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神娘「人間など嫌いだ」
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1: 亀更新かもです ◆WjgYlacz.c:2015/12/10(木) 10:06:43 ID:I.XMW0eHSk



ーむか〜しむかし、とある場所で





172: ◆WjgYlacz.c:2016/6/4(土) 22:26:10 ID:XVB95XEL9Q
>>171支援ありがとうございます。

一ヶ月近く放置してすみません。
明日から更新再開しますのでよろしくです。
173: ◆WjgYlacz.c:2016/6/5(日) 19:38:41 ID:QafHw9RIDY
ザワザワザワ…

男「いつの間に人や建物が…」

神娘「村娘、ここは…」

村娘「はい!私たちのいた村です!」

男「えっ」

神娘「化かされておるのか?それとも…」

男「その鈴の力でしょうか?」

神娘「分からぬ。そもそもこの鈴にどのような力があるのかも知らんしな」

村娘「でも、それが光ってからですよ!」

神娘「無関係ではないだろうな」

村娘「確かにさっきまで何もなかったのに…!」グルグル

神娘「落ち着け村娘」

村娘「は、はい…」

神娘「とにかくこうしていても埒が明かぬな」

男「ええ。少しそこらをうろついてみますか?」

神娘「うむ」
174: ◆WjgYlacz.c:2016/6/5(日) 19:39:07 ID:QafHw9RIDY
ザッザッ

村娘「すごい…昔の景色そのまま…」

神娘「村人の風貌も私が去った頃のままだな」

男「立派な村だったのですね」

神娘「ああ。ここらでは一番の規模であったろうな」

神娘「ほれ、あそこに広場になっている所があるだろう?」

男「はい」

神娘「あそこで毎日子どもたちが走り回っておった」

村娘「覚えてます。私もよく遊んでましたしね」

神娘「わはは、子どもたちに付き合わされて流石の私でも疲れてしまったよ」

村娘「ふふっ」

神娘「そこの畑では私もよく鍬を振るったしな」

男「はあ…」

神娘「向こうの田では米を植えた。初めての収穫の時は大騒ぎしたものだ」

村娘「……」

神娘「そこの井戸はな、私の勘が冴えていたから掘り出せたのだ。わははっ」

男「……」

神娘「そして向こうにある裏山では…」

男「…神様」

神娘「……」

男「あまり無理をなさいませんよう」

神娘「…すまん。少し取り乱した」
175: ◆WjgYlacz.c:2016/6/5(日) 19:39:33 ID:QafHw9RIDY
神娘「いかんな。こうして目の前に見せられると色々思い出してしまう」

神娘「懐かしさと困惑しているので…頭が滅茶苦茶になりそうだ」

男「少し休みましょう」

神娘「いや、大丈夫だ」

村娘「でも私たちがいても誰も見向きもしませんね」

神娘「恐らく我々のことは見えていないのだろう」

村娘「そうなんですかねぇ…」

神娘「だからこそ不気味ではあるのだがな」

村娘「残念です。顔見知りの人もいたのに」

神娘「十年経ったお前を見て分かる者はいないと思うぞ?」

村娘「盲点でした」

男「しかし、これではまるで幽霊の村ですね…」

村娘「ゆ、幽霊!?」

神娘「確かに。この鈴の力で亡霊でも呼び寄せた可能性もあるな」

村娘「…」サーッ

神娘「顔が真っ青だぞ村娘」

村娘「怖くなってきました」ブルブル

神娘「今さらだな」
176: ◆WjgYlacz.c:2016/6/5(日) 19:39:58 ID:QafHw9RIDY
男「あっ」

神娘「どうした?」

男「何人か祠の方へ歩いて行きますよ」

神娘「うむ、あの先頭にいるのは村長だな」

男「あの方が…」

村娘「祠の前で立ち止まって…何をしているんでしょうか?」

神娘「知らんが…何か手がかりがあるかもしれん」

男「行ってみますか」

神娘「ああ」


・・・・・・・


村長「……」ブツブツ

村人たち「……」

村娘「何か祠に話してますね」

男「もっと近くへ寄ってみましょうか?」

神娘「ああ」

村長「……」ブツブツ

神娘「……」

村長「…神娘様」ボソッ

神娘「!」
177: ◆WjgYlacz.c:2016/6/5(日) 19:40:50 ID:QafHw9RIDY
神娘「な、なんだと…?」アセッ

男「…どうやら神様に話しかけているわけではなさそうですよ」

神娘「う、うぅむ。そうだな」

村長「…あれからもう七日経ちました」

神娘(七日…?)

