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料理人と薬学士

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Part15
189 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 21:33:14.71 ID:Fga/dJyAO
料理人「あはは」
剣士はそう言いながらも動いている
常にまわりに気を配っていて、人を動かすのも上手いようだ
料理人「おお、やっぱりすごいなあ」
剣士「ああ、俺はこうやって人を使うからあんたみたいに動けないよ」
料理人「うちは小さい酒場だったからね、女将さんは一人でだいたいこなしてたし」
剣士「大楠中央区の酒場なら何件か行ったことがあるが、なんと言うか豪快な女将さんがいた所があったな」
剣士「まああそこがあんたの実家の酒場かは分からんが」
料理人「私が大楠出身なの知ってるの?」
剣士「忍ってのはスパイだからな、情報が命だ」
剣士「まあお嬢様から聞いて、調べさせたんだがな」
料理人「ああ、学者さんがいたなあ」
剣士「さて、あんたはもう上がってくれ、お客様だからな」
料理人「いいのか?」
執事「ではご案内致します」
料理人「うわっ!」
剣士「この爺さんの方が俺よりよっぽど忍っぽいよなぁ」

190 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 21:34:41.05 ID:Fga/dJyAO
第四章「料理人と戦争」 完
次回ーー
魔王達の対決の時が迫る中、南港の爆弾トークが始まる
楽しい一時の後、高塔の魔王の案内により、いよいよ料理人達は戦場に立つ
魔王狩りの許されぬ罪を魔王達はどう裁くのか
魔王狩りが語る開戦の真実とは?
そしてついに戦争は終局へ……
果たして、世界に平和は訪れるのか?
最終章「料理人と平和」
料理人達の戦いが始まる……

191 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 21:40:30.90 ID:Fga/dJyAO
なんとか今回分書ききりました
あと1、2回で終わります
複雑なお話は疲れますね
キャラの心情がすごく難しい
次はお気楽な話を書きたいな、と思います
また時間がかかるかも知れませんが、よろしくお願いします

192 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/16(日) 22:24:02.68 ID:QvTya/rj0
乙。

193 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/20(木) 23:41:43.71 ID:SLzNl9wAO
今回でこのお話は一旦終わります
寝落ちたらすみません
では、更新します


194 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/20(木) 23:45:11.52 ID:SLzNl9wAO
最終章「料理人と平和」
高塔の王国軍は東森地区に入ると、あっと言う間に大楠まで攻め入り、西の砦までも奪い取った
これは魔王狩りが敵陣にいることを考えれば、恐ろしい程のスピードと言えるだろう
戦を進めたのは高塔王と魔王の協力で、ではあるが、やはり高塔の魔王の役割は大きかった
鷹の目と豹の足を持つと言われる魔王はボーイッシュな見た目と服装に小さな冠とマント、身長は料理人と同じくらいの少女である
味方には敬愛、敵からは畏怖の念を込めて、小冠の魔王と呼ばれている
小冠「魔王狩りくん、動かないみたいだなぁ」
小冠「ボクは一度高塔に帰るから、王子様によろしくね」
高塔兵「はい!」
高塔兵「魔王様もお気をつけて!」
小冠「大丈夫、ボク足は速いからさ」アハハ
小冠の魔王は帰還魔法と見紛うほどのスピードで走り、一時間もかけずに高塔中央まで帰還する
小冠「気持ちいい〜!」
大楠の魔王が亡くなったと聞いた時は半年泣き崩れた小冠の魔王だが、既に二年経つ
元々復讐などするような性格ではないし、勝勢となった今では、無理に攻める意義も感じなくなっていた

195 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/20(木) 23:47:55.15 ID:SLzNl9wAO
そして何より自分にとっては大楠の魔王と同じくらい大好きなお客さんが高塔に来るのだと言う
これは急いで帰らなくてはなるまい
小冠の魔王は子供好きが多い魔王の中でも特に子供好きだ
小冠「待ってて南港!」
小冠「すぐ着くよぉ!」
小冠の魔王は南港達が高塔の城に着いたその日に帰還した
衛兵「ま、魔王様、お帰りなさいませ!」
小冠「たっだいま〜!」
執事「お帰りなさいませ」
小冠「うわあっ!」
衛兵に明るく声をかけた直後、背後から聞き慣れた声がかかる
鷹の目の小冠の魔王に奇襲をかけられるのはこの執事くらいかも知れない
いったいどうやって存在を消しているのか全くの謎である
執事「父譲りの執事流縮地法でございます」
本気で言ってるのか冗談かは判別がつかない
小冠「すごいよね〜、いつかボクにも教えてね?」
執事「いやあ、この技は主足り得る気の持ち主を捉えて飛ぶ技、しかも執事と言う立場の者にしか使えませんので」
小冠「凄い技なのに理不尽なくらい不便だねえ」

