ミサト「発想を逆転させるのよ!」シンジ「!」
Part3
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 21:37:50.81 ID:ZUl0lSUS0
バルディ「……そ、そうだ。思い出したぞ!あ、いや、思い出しましてございます」
シンジ「?」
裁判長「思い出した?」
バルディ「ええ、ええ。ですから先程も申し上げました通り少し混乱しておりまして。ですからその、血を流しているというだけでてっきりお刺されになっているものとばかり……」
シンジ(随分無理やりだな)
ミサト「シンジ君、ナイスなツッコミよ。証人は焦っているわ。今なら証言にもっとボロが出るかもしれない」
裁判長「では証人。混乱していたことについて話してもらえますか?」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 21:43:16.39 ID:ZUl0lSUS0
ー証言開始ー
バルディ『何分、死体なんていうものを見たのは初めてでございまして』
バルディ『それも血まみれの死体でございますでしょ?』
バルディ『もうわたくし、コンランしてしまいまして』
バルディ『それに、部屋の中も随分複雑な状況でございましたので』
バルディ『よくあるミステリードラマのようだと勝手にカン違いしてしまったのです。お騒がせいたしました』
裁判長「ふむう、なるほど」
サキエル「無理もありませんな。死体を見るなんて経験、滅多にするものではありませんから」
裁判長「ですが証言は正確に、慎重にお願いしたいものです」
シンジ(この証言は急ごしらえのその場しのぎだ。つつけばボロが出てくるはず)
シンジ(一気にたたみかけよう!)
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 21:48:37.21 ID:ZUl0lSUS0
ー尋問開始ー
バルディ『何分、死体なんていうものをみたのは初めてでございまして』
バルディ『それも血まみれの死体でございますでしょ?』
バルディ『もうわたくし、コンランしてしまいまして』
バルディ『それに、部屋の中も随分複雑な状況でございましたので』
シンジ「待った!」
シンジ「複雑な状況、というのは具体的にどういう?」
バルディ「散らかっていたと言いましょうか。野菜やらお肉やら、スーパーで買ったものと一緒にマイバッグのようなものが」
バルディ「赤地に白い羽のマークがついたものでございます」
バルディ「おそらく買い物帰りにお気の毒な目にあわれたのかと」
シンジ「なるほど、そういうことですか」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 21:53:31.71 ID:ZUl0lSUS0
ミサト「……シンジ君、あたしは今の彼の発言、少し気になるわね」
シンジ「そ、そうですか?」
シンジ(どうせだから証言に付け加えてもらうか)
シンジ「あ、あの。じゃあ今の、証言に加えてもらえますか?」
バルディ「構いませんとも。ほほほ」
シンジ(ほほほ……ね)
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 21:58:46.09 ID:ZUl0lSUS0
バルディ『何分、死体なんていうものをみたのは初めてでございまして』
シンジ「待った!」
シンジ「その割には随分落ち着いているようですね」
バルディ「ようやっと気持ちの整理がついてきたもので。ミステリードラマとは比べ物にならないのでございますね」
シンジ(まあ、それはそうか)
バルディ『それも血まみれの死体でございますでしょ?』
シンジ「待った!」
シンジ「死体の出血の状況はかなりハゲしかったと?」
バルディ「それはもう、地獄絵図、とはあのことでございましょう」
サキエル「それはそれは。さぞかし動揺されたことでしょう」
バルディ「ええ、ですから……」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:05:44.97 ID:ZUl0lSUS0
バルディ『もうわたくし、コンランしてしまいまして』
シンジ「待った!」
シンジ「コンランした、というと死体を見たショックでしょうか?」
バルディ「左様でございます」
シンジ「しかしあなたはミステリードラマを見るのが趣味だと言っていました。案外、もう慣れてしまっていたのでは?」
バルディ「まさか、それはテレビの見すぎというものでございます!現実とふぃくしょんの区別くらい心得ておりますので」
サキエル「弁護人にはテレビと現実の区別をしっかりとつけてもらいたいものですな」
裁判長「弁護人、テレビは一日二時間以内に控えるように!」
