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百物語2014

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Part2
22 :妖場K ◆j0mz2iQVTQAR :2014/08/23(土) 19:18:53.20 ID:YcYHo/b60
【第六話】「濡れてる」
(1/3)
「なんかw怖い話とか知らないすかwwww」
百物語に向けてネタを探していた俺は、飲み会でそう切り出してみた。
結構みんなノッてくれて、中々の収穫があったのだが、今回はその中でも特に印象に残ったN先輩に聞いた話をしたいと思う。
N先輩は学生時代の夏休みに、夜間警備のアルバイトをすることにしたそうだ。
配属されたのは古い製薬会社のビルで、詰所に詰めるのとは別にベテランのOさんと二人でローテーションを組み、日に二度、定期的にビルの巡回を行うこととなった。
アルバイトを始めてから1週間程経ち、慣れて来たN先輩は一人、深夜のビルの巡回に出向いた。
そして、2階の廊下の突当りで、妙なものを発見した。
「あれ、濡れてる」
ちょうど一跨ぎで飛び越せるかどうか、くらいの大きさの水たまりがあったそうだ。
N先輩はどこかで掃除道具でも探して拭こうかとも思ったんだけど、なんか危ない薬品だったら嫌だなと、一旦そのままにして巡回を終わらせ、Oさんに判断を仰ぐこととした。
「Oさん、廊下に水たまりがあったんですけど、薬かなんか撒いてあるみたいな報告ありました? 拭いた方がいいなら行ってきますけど」
そう問いかけた途端、Oさんの顔色が変わった。
「どこで見つけた!?」
「へ? いや、2階の廊下の突当りですけど。 やっぱりあれ薬品かなんかだったんですか?」
「そうか……。いや、アレは触らんでいい。今後見つけても絶対に近寄るな。」
Oさんが苦い顔で念を押したので、Nさんはそんなにヤバい薬品だったのか、触らなくて良かったと胸をなで下ろした。

23 :妖場K ◆j0mz2iQVTQAR :2014/08/23(土) 19:19:35.33 ID:YcYHo/b60
(2/3)
しかし、次の晩も、また次の晩も、N先輩は巡回中に水たまりを見つけた。
場所は様々で、玄関ホールにある時もあればトイレの中にあるときもある。
大きさも形もいつも同じくらいで、軽く匂いを嗅いでも無臭だし、色もない。
段々N先輩はこの水たまりがなんなのか気になって仕方がなくなってきてしまった。
そこである晩、ついにアクションを起こすことにした。
その日、巡回中にいつもの水たまりを発見した。場所は奇しくも最初に発見した2階の廊下の突当りだった。
N先輩はポケットに忍ばせていた物を取り出した。
用意していた、スポイトとビニール袋だ。
これでこっそり液体を持ち帰り、薬学部の友人にでも分析をしてもらおうという算段である。
跪いてスポイトを水たまりの中央に突っ込む。意外に深い。
すると突然、スポイトがぐい、と強い力で引っ張られた。
N先輩は驚いてバランスを崩してしまい、水たまりに伸ばしていた手を着いてしまう。
ところが、手は床に触れることなくひじの辺りまで突き抜けてしまった。
そして。
何かが手首を掴んだ。
そのままもの凄い力で、水たまりの中に引っ張られる。
(なんだこれなんだこれなんだこれなんだこれ)
パニックになりながらも、N先輩は必死に引きずり込まれまいと腕を引き抜こうともがく。
まるで手首にロープを巻き付け、何人もの人が引っ張っているかのようだった。
(もう、ダメだ……)
肩まで引き込まれ、諦めかけた瞬間、パシャン、と何かが水たまりに落ちた。
胸ポケットに差していたボールペンが、弾みで落ちたらしい。
ボールペンはそのまま、すぅっと水たまりの中に消えていく。
その直後、引っ張られる力が不意に弱まったのを感じた。
「うごおおおおおおおおおおおお!!!!!」
渾身の力を込めて、N先輩は腕を引き抜いた。

24 :妖場K ◆j0mz2iQVTQAR :2014/08/23(土) 19:20:00.56 ID:YcYHo/b60
3/3)
「それで、どうなったんすか?」
「それで終わり。詰所に逃げ帰って、また次の日から普通にそのバイトもしてたし、やっぱり水たまりは色んなとこに出来てたな。まあ、流石にもう近づけなかったけど。」
淡々とそんなことを言うN先輩はちょっとおかしいと思う。
「でもさ、俺、見ちゃったんだよね。」
「何をです?」
「暗かったし、ほんの一瞬だったから見間違いかもしれないけど」
N先輩はぐびりとビールに口をつけると、意を決したように教えてくれた。
「腕を引き抜いた瞬間、俺を引っ張ってたやつが見えたんだよ。消炭みたいに真っ黒で、なんかもの凄い長かったけど。
アレ、人の手だった。」
【了】

