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女剣士「目指せ!城塞都市!」魔法使い「はじまりのはじまり」

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Part14
211 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 18:53:02.30 ID:7F6Mco7AO
魔王「だが、俺だけ生き残っても仕方ないだろ」
賢者「そのための軍略です」ピシッ
賢者「東はこれで間違いないと思いますが、敵戦力の主力は東です」
賢者「くれぐれも各人、油断無きように」
賢者「最も注意すべき土の王ですが、西からくるか荒れ地からくるか分かりませんが、帰還魔法等で東や南に回ってくることも警戒するべきですね」キュッキュッ
賢者「目撃情報が入れば狼主さんに当たってもらいます、一番速いですからね」キュッ
賢者「側近さんはどうなさいますか?」
賢者「私としては側近さんの闇の力を奪われても困るので水や風の王さんたちと一緒に北でもいいと思うのですが、」
賢者「南側が正直不安ですのでこちらに来ていただいても」
側近「南砦に参りましょう」
魔王「竜をまわそうか?」
賢者「竜さんは失礼ながら倒されても闇の力を奪われる心配が無いので、魔王さんと一緒に攻め上がってください」
賢者「防御は無敵でも攻撃は無限ではありませんので、かなり有効な戦力となるはずです」
魔王「やるなぁ」
賢者「ありがとうございます」

212 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 18:55:58.10 ID:7F6Mco7AO
賢者「では各人報告、提案等あればお願いします」
商人「はい、糧食の管理ですが、中央砦で一元管理するのではなく……」
…………
僧侶「回復は一時間から二時間ごとに行います」
僧侶「魔力吸収装置の改良を試みてますが重くなると戦闘に差し障るので置き型にしたものを使い……」
僧侶「あと過度な使用は弊害があるので、この点は厳重に注意を……」
…………
魔王「荒れ地の魔物についてはアンデッドが中心で、おそらくはタイガンでもアンデッドが出るから……」
…………
タイガン王子「とにかく山道を一般人が逃げるのだから進軍は遅くなるが……」
タイガン王子「足の弱い者はこっちから魔導師を派遣して直接ヤマナミに転移して……」
…………
賢者「信号弾の色を覚えてください、あと発動法ですが……」

213 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 18:58:27.83 ID:7F6Mco7AO
賢者「今回の作戦で一番注意すべき敵はなんだと思いますか?」
女剣士「人間の中の破壊神信徒だな」
賢者「御名答です」
賢者「魔法使いさんが行動不能になっているのも人間の中に破壊神信徒が居たため」
賢者「メイド長さんがタイガンまで私兵を遣わせてタイガン王子と共に探ってくれていますが……」
女剣士「魔物と違って一目で分かるとはいかないからな」
賢者「私としては風の王さんたちを餌に誘って叩き潰してしまうつもりです」
女剣士「それで北は手薄にしてその分を東に回してるわけか」
賢者「総合的な判断です」
賢者「殲滅戦はあまり気分がよくはありませんが、破壊神信徒などと言う者はのさばられても困ります」
賢者「別に人に危害を加えないなら自由ですが……」
女剣士「まあ躊躇はしないよ」
女剣士「こっちも命がかかってるんだからな」
…………
賢者「ヤマナミ王陛下、作戦は以下の通りです」
賢者「大きな負担を背負わせることになります、申し訳ありません」
ヤマナミ王「気にすることはない」

214 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 19:02:04.83 ID:7F6Mco7AO
ヤマナミ王「余も軍議に参加しよう、近く日程を設けそちらに向かわせてもらう」
賢者「有り難いことです」
ヤマナミ王「敵の魔物の中に強力な種族がいれば我が軍でも太刀打ち出来ぬ可能性もある」
ヤマナミ王「言わば、余、自身の保身のためでもある、気にするな」
賢者「ヤマナミ王陛下を失うことは勇者たちを失うに匹敵する人類の損失です、御自愛下さい」
ヤマナミ王「……すまんな」
メイド長「兄ちゃんが動けないとこはウチが走り回るからさ」
メイド長「借りも返さなきゃね!」
ヤマナミ王「お前には苦労をかけるな」
メイド長「それこそそのためにいるのがウチなんだから気にしないでよ」
…………

