キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 かぐや姫とオズの魔法使い編
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727 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:19:19 ID:Xjq
数日後
かぐや(私達の看病もむなしく、お爺様は今朝方息を引き取った。ベッドの上で眠る様に…穏やかな表情のまま天に召された)
かぐや(お爺様にはネロの運命を話していない。きっとネロがコンクールで賞をもらい、画家として大成する事を願いながら死んでいったんだろう)
かぐや(……)
ガチャッ
かぐや「ネロ…。葬儀と埋葬の手配はできましたか?なにも問題ありませんでしたか…?」
ネロ「一応…ね。でも手持ちの財産じゃ大した葬儀はあげられないって言われたよ。それでもお願いはしておいた…せめてもの供養になればいいけど」
かぐや「貧しい者は…家族が無くなっても悲しむことすら許されないのですか…?財産がなければ…十分な供養も許されないなど…間違っています」
ネロ「流石にコゼツさんもお爺さんの葬儀にケチをつけてきたりしないだろうし、形だけでもキチンとした葬儀ができるだけでも十分さ…」
パトラッシュ「くぅん…」スリスリ
ネロ「心配しなくて大丈夫だよ、パトラッシュ。でも覚悟はしていたけど、思っていたよりも…ずっとずっと…辛いね…ははっ」グスングスン
かぐや「……」
ネロ「あははっ、大丈夫!もう気持ちを切り替えるから、だからかぐやさんもそんな顔をしないで。僕はもう平気だから」
かぐや(…違う。あなたの事も心配だけど…思っていたよりも辛いのは私も一緒なの。思ったより私はこの不幸に耐えられそうにない)
かぐや(どうしてネロが気丈にふるまう必要がある?どうして私はあんなに強力な能力を持っているのに人一人救えない?どうして運命に抗ってはいけない?どうして幸せを願ってはいけない?どうしてこの不幸を耐えなければいけない?)
かぐや(あぁ、いけない。これ以上は…とてもじゃないけれど、受け入れられない。このまま理不尽な不幸がネロを襲い続けるというのなら。私はもう…)
かぐや(なにをしてしまうかわからない)
728 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:20:57 ID:Xjq
葬儀の翌日 クリスマス当日
ネロ達が住む小屋
大家「失礼するよネロ。あぁ、お爺さんの事は残念だったな」
ネロ「大家さん…僕に何かご用でしょうか?」
大家「うむ、このような時になんだが…。先月分の家賃をまだ貰っていなかったのでな、徴収に来たのだよ」
ネロ「…申し訳ありません。今はもう、お爺さんの葬儀でお金が無いんです」
大家「そうだろうな…だが、牛乳運びの仕事も今はしていないんだろう?そこの異国人が狩りをしているとは聞くが…この時期じゃまともな金銭にはなるまい」
かぐや「突然押し掛けて来て、あなたは何が言いたいのですか?…いえ、概ね想像は出来ますが」
大家「それなら話は早い。私も決して裕福では無いのでね、お前達に収入のめどが立っていないのならばいつまでもこの小屋に住ませる事は出来ないと言いに来た」
かぐや「あなたは…家賃が支払えないからといってネロを追い出すというのですか?彼がどのような目に会おうと、金さえ手に入ればそれでいいのですか?」
大家「私を金の亡者のように言うのはよしてくれ。私はほら…あれだ、お前達に家賃を支払う気が無い事に腹を立てているのだ」
大家「ネロは働きもせず絵を描いてばかりではないか。金が無いとは言うが絵など描かずに働けばいくらかまとまった収入は得られるだろう?」
かぐや「絵描きはネロの夢なのです。あなたはそれを捨てろというのですか?」
大家「生活の為に夢を捨てている者など世間には山ほどいるんだ、ネロだけ特別じゃない。それにお前もそうだ、その気になれば金儲けなどいくらでもできる」
大家「顔も綺麗だが体つきも上等だ、アントワープまで行けばそれを売り物に出来る店だってある。そこで雇ってもらえば家賃なんざあっというだろう」ハハハ
かぐや「私に身体を売れというのですか?なんと下劣な…!恥を知りなさい!」スッ
ネロ「かぐやさん、駄目だ。腹が立つのは解るけど…僕達に非があるんだ。大家さんを恨むのは筋違いだよ」
729 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:23:10 ID:Xjq
ネロ「大家さん。家賃を支払う事が出来ないので僕達はここを出ていきます、ただ…今日一日だけ猶予をください。荷物もまとめなければいけませんから」
大家「その程度なら許そう。ただ、明日にはきっちりこの小屋を明け渡して貰うぞ、いいな?」
ネロ「はい、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
スタスタスタ
かぐや「…ネロは大人ですね」ギリッ
ネロ「ごめん、あんな事言われて屈辱だったよね。かぐやさん嫌味とか言われるの慣れてないから…」
かぐや「いいえ、いいのです。しかしネロが止めてくれなければあの男を破裂させるところでした、礼を言わなければいけません」
ネロ「またそんな物騒な…」
かぐや「あの男はあんな事を言っていましたが本当は金に目がくらんでいるだけなのです、まともな人間ならばこの寒空に少年を追い出そうなどとしません」
ネロ「でも家賃払ってなかったのは僕達だからね…。それに僕達が追い出されたって事は問題なく物語が進んでるってことなんだし、それは嬉しい事だよ」
かぐや「…そうでしょうか、私にはそうは思えませんけれど」
ネロ「ははっ…かぐやさんはそういうよね。でも、僕は嬉しい。だから【フランダースの犬】の展開通り、僕はアントワープの大聖堂に向かうよ」
かぐや「コンクールの結果をあなたは知っているでしょう、わざわざ辛い思いをする為にアントワープまで向かうのですか?」
