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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編その2】
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:00:58 ID:/WYEXwH6vk
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-10

1スレ(少年「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1385288769/1-10

2スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1416136192/1-10

3スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】)

あらすじはそれぞれの1参照(考えるのがめんどくかったんです。ごめんなさい)

>>2から本編になります!


121: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:14:24 ID:yaXDMG2LZo
ヒメ「…ラフテン王子」

ラフテン「ん?」

ヒメ「貴方の考える王とは何か聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」

ラフテン「王のなんたるか…?」

ヒメ「はい。貴方はどういった王になりたいのですか?」

ラフテン「なぜそんな事が気になるのか理解に苦しむが…面白い問いだ?」ニヤァァァ

ヒメ「……」

ラフテン「私の思う王とは偉大で!高潔で!誰もが平伏す圧倒的な存在感を放ち、一声で全てを思うままに動かせる!」

ラフテン「謂わば全知全能の神!私の描く王とは下々の民を支配し、天高く君臨する神の化身である!!」

政務官「(な、なんと幼稚な…!?)」

顧問官「……」

ヒメ「分かりました…。ではローレン王子は?」

ローレン「」ピクッ

ラフテン「お〜…!?王の座を降りるとぬかす弱者に聞く必要があるのかね…!?」ビキィッ

ヒメ「どちらが王となるかは明日になるまで分かりません」

ラフテン「言うねぇ〜…!?雛鳥クン…!?」ビキビキィッ
122: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:14:47 ID:tkZwUH.J0s
ヒメ「お聞かせ願えますか?ローレン王子?」

ローレン「先ほど話した通りだ…。俺は王になどなりたくない」

ヒメ「では見解で構いません。貴方にとってお父君はどういう存在でしたか?」

ローレン「…一言で言えば狂ってる。我が子を殺し合わせる為に宮廷の女共を無差別に孕ませ、我関せずとばかりに淡々と役目をまっとうしていたのだから」

ラフテン「これだから下級官族の坊っちゃんは…?
伝統あるしきたりに難を示すなど愚の極みだよ?」シラー

ローレン「…下級官族の母に宿された。それが唯一の幸と言えるか」

ラフテン「あ…?」

ローレン「兄上らが謀略と殺戮の渦中にあった中で力を持たぬ家系であった俺は身を隠して学ぶ時間を貰えた」

ラフテン「何をだ…?」

ローレン「王などという下らぬ地位に踊らされた醜い馬鹿連中を相手にするよりも…己を高める方がよほど有意義であるとな?」

ラフテン「アァ〜…!?」ブチィッ

ローレン「どうぞ王座を占領してくれ?何も持たぬ兄上にこそ偽りの冠が相応しい?」

ラフテン「君にユーモアの才能があったとは意外だよ…!笑わせてくれるじゃないか!?」ガタッ

顧問官「落ち着かれよ!慰問に訪れて下さった客人を前に言い合いなど見苦しい!」

ラフテン「ッ…!」ドカッ
123: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:17:44 ID:tkZwUH.J0s
ヒメ「お二方の思う王とは何か…よく分かりました。お答えくださり、ありがとうございます」

ラフテン「で、つまらぬ雑談もほどほどに…貴様はなんの目的があって我々への謁見を求めた?」ギョロッ

ヒメ「…ラフテン王子、ローレン王子、共に関わる重大な事実をお伝えに参りました」

ラフテン「ほぉ〜う?」ニヤッ

ローレン「……?」

顧問官「その事実とは…?」

ヒメ「…此度の暗殺騒動、裏で絵を描いていた首謀者の正体を掴みました」

ローレン「」ピクッ

ラフテン「……?」

顧問官「なんだとぉ!?」

政務官「我々は東の国に赴き、ほぼ同時期に起こった国王の不審死について真相を突き止め、全容を理解しております。
この度、慰問といった形で南の国に訪れてはおりますが…その目的は真実をありのままに話し、そちらの対応をお聞かせ願えたらといった次第です」

顧問官「それが本当だとして…なぜ東国と南国で起きた騒動が同様の物だと言える?」

ヒメ「…遺体の口元、もしくは口内に異変はありませんでしたか?」

顧問官「……!?」

ヒメ「あったんですね?」
124: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:18:08 ID:tkZwUH.J0s
顧問官「なぜ無関係の貴方がそのような予測を立てられる…?」

