女剣士「目指せ!城塞都市!」魔法使い「はじまりのはじまり」
Part16
239 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:02:57.39 ID:Hq8l2HbAO
冒険者C「行く行く」
重騎士「ちょっと休憩だよ」
盗賊(何もしてないくせに……)
そこで、巨大な魔力が集まる気配に盗賊は気がついた
女剣士「避けろっ!」
女剣士の声が届いたか否か、目の前を覆い尽くす閃光が襲いかかってくる……
盗賊「!」
その閃光は盗賊の頭上を掠めると、砦の一部を砕いた
盗賊「……こ、これは……」ガクガク……
女剣士「超級魔法か、ちょっと厄介だな」
盗賊「断言しよう、ちょっとではない」
女剣士「大袈裟だな盗賊は」クスッ
盗賊「断じて大袈裟ではない、断じて!」
ふと横を見ると、お茶会をしていた冒険者たちが少し焦げていた
盗賊「……」ヨシッ
冒険者A「今よしって言った?!」
盗賊「キノセイ」
女剣士「もう一発くるぞ」
盗賊「あぶっ」
冒険者たち「ひえっ」
砦が少しずつ削れていく
女剣士「剣で攻撃するにはちょっと遠いなあ」
女剣士「盗賊くんさあ」
女剣士「あいつ起こしてきてよ」
240 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:05:58.50 ID:Hq8l2HbAO
難民はあらかたオリファンに入ったが、南砦が苦戦にみまわれたため、転送もままならない状況であった
次第に民たちがオリファンに入るスピードも遅くなってくる
足の遅い者は必然的に後ろに集まるためだ
僧侶「賢者さん聞こえますか?」
賢者(! これは僧侶さんですか? すごい!聞こえます!)
僧侶「広域認識魔法を応用した意思伝達魔法です、難民の皆さんがいっぱいになってます」
賢者(了解しました、転送をはじめます)
僧侶「良かった……」
僧侶の前方上空、魔物の群が……
狼主「ていっ」超級閃光魔法
狼たち「わおーん!」閃光魔法×25
犬たち「ワンワン!」強閃光魔法×3
……どんどん撃ち落とされていった
僧侶「お仕事あるかなあ……」
…………
ヤマナミ王は度重なる超級魔法攻撃にひたすらに耐えていた
ヤマナミ王「負傷者は後ろに下げろ!」
ヤマナミ王「回復部隊!」
回復部隊「ははっ!」
ヤマナミ王「次が来るぞっ、伏せよ!」
ババッ
超級閃光魔法がヤマナミ王の頭を掠めたその時、
ヤマナミ王「赤!」
ヤマナミ兵「はっ!」
241 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:11:42.67 ID:Hq8l2HbAO
赤い信号弾が打ちあがる
魔王軍兵は最初の信号弾で既に奇襲可能位置に来ていた
魔王軍隊長「魔導師を打ち取れ!」
魔王軍隊長「行けえ!」
魔王の兵、鎧を装備した……いや、鎧そのものが魔導師たちに襲いかかる!
ヤマナミ王「良いぞ、流石は僕らを苦しめた魔王軍だ!」
ヤマナミ王「気付けの酒を寄越せ!」
ヤマナミ兵「はっ」
ヤマナミ王は気付け薬を一口含み、吐き出す
ヤマナミ王「銀鎧兵を中心に中央軍進軍!」
緩やかにその重装備の騎士団が南に進軍を始めたころ、
…………魔王はようやく魔物の最後尾にたどり着いた
いや、魔物が待ちかまえていたと言うべきであろうか
巨体が売りと言わんばかりの一つ目の巨人である
魔王「古代魔族……か!」
古代魔族「腑抜けた闇の王よ、破壊神様に従わんか……」
魔王「足止め如きがオレとまともに口が聞ける気か……」
魔王の瞳が、一層青白く輝く
魔王「かかってこい」
巨人はその体に見合わぬスピードで槌を振り下ろした!