村長「村人たちの活気は無くなり、村を出ていく者もおります」

村娘「村長さん…」

村長「これが村のためだと、そう思っていたのに…」

村長「私は…とんでもない思い違いを…」

神娘「……」

村長「どのような罰でも受け入れます。ですからどうか…」

村長「どうか、もう一度戻ってきてくださいませぬか」

神娘「……」

村長「……」ブツブツ

神娘「…」ギリッ
178: ◆WjgYlacz.c:2016/6/5(日) 19:41:15 ID:QafHw9RIDY
村娘「神娘様…」

神娘「…一つ分かったな。どうやらここは私が去ってすぐの村らしい」

男「先ほどの村長殿の発言から察するに…そのようですね」

村娘「だから村の皆の見た目も昔のままなんですね」

神娘「何故その景色が見えているのかは分からんがな」

男「…神様がいなくなられてから、村長殿や村の方々はこうやって悔いていたのですね」

男「祠を造り、毎日毎日…こうやって手を合わせて」

神娘「…ふん、何が戻ってこいだ」

神娘「自分たちで私を追い出しておきながら…身勝手なものよ」フンッ

男「そうかもしれません」

男「ですがせめて、村人たちの気持ちを受け止める事はできませんか」

神娘「……」

神娘「…もう遅い。いなくなった者たちに思いを馳せても…」

ゴロゴロゴロ…

神娘「なんだ…?」

村娘「大変です!そ、空が急に暗くなって…!」

オオオオオッ…!

神娘「七日目…そうか、この日だったのか」

男「え?」

神娘「村に天罰が降った日だよ」
179: ◆WjgYlacz.c:2016/6/5(日) 19:42:21 ID:QafHw9RIDY
ヒュウウウウ…ッ!

バサバサバサッ!

村娘「風が強い…」

男「村の方々も騒がしくなってきましたね」

神娘「うむ」


村人「村長!外が大変です!」

村人「空が暗くなり、稲光も見えます!」

村長「来るべき時が来たのだ」

村長「我々は受けねばならぬ。それが神娘様へ償える唯一の方法だ」

村人「うう…」


男「…村の方々は全て覚悟されていたのですね」

神娘「馬鹿者が。死をもって償われる事など何もない」

神娘「…そんなものはただの自己満足に過ぎぬ」

村娘「あ、あの…」

神娘「どうした村娘?」

村娘「私たちは避難した方が良いんじゃないですか?もうすぐ竜巻が…」

神娘「ここは現実ではない。そんな事せずとも大丈夫だろう」

神娘「…多分」

村娘「多分て」
180: ◆WjgYlacz.c:2016/6/8(水) 19:45:32 ID:U19KvyG1Uc
神娘「私はこやつらの最期を見届ける必要がある」

神娘「恐らく、そのために鈴はこの景色を見せているのだろう」

村娘「…」

神娘「しかしお前たちをそれに巻き込む義理はない。今の内に離れても責めはせぬ」

男「何を仰いますか」

男「乗りかかった舟というものです。最後まで付き合いますよ、神様」

神娘「……」

村娘「わ、私もっ!神娘様が大丈夫と言うなら大丈夫に決まってますから!」

神娘「…すまんな、二人とも」


「な、なんだあれは!?」


神娘・男・村娘「!!」


ピシャアアアン!!

ズゴオオオオッ!!


神娘「…とうとう来たか」

男「な、なんという巨大な竜巻ですか…」

村娘「あわわわわ…」アセアセ
181: ◆WjgYlacz.c:2016/6/8(水) 19:46:00 ID:U19KvyG1Uc
「も、もう駄目だ!」

「天罰じゃ…この世の終わりじゃ…」


ゴゴゴゴゴ…!

