あらすじ
永遠の命。その鍵となる救い主、カロル。
欲望に目覚めた西の国。狂気は果てしなく蠢く
遂に勃発してしまった戦争
強大な西の国に立ち向かうべく王国、東国、南国は6ヶ国同盟から成る平和協定を破り、3国連合軍を結成する
南国は多大な犠牲を払い、国王ローレンの命と引き換えに西帝国軍の主力を削った
東国は張り巡らされた罠を果敢に打破するも圧倒的な力の前に粉砕される
敵地にて孤軍となった王国軍
総指揮官フィクサーの戦略采配が功を奏し、帝都本拠地の制圧を完了した
一方で吉報を待ち、国内に留まる王国の国王ヒメ
迫り来る侵略の魔の手を退ける為、東国のホビット族と手を結ぶ
彼らによって明かされた最後の真実
アピシナの大樹の成り立ち
かつて癒しの力は破滅を導いた
人もホビットも共通する願い
永遠の命が野心をくすぐる
穢れなき無垢な愛情は火種となって注がれ、混沌とした世界を象徴するように大樹を巡る争いは止まなかった
忘れ去られた無残な過去
300年もの月日を経てなお繰り返される歴史
誰も止めることは叶わない
友情を取るか、安寧を取るか
時を追う毎に取捨選択を強いられる
捨てていいものなど一つもないのに
117: すみません!遅れた分ガッツリ更新します! ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:43:33 ID:e4mtUywSu.
〜〜〜数週間後〜〜〜
―――王国(議場)―――
高官1「申し訳ありません!!」ドゲザ
政務官「…謝らなくていい。南国の理解を得られなかったのは私の準備不足によるものだ」
高官1「いえ!政務官の責任では…!」プルプル
政務官「そうしていてもラチがあかない。顔を上げ、席に着け」
高官1「〜〜…は、はい!」ガタッ
政務官「東国はどうだ?」
高官2「書状は受け取っていただけましたが…門前払いを受けまして」
政務官「なにも得られなかったのか?」
高官2「同行させた役人達と都を中心に聞き取り調査をしてみましたが芳しい情報は得られませんでした」
政務官「つまりは…開戦間近か」
高官2「はっ…城にホビット族が出入りし、各地の防衛配置も行われているそうで」
政務官「ふぅー…難局だな。正直どちらにも賛同しかねる」
バァンッ!
政務官「」ビクッ
ネバル「た、大変!大変です!」ゼェゼェ
政務官「ネバル…貴様、南の山脈再開拓計画の最中ではないのか!?」
ネバル「そ、それが…すんごい事になって…急いで報告しなきゃと…」ゼェゼェ
政務官「先日のデマ騒動の件であれば貴様から寄越された手紙で確認しているが?」
ネバル「そ、そんなこっちゃねぇです!もっとえんれー事ですだ!」アセアセ
高官3「い、いったい何事だと言うのだ!?」
ネバル「東領の辺境地に…ホビット族の大群が押し寄せてきたって…!」
政務官「なっ…」
高官's「なぁにぃぃいいいいいい!!!!?」ギョギョッ
118: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:45:49 ID:e4mtUywSu.