魔王「ふん」
魔王に直撃した槌はその場でぴたりと止まった
魔王「阿呆が!」
242 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:13:38.04 ID:Hq8l2HbAO
魔王はその槌を叩き落とし駆け上がる
元よりパワーファイターの魔王の斧槍が巨人の頭を叩き割るのに、背後で爪を気にする眼帯の娘がため息をつき終わる時間は必要なかった
魔王「雑魚がっ!」
ずしん、と轟音と砂煙を上げて倒れる巨人を背後に、魔王は口角を吊り上げて歯を見せた
眼帯「いい男すぎる……」ハアハア
古代魔族B「通すわけに行きませぬ」
古代魔族C「王よ、何卒槍をお納めください」
眼帯「我が蹴散らしましょうか?」
魔王「いや、ちょっと遊びたい」
眼帯「仕方有りませんねっ」ポッ
魔王「さあ、貴様等の王を退屈させるでないぞっ!」
…………
東砦では、女剣士がさすがに疲れを見せ始めていた
女剣士「遠くから撃ってくるばかりだな」
女剣士「しかし、何体魔導師がいるんだ?」
女剣士「数百体くらいが交代で撃ってきてると見るべきか、っと」
考えている間にも超級魔法が襲いかかってくる
女剣士「起きるかな、あいつは」
女剣士「私より砦がヤバい」
243 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:17:43.90 ID:Hq8l2HbAO
南砦では賢者の計略が当たり、殆どの敵は砦に取り付くこともできないでいた
しかし
ヤマナミ大工「大将、魔法も打撃も効かねえ!」
賢者「!」
賢者「撤退です!」
大工と賢者たちを引かせたもの、それは機械の兵たちであった
側近「あれはまずい、こちらの打撃のレベルが足りません」
賢者「そのようですね……」
賢者「少しづつ魔導砲で削っていきましょう!」
賢者「雷撃系を中心に行きます!」
賢者「……魔法使いさん……あなたに綺麗な砦を見せたかった……」
賢者「……私は先に転送をはじめます!」
…………
僧侶「敵が……突破してくる!」
空を飛ぶ魔物たちは、魔法の効きにくいもので固まって攻めてくる
僧侶「すーっ、はーっ」
僧侶「魔法が効きにくい敵を選択!」
僧侶「聖光魔法!」
僧侶の選択魔法攻撃は、眼前の敵をどんどん貫いていく……
僧侶「なんとか通じる!」
その時、僧侶の横に巨体の魔物が降り立つ
狼主「やりおるのう」
僧侶「ありがと!」ニコッ
狼主「わしもここから狙おうか」
僧侶「お願いします!」
タイガン王子「おお〜い!」
僧侶「あ、来たあっ」
狼主「とろくさいのお」
244 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:20:00.37 ID:Hq8l2HbAO
タイガン王子はようやく最後まで民と兵を導ききっていた
…………
ヤマナミ王軍はじりじりと侵攻するも、魔王兵と敵の魔物が入り乱れていては攻め入りづらい
ヤマナミ王「魔王兵を引かせるのが定石と言った所か」
ヤマナミ王「しかしまずは超級魔法を防がねばならん」
ヤマナミ王「どうしたものかな……」
混戦となっていては策を使うのも難しい
ヤマナミ王「少しずつ削って行くしか有るまいか……」
245 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:22:24.19 ID:Hq8l2HbAO
その頃、宿屋ーー
盗賊「魔法使いさん……」
魔法使い(あ、盗賊くんだー!ヤッホー!)
盗賊「みんな苦戦しています……」
魔法使い(!)
盗賊「目を……覚ましてください……」
盗賊は魔法使いの肩に手を当てた
魔法使い(えっ、ちょっ盗賊くん?)
魔法使い(ちょっ)
盗賊はゆっくりと
魔法使いにキスをした
魔法使い(わっほうわっほう!)
魔法使い(ごちそうさま!)
魔法使い(ってこれで目が覚めるわけないよね)
魔法使い(乙女の涙も効かなかったしね)
盗賊「……」ウーン
魔法使い(あ、盗賊くんがキスの仕方間違えたか考えてる!)
チュッ
魔法使い(ごちそうさま!)
盗賊「……」フーフー
魔法使い(あ、私じゃなくて盗賊くんが何かに目覚めたっぽい!)
魔法使い(ヤバいヤバい私の心臓が持たない!)
魔法使い(しかし竜の秘薬も効かない病ってそんなに無いはずなんだけどなあ)
魔法使い(例えば先天性症状、これはない)
魔法使い(今まで何度も使ったことあるし)
チュッ
魔法使い(このエロガキ!)
