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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編その3】
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1: ◆WEmWDvOgzo:2017/4/29(土) 21:15:11 ID:.RxhzfPc96
あらすじ

永遠の命。その鍵となる救い主、カロル。
欲望に目覚めた西の国。狂気は果てしなく蠢く

遂に勃発してしまった戦争
強大な西の国に立ち向かうべく王国、東国、南国は6ヶ国同盟から成る平和協定を破り、3国連合軍を結成する

南国は多大な犠牲を払い、国王ローレンの命と引き換えに西帝国軍の主力を削った
東国は張り巡らされた罠を果敢に打破するも圧倒的な力の前に粉砕される

敵地にて孤軍となった王国軍
総指揮官フィクサーの戦略采配が功を奏し、帝都本拠地の制圧を完了した

一方で吉報を待ち、国内に留まる王国の国王ヒメ
迫り来る侵略の魔の手を退ける為、東国のホビット族と手を結ぶ
彼らによって明かされた最後の真実
アピシナの大樹の成り立ち

かつて癒しの力は破滅を導いた
人もホビットも共通する願い
永遠の命が野心をくすぐる

穢れなき無垢な愛情は火種となって注がれ、混沌とした世界を象徴するように大樹を巡る争いは止まなかった

忘れ去られた無残な過去
300年もの月日を経てなお繰り返される歴史
誰も止めることは叶わない

友情を取るか、安寧を取るか
時を追う毎に取捨選択を強いられる
捨てていいものなど一つもないのに


210: 東京名無しンピック2021?:2021/8/6(金) 01:44:24 ID:UI6QUue4Pc
やっと追い付いた!
支援
211: 名無しなのよ:2023/8/19(土) 22:29:45 ID:sLEViBNQkQ
支援
212: 名無しなのよ:2023/11/22(水) 15:52:26 ID:u7hIzhSTBs
更新待ってます!しえん
213: 名無しなのよ:2023/12/17(日) 08:09:57 ID:FfqO1ditts
何年だって待ってます
214: ◆WEmWDvOgzo:2023/12/18(月) 22:10:18 ID:hiov.r88ZA
ーーー王都(ハリアンス家の屋敷)ーーー

公爵「どうやら都は賑わっておるようですな」

総局長「はい!それはもう!うちの記事もとんでもない売れ行きで!」ヘコヘコ

公爵「ふふ、庶民というのは噂話が好きなものだ」

総局長「嘘か真かを問う前に感情が先走る生き物ですから!」

公爵「恐ろしいものですよ。私は君にほんの些細な出来事を耳打ちしただけなのだが、いつの間にやら都を揺るがす一大事なんだものなぁ」

総局長「当局のモットーは徹底的な真実の究明です!たとえ不確定だとしても疑惑あれば根掘り葉掘り世間に公表する!これぞ記者魂の賜物ですよ!」

公爵「んぅむ。物は言いようですね」

総局長「ははは!不透明な政治を嫌い、我々記者に報道の自由を与えてくださった国王陛下に感謝を込めて権利を行使しているまでです!」

公爵「まあ持ちつ持たれつといこうじゃありませんかね。記事に困ったらこうして茶を飲みながら私と世間話をしたらいい」

総局長「毎日と伺いたいところです!閣下のお屋敷では良い"茶葉"を使っておられますからね!」ヘラッ

公爵「いつでも来なさい。極上の"茶"でもてなしますよ」ニヤッ
215: ◆WEmWDvOgzo:2023/12/18(月) 22:11:52 ID:hiov.r88ZA
公爵「あぁ、ところで小耳に挟んだのだがね」

総局長「!」バッ

公爵「ふふ、さっそくメモを取り出して熱心なことだ」

総局長「良い茶葉を仕入れられましたか?」ヘラヘラ

公爵「口に合うかは君次第ですが」

総局長「」ゴクリ

公爵「サイレンス大聖団に名だたる有力者らが入信するらしい」

総局長「ほほう?近頃話題の尽きないあの謎の団体ですか」メモメモ

公爵「そこにダィール卿やソメリア卿を中心に貴族が名を連ねるとか」

総局長「ふむふむ!それはスクープですが……」

公爵「香りが足りませんか?」クスッ

総局長「いやぁなにしろ国民は鈍感ですからねぇ。鼻がバカになるくらい強い香りと刺激を求めてるんですよ。人気の役者や豪商たちの中に混じってはその名も霞むでしょうし」ポリポリ