26 :いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw :2014/08/23(土) 19:24:05.46 ID:2yX9zsEM0
【第7話】 備担◆.1AOTdzS5s
『神隠し』
同僚とはよく実家の田舎っぷりを自慢しあう。まあ自虐のふりをした郷土自慢みたいなものだ。
あるとき私は、兄が神隠しにあったことを話した。結論から言えば、捜索範囲が広大だった単なる迷子の話。
しかし同僚は、ふっと真顔になり、ぽつぽつと話始めた。
地元の集落で「お山」と呼ぶ山がある。小さなお社があったり、山頂近くには古い墓石のようなものが並んでいたり
するけど、いまはその云われはわからない。山腹には集落からも見えるような目立つ大きなクスノキがあった。
根本には小さな祠もあって、年寄りは大クスノキ様と呼んで拝みに行ったりしていたらしい。
あるとき、未就学の年齢の同い年の子供が居なくなった。
集落じゅう総出で、田んぼや畑を探してもどこにもいない。
夏の長い日も暮れて、集会場に集まった大人たちが、やれ明日は朝から山狩りかと話していると、その子がひょっこり
戻ってきた。
聞くと、大クスノキに木登りして遊んでいた。気が付いたら日が落ちていて、木から降りられないし暗くて怖くて泣いて
いた。すると、知らない老人が木から降ろしてくれて、お八つをくれ、ここまで送ってくれたという。
半ば呆けた年寄りは大クスノキ様のお陰だと合掌したが、他のものは首を傾げた。というのも、大クスノキは
半年前の落雷で木が裂け、危険だからということで切り倒され、今は切り株だけになっていたからだ。
「にっぽん昔ばなしみたいだよね」と同僚は続けた。
その子も今はやはり集落を出て、そこで世帯を持って普通に暮らしているという。
【了】

28 :妖場K ◆j0mz2iQVTQAR :2014/08/23(土) 19:26:49.11 ID:YcYHo/b60
【第八話】 「上下さん」 
(1/2)
赤マントって知ってる? 昔流行った都市伝説なんだけど。
なんでも、トイレに入っていると「赤いマントほしいか」って聞かれて、イエスと答えると首を切られて殺されて、まるで赤いマントを着ているように見えるって話なんだけど。
地域や年代によって赤いちゃんちゃんことかちり紙とか色々派生形があるみたい。
最近俺が聞いたのが「上下さん」
うちの近所に古い大学があるんだけど、そこのエレベーターに一人で乗っていると
「上か下か」
ってしゃがれた老婆の声が聞こえるんだって。
「上」って答えると、髪の毛を切られる。
「下」って答えると、足首を切られる。
何も答えないと、異次元に連れて行かれる。
だから、必ず「上」って答えなければならないんだって。
ここからが本題。
その大学の生徒が、ある晩酔っぱらったノリでその話を試してみようってことになったらしい。
7〜8人いたのかな。深夜こっそり大学に侵入してさ。
卒論時期だったからか残って作業してる人もいて普通に這入れてしまったんだ。
で、全員で一番上の階までまず上がって、一人づつそのエレベーターで下に降りることにした。
まあ、ちょっとした肝試しだよね。
それで、一人、降りてはまた一人、と間隔を置きつつも次々降りていった。
でも何も起きなくって、さっさと帰ってまた酒盛りするかってなったんだけど、最後の一人が中々降りてこない。
携帯鳴らしても通じなくて、誰かちょっと見に行けよって話が出始めた時、エレベーターが動きだした。


29 :妖場K ◆j0mz2iQVTQAR :2014/08/23(土) 19:27:17.39 ID:YcYHo/b60
(2/2)
4階



3階



2階



1階
ポーンと音がしてエレベーターが開いた。
真っ赤だった。
中に凄まじい量の血が飛び散っては流れ、最初から赤い壁紙が貼ってあったかのように濡れていた。
そしてそのエレベーターの真ん中で、その最後に残った奴が倒れている。
腰の辺りで、まるでペンチでぶちんと捻じ切ったように千切れて真っ二つになって死んでいたらしい。
その後は警察とか色々大変だったらしいんだけど、結局迷宮入りしそうって聞いたな。
で、上下さんの噂に新しい伝説が付くことになった。
どうもその学生、上下さんに聞かれてこう言ったらしいんだ。
「真ん中」
【了】