魔法使い(あと竜の秘薬が効かない症状って言ったら魔力過多症、これもないな)
魔法使い(たしか魔力過多症は回復魔法の副作用……)
246 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:24:22.05 ID:Hq8l2HbAO
魔法使い(ってアホか私はっ!)
魔法使い(思いっきり心当たりあるわっ!)
(僧侶ちゃんが命懸けで毎夜全魔力で回復魔法をかけ続けたせいだーーっ!!)
チュッ
魔法使いは、ゆっくりと自分の体の中心に魔力を集めていく
魔力過多による神経障害……今、魔法使いの体内には自己のポテンシャルを遥かに上回る魔力が集まっているのだ
魔法使いはその魔力を支配下に置くと
ゆっくりと目を覚ました
盗賊「はわっ!ままま、魔法使いさん!」
魔法使い「エロガキめ!」
盗賊「す、すみませ」
魔法使いは盗賊を強引に引き寄せると
深くキスをした
盗賊「///」
魔法使い「よっしゃーッ!!」
魔法使い「充・電・完・了!」
魔法使いは装備を整えると、遥か上空に転移した
魔法使い「ヒャッハーーーーっっ!!!」
魔法使い「おはよぉうっ!!ファッキンピーポー!!」
魔法使い「あ・い・し・て・る・ぜぇ〜〜〜ぃえっ!!」
247 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:27:19.49 ID:Hq8l2HbAO
魔法使い「選択!」
魔法使い「悪い奴!」
魔法使い「今日は私の第二の誕生日だーっ!!」
魔法使い「祝え!野郎共!!!」
魔法使いは杖を高々と掲げ、魔法を唱えた
魔法使い「超級、爆裂魔法!!」
その瞬間、空にオリファン全体を覆うような、巨大な太陽が現れた
…………
僧侶「うわっなにあれっ」
僧侶「……魔法使いちゃんだぁ……っ! よかったぁ……」ポロポロ
狼主「あやつも寝坊助じゃのう」
タイガン王子「すげえな、あれは」
…………
商人「魔法使いさん!」
商人「みんなあなたを待ってました!!」
賢者「……すごい魔力だ……」
大工衆「親方〜!空に女の子が!」
大工頭たち「魔法使いちゃ〜ん!! 愛してますぜ〜!!」
盗賊「魔法使いさん……愛していますっ!」
…………
魔王「あそこはオリファン上空か……なんだあの馬鹿魔力……魔法使いめ!」
…………
女剣士「遅いっつの……全く」
女剣士「……愛してるぜ……!」
女剣士「私の魔法使い!!」
…………
天空に渦を巻く巨大な光
その巨大な光球は、ほとばしる力を押さえ切れぬように
砕け散った!
248 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:31:09.01 ID:Hq8l2HbAO
砕け散った光球は
無数の光の矢となって地上に降り注いだ
ほとんどの魔物の魔力抵抗を物ともせず
超級爆裂魔法の破壊の雨が降り注ぐ!!
魔法使い「消えろおおっ!!」
その光の矢は、辺り一帯の魔物を次々と貫いていく……
魔法使い「……っふう!」
魔法使い「さあて、ここいらの魔物は九割九分殺ったかな?」
魔法使い「それでも耐えた奴が二百くらいいるか……まあ女剣士に任せておくかな」
魔法使い「ヤマナミ王を助けに行かないとね」
魔法使いはヤマナミに向け……、飛ぶ!
