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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





198: ◆WjgYlacz.c:2016/6/12(日) 21:48:42 ID:LZ7UQdthyE
男「…神様」

神娘「ん?」

男「神様は今後どうされます?」

神娘「今後…か」

男「修行を再開なさるおつもりでしょう?」

神娘「そうだな。もうその決心がついた」

男「では、人間の村に戻られる…」

神娘「そういう事だ」

男「それは良かったです」

神娘「もう二度と同じ轍は踏まぬ。必ずや本神になってみせるぞ」

男「そういう事でしたら是非…」

神娘「そのためにも早く力を取り戻し、村娘のいる村に行かねば」

男「……」

男「…え?」

神娘「村娘のいる村だ。この麓にあるらしいからな」

男「この地に留まるおつもりで?」

神娘「うむ」
199: ◆WjgYlacz.c:2016/6/12(日) 21:50:20 ID:LZ7UQdthyE
神娘「修行をすべき場所は生まれ落ちた場所でと定められている」

神娘「これでも山神殿には多大な恩があるしな。それも返す意味も込めて…」

神娘「私はこの山の周囲で修行をせねばならぬ」

男「そうだったのですか」

神娘「一度は投げ出したとはいえ、その定めが反故になったわけではない」

神娘「どうせなら顔見知りがいた方が何かと動きやすいしな」

男「それで村娘さんの村に…」

神娘「もっとも村娘とその事で話す暇がなかったが」

神娘「まあ、あやつなら受け入れてくれると思う」

男「村娘さんは神様の事を好いておいでですから」

神娘「もっともあやつだけでなく、村全体から好かれ、信仰を集める必要があるのだがな」

男「大変な道のりになりますか」

神娘「恐らく」

男「神様ならきっと大丈夫です」

神娘「ふん、言わずもがなだ」フンッ

神娘「…ところで、お前も先ほど何か言いかけたか?」

男「いえ。何でもありません」

神娘「そうか?ならいいが…」

男「……」
200: ◆WjgYlacz.c:2016/6/12(日) 21:50:52 ID:LZ7UQdthyE
神娘「お前はどうする?」

男「私は明日の朝にでも発とうかと思います」

神娘「随分急だな」

男「あまり村を空けるわけには参りませんので」

神娘「まあ道中を含めれば十日以上空ける事になるからな」

男「村の皆も寂しがりますし」

神娘「自分で言うのか?それは」

男「事実ですから」

神娘「私が洞窟にいた時はしょっちゅう空けていたくせに」

男「それはそれ、これはこれという事で」

神娘「都合の良い奴め」

男「言ったではありませんか。あの時は仕事を終えてから来ていたと」

神娘「朝から来てる時もあったではないか」

男「早起きして仕事を済ませたのです」

神娘「もう無茶苦茶だな」

男「しかし帰ったらまた仕事三昧になります」

神娘「仕方あるまい。それがお前たち人間の生き様なのだから」
201: ◆WjgYlacz.c:2016/6/12(日) 21:51:34 ID:LZ7UQdthyE
男「……」

神娘「……」



リーンリーン…



男「……」



リーンリー…ン



男「…神様」

神娘「……」

男「お困りになるかもしれませんが」

男「その、やはり修行は私の村で行うというのは…」

神娘「……」グラッ

コテン

男「!」ビクッ

男「どうされました?寄りかかって…」

神娘「…zzz」スースー

男「…寝てらっしゃいましたか」
202: ◆WjgYlacz.c:2016/6/12(日) 21:52:54 ID:LZ7UQdthyE
神娘「zzz」


男「…お疲れのご様子でしたからね」


男「……」


男「神様がお決めになったことだ。私が異を唱えられるはずもない」


男「……」


リーンリーン…





…パカラッパカラッ

山神「…ふ〜っ、到着。すっかり遅くなってしまったわ」ザッ

山神「ごめんなさいね。何もなかったかしら…」

山神「…あら?」


神娘「zzz」

男「zzz」


山神「……」

山神「…うふふ。仲良しだこと」ニヤニヤ
203: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:36:44 ID:10DpqrJMlU
ーしばらくのち


神娘「……んっ」パチッ

神娘「…いかん、眠ってしまっていたか」

神娘「このような吹き曝しで…ん?」チラッ

男「zzz」

神娘「っ!?」ビクッ

神娘(近っ!)

