姫「ありえないわ。しかも私より可愛いし」
王子「ありがとうございます」
姫「褒めてないから。……あんたちゃんとキンタマついてんの?」
王子「は?」
姫「見せてみなさい」ガバッ
王子「ちょっ、やめ…!うわあああああああぁ」 >>0
531: ◆qoozyz1NgY:2011/11/8(火) 14:35:42 ID:oXJpTUulPQ
────荒原を、ただひたすらに馬に乗って駆けていく。
クレア「……」
クレア「ロイさん、大丈夫ですか?」
先ほどから会話も途絶え、クレアの耳にはただ小さくロイの息切れが聞こえるだけだった。
ロイ「ん…」
クレア「血、止まりませんか?」
ロイ「……応急用の包帯くらいは、持ち歩いてたから。止血できた」
クレア「ホントですか!」
ロイ「あぁ」
532: ◆qoozyz1NgY:2011/11/8(火) 14:38:31 ID:UdCBQzYwOk
クレア「良かった… 私、ロイさんが死んじゃったらどうしようかと」
ロイ「まだ死なねぇよ…」
ロイ「ごほっ、ごほっ」
クレア「そういえば、昨日も咳してましたね。風邪こじらせちゃいましたか」
ロイ「……」
ロイ「……あぁ」
クレアの後ろで、手のひらについた血を眺める。
ロイ「……」
ロイ「……死んで、たまるかよ…」
クレア「何か言いました?」
ロイ「いや、何も」
533: ◆qoozyz1NgY:2011/11/8(火) 14:40:54 ID:9uEahCTKxM
──そのとき。
突如周囲の岩陰から十数人の男たちが飛び出してきた。
クレア「!?」 バッ
馬「ヒヒーン!」
思わず手綱を引いて馬を止める。
野盗1「──ひひ、1日ぶりだなぁ兄ちゃんたち」
クレア「あ、あなたたちは…!」
それは、昨日クレアに絡み、ロイによって懲らしめられていた野盗だった。
野盗2「今度は仲間を連れてきたからなぁ。昨日のようにはいかねぇぜ!」
クレア「っ…」
ジリジリと馬のまわりを囲まれる。
野盗1「散々バカにしやがって。
ブッ殺してやらぁ!」
534: ◆qoozyz1NgY:2011/11/8(火) 14:46:49 ID:KdRzS59wow
ロイ「うぜぇなぁ…」
ロイが剣を握り、馬から降りようとする。
クレア「ろ、ロイさんダメです!ケガしてるんですから降りないでください!」
野盗がニヤリと笑った。
野盗3「こりゃあいい、男の方はケガしてんのかい」
野盗4「がはは、いいリンチになるぜぇ!!」
クレア「ふ、ふざけないで!私たちは急いでるんです!」
キッと睨みつけるが、野盗たちは下賤な笑みを浮かべたまま道を開けようとはしてくれない。
ロイ「……クレア」
クレア「え?」
ロイ「手綱を握れ」
535: ◆qoozyz1NgY:2011/11/8(火) 14:49:34 ID:IsuJYzf34o
次の瞬間、ロイが馬上から大きく剣を振った。
「!?」
血とともに、二人の野盗の首が宙を舞う。
ロイ「クレア!」
クレア「はっ、はいっ!!」 ピシッ
馬「ヒヒーン!」 ダッ
野盗たちが狼狽えた隙に、一気に馬を走らせる。
野盗1「まっ、待ちやがれ!」
野盗2「この野郎…!」
──馬は勢いよく駆け、野盗たちから離れていった。
536: ◆qoozyz1NgY:2011/11/8(火) 14:51:45 ID:YvGSKaKD7o
ロイ「──全く、懲りねぇ奴らだ」
クレア「……」
ロイ「……?」
クレア「……」 ガタガタ
ロイ「……お前、震えてんのか」
クレア「っ!」 ビクッ
ロイ「……」
ロイ「……わり。ちょっと過激なの見せちまったな」
クレア「す…すみません、大丈夫です。ちょっとビックリしちゃっただけで…」
ふ―、と深呼吸をする。
ロイ「クレア…」
クレア「さ、さぁ、だんだん本国に近づいてきましたよ!頑張りましょう!」
ぎこちなく笑って、ピシャリと馬をたたいた。
537: ◆qoozyz1NgY:2011/11/8(火) 18:25:34 ID:JGzeeerFDo
───隣国の軍隊は、予定を早めて祖国を出発。
およそ千人の兵士が、一歩一歩と本国へ近づいていく。
だがそれを、本国の人々は知る由もない。
知っているのは、ただ一人だけ。
その一人と、彼を支える少女が、本国の危険を知らせるために、
走る。
日が暮れ、夜になっても休むことなく、寂れた荒原を走った。
そして運命は、婚約パーティーの前日へ。
538: ◆qoozyz1NgY:2011/11/8(火) 18:28:03 ID:DGaa3FR.z2
姫「──えぇっ!? これ着るの!?」
侍女1「昨日、特注したのが届いたんです!サイズが合うか見なくちゃいけませんからね!」
姫「き、気が早いって!婚約パーティーもまだ終わってないのに…」
侍女2「でも、近いうちに着なきゃいけないものですから」
侍女3「そーそー」
姫「わっ、私はそんなつもりは…!」
侍女1「はいはい、早く着て王子様に見せてあげましょうね〜」
姫「そんな恥ずかしいことできるわけないじゃない!」
侍女3「えーいっ、強行手段!」
ガバッ
姫「きゃー!!」 ジタバタ
539: ◆qoozyz1NgY:2011/11/8(火) 18:29:57 ID:w.7DrG1zg2
──────
王子「……なんか騒がしいですね」
大臣「侍女たちが興奮してるのでしょう」
王子「はは、相変わらずですね」
王「まぁ、アレが届いたからのう」
王子「アレ?」
王「いやいや、何でもない」 グフフ
王「ところで王子よ、明日はいよいよ婚約パーティーだな」
王子「はい」
王「どうだ、この1週間姫と過ごしてみて」
540: ◆qoozyz1NgY:2011/11/8(火) 18:32:02 ID:eaK745q2DQ
王子「……やっと少し、僕に心を開いてくれたみたいです」
王「ほう」
王子「はじめは、こんな女みたいな奴イヤだって、ボロクソ言われてましたから」
王「そういえばそうじゃったのう」
大臣「そう考えると大進歩ですね」
王子「まだ色々悪口言われますけどね」 ハハハ
541: ◆qoozyz1NgY:2011/11/8(火) 18:34:15 ID:LIrhX9.mL.