公爵「フッ……ではそこに私の名も並ぶ予定だと言ったら?」

総局長「え!?」

公爵「しかも教皇の座に就くのですよ」ニンマリ

総局長「きょ、教皇ってもしや……サイレンス大聖団は……!?」

公爵「いかにも。私の作った組織ですよ」ニヤニヤ
216: 名無しなのよ:2023/12/18(月) 22:13:11 ID:hiov.r88ZA
総局長「こ、これはまさしく大スクープだ!!」カキカキ

公爵「おっと。待ちなさい」

総局長「」ハッ

公爵「まさか全てを記事にするつもりですか?」

総局長「も、もちろん公爵閣下の作られた組織である事は伏せておきます!」アセアセ

公爵「そうですね。それが良いでしょう」

総局長「題名は教皇に選ばれし神の代理人ハリアンス公爵、私達信徒に説いた福音とは?といった感じでいかがでしょう?」

公爵「構いませんとも。筋書きもお任せしますよ」

総局長「は、はい!考えておきます!」

公爵「さ、今日は茶を切らしてしまいました。また近いうちに仕入れておきましょう」

総局長「分かりました!今日のところはおいとまさせていただきます!いつも美味しい茶をありがとうございます!」ヘコヘコ

公爵「ええ、ではまた」

総局長「失礼します!」
217: 名無しなのよ:2023/12/18(月) 22:14:31 ID:hiov.r88ZA
ーーー王都(噴水広場)ーーー

総局長「……」タバコスパー

ワァーワァーキャーキャー!

女の子1「うちのママがね!サイレンス大せーだんに入れてくれたの!」

女の子2「いいなぁ!うちも入りたーい!」

男の子1「サイレンス大せーだんに入ると月1で馬車で楽しいとこに連れてってくれるんだってよ!」

男の子2「そうなんだー!俺も母ちゃんにお願いしよっかな!」

青年1「やっぱ今どき教団なんか古いよな。サイレンス大聖団に入信しなきゃ流行りに乗り遅れるよ」

青年2「お前流行りで宗派選ぶなよなー」

青年3「まあ実際、教団だって最近はそんな厳しい決め事はないし宗教なんて遊びのサークル感覚で選べばいいんじゃね?」

青年4「王国は一応宗教国家だからな。でもどの宗派にするか選ぶ権利は俺たちにあるんだ。面白い方にいこうぜ」

青年5「入信はホビット以外なら誰でも可だからな!気楽でいいや!」

老婆1「サイレンス大聖団はわしらのような年寄りにも居場所を与えてくれなさる。若い聖団員の方々も優しくしてくれるし会合が楽しみでしょうがないわい」

老婆2「うちの爺さんもすっかり夢中じゃて」

老人1「おぉ〜サイレンス神さま!なまんだぶなまんだぶ!」

総局長「子供から年寄りまですっかり骨抜きにされてやがる。どこまでも恐ろしいお方だよ……」タバコプカプカ

総局長「(まさか知らない間に俺たち新聞屋まで抱き込んで一大宗教を作ってたとはな。サイレンス大聖団の聖教新聞を扱ってるのはウチだぞ?)」

総局長「(一時期は国王陛下の英雄譚一色だった空気も呑まれ、キナ臭い香りが漂ってきやがった)」

総局長「(こりゃ政府が傾くのも時間の問題かもなぁ)」

総局長「ま、俺は売れる記事が書けりゃなんでもいいけどよ」ジュッ グリグリ
218: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 07:34:09 ID:FfqO1ditts
更新来てた嬉しい
作者さまのペースで無理なく進めていってください

