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つれづれに
[8] -25 -50 

1: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/18(火) 03:32:32 ID:HhoWsFjMjM

『手紙』

郵便受けに詰まったチラシの中に、それはあった。




172: ◆bEw.9iwJh2:2017/7/24(月) 00:41:57 ID:ky0ZuqYOrA

×月×日
近くの公園に遊びに行く。
小さいこども達が無邪気に私に笑いかけたり、遊ぼうと言う。
−−私がこんな生まれ方をしていなければ、私にもこんなこども達がいただろうか。


173: ◆bEw.9iwJh2:2017/7/24(月) 01:05:58 ID:CBHiyoo4lc

×月×日
主人が電話の向こう相手に怒鳴っている。
あいつが掛けてきたのだろう。
もう関係ないのに、しつこい奴だ。

×月×日
主人が疲れた顔をしている。
私は何をすればいいのだろう。何をしてあげられるのだろう。難しくて丸まりたくなる。
主人の頬をぷにぷにとつついてみたら、少しだけ笑ってくれた。


174: ◆bEw.9iwJh2:2017/7/24(月) 01:08:35 ID:CBHiyoo4lc



×月×日
たすけて




175: ◆bEw.9iwJh2:2017/7/24(月) 01:19:52 ID:x3FiK8z9a6

×月×日
主人が助けにきてくれた。
違う、私の身の安全と引き換えにあいつに脅され呼び出されたのだ。
私が非力でなければ、主人をこんな目に遭わせなどしなかったのに。
………私に出来る事。
何がある?



×月×日

あいつをころした

しゅじんを、わたしをころそうとしたんだ、ころされてももんくはいえないだろう

ひとごろしになってしまったわたしを、しゅじんはだきしめてくれた

ごめんなさい、と

ちがう、それはわたしのことばなのに




176: ◆bEw.9iwJh2:2017/7/24(月) 01:40:51 ID:x3FiK8z9a6

○月○日
ペット用ケーキなんてあるのを初めて知った。もうすぐあの子の誕生日、奮発して注文をした。
喜んでくれているのだろうか、おなかを見せて、したしたと手足を動かしているのが可愛い。

○月○日
帰宅したら、本が雪崩を起こしていた。
耳をぺたーっとさせてぷるぷるしている様子からすると、遊んでいて落としてしまったのだろう。
…こんな姿を見せられては、怒れない。
頭をわしゃわしゃ撫でて、それから片付けに取り掛かった。


177: ◆bEw.9iwJh2:2017/7/24(月) 01:54:31 ID:SA2aCmnvZw

○月○日
あまり外に連れて行けていないから、ケージに入れて近くの公園に遊びに行った。
こんな穏やかな日ばかりだといいのに。

○月○日
別れてから何ヶ月経っていると思っているの?
もうやめて。
電話もメールも手紙も、もう嫌だ。
あんたなんか、もう好きじゃない!

○月○日
こんな飼い主でごめんね。
大丈夫、もうすぐあなたの誕生日だよ。
嫌な事は忘れて、ふたりで過ごそう。


178: ◆bEw.9iwJh2:2017/7/24(月) 01:58:46 ID:ky0ZuqYOrA



○月○日
あの子がいない。
部屋中ぐちゃぐちゃになって、何があったの、どうしていないの、どうして、何で。

嫌な予感しかしない。




179: ◆bEw.9iwJh2:2017/7/24(月) 02:08:40 ID:x3FiK8z9a6

○月○日
叩かれた。殴られた。痛い。怖い。
嫌だ、誰か助けて。
でも、私が逃げたらあの子が殺される。
あの子を守らなくちゃ。

助けて。誰か、私達を、助けて。


180: ◆bEw.9iwJh2:2017/7/24(月) 02:38:58 ID:CBHiyoo4lc

○月○日

服を破かれて、床に組み敷かれて、必死に抵抗した。

どれだけ殴られても、痛いだけならまだ我慢出来た。でも、これだけは嫌だ。

首を絞められる。苦しい。目の前が真っ赤になる。真っ黒になる。

助けて。たすけて。

だれか、



……………



血のにおいがする。

気を失っていたのだろうか、月明かりに照らされた周囲に目をやると、あいつが喉を朱く染めて倒れていた。

呼吸がうまく出来ない、ぼんやりした視界の中、あの子の姿を探す。

………ああ、なんて事だろう。

赤黒くなったあの子の口周りを見て、何が起こったのか分かってしまった。


ごめんなさい。


ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、

ごめんなさい………



181: ◆bEw.9iwJh2:2017/7/24(月) 03:06:16 ID:CBHiyoo4lc

暗闇の中、土を掘り起こす音が響く。

小柄な女性が額を汗みずくにして、大きな穴を掘っている。

そのそばには、小さな犬が一匹。

やがて深い穴が出来上がると、女性は紐で幾重にも縛ったビニール袋を穴に落とし、シャベルを両手に土を被せ始めた。


「私達だけの秘密だからね」


そう囁く女性に、犬は頭を寄せて応えた。



182: ◆bEw.9iwJh2:2017/8/20(日) 20:50:28 ID:Hpj3uOBQo2
念の為、保守
183: ◆bEw.9iwJh2:2017/9/18(月) 09:10:33 ID:lbq1RUfxJc
すみません、保守します
184: ◆bEw.9iwJh2:2017/10/14(土) 17:48:21 ID:hPPvadIFTw

