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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





478: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:06:36 ID:.Fu.qeb/.Y
村長娘「巫女様!しっかりしておくれよ!」ガシッ

巫女「」

村長娘「巫女様〜っ!!」ユサユサユサッ

巫女「ちょ…む、娘さん…やめ…」ユサブラレ

巫女「き、気持ち悪くなっちゃう…」ウプッ

村長娘「あっ、ご、ごめんよ」

巫女「皆さん、無事でしたか…」

村長娘「ああ。大丈夫だよ」

下っ端「しっかし、あんたすげえな」

下っ端「なんなんだ?また不思議な術を使ったのか?」

巫女「…まあ、そういう事です」

山賊「しかし驚いたな」

山賊「ああ。天井を吹っ飛ばしちまうとは。空が見えるぜ」

山賊「…あんた、すまなかったな。あてになんねえとか言っちまって」

山賊「そうだ。あんたは命の恩人だ」

巫女「…いえ。気にしないでくださ…」

ズゴゴゴゴ…

一同「!?」
479: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:07:06 ID:.Fu.qeb/.Y
下っ端「こ、今度はなんだ!?」

村長娘「また地震かい!?」

巫女「は、早くここから離れましょう!」

ボコッ!

巫女「えっ?」

ドゴオオン!!

もぐら「巫女っ!」

山賊「な、なんだ!?」

下っ端「で、でっかいもぐらだとぉ!?」

巫女「えっ、もしかして…!」

もぐら「ああ、良かった…」

ポンッ!

従者「巫女…無事だったのね…!」

村長娘「じゅ、従者さん!?」

山賊「おい!今もぐらが人にならなかったか!?」

巫女「や、山神様ぁっ!!」タタッ

山神「来るのが遅くなったわね。でも、よくやってくれたわ」

村長娘「か…」

山賊たち「か…」

一同「神様ぁ!?」
480: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:07:40 ID:.Fu.qeb/.Y
巫女「あっ、いけない…」

従者「どちらにしても遅いわよ。別にいいわ」

山神「皆さん、私は山神といいます。ここから少し離れた地の土地神をしているわ」

山賊「か、神様…本物なのか…」

下っ端「初めて見た…」

村長娘「え?じゃ、じゃあ最初から従者さんが神様だったのかい?」

巫女「実はそうなんです」

村長娘「な、なんだい…それならそうと教えてくれても良かったじゃないか」

山神「ふふ、ごめんなさいね」

巫女「山神様、何があったんですか?」

山神「話すと長くなるわ。とにかくいったんここを出ましょう」

巫女「はい」

下っ端「で、でも神様、ここを登るのはかなり…」

山神「…」スッ

ヒュンッ!

下っ端「大変……あれっ?」

山賊「うおっ、いつの間に地上に出てる!」

山神「何か言ったかしら?」

下っ端「な、なんでもねえです…へぇ」
481: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:08:10 ID:.Fu.qeb/.Y
ザッ

巫女「?」

村長娘「ん?あいつは…」

親分「…」

下っ端「お、親分!?」

山賊「無事だったんですかい!?」

親分「お前らも無事だったのか」

下っ端「親分!良かった!」タッ

山神「待ちなさい」グイッ

下っ端「うわ!」ドテッ

下っ端「な、何を…」

親分「全員ほぼ無傷で出てくるとはなあ」

親分「めでたしめでたしってか。まったく…」

親分「…つまんねえな」ギロッ

下っ端「っ!」ゾクッ

山賊たち「お、親分…?」
482: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:08:40 ID:.Fu.qeb/.Y
山神「あれも神よ。この地の土地神」

巫女「えっ!?そうなんですか!?」

下っ端「お、親分が…神様?」

山神「土神。あなたの余興に付き合うのもおしまいよ」

土神「はっ、勝手に終わらすんじゃねえ」

土神「こうなりゃてめえもそいつらもぶっ殺さねえと、腹の虫が収まらねえな」

山神「…どこまでも低俗な神ね」

土神「なんとでも言え」

土神「ここは俺の地だ。俺のやりたいようにやらせてもらう」

山神「あなたのような無益な殺生をする神に、この地は任せられないわ」

山神「人間の懸命に生きようとする姿を踏みにじる、あなたなんかに」

土神「はっ!ならどうする?俺を神から引きずり降ろすってか?」

山神「…」

土神「がはは!やれるならやってみろ!てめえのような土地神にそんなことが…」

山神「そうさせてもらおうかしらね」

土神「…は?」

山神「…」スッ

バシュッ!