ヒメ「その暗殺者は一度、我が国にも侵入していますので…」

顧問官「…よもや国王殿の放った刺客ではございますまいな?」ギロッ

ヒメ「だとしたらわざわざ自ら危険を犯してまで敵地に足を踏み入れる意味がありますか?」

顧問官「…我々には計り得ぬ企みをお持ちやもしれませぬ」

政務官「聞き捨てなりませんな?」ギロッ

近衛兵's「」ザザッ

顧問官「…なんじゃい?」ギロッ

南の衛兵's「」ザザッ

ヒメ「おいっ…」

ラフテン「ハハハハハハハ!!!」ゲラゲラ

ザワッ

政務官「は…?」ポカーン

顧問官「王子…!?」

ラフテン「面白い!面白い!雛鳥クン!君は素晴らしいよ!?」ニヤニヤ

ヒメ「…どうも」

ラフテン「鬼が出るか蛇が出るか…事の真相とやらを聞こうじゃないか?」ニヤニヤ

ヒメ「…ではお話させていただきます」
125: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:20:17 ID:yaXDMG2LZo
顧問官「西の国が…一連の事件を仕組んだだと?」

ラフテン「魔性のファルージャかぁ…」ニヤッ

ローレン「……」

ヒメ「勘の良い皆様方であれば…既に王国と西国の間に亀裂が生じていることも察しておられるでしょう?」

ラフテン「君も狙われたと言うのかい?」

ヒメ「いえ、狙われたのは僕ではありません」

ラフテン「他に誰がいる?」

ヒメ「救い主をご存知ですか?」

ラフテン「知っているとも?王国滅亡の危機とまで囁かれた教団による大規模な反乱…あれを治めた功労者である偉大なホビットであろう?」ニヤニヤ

顧問官「もしや…?」

政務官「狙われたのは救い主です」

顧問官「……!?」

ラフテン「分かる。分かるなぁ〜?ファルージャ女王はやはり私と馬が合いそうだ?」

ヒメ「ラフテン王子も救い主に興味がおありですか…?」

ラフテン「あぁ、実は個人的に収集していてね。美しく装飾してやったホビット共を腐らせぬよう保管しているのだ?」

ヒメ「……」

ラフテン「噂に聞くが救い主は絶世の美男子であるそうだねぇ〜?そこんとこどうなんだい?」ニヤァァァ

ヒメ「さぁ…審美眼は人それぞれですから」

ラフテン「過去、親類縁者に至るまで八つ裂きにし、奪い尽くしてやった王子共の豪奢な飾りが似合うだろうか…?」ニヤニヤ

ヒメ「どうでしょうね」サラリ

ラフテン「ファルージャ女王は美に妥協がないと言うだけあって凄まじい色香をお持ちらしい…?
救い主とファルージャ…なんと美しく羨ましい組み合わせか?
そこに是非、私も交えていただきたいものだ?」ニヤニヤ

ヒメ「救い主は現在、行方不明です。所在は僕でさえ分かっておりません」

ラフテン「おためごかしは聞こえないよ?雛鳥クン?」

ヒメ「存じ上げない事柄についてはお答えしかねます」

ラフテン「…カッ!つまらない?」ドカッ
126: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:21:39 ID:yaXDMG2LZo
顧問官「今の話が真実であるとするならば…我々も相応の対策を講じねばなりますまい」