サイレンス大聖団の、というか公爵の手腕が素晴らしすぎて着々と世に広まっていってて怖いですね
219: ◆WEmWDvOgzo:2023/12/19(火) 22:48:03 ID:hiov.r88ZA
ーーー城内(副官室)ーーー

ガチャッ

侍女「コーヒー入りました」

政務官「置いてくれ」

侍女「はい。温かいうちにどうぞ」コトッ

政務官「ありがとう」ズズッ

侍女「……お連れ様はホットミルクでよろしかったですか?」コトッ

宣教師「ええ、ありがとうございます……」

侍女「いえ、では失礼します」ペコリ

バタンッ
220: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:48:49 ID:hiov.r88ZA
政務官「知っているか?コーヒーというのは南の国が原産らしい」

宣教師「そうですか……」

政務官「我が王国領でも南には豆農家があり、栽培が盛んだそうだ」

宣教師「なるほど……」

政務官「私はコーヒーが好きでな。自分で配合した豆を挽いて味わうのがもっぱらの日課なんだ」
 
宣教師「そうなんですね……」

政務官「職業病とも言われるがね。この仕事はなにより睡魔との戦いでもある」

宣教師「はあ……」

政務官「人間、集中力を切らせば終わりだ。我々のような人種は特に」ジロッ

宣教師「……」

政務官「我々役人が眠気を押して働く最中にあなたは貴族との交流を嗜んでいたらしい」 

宣教師「……はい」

政務官「美味かったか?」

宣教師「……」

政務官「公爵と飲む酒は美味かったのかと聞いているんだ!?」ダンッ

宣教師「」ビクッ
221: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:49:37 ID:hiov.r88ZA
政務官「なぜあんな真似をした……!?」

宣教師「……」

政務官「私が公爵派に忍ばせた間者から夜会に司祭が出席していると聞いた時は耳を疑ったぞ」

宣教師「……」

政務官「しかも公爵や太后陛下に接触し、潰れるまで酒に溺れていたと」

宣教師「……」

政務官「私がいち早く手配し、身柄を保護したからよかったものの万が一王都の民の前に変わらず姿を現していたら今頃は暴動になっていただろう」

宣教師「恐れ入ります……」
222: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:50:00 ID:hiov.r88ZA
政務官「まんまとハメられたな。あなたの思惑がどうであれ夜会に出席した時点で公爵の手の内だったのだ」

宣教師「私は……自分の意思で参加したつもりでした」

政務官「だがそうではなかった。あなたが頼ったクライリーとかいう領主も公爵の一味だったのだろう」

宣教師「あの方は以前から教団の活動に協力的でボランティアやホビットの保護活動にも積極的に参加してくれて……」

宣教師「平民の出だった自分と同じように環境に恵まれなかった人たちを助けたいと熱心に語ってくれたんです」

政務官「またありがちな……」

宣教師「 親を失った子どもたちにも気さくに声を掛けて励ましたり年末の時期にはプレゼントをあげて喜ばせたり、ご自身も里親として教団で預かっていた子を引き取ってくれたんです……」

宣教師「そんな人が騙していたなんて……私には信じられなかったんです……!」ウルッ

政務官「……」ハァッ
223: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:50:33 ID:hiov.r88ZA
政務官「典型的な"政治"だな……」

宣教師「……!」ググッ

政務官「あなたはヤツが夜会の恒例メンバーである事を知っていたのか?」

宣教師「……付き合いで仕方なくと話していました」

政務官「出席を促されたことは?」

宣教師「冗談混じりではありますが『試しに来てみるかい?』と持ちかけられた事がありました……」

政務官「分かりやすい呼び水だ。もし公爵との繋がりを持ちたい時には自らを頼るように仕向けている」

宣教師「今にして思えば軽率でした……」シュン

政務官「なぜ一言でも私や陛下を通そうと思わなかったんだ?」

宣教師「城下の混乱を聞きつけていても立ってもいられませんでした……」

政務官「っ……ことの重大さを分かっているのか!?」

宣教師「返す言葉もありません……」
224: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:51:54 ID:hiov.r88ZA
政務官「ここにきて国民の信用を失うことは国王陛下の失墜を意味するのだ!!」ダンッ

