あらすじ
永遠の命。その鍵となる救い主、カロル。
欲望に目覚めた西の国。狂気は果てしなく蠢く
遂に勃発してしまった戦争
強大な西の国に立ち向かうべく王国、東国、南国は6ヶ国同盟から成る平和協定を破り、3国連合軍を結成する
南国は多大な犠牲を払い、国王ローレンの命と引き換えに西帝国軍の主力を削った
東国は張り巡らされた罠を果敢に打破するも圧倒的な力の前に粉砕される
敵地にて孤軍となった王国軍
総指揮官フィクサーの戦略采配が功を奏し、帝都本拠地の制圧を完了した
一方で吉報を待ち、国内に留まる王国の国王ヒメ
迫り来る侵略の魔の手を退ける為、東国のホビット族と手を結ぶ
彼らによって明かされた最後の真実
アピシナの大樹の成り立ち
かつて癒しの力は破滅を導いた
人もホビットも共通する願い
永遠の命が野心をくすぐる
穢れなき無垢な愛情は火種となって注がれ、混沌とした世界を象徴するように大樹を巡る争いは止まなかった
忘れ去られた無残な過去
300年もの月日を経てなお繰り返される歴史
誰も止めることは叶わない
友情を取るか、安寧を取るか
時を追う毎に取捨選択を強いられる
捨てていいものなど一つもないのに
127:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:58:48 ID:VfV4LPRyvs
ヒメ「話は以上でしょうか…。僕は母上と違い、多忙ですので用が無ければ…」
大后「この飾り…」チャラッ
ヒメ「は…?」
大后「美しいと思いませんこと?」クスッ
ヒメ「…宝飾を愛でる趣味はありません」プイッ
大后「王族らしからぬ発言ですわね。こんなにも煌めいて鮮やかですのに?」チャラッ
ヒメ「なんとでもお言いください…」
大后「このアメジストなど、ほら?素晴らしい…庶民には一生、手の届きませぬ代物よ?」
ヒメ「…その宝石が民の労働に値する対価たりえるとは到底、思えませんね」
大后「貴方は何も理解出来てませんのね…」ハァッ
ヒメ「なんですって…?」イラッ
128:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:59:39 ID:e4mtUywSu.
大后「このラピスラズリも、エメラルドも、ルビーも、トパーズも、ダイヤモンドも…高貴なる者の証」チャラッ
大后「太古より宝石は身分の高い者にのみ行き渡りました。どの時代も、どの国でも」
大后「この輝きに価値があるのではなくて、この輝きを身に付けるに相応しい人間にこそ価値がありましてよ?」ニヤッ
ヒメ「……」
大后「貴方もそろそろ自覚なさい。この世は上下に分かたれる物…上位に生まれた誉れを存分に味わってはいかが?」
ヒメ「…この地位を授かれた幸運にはとても感謝しております」
大后「そう。それでいいのよ…?」ニィィッ
ヒメ「ですが…僕は地位に溺れる気はございません」
大后「」ピクッ
ヒメ「失礼します…」スタスタ
ガチャッ
バタンッ
大后「……」チラッ
本「」ポツン
大后「(何を熱心に読んでいるかと思えば、純愛小説……)」ヒョイッ
大后「愚かですわね…。王族に一途な恋が赦されると思っているのかしら…」ペラッ
大后「美しいだけの物語など、この世にありはしないというのに…」ポツリ
大后「あの子はまだまだ自覚が足りませんわ…」フッ
129:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:00:50 ID:VfV4LPRyvs
〜〜〜昼〜〜〜
―――辺境地(川)―――
ピーン クククッ
ルーボイ「うおっ!来たぞ来たぞ!こりゃ大物だ!」グググッ
孤児1「わー!兄ちゃんすげー!」
孤児2「がんばれー!」
母「ふふ…」ニコニコ
ラム「網の準備できたよ」
ナラ「やさいから、やこっか」スッ
ミシング「んー!いい匂い!出来上がりが楽しみだねー!」
ルーボイ「おぉ!釣れた!」ピシャッ
孤児1「やったー!」
孤児2「兄ちゃんすげー!」
ナラ「わぁ!おっきい!」
ラム「やるじゃん」クスッ
ルーボイ「へっへーん!俺にかかればへっちゃらだぜ!」
母「じゃあそのお魚も捌いて焼きましょっか」ニコニコ
ルーボイ「やっりー!」グッ
130:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:03:24 ID:VfV4LPRyvs
ジュージュー ジュージュー
ルーボイ「うんめぇ!やっぱ外で食う飯はちげーな!」ガツガツ
孤児1「兄ちゃんばっかり、お肉ずるい!」
孤児2「そうだよ!」
ナラ「ふたりのぶん、わたしがとりわけるね」スッスッ
孤児1「ありがとう!お姉ちゃん!」
孤児2「ナラ姉ちゃん大好き!」
ラム「同い年なのにこうも違うんだね」チラッ
