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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





340: ◆WjgYlacz.c:2016/11/9(水) 21:26:25 ID:di870/Hsjw
村娘「ご、ごべんなさい…山神様。鬣を濡らしてしまって…」グズグズ

山神「…別にいいわ。今は思いっきり泣きなさい」

山神「その代わり、泣きっぱなしは駄目よ?というか、そんな暇も無くしてあげる」

村娘「…えっ?」

山神「ねぇ巫女、このまま少し寄り道していきましょう」

村娘「よ、寄り道…ですか?」

山神「ええ。見て回りたい場所はいくらでもあるわ」

山神「すごいわよ、あなたの見たこともないものがこの世にもいっぱいあるんだから」

村娘「で、でも…お社に帰らなくてもいいんですか?」

山神「いいのよ、領域で何かあればすぐ分かるし」

山神「そしたら私だけ全速力で帰っちゃえばいいんだから」

村娘「ちょ、ちょっと山神様!?」アセッ

山神「ふふっ、冗談よ。でもあなたは巫女として見聞を広める必要があるわ」

山神「ちょうどいい機会じゃない。行きましょ行きましょ!」

村娘「山神様…」

村娘「…はい!それではお供させていただきます!」

山神「じゃあ行くわよ〜!しっかり掴まっててね!」ヒュンッ

村娘「あわわっ!速いですよ山神様〜!」

パカラッパカラッパカラッ
341: ◆WjgYlacz.c:2016/11/9(水) 21:26:56 ID:di870/Hsjw



ーその後、しばらくの間



ー真っ白な馬に乗り各地を駆ける巫女服の少女が方々で話題となったが



ーそれはまた、別のお話……



342: 名無しさん@読者の声:2016/11/25(金) 22:51:01 ID:p94zDc5KUg


・・・・・・・・・・



343: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:52:07 ID:p94zDc5KUg
ガサガサッ

神娘「おっと、倒木が…」ピョンッ

男「大丈夫ですか、神様。足元が悪いですが」

神娘「うむ。このくらいの道のりはわけないぞ」

男「ならばいいのですが」

神娘「しかしお前はこんな道を毎日歩いてきていたのか」

男「ええ」

神娘「けっこう村までの距離もあるだろう。大変だったろうに」

男「このくらいの散策はいつもの事ですから」

神娘「よく見つけたものだ。あの洞窟を」

男「実はあそこに辿り着いたのは偶然ではないのですよ」

神娘「ん?」

男「予感がしたとでも言いますか…」

神娘「予感?」
344: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:52:51 ID:p94zDc5KUg
男「あの日、私はいつもの通り山菜を採りにきていたのですが」

男「ふと、いつもよりも山奥を探そうとこの道に入ったのです」

神娘「ほう」

男「すると、何やらこの先に何かがあるような予感が致しまして」

男「どんどん進んでいった結果、あの洞窟を見つけたのです」

神娘「何かがお前を呼び寄せたのか?」

男「そのような気が致します。神様ご自身では?」

神娘「う〜む…あの時はむしろ誰も来ないよう願っていたのだがな」

男「そうでしたね」

神娘「だが、無意識の内では…誰かを呼んでいたのかもしれん」

神娘「私を見つけ、あの状況を解決する手助けをしてくれる者を…」

男「神様…」

神娘「お前が来たことは幸運だったのだろう」

神娘「そうでなければ私はあの洞窟で朽ち果てていたのだからな」

男「光栄です」
345: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:53:14 ID:p94zDc5KUg
神娘「だが不思議なものよ。結局廻り廻ってこの地で生きる事になるとは」

男「本当に。不思議な縁ですね」

神娘「だからこそ大事にせねばならん」

神娘「お前の村に行っても、さらに育てていかねばな」

男「ええ」

神娘「本神になるその日まで…世話になるぞ、男」

男「はい。お任せを」

男「ですが私の助けを借りてばかりでは一人前になれませんよ」

神娘「一言多いわ。山神殿の言うことを真に受けるな」

男「ははっ」

神娘「よし、では早く行くぞ。ぐずぐずしておれぬ」タタッ

男「あっ、神様!」

神娘「どうした男!置いていくぞ!」タッタッタ

男「前を見てください!」

神娘「ん?」

男「そこは急な斜面に…」

神娘「えっ」

神娘「うわわ〜っ!」ザザザッ

ゴロゴロ…
346: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:53:36 ID:p94zDc5KUg
ザザッ