宣教師「……すみません」

政務官「あなたの失態によって世論は今、完全に傾いているんだぞ!」

宣教師「っ……」

政務官「巷ではサイレンス大聖団だのいう新興宗教が幅を利かせ、教団を追いやる勢いだそうじゃないか」

宣教師「彼らのことはあまり知りませんが……そこまで意識していませんでした」

政務官「大勢の信者がそちらに流れ込んでいるようだぞ」

宣教師「信仰や教えは強制するものではないので……」

政務官「それではダメだ」

宣教師「……?」

政務官「教団もあくまで王政府の一部であって立派な政治的武器だ。信徒を減らすことはすなわち国王陛下の威光を下げることに他ならぬ」

宣教師「政治的……武器……?」

政務官「いいか。今の王国はある意味では先刻の西国との戦争を凌駕する大きな危機に瀕している」

政務官「悠長に構えていると瞬く間に崩壊するのだぞ」

宣教師「……」
225: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:52:18 ID:hiov.r88ZA
宣教師「その……一つよろしいでしょうか」

政務官「なんだ?」

宣教師「教団が政治的武器というのはどういう意味ですか?」

政務官「……気に入らないか?」

宣教師「いえ、ただ私には分からなくて……」

政務官「……我が国の歴史を紐解けば分かることだ」

宣教師「……?」

政務官「王国は代々王政とは名ばかりの傀儡政権で実質宗教によって支配されていた」

政務官「その流れを断ち切ったのが国王陛下であり、救い主であり、教団の現司祭、つまりあなただ」

政務官「ここ数年で政治は国王の下に行われ、ホビットは人との融和を実現し、教団は支配から遠のいた」

政務官「あなたの教えに従う新生教団は伝統から生まれ変わり、新時代を象徴するものとなっていたのだ」

宣教師「皆さんが信じてくれたから実現したのであって私たち自身がどうという訳では……」

政務官「そうかもしれない。だが綺麗事を言ったところで仕方あるまい。国民は王政府と教団が協力関係にあると理解している」

宣教師「……教団を引き受けたのはヒメくんに頼まれたからですが活動そのものは私の理念に基づいていました。癒着とは違います」

政務官「しかしあなたも陛下も救い主に心動かされ、同じ理想を求めたのだろう?」

宣教師「それはそうですが……」

政務官「ならば同じ道を行く同志だ!違うのか?」

宣教師「だからと言って私達が作り上げた大切な団体をまるで道具のように扱われるのは……」

政務官「しかし……」

宣教師「以前あなたに説得されて戦争に協力した時にも王国のやり方は変わってないと揶揄しましたが……それでも気持ちの面では通じ合ってると信じていたから私達は良い関係を築いていられたんです」

政務官「……すまない。言い方が悪かった」
226: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:52:43 ID:hiov.r88ZA
宣教師「私が悪いのは分かってます……。余計なことをしたばかりに迷惑をかけてしまって」

宣教師「でもあなたやヒメくんに相談出来なかったのは……不審に感じていたから」

政務官「不審……?」

宣教師「最近ヒメくんの様子がおかしいとカロルくんから聞きました」

政務官「そ、それは……」

宣教師「私も感じています。明らかに以前の彼ではなくなっていると」

政務官「……!」

宣教師「なぜ彼はカロルくんを軟禁しているのですか?」

政務官「わ、分からん……。私は直接救い主と関係していないのでな」

宣教師「街では北国との戦争が始まるとビラが撒かれていました」

政務官「ああ、そのようだな……」

宣教師「せっかく王都に馴染んでくれたホビットのみなさんを追い出そうとする動きも見られます。それも内部の縺れによるものなのですか?」

政務官「くっ……」

宣教師「城内では王政府側の派閥から何人も貴族側に引き抜かれてるとも聞いています。今この国では何が起こっているのですか?」

政務官「……順序立てて説明してやりたいが私も暇ではない。ただでさえ貴重な時間を奪われているんだ」

宣教師「全てを話すのが無理なら一つだけ聞かせてください」

政務官「……?」
227: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:53:09 ID:hiov.r88ZA
宣教師「あなたの焦りもヒメくんの変化が関わっているのですか……?」