215 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 19:04:43.71 ID:7F6Mco7AO
賢者「メイド長さんには言っておかねばならないことがあります」
賢者「私たちは誰一人ヤマナミ王陛下やあなたを責める者はおりません!」
賢者「いつものようにお軽い感じで皆さんのピリピリしたムードを溶かしてください!」
賢者「それがあなたの一番大きな才能です!」
メイド長「う……」
メイド長「あんたはぁ……」ポロッ
ヤマナミ王「嫁にいるか?」
賢者「えっいやっそのっ///」
ヤマナミ王「妹を泣かせた仕返しだ」ハッハッ
賢者「……参りました」ハハッ
メイド長「……ウチで遊ぶな!」グスッ
…………
宿屋、軍議室
魔法使い(とにかく目が覚めないとは言っても軍議は聞いておきたい。)
魔王「軍議は聞いておきたいそうだ」
賢者「構いません、ただ、無理はいけません」
魔法使い(分かってる。)
ヤマナミ王「タイガン王子殿、この度は……」
タイガン王子「いやいや、気にしないでくれ……」
タイガン王子「平和になれば友好条約とかも結びたいな」
ヤマナミ王「ああ、そうしよう」


216 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 19:09:01.64 ID:7F6Mco7AO
魔王「とりあえずこの軍議が終わればオレはヤマナミ東砦に帰り翌日進軍を開始する」
魔王「各人良く戦略を把握し行動して欲しい」
ヤマナミ王「お主がコトー王殿か」
魔王「ああ、そうだ」
魔王「俺の話は?」
ヤマナミ王「聞いておる」
ヤマナミ王「なるほど、愛らしい見た目であるな」プッ
魔王「喧嘩は買わんぞ」ハハッ
ヤマナミ王「いや、これより我らは盟友よ」
魔法使い(なかなか面白い対決だなあ。)
賢者「面白い対決ですね、魔法使いさんもそう思ってるんでしょ?」
賢者「魔王君を挟まないとコミュニケーション出来ないのは残念です」
魔法使い(だねえ。)
…………
ヤマナミ王「こちらの東砦、ここに魔法も得意な重騎士隊を派遣しよう」
…………
ヤマナミ王「いざとなればニシハテに難民を受け入れてもらうことも考えている」
ヤマナミ王「交渉はこちらに任せておけ」
タイガン王子「頼みます」
女剣士「重ね重ねご助力に感謝します」
ヤマナミ王「いや、オリファン建設から税収も大きくあがり、ヤマナミは好景気に湧いている」
ヤマナミ王「こちらから感謝せねばならない」
女剣士「もったいないお言葉です」

217 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 19:16:53.25 ID:7F6Mco7AO
すみませんちょっと休憩します

218 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 19:31:45.04 ID:7F6Mco7AO
魔王「東砦から鎧を着せた兵を援軍に送る、必要が有れば言ってくれ」
ヤマナミ王「魔物だからと言うわけではないが、なるべくは自軍のことは自軍でやりたい」
ヤマナミ王「次にこのような戦争がないとは言えない故、彼我の力を知っておきたいのもある」
ヤマナミ王「ただ、無駄に兵の命を散らすわけにもいかぬ故、苦戦するようなら頼む」
魔王「分かった、命じておく」
タイガン王子「僕はオリファンに入った後東に兵と共に進めばいいだろうか?」
賢者「そうですね、対空戦力を残して東に行ってください」
賢者「その際に僧侶さんの護衛をお願いします」
タイガン王子「分かった」
賢者「戦争が長引くようなら僧侶さんには中央砦で魔力吸収装置を稼働し、全域の回復を行っていただきます」
タイガン王子「すげえな僧侶ちゃん」
賢者「我等が三英雄ですからね」
僧侶「///」
ヤマナミ王「その魔力吸収装置はいくらか譲ってもらえるだろうか?」
賢者「もちろん良いですよ」
僧侶「こちらが簡易版になりますっ」
ヤマナミ王「ふむ、彫金も自分で?」
僧侶「はいっ」
タイガン王子「器用だなぁ」
魔王「間近で見ていたが本当にすごいぞ」