シンジ「は、はい……」(僕はムジツだぞ……)
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:10:48.94 ID:ZUl0lSUS0
バルディ『それに、部屋の中も随分複雑な状況でございましたので』
バルディ『散らかっていたと言いましょうか。野菜やらお肉やら、スーパーで買ったものと一緒にマイバッグのようなものが』
シンジ「待った!」
シンジ「マイバッグ……ですか?」
バルディ「ええ、ですから現場に落ちていた……」
バルディ『赤地に白い羽のマークがついたものでございます』
シンジ「待った!」
シンジ「それは確かにその模様だったのですか」
バルディ「それはもう。下地が妙にカゲキな色合いでしたからはっきりと印象に残っております」
シンジ(なるほど、そこの所の記憶ははっきりしているみたいだな)
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:17:19.19 ID:ZUl0lSUS0
バルディ『おそらく買い物帰りにお気の毒な目にあわれたのかと』
シンジ「待った!」
シンジ「何故、買い物帰りだと?」
バルディ「先程も申し上げました通り、スーパーで買ったと思われる肉やら野菜やら」
バルディ「お見受けしたところ女性のようでございましたので、恐らくは買い物帰りだったのだろうと」
バルディ『よくあるミステリードラマのようだと勝手にカン違いしてしまったのです。お騒がせいたしました』
シンジ「現実に人が死んでいるのに、ミステリードラマのようだと思ったんですか?」
バルディ「ほら、よくありますでしょ、ドアを開けたら人が倒れていたという……」
シンジ「よくある、とはどういう?」
バルディ「いやですね、テレビドラマの一つも見ないのですか」
サキエル「視野の狭い弁護人は証人の発言にいちいち突っかからないで欲しいものですな」
裁判長「弁護人はまだまだ若いのですから、ドラマの一つも見ておくように」
シンジ(り、リフジンだ……)
ミサト「慌てて組み上げられたこの証言は穴だらけなはずよ。きっとつつけば簡単にボロが出てくるわ」
シンジ(そうだ、ここで一気にたたみかけるんだ!)
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:20:29.81 ID:ZUl0lSUS0
バルディ『何分、死体なんていうものをみたのは初めてでございまして』
バルディ『それも血まみれの死体でございますでしょ?』
バルディ『もうわたくし、混乱してしまいまして』
バルディ『それに、部屋の中も随分複雑な状況でございましたので』
バルディ『散らかっていたと言いましょうか。野菜やらお肉やら、スーパーで買ったものと一緒にマイバッグのようなものが』
バルディ『赤地に白い羽のマークがついたものでございます』
シンジ「異議あり!」
事件ファイル
『特注バッグ』
シンジ「それはヘンですね」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:27:15.91 ID:ZUl0lSUS0
バルディ「ヘン?」
シンジ「赤地に白い羽。そのマークがあなたに見えたはずがない」
シンジ「だってこのバッグは事件当時、被害者の血を吸って赤く染まっていたんですから!」
シンジ「混乱していたなら尚更、あなたにはこのバッグが、ただの赤いバッグに見えたはずだ!」
バルディ「!!?!?!!??」
裁判長「なんと、それは本当ですか!?」
シンジ「はい。こちらの写真を見てもわかる通り、濃い赤地を貴重としたこのバッグは、血を吸ってすっかり白のマークが見えなくなってしまっています!」
裁判長「ほほう、確かにこれでは色を見分けるのは大変そうですね」
バルディ「そ、それは……そうだ!」
バルディ「同じバッグを最近見かけて、色具合からてっきり……」
シンジ「残念ですがそれは有り得ないんですよ。このバッグは被告人が被害者のために作った特注品ですからね!」
バルディ「なっ!?と、特注品……でございますとぉ……!?」
シンジ「その通り、だからあなたがこのバッグの模様を知っていたはずがないのでございます!!」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:32:22.37 ID:ZUl0lSUS0
裁判長「証人、これはどういうことですか!?」
シンジ「なぜ証人に白のマークが見えたか」
シンジ「簡単です。刺される直前に被害者が持っていた、『まだ血に濡れる前のバッグ』を見ていたからです」
シンジ「何らかのショックと一緒にそのバッグの派手な模様が記憶に染み付いてしまったのでしょう!」