僧侶「魔法使いちゃあ〜ん!」
僧侶「愛してるよ〜!!」ブンブン
魔法使い「わっほう!わっほう!」
…………
魔法使いは瞬きほどの時間で荒れ地へと辿り着いた
ヤマナミ王「魔法使い!」
ヤマナミ王「おおおっ!魔法使いっ!」
魔法使い「お待たせーっ!!」
魔法使い「超級魔法に苦しんでるのかな?」
ヤマナミ王を確認すると魔法使いは魔法を唱えはじめた
魔法使い「属性選択!」
魔法使い「極大」
魔法使い「爆裂、閃光、氷撃、火球、聖光、即死、雷撃!」
魔法使い「砕け散れっ!!」
249 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:32:27.94 ID:Hq8l2HbAO
魔法使いが魔法を唱え終わると、七色の雨が敵陣に降り注ぐ
魔王軍の兵をよけ、敵兵のみを貫いていく
荒れ地の魔物はそれによって次々と力尽きていった
ヤマナミ王「おおっ! なんという魔力だ……!」
魔法使い「残党がいたらよろしくー!」
魔法使い「あとは魔王くんかな?」
…………
一方その頃
北砦ーー
土の王「闇の力をいただきに参った」
妖精「だっ、誰があんたなんかにっ!」
オカマ「どうやって入ったの!」
土の王「……簡単なこと」
土の王「人の皮を被れば勝手に導いてくれたわ……」
メイド長「まあ、誘い込んだんだけどねぇ」
土の王「!?」
メイド長「あんたを導き入れた破壊神信徒は全員捕縛したよ」
メイド長「あんたも観念しな」
土の王「……くくく」
メイド長「?」
メイド長「何がおかしいんだ!」
土の王「闇の力を得れば、もはやこの身に用はない……邪魔な魔王もまだ遠い」
妖精「くっくるしっ……!」
オカマ「ぐはああっ……!」
メイド長「や、やめろ!」
メイド長が大剣を振り下ろすと、土の王は
それをかわすことなく、その身を裂かせた……
250 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:33:39.79 ID:Hq8l2HbAO
土の王「……くくっ」
土の王「完成だ……」
土の王「」
妖精「」
オカマ「」
メイド長「……まさかっ」
メイド長「まさか!」
メイド長「またあいつらに迷惑を……!」
…………
東の森ーー
女剣士「魔法使いの馬鹿魔法くらってほとんどの魔物は沈黙した……」
女剣士「終わった、のか?」
女剣士「いや、まだ魔物が集まってくる……」
女剣士「……いや、魔物じゃない、ただ力が渦を巻いて……」
南東から急速に黒雲が広がってくる
それは魔王の闇の衣の副作用であろう
しかし今眼前に渦巻く闇は、明らかに性質が違う
渦巻く闇の中、女剣士はその中に産声を聞いた気がした
闇の密度が急激に上がっていく
雷雲が空を覆っていく
密度を増した闇が様々に姿を変えていく
いくつもの腕、いくつもの頭が次々に現れ、潰えていく
ぐちゃぐちゃに煮立った闇のスープがゆっくりと冷え固まり
破壊神が現れた
冒険者C「行く行く」
重騎士「ちょっと休憩だよ」
盗賊(何もしてないくせに……)
そこで、巨大な魔力が集まる気配に盗賊は気がついた
女剣士「避けろっ!」
女剣士の声が届いたか否か、目の前を覆い尽くす閃光が襲いかかってくる……
盗賊「!」
その閃光は盗賊の頭上を掠めると、砦の一部を砕いた
盗賊「……こ、これは……」ガクガク……
女剣士「超級魔法か、ちょっと厄介だな」
盗賊「断言しよう、ちょっとではない」
女剣士「大袈裟だな盗賊は」クスッ
盗賊「断じて大袈裟ではない、断じて!」
ふと横を見ると、お茶会をしていた冒険者たちが少し焦げていた
盗賊「……」ヨシッ
冒険者A「今よしって言った?!」
盗賊「キノセイ」
女剣士「もう一発くるぞ」
盗賊「あぶっ」
冒険者たち「ひえっ」
砦が少しずつ削れていく
女剣士「剣で攻撃するにはちょっと遠いなあ」
女剣士「盗賊くんさあ」
女剣士「あいつ起こしてきてよ」
240 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:05:58.50 ID:Hq8l2HbAO
難民はあらかたオリファンに入ったが、南砦が苦戦にみまわれたため、転送もままならない状況であった
次第に民たちがオリファンに入るスピードも遅くなってくる
足の遅い者は必然的に後ろに集まるためだ
僧侶「賢者さん聞こえますか?」
賢者(! これは僧侶さんですか? すごい!聞こえます!)