神娘(しまったな。こやつに寄りかかって眠ってしまったか…)

男「zzz」

神娘(こやつもこのまま寝たのか)

神娘(ここで私が動いたら、こやつの体は倒れそうだ)

神娘(疲れていたのだろうし…止むを得ん。もう少し寝かせておくか)

神娘「……」

神娘「……」チラッ

男「zzz」

神娘「……」

神娘(こやつの顔をこれほど近くで見るのは初めてだな)

神娘(おぶさっていた時も、見ていたのは背中と頭の後ろだけだし…)

神娘(…ま、まあまあ悪くない顔立ちだな、うん)
204: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:37:06 ID:10DpqrJMlU
男「zzz」

神娘「……」チラチラッ

神娘(…手が泥だらけ、傷だらけだな)

神娘(あの村で畑仕事をしていた男たちと同じ…)

神娘「…」スッ

神娘(普段は仕事に精を出しているというのも、嘘ではなさそうだ)

神娘(…この手こそ、こやつら人間の生きている証だな。うん)

サスサス

男「ううん…」

神娘「!」ビクッ

男「…ん…」

男「zzz…」

神娘「…ふぅ」

神娘(危ない。手をさすっていたなどと知られたら何を言われるか…)

神娘(しかし本当によく寝ておるな、こやつは)
205: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:37:40 ID:10DpqrJMlU
リーンリーン…

神娘「…」

男「zzz…」

神娘(こやつも明日になれば自分の村へと帰るのか…)

神娘(私も村娘の村で、再び修行を行う)

神娘(全てが元通り…ただそれだけ)

神娘(それだけなのだが…)

男「zzz…」

神娘(…)

神娘「…うぅむ、分からん」ワシャワシャ

山神「何が分からないのかしら?」バササッ

神娘「わっ!?」ビクッ

山神「ちょっと。大声出したら男さんが起きちゃうわよ」カアーッ

神娘「その毎度突然声をかけるのはどうにかならんのか?」

山神「ふふ、以後気を付けるわ」

神娘(確実に気を付ける気は無さそうだ)
206: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:38:06 ID:10DpqrJMlU
神娘「しかしいつの間に帰っていたのだ」

山神「とっくよ。人間一人送るのにそんなにかからないわ」

神娘「まあ馬の姿で駆けていけば当然か」

山神「ねえ、それより何が分からないの?」

神娘「…う、うぅむ」

神娘「そのだな…明日にも修行を再開しようかと思っている」

山神「え?そう。それは何よりね」

神娘「村娘に話し、あやつが今いる村でまたやり直すつもりだ」

山神「あの子の村で…」

神娘「そうだ。全て順調な筈だろう?」

神娘「だが…何故か心が晴れぬのだ」

山神「……」

神娘「もう今日の一件で迷いはなくなったし、ここにおれば神力もすぐに戻る」

神娘「障害となるものはもう何もない。しかし…何かがこの胸につっかえておるのだ」

神娘「なぁ山神殿、これは何だと思う?私は何か間違っているのか?」

山神「……」

山神「間違ってないわよ。修行神としての順当な道ね」

神娘「…うむ」

山神「でも」

神娘「?」
207: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:39:28 ID:10DpqrJMlU
山神「その胸のつっかえは…あなたの正直な心を映しているの」

神娘「……」

山神「修行神としてではなく、あなた自身としての心ね」

神娘「私自身…?」

山神「そう。あなたの心が何か言っているんじゃない?」

神娘「…何を言っているのだというのだ?」

山神「私に分かるわけないじゃない」

神娘「…むぅ」

山神「あなたの心はあなたにしか語り掛けないわ」

山神「それを無視するのも耳を傾けるのもあなたの自由だけどね」

神娘「難しいな」

山神「そうでもないわよ」

神娘「何故そう言い切れる」

山神「うふふ。答えは意外と近くにあるかもしれないし?」

神娘「…何だそれ」
208: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:39:57 ID:10DpqrJMlU
男「う…ん・・・っ」ノビッ