シンジ「例えば人を刺してしまった拍子に……とかね」
ザワザワザワザワザワザワ
裁判長「カンカンカン!静粛に!」
シンジ「さあ、どうですか証人!」
バルディ「ぬ、ぬぐぐ……さっきから、いちいちつっかかりございましやがって……!」
バルディ「そこの男がやったんだ……!おれ……わたくしは確かに見たんだ!さっさと……死刑に……!」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:37:03.56 ID:ZUl0lSUS0
バルディ「……あ!そ、そうだ!やっと本当のことを思い出しました!」
裁判長「一体いくつ本当のことがあるのですか!」
バルディ「こ、今度は間違いございません。確かに思い出したのでございます」
裁判長「法廷での発言は慎重にお願いしますよ。段々あなたという人間が信用ならなく思えてきました」
裁判長「言葉遣いなんか明らかに変ですしねぇ」
バルディ「むぉっ!?」
バルディ「あの、こ、今度こそ間違いなくございますので」
ミサト「いい調子よ、シンジ君!あと一歩の所まで来てるわ」
ミサト「あの証人をギャフンと言わせてやりましょう」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:42:29.27 ID:ZUl0lSUS0
ー証言開始ー
バルディ『わたくし、少々混乱しておりましたが、その後我に帰ったのでございます』
バルディ『もしかしたらまだ被害者の方が助かるかもと思い恐る恐る中へ』
バルディ『室内を隅々まで歩き回り、その時にゴミ箱の中の包丁を発見いたしました』
バルディ『被害者の方の様子もしっかり確認し、バッグの模様もその時見分けたのでございます』
バルディ『流石に落ち着いて見れば染まっているというのはわかりますから』
シンジ「そんな!さっきあなたは人の死体を見るのははじめてで混乱していたと言ってたじゃないですか!」
バルディ「そ、それは、そうでございますが。わたくしミステリードラマを見るのが趣味でして」
バルディ「ああいった探偵ものに憧れてしまい、つい様子を……」
サキエル「勝手に現場に踏み入るのは感心出来ませんが、証人はまだ被害者が絶命しているとは知らなかったのです」
サキエル「人助けの一心があってのことでしょう」
裁判長「とにかく弁護人、尋問をお願いします」
シンジ「分かりました!」
シンジ(今までの証言が嘘だったのなら、この証言だって嘘に決まってる。つき崩すなら今しかない!)
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:47:25.74 ID:ZUl0lSUS0
ー尋問開始ー
バルディ『わたくし、少々混乱しておりましたが、その後我に帰ったのでございます』
バルディ『もしかしたらまだ被害者の方が助かるかもと思い恐る恐る中へ』
バルディ『室内を隅々まで歩き回り、その時にゴミ箱の中の包丁を発見いたしました』
シンジ「異議あり!」
事件ファイル
『割れたガラス』
シンジ「……張手さん。もう、嘘をつくのはやめにしたらどうですか?」
バルディ「う、嘘ですと?」
シンジ「こちらの写真を見てください。事件当時の被害者宅内の状況です」
サキエル「そ、それは先程絵馬刑事が提出した……」
サキエル「ああっ!!」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:53:09.69 ID:ZUl0lSUS0
裁判長「ど、どういうことですか!私にもわかるように説明しなさい!」
シンジ「見たまんまですよ。室内には割れたガラスの破片が飛び散っていました」
シンジ「ガラスが散乱して、しかも死体のある部屋を落ち着いて隅々まで歩き回るなんておかしいでしょう!」
バルディ「ぎゃ、ぎゃふん!?」
バルディ「な、なんなんだテメェ、人の発言の揚げ足とってアレコレ探り入れやがって……!」
バルディ「さっきっから、なんなんだよあんた一体!?」
シンジ「質問に答えてください証人!どうしてガラスの散らかっている他人の室内を歩き回るなんて奇異な行為に出たんですか!?」
バルディ「ぐっ!!そ、それは……その……」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:58:53.02 ID:ZUl0lSUS0
サキエル「異議あり!」
サキエル「さ、先程から弁護人は意味の無いことで証人を動揺させる物言いを多発しており……」
裁判長「意味のない……確かに、先程から弁護人の目的が的を得ません」
裁判長「弁護人はどうしたいのですか?これではまるで」
裁判長「証人を告発しているかのようですぞ!」
シンジ「……」
シンジ(そうだ、間違いない。ここで一気にたたみかけるんだ!!)
