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キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 かぐや姫とオズの魔法使い編

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Part19
616 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/21(木)00:43:35 ID:czh
さるかに合戦の世界 柿の木
・・・
かに「そ、そんな…!あなたは実った柿を私の代わりに取ってくださると、約束したではありませんか!」
サル「あぁーっ!?そんな約束しらねぇなァー!俺様がもいだ柿は全て俺様の物だァー!」ムシャムシャ
かに「酷い…!私を騙したんですね!?私は、子供たちの為にも食べ物を持って帰らなければいけないのに…!ああ、どうかどうかひとつで構いませんから私に分けていただけないでしょうか!」
サル「ウルセェ!折角の柿がマズくならぁ!テメェみてぇな雑魚は目障りなんだよ、消えろクソが!」
かに「うぅ…あんな猿を信じた自分が憎い…易々と他人を信じた自分が…!」グググッ
サル「ブツブツとうるせぇかにだぜ…目障りだって言ってんだろうが!そんなに喰いてぇならこの硬い柿でも食らってろ!ヒャーッハッハッハ」
ビュッ
かに「っ!?しまった…避けられないっ…!これまでか…!」
サル「ヒャーッハッハッハ!この世界は弱肉強食!弱い役は強い奴になすすべなく死んでいく運命なんだよぉー!」
ポトッ
サル「ん?なんだ…?結構本気で投げたつもりだったけどよ、柿がかにまで届かずに途中で落ちちまったぞ?投げ方間違えちまったか?まぁいい、もう一度…」
スッ ベキベキベキバキボキボキボキッ ズサーッ
サル「っ!?うごががががっ!?な、なんだこりゃあ…!急に身体が重くなっちまって…動けねぇ…!?な、なんだこのバカでかい力は…!?」グググググ
かに「!?」
スッ
かぐや「善良なかにさんを騙した挙句、命を奪うような猿には当然の報いを与えなければなりませんね。けれど、諦めもつくでしょう…あなたが言うようにこの世界は弱肉強食…」
かぐや「重力は絶対的な力…故に、それを自在に操る事の出来る私よりも強いものなんて世界のどこにも存在しませんから」

617 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/21(木)00:48:12 ID:czh
今日はここまでです
かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます

618 :名無しさん@おーぷん :2016/01/21(木)00:49:09 ID:xAo
乙です!
さるかに合戦だ!
前にレスした者だけど登場させてくれてありがとう!
次も楽しみにしてる!

619 :名無しさん@おーぷん :2016/01/21(木)01:00:22 ID:wA6
面白い
お疲れ様です。

633 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/25(月)00:17:27 ID:WC2
サル「…ぐががっ!何者だテメェ…!突然しゃしゃり出て俺様にこんな事しやがって…!どういうつもりだ!?」グググググ
かぐや「私の名はかぐやと言います。彼女のような可哀そうな者を救い、あなたのような悪人を滅ぼす為に別の世界から参じました」
サル「お、俺がそいつに青柿を投げつけたからテメェが代わりに復讐するってのか!?無関係なテメェにそんな権利なんか…ぐあああぁぁっ!」ギリギリギリ
かぐや「権利ならあります…いえ、義務でしょうか。私のこの能力を使えばどんな悪人だって倒す事が出来ます、ならばその為に力を尽くす事こそ私の使命…」
かぐや「実際にあなたは…もう動く事が出来ないのではないですか?」
サル「わ、わかった!謝る!俺が悪かった!だからこの力を解いてくれ!このままじゃ身体が引きちぎれちまう!」ギリギリギリ
かぐや「謝罪を求めているわけではないのです。謝ったところであなたの罪が消える事はありません。それに不安に感じる事はありませんよ、身体が引きちぎれたりなんてしません」
スッ
かぐや「ただ…重力に耐えられずに肉体が破裂する程度です」
サル「お、おい!俺はちょっと柿を独り占めしただけじゃねぇか!そんくらいd」ググググッ
グチャッ
かに「さ、猿の身体が…こ、こっぱみじんに…!」ガタガタ
かぐや「私とした事が…醜いモノを見せてしまいましたね、申し訳ありません。しかし、この者は悪事を働いたのですから当然の末路です」
かぐや「ともあれ、悪はこのかぐやが成敗いたしました!あなたはもう辛い思いをする事はありません、それは私にとっても大変喜ばしい事です」ニコッ


