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友「ちょっと戦争行ってくる。」

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Part4

62:緑メ:10/11/5 01:40 ID:cSpAHp.McE
>>61お気に召していただけたのなら幸いです。・∀・




男「ねえ、ちょっと待ってよ。」

友「何だ、また君か。」

男「いやいや、今日は用事。」

………………



63:緑メ:10/11/5 01:55 ID:FM94wc4.O6
友「用事…とは、これか。」

男「そ。」

女「ふふ。」

ガヤガヤザワザワ

友「はじめから祭へ行くから一緒にどうかと言えば良いんだ。」

男「じゃあ君、そんな誘い方で来るのかね。」

友「まさか。」

男「ね?」

友「ああ。」

男「じゃ、行こうか。おいで、女。手を繋ごう。」

女「ふふ、はい。」

男「君は?」

友「ふざけるな僕はいらん。」

………………

女「では、専課が一緒なのですね。」

友「ええ。腐れ縁と言いましょうか。」

男「それは酷くないかね。」

友「適切な言葉だと思ったのだが。」

男「うわあ、あっ、林檎飴食べよう。」

友「僕も。」

女「あら、やっぱり仲良し。」

友「…」

男「ふふ」

…………………

64:緑メ:10/11/5 02:03 ID:aFLpXIlUeE
友「はぐれてしまいましたね」

女「あの人の事だから、大丈夫でしょう。」

友「しかし、探さなくても?」

女「ええ、大丈夫。」

友「(何だろう、この自信と確信は。)」

女「それより、そろそろ神輿が通りますよ。」

友「あ、ええ…」

何だろうか、彼女は今まで出会ったどの女性からも感じられない、なにか不思議な雰囲気を纏っているように思われた。

神輿が通る。
彼女は少し離れた場所からそれを観ようと言った。


65:緑メ:10/11/5 02:15 ID:g/4JcTXXFc

少し喧騒から離れると、まるで第三者的に祭が見えて異様であった。
自分が先程まであの中に居たのが少し嘘のように感じられる程、心が落ち着いてゆくのがわかる。
成る程、あれが群集心理の正体か。
などとぼんやり思いながら、何故か先を歩く彼女にただついていく僕がいた。

彼女が歩を止める。
僕も少し距離を置いて止まる。

二人でぼんやりと。
あるいは彼女は楽しそうに、僕はそれを遠い世界の出来事のように眺めた。

きれいですねと彼女が言った。
僕はそうですねと答えた。

66:緑メ:10/11/5 02:26 ID:EKSJzxcqmM
女「お願い申し上げます。」

彼女は突然僕を見上げて言った。
少しばかりの動揺が走る。
彼女の声には、僕を掻き乱す何かが潜んでいる事は知っている。
目を合わせては、隠しきれない何かが動くのも知っている。
そして泳がせた後に瞬きした瞼の裏には、彼が焼き付いている事も。