男「よっと」スタッ

男「神様、大丈夫ですか?」

神娘「う〜ん…」ピヨピヨ

男「ふう、これでは先が思いやられます」

神娘「や、やかましい…」

男「ははっ」

神娘「…わはは」

男「さあ、神様。お手を」スッ

神娘「ん」スッ

ガシッ

神娘「…」

男「どうかなさいましたか?神様」

神娘「……」

神娘「…本当はな」

男「え?」

神娘「不安でたまらんのだ」
347: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:54:00 ID:p94zDc5KUg
神娘「お前の村の者たちが良い連中である事は分かっているつもりだ」

神娘「お前を瓦礫の中から救い出そうと…皆必死になっている姿を見たしな」

神娘「だが…それと私を受け入れてくれるかは別の話」

男「…」

神娘「それに、私自身この地の事をまるで知らぬ」

神娘「文字通り一からの出直しだ」

神娘「上手くやっていく自信は正直あまり…」

男「大丈夫ですよ」

神娘「…!」

男「私も、山神様も、村娘様も、大丈夫だと言っているのです」

神娘「それはそうだが…」

男「これは無責任な励ましなどではありません」

男「神様のことを知った上でそう申し上げているのです」

男「大丈夫。神様なら上手くやっていけますとも」

神娘「…」

男「それに、どうにもならなくなれば私がなんとか致します」

男「この地に神様より先に生きる者として…出来る事なら何でも」

神娘「男…」
348: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:54:33 ID:p94zDc5KUg
男「ですから、そのような不安げな顔をなさるのはおやめください」

男「村の者たちも神様には感謝しております」

男「神様が来てくださると分かれば、諸手を挙げて喜びますとも」

神娘「…」

神娘「…大丈夫、か」

男「ええ」

神娘「相変わらず生意気なことばかり言うな」

男「その点に関しては諦めてください」

神娘「わはは。だが、不思議だな」

神娘「お前がそう言うのなら…大丈夫な気がしてくるぞ」

男「ははっ」

神娘「進むと決めたのだ。弱音ばかり吐いてはおれぬな」

男「その意気ですよ」

神娘「だが、まあ…たまにならよいか?」

男「それも構いません。いくらでも受け入れますとも」

神娘「…すまぬな」
349: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:54:58 ID:p94zDc5KUg
男「しかし、急に弱気になられたので驚きましたよ」

神娘「うむ…それなのだが」

男「?」

神娘「男、もう一度手を出してくれ」

男「手ですか?はい…」スッ

神娘「…」ギュッ

男「…」

神娘「…」

男「…あの、神様。手を握ってどうされました?」

神娘「…やはり温かい」

男「えっ?」

神娘「先ほど気付いたのだ」

神娘「お前に触れたり、触れられたりすると心が温かい」

神娘「気が緩んでしまい、つい弱音の一つも零れ出てしまう」

男「は、はあ…」
350: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:55:22 ID:p94zDc5KUg
神娘(そういえばこの感覚…)

神娘(似ておるな。あの時、目覚める瞬間のものと)

男「神様?」

神娘(あの時感じた、胸の温かみと)

男「神様、どうかされましたか?」


『………………たのです』


神娘(…思い出した。こやつの声が聞こえたのだ)

神娘(何と言っていたのかは分からぬが)

神娘(……)

神娘(…だが。そうか。そうだな)

神娘(私は知っている。この感覚の正体を)

神娘(ずっとあったのだ。私の中に。強く、強く…)

男「神様、無視なさらないでくださいよ」

神娘「…ん、ああ。すまないな」

男「やはりお加減でも優れないのですか?」

神娘「いや、そうではない。少し思案していただけだ」
351: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:55:59 ID:p94zDc5KUg
神娘「だが、大事なことが分かったぞ」

男「大事なことですか?」

神娘「ああ」

神娘「私はお前の事を好いておる、という事だ」

男「ははぁ、それはそれは…」

男「えっ」

神娘「わはは、滑稽な顔だ」

男「からかわないでくださいよ」

神娘「すまんすまん。だが、これは戯れではないぞ」

神娘「もっとも、神のくせにと馬鹿にされるやもしれぬが」

男「確かに驚きを隠せませんが」

神娘「だろうな。別に気にする必要は…」

男「まさか先に言われてしまうとは…不覚です」

神娘「?」

男「神様、畏れ多くながら…」

男「私も神様をお慕いしておりました」

神娘「えっ」
352: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:56:25 ID:p94zDc5KUg
神娘「お前も同じ気持ちだと言うのか?」