シンジ「……ええ」
シンジ「間違いありません、今回の被害者洞木ヒカリさんを刺したのは被告人ではなく、今そこに立っている証人、張手イエルさんだったんです!」
裁判長「なんと!」
サキエル「そ、そんな!?」
バルディ「な、なんだと!!」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 23:04:40.69 ID:ZUl0lSUS0
ミサト「よく言ったわ、シンジ君」
バルディ「さ、さっきから勝手なことばかり言いやがって」
バルディ「お、俺が犯人だとか訳のわからねえことを……」
バルディ「そ、そうだ!なら、証拠はあるのか!?」
シンジ「し、証拠だって……?」
バルディ「俺が犯人だっていう証拠でもあるのか!?」
バルディ「ないなら俺のことを訴えるなんて出来ねえだろ!」
裁判長「……その通りですね。証拠がないのであれば証人を告発することは出来ません」
シンジ「そ、そんな……」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 23:09:04.81 ID:ZUl0lSUS0
シンジ(くそ、証言は崩せたと思ったのに)
サキエル「そんな証拠あるはずがない!」
バルディ「へ、へっへへ、そうだよなぁ?証拠もないのに人を犯人扱いしやがって、全くひどいヤツだ」
裁判長「現在上がっているもの以上に説得力のある証拠がないのであれば、この場での君の発言は無力です」
シンジ(僕の手元に張手イエルが犯人の証拠なんて……あるはずがない)
シンジ(ムリ……だ)
裁判長「どうやら、提示できないようですね」
バルディ「へ、へっへっへ……残念だったな、弁護士さんよぉ」
シンジ(クソ!あと一歩のところだったのに!)
シンジ(ダメ……なのか……)
バルディ「あんたのせいで気分が悪くなったぜ。そろそろ俺はここいらで……」
ミサト「待ちなさい!!」
裁判長「!!」
サキエル「!!」
シンジ「!!」
バルディ「……そ、そうだ。思い出したぞ!あ、いや、思い出しましてございます」
シンジ「?」
裁判長「思い出した?」
バルディ「ええ、ええ。ですから先程も申し上げました通り少し混乱しておりまして。ですからその、血を流しているというだけでてっきりお刺されになっているものとばかり……」
シンジ(随分無理やりだな)
ミサト「シンジ君、ナイスなツッコミよ。証人は焦っているわ。今なら証言にもっとボロが出るかもしれない」
裁判長「では証人。混乱していたことについて話してもらえますか?」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 21:43:16.39 ID:ZUl0lSUS0
ー証言開始ー
バルディ『何分、死体なんていうものを見たのは初めてでございまして』
バルディ『それも血まみれの死体でございますでしょ?』
バルディ『もうわたくし、コンランしてしまいまして』
バルディ『それに、部屋の中も随分複雑な状況でございましたので』
バルディ『よくあるミステリードラマのようだと勝手にカン違いしてしまったのです。お騒がせいたしました』
裁判長「ふむう、なるほど」
サキエル「無理もありませんな。死体を見るなんて経験、滅多にするものではありませんから」
裁判長「ですが証言は正確に、慎重にお願いしたいものです」
シンジ(この証言は急ごしらえのその場しのぎだ。つつけばボロが出てくるはず)
シンジ(一気にたたみかけよう!)