土神「何いっ!?」

ドンッ!
483: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 09:09:15 ID:.Fu.qeb/.Y
土神「うおああっ!!」シュウウ…

山神「…今までご苦労様、土神」

土神「て、てめえ…やっぱりただの土地神じゃあ…」ウウウ…

巫女「お、親分さんが…」

下っ端「小さくなってく…だと?」

土神「ああぁぁぁ…っ!」ウウウ…

巫女「や、山神様…何をしたんですか?」

山神「神降ろしよ。神としての能力を剥奪するの」

巫女「えっ、じゃあ…」

山神「もう土神は神ではなくなったわ」

ポンッ!

クネクネ…

山賊「…お、親分が」

下っ端「蚯蚓(みみず)になっちまった…」

山神「土地神は元々は何かしらの生き物なの。その元の姿に戻っただけのことよ」

蚯蚓「」ウゾウゾ

村長娘「なんだか儚いねぇ…」

山神「神も人間も、元を辿れば同じ生き物…っていうことよ」

巫女「これで終わりですかね。山神様…」

山神「ええ……うっ」ピキッ

巫女「山神様…?」
484: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:15:57 ID:.Fu.qeb/.Y
山神「…うぅ…」ズズズ…

巫女「山神様!?どうしたんですか!?」

山神「…ぐ…ぅ…」ズズズ…

山賊「おいおい何だよ!?次から次へと!」

村長娘「巫女様!神様はどうしちまったんだい!?」

巫女「わ、分からないです!」

巫女(山神様…なんだか怖い…)

山神「う…ぁ……ぁぁ……」ググッ

巫女「山神様っ!!」

ヒュッ

「離れるのじゃ!」ザバッ!

巫女「えっ?」

バシャッ!

巫女「きゃあっ!」

山神「」ビシャビシャ

山神「…うっ……はぁ、はぁ…」
485: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:16:46 ID:.Fu.qeb/.Y
老人「…ふう、間に合ったかの」

山賊「だ、誰だこの爺さん?」

巫女「あ、あなたは…?」

老人「おう、この姿では初めてか。海亀のままだと陸では不便での」

巫女「海亀…まさか海神様!?」

村長娘「こ、この人も神様かい?」

下っ端「今日は何だってんだ…」

海神「ふむ、山神。しっかりせい」

山神「…海神様」

海神「馬鹿者が。神降ろしなど高等神力を使いおって」

海神「儂が気配を察して駆け付けねばどうなっていたと思っておる」

山神「申し訳…ありません」

海神「人間を守る為とはいえ…また繰り返す気か。あの者も浮かばれんぞ」

山神「……」

巫女「あの、海神様…繰り返すって…?」

海神「お前には関係のない事じゃ」

巫女「…」

巫女(相変わらず、蚊帳の外かぁ…)
486: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:18:24 ID:.Fu.qeb/.Y
山神「…海神様」

海神「む?」

山神「土神がいなくなって…この地は不安定になります。どうか…」

海神「安心せい。次の土地神が降るまで、儂がこの地を見よう」

山神「ありがとうございます」

海神「くれぐれも気を付ける事じゃ。お前の内なるものはまだ健在じゃぞ」

山神「…はい」

ヒュッ

山賊「うおっ、消えた…」

下っ端「何だったんだ…?」

巫女「山神様、大丈夫ですか?」

山神「ふふっ、大丈夫よ。心配かけたわね」

巫女(良かった…いつもの山神様だ)

山賊「それにしても…疲れたぜ」

山賊「いっぺんに色々と起こりすぎだな」

下っ端「まさか親分が神様だったなんて…」

山神「…山賊たち」

山賊たち「!」ビクッ
487: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:18:50 ID:.Fu.qeb/.Y
山賊「へ、へい…」