634 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/25(月)00:19:15 ID:WC2
かぐや「さぁ、お子さんが柿を心待ちにしているのではありませんか?甘そうなものをいくつかもいで差し上げましょう」スッ
かに「あっ、はい…すいません。私ではどうも木に登る事が出来ないので…」
かぐや「いいえ、お気になさらず。はいどうぞ、もう悪い猿に騙されたりしないようにお気を付け下さい」ニコッ
かに「あっ、はい。何から何までありがとうございます。でも……」チラッ
かぐや「…?どうか致しましたか?」
かに「いえっ、何と言いますか…助けていただいた事は非常に感謝しているのです。ですが…確かにあの猿に腹は立ちますけど、なにも殺さなくてもよかったのかな、と…」
かぐや「ふふっ、あなたはお優しい方です。でも、その優しさはどうかご家族に向けて差し上げて下さい」ニコッ
かぐや「あの猿はあなたを騙し利用し殺すつもりだったのですから、情けを駆ける必要などありません。それよりも早くお子さん達に柿を届けてあげてください。きっとお腹を空かせていることでしょう」
かに「…そ、そうですね。すいません、助けて貰ったのに失礼な事を言ってしまって…では私はこれで失礼します。ありがとうございました」ペコペコ
カサカサカサ…
かぐや「うふふっ、良い行いをして感謝の言葉を投げかけられるなんて、こんなに嬉しい事はありませんね。…おや?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
かぐや「景色が歪み木々が朽ちて行く…。なるほど…本来復讐によって殺されるはずの猿を私が殺したことでこのおとぎ話が形を保てなくなったという事ですか…」
かぐや「しかし、問題ありませんね。少なくとも彼女は殺されずに済みました、まちがいなく私は一人の善人を救う事ができたのですから」ニコニコ
かぐや「さぁ、巻き込まれないうちに別の世界へ向かいましょう。私の助けを必要としている者はまだ大勢居るのですから」スッ
ヒュンッ

635 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/25(月)00:21:38 ID:WC2
それから……
・・・とあるおとぎ話の世界
天邪鬼「ぐぉぉぉっ…この天邪鬼様が余所者の小娘に後れを取るとは…!貴様何者だ!」ググググッ
かぐや「かぐやと申すしがないおとぎ話の主人公です。罪無き娘を殺さんとするひねくれ者の悪鬼を成敗する為に出向きました」
天邪鬼「【かぐや姫】の主人公か…!テメェは俺様達の世界がおとぎ話だって知ってんだろ、だったら何故こんなことをしやがる!」ググググ
かぐや「こんなこと…とは、瓜子姫を騙し殺そうとしたあなたを私が成敗しようとしている事ですか?」
天邪鬼「それ以外になにがあるってぇんだ!俺様があいつを殺す事は定められた運命、この世界はそういうおとぎ話だからだ!それを何故無関係のテメェがかき乱す!?」グググ
かぐや「私になら変えられるからですよ」
天邪鬼「あぁ…?どういう意味だ?」グググ
かぐや「あなたに殺されるという瓜子姫の運命は彼女自身にはどうにも出来ない、抗うことすらできない。でも私は違います」
かぐや「私になら運命を変えられる。私になら瓜子姫を幸福に導ける。私にならあなたを成敗できる」スッ
グシャッ
天邪鬼「ぬぐっ…ぐおぉぉっ!やらせねぇぞ…このおとぎ話をテメェみてぇに勘違いした余所者なんぞに…!」ググググ
かぐや「流石は鬼ですね…まだ息がありますか。ですが…悪党に容赦はしません。今度こそ朽ちなさい、天邪鬼」スッ
ベチャッ

