ーむか~しむかし、とある場所で
503: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:35:37 ID:JtRs1/PrKY
・・・・・・・・・・
504: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:36:47 ID:JtRs1/PrKY
村長娘「ほら!ここだよ!」
モワワーン…
巫女「えっ、ここって…温泉?」
山神「まあ、風流ね」
村長娘「他の人も知らない、あたしの秘密の場所さ」
巫女「すごいですね…こんな山の中に」
村長娘「散策してたら偶然見つけてさ。ここに入れば疲れも吹き飛ぶだろ?」
村長娘「さ、早く入ろう!」シュルシュルッ
巫女「ちょ、ちょっと娘さん!?」アセッ
村長娘「ん?なんだい、服脱がなきゃ入れないだろ?」
巫女「え、え~っとそうですけど…」
村長娘「…はは~ん」ニヤリ
巫女「えっ」
村長娘「恥ずかしがる事ないさ!女同士裸の付き合いしようよ!」
巫女「恥ずかしいに決まってるじゃないですか!山神様も何か言って…」
サル(山神)「ウキ?」
巫女「あっ、ずるい!お猿さんなら裸でも大丈夫でしょうよ!」
村長娘「さあ、観念しなよ巫女様!」ガシィッ
巫女「いやーっ!」
シュルルッ!
505: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:37:15 ID:JtRs1/PrKY
カポーン…
村長娘「は~っ、今日は疲れたねぇ。散々走り回ったしさ」
巫女「…うぅ、乱暴されたぁ…」
山神「巫女、人聞きの悪いこと言わないの」
村長娘「そうだよ、ただ脱がしただけじゃないか」
巫女「娘さん、奔放過ぎますよ…」
村長娘「漁師の村の娘なんてこんなもんさ」
巫女「……」
巫女「…でも格好いいです」
村長娘「え?」
巫女「私は娘さんがいなかったら今頃、全部諦めて土に埋まってました」
巫女「娘さんが叱咤してくれたから…私は足掻こうって思ったんです」
巫女「それに、山賊さんたちもそう。娘さんの言葉で心が動いた」
巫女「本当に感謝されるべきは私なんかじゃなくて、娘さんなんです」
村長娘「ちょっとやめておくれよ。茹だっちゃうじゃないか」
巫女「私もああいう人の心に響くような言葉を…言えるようになりたい…」
山神「…」
506: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:37:43 ID:JtRs1/PrKY
村長娘「…あたしはほら、馬鹿正直にものを言っちゃうんだよ」
村長娘「それで昔っから言わなくていい事まで言って人を怒らせたりしてさ」
村長娘「お父にもよく言われたよ。少しその口を縫った方がいいって」
巫女「……」
村長娘「あの時だってそうさ。思った事が口に出ただけ」
村長娘「腑抜けてる山賊どもに苛ついたままに言ったんだ」
巫女「でも、それが…」
村長娘「そうだよ。本当に心から思ったことだから、あいつらにも巫女様にも届いたんだ」
村長娘「本心を隠した上辺だけじゃない言葉だから」
巫女「…」
村長娘「…あれ、あたし何語ってんだろう」ハッ
村長娘「あ~恥ずかし恥ずかし!ちょっと開放的な気分になるとすぐこれだよ」
巫女「あははっ」
村長娘「忘れて忘れて!」
巫女「…いえ、忘れません。ちゃんと心に刻みましたから!」
村長娘「まったく、さっきの仕返しのつもりかい…」ブクブク
507: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:38:42 ID:JtRs1/PrKY
巫女「ところで娘さん」
村長娘「なんだい」ブスーッ
巫女「下っ端さんのどこを好きになったんですか?」
村長娘「へあっ!?」ガボッ
村長娘「げほげほげほっ!!」
巫女「ちょ、ちょっと大丈夫ですか!?」
村長娘「み、巫女様が変な事言うからじゃないか!」ケホケホ
巫女「だって…ねぇ?」
巫女「下っ端さんが村に来るようにあんなに必死になって…」
村長娘「……」
巫女「もう分かっちゃってますよ。隠したって無駄ですよー」
村長娘「……」
村長娘「…だ、だって、あいつ…何度も身体張ってあたしを助けてくれたし…」
村長娘「頭は悪そうだけど、そこが放っとけないっていうか…」
村長娘「なんかこう、今までに会った事のないような類の奴で…」
巫女「…」ニヤニヤ
村長娘「その顔やめておくれ!」カアアーッ
508: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:39:21 ID:JtRs1/PrKY
巫女「娘さん、可愛いですね」
村長娘「いい加減怒るよ?巫女様!」
巫女「いいじゃないですか、素敵な事です」
村長娘「…」
村長娘「…駄目だろ、あたしなんかじゃ」
巫女「?」
村長娘「だって…こんながさつな性格だしさ」
村長娘「すぐ余計なこと言うし、すぐ怒るし…」
村長娘「握り飯すら作ったことないし、それに…」チラッ
巫女「?」
村長娘「…巫女様みたいに胸もでっかくないし」
巫女「!?」カアッ
村長娘「何を食ったらそんなでっかくなんのさ」
巫女「し、知りませんよ!」
村長娘「ちょっと教えてよ!というか触らせてよ!」ザバッ
巫女「待っ…触る必要ないでしょ!やめてー!」
キャーキャー!