神娘「村一つが無くなるわけだな…」

男「あれでは到底、逃げ場などありません」


村長「竜巻か…ならばこうしよう」

村長「皆の者、立ち上がれ!まだやるべき事が残っておる!」

「…!」

村長「以前に確認した手順で行う!我々の最期の仕事だ、急げえっ!」

「お…おおおっ!」

バタバタバタ…


村娘「な、何をなさるつもりなんでしょう…?」

神娘「分からん…」

男「皆さん麻縄や漬物石などを持ち寄っていますが…」


「村長!持てるだけの重しを持ち出しました!」

村長「よし、ではそれらで祠の周りを固めよ!」

村長「何としても、あの祠だけは我々が守るのだ!!」


神娘「なっ…!」
182: ◆WjgYlacz.c:2016/6/8(水) 19:46:25 ID:U19KvyG1Uc
「よし、こことあの柱を縄で括り付けろ!」

「その石はこの場所に置け!」

村長「時間がないぞ!急ぐのだ!」

ドタドタドタッ


ビュオオオオオッ!!


ワーッ!ワーッ!


神娘「……っ」


ゴゴゴゴゴ…!


神娘「この……馬鹿どもがぁ!」

男「神様…」

神娘「そんなものはどうでもいい!早く逃げるのだ!」

村娘「神娘様…」ギュッ

神娘「うぐっ…もうそこに…迫っているというのに…っ」ポタポタ

神娘「償いなど…えぐっ…もう、いらぬから…っ」ポロポロ

神娘「逃げてくれ…っ。頼む……」


村長「…これで全てか」

「はい、やれるだけの事は…」

村長「…後は…天命を待つのみ…か」


オオオッ!!
183: ◆WjgYlacz.c:2016/6/8(水) 19:47:26 ID:U19KvyG1Uc
ズガアアアアンッ!!



村娘「きゃああっ!」バッ



ガガガガガッ!!



男「うわっ…!」



ワーッ!ギャアアーッ!



神娘「……っ」



ズガガガガッ!!



ゴオオオオオッ!!



オオオオ…



……











184: ◆WjgYlacz.c:2016/6/8(水) 19:48:10 ID:U19KvyG1Uc









……


………


神娘「……?」

神娘(…ふぅ。どうやら無傷なようだな)

神娘(とはいえ…)キョロキョロ

神娘(なんだここは?何もない、真っ白な空間だ)

神娘(あの二人もおらぬ。いったい…)


「…神娘様」


神娘「!」

神娘「…その声、やはりお前か」クルッ

村長「お久しゅうございます」ペコッ

村人たち「…」ペコッ

神娘「なんだ。皆、揃っておったのか」

村長「神様…その、何と申し上げればよいのか…」

神娘「…先ほどまでの光景は、やはりこの鈴が見せた幻か」

村長「はい。あの日の記憶にございます」
185: ◆WjgYlacz.c:2016/6/8(水) 19:49:25 ID:U19KvyG1Uc
神娘「そうなると…この鈴に封じ込められていたという事だな」

神娘「私を追い出して以来の、お前たちの思いが」

村長「……」

村長「…あれから毎日、悔いばかりが募る日々でした」

村長「自分たちの愚かな間違いに気づくのが…遅すぎたのです」

神娘「自業自得だ」

村長「返す言葉もございませぬ」

神娘「…だが、せっかくこうしてお前たちにまた会う事ができたのだ」

神娘「その思い…受け止める事にしよう」

村長「神娘様…!」

神娘「お前たちが私を思い、祠を建て鈴を祀ったこと」

神娘「その祠に祈り、悔い改めようとしていたこと」

神娘「そして…その死の寸前まで祠を守ろうとしていたこと」

神娘「全て、確かに見届けたぞ」

村長「ははーっ」

村人たち「うぅっ……えぐっ…!」

神娘「…だが、それと私がお前たちを許すかという事は別の問題だ」

一同「えっ」
186: ◆WjgYlacz.c:2016/6/8(水) 19:50:17 ID:U19KvyG1Uc
神娘「いくら悔いたところで…済まされぬ事というものはある」

村長「……」

神娘「私はお前たちを許さぬ。この先もずっとな」

村長「さ、左様…ですか」

神娘「許さぬ故……お前たちを忘れぬ」

村人一同「!」

神娘「過去は消せないものだ。お前たちがしでかした事もな」

神娘「私は事実として思い出そう。お前たちから受けた事も全て」

神娘「そして同時に思い出すのだ。お前たちと共に過ごしたあの日々をな」

村長「神娘様…!」

神娘「私がまたこの地を訪れる事を分かっていたのか?」

村長「はい。ですからこの鈴を何としても留めておきたかったのです」

神娘「お陰で無事に私まで届いた。感謝する」

村長「そのお言葉だけで…我々は報われます」

神娘「…だが、できれば生きて話がしたかった」

神娘「逃げてほしかったぞ。死をもって償うなど…愚かな事を」

村長「…申し訳…ありませぬ」
187: ◆WjgYlacz.c:2016/6/8(水) 19:51:07 ID:U19KvyG1Uc
神娘「私は過去も背負ったまま、前に進む事にする」

