男「あれ?何してたんだっけ?…なんで此処に居たんだっけ?」
住宅街の路地にポツリと立つ青年。見たところ、学生のようだ。
辺りを見渡しても、まるで自分以外の人間が魔法にでも掛けられたかのように姿を見せない。
灰色に染まった空は雨を降らせてパタパタと音を立てながらアスファルトを濡らしていく。
男「うわ!財布の中身散乱してるし!お札が濡れる!」
散乱しているお金を慌てて掻き集め、乱暴に財布に押し込んだ。
227: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/19(土) 01:03:10 ID:JPOJYwW2Gc
少ないですが今日は此処までとさせて頂きます。
もうすぐ完結なのに今更ですが、ちゃんと説明出来ているか不安です。大丈夫でしょうか…?
読んで下さってありがとうございます!ラストに向かって一直線!
228: 名無しさん@読者の声:2011/11/19(土) 01:11:01 ID:GZrvr4lBv2
説明出来すぎてて毎回胸が苦しいわ(´;ω;)
なんでこんなに切ないの!!男もめぐも少女もなんでこんなに悲しい出会いなの!!
1なんかこれでもくらえCCCCCCCCCCCCC
229: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/19(土) 19:48:24 ID:crm30tAqEA
>>228
支援ありがとうございます!
くらいました…C);ω;`)
そのように受け取って頂けて、ちゃんと伝えられているのだと思うと本当に嬉しいです。
めぐにとっても少女にとっても、男に出会った事が全ての始まりでした。悲しい物語にするつもりはないのですが、どうにも暗いお話になってしまいますね…。
全てはこの題名と失くしたものの為に構成されています。もう答えは出ているようなものですが、最後まで見守って頂けると幸いです。
登場人物を思って胸を痛めて下さって本当にありがとうございます。頑張ります(`・ω・´)
230: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 21:44:09 ID:Z9KqQjIU/k
めぐ「………っ」
真っ直ぐな青年の瞳から逃げるように、めぐは唇を噛み締めて俯いた。
この期に及んでもなお、青年を消したくない自分が居る。忘れてしまいたくない自分が居る。
青年が傍に居るだけで全てが満たされた気がした。罪の償いなど忘れてしまう程に、めぐの胸は温もりで満たされていた。
彼が消えずに済むのなら、自分が消えてしまう事さえ厭わないと思えた。
この気持ちを何と呼ぶのか、めぐには分からなかった──。
231: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 22:21:52 ID:HMJYUJcabU
男「めぐ」
めぐは左右に首を振っている。
手で耳を塞いで、青年の声を聞こうとしない。
男「めぐ!」
めぐ「……!」
青年はめぐの手を掴むと声を荒げた。
めぐの黒目がちな瞳には、今にも泣き出しそうな青年が映り込んでいる。
232: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 23:03:21 ID:pIgPmzpxL2
男「──好きだよ、めぐ。お前の事が好きだ」
めぐははっと息を飲んだ。
溢れ出す感情は、もう青年を止める事が出来ない。
男「…輪廻転生なんて信じてなかったけど、まためぐに会えるなら信じれる」
めぐ「男……」
男「何度生まれ変わっても、待ってるから。必ずめぐを見付けてみせるから。だから…」
233: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 23:31:06 ID:pIgPmzpxL2
めぐ「…ボクも、ボクも絶対に男を見付けるっ…」
めぐの両手が瞼に押しあてられる。
押し付けられた両の手はめぐの涙を止める事は出来ず、その隙間から溢れ出させた。
めぐ「ボクが見付けてみせるから…!!」
男「めぐ…」
青年の手がそっとめぐのそれに触れた。解かれた手がめぐの涙に濡れた表情を露にする。
その刹那、めぐの唇に柔らかいものが触れた。温かくて柔らかいそれは、青年の唇。
ゆっくりと閉じられためぐの瞳から、涙が止まる事はなかった。
234: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/20(日) 23:36:35 ID:HMJYUJcabU
今日は此処までとさせて頂きます。
余談なんですが、私はこのSSを書くにあたって紙に流れをざざっと殴り書きしてからある程度文章を作って手直ししつつ投下、という面倒な事をしています。
が、
その流れを殴り書きした紙を何処かにやってしまい、家族に見付かっていないかハラハラしている所存ですwそして、書き溜めしようにもいまいち納得がいかない感じの仕上がりな気がして。
なので少ない投下ばかりで本当にすみません。明日で終わるかもしれませんので、宜しくお願いします(`・ω・´)
235: 名無しさん@読者の声:2011/11/20(日) 23:41:31 ID:2eHZTFNahs
乙です!
しかしいい所で焦らすなw
236: 名無しさん@読者の声:2011/11/21(月) 08:08:05 ID:t/3Pct9RoE
だから矛盾せずに回収してけるんだな。1の意識レベルの高さに脱帽だわ。好きです結婚して下さい。
つC
つ婚約指輪
237: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 18:41:53 ID:zp0bIVJqTM
>>235
ありがとうございます!
いい所で焦らせてますか?
と言っても私にはその意図はなく、書き溜めてキリの良い所まで投稿しているだけなのです(`・ω・´)ドヤァ
めぐ「乙って何?」
男「お疲れさまって事だな」
めぐ「男は何でも知ってるね、凄いねー」ニコニコ
少女「君が無知なだけだよ」
めぐ「」イラッ
>>236
支援ありがとうございます!