ザバザバッ!
山神「…平和ねー」ホノボノ
509: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:39:47 ID:JtRs1/PrKY
山神(……)
山神(…ねぇ、あなたなの?巫女を助けてくれたのは…)
山神(どこかにいるの?)
山神(いるなら答えてくれないかしら)
山神(…)
山神(……)
山神(…そんなはずないわよね)
山神(そんな…はず……)
ドクンッ!!
山神「っ!?」
山神(…この気配…まさか…)
山神「…」チラッ
キャハハッ!アハハッ!
山神「……」
山神(…この子たちを巻き込むわけにはいかないわね)
ザバッ
510: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:40:21 ID:JtRs1/PrKY
・・・・・
511: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:41:08 ID:JtRs1/PrKY
村長娘「いや~、あったまったねぇ!」
巫女「確かにすごく温まりましたけど…」
巫女(あの後、滅茶苦茶胸を揉まれた…)
村長娘「ところで、巫女様たちはいつ出発するんだい?」
巫女「朝になったら発ちます」
村長娘「なんだい、もっといてくれればいいのに」
巫女「う~ん、結構長くお社を空けてるので…」
村長娘「そっかそっか。寂しくなるね」
巫女「また来れますよ。山神様がいればすぐです」
村長娘「来てくれるかい?じゃあまたここにも入りに来よう」
巫女「はい!」
巫女「…無理やり脱がせたりしなければ」ブスッ
村長娘「だから悪かったってば」
巫女「冗談ですよ」ケラケラ
村長娘「まったく…」
512: ◆WjgYlacz.c:2017/6/24(土) 21:41:55 ID:JtRs1/PrKY
巫女「娘さん」
村長娘「なんだい?」
巫女「娘さんの性格なんて下っ端さんはちゃんと分かってくれてます」
村長娘「…」
巫女「料理だってこれから練習すればいいし、大丈夫」
巫女「自信持ってください」
村長娘「…へへっ」
村長娘「ありがとうね、巫女様」
巫女「偉そうな事言ってごめんなさい」
村長娘「胸に関しちゃどうにもならないかい?」
巫女「もーっ!そればっかり!」
村長娘「あはは!」
村長娘「…そうだね。あいつとも、もっといろいろ話してみる」
村長娘「なるようになるだろうさ。そうだろ?」
巫女「その調子です」
村長娘「へへっ。ん?ところで山神様はどこ行ったんだい?」
巫女「まあ、いつの間にかいない事も時々ありますから。大丈夫ですよ」
村長娘「ふ~ん、そんならいいけどね」
513: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:07:51 ID:pOT2UyvBR6
村長娘「ふぅ、村に着いた」
巫女「すっかり真夜中になっちゃいましたね」
村長娘「早く帰らないと」
巫女「そういえば、村長さんにはちゃんと許可をもらってきたんですか?」
村長娘「ん?黙って出てきたけど?」
巫女「えっ」
村長娘「こんな時間に出かける許可が出るわけないじゃないか」
巫女「それはそうですけど…心配かけちゃいますよ?」
村長娘「ま、皆寝てるだろうし気付かれないさ」
巫女「だといいですけど…」
「確かに村長には気付かれちゃいねえみたいだな」
巫女・村長娘「!?」ビクッ
下っ端「ったく、眠れねえのは俺だけじゃなかったとは」ザッ
巫女「下っ端さん」
下っ端「女二人で出歩く時間じゃねえだろ。何してたんだよ」
村長娘「い、いいだろ別に。関係ないじゃないか…」
下っ端「ま、確かに別にいいけどな」
村長娘「っ…」
514: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:08:27 ID:pOT2UyvBR6
村長娘「あ、あんたこそ何してるのさ」
下っ端「今言っただろ。俺も眠れねえから散歩だよ」
