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女「また混浴に来たんですか!!」

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Part3
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/28(土) 13:19:27.11 ID:5Lm2bIQY0
女「…………」
女「はぁーーー……」
女「どっと疲れました」
男「ちょうどいいな。この湯に浸かって休めばいい」
女「いったい、何をしたんですか?」
男「股間を見せつけた」
女「はぁ?」
男「それに驚いてやつらが逃げ出したんだ。やっぱり男の勝負はこうして決まるものだな」
女「何を漫画みたいなことを。というかその行為自体が美しい景観を損ねてるじゃないですか」
男「困った女性を守るのは美しい光景に分類されるだろう」
女「な、何を!」
女「最近だって無視してたくせに!!」
男「俺と関わるとろくなことがないんだよ」
女「今日も助けてもらいましたよ」
男「俺がどういうやつかもしらずにな」
女「悪い人ではないでしょう」
男「だったら、種明かしをしてやろうか」クル…
女「また背中を向けて、なんですか」
男「前だと少々衝撃が強すぎるんでな」
バサリ…
女「……う、わ、」
女「い、入れ墨が、下半身に、びっしり……」
男「これでおあいこだな。裸の後ろ姿を見られた者同士」ニヤリ

43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/28(土) 18:11:44.86 ID:5Lm2bIQY0
女「あの人達また来ますかね」
男「この辺に魚を釣れるような場所はない。お前も来たばかりで知らなかったのだろうがな」
女「そうなんですか」
男「混浴に手当たり次第手を付けてるワニだろう。ペットボトルも置いてある」
女「ワニ?」
男「女の身体を見るために混浴に張り付いている男をそう呼ぶんだよ」
男「群れで水の中に潜って獲物を待ち伏せする姿が動物のワニと似てるだろ」
男「水分補給も欠かせないからペットボトルまで持ってきてな」
男「ここに混浴があるというのをどこかで知って、良い女はいないかと来てたんだろう」

44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/28(土) 18:29:54.70 ID:5Lm2bIQY0
女「本当に助かりました……怖くて逃げ出せなかったんです」
男「逃げ出せたさ、お前なら。ただ、苦痛な時間は少ないほうがいいと思ってな」
男「俺も人混みは苦手なんで、一見さんはお断りしたかったんだよ。ましてや常連になられても困る。湯が汚れるからな」
女「そ、それ!あなた身体流さずに先に入ってたんですね」
男「確かにお前は洗ってるな」
女「いつも見てたんですか!?」
男「身体を流す音が聞こえるだけだ」
女「マナー違反ですよ」
男「俺は管理人のおばさんに全てを認められている存在だ」
女「凄い自信ですね」
男「俺が街中の温泉に行かない理由がわかっただろう」
男「入りたくても入れないんだ。この刺青のせいで」
男「それをここのおばあさんは、見えないようにすればいいと言ってくれたんだ」
男「隠して入ろうか迷ったが、事情を説明したんだ。早朝の誰もいないような時間しか利用しないからとな」
男「そのインクはなんだい?」
男「刺青です」
男「暴力団かなんかなの?」
男「もう足を洗いました」
男「洗った割には落ちてないじゃないか」
男「いや、洗ったというのはですね」
男「冗談だよ。入りな。ただし隠すんだよ」
男「いいんですか」
男「刺青がなくても隠すべきもんを隠さないやつも時々いるからね。あんたはそいつらよりはマシそうだ」
男「僕はそいつらよりも極悪人ですよ」
男「いいから入りな。ここにはね、日本の美しさが詰まっているんだよ。心を洗ってきな」
男「こんな会話をした覚えがある」
女「…………」
男「本当だぞ?」
女「いえ、疑ってるのではなく。その会話が嬉しくて、何度も反芻してたのかなって」
男「…………」カァ…
女「あれ、もうのぼせちゃいました?」
男「……バカ言え。今から楽しむところだ」

45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/28(土) 18:42:13.71 ID:5Lm2bIQY0
女「私と会話をしたがらなかった理由もそのせいですか」
男「何のせいだ」
女「自分は認められるべき存在ではないとどこかで思っているせい」
女「元極道かなにかは知らないですけど、会話をすることってそんなに恐ろしいことですか?」
男「……お前は何もわかってない」
男「会話っていうのはな、会話をした相手と繋がり始める行為なんだよ。好きな相手であろうが、嫌いな相手であろうが。告白だろうが、喧嘩だろうが」
男「今日お前はあいつらと会話をしただろう。会話を始めたのが不幸の始まりだった」
男「学生時代に学ばなかったのか。最初の会話がうますぎるくらいに噛み合ったやつとは、後々悪い関係になると。最初はやさしくはなしかけられたって、素性はどんなやつかわからん」
女「どうでしょう。よくわかりませんが、だったらあなたとも今後悪い関係になってしまうのでしょうか」
男「別にお前と噛み合った記憶はないが」
女「今日も私がワニに噛みつかれそうになった時に、あなたが噛み付いてくれました、あなたとワニが噛み合いました」
男「何が言いたいのか」
女「あなたに無視されて寂しかったってことですよ!わかってるんですか!」
男「まるで会話が噛み合わん……」