〜〜〜数日前〜〜〜
―――王国辺境地(国境の山脈)―――
ザザザザザッ
ホビットの若者「へっ!ここが王国さんかい!」
里のホビット1「すっげー!川!草原!林!なんでも揃ってる!」
里のホビット2「ほんとにここもらっちゃっていいのかな!ポルカさん!」
ホビットの若者(ポルカ)「おうともよ!じっちゃんが国王とかいう偉いのに約束させたんだ!」
ホビットの娘「で、でもー…酋長様やルイさんに言わなくていいの?」モジモジ
ポルカ「けっ!んなオドオドすんなよ、コロン!じっちゃんに限って、しち面倒くせぇ事ごちゃごちゃ言ったりしねぇって!」
ホビットの娘(コロン)「でもー…私達、まだお世話になって日が浅いし」モジモジ
ポルカ「だからだろ?新参の俺たちにゃ狩り場も水場も住み処も余っちゃいねぇ。他部族といっしょくたんなって狭苦しい生活させられてよ」
里のホビット1「そうそう!やってらんねぇよな!」
里のホビット2「それもこれも王国やら東の国やらが約束した土地をくれないからだ!」
コロン「でもー…ルイさんは絶対に約束を守ってくれる人たちだから大丈夫って言ってたよ?」モジモジ
里のホビット1「そんなの嘘っぱちだ!」
里のホビット2「人間が約束なんか守るかよ!」
里のホビット3「あのルイにしたって酋長の孫で余裕があるから俺たちなんかどうでもいいと思ってんだ!」
コロン「そうかなー…ルイさん、すごく明るくていいホビットだけどなー…」モジモジ
ポルカ「だー!もういいじゃねーか、こまけぇこたぁ?こんな肥沃な土地を貰えりゃじっちゃんだって大助かりだろうよ!」
コロン「……」モジモジ
ポルカ「心配すんなって?ここまで拡げりゃ俺達どころか他部族まで悠々と生活出来る。そうすりゃみーんな笑顔だ!な?」ポンポン
コロン「う、うん…」モジモジ
ポルカ「へへ!こうやってガッツリ土地拡げて、じっちゃんにも認めてもらってよ!将来はおめぇを酋長の嫁さんにしてやっからな!」ニカッ
コロン「……!」カァァ
ポルカ「まーずは…とっ散らかったとこから片付けてもらわねーとな」ジロッ
119: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:48:02 ID:e4mtUywSu.
〜〜〜現在〜〜〜
―――王宮(議場)―――
高官4「な、何をしに来たんだ!そのホビット共は!?」
ネバル「約束した、土地をもらうって…そればっかりで!」ゼェゼェ
高官2「バカな!南の山脈の一部を明け渡すということで話は着けてあるんじゃないのか!?」
ネバル「そう言ってあるです!だからオイラも視察してたです!」
高官3「なぜだ!伝わっていないのか!?」
ネバル「だーから!オイラにもわかんねーですよ!」
政務官「予定では2ヶ月後には東のホビット族から一部が定住するのだったな」
ネバル「は、はいです!でもなんだか全然分かんなくて!」
高官5「東のホビット族から使者は出てないのか!?」
ネバル「例の北国と一触即発になってからは誰も顔を出さないです!」
高官1「なんでだ!クソォッ!?」ダンッ
政務官「落ち着け!それぞれの下から出払える役人はいないのか!?」
高官1「わ、私共は再度、南国との関係維持を呼び掛ける為、手が空きません!」
高官2「東国の問題に向き合っていく上では私の方で対処するべきなのでしょうが…残念ながらホビット族との交渉手段は持ち合わせていない」
高官3「こっちだって公爵家の圧力で役人たちは悲鳴をあげてますよ…」
高官4「今月に入って6名が引き抜かれ、公爵を後ろ楯に貴族制度の復権を掲げておりますし…毎夜のパーティーに付き合わされて過労で倒れた者も何人か」
高官5「私もだ!国内の協調を強めようと舞踊や絵画、武術の催しに行事の手配と人手が足りん!」
ネバル「お、オイラだってホビット族と特別な繋がりはないですし、陛下の決めた段取りに沿ってやってるだけですだよ!」
政務官「…生憎と私も北国含む三国との問題で余力がない」
ネバル「ど、どうするですか?」
120: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:48:44 ID:e4mtUywSu.
政務官「確か東のホビット族の協力を執り成したのは陛下と司祭だったな」
ネバル「そ、そういえば陛下は…!?」
政務官「…暫く一人にしてほしいと仰せだ。自室で公務を行っておられる」
ネバル「え?こ、ここで議論しないですか?」
高官1「最近の陛下はどうもおかしい…」
高官2「うむ…西国から帰ってきて変わられた」
高官3「このところは妙に苛つかれていて声も掛けられないしな」
高官4「難問が同時多発している、この時にこそ凛々しくあってほしいものだが…」
高官5「あぁ、陛下があれでは我々も気力を削がれるというものだ」
ネバル「(あんなに頼もしかったのに…どうしちゃったですか、陛下?)」シュン
政務官「…教団と憲兵団に連携してもらい、解決を促そう。
苦肉の策だが我々は我々で集中しなければならない問題が山積みだからな」
高官's「ははっ!」ピシッ
121: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:49:27 ID:e4mtUywSu.
