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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編その3】
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/29(土) 21:15:11 ID:.RxhzfPc96
あらすじ

永遠の命。その鍵となる救い主、カロル。
欲望に目覚めた西の国。狂気は果てしなく蠢く

遂に勃発してしまった戦争
強大な西の国に立ち向かうべく王国、東国、南国は6ヶ国同盟から成る平和協定を破り、3国連合軍を結成する

南国は多大な犠牲を払い、国王ローレンの命と引き換えに西帝国軍の主力を削った
東国は張り巡らされた罠を果敢に打破するも圧倒的な力の前に粉砕される

敵地にて孤軍となった王国軍
総指揮官フィクサーの戦略采配が功を奏し、帝都本拠地の制圧を完了した

一方で吉報を待ち、国内に留まる王国の国王ヒメ
迫り来る侵略の魔の手を退ける為、東国のホビット族と手を結ぶ
彼らによって明かされた最後の真実
アピシナの大樹の成り立ち

かつて癒しの力は破滅を導いた
人もホビットも共通する願い
永遠の命が野心をくすぐる

穢れなき無垢な愛情は火種となって注がれ、混沌とした世界を象徴するように大樹を巡る争いは止まなかった

忘れ去られた無残な過去
300年もの月日を経てなお繰り返される歴史
誰も止めることは叶わない

友情を取るか、安寧を取るか
時を追う毎に取捨選択を強いられる
捨てていいものなど一つもないのに


29: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/1(月) 23:21:09 ID:eI.uCZwLb.
〜〜〜1ヶ月後〜〜〜

―――王都(城下町)―――

門衛1「開門!開門せよ!」

門衛2「道を開けろ!!」

ザワッ

町民1「な、なんだなんだ…?やけに物々しいな?」

町民2「またどっかの国から使者でも来たのか?」

ギィィィィイイイイ………

ザッザッザッザッ

町民3「え…!?」

町民4「そ、そんなバカな!?」

町民5「あれはうちの国の旗印……じゃあ、あの兵士の集団は…!?」

町民6「王国軍は西の国に寝返ったんじゃなかったのか!?」

町民7「み、見ろ!馬車の中から誰か出てくるぞ!?」

ヒメ「ふぅ。たった数ヶ月でも離れてみると…ここの空気がいかに清潔だったかが分かるな」ストッ

宣教師「えぇ、ですがあの国で学んだ現実は私たちの糧になることでしょう」ストッ

ザワッ

町民5「こ、国王様!?」

町民8「司祭様もいるぞ!?」

町民3「ど、どうなってるんだ…!城にいらっしゃったんじゃなかったのか…?」

ヒソヒソ ヒソヒソ

ヒメ「民衆に説明を」

団長「はっ!」ザッ
30: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/1(月) 23:21:50 ID:eI.uCZwLb.
ザワザワ ザワザワ

団長「聞け!愛すべき王国の民よ!」

町民's「」オロオロ

団長「突然の事で驚かせただろうが、こちらにおわすのは正真正銘、我らが国王ヒメ様である!!」

町民's「……?」オロオロ

団長「既に聞かされているだろうが我が国は総指揮官フィクサーの裏切りに遭い、西の国と再びまみえる事となった!」

町民8「ヒッ…!?」サァァ

町民9「と、とうとう国王様が兵を徴収しに…!」ブルッ

町民10「司祭様もいるって事は教団も……やっぱり戦争は起こるのか…!?」ビクビク

団長「だがそれも、もはや過去の話だ!」

町民's「!?」

団長「国王陛下が自ら兵を率い、帝都に巣食う敵軍もろとも国賊フィクサーを成敗なされた!!」

町民's「え!?」ギョギョッ

団長「今日まで諸君らに不安を与えてしまい、まこと申し訳なく思う!しかしその不安も今この時、一点の曇り無く晴れるだろう!」

町民's「」ドキドキ

団長「此度の反逆は我々、国王直属軍の手により鎮圧!!西の国との戦も我が国の全面勝利で決した!!全ては国王陛下のお導きなり!!!」

町民's「〜〜〜!!!」プルプル

ヒメ「隠していて悪かったな。今日からは安心して、また日々を過ごしてくれ」ニコッ

ウオォォオオオオオ!!! ワァァァアアアアアアア!!!

