ーむか〜しむかし、とある場所で
450: ◆WjgYlacz.c:2017/4/29(土) 22:44:58 ID:/FBqKYUaXc
山神「まさかあなた…!」
土神「ああそうさ。てめえがべらべら喋ってる間にこっそり解除させてもらったぜ?」
土神「この洞窟の形を保つ念力をな!がっはっは!」
山神「なんてこと…!」
土神「間もなくこの洞窟は全て崩れ去る!そうすればてめえの大好きな人間どもはどうなるかな…?」
山神「…!」ギリッ
山神「山賊たちもまとめて生き埋めにするつもりなの!?」
土神「へっ、さっきも言っただろ?人間なんざ取るに足りない存在だと!」
土神「てめえの思い通りにさせないためなら、どうって事はねえ!」
土神「代わりの人間なんざ腐るほどいるんだからなあ!」
山神「この…外道…!」
山神「はあっ!」パアアッ
ガラガラ…ドザザッ…!!
山神(くっ…やっぱり崩壊が止まらない…!)
土神「がっはっは!無駄無駄!ここは俺様の領域だ。てめえの神力を通さねえくらい朝飯前よ!」
山神(こうなったら直接…!)
タタッ
土神「ふん、何人助けられるか見物させてもらうとしようか」
山神(お願い…!無事でいて…!)
ドザザザ…
451: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:17:51 ID:497ia7CQNY
※以降、巫女に助けられた山賊を下っ端と表記します。
・・・・・・・・・・
452: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:18:47 ID:497ia7CQNY
ドザザザ…ドゴォッ!!
下っ端「うおっ!?おわあっ!!」
巫女「やっぱり…洞窟が崩れかかってます!」
下っ端「な、なんだってそんな急に…!」
村長娘「急ごう巫女様!通路が塞がっちまうよ!」
巫女「…」チラッ
巫女(この羽根…さっきも私の願いに反応して岩を止めてくれた)
巫女(…この崩れも止めてくれるかな…?)
巫女「…」バッ
村長娘「巫女様!?もしかして…」
巫女(この崩落を止めて…!お願い…!)
巫女(お願いします…!)
ギュッ…
…
…
453: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:19:54 ID:497ia7CQNY
ドドドドドッ!!
村長娘「巫女様!危ないよっ!」
巫女「きゃあっ!」
ガラララッ…!
村長娘「大丈夫かい!?巫女様!」
巫女「うぅ…」
巫女「…と…止まらない…」
村長娘「え?」
巫女「今度は願っても…止められない…!」
村長娘「巫女様…」
巫女「やっぱり…私なんて…私なんて…」
村長娘「しっかりしなよ巫女様っ!」
巫女「!」ビクッ
村長娘「神様にばかり頼ってられないよ!」
村長娘「助けがなけりゃ、自分たちで生き残らなきゃ駄目だ!」
巫女「あ…」
村長娘「ほら立って!とにかく走るんだよ!」グイッ
巫女「…う、うぅ…」
タタタッ
454: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:20:39 ID:497ia7CQNY
ドザーッ!
下っ端「わぶっ!ぺっぺっ!」
村長娘「はぁ、はぁ…」
下っ端「で、出口はすぐそこだ!」
村長娘「もう少しだよ、巫女様!」タタタ
巫女「は、はい!」タタタッ
下っ端「そこを曲がりゃあ……えっ!?」
村長娘「なんだい!?……まさか」
ガララッ…
巫女「ふ、塞がれてるんですか…?出口…」
下っ端「あ、ああ…」
村長娘「…ここまで、かい」ヘタッ
巫女「…」
ダダダダッ
「おい!急げ!」
「くそっ、砂埃が目に…」
「死にたくなきゃ走れ!」
巫女「誰…?」
下っ端「あの声…仲間たちだ!」
455: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:21:22 ID:497ia7CQNY
ザザッ
山賊たち「おう、下っ端!無事だったか!」
下っ端「た、大変だ!こっちの出口がもう塞がってて…!」
山賊たち「な、なにぃ!?」
下っ端「お頭は!?他の連中はどうしたんだ!?」
山賊「残ってんのは多分俺たちだけだ。お頭はどうだか分からねえが…」
下っ端「そうか…」
村長娘「他に出口は無いのかい!?」
山賊「あるにゃあるが…今から向かって間に合うかどうか…」
村長娘「うだうだ言ってないで早く案内するんだよっ!」
山賊「てめえ!俺たちに指図するたぁ…」
下っ端「あ〜、待ってくれ!とにかく今は急ごうぜ!」
山賊「…ちっ。おら、てめえら行くぞ!」
山賊「おう!」
ダダダッ!
