブルードル「……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
ブルードル「(はかり知れん…)」
宰相「……」
遺族's「」ジーッ
ブルードル「(…この感情はとても受け止めきれるものではない。複雑だ…あまりにも……)」ゴクリ
宰相「陛下、ご説明を」
ブルードル「うむ…。此度の拉致騒動だが…」
遺族's「!!!!」ギンッ
ブルードル「…すまぬ」ペコッ
遺族's「!!!!!」カッ
ブルードル「余計な言葉は要るまい…。全ては王である私の責任だ。力不足でまことに申し訳ない」
遺族's「」ブルブル
ブルードル「(…複雑な感情を受け入れられないのは彼らも同じか)」
ウオオオオオオオオ!!!
ガタンッ ドガッ ガンッ
遺族1「※★→】゙}@△#!!!」ギャーギャー
遺族2「ふごぉおおお!!むごぉぉふぉっふぉっ!!」ポロポロ
遺族3「メイ…ヒヨ……」ボーッ
遺族4「返せぇエエエエ!!!返せヨォォオオ!!?」ガァーッ
84: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:29:07 ID:T0csLKu60c
宰相「鎮まれ!王の御前であるぞ!?」
遺族5「関係あるかぁ!?」ダンッ
宰相「なっ…!?」
遺族6「私達の子供は…どうなってるの!?生きてるの!?死んでるの!?」
遺族7「西の国がやったんだろ!!分かっててどうして何もしないんだ!?」
宰相「…ま、まだそうと決まった訳では!」
遺族8「西の軍旗を掲げた兵が迫ってくるのをこの目で見たんだ!?」
遺族9「奴ら、わざと俺達に旗を振ってた!!混乱したのを見計らってはぐれた子供らを最初から街に仕込んでた間者を使って拐わせたんだ!?」
宰相「さ、幸い街自体の被害は少ない!まずは探りを入れて……」
遺族10「街が無事なら、それでいいのか!?そこに住まう民の被害など…どうでもいいと言うのか!?」
遺族11「どうなんだ、陛下!?」
ブルードル「(なんとも言えぬ、な…)」
宰相「」ギャーギャー
遺族12「おぉぉおおおお!!おおおお!!!」ポロポロ
遺族13「許さない!!許さなぁぁぁい!!!」ポロポロ
遺族14「あっ…ひ……あぁぁああああ!!!」ワシャワシャ
ブルードル「(かける言葉がない…。予想はしていたが…ここまでとは)」
85: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:31:20 ID:YUaqlqK50k
宰相「これ以上、騒ぎになるようなら衛兵に取り押さえさせるぞ!?」
ギャーギャー ギャーギャー
ブルードル「(打ち合わせた通り、宰相が傍らで憎まれ役を買って出てくれているが…そんな易い感情ではない)」
ブルードル「(憤怒…悲哀…喪失…諦め…孤独…希望…絶望……私の語彙力では語りきれない)」
遺族15「ふぇっ…ぇっ…ぇ……いき…できな…」ドクンドクン
遺族16「考えたくない…信じない…そんなはずない…夢…そう、これは悪い夢……」ブツブツ
ブルードル「(たった120名の遺族が向ける感情は万にも及ぶ…。
果てしない怒りと悲しみは紡がれていき…やがて私は民を裏切った王として世に知れ渡るだろう)」
ブルードル「(ならばもう…光だなどと…くだらない)」スクッ
宰相「お前たち!しずま……へ、陛下!?」
遺族17「…立った」ジーッ
遺族18「陛下が…立った!」ジーッ
ブルードル「そなたらの子は取り戻せぬ。西の国から無事に奪い返すだけの力が今の我が軍にはない」
遺族's「あぁ…!?」ビキビキィッ
ブルードル「…よって西の国に深く踏みいるのは危険と判断し、調査も終了。
抗議も中止し、この件に関する活動を全面停止する!」
遺族19「冗談ですよね…?」ヒクヒク
ブルードル「冗談ではない」
遺族20「こ、この…!!」
遺族21「どう責任を取るんだ!?」
宰相「責任だと?貴様、平民の分際で……」
ブルードル「よい!」
宰相「は…!?」
ブルードル「もうよいのだ、宰相…悪を演じるのは」
宰相「陛下…?」
ブルードル「暗闇に佇む者らに強い光を浴びせかけても…目を焦がし、光を失わせるやもしれぬ」
宰相「…お待ちください!何を言うおつもりですか!?」
86: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:37:00 ID:T0csLKu60c
ギャーギャー ギャーギャー
ブルードル「聞け!皆の者!」
宰相「……」
ブルードル「私は決して西の国を許しはしない!」
遺族's「」ピタッ
ブルードル「時を待て!いつの日か必ずや…皆の無念を晴らしてみせよう!!」
遺族21「どの口が言うんだ!?」
ブルードル「…それまで皆に深く刻まれた傷を……我が国が受けた屈辱を…未来永劫、忘れさせぬ為にも城下に拐われた子らの彫像を建てる!!」
宰相「」ビクビクゥッ
遺族's「」ギョギョッ
ブルードル「決して忘れるな!!決して許すな!!決して諦めるな!!