僧侶「広域認識魔法を応用した意思伝達魔法です、難民の皆さんがいっぱいになってます」
賢者(了解しました、転送をはじめます)
僧侶「良かった……」
僧侶の前方上空、魔物の群が……
狼主「ていっ」超級閃光魔法
狼たち「わおーん!」閃光魔法×25
犬たち「ワンワン!」強閃光魔法×3
……どんどん撃ち落とされていった
僧侶「お仕事あるかなあ……」
…………
ヤマナミ王は度重なる超級魔法攻撃にひたすらに耐えていた
ヤマナミ王「負傷者は後ろに下げろ!」
ヤマナミ王「回復部隊!」
回復部隊「ははっ!」
ヤマナミ王「次が来るぞっ、伏せよ!」
ババッ
超級閃光魔法がヤマナミ王の頭を掠めたその時、
ヤマナミ王「赤!」
ヤマナミ兵「はっ!」
241 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:11:42.67 ID:Hq8l2HbAO
赤い信号弾が打ちあがる
魔王軍兵は最初の信号弾で既に奇襲可能位置に来ていた
魔王軍隊長「魔導師を打ち取れ!」
魔王軍隊長「行けえ!」
魔王の兵、鎧を装備した……いや、鎧そのものが魔導師たちに襲いかかる!
ヤマナミ王「良いぞ、流石は僕らを苦しめた魔王軍だ!」
ヤマナミ王「気付けの酒を寄越せ!」
ヤマナミ兵「はっ」
ヤマナミ王は気付け薬を一口含み、吐き出す
ヤマナミ王「銀鎧兵を中心に中央軍進軍!」
緩やかにその重装備の騎士団が南に進軍を始めたころ、
…………魔王はようやく魔物の最後尾にたどり着いた
いや、魔物が待ちかまえていたと言うべきであろうか
巨体が売りと言わんばかりの一つ目の巨人である
魔王「古代魔族……か!」
古代魔族「腑抜けた闇の王よ、破壊神様に従わんか……」
魔王「足止め如きがオレとまともに口が聞ける気か……」
魔王の瞳が、一層青白く輝く
魔王「かかってこい」
巨人はその体に見合わぬスピードで槌を振り下ろした!
魔王「ふん」
魔王に直撃した槌はその場でぴたりと止まった
魔王「阿呆が!」
242 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:13:38.04 ID:Hq8l2HbAO
魔王はその槌を叩き落とし駆け上がる
元よりパワーファイターの魔王の斧槍が巨人の頭を叩き割るのに、背後で爪を気にする眼帯の娘がため息をつき終わる時間は必要なかった
魔王「雑魚がっ!」
ずしん、と轟音と砂煙を上げて倒れる巨人を背後に、魔王は口角を吊り上げて歯を見せた
眼帯「いい男すぎる……」ハアハア
古代魔族B「通すわけに行きませぬ」
古代魔族C「王よ、何卒槍をお納めください」
眼帯「我が蹴散らしましょうか?」
魔王「いや、ちょっと遊びたい」
眼帯「仕方有りませんねっ」ポッ
魔王「さあ、貴様等の王を退屈させるでないぞっ!」
…………
東砦では、女剣士がさすがに疲れを見せ始めていた
女剣士「遠くから撃ってくるばかりだな」
女剣士「しかし、何体魔導師がいるんだ?」
女剣士「数百体くらいが交代で撃ってきてると見るべきか、っと」
考えている間にも超級魔法が襲いかかってくる
女剣士「起きるかな、あいつは」
女剣士「私より砦がヤバい」
243 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:17:43.90 ID:Hq8l2HbAO
南砦では賢者の計略が当たり、殆どの敵は砦に取り付くこともできないでいた
しかし
ヤマナミ大工「大将、魔法も打撃も効かねえ!」
賢者「!」
賢者「撤退です!」
大工と賢者たちを引かせたもの、それは機械の兵たちであった
側近「あれはまずい、こちらの打撃のレベルが足りません」
賢者「そのようですね……」
賢者「少しづつ魔導砲で削っていきましょう!」
賢者「雷撃系を中心に行きます!」
賢者「……魔法使いさん……あなたに綺麗な砦を見せたかった……」
賢者「……私は先に転送をはじめます!」
…………
僧侶「敵が……突破してくる!」
空を飛ぶ魔物たちは、魔法の効きにくいもので固まって攻めてくる
僧侶「すーっ、はーっ」
僧侶「魔法が効きにくい敵を選択!」
僧侶「聖光魔法!」
僧侶の選択魔法攻撃は、眼前の敵をどんどん貫いていく……
僧侶「なんとか通じる!」
その時、僧侶の横に巨体の魔物が降り立つ
狼主「やりおるのう」
僧侶「ありがと!」ニコッ
狼主「わしもここから狙おうか」
僧侶「お願いします!」
タイガン王子「おお〜い!」
僧侶「あ、来たあっ」
狼主「とろくさいのお」
タイガン王子はようやく最後まで民と兵を導ききっていた
…………
ヤマナミ王軍はじりじりと侵攻するも、魔王兵と敵の魔物が入り乱れていては攻め入りづらい
ヤマナミ王「魔王兵を引かせるのが定石と言った所か」
ヤマナミ王「しかしまずは超級魔法を防がねばならん」
ヤマナミ王「どうしたものかな……」
混戦となっていては策を使うのも難しい
ヤマナミ王「少しずつ削って行くしか有るまいか……」
245 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:22:24.19 ID:Hq8l2HbAO
その頃、宿屋ーー
盗賊「魔法使いさん……」
魔法使い(あ、盗賊くんだー!ヤッホー!)