196 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/20(木) 23:49:56.06 ID:SLzNl9wAO
執事「皆様ご歓談の最中でございます、きっと魔王様のご帰還を知れば喜ばれましょうぞ」
小冠「もう来てるんだ?!」
執事「昼前にお着きになりました」
小冠の魔王にとっては自分の家である
しかも豹の足である
瞬きの後に控えの間に辿り着く
執事「お帰りなさいませ」
小冠「……なんかすっごい悔しい……」
何時の間に、どうやって追い抜いたのか
頭を捻ってると可愛い声が飛んできた
南港「おお、小冠の〜!」
小冠「南港ぉ〜!」ダキッ
小冠「三十年ぶりかこら〜!」
南港を見つけると小冠の魔王は即座に飛びかかり
南港をくすぐりにくすぐる
南港「ぎゃははははっ、やめ、止めるのじゃ〜!!」
小冠「もっとボクと遊べよ〜!」
料理人「……なんか太陽が一個増えた?」
薬学士「すごい明るいねえ」
狩人「また綺麗な人だあ」
学者「うちの自慢の魔王様でござる」
小冠「おお、お嬢ちゃんもずいぶん久しぶり!」
小冠「うらあ〜、美人だなこの娘はあ〜!」ダキッ
薬学士「凄いね、全然疲れないんだね」
料理人「見てるだけで疲れちゃったよ」
狩人「燃え尽きそうですね」

197 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/20(木) 23:51:50.12 ID:SLzNl9wAO
料理人「魔王は色々、とは知っているものの、このキャラは初めてかも知れない」
薬学士「普通の女の子みたいだねえ」
料理人「秋風も付き合ってみると普通の人と変わらないしね」
薬学士「南港ちゃんと西浜ちゃんは……魔王っぽくはないね」
料理人「今の所魔王っぽい魔王いないね、北終の魔王なんか会ったことないけど聞いただけで魔王っぽいのに」
小冠「うん、お客さんも可愛い子ばっかりだね〜!」ギュッ
薬学士「うわわっ」
周りが引いている中、小冠の魔王は一人で騒いでいる
高塔王「魔王様、とりあえず落ち着いて下さい」
小冠「うん?」
小冠「この間までこんなちっちゃい子だったのに髭面になっちゃってこの子は」
高塔王「既に南港ちゃんにボコボコにされてるんで勘弁してください」
南港「東森の沢で釣りしてた時にな、こいつ服のまま飛び込みおってな」
小冠「あ〜、あったあった」
高塔王「若かったから仕方ないでしょう」
執事「それで溺れかかった王を助けるために私も水浸しです……」
南港「ほっといたら溺れる前には儂が助けたんじゃがのう」
小冠「執事くんもあの頃は落ち着き無かったのにねえ」
執事「ご勘弁を……」

198 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/20(木) 23:53:50.90 ID:SLzNl9wAO
南港「小冠のじゃっていつも落ち着きなく走り回っとるから見失うと完全に迷子じゃったのう」
小冠「あれ、藪蛇だなあ、南港ちゃんが五十年くらい前に東磯くんと嵐の海で釣りしてて溺れて……」
南港「あれは東磯が嵐じゃないと釣れんとか言うからじゃな……」
南港「魔王じゃから死なんけど沖に流されての、西浜とか捜索に来て大変じゃったなあ」
高塔王「私も魔王様達が大慌てで出て行ったから心配していた記憶がありますな」
南港「……あの時水の上走り回って探しに来たのう」
小冠「そうそう、南港ちゃんはちゃっかり空を飛んで帰って来てさ」
南港「水流に飲まれて水の中で魚を見ていたら一日くらい経ってての、寒かったが」
料理人「魔王って食べたり飲んだり呼吸しないでも死なないの?」
小冠「苦しいのは苦しいんだけどねえ」
南港「食べた方が明らかに元気になるぞ」
料理人「だからみんな際限なく食べるのか」