ネロ「うん、行くよ。でさ、かぐやさんはどうするつもり?その、ここからは本当に辛いと思うんだかぐやさんにとっては。長く歩く事になるし、もうじき雪も降ってくるしそれは激しさを増す」
ネロ「僕はもう十分にかぐやさんには救って貰った、かぐやさんのおかげで楽しい日々が遅れたんだから。だからもうかぐやさんは…」
かぐや「私も付き合いますよ、コンクールの結果を目の当たりにすればあなたの決心が変わるかもしれませんからね」
730 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:25:59 ID:Xjq
アントワープ 大聖堂 コンクール結果発表会場
ザワザワザワザワ
ネロ「…解っていた事だけど、やっぱり落選だったね。うーん、結構自信あったんだけどね…まぁ仕方ない、帰ろうか」
パトラッシュ「くぅん…」
かぐや「……」
ネロ「な、なんで二人とも神妙な顔してんの。大丈夫だって、賞はとれなかったけど僕の絵を見て才能があるって言ってくれる画家の先生が現れるんだから」
ネロ「むしろ嬉しい事だよ、本物の画家に褒めて貰えるなんて幸せ者だよ!だから悪いけど、僕の決心は鈍ったりしないよかぐやさん」
かぐや「…そのころにはあなたは死んでいるというのにですか?」
ネロ「いや、あのねかぐやさん…」
かぐや「もうあなたのおとぎ話も結末に近づいています、だからあなたに聞くのはこれで最後にします」
かぐや「今ならまだこのおとぎ話を捨てて別の世界に行く事が出来ます。そこで絵の勉強をすればいい、あなたには才能があるのですから…あなたが望むのなら私はそれを与えられる」
ネロ「……ありがとう。でも、大丈夫」フルフル
かぐや「……そうですか、解りました」スッ
ネロ「かぐやさん?どこに行くの?」
かぐや「申し訳ありませんが私は元の世界へ帰ります、あなたの死に際に側に居る勇気はありませんから」
ネロ「ちょ、ちょっとまってよ!せめて別れの挨拶くらいさせてよ」
かぐや「……そんなもの悲しくなるだけです。確か帰り道は雪が酷いのでしたね、ネロもどうか気をつけて。それでは」スッ
731 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:28:03 ID:Xjq
アントワープからネロが住む村までの帰り道
スッ グッグッグッ
かぐや(結局、ネロは私の誘いに乗らなかった。幸せを掴もうとしなかった)
かぐや(ネロはこの後村へ帰る途中コゼツのお金を拾う。けれどそれに手を付けることなく正直に渡し、パトラッシュをアロアの家に託し…)
かぐや(その後はアントワープの大聖堂で息を引き取る)
かぐや(……)
かぐや(そのあと誰に認められようと、ルーベンスの絵を見れようとそれが幸せだとは私には到底理解できない。でも…)
かぐや(ネロがそれを願うのなら…それは仕方がない事なのかもしれないわね)
かぐや(それなら私に出来る事は、少しでも少しだけでも幸せを増やす事よ)
かぐや(ネロは、私に会えた事で本来の結末よりももっと幸せになれたと言ってくれたわ。楽しかったと言ってくれた…)
かぐや(私にもできる事はあるみたいだもの、例えばこうして重力で少しでも雪を踏み固めておくとか…また積もるだろうけど少しはネロも歩きやすいでしょう)
かぐや(あとは…アロアの家に先に向かって暖かい飲み物と毛布を用意して貰おうかしら、その程度ならばきっと結末に影響は無いでしょう)
かぐや(私に彼の為に出来るのはもう、その程度の……。…あれは?)
スッ
コゼツ「…っ。なんだ貴様か、このような雪道で何をしている?」
732 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:33:38 ID:Xjq
かぐや(あぁ、コゼツは確か落としてしまったお金を探しているんだったわね。けどそれが見つかる事は無い、ネロ達が見つけるんだから)
かぐや「私が何をして居ようとあなたには関係の無い事です」
コゼツ「ふむ…あぁ、確か今日はアントワープの大聖堂でコンクールの結果発表が行われるのだったな、おおかたあの小僧と一緒に向かったのだろう。結果は解っているがな」
かぐや「……あなたに何がわかるというのです、ネロはコンクールの絵を一生懸命描き、そして画家になろうと努力をしているのです」
かぐや「彼の努力を、自分の都合だけで彼を苦しめるあなたが…馬鹿にしていいわけありません」
コゼツ「ふんっ、コンクールに落選すればあいつも絵描きなどという夢物語を諦めるだろう」
かぐや「いいえ、彼は決して諦めません。落選しようが命を落とそうが、画家になるのは彼の夢なのですから」
コゼツ「馬鹿馬鹿しい、私はお前達のような輩に構っている暇は無いのだ」
コゼツ「暇を持て余し絵画などうつつを抜かしているあの小僧とは違うのでな」
かぐや「……待ちなさいコゼツ、お前は今なんといったのかしら?」カチンッ
コゼツ「訂正しろ、貴様のような小娘に名を呼び捨てにされる覚えは無い」
かぐや「断るわコゼツ。謝りなさい、私ではなくネロに…彼を馬鹿にした事をね」
コゼツ「何故その様な必要がある?私は事実を言ったまでだ」
かぐや「…あぁ、ネロ。この男は本当に救うに値しないわよ、こんな男に金を返してやる必要なんか無いのよ」
コゼツ「……待て、何故お前は私が金を落とした事を知っている?」
733 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:36:16 ID:Xjq
かぐや「…ああ、あなたは知らないのだったわね」
コゼツ「どういうことだ、答えろ!金がどこにあるか知っているのか!」
かぐや「あなたが落とした大金はね、パトラッシュが見つけるのよ。だからそれをネロはあなたの家n」
コゼツ「なるほどな…読めたぞ。私が落とした金を貴様等は偶然拾ったというわけだ、あれはお前達のような貧乏人は腰を抜かすほどの大金だ…」
コゼツ「お前達はそれを盗んだというのだな?お前達にとっちゃ自分達をを目の敵にしている私に馬鹿正直に返す必要などないだろうからな!」