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 21:48:37.21 ID:ZUl0lSUS0
ー尋問開始ー
バルディ『何分、死体なんていうものをみたのは初めてでございまして』
バルディ『それも血まみれの死体でございますでしょ?』
バルディ『もうわたくし、コンランしてしまいまして』
バルディ『それに、部屋の中も随分複雑な状況でございましたので』
シンジ「待った!」
シンジ「複雑な状況、というのは具体的にどういう?」
バルディ「散らかっていたと言いましょうか。野菜やらお肉やら、スーパーで買ったものと一緒にマイバッグのようなものが」
バルディ「赤地に白い羽のマークがついたものでございます」
バルディ「おそらく買い物帰りにお気の毒な目にあわれたのかと」
シンジ「なるほど、そういうことですか」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 21:53:31.71 ID:ZUl0lSUS0
ミサト「……シンジ君、あたしは今の彼の発言、少し気になるわね」
シンジ「そ、そうですか?」
シンジ(どうせだから証言に付け加えてもらうか)
シンジ「あ、あの。じゃあ今の、証言に加えてもらえますか?」
バルディ「構いませんとも。ほほほ」
シンジ(ほほほ……ね)
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 21:58:46.09 ID:ZUl0lSUS0
バルディ『何分、死体なんていうものをみたのは初めてでございまして』
シンジ「待った!」
シンジ「その割には随分落ち着いているようですね」
バルディ「ようやっと気持ちの整理がついてきたもので。ミステリードラマとは比べ物にならないのでございますね」
シンジ(まあ、それはそうか)
バルディ『それも血まみれの死体でございますでしょ?』
シンジ「待った!」
シンジ「死体の出血の状況はかなりハゲしかったと?」
バルディ「それはもう、地獄絵図、とはあのことでございましょう」
サキエル「それはそれは。さぞかし動揺されたことでしょう」
バルディ「ええ、ですから……」
バルディ『もうわたくし、コンランしてしまいまして』
シンジ「待った!」
シンジ「コンランした、というと死体を見たショックでしょうか?」
バルディ「左様でございます」
シンジ「しかしあなたはミステリードラマを見るのが趣味だと言っていました。案外、もう慣れてしまっていたのでは?」
バルディ「まさか、それはテレビの見すぎというものでございます!現実とふぃくしょんの区別くらい心得ておりますので」
サキエル「弁護人にはテレビと現実の区別をしっかりとつけてもらいたいものですな」
裁判長「弁護人、テレビは一日二時間以内に控えるように!」
シンジ「は、はい……」(僕はムジツだぞ……)
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:10:48.94 ID:ZUl0lSUS0
バルディ『それに、部屋の中も随分複雑な状況でございましたので』
バルディ『散らかっていたと言いましょうか。野菜やらお肉やら、スーパーで買ったものと一緒にマイバッグのようなものが』
シンジ「待った!」
シンジ「マイバッグ……ですか?」
バルディ「ええ、ですから現場に落ちていた……」
バルディ『赤地に白い羽のマークがついたものでございます』
シンジ「待った!」
シンジ「それは確かにその模様だったのですか」
バルディ「それはもう。下地が妙にカゲキな色合いでしたからはっきりと印象に残っております」
シンジ(なるほど、そこの所の記憶ははっきりしているみたいだな)
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:17:19.19 ID:ZUl0lSUS0
バルディ『おそらく買い物帰りにお気の毒な目にあわれたのかと』
シンジ「待った!」
シンジ「何故、買い物帰りだと?」
バルディ「先程も申し上げました通り、スーパーで買ったと思われる肉やら野菜やら」
バルディ「お見受けしたところ女性のようでございましたので、恐らくは買い物帰りだったのだろうと」
バルディ『よくあるミステリードラマのようだと勝手にカン違いしてしまったのです。お騒がせいたしました』
シンジ「現実に人が死んでいるのに、ミステリードラマのようだと思ったんですか?」
バルディ「ほら、よくありますでしょ、ドアを開けたら人が倒れていたという……」
シンジ「よくある、とはどういう?」
バルディ「いやですね、テレビドラマの一つも見ないのですか」
サキエル「視野の狭い弁護人は証人の発言にいちいち突っかからないで欲しいものですな」
裁判長「弁護人はまだまだ若いのですから、ドラマの一つも見ておくように」
シンジ(り、リフジンだ……)
ミサト「慌てて組み上げられたこの証言は穴だらけなはずよ。きっとつつけば簡単にボロが出てくるわ」
シンジ(そうだ、ここで一気にたたみかけるんだ!)