盗賊「みんな苦戦しています……」
魔法使い(!)
盗賊「目を……覚ましてください……」
盗賊は魔法使いの肩に手を当てた
魔法使い(えっ、ちょっ盗賊くん?)
魔法使い(ちょっ)
盗賊はゆっくりと
魔法使いにキスをした
魔法使い(わっほうわっほう!)
魔法使い(ごちそうさま!)
魔法使い(ってこれで目が覚めるわけないよね)
魔法使い(乙女の涙も効かなかったしね)
盗賊「……」ウーン
魔法使い(あ、盗賊くんがキスの仕方間違えたか考えてる!)
チュッ
魔法使い(ごちそうさま!)
盗賊「……」フーフー
魔法使い(あ、私じゃなくて盗賊くんが何かに目覚めたっぽい!)
魔法使い(ヤバいヤバい私の心臓が持たない!)
魔法使い(しかし竜の秘薬も効かない病ってそんなに無いはずなんだけどなあ)
魔法使い(例えば先天性症状、これはない)
魔法使い(今まで何度も使ったことあるし)
チュッ
魔法使い(このエロガキ!)
魔法使い(あと竜の秘薬が効かない症状って言ったら魔力過多症、これもないな)
魔法使い(たしか魔力過多症は回復魔法の副作用……)
246 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:24:22.05 ID:Hq8l2HbAO
魔法使い(ってアホか私はっ!)
魔法使い(思いっきり心当たりあるわっ!)
(僧侶ちゃんが命懸けで毎夜全魔力で回復魔法をかけ続けたせいだーーっ!!)
チュッ
魔法使いは、ゆっくりと自分の体の中心に魔力を集めていく
魔力過多による神経障害……今、魔法使いの体内には自己のポテンシャルを遥かに上回る魔力が集まっているのだ
魔法使いはその魔力を支配下に置くと
ゆっくりと目を覚ました
盗賊「はわっ!ままま、魔法使いさん!」
魔法使い「エロガキめ!」
盗賊「す、すみませ」
魔法使いは盗賊を強引に引き寄せると
深くキスをした
盗賊「///」
魔法使い「よっしゃーッ!!」
魔法使い「充・電・完・了!」
魔法使いは装備を整えると、遥か上空に転移した
魔法使い「ヒャッハーーーーっっ!!!」
魔法使い「おはよぉうっ!!ファッキンピーポー!!」
魔法使い「あ・い・し・て・る・ぜぇ〜〜〜ぃえっ!!」
247 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:27:19.49 ID:Hq8l2HbAO
魔法使い「選択!」
魔法使い「悪い奴!」
魔法使い「今日は私の第二の誕生日だーっ!!」
魔法使い「祝え!野郎共!!!」
魔法使いは杖を高々と掲げ、魔法を唱えた
魔法使い「超級、爆裂魔法!!」
その瞬間、空にオリファン全体を覆うような、巨大な太陽が現れた
…………
僧侶「うわっなにあれっ」
僧侶「……魔法使いちゃんだぁ……っ! よかったぁ……」ポロポロ
狼主「あやつも寝坊助じゃのう」
タイガン王子「すげえな、あれは」
…………
商人「魔法使いさん!」
商人「みんなあなたを待ってました!!」
賢者「……すごい魔力だ……」
大工衆「親方〜!空に女の子が!」
大工頭たち「魔法使いちゃ〜ん!! 愛してますぜ〜!!」
盗賊「魔法使いさん……愛していますっ!」
…………
魔王「あそこはオリファン上空か……なんだあの馬鹿魔力……魔法使いめ!」
…………
女剣士「遅いっつの……全く」
女剣士「……愛してるぜ……!」
女剣士「私の魔法使い!!」
…………
天空に渦を巻く巨大な光
その巨大な光球は、ほとばしる力を押さえ切れぬように
砕け散った!