山神「いくら土神に誑かされたとはいえ…あなた達のしてきた事の罪は重いわ」

山賊たち「…」

山神「近隣の村々を襲い、傷付いた人たちもたくさんいるでしょう」

下っ端「うっ…」

山神「土神が不在の今、私が沙汰を下します」

山賊たち「…ううっ…」

巫女「…」

巫女「あの、山g…」

村長娘「待っておくれよ!山神様!」

山神様「?」

山賊たち「?」

村長娘「こいつら、確かに悪い事してきたけどさ!」

村長娘「それでもこれからは真っ当に生きようってさっき話してんだよ!」

村長娘「お願いだよ山神様!許してやっておくれ!」

下っ端「お前…」

山神「…」
488: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:19:17 ID:.Fu.qeb/.Y
巫女「山神様、私からもお願いします!」

山神「巫女…」

巫女「もう一度、この人たちに機会をあげてください」

巫女「反省して、真面目に生きていく機会を」

山神「…」

山神「…山賊たち」

山賊「へい…」

山神「今、娘さんが言っていた事は本当かしら?」

山賊「…ほ、本当です!」

山賊「俺たち、これからは真面目にやるつもりで話してたんだ!」

山神「…ふふっ。そういう事なら見せてもらいましょう」

山神「これからどうあなた達が生きるのかを」

下っ端「…」

山神「田畑を耕し、命を愛で、他者と助け合う事ができると誓いますか?」

下っ端「…や、やる!やります!」

山賊「おう!もちろんだ!」

山賊「ああ!」

山神「…ふふっ。そういう事でしたら」

山神「今日のところは、見逃しましょう」

山賊「あ、ありがてえ!」

山賊「ありがとうございます神様!」
489: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:19:44 ID:.Fu.qeb/.Y
村長娘「ふぅ、よかった〜」

巫女「ですねっ!」

下っ端「…おい」

村長娘「なんだい?」

下っ端「…す、すまなかったな」

村長娘「おっ?」

下っ端「まさか、攫った奴らに庇われるとは思わなかったぜ」

下っ端「怖い目に遭わせて…すまなかった」

村長娘「へへっ」

山賊「そうだ。それに何度も命を助けられた」

山賊「感謝してもしきれねえ」

山賊「ありがとうな。あんたらの事は忘れねえ」

巫女「なんか、恐縮しちゃいますね」

村長娘「あははっ、いいって事よ!」
490: ◆WjgYlacz.c:2017/6/14(水) 10:20:14 ID:.Fu.qeb/.Y
巫女(こうして山賊さんたちの騒動は終わりを告げて…)

巫女(一人、また一人と山賊さんたちはこの場を立ち去っていきました)
491: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:46:27 ID:.Fu.qeb/.Y
村長娘「…皆行っちまったねぇ」

巫女「ええ」

村長娘「さて、じゃああたしらも…」

下っ端「…」ポケーッ

村長娘「うわっ!いたのかい」

下っ端「うわっとはなんだよ」

巫女「下っ端さん…」

村長娘「あんたはどうするのさ?」

下っ端「ん?ああ…どうすっかな」

下っ端「特に行く所もねえし、故郷にゃ知り合いもいねえしな」

村長娘「そうなのかい?」

下っ端「ま、いいさ。適当にぶらついて探してみるからよ」

下っ端「俺がこれからやりたい事とかさ」

村長娘「…」

村長娘「…あ、あのさ」

下っ端「あ?」

村長娘「あんた、うちの村に来ないかい?」

下っ端「へっ?」
492: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:47:04 ID:.Fu.qeb/.Y
下っ端「お前の村にだと?」