219 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 19:33:36.40 ID:7F6Mco7AO
魔法使い(僧侶ちゃん人気だなあ。)
魔王「やはり力があるからな」
魔王「お前だって起きていればもてはやされただろ」
魔法使い(そんなことないよ……)
魔王「お前は変な奴だ」
魔王「自信満々なのかと思えば引いたり、皮肉を言ったかと思えばべた褒めする」
魔王「心が不安定なのかと思えばしっかりと人を導く」
魔王「光の力や僧侶の技より更に難解だ」
魔王「まあ、乙女心の謎解きはあの騎士殿に任せるが」クックッ
魔法使い(///)
盗賊(……なにを話してるんだろう)ムカムカ
…………
ヤマナミ王「それで、この封印装置は完成しているのか?」
僧侶「……いえ」
魔王「いや、これで封印できる」
僧侶「えっ!」
魔王「オレに一つ預けてくれ、必ず奴を封印する」
ヤマナミ王「これを悪用しないと言えるのか?」
魔王「断言しよう」
魔王「先の研究で、魔王を倒せる光の力をほぼ全ての存在が持てることは分かった」
魔王「ちなみに俺も持ってるそうだ」
賢者「こちらは魔法使いさんの研究資料です」
ヤマナミ王「ほう」バサッ
ヤマナミ王「……ふむ」
魔王「問題が有ればオレを倒せばいい」

220 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 19:36:22.92 ID:7F6Mco7AO
ヤマナミ王「命を差し出されては信じぬとは言えぬな……」ニッ
魔王「初めから信用はしていたと言いたげだな」
ヤマナミ王「魔法使いが信じているようだからな、魔法使いは難解な奴だが、信用はできる」
魔王「なるほどな」
魔王(ほら、評価は高いではないか)
魔法使い(動けたら逃げ出したい……)
盗賊(何を話してるんですか?)
魔王(騎士殿の姫様は可愛いと言う話だ)
盗賊(……ううっ魔王めっ)
魔王(うらやましいのか)ハハッ
盗賊(いつか倒す……!)
魔王(もうちょっと修行しろ)
魔王「さて、ではだらだら評定していても仕方がない、状況が変わればそれに併せて策を変えていくもんだ」
魔王「十分に準備ができたなら、オレは出陣する」
ヤマナミ王「分かった、こちらの準備が終われば知らせよう」
ヤマナミ王「我々は荒れ地に向け進軍する」
タイガン王子「僕も帰らねばな」
タイガン王子「女剣士ちゃ〜ん、またね〜!」
ヤマナミ王「……」
ヤマナミ王「女剣士ちゃ〜ん、またねー!」
女剣士「なななな……///」

221 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 19:39:37.68 ID:7F6Mco7AO
戦いが始まるのは、それよりわずか十数時間後であるーー
ーー深夜
暗闇では、ひたすら時計の音が響いている……
コッコッコッコッ……
賢者「……」
賢者「眠れないか……それはそうだ」
賢者「賢者など名ばかり……私は確かな準備を揃え、策を打てたのか……」
賢者「ヤマナミ王は何もおっしゃらなかった……」
賢者「いや、東砦の弱さは看破されていたな……」
賢者「賢王が相手とは言え……」
賢者「魔法使いさんならどうしただろうか?」
賢者「あの人なら大胆にもオリファンを空城にしたりしそうだな」ハハッ
賢者「私は何を考えてるんだ……」
賢者「女剣士さんはこういう時、すっと寝てしまうんだろうか……」
賢者「僧侶さんならわりと分かってくれそうな気がする……」
賢者「メイド長さんなら……」
賢者「///」
賢者「……思い出してしまった」
賢者「だいたい私のポジションってモロに中間管理職じゃないか……」
賢者「そうだ、大工衆の皆さんはちゃんと私の戦略を汲んでくれるだろうか……」
賢者「南砦は明らかに山越えも平気な強兵が来るだろうな……」
賢者「だから引き受けたのも本当だが……」

