百物語 第二回
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281 :猫侍 ◆/8nBjf3PZU :2006/08/12(土) 05:09:04 ID:o3B3bO970
鼬の怪
これは、ウチで飼っているキヌ(13歳メス)っていう老猫の話。
彼女が助けてくれた話(#六十四話参照)はもう一つある。
これは一年前の話。
そう今日みたいな夏の夜だっただろうか。
俺は高校三年生で学校からの帰路についていた。
当事俺は買い食いするのが好きで、帰りに寄り道して店を見つけては試食のように買い食いした。
さてその日は新しく店を見つけるべくチャリンコで走っていた。
ふと目をやると何やらワゴン車でカキ氷を売っているのを見つけた。
その日は昨今の温暖化やらで暑くなっている上に更に暑い日であった。
なので俺は即効でチャリンコを道の脇に止め、レモンシロップ(俺はレモンが好きなんだ)カキ氷を買った。
カキ氷を食ってたら店のオヤジが「うまいか?」って聞いてきた。
俺は「はい、おいしいですよ。暑いから更にうまさが引き立ちます。」って応えた。
オヤジは続けて、「そうか、それは良かった。 ところで……これはどうだい?」といってオヤジは両手で顔を隠した。
俺は「まさか『のっぺらぼう』とでもいうつもりですか?」と尋ねたら、オヤジは両の手をどけた。
その顔は目も口も鼻もある、隠す前のオヤジの顔だった。
そして「はっはっは、驚いたかい。」と笑われた。
282 :猫侍 ◆/8nBjf3PZU :2006/08/12(土) 05:10:11 ID:o3B3bO970
さて、カキ氷も食い終わり俺は再びチャリンコに跨って帰路についた。
その途中、女性に呼び止められた。
そして女性は「えーと……」と言いながら俯き、顔を上げながら
「この辺にこんな顔したオヤジは居ませんでしたか?」と聞いた。
その女性の顔は先ほどのオヤジの顔になっていた。
俺はチャリンコのペダルを力一杯踏んで逃げた。
普通に考えてありえないだろう、俯いた瞬間に顔が変わるなんて。
暫く逃げたら今度は小学生くらいの男の子に呼び止められ、先ほどの女性と同じことをされた。
また俺は逃げたつくづくチキンだ。
もう半分パ二クっている、そして今度は乳母車を引いた女性に呼び止められた。
今度は呼びとめながら上げた顔がオヤジだった。
俺は道の石に乗り上げバランスを崩してコケた。
それでも逃げようと俺は這いながら逃げようとしたら、
今度は目の前に赤ん坊が仁王立ち。
無論顔はあのオヤジ。
そして驚いた次の瞬間、『キィッッ!!』って声がしたかと思うと、
俺は自宅の庭でしりもちをついていた。
283 :猫侍 ◆/8nBjf3PZU :2006/08/12(土) 05:11:43 ID:o3B3bO970
目の前には毛が少し痛んだ鼬が一匹、そして黒猫が一匹いた。
俺と目が合った瞬間鼬は逃げて行った。
その後、黒猫が振り向きざまに一言、
「なに騙されてんだ、アンタはアホか?」
そうその黒猫は彼女……キヌだった。
彼女は続けざまに、
「帰ってきたかと思うとそのまま庭に乗り込んで、
庭石に乗り上げてコケて……
良く見れば鼬が一匹アンタをじっとみている。
んで、これは幻を見させられていると思い、鼬を引っ掻いてやったんだよ。
片目だから、距離感が掴めずにかすっただけだったがね。」
そう言い放って、彼女は猫っぽく欠伸をした。
因みに店のオヤジは幻ではなく普通の人間だった。
今年もカキ氷の行商をしていることだろう。
【完】
鼬の怪
これは、ウチで飼っているキヌ(13歳メス)っていう老猫の話。
彼女が助けてくれた話(#六十四話参照)はもう一つある。
これは一年前の話。
そう今日みたいな夏の夜だっただろうか。
俺は高校三年生で学校からの帰路についていた。
当事俺は買い食いするのが好きで、帰りに寄り道して店を見つけては試食のように買い食いした。
さてその日は新しく店を見つけるべくチャリンコで走っていた。
ふと目をやると何やらワゴン車でカキ氷を売っているのを見つけた。
その日は昨今の温暖化やらで暑くなっている上に更に暑い日であった。
なので俺は即効でチャリンコを道の脇に止め、レモンシロップ(俺はレモンが好きなんだ)カキ氷を買った。
カキ氷を食ってたら店のオヤジが「うまいか?」って聞いてきた。
俺は「はい、おいしいですよ。暑いから更にうまさが引き立ちます。」って応えた。
オヤジは続けて、「そうか、それは良かった。 ところで……これはどうだい?」といってオヤジは両手で顔を隠した。
俺は「まさか『のっぺらぼう』とでもいうつもりですか?」と尋ねたら、オヤジは両の手をどけた。
その顔は目も口も鼻もある、隠す前のオヤジの顔だった。
そして「はっはっは、驚いたかい。」と笑われた。
282 :猫侍 ◆/8nBjf3PZU :2006/08/12(土) 05:10:11 ID:o3B3bO970
さて、カキ氷も食い終わり俺は再びチャリンコに跨って帰路についた。
その途中、女性に呼び止められた。
そして女性は「えーと……」と言いながら俯き、顔を上げながら
「この辺にこんな顔したオヤジは居ませんでしたか?」と聞いた。
その女性の顔は先ほどのオヤジの顔になっていた。
俺はチャリンコのペダルを力一杯踏んで逃げた。
普通に考えてありえないだろう、俯いた瞬間に顔が変わるなんて。
暫く逃げたら今度は小学生くらいの男の子に呼び止められ、先ほどの女性と同じことをされた。
また俺は逃げたつくづくチキンだ。
もう半分パ二クっている、そして今度は乳母車を引いた女性に呼び止められた。
今度は呼びとめながら上げた顔がオヤジだった。
俺は道の石に乗り上げバランスを崩してコケた。
それでも逃げようと俺は這いながら逃げようとしたら、
今度は目の前に赤ん坊が仁王立ち。
無論顔はあのオヤジ。
そして驚いた次の瞬間、『キィッッ!!』って声がしたかと思うと、
俺は自宅の庭でしりもちをついていた。
283 :猫侍 ◆/8nBjf3PZU :2006/08/12(土) 05:11:43 ID:o3B3bO970
目の前には毛が少し痛んだ鼬が一匹、そして黒猫が一匹いた。
俺と目が合った瞬間鼬は逃げて行った。
その後、黒猫が振り向きざまに一言、
「なに騙されてんだ、アンタはアホか?」
そうその黒猫は彼女……キヌだった。
彼女は続けざまに、
「帰ってきたかと思うとそのまま庭に乗り込んで、
庭石に乗り上げてコケて……
良く見れば鼬が一匹アンタをじっとみている。
んで、これは幻を見させられていると思い、鼬を引っ掻いてやったんだよ。
片目だから、距離感が掴めずにかすっただけだったがね。」
そう言い放って、彼女は猫っぽく欠伸をした。
因みに店のオヤジは幻ではなく普通の人間だった。
今年もカキ氷の行商をしていることだろう。
【完】
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