宣教師「私まで顔を出す必要があったのですか?」

ヒメ「まぁそう言うなよ。僕らは一応、王国と教団の象徴だ。こうして威光を高める機会も必要なのさ」

宣教師「そういうものなのでしょうか…」ウーン

町民's「バンザーイ!!!国王陛下バンザーイ!!!」
31: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/1(月) 23:22:37 ID:W5Vcpfi1ZU
―――王宮―――

ヒメ「……」スタスタ

政務官「一同、出迎えよ!陛下の帰還である!!」

高官's&衛兵's「ハハーッ!!!」ザザッ

団長「」ザザッ

ネバル「お帰りなさいです!陛下ー!」フリフリ

ゴチンッ!

ネバル「」プシュー

政務官「なにを呑気に手を振っているんだ?皆に習って控えろ!」ピキッピキッ

ネバル「うぅ…お出迎えするって言うですもん」ヨロッ

ヒメ「ははは!相変わらずだな、おまえは?」クスクス

ネバル「へ、陛下!陛下もお変わりなくです!」パァァ

ヒメ「そうか?かなり泥臭くなったけどな?」クンクン

ネバル「オイラも畑耕してた頃はまいんち泥んこでしただよ!」

ヒメ「畑仕事と一緒にするなよ…。苦労して戦ってきたんだから」ヒクヒク

ネバル「なにを言うですか!畑仕事も立派な戦いです!年中せっせと手入れするのも大変な苦労ですだよ!?」

ヒメ「わ、分かった、分かった。悪かったよ」アセアセ

ネバル「分かればいいです!えへん!」ドヤッ

ゴチンッ!

ネバル「」プシュー

政務官「分かっていないのは貴様だ!控えろと言っているだろ!?」ギロッ

ネバル「はひぃ〜……パワハラですぅ…」シクシク
32: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/1(月) 23:26:36 ID:eI.uCZwLb.
政務官「まずはご無事で何よりに御座います…。役人一同、この日を待ちわびておりました」ペコッ

ヒメ「おまえが手を回していてくれたおかげだよ。援軍が到着していなければ今頃は西国の土に埋まっていたかもな」クスッ

政務官「当然の配慮です」

ヒメ「助かった。礼を言うぞ」

政務官「もったいなきお言葉…」

ヒメ「ハリアンス家からは何か求められたのか?」

政務官「要求はございませんが、こちらから勲章を授与し、関係の改善を図ろうと考えております」

ヒメ「そうか。じゃあ感謝状をしたためておこう。文はおまえに任せる」

政務官「承知しました」

ヒメ「見事な手際だった。おまえを推挙した僕の判断は間違ってなかったようだな」クスッ

政務官「……」ワナワナ

ヒメ「政務官…?」

政務官「よくぞ…ご無事で戻られました」グッ

ヒメ「な、なんだ?わざわざ改まって…?」

政務官「私は信じておりました…。家臣として心より賛美を述べさせていただきます」ペコッ

ヒメ「…あぁ、ありがとう」ニコッ

政務官「し、失礼…!」プイッ

ネバル「あー!リルラ様、ひょっとして泣いてるですかー!?」

団長「ほほう?鬼の目にも…というやつか」ニヤッ

政務官「や、やかましい!泣いてなどいない!」ガァーッ

ヒメ「はは…まったく帰って早々、騒がしいな」ニコニコ
33: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/1(月) 23:28:11 ID:eI.uCZwLb.
ヒメ「皆、僕が不在にしている間、きっちり役目を果たしてくれたみたいだな。本当にご苦労だった」

ハハーッ!!!