〜〜〜夜〜〜〜
―――王宮(国王の間)―――
ヒメ「(どうしたらいい?どうしたら争いを避けられる…!?)」バサッ
ヒメ「(東国が話し合いの意思を見せない限り、王国の出る幕はない…!)」ワシワシ
ヒメ「(北国の無茶な要求が引き金だとしたら直接、北国に譲歩してもらえるよう取り計らうしかないが…)」
ヒメ「(それでもし要求が加速したら…それこそ大惨事だ!)」ギリッ
ヒメ「(どちらかと言えば、その可能性が高いか!北国にしてみたら利権を根こそぎ頂ける、またとない好機だもんな!)」
ヒメ「(それでなくても各国に政策じゃなく侵略で国を豊かにする思想が芽生え始めてる…!)」
ヒメ「(その流れを産み出してしまったのは……)」ググッ
ヒメ「(どう転んでも混沌だ。救いようのない…!)」ガバッ
122: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:50:50 ID:VfV4LPRyvs
コンコン コンコン
ヒメ「…入れ」
給仕1「失礼します!ご公務捗ってますかー?」ガチャッ
ヒメ「……」
給仕1「お、お食事の支度が整いましたので!」アセアセ
ヒメ「そうか。ここに持ってきてくれ」
給仕1「あ、今日はその…食堂で召し上がられませんか?」
ヒメ「は?」
給仕1「す、救い主様が一緒に食べたいと…申し出てまして?」モジモジ
ヒメ「…悪いがそんな気分にはなれない。断ってくれ」
給仕1「あ、で、ですが…」アセアセ
ヒメ「なんだ?」ジロッ
給仕1「な、仲直りしたいとも…おっしゃられてました」
ヒメ「仲直り…?」
給仕1「陛下を怒らせてしまったのは、きっと自分が何か間違いを犯したから、と思い悩んでるみたいで…」
ヒメ「(…なんだよ。あいつ)」
給仕1「本当によろしいのですか…?」
ヒメ「いい。それよりもあいつを部屋から一切出すな。なるべく人の目に触れないよう注視しておけ」
給仕1「か、かしこまりました…」シュン
ヒメ「……」カリカリ
バタンッ
123: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:52:18 ID:VfV4LPRyvs
ヒメ「……」カリカリ
ヒメ「(なんだよ。なんだよ…なんだよ!)」ピタッ
ヒメ「なんなんだよ!あいつはぁ!?」ブンッ
万年筆「」カンッ コロコロコロ
ヒメ「仲直りしたい…?怒らせたのは自分のせい…?なんにも分かってないな!!」ダンッ
ヒメ「(僕が…一人で悩んでるだけだ!勝手に必死になってるだけだ!)」ギリッ
ヒメ「(なんで、なんであんな大事に巻き込まれて…痛みを伴って…それでもヘラヘラ笑ってられるんだよ!?)」イライラ
ヒメ「(無事に帰れたのがそんなに嬉しいか!家族がそんなに愛しいか!平穏な生活がそんなに楽しいか!?)」
ヒメ「(それを守ってやる為に…頑張ってるのは誰なんだよ!?)」
ヒメ「(全て終わって一件落着なら、どんなに良かったか…!分かってないんだ!あいつは…なにも!)」ガバッ
ヒメ「(なんにも…!)」ブルッ
ヒメ「…どんな顔して会えばいいんだよ」ギュウウ
ヒメ「僕は…おまえとの約束を守れそうにないんだぞ?」ボロッ
コンコン
ヒメ「……!?」
124: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:55:25 ID:e4mtUywSu.