46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/28(土) 18:54:29.82 ID:5Lm2bIQY0
女「言ったでしょ。話し相手が欲しかったって」
男「ひよこかなんかと一緒だな。最初に見た方に親近感を覚える。俺がお前にやさしくしたのは今日だけで、今までは冷たいやつだったろう」
女「もしも最初に両手を広げて裸で独り言を叫んだ時に、後ろにいるのが今日のおじさん達だったとしたら、私はここの銭湯に浸かってから大学に行くのではなく、大学付近の温泉に入ってから大学に向かっているようになってますよ」
女「こんな隠れ家的な美し景色とはおさらばでしたね」
女「人が少ないことに加えて、あなたがここに来る理由の2つがわかった気がします。一つは刺青があっても入れるから。もう一つは、やはりここが美しいから」
女「その理由の一つに、私とおしゃべりができるというものを入れてみませんか?」
男「……本当に馬鹿なやつだな。お前みたいなやつが、付き合ったら暴力を振るうような男と付き合う」
男「間違い電話で一目惚れ、いや、一聴き惚れした女の子が、相手の男に人生をめちゃくちゃにされた話を知っているのか」
男「ゲームセンターで、カフェで、コンビニで、素性をよく知らない男と親密になって人生を狂わされた女がどれだけいると思っている」
男「お前が今話している男だってな、素性は冷徹な……」
女「お前が今話している女の子ですよ」
男「はぁ?」
女「私と繋がりたくなければ、黙ってるのが正解でしょう。私とあなたがつながらない理由を話している時点で、私とあなたは繋がり始めているんじゃないですか」
女「私は帰国子女で、誰にでもフレンドリーですからね。勝手に好きになってストーカーされたら困りますが、良い茶飲み仲間、ならぬ湯浴び仲間になりましょう」


47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/28(土) 19:03:18.01 ID:5Lm2bIQY0
男「……はぁー」
女「あっ、今幸せが一つ逃げました」
男「人がため息を付いてる所に追い打ちをかけるな」
女「あなたの残存幸せ数は残り18,000個です」
男「そんなにないだろ」
女「一年で365日で、残り50年生きるとして、ええと……」
男「1日1個くらいだ。多すぎる」
女「暗算早いですね」
男「のぼせるのもな。今日は失礼する」ザバァ
女「では私も失礼する」ザバァ
男「ついてくるな」
女「ついていきませんよ。更衣室は別ですし」
男「ああそう」
女「今日午後暇ですか?」
男「これから帰って寝るところだ」
女「お昼寝ですか」
男「俺にとっては夜だよ」
女「生活が不規則ですね。お仕事だからしょうがないですが。ご一緒にお茶できなくて残念です」
男「湯浴び仲間以上の関係になるつもりはない」
女「茶飲み仲間より親密そうじゃありません?」
男「じゃあな」
女「ええー、ちょっとー!」

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/28(土) 19:08:19.86 ID:5Lm2bIQY0
女「はぁ、はぁ!」
男「どうした」
女「ほら、服着てそっこう出ていくと思いましたもん。私もお化粧せずにそっこう出てきました」
女「前髪伸ばしといてよかったー」
男「お前が伸ばさなくても俺が伸ばしてるから大丈夫だ」
女「本当長いですよね。寡黙な雰囲気と似合ってますよ」
男「そりゃどうも」
女「これから駅までですか?」
男「残念ながらこっちだ」
女「お家はこのへんで?」
男「眠いんだ俺は。じゃあな」
女「あーそうですか。それじゃあ」
男「またな」
女「!?」
女「はい!それでは、また早朝!」

49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/28(土) 19:21:34.08 ID:5Lm2bIQY0
読んでくれてありがとうございます。
ご支援本当にうれしいです。
今日はここまでです。おやすみなさいませ。

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/28(土) 20:17:18.42 ID:n2uc/GZpo
一歩前進したな

51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/28(土) 21:08:04.46 ID:kFe9InM30
いい関係になれるといいな

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/29(日) 00:03:59.19 ID:ku9uHV7zO
いいぞお

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/30(月) 12:33:10.62 ID:j40evkvGO
とてもいい雰囲気

