ーむか〜しむかし、とある場所で
81: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:44:42 ID:Jn8a761Fdk
神娘「…」
山神「…ふふっ、懐かしいわね。あなたと初めて会ったのはもうどのくらい前だっけ」
神娘「私が山神殿の山の村を訪れた時だな。いつかなどはもう忘れたが」
山神「あはは、生意気な神が来たものだと思ったわよ。もっとも、今も変わらないけど〜」ニヤッ
神娘「むっ」
山神「…あんなに仲良くしてたのに。村の人間たちとも」
神娘「……」
神娘「…昔の話、だ」
山神「でも、これからどうする気?」
神娘「ひとまず回復したら、ここを離れる」
山神「そのあとは?」
神娘「…分からない」
山神「ねぇ、やっぱりまたあたしの所に…」
神娘「すまない。どうしても思い出してしまうからな」
山神「そう…」
82: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:45:17 ID:Jn8a761Fdk
神娘「なあ、山神殿」
山神「ん?」
神娘「村は…」
神娘「私がいたあの村は…どうなったのだ?」
山神「…」
山神「あの村はね………
「神様、おいでですか〜?」ザッ
神娘「っ!」
山神「あら、人間の声…」
神娘「山神殿、早く隠れろ!」
山神「なんで?ちょっと挨拶くらい…」
神娘「あいつは面倒な奴なのだ!関わらない方がいい!」
山神「そ、そう?分かったわよ」ポンッ
83: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:45:49 ID:Jn8a761Fdk
男「神様?」ヒョコッ
神娘「お、おう。やはりお前か」アセッ
神娘(山神殿、隠れているか)テレパシー
山神(大丈夫よ〜、不可視状態だから)
男「神様、さっきまで誰かとお話ししていませんでしたか?」
神娘「な、なんのことだ?」
男「焦っていらっしゃる」
神娘「うるさい。お前の気のせいだ」
男「う〜ん…」
神娘「それより今日は何をしに来たのだ」
男「ああ、そうでした。今日はこれを…」
84: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:46:20 ID:Jn8a761Fdk
男「…でして」
神娘「まったく、なんなのだお前は…」
男「しかしそれでは……」
神娘「ふん、生意気な事を言うでない」
山神「……」
85: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:47:08 ID:Jn8a761Fdk
男「おっと、長居してしまいました。今日はこれにて失礼します」
神娘「おう。もう来るな」
ザッザッ
神娘「ふぅ…どうせまた明日も来そうだな、あやつは」
山神「なんだ、人間が来てるんじゃない」ボワン
神娘「…ふん」
山神「ねぇ、今の人間は誰なの?」
神娘「麓の村に住んでいるらしい。この前見つかってしまって以来、ここをよく訪ねてくる」
山神「へぇ〜」
神娘「鬱陶しい奴だ。私が弱っている事を知っているから、色々こうして食べ物などを持ってくる」
神娘「私が神だと知りながら、碌に敬いもせず無礼ばかり働きおる」
神娘「きちんと力が使えればあんな奴すぐに追い出すというのに、まったく…」ブツブツ
山神「ふ〜ん…」ニヤニヤ
山神「でも神娘、楽しそうだったじゃない」
神娘「…は?」
山神「さっきあの人間と話してる時、なんだか活き活きしてたけどなぁ」
神娘「なっ、なっ、なっ…」
86: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:47:53 ID:Jn8a761Fdk
神娘「待て待て、いくら山神殿でも冗談が過ぎるぞ!」アセッ
山神「冗談なんかじゃないけどなぁ」
山神「まるで、昔のあなたを見てるみたいだった」
神娘「…」
山神「あたしはあなたの事はよく分かる」
山神「人間が好きだった頃の神「やめろっ!」
山神「…」