ラフテン「父上の仇か…。と言っても王座を狙う私にとっては都合が良い?」

顧問官「なっ…!?」カッ

ラフテン「もちろん冗談だとも?本気にするなよ?」ニヤニヤ

顧問官「非常識な発言は控えなされ!」

ラフテン「やかましい爺やだ…?で、それを聞かせて君たちは何を望む?」

ヒメ「王国、東国と盟を結び、連合軍を名乗っていただきたい」

ラフテン「はぁ…?」

顧問官「連合軍だと…!?」

ヒメ「これ以上、平和の名の下にある6国を西国の策略に溺れさせる訳には参りません。3国で武力を掲げ、西国に警告を促すのです!」

ラフテン「警告?」

ヒメ「各国、それぞれの要求に応じなくば…武力行使を開始すると告げます!」

顧問官「要求とは…?」

ヒメ「我が王国からは一切手を退いてもらい、東国から拐った民を返還させます」

顧問官「我が国はどうする…!?王を殺されたとなれば…報復は欠かせんぞ!?」

ヒメ「…しかしラフテン王子もローレン王子もそれは望まれていない」

ラフテン「いかにも?」

ローレン「……」

顧問官「汚名を着たままどう落とし処を着けろと!?」

ヒメ「…西国の領地を一部没収といった案はいかがでしょう?」

ラフテン「…どこを?」

ヒメ「西の鉱石財源です」

ラフテン「……!」

顧問官「……!?」

ローレン「……」

政務官「(ば、バカな…!そんな要求…まかり通る訳がない!?)」
127: スライム:2015/8/26(水) 22:22:16 ID:yaXDMG2LZo
顧問官「せめて現実的な意見を出していただこう。ヒメ国王…!」ギリッ

ヒメ「現実的ではないと?」

顧問官「そのような馬鹿げた要求を呑む国などあるかっ!?」ダンッ

政務官「(至極真っ当な意見だ…!)」

ラフテン「そう興奮するなよ。爺や?」

顧問官「これが怒鳴らずにいられるかぁっ!?」

ラフテン「ここまでの経緯はあくまでも雛鳥クンの推測…証拠も何もない空論だよ?」

顧問官「そ、それはそうじゃが…!」

ラフテン「ところで爺や、何か忘れてないかい?」

顧問官「は…?」

ラフテン「誰に口を聞いてるか分かってんのか?俺を敬えよ?」ギョロッ

顧問官「」ビクッ

ザワザワ ザワザワ

顧問官「も、申し訳ございませぬ…」ペコッ

ラフテン「よかろう?私は心が広いからな?」

ヒメ「さすが王を志すラフテン様は器が大きくていらっしゃいますね?」

ラフテン「なかなか見所があるじゃないか?雛鳥クン!」

ヒメ「とんでもない…?」クスッ

ラフテン「恐ろしいねぇ…。親子ほど歳の離れたお坊っちゃまが…まさかこんな際どい手に打って出るとは?」

ヒメ「お気付きでしたか?」

ローレン「…ヒメ殿の要求を受けた西国は八方塞がりとなるな」

ラフテン「お〜!冴えてるねぇ、ローレンくん?」ニヤッ

顧問官「…どういうことだ?」
128: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:23:04 ID:tkZwUH.J0s
ラフテン「西の鉱石財源は我が国を含めた4つの平和協定加盟国に壌土すると明言されている?
つまり…ここで我が国が先ほどの要求を出したとなると西国からしてみれば、どちらとの約束も果たせなくなってしまう訳だよ?」

顧問官「……そ、そうか!分かりましたぞ!」

政務官「連合軍の要求を呑めば残りの加盟国との約束を果たせず敵対することになる…。
だが要求を断れば3国連合軍と争うことになる…。どちらを取っても圧倒的不利は免れない…!」

ローレン「だがそれを実行するには確証が要るのでは…?」

ヒメ「不要です」

ローレン「なに…?」

ラフテン「東、南、王国の3国で拡散すればいいじゃないか?」

顧問官「か、確たる証拠もないのにですか…!?」

ラフテン「所詮、内輪の話だ?そこまで気にはせんだろ?」

顧問官「だ、だが…もし暴かれたらどうなさるおつもりで!?」

ラフテン「暴かせなければ良い。嘘から出た真…という言葉もある?」

ローレン「悪知恵を働かせるのは兄上の得意とするところか。貴殿にとっては前向きな展開だな…?」

ヒメ「えぇ、まったくです」

ラフテン「悪知恵ねぇ…?なんであろうと知恵は知恵…賢者の特権だ?」

ヒメ「率直にお伺いします。この話、受けますか?受けませんか?」

ラフテン「いいんじゃないか?」

ローレン「…兄上の好きになさればいい」

顧問官「真相はともかく…騒動も決着し、南国の武勇を高め、西国の鉱山を手中に納められると言うのなら決して悪い話ではない」

ヒメ「聞き入れてくださり、ありがとうございます」ペコッ
129: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:24:32 ID:tkZwUH.J0s
顧問官「いくつか確認がございます?」