かぐや「…最後まで聞きなさい、ネロはお前にあれだけ酷い仕打ちを受けていながらそれでもお前が困るだろうからと正直にアロアの家に向うのよ。だから少し探したら家で待ってなさい」
コゼツ「はっ!何を抜かすかと思えば…ネロが拾った金を私に返すだと?ありえんな、あれだけの金があればここからトンズラして別の町で暮らす事も出来るからな!」
かぐや「いい加減にしなさい。ネロはそんな事は決してしないわ、彼は貧しくても正しく生きているのだから」
コゼツ「お前の言う事など信じられるか!さぁあの小僧は何処に居るか教えろ!そして私の金を今すぐに返せ!」
かぐや「…この際私の事なんか信じなくても構わないわ。でもネロの事は信じなさい、彼はあなたのために」
コゼツ「あのような貧乏人を信じろというのか!?薄汚いコソ泥を信用できるわけがないだろう!村の連中は奴を可愛そうだなんだのと同情しているが…」
コゼツ「全て自業自得だ!画家になろうなどと自惚れてアロアに近づき、挙句の果てには私の金にまで手を出す!大家に小屋を追い出されたとも聞いたが良い気味だ!」
コゼツ「どうせコンクールも落選だ、絶望しながら村に帰る事だろうが…。あの村にコソ泥など必要無い!あのような小僧この寒い寒い雪道で死んでしまえばいいのだ!」
スッ
ベキベキベキベキベキッ
コゼツ「ぐああぁぁっ…!!」ベキベキベキ
734 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:39:26 ID:Xjq
かぐや「ネロは絶望なんかしない。あの貧しい生活の中で彼は一度も弱音を吐かなかったわ」
コゼツ「こ、この力はあn」
かぐや「黙れ」スッ
ベキベキベキッ
コゼツ「……っ!」グググッ
ベシャッ
かぐや「……ああ、ネロ。私が間違っていたわ。…あなたは私の事を姉だと言ってくれたわね」
かぐや「そうよ、私は姉…そしてあなたは弟、そうよまだ子供よ。私がちゃんと導いてあげなければいけなかった…私がちゃんと教えてあげなければいけなかった…」
かぐや「優しさなんか報われない。こんな男が本気であなたの事を認めるなんて到底思えないわ」
かぐや「あなたは確かに心優しい善人だけど周りは違う。コゼツは悪党…こいつに意見しない家族も村の連中も…この悪党と同罪よ」
かぐや「つぐみの髭の王のせいで少し見失いかけていたわね忌々しい悪党め…。簡単な事よ、最初から私は自分自身の掲げる正義に従えばよかったのよ。私がする事に間違いなんか無いんだから」
かぐや「この世界を消滅させて、ネロ達を別の世界へ逃がす。もうネロたちの意思なんかどうだっていいわ、私が正義なんだからその行動もまたまごう事無き正義だもの」
かぐや「そうときまればネロとパトラッシュを迎えに行かなければね…。あぁ、でもその前に…村へ向わなければ」
かぐや「悪党は全て始末しておかなければいけない」
ヒュッ
735 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:41:34 ID:Xjq
ネロの住む村 コゼツの屋敷
ゴゴゴゴゴ
ネロ「急げ!急ぐんだパトラッシュ!アロアの家はもう目の前だ!」タッタッタ
パトラッシュ「あうんあうん!!」スタタタタ
ネロ「おかしい!コゼツさんのお金は確かに拾った、それなのに何故景色が歪み始めたんだ!?」
ネロ「まさか…まさかとは思うけど…かぐやさんが何かを…?いや、疑うなんていけない。かぐやさんは解ってくれたじゃないか!」
パトラッシュ「わうんわうん!!」
ネロ「うっ…なんだこの匂い…!気持ち悪い…。まさか、アロアの家の中から…そうなのか?パトラッシュ!」ゲホゲホッ
パトラッシュ「うぅー…っ!わうわうっ!」
ネロ「っ!まさか、アロアやおばさんになにかあったんじゃ…!」タッタッタ
バタンッ!
ネロ「アロア!おばさん!無事で……なん…なんだこれ…!家の中が血塗れじゃないか…!…アロア!」ダッ
アロア「……ネ…ロ?」ボタボタッ
ネロ「…酷い、下半身が潰されて逃げられなくされているのか…!アロアしっかりするんだ!今すぐにお医者様を呼んで…」
スッ
かぐや「駄目よネロ、医者なんか呼んじゃ」
ネロ「かぐやさん…!」
かぐや「そんな事をすればその悪党を助けてしまう事になるわ」
736 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:43:20 ID:Xjq
ネロ「かぐやさんがやったのか…!なんでこんな事を!」
かぐや「ごめんなさいねネロ、私が間違っていたのよ。こんな世界最初から捨ててしまえばよかった」スッ
ネロ「一体何を言ってるんだかぐやさん…!アントワープではそんな素振りなかったのに…!」
アロア「ネ…ロ……」
ネロ「アロア…もう喋らなくていい!」
アロア「あの…ね…私、友達なのに…助けてあげられなくてごめんね…」ポロポロ
ネロ「何を言ってるんだ…そんなこと…!」
ベチャッ
かぐや「お前はネロの友達なんかじゃない。この子が一番つらい時に助けもせず、父親のいいなりになっていたくせに。調子のいい事を抜かすのはやめなさい」
ネロ「…っ!」
かぐや「安心しなさいネロ。アロアで最後だったのよ、コゼツもアロアの母親ももう潰しておいたから」
ネロ「二人の事も殺したって言うのか…!アロアだけじゃなく!」
かぐや「そうね、コゼツを殺したから世界の消滅が始まっている。まぁ、放っておいてもこの世界の人間はすべて死ぬけれど、ネロの為にこの村の連中は私が始末しようと思っているけれどね」
ネロ「…何故だ、なんでこんな事をしたんだ!」
かぐや「決まっているでしょうネロ。あなたを幸せにする為よ」
738 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:47:09 ID:Xjq
ネロ「僕を幸せにするためだって…?そんな事は馬鹿げている!言ったはずだよ、僕は元々の結末で満足しているって!」
かぐや「あなたは幸せというものを理解していない、あんなものは幸せなんかじゃない」
ネロ「これはかぐやさんの意見だ!コゼツさんもアロアもおばさんも…殺されるような事はしてない!」