神娘「…」
神娘「私は…もう昔とは違う!」
神娘「人間など…人間など嫌いだ!」
山神「……」
山神「素直じゃないところも変わってないけどねぇ」
神娘「…山神殿、もう帰ってくれないか」
山神「そうさせてもらおうかしらね。あんまり山を空けてもいけないし」
山神「私としてはあなたの無事が確認できて満足だわ」
神娘「ありがとう。私は大丈夫だ」
山神「それじゃ、行こうかしらね」バサッ
神娘「……」
山神「…あっ、そうそう。忘れてたわ」
87: ◆WjgYlacz.c:2016/3/20(日) 18:48:48 ID:Jn8a761Fdk
山神「あなたのいたあの村だけどね」
神娘「…おう」
山神「……」
山神「…天罰が下ったわ」
神娘「!」
山神「竜巻に巻き込まれて、跡形も無くなったの」
神娘「…そう、か」
山神「でもね、神娘…」
神娘「ふん、当然の事だろう」
山神「……」
山神「…機会があればまた私の山にいらっしゃいな。見せたいものもあるし」
神娘「残念だが、もう会う事はないだろうな」
山神「それも天命。でも、また会えると信じているわ」
バサバサッ
神娘「…」
神娘「……」
グスッ
88: 名無しさん@読者の声:2016/3/21(月) 12:00:34 ID:chf.eBHwDE
いったい村で何があったのか気になります…
支援!
89: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:35:54 ID:Jn8a761Fdk
タタタッ
「はぁ、はぁ…」
ワーワーッ!
『こっちに逃げた!』
『くそ、やはりすばしっこい!』
(何故だ…)
………………
(くっ…足が…)ズキズキ
ドタドタッ!
「っ!」
『いたぞ!捕まえろ!』
「おい!お前たち、目を覚ませ!」
『追い詰めたぜ!』
『これで…これで俺たちに恩賞が…!』
ウオオーッ!!
(駄目だ。話が通じぬ…)
(うぅ…)
(信じていたのに…何故なのだ…っ)
ワーッワーッ!!
90: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:36:31 ID:Jn8a761Fdk
神娘「うぁっ!」ガバッ
神娘「はぁ…はぁ…」
神娘(ゆ、夢…か…)
神娘(最近思い出す事もなくなったというに…山神のせいだ)ブルブル
神娘(震えているか。まったく情けな…)
「神様?」
神娘「っ!」ビクッ
男「どうかされましたか?大声を出して…」ザッ
神娘「な、何でもない…」
男「顔色が優れませんが」
神娘「何でもないと言っている」
男「それにすごい汗をかいておいでです。少し横にでもなった方が…」ザッ
神娘「やめろ!近付くな!」
男「!」ビクッ
神娘「あっ」
神娘「…ほ、本当に何でもないのだ。私に構うな」プイッ
男「神様…」
91: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:37:57 ID:Jn8a761Fdk
男「今日は真にお疲れのおいでのご様子。また日を改めて伺います」クルッ
神娘「…」
神娘「ま、待っ…」
男「えっ?」
神娘「あ〜、えと、そのだな…」
神娘「さ、最近お前の村の調子はどうだ?」
男「…」
男「順調ですよ。作物もしっかり育っていますし」
神娘「お、おう。そうか」
男「もち米も秋には採れます。さすれば餅を搗いてお持ちしますよ」
神娘「それは楽しみにしておいてやろう」
男「そういえば2日前に子が生まれましてございます」
神娘「な、なにっ。お前妻がいるのか」
男「いえ、私の子ではありません。独り身ですし」
神娘「そうか。そうだな。そうに決まっている」
男「そんなに断定されると悲しくなるのですが」
92: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:38:27 ID:Jn8a761Fdk
神娘「お前は女子に好かれそうな雰囲気がせぬ」
男「ぐはっ」
神娘「まあ色欲に溺れるような不埒な奴よりましだろう」
男「確かにその点については同感ですが」