村長「はい」

神娘「お前たちが今、天におるか獄におるかは知らぬが…」

神娘「皆、達者で暮らしてくれ」

村長「ありがとうございます」ペコッ

村人たち「ありがとうございます…!」ペコッ

神娘「うむ。では行くとしよう」

村長「神娘様、どうかお気を付けて…」

「お体を大事にしてくだされ!」

「神娘様…!」

「神娘様!」

神娘「わはは、皆に心配されるほどひ弱ではないぞ」

神娘「……さらばだ」



ヒュンッ……








188: 名無しさん@読者の声:2016/6/9(木) 08:01:43 ID:YIS8l9l302
切なすぎる…

支援!
189: ◆WjgYlacz.c:2016/6/9(木) 22:40:00 ID:UIlogv3UOE
>>188 支援ありがとうございます!



「……様!」

神娘「…んっ」

男「神娘様!」ユサユサッ

神娘「…あまり揺するな」

村娘「あっ、気付いた!」

男「ふう、良かったです」

神娘「…どうやら…戻ってこれたようだな」

男「ええ、竜巻が過ぎたら元の景色に戻りましたよ」

村娘「でも私も男さんも無事なのに、神娘様だけ目を覚まさなくって…」

神娘「うむ。少し村人たちと話してきたよ」

男・村娘「えっ?」

神娘「わははっ、やはりこの鈴は不可思議なものだ」

男「神様、それはやはり幽霊と出会ったので?」

神娘「…さあな。幽霊なのか幻覚なのか、結局分からなんだ」

男「そうですか…」

神娘「わはは。まあ、どっちでもいい事だよ。今となってはな」
190: ◆WjgYlacz.c:2016/6/9(木) 22:41:06 ID:UIlogv3UOE
村娘「皆さん、お元気でした?」

神娘「ん、そうだな。向こうでも元気にやってるようだったぞ」

村娘「うふふ、そうでしたか」

男「…この祠が残っていたのは、村人の方々のおかげだったと」

村娘「あの重しとかが竜巻を防いだんですね」

神娘「いや、家をも吹き飛ばす竜巻だ。あんなものでは防げぬよ」

村娘「えっ」

男「では、いったいどうして…」

神娘「神器には、人間の感情や想いを封じ込める力がある」

神娘「あやつらの死の直前の強い思いをこの鈴が汲み取ったのだろう」

男「村の方々の願いを叶えて、鈴は吹き飛ばなかったと…」

神娘「恐らく強い加護の力でも働いたのだろうな」

村娘「でもでも、それじゃ村の皆さんのお陰には変わりないですよね!?」

神娘「そういう事だな」

村娘「良かった…無駄にはならなかったんですね…」

神娘「無駄な筈がない。この鈴はあやつらの命そのものだ」

男「大切にしないといけませんね」

神娘「そうだな」

チリーン…
191: ◆WjgYlacz.c:2016/6/9(木) 22:41:33 ID:UIlogv3UOE
神娘「さて、じきに暗くなる。山神殿の元へ戻ろう」

男「はい。ではまた背中に…」スッ

神娘「ああ。もうその必要はない」

男「えっ」

神娘「よっと」スック

村娘「立った!神娘様が立った!」

神娘「何処かで聞いた台詞だな」

男「なんということでしょう」

神娘「ふむ、やはり足の傷跡も消えておるな」

男「本当ですね。いったいどうして…」

神娘「私の力を抑え込んでいたのは、私自身の心であったという事だ」

男「はあ」

神娘「……」クルッ

神娘(形は消えても、確かにここにはお前たちの思いが残っておったぞ)

神娘(安心して、安らかに眠るがよい)

神娘(…嘘は吐かぬ。忘れはせぬからな)


サアアアアアッ…
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sage:


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うpろだ
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