636 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/25(月)00:24:10 ID:WC2
・・・また別のおとぎ話の世界
兵士達「ぐわぁぁっ!」ドサッ
国王「ぐぬぬ…侵入者の小娘一人追い払えんとは使えん兵隊だ!ええい、誰か早く来るのだ!そしてこの侵入者を捕えよ!」
かぐや「声を上げてももう誰も助けに来ませんよ国王。城への入り口は全て崩しておきましたから増援が来る事はありません」フワッ
国王「くっ…貴様は何の目的があってこの城へ来たのだ!私の命を狙っているのか!?」
かぐや「ええ、可哀そうな姫君を救うためです。あなたは王妃を病で失った寂しさを埋める為…あろうことか実の娘である姫を妃にしようとした。望まぬ結婚を強いるなど悪党のすることです」
国王「仕方あるまい、娘は若き日の我が妻に瓜二つだ。私の新たな妻に相応しいのは姫をおいてほかには居ない」
国王「それに望まぬとは言うが私は姫との約束を果たしたのだぞ!姫は結婚を認める代わりに三つのドレスとひとつのコートを要求した、特にコートは無理難題で手に入れるには随分と苦労したがどれも間違いなく娘が願った品物だ!」
かぐや「太陽、月、星のドレス…。そして千種類の動物の毛皮を編んで作った毛皮…確かに手に入れるのは難しい、まさに無理難題です」
かぐや「ですが姫があなたに無理難題を押し付けたのは、あなたを諦めさせるため…そんな事はあなたも理解しているはずではありませんか?」
国王「どんなが理由があろうと、約束は約束だ!姫が要求した贈り物を用意した私には彼女を妃として迎える権利がある!何故余所者の貴様が口を挟むのだ!」
国王「そもそも姫はこの状況を望んでいるのか!?姫もこの世界がおとぎ話の世界だと知っている、この世界が消える事は姫にとっても耐えがたいことのはずだ!」
かぐや「姫がどう思っているかなど関係ありません。無理矢理父親と結婚させられるなんて絶対に嫌だと思っているはずです、当然でしょう」
国王「なんだと…姫の意思を確認したわけでもなく貴様は姫の為などとのたまっているのか!?」
かぐや「私が『姫は不幸だ』と思うのですから姫もそう考えているに違いありません。それに…あなたが死ねば姫は苦悩から解放されます、娘の為なのですから覚悟を決めてくださいますよね?」スッ
グシャッ
・・・

637 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/25(月)00:27:02 ID:WC2
・・・またまた別のおとぎ話の世界
物乞い「クッ…私ともあろう者が指先ひとつ動かす事が出来ぬとは…!何という失態…!」グググ
かぐや「さぁ、お逃げください姫君。あなたに屈辱と苦痛を与えたこの悪党は私が成敗します」
姫「おぉっ…!何者かは知らないけどわたくしをこの掃き溜めのような場所から逃がしてくれるのね?良い働きだわ、このわたくしが褒めてあげましてよ!」
かぐや「あなたはこの様な男に利用されていい方ではありませんから。さぁ、あとは私に任せてあなたはお逃げください」
姫「そうよ、そうよね!わたくしは姫なんだもの!あなた中々見所があるわ、後で城へ来なさい!望むままの礼を用意させるわ!」
スタスタスタ
物乞い「君はおとぎ話の住人だな?何と言う事をしてくれたのだ!姫を逃がしてしまうなど…自分が何をしたのかわかっているのか!?」
かぐや「あなたに言われたくありません。姫が日々辛い思いをしているのはあなたと結婚させられた事が原因なのですから」
物乞い「それは誤解だ、余所者の君からすればあの姫は貧しい物乞いの男と結婚させられた不幸な姫に見えるかもしれない」
物乞い「しかし、あの姫君は容姿こそ美しいが性格に問題がある。王が自分の為に開いてくれたパーティの客人に蔑称をつけては面白がるような失礼な娘だからだ」
物乞い「だから私は姫の内面を成長させる為、その傲慢な性格を改めさせるために物乞いに化けてこの辛く貧しい生活を姫と共にしているのだ。だが私は物乞いでは無い、私の本来の姿は…」
かぐや「存じております。その特徴的な髭…あなたはこの一帯の地域を収める国王、つぐみの髭の王様なのですよね」
つぐみの髭の王「なんと…君は私の正体を知っているのか!ならば尚更何故あのような事を!」
かぐや「決まっているではありませんか、不幸な姫君を救うためです」