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:20:29.81 ID:ZUl0lSUS0
バルディ『何分、死体なんていうものをみたのは初めてでございまして』
バルディ『それも血まみれの死体でございますでしょ?』
バルディ『もうわたくし、混乱してしまいまして』
バルディ『それに、部屋の中も随分複雑な状況でございましたので』
バルディ『散らかっていたと言いましょうか。野菜やらお肉やら、スーパーで買ったものと一緒にマイバッグのようなものが』
バルディ『赤地に白い羽のマークがついたものでございます』
シンジ「異議あり!」
事件ファイル
『特注バッグ』
シンジ「それはヘンですね」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:27:15.91 ID:ZUl0lSUS0
バルディ「ヘン?」
シンジ「赤地に白い羽。そのマークがあなたに見えたはずがない」
シンジ「だってこのバッグは事件当時、被害者の血を吸って赤く染まっていたんですから!」
シンジ「混乱していたなら尚更、あなたにはこのバッグが、ただの赤いバッグに見えたはずだ!」
バルディ「!!?!?!!??」
裁判長「なんと、それは本当ですか!?」
シンジ「はい。こちらの写真を見てもわかる通り、濃い赤地を貴重としたこのバッグは、血を吸ってすっかり白のマークが見えなくなってしまっています!」
裁判長「ほほう、確かにこれでは色を見分けるのは大変そうですね」
バルディ「そ、それは……そうだ!」
バルディ「同じバッグを最近見かけて、色具合からてっきり……」
シンジ「残念ですがそれは有り得ないんですよ。このバッグは被告人が被害者のために作った特注品ですからね!」
バルディ「なっ!?と、特注品……でございますとぉ……!?」
シンジ「その通り、だからあなたがこのバッグの模様を知っていたはずがないのでございます!!」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:32:22.37 ID:ZUl0lSUS0
裁判長「証人、これはどういうことですか!?」
シンジ「なぜ証人に白のマークが見えたか」
シンジ「簡単です。刺される直前に被害者が持っていた、『まだ血に濡れる前のバッグ』を見ていたからです」
シンジ「何らかのショックと一緒にそのバッグの派手な模様が記憶に染み付いてしまったのでしょう!」
シンジ「例えば人を刺してしまった拍子に……とかね」
ザワザワザワザワザワザワ
裁判長「カンカンカン!静粛に!」
シンジ「さあ、どうですか証人!」
バルディ「ぬ、ぬぐぐ……さっきから、いちいちつっかかりございましやがって……!」
バルディ「そこの男がやったんだ……!おれ……わたくしは確かに見たんだ!さっさと……死刑に……!」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:37:03.56 ID:ZUl0lSUS0
バルディ「……あ!そ、そうだ!やっと本当のことを思い出しました!」
裁判長「一体いくつ本当のことがあるのですか!」
バルディ「こ、今度は間違いございません。確かに思い出したのでございます」
裁判長「法廷での発言は慎重にお願いしますよ。段々あなたという人間が信用ならなく思えてきました」
裁判長「言葉遣いなんか明らかに変ですしねぇ」
バルディ「むぉっ!?」
バルディ「あの、こ、今度こそ間違いなくございますので」
ミサト「いい調子よ、シンジ君!あと一歩の所まで来てるわ」
ミサト「あの証人をギャフンと言わせてやりましょう」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:42:29.27 ID:ZUl0lSUS0
ー証言開始ー
バルディ『わたくし、少々混乱しておりましたが、その後我に帰ったのでございます』
バルディ『もしかしたらまだ被害者の方が助かるかもと思い恐る恐る中へ』
バルディ『室内を隅々まで歩き回り、その時にゴミ箱の中の包丁を発見いたしました』
バルディ『被害者の方の様子もしっかり確認し、バッグの模様もその時見分けたのでございます』
バルディ『流石に落ち着いて見れば染まっているというのはわかりますから』
シンジ「そんな!さっきあなたは人の死体を見るのははじめてで混乱していたと言ってたじゃないですか!」
バルディ「そ、それは、そうでございますが。わたくしミステリードラマを見るのが趣味でして」
バルディ「ああいった探偵ものに憧れてしまい、つい様子を……」
サキエル「勝手に現場に踏み入るのは感心出来ませんが、証人はまだ被害者が絶命しているとは知らなかったのです」
サキエル「人助けの一心があってのことでしょう」
裁判長「とにかく弁護人、尋問をお願いします」
シンジ「分かりました!」
シンジ(今までの証言が嘘だったのなら、この証言だって嘘に決まってる。つき崩すなら今しかない!)