村長娘「そうかい…」
下っ端「ほら、さっさと戻んねえと騒ぎになっても知らねえぞ?」
村長娘「そ、そうだね。じゃあ巫女様、行こうか」
巫女「…」
巫女「…あっ、下っ端さん!娘さんを家まで送ってあげてください!」
下っ端「は?」
村長娘「えっ」
巫女「私、ちょっと用があるので急いで寝床に戻らなきゃ…お願いしますね!」
村長娘「ちょ…!」
巫女「ではおやすみなさい~!」ピュー
村長娘「み、巫女様~!」
村長娘「…」ポカーン
下っ端「…おい」
村長娘「わっ、な、なんだい!?」
下っ端「早く行くぞ。それとも一人で帰るか?」
村長娘「…い、いや、その…一緒に来ておくれ」
下っ端「おう」
コソッ
巫女(娘さん…頑張って!)
515: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:09:02 ID:pOT2UyvBR6
ザッザッ…
村長娘「…」
下っ端「…」
村長娘(…あんな話をした後だから、気まずいったらありゃしないよ)
村長娘(まったく巫女様…気を遣うにしても時と場合ってものを…)
下っ端「なあ」
村長娘「へぁっ?」ビクッ
下っ端「…なんだよその声」
村長娘「あ、うん…なんだい?」
下っ端「お前にしちゃ、やけに静かじゃねえか」
村長娘「いや、その…ね、眠いんだよ」
下っ端「子どもか」
村長娘「わ、悪かったね!」
下っ端「ほれ、着いたぞ。さっさと寝床に行け」
村長娘「はいはい!じゃあねっ!」ズカズカ
村長娘(あ~っ、やっぱ駄目だあたし…)
下っ端「…おい」
村長娘「な、なんだい?」
下っ端「…ありがとよ」
村長娘「?」
516: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:09:40 ID:pOT2UyvBR6
下っ端「さっき、お前のおかげでこの村にいれるようになっただろ」
村長娘「ああ…だってあたしがあんたを無理やりここに引っ張ってきたようなもんだし…」
下っ端「それに、神様に裁かれそうになった時もそうだし…お前に助けられてばっかりだった」
村長娘「…」
下っ端「借りを作ってばっかだ。いつか返さねえとな」
村長娘「そんな、あたしだって…あんたに助けられただろ」
下っ端「ん?そうだったっけ?」
村長娘「あんたがあたしら抱えて走ったから、生き埋めにならずに済んだんじゃないか」
下っ端「ああ、そんな事もあったな。ははは」
村長娘「…でも、何か返してくれるっていうならさ」
下っ端「ん?」
村長娘「明日、釣りに付き合ってくれないかい?」
下っ端「は?釣り?」
村長娘「あたしはどうしても釣り上げたい奴が海にいるんだよ」
村長娘「だから…その、あんたにも何かと手伝ってほしくってさ」
下っ端「…」
517: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:10:16 ID:pOT2UyvBR6
村長娘「嫌ならいいんだけどさ!退屈かもしれないし…」
下っ端「おう、いいぞ」
村長娘「へ?」
下っ端「いや、俺ここで何でも挑戦してみるって決めたんだ」
下っ端「釣りだってやってみてえし…もしかしたらすげえ得意かもしれねえだろ」
村長娘「あんた…」
下っ端「お前が洞窟で言ってた、やりたい事ってこれか?」
村長娘「…」コクン
下っ端「へっ、いいじゃねえか」
村長娘「へへっ」
下っ端「俺が先に釣り上げちまっても恨むなよ?」
村長娘「調子になるな!あたしが先だよ!」
下っ端「はっはっは」
村長娘「あははっ」
下っ端「…じゃあ明日、さっそく行ってみるか」
村長娘「うん…うん!」
下っ端「決まり。また明日な」
村長娘「うん、また明日」
518: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:11:10 ID:pOT2UyvBR6
巫女「…」
巫女(う~ん、さすがに声は聞こえないけど…)
巫女(なんだか良い雰囲気な気がする!)