638 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/25(月)00:30:37 ID:WC2
つぐみの髭の王「不幸な姫君を救う為?馬鹿な、君はこのおとぎ話【つぐみの髭の王様】の内容を知らないのか!?」
かぐや「いえ、存じていますよ。あなたが口にしたように…美しいけれど傲慢な姫君と物乞いに化けたあなたが生活を共にするおとぎ話ですよね」
かぐや「姫はやがて貧しい生活に順応し、貧しいものや辛い境遇に置かれたものの気持ちを解るようになり以前の様な傲慢な姿ではなくなる」
かぐや「心身ともに清く美しい女性に生まれ変わった姫にあなたは正体を明かし、二人は改めて結ばれる…そういったおとぎ話ですよね?」
つぐみの髭の王「そのとおりだ、そこまで知っているのなら何故我々の邪魔をする!?何故不幸などと思う!?」
つぐみの髭の王「確かに今の生活は辛いかもしれない…だがこのおとぎ話はハッピーエンドだ!最終的に姫は私の…国王の妃として幸せな生活を送るのだから!」
かぐや「終わりよければすべてよし…と私は思えません。実際、今この時の姫は自分が不幸だと考えている。例え未来が輝いていても、今が不幸では何の意味も無い。不確かな幸せにすがるなど愚かしい事です」
つぐみの髭の王「なんと傲慢な…!幸福も不幸も表裏一体だ、常に幸福な人生などあり得るものか…!」
かぐや「あなたが姫にしたように自分の価値観を押し付ける悪党がいなければ、人はもっと平和に暮らせると思いますけれどね」
つぐみの髭の王「…価値観を押し付けているのはどっちだ?私には君こそが稚拙な正義感を押し付けてこの世界に迷惑をかけているだけにしか見えないが?」
かぐや「…よくもそのような事が言えたものですね」スッ
バチンッ
つぐみの髭の王「ぐおっ!」ビターン ベキベキベキ
かぐや「言葉に気を付けなさいつぐみの髭の王。私にはあなたの生死を自在にできる能力が備わっているのですよ」
かぐや「私の能力は素晴らしい、鬼さえも国軍さえも蹴散らせる。私が全てのおとぎ話の中で最も優れている、だから…何者をも救う事が出来る、私の行動に間違いなど無い」
かぐや「私の考えこそが正義、私の行いこそ…平和を導くための最善手なのです」