248 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:31:09.01 ID:Hq8l2HbAO
砕け散った光球は
無数の光の矢となって地上に降り注いだ
ほとんどの魔物の魔力抵抗を物ともせず
超級爆裂魔法の破壊の雨が降り注ぐ!!
魔法使い「消えろおおっ!!」
その光の矢は、辺り一帯の魔物を次々と貫いていく……
魔法使い「……っふう!」
魔法使い「さあて、ここいらの魔物は九割九分殺ったかな?」
魔法使い「それでも耐えた奴が二百くらいいるか……まあ女剣士に任せておくかな」
魔法使い「ヤマナミ王を助けに行かないとね」
魔法使いはヤマナミに向け……、飛ぶ!
僧侶「魔法使いちゃあ〜ん!」
僧侶「愛してるよ〜!!」ブンブン
魔法使い「わっほう!わっほう!」
…………
魔法使いは瞬きほどの時間で荒れ地へと辿り着いた
ヤマナミ王「魔法使い!」
ヤマナミ王「おおおっ!魔法使いっ!」
魔法使い「お待たせーっ!!」
魔法使い「超級魔法に苦しんでるのかな?」
ヤマナミ王を確認すると魔法使いは魔法を唱えはじめた
魔法使い「属性選択!」
魔法使い「極大」
魔法使い「爆裂、閃光、氷撃、火球、聖光、即死、雷撃!」
魔法使い「砕け散れっ!!」
249 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:32:27.94 ID:Hq8l2HbAO
魔法使いが魔法を唱え終わると、七色の雨が敵陣に降り注ぐ
魔王軍の兵をよけ、敵兵のみを貫いていく
荒れ地の魔物はそれによって次々と力尽きていった
ヤマナミ王「おおっ! なんという魔力だ……!」
魔法使い「残党がいたらよろしくー!」
魔法使い「あとは魔王くんかな?」
…………
一方その頃
北砦ーー
土の王「闇の力をいただきに参った」
妖精「だっ、誰があんたなんかにっ!」
オカマ「どうやって入ったの!」
土の王「……簡単なこと」
土の王「人の皮を被れば勝手に導いてくれたわ……」
メイド長「まあ、誘い込んだんだけどねぇ」
土の王「!?」
メイド長「あんたを導き入れた破壊神信徒は全員捕縛したよ」
メイド長「あんたも観念しな」
土の王「……くくく」
メイド長「?」
メイド長「何がおかしいんだ!」
土の王「闇の力を得れば、もはやこの身に用はない……邪魔な魔王もまだ遠い」
妖精「くっくるしっ……!」
オカマ「ぐはああっ……!」
メイド長「や、やめろ!」
メイド長が大剣を振り下ろすと、土の王は
それをかわすことなく、その身を裂かせた……
250 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/02/05(水) 00:33:39.79 ID:Hq8l2HbAO
土の王「……くくっ」
土の王「完成だ……」
土の王「」
妖精「」
オカマ「」
メイド長「……まさかっ」
メイド長「まさか!」
メイド長「またあいつらに迷惑を……!」
…………
東の森ーー
女剣士「魔法使いの馬鹿魔法くらってほとんどの魔物は沈黙した……」
女剣士「終わった、のか?」
女剣士「いや、まだ魔物が集まってくる……」
女剣士「……いや、魔物じゃない、ただ力が渦を巻いて……」
南東から急速に黒雲が広がってくる
それは魔王の闇の衣の副作用であろう
しかし今眼前に渦巻く闇は、明らかに性質が違う
渦巻く闇の中、女剣士はその中に産声を聞いた気がした
闇の密度が急激に上がっていく
雷雲が空を覆っていく
密度を増した闇が様々に姿を変えていく
いくつもの腕、いくつもの頭が次々に現れ、潰えていく
ぐちゃぐちゃに煮立った闇のスープがゆっくりと冷え固まり
破壊神が現れた
女剣士「目指せ!城塞都市!」魔法使い「はじまりのはじまり」
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