ルーボイ「う、うっせぇ!男ってのは肉を食うんだよ!」
ラム「はいはい、そーですね」モグモグ
ルーボイ「へん!お前は野菜ばっか食ってるからチビなんだよ!」
ラム「」ムッ
ルーボイ「どーだ!言い返せねぇだろ、チビ!」
ラム「君こそ僕がいない間に太ったんじゃない?」
ルーボイ「は?」プヨッ
ラム「下品な食べ方してるから見た目まで下品なんだよ。みっともない」
ルーボイ「だ、誰が下品だってぇ!?」イラッ
ラム「だから君が」
ルーボイ「こ、こいつぅ〜!もうゆるさねぇ!」ワナワナ
ナラ「はい」スッスッ
ラム&ルーボイ「?」
ナラ「はやくとらないと、こげちゃうよ?」ニコッ
ラム&ルーボイ「」ドキンッ
ナラ「なかよくたべよ?みんなでピクニックにきたんだから!」ニコニコ
ラム「…一時休戦だね」
ルーボイ「お、おう…」
131:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:04:27 ID:e4mtUywSu.
ミシング「あー!いいお天気!太陽がまぶしいにゃー!」ゴロゴロ
母「そんなに転がったら服が汚れてしまいますよ?」ニコニコ
ミシング「ん〜…だぁってマリーさんとナラちゃんがしっかり者だから、あたしのやる事ないんですもーん!」
母「たまにはいいじゃないですか。ゆっくりする時間があっても」ニコニコ
ミシング「まぁあたしは大助かりなんですけどねぇ!にしし!」ヘラヘラ
母「みんなも楽しそう…。近場でも普段と違うことをしてみると景色が変わるものね」ニコニコ
ミシング「子供たちも、そろそろ将来に目を向ける時期ですからねー。新鮮な気持ちで息抜きしてもらわなくちゃ!」
母「…将来、ですか」
ミシング「みーんな夢を見つけ始めてるみたいですよー!ナラちゃんはあたしみたいに孤児院で働きたいって言ってますし!」
母「まぁ、ナラちゃんが…きっと素敵な寮母さんになれるわ」ニコニコ
ミシング「あのルーボイくんも、こないだ教団で色んな人たちを支えられる仕事がしたいって言い出しちゃって」
母「あの子にとって宣教師様は姉みたいなものですものね。憧れた人のようになりたいのかも」
ミシング「それにラムくんも本に携わる仕事がしたくて勉強してるんですよー。えらい!」
母「…みんな素敵な夢を持っているのね」
ミシング「楽しいだけじゃないですけどねー」
母「えぇ、実際には辛いことも多くて厳しいけれど…やりたい事を見つけられるだけでも幸せなことだわ」
132:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:05:04 ID:e4mtUywSu.
ミシング「子供の頃は大人になれば勝手になんでも出来るようになってると思ってたにゃー」
母「そうですよね…」
ミシング「ところがどっこい!未だに彼氏募集中ですよ!泣けちゃう!」ヒーン
母「作ろうとすれば、いくらでも相手がいるんじゃないですか?」
ミシング「いやいやいや!ぜんっぜん!もう普段から願望剥き出しにしてますけど、ぜんっぜん!」ブンブンッ
母「そうかしら?あなたはいつも子供たちの事で頭がいっぱいに見えるわよ?」クスッ
ミシング「子供たちも大事だけど自分の幸せも欲しいんですよーだ!」
母「あら?それならどうして作らないんです?あなたみたいな人なら、そんなに苦労しなさそうだけど…」
ミシング「んぅ。なかなかダンディーでワイルドでミラクルな渋ーいおじ様がいないんですよねー?あたしってほら、年上にリードされたいから?」キャピッ
母「お、おほほ…そうなの…(器量はいいのにもったいない…)」ヒクヒク
133:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:06:06 ID:VfV4LPRyvs
孤児1「ママー!」タタタッ
母「あらあら」ニコニコ
孤児1「ママもあそぼー?」
母「えぇ、いいわよ。何して遊びましょっか」ニコニコ
ミシング「あれー?あたしはー?」
孤児1「ミシング姉ちゃんも!」
ミシング「んぅ!かわいいやつめ!」ナデナデ
孤児1「えへー」ヘラッ
母「ふふ」クスクス
孤児1「あ、そういえばカロル兄ちゃんは?」
母「」ピクッ
孤児1「ラム兄ちゃん帰ってきたのにどうしてカロル兄ちゃんはいないの?」
ミシング「それはねー。カロルお兄ちゃんが都にいるからだよー!」
孤児1「なんでー?」
ミシング「お友達のお家にお泊まりしてるんだってさ!」
孤児1「えー!いいなー?」
ミシング「おチビちゃんはも少しおっきくなってからだねー!」
母「……」
134:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:23:53 ID:e4mtUywSu.