ヒメ「早速だが報告を聞かせてくれ。何か変わりはあったか?」

シーン

ヒメ「? どうした?」キョトン

政務官「…今日のところはひとまずお休みなされてはいかがでしょうか。長期に渡る戦を終えられ、疲れが残っておられるかと」

ヒメ「…何があったんだ」ジロッ

政務官「……」

ヒメ「答えろ。命令だ」

政務官「…北の国より書状が届いております」

ヒメ「内容は?」

政務官「三国連合の解散及び平和協定を破棄した国々に対する賠償要求に御座います」

ヒメ「対応は済ませてあるのか?」

政務官「いえ…見合わせております」

ヒメ「連盟国はどう対処したんだ?」

政務官「南の国は下ったとの報せが…」

ヒメ「…東の国は?」

政務官「……」

ヒメ「はっきりしろ。東の国はどうしたんだ」

政務官「軍備を…整えておられます」

ヒメ「!?」

団長「た、戦うと言うのか!?」

政務官「そう知らされている…」

ヒメ「ミリア王妃がそんな決断を…?なぜだ…?」

政務官「ホビット族への領地壌土。この約束を果たす為であるとか」

ヒメ「……!」
34: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/1(月) 23:31:18 ID:eI.uCZwLb.
団長「か、勝ち目はあるのか!東の国にはもはや戦い抜く力など残っておらんだろう!?」

政務官「…おそらくはホビット族が要となるだろうな」

団長「無理だ!たしかに彼らとは一時共闘し、城塞防衛戦を乗り切ったが…とても正面から軍を崩せるとは思えん!」

政務官「同感だ。だが私はあちらに関与出来る立場にない」

団長「な、なにを考えておるんだ…!自ら滅びようとしているのか…!?」

ネバル「あ、あの!」

政務官「なんだ?」

ネバル「た、助けない…ですか?」

団長「むぅ…」

政務官「……」

ネバル「み、ミリア様はブルードル陛下や宰相様を失って自棄になってるです!きっとそうです!王国が助けないと!」

政務官「…それは出来ない」

ネバル「ど、どうしてです!?」

政務官「我々が同盟間を無闇にこじらせ、禁を犯したのは事実。北の国の主張はもっともだ」

団長「うむ…」

ネバル「そ、そんな!」
35: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/1(月) 23:34:28 ID:eI.uCZwLb.
ネバル「助け合わないですか!?一緒に戦ったですよ!?」

政務官「…無論そうしたい。だが我々が戦犯であるのは明白だ」

団長「動き出しておるのは一国ではあるまい?」

政務官「察していたか…。そうだ。北の国の他に二つの国がこの件に乗り出している」

ネバル「む、向こうも三国連合をしたってことですだか…!?」

政務官「…正当だ。それだけに強引が目立つがな」

ネバル「そんなの…ズルいです!自分たちばっかりいい思いしようとして…何が正当ですか!?」

団長「平和を誓い、共に手を取り合った。かつての同盟が二つに割れた、か」

政務官「こうなる事は見越していた」

ネバル「どういうことです!?分かってたなら対策もあるですよね!?」

政務官「……」

ネバル「リルラ様!ねぇ!どうなんですだか!?」

政務官「東国、南国、それぞれの代表を失い、示し合わせていた流れが反故になる誤算があった」

ネバル「……!」

政務官「しかしまだ望みはあったのだ…。フィクサーの反逆さえなければな」

ネバル「!!!」ハッ
36: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/1(月) 23:35:53 ID:eI.uCZwLb.
ネバル「王国が…悪いですか?自分たちが…台無しにしてしまったですか?」ブルッ

政務官「…軍が機能していれば交渉の時間も大いに稼げた。東、南、両国の負担も減らしてやれただろう」

団長「国賊の名を着た王国軍に民も我々も信を置けん。一度解体し、再構築せねばならん」

ネバル「でも…でも!そんなことしてたら!」

政務官「…東の国は滅びるだろうな」

ネバル「なら…やっぱり…!」

団長「うぅむ……」

政務官「我々にも余裕はない。北の国と交渉し、同盟国との友好を再度取り成さねばならない」

団長「自国の安寧を維持し、移住を強いた民の土地を復興させてやるのも重要だ」

ネバル「見捨てるですか…?」

政務官「…冷静になり、改めて協議する必要があると文を寄越した。返事は来ていないが」

ネバル「ミリア様……死ぬ気でいるですね。お優しい方だから…オイラ達を気遣って関わらせないようにしてるです」

団長「ずいぶん思い入れがあるようだな」

ネバル「当たり前です…!オイラは陛下と二回、東の国に行ったです!ブルードル陛下ともミリア王妃とも…お酒を飲んで楽しく話したです!」ウルッ

団長「それは…残念だったな」

ネバル「残念だったな…!?残念で済ましていいですか!?これじゃ王国も北の国と変わらないですよ!?」

団長「…すまん」

ネバル「なんだったですか…。今まで……なんで戦ってきたですか」

ヒメ「……」
37: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/1(月) 23:39:40 ID:eI.uCZwLb.
ネバル「陛下は…なんで何も言わないですか?」ジッ