村長娘「うん。行くあてがないんだろ?」

下っ端「そうだけど…俺は山賊だぜ?」

村長娘「大丈夫だよ。あたしが上手く話す。あんたあの時村に来てなかったしさ」

下っ端「…」

村長娘「あ、嫌ならいいんだよ。でもあんた、放っといたら野垂れ死にそうでさ…」

下っ端「へっ、なめるんじゃねえよ。俺は…」

村長娘「そ、それにさ!」

下っ端「?」

村長娘「あたし言っただろ?手伝うって」

村長娘「あんたのやりたい事を探すの…手伝うって言っちまったからさ」

村長娘「その、近くにいてくんないとそれもできないっていうか…」

下っ端「…ああ、そうだな。そんなこと言ってたかな」

村長娘「だから…うちに来てよ。何にもない村だけど、大事なものが見つかるかもしれないじゃないか」

下っ端「分かったよ。そんなに言うなら、少し世話になるさ」

村長娘「ほ、本当かい!?」パアッ

下っ端「なんでそんな嬉しそうなんだお前」

巫女「…鈍感」ジトー

下っ端「え?お、えっ?」
493: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:48:27 ID:.Fu.qeb/.Y
村長娘「そんじゃ、帰ろうかね」

巫女「はい」

村長娘「山神様の事も村の皆に…あれ?」

コツゼン

下っ端「そういやさっきからいねえな」

村長娘「なんだ、紹介しようって思ったのにさ」

巫女「本当はあんまり人前に姿を見せたがらないんですよ」

村長娘「そうなのかい。じゃあ仕方ないね」

下っ端「…あ〜、なんか緊張するな」

村長娘「なんで?」

下っ端「長いこと村とかで暮らしてないからな。馴染めっかな…」

村長娘「うちの村は穏やかだから大丈夫だよ。あたしみたいに」

下っ端「えっ」

巫女「えっ」

村長娘「なんだい、巫女様まで…冗談だよ」

巫女「良かった。お転婆な自覚はしてたんですね」

村長娘「意外と毒舌だねぇ」
494: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:48:55 ID:.Fu.qeb/.Y



・・・・・・・・・・



495: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:49:35 ID:.Fu.qeb/.Y
村長「ぬぉぉ〜っ!娘よ〜!」ドバーッ

村長娘「な、なんだい、帰ってくるなり暑苦しいね」

村長「怪我はないか!?ひどい目に遭わされなかったか!?」

村長娘「ぶ、無事だよ!みんな巫女様のおかげさ」

巫女「えっ!いや、私は…」

村長「巫女様!ありがとうございました!」ガバッ

巫女「村長さん…」

村長「本当に山賊どもをやっつけてくださるとは…」

村人「まったく、感謝もしきれません」

村人たち「ありがとうございました!」ズザッ

巫女「あ、え〜っと…」チラッ

村長娘「……」ニコッ

巫女「…はぁ」

巫女「…い、いいって事です!」

村人一同「はは〜っ!」

巫女(これ、いっつも罪悪感があるんだけどなぁ…)ヒクヒク
496: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:50:17 ID:.Fu.qeb/.Y
村長「ところで…」チラッ

下っ端「…?」

村長「そっちの男は誰かの?」

村長娘「うん、山賊に一緒に捕まってた旅の人だよ」

村長「ほう、山賊に?なんでまた?」

下っ端「え、な、なんでって…」

下っ端(理由なんざ考えてねえ…)

村長娘「…お父、その人記憶がないんだ」

下っ端「え」

村長「なんじゃと?」

村長娘「洞窟から逃げる時に頭に岩がぶつかって、それで全部忘れちゃったらしいんだよ」

村長娘「捕まってた理由も、元いた所も全部」

村長「なんと…本当かね?」

下っ端「あ、え〜……そ、そうなんだ!うん」

村長「だから行くあてもないんだよ。記憶が戻るまでここにいてもらってもいいだろ?」

村長「なるほど…それは無下にするわけにはいかんのぅ」

下っ端「…」

村長「あい分かった。好きなだけこの村にいるとよいわい」

下っ端「ど、ども…」

村長娘「良かった!ありがとう、お父!」

下っ端(…また…助けられちまった)
497: ◆WjgYlacz.c:2017/6/18(日) 10:50:58 ID:.Fu.qeb/.Y


・・・・その夜・・・・
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