〜〜〜夕方〜〜〜
―――ミラルドの町(孤児院)―――
ミシング「今日は楽しかったですねー!子供たちも大満足だったみたいですし!」
母「えぇ、みんな喜んでくれてよかったわ」ニコッ
ミシング「ほんとカロルくんも来れたら良かったのにー!いつまであっちにいるのかにゃー?」
母「そうね…。いつまでかしら」
ミシング「…やっぱり寂しかったりします?」
母「いいえ、国王様のそばなら安全ですし信頼できますから何も心配は…」
ミシング「んー…けどラムくん一人だけ帰してっていうのはどういう事なんでしょ?」
母「深い意味はないと伺いましたから大丈夫とは思います…。坊やと国王様は親友ですもの」
ミシング「まぁそれに宣教師がちょくちょく様子見に行ってるみたいですから大丈夫ですかね!」
母「そ、そうね…。大丈夫、よね」ポツリ
ミシング「マリーさん?」キョトン
母「ごめんなさい…。不安な訳じゃないんですけど…」
ミシング「どうかしたんですか…?」
母「あの子とこんなに長い期間、離れたのは初めてなので…」
ミシング「もー!結局寂しいんじゃないですかぁ!このこのぅ?」ウリウリ
母「そうかもしれません…。このところ坊やの顔が見たい、会いたいと強く思うんです」
ミシング「西の国から解放されるまで半年くらい会ってませんもんね?」
母「…元気な顔を見せてくれたら、それでいいんです」
母「どんなに辛いことがあっても…あの子の笑顔が癒してくれるから」
135:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:24:19 ID:e4mtUywSu.
ミシング「いいですね。親子って?」クスッ
母「?」
ミシング「あたしもいつかマリーさんみたいな家庭を作れたらいいなー!」ニコッ
母「家庭だなんて…今の生活があるのは皆さんのおかげですから、あたしは何も…」
ミシング「ご謙遜なさらずー!二人を見てると、なんだかこっちまで癒されますし素敵だなぁって思いますよ?」
母「そ、そんなこと…」モジモジ
ミシング「なーんて?あたしも今は院の子供たちの笑顔で胸いっぱいですけど?てへっ!」ペロッ
母「…うふふ、やっぱりミシングさんにとってはここが家庭なんじゃないかしら?」ニコッ
ミシング「うーん!あとは素敵な旦那様がいたらパーフェクトなんですけどねー!」
母「まだ若いんですもの。これからいい出会いがありますよ」クスクス
ミシング「それなら早速出会いを探しに冒険しちゃおっかなーん!」
母「出かけるんですか?」
ミシング「はい!今夜のパートナーをゲットしてきまーす!」
母「あらあら…頑張ってくださいね」クスクス
ミシング「もっちろん!行きずりだって大歓迎!」
母「え?そ、それはちょっと…」アセアセ
ミシング「いってきまーす!」ガチャッ
母「い、いってらっしゃい」
バタンッ
母「…じょ、冗談よね?」ヒクヒク
136:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:31:44 ID:e4mtUywSu.