ヒメ「……」

ネバル「陛下も見捨てるですか?ブルードル陛下をあんなに慕っていたですよね!?」

政務官「…私情を口にするな。全ては王国の為だ」

ネバル「自分たちだけですか!?東の国もおんなじように人が暮らしてるですよ!?」

政務官「黙れ!!」

ネバル「」ビクッ

政務官「たかだか2、3年程度の経験で偉そうに語るな!どうにもならない事をごちゃごちゃと喋ってる暇があれば次を見据えて思考しろ!!」

ネバル「なっ…」

政務官「我々は王国の役人だ!王国の為に仕え、王国に住まう民を生かすのが我々の使命だ!!」

ネバル「う…っ……」

政務官「貴様のごとき素人に毛が生えたような木っ端役人が出る幕などない!」

ネバル「っ〜〜!!」キッ

政務官「なんだ、その目はぁ!?」

ネバル「……!!」ギュウウ
38: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/1(月) 23:41:23 ID:eI.uCZwLb.
ネバル「そ、その言いぐさはあんまりです!!」

政務官「……」

ネバル「オイラだって…一生懸命やってるです!王国の為に考えてるです!!」

政務官「ならば分を弁えろ!貴様が本来当たるべき管轄は民間への支援だ!国外情勢への意見など差し出がましいものと知れ!!」

ネバル「管轄はそれぞれでも意見はしていい筈です!口出ししちゃいけないなんて誰が決めたです!?」

政務官「ほう!では意見とやらを聞かせてもらおう!東の国と自国の安全を同時に保証する手立てがどこにある!?」

ネバル「そ、それは…全員で話し合って……」

政務官「話し合う余地などない!そんな方法はどこにもないのだからな!」

ネバル「だ、だけど…」

政務官「だけどではない!何も考えられない無能が口答えをするな!!」

ネバル「む、のう…」ガーン

ヒメ「やめろ!!」

政務官&ネバル「……!?」

ヒメ「二人ともそこまでにしておけ」

政務官「はっ…」

ネバル「……」シュン

ヒメ「…後日、改めて話し合おう。僕も少し休むことにする」

政務官「かしこまりました」

ヒメ「出迎えご苦労だった。皆は引き続き、公務に戻ってくれ」

ハハーッ!!!
39: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/1(月) 23:47:52 ID:eI.uCZwLb.
―――王宮(客室)―――

カロル「わー!」キラキラ

宣教師「これはまた…広い部屋に通されましたね」マジマジ

ラム「全体的にきらびやかだなぁ…。客室でこれならヒメはもっとすごい部屋に住んでるんじゃ…」

宣教師「い、いやぁ…彼の部屋はもう少し落ち着いていましたよ?」

カロル「あはは!すっごーい!!」ピョンッ ポフッ

ラム「あんなにはしゃいじゃって?よっぽど嬉しいのかな?」

宣教師「彼曰く"初めてのお泊まり"なので胸が昂っているのでしょう」

ラム「民家ならまだしも…お城だからね、ここ」

宣教師「それでも彼にとっては"友達の家"なのですよ」クスッ

ラム「…カロルくんらしいや」クスッ

カロル「ねぇ!見てみて!このベッド!とってもおっきいよ!」ポフン

ラム「うん。5人くらいで寝ても軋まなそう」

カロル「今日は三人で一緒に寝ようよ!いいでしょ?」キラキラ

ラム「だってさ?」

宣教師「もちろん構いませんよ」ニコッ

カロル「やったー!」
40: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/1(月) 23:50:41 ID:W5Vcpfi1ZU
ラム「うわー…横になってみるとますます広いね」フカフカ