「夜分に恐れ入ります。入ってもよろしいでしょうか?」
ヒメ「…あぁ」グシッ
ガチャッ
政務官「失礼…」ペコッ
ヒメ「…手短に言え」
政務官「では前置き無しに伺いますが大后様とは話し合われたのですか?」
ヒメ「…まだだ。予定が合わなくてな」
政務官「予定が合わない?大后様は毎晩、夜遊びに興じておられますが?」
ヒメ「僕が、だ。分かるだろ」
政務官「いいえ、分かりかねる」
ヒメ「……」
政務官「今日は議会を欠席されていましたが…私はてっきり大后様に会っていらっしゃるものとばかり?」
ヒメ「公爵家が余計な動きをしてるみたいだな…」
政務官「はい。正直に申し上げますが…貴族側が本腰を入れれば我々、政治に与する者にとって致命的です」
ヒメ「資金繰りか…それともコネか?」
政務官「それも重要ですが…もっと根本的な部分です」
ヒメ「役人の八割が貴族出身だと言いたいんだろ…?」
政務官「そうです。そして彼らは爵位に忠実でなければなりません」
ヒメ「くだらない…」
政務官「そのくだらない制度によって貴方は国王の地位を授かっているのです」
ヒメ「王族は貴族を束ねる官職で国民の代表だ。あいつらとは違う!」
政務官「……」
125: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:56:10 ID:VfV4LPRyvs
政務官「…未だにお母上を恨んでらっしゃるか」
ヒメ「」ピクッ
政務官「確かに貴方から見れば行きすぎた価値観の持ち主かもしれないが…王族としての振る舞いを心掛ける上では当然の考え方です」
ヒメ「……」
政務官「あのお方も決して根の悪い人間ではございません。古い感覚が染み付いて時代錯誤しているだけなのですよ」
ヒメ「恨んでなんかない…。ただ…」
政務官「ただ?」
ヒメ「母上は頑としてホビットを認めようとしない…。僕とは正反対なんだ」
政務官「その食い違いは重々…しかし貴方が自ら説得を試みない限り溝も永遠に埋まりませんぞ」
ヒメ「母上は僕の話なんて聞こうともしない。一方通行で疲れるだけだ」
政務官「ですが、お父上とは和解なされた筈。その時のようにはいきませぬか?」
ヒメ「和解と言ったって…ほんの少しの間だ。それに父上も最後までホビットを認めてなかった」
政務官「…ではせめて議会には出席していただきたい。持ち寄った案も直接のお許しを頂けなければ実行に移せず手間となります」
ヒメ「……」コクッ
政務官「…今は私情に駈られている場合ではございません。お母上との件もよくご検討くださいますよう」
ヒメ「あぁ、考えておくよ…」
政務官「宜しくお願い申し上げます…。失礼しました」ガチャッ
バタンッ
126: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:57:13 ID:VfV4LPRyvs
〜〜〜深夜〜〜〜
―――城(王立図書館)―――
ヒメ「……」ペラッ
「悩ましい事があると、書庫にこもって蔵書を読み耽る…変わりませんのね」スタスタ
ヒメ「」ビクッ
大后「そこに貴方の求める答えがありまして?」ニコッ
ヒメ「は、母上…!?」ハッ
大后「お隣、失礼しますわね」ストッ
ヒメ「…僕に何か?」ジロッ
大后「あら、なんて目をなさるの?わたくしは貴方の産みの親ですことよ?」
ヒメ「今夜も招かれているのでしょう。こんな場所にいてよろしいのですか?」
大后「今夜はいいの。陛下……いいえ、可愛い我が子と他愛もない話がしたくて参りましたのよ」
ヒメ「明日も早いので失礼します」ガタッ
大后「救い主…でしたわね」ボソッ
ヒメ「……!?」ピタッ
大后「聞くところによるとホビットの子供だとか」
ヒメ「それがなにか?」キッ
大后「解せないわ、とても…とても解せない」
ヒメ「っ……」ギリッ
大后「王国の救い主?ましてや国王の親友?なんて似つかわしくない響きかしら?」
ヒメ「母上には関係のないことです!」ダンッ
大后「……」ジッ
ヒメ「……!」ジッ
127: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:58:48 ID:VfV4LPRyvs
ヒメ「話は以上でしょうか…。僕は母上と違い、多忙ですので用が無ければ…」
大后「この飾り…」チャラッ
ヒメ「は…?」
大后「美しいと思いませんこと?」クスッ
ヒメ「…宝飾を愛でる趣味はありません」プイッ
大后「王族らしからぬ発言ですわね。こんなにも煌めいて鮮やかですのに?」チャラッ
ヒメ「なんとでもお言いください…」
大后「このアメジストなど、ほら?素晴らしい…庶民には一生、手の届きませぬ代物よ?」
ヒメ「…その宝石が民の労働に値する対価たりえるとは到底、思えませんね」
大后「貴方は何も理解出来てませんのね…」ハァッ
ヒメ「なんですって…?」イラッ
128: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 21:59:39 ID:e4mtUywSu.