男「はい」

神娘「むむ…なんと」

男「はは、滑稽な顔をしておられます」

神娘「からかうでない」

男「神様の真似をしただけですよ」

神娘「まったくこやつは…」

男「愚かな事だとは分かっております」

神娘「いいや。単純に嬉しいぞ。それ以外の言葉が見当たらぬ」

男「そうですか…!」

神娘「思い出した。先ほど目覚める時、お前の声を聞いた」

『お慕いしていたのです』

神娘「お前のその言霊が私を呼び戻したのだな」

男「…聞いていたのですか」

神娘「山神殿が言っていた、特別に強い想いとはこの事だったのか」

男「恥ずかしいのでお止めください」

神娘「わはは」

神娘「…ありがとうな、男。お前のおかげで今ここに私がいるというわけだ」

男「神様…」
353: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:56:56 ID:p94zDc5KUg
神娘「…だが」

男「?」

神娘「私にも私の立ち位置というものがある」

神娘「お前の村につく神としての立場が…な」

男「はい」

神娘「私は村の者に対し中立でなくてはならぬ」

神娘「お前だけを…特別扱いするわけにはいかんのだ、男」

男「…」

神娘「つまりだな、ええと……何と言えばよいのか…」

男「分かっておりますよ、神様」

神娘「…」

男「私は神様の心中をお聞かせいただき、嬉しかった」

男「神様がこれから先、いつでも近くにおられる」

男「それだけで私は…満足ですよ」

神娘「男…」

男「神様は存分に修行にお励みください」

男「今まで通りに。それが一番なのですから」

神娘「……すまんな」
354: ◆WjgYlacz.c:2016/11/25(金) 22:57:22 ID:p94zDc5KUg
男「では参りましょう。私の村へ」

神娘「うむ」

神娘「…なぁ、男」

男「はい」

神娘「その…村に着くまででよいのだが…」

神娘「この手を離さないでいてくれ。頼む」

男「…勿論ですとも。何があろうと」

神娘「では行こう」

男「はい」

ザッザッ…

………

……


355: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:30:36 ID:BDOoSr5JZ.



・・・・・・・・・・



356: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:31:10 ID:BDOoSr5JZ.



・・・・・・・数ヶ月後



357: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:31:40 ID:BDOoSr5JZ.
神娘「………」

神娘「……んんっ」

神娘「朝か…」ムクッ

神娘「んんっ…」ブルルッ

スタスタ

ガララッ

神娘「おお…」

シンシンシン…

神娘「やけに寒いと思ったら…雪が積もったか」

神娘「見事な銀世界だな。美しい」

神娘「だが、こういう日は引きこもっているのが一番だな」

神娘「こんな日では皆も生業はできまい」
358: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:32:12 ID:BDOoSr5JZ.
神娘(あれから数ヶ月が経ち、すっかり冬となった)

神娘(今は村の近くにあった廃寺で寝泊まりしている)

神娘(村の皆は私を快く迎えてくれた)

神娘(おかげで神力もかなり回復してきている)

神娘(まとまった信仰がある場所だと、こうも回復が早いとはな)

神娘(ありがたい事だ。この信仰を早くあやつらに返していかなければ)

神娘(…だが、寒いので今日は休む事にしよう)

神娘(急ぐことはないな、うん)

チリーン…

神娘「む?」

チリリーン…

神娘「鈴の音…男に持たせている物か」

神娘「何か用があれば鳴らすよう伝えておいたが…」

神娘「この雪だしな。何かあったか?」

神娘「休むと決めた傍から…落ち着かんな」

スタンッ!
359: ◆WjgYlacz.c:2016/12/4(日) 21:32:34 ID:BDOoSr5JZ.
ヒュウウウ…

スタッ

神娘「ふぅ、到着」

百姓二「あっ!神娘様だぁ!」

百姓一「おはようごぜえます、神娘様」

村人たち「「「おはようございます!」」」

神娘「ああ、おはよう」

神娘「…ってどうした、皆揃って」

百姓一「へえ、実は…」

男「あ、神様。来てくださいましたか」

神娘「男。何かあったのか?」

男「はい、一大事です」

神娘「聞こう」

男「雪が積もりました」

神娘「うむ」

男「珍しいので村は大騒ぎです」

神娘「皆慌ててしまっているか。まあ無理も…」

男「大騒ぎで皆遊んでおります」

男「神様も是非ご一緒にと思いまして」

神娘「は?」
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