640 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/25(月)00:33:30 ID:WC2
つぐみの髭の王「まさか君は…このおとぎ話意外にも、別の世界で同じような事をしてきたのか…?」
かぐや「ええ、私はこの能力で数多くの人々…時にはそれが虫であったり動植物であったり物質だったりしましたが…とにかく、数多くの者を救って来たのです」
かぐや「決して正義感の押しつけなんかではありません。私が助けた者達は必ず私に感謝しているはずです、なにしろ不幸を取り除いて差し上げたのですから」
つぐみの髭の王「…君は姫が可哀そうだと言ったが、私には君の方がよほど不憫に見える」
かぐや「…重ね重ね無礼な方ですね。不憫?多くの人々を救う能力を持つ私が?」スッ
つぐみの髭の王「これまでの世界では誰一人、君の過ちを正す事が出来なかったのか」
かぐや「私は悪党ではありません。正すも何も…過ちなど犯すはずがないでしょう」
つぐみの髭の王「一つ聞かせて貰えるか?キミはどういう基準で…向かう先のおとぎ話を選んでいる?」
かぐや「教わったおとぎ話を端から巡っています、記憶にあるおとぎ話はもうほとんどすべて回りましたが」
つぐみの髭の王「ほう、ならば…君は誰におとぎ話を教わった?」
かぐや「父ですが…その様な事を聞いてどうするつもりですか?」
つぐみの髭の王「なるほど…随分と自分の娘の性格を理解しているお父上のようだ」
かぐや「……何が言いたいのですか?」
つぐみの髭の王「君は知っているおとぎ話をほぼ全て回ったと言ったが…それはおかしい」

641 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/25(月)00:36:59 ID:WC2
つぐみの髭の王「君のやり方だと…不幸な者を救うたびにおとぎ話は消滅する。つまり、君が向かったおとぎ話はほぼ全て消滅している」
かぐや「そうなりますね。ですが、それになにか問題がありますか?」
つぐみの髭の王「裏を返せば、今もなお存在しているおとぎ話は…君が知らないおとぎ話ということになる。いや、君のお父上が意図的に君に教えなかったおとぎ話があると言った方が良いかな」
かぐや「私が知らないおとぎ話…?お父様が、敢えて私に教えなかったおとぎ話があると?」
つぐみの髭の王「ああ、そうだ。これが私には偶然とは思えない。なぜなら君が知らないおとぎ話は…誰の目にも明らかなほど不幸な生涯を送る主人公達のおとぎ話ばかりなのだから」
つぐみの髭の王「恐らくお父上は君がこうなるのを危惧して…本当に不幸な者がいるおとぎ話を教えなかったのだろうな」
スッ
かぐや「つぐみの髭の王、そのおとぎ話を教えなさい。私は、まだ真に不幸な者を救えていないのですね…?さぁ、教えなさい」
つぐみの髭の王「断る。君はその世界も身勝手な正義感で消滅させてしまうからだ」
かぐや「教えなければ頭部を砕くと脅せば…良いのですか?」
つぐみの髭の王「君はどちらにしろ私を殺すつもりだろう?だが…ひとつ条件を飲めば教えてやっても構わない」
かぐや「…言ってみなさい」
つぐみの髭の王「私が教えれば君はそのおとぎ話に向かうだろうが…決してそのおとぎ話を消滅させないと約束しなさい」
かぐや「……」
つぐみの髭の王「それが君に不幸な主人公たちのおとぎ話を教える条件だ」

642 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/25(月)00:40:34 ID:WC2
かぐや「私がその条件を飲んだとして…あなたに何の得があると?その条件にあなたを殺さないという項目は無いのですよ?」
つぐみの髭の王「私に得は無い。だがもうこのおとぎ話はじきに消滅するだろう…もうわが身の事は潔く諦めた。他の者達には申し訳ないがな」
つぐみの髭の王「それに使い方を誤っているだけで君の能力は確かにすばらしい。考えさえ改めれば真の救世主になれるだろう、だがいまのままではだめだ。これから向かうおとぎ話で人を救うという事はどういうことなのか学びなさい」
かぐや「これ以上何を学ぶというのですか?あなたの言い方を借りるのなら、私は既に救世主なのですよ」
つぐみの髭の王「そうか、ならば君には何も教えない。さぁこの物乞いを殺すが良い。容易い事だろう?」
かぐや「…いいでしょう。約束します、私は次に向かうおとぎ話を消滅させません。ですから教えなさい、そのおとぎ話を」
つぐみの髭の王「いいだろう、君を信用して教えよう。不幸な主人公が登場するおとぎ話はいくつかある」
つぐみの髭の王「悲恋の末に泡と消える【人魚姫】、像になっても民を思いそして己が身を犠牲にした【幸福の王子】、正しい行いをしたにもかかわらず恩をあだで返される【浦島太郎】と…様々だ」
つぐみの髭の王「その境遇に優劣をつけるわけではないが…私が考える最も不幸な結末のおとぎ話は二つある。ひとつは【マッチ売りの少女】だ」
かぐや「マッチ…売りとは?そのおとぎ話はどういう内容なのですか?」
つぐみの髭の王「父親に虐げられ、寒空の下売れぬ道具を売り歩く幼い少女が幸福な幻に包まれながら…しかし現実には微塵も報われず命を失う話だ」
かぐや「…っ!そのような不憫な少女の存在を見逃していたなど…!」
つぐみの髭の王「そして、もうひとつ…【マッチ売りの少女】に並ぶ、私が考える最も不幸な結末を迎えるおとぎ話が存在する」
つぐみの髭の王「【フランダースの犬】…絵描きを目指す少年が主人公のおとぎ話だ」