大后「このラピスラズリも、エメラルドも、ルビーも、トパーズも、ダイヤモンドも…高貴なる者の証」チャラッ
大后「太古より宝石は身分の高い者にのみ行き渡りました。どの時代も、どの国でも」
大后「この輝きに価値があるのではなくて、この輝きを身に付けるに相応しい人間にこそ価値がありましてよ?」ニヤッ
ヒメ「……」
大后「貴方もそろそろ自覚なさい。この世は上下に分かたれる物…上位に生まれた誉れを存分に味わってはいかが?」
ヒメ「…この地位を授かれた幸運にはとても感謝しております」
大后「そう。それでいいのよ…?」ニィィッ
ヒメ「ですが…僕は地位に溺れる気はございません」
大后「」ピクッ
ヒメ「失礼します…」スタスタ
ガチャッ
バタンッ
大后「……」チラッ
本「」ポツン
大后「(何を熱心に読んでいるかと思えば、純愛小説……)」ヒョイッ
大后「愚かですわね…。王族に一途な恋が赦されると思っているのかしら…」ペラッ
大后「美しいだけの物語など、この世にありはしないというのに…」ポツリ
大后「あの子はまだまだ自覚が足りませんわ…」フッ
129: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:00:50 ID:VfV4LPRyvs
〜〜〜昼〜〜〜
―――辺境地(川)―――
ピーン クククッ
ルーボイ「うおっ!来たぞ来たぞ!こりゃ大物だ!」グググッ
孤児1「わー!兄ちゃんすげー!」
孤児2「がんばれー!」
母「ふふ…」ニコニコ
ラム「網の準備できたよ」
ナラ「やさいから、やこっか」スッ
ミシング「んー!いい匂い!出来上がりが楽しみだねー!」
ルーボイ「おぉ!釣れた!」ピシャッ
孤児1「やったー!」
孤児2「兄ちゃんすげー!」
ナラ「わぁ!おっきい!」
ラム「やるじゃん」クスッ
ルーボイ「へっへーん!俺にかかればへっちゃらだぜ!」
母「じゃあそのお魚も捌いて焼きましょっか」ニコニコ
ルーボイ「やっりー!」グッ
130: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:03:24 ID:VfV4LPRyvs
ジュージュー ジュージュー
ルーボイ「うんめぇ!やっぱ外で食う飯はちげーな!」ガツガツ
孤児1「兄ちゃんばっかり、お肉ずるい!」
孤児2「そうだよ!」
ナラ「ふたりのぶん、わたしがとりわけるね」スッスッ
孤児1「ありがとう!お姉ちゃん!」
孤児2「ナラ姉ちゃん大好き!」
ラム「同い年なのにこうも違うんだね」チラッ
ルーボイ「う、うっせぇ!男ってのは肉を食うんだよ!」
ラム「はいはい、そーですね」モグモグ
ルーボイ「へん!お前は野菜ばっか食ってるからチビなんだよ!」
ラム「」ムッ
ルーボイ「どーだ!言い返せねぇだろ、チビ!」
ラム「君こそ僕がいない間に太ったんじゃない?」
ルーボイ「は?」プヨッ
ラム「下品な食べ方してるから見た目まで下品なんだよ。みっともない」
ルーボイ「だ、誰が下品だってぇ!?」イラッ
ラム「だから君が」
ルーボイ「こ、こいつぅ〜!もうゆるさねぇ!」ワナワナ
ナラ「はい」スッスッ
ラム&ルーボイ「?」
ナラ「はやくとらないと、こげちゃうよ?」ニコッ
ラム&ルーボイ「」ドキンッ
ナラ「なかよくたべよ?みんなでピクニックにきたんだから!」ニコニコ
ラム「…一時休戦だね」
ルーボイ「お、おう…」
131: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:04:27 ID:e4mtUywSu.