我々は一蓮托生、血の通わぬ悪逆非道な野蛮国に報復を誓いし同士なり!!」
遺族's「お、お、おぉぉぉ…!?」ガクガク
宰相「陛下!!今すぐ撤回なさいませ!?」アセアセ
ブルードル「……」
宰相「陛下ぁっ!!」
ブルードル「…撤回はせん!!」カッ
宰相「(い、いかん!王族の権威が…光が……闇に支配されてしまう…!?)」
ブルードル「そなたらはまさしく…光を失い、闇に囚われておる。
無根拠に諭す救いの言葉で照らしてみせたところで影はいっそう深まるばかりだろう」
ブルードル「しからば闇の中にあればよい。絶望の淵にて希望を見出だすのだ」
宰相「なりません!!なりませんぞ!?」ザッ
ブルードル「私には彼らの意を汲んでやる義務がある」
宰相「お、おやめください!?それだけは…絶対に…!?」
ザワザワ ザワザワ
87: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:39:19 ID:T0csLKu60c
ブルードル「血を分けた愛し子を失う痛みは…私も知るところだ!!」ギリッ
遺族21「」ビクッ
遺族22「そ、そんなの…分かる訳ないじゃない?」カタカタ
遺族23「こ、国王様は…子などおられないでしょう?」ワナワナ
ブルードル「いたとも!最愛の我が子が…私は今も…愛している!!」プルプル
宰相「衛兵!陛下はお疲れのご様子!奥に連れ立って休ませよ!?」
東の衛兵1「はっ!!」
ブルードル「私は疲れてなどいない!!王の身に触れる者あらば断じて許さぬ!!」カッ
東の衛兵's「っ…」タジッ
ブルードル「我が妻ミリアは3度、子を宿し、3人の子らは光を浴びる事なく世の涯へと流れた!!」
ブルードル「第一子の名はサリアドル、第二子の名はヨードル、第三子の名はルクアドル!
性別も分からず王位を継いだかも分からぬが…紛れもなく私とミリアの子だ!!」
遺族's「ひっ…ひっ……」
衛兵's「ま、まことなのか…?」ヒソヒソ
宰相「あ、あぁぁあ……」ヘナヘナ
ヒエエエエエエエエエエエエ!!!
ブルードル「案ずるな!遺族達よ…いや、我が同士よ!!私はお前達を見捨てはせんぞ!!」
遺族's「」パァァ
ブルードル「その日が来るまで復讐の剣を研ぎ澄ませ!!お前達と戦える日を余は楽しみにしておるぞ!?」
ウオオオオオオオオ!! ウオオオオオオオオ!!
バンザーイ!! バンザーイ!!