56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/31(火) 19:58:02.35 ID:7BtF9d0o0
女「おっはー」
男「…………」
女「おっはー」
男「…………」
女「なんですか!また無視ですか!」
男「普通の挨拶はできないのか」
女「おはようございます」
男「おはよう」
女「相変わらずのノリの悪さですね」
男「そりゃどうも」
女「思いません?6時や7時から始まる子供向け番組を見ていたあの頃よりも、私たちは早起きするようになってしまったなって」
男「俺は今日は朝帰りだ」
女「不良してたんですか?」
男「そんなところだ」
女「本当は深夜向けアニメですか?」
男「用事があっただけだ」
女「早起きしてアニメ見てた少年は、いつしか夜更かしして深夜アニメを見て眠りにつくようになってしまったとさ……」
男「人の話を聞かないなこいつは」

57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/31(火) 20:16:37.28 ID:7BtF9d0o0
女「もうすぐ夏休みですね」
男「そうなのか」
女「私の話じゃなくて小学生の話ですが。まぁ私もですが」
男「弟でもいるのか」
女「いますが高校生です。全国の小学生の話です」
女「夏休みといえば小学生じゃないですか?友達とおでかけしたり、お家に遊びに行ったり」
男「女子小学生の夏休みの過ごし方なんて全く想像もつかない」
女「どんな風に過ごしていましたか」
男「ドッジボールとか、カードゲームとか……」
女「ええ!?カードゲーム!?その図体で!?」
男「悪いかよ」
男「親からは買って貰えなかったんだが、周りの奴らにいらないカードを分けて貰った」
男「みんなが捨てたがるようなカードだから、弱いものばかりだった。だが、だからこそ上手く組み合わせて上手に勝つ方法を模索しようとした」
女「それで、勝てたんですか?」
男「全然」
女「あら」
男「やはり、強いカードを配られたものが勝つようになっている」
男「愉快な話だ。強いカードを手に入れるだけの環境に生きている子供は、人生でも強いカードを手にしてると言えるんだからな」
女「……あーそうですか」
男「ああ、お前はそっち側の人間だったな」
女「あなたの戦略がよくなかっただけかもしれないじゃないですか」
男「デッキ、いわばカードの束を交換してやらせてもらったことがあるんだが、別世界だったよ」
女「はぁ、人生と一緒ですね」
男「急に同調したな」
女「化粧したら今まで見向きもしてこなかった男たちが振り返ったとか、整形したら今まで見向きもしなかった男たちが振り返ったとか」
男「すまん、触れてほしくないものに触れたか」
女「別に、整形してないですし、すっぴんです」
男「なら、やはりその胸をほうきょ…のわっ!!」バシャア!!
女「それは触れてほしくないものです!」
男「触ってない!!」
女「物理の話じゃないです!」

58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/31(火) 20:26:12.87 ID:7BtF9d0o0
女「前髪の隙間からこんなところ見てたなんて…」
男「見てない!視界に入ってくる大きさなだけだ」
女「視界に入る、だけでいいじゃないですか!」
男「女として誇りこそすれ、恥ずかしがることじゃないだろう」
女「男性に見られるのはちょっと……」
男「弾性?やはり自慢か?」
女「お湯かけますよ!」バシャ!
男「のわっ!」ゴボゴボ…
男「もうかかってる…」
女「まったく、ワニがいなくなったと思いきや、天然で下ネタ発言する象のような大柄な男が現れるんですから…」
男「それこそ天然の下ネタ発言だと気づいてるのか」
女「なにか?」
男「いや、何でもない」
女「ワニもこんな山奥までよくやってきましたよ。女性が来るという噂でも聞きつけたんですかね」
男「火のないところに煙は立たぬ。だが、湯気あるところに男はいきりタつ」

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/01/31(火) 20:34:25.84 ID:7BtF9d0o0
女「……はい?」
男「こんな秘境まで来る金があれば、それこそいかがわしい店で遊ぶことも出来ただろう」
男「それでもやつらは混浴に来ることを選んだのだ!」
女「あの……」
男「浦島太郎は煙を浴びて老いてしまったが、ワニは湯煙によって若返ったのだ。混浴こそがやつらにとっての竜宮城だったのだ」
女「さっきから顔赤いですけど……私が来る何分前からお風呂入ってました?」
男「ワニなのに亀と出会い、自分の亀を喜ばせようとする!!」
男「こんなくだらないはなしがあるか!!」
男「はぁ…はぁ…」
女「だ、大丈夫ですか?」
男「景色がまわる……すまんがもうあがる……」ザバァ
女「あの、手貸しましょうか?」
男「不要だ……」

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