222 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 19:41:52.51 ID:7F6Mco7AO
賢者「どうせ今日は眠れないか……」
賢者はせっかく温まった布団から出て、宿屋の階段を下りて厨房に入る
賢者「紅茶でも飲んで落ち着こう……」
僧侶「あ」
賢者「あっと」
僧侶「眠れなくて〜っ」
賢者「同じです」フフッ
コポポ……
僧侶「お茶入りました」
賢者「ありがとうございます」
暗闇の中で、ただ沸騰するお湯の音だけが響く
賢者「……」
僧侶「……」
賢者「僧侶さんは好きな人いますか?」
僧侶「はわっ?!」ガチャーン
僧侶「あわわっ、ごめんなさいっ……!」
ガチャンガチャン
僧侶が掃除をする音が消えると、再び静寂が訪れる……
賢者「すみません」
僧侶「いやっ!あのっ!」
僧侶「……魔王くん」
賢者「ぶほっ」
僧侶「きゃあっ!ごめんなさいごめんなさいっ!」
僧侶「あの、……どこがって言うんじゃないんですけど、勇者様に似てるんです」
僧侶「雰囲気でもなく、口調でもなく、考え方でも無いんですけど……」
賢者「……責任感とか?」
僧侶「あ、そうかも?」
賢者「まあ魔王くんは女剣士さんと魔法使いさんを倒さなければならないですけど」
僧侶「インポッシブルですねっ」

223 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 19:44:13.00 ID:7F6Mco7AO
僧侶「この話は無かったことにっ」
賢者「分かりました」
コッコッコッコッ……
賢者「……私はよく分からないんですが、メイド長さんが好きなようです」
僧侶「す、素敵ですねっ」
賢者「そうですか?」
僧侶「素敵です」
賢者「魔法使いさんもそうですけどね、時々考えが読めない」
賢者「なのに素直なんです」
賢者「この二人は私以上に賢者なのだと思わされる……」
賢者「あ、これも聞かなかったことに」ハハッ
僧侶「そうします」ニコ
僧侶「賢者さんは私よりずっと賢いです」
僧侶「私は魔法のことしか分からないんです」
僧侶「料理も魔法使いちゃんに教わったし」
僧侶「体力も女剣士ちゃんや犬ちゃんを追いかけて自然についたんです」
僧侶「もっといろんなことできたら……」
賢者「だから宿屋なんですね」
僧侶「みんなの役に立ちたいんです」
賢者「私もです」
賢者「明日からは戦いの日々ですが……頑張りましょう」
僧侶「はいっ」

224 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/04(火) 19:45:37.47 ID:7F6Mco7AO
女剣士「……なんか物音しなかった?」
僧侶「はわっ」
賢者「いや、すみません、コップを落としました」ハハッ
女剣士「はぁ……まあいいけど」
女剣士「……私も紅茶ちょうだい」
僧侶「うん、お湯沸かしてた」
女剣士「あはは、やった」ポリポリ
賢者「女剣士さんも眠れないんですか?」
女剣士「単細胞だと思った……?」
賢者「いえ、むしろ繊細に見えますよ」
女剣士「ありがとう」
女剣士「魔法使いが目を覚ましたらなあ……」
女剣士「いや、頼っちゃ駄目か」
僧侶「ううん」
僧侶「二人で女剣士ちゃんを助けるって、約束したから……」
僧侶「魔法使いちゃんきっとすごくパワーアップして目を覚ますよっ!」
女剣士「あいつならそうだろうな」ハハッ
女剣士「あいつはいつも私を守ってくれる」
女剣士「あの日の約束を、ずっと守ってくれてる……」
…………
魔王「…………月か」
魔王「明るいと思えば……」
魔王「良く晴れるのはいいんだが、すごく冷えるのがなぁ」
魔王「オレもこの戦いが終われば……」
魔王「……問題は、これを分離できるか、かな」
魔王「……必ず、勝つ」