ーむか〜しむかし、とある場所で
412: ◆WjgYlacz.c:2017/1/8(日) 22:32:50 ID:PlUNcBI2Oc
山賊「おっ?」
巫女「…」ザッ
巫女(ふぅ、間に合った)
巫女(うわぁ…怖そうな顔の人たちばっかり…)
山賊「なんだお前?」
巫女「わ、私が行きますっ!」
山賊「へぇぇ〜っ!こりゃあ随分な上玉だなぁ!」
山賊「わはは、こんなちっぽけな村にもいるもんだ!」ジュルリ
巫女「…」ゾクッ
山賊「で?他の奴はどうした」
巫女「あ、あの…わ、私だけで勘弁していただけないでしょうか…?」
山賊「ああ!?」
巫女「私一人で…見逃していただけませんかっ!?」
山賊「…」
巫女「…」ドクンドクン
村長(巫女様…!)ハラハラ
山賊「駄目に決まってんだろ!」
巫女「!」
山賊「若い娘を三人…それがお頭の命令よ」
山賊「おめえ一人だけ持ち帰ったら、俺たちがどやされちまうからな」
巫女「…っ」
413: ◆WjgYlacz.c:2017/1/8(日) 22:33:46 ID:PlUNcBI2Oc
山賊「あと二人差し出せ!でなけりゃ…どうなるか分かってるな?」
巫女「くっ…」
巫女(とりつく島もない…どうすればいいの…?)
「では、私も参りましょう」
巫女「!?」
村人たち「!?」
山賊「ん?」
??「私も共に…お連れくださいませ」
巫女(えっ、誰?あの人…)
山賊「へえ、自分から名乗り出るたぁ良い度胸だな!」
山賊「おら!早くこっちに来い!」
??「…」スタスタ
巫女(誰なんだろう…)
村人たち「???」ザワザワザワ…
巫女(…あの表情…村の人たちも知らないのかな…?)
山賊「ほら、あと一人!早く出しやがれ!」
巫女(そっか、あと一人いなきゃ…!でももう名乗り出る人なんて…)
ダダダダッ!
山賊「ん?」
414: ◆WjgYlacz.c:2017/1/8(日) 22:34:09 ID:PlUNcBI2Oc
ズザザーッ
??「はあ、はあ…」
??「あ、あたしが行くよ!連れてけっ!」
山賊「お、おう…」
村長「なっ…」
村長「や、やめいっ!何を言っておるか!」
??「もう見てらんないよ!行くったら行くからね!」
村長「おおおっ…!何という事だ…」ガクッ
??「そういうわけでよろしく、巫女さん!」ニカッ
巫女「あ、よ、よろしくお願いします」
??「ああ、そうだ。挨拶が遅れたね。あたしは村長の娘だ」
巫女「む、娘さんでしたか…」
村長娘「ったく、村長のくせに自分の娘を一番に守ろうなんて腰抜けもいいとこだよ」
村長娘「余所者のあんたに全部押し付けるのも悪いし…さ」ボソボソ
巫女「そんな…気になさらなくても」
村長娘「さあ三人揃ったろ!早く行こう!」
山賊「お、お前が仕切るんじゃねぇ!」
山賊「じゃあな村人ども!がっはっは!」
村長「あああ…」
村長「待っ…待ってくれええー!」
415: ◆WjgYlacz.c:2017/1/8(日) 22:34:30 ID:PlUNcBI2Oc
・・・・・・・・・・
416: ◆WjgYlacz.c:2017/1/8(日) 22:35:18 ID:PlUNcBI2Oc
ザッザッザッ
山賊「おい、追ってきてるような奴はいねえか?」
山賊「大丈夫なようだぜ」
山賊「まっ、そんな度胸もねえだろうがな。ははは!」
村長娘「…好き放題言ってくれちゃってさ」チッ
巫女(さっきお父様を腰抜け呼ばわりしてたのは誰ですか…)
??「…」
村長娘「ところであんた、見覚えないんだけど…誰だっけ?」
??「…巫女様の従者でございますわ」
巫女「えっ」
従者「今まで控えておりましたが…状況も状況ですので」
村長娘「なるほどね。村のみんなも焦ってたよ。まあよろしくね」
従者「こちらこそ」
巫女「???」
山賊「おい、おめえうるせえぞ!喋るな!」チャキッ
村長娘「分かったって…そんなもん向けないで」
山賊「ったく、これからどんな目に遭うのか分かってねぇみたいだな…」
417: ◆WjgYlacz.c:2017/1/8(日) 22:35:42 ID:PlUNcBI2Oc
巫女「…」
巫女(従者…って何のこと?)