村長娘「…へぇ?かばうなんて良いとこあるじゃないか」ツンッ
下っ端「るせっ!まったく何なんだお前は…」タタッ
456: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:21:52 ID:497ia7CQNY
・・・・・
457: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:22:23 ID:497ia7CQNY
山賊たち「駄目だ、こっちも塞がってる!」
山賊たち「こっちもだ!」
下っ端「本当かよ…出られねえじゃん…」
ビシビシッ!!
山賊「おい!天井に亀裂が…」
山賊「く、崩れるぞっ!!」
下っ端「くそっ!ここまでかよ!」
山賊「おい!お前ら、こっちの食料庫に来い!」
山賊「なんだ!?飯なんざ…」
山賊「違う!飯に土が被らないようここだけ木材で天井を囲っただろ!」
山賊「上手いこと補強されて、ほとんど崩れてねえぞ!」
山賊「なるほど!そりゃいい!」
下っ端「いったん逃げ込むしかねえか…」
山賊「急げっ!」
ビシビシビシッ…!!
458: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:23:01 ID:497ia7CQNY
ダダッ!
山賊「はぁ…はぁ…」
山賊「間に合った…確かにここはしばらく崩れなそうだな…」
下っ端「……」
山賊「どうした?下っ端!」
下っ端「…あいつらは?」
山賊「あいつら?ああ、あの女どもか」
山賊「放っとけ。今は他人を気にする余裕なんざ…」
下っ端「…」ギリッ
ダダッ!
山賊「お、おい!下っ端!?」
山賊「もう崩れちまうぞ!大人しくしてろ!」
459: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:23:34 ID:497ia7CQNY
巫女「はぁ、はぁ…!」タタッ
村長娘「ちっ、あいつら…!あたしらを置いてさっさと行っちまって…」タタッ
巫女「もう天井が崩れます!諦めましょうよ…」
村長娘「馬鹿言うんじゃないよ!」
巫女「そ、そんなこと言ったって…」
「おーい!」
村長娘「ん?あれは…」
下っ端「いた!」
村長娘「なんだい、出口は見つかったのかい!?」
下っ端「出口はねえ…が、こっちに安全な場所があった!お前らも来い!」
村長娘「本当かい!巫女様、急ごう!」
巫女「え、ええ…!」
ビシッ…!
下っ端「あっ」
ガラッ…
村長娘「うわわ…」
ドザザザザアッ!!
下っ端「ほ、本格的に崩れてきやがった!」
460: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:24:08 ID:497ia7CQNY
下っ端「走るぞ!」
巫女「だ、駄目です…もう足が…!」
下っ端「ちっ…じゃあ捕まってろ!」
ガシッ
巫女「…えっ?」
ガシッ
村長娘「おっ?」
下っ端「ぬおおおお〜っ!!」ダダダッ!!
巫女(ふ、二人抱えて走ってる…!?)
村長娘「あ、あんた…」
下っ端「今、話しかけんじゃねえええっ!!」
ガラガラガラッ!!ドザザザッ!!
山賊「あっ!戻ってきやがった!」
下っ端「うおおお!」ドドド!!
山賊「が、頑張れ下っ端!」
山賊「駄目だ!間に合わねえよ!!」
下っ端「ぬあああっ!!」
ズズウウウ…ン!!