31 :妖場K ◆j0mz2iQVTQAR :2014/08/23(土) 19:29:52.02 ID:YcYHo/b60
【第九話】 「青い影」
(1/2)
私は数年前、連日の激務に耐えきれず体を壊し、職を失った。
暫くは休息期間だとぐうたら過ごし、例にもれず昼夜逆転生活になってしまった。
夜通し起きてゲームやネットをし、日が昇ってから眠りに着く日々。
ただ、部屋に籠りきりは流石に体に毒だと散歩だけは毎日することにした。
朝方4時過ぎ。
その日も日課の散歩に出かけた。
辺りは薄明るく、耳が痛くなるほど静かである。
ふらふらと歩いていた私の目に、ふと色鮮やかなものが飛び込んできた。
道路の上に、真っ青な部分があるのだ。
地面にのっぺりと張り付いたそれは人の形をしていて、まるで青い影だけがそこに取り残されているかの様だ。
誰かがペンキで落書きでもしたのだろうか。
私はその影の横を通り過ぎようとした。
と。
おぞましいことに気が付いてしまった。
動いているのである。
青い影がぶるぶると、小刻みに震えているのである。
私は、見なかったことにしようと小走りで影の横を通り抜けた。
しかしつい、後ろを振り向いてしまい、ぞっとした。
着いて来た。
影が、私の方へするすると向かって来ていたのだ。
捕まる!!
私は言い知れぬ恐怖に一瞬にして囚われた。
そしてその場から全速力で逃げだした。

32 :妖場K ◆j0mz2iQVTQAR :2014/08/23(土) 19:30:24.49 ID:YcYHo/b60
(2/2)
だが、何度振り返っても影は私の後方数メートルの位置を維持し、ぴったりと着いて来る。
走る。走る。
体力の限界が近づいてくる。
当てもなく角を曲がると、大通りに出た。明るく光る、コンビニが見える。
私はすがるような気持ちで、コンビニの中に滑り込んだ。
背後で、自動ドアが閉まる気配がした。
肩で息をしながら、私はゆっくりと振り返った。
直後。
べちゃり。
閉まった自動ドアに、追いかけて来た青い影がぶつかった。
影はドアに張り付いたまま、その場でうねうねと身を捩る。どうやら入っては来れないようだ。
暫くして諦めたのか、影はずるりと地面に落ち、そのまま何処かへと消えていった。
へたり込んだ私を見て、店員が奇妙な顔を向けていた。彼にはあの影が見えなかったのであろうか。
私は完全に日が昇るまでそのままコンビニで時間を潰し、人が何度も出入りしているのを確認してから漸く外に出ることができた。
影は何の痕跡も残してはいなかった。
それから、私は散歩を止めた。
少しして新しい職を見つけて規則正しい生活に戻り、早朝に出歩くことはなくなった。
あの影は2度と見ていないし、あれが何だったのかもわからない。
しかし、あれに捕まっていたら一体どうなっていたのだろうと、今でも恐ろしく思うのだ。
【了】

34 :いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw :2014/08/23(土) 19:34:57.92 ID:2yX9zsEM0
【第10話】 サンズリバー ◆QNxpn.SauU様
『憑依、そして命拾い』
(1/2)
1995年1月16日、兵庫県の某ドーナツショップで勤めていた私は、21時から翌朝7時迄の夜勤だった。
出勤時、大きく赤い不気味な満月を見たが、そんなに気にしなかった。
仕事を始め、23時に閉店。しかし、その日に限って洗い物等の作業がとても面倒くさく感じ、
食器類を所定の棚に並べずに、洗ったまま洗浄機のカゴごとラックの奥に仕舞い込んだ。
日報を作成後、清掃業務があったが、やる気なく手を抜いて終わらせ、長めに休憩をとった。
日付が変わり1月17日午前4時30分に仕込みを開始、気が進まないながらもドーナツを作り始めた。
約40リットル・温度190℃の油で満たされたフライヤーに、機械でカットしながら生地を落としていく…。
フレンチクルーラーをフライしていた。
すると突然、飛行機が離陸する時の様な感覚が身体を襲った。
そして一瞬にして、自分の思考回路が完全に停止し、誰かに操られる感覚に陥った。
亡き母が乗り移った様な気がした。操られるまま機器の電源を切り、キッチンから外へ走り出た。