かぐや「コゼツはあなたをコソ泥扱いした…いいえ、それはいい。けどあろう事か死んでしまえばいいなどと口にした、そんな悪党生きている価値など無いわ」
ネロ「きっと大金を失って気が動転してただけだよ!それにアロアやおばさんまで殺すなんて…!何もしなかっただろう二人は!」
かぐや「そうね、何もしなかった…この二人がコゼツを説得すればあなたは友達を失うことも仕事を亡くすことも無かったのに、あなたを助けなかった」
ネロ「アロアもおばさんも気が強い方じゃない!思っていても言えない事だってあったはずじゃないか!」
かぐや「悪党に屈する者もまた悪党なのよ。抗う者がいないから状況が変わらない、正義を掲げる者が少ないから悪が蔓延るの」
かぐや「だったら私が…その流れを断ち切る正義になるだけよ。世界から悪人だけを一人づつ殺して行けば善人だけの世界になる」
ネロ「そんなこと本気で言ってるの…?」
かぐや「そうね、私は間違っていない。私は力を持っている、だから私が正義なのよ」
かぐや「あなたは自分の結末を『幸せ』だと勘違いしているけど、間違いはこれから正していけばいい。今は私と一緒に来なさい」
ネロ「……断る。この世界は消えてしまうだろうけど、かぐやさんの考えには賛同できない」
かぐや「そう、でもどうでもいいわそんなこと。ネロの意思なんかどうでもいい、私はあなたを幸せにする」
かぐや「さぁ来なさい、来たくないなら好きにしなさい。気絶させてでも連れていく、それがあなたの為よ」
739 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:49:58 ID:Xjq
ネロ「……見くびらないでよ、かぐやさん」スッ
ガシャーン
かぐや「窓ガラスを叩き割った…?ネロ、あなたは何をしようというの?」
ネロ「…こうするのさ」スッ
ブスッ
ネロ「うぐっ…!ゲホゲホッ…」
かぐや「馬鹿な事を…!自分で自分の腹を突き刺すなんて…!私には治癒するような能力は使えないのよ!?」
ネロ「助けて貰おうなんて思って無い…それは始めてかぐやさんに会ったときから何一つ変わらないよ…」ゲホゲホ
かぐや「別の世界の医者に見せれば間に合うかもしれない…!来なさいネロ、こんな世界もういい。別の世界へ…」
ネロ「断る。寄らないで…突き刺すよ。僕はここで死ぬ。アロアと同じ場所で死ねるならそれもまた良いかもしれない」
かぐや「あなたという人は本当に何も理解していない!なんで幸せになれると私が言っているのに信じないの?どうして幸せになろうとしないの!?」
ネロ「理解して無いのはかぐやさんの方だ」
ネロ「僕は大きな成功なんか望まない、小さくても大きくても関係ない…僕にとっては絵を見る事もパトラッシュと一緒に死ぬことも幸福な事だったんだ」
ネロ「それなのにかぐやさんは…自分の考えを押し付けて、僕が幸せじゃないなんて思いこんでる…」
かぐや「思いこみなんかじゃないわ、だって私がそう思っているのだから間違いないわ。あなたは幸せなんかじゃない、酷く不幸な少年よ」
740 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:52:56 ID:Xjq
ネロ「いいや、違う…かぐやさん…神様にでもなったつもり…?強力な力を持ってて何でも思い通りに出来るから?」
かぐや「私だけの意見じゃないわ、他の世界の人間も恐らくは現実世界の人間もあなたの事を不幸だと言う、あなたがどう思って居ようと関係なく【フランダースの犬】は不幸な結末のおとぎ話なのよ!」
ネロ「違う…それは違うよかぐやさん」
ネロ「僕が幸せか不幸かを決めるのは作者でも現実世界の読者でもましてやかぐやさんでもない……」
ネロ「僕の人生の価値を決めるのは僕自身だ」
かぐや「……」
ネロ「友達と縁を切られようと家族を失おうと仕事を失おうとコンクールに落選しようとも…僕は幸せなんだ!僕がそう思い感じてるんだから間違いない!」
ネロ「僕が自分の人生を幸せだと言っている以上…他人にその事を覆したりなんかできない【フランダースの犬】は読者にとっては悲しいおとぎ話かもしれないけど、僕にとっては…」
ネロ「本来なら見る事の出来ない絵画を目にし、大切な家族と一緒に神様の側にまで逝ける…これ以上に無い幸せの物語だ」
ネロ「でももうそれも叶わない…。この世界はもう消えてしまう、だったらせめて…理不尽な理由で殺された友達の側で死ぬよ」
かぐや「違う…違う!そんなものは…!慰めにすぎない!本当に幸せになれないから諦めて妥協をしているだけよ!」
ネロ「僕はね…かぐやさんの事を本当に家族だと思ってたんだ、姉だと思ってるって言うのも本心だよ。一緒に過ごした時間は確かに楽しかった」
ネロ「でも…僕の幸せを理解してくれず、大切な友達とその家族…僕の住む世界を無茶苦茶にしたかぐやさんを……もう慕う事は出来ない」
ネロ「今のかぐやさんは、僕にとって世界を壊して僕を不幸にした……ただの悪党だよ」
741 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:56:37 ID:Xjq
今日はここまでです
かぐや姫 オズの魔法使い編 次回に続きます
744 :名無しさん@おーぷん :2016/02/08(月)00:59:32 ID:PUs
おつおつ
754 :名無しさん@おーぷん :2016/02/08(月)09:45:55 ID:PjW
1乙!
かぐやは自分が一番嫌っていたはずの悪人になった、とよりによって大事な人に宣告されちゃったのか…辛い
755 :名無しさん@おーぷん :2016/02/08(月)11:37:50 ID:8NT
自分の人生の価値は自分で決める……
このネロはゲッコーみたいに自分のモノサシ持ってるな…格好いい…
756 :名無しさん@おーぷん :2016/02/08(月)12:25:53 ID:AYD
乙です!
旧かぐや…。
やっぱりやっちゃったか…。
ここからどう変わってくのか楽しみです。
続き待ってます!!