ミシング「あー!いいお天気!太陽がまぶしいにゃー!」ゴロゴロ
母「そんなに転がったら服が汚れてしまいますよ?」ニコニコ
ミシング「ん〜…だぁってマリーさんとナラちゃんがしっかり者だから、あたしのやる事ないんですもーん!」
母「たまにはいいじゃないですか。ゆっくりする時間があっても」ニコニコ
ミシング「まぁあたしは大助かりなんですけどねぇ!にしし!」ヘラヘラ
母「みんなも楽しそう…。近場でも普段と違うことをしてみると景色が変わるものね」ニコニコ
ミシング「子供たちも、そろそろ将来に目を向ける時期ですからねー。新鮮な気持ちで息抜きしてもらわなくちゃ!」
母「…将来、ですか」
ミシング「みーんな夢を見つけ始めてるみたいですよー!ナラちゃんはあたしみたいに孤児院で働きたいって言ってますし!」
母「まぁ、ナラちゃんが…きっと素敵な寮母さんになれるわ」ニコニコ
ミシング「あのルーボイくんも、こないだ教団で色んな人たちを支えられる仕事がしたいって言い出しちゃって」
母「あの子にとって宣教師様は姉みたいなものですものね。憧れた人のようになりたいのかも」
ミシング「それにラムくんも本に携わる仕事がしたくて勉強してるんですよー。えらい!」
母「…みんな素敵な夢を持っているのね」
ミシング「楽しいだけじゃないですけどねー」
母「えぇ、実際には辛いことも多くて厳しいけれど…やりたい事を見つけられるだけでも幸せなことだわ」
132: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:05:04 ID:e4mtUywSu.
ミシング「子供の頃は大人になれば勝手になんでも出来るようになってると思ってたにゃー」
母「そうですよね…」
ミシング「ところがどっこい!未だに彼氏募集中ですよ!泣けちゃう!」ヒーン
母「作ろうとすれば、いくらでも相手がいるんじゃないですか?」
ミシング「いやいやいや!ぜんっぜん!もう普段から願望剥き出しにしてますけど、ぜんっぜん!」ブンブンッ
母「そうかしら?あなたはいつも子供たちの事で頭がいっぱいに見えるわよ?」クスッ
ミシング「子供たちも大事だけど自分の幸せも欲しいんですよーだ!」
母「あら?それならどうして作らないんです?あなたみたいな人なら、そんなに苦労しなさそうだけど…」
ミシング「んぅ。なかなかダンディーでワイルドでミラクルな渋ーいおじ様がいないんですよねー?あたしってほら、年上にリードされたいから?」キャピッ
母「お、おほほ…そうなの…(器量はいいのにもったいない…)」ヒクヒク
133: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:06:06 ID:VfV4LPRyvs
孤児1「ママー!」タタタッ
母「あらあら」ニコニコ
孤児1「ママもあそぼー?」
母「えぇ、いいわよ。何して遊びましょっか」ニコニコ
ミシング「あれー?あたしはー?」
孤児1「ミシング姉ちゃんも!」
ミシング「んぅ!かわいいやつめ!」ナデナデ
孤児1「えへー」ヘラッ
母「ふふ」クスクス
孤児1「あ、そういえばカロル兄ちゃんは?」
母「」ピクッ
孤児1「ラム兄ちゃん帰ってきたのにどうしてカロル兄ちゃんはいないの?」
ミシング「それはねー。カロルお兄ちゃんが都にいるからだよー!」
孤児1「なんでー?」
ミシング「お友達のお家にお泊まりしてるんだってさ!」
孤児1「えー!いいなー?」
ミシング「おチビちゃんはも少しおっきくなってからだねー!」
母「……」
134: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:23:53 ID:e4mtUywSu.