従者「…」チラッ
巫女「?」
従者(巫女…)
巫女「!?」
従者(人間の姿を借りてますけど、私は山神よ)
巫女(や、山神様…!)
従者(驚かないで。不審がられるから)
巫女(そ、そうですね)アセッ
山神(まさかこんな無茶なことするなんてね)
巫女(で、でもどうして!?今回は助けられないって…)
山神(そう、あの村の人たちを助けることはできないわ)
山神(…でも、あなたを助ける事はできる)
巫女(!)
山神(こんな渦中に飛び込まれたら…手出しせざるを得ないでしょう)
巫女(山神様ぁ…)ジワッ
山神(こらっ、泣かないの)
巫女(うぅ…)
418: ◆WjgYlacz.c:2017/1/8(日) 22:36:06 ID:PlUNcBI2Oc
山神(こうなる事を分かっててこんな手を使ったのかと思ったけど…違ったの?)
巫女(違いますよぅ…只の思い付きで…私、本当にどうしようかと…)
山神(…呆れた)
巫女(…ごめんなさい山神様。あんな言い方しちゃって…)
山神(気にしてないわ。それに…私も冷たかったわね)
山神(さて、お喋りはここまでよ。慎重に行きましょう)
巫女(はい!)
山賊「止まれ!」ザッ
三人「!」ザッ
巫女(どうしたのかな?こんな何もない場所で…)
山賊「…」ポンポン
巫女(地面を調べてる…?)
山賊「〜〜」ボソボソ
巫女「…?」
ゴゴゴゴゴ…!
村長娘「うわ!?地震!?」グラグラッ
巫女「わわわ…っ」グラグラッ
山神「…」
ビキビキビキッ…!!
419: ◆WjgYlacz.c:2017/1/8(日) 22:36:58 ID:PlUNcBI2Oc
巫女「じ、地面が割れてく!?」
村長娘「ちょっと、こりゃさすがにまずいんじゃない!?」
山賊「へっへっへっへ…」
ズゴゴゴゴ…
ゴオ…ン…!!
村長娘「…」ポカーン
巫女「…」ポカーン
巫女(地面が割れて…中に洞窟が…)
山賊「はっはっは、驚いて言葉も出ねえか」
山賊「ようこそ、俺たちの隠れ家へ!」
村長娘「あ、あんた達…こんな所に住んでるのか?」ワナワナ
山賊「くくく、そうだ。怖くて入れねえか?」
山賊「だが残念。もうお前たちは…」
村長娘「すっげえ!どういう仕掛けなんだこりゃ!?」ワクワク
山賊「は?」
村長娘「へぇ〜!早く中を案内しておくれよ!ほらほら!」ハツラツ
山賊「…」ポカーン
巫女(山賊さん達が引いてるんですけど…)
420: ◆WjgYlacz.c:2017/1/8(日) 22:37:24 ID:PlUNcBI2Oc
山賊「ええい、やかましい女だな!」
山賊「言われなくてもさっさと中へ行くぞ!」グイッ
村長娘「なんだかわくわくしちまうねぇ!」
巫女「…」
巫女(でも確かに不思議…どうやってこんなの…)
山賊「おらっ、お前らも早く中へ入れ!」
巫女「は、はいっ!」
巫女「行きましょう、山が…従者さん」
山神「…そうね」
山神(今、ここが開く瞬間に感じた気配…)
山神(これはもしかして…とんでもない事になっているかもしれないわね)
巫女「どうかしたんですか?」
山神「いえ…なんでもないわ」
ザッザッ…
ズゴゴゴゴ…
ズウ…ン…
421: ◆WjgYlacz.c:2017/1/24(火) 18:00:13 ID:PlUNcBI2Oc
ザッザッ
巫女「中も大きな洞窟みたいになっているんですね」
村長娘「これ、あんたたちが掘ったのかい?」
山賊「てめえにそんな事教える義理もねえだろう」
村長娘「なんだい、教えてくれてもいいじゃないか」
山賊「ったく、こんなやかましい奴連れてくるんじゃなかったぜ…」
山神「娘様…あまり彼らを刺激しないでください」
村長娘「いいじゃないか別に」
山神「よろしくないですから」ギロッ
村長娘「うっ…わ、分かったよ…」
村長娘「どうにも思ったことがそのまま口に出ちまう性分でさ…」
巫女(山神様の睨み、相変わらず怖いなぁ)
巫女(でも本当にこんな洞窟、山賊さんたちだけで掘れるのかな…)
巫女(あの不思議な入口もそうだけど…何かおかしい気がする)
422: ◆WjgYlacz.c:2017/1/24(火) 18:00:37 ID:PlUNcBI2Oc
山神(巫女…)
巫女「わっ!」
山賊「あ?なんだ?」
巫女「あ、ご、ごめんなさい何でもないです!」アセッ
巫女(山神様…急に心に話しかけないでくださいよ…)
山神(あなたもいい加減に慣れなさいよね…)
山神(それより…前を向いたまま、手を後ろに出してもらっていいかしら?)