『いつまでも、きっと』


高校の入学式。

校門で同級生達と一緒に、先輩方に制服の胸元に入学祝いの花を飾られる。

ああ、つらい受験勉強に耐えた甲斐があったな、と私は校舎を見上げた。

春のまだ冷たい空気が呼気を白く染める。

雲一つない、空だった。


185: ◆bEw.9iwJh2:2017/10/14(土) 17:58:42 ID:lTKvx0TqP6

式も滞りなく終わり、クラスに戻って自己紹介になる。

同じ中学の子はいなかったけど、そこは頑張って自分から積極的に話しかければいい事だ。

全員の自己紹介が終わり、ではみなさん宜しくお願いします、とクラス名簿を手に担任がにこやかに微笑む。

そして、


「みなさん、胸の花飾りのリボンを見て下さい。引き継ぎの言葉が書いてあった生徒は、あとで私のところに来て下さい」


−−そんな、不思議な事を言った。


186: ◆bEw.9iwJh2:2017/10/14(土) 18:05:53 ID:GaWv.fXLD.

どういう事なのだろう、とクラス内がざわつく。

銘々に胸元の花を外し、リボンを困惑顔で見つめている。私も安全ピンを外して、リボンで作られた花飾りを見つめた。

紅と白の、艶のあるリボン。


《ごめんなさい、あなたに次を託します》


目立たぬように、とても細い字で薄く書かれた文字がそこにあった。

引き継ぎとやらが当たったのは、私だった。


187: ◆bEw.9iwJh2:2017/10/14(土) 18:24:20 ID:lTKvx0TqP6

「…先生、これですけど、」

あのあとは家族が校門で待っていて、ファミレスでとはいえささやかな入学祝いをする予定だったので……、

何をやらされるのか、という恐れもあったから、私が担任に声をかけたのは入学式から数日経った日の放課後だった。

担任は私がおずおずと差し出したリボンの花飾りを受け取り、

「ありがとう。名乗り出ない生徒もいたりするから、安心したわ」

じゃあついていらっしゃい、と職員室へと歩き出した。


188: ◆bEw.9iwJh2:2017/10/14(土) 18:40:32 ID:kKq5s4c8qE

職員室には数名の教師がおり、私と担任を見て一瞬怪訝そうな表情を浮かべたが、すぐにリボンの花飾りを見て納得したらしい顔になった。

何だか居心地の悪い気持ちだが、担任のあとについていく。

担任はスチール製の棚の鍵を開け、そこから御守りの付いた鍵と花瓶を取り出し、

「この鍵を一年間あなたに預けるわ。それと、この花瓶。これは今から教える場所に持って行く物なの」

私のてのひらに鍵を握らせ、職員室に置いてある花瓶から花を一輪取り出し、また歩き出した。


189: ◆bEw.9iwJh2:2017/10/14(土) 19:10:09 ID:hPPvadIFTw

まだ校舎内の構造は把握出来ていないので、何処に向かうのか少しだけ不安になる。

向かう先は特別教室が並んでいるらしい方向で、階段を上る担任の細い足首が何故だか目に焼き付いた。

「この教室よ」

辿り着いたのは三階の突き当たりで、担任は片腕に小さな花瓶を抱えたままその教室の扉の鍵を開けて足を踏み入れた。

教壇と机と椅子が規則正しく並んだ、しかし僅かに埃っぽい空気の匂い。

どうやら特別教室ではない、使われなくなった普通教室のようだ。


190: ◆bEw.9iwJh2:2017/10/14(土) 20:18:08 ID:kKq5s4c8qE

担任は私の手に花瓶と花を差し出してくる。仕方なく受け取ると、彼女は教壇を指差して

「これから一年間、この教室に花を生けて頂戴。毎日じゃなくてもいいけど、一週間は越えちゃ駄目だから」

そう言って花瓶と花を飾るように示した。

「…あの、お花は買ってくるんですか?」

「大丈夫よ、学校で用意してるから。職員室前に花瓶出しとくから、そこから持ってって頂戴」

ごめんなさいね、うちの学校の決まりだから−−と担任は僅かに首を斜めにした。


191: ◆bEw.9iwJh2:2017/10/14(土) 21:09:21 ID:kKq5s4c8qE

私は言われた通りに花瓶に花を生け、静かに教壇に置いた。

カーテンで閉め切られた教室の空気が、少しだけ揺れたように感じる。

担任に促されて教室を出る時、


《ありがとう、宜しくね》


そんな声が聞こえた気がして、思わず背後を振り返った。

そこには当然、誰もいなかったのだけれど−−どうしてだろう、花の香りとは違う甘い匂いが微かに漂っていた。



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