757 :名無しさん@おーぷん :2016/02/08(月)19:14:30 ID:A63
乙です
この回は何とも言えない辛さがあるな……
数日後
かぐや(私達の看病もむなしく、お爺様は今朝方息を引き取った。ベッドの上で眠る様に…穏やかな表情のまま天に召された)
かぐや(お爺様にはネロの運命を話していない。きっとネロがコンクールで賞をもらい、画家として大成する事を願いながら死んでいったんだろう)
かぐや(……)
ガチャッ
かぐや「ネロ…。葬儀と埋葬の手配はできましたか?なにも問題ありませんでしたか…?」
ネロ「一応…ね。でも手持ちの財産じゃ大した葬儀はあげられないって言われたよ。それでもお願いはしておいた…せめてもの供養になればいいけど」
かぐや「貧しい者は…家族が無くなっても悲しむことすら許されないのですか…?財産がなければ…十分な供養も許されないなど…間違っています」
ネロ「流石にコゼツさんもお爺さんの葬儀にケチをつけてきたりしないだろうし、形だけでもキチンとした葬儀ができるだけでも十分さ…」
パトラッシュ「くぅん…」スリスリ
ネロ「心配しなくて大丈夫だよ、パトラッシュ。でも覚悟はしていたけど、思っていたよりも…ずっとずっと…辛いね…ははっ」グスングスン
かぐや「……」
ネロ「あははっ、大丈夫!もう気持ちを切り替えるから、だからかぐやさんもそんな顔をしないで。僕はもう平気だから」
かぐや(…違う。あなたの事も心配だけど…思っていたよりも辛いのは私も一緒なの。思ったより私はこの不幸に耐えられそうにない)
かぐや(どうしてネロが気丈にふるまう必要がある?どうして私はあんなに強力な能力を持っているのに人一人救えない?どうして運命に抗ってはいけない?どうして幸せを願ってはいけない?どうしてこの不幸を耐えなければいけない?)
かぐや(あぁ、いけない。これ以上は…とてもじゃないけれど、受け入れられない。このまま理不尽な不幸がネロを襲い続けるというのなら。私はもう…)
かぐや(なにをしてしまうかわからない)
728 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:20:57 ID:Xjq
葬儀の翌日 クリスマス当日
ネロ達が住む小屋
大家「失礼するよネロ。あぁ、お爺さんの事は残念だったな」
ネロ「大家さん…僕に何かご用でしょうか?」
大家「うむ、このような時になんだが…。先月分の家賃をまだ貰っていなかったのでな、徴収に来たのだよ」
ネロ「…申し訳ありません。今はもう、お爺さんの葬儀でお金が無いんです」
大家「そうだろうな…だが、牛乳運びの仕事も今はしていないんだろう?そこの異国人が狩りをしているとは聞くが…この時期じゃまともな金銭にはなるまい」
かぐや「突然押し掛けて来て、あなたは何が言いたいのですか?…いえ、概ね想像は出来ますが」
大家「それなら話は早い。私も決して裕福では無いのでね、お前達に収入のめどが立っていないのならばいつまでもこの小屋に住ませる事は出来ないと言いに来た」
かぐや「あなたは…家賃が支払えないからといってネロを追い出すというのですか?彼がどのような目に会おうと、金さえ手に入ればそれでいいのですか?」
大家「私を金の亡者のように言うのはよしてくれ。私はほら…あれだ、お前達に家賃を支払う気が無い事に腹を立てているのだ」
大家「ネロは働きもせず絵を描いてばかりではないか。金が無いとは言うが絵など描かずに働けばいくらかまとまった収入は得られるだろう?」
かぐや「絵描きはネロの夢なのです。あなたはそれを捨てろというのですか?」
大家「生活の為に夢を捨てている者など世間には山ほどいるんだ、ネロだけ特別じゃない。それにお前もそうだ、その気になれば金儲けなどいくらでもできる」
大家「顔も綺麗だが体つきも上等だ、アントワープまで行けばそれを売り物に出来る店だってある。そこで雇ってもらえば家賃なんざあっというだろう」ハハハ
かぐや「私に身体を売れというのですか?なんと下劣な…!恥を知りなさい!」スッ
ネロ「かぐやさん、駄目だ。腹が立つのは解るけど…僕達に非があるんだ。大家さんを恨むのは筋違いだよ」
729 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:23:10 ID:Xjq
ネロ「大家さん。家賃を支払う事が出来ないので僕達はここを出ていきます、ただ…今日一日だけ猶予をください。荷物もまとめなければいけませんから」
大家「その程度なら許そう。ただ、明日にはきっちりこの小屋を明け渡して貰うぞ、いいな?」
ネロ「はい、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
スタスタスタ
かぐや「…ネロは大人ですね」ギリッ
ネロ「ごめん、あんな事言われて屈辱だったよね。かぐやさん嫌味とか言われるの慣れてないから…」
かぐや「いいえ、いいのです。しかしネロが止めてくれなければあの男を破裂させるところでした、礼を言わなければいけません」
ネロ「またそんな物騒な…」
かぐや「あの男はあんな事を言っていましたが本当は金に目がくらんでいるだけなのです、まともな人間ならばこの寒空に少年を追い出そうなどとしません」
ネロ「でも家賃払ってなかったのは僕達だからね…。それに僕達が追い出されたって事は問題なく物語が進んでるってことなんだし、それは嬉しい事だよ」
かぐや「…そうでしょうか、私にはそうは思えませんけれど」
ネロ「ははっ…かぐやさんはそういうよね。でも、僕は嬉しい。だから【フランダースの犬】の展開通り、僕はアントワープの大聖堂に向かうよ」
かぐや「コンクールの結果をあなたは知っているでしょう、わざわざ辛い思いをする為にアントワープまで向かうのですか?」
ネロ「うん、行くよ。でさ、かぐやさんはどうするつもり?その、ここからは本当に辛いと思うんだかぐやさんにとっては。長く歩く事になるし、もうじき雪も降ってくるしそれは激しさを増す」
ネロ「僕はもう十分にかぐやさんには救って貰った、かぐやさんのおかげで楽しい日々が遅れたんだから。だからもうかぐやさんは…」