―――辺境地(草原)―――
ポルカ「あぁくそっ!ムシャクシャするぜ!」
コロン「ダメだったんでしょ?残念!」パァァ
ポルカ「じゃあなんで嬉しそうなんだよ!」
コロン「だってー…争い事とかイヤだもん」
ポルカ「バカ!俺たちは狩猟民族だぞ!欲しいもんは自分の力で奪い取るんだよ!」
コロン「でもー…何も言えずに帰ってきたんでしょ?」
ポルカ「うっ…あ、あいつら口ばっか達者なんだ!だから人間は嫌いなんだよ!」
コロン「ねぇ、せっかくだから人間の町を見てこうよ」
ポルカ「な、なぁに言ってんだぁ?正気か!?」
コロン「観光ならいいんでしょ?王国はホビットにも優しいって聞くし見てみたい!」
ポルカ「どうせウソだろ。人間なんか関わってもろくなこたねーよ」
コロン「…いいもん。一人で行くから」
ポルカ「え?」
コロン「ポルカたちは先に帰ってなよ。それじゃ」タタタッ
ポルカ「ま、待てよ!あぶねぇからやめとけって!」
タタタッ………
ポルカ「はぁ…別に行かねーたぁ言ってねぇだろ!」ダッ
137:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:32:32 ID:VfV4LPRyvs
―――ミラルドの町(市場)―――
ワイワイガヤガヤ
ポルカ「な、な、なんだぁこりゃ…!?」ワナワナ
ガッガッ ザサッ ザサッ
コロン「わー!あれなぁに?大粒小粒の種や粉が色とりどりに運ばれてる!」
ンモー ヒヒーン
ポルカ「(う、馬や牛…見た事もねぇ品種だ!俺らの知ってる家畜より、よっぽどずしりとしてやがる!)」
モクモクモク
コロン「ねぇ見て!屋根に付いてる筒から煙が上がってる!」
ポルカ「け、煙!?ボヤじゃねぇのか!なんで誰も気にしねぇんだ!?」
ザカッザカッザカッ
コロン「ひゃっ!銀ぴか!あれも衣服なのかな?すごく頑丈そう!」
ゾロゾロ ゾロゾロ
ポルカ「い、いやにたくさん人間が群がってんな!こりゃひょっとすると人間の長の町なんじゃねぇか?」
コロン「わたし達と同じホビットもいるよ?」キョロキョロ
ガラガラガラ
ポルカ「わっと!あぶねぇっ!なんだ、あの馬鹿でけぇ馬が引く荷車は!?」
コロン「わたし達の里は家畜が小さいから軽い荷車をウォリードッグに引かせてるけど、あれなら一度にたくさん運べそう!」
138:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:33:17 ID:e4mtUywSu.
ミシング「およよ?」スッ
ポルカ「!?」ビクッ
ミシング「あれー?あなた達、見ない顔だね?最近、越してきたの?」
ポルカ「な、なんだ、てめぇ!?」ズザザッ
コロン「わ、どうしよ!人間に声掛けられちゃった!」コショコショ
ポルカ「お、おたつくな!こっちだって天下のホビッツ部族だ!」
ミシング「?」キョトン
コロン「やっぱり大きいね…!」コショコショ
ポルカ「ば、バカヤロウ!心の広さなら負けてねーよ!(?)」アタフタ
ミシング「あ、分かった!ちょっとおいで!」グイッ
コロン「きゃっ!」アセアセ
ポルカ「なにしやがる!?」アセアセ
ミシング「まだ慣れてないんでしょー?親切な美人お姉さんがいろいろ教えたげる?」ニカッ
コロン「……?」
ポルカ「じ、自分で美人って図々しいにも程があんだろ…」シラー
139:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:34:42 ID:e4mtUywSu.