199 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/20(木) 23:55:46.09 ID:SLzNl9wAO
南港「料理人の料理は美味いのじゃ」
小冠「それは食べてみたいなあ」
料理人「ここの料理と比べられたらヘコむ」
薬学士「料理人ちゃんの料理も美味しいよ!」
狩人「ここの高級な食材も良いですけど料理人さんのジビエ料理は充分食べる価値ありますよ」
料理人「それなら嬉しいけど」
小冠「ジビエかあ、ウサギでも捕まえてこようかな?」
南港「小冠は素手でウサギ捕まえてこられるのじゃ」
薬学士「すごいね〜」
学者「魔王の中でも随一の足の速さだとか」
小冠「まあ魔法半分だけどね〜」
南港「魔法使ったら儂もまあまあ速いのじゃ!」
小冠「……キミは怠け過ぎなだけだと思うなあ」
南港「みんな儂がウザいから邪険にするのじゃ」
小冠「ええ〜っ、ないない」
料理人「普通に子供として接してるだけだと思うな」
小冠「そうそう、分かってるねキミ〜」
南港「それはそれで屈辱なのじゃ!」
学者「そういう所が難しいんでやんすなあ」

200 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/20(木) 23:58:22.39 ID:SLzNl9wAO
高塔王「せっかくの楽しい席ですが魔王様、戦況はどのような状態ですか?」
小冠「戦況? 楽勝ムードが漂いだして逆に士気が下がってきちゃったよ」
高塔王「それは不味いですな」
小冠「でも秋風ちゃんとか大剣くんとか、大戦で活躍したメンバーが前線に出てきちゃったから、流石の魔王狩りくんも押されまくってるよ〜」
執事「戦局を決定付けたのは魔王様が大楠西砦を奪還したことでしょう」
南港「……儂も戦えるのにのう」
小冠「ん〜、でも実際そんなに魔王が集まるのも不味いって」
小冠「女神様が出てきたらボクも多分逃げられないし」
南港「じゃが前回は魔王百人死んだ結果出てきたんじゃし、平気じゃないかのう?」
小冠「それがそうでもないんだよ、魔王狩りでいっぱい死んだのもあるけど」
小冠「前回大戦後に補填された魔王がそんなにいないっぽいんだよね〜」
薬学士「つまりその補填された人数を上回ったらその時点で……」
小冠「そう、魔王狩りはだから危ないの、ダメ、絶対」
学者「人間じゃ誰も出来ませんって」

201 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/21(金) 00:01:27.63 ID:exuFE9LAO
小冠「それにしても女神様の話意外と広まってる?」
南港「儂はこいつらにしか話しておらん」
小冠「まあいいけどさ、結局女神様の戦い見えたのボクだけだったし」
南港「その後女神様……七魔女に説教くらった魔王も何人か居たはずじゃろ?」
小冠「その時は口止めされたのと魔王第一世代からのルールの確認があったみたいだね、こっちはあんまり聞いてないけど」
南港「秋風とか聞いてないかのう?」
小冠「聞いてないよ、あの時秋風ちゃんボクと居たもん」
小冠「だいたいあの戦争ってボクら巻き込まれただけだし」
小冠「叱られたのはメインで戦ってた西の人とツツジ国の人だけだと思う」
南港「まあどっちにしても口外できん情報ばっかりじゃろうがなあ」
学者「歴史も興味あるんですがなあ」
薬学士「哲学者の石の記述も断片的だしねえ」
料理人「でもあんまり表に出たらダメな情報なのは分かるな、魔王だって驚異だもの」