…………………
88: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:41:26 ID:YUaqlqK50k
政務官「城外に飾られた少年少女の石像は…遺児を祀り偲ぶものだったのか」ワナワナ
ネバル「3回も流産しちゃった…ですか?」ガタガタ
ブルードル「うむ…。もはや妃の身に負担はかけられなかったので…私は子を諦めた」
ミリア「…天に与えられた3人の命を地上へと放ってあげられなかった私の責任ですわ?」
政務官「…で、でしたら別の宮女に役目を代わらせれば?」
ミリア「私もそのように勧めたのですが…」
ブルードル「私は我が儘でね…」
政務官「?」
ブルードル「愛した妻との子でなければ嫌だったのだよ」
政務官「い、嫌だった…!?」
ネバル「かっちょいいです!よっ!王様!?」ヒューヒュー
ブルードル「フホホ!また褒められてしまった?」テレッ
ミリア「ねー?よしよし?私も愛してますよー?」ナデナデ
ブルードル「私もさ…?」ジッ
ミリア「……」ジッ
ブルードル「んーっ…」スッ
ミリア「んーっ…」スッ
宰相「うぉっほん!!」
ブルードル&ミリア「」ビクッ
宰相「お客様の御前ではしたないマネはおよしください!」
ブルードル「す、すまないな?」テレッ
ミリア「……」ポッ
ネバル「ひゅーひゅー!アツアツですー!」
政務官「貴様は少し黙っていろ!」アセアセ
ヒメ「っ…!」ドキドキ
89: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:43:07 ID:T0csLKu60c
政務官「宰相殿は何も言わなかったのですか?」
宰相「国王にその気がないのならどうにもなるまい…」
ブルードル「フホホ!よく言うな?ある時期は毎晩のように我が宮に女をあてがっておいて?」
ミリア「あらあらまぁ?宰相殿も頑張ってらしたのね?」ニコニコ
宰相「そ、それはどうかご内密にと!?」アセアセ
ヒメ「……」
ネバル「そういえばうちの陛下はどうなんです?許嫁とかいるですか?」ヒソヒソ
政務官「…私や大臣ら反王族勢力で固められた頃は王族にあらゆる制限を課していたのでな。
継承の儀に迫るまで何者も近付けぬようにしていたのだ。
その上、陛下自身も人付き合いを嫌っていて深い仲に至った相手は今まで一人もいない…」ヒソヒソ
ネバル「それって…うちの王様もまずいんじゃ…?」ヒソヒソ
政務官「そうだな。まだ小さいからと考えていたが…深刻化する前に対策を講じねばならないかもな…?」ヒソヒソ
ヒメ「…おまえら、なんの話をしてるんだ?」ジロッ
政務官「…いえ」
ネバル「な、なんでもないですー!」アタフタ
ブルードル「フホホ!」
ミリア「」クスクス
90: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:45:34 ID:YUaqlqK50k
ヒメ「…西の国に対する遺恨、陛下と妃様の経緯(※いきさつ)、共に包み隠さず教えてくださり、ありがとうございます。
改めて口に出すのは心苦しいものと思われますが…おかげでこちらも本心から話を進められます」
ブルードル「そうか。話した甲斐があったよ」ニコニコ
ヒメ「私からも改めてお願い申し上げます。養子縁組は断らせてください!」
ブルードル「……」
ヒメ「そちらの事情を考慮しても…やはり明確に断ち切らなければならない選択肢であると見ます!」
ブルードル「聞かせてくれたまえ…」
ヒメ「東の国と王国は隣接地に境があり、問題化した事案や衝突に至った経歴もありません。
もしも国土を繋げるとして弊害は少ないように感じられますが…それでも両国には重大な不安要素があります」
ブルードル「…分かっているとも?」
ヒメ「!」ピクッ
ネバル「へ?なんです?不安要素って?」
政務官「…黙れ。お二方の話に集中しろ」
宰相「……」
ミリア「」ニコニコ
ブルードル「子を生むべきか、だね?」
ヒメ「…はい!」
ネバル「???」
91: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:48:24 ID:YUaqlqK50k
宰相「そんなものは決まっておりましょう」
政務官「うむ…。東の国より妃を娶り、王国の次期継承者とするべきかと」
ヒメ「東の国には王の血が流れていないんだぞ」
宰相「……!」
政務官「……!」
ミリア「……」
ヒメ「万人に愛された偉大な国王の血を絶やし、無関係の新たな血に東の国土は吸収される。
我が国の民は王国の権威を誇りに思い、東の民は母国の権威が落とされたと落胆するだろう」
政務官「…人種差別が生まれると?」
ヒメ「ホビットへの差別を無くす活動がいまいち滞っているのは民の差別意識が残っているからだ。
燻った民意に火種を投じるのは危険だと考えるが?」
政務官「…そうですな」
ブルードル「身を切る覚悟は出来ているよ。東の民にも号外に記してそれとなく悟らせてある?」
ヒメ「…お言葉ですが」
ブルードル「……?」
ヒメ「それは貴方の傲慢に他ならない」
ブルードル「ホ…?」
宰相「傲慢…ですと?」
ヒメ「そうしたところで喜ぶのは今を生きる者達だけですよ?」
ブルードル「今を…?」
宰相「先ほどから傲慢を押し付けているのは貴方の方では?」ジロッ
ヒメ「…なに?」
宰相「これだけの好条件を無償で差し出し、余すことなく全てをさらけ出したというのに…まだごねられるのですか!?」
ヒメ「…申し訳ないが最初から断るつもりでしたので?」
宰相「……!」ブチブチィッ
92: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:53:47 ID:T0csLKu60c
ヒメ「貴殿方の提示する条件はどれも素晴らしく王国を豊かに彩ってくれるでしょう」
ブルードル「私もヒメ君の治める両国の繁栄を期待しておるよ?」
ヒメ「ですが…貴殿方の判断は同時に自国をないがしろにした愚かな選択です!」
宰相「愚かだとぉ!!」ダンッ
ブルードル「宰相…!?」
宰相「こ…の…青二才がぁ…!陛下が…妃様が……我々が…どれほどの想いで納得したと…!?」ギリギリ
ヒメ「重々承知しています。ですが私は納得出来ません」
宰相「なぜだ!これを機にそなたは栄華を掴むがいい!!