ミシング「まずここでしょー!」
コロン「わぁ、野菜に果物がいっぱい!」
ポルカ「隣にゃ鳥や豚、羊の干し肉なんかが吊るされてるな?こんだけのもんをいっぺんに並べるなんて…どうなってやがんだ?」
ミシング「他にも魚、お菓子、ハーブとかスパイスもあるよん!食材とかはこういう市場のお店から買うの!」
コロン「買う…?」
ポルカ「交換じゃねーのか?」
ミシング「ノンノンノン!ヒューマニズムの理はキャッシュなのです!」チッチッチッ
コロン&ポルカ「???」
ミシング「それじゃまお手本を見せちゃいましょう!おじさん!山羊肉の薄切り一箱くださいな!」
肉屋「あいよ、銀貨2枚ね」
ミシング「あはーん!ミシングちゃんのお色気スペシャルに免じて〜?免じて〜?」チラッチラッ
肉屋「駄目。今日という今日はしっかり払ってもらうよ!」
ミシング「ぷくー!ケチー!いいもん!マリーさんにあっちの店のがいいって言い付けちゃうから!」
肉屋「え?ま、マリーちゃんに!?そりゃ困る!」アセアセ
ミシング「えー?どうしよっかなー?」
肉屋「あ、あんな可愛い見た目して貞淑な人妻だってんだから男としてはゴニョゴニョゴニョ…」モジモジ
ミシング「(どっちにしろ店は変えてもらお)」
肉屋「分かったよ!一箱おまけする!それでいいだろ!」
ミシング「サンキューおじさま!だーいすき!」チュッチュッ
肉屋「別にあんたの為じゃなく俺は一人のロリコ……紳士としてだな」
ミシング「じゃあお代は置いてくねー!(マリーさんに出入り禁止って言っとこ)」チャリッ
140:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:39:53 ID:VfV4LPRyvs
ミシング「とまぁこういうことなんです!」
コロン「んー…分かったような、分からないような…」
ポルカ「なんであの親父は糞の役にも立たねぇ鉄屑と貴重な肉を交換するんだ?」
ミシング「うん、糞の役にもは言い過ぎだけど、まぁそうだよねー」
コロン「もしかしてあれがコイン…?」
ポルカ「なんか知ってんのか?」
コロン「うん。ルイさんに聞いたんだけど人間はコインっていう金属の欠片を集めてるんだって?」
ポルカ「んなもん集めてどうすんだ?」
コロン「コインをたくさん持ってる人が一番偉いみたい。それが人間の掟って言ってた」
ポルカ「な、なにぃ!?じゃあ俺らもコインを集めれば人間共を従えられるってのか!?」
ミシング「ぶっぶー!惜しいけど不正解!」
コロン「え?」
ミシング「コインっていうのは通貨以外にもギャンブルとか彫刻品に使われる物で用途は様々なのです!が!今あたしが出したのは純粋な貨幣!つまりはお金です!」
ポルカ「お、おかね?」
ミシング「お金というのは今みたいに欲しい物、必要な物の受け渡しを円滑に交渉する為に用いられます!」
ミシング「たとえば物々交換ではお互いが品物に納得しないと交渉不成立になるし、低価値、高価値の区別が付かないので不平等な結果になる事もしばしば!
しかも力関係を利用して立場でごり押しされるケースも少なくありません!」
ミシング「だけどもだっけぇど〜!お金という全く別種の物に付加価値を備わせる事で!
スムーズかつピースフルな交渉が出来る!イコール誰でも平等にお買い物が楽しめちゃうっていう寸法ですねぇ!」
コロン「え、えー…と」オロオロ
ポルカ「さっぱり分からん」
ミシング「詳しくは教団で無料配布してる"人とホビットの暮らし方"を参照!」ババッ
コロン「あ、どうも…」パシッ
ポルカ「人間の文字なんか読めねーよ」パシッ
ミシング「そんなあなたもご安心!ちゃんとホビット用にクレオール語で直したページも記載済み!イェイッ!」ピース
コロン「わぁ、ほんとだ」ペラッ
ポルカ「これなら読めるぞ!」スラスラ
141:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:41:04 ID:e4mtUywSu.
コロン「へー…お金ってそういう物なんだ」ペラッ
ポルカ「ふんふん、為になるな……って、なんで人間の本なんか読まされてんだ!?」バサッ
ミシング「あ!路上に捨てちゃダメ!ちゃんと塵紙入れに捨てるか、紙屋さんに寄付しなきゃ!」
ポルカ「うるせぇ!人間に洗脳されてたまるか!あぶねぇとこだった!帰るぞ、コロン!?」
コロン「ねえ、これなぁに?」
ミシング「んー?これはねー」
ポルカ「おぉい!?」
142:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:42:02 ID:VfV4LPRyvs
ミシング「こちらがミラルド名物!職人さんによる飴細工でござーい!」
コロン「わぁ、可愛い!本物そっくりの蝶々さん!」パァァ
ポルカ「かってぇな…。どうやって食うんだ、これ…」ツンツン
ミシング「口の中で転がしてみ!舌が踊っちゃうよ!」
コロン「ふわぁ!あまーい!」コロコロ