巫女(えっ?こうですか?)スッ
ポン
巫女(…何か渡しました?)
山神(振り向いちゃ駄目よ。怪しまれるから)
山神(今は早く懐にしまって。万が一の時に使いなさい)
巫女(は、はい…)ゴソッ
村長娘「ねえ、なんか開けた所に出そうだよ」
巫女「え?あ、本当ですね…」
423: ◆WjgYlacz.c:2017/1/24(火) 18:01:19 ID:PlUNcBI2Oc
オオオ…
村長娘「へぇ〜っ、広い所だね」
山賊「静かについてこい」
ザワザワガヤガヤ…
巫女(他の山賊さんたちもいっぱいいる)
巫女(こんなにいるんじゃ、強引に逃げるのは無理そう…)
村長娘「おっ、誰か奥に座ってるじゃないか」
山賊「粗相するな。あれが俺たちのお頭だ」
巫女「!」
巫女(お頭…一番偉い人だよね…)チラッ
お頭「…」ギロッ
巫女「ひっ…」
巫女(うぅ…見るからに怖そうな人だ…)
従者「…」
山賊「止まれ」
三人「!」ピタッ
山賊「お頭!例の村から連れてきた娘たちです!」
お頭「おう。ご苦労」
424: ◆WjgYlacz.c:2017/1/24(火) 18:01:42 ID:PlUNcBI2Oc
山賊「どうです?なかなかの上玉でしょう?」
お頭「ふぅむ…」ジロジロ
村長娘「…」
巫女「…」
従者「…」
お頭「…くくっ、成程。こいつぁ良いじゃねえか」
山賊「そうでしょうそうでしょう」
山賊「げっへっへ」
お頭「食糧の方もぬかりねえみたいだし…しばらくは安泰だな」
お頭「村の連中につけられたりしてねえだろうな?」
山賊「そりゃあ勿論ですぜお頭!」
お頭「…ふん、まあ来たところで百姓ごときに何もできねえがな」
山賊たち「へっへっへ」
お頭「さてと…客人をさっさと案内してやれ」
お頭「こいつらのこれからの住処にな…」
山賊「了解ですぜ」
425: ◆WjgYlacz.c:2017/1/24(火) 18:02:05 ID:PlUNcBI2Oc
巫女(住処だなんて…嫌な言い方)
巫女(いつ山神様と一緒に山賊さんたちをやっつけようかな…)チラッ
従者「…」ジーッ
巫女(…山神様?)
従者「…」キッ
お頭「ん?何だそこの女。この俺に睨みをきかせるたぁ…」
お頭「…!」
山賊「お頭?」
お頭「…くっくっく」ニヤ
山賊「ど、どうかしやしたか?」
お頭「気が変わった。そこの女だけここに残れ」
従者「…私でしょうか?」
お頭「そうだ」
巫女「えっ?えっ?」アセッ
山賊「おおっ!お頭、さっそく目を付けやしたか!」
山賊「さっそく楽しもうとはさすがお頭…」
お頭「てめえらも外に出ろ」
山賊たち「…へっ?」
426: ◆WjgYlacz.c:2017/1/24(火) 18:02:33 ID:PlUNcBI2Oc
お頭「この女と二人にしろ。皆、出ていけ」
山賊「し、しかしお頭…」
ダンッ!!