宣教師「えぇ、それにとても柔らかで心地いいです…。これが最高級のぬくもりなのでしょうか…」ホワーン

カロル「ラムくん。もっとこっちにおいでよ!」モゾモゾ

ラム「へ?なんでさ?こんなに広いんだし空けた方がいいんじゃない?」

カロル「ぎゅっ!」ダキッ

ラム「わっ!な、なに!?」ビクッ

宣教師「ふふ、仲良しですね?」

カロル「えへへ!旅してた時もね、こうやってお母さまとマルクと三人で添い寝してたの!ちっちゃいベッドだったけど暖かかったよ!」

ラム「べ、別にくっつかなくてもいいと思うんだけど…せっかく大きいベッドで寝てるんだし」ヒクヒク

宣教師「ふむふむ、なるほど、身を寄せ合って暖め合うのですね。
しかし一つのベッドで事足りるとは…体の小さいホビットならではの術という訳ですか」

ラム「どこに感心してるのさ…。あと小さいのはコンプレックスだから、あんまり分析しないでよ…」

宣教師「小さくていいじゃないですか。二人とも可愛らしいですよ?」

ラム「全然嬉しくない…。むしろけなされた気分だよ」ムスッ

カロル「ぼ、ボクだって、いつかおっきくなるよ!夜更かししないもの!」アセアセ

宣教師「どうでしょうねー…。身長なんて意外と望んだようにはならないものですよ?」

ラム「そ、そんな言い方ないじゃん!たしかにもう10才を過ぎたから伸びないけどさ…!」イジイジ

カロル「うぅ…ずっとこのまんまだったら、みんなに笑われちゃう」グスンッ

宣教師「可愛いげがあっていいですよ。私なんて気付けば、こんな大女になってましたし…」ズーン

ラム「……ま、まぁそういう種族だからね。しょうがないよ」

宣教師「人であって巨人ではないのですが…」

カロル「うらやましいなー。ボクも宣教師さまみたいにおっきくてカッコいい人になりたい」

宣教師「私はキミたちが羨ましいですよ。はぁ…」

カロル「? どうしてため息つくの?」

ラム「女の人にもコンプレックスはあるんだよ…。そっとしてあげよ」

カロル「う、うん…?」オロオロ
41: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/1(月) 23:53:42 ID:eI.uCZwLb.
カロル「うぅん…むにゃむにゃ」ギュー

ラム「(すっごいしがみついてくる…。でも振りほどいたら可哀想だし…)」

宣教師「ぐっすり眠ってますね?」ニコニコ

ラム「僕は寝れないけどね…」

宣教師「安心しているんですよ。私やキミがそばにいて」

ラム「……」

宣教師「今回の件に関わらず…私たちは元々、繋がる筈のなかった者同士ですからね」

ラム「こうやって同じ布団にくるまるなんて考えられなかったよね」

宣教師「…これが彼の望む世界なのかもしれませんよ」

ラム「……?」

宣教師「分け隔てなく穏やかな一時…。この部屋には今、確かな平穏があります」ニコニコ

ラム「…朝になるまでの短い時間だけどね」チラッ

カロル「んんぅ……えへへ、ふやぁ」スヤスヤ

宣教師「ふふ…安らぎに満ちた寝顔ですね」クスッ

ラム「どんな夢見てるんだろ?」

宣教師「良い夢に違いありませんよ。こんなにあどけない笑顔なんですもの」

ラム「…僕も寝よっかな」

宣教師「それがいいでしょう。もう小窓から星空が見えています」

ラム「……おやすみ」フカッ

宣教師「はい、おやすみなさい」ニコッ

ラム「」スゥゥ

宣教師「良い夢を…」ポンポン
42: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/12(金) 20:58:25 ID:iNoKbPh17s
―――王国(北の領土・最果ての町)―――

ゴォォオオオ……

北の民1「ヒークシュン!」

北の民2「さむっ…寒くね!?」

北の民3「さみぃなぁ〜。身も心もひもじぃぜ〜」

北の民2「モクある!?モク!!」

北の民3「ねぇよ〜。薄っぺらいあばら家にゃガバガバのクセェ壁しか〜」

北の民2「ぶるるるる!てかさむっ!寒くね!?」

北の民3「さみぃなぁ〜。なんでこんなに寒いんだろうな〜。王様はなぁにやってんだか〜」

北の民1「ふへっ!あひひ!ヒークシュン!」

北の民3「風邪か〜?死ぬ前に寝とけよ〜?」

ガラッ

ビュウウウウウ!!