かぐや「私も付き合いますよ、コンクールの結果を目の当たりにすればあなたの決心が変わるかもしれませんからね」
730 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:25:59 ID:Xjq
アントワープ 大聖堂 コンクール結果発表会場
ザワザワザワザワ
ネロ「…解っていた事だけど、やっぱり落選だったね。うーん、結構自信あったんだけどね…まぁ仕方ない、帰ろうか」
パトラッシュ「くぅん…」
かぐや「……」
ネロ「な、なんで二人とも神妙な顔してんの。大丈夫だって、賞はとれなかったけど僕の絵を見て才能があるって言ってくれる画家の先生が現れるんだから」
ネロ「むしろ嬉しい事だよ、本物の画家に褒めて貰えるなんて幸せ者だよ!だから悪いけど、僕の決心は鈍ったりしないよかぐやさん」
かぐや「…そのころにはあなたは死んでいるというのにですか?」
ネロ「いや、あのねかぐやさん…」
かぐや「もうあなたのおとぎ話も結末に近づいています、だからあなたに聞くのはこれで最後にします」
かぐや「今ならまだこのおとぎ話を捨てて別の世界に行く事が出来ます。そこで絵の勉強をすればいい、あなたには才能があるのですから…あなたが望むのなら私はそれを与えられる」
ネロ「……ありがとう。でも、大丈夫」フルフル
かぐや「……そうですか、解りました」スッ
ネロ「かぐやさん?どこに行くの?」
かぐや「申し訳ありませんが私は元の世界へ帰ります、あなたの死に際に側に居る勇気はありませんから」
ネロ「ちょ、ちょっとまってよ!せめて別れの挨拶くらいさせてよ」
かぐや「……そんなもの悲しくなるだけです。確か帰り道は雪が酷いのでしたね、ネロもどうか気をつけて。それでは」スッ
731 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:28:03 ID:Xjq
アントワープからネロが住む村までの帰り道
スッ グッグッグッ
かぐや(結局、ネロは私の誘いに乗らなかった。幸せを掴もうとしなかった)
かぐや(ネロはこの後村へ帰る途中コゼツのお金を拾う。けれどそれに手を付けることなく正直に渡し、パトラッシュをアロアの家に託し…)
かぐや(その後はアントワープの大聖堂で息を引き取る)
かぐや(……)
かぐや(そのあと誰に認められようと、ルーベンスの絵を見れようとそれが幸せだとは私には到底理解できない。でも…)
かぐや(ネロがそれを願うのなら…それは仕方がない事なのかもしれないわね)
かぐや(それなら私に出来る事は、少しでも少しだけでも幸せを増やす事よ)
かぐや(ネロは、私に会えた事で本来の結末よりももっと幸せになれたと言ってくれたわ。楽しかったと言ってくれた…)
かぐや(私にもできる事はあるみたいだもの、例えばこうして重力で少しでも雪を踏み固めておくとか…また積もるだろうけど少しはネロも歩きやすいでしょう)
かぐや(あとは…アロアの家に先に向かって暖かい飲み物と毛布を用意して貰おうかしら、その程度ならばきっと結末に影響は無いでしょう)
かぐや(私に彼の為に出来るのはもう、その程度の……。…あれは?)
スッ
コゼツ「…っ。なんだ貴様か、このような雪道で何をしている?」
かぐや(あぁ、コゼツは確か落としてしまったお金を探しているんだったわね。けどそれが見つかる事は無い、ネロ達が見つけるんだから)
かぐや「私が何をして居ようとあなたには関係の無い事です」
コゼツ「ふむ…あぁ、確か今日はアントワープの大聖堂でコンクールの結果発表が行われるのだったな、おおかたあの小僧と一緒に向かったのだろう。結果は解っているがな」
かぐや「……あなたに何がわかるというのです、ネロはコンクールの絵を一生懸命描き、そして画家になろうと努力をしているのです」
かぐや「彼の努力を、自分の都合だけで彼を苦しめるあなたが…馬鹿にしていいわけありません」
コゼツ「ふんっ、コンクールに落選すればあいつも絵描きなどという夢物語を諦めるだろう」
かぐや「いいえ、彼は決して諦めません。落選しようが命を落とそうが、画家になるのは彼の夢なのですから」
コゼツ「馬鹿馬鹿しい、私はお前達のような輩に構っている暇は無いのだ」
コゼツ「暇を持て余し絵画などうつつを抜かしているあの小僧とは違うのでな」
かぐや「……待ちなさいコゼツ、お前は今なんといったのかしら?」カチンッ
コゼツ「訂正しろ、貴様のような小娘に名を呼び捨てにされる覚えは無い」
かぐや「断るわコゼツ。謝りなさい、私ではなくネロに…彼を馬鹿にした事をね」
コゼツ「何故その様な必要がある?私は事実を言ったまでだ」
かぐや「…あぁ、ネロ。この男は本当に救うに値しないわよ、こんな男に金を返してやる必要なんか無いのよ」
コゼツ「……待て、何故お前は私が金を落とした事を知っている?」
733 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:36:16 ID:Xjq
かぐや「…ああ、あなたは知らないのだったわね」
コゼツ「どういうことだ、答えろ!金がどこにあるか知っているのか!」
かぐや「あなたが落とした大金はね、パトラッシュが見つけるのよ。だからそれをネロはあなたの家n」
コゼツ「なるほどな…読めたぞ。私が落とした金を貴様等は偶然拾ったというわけだ、あれはお前達のような貧乏人は腰を抜かすほどの大金だ…」
コゼツ「お前達はそれを盗んだというのだな?お前達にとっちゃ自分達をを目の敵にしている私に馬鹿正直に返す必要などないだろうからな!」
かぐや「…最後まで聞きなさい、ネロはお前にあれだけ酷い仕打ちを受けていながらそれでもお前が困るだろうからと正直にアロアの家に向うのよ。だから少し探したら家で待ってなさい」
コゼツ「はっ!何を抜かすかと思えば…ネロが拾った金を私に返すだと?ありえんな、あれだけの金があればここからトンズラして別の町で暮らす事も出来るからな!」