ヒメ「はい?」

顧問官「我が南国の要求を西の鉱山地帯一画とするならば…当然、全て我が国に壌土されるのでありましょうな?」

ヒメ「もちろんです。権利的主張を掲げていただく南国には最も政略に尽くしてもらわねばなりませんから…。
3国共同で要求を勝ち取った場合においてもそれぞれの国に要求通りの分配をさせていただきます」

顧問官「承知しました。ではもう一つ…」

ヒメ「はい」

顧問官「東国は王を失い、指定された世継ぎもおられぬと聞き及んでおります。
一体どのようにして指揮を執っていかれるおつもりか?」

ヒメ「…向こうの宰相殿にお願いしようかと思っております」

顧問官「……」

ヒメ「ご安心ください。東国は信頼の置ける国ですので?」

顧問官「委細、承知しました。ではまた改めて場を設けましょう」

ヒメ「よろしくお願いいたします」ペコッ

ラフテン「ま、物騒な話はこれくらいにして明日に備えるとしようかね…」ニヤニヤ

ローレン「……」

顧問官「ヒメ国王、ならびに家臣の皆様には城内に客室を用意させていただいております。
案内人を付けますので、どうぞ遠慮なくおくつろぎください」
130: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:26:34 ID:tkZwUH.J0s
―――南の城(客室)―――

ヒメ「……」ポフッ

コンコン コンコン

ヒメ「…なんだ?」

「リルラです。入ってもよろしいでしょうか?」

ヒメ「あぁ」

ガチャッ

政務官「…失礼します」バタンッ

ヒメ「どうした?」

政務官「事前にお伺いさせていただきたい」

ヒメ「…?」

政務官「今回、取られた策は…貴方らしいと思えませんな」

ヒメ「多少、強引に押し進めたのは自覚してるけどしょうがないだろ…?
人格者に見えたあの南の国王の治める国の内情がこんな歪んだ物だったなんて思わなかったんだ?」

政務官「いえ、話の流れ自体は見事でした。
あのような相手に取り乱さず、淡々と冷静に対応なさっていたのですから」

ヒメ「…じゃあ何がいけなかったんだ?」

政務官「本気で戦争をなさる覚悟があるのか…?」

ヒメ「反対か?」

政務官「いえ、賛成です。こうなる日が来る事は分かっておりました」

ヒメ「…そうか」
131: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:26:57 ID:tkZwUH.J0s
政務官「私がお伺いしたいのは陛下の決意が本物であるかどうか…?」

ヒメ「分からない…」

政務官「は…?」

ヒメ「それが正しいとは思えないし、間違っているとも断言出来ない…」

政務官「…生半可な覚悟で乗り切れるほど易い決断ではございませんぞ」

ヒメ「そうなってみるまで分からないよ…」

政務官「うぅむ……」

ヒメ「僕は戦争なんてしたくない。多くの者が平穏を望んでる事も知ってる…。
だけど…そうしないとまた東の国のような犠牲が産まれる」

政務官「……」

ヒメ「だから…やるしかない。それだけは分かってる」シュン

政務官「…ならば私から申し上げる事はございません。今の言葉を忘れず、胸に刻んでおいてください」

ヒメ「…あぁ」
132: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:28:02 ID:yaXDMG2LZo
コンコン コンコン

政務官「…誰だ!?」バッ

「ローレン王子が陛下にお目通し願いたいと参られましたが…いかがなさいますか?」

政務官「ローレン王子が…?」

ヒメ「通せ!」

「許可が降りました!どうぞお入りください!」

ガチャッ

ローレン「失礼する…」スタスタ

政務官「(供を連れていないのか…?)」

ヒメ「…どうしました?」ジッ

ローレン「貴殿に頼みがある…」

ヒメ「は?」

ローレン「俺を匿ってくれないか?」

政務官「匿う…?」

ヒメ「ラフテン王子の刺客から…ですか?」

ローレン「そうだ…。さすがに地位ある客人を前に仕掛けてはこないだろう…?」

ヒメ「しかし、ここにいても明日になれば…」

ローレン「あぁ、俺は殺される」

政務官「!?」

ローレン「だが…易々と殺されてやる気はない」

ヒメ「何か手を打ってあるのですか?」

ローレン「いや、何も…?」

ヒメ「……?」
133: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:30:26 ID:yaXDMG2LZo
ローレン「ラフテンは今夜、確実に仕留めにくるだろう。
しかし俺は明日の王位継承の儀まで生き延びなければならない…」