お頭「…命令だ。皆、この場から失せろ」
お頭「同じことを何度も言わせるんじゃねえ」ギロッ
山賊「ひっ!」
巫女「…」ブルッ
巫女(な、なんて迫力…!)
山賊「わ、分かりやした!てめえら早くついてこい!」グイッ
村長娘「ちょっ…引っ張るんじゃないよ!」
巫女「山…従者さん」
従者「…私は大丈夫です。巫女様は行ってください」
巫女「でも…」
従者「大丈夫ですから…さあ、早く」
巫女「…」
巫女「…」コクン
従者「…」コクン
山賊「おら!てめえもだ!早くしろ」グイッ
巫女「いたっ!そ、そんな乱暴にしないでください…!」
タタタ…
427: 名無しさん@読者の声:2017/3/14(火) 23:38:50 ID:1u6hK9HJ.A
続き待ってる!支援!
428: ◆WjgYlacz.c:2017/4/15(土) 23:12:50 ID:agy/G/E7u.
>>427
待っていただきありがとうございます。長々と放置してすみませんでした。
スローペースになりますが、更新再開します。
429: ◆WjgYlacz.c:2017/4/15(土) 23:13:45 ID:agy/G/E7u.
タタ…
シーン…
従者「…」
お頭「…」
従者「…皆、行ったみたいね」
お頭「おう」
従者「聞き耳を立てているような気配もないわ」
お頭「当然だ。そんな真似したらどうなるか…ここの連中はよく分かってるからな」
従者「…」
お頭「さて、何から尋ねるとするか」
従者「私も尋ねたい事があるのだけれど」
お頭「どうせ一緒のことだろうが」
従者「…そうでしょうね」
お頭「てめえは」
従者「あなたは」
お頭・従者「「何者だ?(かしら?)」」
430: ◆WjgYlacz.c:2017/4/15(土) 23:14:09 ID:agy/G/E7u.
従者「…」
お頭「…」
従者「…もう隠す意味もないみたいね」
お頭「そうだな」
従者「私は山神といいます」
お頭「俺は土神だ。山神だと?聞いた事ねえ名だな…」
山神「まあ、この辺りの神ではないものね」
山神「それより…なるほど、土を司る神ね。道理でこんな場所を造れるわけだわ」
土神「くっくっく、面白いだろう」
山神「人間業ではないと思っていたけど…まさか本当に神が関わっていたとはね」
土神「連中を操るには最初に力を見せつけてやる方が効率が良かったからな」
土神「はっはっは、案の定今じゃあ俺はあいつらに神のように崇められているぜ」
山神「そこまでしてあの山賊たちを従えている理由は?」
土神「てめえに話す義理ぁねえな」
山神「…」
土神「てめえこそ、余所もんがこんな所に何の用だ?」
山神「あなたに話す義理はないわ」
土神「…ちっ」
431: ◆WjgYlacz.c:2017/4/15(土) 23:14:42 ID:agy/G/E7u.
土神「ふん、どうせ俺を咎めにでも来たんだろうが」
山神「いえ。面倒は御免よ。お暇させていただくわ」
土神「これはこれは意外なお言葉だな」
山神「ま、あなたがただの人間の悪党だったら少し懲らしめようと思っていたけれど」
土神「ははっ!じゃあとっとと帰りやがれ」
山神「ええ。ならあの二人のところへ…」
土神「なぁに言ってやがる。帰るのはてめえだけだ」
山神「…?」
土神「礼を言うぜ。あんな上玉の女どもを連れて来てくれて」
土神「心配するな。あいつらは俺たちが存分に可愛がってや…」
ピシュン!
ドゴンッ!パラパラ…
土神「…はは、こええこええ」
山神「悪い冗談はよしなさい。次は外さないわよ?」
土神「おいおい、たかが人間ごときでむきになるんじゃねえよ」
山神「質問にだけ答えて。私をあの二人とともにここから出しなさい」
土神「くっくっく…覚悟できてるみてぇだな」
土神「答えは『いいえ』だ。山神さんよ」サッ
山神「…そう。残念ね」ゴオオ…ッ!
バシュッ!ドゴオオン…!!
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