王「……王子や」
王子「はい」
王「お主は見た目よりもしっかりした奴じゃから、わざわざ言う必要はないと思うが…」
王「──姫を、頼むぞ」
王子「……」
瞳が揺れ、様々な感情が交差する。
王子「──はい」
静かに、答えた。
542: 名無しさん@読者の声:2011/11/8(火) 22:26:28 ID:LMpZijVXKE
っCCCCC
543: 名無しさん@読者の声:2011/11/9(水) 07:14:29 ID:abfFXIg/oE
毎日見てるよ(*^^)つCCCCC
544: ◆LSV2TFho7E:2011/11/9(水) 16:28:40 ID:JGzeeerFDo
馬「ヒヒーン!」 ブルルッブルルッ
クレア「──ロイさん、ロイさんっ!本国が見えてきました!」
ロイ「あぁ。俺の顔を見せればすぐ入国できるから、そのまま城へ向かってくれ」
クレア「わかりましたっ!」
ロイ「あ、あとそれから」
クレア「はい!」
ロイ「……なんか言うタイミングがわからなかったんだけど、」
クレア「?」
ロイ「その… ありがとう」
545: ◆qoozyz1NgY:2011/11/9(水) 16:30:14 ID:E41Ru0zsdI
──────
ワイワイ ガヤガヤ
姫「やだーっ!!絶対行かないっ、恥ずかしいってば!!」
侍女2「何をいまさらっ!すごくお似合いですよ!」
侍女3「さ、早く王間に入ってくださいっ」
姫「サイズ合ったんだからもういいでしょっ」
侍女2「いい加減勘念してください!」
侍女1「お待たせしましたー!姫さまのお着替えが終わりましたっ!」
バタンッ、と勢いよく王間の扉が開けられた。
546: ◆qoozyz1NgY:2011/11/9(水) 16:32:09 ID:GUEAzaQzlA
王子「……!」
入ってきたのは、純白のウエディングドレスを着た姫だった。
姫「っ…」 カアアァ
王「ほう」
大臣「これはこれは…」
侍女1「特注しておいたウエディングドレスでございます。サイズや素材の質も、全く問題ありません」
王「うむ。…似合っておるぞ、姫。父は嬉しい」
大臣「お…幼い頃から姫を見てきた私は、泣いてしまいそうです」
グスッ
547: ◆qoozyz1NgY:2011/11/9(水) 16:35:26 ID:bYbkJjNr/E
姫「た、たかだかウエディングドレスくらいで大袈裟なのよ」
王子「……」
姫「……な、なによ。そんなに見ないでよ」
王子「……すみません、見惚れていました」
姫「ばっ…バカ!あんたそれ、私と初めて会ったときも言ったわよね!今度は嘘ついたってなにも出ないわよ!」
王子「嘘じゃありません」
姫「こんな淑やかで可憐な女性には会ったことがない、なんてことも言ってたわね。あぁ、思い出したら腹立ってきた!」
王子「あの時とは違います」
姫「何が違うのよ!」
548: ◆qoozyz1NgY:2011/11/9(水) 16:39:17 ID:9uEahCTKxM
王子「だ、だから… あの時は確かにちょっとお世辞入ってましたけど、今は本心です!本気です!」
姫「え…」
顔を真っ赤に紅潮させて、姫を見つめた。
王子「す…すごく、綺麗です」
姫「……!」
王子「ぼっ、僕が、今まで見てきた女性の中で…、い、一番綺麗で可愛いです!」
549: ◆qoozyz1NgY:2011/11/9(水) 19:20:47 ID:eaK745q2DQ
姫「お、王子…」
───そのとき、突如廊下の方から慌ただしい声が聞こえた。
「ろ、ロイ殿っ!どうなされたのですかそんなに急いで…!」
「服が血まみれですよ!そのような恰好で王間に入れるわけには」
「うるせぇ、んなこと言ってる場合じゃねぇんだよっ」
「それに誰ですかこの少女はっ」
「ロイさんの付き添いですのでお気になさらずっ」
姫「……?」
550: ◆qoozyz1NgY:2011/11/9(水) 19:25:15 ID:OqXv9TpU5w
王「なんじゃ…?」
ガタンッ、と扉が開かれる。
ロイ「──王!!」
ロイとクレアが王間に飛び込んできた。
王子「!」
姫「ロイ!? あんた、今までどこに出かけて──」
ロイが姫の方を見て、咄嗟に叫ぶ。
ロイ「姫!そいつ──、王子から今すぐ離れてくださいっ!!」
姫「え…?」
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