政務官「大変申し上げにくいのだが…」ザッ

ローレン「……」

政務官「我々は他国民です。そちらの御家騒動に巻き込まれる筋合いはございません」

ローレン「俺に恩を売って損はないぞ…」

政務官「ほう…?どのような見返りが望めると?」

ローレン「貴殿らは我が南国を取り込み、西の国を打倒したいのであろうが…?」

政務官「いかにもその通りです」

ローレン「では明日、王となる俺を邪険にするなど言語道断だ…。能無しが…」ボソッ

政務官「は!?」イラッ

ヒメ「…ローレン王子、貴方は王の座を降りたのでは?」

ローレン「表向きはな…?」

ヒメ「表向き…?真意は別にあると?」

ローレン「王位になど興味はないが…死ねない理由がある」

ヒメ「……?」

ローレン「城下に残した妹がいるんだ…」

ヒメ「妹…?」

ローレン「俺は元々、城下に住んでいた。身分の低い母は俺と妹を守る為に市民に紛れさせたのさ…?」

ヒメ「……嘘でしょう?」

ローレン「意外にも勘が鋭いんだな…。激情型だと聞いていたが先ほどのやり取りからしても…どうやらそうではないらしい?」

ヒメ「…それほどでも」

ローレン「あぁ嘘だよ。そんなのがいれば、とうに人質に取られるか、殺されるかしてるさ…?」

ヒメ「……」

ローレン「断るなら居座ってやるまでだ…」
134: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:32:15 ID:tkZwUH.J0s
ヒメ「急に申されましても…困ります」

ローレン「ならば追い出してみろよ…?」

政務官「なんですと…!?」

ローレン「腕付くでも構わないぞ…?」

ヒメ「…ご冗談を?」

ローレン「冗談に聞こえたか…?」ジッ

ヒメ「やめましょう?二回り以上、年下の僕に勝負を挑むなんて不毛ですよ…?」

ローレン「そうか…?貴殿からは年に見合わない武の才が窺えるがな…?」ジロジロ

ヒメ「滅相も…?」

ローレン「気に入らないな…」

ヒメ「何がです?」

ローレン「その余裕はなんだ…?俺を見下しているのか…?」

ヒメ「態度がお気に召さなければ謝罪を…ですが見下してなどいないとだけ先に申し上げておきます」

政務官「先ほどから聞いていれば…とても物を頼む言い方ではありませんな?」

ローレン「なんだ、能無し…?」

政務官「ぐっ…!」ムカァッ
135: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:33:38 ID:tkZwUH.J0s
ヒメ「分かりました…。一晩、ここにいてもらって構いませんよ。それでいいですね?」

ローレン「あぁ…それでいい」

政務官「お、お待ちください!部屋を提供していただいてる身で不躾とは存じますが…。
ほぼ初対面のローレン王子とヒメ様を二人きりになどさせられません!」

ローレン「そちらの都合は聞かん…。心配なら護衛でも付ければいい…」

ヒメ「その必要はありません。寝る為だけの部屋に大人数でいるのも落ち着きませんしね?」

政務官「はぁっ…!?」

ヒメ「リルラ、おまえは自分の客室に戻れ」

政務官「し、しかし…」

ヒメ「くどいぞ?」ジロッ

政務官「……かしこまりました」シブシブ

ヒメ「それではローレン王子…夜も長い事ですし明け方まで何か楽しい話でもしましょうか?」ニコッ

ローレン「あぁ…ゆるりと語らおう?」ニヤッ

政務官「(…付近の護衛を増強しておくか)」
136: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:35:29 ID:tkZwUH.J0s
〜〜〜朝〜〜〜

