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【初心者】ヘタッピSS道場【歓迎】
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1: 名無しさん@読者の声:2013/7/1(月) 22:41:24 ID:i9LVyGoa8Y
・ルール
参加希望者は1〜5レスを目処にSSを自由に作成して下さい。お題が欲しい場合は各自で希望して下さい。お題の提案や作品の感想は随時受け付けとします。覆面先生(SS作者)からのアドバイスも絶賛受け付け中とします。



87: iPhoneにはスペースなんて概念はありません:2013/7/17(水) 12:09:43 ID:34PpKlBlvU


白い部屋は城だった。

小さな高い窓から差し込む明かりが、白い壁に反射してがらんどうの部屋の中にきらめきを落とす。その輝きから外れた隅に、テディベアを抱えて彼女が座っていた。

長い黒髪に、大きな瞳。まろやかな白い頬が、その双方を引き立てる。白いブラウスと長いスカートを身に纏う彼女は、まさしくお姫様。スラリとした足は、だらしなく床に投げ出されている。

クマを抱きしめた彼女は愛らしく笑った。


扉が開き、初老の女が顔をのぞかせる。老女は怯えた様子で、部屋の中には入ってこようとはしない。床に直に座り、絵本を広げる彼女を見て、悲しそうに眉をしかめた。

「ゆみちゃん、お部屋で遊ぶばかりじゃなくてお外に行きましょう? 先生もゆみちゃんに会えるの、待ってるのよ」

かけられた声に、彼女はぐっと黙り込んだ。自身を守るようにテディベアを引き寄せる。老女と、視線を合わそうともしない。

「ねぇ、ゆみちゃん。お部屋にずーっといたら、病気になっちゃうわ。一緒にお外に行きましょう?」

彼女は首を振る。かたくななその態度に、老女はほとほと困り果てた。

ここは彼女だけの城だ。絵本と大好きなテディベア。彼女を傷つけるものは何もない。優しい、砂糖細工で作られた、完璧な城。

「ゆみちゃん……」

彼女の様子に、老女はくしゃりと顔を歪めた。泣き出しそうなその表情を、俯いて隠す。しかし彼女はそれにも構わず、一人、楽しそうに絵本をめくった。

「いつまでそうしているつもりなのよ……」

恨めしそうに呟かれた言葉を拾って、彼女が視線をあげる。無垢な黒い瞳で老女を映し、赤い唇を歪めて言った。

「おばあちゃんなんて嫌い。くまちゃんがいれば、私はいいもん。早く出てって、お外なんていかない、行かないから」

老女は眉根を寄せた。頑固な彼女に何か言う様子はない。わずかな失望をその頬に載せて、ただきらめくだけのその城を閉ざした。

老女が出て行った部屋は元通り、白々と美しい。自分だけに見える幻想の世界に閉じこもったまま、彼女は満足げにクマに笑いかけた。

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