我々は悲願の復讐さえ果たせれば…それでいいのだぁ!!」ガァーッ
ネバル「……こ、怖いです」ブルッ
ヒメ「私が国を預かるからには民に復讐などさせません」
宰相「……!?だ、打倒しようと…!?」
ヒメ「言いました。しかし武力による弾圧ではなく…交渉を主として打倒を掲げます!」
宰相「話が違うぞ!?王国めぇ!?」
ヒメ「たとえ今、西の国を武力で滅し、王国・東国が手を取り合って結合したとしても…列国を震わせた怪物、西の国を蹴散らした英雄は私となってしまうでしょう!!」
ヒメ「そうなれば更に旧王国民の自意識は高まり、旧東国民は無下に扱われていく!!
この時代に起きた事は、この時代を生きた者の責任だ!それはしかたない!!
だが陛下が再三に渡って語られた"未来の光"は潰えてしまうだろう!!」
ヒメ「生まれ来る子供たち、その子供たち、孫から曾孫、脈々と受け継がれていく東国の血族!!
その全てに悲惨な未来を約束して得る勝利など…僕に言わせれば、なんの価値もない!?」
宰相「おっ…く!」
ヒメ「一度、戦争をした以上は拡大した国土も手伝って軍備の強化が押し進められるだろう!
なぜなら歴史が王国を勝者と認めてしまったからだ!もう後戻りは出来ない!
そして列国もその驚異を恐れ、軍備強化に動き出す!
第二の終わらない争い開戦の秒読みが始まるんだ!」
ヒメ「だが東国民と王国民の団結はこの時代にしか約束されていない!
よほど上手くやらない限りはいずれ決別の道を辿る!
緊迫感漂う状況にあって内乱の可能性が上がり、国内外の調和も取れなくなっていく!」
ヒメ「そこから先、何年…いや何十年、何百年かも分からない!
この時代が招いた悲劇の枷を未来に託さなければならなくなるんだぞ!?」
ネバル「(陛下って…本当に13歳です?なんか凄すぎて怖くなってきたです…!)」メダパニ
93: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:58:02 ID:YUaqlqK50k
ヒメ「私は間違っていますか?ブルードル陛下?」
ブルードル「一国の王としては非常に間違っておるよ。自ら繁栄を妨げているようなものだ?」
ヒメ「自覚はしています…」
ブルードル「しかし私は…そんな君が大好きだ?」ニコッ
ヒメ「!?」
ブルードル「自国のみに留まらず我が東の国までも思いやってくれる。
その暖かな広い器…王にして王にあらず…君の未来は無限に照らされ、光の渦を生み出すだろう」
宰相「…あ、貴方様のお考えは大仰だ!?たとえそうなれど道を切り開くのが我々、国の役目……」
ミリア「もうよいのではありませんこと?」ニコニコ
ブルードル「そうだな。もうよい」ウンウン
宰相「なっ!?」
ヒメ「……どうか断らせてください」ペコッ
ブルードル「君のような子が欲しかった。つくづく…私は天に愛されていないようだ」
ミリア「毎日、着せ替えして可愛く着飾ってあげたかったのに残念?」ニコニコ
ヒメ「…申し訳ございません」ペコッ
宰相「陛下…まことに…?」
ブルードル「よいのだ。初めから強制する気もない」
宰相「ふぅ…では西の国をどう交渉すると?」
ヒメ「東の国と王国の両国で西の国に対し圧力をかけます」
ブルードル「…圧力を?」
ヒメ「はい。東の国の拉致被害者142名の返還、王国に対する不審な動きについての言及。争点をこの二つに絞って抗議に挑みます」
宰相「なるほど…」
94: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 22:00:33 ID:T0csLKu60c
ヒメ「そして盟が生きていると示した上で平和協定加盟国に西の国の牽制を促し……」ペラペラ
ブルードル「……宰相?」
宰相「はっ!その話に付きましては私が請け負いましょう!議場へ……」
ヒメ「陛下は?」
ブルードル「私が加わっても妙案は出そうにない。今は妃と話し合って新たな後継者探しに専念させていただくよ」
ミリア「力になれなくて申し訳ありません…?」