―――客室―――

ザザッ ジャキッ

親衛隊「」ギランッ

政務官「くっ…は、離せ!なぜ…!?」グッ

近衛兵's「も、申し訳ありません!陛下ぁ!?」ググッ

ヒメ「……」

ローレン「……」

ラフテン「ぃやあ!良い朝だね?目覚めに紅茶でもいかがかな?」ニヤニヤ

ヒメ「これはどういう事でしょうか?ラフテン王子?」

ラフテン「ラフテン"国王"だ?口の聞き方に気を付けたまえ?」ニヤニヤ

ヒメ「…まだ継承式も始まっていませんよ?」

ラフテン「すぐ始めるさ?君の隣の邪魔者を始末したらね?」

ローレン「……」

ラフテン「しっかしローレンくんと雛鳥クンが同じ部屋で夜を共にしているなんて…随分と仲が良いんだねぇ?愛でも芽生えてしまったのかい?」ニヤニヤ

ヒメ「説明してください。これはなんですか…?」

ラフテン「処刑さ?王位奪取を目論む不届き者は断罪せねばならない?」

ローレン「…兄上、いったいなんの話だ?」

ラフテン「貴様を取り巻く役人に追及してやったら…なんとも笑える計画を聞かされたよ?」

ローレン「……!」

ラフテン「なぁ、爺や?」

顧問官「…見損ないましたぞ。ローレン王子」ザッ

ヒメ「え…?」チラッ

ローレン「……」
137: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:37:03 ID:tkZwUH.J0s
ラフテン「父上を殺したのが君だったとはなぁ?」ニヤッ

ローレン「潜伏させていた家臣らを尋問したのか…?」

顧問官「全て聞き出しましたぞ!王位継承の儀に移る時を見計らい、民衆の面前でラフテン王子を殺害しようと計画していたそうですな!」

ラフテン「しかも我が国の兵力を手土産に西の国に寝返ろうとしたそうじゃないか?なかなか大胆な事をするねぇ…?」ニヤニヤ

政務官「わ、我々には関係ないだろう!ヒメ様を避難させろ!?」

ラフテン「関係ない?国王殺しの反逆者を匿っておいてかい?」

政務官「な、な、な……で、ですからお止めしたではありませぬか!?」ブルッ

ヒメ「…ローレン王子、今の話は本当ですか?」

ローレン「……」

ヒメ「もし本当であったなら…まさか東の国王の暗殺にも関わっていたんじゃ…?」

ローレン「俺には…夢があった」

ヒメ「?」

ローレン「だが王族などに生まれてしまったおかげで無意味な争奪に組み込まれ、俺の夢はあっさり絶たれた…」

ラフテン「カッ!バカだねぇ、君は?王になればいくらでも好きに振る舞えるじゃないか?」

ローレン「……」
138: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:37:43 ID:tkZwUH.J0s
ローレン「母は身分の低さ故に自らの無力さを悟っておられた。だから俺を親類に預けて城から離れさせた…」

ローレン「何も知らずに育った俺は叔父夫婦が付けた師範に無理やり剣を叩き込まれ、政治や軍事について学ばされた…」

ローレン「そうして稽古と勉学に明け暮れていると…いつしか俺は周囲との違いに気付いた」

ローレン「同年代で剣術を嗜む平民の子などいない…。政治経済、軍略に明るい大人もいない…」

ローレン「自分の存在に違和感を感じた時、叔父から真実を告げられた…」

ローレン「…そして城に行き、王位を取り戻すよう命じられた。
叔父夫婦は俺を王に就かせ、国王の親として城で贅沢に暮らしたかったのだろう」

ローレン「だがその頃にはもう…軍に所属し、軍師を目指したいという夢があった。
どうせ俺が血筋である証拠もない。叔父夫婦には悪いが…説得して軍に入ろうと考えた」

ローレン「だが時すでに遅く、叔父夫婦は城に赴き、俺の存在を打ち明けてしまった…。
王族を城下に匿った重罪人として叔父夫婦は処刑、俺は城に戻され、王子と呼ばれるようになった…」

ローレン「腕には覚えがある。度重なる暗殺や謀略の手は剣一つで振り払った…」

ローレン「父上に説明し、王子の位を解いてもらおうともしたが親父殿は聞き入れてくださらず…醜い争いの渦中で身を守り、堪え忍ぶしかなかった」

ローレン「…だがそれだけでは終わらなかった。
平民時代の友人達が次々に殺され、懐かしい顔ぶれが首一本になって俺に宛がわれた宮殿に飾られた」

ローレン「…貴様の仕業だろう。兄上?」

ラフテン「ふぁぁ〜…話が長いなぁ?」アクビ

ヒメ「……!」

ローレン「なぁ、ヒメ国王…。昨夜、妹がいると言ったよな?」

ヒメ「はい…」

ローレン「実は半分、本当だ。血の繋がりはないが叔父夫婦の間に出来た小さな、小さな妹…。
彼女は叔父夫婦が処刑された後、商館に拾われてな。幼くして身寄りなき孤児に堕ち、辛い環境下で働いていた…」