〜〜〜夕方〜〜〜
―――ミラルドの町(孤児院)―――
ミシング「今日は楽しかったですねー!子供たちも大満足だったみたいですし!」
母「えぇ、みんな喜んでくれてよかったわ」ニコッ
ミシング「ほんとカロルくんも来れたら良かったのにー!いつまであっちにいるのかにゃー?」
母「そうね…。いつまでかしら」
ミシング「…やっぱり寂しかったりします?」
母「いいえ、国王様のそばなら安全ですし信頼できますから何も心配は…」
ミシング「んー…けどラムくん一人だけ帰してっていうのはどういう事なんでしょ?」
母「深い意味はないと伺いましたから大丈夫とは思います…。坊やと国王様は親友ですもの」
ミシング「まぁそれに宣教師がちょくちょく様子見に行ってるみたいですから大丈夫ですかね!」
母「そ、そうね…。大丈夫、よね」ポツリ
ミシング「マリーさん?」キョトン
母「ごめんなさい…。不安な訳じゃないんですけど…」
ミシング「どうかしたんですか…?」
母「あの子とこんなに長い期間、離れたのは初めてなので…」
ミシング「もー!結局寂しいんじゃないですかぁ!このこのぅ?」ウリウリ
母「そうかもしれません…。このところ坊やの顔が見たい、会いたいと強く思うんです」
ミシング「西の国から解放されるまで半年くらい会ってませんもんね?」
母「…元気な顔を見せてくれたら、それでいいんです」
母「どんなに辛いことがあっても…あの子の笑顔が癒してくれるから」
135: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:24:19 ID:e4mtUywSu.
ミシング「いいですね。親子って?」クスッ
母「?」
ミシング「あたしもいつかマリーさんみたいな家庭を作れたらいいなー!」ニコッ
母「家庭だなんて…今の生活があるのは皆さんのおかげですから、あたしは何も…」
ミシング「ご謙遜なさらずー!二人を見てると、なんだかこっちまで癒されますし素敵だなぁって思いますよ?」
母「そ、そんなこと…」モジモジ
ミシング「なーんて?あたしも今は院の子供たちの笑顔で胸いっぱいですけど?てへっ!」ペロッ
母「…うふふ、やっぱりミシングさんにとってはここが家庭なんじゃないかしら?」ニコッ
ミシング「うーん!あとは素敵な旦那様がいたらパーフェクトなんですけどねー!」
母「まだ若いんですもの。これからいい出会いがありますよ」クスクス
ミシング「それなら早速出会いを探しに冒険しちゃおっかなーん!」
母「出かけるんですか?」
ミシング「はい!今夜のパートナーをゲットしてきまーす!」
母「あらあら…頑張ってくださいね」クスクス
ミシング「もっちろん!行きずりだって大歓迎!」
母「え?そ、それはちょっと…」アセアセ
ミシング「いってきまーす!」ガチャッ
母「い、いってらっしゃい」
バタンッ
母「…じょ、冗談よね?」ヒクヒク
136: ◆WEmWDvOgzo:2017/6/28(水) 22:31:44 ID:e4mtUywSu.
―――辺境地(草原)―――
ポルカ「あぁくそっ!ムシャクシャするぜ!」
コロン「ダメだったんでしょ?残念!」パァァ
ポルカ「じゃあなんで嬉しそうなんだよ!」
コロン「だってー…争い事とかイヤだもん」
ポルカ「バカ!俺たちは狩猟民族だぞ!欲しいもんは自分の力で奪い取るんだよ!」
コロン「でもー…何も言えずに帰ってきたんでしょ?」
ポルカ「うっ…あ、あいつら口ばっか達者なんだ!だから人間は嫌いなんだよ!」
コロン「ねぇ、せっかくだから人間の町を見てこうよ」
ポルカ「な、なぁに言ってんだぁ?正気か!?」
コロン「観光ならいいんでしょ?王国はホビットにも優しいって聞くし見てみたい!」
ポルカ「どうせウソだろ。人間なんか関わってもろくなこたねーよ」
コロン「…いいもん。一人で行くから」
ポルカ「え?」
コロン「ポルカたちは先に帰ってなよ。それじゃ」タタタッ
ポルカ「ま、待てよ!あぶねぇからやめとけって!」
タタタッ………
ポルカ「はぁ…別に行かねーたぁ言ってねぇだろ!」ダッ
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