461: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:24:55 ID:497ia7CQNY
ガラッ…
モクモク…
山賊たち「……」
下っ端「はっ…はあっ…」
村長娘「た…助かった…?」
巫女「い、生きてる…私たち…」
山賊「すげえ…」
山賊「おい、大丈夫か?下っ端…」
下っ端「ぜ…全然へっちゃら…」
下っ端「と言いたいとこだが…しばらく…立てそうにねえ」
山賊「だろうな」
巫女「ありがとうございます、下っ端さん」
下っ端「…あんたにゃ借りがあるから…な。これで無しだ」
巫女「下っ端さん…」
村長娘「しっかりしなよ、あんた」
下っ端「てめえは礼の前にそれかよ…」
村長娘「…ありがとうよ」
下っ端「へっ」
462: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:25:42 ID:497ia7CQNY
山賊「おい」
巫女「?」
山賊「水を差すようで悪いが、何も解決しちゃいねえぜ」
山賊「出口は完全に塞がってるし」
山賊「この木材の支えもいつまでもつか…」
山賊「ただ死ぬのを待ってるみたいなもんだ」
巫女「…」
巫女(たしかに、どう考えても八方塞がり…)
巫女(山神様…どうしちゃったんだろう…)
下っ端「なあ、あんた」
巫女「え?」
下っ端「さっきみてえに不思議な術でどうにかできねえのか?」
巫女「っ!」ビクッ
山賊「不思議な術?」
下っ端「おうよ。この人、さっきな…」
巫女「ふ、不思議な術なんて!」ガタッ
山賊たち「…?」
巫女「術なんて…ありません」
下っ端「嘘つけ!さっき岩を止めたのは…」
巫女「私の力じゃないんです!」
巫女「わ、私なんかには…何も……何もできない…っ」ポロッ
下っ端「お、おいおい…泣くこたねえだろ…」
463: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:26:08 ID:497ia7CQNY
山賊「なんだなんだ?」
山賊「結局あてになんねえのかよ…」
山賊「ちっ、やっぱりこのまま死ぬだけか…」
巫女「……」
巫女(うぅ…っ)
村長娘「…」
村長娘「…あ〜あ〜!嫌になっちゃうね」
下っ端「?」
村長娘「あんたら、人に頼ってばっかで。それでも男なのかい?」
山賊たち「なにぃ?」
村長娘「山賊なんてもっと骨のある連中かと思ってたけど、そうでもないね!」
山賊「てめえ…!」
村長娘「あたしは嫌だね!こんな所で死ぬのなんか!」
村長娘「諦めるなんてまっぴらご免だ!」
下っ端「そうは言ってもな…」
村長娘「出口がない?なら作ればいいじゃないか!」
巫女「えっ…?」
464: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:27:35 ID:497ia7CQNY
村長娘「ちょっとあんた」ズイッ
山賊「な、なんだよ?」
村長娘「一番近い出口の方角はどっちだい?」
山賊「あ?何を…」
村長娘「いいから!」
山賊「ぐ……多分、そっちだ…」ユビサシ
村長娘「そうかい。じゃあ…」
村長娘「掘ろうかね。この木材が使えるだろ」ヒョイッ
下っ端「お、おい!」アセッ
村長娘「よっと!」ガッ
ザッザッザッ…
巫女「……」
下っ端「おいおい、待てよお前!もぐらじゃあるめえし外まで掘るなんてできるかよ!」
村長娘「……」ザッザッ
下っ端「ましてやお前みたいなただの娘っ子じゃ到底…」
ガランッ!