神娘「そういった奴は信用ならぬからな」
男「では、私は信用に足るというわけですか」
神娘「人間自体信用できん」フン
男「望みがありませぬ」ガクン
神娘「そもそも色欲以前にお前はもっと働け。働かぬ奴はもてぬ」
男「おかしいですね、こんなに真面目なのに」
神娘「…もう何度その点に突っ込めばいいのだ」
男「うん、そうだ。世の女性の見る目がないのです。そうに違いない」
神娘「そうやって周りのせいにしていれば楽であろうな」
男「今日はやたらと攻撃的ですね」
93: ◆WjgYlacz.c:2016/3/22(火) 20:39:19 ID:Jn8a761Fdk
男「しかし、やはり今日の神様は少し変です」
神娘「喧嘩を売っているのか?」
男「いえ、そういったつもりでは…」
男「元気がないだけでなく、村のことを気に掛けてくださるとは。勿論ありがたいのですが」
神娘「気に掛けるなど…そんなつもりはない」
男「何かおありなのでは?お話しいただけませんか」
神娘「…」
神娘「…近頃昔の夢をよく見るのだ」
男「夢、ですか…」
神娘「そうだ。少々思い出したくない事でな。辟易しておる」
男「何かお辛い事があったのでしょうか」
神娘「…うむ」
男「私でよろしければお話をお聞きしますが」
神娘「…ん」
神娘「いや、いい。お前に話しても仕方ない事だ」
男「そうですか」
神娘(いかんな。不意に縋りたくなってしまう)
94: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:52:27 ID:2D9GO7t/YM
神娘「…」ボーッ
男「神様〜」ザッ
神娘「…」ボーッ
男「神様?」
神娘「ん、お、おう。来ていたのか」
男「やはりお疲れのご様子で…」
神娘「い、いや、そうではない。考え事をしていただけだ」
男「はあ…あ、それより神様。また川へ魚を捕りに行って参りました」
神娘「そうか」
男「そうしたらこんなものが網に引っかかりまして」
神娘「ん?」
ビチビチッ
神娘「これは鰻ではないか」
男「はい」
神娘「珍しいものが捕れたな」
男「鰻は疲れに効くと聞きます。神様に召し上がっていただきたくお持ちしました」
神娘「お前…」ジーン
神娘「ふ、ふん。なんだ、気が効くな。たまには褒めてや…」
男「さあ神様、お召し上がりください」グイッ
神娘「踊り食い…だと!?」
95: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:53:30 ID:2D9GO7t/YM
男「神様…ぬるぬるして掴みづらいのですから早く…っ」ビチビチッ
神娘「馬鹿かお前!いったんしまえ!」
男「そ、そんなこと言いましてもこいつが暴れて…」
神娘「褒めようとした矢先に…ええい、近付けるなっ!」
スルッ
男「あっ」
神娘「わわっ!」キャッチ
神娘「きゅ、急にこっちに寄越すな!」
男「神様!今です!」
神娘「今ですじゃない!とにかくしまうから早くその籠を…」
ビチビチッ
神娘「うわわっ!?」スルルッ
男「あっ、神様の服の中に…」
神娘「ちょっ…中で暴れて…っ」
神娘「わははっ!く、くすぐったい!」ジタバタ
男「わあ、絵的にまずい事に」
神娘「お、おいっ!早くこいつを取り出せ!」バタバタ
男「え〜っと…よろしいので?」
神娘「い、いや待て!やはり自分で何とかする!」アセッ
男「無念」チッ
96: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:54:15 ID:2D9GO7t/YM
神娘「…散々な目に遭った」ゲッソリ
男「おいたわしや。不届き者の鰻のせいで…」
神娘「お前のせいだ、愚か者」
男「面目ありません」
神娘「…山神め、何が活き活きだ。こやつが来るたび疲れるだけだ…」ブツブツ
男「えっ、何か言いましたか?」
神娘「独り言だ」
神娘「だいいち、鰻は生では毒があるのだぞ。踊り食いなぞできぬ」
男「そうなのですか」
神娘「本当にわざとやってるんじゃないだろうな、お前」