政務官「……ああ」

宣教師「ヒメくんに何が……?」

政務官「さあな……」

宣教師「彼に会わせてもらえませんか?」

政務官「それは無理だな。近頃の陛下は議会にすら出席されん」

宣教師「それなら直接……」

政務官「試みたよ。何度も話し合った」

宣教師「……」

政務官「あれは心の病だ。触れれば触れるほど悪化する……」

宣教師「……!」

〜〜〜回想〜〜〜

宣教師『…呑まれないといいですけどね』

団長『……?』

宣教師『いくら成長したとはいえ、彼はまだ子供です。課せられた使命や人の期待をどこまで背負いきれるか』

……………

宣教師「……現実になってしまったんですね」ボソッ
228: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:53:39 ID:hiov.r88ZA
宣教師「分かりました……」

政務官「……?」

宣教師「私は何をすればいいですか?」

政務官「……」

宣教師「あなたにお任せします。たとえ道具のように扱われても……ヒメくんもカロルくんも、そしてたくさんの人たちが救われるのなら」

政務官「……すまない」

宣教師「こちらこそごめんなさい。頼ることしか出来なくて」

政務官「そんなことは……」

宣教師「私たちはいつも簡単に理想を口にするけれど、それを実現する為に動いてくれてるのは現実を口にするあなたのような人たちですから」

政務官「……その理想がなければ人々は付いてこない。今までもそうだったんじゃないか?」

宣教師「そうですね。あの大樹での永遠の命を巡る争いが遠い昔のよう。あれはまさに理想を追い求めた戦いでした」

宣教師「でも今は違います。理想を守る為にあらゆる現実に立ち向かっている」

宣教師「その結果、幼い子たちが絶望し、苦しんでいるのなら私も現実を見なくてはいけません」

政務官「幼子などとは思わんが……陛下を支えるのが私の務めだ。存分にあなたを利用させてもらう」

宣教師「遠慮なく使ってください。私に政治は向かないので」ニコッ

政務官「ふん……」クスッ
229: 名無しなのよ:2023/12/19(火) 22:54:08 ID:hiov.r88ZA



宣教師「まずは教団の信用回復を図りますか?」

政務官「もちろんだ。だが今はその時ではない」

宣教師「サイレンス大聖団を見極めてからですか」

政務官「まあな……」

宣教師「私の知る限り彼らは神や教えといった主張らしい主張をしていませんが、いったいどうやって信徒を募っているのでしょう?」

政務官「調べさせたいところではあるがあいにくと人手が足りなくてな。教団から一部の人間に声を掛け、調査させるのが妥当だろう」

宣教師「ふむふむ。それなら私が潜入しましょうか」

政務官「……本気か?」

宣教師「どのみち私はしばらく身を隠さなければなりません。下手に公爵派の目がある城内にいるより姿を変えて大聖団の一員として振る舞った方がよいのでは?」

政務官「それはそうかもしれんが万が一正体が割れたらどうするつもりだ?」

宣教師「サイレンス大聖団には各界から大物の方が入信されていると聞きますし私もその1人だと言えば信じるでしょう。なんせ世間から私は誰にでも身体を委ねる淫売と囁かれてますから」

政務官「そんな真似をしてみろ。教団の名が地に堕ちるぞ」

宣教師「経験上ですが危険を犯さなければ何事も成し得ません。私達の戦いはいつも0か100でした」

政務官「……」

宣教師「お願いします」

政務官「(たしかに彼女は1人の宣教師として教団の闇を暴こうと立ち上がり、幾度も死線を潜り抜けてきた。
私も北国の問題に掛かりきりで国内には目を向けられん……。ここは任せてみるべきか)」

宣教師「私にやらせてもらえませんか?」ジッ

政務官「……サイレンス大聖団の弱みを握り、教団の信頼を回復させる。それがあなたの役目だ」

宣教師「分かりました」ニコッ
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sage:


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