ヒメ「……」

ローレン「いずれ地位を手に入れ、迎えに行こう…。そう考えていた矢先に妹は…城に招かれ、父上の夜伽役に選ばれた」

ローレン「12才だった穢れない妹は…無理な性交渉を受け入れられず、ほどなくして自殺した」

ヒメ「(せ、性交渉って…い、いや意識するのはそこじゃない!)」ブンブン

政務官「(じゅ、13歳のヒメ様になんという話を…!?)」
139: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:38:32 ID:tkZwUH.J0s
ラフテン「ぃやあ、可哀想になぁ〜?ほとんど聞いてなかったが同情するよ?」

顧問官「ラフテン王子!早くこの逆賊を始末なされ!」

ラフテン「親衛隊長?」クイッ

親衛隊長「」ビュバッ

バシュッ

ヒメ「……!?」

政務官「あぁ…!?」

顧問官「ぐ…ぶふっ」ドサッ

ラフテン「偉そうに命令するなよ?クソジジイ?」ギョロッ

顧問官「ぉ…のれ…ラ…フテ……ン」フッ

ヒメ「いい加減に…!!」カッ

ローレン「これが南の国だ。ヒメ国王」

ヒメ「は…!?」

ローレン「表向きは誠実な王が仕切る穏やかな国…だが現実はこうだ?」

ラフテン「さて、そろそろ終わりにしないかい?ローレンくん?」ニヤッ

ローレン「西の悪魔に魂を売ってでも…歪んだ王族を滅ぼさなければならなかった」

ヒメ「ローレン王子は最初から…お父君とラフテン王子を始末する為に動いていたのですか?」

ローレン「内部で絶大な権力を誇る父上とラフテンに抗う術はない…。強大な外部の力が必要だったんだ」

ヒメ「……」

ローレン「俺は孤独だ。親類縁者、誰一人として残っていない…。
西の国に亡命し、魔性のファルージャの手先になってでも…こいつらを殺したかった」

ラフテン「惜しかったねぇ?しっかり家臣達を管理していれば上手くいったかもしれないのに?」ニヤニヤ

ローレン「……」
140: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/26(水) 22:39:31 ID:tkZwUH.J0s
ラフテン「さぁ?死んでもらおうか?」

親衛隊「」ザザザッ

政務官「ひ、ヒメ様に刃を向けるとは何事かぁっ!?」ジタバタ

ヒメ「(くそっ…団長がいれば…!やっぱり長期休暇なんて取らせるんじゃなかった!)」ギリッ

ローレン「」ガシッ チャキッ

ヒメ「へ!?」グンッ

政務官「ヒメ様ぁっ!?」

ラフテン「ほぉ〜う?まだ悪あがきするのかい?ローレンくん?」ニヤニヤ

ローレン「寄るな…!ヒメ国王が命を落とせば国際問題に発展するぞ…」ギランッ

ヒメ「」ゴクリ

ラフテン「ならばヒメ国王の首を手土産に西の国と盟でも結ぶかな?」

ローレン「なに…!?」

ラフテン「私は最初からどっちでもよかったんだよ?王国でも…西の国でも?」

ヒメ「そんな…!?」

ラフテン「ここで雛鳥クンが死ねば東国も王国も国王不在で統制が効かなくなる?
西の国と対等な条件で組み、王国、東国、共に侵略してしまった方が楽な上に得なのは明らか?」

政務官「き、貴様ぁ…!!」ワナワナ

ラフテン「無闇に他国の事情に首を突っ込むのが悪いんだよ?クハハハハハ!!!」ゲラゲラ

ヒメ「……!」

ラフテン「王国を侵略した暁には救い主を我がコレクションに加えさせてもらうかなぁ?」ニヤァァァ

ヒメ「なっ…!?」キッ
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うpろだ
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