村長娘「やかましい!!」
下っ端「なっ…」
465: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:28:08 ID:497ia7CQNY
村長娘「無駄だって分かってても…どんなに惨めでもいい…」
村長娘「あたしには生きてやりたい事があるんだ!諦めてたまるかい!」
山賊たち「……」
巫女「娘さん…」
村長娘「…あんた達には」
下っ端「…?」
村長娘「あんた達には、やりたい事がないのかい?死ぬ気で生きたいと思う何かが…」
下っ端「な、なんだと…?」
村長娘「…いいさ。あたしだけでも足掻くから」
ザッザッザッ…
村長娘「くっ…いたた…」ズキズキ
スッ
村長娘「…ん?」
巫女「…代わります、娘さん」
村長娘「巫女様…」
巫女「えいっ!」
ガッ!
466: ◆WjgYlacz.c:2017/4/30(日) 21:29:34 ID:497ia7CQNY
巫女「はっ!」ブンッ!
ガッ!
巫女「あたたた…」ジーン
村長娘「…」
巫女「…ぷっ、あははは!」
村長娘「あははっ!そんなやり方、痛いに決まってるじゃないか!」ケラケラ
巫女「あは、ほ、本当に…痛いですねこれ…」ケラケラ
山賊「…」ポカーン
村長娘「あはは…はあ、あんまり笑わせないでくれよ」
巫女「そ、そんなつもりじゃないんですけどね…」
巫女「…娘さん。ごめんなさい」ペコッ
村長娘「え?」
巫女「一人で勝手に落ち込んで、大事なことを忘れてました」
巫女「私は巫女である前に一人の人間です」
巫女「人間として、できることをしないと」
村長娘「巫女様…」
巫女「私はここから出ます。そして、巫女として胸を張れるよう精進しなきゃ」
巫女「だから…私も一緒に足掻きます!」
村長娘「そう来なくっちゃ!」
467: ◆WjgYlacz.c:2017/5/5(金) 14:39:50 ID:Zlu.wp1NEw
村長娘「せいやっ!」
ザッ!
巫女「えい!」
ザッ!
山賊たち「……」
下っ端「…」
下っ端(…けっ、女二人でどうしようってんだ)
スクッ
下っ端「…?」
山賊「……」
山賊「…俺、故郷に母ちゃんを置いて出てきたんだ」
山賊「病気がちで…でも必死で働いててよ…」
山賊「…もう一度会いてえな」ガラン
下っ端「お、おい…」
山賊「おりゃっ!」ブンッ
ザクッ!
村長娘「おっ」
巫女「すごい力…!」
468: ◆WjgYlacz.c:2017/5/5(金) 14:40:18 ID:Zlu.wp1NEw
巫女「手伝ってくださるんですか?」
山賊「ああ。あんたら見てたらじっとしてらんなくなっちまった」
村長娘「へへっ」
「ま、待てよ!」ザッ
巫女「!」
山賊「俺だって可愛い嫁さんもらうまでは死ねねえ!」
山賊「俺もずっと富士の山を登りてえって思ってたんだ!」
山賊「俺は京の都で芸者さんと遊んでみてえ!」
「俺も俺も!」
「俺だってな…」
ワイワイ
巫女「皆さん…」
山賊「俺たちも掘るぜ。悪かったな、任せちまっててよ」
山賊たち「おっしゃ、やるぞ〜!」
ザクッ!ザクッ!ザクッ!
下っ端「……」ポカーン
469: ◆WjgYlacz.c:2017/5/5(金) 14:40:49 ID:Zlu.wp1NEw
下っ端(なんだってんだ…)
山賊たち「うおおーっ!」ザクッ!
下っ端(急に皆して…無駄な事しやがって…)
巫女「ていっ!」ザッ!
下っ端「……」
『あんた達にはないのかい?死ぬ気で生きたいと思う何かが…』
下っ端「……」
村長娘「はっ!」ザッ!
下っ端「……畜生…」ギリッ
ザッ
村長娘「はぁ…硬い岩だねぇこりゃ」
巫女「娘さん、少し休んでくださいよ」
村長娘「何言ってんだい。あたしは全然大丈夫だよ」
村長娘「それっ…おっとっと」フラッ
巫女「娘さん!」
ガシッ
村長娘「…へ?」
下っ端「…」
村長娘「あんた…」
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