かぐや「いい加減にしなさい。ネロはそんな事は決してしないわ、彼は貧しくても正しく生きているのだから」
コゼツ「お前の言う事など信じられるか!さぁあの小僧は何処に居るか教えろ!そして私の金を今すぐに返せ!」
かぐや「…この際私の事なんか信じなくても構わないわ。でもネロの事は信じなさい、彼はあなたのために」
コゼツ「あのような貧乏人を信じろというのか!?薄汚いコソ泥を信用できるわけがないだろう!村の連中は奴を可愛そうだなんだのと同情しているが…」
コゼツ「全て自業自得だ!画家になろうなどと自惚れてアロアに近づき、挙句の果てには私の金にまで手を出す!大家に小屋を追い出されたとも聞いたが良い気味だ!」
コゼツ「どうせコンクールも落選だ、絶望しながら村に帰る事だろうが…。あの村にコソ泥など必要無い!あのような小僧この寒い寒い雪道で死んでしまえばいいのだ!」
スッ
ベキベキベキベキベキッ
コゼツ「ぐああぁぁっ…!!」ベキベキベキ
734 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:39:26 ID:Xjq
かぐや「ネロは絶望なんかしない。あの貧しい生活の中で彼は一度も弱音を吐かなかったわ」
コゼツ「こ、この力はあn」
かぐや「黙れ」スッ
ベキベキベキッ
コゼツ「……っ!」グググッ
ベシャッ
かぐや「……ああ、ネロ。私が間違っていたわ。…あなたは私の事を姉だと言ってくれたわね」
かぐや「そうよ、私は姉…そしてあなたは弟、そうよまだ子供よ。私がちゃんと導いてあげなければいけなかった…私がちゃんと教えてあげなければいけなかった…」
かぐや「優しさなんか報われない。こんな男が本気であなたの事を認めるなんて到底思えないわ」
かぐや「あなたは確かに心優しい善人だけど周りは違う。コゼツは悪党…こいつに意見しない家族も村の連中も…この悪党と同罪よ」
かぐや「つぐみの髭の王のせいで少し見失いかけていたわね忌々しい悪党め…。簡単な事よ、最初から私は自分自身の掲げる正義に従えばよかったのよ。私がする事に間違いなんか無いんだから」
かぐや「この世界を消滅させて、ネロ達を別の世界へ逃がす。もうネロたちの意思なんかどうだっていいわ、私が正義なんだからその行動もまたまごう事無き正義だもの」
かぐや「そうときまればネロとパトラッシュを迎えに行かなければね…。あぁ、でもその前に…村へ向わなければ」
かぐや「悪党は全て始末しておかなければいけない」
ヒュッ
735 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:41:34 ID:Xjq
ネロの住む村 コゼツの屋敷
ゴゴゴゴゴ
ネロ「急げ!急ぐんだパトラッシュ!アロアの家はもう目の前だ!」タッタッタ
パトラッシュ「あうんあうん!!」スタタタタ
ネロ「おかしい!コゼツさんのお金は確かに拾った、それなのに何故景色が歪み始めたんだ!?」
ネロ「まさか…まさかとは思うけど…かぐやさんが何かを…?いや、疑うなんていけない。かぐやさんは解ってくれたじゃないか!」
パトラッシュ「わうんわうん!!」
ネロ「うっ…なんだこの匂い…!気持ち悪い…。まさか、アロアの家の中から…そうなのか?パトラッシュ!」ゲホゲホッ
パトラッシュ「うぅー…っ!わうわうっ!」
ネロ「っ!まさか、アロアやおばさんになにかあったんじゃ…!」タッタッタ
バタンッ!
ネロ「アロア!おばさん!無事で……なん…なんだこれ…!家の中が血塗れじゃないか…!…アロア!」ダッ
アロア「……ネ…ロ?」ボタボタッ
ネロ「…酷い、下半身が潰されて逃げられなくされているのか…!アロアしっかりするんだ!今すぐにお医者様を呼んで…」
スッ
かぐや「駄目よネロ、医者なんか呼んじゃ」
ネロ「かぐやさん…!」
かぐや「そんな事をすればその悪党を助けてしまう事になるわ」
736 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:43:20 ID:Xjq
ネロ「かぐやさんがやったのか…!なんでこんな事を!」
かぐや「ごめんなさいねネロ、私が間違っていたのよ。こんな世界最初から捨ててしまえばよかった」スッ
ネロ「一体何を言ってるんだかぐやさん…!アントワープではそんな素振りなかったのに…!」
アロア「ネ…ロ……」
ネロ「アロア…もう喋らなくていい!」
アロア「あの…ね…私、友達なのに…助けてあげられなくてごめんね…」ポロポロ
ネロ「何を言ってるんだ…そんなこと…!」
ベチャッ
かぐや「お前はネロの友達なんかじゃない。この子が一番つらい時に助けもせず、父親のいいなりになっていたくせに。調子のいい事を抜かすのはやめなさい」
ネロ「…っ!」
かぐや「安心しなさいネロ。アロアで最後だったのよ、コゼツもアロアの母親ももう潰しておいたから」
ネロ「二人の事も殺したって言うのか…!アロアだけじゃなく!」
かぐや「そうね、コゼツを殺したから世界の消滅が始まっている。まぁ、放っておいてもこの世界の人間はすべて死ぬけれど、ネロの為にこの村の連中は私が始末しようと思っているけれどね」
ネロ「…何故だ、なんでこんな事をしたんだ!」
かぐや「決まっているでしょうネロ。あなたを幸せにする為よ」
738 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:47:09 ID:Xjq
ネロ「僕を幸せにするためだって…?そんな事は馬鹿げている!言ったはずだよ、僕は元々の結末で満足しているって!」
かぐや「あなたは幸せというものを理解していない、あんなものは幸せなんかじゃない」
ネロ「これはかぐやさんの意見だ!コゼツさんもアロアもおばさんも…殺されるような事はしてない!」
かぐや「コゼツはあなたをコソ泥扱いした…いいえ、それはいい。けどあろう事か死んでしまえばいいなどと口にした、そんな悪党生きている価値など無いわ」
ネロ「きっと大金を失って気が動転してただけだよ!それにアロアやおばさんまで殺すなんて…!何もしなかっただろう二人は!」