643 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/25(月)00:45:02 ID:WC2
つぐみの髭の王「主人公の少年の名前はネロ…祖父と一匹の愛犬パトラッシュと共に生活する、貧しい少年だ」
つぐみの髭の王「ネロは絵描きを目指す傍ら、牛乳の運搬で生活費を稼ぎながら貧しいながらも懸命に生きていた。だが…」
つぐみの髭の王「彼を良く思わない男がいた。その男の策でネロは仕事を失う。更には唯一の友で幼馴染ある風車小屋の娘とも引き離され、最愛の祖父を失い…そして絵描きになる夢さえも失う」
かぐや「……何一つ報われないというのですか?」
つぐみの髭の王「ああ、ただ最後に…一度は目にしたいと願っていた名画を見る事が出来るだけだ。その願いをかなえた後……」
つぐみの髭の王「ネロは愛犬のパトラッシュと共に、息を引き取る。寒い寒い、冬の夜に」
かぐや「【マッチ売りの少女】や…そんな思いをする少年の事を、私は一切知らなかったなんて…!」ポロポロ
つぐみの髭の王「彼等の境遇に涙するか…」
かぐや「あなたの様な悪党にはわからないでしょう。辛い思いをする人の気持ちなど」
つぐみの髭の王「…ハッキリ言うが私はこのおとぎ話を無茶苦茶にした君が憎い。方法も考え方も未熟で稚拙で…自分よがりだ。だが、それは改める事が出来る」
かぐや「私の行動に、改める必要など……」
つぐみの髭の王「さぁ行きなさい、いずれ痛感するだろう。急ぎなさいこの世界はもうじき崩れ去る。私との約束を決して違えぬようにな」
かぐや「…約束を破る事など悪党のする事。私は悪党では無いのです、約束は守ります。…では私はこれで、もう会う事も無いでしょうけれど」スッ
ヒュン
つぐみの髭の王「未熟な正義感を持つ娘にあの世界の存在を教えたのは賭けだが…しかし、苦難を乗り越えねば掴めぬものもある。随分と傲慢で独善的な娘だが、心配はあるまい…」
つぐみの髭の王「あの娘がマッチ売りやネロの境遇に流したその涙は偽りでは無いのだからな。少々荒療治だが…耐えて見せるがいい、異国の娘よ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ

644 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/25(月)00:48:42 ID:WC2
フランダースの犬の世界 街道
ヒュンッ
かぐや「ここが【フランダースの犬】の世界…。辛い境遇の少年が主人公の…おとぎ話」ゴクリ
かぐや「ここは見たところ…西洋の街道の様ですね。人通りが少ないところを見ると、大きな街は遠いのでしょうか…」
かぐや「……。まずは考えをまとめなければいけませんね、そこの木陰で休むとしましょう」
スッ
かぐや「さて…この世界に来たからには不幸な境遇におかれているネロを救わなければいけません。その為に来たのですから」
かぐや「つぐみの髭の王にもっと詳しい情報を聞くべきでしたね…ネロが住んでいる町の情報も何も聞けませんでしたから…」
かぐや「……」
かぐや(しかし、あの王は何故私に手を貸すような真似をしたのでしょうか)
かぐや(あの王は姫の将来の為だと言って辛い思いをさせた悪党…。彼にとっても私は敵のはずなのですが…何故彼は敵の私に協力するような真似を…)
かぐや「……いえ、これは考えても答えなどで無いのでしょう。今はネロの住む場所を探し出さないと…」
かぐや「……。確かつぐみの髭の王は言っていましたね、唯一の友が風車小屋の娘だと…つまり、少なくとも近くに風車のある村…」キョロキョロ
かぐや「…駄目ですね。ここからではよく見えません。少し浮遊して高い場所から…」スッ
ザッ
少年「ねぇ、お姉さん…きょろきょろしているけど何か探しているのかい?」

645 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/25(月)00:50:27 ID:WC2
かぐや「ええ、風車小屋が近くにある村を探しているの。それよりも…あなたは?」
少年「あっ、ごめんごめん。お姉さんが珍しい恰好してるし何か困ってるみたいだから助けようと思って声を掛けただけなんだ」
ネロ「僕の名前はネロ。そして…あっ、しまった!」
爺さん「ぬおぉぉ…!ネロや、いきなり走っていきおってからに!老いぼれジジィと老いぼれ犬に重い荷車を運ばせるとは…もうちょっと労りとか…なんかいろいろあるじゃろ…!」ゼェゼェ
パロラッシュ「くぅんくぅん」
ネロ「ごめんね、あのお姉さんがなんだか困っているように見えたから、風車小屋のある村を探してるって言っててさ案内してあげようよ」
爺さん「そんな事じゃろうと思ったよ、お前は優しい子じゃからな。しかしジジィにこの荷車は重すぎる、手を貸しとくれ」
ネロ「僕のお爺ちゃんと愛犬のパトラッシュさ、今日は近くの町までミルク運びの仕事をしていたんだ」
かぐや「この子がネロ…」
ネロ「…?どうかしたの?」
かぐや「いいえ、私の名はかぐやよ。よろしくね、ネロにお爺さん。それに…パトラッシュも」スッ
パトラッシュ「わうん!わうん!」スリスリ
爺さん「風車小屋のある村と言うとこのあたりだとワシらの村じゃな。かぐやさん、ワシらについてくるとええ」
ネロ「荷車に載せてあげたいところだけど、流石に僕達だけじゃ重いからさ。歩いて貰うけど、ごめんね?」
かぐや「いいえ、いいのよ。それよりも私も荷車を押すのを手伝いましょう、案内してもらうお礼に」
かぐや(…この子があの辛い境遇にいる少年。ネロの事も必ず救う、それが私のすべき事…私にだけ出来る事…!)

646 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/01/25(月)00:52:01 ID:WC2
今日はここまでです
八冊目なんか長くなってしまったけど、かぐや過去編はそんなに長くならないので…
かぐや姫とオズの魔法使い編 次回に続きます

647 :名無しさん@おーぷん :2016/01/25(月)00:52:42 ID:ynn
乙でした
次も待ってます

648 :名無しさん@おーぷん :2016/01/25(月)00:53:05 ID:5ce
お疲れ様でした

650 :名無しさん@おーぷん :2016/01/25(月)00:56:15 ID:nde
乙!
かぐやの壊したおとぎ話の何も知らない住人は世界の終わりを経験したんだよな…


651 :名無しさん@おーぷん :2016/01/25(月)08:35:22 ID:z9v
更新ありがとう!
消されたおとぎ話の住人からしたら、かぐや姫こそ悪になっちゃったんだな…

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