巫女(まったく、娘さんももっと素直になったらいいのに…)
巫女(…)
巫女(…山神様、明日には戻ってくるよね)
巫女(そしたらこの村を出発して…お社に戻って…)
巫女(もっと巫女の仕事頑張らなきゃ。胸を張って山神様に仕えられるように)
巫女(ふふっ。また明日からも楽しみ…)
オオオ…
巫女「?」
………
巫女「…?」
巫女(鳴き声が聞こえた気がしたけど…気のせいかな)
巫女(狼さんの遠吠えか何かだよね…?)
巫女「んっ…ふぁ~ぁ…」
巫女(もう寝よ…)
スタスタ…
グルルル…
519: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:11:44 ID:pOT2UyvBR6
・・・・・・・・翌朝
520: ◆WjgYlacz.c:2017/7/19(水) 23:12:18 ID:pOT2UyvBR6
チュンチュン…
巫女「…」
巫女(…山神様、戻ってない)ズーン…
巫女(どうしよう…やっぱり何かあったのかな…)
巫女(とにかく、辺りを探しに行ってみないと…)
ザワザワザワ…
巫女「?」
巫女(外が騒がしい。どうしたんだろう?)
ダカラオレジャネエッテ!
ダマレ!スベテワカッテオルノジャ!
巫女「!」
巫女(下っ端さんと村長さんの声!)
巫女(何かあったんだ!)スクッ
タタタッ
521: ◆WjgYlacz.c:2017/7/24(月) 15:24:30 ID:Kfys1FS8Ww
村民たち「…」ズラッ
下っ端「俺は何も知らねえよ!」
村長「此の期に及んで見苦しいぞ!」
村長娘「だからお父!この人は…」
村長「お前は黙っておれ!」
タタッ
巫女「はぁ、はぁ…」
村長娘「み、巫女様!」
巫女「ど、どうしたんですか…?下っ端さんを取り囲んで…」
村長「おお、巫女様。聞いてくだされ」
村長「朝起きたら食料庫に残っていた僅かな食料がごっそりと無くなっていたのですじゃ」
巫女「えっ…」
村長「昨日、山賊どもに盗られまいと隠していた分ですじゃ。奴らがいなくなって安心していたところに…」ギロッ
下っ端「…」
巫女「で、でも、下っ端さんが盗んだ証なんて…」
村長「昨日の夜、こやつが食料庫の辺りを彷徨いていたのを村民が目撃しております」
巫女「!」
下っ端「だからそりゃ、散歩がてらこの村のどこに何があるか見て回ってただけだって…」
村長「そのような言い訳が通るか!」
522: ◆WjgYlacz.c:2017/7/24(月) 15:24:59 ID:Kfys1FS8Ww
村長娘「ねぇ、待ってってばお父!この人はゆうべは私と一緒にいたんだよ!」
村長「なに?」
巫女「あっ…」
村長娘「昨日、ちょっと眠れなくてさ…外を散歩してたら下っ端と会って…」
村長娘「それからあたしが寝床に戻るまで、ずっと一緒にいたんだよ!」
村長娘「その時も怪しい様子なかったし…この人は咎人じゃないよ!」
村長「ふむ……」
村長「今の話、本当じゃな?」
村長娘「本当だよ!だから…」
パシンッ!
村長娘「痛っ…」ヨロッ
村長「この馬鹿娘が!お前は昨日、命の危険に晒されたのじゃぞ!?」
村長「それなのに、また自分から危険な目に遭おうとするなど…何を考えておる!」
村長娘「…うっ」
村長「儂や村民たちの気も知らずそのような真似をするなど!恥を知れ!」
村長娘「…うぅ…っ!」タタッ
巫女「む、娘さん!」
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