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:47:25.74 ID:ZUl0lSUS0
ー尋問開始ー
バルディ『わたくし、少々混乱しておりましたが、その後我に帰ったのでございます』
バルディ『もしかしたらまだ被害者の方が助かるかもと思い恐る恐る中へ』
バルディ『室内を隅々まで歩き回り、その時にゴミ箱の中の包丁を発見いたしました』
シンジ「異議あり!」
事件ファイル
『割れたガラス』
シンジ「……張手さん。もう、嘘をつくのはやめにしたらどうですか?」
バルディ「う、嘘ですと?」
シンジ「こちらの写真を見てください。事件当時の被害者宅内の状況です」
サキエル「そ、それは先程絵馬刑事が提出した……」
サキエル「ああっ!!」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:53:09.69 ID:ZUl0lSUS0
裁判長「ど、どういうことですか!私にもわかるように説明しなさい!」
シンジ「見たまんまですよ。室内には割れたガラスの破片が飛び散っていました」
シンジ「ガラスが散乱して、しかも死体のある部屋を落ち着いて隅々まで歩き回るなんておかしいでしょう!」
バルディ「ぎゃ、ぎゃふん!?」
バルディ「な、なんなんだテメェ、人の発言の揚げ足とってアレコレ探り入れやがって……!」
バルディ「さっきっから、なんなんだよあんた一体!?」
シンジ「質問に答えてください証人!どうしてガラスの散らかっている他人の室内を歩き回るなんて奇異な行為に出たんですか!?」
バルディ「ぐっ!!そ、それは……その……」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 22:58:53.02 ID:ZUl0lSUS0
サキエル「異議あり!」
サキエル「さ、先程から弁護人は意味の無いことで証人を動揺させる物言いを多発しており……」
裁判長「意味のない……確かに、先程から弁護人の目的が的を得ません」
裁判長「弁護人はどうしたいのですか?これではまるで」
裁判長「証人を告発しているかのようですぞ!」
シンジ「……」
シンジ(そうだ、間違いない。ここで一気にたたみかけるんだ!!)
シンジ「……ええ」
シンジ「間違いありません、今回の被害者洞木ヒカリさんを刺したのは被告人ではなく、今そこに立っている証人、張手イエルさんだったんです!」
裁判長「なんと!」
サキエル「そ、そんな!?」
バルディ「な、なんだと!!」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 23:04:40.69 ID:ZUl0lSUS0
ミサト「よく言ったわ、シンジ君」
バルディ「さ、さっきから勝手なことばかり言いやがって」
バルディ「お、俺が犯人だとか訳のわからねえことを……」
バルディ「そ、そうだ!なら、証拠はあるのか!?」
シンジ「し、証拠だって……?」
バルディ「俺が犯人だっていう証拠でもあるのか!?」
バルディ「ないなら俺のことを訴えるなんて出来ねえだろ!」
裁判長「……その通りですね。証拠がないのであれば証人を告発することは出来ません」
シンジ「そ、そんな……」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/02(月) 23:09:04.81 ID:ZUl0lSUS0
シンジ(くそ、証言は崩せたと思ったのに)
サキエル「そんな証拠あるはずがない!」
バルディ「へ、へっへへ、そうだよなぁ?証拠もないのに人を犯人扱いしやがって、全くひどいヤツだ」
裁判長「現在上がっているもの以上に説得力のある証拠がないのであれば、この場での君の発言は無力です」
シンジ(僕の手元に張手イエルが犯人の証拠なんて……あるはずがない)
シンジ(ムリ……だ)
裁判長「どうやら、提示できないようですね」
バルディ「へ、へっへっへ……残念だったな、弁護士さんよぉ」
シンジ(クソ!あと一歩のところだったのに!)
シンジ(ダメ……なのか……)
バルディ「あんたのせいで気分が悪くなったぜ。そろそろ俺はここいらで……」
ミサト「待ちなさい!!」
裁判長「!!」
サキエル「!!」
シンジ「!!」
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