35 :いそべ@投稿代理 ◆8JXCKM3oNw :2014/08/23(土) 19:36:15.55 ID:2yX9zsEM0
(2/2)
六甲山辺りか、それとも瀬戸内海辺りか分からないが、空が稲妻の様に明るく光った。
ほぼ同時に激しい揺れに見舞われ、街頭も駅の電気も全て消えた。電柱は45度に傾いていた。
映画を観ているのだろうと思っていた。幸いにして、店内は非常灯が点いていた。
キッチンへ行くと、高温の油がほとんど床に巻き散らかっていた。フレンチクルーラーと共に…。
そこで、ようやく我に返り、事の重大さに気付いた。
あの時、肉体や意識を亡き母に乗っ取られていなければ、私は全身が高温の油で焼けただれて、
今こうして、ここに書き込む事はなかったと確信している。
お分かり頂けたであろう…。それは「阪神淡路大震災」、震度7。
発生直前からその直後の体験である。
霊的には助けられたが、リアルでは恐ろしく地獄絵図の出来事であった。
【了】

37 :OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E :2014/08/23(土) 19:38:52.50 ID:HxZdyY1N0
【第11話】 白孔雀◆EiiyoouYFo 様
『金縛り』
今年になってからの話。
その日いつものように布団で寝ているとキーンと音がして体が動かなくなった。
隣に寝ている夫を起こそうとしたが声が出ない。金縛りだ。
もがいていると『何か』が寄って来る気配がした。
私は必死で目を閉じ、その『何か』を見ないようにした。
目は閉じていたのだが、私はそれを人のようなものだと感じた。
なんというか、寝ている自分とは別の眼で周囲の映像をとらえている、そんな感じである。
近づいてきた物の背丈は子供くらいで、顔はわからない。
黒い影のようなそれは、私の顔をのぞき込むと、せかせかと布団の周りを落ち着きなく歩きはじめた。
早くどこかへ行ってくれないだろうか…動かない体でそればかり考えていた。
やがて朝が来た。いつの間にか気配は消えて金縛りは解けていた。
私は夫に「昨日怖い夢を見てあなたを起こそうとしたのに起きなかったのよ」と言った。
でもそれ以上のことは言えなかった。
金縛りだ、幽霊だなんて笑われてしまいそうで。
そして私は気配の主に心当たりがあった。なんだか遠方に住んでいる叔父に似ている気がしたのである。
叔父は最近足を悪くしたそうだ。単なる気のせいだと思いたいのだが…。
【了】

39 :OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E :2014/08/23(土) 19:41:45.43 ID:HxZdyY1N0
【第12話】 タメ人参 ◆i.m1cVbrghng 様
『軍事病院』
(1/2)
軍事病院というものをご存知ですか?
戦争があった時代に主に兵士であったり戦争によって傷を負った人が運ばれる所
今は使われず廃病院になっています
そんな軍事病院
未だに取り壊されずに残っているんですが
やはり病院というのは生死が日常の場所
戦争のあった時代ともなれば尚更
やっぱり出るんです
夏になると誰かが言い出す
軍事病院に肝試し行こうと
この話は友人が10代の夏に体験した話です
軍事病院のある場所は山でして、行くまでには少し困難な場所にありました
友人は3人で肝試しに行くことにしたんですね
A、B、C君にします
軍事病院に着いて中に入ると空気が明らかに変わったとAは後に言っていました
3人は院内を一緒に行動しながら見て回ってたそうです
もう想像以上に気味が悪かったらしく
早々に帰ろうという事になりました
その時ふとBが
B「Cがいない…」
AとBは怖いことも忘れて必死に探したけどCが見つからない
もう俺たちでは無理だ
でも不法侵入になるから警察は呼べない
でも意を決して警察に電話したそうです

40 :OMT@投稿代理 ◆lkP/qpIb6E :2014/08/23(土) 19:42:37.20 ID:HxZdyY1N0
(2/2)
警察が来て事情説明をして、応援の警察きて廃病院と付近の大捜索が始まりました
でもCは見つからなかったそうです
AとBは警察署で事情聴取、Cの親も来てたそう
その日から約1週間
警察は懸命に捜索をしたけど結局Cは見つからなかった…
警察が捜索の範囲を変えようとした頃
Cの実家に電話がかかってきたんです
Cの母が受話器をとると
謎の声「C君のご自宅ですか?」
母「はい、そうです」
謎の声「C君の手術が終わりました」
それで電話が切れたそうです
C君の母は不謹慎なイタズラ電話だと憤慨したけど、念のため警察に相談をしたそうです
警察も話しをうけ
翌日もう一度廃病院を捜索したら
ずっと気付かなかったけど、二階に上がる階段の近くに地下に行く隠し扉が見つかり、
地下にC君の遺体があったそうです
数年たった今でも犯人が見つからず
電話の声の相手も分からないまま
今も未解決のままです
【了】

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