山神「あら、お目覚めね男さん」

男「ああ、山神様。お戻りでしたか」

山神「無事に巫女も村へ送ってきたわ」

男「ありがとうございます。すみません、ついうとうとと…」ゴシゴシ

神娘「うとうとどころかよく眠っていたぞ」

男「そうでしたか?」

山神「ええ。神娘とぴったりくっ付いてよく眠ってたわ」ニヤ

神娘「余計なことを言うな」

男「何と。それは大変な失礼を致しました」

神娘「う、うむ…別によい」

神娘(正直少し驚いたが)

男「……」ペタペタ

神娘「…どうした、体など調べて」

男「いえ、私が眠っている間に何かされていないかと…」

神娘「三秒以内に謝らなければ吹き飛ばす」

男「冗談ですって」
209: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:40:21 ID:10DpqrJMlU
山神「男さんはこれからどうするのかしら?」

男「明日の朝にはここを発ちます」

山神「そう…寂しくなるわね」

男「できればもう少し残りたかったのですが…畑を放ってもおけませんし」

山神「そうね。男さんには男さんの暮らしがあるのだから」

男「それに寂しくなりませんよ。神娘様はここに残るそうですし」

神娘「……うむ」

ズキッ

神娘(ん…?)

山神「ふふ、また騒がしくなるわぁ」

神娘「騒がしくて悪かったな」

山神「…ちゃんと神としての務めは果たさなくちゃね」

神娘「無論だ」

山神「みっちりと鍛えてあげないと」ニヤリ

神娘「…不安だ」

男「鍛えてさしあげてください」ペコリ

神娘「お前は何様なのだ」
210: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:40:51 ID:10DpqrJMlU
山神「朝に発つのなら、もう休んだ方がいいんじゃないかしら?」

男「そうですね。そうさせていただきます」

山神「奥の部屋、使っていいわよ」

男「ありがとうございます」

神娘「…」

男「神様、山神様、それではお先に失礼します」

神娘「…ああ、おやすみ」

山神「おやすみなさい」

ザッザッ



神娘「…」

山神「さて、と。私もそろそろ…」

神娘「なあ山神殿」

山神「なに?」

神娘「胸が痛んだ」

山神「えっ?」

神娘「先ほど、また胸が痛んだ。こう…疼くように」

山神「……」
211: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:41:44 ID:10DpqrJMlU
神娘「だが分からん。私の心がいったい何を訴えているのか…」

山神「その時に何を話していたのか分かる?」

神娘「え〜っとだな」

神娘「あれだ、男が村に戻り、私がここに残るという話だ」

山神「……」

神娘「分からんな。別におかしな事など何一つない話だが…」

山神(もう答え一歩手前じゃない!)

神娘「ま、偶然かもしれん。気にしなくていいぞ」

山神「…はあ」

神娘「な、なんだ。ため息などついて」

山神「べっつにぃ〜」

神娘「なんだというのだその言い方は…」

山神「じゃ、私そこら辺の止まり木で寝てるわ」バサッ

山神「あなたも早く寝なさい。おやすみ〜」

神娘「おい、待っ…」

バサバサッ

山神(…わざとかと思えるほどの鈍感さね)

山神(というより、無意識に気付かないようにしているのかしら…)
212: ◆WjgYlacz.c:2016/6/21(火) 23:42:13 ID:10DpqrJMlU
神娘「…行ってしまった」


神娘(早く寝ろと言われても…)


神娘(また色々考えて眠れんぞ、こりゃ)


神娘(……)


神娘(私自身の心、か…)


神娘(そんなもの、今まで考えた事もなかった)


神娘(いったい何を訴えておるのだ)


神娘(お〜い…)


神娘(……)


神娘(…阿呆らし)


神娘(……)


神娘(…)
213: 名無しさん@読者の声:2016/6/23(木) 12:45:27 ID:nqDj.UzvhI
なんかキュンとくる…!