意識レベルというか、ただの性格と言いますか…直感的ではないのだと思います、私の場合はw
書き溜めがないからこその予想外な展開も素晴らしいものがあると思いますし、実際私が好きなSSの作者様で書き溜めをしていない方もいらっしゃいますし(´ω`)
矛盾せずに回収出来ているというのは本当に嬉しいです!それなりに疑問に思われていた事が少なからず解消されていると思うと、それはもう…!
ちょ、最後の一文wそんな事を言って頂けて嬉しいやら照れ臭いやら…(*´・ω・`*)
238: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 20:55:55 ID:owdFNQ5OBY
めぐ「何だろう、この気持ち…胸が凄くぽかぽかするの」
男「…?」
めぐは自身の胸に手を当てて首を傾げた。ずっと前からあったような懐かしい温もりを感じる。
めぐ「前にも男にしたんだ、これ。男が寝てる時に、ちゅって」
男「えぇ!?」
顔を真っ赤に染めた青年は思わず口元を押さえた。
めぐ「その時は凄く苦しくてぎゅってなった。でも、今は凄くぽかぽかするの」
めぐの頬がほんのりとピンク色に染まる。胸の奥にある確かな温もりが、解放してくれとめぐにせがんでいる。
239: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 21:29:02 ID:owdFNQ5OBY
めぐ「男、だいすき。ボクも男がだいすきだよ。だけど、このぽかぽかしたのはだいすきよりも、もっと…」
男「もっと?」
めぐ「男といると苦しくてあったかいの。なんでかなあ?だいすきと、何が違うのかなあ?」
首を傾げるめぐを前に、男の頬は紅潮する。ああ、と頷いて照れ臭そうに頭を掻くと、視線を横へと外した。
男「あー…うん、アレだ。“愛してる”って言うんだ、こういう時は」
240: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 21:48:49 ID:zp0bIVJqTM
めぐ「あい、してる…?」
怪訝の色に曇るめぐの目は開かれ、潤んだ瞳に反射するようにゆっくりと輝きを取り戻していく。
パズルのピースが嵌るように、めぐの中で確かになっていくそれは、まさにめぐが探しているものだった。
めぐ「あいしてる…あいしてる!男、あいしてる!!」
男「うん…?え?」
青年の頭に浮かぶクエスチョンマークを弾くように、めぐは“愛してる”を繰り返した。
241: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 22:09:11 ID:owdFNQ5OBY
めぐ「見付けたんだ、やっと分かった!男、愛してるなんだよ!」
男「な、何が?」
頬の熱も冷めぬまま青年は困惑した。
めぐ「ボクの“失くしたもの”は、愛だ。誰かに愛されるという事、それと─」
青年の目の前にはめぐの笑顔があった。今まで見た事のない、はにかんだ笑顔。
めぐ自身の胸に手を当てて、青年を見つめた。
めぐ「──誰かを愛するという事」
242: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 22:12:15 ID:zp0bIVJqTM
×めぐ自身の胸に手を〜
〇めぐは自身の胸に手を〜
畜生、畜生…!すみません(´;ω;`)
243: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 22:30:13 ID:owdFNQ5OBY
男「……はは、何だ。そうだったのか」
呆然としていた青年の口元は次第に緩み、笑みを零した。
きょとんと首を傾げためぐに、青年は続ける。
男「めぐ、お前の本当の名前は“めぐみ”だ。“愛”と書いて、めぐみ。母親が俺につけようとしてた名前なんだ」
残念ながら生まれたのは男だったけど、と青年は苦笑した。
男「俺が最初にお前に与えたのは、愛(めぐみ)…お前の名前だよ」
244: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 22:48:40 ID:zp0bIVJqTM
めぐ「…あったんだ」
輝きを取り戻しためぐの瞳からは涙が流れている。頬を伝う涙はポロポロと零れ落ち、アスファルトの上で細かく弾けた。
めぐ「最初から、こんなに近くにあったんだ。ボクは愛を貰ってた」
空から降る雨はなく、アスファルトはめぐの涙で色を変えていく。
青年がその涙に触れようと手を伸ばすと、何か温かいものを感じた。
245: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 23:04:28 ID:owdFNQ5OBY
男「何、だ…これ…?」
気が付けば黄金色の粒が二人を包み始めていた。温かく優しいその光の粒が触れる度に、二人の体は色を失って消えていく。
めぐ「さよなら、だね」
男「…また会えるんだよな、俺達」
めぐ「きっと、いつかまた会える。何度でも見付けてみせるよ」
男「だったら…さよならは取り消しだ」
青年の揺れる瞳の中で、半透明のめぐがふわりと笑う。
溢れ出る涙でさえ黄金色の光の粒が飲み込んでいる。
246: ◆b.qRGRPvDc:2011/11/21(月) 23:28:07 ID:owdFNQ5OBY
めぐ「男、」
男「ん?」
めぐ「出会ってくれて、ありがとう」
男「……此方こそ」
めぐは眉を下げて微笑むと、ゆっくりと立ち上がり青年に向かって手を差し出す。
めぐ「お迎えです」
めぐの差し出された手に、男の手が重なった。
言葉に出さなくても伝わってくる。
互いの手が、その熱が、愛していると叫んでいた。
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