202 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/21(金) 00:03:50.31 ID:exuFE9LAO
小冠「ボクは怖くないよ〜?」ギュッ
料理人「わわっ」
小冠「キミボクと同じくらい身長あるね」
料理人「周りが小さい子ばっかりだからなんか嬉しいな」
小冠「友達になろうよ!」
料理人「うん、もちろん」
南港「……料理人は魔王の友達を作る宿命でもあるのかのう?」
学者「仲良きことは美しきかな、ですなあ」
高塔王「なんだか既に私より魔王様たちと親しいな」
南港「悪ガキ王子は大人じゃからのう」
高塔王「だから南港ちゃんの方が年上だって」
南港「聞きたくないのじゃ〜」
小冠「ボクも実年齢はお婆ちゃんだもんね」
学者「いや、二百年生きてたらみんな骸骨でやす」
南港「新ジャンル骸骨ロリ?」
料理人「ないない絶対ない」
小冠「うん、そっかあ、ボクらが魔王になって百七十年以上経ってるんだね」
小冠「当時16で今……鉄斧さんとかはもう二百超えてて……秋風ちゃんがギリギリ二百手前かな?」
料理人「秋風が魔王になったのはいくつの時だったの?」
小冠「二十前後だよね、それしか分からないや」

203 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/21(金) 00:05:52.21 ID:exuFE9LAO
南港「あいつ当時から年を気にしておったからのう」
小冠「ボクなんかママの所じゃ新参だったし、秋風ちゃんが幾つでも関係ないと言うか気にしないけど」
南港「つーか魔王になってからのが圧倒的に時間長いんじゃ、儂等の年の差なんかミジンコじゃろうに」
薬学士「多分老けて見られるのが嫌なんだね」
料理人「それにしても歴史を聞いただけですごいスケールだよなあ」
高塔王「魔王になった頃と今ではだいぶ違うんでしょうなあ?」
小冠「いや、あんまり変わらないよ」
南港「古代からのルールが幾つかあっての、機械的発展は宇宙で行われているから儂等は自然と共に生きる、とか」
南港「あれ、これ魔王だけ聞いてるんかのう?」
学者「古代技術が禁術である事しか知りませんなあ」
薬学士「望遠鏡で星を眺めてたらたまに人工の星が見えるって聞いたことはあるかな、お師匠さまに」
小冠「魔王だったママさんから幾つか情報を引き継いだけど、なにしろ170年?」
料理人「……それは覚えてないかもねえ」

204 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/21(金) 00:09:36.72 ID:exuFE9LAO
小冠「ただボクらより圧倒的に長く生きてる女神様がいるんだから、ボクらが全部知っている必要無いのかも」
学者「でもうっかり禁術再生とかありそうでやす」
小冠「それはなんか無理っぽいよ?」
南港「魔法技術の方がすごい技術らしいしのう、古代技術は必要にならないのじゃ」
料理人「でも宇宙とかロマンあるけどなあ」
小冠「多分宇宙に出ようとしたら別の七魔女の女神様が出てきて、どかーん」
南港「有り得る有り得る」
料理人「それは怖いなあ」
小冠「でも緩やかな進化の後、自然になら、許される日も来るのかもなあ」
高塔王「私達はそれまで生きてないですね」
小冠「もう少し若ければ魔王になるの勧めたけど」
薬学士「!」
学者「魔王になる方法は分かるんでやすか?」
小冠「ん?」
小冠「キミたち魔王になりたいの?」
料理人「うん」
小冠「へえ〜、あらあら、まあ個人責任かなあ」
南港「儂も料理人と一緒に居たいかものう」
薬学士「私もダイエット不要になりたい!」
料理人「そこ!?」

205 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/21(金) 00:11:43.54 ID:exuFE9LAO
小冠「魔王になる方法ねえ、知らなくはないけど」
小冠「失敗したらみんなどっかーん、破壊神がどーん!」
料理人「うわあ……」
薬学士「やっぱり難しいんだあ……」
小冠「簡単なら不老不死になりたがる人みんな魔王でしょ」
小冠「実際お金や権力が有っても不老不死なんかお勧めしないけどねえ」
南港「生きる苦しみから逃れられる訳じゃ無いしのう」
料理人「秋風なんか今も苦しんでるよな……」
南港「うーん、でもわりと達観しとるんじゃ無いかの?」
薬学士「でも自分から戦争に出掛けるなんて……」
小冠「よく分からないけどさ、秋風ちゃんの事信じてあげたら?」
小冠「ボクだって死ぬために戦争してる訳じゃないし」
高塔王「死なれては困ります」
小冠「頼られすぎても困るんだって、さっき前線の士気が落ちてるって言ったじゃん」
南港「儂等がガチで人間救おうとしたら絶対人間駄目になるに決まっとる」
南港「儂に無理難題持ってきて逆恨みする奴らも同じじゃ」
高塔王「耳が痛いよ」