北の民1「ヒィィ!!」ガチガチ

北の民2「さむっ!!寒いって絶対!?」ガタガタ

北の民3「お、お、おぉう!やめろよ〜閉めてくれよぉ〜」ブルブル

売人「くちゃっくちゃっ」

北の民1「な、なんだと思や……プチョリスフの旦那か」

売人(プチョリスフ)「ぺっ」
43: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/12(金) 20:59:53 ID:iNoKbPh17s
北の民1「今日は勘弁してくれやせんかねぇ。ちょいと手持ちが…」

プチョリスフ「あ?吸わねーの?」

北の民1「吸いてーんですけど金が…」

北の民2「さむっ!寒くね!?なぁ寒くね!?」

北の民3「しっ!静かにしろ〜!旦那の前だぜ〜!」

プチョリスフ「チンケなツラァ並べやがって……」

北の民1「え、えへ!どうもチンケなツラでごぜぇやす」ヘラヘラ

プチョリスフ「ムカムカしてきやがるなぁ…」

北の民1「ふ、ふひ」ヘコヘコ

プチョリスフ「金に困ってんならよ。ちょいと付き合えよ」

北の民1「」ビクッ

プチョリスフ「まぁそう怖がるなって…むしり取ろうってんじゃねーんだ」ニヤニヤ

北の民1「!!!」ヒシッ

北の民2「」ガタガタ

北の民3「」ブルブル

プチョリスフ「ここはさみぃな。あったけぇとこに行くぞ」
44: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/12(金) 21:00:55 ID:iNoKbPh17s
部下1「」シュボッ

プチョリスフ「ふー」スパスパ

部下2「…いいんですか?こんなことしちまって?」

プチョリスフ「しょうがねぇだろ。ここじゃもう商売にならねぇ」

部下1「うざってぇ…。それもこれも」

部下2「せっかくバックヤードに開拓した市場をクソガキ(※国王)に潰されちまったからなぁ」

部下1「こんな雪とささくれしかねぇ北の領土の最果てまで逃げたってのに……」

部下2「王都最大の歓楽街を仕切る筈だった俺達が…今じゃ場末のケチな粉売りだ。みっともねぇったらありゃしねぇ」

プチョリスフ「つまんねー話はよせよ。モクがシケらぁな」スパスパ

部下1「にしたって…こりゃまずいんじゃ?」

プチョリスフ「いいんだよ。貿易だ、貿易」

部下1「先方はなんつってんすか?」

プチョリスフ「うちに仕入れを取り付けた。なんつってもでけぇ取引だ。くれぐれも慎重にだとよ」

部下2「そんな計画をあんな奴らに任せて大丈夫ですか?くたびれた廃人ばっかですぜ?」

プチョリスフ「だからいいんだろうが?扱いに困らねぇ」

部下1「しっかし問題は量っすよねぇ。こんなとこじゃ…」

プチョリスフ「同業にも情報を売り回せ。こぎつけりゃいいんだ。どいつも今の王政に縛られてがんじがらめ。喜んで飛び勇むさ」

部下2「おぉそれはいい!別口で儲けが出るな!」

部下1「でもよぉ…あてにしていいのか?」

プチョリスフ「…金で買ったネタだ。払った分はしっかり稼がねぇとよ」スパスパ
45: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/12(金) 21:03:01 ID:lvGUj2/ilc
―――王都(王宮)―――

宣教師「帰れない…?」

ヒメ「あぁ、しばらくは城に留まってもらう」

宣教師「…しばらくとはいつまでですか?」

ヒメ「僕がいいと言うまでだ」

宣教師「せめて理由を聞かせてください。そうでなければ説明のしようがありません」

ヒメ「説明する必要はない。おまえには教団の活動に専念してもらうからな」

宣教師「!? 二人だけで、ここに残すのですか!」

ヒメ「いや、一人だ。ラムは帰らせる」

宣教師「カロルくんはどうするんです!?」

ヒメ「どうもしない。いてもらうだけだ」

宣教師「だからそれはどうしてです!?」

ヒメ「声を荒げるな。決まったことだ」

宣教師「き、決まったこと…?」
46: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/12(金) 21:03:22 ID:lvGUj2/ilc
宣教師「まさかキミが…彼から自由を奪うような真似をするなんて」