ヒメ「いえ、あとはお任せください」
ブルードル「フホホ…孫ほど歳の離れた君に託すのは忍びないが…」
ヒメ「お構い無く?最も優先されるのはそちらの事情ですから?」
ブルードル「恩に切るよ。礼は尽くす」
宰相「ではヒメ様、こちらへ案内致します」スタスタ
ヒメ「…リルラ!ネバル!行くぞ?」スタスタ
政務官「はっ!」スタスタ
ネバル「はいです!」スタスタ
スタスタ スタスタ………
ブルードル「……断られてしまったぁ!?」ダキッ
ミリア「そうねぇ。本当に残念でしたわねぇ?よしよし?」ナデナデ
ザワザワ ザワザワ
ブルードル「うおおおん!!ヒメくぅぅん…!!」シクシク
ミリア「家臣の皆様も見てますから?元気を出しましょうねぇ?」ナデナデ
95: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 22:02:44 ID:T0csLKu60c
〜〜〜1週間後〜〜〜
―――南の国(宮殿)―――
顧問官「…御公務、お疲れ様でした。残りはこちらで済ませておきますので陛下は自室でお休みくださいませ」
南の王「毎夜、無理をかけてすまぬな。爺や」
顧問官「いえ…伽も大事な公務にございます」
南の王「ハハハ…なぁ爺や。それももちろん大事なんだが…」
顧問官「はい…?」
南の王「…王国からの文、爺やはどう読む?」
顧問官「…最近の西の動きは怪しい。牽制は正しい判断と言えるでしょうな」
南の王「ハハハ…そうか、そうか」
顧問官「…陛下はどうお考えになられる?」
南の王「あのヒメ国王…まだ幼いが相当なやり手だと聞いている。余も何度かお会いしたが…」
顧問官「儂の目には…そうは見えませんでしたがな」
南の王「うむ…そうだな。彼は思想を熱く語りすぎだ?
あれでは正直者のブルードル陛下をやり込めるのが精々…」クックッ
顧問官「協議の場においても目に余りまする。経験も浅い。
配下の指示に操られる人形の分際で他の国々に正義を諭すなど…」
南の王「そうだろうか?勢い任せで底が浅いの別として…あの歳であそこまで思想を掲げられる熱意は評価に値すると感じたがね?」
顧問官「は…?」
96: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 22:06:05 ID:T0csLKu60c
南の国「それに彼はおそらく先代と違って配下の手を離れているんじゃないかなぁ?」フンフン
顧問官「まさか…?齢13の未熟者に務まりますまい?」
南の王「まだまだ粗削りだが…あれでなかなか末恐ろしいよ?
今、最も注目すべきは"魔性のファルージャ"よりも"王国の姫君"なのかもしれん?」
顧問官「は…!?」
南の王「平和協定加盟国・6国に加え、西の蛮国、更にかつて終わらない争いで領土を奪われ、大陸方々に散った小国がいくつか……」
南の王「どれを取っても用心ならないが…中でも新たな時代を迎え、活発な動きを見せているのは西と王国の二つだ?」
顧問官「…両国の小競り合いが何か大きな問題に繋がるとでも?」
南の王「小競り合いかどうかは…当人の抱える問題の深刻さに左右される?」
顧問官「それほどの問題があの二つの国に?」
南の王「実はまだどの国も口に出してはいないが…2年前の巡礼で教団が演出した奇跡?あれは何か…解せないんだなぁ?」
顧問官「し、しかしあれはタイマによる幻覚と……」
南の王「皆一様に共通の物を魅せられる幻覚症状があるか?」
顧問官「そ、それは…」
南の王「…教団の神官があの巡礼で王国の首都を侵略するよう依頼してきたが…ふっ?一国の王を易々動かそうとは…甘いなぁ?」
顧問官「あの国は王が配下を御しきれず遂には反乱を許してしまった歴史上、最も愚かな国です」
南の王「しかし反乱まで起こす理由があっただろうか?あの国は傀儡政権で十分、成り立った筈だ?」
顧問官「…そこに何か裏があると?」
南の王「西の国の動きも妙だというのも…どこも鉱石財源に狂ってあまり眼に映っていない?