男「滅相もございません」
男「しかし、そんな毒ごとき神様は大丈夫なのでは?」
神娘「この下界におる間、私の体質はお前たちとさほど変わらぬ」
神娘「毒にあたれば腹も壊すし、怪我もする。まあ流石に死にはせんがな」
男「衝撃の事実」
神娘「不便なものだ、まったく」
神娘「人間に化けねば下界に適応できぬとは…」
男「えっ」
神娘「あっ」
97: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:55:37 ID:2D9GO7t/YM
男「神様のそのお姿は、本来のものではないのですか?」
神娘「しまった…また口を滑らせた」
男「神様」
神娘「ええい、いいか。この程度なら…」
神娘「そうだ。人間の姿を模しているだけだぞ」
男「神様にもそのような能力が」
神娘「神本来の姿では下界におれぬ。天界と環境があまりにも違うからな」
男「興味深い話です」
神娘「またいらぬことを聞かせてしまった。これ以上は話せん」
男「そうですか」
男「ちなみに、人間以外の姿に化ける事も?」
神娘「…言うと思ったわ」
神娘「だが、私にはその能力はない。この人間の姿を保つので精一杯だ」
男「なんだ。残念です」
神娘「狸や狐の類ではないのだぞ」
男「しかし神様の本来のお姿とは如何なるものなのか…」
神娘「人間ごときが目にできるものではない。諦めろ」
98: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:56:31 ID:2D9GO7t/YM
ミーンミンミンミン…
神娘「ん?」
ミーンミンミン…
ジジジ…
神娘「おお、蝉か」
神娘(この声を聞くと夏という感じがする)
神娘(ろくに外に出れぬから、この暑さ以外に夏らしさを感じれなかったからな)
ミーンミンミン
神娘「……」
ミーンミンミン…
……………
『ねぇねぇ神様!これ見て〜!』
「ん?おお、蝉か。よく捕れたな」
『えへへ、すごいでしょ!』
「うむ、すごいぞ。だがもう放してやれ」
『えっ。もったいないよ』
「蝉はお前たちよりずっと短い間しか生きれぬ」
「その間くらいは、自由に飛び回らせてやってほしいのだ」
『むぅ〜…』
「な?」
『…分かった』パッ
99: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:57:07 ID:2D9GO7t/YM
ミーンミン…
『ばいばい、蝉さん!』フリフリ
「よしよし。良い子だ」ナデナデ
『えへへ〜』
『ね、ね、神様って優しい人だよね!』
「ん?優しい…?」
『うん!私、神様みたいな人になる!』
「わはは、そうかそうか。ならばこれからも良い手本にならねばな」
『神様、これからも私たちと遊んでね!』
「ああ。お前たちが望む限り、私はお前たちと共に在る」
「…これからも、共に」
神娘「っ!」ズキッ
ミーンミンミン…
神娘「っ、ふぅ…」
神娘(まただ。また不意に思い出してしまった)
神娘(最近はそのたび、頭や胸が痛む)
神娘「ふふっ、とうとう私もおかしくなり始めたかな?」
ミーンミンミン…
100: ◆WjgYlacz.c:2016/3/25(金) 11:57:46 ID:2D9GO7t/YM
神娘「…懐かしい気分になるな」
男「小さい頃はよく追いかけたものです」
神娘「そうか」
男「逃げられ際に小水をかけられた事もありました」
神娘「わはは。よくあるな、それは…」
神娘「…ってお前、いつの間に入ってきたのだ」
男「あれ、とっくに気付いておられるかと思いました」
神娘「せっかく何とも言えぬ気分に浸っていたところだったのに」フゥ
男「あっ、どうぞ私にお構いなく」
神娘「またすぐに余計な事を話し出すくせに」
男「そのような野暮な事は致しません」
神娘「ふぅん、それならば少し黙っておれ。というか出ていけ」
男「出ては行きませんが、静かにはしております」
神娘「こやつ……まあいい」
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