ヒメ「……」

宣教師「理由があってのことだとは分かります…。ですが私達にすら隠すとは思いませんでした」

ヒメ「別に隠してなんかない」

宣教師「……」

ヒメ「以上だ。下がれ」

宣教師「また…そうやって一人で抱えようとするんですね」

ヒメ「は?」

宣教師「そんなに私達は頼りないですか?お荷物なんですか?」

ヒメ「なにも言ってないだろ」

宣教師「教えてください。私達にできる事があるならなんでもします!」

ヒメ「そうか。気持ちだけで十分だ」

宣教師「…キミを疑いたくないんです」

ヒメ「……」

宣教師「お願いします!」ペコリ

ヒメ「はぁ…あのな。僕たちには守秘義務があるんだよ。なんとなく分かるだろ」

宣教師「それほどに大きな事態が予想されているのですか?」

ヒメ「だから探るなって…」

宣教師「私にだけ教えてください!誰にも言いませんから!ね!?」ガシッ

ヒメ「…あぁもう!しょうがないヤツだな!」ワシワシ

宣教師「……!」パァァ
47: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/12(金) 21:04:36 ID:lvGUj2/ilc
ヒメ「本当になにも隠してないんだよ。どうなるか分からないから念のためだ!」

宣教師「???」

ヒメ「…これから先、国内が大きく乱れると予想される」

宣教師「……!」

ヒメ「その時、僕の選択が間違っていたか正しかったかが問われるだろう」

宣教師「何が…起きるというのですか?」

ヒメ「ぼんやりとしか浮かばないけど…今までにない何かだ。時代が変化する背景には必ず大きな影響が及ぼされる」

宣教師「なぜキミに分かるんですか…?そのような…体験した事もないのに」

ヒメ「…今、言えるのはそれだけだ」

宣教師「っ…分かりました。カロルくんにも、よく言っておきます」

ヒメ「あぁ、頼む」

宣教師「…でもこれだけは言わせてください」

ヒメ「なんだ?」

宣教師「カロルくんが変えた世界をキミが守ろうとしている…でも」

ヒメ「……」

宣教師「その為に自分が犠牲になろうとするなら私達は全力で止めます。たとえ何があろうとも…絶対に」

ヒメ「心配するな。そんな気はさらさらないさ」

宣教師「…分かりました。失礼します」スタスタ

ヒメ「……」
48: ◆WEmWDvOgzo:2017/5/12(金) 21:07:14 ID:lvGUj2/ilc
〜〜〜回想(ヒメ)〜〜〜

―――地下牢獄―――

カツンカツン カツンカツン

ヒメ「照らせ」

団長「はっ!」バッ

アントリア「うっ!うぅ……」ヨロッ

ヒメ「ふん…見ない間にずいぶん老けたな」

アントリア「ゆる…してくれ…もう……ゆるしてくれ」ワナワナ

ヒメ「…クサいんだよ。そんな芝居で僕が同情するとでも思ってるのか?」

アントリア「……」ピタッ

ヒメ「人を騙して生き抜いた末路がコレか。こうはなりたくないもんだな」

アントリア「ふっ…ずいぶん顔つきが変わったな」

ヒメ「?」

アントリア「よほど辛かったのだろうね。以前より厳しさが際立っている」

団長「…貴様が余計な真似をしてくれたせいだろうがぁ!?」カッ

アントリア「僕が?ハハ、違うだろう?なるべくしてなったのだよ。物事とは運命の兼ね合いだ」

団長「なにぃ!?貴様が大臣や政務官を操り、西の国を動かしたのが全ての発端であろうが!?」

アントリア「ほう?では僕以外にいなかったのか?この戦争に加担した人物は?」

団長「ぬ!?」

アントリア「一人の力で起こせるものなどタカが知れている。君たちもまた…加担した一人に含まれるのではないだろうか?」

団長「ぐ、ぬぅ!屁理屈ばかりこねおってぇ…!!」ワナワナ

アントリア「ここへ来たということは…目標を果たしたのかな?」

ヒメ「…そうだ。約束通り真実を話してもらうぞ」

アントリア「真実…?」

ヒメ「今さらとぼけるな。おまえの知る全てを打ち明けろ」

アントリア「クックッ…失われた歴史か」ニヤッ
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うpろだ
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