支援!
214: ◆WjgYlacz.c:2016/7/4(月) 15:31:05 ID:VlcCTJNCdM
チュンチュン…

神娘「…」コックリコックリ

ザッザッ

神娘「…ん、誰だ?」パチッ

「あっ、神娘様」

神娘「おお、村娘」

村娘「おはようございます!」

神娘「どうした、馬鹿に早いな」

村娘「ここで巫女をやる許しを両親から得たので、色々準備をと思って…」

神娘「そりゃ良かったな。山神殿も喜ぶだろう」フワワ

村娘「どうしてこんな所で休んでいたんですか?」

神娘「ああ、思案していたらそのままうとうとしてしまった」

村娘「また何か考え事ですか?」

神娘「丁度良い。お前にも関係ある事だ」

神娘「お前のいる村で修行を再開したいと思っておるのだ」

村娘「ほ、本当ですか!?」パアッ

神娘「よいだろうか?」

村娘「もちろん!とっても嬉しいです!」

神娘「うむ、そうか」
215: ◆WjgYlacz.c:2016/7/4(月) 15:32:06 ID:VlcCTJNCdM
神娘「そこで、お前に村の者たちとの仲立ちを頼みたいのだ」

村娘「わ、私に?」

神娘「そうだ。なに、そう身構える事ではない」

神娘「私を知る者がいた方が村人も安心するだろう」

村娘「確かにそうですね…。分かりました、やります」

神娘「すまんな。まあ神力がしっかり戻ってからの話だ」

村娘「それにしても神娘様がまた戻ってくるなんて」

神娘「私もこうなるとは思いもよらなかったよ」

村娘「あれ?でもそうなると…」

神娘「?」

村娘「男さんはどうなさるんですか?」

神娘「あやつは今日にも自分の村へと帰るぞ」

村娘「えっ」

神娘「当然だろう」

村娘「で、でも神娘様はそれでいいんですか?」

神娘「何がだ」

村娘「男さんとここでお別れするという事になりますよ?」
216: ◆WjgYlacz.c:2016/7/4(月) 15:32:41 ID:VlcCTJNCdM
神娘「それは仕方ない。私の修行にはあやつは何の関係もないのだから」

村娘「でも…」

神娘「あやつはあやつの、私は私の居場所で生きるだけのこと」

神娘「いったい何の不満があるというのだ?」

村娘「い、いえ…え〜っと…」

神娘「あっ、まさかお前…」

村娘「えっ?」

神娘「あやつに惚れたから行ってほしくない…とか?」

村娘「ち、違いますっ!」アセッ

神娘「生憎、縁結びの神の知り合いはいないのだが…」

村娘「違いますって。昨日会ったばかりなのにそんな筈ないですよ!」

神娘「そうか」

村娘「むしろ…」

神娘「ん?」

村娘「むしろ、神娘様の方が男さんのこと…」

バサバサッ

山神「カアーッ」バササッ

神娘「おはよう、山神殿」

山神「おはよう、神娘。巫女」

村娘「お、おはようございます!」
217: ◆WjgYlacz.c:2016/7/4(月) 15:33:26 ID:VlcCTJNCdM
山神「ごめんなさい。話の最中だったかしら?」

神娘「ん、大丈夫だ。もう本題は済んでいる」

村娘「……」

山神「巫女、どうやら許しは得たようね」

村娘「はい。両親に山神様の名を出したら驚かれましたけど…」

山神「良かったわ。それじゃ、中へ一緒に来てちょうだい」

村娘「分かりました」

山神「あ、神娘」

神娘「ん?」

山神「男さん、昼頃に出るそうよ」

神娘「そうか」

山神「少しは動けるようになったんだし、準備くらい手伝ってあげなさい」

神娘「…まあ、そのくらいならな」

山神「鳥居の外にいたわ」

神娘「分かった」ピョンッ

スタスタ…

山神「…」

村娘「…あの、山神様」

山神「何かしら?」
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名前:
sage:


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