友「はい。」

役者のように、静かに答えた。

女「男を、どうかよろしくお願いしますね。」

そう、彼が焼き付いている、事も。
幾度も思い知らされているのに。


67:緑メ:10/11/5 02:37 ID:vs1J6Bpbok

女「彼は、泣虫だから、」

でも、僕は貴女も泣虫なのを知っています。
彼が盗賊討伐に出掛けると心配で目を腫らして居るのも。

女「考えすぎて煮詰まっているし」

貴女もでしょう。
貴女はいつも男の心配と、愛情で沢山で。

女「怖がりで、剣や銃なんて触りたくない」

そうですね、そしてもっと怖がりな貴女はいつも彼にそんな護られている。

女「けど、貴方がいれば大丈夫だわ。」

友「僕が。」

女「そう。だって貴方は、彼が信頼を置いている。彼が信頼しているというのは、そういう事なの。大丈夫なの。」

そうです。
それで、大丈夫なのです。

68:緑メ:10/11/5 02:44 ID:EKSJzxcqmM

友「男は、大丈夫ですよ。彼は強いです。心も。それに」

女「それに、」

友「僕もついています。」

彼女は嬉しそうに笑ったので、僕もそれに準じた。

友「ああ、顔に藁糟がついて居ますね、少し目を閉じて。」

女「ありがとう。」

顔を歪めたのは、秘密。
彼女の額に、最初で最後の口づけをしたのは、僕が墓に持って行く、生涯の秘密。

69:緑メ:10/11/5 03:10 ID:cSpAHp.McE
女「みつけた」

男「はは、よくわかったね」

友「よく言うものだ。わざわざ面まで買って。」

女「貴方なら、どこにいてもわかるのよ?」

男「それは偶然、僕もだよ。」

友「…」

男「なんだい友、ヤキモチかい?」

友「馬鹿をいいたまえ。」

男「でも最近友がどこにいるかわかるようになってきたよ。」

友「気味の悪い奴だな、君は。」

男「だって君は俺の友人ですので。」

女「それなら、「俺は君の友人」でしょう?」

男「おまえまでそんな」

友「いや。」

男「ん」

友「いや、僕は君の友人、だ。約束した。」

男「!」

女「…ふふ…ね?」

友「ええ。」

男「うわあ何、何?二人してさ?」

友「それは」

女「秘密よ。」

男「ええー、なんだよ。」

友「そろそろ帰ろう。もう充分だろう。男、彼女をきちんと送るのだぞ。」

男「ん。勿論であります。友殿。」



70:緑メ:10/11/5 03:11 ID:cSpAHp.McE

男「じゃあ、明日。」

友「ああ。それでは。」

男「女、帰ろう。」

女「ええ、それでは。」

友「ええ。」

男と女は手を繋ぎ歩いてゆきます。
僕は何か息が苦しい思いで、ひとり家に帰ります。

少し、眉を寄せて朧げな月を見上げたのは、

秘密。秘密でございます。



71:緑メ:10/11/5 03:16 ID:EKSJzxcqmM
(※>>55迄がSSです。それ以下は緑メの趣味で続いてしまっていますwwwすみませんww)

友は勿論男の事を友人として好きなのです。唯一の友人として、何よりも大切にしているのです。

72:オリマー:10/11/8 03:41 ID:l5Pa902z2Y
久しぶりに楽しい読み物読んだww

乙カレー! 緑メに期待w

73:緑メ:10/11/9 00:34 ID:aFLpXIlUeE
>>72
ありがとう、期間までまだあるし
出来るだけ膨らまさせてもらうよ^^

感想スレにも沢山ありがとうございます。



友「さて。」

手紙を書き終える。
出立前というのに、家族と別れを惜しんだり、近所から持ち上げられることもない、全く静かな夜であった。

それは僕にはそうする家族のない事と、軍人である為に戦地に赴くのは当前であるという事実で説明がついた。

家族を失くしてからはむしろそうなるよう生きてきたのだから、僕の人生は全くもって良好だと言えた。


74:緑メ:10/11/9 00:53 ID:AZN8vEPq8w
僕のこれまでを振り返ると、死ぬ気は更々あったものではないし、この戦争でも生きて帰る事が出来るなら、それは勿論無上なのだが…活きる気もなかったように思われる。
人間として、どこか欠落している生き方だったかもしれない。

苦痛もないかわりに何の楽しみもないという人生。無感動にただ生きているという事。

だが、その全てを諦めていながらも、全てを渇望している僕が居ることは、無視する事が出来なかった。



75:緑メ:10/11/11 04:08 ID:.F.3lH/78g
それは、時折姿を見せては僕に問い掛ける。

僕は幸せなのだろうか

友「不幸ではない、少なからず。」

生きているのは楽しいかね

友「退屈ではないよ。」

何故生きているのだい

友「死んでいないからさ。」

そこに、彼という存在があらわれる。
確か、はじめての会話はこうだ。

男「葬式みたいな顔だね。」



76:緑メ:10/11/11 04:23 ID:g/4JcTXXFc

友「失礼な奴だな。」

男「おや、怒らないのか。」

友「自覚がないわけではないのでね。」

彼は全くいやみのない素直な表情で笑った。それがあるいは、僕の始まりであったのかもしれない。
それから幾年かを、彼と、彼の力が引き付ける何かと、誰かとを過ごした。

僕は今一度、僕に問うた。

僕は幸せであっただろうか。

友「その分の不幸も味わったがね。」

生きているのは楽しかっただろうか。

友「その分の退屈も過ぎたので。」

何故生きているのかね

友「決まっている、死にたくはない。」

諦めはついた。それは過去において。
しかし望む事ができるのならば、僕はひとらしい生のみちを渇望する事にしたのだ。

77:緑メ:10/11/11 04:45 ID:FM94wc4.O6
この戦争から生還したら、せねばならぬ事が山ほどある。
あの本の続きも出る事であろうし、春には桜の下を散歩せねばならないし、彼と酒を酌み交わしに行って、互いの生還を喜べたらこれ以上もない。

だが何より、彼と彼女を祝い、数年後生まれるであろう子供に名前をつけてやらねば。

その分これから少しの間、苦労するのであろうが。しかし、先を見れば戦争などほんの少しの間なのだ。


78:緑メ:10/11/11 04:48 ID:cSpAHp.McE

この手紙は見送りに来る彼女に直接願い出せば良いだろう。
手紙を荷物に仕舞い、玄関に立つ。

思い出と呼んで良いものだろうか、朧げな両親の顔を思い返して、静かに礼をする。
僕の両親は、僕がほんの子供であった時に亡くなったのでその姿は僕とそう変わらぬ若い姿であった。

直ぐに帰ってきます。貴方達の家を淋しくはさせません。
そう言えばよかったかもしれない。
だが僕はあえて、頭を撫でられ負ぶられていた子供の頃のような言葉で、一言だけ発する。


友「ちょっと戦争行ってくる。」



ついでにと迎えに来ていた彼が、微かに笑いながら冗談を返した。
僕も少し驚嘆の表情を崩せぬまま、同じく笑い家の戸を閉じた。




79:緑メ:10/11/11 04:50 ID:FM94wc4.O6





これが、僕の生涯の記録であった。






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