ポルカ「う、おぉ!なんだこれ、砂糖をまぶした小石か!?」コロコロ
ミシング「この町は畜産業が発展してるから他所との商いも充実してて、いろんな地域の物が売られてるんだよー!」
コロン「へー…どれも見たことない物ばっかり!」キョロキョロ
ポルカ「見てて飽きねぇなぁ」キョロキョロ
ミシング「最近ではホビットの皆さんもヤル気満々で店を構えてまーす!」
コロン「あ、これうちの里にもある素材の帽子!」
ポルカ「お!この部族のミサンガかっこいいな!」
ミシング「本も読めて勉強も出来ちゃう修道院!今は布教の代わりにホビットや人間の子供に道徳を教える学舎になってるよん!」
コロン「同族と人間が混ぜこぜに座って書き物してる…」
ポルカ「こ、ここはあんまり好きじゃねーな。雰囲気が…なんか」
143:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:43:00 ID:VfV4LPRyvs
ミシング「と、いう訳で!ミシングちゃんによる超絶ウキウキ町案内はこれにておしまい!」
コロン「ありがとうございました!」
ポルカ「いやー楽しかったなぁ」
ミシング「それじゃ!楽しんでいってね!ばいびー!」スタスタ
コロン「さよならー」フリフリ
ポルカ「じゃあなー」フリフリ
144:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:43:40 ID:VfV4LPRyvs
コロン「楽しかったね!」
ポルカ「おう、楽しかった楽しかった!いやぁ楽しかった!」
コロン「また来ようね!」
ポルカ「そうだな。また来よう。楽しかったしな。いやー」
ポルカ「ってそうじゃねーだろ!?」バンッ
コロン「あ、お土産が!なんで投げるの!?」ササッ
ポルカ「なに普通に楽しんでんだよ!俺たちはホビットだぞ!」
コロン「? うん」
ポルカ「人間はホビットを見下した敵だ!仲良くしちゃダメだろ!」
コロン「なんで?」
ポルカ「なんでじゃねーよ!じっちゃんにも言われたろ!」
コロン「でもー…ルイさんは人間と仲良くしたいって言ってたよ?」
ポルカ「あ、あいつは…酋長の孫だから、なんだって言えんだよ」
コロン「そう?わたしは今日、もっと人間を好きになったよ?」
ポルカ「うぐ…!」
コロン「ポルカも素直になったら?」
ポルカ「……!」ググッ
145:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:44:20 ID:VfV4LPRyvs
ポルカ「…人間のせいで移住生活を強いられたのにか?」ボソッ
コロン「え…?」
ポルカ「迫害と逃亡の繰り返しだ。穏やかに隠れ棲む部族だって奴らの侵略を受けてきた」
コロン「昔の話でしょ…」
ポルカ「あぁ、とうの昔だよ。先代が若い世代を守る為に身を呈して人間から親父たちを遠ざけた。古い古い逸話さ」
コロン「……」シュン
ポルカ「いくつもの森が焼き払われて人間の住み処になった。行き場をなくした俺たちをそれでも狭めようと虐殺した」
コロン「うん…」
ポルカ「そんな話を聞いて育ったんだ…。ガキの頃から、ずっと…今さらなんだよ。優しくされたってよ」
コロン「だけど酋長さんは人間と一緒に戦ったよ…?」
ポルカ「じっちゃんは賢いから、うまく利用してるだけだ。腹の底じゃ人間なんざ毛嫌いしてるさ」
コロン「…昔より今じゃないの?」
ポルカ「あ?」
コロン「ルイさんは…今を必死に生きて未来に進もうとする人間に憧れてるって…」
ポルカ「…じゃあ何か?昔のこたぁ綺麗さっぱり忘れて人間と仲良くしろってか?」
コロン「そうだよ…」
ポルカ「おめぇは本当に優しいなぁ」
コロン「……?」
146:🎍 ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:45:24 ID:VfV4LPRyvs
ポルカ「このまま共存したって人間の掟に従わされる!」
ポルカ「人間の文字を覚えさせられて、人間の言葉を喋らされて、人間の一員になるだけだぜ!」
コロン「それがどうしたの…?」
ポルカ「どうしたの…?どうしたのってこたぁねーだろ!!」
コロン「」ビクッ
ポルカ「ホビットの培ってきた文化はどうなる…?暮らしは?尊厳は?先人達の記憶は!?」
コロン「あ……」
ポルカ「俺は人間として生きてくなんてまっぴらだ!誇りを持ってホビットの一生を終えてぇ!」
コロン「……」
ポルカ「憧れんなぁ勝手だがよ…。あんまりうつつ抜かしてっと自分がなんなのかも分からなくなっちまうぞ」
コロン「…それでも、争い事は嫌い」
ポルカ「そうかよ」スタスタ
コロン「どこ行くの!」
ポルカ「帰るんだよ!もう十分だろが!」スタスタ
コロン「ま、待ってよ…!」ダッ
ドンッ
コロン「わ!」ズサッ
ごろつき1「ってぇなぁ…」ジロッ
コロン「」ビクッ
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