これはもしかすると…もしかするのかなぁ?」
顧問官「何を企んでおいでか?」
南の王「…企んでなどいないよ。考えているだけだ?如何にすれば我が南の王家が得をするか…な?」ニヤリ
顧問官「深入りは禁物かと…」
南の王「ハハハ…下手に動いて目を付けられても厄介だしな?慎重に事を運ばねば?」
顧問官「(隙がなく、抜け目なく…表面上は人格者と評される我が王に秘められた狡猾さは儂の他に知る者はいない)」
南の王「ファルージャかヒメ…どちらに恩を売っておくべきか?」ニヤニヤ
顧問官「(我が南はまだまだ安泰だな…)」
97: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 22:10:09 ID:YUaqlqK50k
―――宮殿(寝室)―――
南の王「さーて…夜の公務に励むとしようかな」ガチャッ
少女「お待ちしておりました」
南の王「(……少女?)」
少女「今宵、陛下の心身をお世話させていただきます。ラウロと申します」オズオズ
南の王「(ふっ?爺やめ…たまには趣向を凝らそうという訳か?)」
少女「衣服をお預かりしますのでお側に寄りまするがよろしいでしょうか?」
南の王「…良いとも?苦しゅうないぞ?」ニコッ
少女「では…失礼します」スッスッ
南の王「……そちは手慣れておるな。前にも呼ばれたか?」ヌギヌギ
少女「いえ…初にございます」サッ
南の王「ふっ…なかなか…いや、悪くない」ジッ
少女「は?」
南の王「ハハハ!」ガバッ
少女「えっ…?」ドサッ
南の王「」ムチュッ レロレロ
少女「んっ…んぅ…んぐぅ!」ジタバタ
南の王「ぷはぁっ…はぁっ…」ゴソゴソ
少女「……」
南の王「ぶっ…!」ウプッ
少女「んふふ…?」ニタァァァ
98: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 22:13:02 ID:YUaqlqK50k
南の王「ごっ…ぼへっ!ぶぇぇああぁぁ……かぁぁあっ…!」ゴボッゴボッ
少女「きったな…」ボチョッ ビチャビチャ
南の王「っ〜〜〜!!」バタッ
少女「ふぅぅ…まさかいきなり押し倒されて強引に口吸いの洗礼を受けるとはねぇ。びっくりしちゃったよ」ムクッ
南の王「あぁぁぁっ…かっ……」ギロッ
少女「そんな目で見られてもねぇ?毒まみれの化け物の舌なんかべちゃべちゃ舐めるからだよ?ばっちぃなぁ?」
南の王「(呼吸が…できない…!?)」パクパク
少女「もうちょっと我慢すれば楽に殺してあげたんだよぉ?恨むなら自分さね?」バッ ベリベリ
パサッ
南の王「(!? ばげ…もの……)」フッ
魔導師「さぁてと…シャルウィン特製の変装道具で姿を眩ませるとするかねぇ…?やっぱり衛兵が一番、怪しまれないかなぁ…?」ゴソゴソ
魔導師「あ、借りたドレスは脱ぎ捨てよ。どうせもう使わないし?」ヌギヌギ
南の王「」ピクッピクッ
魔導師「それにしても…ほんとに毎夜、快楽に興じてたのかねぇ?
君の口吸いさぁ、正直、乱暴でヘタだったよぉ?」ジーッ
魔導師「女王の口付けはもっと優しくてイイところに導いてくれる?
ちょっと中和薬の匂いが濃いけど…んふふふふ!してほしいなぁ?」ボーッ
カツンカツン カツンカツン
魔導師「さてさて、さてさて、さてさてと…次は"東"か。忙しいよねぇ…」カツンカツン
99: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 22:16:16 ID:T0csLKu60c
>>80
リアタイ支援されてしまった!感謝するしかない!
感謝感謝感謝感謝感謝感謝感激!!!
支援ありがとうございますw
100: 名無しさん@読者の声:2015/8/25(火) 09:56:08 ID:QUkGXcOYqo
南の王は魔導師の生着替えを見たのかどうか…それが問題だ。見たんならちょっとそこ変われこのペドヤロー!w
CCCC
973.18 KBytes
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