かぐや「そうね、何もしなかった…この二人がコゼツを説得すればあなたは友達を失うことも仕事を亡くすことも無かったのに、あなたを助けなかった」
ネロ「アロアもおばさんも気が強い方じゃない!思っていても言えない事だってあったはずじゃないか!」
かぐや「悪党に屈する者もまた悪党なのよ。抗う者がいないから状況が変わらない、正義を掲げる者が少ないから悪が蔓延るの」
かぐや「だったら私が…その流れを断ち切る正義になるだけよ。世界から悪人だけを一人づつ殺して行けば善人だけの世界になる」
ネロ「そんなこと本気で言ってるの…?」
かぐや「そうね、私は間違っていない。私は力を持っている、だから私が正義なのよ」
かぐや「あなたは自分の結末を『幸せ』だと勘違いしているけど、間違いはこれから正していけばいい。今は私と一緒に来なさい」
ネロ「……断る。この世界は消えてしまうだろうけど、かぐやさんの考えには賛同できない」
かぐや「そう、でもどうでもいいわそんなこと。ネロの意思なんかどうでもいい、私はあなたを幸せにする」
かぐや「さぁ来なさい、来たくないなら好きにしなさい。気絶させてでも連れていく、それがあなたの為よ」
739 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:49:58 ID:Xjq
ネロ「……見くびらないでよ、かぐやさん」スッ
ガシャーン
かぐや「窓ガラスを叩き割った…?ネロ、あなたは何をしようというの?」
ネロ「…こうするのさ」スッ
ブスッ
ネロ「うぐっ…!ゲホゲホッ…」
かぐや「馬鹿な事を…!自分で自分の腹を突き刺すなんて…!私には治癒するような能力は使えないのよ!?」
ネロ「助けて貰おうなんて思って無い…それは始めてかぐやさんに会ったときから何一つ変わらないよ…」ゲホゲホ
かぐや「別の世界の医者に見せれば間に合うかもしれない…!来なさいネロ、こんな世界もういい。別の世界へ…」
ネロ「断る。寄らないで…突き刺すよ。僕はここで死ぬ。アロアと同じ場所で死ねるならそれもまた良いかもしれない」
かぐや「あなたという人は本当に何も理解していない!なんで幸せになれると私が言っているのに信じないの?どうして幸せになろうとしないの!?」
ネロ「理解して無いのはかぐやさんの方だ」
ネロ「僕は大きな成功なんか望まない、小さくても大きくても関係ない…僕にとっては絵を見る事もパトラッシュと一緒に死ぬことも幸福な事だったんだ」
ネロ「それなのにかぐやさんは…自分の考えを押し付けて、僕が幸せじゃないなんて思いこんでる…」
かぐや「思いこみなんかじゃないわ、だって私がそう思っているのだから間違いないわ。あなたは幸せなんかじゃない、酷く不幸な少年よ」
740 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:52:56 ID:Xjq
ネロ「いいや、違う…かぐやさん…神様にでもなったつもり…?強力な力を持ってて何でも思い通りに出来るから?」
かぐや「私だけの意見じゃないわ、他の世界の人間も恐らくは現実世界の人間もあなたの事を不幸だと言う、あなたがどう思って居ようと関係なく【フランダースの犬】は不幸な結末のおとぎ話なのよ!」
ネロ「違う…それは違うよかぐやさん」
ネロ「僕が幸せか不幸かを決めるのは作者でも現実世界の読者でもましてやかぐやさんでもない……」
ネロ「僕の人生の価値を決めるのは僕自身だ」
かぐや「……」
ネロ「友達と縁を切られようと家族を失おうと仕事を失おうとコンクールに落選しようとも…僕は幸せなんだ!僕がそう思い感じてるんだから間違いない!」
ネロ「僕が自分の人生を幸せだと言っている以上…他人にその事を覆したりなんかできない【フランダースの犬】は読者にとっては悲しいおとぎ話かもしれないけど、僕にとっては…」
ネロ「本来なら見る事の出来ない絵画を目にし、大切な家族と一緒に神様の側にまで逝ける…これ以上に無い幸せの物語だ」
ネロ「でももうそれも叶わない…。この世界はもう消えてしまう、だったらせめて…理不尽な理由で殺された友達の側で死ぬよ」
かぐや「違う…違う!そんなものは…!慰めにすぎない!本当に幸せになれないから諦めて妥協をしているだけよ!」
ネロ「僕はね…かぐやさんの事を本当に家族だと思ってたんだ、姉だと思ってるって言うのも本心だよ。一緒に過ごした時間は確かに楽しかった」
ネロ「でも…僕の幸せを理解してくれず、大切な友達とその家族…僕の住む世界を無茶苦茶にしたかぐやさんを……もう慕う事は出来ない」
ネロ「今のかぐやさんは、僕にとって世界を壊して僕を不幸にした……ただの悪党だよ」
741 :◆oBwZbn5S8kKC :2016/02/08(月)00:56:37 ID:Xjq
今日はここまでです
かぐや姫 オズの魔法使い編 次回に続きます
744 :名無しさん@おーぷん :2016/02/08(月)00:59:32 ID:PUs
おつおつ
754 :名無しさん@おーぷん :2016/02/08(月)09:45:55 ID:PjW
1乙!
かぐやは自分が一番嫌っていたはずの悪人になった、とよりによって大事な人に宣告されちゃったのか…辛い
755 :名無しさん@おーぷん :2016/02/08(月)11:37:50 ID:8NT
自分の人生の価値は自分で決める……
このネロはゲッコーみたいに自分のモノサシ持ってるな…格好いい…
756 :名無しさん@おーぷん :2016/02/08(月)12:25:53 ID:AYD
乙です!
旧かぐや…。
やっぱりやっちゃったか…。
ここからどう変わってくのか楽しみです。
続き待ってます!!
757 :名無しさん@おーぷん :2016/02/08(月)19:14:30 ID:A63
乙です
この回は何とも言えない辛さがあるな……
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 かぐや姫とオズの魔法使い編
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